○
廣瀬久忠君
らいに関する小
委員会における
らい予防法案についての
審議の
経過並びに結果を御
報告申上げます。
らい予防法案を付議されました
厚生委員会は七月八日の
委員会において
本案の
審議に先き立ちまして国会裏に集結いたしました
患者代表の解散を
政府に強く要請いたしました。ところが
政府の措置に期待し得なか
つたので、
委員長及び各派の代表者が
患者代表に面接いたしまして説得に努めました結果、
患者代表は
法案審議のために小
委員会を設けること、及び実情調査のために公聴会を開くことの希望
意見を開陳いたしまして、
厚生委員会の慎重
審議に信頼して解散をいたしましたことはすでに御承知の
通りであります。
同日の
厚生委員会は
らい予防法案の
審議を付託するために
らいに関する小
委員会を設置することを議決いたしたのであります。
翌九日の
厚生委員会においては次の
通り小
委員及び小
委員長の指名が行われました。小
委員長廣瀬久忠、小
委員山下義信、
藤原道子、
有馬英二、
榊原亨。
同日開催せられました第一回の小
委員会においては実情の調査並びに
法案審議に関する方針について協議が行われ、なお必要があれば参考人より
意見を聴取することを
厚生委員会に申入れることを
決定いたしました。同日午後小
委員長及び
厚生委員長は多摩全生園に出張いたしまして親しく園長職員代表及び
患者に面接じて四時間に亘りその
意見を聴取いたしたのであります。これは主として
患者だけを対象とした公聴会に代える趣旨のものでありまして、
法案についてはすでに陳情書等があるけれ
ども、
法案に関連した実情についての
意見を聞くのが趣旨でございました。
七月十三日、第二回の小
委員会を開催いたしましたが、この間に
厚生委員会においては、厚生省の
局長、東京都の衛生
局長を招致いたしまして、主として
患者陳情運動に対する東京都の衛生対策並びに措置についてその実情を聴取したのであります。同日小
委員会は
懇談会の形式におきまして
厚生大臣官邸で行われましたが、このときに谷口弥
三郎議員のおいでを願いまして、第十四回国会より第十五回国会に至るまでの
厚生委員会に設置されたる
らいに関する小
委員会における
審議の
経過並びにその結果について当時の小
委員長としてのいろいろな参考になる御
報告を求め、小
委員会においてもその尊い結果についてはできるだけの尊重をいたしたいということにいたしました。続いて弊害のない限りできるだけ
患者
の希望を取入れるという趣旨の下に
法案の逐条
審議を熱心に行いましたが、その結果は別紙の
通り十三項目に亘る問題が討議抽出されたのであります。
この十三項目を更に法
運営の
政府の言質をとる部分と、附帯決議とする部分、或いは次期国会における修正の部分並びに今次の修正の部分とに分類いたしまして、今次の修正はでき得る限り最小限度にとどめる方針を
申合せまして深更に散会をいたしました。
只今より十三項目の
内容を申上げます。
第一は法律の目的というところについて
らい患者のみる対象とするのでなくして、広く人類から
らいを撲滅すべき法の目的を闡明するということはど一うだろうか。又
らいの病名を、因習的意味を打破するごとき別の科学的名前はないだろうか。法律の
らい予防法という名称はと
つたがいいだろうという
ような
事項がその第一であります。
その次には
らいの問題について国又は地方公共団体いずれが主たる
責任をと
つてらい病行政に当るべきかということが第二の項目でありました。その次はこの秘密の厳守の問題について完全に秘密を守らせるという
ような意味のことはどうだろうか。それから或いは届出について県庁に届出るよりも
療養所長に届ける
ようにしたらどうだ。或いは又第五項といたしましては
療養所長が一の診断、診察について国立
療養所長が省令で定める医師をして診察をさせるということはどうだろうか。
〔
委員長退席、
理事大谷瑩潤君
委員長席に着く〕
第六には
患者全決の場合は退所、退院のできることを
はつきり書いて、そうして明るさを与えたらどうだろうという
ようなことを論議しました。それから又
らいの
患者が癒るということに対して希望を与えるために研究所を設けたらどうだろうか。それから、又次には家族の生活保護を今のままでは遺憾だ、あれをどうした
らいいだろうかという
ような問題もありました。それから又
患者の所内の作業については如何なる作業が適当であるか、又これに対する報酬を如何にするかという
ような問題もありました。又外出の問題についても、外出について現在とかく厳重な制裁を加えることに
なつておりますが、この点はどうだろうかという
ような問題もありました。それから所内の規律の問題についても、或いはかくのごとき規律は、三十日の謹慎、戒告という
ようなことがあるが、これはどうだろうかという
ようなことの議論もありました。又その
患者の家族の検診問題等から秘密の暴露する
ようなことがあるが、それについてはどうした
らいいかという
ような、そういう
ような問題の十三項目に亘
つての研究すべき
事項を選び出したのであります。それから七月十五日にはこの十三項目を中心といたしまして小
委員長が中心になり、厚生
専門員並びに参議院法制局並びに
政府当局と終日懇談いたしまして、この十三項目についての分析的研究をいたしたのであります。七月十六日の
厚生委員会におきましては
法案審議のために参考人より意味を聴取することに
決定し、この人選は
厚生委員長及び小
委員長に一任されたのであります。十六日開催の第三回小
委員会におきましては、参考人の人選及び日程について
厚生委員長と協議し、問題点十三項目に対する前日の技術的懇談の
経過並びに結果に関する
報告を
委員会で申述べたのであります。
〔
理事大谷瑩潤君退席、
委員長着席〕
翌七月十七日の小
委員会においては
らい予防法案に対する修正案及び問題点について慎重に協議を重ねました結果、前述十三項目から論議して搾り出したところの第一次試案というものを得たのであります。今この第一次試案を項目別に申上げますと、第一は国民一般に対するところの秘密保持の義務の規定を設けることというのが第一であります。次には治癒したる
患者の退院に関する規定を設けること、これが二であります。次には三には、所内の秩序維持は所長が
厚生大臣の認可を受けて定めるところの紀律規定によることとして、且つ懲戒に関する規定の表現を改めなければいけまいではないかということが三であります。四は
患者が最も心配するのは、その郷里に残した家族である。
患者の家族の生活援護を原案では十分でない、より以上拡充すべきではないか、これが第四であります。第五、
患者に対して癒るという希望を与える、これによ
つて必要な国立
らい研究所を設けること、これが第五であります。但しこの第五項は特別な予算措置が要りますので、この規定は二十九年度からでなければ施行ができないということ。以上が第一次試案であ
つたのであります。これは小
委員会において一応調査された修正案でありますので、各党派におけるところの意向をそれぞれ打診すること、又
堂森厚生委員長は衆議院の
厚生委員長に十分に了解を求めること、不肖私はこの問題並びにこの
患者が陳情運動に来たこのときの
政府の
態度を明確にすること並びに小
委員会の協議の線に沿いまして、予算の裏付を必要とするところの
患者の家族の生活保護の問題と、研究所設置の問題等について
厚生委員会において
大臣に
質疑を行うという
申合せをいたしたのであります。当日の会合の問題の焦点は
法案第二十一条即ち家族の生活援護の問題にあ
つたのでございます。七月二十日の第五回小
委員会におきましては、修正案に対する各党派の意向及び衆議院
厚生委員長との懇談の
経過について
報告が行われ、更に討議を重ねた結果第二次試案を得たのでありますが、衆議院の各党派の
意見を調整することは頗る困難な段階に立至
つたのでありました。その第二次試案について申上げます。第二次試案は、先ず第一は、この法律の理念を原案よりも明らかにし
ようということが一つ加わりました。その次には先の第一次試案と同じ
ように、国民一般に対する秘密保持義務の規定を設けること。三、治癒した
患者の退院に関する規定を設けること。第四に所内の秩序維持は所長が
厚生大臣の認可を受けて定める紀律規定によることとし、且つ懲戒に関する規定の表現を改めること。五は
患者の家族の生活援護に要する費用はその全額を国が負担すること。六は国立
らい研究所を設けること。但し予算措置の
関係があるので、この規定の施行だけは昭和二十九年四月一日とすること。これが第二次試案とな
つたのであります。小
委員会としては
患者家族の生活保護については生活保護法を尊重することという建前でこれを認めて、全額国費という
意見が強く要望されたのであります。七月二十一日の
厚生委員会における参考人の陳述及びこれに対する
質疑応答はすでに皆さん御承知の
通りであります。七月二十三日の第六回小
委員会におきましては、修正に関する衆議院側の各党派の
意見を調整することがますます困難な段階に到達いたしましたことを確認し、小
委員長は独自の立場から
厚生大臣の
責任ある
答弁を得ると共に、最小限度にしぼ
つた修正私案を以ちまして折衝し、その結果を見た上に
審議を続行せんとするに至
つたのであります。同日午後及び翌二十四日に
開会されました
厚生委員会においては、小
委員長の
らいに関する基本問題を中心とした
質問並びに参考人の陳述を基礎としたる
質疑が
厚生大臣に対して行われたのであります。小
委員会において重視された
患者家族の特別の生活保護
方法については遺憾ながら
大臣は賛意を示さず、飽くまで生活保護法の建前を固持し、ただその運用の面において改善に
努力するとのことでありました。二十四日第七回の小
委員会におきましては、参考人の陳述
内容と、
厚生大臣の
答弁内容とを総合的に再検討いたしまして、
審議を進め、小
委員長の最終的
態度を
決定するべく協議を重ねたのであります。二十七日の第八回小
委員会におきましては、小
委員長が独自の立場から
患者の静居三十日以内を十日以内ということにするという点と、
患者家族の生活保護に要するところの特別制度の創設ということと、
患者のための研究所の設置ということの三点に関する修正試案を小
委員長は以ちまして、折衝を各方面にいたした
経過報告をいたし、そのときに
厚生大臣は、二十九年度より
患者家族の生活援護は、生活保護法と別建で国費を以て措置すること、及び研究所の設置を二十九年度より実施すべく誠意を以て実施を期したいとのことでありました。そこで私はこれを附帯決議として
厚生委員会に
報告し、
委員会において
厚生大臣の言質をとるという小
委員長の方針について協議いたしました結果、生活保護法と別建の措置をとるという
厚生大臣の言明を重視いたしまして、討議をいたし、なお小
委員会は超党派的の立場からあらゆる
努力を払
つて慎重
審議を続行することと小
委員会は
決定いたしました。
二十八日の第八回小
委員会におきましては、小
委員の
意見を明らかにするということのために、
法案の中の基本的重要問題を再検討することになりました。この討議は二十九日の第九回小
委員会、三十日の第十回小
委員会において続行されたのであります。
この間において小
委員会に付託されましたところの請願、陳情を
審議いたしましたが、この
経過並びに結果につきましては、すでに御
報告申上げた
通りであります。
以上の
ような
経過を辿りまして、小
委員会は
結論として本病
患者に対する深い同情と
責任を以て熱心に慎重
審議を重ね、国政の現段階において政治的に可能なる範囲における
結論を見出すべく、必死の
努力を続けて
参つたのでございます。
本
法案の
審議におきましては、超党派的立場から各条項につきましても微に入り細を穿ち徹頭徹尾検討を続けましたが、特に注意すべき根本的重要問題の諸点につきましては次の
通りでありますから、それを申述べさせて頂きとうございます。
先ず法律の名称、題名の問題であります。この問題につきましては、或る
委員は学界の
意見を聞いて法律の名称を変更するということを
考えたらどうだろうかという御
意見もありました。いずれにいたしましてもよい名前があ
つたならば、
らい予防法という名前よりもこれを変えた
らいいじやないかという
意見が多数であ
つたのでございます。
第二条の国及び公共団体の
らいに関する
責任の問題につきましては、将来未収容
患者がなく
なつたという
ような場合には国一本の
責任にすべきであるという
意見がありまして、
当局もこれに賛意を表しましたが、要するに
らい対策は特殊の対策でありまするから、国が徹底的にこれを行う義務がある、
責任の所在は国ということを明らかにすべきであるという
意見が多か
つたのでございます。
第四条につきましては、秘密の確保が強く要請せられ、医師の届出のごときもただ県庁に届けられるでは困る。親展書を以て衛生部長に届出る
ように厚生省令等において
はつきりしても
らいたいという
ような親切な御希望があ
つたのであります。
第五条の検診につきましては、殊に家族の場合における秘密の確保が要望されましたが、これに対する
政府当局の
答弁は、単に家族であるという理由だけで検診を行うという
ようなことはやらない。その
方法についてはできるだけ秘審保持を
考えまして、結核等の集団検診の場合、或いは夜間訪問等の
方法によ
つて秘密をできるだけ守るという点についての小
委員の注意については、できるだけ
関係官吏に徹底せしむるということでありました。
第六条に規定する
患者の入所問題については、勧奨と強制入所等に関連性のないことを明確にすること、又いわゆる医師の診断なくして強制入所せしむる場合のあり得ることなどについて厳しき追及が行われましたが、これに対し
政府当局は、在宅
患者につきましては飽くまでも勧奨納得を根本の建前といたし、強制入所の対象は不浪
らい、或いは勧奨に応ぜずして公衆衛生上危険である
患者についてのみということにするというその限界を明らかにいたしたのでありますが、更に
委員の側よりは強制入所の対象については、それが悪質な
患者であるということを含めても
らいたいという要望もありました。又第五号に規定する医師の診断なくして入所せしむる場合があるが、それは都道府県知事は医師たる衛生部の当該官吏をして
処置せしむるのであるから差支えないという
政府の見解を発表されました。
第七条によるところの
患者の就業禁止につきましては、物件の廃棄についても補償制度があるのに、営業その他事業の禁止について補償のないというのは実に片手落ちではないかという
意見があり、これに対し
当局としては、他の法令との
関係もあるが、十分に研究いたします。併し今日でも生活困窮者に対しては生活保護法の適用をいたすことは勿論でありますという見解が示されました。
第十三条の更生指導につきましては、
患者作業の性格から申しまして、
患者に対して無理があ
つてはならん、
患者が希望することでなければやらしてはならん、又長いことやらしてはいかんという
ような点にいろいろ親切な御注意がありまして、これらの場合については無論これに従うという
当局の
言葉があり、なお
患者の作業に対する報酬については、明年度は倍額を
要求するつもりであるという
政府当局の言明がありました。
第十五条の外出の制限の問題、
患者の外出の制限については、その罰則が如何にも強過ぎる、結核その他の伝染病に比べまして不均衡を呈しており、あたかも犯罪者扱いをしておるではないかという御
意見がありました。
政府当局は本条項はたびたび無許可で外出する
ような悪性の場合に発動されるものに過ぎないのでありますという言明がありました。
第十六条に規定する秩序維持の問題につきましては、小
委員の
質疑に対し、秩序維持の
責任者は所長である。
患者はこれに
協力する建前である。そこで所長の定めますところの所内の規律というものは、規律の規定は
厚生大臣の承認を得ることといたしまして、各
療養所間における不公平をなくするつもりである。又謹慎措置については所長より詳細な
報告を
大臣に送らして、
政府当局より十分なる監督をするという
答弁がありました。
又本条の濫用については厳に
関係方面を戒めて
患者全体が納得する
ような運用を期したいという
言葉が
政府当局からありました。
次に第二十一条に関する問題、これは最も初めより最後まで重大な問題でありますところの
患者の親族の生活保護の問題であります。
患者の特殊性が強調されまして、これに対する特別の措置が熱烈に要望せられたのであります。
患者は全く一般公衆のために犠牲に
なつて
療養所に入るという形であります。従いましてこれに対する特別の措置がなければならんのは当然であります。従
つて患者が一番心配するところの郷里における家族に対する生活保護は、どうかして手厚い保護をしても
らいたいというのが希望でありました。だから生活保護法とは別建の国の負担によるところの援護措置を講ずることに
努力する。この
努力についていろいろ又問題がありますが、これらの問題については十分に慎重な研究を遂げるという
政府委員の
答弁がありました。
又小
委員会の一致して主張して参
つたところの研究所の設置の問題、これにつきましては明年度より設置に着手して、単に治療の研究ばかりでなく、本当にこれは一部のセクシヨナリズムに陥ることなく、非常勤職員を相当数置いて十分に研究所の能力を発揮する
ように最善の
努力をすると共に、
療養所における研究室の充実について十分な力を注ぐつもりであるという
政府委員の
答弁がありました。
なお
療養所の職員の増員及び待遇の問題について、明年度においては主として看護婦、司厨夫を含むのでありますが、総人員の六割乃至七割の増員を予定して、今大蔵省に折衝中であるという
お話もありました。又懸案と
なつておるところの、職員の待遇改善問題につきましては、人事院との全面的折衝において、明年度は必ず
解決する
ように進みたいということでありました。なお予算的
質疑といたしましては、慰安金の問題、作業賞与金の問題、食糧費の増加が要望せられ、
文化教養費、更生指導のための生業資金、補助金のごときもの、これらのものについては明年度予算に計上すべき旨が特に強調せられ、本年度は現予算の可能なる限り差し繰
つて賄
つて行くつもりであるという
考えであ
つたのであります。
政府はこの問題についてもなおできるだけの
努力を払うということでありました。
法案の最終的
審議の
内容につきましては、以上のごとくであります。
以上私の癩に関する小
委員会における
審議の
経過の御
報告を申上げます。