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1953-09-12 第16回国会 参議院 水産委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年九月十二日(土曜日)    午前十時四十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     森崎  隆君    理事            秋山俊一郎君            千田  正君    委員            青山 正一君            野田 俊作君            森 八三一君            松浦 清一君            菊田 七平君   事務局側    常任委員会専門    員       岡  尊信君    常任委員会専門    員       林  達磨君   説明員    外務省参事官    (外務大臣官房    審議室付)   島  重信君    大蔵省主計局主    計官      柏木 雄介君    水産庁長官   清井  正君    水産庁漁政部漁   業調整第一課長  浜田  正君    運輸省船員局労    働基準課長   亀山 信郎君    運輸省港湾局計    画課長     中道 峰夫君    海上保安庁長官 山口  伝君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○派遣議員報告水産政策に関する調査の件  (和歌山県下水害による大阪、兵  庫、徳島府県下水産被害救済の  件)  (日韓漁業問題に関する件)  (日濠漁業問題に関する件)  (香川県塩飽諸島牛島南方航路開設  に関する件)  (まき網漁業に関する件)  (船員法適用範囲に関する件)   —————————————
  2. 森崎隆

    委員長森崎隆君) それでは只今から委員会開会いたします。  今日は和歌山県下水害による大阪兵庫徳島府県下水産被害救済の件を議題にいたします。  この件につきまして、松浦委員から先般参られました状況を一応簡単に御報告頂きまして、それから質疑に入りたいと思います。
  3. 松浦清一

    松浦清一君 先ほど国会の命に従いまして青山委員と一緒に兵庫県、徳島県等の水産事情視察に参りましたのですが、簡単にその実情の御報告を申上げます。  我々三名は去る八月十六日から四日間に亙り兵庫徳島県下に出張、香住神戸淡路洲本徳島各地でそれぞれ関係業者の参集を求めて協議会を開き、いろいろ当面する問題について意見の交換を行い、併せて実地を視察したのでありますが、そのうち重要な問題三、四点について申上げますから、その他の詳細については報告書によつて御覧を願いたいと存じます。  先ず、香住会議中心議題となりましたのは、底曳漁船朝鮮水域出漁の問題でありました。その大要を申上げますと、兵庫徳島海区の過去一年間の地元漁獲高は五億六千万円で、そのうち底曳船九十大隻による漁獲高が四億円に上り、全体の七割八分を占めております。これを以て見ましても同地方漁業が如何に底曳に依存しておるかがわかるのでありますが、同地方の底びき漁船は、昭和八年から十六年まで春秋二回玄海灘から朝鮮東海岸に盛んに出漁していたもので、それが戦時中、島根県、山口沖合に閉じ込められることになり、更に多数の漁船が徴用され、或いは沈没するなど相当ひどい打撃を受けたのであります。ところが終戦後代船建造等漁業能力は戦前に匹敵する復興を見たのでありますが、漁場が狭いために資源はますます枯渇し、漁業経営はいよいよ不振に陥り、乗組員或いは加工業者従事者及びその家族等三万数千名がその日の生計にすら窮するようになつて参りました。ところがたまたま講和条約発効伴つてマツカーサー・ラインが撤廃せられ、昨年の九月から兵庫県、島根県、鳥取県の二十トン以上一艘曳漁船に対して北緯三十五度以北、北緯四十度までの韓国東海岸漁場出漁が許可され、兵庫県としては、昨年十一月から本年二月までに延五十四隻が韓国沖合出漁し、五十一万貫金額にして五千六百万円を得てどうにか生計を維持した有様で、これによつて内地沿岸漁場が或る程度緩和されたことも事実であります。併しその間韓国東海岸では、海上保安庁巡視船水産庁取締船保護を受けることにはなつておりましたが、事実は殆んどその効果はなく、韓国海軍威嚇射撃ギヤング的行為によつて空船のまま帰港したことも再三ならず発生いたしております。今次韓国側李承晩ライン外日本漁船を追放する旨の措置によつてこの問題は更に深刻度を増大しつつあることは申上げるまでもございません。  以上が大体徳島但馬海区の現状でありますが、これと同様な状態にあるのが島根鳥取、京都、福井、石川の各府県即ち日本海一府五県の中型機船底曳網漁業の実態でありまして、これらの切実な要望を要約いたしますと次の通りであります。  島根県から石川県に至る一府五県の中型底曳漁船は総数五百隻で、狭い内地沖合漁場に互いにひしめき合い、漁場は年々荒廃するばかりで、昨今では経営不振の漁船が続出しておる。これをこのまま放任するにおいては、漁業者は共倒れとなり、漁村経済は破滅に陥ることが痛感されます。そこでこれが打開策一つとして、政府減船整理を計画し、他種漁業に転換して底曳漁業稼動隻数を減少しようとしておるが、日本海沿岸では、この漁業に匹敵する漁業が皆無で、残された手段としては、比較的稼動力の大きい三十トン以上の漁船約百隻を韓国東海岸漁場出漁させて、内地沖合漁場に余裕を与へ、資源維持培養を図ることが唯一の施策であると考えます。時あたかも朝鮮戦乱の休戦が成立を見、日韓漁業交渉も一段と進展の気運にあるので、これはその当時の現況でありますから、昨今の実情とは大分相違がありますが、この際島根県五隻、鳥取県三十隻、兵庫県六十九隻、石川県五隻計百九隻の中型機船底曳網漁船が来たる十一月の漁期から韓国東海岸漁場安全出漁ができるようにしてもらいたいというのであります。それについては、公海自由の原則を基本とする日韓漁業協定早期締結海上保安庁巡視船拡充強化による漁業安全保障を強く要望しておることは言うまでもありません。  以上のような極めて真剣な要望を聞いたのでありますが、この問題は言うまでもなく裏日本一府五県だけの問題ではなく、我が国の海洋漁業が当面する切迫した問題でありますので、我々としてはかねてから検討を加えて来た問題でありますが、更に一層万全の措置を講じなければならないことを痛感した次第であります。  次に和歌山県の大水害による流木被害対策でありますが、この問題は直ぐにも措置しなければならない切実な大問題であるだけに、神戸洲本徳島の各会議で、いずれも中心議題として取上げられ、漁民諸君から悲痛な訴えを聞いたのであります。又会議のほかに同様な立場にある大阪府からも神戸会議のあとで代表が陳情に見えられ、詳細実情を聴取いたしました。先ず我々の実感を申上げますと、国会開会中に陳情を受けた印象を以て現地に行つて見ると、その被害の深刻さに実は驚かされた次第であります。尤も漂流した材木即ち製材されたものはすでに地元民によつて引揚げられ、市町村長によつて保管されているもの、或いは和歌山県の引取船に引渡したものなど、一応の処理は終つておりましたが、どうにも処置のつかない、又金にもならない大きな根株沿岸一帯に押し寄せているには驚くのほかはありませんでした。ところが沿岸に押し寄せているのはまだいいほうで、この根株がたくさん海中に浮遊しておる、又海底に沈んでおる、これをどうするかが最も大きな問題でありました。つまりこのために漁業ができない、或いは漁船破損する、目に見えない所に大きな障害がひそんでおるのであります。従来の台風や洪水の被害は漁港、漁船漁具等の施設又は手段被害であつて漁場そのものには異常がないのが普通であるが、流木被害は、漁場価値の減少を来たしたことで、それだけ目に見えない大きな被害をこうむつておるわけであります。更にもう一つ困つたことは、この障害物を取除かない限り、半永久的に漁船漁具が損傷をこうむることでありまして、一平方キロに沈木二百個、換算約四十石以上あれば一本釣以外の他の漁業はできないというのが実情であります。沿岸漁民が真剣に救済を求めておるのも無理からんことだと考えられます。  今、八月十五日現在の大阪兵庫徳島府県被害状況を見ますと、被害総額三億二千六百万円、うち大阪五千六百万円、兵庫二億三千二百万円、徳島三千七百万円でありまして、そのうち生産減推計二億六千六百万円、大阪四千四百万円、兵庫一億八千六百万円、徳島三千六百万円、漁船損害五六千十九隻、その金額二千四百万円、漁具被害三千四百万円等であります。又流木漂着量総量十五万五千石、大阪八千石、兵庫十一万五千石、徳島三万二千石で、これの未処理が約三分の一の五万九千石であります。油木推定総量は十万八千石、大阪八千石、兵庫七万石、徳島三万石であります。以上に対する掃海経費総額九千百万円、大阪千九百万円、兵庫六千万円、徳島千二百万円となつております。  これが大体の被害大要でありますが、これには現在処置しなければならない大きな問題が残されております。政府におきましては、これら流木処理について、沿岸一マイルから沖は航路掃海建前から海上保安庁において掃海処理することにし、一マイル以内は市町村において処理することにいたしております。ところが市町村においてこの莫大な経費負担する能力はありません。又建前としてかかる不測の損害を除去するには、一般災害復旧と同様相当国庫補助が出されることは当然と言わなければなりません。併しその国庫補助の前提となるものは、去る第十六国会制定されました昭和二十八年六月及び七月の大水害による災害地域内のたい積土砂排除に関する特別措置法第二条の「災害地域」に指定されなければならないことになつております。そこで地元としては、その指定を熱心に要望しておるのでありまして、その地域としては大阪府全沿岸海域兵庫尼ヶ崎市、西宮市、芦屋市、神戸市、明石市、洲本市、津名郡、三原郡及び飾磨郡家島町の沿岸海域徳島県は鳴門市、板野郡、那賀郡及び海部郡の沿岸海域を挙げ、三府県当局関係市町村長沿岸漁民挙げて極力その実現要望いたしておるのであります。我々といたしましては、その被害の深刻なこと、地元市町村負担能力の貧弱なこと、更にかような災害復旧に対しては当然国庫において相当負担をするのが従来の例に見まして当然である等の見地から、政令による災害地域指定は勿論、必要経費は早急に支出すベきことを本委員会としても推進すべきであるという結論に達した次第であります。  次に、各地で強く要望されたのは、漁業災害補償法制定であります。この問題は水産界長年の懸案でありまして、できるだけ早く実現しなければならないのでありますが、近年これが強く叫ばれるようになりましたのは、漁業経営が不振であることに基くのと、一方農業に対しては、あらゆる面において国庫補助又は助成がなされ、同じ国民食糧の一端を担う立場にありながら、余りにも不公平であるという漁民の自覚が然らしめたものと考えられます。本法の制定水産委員会の重大な任務の一つとして早期実現を期さなければならないと考えます。  次に、将来大きな問題に発展する虞れのある問題に、小型底曳減船整理があります。それはなぜかと言えば、本年度までの減船整理は、一応大型のものを整理し、而も希望に基いて行なつたのでありますが、来年度からは大体同じ型のもので而も希望者のないものを押し付けなければならないということであります。整理船を誰が決定するか、抽籤によるか、或いは抽籤でも承服しないものを誰が強制するか、そこらの点はなかなかむずかしい問題で、関係当局ではかなり頭痛に病んでおる模様であるが、これは将来大きな問題として浮び上つて来ると予想されるので、我々といたしましても今から検討の必要があろうかと存じます。  以上大きな問題だけを取上げて御報告申上げましたが、その他の詳細は、この報告書会議録等を添付いたしておりますから御覧を願いたいと存じます。  以上でありますが、私ども青山委員林専門員と君名で調査をいたしました。特に但馬海区の現況等につきましては、一昨日来この委員会検討いたしておりまする朝鮮李承晩ライン内の日本船追放に関する問題等も起つておりますので、現況には非常に大きな相違がございます。併しその当時の現況においてこれだけ切実な要望があるのでありますから、今日の状況においては、更にその要望の深刻の度合いは増加しておる、増大しておる、このように御理解を願いたいと存じます。  附加えて申しますが、兵庫県、徳島視察の途次、青山委員大阪流木被害を是非見てもらいたい、こういう地元の要請がありまして、一日を割きまして大阪現状視察して来られたはずでございますから、私が御報告申上げました以外に追加して御報告の点があれば、御報告を願いたいと存じます。
  4. 青山正一

    青山正一君 只今松浦先生からおつしやつたように、私自身淡路からこの班に分れまして大阪方面現地、例えば堺とか和泉、佐野の現地視察して参つたようなわけであります。大阪は大体兵庫或いは徳島と同様でありますが、ただ特に附加えておきたいことは、流木じやなしに枕木のために漁網破損とか或いはスクリユーの破損が、三府県下を通じまして大体一億円以上になつておるのであります。こういつた補償を一体どういうふうにするか。その点を特に水産庁のほうで御検討願つて、そういう被害を受けたところに十分の弁償をして頂きたい、何か考えて頂きたいということを強く希望いたすものであります。以上附加えておきます。
  5. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 丁度今日は大蔵省柏木主計官も参つておりますので、皆さんから何か御要望なり御質問があれば一つお願いいたします。
  6. 松浦清一

    松浦清一君 要望と申上げますよりも、今の災害地地域指定の問題につきまして、大蔵省予算上の関係相当政令による地域指定について干渉しておるというような話を聞くのですが、そういう経過について、大蔵省のとつておられまする方針なりお考え一つ先に承わつておきたいと思います。
  7. 清井正

    説明員清井正君) 只今松浦委員よりお話があり、更に青山委員より追加してお話がありました中で、特に三府県大阪兵庫徳島和歌山被害による流木枕木等被害に対する措置についての御質問でございましたが、この点につきましては、御報告の中にもありました通り、去る国会昭和二十八年六月及び七月の大水害による災害地域内のたい積土砂排除に関する特別措置法というものが制定されまして、それに基きまして、関係地方公共団体が実施いたしました右流沈木排除に要した費用につきましては、国庫全額負担をするということがきまつておるわけであります。そこで私どもといたしましても又かねてから関係地方方々、県庁の幹部の方々並びに関係業者方々から数回、数十回に亙つて非常な御熱心な御陳情を受けております。又実情等につきましても詳しく実は伺つておるのであります。又関係省として一部調査を進めておる所もあるのであります。私といたしましても、水産立場から申上げれば極めてこれは重要なことであります。単にこれは只今お話がありました通り関係海域におきまする流沈木排除費用ということによる直接の負担額のほかに、更に当該漁場が使用できないということによりますところの漁業損害というものが相当金額に上るわけであります。なお又流沈木によります漁網漁船損害というものも又相当の額に上るということも只今お話にありました通りでありまして、私どもといたしましては、この点につきましては何とかして関係漁業者並びに地方公共団体の損失に対しまして、できるだけのことをいたしたいと考えておるのであります。で、只今のところ予算等措置につきましては、主として農林省内におきましていろいろ目下数字等につきまして検討をいたしておる最中でございまして、なお又これが済みますれば大蔵省とも折衝を開始するという段階になつておるのであります。  なおいわゆる地域指定等につきましても、私どもといたしましては、認定基準を作りまして、その基準に基きまして指定された地域において、又指定された程度被害というもめにつきまして、私どもといたしましては実情考えまして、適当の線を引きましてやつて参りたいというふうに実は考えておるのであります。又大蔵省との話合いがこの点につきましてもまだついていないのであります。これは申すまでもなく金額等関係もございまするし、或いは又現地認定等の問題もござい事ので、なかなかその線を引くという問題につきましては、いろいろ問題もあろうかと思います。私どもといたしましてはできるだけ漁業者災害最小限度にとどむるようにという趣旨の下に、又一方国家全体の財政関係等も見てやつて参らなければならんのであります。その点につきましても、なお官房とも十分に相談いたし、又大蔵省とも相談いたしまして速かにこの予算化につきまして実現いたしたいと考えております。
  8. 松浦清一

    松浦清一君 農林省側の今までの経過はわかりましたが、そうするとどの地域指定するかということ、それから沈木等の処理について国がどのように補助をするかということについて数字的に検討中であつて、こことこことを地域指定をやるべきだというようなことについての具体的折衝農林省としてはまだやつていないわけですか。
  9. 清井正

    説明員清井正君) 正式に折衝と申しますか、個々にいろいろの話合いはいたしております。併しまとまつた話合といたしましては、全般災害対策としていたすのでありまして、その一部々々のものにつきましては、個々の場合につきましては御相談を申上げておりますけれども、まだ災害全体としての相談はいたしておらないのであります。
  10. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 大蔵省柏木主計官が参つておりますが、拍木君今衆議院の水害委員会のほうで出席を要求されておりますので、このあたりで……。
  11. 松浦清一

    松浦清一君 大蔵省にも聞きます。そこで大蔵省側では、予算関係にからんで関係各省からこういう災害についてこういう地域指定すべきであるというその方針が決定された場合に、予算面からそれに対して、地域指定に対して干渉するとか制約を加えるというようなことはございますかございませんか、承わつておきたい。
  12. 柏木雄介

    説明員柏木雄介君) 各省より全般水害等被害につきましていろいろ御報告なりお話を聞いております。私のほうでも大体今年度の災害がどのくらいに上るか、その国庫負担が大体どのくらいになるか、いろいろ推算をいたしております。その場合特別立法等関係でどのくらい国庫負担が殖えるかというような一応の推算も若干いたしております。併し何分具体的にどのくらいの金額になるか判明いたしておりませんので、私のほうではまだ政令指定基準をどういうふうにすべきか、私のほうの意見もまとまつていない状況でございます。ただ各省からそれじや基準ができたらそれをそのまま呑んでくれと言われても、それはやはり財政全般状況、或いは他の災害等との均衡等考えまして、できるだけのことをいたしたいと思いますが、財政限度もあろうかというふうに考えるのであります。
  13. 松浦清一

    松浦清一君 国の財政にはやはり限界というものがあることはこれは私も了承できるのですが、問題は今度の災害によつてこうむつ損害全体に対して少いながらも分ち与えるという方針で臨まれるか、地域指定に当つては或る程度地域の限定を図るというように操作するかということが問題なんです。国の予算財政というものに、例えば百億の予算をこの水害対策に出せる、こういう見通しが立つたときに、それを災害地全体に少いけれども配分をして行くという考え方で臨むか、それとも重点的に非常に大きかつた災害地にそれを持つて行くか、あなたのほうから軽微と考えられる地域に持つて行くというような建前で臨むかという基本的な態度について問題があると思う。これは質問ですが、僕の考えを言わせると、やはり災害の大小にかかわらず、この水害によつてこうむつ損害、こういうものに対しては国の財政の許す最大限において均霑してそれを配分すべきだという建前で臨むべきだというふうに考えるのですが、大蔵省立場は如何ですか。
  14. 柏木雄介

    説明員柏木雄介君) 今の御質問趣旨を或いは間違つて了解しておるかも知れませんが、特別立法適用は成るべく広く適用し、成るべく多くの地域に均霑するようにしたほうがよかろうという御趣意かと思いますが、それにつきましては、今回の災害が特に異常にひどく影響しました地域につきまして、特に政府助成等を厚くしようというのが特別立法趣旨かと存じます。そういうふうに理解しております。ですから今回の災害地域のうちで被害の多かつた地域政府保護が余計参りまして、被害の軽微の地域は従来の法律で行くというふうに考えております。
  15. 松浦清一

    松浦清一君 これが例えば九州の五県とか和歌山県とかいう殆んど全県下に亙つた災害というものは誰が考えて見てもこれは大きな災害であつたということを印象付けられるのだ。ところが実際問題として、今言つた兵庫県なり大阪なり徳島県の沿岸の特定の区域においては、やはり和歌山県なり九州五県なりの全県下に亙る水害と同じように、被害区域は狭いけれども、そういう点を勘案してやらないと、その分だけ除外されるということになると、範囲は狭いが被害をこうむつた人々の損害というものが全県下に亙つたこの損害に比べて決して少くない、こういう問題が起つて来るわけです。その点を一つ勘案すべきだと、こう思うのです。
  16. 柏木雄介

    説明員柏木雄介君) 只今先生からお話がありました通り考えております。県ごとに、県の被害が大きかつたからその県内すべてにつきまして特別立法適用を必ずしも考えるべきではなくて、被害の特に著しかつた部分を捉えて、そこに適用する。逆に県全体としての被害としては必ずしも大きくなくても、当該団体等におきまして特に著しい場合にはそこに適用する、そういうふうに個々団体負担能力等を考慮して高率適用等特別制度考えるべきだ、そういうふうに考えております。
  17. 松浦清一

    松浦清一君 そうすると最後にちよつと伺つておきたいのですが、例えば今私が御報告申上げたような兵庫県の沿岸、それから大阪徳島県の部分的な沿岸等における沈木被害というものは、結局橋が落ちて道が通れないとか、道が壊れて車が通れないとかいう被害に等しい、このまま放つておけば漁業ができない、こういう現況にあるのでありますから、水産庁あたりがその現況を肯定して是非とも地域指定をやらなければいかんという申入があつた場合に、担当官として大蔵省のあなたはどう取扱うおつもりですか。
  18. 柏木雄介

    説明員柏木雄介君) まだ水産庁から何も具体的なお話を聞いておりませんので判断しかねますが、実情をよく聞きまして善処いたしたいと思つております。
  19. 青山正一

    青山正一君 そこに海上保安庁長官も来ておられるが、流木とか沈木に対して現在どういう行動をやつておるか、又大蔵省にどういう予算をもらつて、どういうふうにしてやつておるか、その状態一つお聞きしたいと思います。
  20. 山口伝

    説明員山口伝君) 只今質問がありましたので、海上保安庁関係につきまして御説明申上げたいと思います。先ず流木の概況について申上げたいと思います。  和歌山水害発生当時、即ち七月中旬から八月上旬にかけまして厖大な量の木材、雑株、到壊家屋等が流出し、和泉灘、播磨灘、紀伊水道一帯水路を閉塞して、その量は正確には判明いたしませんが、約九十万石程度に及ぶと推定されたのであります。八月上旬頃はまだ長大な帯状の流木群をなして水路の妨害をしておりましたが、その後、後ほど申上げますように、処理作業及び第六、第七号台風の影響もありまして、太平洋方面にも大量の木材流木が移動いたしました。又陸岸に漂着したり、時間の経過によりまして沈下をした木材の量が急増いたしました等によりまして、八月下旬には大きくても百石程度の群として分散している状態なつたのであります。現在では数十本程度のまばらな群をなしているに過ぎない状況であります。  次に、海上保安庁として行いました対策について御説明申上げますが、災害発生時、当庁といたしましては、担当管区であります神戸の第五管区海上保安本部をして、即時巡視船により実情調査せしめ、応急措置として千百二十石の除去作業も行いました。又和歌山県流材整理組合及び大阪兵庫木材組合等とも話合いをしまして、でき得る限り多量の除去の処理に当らせて参りましたのであります。木材所有者の判明いたしておりますものにつきましては、この流材整理組合が現在までに約十五万石の除去を行なつております。その後流木災害の規模の大なるに鑑みまして、又地方公共団体、船主或いは漁業団体等からの強い要請もありまして、流材、沈木の漂流物を早急に除去する必要を認めましたので、西日本災害総合対策本部に意見を具申いたしまして、方針の確立を要請して、御承知のように八月十日次官会議了解によりまして、和歌山水害による流木、これは沈木を含むわけであります、等の処理要領の決定を見たのであります。この処理要領に基きまして、海上保安庁の分担にかかります流木処理に対しまして、予備費より九百四十三万円の支出の決定をすでに見まして、九月三日より本格的な作業を実施いたしまして、現在までに和泉灘本航路の航路障害物の除去をほぼ完了いたしましたところであります。航路障害となる沈木処理につきましては、保安庁の海上警備隊に出動を要請いたしました。即ち向うの従来のいわゆる掃海隊であります。要請し、水深十メートルまでの沈木の存在の確認作業を依頼しておりますが、現在までに航路の障害となるものは皆無であるとの報告を得ております。併し現在漁場それ自体の障害となつておりまする沈木につきましては、只今申上げました次官会議了解の処理要領によれば、当庁の分担には一応なつておりませんのでありますが、流木につきましては、でき得る限り現地要望に副いまして、航路の障害に準じて処理して参つておるのであります。この点は次官会議処理要領、もう一つは、只今お話がございましたこのたびの災害に基く特別措置法、これの施行と相関連して、私どもとしては流木処理に対して、できる限りそれを沈木と認められるものについて整理をやつておる程度でございます。
  21. 青山正一

    青山正一君 十メートルまでの沈木処理するというわけなんですが、十メートル以下の漁業などに障りのある沈木には全然手を付けていないわけなんですかどうなんですか。
  22. 山口伝

    説明員山口伝君) 私どものほうの分担の中で、更にそれを実施作業を依頼したり、警備隊のほうの作業は本航路につきまして掃海をしたわけでありまして、これは作業の方法が十メートルぐらいまでの所を狙つて網で引張つて、それでそこでその十メートルまでにあるものの所在を確めて、それを付いて行きました作業船が引揚げるという形でございまして、海底に沈んでおるそれ以下のものにつきましては、これまでのところ依頼しておりません。
  23. 森崎隆

    委員長森崎隆君) まあいろいろこの点について御意見なり御質疑がありましようが、柏木主計官もお急ぎのようであります。あちらに要求されております。今のお話のように大阪兵庫和歌山府県から非常に具体的な資料を出して強い要請もございますので、予算編成上の問題につきましては、特に検討されて強くこの点善処せられんことを要望いたします。
  24. 松浦清一

    松浦清一君 三分間で……、問題は簡単なんですが、最初に申上げましたように、地域指定には一つ努力を願いたい、こういうことを頼んでおきたい。もう一つは、海上保安庁が今やつておられる以外の漁場における沈木処理、この問題はもうすでに災害が起つて二ヵ月経つておるわけなんです。それが放任されているためにその漁場においては、漁船が操業ができない、こういう実情にあるまま放任されておる状況なんです。これは一体誰が誰の費用でどうして片付けるのですか、誰でもいいからそれを一つ明示して頂きたいのです。
  25. 清井正

    説明員清井正君) 只今お話でございますが、私もその点は十分にお話を承わつてつて、浮流沈木が堆積いたして、そのために海上で漁業ができないということによりまして、関係方々が非常にお困りになつておるということは十分承知しておるが、その予算措置等につきましては、只今のところ浮流沈木の処置等につきまして補助予算を計画いたしておるのであります。その他の問題につきましては、或いは漁業者損害等につきましては、これは直接の予算措置によらず、その他のいろいろの漁業政策全般の面からできるだけ速かに予算措置をとつて漁業者損害を将来においてできるだけ回復、或いはこれを除去乃至減少するような方針をとつて参らなければならないと思います。
  26. 松浦清一

    松浦清一君 それで簡単に縄でも入れて引張れるくらいのものは、漁民自身が自分のことですからやつておるでしようけれども、機動力がなければ引揚げられないような沈木があるのです。そういうものはどつかから費用を出すからこういうふうにしてやれと言わなければ片付かない問題なんです。その費用の捻出というか、支出の方法等について、水産庁それから大蔵省は一体どういうふうに措置をしておられるのですか。
  27. 清井正

    説明員清井正君) 只今申上げたのでありますが、流木なり沈木なりのそのものを除去する費用は、これは予算に計上いたしまして、そうして国が全額地方公共団体費用に対して補助したい、こういうことで私のほうは事務的には数字は計上いたしてあるのでございます。それは只今お話がありました通り当該漁場内にありますところの流沈木の除去をするための費用であります。そのためには、或いは人力を以て除去し得るものもありますし、或いは船を仕立てまして、そうして海底に沈んでおります物を引揚げまして、これを海岸まで運びまして、措置する費用もございます。或いは特に必要な場合は潜水夫等を入れまして、海底に沈んでおります漁業障害物を除去するという直接の流沈木処理をするという費用につきまして、私のほうで只今補助予算を計上いたしまして、大蔵省折衝いたしたいと思つております。
  28. 松浦清一

    松浦清一君 その金を出すことはさまつたのですか。漁場内の沈木については、その金を出すことがきまつたのですか。
  29. 清井正

    説明員清井正君) 私どもといたしましては、被害のありました点につきまして処置いたしたいと思つております。水産庁といたしましては、数字を計上しておるのでありますが、まだこれが農林省としての全体的な意思決定がありませんので、農林省全体としての意思決定がありましたものを大蔵省折衝いたしまして最後決定をする、こういう段階にあるのであります。私どもとしては、できるだけ漁業者被害を少くするという意味において、只今申上げました点の費用につきまして補助いたしたい、こういうふうに考えております。
  30. 松浦清一

    松浦清一君 だから早くやつてやらないと、二ヶ月もたつておるのですから、省の意見をまとめられて大蔵省のほうへ正式に持つて行かれてやつてもらいたいのです。大蔵省のほうもそういう要請があつたら早く手を打つてつて下さい。
  31. 青山正一

    青山正一君 どうなんです。海上保安庁でもちよつと限られた航路だけの流木とか沈木の始末しかできない。その費用でさえ九百万円かかつておる、僅かの限られた航路だけで。そうなると、漁業自体は、この前の福井或いは石川、富山あたり被害のときに三年間、底曳も地曳も何もできなかつたというような状態を、今度は大阪湾で又その状態を繰返さなければならんというわけなんですが、以西底曳あたりの余つておる船を持つて来て、少し費用を出して掃海作業をやるというような、何か水産庁にそういうふうな計画でもやられるんですかどうですか。そうしないことには、大阪湾における漁業状態というものは全然駄目だろうと思いますが、これはどういうふうな考え方で進んでおりますか、その点について。
  32. 清井正

    説明員清井正君) 誠にその点は私ども地元の業者のかたには長い間非常な迷惑をかけてお気の毒だと思つておるのであります。そこでこれは早くいずれ予算化いたしたいと思つて、事務的に相当急がして一応実は試案はできておるのでありますが、残念ながら成案となつていないのであります。この点は只今いろいろお話を承わりまして、速かに成案化するように今後努力いたしたいと思います。ただ問題の、非常にこの沈木等によりまして漁業上の障害を受けたものにつきましての措置は、これは直接の補助予算によらずに、その他の漁業全般の政策といたしまして、いろいろ漁業者に対しまして処置をいたして行かなければならん、こういうふうに実は考えておるのであります。なおこの流沈木を除去するために、或いは底曳船を使つたらどうかというようなお話でございましたが、その点は十分御意見を承わつておきます。   —————————————
  33. 森崎隆

    委員長森崎隆君) ではこの問題は善処して頂くことにいたしまして、一応この問題はこれでおきまして、海上保安庁のほうから昨日以後の朝鮮水域出漁に関する状況を御報告を頂きたいと思います。
  34. 山口伝

    説明員山口伝君) 昨日の午前八時から今朝八時までの丸一日間の情報を取りまとめて申上げたいと思います。  先ず巡視船の行動状況でございますが、現在引続き五隻行動中であります、「くさがき」「へくら」「あまくさ」「きくち」「のしろ」、以上四百五十トン型三隻と二百七十トン型二隻でございます。一部今後交代を、第七管区本部とも連絡もいたしまして交代を考えておりますが、この五隻は引続き置いておくつもりであります。なおこれらは漁業監視船の三隻と現地において協力をいたしております。「あまくさ」が昨日午後二時三十分から約二時間、先方の旗艦である七〇五号と接触して会談をやつておりますが、そのときの様子は、先ず李承晩ライン内の操業漁船は飽くまで退去せしめる、抵抗しない限り抑留はしない、巡視船、監視船等に対しましては自由行動を認める、そういう話でありまして、これは従来から申上げておる通りであります。当方からはこれ又同じでありますが、飽くまで連行することがないように申入れておるのでございます。  それから次に漁船出漁状況でございますが、昨日二十二時の報告に上りますると、二百四十三区、これは李承晩ライン内でありますが、二隻程度が認められる。それから二百二十四区、これは李承晩ラインの外側でありますが、ほんのすぐすれすれの所であります、ここらに約百隻程度が操業中であります。それから長崎の五島方面からの情報によりますと、約五十隻が出漁したという情報がありますが、詳しいことはわかりません。  それから次に現地における事件発生の模様でありますが、今のところ拿捕はまだございません。十一日、即ち昨日の八時から本朝の八時までの間に行われました事故は、臨検が七隻報告されております。これは昨日申上げましたように、第一次的には臨検して再び李承晩ライン内に入らないというような誓約書を取つて一応放しておるわけであります。これはこの次に又入つて参りましたときに、二度目だというので、有無を言わさず連行するという建前のように聞いております。併し、なおそのほかに相当臨検されておるのじやないかと思います。これは以上判明しておるものだけであります。こういうことによりまして九月に入りましてからの累計は、今朝の八時までの拿捕が三件、うち一件だけはちよつとはつきりしないのでありますが、二件は御承知のように、すでに向うに釈放方その他賠償等の申入をしておることは御承知の通りであります。それから臨検、立退命令を受けたものは、報告のあつたものを累計いたしますと、五十四隻に達しております。なお該海域には韓国の艦艇は依然として十数隻遊弋を続けておりますし、引続き日本漁船に対して退去措置を講じており、抵抗しない限り不法なことはしないと言つておりますが、事実上同海域内における操業は不可能な状態に相成つております。  なお、各地出漁状況についてそれぞれ入電がございますが、詳細よくわからないのでございますが、御参考までに拾い読みいたしますと、佐賀県唐津港におきましては、唐津を基地にさば釣漁船が十五隻でありますが、十日の日に唐津に入港したものが、唐津の船が一隻、神奈川が二隻、千葉の船が二隻、入港というのは帰つて来たわけであります。十一日、昨日帰つて来たのは、神奈川県が二隻、それ以外のものは大体まだ出ておるわけであります。それから佐世保を基地とするもので出漁中のものが二十隻、現在同港に入港中のものが三十隻、平戸で出漁中のものが四隻、生月が十二隻、福岡港が六隻、仙崎が二隻、福岡では滞留中のものが五十隻程度であります。  以上で大体今までの一日の間の情報の御報告を終ります。
  35. 青山正一

    青山正一君 水産庁長官にお聞きしたいのですが、拿捕されているうちの二隻というのは大体判明しておるわけなんですが、聞くところによりますと、徳島県で昨年度ですか、一昨年度において整備をした小型底曳のいわゆる沿岸漁業者によつて初めての出漁が拿捕された、こういう恰好になつておりますが、いま一隻も大体そういうふうな形のものが拿捕されたというようなことを聞いておりますが、問題は、李承晩ラインをどうするとか、こうするとかという問題に集中しておるわけなんですが、拿捕された船を返してもらうというような折衝を実際上進めているのですか、どうですか、どういうことなんですか。
  36. 清井正

    説明員清井正君) これは昨日もお答え申上げたのでありますが、先般の外務省からの金公使に対する抗議文の中にその点に触れまして、拿捕された船を乗組員と共に直ちに釈放いたせということを厳重に抗議をいたしておる次第であります。現在そのようになつております。
  37. 千田正

    ○千田正君 今朝の新聞によるというと、外務大臣は日韓漁業条約等に対する用意があるということを新聞に報道されておりますが、こういう問題は、少くとも国内的においては、水産庁農林省等においては承知しておかなければならない問題と思いますが、その点におきまして、水産庁長官は何らか外務省当局からそういう問題について交渉があつたかどうかという点について長官から伺いたいと思います。
  38. 清井正

    説明員清井正君) 昨日外務大臣も一部お話がありまして、私どもといたしましても、この事件が起つて以来、外務省当局と常に緊密な連絡をとつておるのであります。私も連日、一日数回に亙つて外務省に参りまして、いろいろ実は相談をいたしておるのであります。只今はつきり申上げるわけに行きませんけれども、いろいろの処置につきまして、目下外務省と緊密に連絡をとつております。   —————————————
  39. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 一応この問題は報告にとどめまして、昨日日濠関係の問題につきまして一応御報告を頂いたのでございますが、これについて質疑を今日いたしたいと思います。順次御発言を願います
  40. 千田正

    ○千田正君 日濠の問題は、前から非常に杞憂を以て、当委員会といたしましてはしばしば当局に対して質問しておつたのでありますが、かような事態が生じたということは誠に遺憾の極みであると私は思うのであります。そこで、昨日の外務当局からのお話によるというと、非常に食い違いがあつた結果がこうした結論に到達したようでありまするが、今後一体これを打開する方策としては、外務省としてはどういう方針を立てて行くのか、そういう点について現在考えられておられる点を一応承わつておきたいと思います。
  41. 島重信

    説明員(島重信君) お答え申上げます。交渉そのものを継続するかどうか、つまり漁業協定というものを作るかどうか、作る方向にこれからどういう努力をするかという点につきましては、昨日申上げました通り、その交渉は、日本といたしましては、依然として続けて行きたいという気持でずつとやつておつたのであります。今回の打切りも、濠洲側から打切りをしたために、一応交渉がそれで停止したという状況になつておる次第でありまして、協定を作るための交渉は、これはいつでも日本側といたしましては続けて行きたい、或いは再開したいということを考えております。そのことはすでに濠洲政府にもはつきり申入れてございます。  それから只今出ております船団、この船団が円満に操業を継続できるようにするための措置という点につきましては、これは実は濠洲側の措置が、只今のところは実はまだ一応措置をとる過程にあるという時期でありまして、現実にこういう措置をとつたというところまで行つておらないわけであります。従つて、どういう状況になるか、どういう事態が起るかということは、一応想像の域を出ませんわけでありますから、それぞれの事態に対してこういう措置をとりたいという考えを持つておりますけれども、こういう場合にはこうするのだということを今から申しますと、或る意味におきましては、こちらの考えが先に相手方に皆知られてしまうということになりまして、交渉をする場合に必ずしも有利でないというようにもなりますので、一応只今のところは、それぞれの事態に応じた措置考えておるということしかお答えできない点を御了承願いたいと思います。
  42. 千田正

    ○千田正君 それでは結局向うからの、濠洲側からの打切りという一方的な処置に対しては、日本側としてはそれを受諾したということではなしに、向うの打切りというものに対してはこちらは留保しておる、こういう状況でありますか。
  43. 島重信

    説明員(島重信君) 会議でございますから、相手方が出て来なければ、こちらが幾らやろうと言つてもできないわけでございます。従つて当事者の一方が打切りすると申しまして、やらないと言えば、こちらにいたしましても会議そのものは続行できないわけであります。日本側といたしましては、従つて留保しておるということよりも、再開する意思があるならばいつでも再開に応ずるという態度でいるわけでございます。
  44. 千田正

    ○千田正君 それではむしろこちらから再開を要求してもいいわけでありませんか。
  45. 島重信

    説明員(島重信君) 再開を要求することは勿論差支えないわけであります。併し、只今のところ、打切りを向うから言いまして、その後その交渉自体を継続するための事態というものは、全然変化しておらないわけでありますから、打切られてすぐに再開したいと申しましても、これはちよつとむずかしいのではないかと思います。
  46. 千田正

    ○千田正君 私の言おうとするところは、向うが一方的に打切る、会議であるから一方的にやめてもそれきりなんだという考えではなく、両者間の問題であるから、一方から打切りだと、こう言われて、ああそうかということじやなしに、我々も、再開する場合においては、こちらから再開を要求するだけの準備があるのだということは、一応こちらとしては十分それは主張できると、こういう建前におられるというわけでありますね。
  47. 島重信

    説明員(島重信君) 勿論仰せの通りでありまして、従つて適当な時期又きつかけがありますれば、こちらから再開を申入れるということも当然考えられるわけであります。
  48. 松浦清一

    松浦清一君 濠洲との漁業問題についての会談といいますか、交渉といいますかそれが打切られたということは、公式に文書か乃至は口頭を以て日本に対して通告があつたわけでございますか。
  49. 島重信

    説明員(島重信君) その点は、昨日申上げました通り、八月二十八日に本会議が開かれまして、その会議の席上で、先方の代表から、会議はこれを以て打切るということを申したわけであります。従つて会議といたしましては、その会議席上の先方の代表の言明によつて打切られたということになるわけであります。
  50. 松浦清一

    松浦清一君 昨日来の御報告、御説明を承わつておりますと、向うが会談を打切つたと、こう言いつ放しになつて、日本の立場からは、まだ問題の解決がされていないのだから、これを続行したいという意思表示をしたという説明が一つもなされていないのですが、黙つて引込んでおるわけですか、言葉は非常に悪いですけれども
  51. 島重信

    説明員(島重信君) その点は只今申上げました通り、日本側としましては、打切りを非常に遺憾と思う、つまり打切りによつて、この会議を決裂にしてしまうということは日本側の意思ではないわけでありますから、希望といたしましては、会議を続行したいわけであります。併し向うから打切りを言いましたそのときに、折返しまして、このままやろうではないかと言いましても、恐らく会議の続行ということはむつかしいと思うのであります。従つて只今のところ、日本側から申しましたことは、再開にはいつでも応ずる、日本側としては、このまま続行してもよろしいし、又折を改めてやりたいということならばいつでも応ずるということを申入れてあるわけであります。
  52. 松浦清一

    松浦清一君 何日だつたか、日にちは忘れておりますけれども、濠洲議会で、いわゆる大陸棚ということで、百ひろですか、丸切り李承晩ラインの宣言みたいな法律を作つて、それから中に入つて来る外国漁船は如何なる外国漁船であつても濠洲側の許可を受けなければならんという法律ができましたですね。それはまだ制定されていないわけですか。
  53. 島重信

    説明員(島重信君) まだです。
  54. 松浦清一

    松浦清一君 そうすると、その法律を作ろうとしておる向うの考え方なり、行動に対して、日本の立場からは、何か抗議的な、或いはそういうものを作つてもらつては困るというような要請をするとか何か措置をお講じになつたことはございますか。
  55. 島重信

    説明員(島重信君) その点が昨日御報告いたしました問題でございまして、只今までに判明いたしましたところでは、涙淵は二つの措置をとろうとしているようであります。一つは、只今お話のありました大陸棚に対して主権を及ぼすという宣言をするという点、いま一つは、恐らくそれを根拠にしてのことと思いますが、現行の真珠貝漁業法を改正いたしまして、その大陸棚の範囲内において真珠貝漁業を行う者は、国籍の如何を問わず濠洲政府の許可を受けなければならないという趣旨に法律を改正するという、この二つの措置考えておるようであります。  それで、第一の宣言のほうは、今期参りました西大使からの電報によりますと、昨日宣言があつたということが濠洲のラジオで伝えられたということを言つて来ております。まだ正式にキヤンベラにおきましても、東京におきましても、濠洲政府から日本政府に対してこういう宣言をしたからという通告は参つておりませんが、恐らくラジオを以てそういう報道があつたということから察しますと、恐らく昨日付で濠洲総督の宣言が発せられたのではないかと想像されるのであります。たた、その大陸棚に及ぶ権限の内容でございますが、この点は李承晩ラインと多少違うようでございまして、漁業全般には亙つておらないようであります。今までわかりました範囲内では、大陸棚の海底とそれから地下に存する天然資源に濠洲の主権が及ぶということを言つておるようであります。  それから第二のこの真珠貝漁業法の改正法案のほうは、昨日申上げましたように十日に下院が通過いたしました。それから上院に回付されるという段階にあるように了解しております。
  56. 松浦清一

    松浦清一君 その経過を日本側ではじつとこう見ておるわけですか。
  57. 島重信

    説明員(島重信君) この正式の抗議ということになりますと、一応相手方の措置がはつきりいたしまして、つまり措置をとつたということが一つの機縁になるわけでございまして、只今の段階では、只今申上げました通りまだ正式に濠洲政府が新らしくこういう措置をとつたというところになるかならないかという段階であります。従つて只今日本側としてなし得ますことは、こういうことである、若しこれが実現すればこういうことになる、従つて、日本側としてはその見解乃至やり方について同意できないということを言うのがまあ順序ではないかと思います。で、その措置につきましては、昨日来検討いたしておりまして、恐らく近日中に適当と思われる措置をとることになるだろうと思います。
  58. 松浦清一

    松浦清一君 まあ私は外務省は遊んでおるとは申しません。大変御多忙であろうとは思いますけれども、そういうことをやつておる問に法律ができてしまつたら、結局李承晩の海洋主権宣言のいわゆる李承晩ラインと同じようなことになつてしまつて、既成事実を作り上げてしまつたら困ると思うのですよ。この間アメリカが冷凍まぐろに対する関税法案を、下院が通つて上院に回付されて、上院で審議中に日本の政府側からも、業者側からも、我々のほうからも上院通過を阻止するために運動をした。そのことが効を奏したかどうか知りませんが、結局下院を通過したこの法律が上院で否決されて法律が成立にならなかつたのですが、そういう先例があるので、法律ができてしまつたら手遅れになるから、できてしまわないうちに、急速に日本側の立場を開明して、そうした法律ができないような一つ行動を起してもらいたいと思うのですがね。
  59. 島重信

    説明員(島重信君) その点仰せの通りだと思います。ただ米国のまぐろの関税の際には、御承知の通り米国の中にも利害関係の反する分子がありましたので、運動の効果が割合に出て来たという関係があるのに反しまして、今度の場合におきましては、濠洲の関係業者というものは正面から日本の業者と利害相反しておるという立場にありますので、前回のまぐろの関税の場合のように濠洲内部に働きかけますことが、直ちに効果を挙げ得るかどうかという点がやや疑問であります。併し勿論この真珠貝漁業法改正案というものが通りまして、少くとも濠洲側からすれば、濠洲の思う通りにやれるのだという事態が起りますことは好ましくないということはわかり切つておることでありますから、それに対しましてはできるだけの措置はとりたいと思つております。ただ丁度この漁業協定の交渉の打切りと時期を同じくして起つた問題でありまして、濠洲政府を説得するということはかなり困難ではないかとは考えておりますけれども、一般の国際間に認められました考え得るあらゆる措置をとつて善処いたしたいと思つております。
  60. 松浦清一

    松浦清一君 ちよつと速記をとめて下さい。
  61. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  62. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 速記を付けて下さい。  次の議題、もう時間が過ぎましたから暫らく御協力を頂きます。香川県塩飽諸島牛島南方航路開設に関する件、この件につきまして運輸省の港湾局計画課長中道峰夫君に御説明を頂きたいと思います。
  63. 中道峰夫

    説明員(中道峰夫君) お答えいたします。只今お話の瀬戸内海の航路のうちで、備讃瀬戸と申しておりますが、この備讃瀬戸は瀬戸内海の主要航路の大事な所にございまして、而もこの航路附近には暗礁とか砂洲等がございまして、本船が航行します場合に衝突或いは坐礁等の海難事故がこれまで相当多かつたのであります。で、瀬戸内海の航路の中では一つの難所だというふうに言われておりますので、この暗礁を除去いたしまして、この航路を安全にしたいというふうな要望がかねてからございます。それにつきまして運輸省といたしましては、昭和二十七年度から、その実情につきまして調査をいたしております。その目的といたしますところは、この航路の改良、或いは新設につきまして、その必要性と特質につきましてのいろいろな経済的な調査とか或いは障害個所になります岩礁或いは砂洲におきます簡易な深浅測量、或いは土質の調査とか、そのほかこの洲を実際に除去することができるかどうかというふうな問題の検討とかいつた方法を目的といたしまして、調査を二十七年度からやつておる次第であります。
  64. 森崎隆

    委員長森崎隆君) ちよつとお尋ねいたしますが、これはここに航路を新らしく開設するという前提にはつきり立つてつておるわけじやないのですね。航路開設が可能か不可能かということを現在研究中なんですね。
  65. 中道峰夫

    説明員(中道峰夫君) その通りでございます。
  66. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 更にちよつとお尋ねといいますか、要望を時間がないから申しておきますが、この牛島の南方航路開設の問題につきまして陳情書が出ておりますが、塩飽諸島の漁民関係方々からでございますが、この区域は非常に大切な漁場になつておるので、航路は従前の本島、牛島間の航路でやつてもらいたい。牛島の南方の航路開設は地元漁民の生活上非常な脅威であるから、是非ともこの開設計画はやめて欲しい。又浚渫その他の計画もやめて欲しいという強い陳情がされておる。最近陳情者からじかに聞きましたところでは、非常にこの問題に地元のほうでは苦慮いたしまして、運輸省にも参りまして、それから海上保安庁にも参つた、保安隊のほうへも参つたらしいのですが、いずれもどうもはつきりした御返事がなくて、どちらでも責任がないような、或いは又調査中といつたようなお答えがあつて、取付く島がない。そうしておる間に本年の八月十五日で浚渫は……掃海ですか、これは一応完了してしまつた。現在は又ぽつかりと浮標が立つておるというようなことで、非常に地元では心配をしておるのです。で、まあ計画まではないようでございまするが、今後一つ問題がどう発展するかわかりませんが、十分一つ地元の意向を尊重されまして、若し工事を開始するというようなことをきめまするならば、きめる以前に地元漁業組合連合会にあらかじめ一つ通知をしてよく話合いをして、その上で一つ具体的な決定をしてもらいたい。非常に現在心配しておりますのは、責任の所在がはつきりしていないので、その間に今申しましたような作業が進行しておるので、非常に狼狽しておる。できますなら運輸省のほうで、この相手は香川県塩飽漁業協同組合連合会となつておりまするから、そのほうへでも詳しい現在までの状況、将来の問題等一つ正直に書いて、誤解のないように一応書面でも出して頂いたらどうか思います。それを是非一つお願いしたいと思います。それだけでございます。よろしくどうぞ。
  67. 中道峰夫

    説明員(中道峰夫君) 承知しました。   —————————————
  68. 森崎隆

    委員長森崎隆君) それから次は、まき網の陳情がございまするが、ちよつと陳情を伺いたいと思います。
  69. 青山正一

    青山正一君 ちよつと発言お許し願います。まき網の問題について、私は御承知の通りまき網の責任者であります関係上、非常に頭を悩ましておるわけなんです。殊に西部日本海の海区の問題につきまして、山陰側と山口、福岡、佐賀、長崎各県側の間いろいろな問題が惹起されておつて、これを何とかして解決したい、こういうふうにしよつちゆう考えておつたわけでありますが、不幸にして水産委員会で取上げて頂かなければどうもこれは解決できにくいというようなところまで来ておりますので、それで止むを得ずこの問題を今日の議題に供して頂いたようなわけであります。  それでこの席上にそのほうの責任者のおかたも多数お見えになつておりますが、その会長である天野さんから、大体この陳情なり何かを一つ正式に委員会として承わつて頂きたい、こういうふうに考えております。どうかよろしくお願いいたします。
  70. 森崎隆

    委員長森崎隆君) それでは速記をとめて。    午後零時八分速記中止    —————・—————    午後零時二十一分速記開始
  71. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 速記を始めて。只今の天野氏の陳情趣旨よくわかりました。これについて何か……。
  72. 青山正一

    青山正一君 私もこの問題につきましては、昨年から非常に自分も関心を持つておるところであります。こういつた問題につきまして水産庁長官にはいろいろお話はしませんでしたが、あなたの下におりますところの遠藤氏なり或いは油井君あたりとよく話しまして、何とかうまく妥決して頂きたい、解決して頂きたいということをこれは終始望んでおつたわけでありますが、どうしたわけか様子が急に変つて来たと、こう申すよりこれは仕方がないのであります。初め油井君あたりの話或いは遠藤君あたりの話と今日の結果とは大分変つておる、こういうことでありますると、同じ海区におきまして山陰側だけを非常によく認めて行く、あとはどうなつてもいいというふうなことになりますと、丁度石川県のいわゆる中部海区においていろいろ失敗があつたと同じふうなことで、或いは京都或いは福井あたりが自分の漁場が狭ばめられて、非常に失敗しておるというふうなことと同じようなことになりはせんか。それで私は長官にいろいろお聞きしたいことは、一昨日水産庁から西部日本海まき網漁業の要綱というものが何か発表されたように私は聞いておりますが、それは案でありますか、それとも実施に移すいわゆる決定的なものでありますか、その点について一つ私承わりたいと思います。
  73. 清井正

    説明員清井正君) 只今陳情なり又青山委員よりもいろいろお話があつたのでありますが、この問題につきまして、詳しいことは又必要がありますれば御説明申上げたいと思いますが、私どもといたしましても、これは指定中型、即ち只今陳情がありましたあじ、さばのまき網漁業は農林大臣の直接の許可になつております漁業であります。従いまして私どもといたしましても、この問題につきましては非常な関心を持ちまして、沿岸漁業の摩擦等の調整を十分一つ考慮しながら、適当にこれを操業させなければならんということは常々関心を持つておるのであります。昨年春いわゆる大海区制を布きましたときに、夜間の操業、即ち河口と漁群探知器使用をとめまして、昼間の操業のみを認めたということになつておることは、只今陳情のあびました通りであります。ただ残念ながら昼間におきまするさばの回游が見られなくなつたということのために、当該漁業に深刻な打撃を与えまして、何とかいたしても夜間におきまする操業を認めてもらいたいという陳情が激しく実はあつたのでございます。それと同時に、私どもといたしましても大海区制を布きましたときに、夜間操業をとめたという趣旨が即ち沿岸漁業との摩擦を考えたというような面もありましたのでございまするから、そういう点との調整をも併せ考えなければならんということで、その間の調整に苦心をいたして参つたのであります。併しながらこの指定まき網漁業がいわゆる漁群探知器というような近代的な漁具を利用できぬということは、本来の趣旨じやないと私も十分了承いたしております。趣旨といたしましては、これは夜間操業を許し、いわゆる漁群探知器の利用もさせるということが趣旨であります。そういう方向に持つて行かなければならんことはその通りだと私思つております。ただ問題は、該水域におきまする主として鳥取島根沿岸漁業関係につきまして、十分その間の調整を考慮しなければならんという観点をも併せて考えた上、適当に施策を立てなければならんという考え方から、爾来慎重に案を練つて参つたのであります。特に案を作ります前に必要を感じまして、私どものほうの関係の部長、課長現地に派遣いたしまして、関係方々からも十分一つ意見を聴取して来いということで行つてもらつたのであります。その間の事情等も十分報告を聞きまして、又各種の観点からも十分考えました結果、一昨日と昨日の二日間に亙りまして関係のかたにお集まり願いまして、水産庁の一案を出したのであります。その案は極く少数の隻数について試験的に漁群探知器による操業を認めるという趣旨の案であります。その他いろいろ附属の事項もございますが、根本はそういう案であります。その案によりまして、沿岸漁民のかたからは無論一隻も入れては困るという趣旨の反対がありました。それからまき網漁業者のほうから、そんな案は認められないという趣旨の反対があつたのであります。私といたしましては、この問題はどういう結論を見るにいたしましても、強行することはできないと考えております。やはり沿岸漁業者方々なり、同時に又あじ、さばの漁業者方々なりの、これは認めるとか認めないとかは別問題でありまして、とにかく了承したという下において実行いたさなければ、仮に無理やりに操業いたすことにいたしましても、或いは不祥の事態が起らないとも限りませんが、その他の一般の漁業行政上に非常にマイナスを起すということも実は考えられるのでありまして、私の考えといたしましては、これはとにかく関係者の何らかの形による合意ということに基いて実施すべきものであるというふうに実は考えております。ところが一昨日、昨日の会議におきまして、双方からの反対を受けましたのであります。私といたしましては、現況の下においては、この案で止むを得ないという意味において案として出したのでありますが、両方からの反対を受けました以上、これを強行するわけに参りません。但し私といたしましては、もはや諦めておるのではありません。さばの漁期が始まります前までに、速かに私どもの提示した案につきまして、関係者の何らかの形による意思表示を得まして、代案的の解決案を見出して行きたいというふうに考えておりまして、私といたしましては、まだあじ、さばの調整という問題につきましては希望を捨てておらないのであります。何らかの形の案を作りたいものだというふうに考えておる次第であります。
  74. 青山正一

    青山正一君 ただ要するに問題は、この沿岸漁業との摩擦というような点も非常に長官のほうで心配しておられるような向もあろうと思います。これは私らもしよつちゆう下関或いは鳥取島根のほうに行つておりますが、実は河口におるいわゆるまき網漁業がそれだけ害毒を流したのであつて、いわゆる魚探によるというものは殆んどありません。そこへ持つてつて、ただ僕はよく考えてみると、鳥取まき網漁業者というものと島根まき網漁業者が沿岸漁業者と一緒になつて、そしてどうも働いておる、こういうことじや僕はいけないと思う。まき網漁業者と沿岸漁業者の摩擦とかというような点は、これは一応考えられますけれども、はつきり言えば鳥取とか島根の連中が、このまき網漁業者を含めたすべての漁業者が腹一ぱい自分の食うだけのものを食わして頂く、そして他府県のものは今まで九十九個統のものを二十個統にしてしまう、こういうふうな行き方はいけないと思う。そうすれば折角昨年あたりきまつたいわゆる対馬の問題も、直接長崎へ全部鳥取島根の連中を入れないということにもなろうし、又或る一面から考えると、李承晩ラインでこうしてお互いに外部においては争つておるけれども、内部的にはどうなつておるか、そういうふうに思われる節もこれは出て来ようと思う。そういう点も、例えば水産庁長官自身もあちらのほうにおいでになつただろうと思うし、或いは部長とか或いは課長とか或いは遠藤君、油井君あたりも向うの実態を調べて、たしかあの告示は不当であると、うようなことも僕は誰かに聞いております。そういうふうにして来ておるのに、何か島根県と鳥取県の代議士とか或いは参議院の諸公がうんと働きかけて、今まで農林省が何かきまつておつたやつをそれを翻してしまつてこういう結果にやらす、恐らくこれは筋だろうと思いますが、その筋通りにこれはなつていると、そういう点は僕はいけないと思う。だからその点をもう少し考え直して頂いて、一昨日出した要綱あたりは、これはやはり飽くまで案というようなふうなことで、この案を見ますと、二十二個統にするとかどうとかいうようなことで鳥取島根は非常な優遇されておる。ほかのほうはお前たちは死んでもかまわんというようなこれは案なんです。そういうことになりますと、折角西部海区としてのいわゆる中型まき網漁業としてはつきりとした一つの基本方針を示したやつが全然覆えされるというような結果になりはしないか、そういう点を私は心配しておるのですが、その点について浜田課長なり或いは水産庁長官に、どの程度までやはり考えておられるか、その辺を一つお話し願いたいと思う。
  75. 浜田正

    説明員(浜田正君) 只今まき網のほうからも陳情がありましたのですが、漁業調整の中心は、一本釣とか或いはさし網とか地曳網とかの小さい漁業者と、それからこの場合に言いますれば、まき網以上の大きい漁業者との利害の調整といいますか、そういう点に重点を置いて考えるわけであります。そこで今の陳情にもありましたように、確かに一方だけの見方で言いますれば、他方において夜間操業をやる、又魚群探知器をやる、又舟も大型にして自由自在にその性能を発揮するというのは、片方だけの合理性を追及して考えた場合にはまさにその通りだと考えます。ただその場合に、同じ漁場において何といいますか、自由奔放に競争といいますか、大きいのと小さいのと競争させた場合に、その結果どうなるかという点を考えますと、沿岸から見ますれば、沿岸としての理由があるわけです。一本釣にしましても、さし網にしましても、ああいう大きいのにガリガリやられたらとても我々はたまつたものではない、こういう理由があるわけなので、片方だけの合理性を追及するというわけにも参りませんので、その調整点としまして、どの程度まで何といいますか、足を引張るか、合理的な漁業のやり方について足を引張るかという点は、先ほど申しましたように、沿岸とそういうものとの調整という点に主力をおきますれば、当然各地沿岸状況によつて調整の仕方は変つて来るということは考えられると思います。そこで今の現実の問題といたしまして、長崎における沿岸の事情、そして対馬漁場における問題はどういう問題であるか、それから山陰におけるあの鳥取島根、本土と沖の間が中心でありますが、あそこにおける沿岸状況はどうであるか、漁場の操業区域の広い狭い、この広い狭いにおける沿岸の具体的な事情はどうなつておるかということによつておのずから調整の方針は変つて差支えないと私は思う。ただ、まき網の側から見れば、その合理性だけを追及すれば、日本の海に違わないのじやないか、どこもかしこも同じでないと不公平じやないか、理由は確かにある。併し調整という点から見れば、沿岸に主力を置きますれば、当然沿岸の事情が変れば調整の仕方も変つて然るべきだと、こういうふうに考えておるわけであります。  そこで今度はどういうふうに変るかと言いますれば、対馬における沿岸の事情と山陰における沿岸の事情は確かに変つていると考えております。例の以東底曳の場合も、私は長崎でつぶさに沿岸の事情も見ましたし、又この問題につきましても山陰についてそれぞれ沿岸の事情も具体的に地図の上で聞いて来たわけです。それを大観して考えれば、対馬において自由であるから山陰においても自由であるというまき網業者の主張としては合理性がある。併しながら沿岸の主張としては、そうは参らん。こういうことはいま少し山陰の実情沿岸との関係において対馬以上により深刻さがあると考えますので、試験的に若干入れてやつてみよう、然る後問題を本格的に考える、こういう考え方で臨んでいるわけであります。先ほど長官も言われましたように、この問題は案を一昨日出しましたが、絶対反対ということにおいては意見の一致がある。内容的には沿岸は絶対反対ということで一隻も入つてもらつちや困る、まき網業者は二十個統ではどうにもならん、試験操業では絶対反対ということは一致している。内容は完全に右と左に分れております。これは更にどう調整するかということは、これから考えてやらなければいかんというのが実情であります。
  76. 清井正

    説明員清井正君) 先ほどちよつと青山委員のお言葉の中に政治的にどうとかというお話がありましたので、私一言附加えて申上げたいと思います。この問題は確かに当初私ども考えましたことと今回案として出しましたことが、特にまき網業者の側にとりましてやや違つているという印象を与えたことは事実であります。従つてそこに何らかの政治的な力があつたのだろう、こういうような御推測であろうかと思います。確かに違つたことは事実であります。これは私も認めます。私自身の気持も多少違つたのですからそれは認めます。ただ何故違つたかということですが、これは端的に申上げますが、私どもはこれは長崎のときに非常に苦心した例もあるのです。沿岸漁業沿岸漁業という声が確かに起つた場合において、これがどの程度の影響があるかということは、よほどこれは噛みしめて考えなければならん問題だと思つているのであります。そこで先ほど陳情の中にもいろいろいわゆるいわしのまき網漁業がある。いわしと言いながら、いわしだけじやなくて、むしろさばを取つているじやないか。而も県の知事の許可だ。ところが農林省の許可を受けた業者はさばが取れないじやないか、何たることかという趣旨お話であります。お気持はよくわかる。併し私どもの観察といたしまして、又現地に行つてもらつて見た観察の結果、私ども考えました沿岸漁業の実態に対する認識が私どもとしては不十分であつたということは、確かに私は言わざるを得ないのじやないかという、率直に言つて感ずるのでありますが、いわゆるあちら方面においての漁場は非常に狭隘でありまして、各種漁業がそこに一斉に集つてつているということもあります。或いは沿岸業者もあじもさばも取つているということがあるわけであります。それからいろいろ漁具も損傷するという問題もあるわけであります。いろいろそのほかに問題があるようであります。これは一々何も言うことを聞く必要はないと思いますが、それに対する判断というものにおきまして、私どもが曾つて考えておつたよりは確かに程度の強いものであるという認識を新たにしたことは事実であります。然るが故に、私どもの言葉の表現が曾つてのまき網業者に対します表現とは違つて参つたという点があるのであります。この点についていろいろ御議論があるだろうと思うのであります。これは私の率直な気持を申上げるのでありまして、決して島根鳥取の政治家のかたがいろいろ言われたから、だからそうしたのだろう、こういうふうに仮にお話があるといたしましても、私はそう思つていないのであります。ただ沿岸漁業に対する影響というもの、沿岸漁業に対する深刻性が曾つてつておつたとはより非常に違つておつたから多少実態を見て考えなければならん、いわゆる調整の場合というものを考えなければならんというような立場から、これは事務的に考えまして、絶対反対絶対反対と前から言つておつたのでありますが、そう絶対反対と言つても方向は方向なんだから、そこは何らかの調整点を見出して行つて、そして調整点でこの秋はやつて行けば又沿岸漁業者も思い返えすことができるんじやないか、とにかく端緒を付けようじやないかということでこの案を作つたのであります。但し、結果は只今申上げましたような結果になつたのでありますが、私としましては所信を曲げておりません。何とかしてこの調整点を見出したいと考えておる次第であります。
  77. 青山正一

    青山正一君 長官なり或いは浜田課長のおつしやることも御尤も至極であります。ただ問題は、鳥取とか島根などに大体三十個統ぐらいのいわしの権利、いわゆるいわしのまき網漁業として知事の認可を受けておる。そのうち十八個統というものは二重鑑札でやつておる。そういうところにまだいろいろ問題が出て来るんじやないかと思う。鳥取島根だけが同じ海区において非常な何といいますか、得をしておる。ところが他府県から入つて来ておる九十九個統分が急に二十二個統になる。一方において鳥取島根はそういうふうな恩恵があるんだと、而も鳥取島根あたりいろいろいわしのさし網とか或いは延縄とかいうことで、福岡、長崎、山口、佐賀、こういつた方面に非常に入り込んでおる。はりきり言えば対馬にはダイナマイト漁業あたり、これは何百統とあるわけですが、このうちの半分以上は鳥取島根が占めておる。そういうところは非常な大きな矛盾性があるんじやないか。だからそういう点をよく検討して、知事の許可を持つておる。その許可の中に二重鑑札で、今度は農林省の許可を持つておる。それが十八個統もあると、そういう点が、やはり禁止するならば全部禁止していいわけです。鳥取島根もない。或いは中型まき網に関する限り、その工合で又考えて行くということが私は必要だろうと思うが、内部を探つてみると三十個統のうち二十個統は二重鑑札でやつておるということで、こういうところがみんなの癇にさわつておるのだろうと思います。だから一昨日の案は、もう一度検討し直して、よくその点を考え直して、又将来長崎、対馬の問題とか、或いはいわしのさし網の問題など、そういつた問題になつて来たりすると、例えば、はつきり言えば島根出身の者などは、島根出身だと、もう島根か円来て頂く必要はないという議論にならんとも限らない。そういうことにならんように、お互いに十分納得の行くように、どちらが悪い影響を受けるにしても、均等に受けるという立場に進んで行かないとすれば、これは中型まき網の争いというよりも鳥取島根のいろいろな漁業の争いと考えておるわけなんです。その点をただ沿岸漁業と中型との争いというふうには私は一概にみなすわけにはいかんと思うのです。私は鳥取島根の中型のまき網について、お互いに鳥取県と島根県が喧嘩しておる最中に私が中に入つて話をしたこともあるわけです。だからその辺の事情というものはよくわかつております。だからこの点をよく農林省のほうで検討して頂いて、鳥取島根は腹一ぱい食うと、それから他府県の者は今まで二重許可等で九十九個統あつたものが五分の一に減ぜられて、お前たちはどうにでもしろと、こういうことではいけない。その点をもう少し検討して調整して頂きたいと思います。   —————————————
  78. 森崎隆

    委員長森崎隆君) 陳情の問題はこの程度にして、一つ水産庁のほうではこの点を御検討願います。  大変時間が遅くなりますが、もう一つ御協力頂きます。  漁船船員に対する船員法の適用に関する件を議題といたします。運輸省労働基準課長亀山信郎君に御説明を願います。
  79. 亀山信郎

    説明員(亀山信郎君) 漁船船員に対する船員法の適用につきまして、現在現行法では三十トン以上の漁船というものに対しまして船員法を適用いたしておりますが、この法律は昭和二十二年にできました法律でございまして、この以前の船員法ではやはり三十トン以上の漁船ということになつておりまして、終戦後初めて三十トン以上の船員に適用されたということではないのでございます。そこで三十トンで線を引きましたことについてその当時も、昭和二十二年の法律を作ります際にもいろいろ御議論がございまして、これをもつと引下げて、或いは二十トン、或いは漁船以外の船舶は五トン以上ということになつておりますが、五トンまで下げるべきであるというふうな議論もございましたし、漁船船員というものは、ほかの商船船員、貨物船などの船員と非常に性質が違うものであるから、別に取扱うべきではないかというふうな御議論もございましたけれども、結局まあ或る程度の妥協と申しますか、妥協もございまして、三十トンというふうになつておるわけでございます。この三十トンということは、大体船員法が漁船船員に適用されるということは、船員法それ自身が海上労働者ということに対する、まあ労働基準保護の法律でございまして、陸上の労働基準法と並んで海上における労働者の保護ということを主眼にいたしております。海上の労働という点につきましては、例えば一等航海士とか或いは二等航海士、そういつたものと、それからお魚を取る、漁撈に従事するというような人も全く同じでありまして、例えば属員と申しますか、下級船員に至りましては、広範囲となつて運航のほうのお手伝いもいたしますし、お魚を取るときに網を挙げる、ときどき一人の人間が両方の仕事をしておるのが実情でございますので、海上の労働者としては、陸上の労働者と違うのだということに着目して、これをすべて船員法の適用範囲ということにいたしたわけでございます。ただ、或いはアメリカに通つておる貨物船と小さい漁船も同様に扱う、かつお、まぐろを取つておる船、或いはいわしを取つておる船も同等に扱うということは到底できないわけでありますが、船員法の内部で労働時間、有給休暇とか、比較的高度の労働保護については、漁船船員についてはこれを適用していないのでございます。そういうことになりまして、海上労働という特異性が一体どこにあるかということから、三十トンということで線を引いておるのでありまして、勿論いわしあぐりのように三十トン以下のものが一個統を形成して操業するというような場合には、或る一個統で共同になつて集団を組んで操業しておる者が、或る者は船員法の適用、或る者は労働組合法の適用ということでいろいろ問題がありまして、これについては経営者側からも労働者側からも、どうか一つの共同作業をなしておる者が違つた法律の適用を受けることのないようにしてもらいたいという陳情を承わつております。そこで私どももどこかで線を引張ればどこかに不合理が起るわけでありますけれども、極力そういつた不合理をなくして行きたいという観点で、最近も水産庁とも御相談しておりますし、又水産業者の団体である大日本水産会に対しましても、現在の昭和二十二年終戦直後にできましたこの船員法について何か御意見はないだろうか、ここに今までも伺つておりましたものを取りまとめてはつきりした御意見をお伺いしたい、その御意見を伺いました上で、なおそういう不合理を少しでも少くして行く方法、例えば漁業の種別によつて適用を上げて行くようなやり方が可能ではなかろうかということで、現在追い追い研究をいたしておる最中でございます。  簡単でございますが現状をちよつと御報告申上げます。
  80. 森崎隆

    委員長森崎隆君) この問題はいろいろ御質疑があろうかと存じますが、今いたしましようか。相当これは大きな問題で、研究……。
  81. 青山正一

    青山正一君 月曜日に一つ……。
  82. 松浦清一

    松浦清一君 ちよつと一言だけ、あの三十トン以上の漁船の船員に適用されるということは、これは労働基準は対する立法のみならず、災害についての船員保険に強制加入ということになつておる。それで保護されておるわけですが、三十トン未満の漁船の船員は、どういう法律で災害補償がなされておるのでしようか。
  83. 亀山信郎

    説明員(亀山信郎君) 三十トン未満の漁船の船員は、これは労働基準法の適用を受けております。保険のほうといたしましては、労災保険のほうの適用を受けております。
  84. 松浦清一

    松浦清一君 素人らしいことを聞きますが、労災保険は強制加入じやないのですね。
  85. 亀山信郎

    説明員(亀山信郎君) はあ。
  86. 松浦清一

    松浦清一君 そうすると、殆んどの船員法適用外の漁船船員は、労働基準に関する法律によつて守られん、又災害に関する法律によつて守られてない、手放しで放任されておるというような状態にある船員が私は多いと思つておるのですが、現状は如何ですか。
  87. 亀山信郎

    説明員(亀山信郎君) 三十トン未満の船は只今申上げましたように労働基準法の適用を受けております。労働基準法はその中に災害補償という項目を置いておりまして、これは運輸省の所管ではございませんけれども、やはり雇主、使用者という言葉を使つておりますが、船員が例えば怪我をした場合、或いは職務上行方不明になつて死んだ、こういうふうな場合には、使用者が法にきめられた災害補償を船員自身或いは遺族に対していたすことになつております。ただ先ほど申上げました労働者災害保険に加入いたしておりますと、その労災保険から保険給付がございました場合には、雇主、使用者の責任が免除される、こういうふうな規定になつておると承知いたしております。
  88. 森崎隆

    委員長森崎隆君) それではこの問題に関して御質疑がいろいろありましたら、次の機会に……
  89. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 もう一つ漁船と一般船舶というものとはその働きの状態において非常に違つているわけです。船の点から言いますと、漁船もこの頃だんだん大きくなりまして、数千トンの船或いは一万トンを越すような遠洋漁業漁船もありますが、小は二十トン未満の動力の付いた船もたくさんあるわけです。そこで今の保険の問題等もからまつて参りまして、例えて申しますと、いわしのまき網、先ほどからいろいろ問題になりましたまき網のごときものになりますと、まき網本船は三十トン以上の船である、この頃は八十トンくらいの船もできております。ところがそれについておるところの母船とか火船とかいうものは、二十トン未満のものもあるわけです。勿論三十トン未満のものが大部分でありますが、そういう場合に保険の面で行きますと、一方母船のほうは船員保険にかかつている。そうしてその一環をなして一つのチーム・ワークをなしておるところの火船とか或いは母船とかいうものは労災保険によつている。併しこれは一つの企業体の中にそれらのものが総合して一つ漁業をやつておるわけです。そこで一方は船員法により、一方は労災保険によるところの救済ということになりますと、非常に船主としても困るし、船員としても困つておる問題があります。従いまして我々といたしましては、漁船船員法という、漁船というものを切離した船員法を作る必要があるということを痛切に感じておるわけでありますが、運輸省のほうではそれはどういうふうに見ておるわけですか。
  90. 亀山信郎

    説明員(亀山信郎君) 漁船における労働という特殊な労働に対しまして、特殊な労働関係の法律を作りたいという御希望は、これは漁業に限らず、私の承知いたしております範囲では勿論陸上の中小企業或いは家内労働について、現行の労働基準法以外にそういつた法律を作りたいというふうなことが出ておるということも承知いたしております。で、漁船につきましても、そういう御説は誠に傾聴に値いする御議論であると思つて追い追い研究をいたしておりますが、現在の考え方といたしましては、やはり法律できめます労働保護というふうなことは、非常に細かい一つ一つの、労働者と使用者との間の契約のすべてにかかわるようなことまで法律できめるということは非常に困難でありまして、やはり建前としては、最低のぎりぎりの線を法律できめる、それ以上のことはやはり労使対等の原則に基いて、これはなかなかむずかしいことでありますが、或いは労働組合の力その他によりまして、両方に適当左合理的な労働条件ということを定めて行くことになるだろうと思います。そう考えて参りますと、最低の基準という点になりますと、漁船といいましても、現在船員法が定めております程度の労働条件、これも実を言つてみますと、殆んど大事な点を抜かしておりますので、これは労働者側から非常な不満が表明されておりますが、現在程度の労働基準は如何なる特別立法をお作りになりましても、必ず書かなければならないのじやないか、又業種によりまして取扱法規が異なる、それによつて又役所の関係も、多少機構も複雑になるというようなことも考えられますので、現在では労働者を保護する法律といたしましては、陸に労働基準一つ、海に船員法が一つ、そうして個々の業種によつて一律に律し得ない部分は、その一つ一つの規定の適用に当つて、或いは適用を除外し、或いは緩和し或いは厳格にするというふうなことを個々の規定についてやつて行くべきでありまして、法体系としては、業種によつておのおのの法律を作るということは望ましくないのではないか、これは現在の私の考えでございます。
  91. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 この問題はいろいろ考え方、見方があると思うのですが、同じ海上を航海する船でありましても、貨物を運搬する船とか、或いは乗客を運搬する船というものと、それから漁船というものとは随分開きが、差があるわけであります。漁業のほうは、昼間は余り仕事をせんが夜間主としてやるという仕事もあります。又昼間だけやるとか、或いは朝早く或いは夜遅くといつたような、漁業については殆んど時間の区別がつかないような仕事が多いのであります。そこでその他の船舶と同じような基準においてきめるということになると、今お話のように極めて抽象的なといいますか、大ざつぱなきめ方をする以外にないのであります。漁業のほうでは漁業として船員法を扱うならば、これは或る程度まで規制できて行くと思うのです。そういう意味から先ほど私が例を引きましたような、一つの仕事の上にも関係法規が違つて来るというようなことで、非常に困る問題があるのですが、この点は運輸省としても一つ今後の課題として研究して頂きたい。  これを水産庁長官にお尋ねいたしますが、水産庁はこういう問題についてどういうふうな見解を持つておられますか。どうもいわゆるセクシヨナリズムになつて、船員法ができるというと、これは農林省関係になるといつたようなことが或いはあるかも知れませんが、我々国民としては、どつちになつてもかまいません。その適用される適正な法律ができることを望むのでありますから、そういう意味で水産庁はそういうことをどう考えておられますか。
  92. 清井正

    説明員清井正君) 実は私この問題につきまして深く研究はいたしておりませんが、ただ問題となつております点については十分了承いたしております。特に先ほどお話がありました一漁業の例えば母船とか或いは作業船と曳船と申しますか、そういう一漁業を数船隊で編成されておりました場合に、それがトン数の関係で船員法の適用を受けるとか受けないというような問題がありまして、非常に関係のかたがそのために困惑をしておられるようなことも私は十分承知をいたしております。又船員法自体につきましても、いろいろ問題があります。而もこれが保険と関連いたしまして、経営者側にも問題がありますし、漁業の労働者の側にも問題がありますということも私ども十分承知をいたしておるのであります。この問題につきましては、只今お話がございましたが、いろいろ曾つて事務当局間で相談をしたこともあるのでありますが、未だ結論に到達をいたしておらないのであります。水産庁立場といたしましては、できますれば漁業関係だけの船員というものにつきまして何か規定ができるほうがいいのじやないかという考え方もあろうかと思うのです。この点は私今すぐにそのほうがいいということははつきり言い切れないのでありますが、ただ考え方としては、そういうふうにやつたほうがいいのじやなかろうかという考え方も確かに有力に部内にはあります。この点はもう少し私は研究さして頂きたいと思うのでありますが、とにもかくにも、この問題は水産関係業者の経営者並びに労働者に非常に影響がある問題でありますから、十分一つ考えさして頂きたいと思います。
  93. 森崎隆

    委員長森崎隆君) この問題は今日すぐ解決するということでもございませんが、継続して……。
  94. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 水産庁及び運輸省関係にお願いしておきますが、同じ仕事におきましても、港というものについても港湾法があり漁港法があつて、その性質についてやはり別の法律でやつておるのです。ですからこれはみんなそういう似たものは一つにしなければならんということもないと思います。その必要な又利害得失の非常に差のあるものは、それぞれの面において作つていいのじやないかと思います。立法の技術の面においては法律屋さんが研究すればいいので、両者において今後も一つ研究を進めて頂きたいということを希望しておきます。
  95. 森崎隆

    委員長森崎隆君) それでは残余の議題につきましては、明後十四日午後一時から開会いたします。  なお本日午後二時、衆議院第三議員会館第四会議室におきまして懇談会が開かれるように衆議院水産委員会からお話がありました。問題は朝鮮問題について業者、現地関係者、水産関係議員等が出席することになつておりますので、できるだけ御出席頂きたいと思います。  本日はこれで散会いたします。    午後一時三分散会