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国立国会図書館長(
金森徳次郎君)
只今お
手許に「
国立国会図書館の
経廻報告要綱」というものを差出しておりまするが、大体それに基きまして御
報告を申上げます。
丁度この
期間は、一年度の下半期に
なつておりまするので、新しい問題は殆んどなくて、ただ今まであるものについて後半
期分の
経過を申上げるようなことになりますので、
数字等は複雑に
なつておりまするが、格別取上げて申上げるほどのこともございません。余り細かいことを一々申上げますのも恐縮でございまするが、ただその
報告書に基きまして、一、二目立つた事柄について申上げたいと思
つております。
先ず最初の頁につきまして、一、
組織という所がございまするが、
組織は大体従来と同じでございましたけれ
ども、ただ
支部図書館がこの
期間に
二つだけ殖えたのであります。と申しますのはいろいろ
官庁が名前を変えたり、新らしくできたりいたしまするために、この
期間に
支部自治庁の
図書館、
支部海上保安庁の
図書館、この
二つできまして、その結果二十六
支部図書館が二十八の
支部図書館に
なつたわけであります。大局から言えば漸次この
図書館の
系統組織が整
つて行くという形になるのであります。
次にこの第一枚の裏を返しまして二、
人事というものがございまするが、これは職員の
定員その他を書いておりまするが、
定員につきましては、昨年の四月一日を契機といたしまして、
行政整理によ
つて人が若干減少いたしまして、その
過渡期の処置といたしまして多少の
人員の異動はございますけれ
ども、現在は五百六十六名を
定員といたしております。現在員は少々欠けておりまして、最近には
中央館が四百十八という
数字が出ておりまするが、これは
年度変りのときでありまして、新らしく学校を出た人を採用するために少しく
定員に余裕をこしらえてお
つたのでありまして、原則といたしましては充実いたしておるのであります。
次に主要なる
人事といたしましては、そこに掲げてございまするが、例えば
専門調査員の
大久保利隆が
アルゼンチン駐在大使に
なつてし
まつたということで欠員を生じておりましたが、これは
外交関係のこと、
国際法関係のことを担当する人でありまするが、
後任者として
別府節彌を採用することにいたしました。
次に三という所、「
国会への
奉仕」という面に入
つて参りまするが、何と
言つても
国会への
奉仕の一番大きいものは、
調査立法考査局の
考査でありまして、
議会からの或いは
議会関係者からのご
質問に応じまして、いろいろと必要なることを
調査してお答えを申上げるのでありまするが、そこに書いてございまするように、
立法考査局の
考査件数は、この半年の間に千四百十二件でございまして、これを一年に引延はしますと二千八百ということになりますが、始終殖えたり減つたりしておりますから、きつかりその
通りにはなりません。大体月に二百件以上
近頃考査の
もとめに応じておるというのが姿であります。又
書物の
出入れ等はそこの
数字の上に現われておる
通りであります。
その次に参りまして、四の「
行政、
司法各
部門への
奉仕」というのがございます。これは
国会図書館の機能といたしまして、
国会にサービスすることのほかに、各
官庁或いは
最高裁判所というような
行政、
司法の各
部門に
奉仕する職責がございまして、そこに
図書の
閲覧の途が開かれております。又
書物の貸出をしたり
考査をいたしたりしておりますが、その
数字が概要そこに示されておるのであります。一括して言えば漸次その数量が増加して、初めは細々と立上
つた奉仕でございましたけれ
ども、次第々々にその
奉仕の内容が潤沢に
なつて来るというのが
現状でございます。
次に五の「
一般の
図書館及び
一般公衆への
奉仕」という点について申しまするが、このことは
通常の
意味で
図書館と言われておりますところの仕事に当
つておるのでありまして、大体数の上で申しますると、
上野図書館が一番大きく活動いたしております。その次には
中央館が活動しておりますが、そこにAとBの所に示されておりますように、
中央館は半年の間に八万四千人によ
つて利用され、
上野図書館は十六万七千人によ
つて利用されております。こういう
利用の値打は数ばかりではわかりません。その実質上の点に触れて申上げなければなりませんが、漸次
高級者が
利用して行くのでありまするけれ
ども、大体から言えばまだ頗るその当初の趣旨に合わないというきらいがございます。それから
支部図書館のほうは、今の
上野図書館を除きまして
静嘉堂文庫、
東洋文庫、
大倉山分室という
三つが丁度
一般図書館の姿を呈しております。何しろこれは特殊な存在でありまして、
利用者の数も
利用された
書物の数も極めて少いものであります。殊にこういう
静嘉堂及び
東洋文庫のような極端に限定せられた目的を持
つておりますものは、かような姿も止むを得ないものだと思
つております。
それから先に参りまして、大きい区別の六、「
国際交換業務」という所に入
つて行きますが、各国の間に文書の
交換をするということは、この
図書館の
一つの大きな
任務でありまして、そこでこの
国際交換ということに重点をおいておりますが、まだまだ我々の
図書館は世界と交通をする上におきまして十分ではございません。
アメリカの
中央政府とは公けに刊行せられた
資料は全部
交換をしております。全部というのはすべてを一かためにして
交換をするという
方法をと
つておりまして、全体で
相当の数に上
つております。ほかのものも含めてはおりますが、そこに掲げた
数字によ
つてわかりまするように、
日本から
外国に送りましたものは
図書、
雑誌で一万八千五百を送
つておりまするし、代りに
外国から受取りました
図書、
雑誌は八千百三十二冊ということに
なつております。これは両方で受取
つてしまうというものでございまするが、そのほかに甲の
図書館と乙の学会との間に
図書を
交換的に送るという場合の斡旋をもいたしております。この
数字もそこに出ておりまするが、
国内から
外国に発送いたしました
書類は五万二千百四十五冊に
なつております。
相当数の上で大きなものに
なつております。
それから次の七の所の「
図書館資料の収集及び
整理」ということは、これは非常に大事なことでありまして、
図書館に
図書館資料がなければ意義をなしません。あらゆる
方法を以て
図書館資料を集めるように努力しておりまするが、ここに挙げました
数字は、ただこの半年の間に起つた変化だけを掲げておるものでありまして、その蓄積された全数を示しておるものではございません。大体蓄積されたものは、
中央館におきまして約七十五万ばかりに
なつております。
支部図書館を含めますと四百万を超す形に
なつております。
図書館の
書物の
計算というものはまだまだ
合理性を持
つておりませんで、ただ
数字だけをここに申上げても、それだけでは何ら
意味がないと思いますが、その点は省略さして頂きます。
そのほか先のほうに
人員の
表等もございまするが、それも一応
印刷物によ
つて御覧を願うことにいたしまして最近のこの六カ月内に
図書館としてやや目星しい問題が
二つあるのであります。
一つはP・
Bレポートを買込んだということであります。たびたび申上げて恐縮でありますが、
ドイツ、
オーストリア等が
戦争終了の頃に持
つておりましたところの発明、著作の
印刷物或いは書いた物の記録は約十数万で、
アメリカのほうに持
つて来られましたものがだんだん開放せられて我々もそれを手にすることができる、これを
利用いたしますれば学問の上にも
相当進歩するというのでありますけれ
ども、いろいろの
事情でなかなか
日本にはその全部のものが入りかねておる
状況であります。昨年夏頃でありましたか、その点にも、
予算の
関係を離れておる時期でございましたが、各
方面の
お話をまとめまして、そこで
差当り十万五百点だけはその文献を買入れようということになりまして、早速注文をいたしましたが、なかなか
外国のことで思うように任せません。まだ到達はいたしませんけれ
ども、このうちの
ミミオグラフ版でできておりますものは多分今月の終りか来月の初めに着くと思います。もう船で発送したという
意味の通知が来ております。それからフイルムで来るものは
アメリカの
国会図書館で考慮してくれるらしいのでありますが、八月の末ぐらいに入手できるであろうと思
つております。そうなりますると、学問的な
調査、
図書館としての
任務の一端を達し得るものと思
つております。
第二の点はいよいよこの
図書館で
写真施設を
相当の
程度に
準備するということであります。この
写真の
施設、つまり
書物を
マイクロ・フイルムに写すとかいうような作業を、この
図書館ができます当時から考慮に入れましても、当時
写真機も買うこともできないような
事情、
為替等の面から思うように任せません。そこで
一つだけ極く小さい
写真機を、
アメリカの持
つておるものを借りて使
つておりまして、今日までもそういう
携帯用の
写真機を借りており、これでどうにか
マイクロ・フイルムの
写真をと
つておりました。そんなことでは実際
日本の
需要を満たすわけに行きません。民間にも少しばかり
設備がだんだんできて参りましたけれ
ども、併し今回そういう
写真機の写すほうのものを四組ばかり整えまして、なおこれの
現像施設等の技術的なことは、私は存じませんが、比較的最新の
設備をしたものを整えまして、この次の半期の間にはできることと思
つております。現在その
道具類は
アメリカから
船荷証券は送
つて参りましたが、まだ荷物は到達いたしません。そのうちに到達すると思います。技術的に
研究をする人も
アメリカに差出してございますけれ
ども、五カ月の修業を終
つて帰るのもそんなに遠くないことと思います。これが入りますると、かなり別個の
需要が出て参りまして、いろいろの
書物を
希望に応じてこの
図書館で縮めて渡すということもできましようし、殊に新聞紙等の保存に非常に困難なものが、
マイクロ・フイルムによりまして百分の三とか百分の四であるとかいう大きさで保存までできるように、而も紙は腐らないで、どのくらいもちますかわかりませんが、
調査によると、五百年以上もつというのでございまするから、そういう方向に貢献できるものと思
つておりまして、現に
日本の或る部分からはそういうことについて協力してもらいたいという
希望も出ております。今この際にはできておりませんけれ
ども、多分二カ月くらいの後にはこの
二つともほぼ目鼻がつくものと思
つております。附加えて御
報告申上げます。