運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-07-23 第16回国会 参議院 経済安定・通商産業連合委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十三日(木曜日)    午後一時四十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。   経済安定委員    委員長     早川 愼一君    理事            高橋  衛君            八木 幸吉君    委員            奥 むめお君            鮎川 義介君   通商産業委員    委員長     中川 以良君    委員            石原幹市郎君            黒川 武雄君            西川彌平治君            松平 勇雄君            岸  良一君            豊田 雅孝君            海野 三朗君            藤田  進君            白川 一雄君   政府委員    公正取引委員会    委員      湯池謹爾郎君    公正取引委員会    事務局経済部長 坂根 哲夫君    経済審議庁調整    部長      岩武 照彦君    通商産業省企業    局長      中野 哲夫君   事務局側    常任委員会専門    員       桑野  仁君    常任委員会専門    員       内田源兵衞君    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○私的独占禁止及び公正取引確保  に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣送付)   —————————————
  2. 高橋衛

    委員長代理(高橋衛君) これより経済安定・通商産業委員会連合委員会を開会いたします。  前回に引続き私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案につきまして質疑を継続いたします。本日は只今のところ政府側出席といたしましては、公正取引委員会から委員湯池謹爾郎君、経済部長坂根哲夫君の御二人だけが御出席でありますから、御質疑のあるかたは順次御発言を願います。
  3. 白川一雄

    白川一雄君 第十一条の件についてお尋ね申上げたいのでありますが、最近金融資本によつて日本経済が大きく動かされておる実情でありますから、或る程度金融機関圧力とかいうことも避けがたい実情とは思いますけれども、程度以上に行くことにつきましてはこれを抑制いたしませんと、独禁法を設けました趣旨と反する結果が出て来ないかということを恐れるのであります。最近事業界におきましても系列ということが叫ばれまして、金融業者事業団体一つ団体になりまして、事業界の大きなユニットを形成しようとしておることは御承知通りであります。この十一条によりますと五%まで株を持つことができるということになつてつたのがどういうわけで一〇%になつたかということにつきましても明確な理由がわかりません。大体銀行事業界の株を援助する意味で持つ場合はあろうと思いますけれども、そうでない限りは金融業者が株を多く所有するという必要はないのじやないか。その中には特例で代物弁済その他でそれ以上にも持つことも許されております。できるだけ早く処分するという事柄のみによつて規制されておるようにも見受けます。又銀行がたくさん持つた株の処分方法ということにつきましても、何らの規定を設けられていないということになりますと、悪く解すれば金融機関事業体とが、まあ甚だ下品な言葉でございますけれども、ぐるになつて無力ではあるが事業そのものは非常に重要な事業だというものを金融力圧力でこれの支配力を他に持つて行くという事柄がだんだん今後起つて来るのではないだろうかという心配をこの条文を見まして感ぜられるのであります。私ども戦前に身近に体験したことでございますが、非常に大きな、不自然に大きな力のものが出ますと、私は北満のハルピンで経験したことがありますが、日本の有数な商社が名古屋近くの枇杷島から野菜まで持つて行つて商売をし、最後には雨傘から吸物に入れる「じゆんさい」まで取扱つたということのために、日露戦争直後から粒々辛苦地盤作つた小さい商人が枕を並べて破産をした実情等がありますが、不自然に金融の力が強いためにだんだんそういう形になつて行きますと、非常に恐るべき現象が又起つて来るのではないか、こういうことを考えさせられまして、この十一条というものを眺めますと、甚だそれに対する危険があり、特に中小工業なり、或いは大工業でありましても、金融部門との関連性のない仕事がだんだん金融の力によつて企業の中に吸収されて行くという、理窟を外れた必然的流れになる虞れが多分にあるのじやないかという点が考えさせられるのでございますが、公坂のほうではこの点に対しましてどういうようなこれに対する規制の線を持つておられるか、承わりたいと思います。
  4. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 只今第十一条に金融業を営む会社持株率の問題に関連して御質問があつたわけでありまするが、御承知通り現行法におきましては、金融業国内の他の事業会社に対する持株率は五%ということになつております。これを今回一〇%に引上げて提案いたしておるのであります。この点はお説の通り金融機関がその融資その他の点から通じて事業会社に及ぼす力が強いという点を顧慮して、現行法におきましても金融業については持株率は五%に抑えておるのであります。併し今回の改正におきまして、一般事業会社につきましては、従来競争関係にあるものについては一株も持てなかつたものを、一定取引分野競争を実質的に制限しない限り持てるというふうに緩和いたしました点ともからみ合せまして、又同時に現行法金融機関持株率の五%という問題につきましては前から問題がありまして、御承知通りすでに保険業法におきましては、保険会社は一〇%まで持てるということになつておるのであります。そうしてなぜほかの金融機関について独禁法において五%にとどめておつたかと申上げますと、前の昭和二十四年の本法改正の際に、普通の銀行につきましては、銀行法改正するという考え政府部内にありまして、その際銀行法改正されるのであれば、その銀行法自体においてまあ一〇%までならいたし方がないという考え方公取としてもとつてつたのでございます。それがいろいろな都合で銀行法自体改正が行われずに今日まで参つておるのでありまして、従つて保険業法においては一〇%、普通金融機関については五%というその権衡の問題等もございまして、今回一般会社株式取得についての制限を緩和する際におきまして、従来保険業法が認ておりました一〇%並みにほかの金融機関についてもこれを認めるということにいたしたのであります。それから只今お話のありました金融機関がその金の力を利用して大企業等に力を貸して、それが独占的になるようなことになる虞れがあるのではないか、或いは金融機関の力によつて会社をそういうふうに導く虞れがあるのではないか、それに対して何か考えている点はあるのかというお話につきましては、若し金融機関が不当に自分の経済的に優越している地位を利用いたしまして、その相手方に不当な損害を加える、或いは不当な取引条件を強制するというようなことがありますれば、その具体的事態によらなければいけないと思いますが、場合によつて只今提案しておりまする不公正な取引方法の例といたしまして、それの第五号に「自己の取引上の地位を不当に利用して相手方取引すること。」という項がありまして、それがその権力を濫用しておるというようなことになりますると、場合によつては不公正な取引方法として違反になるということもあり得るというふうに考えておるわけであります。
  5. 白川一雄

    白川一雄君 金融機関がなかなか不公正に見えるようなへまなことをやるようなことはやらないと思うのであります。実際問題としては、例えば或る会社に株券を担保で金を貸しておるというときに、債務者が更にその借入期間の延長を願うというときに、その産業の性質から言いまして、延ばしても差支えないものを延ばさないというてこれを取立てして、代物弁済担保の株を取るということがありましても、これは不公正な取引とは言えないと思うのでございますけれども、実際の問題といたしましては、最近系列ということが強く叫ばれ、又その線に動きつつあるところから見ますと、非常に有望な仕事であるが、そこの御主人公が三十年、四十年粒々辛苦作つて来た事業であるけれども、その事業そのものが欲しいために、そういう金融の力を利用して、不公正ではないが、だんだんその独禁法というものが案じて作られた内容違つた傾向に行くという点等についての御考慮の面があるかどうかという、私は実質的な面に対する観察なりお考えなりを承わりたいと思います。
  6. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 金融機関がその融資先の株を担保にしておりまして、それを場合によつて期間を延長してもよろしいにもかかわらず、その期限通り取立てるということによつて、その担保物件である株式を取得する、そうしてそれが同時にその会社をして或る会社に支配させるというようなことに対する何か措置があるかどうかという点につきましては、実は現行法改正におきましては、この十一条関係担保権云々の問題につきましては実は現行法通りでございまして、特にそれをどういうふうに処分させるとか処分先を指定するとかということまでは公取としてはいたすのはどうかということで、これは従来とも同じでございますが、その処分先等については特別に指示するということは考えておらないわけでございます。
  7. 白川一雄

    白川一雄君 それに関連して私ども考えさせられるのは、今度の独禁法が御説明にもありましたように形式的制限を緩和して実質的制限に重きを置く、これは文章としては甚だ立派でございますけれども、こういうものは形式的制限というものであつて初めて実質的に制限存在し得るので、形式的制限というものがなくて実質的制限というものは、今御説明がありましたようにただ文章の上だけであることになりまして、実情というものに当てはまらない空文に陥つてしまうのじやないかということを我々現業にタッチしておる者としましては痛切に感ぜられます。まして今度通産大臣手許にこれが行つたということになりますと、甚だ抽象的であるだけに政治的に動かされる虞れが非常にあるんじやないか。つまり、抽象的にこういう法律が出ましても、実際上何らの効果もないものになつてしまうのではないかということが心配されます。かというて、それじやあ通産大臣手許を離して現在のまま公取支配下に置くということにつきましても我々一つの疑点を持つておるのでございます。公取に対する批判のようで恐縮でございますけれども、およそ仕事というものは理窟や道理ばかりで動くものじやありませんで、毎日毎日違つた要素が起つて来て、いわゆる呼吸しているような恰好で回転しておるものでございますので、裁判所のものを扱うような考えでこの産業界のことを扱つて頂いたらこれは命取りになるだけで、やられることは立派でもそのタイミングを外してもらいますと何にもならんことになりますので、若し通産大臣主管というような政治的面に扱われることが幸いに避け得たといたしましたならば、公取の中に公正なる事業界その他のかたの参加を求めて、虚々実々の毎日の実際的動きに即応した公取としての使命の点をはつきりしてもらえなければ、幾ら独禁法を、こういう法文を置いても効果のない空文で、うまくこの法規の裏をもぐる者のみの勝ちとなつてしまつて、それを咎めたときにはもう処分は済んでしまつておるというような事柄になるんじやないかということをこれをつぶさに研究さして頂まして、我々実際毎日実務をやつております者からはその点がなんだか雲の上の法律のような、我々の実生活にどれだけこれが産業界中小工業以下の存立を助けてやろうというような役に立つものだろうかということについて非常に疑問を感じておるのでございまして、公取現在のお考えといたしましては、公述人等の御意見もいろいろありましたが、公正取引委員会存在をしておる限りは何らか存在の意義あらしめるためには、そこに権威を持ち同時にその権威が実際生活に密接に行くような内容の充実ということを図つて頂くような線が現在はないものかどうか、先ずそういうことはもう要らないという現状になつているのか、その辺をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  8. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 只今白川委員からお話があつたことは誠に御尤もでありまして、実は我々といたしましても公正取引委員会委員自体にいま少し経済界に実際携わつて来られたかたがた、或いは場合によつては学者或いは言論界等委員かたがたにもう少し参加して頂けるようなことにして頂ければ、非常に実際の運用につきまして各方面意見を総合してやるということについて意義があるものと考えておるのでございます。併し御承知通り委員会委員の定数も、むしろ前に七名であつたのが五名になつたような現状もありますし、又実際問題といたしまして民間から来られるかたについてはいろいろな委員としての身分上の制約があります関係上、必ずしも喜んで来られないというような今までの実情等もありまして、その点委員会の構成につきましては必ずしも人員が公正になつていない点については甚だ遺憾に存じております。それは同時に又一面委員会事務局の機構も予算の許す限りできるだけ整備して頂きまして、各方面かたがたもそれに参加して頂くということになれば、委員会それ自体の不足の面も幾分救われるのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。それから今言つたよう委員会のやる仕事がどうしても時期遅れになつて実情に副わないんじやないかという御意見又お叱り、誠に御尤もで恐縮しておる次第でございますが、御承知通り委員会が正式の処分をいたしますと、審決なりそういう処分をいたしますと、東京高等裁判所に対する出訴という途を設けられております関係上、而も東京高等裁判所におきましては、公正取引委員会の認定した事実は裁判所を拘束するというような形になつております関係上、どうしてもその処分については慎重にやらざるを得ないという憾みがあるので、仰せの通りのようなことがちよいちよいあるわけでございます。併し委員会といたしましては、そういうような場合には正式な手続によるまでもなく事実上或いは勧告というようなことでできるだけそういう緊急を要するような場合には御注意を申上げるというようなやり方でその要請に応えて行きたいと思つておりますし、又事実そういう事例のほうが実際の審決等よりは多いのでありまして、その点御了承をお願いしたいと思つております。
  9. 白川一雄

    白川一雄君 最後にお願い申上げたい点でございますが、この法文を私どもよく勉強さして頂きまして非常に矛盾をした二つのものを感ずるのでありまして、これの民主化を図るという理由がありましたが、成るほどそういう理由はあつたろうと思いますし、それは堅持して頂かなければいけないと思いまするが、この法律というものは占領軍日本の国力を弱めてやろうという意識的な作為がかなりあつた法律のようにも解される節がありますので、日本が貿易不振という今日の状況におきましては、勧告を大いにやつて、その方面日本海外に対する力の結集というような点においては、非常に必要を感ずるのでありますが、だけれども反対にこの空気に便乗して国内産業において余り不自然なる偏在を来たして、戦前に我々がつぶさに体験させられたような悔いを残されないように……。独禁法を真中にして我々矛盾した二つを非常に感じますので、何だか今度のこの案を見ますと、公取のこれに対する積極性と申しますか、そういうような或る程度退歩したような、一歩退いたような感じを受けるのでございます。大いに輸出海外と取組む上においての結集という上においては力を入れてもらわなければいけませんが、それに便乗した国内産業形態にならんように審決その他で裁判所のように判決するだけでなしに、公取という使命の中には勧告以上の指導的行き方というようなものを考えてやつて預かないと、この法文悔いを非常に将来残すことがあるのではないかという点がまあ私甚だ生半可でございますけれども、これを勉強しておる間に感じました矛盾二つ考え方になるわけで、ございまして、この点は十分つ公取としては御注意を願いたい、こういうふうに感ずる次第でございます。
  10. 中川以良

    中川以良君 私が先ずお尋ねを申上げたいのは、第六章に適用除外があるのでありまするが、即ち自然独占に固有な行為、それから事業法令に基く正当な行為、それに無体財産権行使行為、これらはいずれもここにはつきりと独占禁止法除外を認められておるのでありまするが、併しこのほかにも法令に基くものとは言えないかも知れませんけれども、例えて申しまするならば、輸入制限をしておる物資とか、或いは輸入に当つて為替割当をいたしておるところの取引等は、一応そういう制度によつて海外競争から遮断をいたしまして、国内業者がその割当を受けたものが不当に独占的行為ができるような場合があると思うのです。こういうようなものに対しましては、どういうふうにお考えでございましようか。
  11. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 只今お話適用除外法令に基くもの以外に、例えば輸入管理或いは割当等物資についての独禁法違反のような場合でも、それを適用除外するかどうかという御質問かと考えますが、これは非常にむずかしい問題でありまして、一応建前といたしましては、輸入制限をされておりますような物資或いは割当をされておりますような物資取扱つております業者といえども、この独占禁止法適用除外されるものではない、適出する、こういうふうに考えておるわけであります。ただその場合に、例えば例をこの前の綿紡操短等にとつて申上げますと、御承知のように綿紡につきましては、原綿為替管理法等に基く割当をされる形になつております。その場合に紡績業者お互い話合つて生産制限をするというような、言い換えれば自主的に生産制限をするという協定をいたしますと、これは現行法第四条なり或いは第三条に触れて独占禁止法違反になろうと思います。ただその場合に割当権を持つておりまする官庁なりが、生産制限をするということを前提にして、そうしてそれに従う限りは割当をやる、そうでなければ割当をしないというような種の、而もそれが法律規定に基いて権限のあるものがそういう強制をするという場合に、そういう勧告に基いて業者生産制限をせざるを得ないというようなことになりますと、ここに第四条なり第三条に言う取引制限ということは、成立たないのじやないかという解釈を持つておるのであります。ただこの場合に又実際の例といたしまして、綿紡の場合には通産省のほうから各紡績業者ごと個々にお前のところはどれだけ、お前のところはどれだけ、そうしてそれ以上生産した場合には原綿割当てない、こういうようなことになつております関係上、お互い話合つて生産制限をした形になつておらない点と、いま一つ自由意思でそういうことができないような形になつておるという点から考えましても、この四条なり或いは三条の違反を構成しないということになり得ようかと思います。ただその場合にこれも又実際の例でございますが、その際殆んど時期を同じくいたしまして、化繊業界、言い換えればスフを作つておりまする会社に対しまして、会社個々ではなく全体として例えば月千七百万ポンドにすべきだという勧告を受けた例があります。その際に化繊業者全体として十七百万ポンドになるようなお互い協定と申しますか、お互い話合いによつて千七百万ポンドになるようにお互い制限しようというような話合いがありますれば、これはたとえ官庁勧告ではありますが、又実際問題といたしましては、今後各化繊会社事業を経営して行く上において監督官庁の意向に逆らうということは、今後の運営に非常に支障があるというような心理的影響が非常に大きいかと思いますが、そういうような場合はこれをやはり第四条なり、第三条の違反ということで、現在公正取引委員会審判にかけて審判継続中であります。そういうふうにそういう権限のある者が、而もそれを受ける者の自由意思を殆んど束縛してやるというような場合には違反は構成しがたいと思いますが、そうでない限りそういうような物資取扱う者に対しましても、独禁法適用がある、こういうふうに考えておる次第であります。
  12. 中川以良

    中川以良君 今のは非常に判断が私はむずかしいと思うのでありますが、殊に輸入物資あたり外貨割当物資ですが、これあたりが例えば通産省で従来も実績で割当をしておるのでございますが、一定の限られた量しか入らん、そういうものは成る程度価格を吊上げると考えられる、それから又一方においては輸入の権利を或る少数のものがとつてしまつて、そうして非常にそれを高く売るというような場合も考えられる、そういうような何か今まで公正取引委員会としてお取上げになつたものがございましようか。
  13. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 外貨割当等を受けておりまする物資について公正取引委員会といたしましてそれの本法違反を処理したことがあるかという御意見でございますか。
  14. 中川以良

    中川以良君 そうです。
  15. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) この点につきましては只今のところそういうことはありません。
  16. 中川以良

    中川以良君 そうすると今私が申上げたような実例があるとするとこれは当然公取じやお取上げになるということで了承してよろしうございますか。
  17. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 先ほど申しました通りそういう統制をする権限のある者が業者の自発的な意思を束縛してこれを拘束するというような場合には、現行法では取上げることは困難だと思いますが、それ以外は取上げ得ると思います。
  18. 中川以良

    中川以良君 今のに関連して私は一つの引例を以てお伺いいたしたいのであります。外貨割当をして輸入する物資がございます。ところが最近海外取引でいろいろバーター制度が実施されれているようであります。そこでそのバーターによつてこちらから或る程度物輸出し、その代償に向うから物を今度は無為替輸入をする、その場合に輸入をする物資国内において従来外貨割当をして輸入している物資であつた場合は、一方においては外貨をもらわないでバーターで物を引いて来る、而もそれを相当多量に引いて来る、その場合には第一もう外貨割当をするということが意味をなさなくなります。  それからもう一つバーターで引いて来た特定な商社は、その商社が相当の数を独占し、而もその商社に紐付のメーカーにこれを持つて行くという虞れがある、そうすると商社メーカー共外貨割当をしておる輸入物資であるにかかわらず、バーター制を利用してそうして独占をするということが起つて来ると思います。そういう場合にはどういうふうに考えておりますか
  19. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) そういう場合にそれが三条にいいまする取引制限なり、或いは私的独占に当るような場合にはやはり本法適用を受けて場合によつて違反になろうと思います。
  20. 中川以良

    中川以良君 その当るような場合というのはどういう点を場合とおつしやるのですか。今言つたような一応制度があつて輸入割当を受けておるもの、これは法的に輸入を許可された、一方もバーター制が許されている、これも法的に輸入をしておる、ところが産業全体として考えるときには一つ商社一つメーカーとが繋がつてバーター制を利用して物を持つて来る、一方においては公正に割当をしておる、その割当が無意味になつてしまう、私は、今場合と漠然とおつしやつたのですが、その点はどうですか、そういう疑問がいろいろ私は起きて来るのです。
  21. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 輸出入関係は実は今回の輸出入取引法改正で相当その関係に穴をあけておるわけであります。そうでない現行法の立場で考えてみますと、バーター等関係輸入したものを、それを輸出をした、例えばメーカー等限つてそのものを渡す、ほかには売らないというような場合には、普通であるならば今の或る商社が特定のメーカーのみにしか品物を売らない、ほかには売らないということになりますと、公正競争方法に違反する虞れがあるわけでありますが、今の前提にバーター等によつて許した、而もその輸出関係メーカー等輸出にかかるというようなことになりますと、やはり不当という問題が、公正競争方法の中にも不当に差別待遇してはならない、不当に何々してはいかんという関係になつておりまするので、そういうようなものが果して不当になるかどうかという判断になるわけでありますが、今のような場合には不当ということはなかなか言いにくいのじやないかと私は考えます。
  22. 中川以良

    中川以良君 言いにくいということですか。そうすると更にお伺いしたいのでありますが、今言つたよう輸入外貨割当制のある物資バーター制を許した場合には、外貨割当は無意味だと思いますが、そこに私は制度上の欠陥もあると思います。これは通商局長がおられればよくおわかりと思いますが、企業局長ではどうかと思いますが、そういうことがこれから出て来ると思いますが、通産省はどうお考えでございましようか。
  23. 中野哲夫

    政府委員(中野哲夫君) 只今公取委員会から御答弁にも相成りましたが、補足的に私どもの考えを申上げますと、只今御指摘のように為替管理といいますか、輸入管理という面にいろいろな貿易の総枠を拡大するというような見地から無制限ではございませんが、ケース・バイ・ケースでバーター取引を認める場合があるわけでございます。成るべく正常貿易を阻害しない範囲というような考え方バーター取引を認めておるというふうに考えておりまするが、只今御指摘のようなバーターによつて原材料が輸入されるものが量がだんだん多くなれば為替割当ということは如何にもお話のように薄くはなると思います。さてそういう場合に一種の独占が起るのではないかというようなお話でございまするが、これも物により、又量によつての問題でございまして、そのことが直ちに今回の改正案によりまする独占禁止法違反するということには私ども相成らんのではないか。ちよつと私どうもこの法律の立案に関係いたしました者といたしましては、そのことがこの法律に触れるということは到底考えられないように思われるのでございます。たた何かそのほかの原因によりまして不当に圧迫を加えたとか、誰が見てもひどい差別待遇をしたというようなことでもあれば、それと無関係本法違反するというようなこともあり得ると思いますが、それとこれとは違うのではないか、かように考えておるのでございます。もう一つ考えまするのは、そういうバーターで仮に非常に輸入が巨額になつた。日本取扱量の八割も九割も占めるというようなことになりますと、現行法におきましては、不当事業能力の較差という問題がありまして、そういう状態は、その人の主観の如何にかかわらず、競争が行えなくなるから、そういう不当な事業能力の較差はこれを排除できると、こういう規定がございます。併し、今回の改正法案は、それが行過ぎではないか、こういう趣旨から、これを削除いたしておるような関係でございますので、その点も併せて御参考までにお答えいたします。
  24. 中川以良

    中川以良君 今の御答弁で大体よくわかるのでありまするが、ただその問題は、今も局長のおつしやつたように、外貨割当をする量を遥かに超えてバーター輸入することが許可されるといつた場合には、誠に妙な恰好になる。その場合には、バータで輸入されたものを、これをアロケーシヨンをやるというならまだ話はわかりますけれども、特定のメーカーに特定な商社が結び付いておるということは、どうしても独占たらざるを得ないと私は思う。こういうことは止むを得ないということになると、私は甚だおかしいと思うのですが、もともと通産省外貨割当と、それからバーター制の許可の数量というものを按配されておると思うのでありますが、併し、ややともすると、そういうような恰好のものが、或る特定の物資で起りやすいと思うのですが、そこで、いやそれは差支えないんだとおつしやるような御答弁だと、どうも我々承服できない点が出て来るのですが、これについてはどうでしようか。
  25. 中野哲夫

    政府委員(中野哲夫君) 私の申上げかたが、独禁法との関連だけに注目したので、誤解を与えたと思いまするが、只今御指摘の点は、御尤もな点がありまして、これは通商政策と申しますか、そういう方面の政策として、十分御指摘の点を考慮に入れまして、為替割当て、或いはバーターの認可という際に留意いたすべきことだと思います。
  26. 中川以良

    中川以良君 中小政策を、若しも何かの拍子で以て誤つてそういう事態が発生したときには、これは独禁法を以て処理ができるかどうかをもう一点お伺いしたい。
  27. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 現行の独禁法は、御承知通り私的独占禁止ということになりまするので、その趣旨から見れば、望ましくはないのでありまするが、官庁と、いわゆる公権、公の力で以てやつたものについては、現行法適用するということは困難かと思つております。
  28. 中川以良

    中川以良君 公の力で一応きめたものでございまするけれども、今私が申上げたように、局長も御肯定になつたように、大きな矛盾がある。そうすると、どうにもしようがないわけですか、どうですか。そういう含みがありますな。
  29. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 実は、別の例をとつて申上げますと、例えば、運送事業というのが運輸省の免許によつてできるわけであります。その場合うに、若し運輸省が或る業者にだけ運送うの免許を与える、ほかには免許しない、そうなれば、当然これは独占になるわけでありまするが、そういうふうになつた、免許を受けた業者独禁法違反ということで処理するということは、現在の独禁法では困難で、独禁法ではできないのでありまして、まあそれと同じような形になるのではないかと考える次第であります。
  30. 中川以良

    中川以良君 通産省側どうですか。そういうことでよろしいのですか。今の、例えば、運送の関係等は、当然そういう独占を容認してこれは許可をしているわけですが、今私の申上げたのは、そういう事態が発生しないという建前を通産省はとつておる。然るにもかかわらず、何かの誤りでそういう事態ができたということを申上げておるわけです。併し、役所は許可したのだから、どうにもならんとおつしやるのかどうか。
  31. 中野哲夫

    政府委員(中野哲夫君) 先ほど申上げました通りバーター取引におきましては、正常貿易を阻害しない範囲ということで、まあ今の貿易政策から申上げまするならば、例外的な措置として認めてあるわけでございますから、日本産業界において、殆んど独占的になりますというような事態は、絶無ではないかとは思います。絶無とは言えないかもわかりませんが、現実の問題といたしまして、先ほど私が申上げましたように、それをメーカーに売るというような場合に、直ちにこの法律に抵触するというようなことは、現実的には考えられないのじやないかと思います。但し、御指摘のように、そういう極端な場合が起つた場合にどうかという点でございますが、その点私には何と申上げましようか、この法律でそういう状態、極端な場合の弊害を完全にこれで払拭し得るのだというように備えがあるかという点になりますと、やや消極的に考えておりますものでございます。
  32. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 只今のように、例えば、或る行政機関の行為の直接の結果として、独占になるとか、或いは取引制限に至るような事態を生ずるということに対しましては、直ちにこの独占禁止法違反としてその業者をとるわけにはいかんと思いますが、そういうような場合には、実は公正取引委員会といたしましては、これは法律上の権限、或いは法律上の効果を伴うものではありませんが、この独占禁止法の趣旨に照らして見て、それは面白くない、成るべくそういうことはやめて頂きたいという政府機関内部におきまして、その当該行政官庁に対してこちらの意見を申上げ、或いはやめてもらいたいということを申上げることもできますし、又従つて綿紡の場合にはそういたしたわけであります。そうして、又場合によりましては、どうしてもそういう事態が、面白くない事態が調整されないという場合には、公正取引委員会といたしましては、これは独禁法規定にあるのですが、法律によりまして、公正取引委員会としての意見を国会に直接提出する権能を持つております。そういう公正取引委員会意見を国会に出しまして、国会の御批判を仰ぐというような途もあると思います。
  33. 中川以良

    中川以良君 その御答弁で私満足いたしました。どうも私初めのじや承服できません。なおこういう点は、一つ、通商産業省のほうも十分慎重に扱つて頂いて、いわゆる法の盲点を衝いて、そういう声をややともすれば知らないままにいたす向きがないとは保証できないと思う。それから、最近におきまするカルテル並びにカルテル類似の活動の状況という参考資料を頂戴いたしておりますが、これらのカルテルの活動のうち、今回のこの法が改正をされ、緩和をされましたならば、どの程度まで活動が自由になつて参るかというような点を一つ一応承わつておきます。
  34. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 実は現在カルテル化のような傾向のある行為について今度の改正法が通ればどういうことになるかという御質問でございますが、只今といたしましてはこの二十四条の三のいわゆる不況カルテルという、ここに書いてありまするようないろいろな条件にはここに差出しておりますような、いわゆるカルテル的傾向の行為が救われるかどうかという点につきましては、もう少し具体的に事情を検討して見なければわかりませんが、只今私たちの考えではこの改正法の条件には当てはまらないのではないかというふうに考えております。
  35. 中川以良

    中川以良君 それから先般頂いた資料の中には、百貨店の取引の中に、独禁法違反の疑いがあるというようなものについての例は御呈示になつていないのでありまするが、これは先頃新聞等においても私は了承しているのですが、今のおとり販売だとか或いは不当な問屋に対する返品であるとか或いは問屋から職員を出させて小売を手伝わせるというような問題があるのでありますが、こういう点はどうなんですか。
  36. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 只今仰せのような事態が現行法の不公正競争法においても或いはそれに該当する虞れが十分にあるのでありまして、実は公正取引委員会といたしましても、百貨店協会にその点を注意したことがございます。ところが今度の改正法によりますと、その点はいま少しはつきりいたしまして、例えば経済上の有利な地位を利用して不当な取引をするというようなところにも当てはまることになるであろうと思います。それで今後そういう事態がありますれば、この不公正な取引方法に該当して違反になるかと思います。ただ御承知通り、これは非常にむずかしい事態がときどき出るのでありまして、例えばこれを違反といたしまして審判を出します、そうすると、その事実を確かめる意味で、そういう不利益な取扱を受けた業者に出て来て頂いて、そうしてその事実をそこで証明してもらうなり、何なりすれば審判が非常に早く進みまして、証拠も明らかになるわけでありまするが、どうしてもそういう場合に後難を恐れてと申しますか、あとの取引がうまくできないということを恐れるということもあろうかと思うのでありますが、得てしてそういう審判の際に的確の証言をしてくれないという憾みがありまして、今までそういう類似の審判等におきまして審判が長びくという傾向があるのであります。そういう意味でそういう審判をいたします際に、そういう証拠を委員会自体で掴むということは相当困難であります。やはり相当熟練した人がその調査に当るというようなことでないと、なかなかむずかしい点があることを一応附加えておきます。
  37. 中川以良

    中川以良君 今の問題は一応百貨店のほうには御警告になつておるわけですか。御警告になつてその効果が大いに挙がつておるというふうにお認めになりますかどうですか。
  38. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 警告いたしました当座は相当自粛があつたものと見えまして、実は問屋さんのほうからも委員会に対して感謝をして来た事例があります。併しだんだん又時日がたちますと、必ずしも励行されていないのじやないかというふうにも考えておる次第でございます。
  39. 中川以良

    中川以良君 これらの点やはりいろいろ今言つたように、問屋さんのほうじや痛し痒し、殊に中小企業の問屋のごときは買つてもらわなければ大変だという関係で以て泣寝入りというような状態が、御指摘のようなものがたくさんあると思う。この点は一つ公取でも御注意頂き、又通産省関係においても御留意を願いたいと思います。  それから第二条を拝見いたしますると、七項で、従来の不公正な競争方法が不公正な取引方法となつたのでありますが、これはどういう理由で、どういう相違があるか、お改めになつたその理由を伺いたい。
  40. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) この第二条の第七項、現行法では第六項になつておりますが、現行法ではこれを不公正な競争方法、競争手段としてこういうことをしてはいけないという書き方になつておるのでありまするが、今回この不正な競争方法の制度を幾らか拡張いたしておるのであります。それは必ずしも不公正競争方法でないような場合でも、不公正な取引方法として独禁法の精神から照してよろしくないという意味で……。例えば只今申しました百貨店等のように、百貨店等は必ずしも競争としてそういう不当返品とか或いは雇人を無理に供出させるということはやれないようにしても、その相手方との取引についてその権力を濫用するような場合は、独禁法の精神から見ても面白くないのではないかというような点を加えましたので、この条文について申上げますと、第五号乃至第六号というものが加わりました関係上、これを不公正競争方法というのはこれはおかしい、むしろ不公正な取引方法としたほうが辞句としても適当であろうということで不公正な取引方法というように修正いたしたのでございます。
  41. 中川以良

    中川以良君 只今の第二条の七項を受けまして七十一条で以て指定をしようといたしておりますが、これは如何なる取引方法を指定しようとするのか、指定とはどの程度具体的な事項をお示しになるのか、その辺を一つ説明を願いたい。
  42. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) この七十一条によりまする指定は、この条文にも書いてあります通り公正取引委員会は特定の事業分野における特定の取引方法を云々と、こういうように書いておるのでありまして、例えば現行法ですでに指定いたしましたように、味噌醤油業界において景品をつける、特売をするということは、この不公正競争方法に該当するというふうに指定いたしたのであります。そういうふうに特定の業種についての又特定の方法、今のような景品とか、温泉招待というようなことはいかんというように指定するつもりでおるのであります。それでこの点もう少し詳しく申上げますと、この第七項の本文自体に、「この法律において不公正な取引方法とは、左の各号の一に該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するものをいう。」と、ここに指定ということがあります。そうしてこの第七十一条は、その指定のうちで特定の事業分野のものについての特定の行為を指定する場合の規定でありまして、そのほかにもう少しこの一号から六号に書いてあります事項について、一般的指定と申しますか、そういう指定は又別にやるつもりでございます。
  43. 中川以良

    中川以良君 そこで私がお伺いをしたいのでありまするが、最近大分大企業と下請企業との間にいろいろな問題が惹起いたしております。ややともすると大企業が下請工場を思うままに使つている。下請工場の金融をやはり自分らの金融にこれを利用するというような問題、又価格を極度に圧迫をして、その価格を強いる、それに応じなければ今度はやらせない、甚だしきはいろいろな型等を作りますのに、相当の金がかかる、そういう鋳型その他の犠牲を払つて下請工場が準備をしたものを、どうも値段が合わないからといつて急に安いところへこれを持つて行かれる、下請工場は踏んだり蹴つたりされておるような状態です。それから支払の期日が非常に長くなつておる。これは甚だしきになりますると、いわゆる金融ベースに乗らないような長い手形で以て払われるというような問題もたくさんあると思います。そういうような問題は一体これによつて指定をされるかどうかという点を伺いたい。
  44. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 只今お述べになりましたような具体的の事例ということにつきましては、この一般指定をやりましたあとで、この七十一条にも書いてあります通り公聴会等において、その同種業者意見を十分聞きましてだんだん具体的にそれをきめて行くということはやつて参りたいと、こういうふうに考えておるのであります。併し差当りといたしましては、ここの第七項にあります通り、この法律施行と殆んど同時に一般的指定をやりまして、そうしてその後においてそういう弊害が現われて来るというような場合、この一般的指定といたしましても、ここに書いてありますような字句をもう少し具体的にした程度でありますから、やはりその中には不当とか或いは不合理なとか、そういうような言葉も入つて参りまするので、これを受ける側についてこれを不当か不当でないかというような問題もありますので、そういうことをはつきりわかるように、一般、特定の指定はだんだん積み重ねて参りたい。こういうふうに考えるのでありまして、今のようなお話のうちで、例えば正当な理由もないのに支払手形のサイドを延ばすというようなことを或る程度予想して、この七項の各号の中に書いておる次第であります。
  45. 中川以良

    中川以良君 今の公聴会等を開いていろいろ聞かれても、さつきの百貨店の話ではございませんが、やはり商売はかわいいからなかなか大きなものに対抗するわけには行かない、まあ泣寝入りという場合が非常に多いと思うのであります。然るにもかかわらず、一方大企業のほうは、支払を延ばして、而も相当な高率配当をし、而も従業員にも相当高い賃金ベースで、賞与もたくさん出す。一方は金はなかなかもらえないにかかわらず従業員には現金で給与を払つてやらなければならない。又現金で仕入れなければならない原材料もあるという場合もあると思います。これらはやはり独禁法の精神をお生かしになる上において、まああとからということではなく、早くこういう問題を取上げて明確にすることは、今日の大企業と中小企業の問題を円滑にして、日本産業を健全な発達に導くところの大きなこの法の精神が生きて参ると思いますので、一つ考えを頂きたいと存じます。
  46. 海野三朗

    ○海野三朗君 ちよつとお伺いをいたしますが、特殊の場合におきまして、折角工場に設備をしてそうして出血受注をやつた、そうしましたところが、その次のときには、そこにはもう見積りをやらせないで、別なところへ見積りをさせておる。それで或る特需を受けた工場ではとても立ち行かない、設備資金も要し、そうして第二回目の注文はもうほかに行つて見積りをとつておるというような、非常に、何と申しましようか、不合理な取引が行われて出血しておる工場が多々あるのでありまするが、そういう現象に対しましては、当局はどういうふうに考えておられるでありましようか、ちよつとお伺いしたいと思います。
  47. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 今のお話でございますが、これを独禁法とからみ合せて申上げますと、若しその会社が特需を受けるために、又他を出し抜いてと申しますか、他と競争をして自分のほうに受けるために原価を切つて受注をするというようなことになりますと、現行法の不公正な取引方法、不公正な競争方法、いわゆるダンピングになりますと、その受けた業者自体が不公正競争方法を用いたということになつて違反になる虞れがあるのであります。これは今の御質問の趣旨から考えますと、そういうものは非常にかわいそうじやないかという御質問かと思いますが、それから見ますと、逆なことになりますが、相手方競争をするためにそういう原価を切つたような注文を受けるということ自体が不公正な競争方法として、正当な競争じやないという意味独禁法違反になろうかと思います。
  48. 海野三朗

    ○海野三朗君 そういう場合に、初めやはりマージンを見てその工場を設備したところが、第二回目にはそれに相談なしにほかで又見積りをとつておる。これはアメリカからの受注の場合です。それで軍需工場で実に泣いておるものがあるのです。初め儲けがあつた、儲けがあつたから設備したわけです。そうしたところが、又重ねて同じものを注文するのであるから、注文見積りをさせて、注文が来るだろうと予想しておつたところが、向うもアメリカですから、アメリカの商人であるから、今度は別なところに行つて見積りをやらしておる。相当原価を叩いておる。叩いても儲かるのでありましようが、とにかくそういうふうな手を打つて来ておるわけです。それに対して政府はどういうふうにお考えになつておるものか、その実情をお知りになつておるかどうかというわけであります。
  49. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) アメリカ側に対してそういうような注文の仕方について何か手があるかという点につきましては、私たちの立場から申上げますと、言い換えれば、独禁法の立場から申上げますと、これを別に規制する手はないのでございます。むしろ政府としての立場は或いは通産省政府委員からお答えして頂くほうが適当だと思います。
  50. 中野哲夫

    政府委員(中野哲夫君) お答え申上げます。特需の受注につきましては、只今御指摘になりましたような事例を往々私ども耳にいたすのでございます。ただその場合に先ほども御言及になりましたが、出血受注になるかどうかという点は、これの実態を見極めますことは、生産費を割つておるかどうかということは非常に困難な問題でございます。それはさておきまして、特需が御承知通りJPAが一元的に発注いたしております。而も直接発注という形をとつております。そこで現実の事例は私只今はつきりここで握つてはいないのでございまするが、お話のような場合もあるように存ぜられますので、通産省といたしましては、従来発注が継続するという方向に持つて行くようにいろいろ考えておるのでございますが、アメリカ側といたしましては、やはり公正な競争によつて、安いだけが条件じやございませんが、入札制度によつてやる、こういうこれはアメリカの独禁法の精神に則つてのやり方ではないかと思いますが、日本戦前の軍需工場のように工場を指定しまして、これを育成するというのが根本方針にはなつておらんようでございますから、入札制度になつておるわけでございます。そこでそういうことでは日本の特需産業の育成もおぼつかないわけでございますので、我々としては先般来法律に基くわけではございませんが、重工業局におきまして砲弾或いはその他の軍需品につきましてもこれらのA社B社C社D社というふうにいろいろな技術とか或いは経験とか、資金関係とか、いろいろな点を調べまして、この範囲の工場に発注をしてもらえるならば、アメリカ側として合理的な価格による品質も保証のできるような製品が納められますということで、或る範囲の工場推薦制というものをとつておるようでございます。そうなりますと、アメリカ側としてもただ入札だけでなしに、製品について規格、品質、納期等も安心したものを得られるわけでございますので、向うも利益する、又受注した者もそれによつて産業が発展する、こういうような考え方によつて、さようなことを事実上行なつております。又今国会におきまして、御審議を願つておりまする武器等製造事業におきましても、ほぼ今申上げましたような趣旨で、特需産業の強化育成を図る、ばらばらのときどき思い付きみたいに注文が変つて行くというような、只今お話のような弊害は避けたいという、そういうところの狙いの一つになつておる、かように存じます。
  51. 海野三朗

    ○海野三朗君 只今お話つて当局のお考えを非常に私は多とするものであります。実際にそうやつて今日までいわゆる日本の、これを直接悪く言いますれば日本産業の破壊である。或る設備をした、そうして注文を受けたのであるけれども、設備から見れば将来やはり注文なり見積りなりをさしてもらわなければならない。ところがアメリカのほうではそんなことに関係なしにどかつとやつてしまう、つまり向うのやり方でぽんぽんやられては日本産業の破壊でありますから、そういう際にはどうぞ一段と通産省におきましては力を入れて、その産業の破壊を招来しないように一つ御尽力をお願いいたしたいと存じます。これを以て私の質問を終ります。
  52. 奥むめお

    ○奥むめお君 今の御質問に対するあなたの答弁の中に、出血受注でございますね。これに対してアメリカの独禁法の精神であろうかとおつしやるけれども、アメリカの独禁法の精神というものは、少しでも、あつちからでもこつちからでも安く買い叩くということが精神であるかどうかということを私ここで議論しようとも思わないけれども、むしろ日本独禁法を利用してアメリカが注文して日本を叩こうとしているのだというふうに私は解釈をしなければならん。これはむしろ独禁法を利用されているのだと思う。殊に今の御質問の問題は、輸出入取引法の問題であつて独禁法の問題というよりも、むしろどつちかと言えば、出血受注というものは外貨獲得が目的だとされておりますですね、そうだとしたらやはり一種の貿易でないのでございますか。
  53. 中野哲夫

    政府委員(中野哲夫君) 先ほど御答弁申上げた中で、アメリカの独禁法の趣旨からではないかというようなことは余分なことだつたかもわかりませんが、只今委員からお話のように、あれが日本独禁法をうまく使つて安い注文をとろう、こういうふうに向うがあれを悪く使つて、そうやつておるのではないかというお考えについては、私率直に申上げまして、さようにも只今のところは私は感じておらないのでございます。  それから第二点の特需の受注、これも只今本国会において御審議を願つておりまする輸出入取引法関係でございまするが、輸出入取引法におきましては、輸出について価格協定その他が締結できるこういうことに相成つておるのでございます。併しこれは純然たる正常輸出の場合だけを規律いたすつもりでございます。特需はお話通り、ドルの獲得にはなるのでございまするが、相手方がJPAというような只今制度では一元的な発注機関でもございまするし、船積というような正常な形の輸出ではございませんので、輸出入取引法によつて特需の受注を統制する、言葉が不適当かとも存じまするが、輸出入取引におけるような各種の協定を特需の受注に認めるということは、只今制度的には考えておらないような次第でございます。    〔委員長代理高橋衛君退席、委員長着席〕
  54. 奥むめお

    ○奥むめお君 それではもう一つ独禁法関係で伺いたいのですけれども、この取引法の第五条第三項に協定に参加したり脱退することを不当に制限しないと書いてありますけれども、これは前国会でも私ども経済安定委員会で問題にしたのですけれども、協定に参加し又は脱退することを不当に制限しないというのが本文の趣旨ですね、第五条の。そうすると勝手にアウト・サイダーで自由にしないように又これに別の規制を以て、強制力を持つようにしてあるのでしよう、この法律で。これはどういうわけでしよう。
  55. 中野哲夫

    政府委員(中野哲夫君) 輸出入取引法におきまして、輸出協定に入ること及び出ることを自由にいたしておるということと、当該協定を実効あらしめるために、主務大臣がその協定に従わしめるということについての御質問でございまするが、輸出の促進を図りますためには、対外競争の場でございまするので、価格或いは輸出数量等についてアウト・サイダーが不当に撹乱行為に出るというような場合にはそれだけ外貨の獲得上大きなひびが入るわけでございまするので、独禁法体系の例外といたしまして、さようなアウト・サイダーに対する主務大臣の規制の途を開いたのでございます。
  56. 奥むめお

    ○奥むめお君 そこが私どうも…。これは御質問しても水掛論になりますけれども……。
  57. 早川愼一

    委員長(早川愼一君) ちよつと奥さんに御相談したいのですが、独禁法が大体ほかに御質問がなければ一応輸出取引法の……。
  58. 奥むめお

    ○奥むめお君 独禁法を先にやつて下さい。私、独禁法だけでないんだけれども、我々専門家の用語というものをどういうふうに解釈するかということについて伺いたいのです。例えば昨日も決算委員会で不正行為というのは、素人の我々の社会では犯罪だということだ、こういうことを教えてもらつた。そうすると今度ここでしばしば消費者の利益を不当に害するという意味がよく出て来たけれども、不当に害するということはどういうことですか、不当を取つたのとあるのとどういう違いでしよう。或いはこの事業者の利益を不当に害するという言葉がちよいちよい独禁法にあるのですね。これはお役所の言葉としてはどういう内容を持つんでございますか。
  59. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) これは実は非常にむずかしいのでありまして、やはり各条文の本条の趣旨と、それからもう一つ独禁法については、独禁法第一条の趣旨から見てまあ不当かどうかこうきめざるを得ないと答えざるを得ないのですが、御承知通り独占禁止法は、特に経済のいろいろな取引全般について法律としていろいろな場合を予想して書いてあります関係上、どうしても抽象的な言葉にならざるを得ない点が多いかと思いますので、特に不当とか或いは不公正というような言葉をところどころ使つておるのであります。この点はやはり実際その事件々々によつて、その背景になつておりまする事情とか行為とかということを考え併せて不当かどうかときめざるを得ないかと思います。その点丁度公正取引委員会は御承知通り委員会組織でありまして、各方面の人が出てそしてその会議によつてきめるということになつておりまするので、まあこの不当ということの解釈について独断的になるようなことは、普通の場合よりはないかというふうに考えておるのであります。
  60. 奥むめお

    ○奥むめお君 それでは再販売価格のことでお伺いするといたします。これに該当するものとしてどういう商品を期待していらつしやいますか。
  61. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) これは勿論今どれを指定するかということはまだはつきりきめておりません。
  62. 奥むめお

    ○奥むめお君 あなたがお考えになるのはどういうものか。
  63. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) まあいろいろ各業界からの要望等から見て、先ず取上げて研究して見なければならないかと考えておりますのは、化粧品それから医薬品或いは一部菓子という程度かと只今のところ考えております。
  64. 奥むめお

    ○奥むめお君 これの除外例がございまして、協同組合なんかが除外してある。これはこの間の公聴会で経団連の福島さんがおつしやつたことが、私ども巷間伝えるところによると、この独禁法の緩和というものは経団連あたり圧力によつて公取もつい妥協せざるを得なかつたのだ、こう聞いているのですが、その経団連の福島さんの御説明のように、協同組合がこれに除外例を設けてあるけれども、協同組合は配当で廉価制を布けばいいのであつて、やはり再販売価格を維持すべきであるという意見を述べられた。ほかの人がおつしやつたならば、それはその人の意見として聞いてもいいけれども、この法律の成立ちを我々が臆測しまして大変重大だと思つて聞いたのですが、如何ですか。
  65. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 今回の独占禁止法の緩和について、公正取引委員会として今大企業者或いはそれらの団体等から圧力がかかつて改正したというふうには考えておらないのであります。  それから只今再販売価格維持契約の適用除外になつております各団体を設けたことについて、今どういうわけで入れたかという御質問の点につきましては、これは実は先回解散国会の際に提案いたしました際に、これは主として衆議院の委員会等におきまして、どうしてもそういう消費協同組合或いは生活協同組合等について現在安くやつて販売しておるんだ、それを維持価格の励行によつて引上げるということになると、その組合員に対して高い品物を買わせることになるんじやないかという意味の点を主として論拠といたされまして、この法案についていろいろ修正の意見等があつたのでございます。それでそういう論議等に鑑みましてここに例外を設けたのでありまするが、これらの組合は法律に基いた組合であり、そうして又同時に員外利用について法律上の規制があるという関係がありますので、まあこの程度の例外を設けても他の一般の小売業者等に及ぼす影響は大したことはないであろうという観点の下にこの例外規定を置いたわけであります。
  66. 奥むめお

    ○奥むめお君 それではこの例外というのは、再販売維持契約を結ばないで安く売つても例外として認めるという解釈をお持ちになつていらつしやいますか。
  67. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) そうでございます。
  68. 奥むめお

    ○奥むめお君 そうでございますか。それをはつきり伺つておかないと私どもとして……。
  69. 海野三朗

    ○海野三朗君 私よくわからないのでありまするが、株の買占はどういうことになつておりますか。私的独占禁止公正取引確保、この方面法律から見まして株を一手に買占めようというようなことはどういうことになりますか、これは。
  70. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 株を一手に買占めようという場合にまあ二つの場合があろうかと思います。一つはその株を買占めて会社を支配しようというような場合、そういうことを主たる目的とするようなことでありますれば、この第九条の「持株会社」ということになつて、そういうことはいけないということになります。それからいま一つは、或る競争に勝たんがため或いは一種の競争手段、或いは相手を倒すというような意味で買占をやろうという場合に、その買占の方法自体が今度の改正法の第二条の第六項の第六号に該当するような場合になりますと不公正な取引方法」ということになつて違反になるということになりますが、それ以外の場合には今度は現行第十条のように競争会社株式は一株といえども持てないというような規定が削除されました関係上、その持つことによつて一定取引分野競争を実質的に制限しない限り買つてもよろしいということになるかとも思います。
  71. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 関連質問です。今ちよつと伺つたのですが、株を買占める、例えば買占めて儲けようといつて買占める人はこの第九条に違反しないと思います。第九条はこれは持株会社がいかんのであつて、株を買つて儲けようとして買占める人は第九条に違反しないと思いますので、今の説明はちよつと違つていやしないですか。
  72. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 私が第九条に違反すると申上げたのは、会社の株を買占めることによつてこの会社を支配しようということになると第九条に該当して違反になる、こういうことでございます。
  73. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 一つ会社を支配するだけで株を買うのは持株会社違反にならないのではないですか。例えばその会社の株を買占めてそこの社長になろうという場合には違反の対象にはならんのじやないでしようか。
  74. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 目的が、会社の株を持ちましてその会社事業活動を支配することを業務とするならば……。
  75. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 業務とするのじやなくて、例えばAならAという人が百貨店の株を買つてそこの社長になろうとして五割買つたというのは違反にならんでしよう。
  76. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) そういう場合には勿論なりません。
  77. 海野三朗

    ○海野三朗君 そういう場合に百貨店なら百貨店の株を或る人が買つて、そうしてそこの社長になろうかという考えでそれを買つた場合は、これは差支えないのですか、このあれでは……。
  78. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 別段差支えないと思います。
  79. 海野三朗

    ○海野三朗君 そうしますと、これは随分株の買占についてはほかに異論があることは御承知なのでございましようか。世間で非常にそれを反対しておる者があるということは御承知でしようか。例えば或る人が百貨店の株を買占めようというようなことは、そこの従業員から見ますというとそれは非常に困る。そういうような反対の立場の意見をお聞きになつたことがありますか。
  80. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) そういう意見を受けたことはしばしばあります。
  81. 海野三朗

    ○海野三朗君 それは一向差支えないことなんですね。今度は金さえあつたならば幾ら買占めてやつても差支えないということになりますか、これでは……。
  82. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) それは私が最初に申上げた通り、いわゆる持株会社的な存在になるような場合はいけない。それからいま一つは、一種の競争手段として会社の株について而も不公正な取引方法、例えば非常に高い値反をやるとか或いはその相手方会社の重役だとか或いは持株従業員だとかを不当に誘引し、唆し、或いは強制してその株を買うというような場合には、この「不公正な取引方法」に該当していけないということになるわけであります。併し正当な、例えば取引所の相場を通じて買うというような場合には、先ほど申しましたような目的なり或いは方法としてやらない限りは差支えないということになると思います。
  83. 海野三朗

    ○海野三朗君 そうしますと、つまりその会社独占しようという考えでやつて来た場合にはいけないとおつしやるのですね。
  84. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 独占と申しますか、その会社の活動を支配する目的で以てほうぼうの会社の株を買占める、言い換えれば持株会社になるという場合と、それからもうつは公正な競争秩序を維持する、言い換えれば競争一つの手段として、而もそれは不公正な方法で買占めるときにはいかんということであります。
  85. 海野三朗

    ○海野三朗君 そうしますとそれはどこで区別をつけますか。今度百貨店の株を買つたとしますね、それはそういう考えで買つたかどうかということはどこで見分けをつけましようか。
  86. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) この持株会社になる場合には会社事業目的なりから見た場合と、それから目的には必ずしもそういうことを書いておらなくても、その実績と申しますか、その買つたあとの事例から見て、この持株会社になるかどうかということを判断いたすわけになろうかと思います。それから競争関係の方法としては、それがその公正な競争秩序を阻害する虞れがあるかどうかという点から判断することになると思います。
  87. 海野三朗

    ○海野三朗君 それではそれは株を買つてしまつてからであれば、今のようにお考えになることはもう過ぎてしまつてからであるから、その行為をどうするということもできないことになつてしまいやしませんか。
  88. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 若しそれが違反ということで審決がきまりますと、その審決には同時にその排除措置というものが伴いまして、今の法律規定によりますれば、そういう場合の持株を一定期間、或いは期間を付ける場合もありますし、場合によつては付けないかも知れませんが、とにかくその株を手離させるという排除措置を命ずることができるようになつております。それで持つていた株を離させるということになつております。
  89. 海野三朗

    ○海野三朗君 それで七頁の所の先ほどどなたかから御質問になりましたことが、私ぴんと来ないのでありますが、この七頁の所の不当な差別対価、その不当なというのは基本線をどこにおいておるのでありましようか、その境界線をお伺いしたい。七頁の最後から五行目でありますが、不当な差別対価を以て……。
  90. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) この程度は先ほどもちよつとお話したように非常にこれまでは不当だ、これからは不当でないということを画一的にきめることはむずかしいと思います。これはやはりその事件々々によりまして、これが公正な競争を阻害する虞れがあるかどうかということから見て、言い換えるならば、例えば不当な対価を以て取引することとありますですね。そうすると、例えば普通の市価より相当高い値段で或る物資を或る会社が全部買占めてしまつてほかの人に買えないようにして、一種の競争制限してしまう、そういうような場合にその程度の値段であれば全部物資を買占めることができるという程度ということになるわけでありまして、これはやはりその事件々々によつてほかの人が競争できない程度の、まあ高い値段であれば高い値段、或いは売る場合には競争ができない程度の安い値段ということになつて、事件々々によつてきめなければならないことになるのではないか、これは飽くまでも公正な競争を阻害する虞れがある程度であるかどうかということになろうかと思います。非常に抽象的で恐縮でありますが……。
  91. 海野三朗

    ○海野三朗君 私のお伺いしたいのは、その不当なというのはただ漠然とした今のお話のようなものではなくて、何か一定の方式がありはしませんか。生産費に比べてどうだとかね、それをお伺いしたい。不当だというのはぼんやりして困るのではないでしようかということをお伺いするわけであります。
  92. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 例えば生産費原価計算をしてそれの加重平均がどうだとか、そういうような一定の線というものはこれは立ちにくいと思います。誠に立ちにくいのでありまして、それは先ほども申しました通り、これはやはりこの法律といたしましてはあらゆる取引全般の、取引に一応合うものをかぶせるというような意味で、その取引の様体なり或いは時期なりによつて非常に違うかと思います。それを々書き分けるわけに参りませんので、不当にというこういう言葉を使つたのであります。実際事件になつた場合に、先ほども申上げました通り委員会は御承知通り多数の委員がおつて、それの過半数で最後はきまるということになりますので、或る役所の独断的に不当或いは不当でないときめるという弊害は委員会組織によつて幾らかでも是正できる、こういう占うに考えておるわけであります。
  93. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 前回質問をしまして御答弁を願うことになつてつたことであるのでありまするが、それは不況カルテルは濫用しないというふうに政府のほうでも言つておられるのでありますが、この濫用しないというか、一体公取のほうで認定せられる一応の基準、これを具体的にはつきりさせてもらいたい、それを御研究願つてお答え願いたいというふうにいたしておつたのでありますが、その点一つ本日お答えを願いたいと思うのであります。
  94. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 実は私聞いたであろうかとも思いますが、不況カルテルの際に公正取引委員会が認定する場合の基準について研究して後御返事を申上げるということになつてつたとは実は承知しなかつたので、その基準をきめてここにお示しする場合には、やはり委員会にかけてはつきりきめてお話するのが一番だと思いますが、まだそういう運びになつておらないで、今の御質問に的確にお答え申上げることは困難かと思いますが、一応我々の考えておりますのは、ここの中でこの基準は一号から第四号まで法律的には掲げております。そうしてこの中の特に、我々といたしましてはこの第一号を特に重きを置いて認定をいたしたい、こういうふうに考えております。
  95. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 大体行政機関で認定認可等をせられるときには、法文に書いてある通りであとは勘で行くということではなくて、私は具体的な認定基準があつて然るべきだと思うのです。内規というか、そういうものをこの際はつきりさせなければ我々非常に前途に向つて不安を抱くのですが、その点について至急に研御究願つて法文に書いてあるような抽象的なことでなくて、どの程度の場合に認定するのだということをはつきりさせて頂きたいと思います。今の点よろしいですか。
  96. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) あらゆる場合を想定して基準を確定するということはなかなか困難かと思いますが、大体どういう心組でやるかどうかというような点については至急まとめてお話申上げたいと思います。
  97. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 一つ書面でお願いしたいと思います。  それから次に今回第二条を改正せられまして、取引上の地位を不当に利用して相手方取引する場合は、不公正な取引とせられるということになつたわけでありますが、恐らくこれで大企業の下請等に対する未払、或いは支払遅延の問題が解決し得るようになるのじやないか、公取はそういう方面にこれによつて出動せられるのではないかと思いますが、その具体的な手続等詳細に亘つてどういう心組でどういうふうに打つて出られようと思つておられるか、その点をはつきりさして頂きたいと思います。
  98. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) 不公正な取引方法については先ほどここで申上げたつもりでありますが、これにはいわゆる一般指定をいたしましてそうして後ほど更に又そのうちの特定のものについては必要があれば特定の指定をするという手続をとるということを申上げたのでありまして、それではどういう一般指定をするかということは後ほど書面で今一応考えております点を資料として差上げたいと思います。
  99. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 端的に伺つておきたいのでありますが、不当取引の問題として大企業の未払問題、これを公取が将来取締をせられる気持でおられるのかどうか、それを先ず最初に伺いたいと思います。
  100. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) それが公正な競争秩序を阻害する虞れがあるような場合であればこの中で取締り得るので、そういう必要がある場合にはやろうかと思います。
  101. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 従来大企業の下請或いは関連産業に対する未払、支払遅延の問題はこれは社会的にも非常に大きな問題となつておると思うのでありますが、今回の改正につきまして、独禁法の緩和について私ども不満の点が多々ありますけれども、今回未払問題、支払遅延に公取がこの条項によつて出動できるということをはつきりされれば私は非常に大きな収穫だと思うのですが、只今の御答弁で非常に大きな期待を我々持つていいというふうに了承していいですか。
  102. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) そういうような趣旨を公取がはつきりいたしますと、それだけでも相当効果があろうかと思います。
  103. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 それでは非常に大きな期待を私は政治的にも社会的にも持つということをここではつきり申しておきまするから、それに副うような具体的な措置を如何にするかということをこれもどういう段取りでおるかというくらいのところは書面で一つ次回に頂きたいと思うのでございます。そうしてその場合に特に希望いたしておきたいと思いますのは、中小企業は自分の名前が出ますと、おれはあとの崇りが恐ろしいというので折角の制度ができましても利用しないのです。従つて匿名で訴え出ましてもそれを公取で取上げられ、相手方の大企業には相当の手を打つて行かれる、こういうことでないと、これは絵に描いた餅になるのでありますから、匿名で申出るような場合にもそれを取上げて行く、こういう構想の下に具体的な措置をお考えつて、それを次回に一つ書面としてお出し願いたいと思います。
  104. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) その点についてちよつと申上げますが、勿論匿名で申告があつたものに対しましても取上げるつもりであります。又そうやつて参りたいと思います。ただここで一点むしろ豊田委員等に御協力を願わなければならんと思うのでありますが、これが一旦違反として審判いたします、これは審判手続に入るわけであります、そうしますと、いわゆる被審人、違反をしたと思われるほうからはやはり弁護士その他がついて審判手続をやるわけであります。そうするとそういう事実があつたかどうかということになりますと、そういう不当な取扱を受けたかたがやはり犠牲的に出て頂いてこういう事実があるということをその審判廷で述べて頂く必要があろうかと思います。そういう場合にそういう実情の明るい人、或いは現実にそういう取扱を受けたかたというようなかたは進んで出て頂くように御協力願わなければなかなか審判はむずかしいのじやないか、こういうことを一言いたしておきます。
  105. 豊田雅孝

    ○豊田雅孝君 事柄事柄でありまするので、匿名で出ましても虚偽の事実を訴え出るというようなことは万々ないと思うのでありまするが、併しそれに伴なつて我々第三者として陳弁することがありましたならば、如何なる場合にでも喜んで出向くと思います。同時に匿名による訴によつて公取が出動せられる、その点がはつきりせられることになりますと、私は大企業陣営はこれは相当社会的地位を重んぜられるかたがたがやつておられるのですから、そのことだけで私どもは非常なそこにいい結果をもたらすと思うのでありまして、それだけにこの際どういう構想の下に打つて出られるかというような具体的な措置、手続を書面で今回頂き、又それを発表して頂きたいというふうに考えておるのであります。  それから更に不況カルテルについての具体的な認定基準、これ如何によりましては私は不況カルテルに対しまして反対せざるを得ないのでありまして、場合によりますと少くとも価格カルテルの条項削除を要望することになると思いますので、その点お含みの上どうぞしつかりした具体的認定基準を明らかにして頂きたいと思います。これで一応打切ります。
  106. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 カルテルの認可権を主務大臣がお持ちになつ理由は、主務大臣のほうが万事経済界実情に明るい、こういう理由で恐らくさようなことに改正案がなつたと思うのでありまするが、その考え方を更に推し進めて参りますと、官庁自体よりも業界自体のほうがより以上に経済界実情には明るいのが当然でありまして、殊に不況カルテル等の場合には機宜の処置を要求せられておるのでありますから、その考え方を推し進めて行きますならば、むしろ事前の届出によつて、そうして例えば一カ月の期間なら期間をおいて、その間にそのカルテルそのものが公共の利益に合致するかしないか、反するかどうかということをお調べになつて、その公共の利益に反する虞れのある場合にこれを停止若しくは禁止されることがより以上に産業界の実態に副うのではないかというふうにも考えられるわけでありますが、この点に関して通産御当局の御意見を承わりたいと思います。
  107. 中野哲夫

    政府委員(中野哲夫君) お答え申上げます。御趣旨のような議論も一つ考えの立て方としては考えられるわけでございますが、私ども公正取引委員会或いは他の関係官庁と政府原案を定めます際には、この原案にございます通り、事前認可制度で参るということが現行独禁法の根本精神を守りつつ、不況時その他或いは合理化を促進する場合にその独禁法の例外的なカルテルを認める、こういう趣旨を達成する点と最もよく調和するのではないか、かように意見の一致を見まして、政府としてこういう原案に相成つたわけでございます。
  108. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今の御説明を伺いますと、主務大臣が認可権を持つたということについては、業界の事情に通暁しておるという立場でお持ちになつている主張は一方にあると同時に、又公正取引委員会のお立場のほうでも十分勘案されまして、政府部内の意見としてかようなところに落ちついたというふうに外から見れば見られるわけでありまして、最初の、例えば通産御当局がお考えなつた業界の実情に通暁すると、その考えを突き進めて行けば、私が今申上げましたような事前届出のほうがより徹底しているのではないかというふうに考えるわけでありますが、これ以上伺いましても何でありますからこの点はそれでとどめておきます。  第二点は、今回のカルテルではその構成委員を生産業者に一応限つておられるような法制の建前になつておりますが、御承知通りこの独禁法の緩和と、更に方には中小企業の安定法ができますと、その中間業種に属する販売部門、卸業部門等には相当やはり両方から押されまして、窮屈な建前であるかと思います。従いまして生産業者をこの構成委員に入れたほかに、販売業者もなおこの中に入れて何か特別に弊害があるかどうかという点を、公正取引委員会の御意見を伺いたいと思います。
  109. 中野哲夫

    政府委員(中野哲夫君) 実は今回のカルテルを特定の場合に認めようという際に、これはやはりできるだけ最小限度に認めようという考え方があるのでありまして、不況カルテル或いは合理化カルテルもそうでありますが、この原因等は主として生産過剰というようなことから生ずるのが多いかと考えられますので、その生産制限とか、或いは設備制限とか、生産業者自体に関する面においてカルテル活動の容認をすれば、まあどうにかやつて行けるのではないかという意味でそういうふうに限つたのでありまして、この販売部面についても、これを認めたらどうかという意見もいろいろあつたのでありまするが、これは先ほども申しました通り独禁法の例外としてカルテル活動を認めるのはできるだけ最小限度にしようという意味でその不況カルテ等の出る原因の生産面のところにとどめたような次第であります。
  110. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 通産御当局の御意見が何か積極的にありましたら伺つておきたいと思います。
  111. 中野哲夫

    政府委員(中野哲夫君) 御質問の販売部面、流通部面におけるカルテルを認めることに決定的な支障があるのかと、こういう御質問でございますが、お考えのようなことは、反トラスト法に対する根本的な考え方から分れて来るものだと思いまして、この独禁法ができます前の日本の、或いは世界の各国を見ましても、カルテルは全く自由であるという国が少くないわけでございます。まあともあれ現行独禁法を廃止せざる限りはカルテルというものは本来国民経済の発展と申しますか、消費者に対する影響と申しますか、そういう面にカルテルというものは本来弊害があるのだと、こういう建前に現行法は立つておるわけでございますので、そういう見地に基いて議論を進めますると、成るべくカルテルによる弊害の起るような虞れのないようにしなければいかんじやないか、こういう考え方が次に起きて来るわけでございます。そこで只今湯地政府委員から申上げました通り、不況等につきまして最も根本的な原因は生産過剰、滞貨の激増、それに競争が激化して不況になる、こういうことでございますので、絶対的支障とは勿論申上げかねますが、生産数量の制限なり設備の制限なり、又それでどうしても駄目な場合に生産業者の販売価格なりの協定によつて不況の事態も防ぎ、かたがた独禁法の基本精神も守れるのではないかという政府といたしましては一種の調和点をそこに求めましてかような立法になつたわけでございます。
  112. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 お考えよくわかりました。有難うございました。
  113. 奥むめお

    ○奥むめお君 価格の問題をちよつと伺つておきたいと思いますが、例えば生産費を割るという言葉がございますね。生産費というものは誰が調査したものをお使いになるんですか、どこで調査したものをどういうところに……、それは私たち消費者なり或いはそのほかの人が信頼して、生産費を割つたものだというその線をみんなが納得できる線はどこら辺でございましようか、それが一つ。  もう一つは再販売価格の販売の定価、この定価を適当と認めて許可なさるのか、その取引したということを認定なさるのか、或いはそれは何でも業者から持つて来たら、契約できましたといつてつて来れば何でも認めるのか、同じ定価の問題ですけれども、内容二つになつておりますから……、生産費という問題ですね。
  114. 湯池謹爾郎

    政府委員湯池謹爾郎君) ここの第二十四条の三に書いております不況カルテル等の場合の生産費という場合につきましては、認可申請をする際に各業者或いはそのカルテルの団体からその生産費の調べを受けてやると思います。それに対して認可するかどうか、或いは認定をするかどうかという場合に、主務官庁としては通常その業務に、監督官庁としてその業務の関係について通暁しておりまするし、又今回のこの改正法によりまして主務大臣に調査権限を与えておりますので、その出て来ておりまする生産費が実際であるかどうかということを場合によつては調査されることと思います。それから公取の認定の場合でも、公取現行法にすでに強制調査権限がありますし、又他の団体或いは学識経験者から意見を徴する権限もありますし、又調査を嘱託する権限もありますので、それらの調査権に基いてそれが適正であるかどうかということを調査することになろうかと思います。  それから再販売価格の場合の価格については、一応それはその契約をいたしました業者から出て来る価格を基礎といたしますが、これが法文にもあります通り一般消費者の利益を不当に害することとなるような場合には、その価格の問題について公取も場合によつては文句を言うということになろうかと思います。
  115. 早川愼一

    委員長(早川愼一君) ほかにございませんか。ほかにございませんでしたならば、本日の質疑はこの程度で打切りますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 早川愼一

    委員長(早川愼一君) 御異議ないようでありますので、本日の連合委員会はこれで散会いたします。    午後四時零分散会