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鹿島守之助君 私はこの
建設業法改正案につきましては、
政府の
説明を十分了承いたしまして賛成いたしますが、併しこれに満足するものではございません。
建設業法が制定されまして、従来全く放任されておりました建設業に登録
制度が布かれ、又片務契約是正の目的を以て中央建設業審議会において
工事請負標準契約約款ができましてから数年になりますが、その運営の実際を見ますに、登録
制度は全く形式に終り、標準契約約款の実施も勧告をなし得るにとどまり、強制力が伴わないために容易に
一般に普及されない憾みがあります。更にその
内容につきましても考慮を要する問題が多々ありますが、次に述べます諸点について
政府、特に
建設省御
当局の深甚なる御考慮を煩わしたく存じます。
先ず第一に、
工事請負契約に関して生じます紛争の処理について、従来建設業者は
異議を申立てる、いわゆるクレイムの機会が与えられていないということであります。御承知のように建設業は
一つの総合産業とも申すべきものでありまして、
工事の
着手より完成までに長時間を要し、契約書におきまして如何ほど詳細な規定を設けましても、施工に当
つては往々にして当初予想もいたさなか
つたような種々の問題に遭遇するものであります。これらの問題がすべて注文者と建設業者の間の協議により円満に
解決ができますれば甚だ結構なことでありますが、実際におきましてはややもすれば注文者の一方的な不条理な
解決方法を強いられるのが
実情であり、建設業者は自己の正当なる主張を申立てる機会すら認められず、仮に強いてこれを申立てても、何ら回答すら与えられないのがしばしばであります。これは
建設業法第十八条の根本原則に明らかに違反するものと考えられるのであります。即ち同条には、「建設
工事の請負契約の
当事者は、各々の対等な
立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に
従つて誠実にこれを履行しなければならない。」と規定されておるのであります。御
当局におかれても十分御研究、御承知のことと存じますが、米国の請負契約書におきましては、おおむねこのような紛争の処理については極めて公正なる紛争処理条項を設けているのであります。例えば沖縄の米軍
工事乃至JCA
関係工事の契約書第六条によりますれば、紛争の
解決につきまして五万ドル以下の場合には、先ず契約官の裁定に付し、これに不服ある場合は三十日以内に司令官に上訴し、その裁定を求めることができます。この裁定は最終且つ
決定的効力を有するものと定められておるのであります。又五万ドルを超える場合には、右司令官の裁定に不服があれば更に軍長官に上訴し、その裁定を求めることができるのであります。この裁定は最終且つ
決定的効力を有しますが、いずれの場合にも建設業者は裁定に際して証拠書類の提出、
証人の喚問等を求める機会が与えられているのであります。而してこの上訴
手続とは別にコート・オブ・クレームズ、即ち請求裁判所に上一訴する途が開かれているのであります。なお米軍
工事の実際に徴しますに、この種紛争は五万ドル以下の少額のものが極めて多く、これらが右の紛争条項によ
つて至極簡単且つ迅速に処理されているのであります。従いまして、私は是非ともこのような紛争処理に関する建設業者のクレームを法制化して頂きたいのであります。これは日本の全建設業者一同の強い希望であり、すでに本年三月二十八日付全国建設業協会長並びに土木工業協会長の連名にて
建設大臣へ請願しているのであります。これがためにはかかる紛争処理に関する規定を
建設業法中に設けることが最も望ましいのでありますが、少くとも標準契約約款を速かに
改正せられ、請負契約に関する紛争処理について建設業者がクレームし得る権利を有することを明らかにせられると共に、その
手続規定を設け、同時にクレームしてもこれがために将来不利不公平な取扱いを注文者より受けないことを保障する規定も設けて頂きたいのであります。この点に関する
政府御
当局の御意向を承わりたく存じます。これが質問の第一でございます。