○専門員(森
荘三郎君)
只今議題となりましたものの中で、先ず最初に百十号から百十七号までについて申上げます。
これは鉄くずなどの売渡しが不当であるという検査院からの
批難でありまして、これと同じ種類のものが前年度にもたくさん掲げられておりまして、それは前年度の検査
報告の百四十九号から百五十九号までの間に多数の問題が掲げられているのであります。どういうわけでこのような問題が起るのか、その全体についての説明が
会計検査院の検査
報告の八十六ページに記されておりまするので、これを見て頂きますればその全貌がわかろうかと存じまする。なおそれに対して
内閣から提出されておりまする説明書のほうを見ますると、それの五十一ページから五十二ページへかけまして、一応の説明が掲げられているのでございます。
さて
一つ一つの問題について申上げまするが、百十一号は鉄くずを売渡したのでありまするが、実貫契約ということでありまして、実際引渡したその数量を一々看貫いたしまして、最初の契約よりも超過しておるならば超過分は追徴する、こういう約束のようであります。さて実際に引渡しました数量が当初の契約に比べて若干多か
つた、然るに財務局のほうでは代金の徴収決定が甚だ遅いということが
批難されているのであります。
当局の答えは、遅か
つたことは誠に申訳はありませんが、そののちこれらはすべて徴収済みにな
つておりますということを述べております。
その次の百十二号は、舞鶴方面での問題でありまするが、地下に埋没されておりましたケーブルを或る会社に発掘をさせた。そうしてその会社に随意契約でこれを売渡した。そこまではまだよいのかも知れません。尤もそれについて果してそれが適当であるか、それとも競争入札にすべきであるかという点について、検査院と当局との間に多少の見解の差があるやに見受けられまするが、併し当局の説明書を見ますると、本件は
予算決算及び会計令臨時特例第五条第一項第十七号により随意契約によ
つて一括
処分ができるものであるということが善いてありまする。さてその点から続いてその
内容に入りますると、検査
報告の八十八ページの第一行目に出ておりまする通りに、これだけの分量のものを三回に分割をした、而も同じ人に三回に分割をして売渡したということは如何にも脱法行為のような意図が見える。それが甚だ面白くないというふうに記されておるものと見受けます。それからその価格につきましても、これはわかりやすいようにガリ版刷りで比較対象をいたしておきましたが、当局の認定価格のほうを上に掲げまして、それに比べて大阪の市場価格が下のほうに出ております。両方を比較いたしますると、どの
程度認定価格が低いのであるかということがおわかりになろうかと思います。その低い理由につきましてその紙の裏のほうに書いておきました、業者側に対してマージンとして二五%を認めたというのが当局の答えでありまするが、検査院の認定では実際にはこういう場合にはこれを認めない取扱いにな
つておると言われます。その次に当局はこの埋没しておりました地下ケーブルを発掘するための費用その他いろいろな経費のために1トン当り三万九千円余りを認めて計算して、それだけ値段を引いて売ることにしておりまするが、検査院の見るところによりますると、ほかの所へ売
つたものについては、こういうために要する費用として一万円だけしか認めていない。
従つてそれだけの差額をこの際何故に多く認めたのかという
批難のようであります。結局金額にいたしまして百二十二万円だけ安く売払い過ぎたというのであります。そうしてなおそれに附加えて、その代金の約半分が収納遅延にな
つておるという
批難であります。
これに対する当局の答えは、法律の適用を誤ま
つたということと、価格を調査するのにその調査が不十分であ
つたと言いまして、結局のところ検査院の指摘を全面的に認めて、遺憾の意を表しておられるものと見受けられます。
その次の百十三号は、くず鉄を八幡製鉄会社に売渡したのでありまするが、四月一日に鉄くずの統制が解除にな
つておる。
従つて値段はもつと高くな
つておるわけでありまするが、実際鉄くずを売買されたのは四月及び五月であ
つた。そうすれば売渡し当時の市価は四月、五月のときに高くな
つておるものでありまするから、その高い価格で売払わなければならないのに、これより先まだ統制がありまする間、二月に改訂された統制価格を適用して安く売
つた。これがために八百余万円の損をしているという
批難であります。
これに対する当局の説明は、三月の末に売買契約はすでに決定されてお
つたのであ
つて、ただ手続きが遅れたために形の上では四月及び五月にな
つておる、併し実質は三月のことでありますから、二月改訂の統制価格を適用するのが当然である、こういう弁明であります。それに対して検査院は三月の頃には実際の取引価額は統制額を遥かに上廻
つてお
つた、そうして四月一日から統制が解除されるということはもうわかりき
つた必至の情勢にあ
つた、そのことを知りながら三月の末に何故に取急いで売渡しの決定をする必要があるかという
批難が重ねて述べられているのであります。結局この百十三号は当局と検査院との
意見が対立のままで残
つているのでありまするが、先に申上げましたように、前年度における
批難事項の中にもこれと極めて似寄
つたようなケースが若干あ
つたことを記憶いたしております。
その次には百十四号乃至百十六号というものを一括いたしまして、これは賠償指定とな
つておりました国有の機械器具類を連合国軍のほうからスクラップにしてしまうということを
条件として賠償解除に
なつたものでありまするが、こういうような品物は従来保管をする場合にも非常に注意して保管がされてお
つたのです。本当に勿体ないような品物を無理にぶちこわすというようなものでありまするから、上級品が、上等の品物が相等多いはずである、ところが当局がこれを売却する際には上級品を極く少く見ておる、
下級品を多く見積
つて結局安い値段で売却をしておる。その実例としまして次の三件が挙げられているのでありまするが、百十四号の問題は、売渡したほうの計算では一級品というものを九十九トンしか見ておりません。買付けたところの八幡製鉄の取扱いを見ますると、五百六トンも一級品として整理しておる、それで二十九万円の損がここに現れる。
次の百十五号を見ますると、当局の認定では上の欄に掲げました通りに、並故銑、よう解用二級品などというものが上に書いた通りの
数字にな
つておりまするが、実際買付けたほうの取扱いを見ますると、並の故銑と言われるものが上等の故銑として扱われておる。よう解用の品物のごときは三種類に分けまして、非常に上等品の中へ大部分が入
つておる。
従つてこの価格を計算すると、百万円くらいは安く売り過ぎておるという
批難のようであります。
次の百十六号を見ますると、これ又上と下とを比べて頂けばわかりまするが、かように上等品として高い値段で売るべきものを安く売り過ぎておるので、この場合には二十万円の損が現れておる、こういう
批難であります。
これら三件に対して当局の説明を見ますると、当局は
日本標準規格によ
つて等級を決定したのである、
従つてその点この物差しから言えば少しも間違いがない。ただ買付けたところの会社のほうでは当時鉄くずが非常に需要が多くて品物が払底であ
つたというような場合でありまするから、高い値段で売るために違
つた標準でこれを検収するというふうにしたので、そういう事情の下に買受人と売払
つた政府との計算が合わないけれ
ども、
政府そのものは決して間違
つたことをしておるのではないという弁明であります。なおそれに附加えてこういうことを言
つておられるのでありまするが、こういうものの売り方はいわゆる仕切り売りと称するものでありまして、そこにあるこの一山を幾らで売るというような形の売り方をするものでありまするから、損をするときもあり得をすることもありまするが、検査院の御指摘にな
つておりまするのは損をした場合のみを取上げて御指摘を受けております。成るほどそれだけを見てもらえば確かに悪いということにはなりまするが、すべての場合がこういう場合ばかりでもない。全体を御覧を願いたいというような希望を附加えて述べておられるのであります。
それから次の百十七号は、これは最初に契約いたしましたものに附加えてあとから品物が出て来たものがありますので、それとも一緒にしてしま
つて当局では売却をされたもののようであります。
従つて引渡した数量は初めの契約よりは超過いたしますが、その追加部分を徴収するに当りましては、最初の契約と同じ単価で売渡している。検査院の見るところによれば、これは最初の売渡しのものとあとから出て来たものとは別途に売買契約すべきものであるというのが検査院の御指摘であります。これに対して当局は、あとからそういうくず鉄が出て来た事情があるということを述べておられます。それは説明書のほうに出ておりますが、百十七号のイロハのイのところに、本件は警察予備隊が駐屯するための設営所構内に散在するスクラップを清掃し、これを池又は塵埃捨場に投入する等の措置をとりつつあり、残余のスクラップも投入される虞れがあ
つたので、至急売払いを必要としたため一括入札に付したものである。その結果埋没しているものの数量が確認ができなか
つた点な
どもあるし、精算契約をした関係上、数量不足の際の払戻しなどを考慮し見積数量の八割を採用したことにより、実貫数量が見積りの量を超過することに
なつたとかいうようなことを弁明しておられまするが、検査院では、超過数量が余りにも多いではないか、最初の契約数量が相当あ
つて、若干の超過というならば話がわかるけれ
ども、非常に超過が多いから、その点から考えても別途の契約にすべきものだという御
意見のようであります。それから又検査院は、内訳の単価は入札のときの買受人の見積単価である、その見積単価を最後の精算の場合の単価にそのまま用いているが、これがいけないと言われるのを、当局のほうでは、契約書の中に超過する分は入札の単価により精算すると書いてあるから、その通りにしたのであると言
つておられます。
それから検査院では、当時の市価はもつと高いのに割合に安く売
つたのではないかと言われるのに対して、当局では、入札価格にいろいろな費用を考慮に入れなければならないので、費用のかかる点を考慮すると、市価に比べて不当に安か
つたというほどではないと言われております。
最後に追徴すべき代金の中に未収納のものが五十万円ほどあるというのでありますが、当局はこれについては回収は努力中であるという答弁であります。