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政府委員(
横田正俊君)
カルテルを悪と見るというような言葉をときどき私自身も用いるのでございますが、これは確かに非常な言過ぎでございまして、殊に今回の
改正法案におきましては、そういう点はかなり是正されたと申しまするか、かなりの改良を見ておると思うのでございます。つまり今加藤さんが仰せられましたような
現行法の第四条はややそれに近い感じを抱かせる条件でございましたが、今回はこれを削除いたしまして、一定の
取引分野における
競争を
実質的に
制限するという
カルテルのみを問題にいたすことにいたしたわけでございまして、その
程度に至りませんものはその範囲におきましていろいろな
カルテルが取結べるわけでございます。一定の
取引分野における
競争の
実質的
制限、これは要するに有効な
競争が行われないような
状態、極めて俗語で申しますると、そういう
状態を指すと思うのでございますが、そういう
状態が来ますことが何故に取締の
対象にならなければならないかということになりますが、一方におきまして御
承知のようにこういう
状態におきましては、もはや十分なる
事業者の創意、工夫による清澄な事業活動ということには非常な拘束が出て参りますのみならず、ここに言葉は悪うございますが、いわゆる独占価格というものの形成を許す
状態が、即ちここに言う一定の
取引分野における
競争が
実質的に
制限せられるという
状態でございまして、これは延いてその業界のためにはいいのでございますが、関連
産業や、
一般消費者にいろいろな不
利益をもたらすことになる、ここが、この線が即ち
独占禁止法での一応の面白からん線と、こういたしますのも私は御理解の頂けるところではないかと思うのであります。ただそうだからと申しましても、この一線だけですべてのものを処理することとは形式的でございまするので、今回は更にその上に持
つて参りまして、不況の場合、合理化の場合、或いは貿易の振興上必要な場合につきまして、その向き向きによりまして、或る
程度の
緩和を更にこの上に図
つておるのでございましてこの
程度の
緩和がございますれば、先ほど申されました
カルテルを単なる悪と
考えるというようなところからは非常に進んで、適当なところまで来ておるというふうに
考えるわけでございます。更にこれをもう一歩進めまして、例えば公共の
利益、或いは
国民経済上必要のあるものは何でもよろしいというような極めて
一般的な条項で以てこの独占
禁止の
カルテル規制の問題を処理して
参ろうといたしますると、第一にこういう言葉自体甚だ漠然たるものでございまして、こういう生きた
経済の問題を
法律的に処理して参ります場合に、こういう漠然たる基準では非常に困ることになるのではないかというのが我々の
考え方でございます。これは甚だ例が悪いのでございまするけれ
ども、交通の秩序を守ります場合に、例えば自動車の速度を
制限しなければならない、これは
基本的に申しますれば交通秩序を害しない
程度の速度で走れということで足りるわけでございますが、併しそれでは実際問題としまして交通秩序は保てないのでございます。やはりそこには多少形式的ではございまするが、一応の基準というものを示しまして、その基準によ
つて取締
つて参る、みんなの自由に任せておいて何か間違いがあ
つたときにあとでそれをとがめればいいではないかというふうにはちよつと行かないのではないかというふうに
考えるのでございまして、勿論この交通規則にも消防自動車とか救急車とかいろいろ適用除外が必要ではございましようが、おのずからそこにやはり一応の基準があるということが必要だと思います。で私は
独占禁止法に関しましては一定の
取引分野における
競争の自主的
制限、即ち独占価格の形成せられる虞れのある
状態、そのものが
一つの交通規則における何マイルという
一つの基準で、但しそれにはその場合々々によりまして適切な適用除外をはつきりした形で打立てて行くというのがこの
独占禁止法を運用します上に最も適当なやり方ではないかというふうに
考えておる次第であります。