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1953-10-23 第16回国会 参議院 水産委員会 閉会後第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十月二十三日(金曜日)    午前十一時七分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     森崎  隆君    理事            秋山俊一郎君    委員            松岡 平市君            森 八三一君            木下 源吾君            松浦 清一君            菊田 七平君   事務局側    常任委員会専門    員       岡  尊信君    常任委員会専門    員       林  達磨君   説明員    外務政務次官  小滝  彬君    外務省参事官    (外務大臣官房    審議室付)   島  重信君    外務省アジア局    第二課長    竹内 春海君    水産庁長官   清井  正君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○水産政策に関する調査の件  (日濠漁業問題に関する件)  (李ラインに関する件)   ―――――――――――――
  2. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 只今から委員会を開会いたします。  先ず第一に、遠洋漁業に関する件の議題のうち、アラフラ海の問題につきまして、その後の中間報告を求めたいと思います。島参事官
  3. 島重信

    説明員島重信君) 前回報告いたしましたのはたしか九月の十二日くらいで、今年の四月から開いておりました日濠漁業会談決裂いたしましたそのことを御報告いたしたと思います。  その後、九月の十五日に会談経過を発表いたしました。これは最初は経過を発表することによりまして却つて両国間に気まずい感情が起つては面白くないと思いまして、濠洲側との間には会談が打切りになつたということを両方共同発表、いわゆるコミユニケの恰好で出したいと思いまして相談しておつたのでありますが、御承知通り、九月八日に濠洲政府が突如といたしまして、真珠貝漁業法改正法案濠洲議会に提案いたしまして、その提案理由の中で、漁業会談決裂に至りました理由を、濠洲側から見ました経過を発表いたしました。そのままにしておきますと、濠洲側の一方的な考え方なり言い分なりだけが残るということになりましたので、日本側から見ました経過を九月十五日に発表したわけでございます。その後この新らしい真珠貝漁業法改正法というものが提案されまして、それが通過して成立したわけでありますが、その事態に対しましてどうするかという問題が起つたわけであります。濠洲側は、この法律が成立すれば、その国内法の根拠によつて直ちにいわゆる濠洲水域として宣言いたしました水域真珠貝採取のために操業しております外国船に対して措置をとり得る、実力行動をとり得る、これはその国内法に違反した者は濠洲裁判所で裁判して処罰できるし、又処罰する覚悟であるということをしばしば申しておりました。勿論日本側からしますと、このような一方的な国内法外国船に及ぼすということは認められないわけでありますから、そのまま操業しておつても差支えないわけであります。併し実際問題といたしまして、当時操業しておりました水域にそのまま日本採取船が残りまして操業を継続するというふうにいたしますと、これは濠洲側実力行動実力措置を受けるということは必至と見られる状態に至つたわけであります。で、この際、濠洲側とこの問題につきまして非常な紛糾を来たすということは、この真珠貝漁業の問題だけについて考えてみましても、将来これは何とかして解決しなければならない問題でありますし、又日濠関係全般から申しますと、この問題のために非常に拭いがたい疵を残すということは好ましくないと考えられますので、我がほうの立場を損なわないで何とかこれを処理したいということにまあ苦慮したわけであります。で、九月の十五日に丁度その会議経過を発表いたしましたと同じ日でありますが、東京におきまして外務大臣から在京濠洲大使に対しまして、真珠貝漁業法改正法というものを濠洲政府が作りかけておるそうであるが、これは日本政府の見解によれば、確立された国際法原則に違反するものと考える。従つて日本政府としては、それをそのまま受入れるわけに行かないし、又困難な事態発生を防ぐために濠洲政府として善処して欲しいということを申入れました。にもかかわらず、法律は成立いたしまして、九月の二十八日に公布されまして、十月の十二日から施行ということがきまつたわけであります。そこで放つておきますと、先ほど申上げましたような事態になることが殆んど明らかでありまして、公布されました九月二十八日に濠洲政府は、涙淵におります日本西大使に正式に通告をよこしまして、十二日からこの法律を施行する、そのことを日本当局及び真珠貝採取業者に通報するために、ここに法規の写しを送るという、正式の文書を以て通告して参つたわけであります。従いまして十月十二日に、新法の効力発生いたしますときに、そのままおりますと仮定いたしますと、その際、仮に豪州側が直ちに実力を発動いたしまして、これを捕える、或いはこれを濠洲の裁判にかけて処罰するというような行為を行いました場合に、こちらでは知らなかつた、予告しないでそういう行為に出るのはけしからんじやないかということが言えないような事態なつたわけであります。その結果、水産庁ともいろいろ御相談いたしまして十月の八日、丁度新らしい法律効力発生前四日でありますが、八日の日に新らしい申入濠洲政府に対していたしました。その概要は当時外務省から発表いたした通りでありますが、前回の警告にかかわらず、濠洲政府は遂に大陸棚に対する主権宣言を行い、且つ真珠貝漁業改正法を成立せしめ、これを十二日から実施するということである。で、この濠洲政府のやり方乃至成立した真珠貝漁業法というものは、日本政府としては飽くまでもこれは国際法原則に違反するものとして容認できない。従つてこの問題を解決する最もいいと思われる方法は、国際間の紛争を平的和に処理するために設けられておりますへーグにあります国際司法裁判所、この国際司法裁判所提訴して、そうしてその判決を待つて両方がこれに従うということが最も穏やかであり、又公平な方法であると考える。然るに我が国はまだ国際連合に加入しておりませんために、この国際司法裁判所当事国になつておらない次第であります。で、当事国でなくても提訴することは認められておりますし、その方法があるわけでありますが、当時国以外のものが提訴いたしました場合には、当事国である濠洲はこれに対して応訴しなければならないという義務がないわけであります。従いましてこの問題を国際司法裁判所に持出すといたしましても、濠洲政府が応訴しなければ効果がないわけでありますから、孜が国といたしましては、濠洲側合意を遂げまして、両国政府合意によつて提訴するという方法によつて、これを国際司法裁判所に持出したい。で、国際司法裁判所判決がどのようなものであろうとも、日本政府はこれに従う用意があるということで、問題を国際司法裁判所判決に待とうということを新らしく提議いたしたわけであります。で、仮に濠洲政府がこの提議同意いたしますと、問題は国際司法裁判所に係属するということになりますので、いわば両方とも問題の黒白は国際司法裁判所判決に待とうという態度をとることになるわけでありますから、判決が下されるまでは、お互いに一方的な主張を一応棚上げして、そうしてもう一遍白紙に戻つて判決があるまでの間の暫定的な措置について改めて話合いをしようではないかということが言えるわけでありますから、その十月八日の申入の中にそのことも附加えまして、濠洲政府合意によつて問題が国際司法裁判所提訴された暁には、裁判所判決があるまでの間、濠洲近海における真珠貝漁業暫定措置について改めて話合いをする。その間濠洲政府日本の漁船に対して実力行動に出ないようにして欲しい。又それに対応する意味におきまして、日本側としては日本採取船が現在以上事態を紛糾させるような措置に出ないように関係の向きに勧告する用意があるということを附加えて申述べた次第であります。  以上が十月八日の申入でありますが、十月十二日に予定されました法律効力発生時までに濠洲政府回答を期待することはやや無理であると思いましたし、申入いたしましてもそのまま操業を続けますと、先ほど申しましたように不測の事態の起る可能性が非常に多い。又偶然でありますが、十月の七日八日頃から十月の半ば頃までは潮の加減で操業いたさない時期に遭遇いたしましたので、水産庁と協議いたしまして、この際その当時の操業区域にそのまま残るということは、事態を非常に紛糾させる虞れが非常にあるし、且つ又、現実操業できない事態であるからということで、水産庁のほうから業者にその事態を説明されまして、その結果二十五隻の採取船は十月十日、十一日の間に位置を移動いたしまして、濠洲側のいわゆる今年限りの許可不要水域という水域へ移動した次第であります。で、十月八日の申入に対しましては、現在までのところ未だ濠洲政府から正式の回答はございません。二、三新聞に伝えられておりますが、果して濠洲政府がどのような回答をして来るかということは、はつきり予測はできないわけであります。併し私どもといたしましては、この大陸棚に対する主権宣言及び真珠貝漁業法改正法が提出されました際に、濠洲政府当局者は、しばしば豪州政府はこの新らしい措置が完全に国際法原則に合致しているものであるということを確信しておる、これは正しいものであるということを確信しておるということを申しておりまするので、豪州側といたしましても、自分のほうが正しいことを確信している以上、これを国際司法裁判所にかけて、そして公平な国際機関の判断に待つという手段に出ることに対して反対する理由はないのではないかというふうに考えております。又、日本側といたしましても、これは国際法原則に反するということを主張しておるわけでありますが、併し相手方にこれを納得させますためには、日本側がただこれを主張しておるだけでは実効がないわけでありまして、国際司法裁判所という最も権威ある機関の決定によりまして、日本側主張を通すことができれば一番いい  わけでありますから、その意味におきまして、国際司法裁判所への提訴ということを考え、これを濠洲政府提議したわけであります。従いまして、私どもといたしましては、濠洲政府がこの日本側提議同意いたしまして、そして両国政府同意によつて、この問題を国際司法裁判所提訴するということに同意することを強く希望いたしておりますし、又その望みはかなりあるのではないかというふうに予測しておるわけであります。  一方採取船のほうは、その後十二日以降今日までずつといわゆる許可不要水域にとどまつております。この水域は、豪州側はそこに多量の真珠貝があるということは確認されておる。但し濠洲採取船なり潜水夫なりには深いので適当でないが、日本潜水夫なら採れるはずだというふうに申しておりますが、遺憾ながら現在までのところ、成績は非常に悪いのでございまして、十四日でしたか十五日でしたか、以後操業を始めておりますが、新らしい水域では操業第一日に約半トンの成績を挙げましただけで、それ以後全然実績を挙げておりません。水産庁監視船が行つておりますので、その水域内の真珠貝のありそうな浅瀬をいろいろ探索しておる模様でありますが、今日までのところ新らしい漁場を発見したという報道には接しておらないのであります。  大体以上が前回報告申上げました後、今日までの本件の経過概要でございます。
  4. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 以上御報告を頂いたのでございますが、これについて御質疑がありましたらば。
  5. 松浦清一

    松浦清一君 最初出る時の大体採取予定が一隻当り四十トン程度と記憶するのですが、今の採取量はどれくらいまで行つておるのでしようかね、全体量で。
  6. 清井正

    説明員清井正君) 採取只今つております二十五隻の船舶で千二百五十トンをまあ採取する計画でおつたのであります。最近までの実績について、私手許に数字を持つておりませんので、正確のことは又調べましてお答え申上げますが、たしか八百トン、或いはちよつと超した程度ではないかというふうに考える次第であります。
  7. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 どなたかお聞きになつたか知れませんが、今年こういうふうな状態になりまして、明年以後の出漁については、水産庁はどういう考えを持つておられますか。
  8. 清井正

    説明員清井正君) 今年は、只今外務省島参事官よりお話になつたのでありますが、只今のところの経過といたしましては、濠洲政府国際司法裁判所提訴する同意を求めておるのであります。又これについて向うが断わるだけの理窟がないのだろうと今考えておる。目下オーストラリア政府のこれに対する返事を待つておるような状況であります。只今操業船はいわゆる許可を要せざる水域において操業いたしておるのでありますが、残念ながら実績余り芳ばしくない。いささか操業者といたしては当惑をいたしておるような状態であります。ただ我々の申立といたしましては、提訴をいたしたいということを申したときに、同時に今後同水域において引続き両国政府協定によつて操業区域なり操業権なりよく相談して、その協定設立の相談をしようじやないかということを申添えておる次第でありますが、その点はオーストラリア政府返事を待たなければ何とも申上げられない状況であります。  私どもといたしましては、この点につきまして非常に重要に考えております。御承知通り仮にオーストラリア政府国際司法裁判所提訴するということに同意をいたしましても、その結果が判明するまでには相当かかるであろうということは当然と思います。恐らく一年では解決するかどうかわからないと思つております。その間オーストラリアに出漁しておりましたところのいわゆる真珠貝採取船についての経済的打撃をどうするかという問題でありますが、私どもは一旦国際司法裁判所提訴いたしました以上は、我々といたしましては、いわゆる浮洲の措置を不当なりとして提訴いたしておるのであります以上、その不当な措置を前提といたし幸して、それに事実上同意を与えるがごとき行動日本政府としてとるということになりますと、これが国際司法裁判所判決に対して相当の影響を与えるものであろう。いやしくも我が国濠洲政府措置が不当であるということに提訴いたしました以上、いわゆる採取船につきましても、その方向に沿うて行動いたさなければ、やはり提訴において私どもは正しい判決を得たいということに対して、いい影響はないのじやないかと考えております。従つてそういたしますと、濠洲政府許可をしてやると、こう言つておりますけれども、正式にいわゆる我が国真珠貝採取船濠洲政府同意を求めて、向う許可をした水域操業をするということを認めるということは、相当問題があると思う。恐らく非常な問題だと思う。そこでそれじや折角出発した真珠貝採取業がそのままになつていいかどうかということが一方にあり得る。その点をどう調整するかということは実際問題としてむずかしい問題と思つております。私ども立場といたしましては、オーストラリアのいわゆる大陸棚主権宣言が、私どもがこれに対して何らか暗に認める態度をとるとか、或いはそれに対して弱い態度をとるということは、将来の日本海洋漁業に非常に影響を与えるもので、これに対しては、いささかもゆるい態度はとれないと考えております。従つて将来に悪影響を与えるような行動を許容することはむずかしいということになるわけであります。従つてその点の調整につきましては、実は私どもも非常に苦慮いたしております。  差当りは明年度以降の措置になるのでありますけれどもオーストラリア政府として一月頃に許可を受付けてやるということを言つておりまするが、併しこれは私が只今申上げました通り、これを認めるということは非常な問題である、恐らく不可能に近い問題じやないかと思つております。その場合の採取船についての措置につきましては、これはどういうふうにいたすべきかということは、当該漁業者経済上の損失問題等もからみ合せて慎重に考えなければならん問題であるということで、目下関係業者の方の意見も十分拝聴しながら、その将来のことについては考えておる最中でございます。ただ申上げた通り、私ども国際司法裁判所提訴いたしました以上は、それに悪影響ありと認められた行動は許すことはできないという一本の筋だけはどうしても通さたければなら  ないということは、私ども考えておるのであります。その状況の下においてどうして当該漁業者経済上の問題を処理するかということに工夫があり得る。こういう点でありまして、非常に実はむずかしい問題でありまして、今ここですぐどうこうするということは、はつきり申上げられません。なお一つ状況の推移と睨み合せて慎重に考えて行きたい、こういうふうに考えております。
  9. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 尤もなお考えと思います。大体今のお話を承わりますと、許可を受けて操業するということは、一応その線を認めたというような恰好にもなるので、提訴した限りにおいては、さような処置を我々としてもとつてもらいたくない。ただ若しオーストラリア政府が一応了解をして、それじや判決があるまで一応まあ協定でもして入らせようということになれば、その協定に応じるか、許可とか何とかいうことでなしに、何かそういうことでもできれば、そういうことを考えておられるのじやないかというふうに受取れたのですが、その点そういうふうに解釈してよろしうございますか。
  10. 島重信

    説明員島重信君) 先ほど申上げましたように、濠洲政府日本政府申入同意する回答をよこしてくれますれば、筋道といたしまして、只今仰せになりました判決があるまでの間の暫定期間暫定措置についての話合いをしようではないかということを言い得ることになりますから、その筋に従つて話合いをいたしたいと思つております。で、こちらの希望しておりますのは、只今丁度おつしやいましたように、濠洲政府から言えば、濠洲側から言えば、許可がなければ操業させないという水域におきましても、両国政府合意によつて許可手続濠洲国内法による許可手続という手続をしないで操業ができるようにするということを目途として交渉したいというふうに考えております。
  11. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 この問題は非常に重大な問題でありまして、現存朝鮮においてもああいうような線が出ておりますし、又インドネシア、或いは今後どの国からそういうふうな大事な問題を持ち出すかわからない。朝鮮の問題にしましても、今国際司法裁判所提訴するというようなことには許されない事情にあるといたしましても、或いは将来そういうことになるかも知れない。今回の提訴をしてその判決がある間の措置というものが今後の例ともなるわけでありまして、これは非常に慎重を要する問題であると私ども考えますので、単に一部の、一部と申しましても真珠貝採取業者の終済的に非常に困難をするからというような意味合いからの余り芳ばしくないようか措置は一先ず差控えて、そういう問題は国内的に政府において措置をするということで、この外交的な措置は将来の悪例にならないように、申すまでもないことでありますけれども、慎重に一つお取計らいを願いたい。
  12. 松浦清一

    松浦清一君 これはまあ韓国水域李承晩ラインの問題とも関連するのですが、農業に不時の災害が起つた場合に、或いはその他の風水害でいろいろな所に災害が起ると、天災による災害ですね、そういうようなときには国家補償が与えられるというふうになつておるのですが、漁業関係等で、この日本の国の意思によらないで外国意思に基いて漁業に大きな損害をこうむるというような事態が起つたときに、やはり天災による、一種のこれは天災と見なければならんわけですが、天災による災害補助をするというようなことで、今度の李承晩ラインや、或いはアラフラ海の真珠貝採取問題によつてつた損害というようなものの補償ができるかできないかということについて、このような問題についてどのように政府側はお考えでしようか。
  13. 清井正

    説明員清井正君) この問題につきましては、従来におきましても、主として公海に操業いたしておりました「さば」業者等を中心といたしまして、しばしば私のほうにも国家補償をしてもらいたいという趣旨のお話を聞いておるのであります。この問題は、成るほど政府の責任と申しますよりも、むしろ外国の不当な措置によつてつたということは只今お話通りでありまして、一種天災と言えるということも或いは議論の仕方によつては言い得るかも知れませんが、私どもといたしまして、今すぐ外国措置によつて我が国漁業者が受けた損害についてどういう一体措置をとるべきかということにつきましては、まあいろいろな事情考え措置をしなければならんものと思つておるのであります。やはりこれは抽象的に申しましても、単に漁場転換して別途の漁業を行い得るという余地のあるものもありますし、その他いろいろな方法がありますので、必ずしも農業と比較ができない場合があり得ると思うのであります。そういつたことがありますので、或いは損害賠償措置ということでなしに、漁場転換なり、或いはそれに対する融資の措置なり、その他一般的な補償によらない措置を十分考えて、できるだけ当該漁業者の受けた損失補償考えてやるということは、やはり先ず我々として考えてやらなければならないと思つておるのであります。併し具体的にどうこうということまで考えておらないのであります。誠に当面された漁業者の被害は大きいのでありますから、何とかこれを心配して政府としてできるだけのことをして上げなければならんという考えでおります。ただ補償するということより前に、先ず私が申上げましたように漁場転換、或いは漁業転換なりを考えられれば一つ考えて行くということをいたしまして、なおその後に必要な措置考えなければならんというので、そのときに応じて又考えて行くということにいたしたいということになろうかと思うのであります。要するに私どもといたしましては、何とか当面にぶつかつてつておられる方々をできるだけの措置を以て、その経済的負担を軽減せしめるという努力を今後続けて行かなければならんのじやないかと、こういうふうに考えております。
  14. 森崎隆

    委員長森崎隆君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  15. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 速記を付けて下さい。  ほかに何か御質疑ございませんですか。  それではアラフラ海の問題は一応この程度にしておきまして、続いて李ラインに関する件を議題に供します。  新聞報道等でこれまで決裂に至るまでのことは或る程度存じております。特に今日午後懇談会等もございますので、一応外務当局から決裂に至るまでの日韓会談につきまして御報告を求めたいと思います。
  16. 小滝彬

    説明員小滝彬君) 私から申上げてもよろしいのですが、幸いにしてここに竹内課長現実交渉の場にも出ておつたものでございますから、課長から詳細な点を説明させます。
  17. 竹内春海

    説明員竹内春海君) 交渉模様につきましては、不調に終りましたことは御存じの通りでありますが、今度の会談の再開の経緯から簡単に申上げてみたいと思います。  九月の六日以来、李承晩ラインの強行がありましたので、我が方としましては漁業問題というものを切り離して交渉したいという意向を持つてつたわけであります。と言いますのは、日韓会談は一昨年の十月、当時の総司令部の斡旋によりまして始まつ予備会談というものを入れますると、昨年の二月並びに今年の四月とすでに三回に亙つて交渉いたしたのでありますが、いずれも難問題ばかりでありまして、これを一挙に解決するという見通しがなかつたために、その他の問題と一緒に漁業問題を討議したのでは早急な解決は得られないという見地からしまして、漁業問題を切り離して交渉いたしたいという意向であつたわけであります。併しながら韓国側といたしましては、李承晩ラインの要求いたしました真の意図は奈辺にあるかと申しますと、結局におきまして、これによつて日本側に強圧を加え、他の問題につきましても日本側の大幅な譲歩を求めるという意向のようであつたのであります。従いまして我が方から漁業問題を切り離して交渉をいたしたいと申入れましたのに対しまして、やはりすべての、懸案全部で五つでございますが、漁業問題のほか、財産請求権の問題、国交樹立の問題、船舶贈与の問題、国籍処遇、これは在日朝鮮人の国籍と待遇の問題でありますが、その五つの問題を全部一緒に討議したらということを回答いたしまして、御承知通り十月六日から再開に至つたわけであります。再開後の日韓会談におきましては、本会議が全部で四回、漁業並びに財産権の部会が二回、その他の部会がおのおの一回ずつやつております。で、今度不調の直接の契機となりました請求権の問題につきましては、韓国側の主張が、御承知通りに、日本の韓国に対する請求権というのは、平和条約第四条のb項によつて全部すでになくなつておる。併し韓国の日本に対する請求権が依然として残つておる。これは第四条a項の規定する通りであるという建前を変えませず、強硬にそれを主張しておつたわけでります。当方といたしましては、昨年度韓国の主席代表でありました梁大使、現在の駐米大使でありますが、これが松本主席代表との非公式の会談におきまして、しばしばお互いの請求権を相殺してこの問題を解決しようじやないかということを申しておりましたので、今回は漁業問題というものも、漁業問題という緊急性に鑑みましてこの案を真剣に考えようということで進めて参つたわけであります。そして昨年度の梁大使の発言を持ち出しまして、それについて向うはどう考えるかということを質したのでありますが、先方は、梁大使はそういうことを言つたことはないということを頭から否定しておるのであります。併しながら、その会談を通じまして我が方が財産権の相殺という案を考えておるということがほぼ明らかになつたものと思います。他方漁業問題につきましても、二回の部会を通じまして、我が方といたしましては、現に韓国に抑留されておりまする拿捕抑留の停止ということを強く要望いたしまして、同時に李承晩ライン国際法上の当否ということを追及いたしたのであります。併し先方は依然として、国際法に関する認識が違うんだと、並びに日韓両国の漁業について非常に隔差があるからして、実質的な不平等を調整するためには、漁業管轄権というような、一国の沿岸に沿つた地域をその国だけの占用の漁場とすることがこの実質的な不平等を是正する措置であるという立場を強硬に主張して参つたわけであります。で、漁業部会におきましては、二回に亙る激論がありまして、次の三回目の機会に具体的なこちらの案を出そうという段階になつたのであります。併しながら韓国側の最も重点を置いておりますところは、財産請求権の問題でありまして、これは日本から大幅な譲歩を得ようというところに狙いがあつたようでありまして、そんなことをいたしまして、我が方の考えておつた案では満足できないというように考えたのではないかと思います。そういうことからいたしまして、このまま会談を継続しても、漁業の問題について日本側が具体案を出すに至れば、その妥当なことが世界にわかる。そうするとそれに対して韓国側は飽くまで反対しておるということになりますると、世界的に非常に立場が悪くなる。こういう考慮もあつたかと思いますが、そういう見地からして見まして、今回の会談を早めに打切りたいというような意図があつたやに思われるのであります。そういうことからいたしまして、たまたま請求権部会の非公式な会合におきまして、久保円代表が先方の質問或いは発言に対して答えました言葉尻を捉えて、その言葉尻を本会議にまで持ち込み、会談全般を打切つた次第であります。  思いまするに韓国側としましては、李承晩ラインを強行いたしますと日本がますます弱つて行くだろう。今手を打つよりはもう少し状況を見て、日本側の国内的な弱みが出て来た際に又話をするということにしたほうが、客観的に有利であると判断したと思われるのであります。そういう判断に立ちますと、今回の漁業問題ということにつきましても、今後これだけを切り離して話をするということは、なかなかむずかしい状況ではないかと思われる次第であります。簡単でありますが。
  18. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 大体経過につきましては、お聞きした通りのようですが、私もこの問題に直接関係はありませんが、国内の輿論としては、このままには過ごされん。今日七十方なり八十万の朝鮮人が現在日本の国におつて日本の食糧事情の非常に悪い際に、これには相当保護を与えておる面もあるし、食糧問題には非常にいろいろの事情で蚕食している状態でもあり、これを早く送還しろといつたような声もあるのであります。今度の会談において朝鮮人の所遇問題、或いは送還問題は日本はどういうふうな考えを提示しているのでありましようか。その点御説明願いたいと思います。
  19. 竹内春海

    説明員竹内春海君) 根本的な方針といたしましては、善良なる韓国の在日朝鮮人につきましては、これは正当なる取扱をする。殊に朝鮮日本との特殊関係と言いまして、一般の外国人よりは若干大幅な特権を認めるという趣旨のものであります。併し同時に国内における治安をみだすとか、その他日本政府の財政的な負担になるということにつきましては、これを原則として韓国に送還するという建前で進んでおつたのであります。
  20. 松浦清一

    松浦清一君 ちよつと伺いたいのですが、非常に日韓会談の問題になつた財産請求権の問題に関連して来るのですが、今朝鮮における日本人の財産というのは、日本の評価でどれだけになつているんですか。それから又朝鮮人が日本に持つている財産の評価はどのくらいになつているか。これは若し北鮮、南鮮分けてわかつておればお聞きしたいと思います。それから正確に言つて日本にいる朝鮮人の数は幾らになつているか。北と南に分けてどのくらいになつているか。
  21. 竹内春海

    説明員竹内春海君) 財産の問題は、これは正確な数字が実はございませんが、韓国の日本に対する請求権の対象として一応考えられておりまするのは、終戦時の価格におきまして約百億円ということと……。
  22. 松浦清一

    松浦清一君 これは南北両方ですか。北か南かわからんのですか。現在の韓国、南のほうですか。
  23. 竹内春海

    説明員竹内春海君) 南のほうです。それから我が方の韓国に対します請求権、これは私有の財産だけでありますが、南鮮、それも又今度の戦乱によります破壊の度というものを考慮に入れまして、一応推算いたしましたのが、終戦時の価格におきまして百二十から四十億という大まかな数字になつております。実はこれは大蔵省のほうで細かい申請を皆さんに出して、関係者のほうに出してもらつているようでありますが、その申請も私の承知いたしますところではまだ四〇%ぐらいしか出ておらないという状況でございまして、正確な数字は把握し得ないということを御承知願いたいと思います。それから在日朝鮮人につきましては、現在外国人登録というものがございまして、これに基いて登録いたしました朝鮮人、これが約五十四万おります。そのほか未登録の者、これは外務省或いは法務省の入国管理局の統計によつて相当の食い違いがございますけれども、五万から十五万ということが言われております。従いまして大ざつぱに言いますると、在日朝鮮人は六十万前後ということになろうかと思います。で、そのうち登録いたしました五十四万というものの北鮮系並びに南鮮系というのは、これ又正確ではございませんが、約登録数の八〇%が北鮮系ということになつております。
  24. 松浦清一

    松浦清一君 朝鮮にある日本人の財産は、今の御説明で大体私有財産だけで百二十億円で、これが大体四〇%くらいだと推定されるという御答弁ですが、そのほかに日本の国家の財産ですね、そういうものはわかつているのですか。これは請求権問題の対象にはなつていないのですか。
  25. 竹内春海

    説明員竹内春海君) 先ほど申上げましたのは、四〇%と申上げましたのは、大蔵省に財産を朝鮮に自分が持つておるということを申出た人が関係者の約四〇%と思われるということでありまして、正確なところははつきりしないわけであります。百二十億乃至四十億というのは、それとは別にこちらのほうで計算いたしました大まかな数字であります。それから国有並びに公有財産の価格につきまして、私現在詳細な数字を持つておりませんので……。
  26. 松浦清一

    松浦清一君 そうすると、財産請求権の問題で韓国側と折衝をしたという内容、それは例えばこういうことですか。日本にある朝鮮人の財産を百億と踏んで、朝鮮にある日本の財産は百二十億乃至百四十億と踏んで、それを相互交換をしようという交渉の内容なんですか。
  27. 竹内春海

    説明員竹内春海君) 交渉はそこまでまだ具体的に進んでおりませんで、韓国側は、日本の韓国に対する財産請求権というのは平和条約の第四条b項ですでに全くなくなつておる、従つて韓国だけが日本に対して請求権を持つておるという主張をしておるわけであります。この韓国の請求権の主なる内容は、例の閉鎖機関といいますか、元の朝鮮銀行その他殖産銀行その他のもの、それから又終戦時に朝鮮に流通しておりましたところの日銀券、これは当時朝鮮を占領しました米軍が通貨を改めるために集めて焼き捨てたものでありますが、そういうものが主たる内容であります。我が方としましては、国際法上私有財産というものは尊重される原則になつておる、従つて平和条約の第四条b項といえども日本の私有財産については請求権があることを認めておるものと解釈する、そういう解釈で行つたわけであります。私ども考えておりましたのは、それをお互いに相殺し得る、その金額から申しますると日本側が損になるわけでありまするが、そういう案につきまして、大蔵省と連絡をとつてつたわけであります。
  28. 松浦清一

    松浦清一君 そうしますと、この財産請求権の問題については、決裂するまでの交渉経過は、今御説明があつたように、日本における朝鮮人の財産については請求の権利があると向う主張するのに対して、こちらはその請求権があると言つたのですか、ないと言つたのですか。
  29. 竹内春海

    説明員竹内春海君) こちらは特にそれには触れておりませんけれど心、日本側朝鮮に対する請求権があるということを主張したわけであります。
  30. 松浦清一

    松浦清一君 そうすると両方が、日本日本朝鮮における日本人の財産を請求する権利があると言い、それから韓国は韓国で日本におけるところの財産は請求する権利があるということを両方主張し合つて、然らばそれをどういうふうに処理するかという具体的問題に入る前に決裂した、こういうわけですか。
  31. 竹内春海

    説明員竹内春海君) その通りであります。
  32. 松浦清一

    松浦清一君 それから日本にある韓国人の財産という心のは、私有財産は今のお言葉では含めないように聞いておつたのですが、どうですか。
  33. 竹内春海

    説明員竹内春海君) 只今のあれは、韓国の日本に対する請求権の中に私有財産があるかという意味ですか。
  34. 松浦清一

    松浦清一君 ええ。
  35. 竹内春海

    説明員竹内春海君) これは含まれております。例えば元日本の陸海軍に従軍いたしました韓国人の給与のうち未払いのものがある、そういうものが含まれております。そのほか現に終戦前から日本におります韓国人の日本におきまするところの財産、これは差当つて交渉の対象になつておりません。
  36. 松浦清一

    松浦清一君 それからこれは財産の請求権の問題、漁業問題の内容を伺いましたが、船舶何とかという問題がありましたですね。あれは正確に言うとどういうことで、その内容はどういうことなんですか。
  37. 竹内春海

    説明員竹内春海君) これはやはり請求権の問題の一部になるわけでありまするが、詳しく申しますると、米軍が終戦後朝鮮に入りまして九月の二十五日に軍命令を出しまして、一九四八年の八月九日南鮮にありますところのすべての日本の財産、これの移転を禁止するという軍命令を出したのであります。そういたしますと、すべての財産ということになりますると、当時たまたま朝鮮水域にありましたところの日本の船舶というものも入るわけであります。その年の十二月の六日になりまして軍令第三十三号というものを更に出しまして、この朝鮮にありますところの日本の財産の管理並びに所有権をすべて米軍に移すという軍命令を出したのであります。その後朝鮮が独立いたします際に、アメリカと韓国との間に協定ができまして、その米軍が保管し且つ所有権を移転せしめた日本の財産というものはすべて韓国に与えるということの協定ができております。平和条約第四条と言いますものは、その米軍の出しました軍令第三十三号というものの効力日本が認めるということになつておるわけであります。それからもう一つ、その前に、総司令部当時に、総司令部の覚書が日本政府に対して発せられまして、朝鮮に籍を置いた日本の船、これを朝鮮に返せということの指令がしてあるわけであります。従いまして船舶の問題と言いますものは、その総司令部の覚書にあります朝鮮置籍船と呼んでおりますが、この朝鮮置籍船の問題と、それから終戦当時韓国の水域にありましたところの日本の船、これは対象に入つておるわけであります。前者の朝鮮置籍船につきましては、これは占領終了約半年前に出たものでありまするが、日本政府としては、これを講和発効前までに完全には履行しておらなかつたのであります。そうして占領が終つた現在におきましては、その総司令部の覚書は効力がないというのが日本側の解釈であります。それから終戦の年の八月九日に朝鮮水城にありました日本の船舶につきましては、先ほどの財産請求権全般の問題と関連いたしまして、これについても日本は請求権はあるのだという建前であります。併しながら韓国側の海運振興という大きな政治的な見地から、日本政府として若干の船舶を韓国政府に贈与してもよろしい。それは韓国政府の言うように、総司令部の覚書或いは米軍の出しました軍令に基いてやるのではなしに、そういうものとは全然関係なく、或る程度の船をやることを考えてもいい。併しその場合、韓国が現に抑留しておる日本の船舶というものは全部返してもらわなければならないという趣旨の覚書であります。
  38. 松浦清一

    松浦清一君 十二月八日現在の朝鮮船籍の船の隻数、トン数、それから朝鮮に在泊しておつた日本の船の隻数、トン数、わかつておりますか。
  39. 竹内春海

    説明員竹内春海君) ちよつと速記をとめて……。
  40. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止
  41. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 速記を始めて下さい。
  42. 竹内春海

    説明員竹内春海君) ちよつと御報告申したいことがありますが、現在韓国に抑留されておりまする我が方の乗組員につきましては、これは人道上の問題から、日韓両国間の李ラインに関する紛争とは別個に、これに対して衣料の差入その他を行い、且つ必要な連絡を、船員の安否を確めるその他必要な措置を講ずるために、日本政府の職員二、三名並びに民間関係代表者数名というものを政府の公船、これは当時水産庁の御了解を得まして、水産庁の船を予定いたしておつたのでありますが、それを派遣したいということを、日韓会談の始まりました当時の十月六日に申入れてあつたのであります。それに対しまして今まで返事がありませんでしたが、私こちらへ参ります直前に、韓国代表から正式の文書を以て回答して参つたのでありまして、衣料その他の差入については、韓国政府としては異議はない。従つてこれに対して事務的な打合せをするために直ちに話をしたいという文書を回答いたして参りました。政府職員並びに民間関係者の派遣については、何ら文書の中には書いてございませんが、口頭の説明によりますると、これは反対という意向のようであります。細部の点につきましては、水産庁並びに民間の関係の方と打合せをいたしまして、早速韓国代表と折衝をいたしたいと思つております。御報告申上げます。
  43. 森崎隆

    委員長森崎隆君) ほかに御質疑ございませんね。  それでは今日はこれを以て委員会を閉会いたします。    午後零時十六分散会