○
説明員(曾田
長宗君) 先般懇談会の形でいろいろと御
説明を申上げましたのでありますが、今日までこの問題につきまして
厚生省においてどのように考えを進め、準備を進めて参
つたかということをかいつまんで申上げます。根本的なこの制度の現状に対しましての批判というものとしましてはいろいろのことが考えられるのでございますが、今日における医師の資格というものが従来戦前におきました医学生の教育或いは今日の状況といたしましても、医学校を卒業しましたばかりの卒業生というものでは十分でない。このためにはやはり或る
程度の実地の修練を加えなければならないということが再確認されておるのであります。ただこれをどういう形でその医師の広い
意味での教育というものの中に加えて行くかということにつきましては、医学校の課程の中に含めて行けないかということが一応は考えられるのでありますが、その場合に教科課程を、年限を延長せずにこれを含め得るかどうかということにつきましては、これはむしろ私のほうよりは文部省のほうの直接の御考究の問題でございますが、私
どもいろいろと学校の先生がた、いろいろのところから伺
つておりますところから判断をいたしましたのでは、少くとも医学の専門教育だけではなしに、広くこの学制全体に対する批判というようなものから出発しなければならん、この五カ年間の課程の中に今日要望されておりますような実地修練の内容を盛ることが困難であるというように考えております。然らばこれを半年なり或いは一年なり延ぜばこれが実施可能であるかということにつきましては、この実地修練をいたしますその
施設でございますが、主として病院の
施設となるわけでございますが、この病院の
施設が今日の医学校の附属病院というようなものにおきましてはこの一カ年の実地修練を行うというためには相当
施設を拡大しなければならない。そういうような
関係でいろいろ物的の点につきましても、或いはそれに伴ういろいろ財政的な問題といたしましても、これは早急に実現はなかなか困難であろう。又その実態といたしましても医学校の附属病院というところは一般の患者の診療をいたしております普通の病院とはかなり性格が違
つて来ておりまして、いろいろ教育のため或いは特殊な研究を行うというような特殊の任務を持
つておりますことのため、ここに集
つて参ります患者というのは普通の患者は
割合少いのでありまして、一応一般のお医者さんがたに診て頂いて或いは民間の病院で診療を受けてお
つてそこで以てなかなか処理が困難であるというような非常に珍らしい病気であるとか、或いはいわゆるむずかしい病気というようなものが比較的多く集
つて来ておるというような点がございまして、普通の開業の医師、開業と申しましては狭過るかも知れませんが、普通の診療所或いは病院で診療を担当します医者が日常診ます患者というようなことから行くと非常に偏
つた患者が集
つて来ておる。インターンの教育修練の目的といたしましてはこれは専門教育ではなくて、飽くまでも一般医としての必要最小限の実習をいたすということが目標とな
つておりますので、大学の病院を幾分拡張いたしましてもそこに集
つて来る患者の質がそれにふさわしくないというような点もございますので、この学校の教育の中にこれを含めるということは少くとも早急に結論が出ないというような点で、私
どもとしてはこれに切替えるということは困難だというふうに考えております。
最後にはやはり学校卒業後実施修練をするということは必要と考えられるが、これは余りに固くすべてのものにこの義務を課す、そうしてその後に国家試験を行うというようなことではなしに、初めに学校を卒業いたしましたら直ちに国家試験を行いまして医師……、或いは試験を不要という説もございますけれ
ども、一応医師免許を与え、そして
一定の指定されました病院で一年或いは数年以上の実地修練を積んだ、済ませた暁に初めて独立開業を許すという制度にしてはどうかというような考え方も検討されたのであります。これにはいろいろの又御意見があるかと思いますが、私
どもの、
当局及びいろいろ意見をお問いいたしました国家試験審議会の実地修練部会の
委員のかたがたの御意見というようなものを総合いたしますと、さような制度を採用すると、この実地修練を
指導いたします先生がたとしても、或いは
指導を受ける学生のほうといたしましても、責任というものが今日においては十分果されるかどうかということが疑わしい状況にある。従
つてその成果がどの
程度に上
つたかということは、お終いにやはり何らかの形で以て試験というような制度を設けなければならんのではないかというようなこと、若しそれがなければこの制度は殆んど実質的に無に近いものになるのではないかというようなことが懸念いたされます。それから又卒業後直ちに医師免許の資格をや
つたらどうかというようなことにつきましても、まだ独立して医業に従事することが適当でないというふうに考え得られております。今日の医学校の卒業生というようなものは直ちに免許を、不安はありながらも免許を国家が与えるというようなことは、形式的にもここに相当無理があるのではないかというような点が考えられまして、私
どもとしては結論はやはり現在とられております医学校において十分基礎的な、又できるだけは実地についての教育もそこで可能な限りにおいては与えて頂きますけれ
ども、その実地の経験だけは不十分とは言いながら基礎的な教育というようなものはしつかりと与えられて、いい卒業生を送り出されますならば、それを学校の附属病院とだげに限らず一般の病院の中でも優れて実地修練にふさわしいと考えられます病院に配属いたしまして、そこで一年以上の実地修練を積み、そしてその成果が十分に上
つたかどうかということを国家が試験いたしまして、そしてその試験に合格した場合に一人前の医師として免許を与えるというこの現在の制度は、まだまだ簡単に崩すべきものではないというような結論に到達いたしたのであります。ただ現状におきましては、その制度が必らずしも円滑に進んでおらない。又その目的を十分に果してもおらないというようなところから、現在の制度の運営の
方法を改むべきではないかということは、いろいろな点を考慮いたし一応の意見をまとめたのであります。それを申上げますと、おおむね問題が三つに分れると思うのでありますが、
一つは実地修練の内容の向上ということでございます。もう
一つは実地修練生に対する経済的待遇の改善ということ、第三番目は実地修練生のいわゆる身分ということでございますが、この点につきましては、のちほど又細かく御
説明申上げようと思います。初めに戻りまして実地修練の内容の向上ということについては、実地修練の場とな
つております今日の指定実地修練病院でございます。この病院で
施設いろいろ十分整
つておらない、又
指導医が十分そろ
つておらないというような状況が多少ございますので、こういうような点を改めなければ、折角修練生が病院に参りましても、一カ年を十分利用し得なくて、殆んど空費に近かか
つたというような訴えが出ておるような状況であります。この病院の指定というようなことを厳密にいたそうというようなことで、その指定の基準等を
はつきりと定め、そうして又その病院の内容につきましても、詳細な
調査をいたしまして、そうしてこの選定に慎重な措置をとるということが第一でございます。言い換えますれば、指定
施設の、インターン
施設の厳選ということでございます。
それから二番目はこの
施設にお願いいたします実地修練生の数の問題でございます。この数がとかく評判のいい病院と申しますか、立派な病院でインタン生もそこでも
つて役に立つ修練を受けられるというふうに考えておりますところは非常に大勢の者がそこに集
つて参ります。そうすると、その
施設はいい
施設でございましても、余りに大勢の者が集まり過ぎるというようなところで、十分な
指導が行き渡らないというようなことでございます。これは具体的に挙げますれば、医学校の附属病院というようなところで、これは母校の、自分の学校の卒業生でもございますので、この母校に残りたいというような者がございまするというと、その病院の
施設或いは先生方の人数というものから考えまして多大だと思われるようなものが、そこに採用されておるのであります。これはいろいろな事情もございますので、ほかの病院と同じような基準で一律には行きかねるかもしれませんけれ
ども、かように余りに大勢の修練生が集まり過ぎて、修練の効果が上
つていないというようなところについては、具体的に個々の学校及び病院とよく御相談いたしまして、この定員を然るべき数に抑えて行くというようにいたしたいというふうに考えておりします。
それからその次は実地修練生がその修練の効果を上げますためには、日中だけではなしに夜勤をいたす或いは宿直勤務をやるということが必要でございます。各インターン
施設の中に修練生を収容いたします宿舎があることが望ましいのであります。今日の状況としましては、これも若干はございますけれ
ども大部分の病院に宿舎の整備ができておりません。これにつきましては非常に遺憾と考えられるのでありまして、国の
施設、国立病院及び国立大学の附属病院というようなところでは、このインターンを収容いたします宿舎を国費で以て創設する必要があるのじやないかというように考えまして、明
年度はこれに予算経費を若干組んで頂きたいと考えておるわけであります。なおインターン
施設の中には国立以外の公立及び私立の病院もございますので、これに対しましては宿舎の設備を強要するわけにはいかないと思いますが、できるだけこの宿舎を造
つて頂き、又そういうように宿舎を整備する意欲及び能力を持
つておられます
施設を今後も逐次選んで参りたいと考えるのであります。こういうように公立及び私立の病院がインターンの宿舎を
作つて下さるというような場合には、その半額を国から補助いたすというような措置が必要ではないかというふうに考えまして、国の病院及び病院における宿舎の設備費の全額及び国以外の経営いたしますインターン病院の設ける宿舎の整備費、その半額というようなものを合せてこの予算を組む必要があるのではないか、ただいろいろ国の経済
状態も非常に緊迫しておるような状況でございますので、余りに過大なことは要求申上げることも困難かと考えまして、一応これを三年計画で整備を終りたいというふうに考えて、
只今大蔵省のほうにもいろいろ御
説明を申上げて、考慮を願
つておる次第であります。
それからその次には
施設にインターンをお願いいたしました場合に、
指導医の先生がた及びその
施設に対して
施設及びその設備のいろいろな器具、機械類を使わせて頂いておりますので、これに対する謝礼を差上げておるわけであります。今日もこれは極めて僅かに予算に計上してございますが、これでは僅少過ぎると考えますので、これを増額して頂くというふうに考えて、大蔵省のほうといろいろ話合いを進めております。
それからなおこの病院の運営が、病院における修練生の教育が円滑に行
つておるかどうかということにつきましては、いろいろ慣れておらない病院等もございますので、これを十分
指導監督して行く、又非常に
成績の上
つております病院の経験等を広く伝えるというような
意味で、その
施設長或いは
指導医の研究会、懇談会というようなものを設ける、或いは国家試験審議会の実地修練部会の
委員のかたがたに、これは主として学校の先生がたでございますが、こういう先生がたに予算の許します限り
施設を巡
つて頂いて、その実況を視察し、それに対しいろいろな
指導監督をお願いするというような措置をと
つて、この内容を向上して参りたいというふうに考えております。
その次には修練生の経済的所遇の問題でございますが、この制度ができましたのは今日の日本において医師の資格としてはどうしても戦前に比べましてはより高いものが必要とされるというふうに考えられたのでありまして、それだけ今後医師になろうというふうに考えます医学生の人たちが、自分でそれだけ余計に勉強をして頂かなければならんということにな
つたのであります。それに対して国としましては特別な予算を計上いたしませずに、結局インターン生は病院にお世話にな
つていろいろ勉強をする、病院としましてはいろいろ世話に手がとれますけれ
ども、一方においてはその病院の仕事、診療業務ということと極めて密接した仕事を勉強してもら
つておるのでありますから、病院の業務としても若干の手が助かるのではないかというようなことも考えられまして、おおむねそのインターン生が病院におかけする迷惑と、それから病院でインターン生の協力と申しますか、こういうものによ
つて得るところと大体見当がつきませんので、先ず先ず相殺すると一応考えてもいいのではないかというようなことでスタートしたと私たち聞いておるわけであります。ところが実際に実施いたしまして数年を経た経験から申しますというと、病院のほうでもまだこの制度が熟して参りませんために、必ずしもその役に立つというふうにも考えられないというふうに考えております。病院のほうからこのインターンに対して協力と申しますか、サービスと申しますか、こういうものに応じて個個の病院で応分のインターンに対するいろいろな所遇の改善ということが行われるということも予想してお
つたのでありますけれ
ども、なかなかそういう状況に行きかねるというような
状態であります。そうなりますと一カ年間一応学校を卒業してから自分たちの生活というようなものを立てながら勉強をして行かなければならんというような事情にあるところから、非常に勉学の継続ということに困難を感じておるというようなことをインターン生も訴えておる次第でございます。又この医師が世の中に出ましてからは、成るほど今日においては日本においても自由開業医制度が根幹にな
つてはおるのでありますけれ
ども、その場合でもすでに社会保険或は生活保護法等によります社会的な診療というものが日本の医業の過半を占めるというくらいな、いろいろな趨勢はございましようけれ
ども、非常に大きな部分を占めて来ておる。決して単純に、自分が余計に勉強して腕を磨いたのだから、それだけ報酬を得られるだろうというような、自由な生業を立てて行くというような性格のものではない。又こういうような社会保険というような形をとりましたこの社会的な医業というものがだんだんと拡大して参
つておる。又国としてもこれに非常に頼ることが大きいのでありますが、かような点からいいますれば、この医学生が気持よく、そうして効果的に勉強をして、そうして立派な医師にな
つてくれるというようなことが国としても必要と考えられるのでございますが、この修練生に対しまして若干の経済的援助の途を講じたい、少くともインターンとして病院に勤めております間必要といたします
食事とか或いは診療に直接
関係のあります被服類とか、こういうような
程度のものは最小限でも国からこの制度を布いておる以上給与をいたしたいというように考えまして、従来からもいろいろと考えたことはあるのでありますが、今回は特にこの点の必要を感じまして明
年度からこの面において幾分の経費を組みたいというふうに考えて、これもその予算書を大蔵省のほうに提出いたしまして、いろいろ御
説明を申上げて考慮をお願いしておる
段階でございます。
それから最後に修練生の身分という点でございますが、この修練生の身分というものには私
ども二つ問題があろと思うのでありますが、
一つは医師法との
関係における身分でありまして、修練生にも或る
程度の医業、診療業務ができるということを何か明文化してほしいというようなことであります。又インターン時代はどういう仕事はできない、診療業務ができないときめられても、どこまでできて、どこからできないかということを
はつきりさせてほしいというようなこともございます。これは私
どもいろいろ検討いたしました結果、この学校を卒業いたしましたばかりのものと、それからインターンの末期におきまして国家試験を受けさえすればもう一人前の医師になれるという
段階のものとでは非常に力の差がございますので、一概にどういう仕事はや
つていい、どういう仕事はや
つて悪いということを
はつきりと成文として表わすことは困難だと考えまして、やはり飽くまでも
指導医の
指導監督のもとにおいて、この診療の業務を習
つて行く人たちが修練生であるというふうに考えており、又そう考えざるを得ないのではないかという結論に到達しております。で、ただこのいわゆる身分と申しておりますうち、この
施設との
関係ということになりますと、例えばインターン生が病気に
なつたというような場合に、普通の職員でございますれば、その
施設からいろいろな世話をやいて頂けるのでございますけれ
ども、そういうときに何の保障もないではないかというようなことを訴えております。これにつきましては、これも
はつきりと今申上げるような結論は出ておりませんが、その病院の準職員とい
つたような形にいたすというような、何かこれは
方法が考えられるのではないかというようなことで、国家試験審議会の実地修練部会におきましても、この点及びその身分の点について、学校から出て
施設に入
つたばかりのときには、どの
程度の仕事をさせるか、そしてだんだん修練が進んで来たならば、どのような仕事まで教えるかというようなことを定めるために、この身分の問題については、更に小
委員会等を
作つて検討をし、具体案を練ろうというようなことにな
つております。大体今日までこの問題につきまして、
厚生省において考究いたしました考え方及びその附置されております国家試験審議会の実地修練部会において御検討を得ました結果を申上げた次第でございます。