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1953-08-04 第16回国会 参議院 外務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年八月四日(火曜日)    午前十一時四十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     佐藤 尚武君    理事            徳川 頼貞君            加藤シヅエ君    委員            石原幹市郎君            古池 信三君            高良 とみ君            亀田 得治君            中田 吉雄君            羽生 三七君            鶴見 祐輔君            杉原 荒太君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   政府委員    外務省経済局長 黄田多喜夫君    外務省条約局長 下田 武三君    通商産業省企業    局次長     小室 恒夫君   事務局側    常任委員会専門    員       神田襄太郎君   説明員    外務省経済局参    事官      森  治樹君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○日本国アメリカ合衆国との間の友  好通商航海条約批准について承認  を求めるの件(内閣提出、衆議院送  付)   —————————————
  2. 佐藤尚武

    ○委委員佐藤尚武君) それでは只今より外務委員会を開会いたします。  議題は日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海条約批准について承認を求めるの件であります。昨日に引続きまして質疑のある方は御発言をお願いいたします。昨日は第七条まで行つたのでありますが今日は第八条から始めて頂きます。
  3. 亀田得治

    亀田得治君 第二項の自由職業ですね、これは範囲はどの程度でございましようか。第一項にいろいろな業種が書いてありますが、この範囲と同じという意味でしようか。
  4. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 本条約言つております自由職業と申しますのは、弁護士業公認会計士弁理士というもののほかに、医師歯科医師、薬剤師、獣医師建築業者というふうなものを含んでおります。
  5. 亀田得治

    亀田得治君 それは何か日米両国間でそういう内輪の取りきめでもできておるわけでしようか。
  6. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 内輪の取りきめでそういうものがきまつておるわけではございませんが、自由職業範囲といたしましては大体只今申上げましたようなもの、それに弁理士とか公証人とかいうふうなものが入るものという了解でございます。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 了解と今おつしやつたのですが、交渉の経過で一応そういうお話が出て大体そのような職業ということで一種了解が成立つておるわけですか。
  8. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 自由職業範囲はどのくらいかということを議しました際に、只今申上げましたようなものをいわゆる自由職業とみなすというふうな話合いでございました。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 それから第三項ですが、これは私実は非常に重要な規定だと考えております。第三項によりますと、学術教育宗教慈善関係活動、これは殆んど日本人と同じような活動アメリカ人に与えなければならない、こういうことに結論としては相成つて参ります。通商関係なり投資関係なりにおきましてはそれぞれの制限規定はございますが、この文化関係につきましては全く国内人と同じ取扱になつて来る。私はこういうことで果して一体日本教育がうまくやつて行けるかどうか、この点の自信のほどを一つお聞きしたいのです。
  10. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 日本側向うにおいてやつておりますこれらの活動がどのくらいあるであろうかということを調べたのでございますけれども、主として西海岸でございますが、仏教団体とか慈善団体とかいうものが相当広範囲アメリカにおいて活動をいたしておりまして、これらの条文を置くことによつてへんぱな取扱が起きはしないかという点を相当調べたのでございますが、むしろこの条文を輝入することによつて利益を享有することが多いのではないかというふうな結論に達したのでありまして、これらの活動アメリカ人に許すことによりまして、日本側のこれらの活動が圧迫を受けるというふうなことはないものだという結論に到達いたしております。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 それは甚だ私は事情を無視された議論だと思うのです。むりやりにそういうりくつをつけておられるのじやないかと思うのですが、アメリカ国内における日本人がやつておるこれらの文化活動に対して大した影響を及ぼすことができない、これはわかるのです。併しながらアメリカがあれだけの財力背景にして日本で大がかりな学校の経営なりいろいろな慈善活動なり宗教活動を始めたときにはどうなるかということは、私はこれは大変なことだと思うのです。これは外務省の皆さんだつてよくアジア諸国状況は御覧でしようが、大体植民地を前提としてのやり方というものは殆んどこういう教育活動から出発しておるわけなんですね。自分たちの国の都合のいいような足場を作るためにはどうしても経済的な問題とこういう文化的な足場と二つが両方並行して進められている。私は、経済的な問題で一つ制限規定を設けておりながら、こういう文化的な精神的な面では全く放置した状態になぜ置くのかということをお尋ねしておるのです。日本側アメリカにおける活動ではなしに、アメリカ人日本でいろいろな学校を作る、いろいろな教会を作る、慈善事業をやる。これはお金を持つて来て、どんどんやれば一応引かれるのは人情ですよ。果してそれについて日本文教政策というものが一体一貫して関連して進んで行けるかどうか、その関係を聞いておるのです。
  12. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 本条約規定しておりますことはこの第三項に規定いたしております通り、これらの学術宗教或いは教育慈善ということの活動を行うことにつきまして団体を組織する権利ということでございまして、それが活動いたします際には無論日本法人と同様な規制を受けるわけでございます。従いましてこの経済条項がいろいろな活動そのもの規定いたしておりますのに比べまして、本条項団体を組織する権利ということを特にうたつているのでありまして、その活動に関しましては日本法人と同様に規制を受けるということに相成るわけでございます。従いましてお説のような危険はないということを確信いたしております。  なお只今日本アメリカ関係のどういう本条文関係するものがあるかと申しますと、学術関係ではフオード財団フルブライト法による学者の学術研究、アトミツク・ボンブの被害調査委員会というふうなもの、教育関係では国際キリスト教大学アメリカン・スクール、宗教慈善関係ではキリスト教の各派の活動というふうなものが存在いたしております。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 只今答弁甚だおかしいのですよ。そういうふうな内国人と同じ待遇を与えるということでありますから、日本人が受ける制限と同じ制限を受ける、これは当り前なことですよ。日本人よりも以上の活動を許す、そんなことはとてもあり得ないことですよ。日本人と同じようなレベルでどんどん活動される、果してそのことが一体大きな財力背景にしてやつて来た場合に日本文教政策が侵されるような心配がないかどうか、それを聞いておるのです。それはどうなんですか。
  14. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 只今申上げましたような事例に基きましてもそういう御心配というものは私はないものと確信いたしておりますし、又あとのほうになりますけれども、二十一条の第五項によりましてもいかなる規定政治活動を行うというふうなことはできない、それを認めるものではないのだという規定もございますし、両々相待ちまして御懸念のことはないものと信じます。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 成るほど政治的活動はほかの条文で禁止されておるのです。併しこの文化活動というのは何も直接政治活動をやるという意味で私が危険があると言つておるのじやない。日本文教政策として、政治活動に入らない程度一つ教育の基本的な諸問題、こういう点においてほかの教育活動がどんどん盛んになつて来れば、教育を受ける側の日本の大衆はちぐはぐなかつこうになつて来はせんか。そうしてアメリカ側教育が強くなつて来れば精神的にはアメリカ化されてしまうじやないですか。そういうことは現実アジア諸国ではたくさん起つたことでしよう。経済的ないろいろな取引の関係制限規定を設けたのであれば、なぜこの際においてもそういう場合には日本側活動制限できる、だけの留保権というものを置かなかつたのか。私はこれは非常な欠陥だと思うのです。アメリカのほうがどんな活動をしたつて制限ですか、何らのこれに対する抗議ができない状態になるのじやないかと思うのですよ。
  16. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 本条に規定してございます教育とか文化交流とか或いは学術交流とかいうふうなことは無論それ自体望ましいことでございますし、それから只今具体的な例を申上げまして御参考に供しましたように、只今活動しておりますようなものでも、例えばフルブライトにいたしましても或いは原子爆弾研究機関にいたしましても、これらはいずれも望ましい行為に従事いたしておるものでございますので、御懸念のようなことはないように確信いたしてこの条文を存置いたした次第でございます。
  17. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) これはお互いに見るところが違つておられるようでありますが、外務省側説明で御満足がいかなければいかないように、この第八条は亀田委員において留保されて、そうして先に進んで行くというようにいたしたいと思います。
  18. 亀田得治

    亀田得治君 それじや只今委員長の取計らいもありましたが一言だけお聞きしますが、こういう条項日米条約の中に入ることにつきまして文部大臣の御意見を徴されましたかな。
  19. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 文部省と連絡いたしまして存置いたしております。
  20. 亀田得治

    亀田得治君 文部大臣はどういう御返事です。
  21. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 本条約、本条文を置くことに御異議ございませんでした。
  22. 杉原荒太

    杉原荒太君 今の八条の第三項と第一条の関係はどうなるのですか。
  23. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 第三項と第一条ですか。
  24. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 第一条の第一項の(c)によりまして入国した者の活動に関して第八条に規定をしておるという関係であります。
  25. 杉原荒太

    杉原荒太君 今のだけかね。そうじやないのじやないかね、そういうものももちろんある。こういう文化活動に従事する者が日本に入つて来るというときは、その第一条に関係するけれども併し第八条の第三項というのはそれだけじやない。それだけじやなく、入つちや来ないで向うにおつてこの事業だけをこつちでやるというのに対しては適用のある規定じやないか。
  26. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) お説の通り両方含まれていると解釈いたしております。
  27. 杉原荒太

    杉原荒太君 ついでに聞いておくけれども、同様のことは第七条のこの事業活動についてもそうでしよう。
  28. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 第七条の第一項、さようでございます。
  29. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では第九条に入つて頂きましよう。
  30. 亀田得治

    亀田得治君 もう一つちよつと、あとに少し納得いかんことを留保しておきますが、この八条第三項の活動アメリカ人が行なつて、どうもそれが日本の公けの秩序からいつて工合が悪いという場合には、第一条の第三項によつて退去を命ずることができるのですか。
  31. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 第八条の第三項に関しましては、無論国籍の差別に基く差別待遇ということはできませんけれども、そうでなしにそれをやらない限り我が国の文教政策国内法規制し得るということは無論できるのでございまして、従いましてその国内法規制いたしましたことに違反するというふうなことがございましたならば、これは退去とか或いは再び入国を拒絶するとかいうことは無論できるわけであります。
  32. 亀田得治

    亀田得治君 そのようなことであればいきなり退去とかそういうことは一種の死刑に値いするような処置ですからね。その事前に制限をしたりするような措置が八条の三項自身の中に入つて行くのが適当じやないかと考えるのです。併しこの点も少し意見が違うようですから、あとの総括的な問題に残しておきます。
  33. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では九条の……。
  34. 羽生三七

    羽生三七君 ちよつと議事進行についてですか、逐条審議過程ですが、外務大臣も長くこの席におられるわけではないでしようから、大臣質問があればそれをすまされて、それから逐条審議を続けて行つたら如何かと思います。
  35. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  36. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記を始めて下さい。どなたか質疑のおありのかたは……。
  37. 羽生三七

    羽生三七君 この逐条審議過程でありますが、この各条項に直接の関係はないのですけれども、先日の衆議院の外務委員会中共との貿易問題でいろいろ質疑があつたようでありますが、大体のことは新聞で承知しておるのですけれども、まあなお念のためにお尋ねしたいと思うのですが、御承知のようにまあ朝鮮の休戦協定が成立して今後いろいろ会談が行われて来ることと思うのであります。その場合に例の中共との貿易関係国連による非難決議バトル法との関係日本に非常に大きな制約があつたわけです。それから休戦協定ができたあとではバトル法の持つ効力というか限界というものはどういう点でありますか。その点に関連して今後の見通しを少し承わりたいと思います。
  38. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 中共貿易につきましては休戦ができたからと言つてすぐ法律的にはどうということはないのですが、事実上はだんだん考え方が違つて来るのじやないかと想像されます。併しバトル法等につきましては私は事実上はそうどうということはないのだろうと思います。というのは繰返して申しております。が、今までもヨーロッパの国でアメリカから援助を受けている国はバトル法適用があるじやないか、それにもかかわらず日本よりもゆるやかな中共に対する貿易をやつておるというので、むしろ日本でも随分問題があつたような次第でありますから、バトル法適用自体によつて非常に制限されるという実績はないような気がするのですが、むしろ国連中共に対する決議等によつてパリなどで相談しておるこれらの制限措置が問題であるのじやないか、こう考えておるのであります。
  39. 羽生三七

    羽生三七君 これはまあ条約局長の領分に関する質問かと思うのですが、一体バトル法という特定の国の法律というものが他国制約し得る限界というものはどの程度のものでございますか、今の非難事項は別にしてアメリカ自身単独法であるこのものが、他国貿易というものを制約する限度というかどういう拘束力をもつのですか。
  40. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはもちろんアメリカ援助を受ける場合に、その条件としてバトル法適用を受けなければ援助をしてやらんということになれば、援助をもらうか援助を断つてしまうかどちらかであります。従つて外国法律がそのまま適用になるのではなくして、バトル法規定していることは援助を受ける国が取入れた場合にその国に対して有効である。その国に対してというのはおかしいですが、その国の国内法として有効になるということだと思います。
  41. 羽生三七

    羽生三七君 そうするとまあ今の御答弁を承わつてつてだんだん私不思議に思うことは、ずつと前から言われておつた政府のお答えと違つて、そう強い拘束力をもつておらないというような印象をだんだん受けて来たわけです。普通の休戦協定の場合は鉄砲の打ちかたをやめて、これはもうお互い各国の戦力上のアンバランスからやはり休戦というようなことも起るでありましようし、今度のような場合はずつと国連関係諸国が政治的ないろいろな情勢判断から来ておるので、事実上従来の非難決議というようなな場合とは形の変つたものに移行して行くということは政治的にも明瞭になつていると思うのです。そうするとそういう方面制約も非常に少くなつて来た段階と考えられるので、今後の中央貿易の、価値のことは申しません、どれだけの価値があるかないか素人でわかりませんが、そういうことは別としてかなり自由にやり得る段階に来たと了解して差支えないのでありますか。
  42. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) いや私はそうは思いません。というのはそれは国際的に相談してやつていることでありますから、この相談してゆるくするとか何とかするということがきまれば別であります。休戦ができたからどこの国も勝手にどんどん今まで国際的に相談しておつたことをやめて自由にやるのだということじやないと思います。
  43. 羽生三七

    羽生三七君 そうするとイギリスがいろいろ中共貿易をやつた、或いは船舶の運航等についてアメリカの一部の議員の間では随分イギリスに対する非難等があつたようでありますが、これはアメリカと一々話合でやつておるのでありますか。イギリス独自でやつているのじやありませんか。
  44. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) もちろんアメリカのみならずほかの国とも話合をやつた範囲内でイギリス政府としてはやるのであつて、ただイギリスの民間の代表等行つて相談するときはそういう制限措置にかまわずに相談して来るかも知れん。併し今度は実際に物を出すときになつたら、イギリス政府制限されておるものは出さないということになればそれで結果は同じことになると思います。
  45. 羽生三七

    羽生三七君 そうするとあれですね。イギリスも恐らくアメリカからいろいろ援助を受けておる国だろうと思うのですが、そういう場合イギリス程度貿易処置というものは日本でも可能であるわけでございますね。
  46. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは私ども今列国が足並みをそろえて同じような措置をとるのが適当であろうとこう思つております。併し実際上の問題になるとこれはなかなか途中に香港があり、シンガポールがあつたり、或いはヨーロッパのほうからデステイネーシヨンが変つて行くようなものがないとも限らない。その点は現実の問題としてはいろいろまあ各国やり方をよく調べて、お互い十分調査をしてみないと実際上同じになるようにするには手間がかかると思いますが、趣旨はそうであろうと思います。
  47. 杉原荒太

    杉原荒太君 外務大臣一つ対外経済関係についてお尋ねしたいのですが、政府では、殊に解散後新たにできたあと政府一つの政綱で東南アジアとの経済の促進というようなことをうたわれ、そうして今度更に使節団を派遣しておられる。日本対外関係というのは非常にむずかしい条件の下におかれておるものだと思う。その間にあつてまだ今のお話のこの中共貿易の問題もありますが、更にいわゆる自由う国との間に日本だけでいろいろ東南アジアという市場を大きく掲げてやつても、実際の結果というものは非常に私は実効をおさめるということはむずかしいことじやないかと思う。一つ努力目標として東南アジアとの関係努力するという方向はいいけれども、何かしらそれで日本の非常に苦しいこの対外経済関係が明るくなるという希望などを若し国民が持つとすれば、これは非常な幻想終りはせんかと私は危惧の念を持つておる。  更に今度いわゆる経済特別使節団のようなものを送られるようだが、そこで私がお尋ねしたいのは、今度やられるものの一体任務というものは、具体的にそういう人たちはどこの国に行つて、又どういうことを一体やろうとするのか、どういうふうに持つて行かれるのであるか。それから政府としてはそれに対して何かやるからには実際折衝してみねばわからんことであるけれども、大体の期待限度というような諸国の間でありながら日本は平等の待遇をすら認められない、つまりガットにすら入ることができていないのであります。そういうような状況の下で非常にむずかしい問題だ、困難な状況に置かれていると思う。そうして東南アジアとのことを言つておられるが、然らば東南アジアというのはどういうことか、特に言うまでもなく東南アジアというものは非常に複雑である。経済的にはもちろん政治的にすら旧本国の事実上の力というものが非常に強い。又華僑の力だつて強いし、而も現地人経済力というものは非常に弱い。又この頃全体として購買力というものが非常に減退してしまつている。こういう国との間に日本だけでいろいろ東南アジアという市場を大きく掲げてやつても、実際の結果というものは非常に私は実効をおさめるということはむずかしいことじやないかと思う。一つ努力目標として東南アジアとの関係努力するという方向はいいけれども、何かしらそれで日本の非常に苦しいこの対外経済関係が明るくなるという希望などを若し国民が持つとすれば、これは非常な幻想終りはせんかと私は危惧の念を持つておる。  更に今度いわゆる経済特別使節団のようなものを送られるようだが、そこで私がお尋ねしたいのは、今度やられるものの一体任務というものは、具体的にそういう人たちはどこの国に行つて、又どういうことを一体やろうとするのか、どういうふうに持つて行かれるのであるか。それから政府としてはそれに対して何かやるからには実際折衝してみねばわからんことであるけれども、大体の期待限度というようなものをそこに予想しないでこういう計画というものはやられるものではない。どれだけ大体そういう期待を持つておられるか。  それから更によく政府でこの頃やられるようだが、何というか正式の外交人のチャンネル以外でいろいろの者などをちよちよいやられるようだが、そういうようなものの実益というか、実際にそれが一体どれだけ役に立つものかどうかといえば逆になることがありはせんか。殊に東南アジアのごときああいうデリケートな政治状況の下にある所ではそういう点などもよほど考えなければならん。こちらの一方的なことでは結果が必ずしもそうばかり行かんでむしろ逆の場合すらあり得るのではないか。それはこれが絶対にいかんというのではないけれども、それは東南アジアのような所ではもつとなぜ正式の外交陣の強化というようなこと、そつちのほうこそが先行すべきではないかと思うのでありますが、そういう点について外務大臣はどうお考えになりますか。
  48. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 先ず第一に御了解を得たいのは、政府東南アジアだけやつておるのではないので、先般はキユーバ方面を中心にして使節団を送りました。それは中米ですが又南米方面にも話をいたしました。又トルコ、エジプト、イラン、イラク等中東方面にも先般使節団を出しております。そのほかヨーロシパにも随分人行つております。東南アジアはその中でも特に力を入れておりますけれども、東南アジアだけでものをかたづけようとしているのではない。日本全体の経済状況から見まして、どこといわず少しでも貿易の拡大を図るということが積重なつて行くものでありますからその意味でやつている。そこで東南アジアについては地理的な関係もあるし、それから資源等の問題でも日本のほしいものはたくさんあるのでありますから特に力を入れているのはこれはもちろんであります。そこで正式に外交代表でどうだというお話でありますが、それももちろん考えております。おりますが、私が外交演説でも申した通り東南アジアにはおのおのその国の計画があるのでありまして、日本から勝手な計画を押しつけるということはこれはできないのであります。その各国計画にのつとつて日本としてできることはやつてみたいという希望があるけれども、これも果してその通り行くかどうかわからないようなのは、今お話通りいろいろな複雑な状況でありますからむずかしいのでありますが、むずかしいからといつてつておくということもどうかと思つて、できるだけの努力はやつてみたいと思つております。そこでこれには例えば何か事業をするといつたときには、政府が乗出すのでなくして、国内事業会社が出て行つて仕事をする、こういう機会があれば非常に結構であると思いますが、それには資金の裏附もなければならん、或いはプラントというようなものも出すような必要が出て来るかも知れない。これには先ず外交官行つていろいろな話をして、その結果国内へ持つて帰つてそういうようなものができるかどうかということを考えて、又できるかどうかによつて話合をするという方法もありましようが、と同時に日本経済に明るくて国内の金融問題にも精通している、殊に国会議員という役目を持つているような人が行かれることは、それを二重、三重の手間をせずしてこの仕事はできるとか、この仕事はちよつと国内ではむずかしいという判断も加え得ることもありましようから、そこで外交代表というような形のものも考えておりますが、差当りはこういうような国会議員もあり、その方面に精通しておるようなかたをお願いして土地の調査をしてもらう。同時に今お話のように、いろいろ戦争以来感情的にもつれているところもある、こういうものは国の代表として国会に籍を持つているかたが行つて、そうして両国間の感情を融和する、お互いに理解を深める。こういう意味では非常に効果的ではないかと考えておりまして、そのために今度もお願いしてできるだけ現地の実情を調べる。と同時に現地の人々との意思の疎通を図るという意味行つてもらうというのが只今の考え方であります。
  49. 杉原荒太

    杉原荒太君 どこどこへ行く……。
  50. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今のところは大体東南アジア、つまり差支ない所は皆行つてもらおうと思つておりますが、日程の関係もあり果して全部廻れるかどうか、おのおの行く人の都合もありますから、今一応の旅程は殆んど全部の国を網羅しております。但しそれが旅行してみて実際上日が足らなくなつて行かれなくなる場合もあるかも知れません。今のところは台湾、香港、シンガポール、仏印、タイ、ビルマ、インド、パキスタン、インドネシア、フイリピン、こういうふうな予定を立てております。
  51. 高良とみ

    高良とみ君 ちよつと伺いますが、外務大臣としては、先日の国会の決議案に従のて中国貿易はできるだけ制限を緩和し、且つ西欧並みのところまで制限を緩和して行く努力をするという本会議においてお約束があつたわけでありまして、この問題についてはもうすでに他の委員からお話があつたかも知れませんが、そく聞するところによりますと、MSA交渉においてアメリカは依然として日本の中国との貿易に対して強力な反対を表明しておられるように聞くのでありますが、そういう事実がありますかどうか、先ず伺いたい。
  52. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) MSAにつきましては只今交渉中でありまして、話合の中で両方の意見が一致して、これは国民に知らしたほうがいいと考えられることは、そして差支えない範囲でできるだけそのつど発表しております。それ以外は会議の内容等について申上げるのは差控えるべきだと思いますが、ただ一言今のお答えとして申しますれば、今度の話合におきましてまだ中共貿易等の問題が出たことは一度もありません。
  53. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと一度も出たことがないというふうに了承してよろしいと存じますが、今後ともにやはり日本がMSAという軍事援助を受けるに対しましては、アメリカ中共と名指しませんでも日本貿易のあり方について、アメリカと協力するということの要望が出ておるのではないでしようか。
  54. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 貿易のあり方についてアメリカと協力するというのはどういう意味か私にはよくわかりませんが、もちろん日本経済只今のところはまだ弱体と言つては語弊があるかも知れませんけれども、決して強いものというわけにはいかないのでありますから、日本貿易その他経済が立つて行くためにはアメリカと協力するという必要はあろうと思います。できるだけ協力して行きたいと思います。
  55. 高良とみ

    高良とみ君 それじやもう少し具体的に申上げる。対共産圏内の諸国に対する貿易については、アメリカの方針に対し日本話合をするという了解はないのでありますか。
  56. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今MSAの交渉について別にそういうことはありませんが、一般的には私どもはアメリカ側と十分話合つて協調して行きたいと考えております。
  57. 高良とみ

    高良とみ君 それならば先日の両院における中共貿易促進に関する御決議もあり、そのアメリカとの了解を得るためにはよほど両方が話合つて行なければならないだろうと察せられますので、それについて外務大臣はやはり国会の一応の両院の意思というものを基にして、そして若しアメリカ側が中国に対し、或いは共産圏の諸国に対して是非貿易制限をしてもらいたいというときには、これを拒否して行くだけの覚悟をお持ちになつておられるかどうか。日本経済からいつてもどうしてもあらゆる国と貿易をして行かなければならないということについて、アメリカをしてよく了解せしめる御努力をなさるおつもりでありますかどうかお伺いしたい。
  58. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはまだアメリカ側が別にそういう要求をしているわけでもないのでありますから、そうこちらだけでりきむ必要もないと思いますが、院議の示すところについてはできるだけこれを尊重して努力するというのが方針であります。
  59. 高良とみ

    高良とみ君 日米通商協定におきましても相当アメリカと協力する面が出ておるのでありますが、その方面と、それから更には曽つてつた国連中共は侵略者なりということのわくがまだとれておりませんから、それに加えてMSAという三段階制限日本経済にはかけられているというふうに私たちは了承しておるのであります。それを少しずつでもときほぐして行こうとされる意思がおありになると思うのでありますが、その点で日米通商航海条約のほうはどうですか。何かこの点でこれは互恵平等であつて、若しアメリカ側が理解するならば決して日本経済的発展を阻止するものではないと、こう御了解になりましようか。
  60. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 日米通商航海条約につきましては私はその通り考えております。
  61. 高良とみ

    高良とみ君 MSAについては如何ですか。
  62. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) MSAにつきましては只今のところそういう制限があるかないか、まだ話合が出ておりません。
  63. 高良とみ

    高良とみ君 国連の決議案は朝鮮停戦がありましても、これは依然として協力しなければならんという義務をお感じになつておりますか。
  64. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 法律的にはもちろんそうでございます。
  65. 高良とみ

    高良とみ君 国連の政治会議でこれが緩和されたときには、国連協力の線における制限は相当緩和され得るとお考えになりますか。
  66. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 当然でございます。
  67. 高良とみ

    高良とみ君 それからココム等についてもアメリカとよく話合つて日本中共貿易或いは対共産圏の貿易を今よりも拡大し得るとお考えになりますか。
  68. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 原則的にはそう思つております。但しこれはアメリカだけの話合ではありません。列国たくさんの国が関係しておるのでありますから、たくさんの国が歩調を合せるという趣旨で話合をいたしたいと思います。
  69. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 只今高良委員の御質問ちよつと関連するのですが、もう少し本質的なことでちよつと簡単にお伺いしておきたいと思います。丁度今度外務委員会でも議会でも事後承諾を求める条約が大分出ているのです。それは当時のいろいろな事情がありましようが、併しながら予見される場合には成るべくそういう事情の起らないように、議会を通して国民との了解を得る方法をとつて頂きたい。その一つはMSAの問題でありますが、MSAの問題が今度御交渉中で恐らくはもつと深いお話合が始まるのは議会が済んでからである。そしてこのままにいたしますと、その次の議会までに重要な御相談ができ上つてしまう。それで私が伺つておきたいのは、幸い常任委員会もあるのでありますから、それで一方的に新聞で御発表になる場合には質問の形式もとれませんから、議会の常任委員会を通じて成るべくしばしばお話を発表せられたらどうか。それからアメリカの議会などでは可なり軍事上の機密に属することすら公けの席で発表したことがあります。成るべく国民の非常な関心を持つておるMSAの問題を議会のない場合に常任委員会などを通して、例えば外務委員会などを通してお話合をして頂くような方法はとれないかどうか、伺つておきたいと思います。
  70. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今お話は趣旨としてその通りでありまして私もそのつもりでおります。ただ事後承諾を今まで求めておるがというお話でありましたが、もちろん鶴見委員などはこういう方面にいろいろ練達のかたでありますから、私から蛇足を加える必要はないと思いますが念のために申上げておきますと、事後承諾を求めておりますのは主として平和条約関係で、一年以内に加入すると約束しました条約につきまして、加入の前に承認を求めようと思つて国会に案件を提出したり、或いはまさに提出しようとしておつたときに解散になりまして、その一年が四月二十八日でたちますから、そこで条約上約束しましたので加入してあとで国会の承認を求める、これはやむを得ざるためにやつたのであります。そこでそれとよく混同されて私ども質問を受けておりますのは、条約に調印してそうして国会の承認を求めるのは事後じやないか、それよりも調印の前に国会の承認を求めるべきであるという議論が多いのであります。それは私は、失礼ながら誤解であると言つて始終お答えしておるのでありまして、条約には調印をしてすぐ効力を発生するものと、批准をした後に効力を発生するものとありますから、調印と同時に効力を発生するものは調印の前に国会の承認を求める。批准後に効力を発生するものは批准の前、即ち調印したあとで国会の承認を求める。そうすると、調印したものはなかなか国会でいかんというわけにはいかない。だから調印と同時に効力を発生するような条約をしておいて調印の前に国会の承認を求める、承認があつたら調印してすぐ効力を発生するようにしたい、こういうような議論がずいぶんあります。併し私の申すのは、国会に承認を求めるのは調印と同時に効力を発生するものでも、或いは批准で効力を発生するものでも、その前に国会に憲法上の、法律上の承認を求めるという場合には同じことであつて、両国の行政府間に意見が完全に一致して、これならよろしいというときにでき上つた成文を国会に出して承認を求めるのでありますから、いい加減にこれはまだここはどうなるかわからんけれどもと言つて国会に承認を求めるわけには行かないのでありますから、実際上は調印と同時に効力を発生する条約をその前に国会に出しても、或いは調印して批准の前に国会に出しましても、その出したものはもう両国の行政府間でははつきり合意のできておるものを立法府にかけて承認を求めると、実質的には同じことであります。こういう点はしばしば繰返しておるのでありまして、これは憲法上の承認の問題であります。  ただ、今お話のようなMSAの交渉に関連して、できるだけ常任委員会にでもいいから内容を述べて説明をし、事実上国会を通じて国民の理解を深める、これは成文になつてないものについてできるだけ詳しく報告をしろ、或いはお話をしろと、質問に答えろと、こういう意味であるならばそれはできるだけいたします。そのつもりでおります。
  71. 鶴見祐輔

    ○鶴見祐輔君 只今の事後承諾案の問題とMSAが同じであるということを申上げておるのではないことは、外務大臣も十分御了承のことであると思います。私の申上げておりますのは、例えばMSAの問題にいたしましても、憲法上或いは法律上議会で批准をしなければいけないという場合に、それをすればそれでよろしいということよりも一歩ふみ込みまして、こういう重大な外交交渉の問題は、事ごとに一々委員会の事情をここにお話をしなさいという無理は申上げませんけれども、国民と共にこのMSAの問題を交渉をして行くというような気分が出るようにお話合をお進めになつたほうが、国民全体の衷心からの協力を得るような事情が発生するからそういうふうにお取計らいを願いたいということであります。今までの例から言えば交渉中の問題は秘密のことであるからそれは話せない、だから法律上の規定に従つて違法でない取扱をすればいいということになつておりましたけれども、今日の場合はむしろもつと一歩ふみ込まれて成るべく国民全体を自分の腹中に取入れて御相談になるようにMSAを取扱つて頂きたいという、こういう趣旨で私は申上げているのであります。
  72. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 御趣旨はよくわかりました。できるだけそういたします。元来私どもは、若し国会が閉会中であり、常任委員会がありますれば結構でありますが、そうも行かないような場合には進んで説明を聞かれようとするならば、各政党にでも行つてお話をしてみようとくらい思つておるのでありますから、委員会等がございますれば喜んでそこで十分なるお話をいたしたいと思います。
  73. 古池信三

    ○古池信三君 この条約の締結は日本の移民問題に何か将来非常な好影響を与えるというようなことになるかどうか。又この交渉の経過におきまして移民問題についても何かお話があつたかどうか。又最近の新聞で何か米国は東洋人三千人の新入国を許可するとかいうような報道があつたようでありまするが、日本人の割当に関しても百八十五人の問題に更に追加があるような話でもあるのでありましようか。そういう点について伺いたいと思います。
  74. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 移民の問題は特別の話でありますので、この一般的な通商航海条約には特にこれに関しては一般的な規定以外にはないと思います。又話合はその点についてはいたしておりませんが、別に移民法等の関係につきましてはアメリカ側と絶えず話をいたしております。今度のアメリカ措置は初めはちよつと日本人を別に三千人のわくをつけるようなふうに報道されましたが、どうもよく調べてみますとそうではなくして、一般にいわゆる東洋人に対してということではないかと今のところ考えております。その中にも日本人も入り得ると思いますが、そうしてその東洋人の中から主として共産圏よりの避難民というような形で三千人を入れると、これはヨーロッパに対してはもつと非常に多数共産圏からの避難民として入れておりますが、それに対応するような措置としてやつて来たように思います。そうしますと日本が入らないかというと必ずしも入らないでもないようでありまして、これは非常にむずかしいが、例えば共産圏から引揚げた人などというものは、概念的にはやはりその中に入り得るものではないかと思つておりますが、まだ詳細な報告が、たしか飛行便で来るのだろうと思います。簡単な電報は来ておりますがどうもそんなような趣旨の電報でありますので今報告を待つております。
  75. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 もう一つ。来年の四月ですかサンパウロ州の四百年祭の催しがあるようでありまするが、この催しに日本として今どういうような、使節団を出すとか或いは何か参画するとか、何か御計画されておりましようか。
  76. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは移民送出国は非常に力こぶを入れておりまして、事はサンパウロの四百年祭というのでありますが、今のサンパウロの実力から申しますと、ブラジル全体の四百年と言うのはおかしいのですが、ブラジル全体に係るお祭りと思えるくらい大規模のものでありますので、移民送出国でありますイタリーとかその他アイルランドとかほうぼうで非常に力こぶを入れて、日本金にしますればかなり大きな五億とか七億とかいうような予算でこれに参加するようであります。そこで日本としましても今までの関係もあり今後の関係もありますから、できるだけこれにやはり参加して大いにやりたいと思つております。その金が第一必要なのでありますが、政府の予算に今年度組んでおりますのは極く少額のミツシヨンを出す程度の費用であります。これは外務省と通産省でありますか組んでおると思います。併しそのほかに現地の居留民がきよ出する金及び日本国内関係者がきよ出する金、そうして政府のこれに対する補助金、こう三通りになりまして初めの計画では三億余の金を集めたいということでありましたが、その後だんだん計画が変りまして多少少くなつております。併し政府としてはできるだけこれに対して助力を与えたいと思いまして、実は明日も私が主催となりまして、国内の有力者を日銀総裁のあつせんによりましてこの向うの総理官邸にお茶においでを願つて、事情を話して一つ奮発してもらおうと思つておりますが、更に予備金なり或いは来年度予算なりにもできるだけの額を計上しまして、そうして現地の居留民、現地の人間のきよ出する金と一緒にして相当程度の恥かしからざるものをいたしたいと思つて只今計画中でございます。
  77. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 外務省にも移住局ができることになるだろうと思いまするが、そういう際でもありまするので、移民問題、或いはブラジルのこういう問題等に対しましては、更に一層積極的の関心を示されますように希望いたします。
  78. 高良とみ

    高良とみ君 先ほどの続きを大変恐縮ですが、この日米通商航海条約と並ぶものとして、英国或いはフランスその他の国とはどういうふうにお進めになるおつもりでしようか。特に英国とは米国と結んだものと類似した互恵的なものをお考えでありましようかどうか、その点を伺いたいと思います。
  79. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) イギリスとも早く通商航海条約を作りたいと思います。先方にも話をいたしております。フランスにもまだやつておりませんが、この条約の趣旨によりましてできるだけ早く作りたいと思つております。
  80. 高良とみ

    高良とみ君 なお先ほどお話のありました通り、この東南アジア方面、殊にポンド地域における日本貿易状態がなかなか問題が多く、且つ英国の真剣な努力が着々進んでおりますので、どうしても英国と日本との競合的な空気が強くなると思うのでございます。それに英国の日本に対する感情もなかなか戦後よくないのでありますが、そういう意味でこの英国にも米国と結んだと似寄りの最恵国待遇程度にまで進み得るかどうかその点を伺いたい。具体的に申せば英国の銀行が又日本においても相当な業務が行い得るようになり得るかどうか、その点お伺いします。
  81. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) イギリスとの間はできるだけ密接にいたしたいと思いますので、こういう趣旨の条約を是非作りたいと思います。その結果としてイギリスの銀行が進出して来るということももちろんあり得ると思いますが、私はむしろそれは歓迎すべきことだと思いますが、併しそれにしましてもイギリスとの間には、やはり互恵的でありますから、イギリスの銀行が出て来るということになりますれば日本の銀行も向うへ出て行くということになると思います。併し東南アジア貿易につきましてはイギリス本国だけの通商航海条約では足りませんので、やはりその各国との間に通商条約を結ばなければならないと思います。
  82. 高良とみ

    高良とみ君 ポンドの決済に関する英国との交渉はどんなふうに進んでおりますか。
  83. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ポンドが大変今不足しておりますので、この協定に基いて更にイギリスから融通してもらう必要が出て来ているようでありますので、その交渉は只今いたしております。一方イギリス側としては今のところまじめにポンド地域の各国に向つて制限緩和等の措置を勧告しておりまして、その結果濠州、ニユージーランド等も或る程度緩和がされ、シンガポールも緩和された状況になつてるので、イギリス側としては今すぐに効果が出ないとしてもこの九月以降頃には、つまり第三四半期といいますかその時分には相当効果が出て、ポンドが不足しないようになるのじやないか。若しそれでも不足するということになれば一時的な不足でなくてもう恒久的な不足になるので、その間のスターリングの協定によるやり方では十分でないということになるのじやないか、別の方法を考えなければならんのじやないかというような意見も持つておりますが、要するに九月以降の状況を更によく見てみなければ結果はわかりませんが緩和が多少ずつできていることは事実のようであります。で、あとは今度は緩和ができましても物がよくて安くれければ売れないということもありますから、緩和だけですぐ日本品が売れるということにも行かんと思いますから、そこでコストの切下げ等の努力も要るわけであります。只今のところはそういう意味でいろいろ実績を見つつ貿易の拡大を図つているというのが実情であります。
  84. 高良とみ

    高良とみ君 まあ日米通商航海条約もいろいろな既得権及び新らしい強力なアメリカの資本に対する特権が付与されている姿が見えますが、今後他の国の大きな資本も入つて来る。特にこのパテント料等を一割ないし一割三分払つているような薬品とかいろいろなものが入つておりますので、日本の先ほど御指摘のあつた弱体な経済を守るためにどういう方策を考えておられるか。つまり特に具体的に申せば、アメリカとの通商航海条約においてもあまりに片方が大人であつて、片一方が子供及び子供よりももつと弱体な経済でありますから、どうしても外国資本がパテント或は原料の供与等においてどんどん入つてくると思うのであります。それに対して日本経済がどういうふうに自己を守り且つ再建して行く方途をお考えになつておられるか。
  85. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 実は政府は外資導入ということを長く唱えているのですが、国会の各委員会等まで今までお叱りを受けておりますのは、外資導入外資導入といいながら一向外資が入つてこないじやないかという方面であつて、外資が入つて困るからというようなお叱りはまだ一度も受けておらないのであります。政府としてもできるだけ外資を入れて日本経済を復興するのに役立たせたいと思つているのであります。それはあまり日本経済に悪影響あるものはともかくとして、そうでない範囲においではむしろ外資が入るような努力をいたすべきだと思つております。つまり一部の経済が圧迫されるからというので角をためて牛を殺すような手段を講ずべきじやないと思つております。又これによつて日本経済が競争に立向えるようなことになるのであつて、外資を入らないようにして外国の資本に圧迫されないようにというような温室育ちのことをやつておればいつまでたつても目立できないという面もあるのであります。殊に例を一つつて見ますと、中国などはいろいろな条約関係、治外法権等がありましたから外国の資本は実にたくさん入つて来ておつたのは御承知の通りでありますが、だんだん戦争前近くなりますと、これが中国の資本にのつとられたといつては語弊がありますがだんだん変つて来てしまつて、而もその国の力がだんだんつけばつくほどそういうものがその国のものになつてしまうのが戦前では実情でありました。そこで私どももあまり外資をこわがる必要はない、むしろ入るものは歓迎して入れるくらいで気を大きくして、その力を利用して早く経済の回復をすれば、その外資は今度実際上日本のものになると同様の結果になると思つておりますから、特に悪結果のないものについてはできるだけ外資の入るようにというのでその調整に今度の条約なども一番重点をおいたのであります。その結果が御覧のような条約なつたわけでありますので、政府としてはその意味で今後ともできるだけ経済の一部の圧迫等を緩和しつつ外資の入るような努力をいたしたいとこう思つております。
  86. 高良とみ

    高良とみ君 今回の条約はそういう意味で外資導入の面を非常に力説されたということをいろいろな面で聞いているのでありますが、それで外資導入が果してできるためにはいろいろな条件がありましよう。それに対してはどうも日本の税が高いとか、或いは日本経済状態が、或いはその他の事情が安定しないというようなことで外資がなかなか入らないのだというお説も随分ありまして、その点中国の資本がしまいには中国人の資本になつたというようなお説もありますが、必ずしもそうでない面があると思うのであります。やはり経済植民地化して参りまして、それには外資が入りましても原料が入らないことにはどうしても本当の生産力は出て来ないのではないか、そこで外資導入という面だけでなくて、もつと原料のある大陸方面、或いは東南アジア地方と早く平等な通商航海条約ができまして、そうして外資を運用して行く原料がもつと入つて来なければ、外資だけが入つて来ることに対しては非常に弱少な日本経済が恐怖を感じているということは、これはお認めになるでしようか。
  87. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 原料が入る、これは当然のことでありますから又原料の入るほうで努力しなければならん。先ほど杉原君の御質問にもありましたように、アメリカとだけの関係日本経済の全部の問題が解決するとは決して思つておりません。従いまして各方面にできるだけのことをするのは当然であります。その一つの表われとして今日アメリカとの条約ができたわけであります。これだけでおしまいというわけじやなくてどんどんまだ作つて、そうして最終的な目的にまでいく、つまり経済の自立までいくというつもりでおります。その手初めとして今度できたやつの御審議を願つておるような次第であります。
  88. 高良とみ

    高良とみ君 方面を変えまして。経済自立が実現しますためにはあらゆる方面に渡航の自由がなければならないと思うのですが、先日のあれによりますと大陸方面への旅行の自由を緩和しましてできるだけ多くの調査或いは調査視察等が行われるようになさるおつもりと存じますが、その点で今まで制限のあつた諸国に対する渡航の自由というものは朝鮮停戦その他においてどれほど変化がありますでしようか。
  89. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今までのところは格別の変化はございません。今後情勢に応じましてできるだけ院議に副うように努力するつもりでございます。
  90. 高良とみ

    高良とみ君 なお、今までの制限は別に法的な根拠によるものでなく、国連協力の線においてああいう制限がせられたものと了承して間違いありませんでしようか。
  91. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 輸出の制限についてはその通りであります。旅券等を発出しませんものは、共産圏内のやり方を見ますると経済の問題を経済だけで離して考えない。すべて、すべてと言つては語弊があるかも知れませんが、多くの場合には経済の問題でも或いは科学の問題でも、芸術の問題でも、すべてが革命とか或いは共産主義とかいうようなことと関連して考えられておるようでありまして、例えば純粋の科学、医学の問題でも、或いは芸術の問題でも、反革命的だというようなことで非常に非難されるのはよくある実情であります。従いまして経済だけの問題が切離されれば殆んどむずかしいことはないわけでありますが、そういうような共産主義の宣伝等がまざつて来ると今の日本の実情としては非常にむずかしい問題になりますので、旅券の発出等をちうちよせざるを得ないというのが実情でありまして、これは国連の決議とは直接の関係はない、政府の考え方としてそういうふうに方針をとつておるということであります。
  92. 高良とみ

    高良とみ君 共産圏の旅行に関してそういうお考えをお持ちになつておられる場合には、明らかに共産圏と銘を打つておりますユーゴースラヴイアに関しても同じお考えでありますか。
  93. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはもう実質的に考えるのでありまして、ユーゴースラヴイアの実情はほかの共産圏とは大分違つておるように私どもは見ておるのであります。従いましてその違いだけの差はつけております。
  94. 高良とみ

    高良とみ君 なお共産圏における経済といわゆる革命思想というものとの分離能力の問題でありますが、これから貿易を盛んにすれば、どうしてもそれと共に革命思想というもの、それが例えば新民主主義とかいろいろな形で来ましても、それは貿易に関しては貿易貿易だけで、商売は商売だけで、革命は輸入されないのだというわけにはいかない、こういう憂慮を持たれるのでありますか。
  95. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) まあ簡単に言えばそういうことであります。
  96. 高良とみ

    高良とみ君 そうするといかなる商社でもそういうことになりましようか。日本において相当の実績を持ち、はつきりした商売を商売のためにやつておりまする実業人でありましても、やはりこれは貿易をすればそれと共に共産主義をも付けて持つ来るというふうにお考えでありましようか。
  97. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 前には我々はそういう趣旨で、その人が共産主義の人であるから、或いは全く右翼の人であるからということに関係なく旅券を出して、そういう所へ行かれるということ自体が国の利益にならない。こういう意味で個人が悪いのじやないのだという御説明をしておつたわけであります。その説明は原則的には今でもその通りでありますが、国会の決議もありまするし、又休戦ということの新らしい事態もありますから、その間にできるだけの調整を施して行こうというのが只今の考えであります。
  98. 高良とみ

    高良とみ君 大体の御趣旨はわかりましたが、なお英国その他の国におきましては共産圏と取引をしても、その国のイデオロギーはイデオロギーで別であつて、例えば日本において神社崇拝があるから日本貿易をすると必ずその神社崇拝がついて来るとか、或いは日本の風俗習慣、日本人の性格がついて来るとかいうようには考えておらないわけなんであつて、私どもの了解するところでは中国もこの共産主義、彼らの言う革命思想というものは輸出品ではないというふうにはつきり区別しておる面も幾多見ておるのでありますが、そういう点で日本人もよその国の政体までも背負い込んで来なくてもいいのだという確信をもつと外務省あたりが御指導になることはいかがなものでありましようか。いろいろな国がこれからできると思うのです。南方、アフリカ等反英的な国もあれば反米的な国もあるし、その国と商売をして行けば必ずその商売のためにそういう国に渡航すればそれにすぐ感化されるように考えないで、もの少し国民が国際情勢或いは国際思想、政治についてはつきりした考えを持つてやれというふうに貿易或いは経済政策をおとりになることが外務省一つの仕事ではないかと、まあ恐縮ながら思うわけでありますが、いかがなものでございましようか。
  99. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 外務省がそう国民の精神指導をやるというようなことはちよつと考えておりませんが、併し一般の普通の国と私は共産主義の国とは多少違うと思うのです。というのはすべての問題の先に共産主義ということを置いておる国と、それから普通の反米だとか反英だとかいろいろありましようけれども、そういう今までの国というものは経済経済、政治は政治というふうに分けておると思うのです。従つてどの国もみなそういうことであつたらばどこの国へも行かれないということになるかも知れませんが、私はそういう意味じやなくて、共産主義の国というものは特別にそういうふうに科学でも芸術でもとにかく反革命というようなことでらく印をおされてしまえば手がつけられないというような実情から見ると、どうも経済だけの話合というのはなかなかむずかしいというふうに考えておるから、それに対する予防措置を講じておるというのが実情であります。
  100. 高良とみ

    高良とみ君 一つ外務省にそういうその貿易に常に反革命とかいろいろなことを附加えて来るであろうというふうな資料がありましたなら一つ拝見さして頂きたいと思うのであります。それで、この点は見解の相違でありましようが、是非あらゆる国の、例えば南米などにも全体主義の国家がありますが、或いはその他さまざまでありましようが、それと別にして貿易貿易、或いはまあ精神指導はなされないでも、政治の形態はいろいろな国があつていろいろな国情、風土、人種等によつてあるのだけれども、世界に和を求めるという精神から言えば、あらゆる国のよいところだけをもつて自家薬籠中のものにするというような、そういうふうな意味で私どもはよろしく日本が世界に生きるの道をもつと開くべきであると考える。そんな点で若しそんなどうしても貿易はいわゆるイデオロギーの色なくしてはできないという資料とかがおありになりましたらお見せ願えれば、参考に拝見したいと思うのです。希望いたします。
  101. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは休憩いたします。    午後一時十二分休憩    —————・—————    午後二時四十一分開会
  102. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは午前に引続きまして、只今より外務委員会を続行いたします。  質疑に入ります前に、如何でしよう、外資関係の次長さんが来ておられます、昨日求められた中田委員、よろしうございますか。
  103. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 結構です。
  104. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは通産省企業局次長小室さんが来ておられますから、どうぞ。
  105. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 委員長ちよつとその前に通産省のかたにお願いしますが、この条約を我々がいろいろ検討します際に、これがどういうふうに、外資なんかが入つて来ますと、日本産業に影響するかというようなことが知りたいと思いますので、日本産業をどうキヤツチしているか、どう接触してどういうふうな影響が、ずつと諸産業に来ているかというようなことを、わかりましたら、そういうことも含めて一つ、外資が入つて来て日本産業をどういうふうに把握しているかといいますか、その影響を、そういうことも一つ念願において御説明頂けたら大変ありがたいと思います。
  106. 小室恒夫

    政府委員(小室恒夫君) 大分一般的なむずかしいお尋ねでございますが、丁度只今外資導入に関する一般的な資料をちよつと持つて参りましたので、それを先ずお手許に差上げてから御説明いたしたいと思います。そのお手許に差上げた資料の第一ページ目の大きな表が外資導入額の総括表ということになつておりますが、これはまあ過去数年外資の入つて参りました件数なり、或いは投資額なりを、投資の形態別にまとめたものでございますが、一番下の欄に二十五、二十六、二十七年、二十八年の投資額を総計した欄がございますが、この株式投資というところを見ましても、日本円にして百八億ぐらいでございます。それから又貸付金投資というものを見ましても、日本円にして百六十四億、まあそんなわけで総額として、合計として二百七十五億、ドルに換算して七千六百万ドル、まあ丸三年間の間に七千六百万ドルというようなくらいのものでございますから、過去において、外資の導入が日本経済に大きな影響を及ぼしたということは、なかなか言えまいと思います。又日米通商航海条約ができたからと申しまして、直ちにそれが外資導入を今までと違つた規模で以て実現するというようなことに直ぐになるとは私は考えません。我が国の経済が資本が不足しておりまして、特に長期的な資本というようなものは格別不足しておりまして、重要産業でも致府資金などに依存する度合も非常に大きいし、又不当に銀行その他の外部の借入金に依存している状況は御承知の通りでございますから、この資本の不足を健全な外資導入によつて、できるだけ穴埋めして行くということは、これは私ども通商産業を担当している立場から言えば、最も望ましいことだと考えております。ただ今申しましたような程度の過去における外資導入でもありますし、差当つて直ちに日本経済にどういうふうな大きな影響を現わして来るかということは予測もしがたいし、又そんな大きな影響は急には来ないだろうと思つておる次第でございます。  それから資料のついでにちよつと申上げますが、技術導入の状況というのが、その次、二ページ目にございまして、更に技術導入の効果の概観、まあ概観というのも恥しいくらいな非常に簡単なことだございますが、これは委員のほうから、通産省で外資白書というものをまとめておるそうだがというお尋ねでございました。その外資白書とい名前は、これは新聞のほうでつけた名前かと思いますが、私どものほうで過去において技術導入を相当件数やつておりますので、その実施状況について、この際、調べたらいいじやないかということで、事務当局において目下調査中のものでございまして、まだ原稿としてもまとまつたものじやございませんが、その中でちよつと目星しいものを拾つて見たということでございます。個々に捉えて言えば、例えば電気通信省の関係で、小さな真空管、今まで日本でできなをつたものが、技術援助の結果できるようになつたとか、或いは塩化ビニールのようなものでも、風呂敷や何か消費財など割合に目立つておりますが、そうじやなくて、電線の被覆に使うような生産財方面などで新しい用途が技術導入の結果として拓かれて来た。或いはまあ輸出産業関係では、国内でも使われておりますけれども、例のサンフオライズ、綿布の伸び縮みをなくす加工のやり方でありますが、サンフオライズの製品が非常に輸出でもよく出ておりまして、これはもうすでに八十万ドルばかりの外貨を現実にその面で稼いでいるようなことになつておりますが、そういう一つ一つのものを捉えて見るというと、相当技術導入の効果も上つておりますし、我が国の遅れた技術水準の引上げに役に立つていると思いますが、併しこれも又過去数年漸く手をつけたばかりでありまして、技術導入の契約は結んだが、まだ実施段階に入つていないものもございますし、又機械等の据付はやつたが、今日まで本格的に生産に入つていないものがある。まあ今日までのところは端緒的な段階であると言わざるを得ないと思います。まあ資料の説明を兼ねてお答え申上げました。
  107. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 いつでしたか、今辞めましたが、アメリカの国防動員長官ですか、ウィルソンですね。まあ将来日本なんかを、必ずしも平和がいつまでも保たれるという予想もないし、そういうところに資本を投ずることは多くの危険を含んでいるというような言葉もありましたし、我々も言われているほど資本が入るということは予想していないのですが、これを以て見ても、予想以上に少いことがわかるのですが、私たちとしては、アメリカの資本と日本産業との接触は、流通過程なんかが比較的いい、そういう面の入り方が多いのじやないかと思うのですが、それば別にしまして、私旧三井物産系のかたから技術導入が非常に、例えば化学薬品なんか、マイシンとかいろいろなものなんで、パテントの料金なんかが非常にたくさん払わねばならんので、企業の利潤の相当部分を支払わねばならんので、かなり大きな影響を及ぼすということを聞いたのですが、技術導入なんかのパテント料金というのはいろいろな形で違うのですが、大体どういう形になつていますか。
  108. 小室恒夫

    政府委員(小室恒夫君) 外資導入と申しましても、日本と外国の民間業者相互間の話合いでございますから、これはまあいわば商談でございます。従つて技術を提供する側と、もらう側との強弱関係と申しますか、これによつてやはり条件も左右されます。まあお話のような一割も上廻るというようなロイヤリテイだとか、その他の関係の送金が一割上廻るようなものは比較的少いかと思います。七%というようなものもございますし、一割のものもございます。又そう多くはありませんが、一割を越えるようなものもございます。これはどうも何といいますか、制限することもむずかしいし、又日本の技術の向上に非常に役立つ、或いは輸出の振興に間接に役に立つというようなものにつきましては、各国との技術援助契約の実情なども、能う限り調べて、日本だけがまあ悪い条件では具合が悪いのですが、そうでない場合には、諸般の状況を調べた上で、認めているケースが相当あると思います。ただ日本だけが特に不利な条件になつているとは私ども考えません。場合によつて日本のほうが有利な条件を技術援助契約等で獲得している場合もございます。
  109. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そうしますと、私実はその先に申しました三井物産のかたにちよつと知り合いがあつていろいろ聞いて、かなり特許料なんかの料金の支払が高くて、日本産業がこういう面から非常に荒されるようなことを聞いたのですが、そうでもないのですか。
  110. 小室恒夫

    政府委員(小室恒夫君) まあ個々の話合いで、多少立場の弱い人が幾らかまあ高めの率などで話合うような場合にも、他の例なども参考にしてもらつて、まあできるだけ不利な立場に日本側として陥らないように、私どもも努めて業界の人たちに、そういう立場で接しておるつもりでございます。法外な悪い条件国民経済的に見ても不利な条件というような場合には、これは外資審議会等でもチエツクしております。私どもも認可の際には、そういうものは認可しないという立場で参つております。
  111. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 一つの会社が、例えばストレプトマイシンなんか入れると、同じ業種の会社もやはり入れないと対抗できないので、ずつと軒並みに入れざるを得ないというような話も聞いたのですが、そういう関係はどうなんですか。
  112. 小室恒夫

    政府委員(小室恒夫君) そういう事例は幾つかございます、確かに。まあそうやつて各社が技術を入れて各社増産計画をやつて、そのために共倒れになるようでは工合が悪いですけれども、適当な販路があり、或いは輸出市場がありということであれば、それは一社に限るというわけにも参らず、むしろ一社の独占を許さないというほうが自然ではなかろうかと、こう考えております。
  113. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 この株式投資の、或いは貸金投資にしましても、大体石油が殆んどなんですね。九十二億円ですか、二千五百万ドルですか、非常に石油産業に入つているのですが、この関係一つちよつと御説明願いたいと思います。
  114. 小室恒夫

    政府委員(小室恒夫君) これはアメリカの外国に対する資本の輸出状況を見ましても、石油資本が圧倒的な割合を示しておるのでございまして、これは今数字をここに持ち合せておりませんが、必要ならば過去の数字は或る程度はわかつているはずであります。で、まあ日本の石油会社も戦前から大体アメリカその他の海外の石油会社との提携がございまして、その復活ということもございますし、又特に日本では原油の生産が需要に対して一割にも満たないくらいの関係で、原油はどうしても海外から入れなければならない。有力な外国会社から入れなければならないというような関係もございます。つまり資本を出すほうの側からも積極的なれば、資本を受けるほうの日本の石油関係会社としても、外国会社とやはり提携しなければならない立場がございますので、自然そこに大きな額になつて来たのだろうと思います。
  115. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 これは石油産業はいろいろあるんですが、大体どのくらいの株を持つていることになるんですか。
  116. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 大体まあ五〇%乃至五一%というぐらいの事例が多いのであります。
  117. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 大体わかりましたが、そうしますと、過去を以て将来を類推することができんと思うのですが、言われるほど外資導入が将来簡単に入り得るとは思えないと思いますが、どうなんですか、特にこの間、アメリカの何か評論雑誌を見ますと、日本経済界における一つの大きな通弊は、採算を無視したような外資が幾らでも大量に入るような感じを持つて、企業の合理化とか、みずからの資本蓄積に努力を怠つておる、そう外資というものは必ずしも容易に入るものじやないというような評論があつたんですが、見通しはどうなんですか。
  118. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 外資の導入にもいろいろな段階はございますけれども、やはり企業と企業の間の縁組をやるようなものでございますから、そう簡単にやはり結付けない。その代り相当長期に亘つて、いろいろ商売上の関係ができるし、或いはまあ比較的簡単な外資提携ができ、瀬踏的な提携ができるということになれば、その上に外資の話合が更に深くなつて来るというようなことがあると思いまするし、まあ朝鮮事変も治まり、幾らか国際的な関係も緩和いたしますると、外資の前途というものは、過去に比べれば、相当まあ期待できるのじやないか。併しこれは過去に比べて見てと私は申すわけでありますが、そう急に外資が流入して来るということは期待いたしておりません。又戦争の直後ならば格別でありますが、現在外資にそう期待して、日本の企業が資本の蓄積を怠つているとか、たなぼた式のことを考えているということは余りないのじやないかと考えております。
  119. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 石油産業以外に可能性の多いのはどんなものですか。
  120. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 石油産業以外で今比較的経営参加的の株式の比率の高いものとしては、化学関係、例えばさつき申しました塩化ビニールの関係とか或いは合成繊維の関係にも例がございます。それから一般的に言うと、機械工業並びに化学工業は日本アメリカその他先進国と比べて技術が非常に劣つておりますので、その分野においては、特に技術上の援助を中心にした外資導入をこちら側からも促進しなければならない立場になつているかと思います。
  121. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 塩化ビニールについては、日本が発明したのだと聞かされておりましたが、今のお話ではアメリカのほうが進んでいるように……。
  122. 小室恒夫

    政府委員(小室恒夫君) やはり技術としては相当向うから入れております。
  123. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 作り出したのは日本ですか、そうではないのですか。
  124. 小室恒夫

    政府委員(小室恒夫君) ちよつと私自信を持つてお答えいたしかねますが、実験的に各国ともいろいろやつておると思います。
  125. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは亀田委員に第九条お願いいたします。
  126. 亀田得治

    亀田得治君 この九条第一項では不動産所有権は、これは認めておるわけですか。
  127. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) それは国内法によるということになつております。
  128. 亀田得治

    亀田得治君 国内法によつて……。
  129. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) さようでございます。
  130. 亀田得治

    亀田得治君 アメリカの法規はどうなつておりますか。
  131. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これは州法によつて違いまして、州法の定めるところによつて委されております。
  132. 亀田得治

    亀田得治君 大体はどうなんです。
  133. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 殆んど全部の州が帰化可能の者には土地を持たせるということになつております。日本は昨年の十二月のマツカラン法によりまして、帰化可能の国民ということに相成つておりますので、日本人は殆んどすべての州において土地を持てるということになつております。
  134. 杉原荒太

    杉原荒太君 今のにちよつと関連して。アラカンソー、あすこは従来禁止しておつたのですが、アラカンソーはどうなんです。
  135. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) アラカンソーだけが例外でございます。
  136. 亀田得治

    亀田得治君 それから第二項でございますが、四行目の「公共の安全の見地から危険と認められる物」、具体的に少し例を挙げて下さい。
  137. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これは例えば銃砲でありますとか、火薬でありますとか、そういう公共の安全の見地から危険と認められるところのものになつております。
  138. 亀田得治

    亀田得治君 それからそれに続いての場所でございますが、「第七条その他この条約規定によつて保障される権利及び特権を害しない範囲内において」、何ですね、その第七条2の第一文に掲げる活動から出て来る利益を外国人が所有することについては、これを制限する、これは一体どういう方法で制限するのです。
  139. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これはそういう立法をいたして制限するわけです。国内法制限するわけです。
  140. 亀田得治

    亀田得治君 じや、その前に一つ聞きますが、なぜこの第七条第二項の第一文に掲げる企業、これだけをとつたのですか、ほかの第七条第一項の一般の企業ですね、これとどういう理由で区別されたわけですか。
  141. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 第七条の第二項に謳つておりますのは公益事業でありますとか、或いは造船、航空事業等いわゆる制限業種に入るものでございます。そこで制限業種の企業における利益、例えば株式を取得するとか、そういうような利益を取得することでございますが、それを制限することができるというような条文でございます。第七条の第一項のほうはこれは一般の別に公益その他の見地から外国人に禁止する必要のない事業活動でございますので、これは特に制限することの必要がない、そういう見地に立つておるわけであります。
  142. 亀田得治

    亀田得治君 ここに書いてあるのは、そのような制限企業から上つて来る利益でしよう、企業から上がつて来る利益を外国人が取得することの制限でしよう。
  143. 下田武三

    政府委員(下田武三君) その企業における利益を所有するということでございまするから、やはり株式の取得というような形式だと思います。利潤のことについては、これは別に規定しておるわけではありません。
  144. 高良とみ

    高良とみ君 少し戻つたんですが、七条の二項の天然資源の開発を行うという中には、鉄鋼、石油、両方が含まれていると了承して間違いありませんか、製鉄も鉄鋼も。
  145. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 製鉄と申しますか、炭鉱業とか、或いは石油を採掘する事業とか、更に進んでは牧畜なんかも含まれております。
  146. 高良とみ

    高良とみ君 牧畜も入りますか。
  147. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) はあ。
  148. 高良とみ

    高良とみ君 それから砂鉄等の特殊鋼なども勿論入りますか。
  149. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 入ります。
  150. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 ちよつとそこに造船ですね。呉の海軍工廠の跡、あれはナシヨナル・キヤリア・コーポレーシヨンですか。
  151. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) バルク・コーポレーシヨン。
  152. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そういうバルク・コーポレーシヨンですね。あれなんかもこれに入つておるんですか。既得権として外人による制限業種の株式取得、これはどうなんですか。
  153. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 呉のバルブ・コーポレーシヨンの問題は、これは、呉の海軍工廠の跡は日本の国家の所有である、それを一時使わしてやるという大蔵省、政府の認可をしたあれでございまして、従いましてこれは第七条の二項の既得権という問題ではございませんで、国家の何と申しますか、フエイヴアーというか、国家が仮に許してやつておるという、これは一方的なもので、第七条二項の既得権の範囲というふうには考えておりません。
  154. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 それは参議院におられた横尾さんの幡磨造船の借りておるやつとは違うのですか。幡磨造船があそこを借りて、それを三億幾らですか、十カ年ですか、何が横尾さんのほうから行つたのとは違うのですか、国が使うのですか。
  155. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これは幡磨造船の関係がどうなつておりますか、内部関係はよく知りません。ナシヨナル・バルク・コーポレーシヨンに関しまする限りは、日本の国有財産を一時貸与してやるという形式になつておりまして、第七条二項関係範囲外というふうに了解しております。
  156. 高良とみ

    高良とみ君 今のに関連ですが、そうしますと、先ほど牧畜などのお話があつたのですが、ここに制限されておる業種は、たとえ国の事業の下請事業のような水上運輸なども、或いは航空運輸などのことでも、これは外国人がそういう事業をやることができないということに了承して間違いありませんか。
  157. 下田武三

    政府委員(下田武三君) こういうこれらの業種に対しましては制限をなし得るということでございます。まだ只今これらのもの対しては制限を立法でやつておるものは殆んどないのでございますけれども、必要が生ずれば、これらのことに関しては制限をなし得る意味で立法をすればなし得る、こういう関係でございます。
  158. 高良とみ

    高良とみ君 その場合にそうしますと、国際航空は別の条的によるものでしようが、国内航空には、日航に多数の飛行機を貸与して、そうしてその株を五%以上所有するというようなことも制限し得ることに入りますか。
  159. 下田武三

    政府委員(下田武三君) さようでございます。
  160. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは次の条に移ります。第十条。
  161. 杉原荒太

    杉原荒太君 第九条の第一項の(a)と(b)を、こう分けて書いてあるのだが、(b)のほうは第一項に掲げてある賃借権、占有権、使用権、それ以外の権利、例えば所有権というようなものを、国内法が認めれば認めるという趣旨の規定なのか。更に(a)のほうはそれが不動産の使用目的というか、ここに書いてあるでしよう。第七条文は八条に基いて行うことを許される活動の遂行及び居住のためという制約がついていますね。ところが(b)のほうはその制約がついていない。併しこれは当然に(b)のほうでもその制約はついているというふうな趣旨なのか、そうでないのか、そこはどうなんですか。
  162. 下田武三

    政府委員(下田武三君) その点は不動産の賃貸なり占有使用につきましては、やはり目的を明示する必要があると存ずるのでありまするが、動産のほうは、これは別に……。
  163. 杉原荒太

    杉原荒太君 いやそうじやない。不動産のことなんだ。私は、第一項の(b)のことを聞いているので、同じ不動産のことなんです。
  164. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これは(a)のほうには目的が掲げてありますが、(b)のほうではその(a)のほうで掲げられた目的以外に使う不動産についても(b)でやはりカバーしている、そういうふうに解釈しております。
  165. 杉原荒太

    杉原荒太君 何ですか。
  166. 下田武三

    政府委員(下田武三君) つまり(a)では第七条と第八条に基いて行うことを許される活動の遂行及び居住という目的が掲げてあります。それならば第七条第八条の目的以外の場合にはどうなるのかといいますと、(b)のほうで関係法令で認められる限りは所有権のみならず賃貸その他も(b)のほうでカバーされる、そういうふうに解釈いたします。
  167. 杉原荒太

    杉原荒太君 そうすると、今のこの七条と八条の目的のためならば、この不動産は所有権は獲得はできないということになるのだね。
  168. 下田武三

    政府委員(下田武三君) (a)の目的で所有権自体も取得しようという場合には、(b)のほうの規定関係法令で認められておれば取得できる、そういうことになると思います。
  169. 杉原荒太

    杉原荒太君 れだから、それを総合して言うと、その(b)のほうは七条八条の目的のものも含まれるし、そうでない目的のものも含まつて、今度は権利関係については(a)のほうで言つている以外の権利も取得できる、このことを規定してある、こういう趣旨なんだね。
  170. 下田武三

    政府委員(下田武三君) その通りでございます。
  171. 亀田得治

    亀田得治君 そんなことじやないのじやないですか。それでしたら不動産所有権というものをずい分広汎に取得することができるようになると思うのですよ。やはりこれは恐らく条文を書く際に、少し番号のつけ場所が間違つたのじやないかと思うのですが、「(a)第七条又は第八条に基いて行うことを許される活動の遂行及び居住のため適当な」と、これはあと全部にかかるものと見做されなければ不適当じやないですか。どこの国でも不動産所有権というのは、ほかの占有権とか所有権とかそういうもの以上に、やはりこれは厳重に考えているのです。然るに今の御説明ですと、これは直接の目的がなくても、金さえあれば、その土地を皆買占めることができるというようなことにもなりかねないのですが、そういう解釈でいいのですか。
  172. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 第九条の一項で、不動産に関して(a)と(b)に分ける規定の必要が生じました理由は、アメリカの州法におきまして、先ほど申上げましたように、或る州においては外国人に不動産の所有権を取得することを認めない州があるのであります。若しそういう州がなかつたら、何も好んで(a)と(b)にややこしく分ける必要がなかつたのであります。それで内国民待遇を与えるということには、所有権については言えないわけとなつた次第でございます。そこで先ず(a)におきまして、第七条の営利活動、第八条の業種、そういう活動をなし得ることを認めておきながら、その活動のために必要な不動産を賃貸したり、占有し使用することを許さないということは、これは矛盾でありますから、第七条、第八条に認められた活動のために必要なそれについては、使用、占有、賃貸に対して内国民待遇を保障する、つまり相手国の国民と同じ待遇を保障するというところを、はつきり(a)で保障する必要があるわけであります。そこで(b)で所有権、或いはこの(a)で書かれなかつた以外の目的に使われる不動産についてのいろいろの権利ということを内国民待遇としないで、おのおのの締約国の関係法令で認められた程度に認める、これはアメリカの特殊事情のために、こういう規定の姿になつてしまつたわけでございます。
  173. 亀田得治

    亀田得治君 それならば、尚更この居住のためというまでのところが両方にかかならければいけないと思うんです。若しアメリカの州法が全部一致しておれば、これが一つに書かれたということであれば、このためというところまでが別にされたこの(b)のところにもかかつて来るような意味でしよう考えかたは……。だから解釈としてはそういう州法の不一致のために二つに分けられたけれども、分けた際に、この場合繰返しておればよかつたのですが、繰返さないで、そうして(a)と(b)という記号の付け場所が少し間違つたために、妙な感じがいたしますが、これはやはり常識的に法令というものが両方にかからなければ、今の御説明から言つてもおかしいと思うんですが、どうでしよう。
  174. 下田武三

    政府委員(下田武三君) この第七条と第八条の目的に使うためというのを全部変えてしまいますと、その二条の目的のため以外にはなんらの不動産に関する権利を享有し得なくなつてしまいます。そこで七条、八条以外にも、いろいろ目的があるわけでありまして、日本にいる外交官が、日本が気に入つて日本に求住したいというときには、本当に余生を送るために土地を買いたい人もあるだろうし、家を買いたい人もあるでしようし、そういうものは第七条、第八条には含まれない目的であります。併しそういういろいろな目的も法令さへ許せば認めてやつてもいいのではないかというようなのが趣旨でありまして、そこで(b)で七条と八条以外の目的を広くカバーしたわけであります。
  175. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことなら(a)も(b)も区別ないのですから、(b)だけでいいじやないですか。
  176. 下田武三

    政府委員(下田武三君) この内国民待遇、つまり日本人アメリカにおつて同じ待遇を保障させるどいう内国民待遇のギヤランティーを与えるのを七条、八条の活動に限つたわけであります。
  177. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 ちよつと戻つて恐縮ですが、黄田局長にお尋ねしますが、七条の第二項ですね。先に申しましたような、どういう関係アメリカに呉のドツクを貸したか知りませんが、私の調査では世界最大のタンカーを作つている、油槽船を作つている。そういうことになつてしまいますと、事実上どういう関係ですか、油槽船ですから必ずしも軍という関係もないと思うのですが、そういう関係でどんどん借りてしまえば、全然こういう制限規定というものが、既得権の無制限に——こういう形ではないが、ナシヨナルのような形でやられるということはないのですか。その点一つお聞きしたい。そのほかにも、造船以外にもそういうものがありますか、制限業種の中で……。
  178. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 呉のナシヨナル・バルク・キヤリアは、これはアメリカのほうからスチールとか、そういうものを持つて来て、こちらで大きなタンカーを作つている、或いは日本の中で調弁し得る種類の原材料は日本であらゆるものを調達するというふうなことをやつておりまして、これを許すことによつて日本経済の発達に寄与するということがありましたので、特に許しました次第で、従いましてそういうものがありました場合に、許すか許さんかというのは、同様のケースに関しましては、これは政府の自由裁量でなし得るわけであります。従いましてそういうものがほかにあるかとおつしやいますと、これは今のところ呉のやつがたしかたつた一つのケースでありまして、そのほかに関して制限業種でそういうものがあるというのは、先日来御説明申上げました株が少しある、それだけであります。
  179. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 それから既得権が事実上制限がなかなかできないのじやないか。現行の国内措置ではできないのじやないか。特に送金を保障しないものは、外貨の送金を日本側が保障するものはできるにしても、そうでないものはできないので、実際上この既得権の問題は無制限に拡がつていくのじやないかというようなことがあるのですが、そういうことはどうですか。
  180. 下田武三

    政府委員(下田武三君) その点は、第一段に制限業種にいたしたのは、ことごとく国内法ですでに認可事業になつております。でございまするから、アメリカ人日本で航空事業をやりたいと言いましても、これは日本人と同じように先ずそれが適当であるかについて運輸大臣の認可が必要であるわけなんです。そこで日本人と同じようにチエツクされて、駄目なものなら駄目として認可が与えられないわけであります。そこで二項の規定は、それじや何を目的にするのかというと、外国人であるという理由のみによつてこれを制限しようという新たな立法をする権利を認めたわけでございます。でございまするから、そういう立法はないじやないかとおつしやいますが、その前にすでにそれぞれの主管政府機関が許可を拒否するという権利があるわけでありますから、御心配の点の野放図に進出してくるということは、到底あり得ないと思います。
  181. 高良とみ

    高良とみ君 通信機関、これは認可事業ですが、テレビジヨンとか或いはヴオイス・オブ・アメリカとかそういうものはどうですか。こういうものを新しく会社を設立して、そうしてこれの株を取得することはできますか。
  182. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 通信につきましては、国内通信も国外通信も、これは公社及び国際電信株式会社という新しくできました会社の独占事業になつております。従いまして事業といたしてやる場合には、放送は別でございまするが、ただ通信のサービスだけで営利の目的でやろうという場合には、日本の独占的にやらせるという建前に反しますから、これは到底許可ができないことになつております。
  183. 高良とみ

    高良とみ君 もう少し具体的におつしやつて頂きたいのです。テレビジヨンについてはどうですか、日本に今までなかつたテレビジヨンの会社を設立するときに、幾つも幾つも…
  184. 下田武三

    政府委員(下田武三君) テレビジヨンもテレビ以外の一般放送も、これはやはり認可事業になつておりまして、非常に厳しく制限しておりますから、外国人が来ておりましてもなかなかできないと思います。
  185. 高良とみ

    高良とみ君 それは了承しておりますが、そこに大きな資本が入つて来る場合に、或いはいろいろな便宜、或いは設備等を供与されるときに、それが独占的に特別なテレビジヨンの会社、或いは強力な放送の会社等が入つて来ておりますね、現に……。そういうものについては何ら制限されないのですか。
  186. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これは先ずそういう事業を起すために資本を入れるというところでチェックされることになると思います。
  187. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 下田局長の申されたのは、新らしく作つたりするときでありますね。それはいろいろな関係があると思うのですが、既存のそういう制限業種の株を買うときはどうなりますか。外貨送金を保障しないという形のそれはどうなりますか。
  188. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これは七条の二項の「天然資源の開発を行う企業を設立し、当該企業における利益を取得」するというふうなことは制限し得るということになつておりますので、制限させようと思えば大幅に制限し得る。又その前に認可事業をやつておりますので、そこでチエツクの途はあるわけでありますが、それをチエツクするかどうか、或いは許すかどうかということは、法律ができますまでは行政官庁の認可事項ということになります。
  189. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 それでは、そういうのを、日本人を使つて事実上大半の株を持つてしまつたということも相当あると思うのですが、それはどうなりますか。
  190. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) そういう場合には、それは、日本人を使つて日本人の名前でやるという場合には、それは何といいますか縛る途はございません。
  191. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 アメリカ人が投資している、株をたくさん持つているような会社で、それが制限されていない業種に属するものであつて、それが将来何かの場合で、例えば丁度日本が太平洋戦争をしたような場合、いろいろ国家の都合で国家が統制するという、強力な統制というようなことで、会社自身の株主の自由が制限されるというような場合が若し起るようなときには、そういうような場合に、アメリカ人としてこの通商条約によつて権利を主張するというようなことがあるのでございましようか。そのために統制をするとか何とかいうことができないような、そういうようなことがあるのでございましようか。
  192. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 通商航海条約は無論平時を想定いたしておりますので、戦争になりました場合には、恐らくこれがこの前アメリカがやりましたように一定の通告期間をおいて、これが廃棄されるというようなことになりますれば、無論これは働かないということになります。
  193. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それは日本アメリカの戦争でなくて、日本アメリカは平和な関係にあつて日本アメリカが一般に戦争にでも捲き込まれたような状態なつたときに、日本で合同とか統制が起つた、そういう場合のことなんです。
  194. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) それは大体第六条に書いてあります通りで、大体財産その他不動産の保護及び保障を受ける。若しそれを収用したり、使用したりするときには十分なる補償をしろということが六条に規定してありますが、大体この六条が働くということになります。
  195. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 その場合の補償は、この前の戦争のときなんかは、十分な補償を、無論アメリカでなく、日本だけであります。会社が統制されるような場合には、その会社に資本を投下しておる人たちの利益が必ずしも補償されないで、どんどん合同或いは統制の形式に移つてつたことがあると思いますが、そういうような場合どうなんですか。
  196. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 第二十一条の(d)項に「自国の重大な安全上の利益を保護するために必要な措置」という規定がございますが、この規定を待つまでもなく、一般の国際法上の見地からいたしまして、戦争というような非常事態に突入いたしました場合には、どこの国も必要な緊急立法をすることかできるわけであります。従いまして第三国との間にそういう緊急事態に入りました場合におきましても、そういう緊急立法をいたしました結果、アメリカに影響が起るということがありましても、これは止むを得ないと存じます。従いまして今の補償の問題でも、戦時予算……経費がたくさん要るような場合に、平時におけるがごとき迅速な十分な補償ができないというようなことがありましても、これはやはり緊急事態でありますから、やむを得ないと思います。
  197. 杉原荒太

    杉原荒太君 さつきの九条の第一項の疑義の解釈ですね。さつき言われたようにまあそれとしてだ。その場合、「その他の権利」というのが、(a)のほうの七条と八条を受ける場合には、その他の権利が与えられるというところに意味がはつきり出て来るが、そうじやなくて、第七条、第八条の目的以外の場合については、これでは非常におかしいのだが、これではその他の権利というから、それだから賃借権、占有権、使用権、こういうものは少くとも条約上の保障を受けないことになつてしまう。これは条理からすると、非常におかしなことになる。そういう意味において、これは少し規定が不備だということを感ずるのですが、そうなるでしよう。その他の権利しかここに保障されていない、条約上は……。それだから賃借権、占有権、使用権は保障されていない。条約上それは与えてはいかんということはないですよ。それは条約上保障されないことになつてしまつておかしなことになる。
  198. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 御尤もでございますが、「その他の権利」とい中に(a)に掲げられた目的で認められた権利以外の権利というように読みますれば、これはいいのじやないかと思います。これは併し余りできのよくないことは認めます。
  199. 杉原荒太

    杉原荒太君 「その他の権利も」と書いてあればよい。これではちよつとおかしい。
  200. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 動産の取得に関して戦前の条約とは比較はどうなつておりますか。どこもここも非常に広汎な権限を与えておるようですが、この関係はどうなつておりますか。
  201. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 戦前の条約に関しては動産の取得ということを特に取立てて規定しておりません。
  202. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そうすると、従来は規定してなかつたとすれば、どうなつておりますか。
  203. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これは完全に関係国内法令に任されたことだと思います。
  204. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 アメリカ日本人が土地を所有することができないという州の法律のある所はどこでございますか。
  205. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) アーカンソー州一つだけでございます。   (「進行々々」と呼ぶ者あり)
  206. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 九条はそれでよろしうございますか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  207. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは第十条、これは特許権、工業所有権に関して最恵国待遇を与える。これは問題ないですね。
  208. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 これは前にも我が党の佐多君が質問したと思いますが、日米租税協定との関係はどうなりますか。
  209. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 発生地主義と申しますか、その点だと、ちよつとお答えしにくいと思いますが、二重課税防止法というのは只今殆んど終り段階になつておりまして、この条約ができますと、直ちに二重課税防止条約というようなことをやろうという段階になつております。それからパテントなんか発生地主義によるかどうかということは、業界のほうからも要望が出ておりまして、それはまだどつちにきまつたか、どつちにするかという最後的な決はきまつておりませんけれども、業界のほうから要望が出まして、それを十分考慮に入れてやりたいという段階でございます。
  210. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そうしますと、そのときの関係からいたしまして、我が国の企業だけが負担が重くなるような措置は大体除かれると見てよいのですか。
  211. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 業界のほうから来ておりますのは、発生地でやられると、パテント料のほうで困ることが非常に多いから、それをやめてくれないかということだと思いますけれども、それの希望が達成されますならば、仰せのようなことになると存じます。
  212. 杉原荒太

    杉原荒太君 十条のことなんだけれども、アメリカは例の万国工業所有権の保護条約に入つていなかつたのですか。
  213. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 米国は入つております。著作権条約のほうには入つておりませんが、工業所有権のほうには入つております、前から……。
  214. 杉原荒太

    杉原荒太君 そうすると、これとの関係はどうなつておりますか。
  215. 下田武三

    政府委員(下田武三君) アメリカが万国工業所有権条約に入つておりますので、実は第十条は特に大して必要のある条文でないと……、
  216. 杉原荒太

    杉原荒太君 そつちのほうが優先されて行く……。
  217. 下田武三

    政府委員(下田武三君) はあ、それで第十条のほうで内国民待遇及び最恵国待遇を与えるという点に主眼をおいて、こういう規定にしたのでありますが、実際は万国工業所有権の条約の第二条でも内外人平等の原則ということを語つてあるので、両者矛盾は来たさないと考えております。
  218. 杉原荒太

    杉原荒太君 課税に関する、殊に二重課税の防止に関する協定というのは、あれはどうなつているのですか。
  219. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 只今下交渉をやつておりますので、余り詳しいことは……、大体の考え方は、所得税と相続税と二本建に協定を結ばうと思つております。所得につきましては、これは所得発生地主義というのが原則でございます。相続税のほうにつきましては、相続財産の所有地主義というのがどうしても原則になるのは、これは当然だろうと思います。そこで一番問題になつている点は、この条約にもよちつと頭が出ておりますが、両締約国に跨つて行われる行為の結果発生する所得、これはここにも書いてございますが、按分して両締約国で分けて税を取ると、その点が一番ややつこしい問題になつておりますが、成るべく、成るべくじやなく、当然両国間に不公正の起らないように配分するように今折衝しております。
  220. 杉原荒太

    杉原荒太君 その条約を結ばれる際、その協定の一部としてか、或いは時を同じうしてその際ですね、終戦前にいろいろ税のことについて日米間に問題になつたものがありますね。例えば日本の商社がニユーヨークなどで向う政府との間に問題になつた、ああいう事件は是非解決せられたいと思うのだが、そういうことを考えてやつておられるかどうか。
  221. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) それを考慮に入れてやつておりまして、ヘツジングの問題でございますけれども、これは殆んど無事解決する段階であります。
  222. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 両国に跨がる場合は、一体どちらがやるのですか。実は地方税でも、これは本店が東京にあつて支店が地方にあるというやつは、本店のあるところからきめるのですよ。そうして、配分して来るのです。それを東京だけにたくさんやるから、だから実際は少いようにして地方の支店にはくれずに、これは地方税の配分としてもしよつちゆう問題になるのです。東京だけにいろいろな形で、お前のほうだけはやるが、地方にやる分は、お前のほうは何とか一つというようなことで、実際には内閣総理大臣がやるようになつているのですが、地方税の配分でこれが非常に問題になつて、東京だけが非常に得をして、地方の支店で稼いだやつが、実際は地方税の配分がそういうことになるということがあるのですが、その関係はこれはどうなんですか。
  223. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 原則は第十一条の第四項に、「当該領域に対して適正に割り当てられ、又はあん分される」という、この適正な割当が一番むずかしい問題なのでございますが、一番ややつこしい問題は、株式の利子、株式の配当金の問題でございますが、これが今の日本の株式の配当金に対する課税というのは四〇%だつたと思いまするが、配当期になる前に、実は法人税という名義で課しておる。法人税の四〇%の中には、実はその実質は配当金であるものがあるわけなんでございますけれども、その日本側の特殊の配当金に対する課税方法のために、アメリカ側では実はそれでは困るのだと、先ず法人税名義で株主は相当の租税を取られた上に、又株式配当金に対する租税として実は二重にその上に加算されて取られておると、これを何とか適正に考えてくれというような問題がございまするが、結局適正に割当てるという……。
  224. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 どこが中心でやるのですか。
  225. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これは本店がアメリカにある会社でありましたら、日本にある支店よりも、やはり本店のほうが主として、つまりアメリカの租税当局のほうの立場を本店所在地でありまするから認めるということのほうが尤もだろうと思います。併し、そうかと言いまして、余りに本店のほうに重きをおきますと、日本の歳入保護の見地から欠けるということになりまするので、なかなかむずかしいところでございます。
  226. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 地方税の例を出して恐縮ですが、いれが結局整わない場合には内閣総理大臣がこれを斡旋するというようなことになつておるのですが、実際は殆んど大部分というものは、日本があちらにおるというような例は非常に少いのですから、本店がアメリカにあつて、支店が日本にあるというような場合には、地方税の場合に数県に跨る場合と同じに、これは事実上意味のないようなことになりやせんかと思うのですが、その点はどうなんですか。
  227. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 決してそういう意味のないようなふうにはいたさないつもりで折衝いたしておりまするから、いずれ次期国会でお目にかけまして御承認を仰ぎたいと思います。
  228. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 これはやはり具体的の問題は、租税協定か何か出るのですか。
  229. 下田武三

    政府委員(下田武三君) この第四項は、通商航海条約で掲げられる実はマキシマムなもので規定しておるので、今までの通商航海条約にこんなに詳しく書いておらなかつたのを、特に書いたわけなんですが、ところが実際の課税の問題になりますと、この詳しい規定でもなお且つ十分には基準を与えておりませんので、どうしても租税協定ができましてから、はつきり処理できることになると思います。
  230. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 十一条よろしうございますか、それでは十二条……。
  231. 亀田得治

    亀田得治君 この十二条の第二項と第四項ですね。これを一緒に拝見いたしますと、為替制限の場合が非常に限定されておる。殆んど為替制限ができないような感じを受けるのですが、これはどのようにお考えですか。
  232. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) この十二条は、第一項で理想的な原則を語いまして、第二項でその例外を規定しております。つまり通貨準備の水準を維持するためには為替制限をなし得るのだと、これはたびたび申上げましたように、世界各国又フリーな為替を持つほど外貨の準備がございませんので、各国共為替制限をやつておる。日本もその例に漏れませんので、通貨準備の水準を維持するためには為替制限をなし得るのだということを、第二項で第一項に対する大きな例外を言つておるわけであります。それから第四項は、これは実施に当つてどういうふうにするかという注意を規定した条項でございまして、従いまして、大きな意味を持つておるのはこの第二項でありまして、第二項をやるに当つてはどういうことをやるかということを第四項で言つておるわけであります。
  233. 亀田得治

    亀田得治君 この第二項の場合ですね。単に通貨準備ということじやなしに、通貨準備の水準が著しく低下することを防止する、こういうふうに書かれておるわけですね。これはそれではもつと具体的に言つて、どういう事態を考えておられるのですか。
  234. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これは具体的に、例えば何億ドル日本にあつたら適正であるのかというラインを引くことは非常に困難な問題でありまして、五億では少ない、或いは十億でもまだ少いという、このラインの引き方というものは非常に困難でありますので、そういうことをやることは、これはとても不可能でありますので、それはやめまして、通貨準備の水準が著しく低下することを防止したり、或いはすでに少いと、従つてそれをもう少し上げるために必要なんだという、ただその目的のためにのみこの為替制限をなすことを認めよう。そのほかに例えば十分に持つているのにもかかわらず、為替の間の差別待遇とか何とかいうことのためには認めない、そういう意味でありまして、従いましてここに幾らかというラインを引くということは、これは不可能でありますけれども、その目的のためには認める、こういう規定であります。
  235. 亀田得治

    亀田得治君 先だつて第七条第二項が論議になつた際に、第十二条で、既得権を持つておる銀行、これに対する制限を十二条の規定からなし得るといよううな意味のことをおつしやつたのですが、十二条の第二項のことでございますか。
  236. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 昨日でございましたかの御質問は、たしか既存のアメリカの銀行に無制限にドルを送るとかいうようなことで細かい事態が起りはしないかということに関する御発言でございましたので、そういう場合は十二条の第二項、それから議定書の第二項で、この二つでできるということを申上げたのでございます。
  237. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 この規定のために、日本の為替関係が非常に不安定になる、例えば日本は今通貨準備が安定しているというようなことで、手持ちの円の輸送ですか、そういうことが要求されて、絶えずそれによつて日本の為替関係が手持ち円の高に対して安定しているのだから送らせるというようなことで、それによつて影響されるようなことになりませんか。
  238. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) むしろその逆であると私は存じます。つまりこの日本の外貨が非常にまだ少いというような場合には、それを無制限に取引をやらせるならば、まだ安定していない状況においてはどういうことになるかもわからない、それを防止しようという趣旨でありまして、従いまして丁度その反対の場合になつております。
  239. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 例えば日本の為替関係を、手持外貨も十億ドル近くある。だからその関係は安定しているのだから、手持の円を送らせろというようなことにはならないものですか。そういう関係はないのですか。
  240. 森治樹

    説明員(森治樹君) 只今の御質問は結局第三項の問題になると思います。第三項によりますと、各国が為替の資金をどういうふうに使うかということは、各国が判定することになつておりまして、先ず国民の福祉に必要な輸出入にこれを充てまして、若し余裕があれば株式の配当金ですとか或いはその他投資の利潤の送をやる、こういうふうになる建前になつております。
  241. 杉原荒太

    杉原荒太君 この十二条の第二項の為替制限のところは、この条約それ自体はこの日米間の関係だけを帰一するのが目的だけれども、併しこの十二条の第二項などに言うその制限対象というものは、単に日米間の関係だけじやなく、第三国との為替関係も、これらの対象になる、そういう趣旨でしよう。どうなんですか、そこを確めておきたいのですが。この条約としてはどういう趣旨ですか。
  242. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 御説の通りでありまして、これはIMFなんかの規定にもこういう規定がございます。
  243. 亀田得治

    亀田得治君 この議定書の第六項ですが、十二条の第二項以外にこういう第六項を設けられた趣旨はどういういきさつがあつたのでしようか。何か外資の導入ということによつて特に問題が論議されたのですか。
  244. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 十二条の第二項はここに書いてございますように、通貨準備が少いとか、或いは非常に減りそうだとかいうふうな場合に為替管理を行うと、こういうことが規定してございますけれども、それでは実は不十分でありまして、アメリカのほうから外資が入つて来る、その入つて来る場合に、日本のほうで好ましいものかどうかということをスクリーンし得るということは、第十二条第二項からは直ちに得られないものでありまして、従いましてそういうことをカバーいたしますために、十分なる余裕をとりまして、この議定書の第六項にこういう規定を入れまして、それによつて外資の審査する権利をここに留保している、こういう関係であります。
  245. 亀田得治

    亀田得治君 両者の関係はわかりましたが、そうしますと、この議定書の「十二条2で定める通貨準備の保護のため必要な制限をすることができる」というのは、やはりこの十二条の二項で書いてあるような条件が、同じような条件が付いておる状態を考えているわけですね。
  246. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) さようでございます。外資が入つて参ります場合には、多くの場合においてその利潤の送金ということが付いて来るのが原則であります。従いましてその利潤の送金というふうなことが付いて来ますと、その送金するという関係において、外国為替ということに関係を持つて来まして、この通貨準備の関係が生じて来ますので、ここにこのことを講つておるわけであります。
  247. 杉原荒太

    杉原荒太君 さつき私の質問したのは、私はちよつと十二条の為替制限そのものの計画の性質から、そういうことを推論しておつたけれども、併しこの十二条の五項を見ると、ただ両締約国間だけの関係のことを言つてる、限定しているように思われる。これは経済上から言うと、二国間条約としてはこういうこともわかるけれども、これは経済上からすると、為替制限というものの性質からいつてちよつとおかしいように思う。
  248. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 五項によりましても、「為替制限」とは、いずれか一方の締約国が課するすべての制限規制」云々と言つておりまして……。
  249. 杉原荒太

    杉原荒太君 そして「両締約国の領域の間における支払、送金又は資金若しくは」云々と言つている限り、締約国間のこういう為替関係だけのものに限るというふうに限定して書いてあるのですが。
  250. 森治樹

    説明員(森治樹君) この第十二条は、これは日米両国間の関係規定した条文だと解釈いたします。併しながらこの為替制限をやる限度につきましてはIMF締約国としましては、現在IMFで協議いたしてやつて行くわけでありますから、この実体は日米関係であろうと第三国の関係であろうと同じことになるという意味経済局長が説明されたのだと思います。
  251. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それじや先へ進めまして第十三条。    〔「十三条ありません」と呼ぶ者あり〕
  252. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では第十四条。
  253. 亀田得治

    亀田得治君 これは第七条とちよつと比較してお尋ねしたいのですが、十四条は輸出入関係の問題で、第二項がこの制限規定している場合ですね、第二項には輸出入関係制限又は禁止と、こういう言葉を使つているのです。これは昨日第七条の第二項のいわゆる制限規定ですね、あれに関して条七条の第二項の場合には、限度という中にはすべて禁止まで入るのだとこういうふうにおつしやつたのだけれども、同じ条約の中に、一方では制限又は禁止と、こういうふうに明らかに区別して書いておる。もう一カ所あるのですこういうところが……。この関係はあなたのほうはどういうふうにお考えですか。
  254. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 昨日七条二項で制限というのはゼロまで行き得るのだということを申しましたが、それは七条二項の本文からそういうことも出ると申しましたけれども、これは私が言い誤りでありまして、本文からは必ずしも出ないかも知れませんけれども、向うとの了解では明らかにそうなつているということをあとで又申添えたのでございますが、そういう関係もございます。従いましてこの七条のほうは、そういう関係でそうなるのでありますけれども、十四条のほうは明らかに制限、禁止ということを両方とも書いてある。こういう関係であります。それから第十四条のほうは、これはガツトの規定に丁度こういう規定がございますので、そのままの言葉を使つておるという関係もあります。
  255. 亀田得治

    亀田得治君 ちよつと不明確ですが、そうすると第七条二項のこの限度をきめる権利を留保するというのはどうだというのですか。もう少し明確におつしやつて下さい。
  256. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) ここの限度をきめる権利を留保するということと、それからここには制限され、又は禁止されると、両方言葉を使い分けてありまして、その関係はどうか、使い分けるということはおかしいじやないかということでございまするが、昨日申上げました限度を定めるというのは、ゼロだと本文からも読めると申しましたのは、昨日ですが訂正をいたしましたように、その点が不明確であるかのごとく見えるので、向うとの話合いによつて、この点に疑問のないように禁止もできるのだということにいたしております。それからこつちのほうは明らかに本文そのもので制限され、又は禁止されるということを初めから明確に書いてある。こういうことであります。
  257. 亀田得治

    亀田得治君 向うとの話合いで禁止もできる。そういう話合いがされるならば限度をきめ、又は禁止する権利を留保する、こう書いておけば、そんな話合いも要らんじやないのですか。そんなことは国会だけにおける説明として用いられたのでは、あとからやはり問題になるだろうと思うのですけれども、我々の一方的な解釈であつてはいけないのですが、あなたのおつしやつたことで間違いないのですか。
  258. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これはもう疑いの余地がないくらい明確になつておりますので、或いはこの書き方につきましてはちよつと不明確であつたかと思いますけれども、交渉の経緯に鑑みまして、この点では何らの疑いございません。
  259. 亀田得治

    亀田得治君 ただ、そのような意味だとしたら極めてこれはまずい文章だと思います。そこで、この第十四条の第七項ですね、第七項では輸出入の制限をする際に為替関係からの立場に立つた制限もできる、こういう規定のようですね。間違いありませんか。直接の物資の関係からじやなしに、七項のこういう制限を置かれた趣旨をちよつとお聞きしたいのです。二項以下の規定のほかに七項を置かれた……。
  260. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 御趣旨の通りであります。ポンドとか或いはドルとかいうふうなものによつてそれの片つ方のほうが非常に少いというふうな場合には、それを保護するために、或いはその水準を維持するために、為替並びに貿易制限、輸出入制限をなし得るという規定であります。
  261. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、私が疑問を持ちますのは、貿易制限の場合には、十四条の七項のような規定があつて、為替制限の立場からの貿易制限ができる。併しながらこの第七条の場合ですね、第七条の第二項の既得権を持つた例の金融こういうものが外貨を持ち込むような場合、こういう場合には反対解釈としてできないのではないかと思うのですが、貿易制限の場合はこういう規定によつて初めてできる。第七条に対して何かあなたは十二条なんかを活用して制限もできると、こうおつしやつておるんですがね。それはこちら側の単なる希望的な観測であつてアメリカ側貿易の場合はちやんとこの七項のような規定があるからいいんだが、こういう第七条の場合には、そんなものはないのだから、これは制限できないんだと、十二条をそこに持つて来ることはできないのだ。こういうふうに私は法的に言われると思うのですが、そういうことはありませんでしようか。
  262. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 第七条の銀行の業務で、彼らが第七条二項の後段によつて関係があります点は、預金業務とか信託業務とかいう問題でありまして、御指摘のような既得権に関連して問題の起るのは、今申しました預金業務と信託業務だけでありまして、そのほかのもの、例えば為替の業務とか、成いはほかの銀行業務というものは、第七条二項には直接の関係はないのであります。従いましてこれらの銀行が本国のほうからドルの送金を受けまして、そうして日本活動をやるという場合には、これは当然十二条二項或いは議定書の六項の適用があるわけでございます。従いまして私の申しましたような審査スクリーンができるということになるわけでございます。
  263. 亀田得治

    亀田得治君 そこが非常な問題だと思うのです。貿易の場合は貿易に関連してすぐそこの場所で例外規定を設けておるのです。ところが七条の場合には既得権益を持つておる会社については、この条項の解釈から行けば、もうあらゆる活動ができるわけです。勿論これは日本の会社と同じレベルにおいてできるわけですが、あらゆる活動ができるわけです。そしてそうなれば、この議定書の六項にしても、それから十二条にしても、直接この第七条の二項とは、これは結び付くようにはこれはなつておりません。第七条の既得権というのは、これは絶対のものなんです。こういうふうに主張された場合には、それは間違いだとはつきり言える根拠というものはですね、これは単なる私、水掛け論に終るんじやないかと思うのですが、そういうことにならないという何か根拠なり、そういうふうな解釈はしないのだという申合せでもあるのでしようか。
  264. 下田武三

    政府委員(下田武三君) その点につきましては、さつき経済局長の申しましたように、第七条はもともとこれは事業活動に関する制限で、一項におきまして制限業種以外の自由な事業については、内国民待遇、第二項におきましては、公益事業その他一定のものについて制限をする規定を設ける、飽くまでこれは業事活動に関する規定でございます。そこで御指摘の既得権として、すでに外国銀行が業務をすることが認められておるのではないか。従つてその外国銀行を通じて野放しに外資が入つて来るのではないかということになりますと、これは事業活動上の待遇の問題ではなくして、新たに外資を入れるという問題でありまして、その問題は先ほど経済局長の申しましたように、議定書の第六項できめております。議定書第六項の考え方というものは、日本の外資法の考え方をそのまま取入れたのでございまして、外資法の第一条の目的に、「この法律は、日本経済の自立とその健全な発展可び国際収支の改善に寄与する外国資本に限りその投下を認め、」と書いてあります。つまり国際収支の改善に寄与する限りでなければ、この外資の導入を認めないわけでございすので、如何に既得権で銀行業務がありましても、その銀行が新たに外資を入れるという際には、議定書第六項で、この外資法の目的に適合しなければ断るわけです。
  265. 亀田得治

    亀田得治君 そうすればその目的に適合する限りは、全部許さんきやならんと、こうなりますか。
  266. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 仰せの通り日本の国際収支の改善に寄与する外資でありましたら、これは許していいわけです。
  267. 亀田得治

    亀田得治君 目的に寄与すると認められるものであつても、これは相当問題があろうと思うのです。目的に寄与すると言つたつて、これは見方によつて非常に違いますしね。それからこちらは目的に寄与すると思つていても、出すほうは、もつと違つた目的を持つているかも知れないし、で、そういうふうな解釈でございますと、そのときの政治情勢によつては、結局これは無制限にどんどん三銀行を通じて活動が開始されるということになりかねないと思いますがどうでしよう。
  268. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) それが我がほうの目的に合致するかどうかということは、我がほうがこれは一方的にきめる問題でありまして、向うで、それが目的に合致すると思つても、我がほうが合致していなと思うようなものは、それは落第ということになるわけでございまして、その認定は、一方的に我がほうがやるわけであります。
  269. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 ちよつと一般的な問題で恐縮ですが、昭和二十七年の対米関係の輸出入は、アメリカからの輸入は、七億九千六百万ドル、日本からの輸出は三億七千万ドル、まあ大体半分なんです。そこでこういういろいろな通商航海条約の第十五条ですか、こういうふうな関係によつて、この実際アメリカとの貿易の逆潮というものは是正できる面が非常に多いのです。これができたらそういうことはあり得るのですか。その問題と、それから最近における日本からアメリカに輸出しています主要な商品別の関税、或いは輸入制限措置アメリカのそういう互恵通商に対する最近の動向というようなものをお承わりしたいのですが、とにかく必要な、まあこれは必ずしもアメリカ制限措置からばかりではないと思うのですが、日本貿易の逆潮というものは、対米関係は輸出が輸入の半分であるというところに大きなまあ問題があるのですが、この条約の関税並びに輸入制限に関するこの条項なるものによつて相当改善される面もあるのですか。そういう関連を一つお伺いしたい。
  270. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 我が国が、アメリカから入れておりますものは、御承知の通り七億、或いは八億に上ります。と同時に我が国から出しますものは、これは三億とおつしやいましたけれども、三億に行つていないと思います。三億を切れていると思います。向うから入つておりますのは、これは御承知のように、食糧、それから綿花、粘結炭、鉄鉱石というふうに、これは非常に不可欠のものでありまして、而もコストの割に品質、メリット計算いたしますと、非常によろしいというものが、非常に多いのであります。これに対しまして、我がほうから出ておりますものは、これは生糸でありますとか、或いは「まぐろ」その他を中心といたします。ところの魚類、それから鋼材なんかも少し出ております。それから陶磁器、あとはミシンだとか玩具だとか、こういう雑貨でございます。従いまして通商航海条約ができましたからと言つて、直ちにこれがアンバランスがバランスし得るというふうに、これは考えることは私は到底できないと思うのであります。これは恐らく不可能でありましよう、七億もアメリカに出るということは、これは少くとも数年のうちにこれは望み得べき現象だと私は考えません。但し、御承知のように、アメリカのほうで、関税を低くしてもらつて、それで各国とも悩んでおりますところのドル不足の解消に資しようということは、これは各国ともの共通せる強い願望でございまして、従いまして、例えばガットの交渉なんかにつきましても、実はアメリカが如何に安く如何に低く関税をしてくれるかということが各国の狙いなんであります。この関係はもうこの間もここで申上げたのでございますけれども、各国からもう援助より貿易ということで強い要望がアメリカ行つておりますし、又アメリカの内部におきましても、各商工会議所或いは貿易評議委員会とか或いは全米製造家連盟というようなものすら、援助よりも貿易というふうな方向に向いまして、例えばアメリカにありますところのバイ・アメリカン・アクト、先ずアメリカのものを買え、アメリカ人アメリカのものを買えというような法律の改廃まで考慮すべきであるというところまで進んでおりますので、本条約ができますことによつて、両国間に存在いたしますところのアンバランスを直ちにこれによつて解消することができるということはむずかしいと思いますけれども、少くともその反対のほうに行くことは絶対にない。まあいいほうに向う第一歩を踏み出すということにはなると思うのであります。  それから日本に関します限り、向うのほうの最近の関税政策がどうであるかという御発言でございますけれども、最近日本に対して日本の商品に関連のあるもので起きました問題としましては、先ず第一にまぐろの関税引上という問題が起りました。これは日本のまぐろに対して、まぐろがどんどん入つて行くのでこれを関税をかけようという運動でありまして、西海岸にはまぐろ業者がたくさんおりますので、日本から入つて来るやつに関税をかけようという問題があつたのでありますけれども、これは否決されまして、関税引上運動というのは沙汰やみになりました。その次が木ねじ、これがまたあまり馬鹿にならない量でありまして、これの関税を上げようという運動がございましたけれどもこれも不発に終りました。第三にこれは極めて最近に起つた例でございますけれども、絹スカーフであります。これは戦争中日本から行きませんでしたために向うの戦争中に起つた産業でありますが、これが戦後の日本から本当に急激な勢いで入り出じたというので三二・五%の現行関税を倍にしろという運動がありまして関税委員会からそれを大統領は推奨したのでありますけれども、これも又実現を見ずして終つたという関係になつておりまして、少くとも今予想し得るアメリカの政策が高関税政策に進むということは予想し得ないのであります。
  271. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) よろしうございますか。では十五条。
  272. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 先般の予算委員会でもらつた資料では輸出が三億七千九百万ドルになつているのですがそれは違いますか。
  273. 森治樹

    説明員(森治樹君) 恐らくその数字でありますと、アメリカでなしにドル地域でございましよう。アメリカに関する限りは一億八千万ドル。それくらいのものだと思います。
  274. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そのほかにドル地域とはどこですか。
  275. 森治樹

    説明員(森治樹君) カナダ・メキシコ等が主であります。
  276. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 アメリカの関税なんですが、まぐろなんかは実際日本が量の制限をやつて、実際税率を上げないように自発的に量的な制限をやつて、関税をもつと上げられたと同じような形に行つているのじやないですか。そういう形でせめたてられているのじやないですか。そういうことはありませんか。
  277. 下田武三

    政府委員(下田武三君) それは非常に困難な問題でありまして、例えば昨年のごときも業界のほうの自発的な措置によりまして、たしか一万二千トンと、罐詰が百万梱、それから冷凍まぐろが一万二千トンというふうに自発的に制限したのでありますけれども、それが日本では取れる、アメリカでは取れないというようなまあ理由もありまして、去年の実績はたしか二方、冷凍のほうが二万二、三千トン、それから罐詰のほうが百二十万梱、初めが百万梱でありましたが、そのぐらい出ております。従いまして自発的の措置といつても、事態に応じてどんそれ買うというのでは、なんにもならんというような議論もありました。それから内部におきましては罐詰とそれから冷凍との関係をどうするかという非常に困難な問題も内蔵いたしますので、これをどうするかということは、国内面と国外面と両方から相当困難な問題でございます。ただ仰せのごとくこれを両当事国の間において協定みたいなものができるならば、これは最も円満なる解決方法になり得るのでありますけれども、その心組みもいたしたいと思つておりますけれども、只今申しましたように、国内面と国外面と両方の問題がございますので、なかなかしかく簡単には行かない問題なんでございますけれども、なんとかいたしたいとは思います。
  278. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 十五条御質疑ないようでありますから、第十六条。
  279. 徳川頼貞

    ○徳川頼貞君 十六条でお伺いしたいことがあるのですが、十六条の第一項の例外としてフイルムが挙げられております。十六条の一において内国民待遇規定があるにもかかわらず、何故にこのフイルムだけが例外とされなければならないか、その理由をお聞きいたしたい。
  280. 森治樹

    説明員(森治樹君) 映画のフイルムにつきましては特殊な性質を持つているわけでございます。普通のものでございますと、そのものだけで国内でそれがプリントされまして増加するようなことはないわけでございます。従いまして単に輸出入制限をやればそれで事足りるわけでございますが、映画は一本輸入されましても、それが国内でプリントされましてだんだん数が増して参ることを当然認識しなければいけないわけでございます。そういたしますと、例えば本数を制限して輸入をいたしましても、国内でそれがだんだん数を増加しまして、そうして映写時間もそれだけ長くなつて行けば、それだけ映画の収入というものは殖えて行くわけでございます。又併せて国内映画がそれだけ圧迫されて行くという附随的な効果もあると思います。従いまして映画の特殊性に鑑みましてこういう留保を設けておきませんと、或いは国際収支上、或いは国内映画の関係上困ることが予期せられるのでありまして、このような十六条の規定がございませんと、国内の配給ですとか、その他の面で差別待遇を設け得るのでございますが、十六条の規定によりまして、国内の配給等に関して、国内の映画と全然同一の待遇をすべきことが条約上の義務となりますので、その関係で特に必要のある場合にこういう措置をとり得るために、こういう留保を設けている次第でございます。
  281. 徳川頼貞

    ○徳川頼貞君 それが自国映画の産業の擁護のためであるならば、例えば英国とか、或いはフランスとかいうような国々はどういうことになつておりますか。
  282. 森治樹

    説明員(森治樹君) 只今これらの国がどういう制度をとつているか、私はここではつきり記憶いたしておりませんけれども、私の記憶いたしておりますところでは、英国では曽つてこの制度をとつたということを聞いております。又イタリーにおきましても現在この制度をとつているということを聞いておりまするが、この点は私もはつきりそうだということを申上げますだけの資料をここに持つておりません。
  283. 徳川頼貞

    ○徳川頼貞君 英国、フランス、イタリー等のその辺の資料を、できたら頂きたいと思います。
  284. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ちよつと速記を止めて……。    〔速記中止
  285. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記を始めて……それでは第十七条をお願いいたします。
  286. 亀田得治

    亀田得治君 もうあと簡単にして二十一条だけ聞いておきます。
  287. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは二十一条。
  288. 亀田得治

    亀田得治君 二十一条の(e)ですね。第一項の(e)です。これは第三国から見ますと非常に、何といいますか、一種差別的な扱いをされているように思いますが、どうでしようか。
  289. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 二十一条の(e)はこの日米間の通商航海条約は両締約国の会社を対象とするのが本旨でございます。そこで表面上は両締約国の会社でありましても、中味を調べますと直接又は間接に第三国人が支配しているというような、実体を備えていない締約国の会社は、これはこの条約に定める利益を拒否いたしましても……、むしろ拒否いたすのが当然で、あろうという考えから、こういう例外規定を設けたわけであります。これに対応いたしまして反対の場合、つまり名義は締約国の会社ではなくても、その中身を見ますと締約国の会社である場合には、今度は逆にそれを取り上げ問題てとするという規定がございます。
  290. 亀田得治

    亀田得治君 併し第三国の人が結局これによつてアメリカ人よりも非常な日本において不利益を受けるわけでしよう。不利益を受けることは間違いないでしよう、どうですか。
  291. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これはそのじやございませんで、この条約日本アメリカとのことを規定しているということになつておりますので、表面上このアメリカとの間の利益に均霑しようとして第三国人が潜り込んで来てやろうということをこれで防ごうというのでございまして、従いましてこの第三国人が同様な利益を受けようというためには、日本とその第三国人の属する国とがそういう条約を結ぶということによつてその点は是正される、こういう関係になります。
  292. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると日本と第三国との間の条約を結ぶ際に、これと違つた規定を設けられると、そういう意味ですか。
  293. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) そうではございませんで、その人の属する国と、日本とがこれと同様な条約を結べば、その国に属する人は同様な利益に均霑する、こういうわけでございます。
  294. 亀田得治

    亀田得治君 じやこれは日本が…まあこれはアメリカとの条約ですが、次々といろんな条約ができるわけですね。その際にアメリカとの間に結んだと違つた措置がとれる。そういう意味なんでしよう、どうなんです。
  295. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 第三国と通商航海条約ができますと、これのうらはらになる規定が掲げられることがあり得ると思います。  それから先ほど第三国が不満で文句を言つて来やしないかということでございまするが「この第二十一条の例外規定の建前は、冒頭にございますように、「次の措置を執ることを妨げるものではない。」妨げないというだけの話でございまして、第三国の会社で、名義上のアメリカの会社であれば、すべて利益を拒否するというわけじやないのでございます。そういう中身が違うから利益を与えることが不適当であると認めました場合には与えなくてもいいのだというその逃げ道を作つてあるのが趣旨でございます。
  296. 亀田得治

    亀田得治君 わかりました。まあこれくらいにしておきます。
  297. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 第八条にも一遍返るというお約束であつたのですが、その問題どうしましよう。大体うやつているうちに第八条もそう大たことはないと思いますが……。
  298. 亀田得治

    亀田得治君 これは一つ外務大臣に聞きましよう。この条約の中で投資の関係とかそれから貿易関係、こういう関係では或る程度制限が自国の立場に立つてできるようになつている。ところが第八条の教育とか宗教慈善学術、まあいわゆる文化活動ですね。こういう関係では何らの制限が付されておらない。で、本来一つの国の対外活動というものを大きく分けて考えますと、文化的な活動とやはり経済的な活動、二つに分けて考えられると思う。で先進国が遅れた国に対していろいろ触手を伸ばす場合には、この二つの面からやはりやつて来る。日本としては誰が見たつて今そういう危険性があるのです。そういう状態になつてはならない。まあいろんな立場からMSAを受けるとかそういつたようなことも止むを得ずやつておられるかたも、これは必ずしも好んでやつておられるのじや私はなかろうと思う。やはりそういう点の警戒はしながらやつておると思うのですね。そういう立場からいたしましても、経済的な面でやはり相当程度制限規定が置かれているのに、なぜこの文化的な活動の面において何らの制限する条件といいますか、そういうものが設けられなかつたか。この点に関する一つ考え方を外務大臣からこれは聞いたほうが適切だと思いますからお聞きしたいと思います。
  299. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 我々は学術とかまあ教育宗教という問題につきましては、今先進国とおつしやつたが、それほど先進国、後進国というほどに劣つているとは思つておらないのであります。それから又学術とか宗教とかいうものについては、できるだけ自由にして差支えないと考えております。ただおつしやるような点は、例えば文化関係にしても、学術の問題にしましても、それを実際行う上においての資金の関係では、我々のほうがアメリカよりも劣つている。これはもう認めなければならんわけですが、内容的には、劣つている部分もありましようが、優れた部分もあるのであつて、これは交互に自由にしたほうが、お互い文化交流という意味から言いましてもいいであろうと、こう考えているのであります。ただ国内で以て内国民に対して制限をする必要があるようなことは、国内の法規でやりますから、これは当然アメリカ人活動に対しても制限はされますけれども、一般的には最恵国待遇なり、内国民待遇なりやつて、こういうものについては差支えない。又やるべきであつて日本側でもアメリカに対してどしどし出て行つて差支えない、又こういう問題では出て行けると、こう我々は考えておるのであります。ただ宗教などになりますと、仏教というものはそれほど外国に対して強い影響力を持つていない、キリスト教というものは非常に持つているというような点もこれはありますけれども、併し一方アメリカにおいては日本人なり、或いは日本系の二世その他も随分おりまして、これに対しては仏教の布教師等も随分行つております。いろいろな点から言いまして、これは制限をしなくても差支えないものであろうというのが我々の考えであります。
  300. 亀田得治

    亀田得治君 それは外務大臣はそういうふうにお考えになるかも知れませんが、条約でこういうふうに正式に認められれば、どんどんやはり学校なりそれに関連する文化施設が建てられると思うのです。その際に日本自身文化政策、教育政策が明確になつておれば、その中に吸収されて非常にうまく行くわけですが、そうでないと非常に私は混乱が起るのじやないか、こういうことを非常に実際恐れるのですがね。これはやはりアジア各国が全部経験した一つの歴史だと私は考えるわけです。これは何と言つても、こういう学校とか何とかいつたつて財力の問題ですよ。学術の問題でもそう劣つていないとおつしやいますけれども、これは随分遅れております。まあ私どもの狭い知識で少し聞いた話でも、例えばいろいろ自然科学関係研究所にしても、アメリカの場合と日本の場合では、アメリカで一日で研究できることが日本では一月かかるというのですね。いろいろの素材から日本では作つて行かなければならない、アメリカではいろいろなものが揃つている、それだけ違うのですね。それはいろいろなほかの場合でも一緒だと思う。だからそういうふうな学校がどんどん日本で建てられて行けば、これは全部そこへ吸収されて行きますよ。それが結局日本のためになるのだという見方もあるでしよう。いい学校ができるのだからそれは日本のためになるのだ、日本人が金を使わないで、ほかの人が金を持つて来て建ててくれるのだから、そんな結構なことはないじやないか、そういう考え方に立てばそれは又別ですが、併しその場合には、殆んどこれは日本人という立場を放棄したことになるのです。その間の一体考え方をどのように外務大臣は明確に把握しているか。
  301. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはどうも少し意見の相違になるかも知れませんが、今おつしやつたように、例えば向うは一日でできる勉強にこちらは一月かかるいうような仮定の下に立てば、それだけの問題では一日でできるような施設を若しアメリカの金でするならば、これは結構だと思いますが、ただこのおつしやるのは、恐らくアメリカ式の気持なり、アメリカ式のやり方なりが日本を風靡してしまつて日本固有の考え方がだんだん薄れはせんかという御懸念だろうと思いますが、これにつきましては文部省のほうの学校に関するいろいろの規則で、この内国民待遇を与えても、それ以上の自由はないわけでありますから、一定の基準の下にそういう学校なり研究所なりも建てられるものでありまして、その研究所が設備が非常にいいというものを、これを無理に設備の悪いように、国内の設備と同じようにしなければならんということは、私はそれほどの必要もないと思います。要するに日本固有の気持が失われない範囲においては、できるだけこういうものもよくするほうがよろしいであろうと思つておりますが、これはその意味でできるだけそういう点も内国民待遇なり、或いは最恵国待遇なりということで縛つておこう、それで十分であろうという考え方であります。
  302. 亀田得治

    亀田得治君 それは内国民待遇でありますから、例えば学校の場合には学校関係のいろいろな法規がございます。その法規によつて制限される。これは日本人もその法規によつて制限されるのですから、それ以上に外国人であるものが自由になるということは、そんなことはあり得ないわけです。だからそんなことは言わずして明らかなことで、それだけの制限があるから大丈夫だ、そんなことには少しもならないと思う。日本人も縛られているのですから、同じレベルで動くわけですね。一方は大きな財力を持つて来てそういう文化関係のものをかきまわして御覧なさい。これはとうとうとして今の若い人たちなどはそちらへ流れて行きますよ。アメリカ化して行きますよ。
  303. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) いやそれはちよつと私は違うと思うのです。というのは、今初めにお話があつたように、東亜においてはそういうことが非常に弊害があつたというのは、例えば中国におきましても、或いは仏印なり、インドネシア、フィリピンはこの頃は違いますが、フィリピンにしても、インドにしてもすべて全くその本国の法規によつて自由にそういうものが建てられた。植民地なり治外法権を持つた関係があつたわけであります。その弊害と、今度のような、そういう関係のないものとは私は違うと思うのです。今までの東洋にありましたのは、そういう特殊の権益があつた上に立てられた学校であり、今のこの通商条約なんかでやりますのは、そういう関係はないのでありますから、普通どこの国でも対等の関係にあればお互いに自由にするということで、そうして若し仮に、それほどたくさん金が来るかどうかわかりませんが、アメリカ財力を傾けて立派なものを作るというなら、作つても一向いいじやないかというふうに私どもは考えております。
  304. 亀田得治

    亀田得治君 その点が、例えば経済問題だつて同じだと思うのです。自立経済という観念と、それから文化つて同じ我々日本の自立的な文化という考え方があろうと思うのです。決してこれは排他的に考え方ではないのです。そういう点が、この条約の中では、経済の面では財界人の要望を相当容れて、財界人はこれだけの制限があつても、一部の人はまだ相当反対をしている、全部じやないでしようが……。併しこの文化的な面ですね、私はこの文化面を相当、経済以上とは言いませんが、それに劣らずこれは重視するのですが、全然開けつ放しなんです。こんなことではいかんのではないか。殊にアメリカ精神なんてものは世界的に批判を受けている。ヨーロッパにおいてだつてどこでだつて、お金は持つているかも知れませんが、いわゆるアメリカ精神というのは相当に批判を受けている。これに対してこういう何というか明け放しなことでは、必ずそのうちしまつたということに私はなると思うのです。まあ併し議論をしたつていたし方ありません。もう一つお聞きしますが通商航海条約、これを結んで、これが効力を発生いたしますと、現在の日米関係に比較いたしまして、大きな点ではどういう点が有利になるのです。又どういう点が、私悪くなる点もあると思うのですが、どういう点が悪くなると考えますか、どういう点が大体同じくらいと考えておりますか。
  305. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは非常にむずかしい御質問でありますが、経済活動と言いますか、貿易その他の経済活動は、かなりこれで安定して自由になつて日本側には有利だと思いますが、同時に例えば三年後に株式の取得が自由になつたりするような関係からしますと、今三年間制限をしておるのですが、日本側でこれはよほど十分なる措置を講じないと、仮に三年後、余り今の状況と変らないということになりますれば、株式の取得が三年後に自由になるということになると弊害が起る場合もありますから、この点は国内で十分なる措置を講じなければいかんと思います。  それから貿易関係その他につきまして勉強する点もそうでしようが、要するにお互いの入国が楽になるとか、それから外資の導入については、これは両方の意見があつて余り手放しでいると圧迫されるだろうということと、それからいつまでも政府は外資の導入一点張りで来ていながら、一向外資が入らんじやないか、何しているのだという御意見もありますが、この条約は大体において外資が入りやすいようにしておりますから、その点ではいいだろうと思います。それから貿易関係で御説明している通り、ガツトにはまだ入つておりませんが、ガツトの加入と同様な効果がアメリカについては起り得るというように考えております。その他いろいろの点で、例えば今の第八条の問題もそうでしようが、すべての点でとにかくはつきりした日米間の基礎ができるのでありますから、望みを言えばもつといろいろの希望もあり、要望もありましようが、お互い話合いの結果ここまで来たということになりまするが、少くともこの条約によつているくの関係が安定しまして、今度非常に両国の関係は密接になる、楽になる、こう思いますから、大体において私はこれはむしろ日本にとつて利益な点が多いのであつてアメリカにとつて利益な点よりも、むしろ日本にとつて利益な点のほうが多いのじやないかというふうに考えておりますが、これは勿論実施して見て実績を見なければはつきりしたことは勿論申上げられないわけですが、紙の上ではそういうふうに考えられます。特に不利益な点というのも挙げれば先ほど申したような点もありましようが、特に不利益な点というほどのことは私はないのじやないかと思つております。
  306. 亀田得治

    亀田得治君 特に不利益な点がないとおつしやるんですが、例えば第七条の第三項でこれは逐条審議でも相当詳しく論議になつたのですが、特に不利益なところがないとおつしやるから、具体的にお聞きするわけですが、既存の日本におけるアメリカの金融機関、これに対して既得権を認めておるでしよう。これなんかは非常な片手落ちでしよう。アメリカのほうでは日本の、日系の金融機関に対してはそういう銀行業務は認めておらんでしよう。占領中に認められたようなそういう仕事を、アメリカ側だけに認めているでしよう。これは全体から言えばそれは小さいこととおつしやるかも知らんが、これはやはり不利益な点と違いますか。
  307. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 第一にお断りしなければなりませんのは、アメリカの銀行が日本でこれはまあ普通の、全部の銀行業務じやありません、特殊のものについてですが、日本が認めてアメリカが認めていないというニユーヨーク州のような、アメリカでは州によつて違いますが、ニユーヨーク州では外国の銀行に認めてないことを、日本においてアメリカの銀行に認めておるというようなことは、これは戦前からあつたのでありまして、占領中にあつたのじやないのであります。戦前からそういう銀行は認めておつたのを、日本としては戦前からこういう種類の銀行業務を認めたほうが、日本経済界にはいろいろな点で薪であり、利益であると認めたから、やつたのでありますが、ただ戦前にはナシヨナル・シテイだけがその際に業務を行なつておりまして、その後占領中にチエースであるとか、バンク・オブ・アメリカというものが入つて来たわけであります。併し戦争前といえどもナシヨナル・シテイだけに認めたというわけではないのであつてアメリカの銀行に対してこういうものは認めるという、業種を認めたのでありますが、ただ進出して来なかつたのであります。そこでそれはなぜ認めたかと言えば、今言つたように日本のむしろ利益になると思つたから戦前も認めておつたのであります。それを今度も認めましたのは既得権という、既得権といえば戦前からの既得権の業種でありますが、これはよく言われますユーザンスの問題とか、その他一般に貿易関係においてアメリカ銀行にそういう活動を認めたほうがむしろ利益の面のほうが多い、これは一面においてはそういうものはいらんという議論もありますけれども、利益の面と不利益の面を計算して見ると、利益の面が多いということで認めておるのでありまして、必ずしも私はそういうものが不利益であるというふうに考えてはおらない。
  308. 亀田得治

    亀田得治君 そんな条約というものは、今日本アメリカ関係は誰が見たつてアメリカ日本に対して優位な立場に立つておるこれは世界の常識です。東南アジア諸国へ行けばアメリカ圏と、こう言つています。それに対等だとおつしやるなら、まだ私納得できますが、日本側に有利な点が多いというような言い方は少し、余り何といいますが、こちらの側をよく言い過ぎるのではないかと思うのです。そんなものじやないでしよう。誰が考えたつてアメリカがそんなことに同意するはずがないでしよう。アメリカは自分の不利な条約についてはずい分強硬なはずですよ。この条約批准つてアメリカは早くやつたんでしよう。それほどアメリカにとつてはこの条約は、私どもは有利だと思つておるのです。これは何といつたつて、全体を流れているものは、成るほど形式的には平等主義になつていますよ。形式的に平等である場合には、実力を持つているものが、実質的には相手に対して優位に立つことは、これは丁度資本家と労働者との関係と一緒ですよ。そういうことですから、少くとも日本のほうに有利なことが多いだろうというような甘い考えで、今後この条約を運用されるような、そういうふうに外務大臣が当られたら、非常に私見当が違つて来るのじやないかと思うのですね。  それからもう一つお聞きしますが、三年後にアメリカ人の株式取得の制限が撤廃されますね、それまでに相当な措置を講じておかなければならんというような、さつきお気持を披瀝されましたが、私はその通りだと思うのです。どのような具体的な措置といいますか、処置を考えておられますか。
  309. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) つまりこの弊害は、例えば資本金が一億であつて借入金が九億あるとすると、全体として一つの会社が十億の活動を、十億の資本を持つたような活動をしているのが日本の実情であつて、それに対して資本金の過半数、つまり五千万円以上を獲得したものは、その会社の株を過半数持つているから、支配権を握れる。そうすると五千万くらいの金で以て、十億の事業会社の支配権を握れるということになるので、これが不当であるということになるわけであります。従つてこの会社が自己資本が、元の戦前のように十分あつて、それでその自己資本で活動しておるような状況になりますならば、つまり十億の会社なら、五億余りを獲得しなければ、その会社の支配権が握れないということになれば、五億を獲得して握ることは、これは当然である。制限業種でない限りはそれは差支えない。ただ五千万円で以て、十億の会社の支配権を握るということは不当である。こういう考えから来ておりますから、できるだけ自己資本を殖やして、或いは資産再評価をやるというようなことを促進しなければならん。そこでこれは国内的にも資産再評価等はやらなければ、健全な財政、会社の経理状況にはならんと思うのであります。そういう意味のいろいろな措置はありましようけれども、これはできるだけ促進しようと思つて政府は今までも大いに各会社に勧奨してやつて来ておる。税金の点でもこれに考慮を与えて、やりやすいようにしておつたわけですが、なかなかはかどらなかつた。そこで今度は、是非これは三年の間に仕上げて行きたい、こう思つているわけであります。
  310. 徳川頼貞

    ○徳川頼貞君 今逐条審議中ではありまするが、たまたま条約全体について触れましたので、私この条約をずつと拝見して見ますると、これは私一人ではなかろうと思うのでありますが、この中に書いてある日本語が、必ずしも我々にぴりつと来ないところが非常に多いと思うのであります。今までの条約には或る一つのフォームがあつて、それがいいとか悪いとかは別として、あつたようでありますが、何かこれから見ますると、英語の直訳みたいなような感を非常に持つのでありますが、今後できるところのこういつた条約は、こういうような形において、いつもできるということになるのでございましようか、その辺を大臣の御意見を伺いたいと思います。
  311. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは戦後におきまして、一つは文体が非常に変つて来ております。第一にこれはこの条約でもおわかりになりますように、これは日本語と英語によるものが等しく正文である、こういうことになつております。従つて日本語と英語はぴちつと合わないと工合が悪いわけであります。例えば中国との条約のように、日本語と中国文と英文とを作つて、解釈の相違のときには英文によると、こういうようなことになりますと、日本文はかなり自由に訳せるわけで、いざとなれば英文が基である、こういうことになつて来るのですが、ところがこの場合に第三国の文章を使つておりませんから、従つて英文と日本文とがびちつと合わなければ工合が悪い。ところが英文におきましても多少妙なところがあるようでありますが、それは日本語にどうしてもならない場合には、日本語のほうを基にしておいて、英文を少し直してもらわなければならん場合があります。それから英文のほうでどうしても変えるような字がない場合は、日本語のほうを無理でも少し直すというようなことがありまして、それで一つは不自由なんです。併し全体として見ますというと、元は条約文をこういうふうな口語体で作つたのじやありませんで、文語で以て作つておりまして、それには条約の範例みたいなものがありまして、昔からきちんとできたものでありますが、それが口語体になりましたのと、最近アメリカなりその他の国でも条約の文章が大分違つて、新らしい形になつて来ましたものですから、まだそういう的確な日本語の訳ができておらないという事情もあるのであります。そこで外務省としましても、これが必ずしも皆満足な日本文だとは思つておりません。是非早く直して、的確なる日本文を作りたいと思つております。これには英語と日本語の対照、フランス語と日本語との対照、スペイン語と日本語の対照、いろいろありますが、こういうものをできるだけ早く集めまして、用語例を作りたいと、こう考えております。現在におきましては、今申しましたような事情で、どうも生硬と申しおすか、硬いような文章がたくさんありますが、これは一つ御勘弁を願つて、今後できるだけ日本文は完全なものにしよう、こういうつもりでおります。
  312. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では外務大臣に対する御質疑はこれで……。
  313. 高良とみ

    高良とみ君 先ほど局長から御説明つたのですが、制限業種の七条の中の、実際は造船とか或いは会社設立の認可事業に、外資が入つているのです。例えば造船事業なども制限日本政府が留保している。制限を定める権利を留保すると言つておりますけれども、実際は日本に利益になる場合には、制限を定める権利を留保しないで、どんどん与えているということがあるのに対して、大臣がこれは日本の利益になる場合には、政府の権限において、条約の如何を問わずどんどんそういうことはやつていいというお考えでありますか。それともただこういう権利を留保するだけであつて、ときによつては許可しないかも知れない、その他の天然資源の開発を行う企業などに対しても、外資を導入して行くことがあり得るとお考えになりますか、お伺いします。
  314. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはもう普通は許可しないのであります。特別の場合の、これはどつちから見ても日本に利益にしかならないというような場合がありますれば、これは別であります。で、まあそういうことがあるかどうかは別としまして、この趣旨は原則としてはこれはもう許可しないというのが考え方であります。
  315. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますると、電源開発とか、そういう明らかに天為資源の開発を行う企業というふうなものに対してはどうですか。
  316. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) つまり例えばその会社が金を借りるというだけならば、これは差支えないと思います。併しこれを例えば今考えている開発銀行を通じてそうして開発銀行から今度は会社が金を借りる。外国側については開発銀行が責任者になるという恰好になつておるのですが、事業の経営に対する支配権というものは全然ないという場合には、これはいわゆる単純な借款でありますから、こういう場合は私は別に考えても差支えないと思います。
  317. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと、先ほど問題になりました呉の軍港を使つてのタンカーの製造なども、これは投資ではないのでありまして、実際の会社としての事業の経営なのでありますが、こういうことはどういう枠に入るのですか。
  318. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) あの呉のクレーンやなんかを使わしているあれでありますが、あれはたしか年数を限つていると思いますが、あれは十年という年数の制限があるそうであります。
  319. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますとこの政府が考えて一定の制限を附しながらも、そういう事業を設立して、これを経営して行くことは今後もこの条約にかかわらず相当あり得ると了承しておいて差支えありませんですか。
  320. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はちよつとそこの点は管轄でありませんので、はつきり申上げられませんが、殆んどないんじやないかと思います。
  321. 高良とみ

    高良とみ君 或る種の業態において、例えば部分品を持つて来てここでそれを組立てて、そして国内販売をする。そうしてそのパテントはアメリカのものであるというようなことになりますと、これはその会社が日本事業を経営するわけでありまして、それがたまたま輸送であつたり、水上輸送であつたりというような場合に、常に外資法でこれをチェックできるというお見通しで、大体においては制限業種は日本の業種を保護するために殖して行かない方針と了承して間違いありませんか。
  322. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その通りと考えております。
  323. 亀田得治

    亀田得治君 七条二項の制限業種に関する規定ですね。これはアメリカ側から出た要求ですか経過を少し話して下さい。
  324. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これはアメリカのほうといたしましては、外資が成るべく自由にほうそれへ行くということが理想でありますので、アメリカのほうといたしましては成るべく第七条の一項ということで基本原則を押し拡げたいという希望でありまして、これに対して第七条二項のほうの業種をあれだけ広くしたというのはこれはむしろ日本側のほうでありまして、アメリカのほうとしては成るべくそれは狭くしておいたほうが望ましいという希望でありましたけれども、日本側のほうで七条二項の条項を広く要求して全部入れたという関係でございます。
  325. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、その経適から判断しても、アメリカとしてはやはり交通事業とか通信事業とか適当なものはやはり要求して来ると思うのですな。これはともかく後進国に対する出方は、文化事業とそういう公共事業ですよ。だから必ずそれは要求して来ますよ。外務大臣只今の方針は極めて私は結構だと思うのですが、固くその方針を一つ堅持して進んでもらいたい。こちらが駄目だとこう言えば、それでいいことに制限することができると、あの規定はなつておるということですからお願い申上げておきます。
  326. 高良とみ

    高良とみ君 もう一つ関連ですが、公共事業はそういうことといたしましても、この十八条の説明のところで伺いたいのは、公共事業よりも私企業に対して保護を与えるようにせよという要求がアメリカ側から出たのでありましようか、どうでしようか。
  327. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これは今の十八条にはもうございません。もとあつた十八条に削除されたものがあつたのであります。それがつまり公共事業一種の保護を与える場合には、同様な保護を私企業にも与えよう。つまり公共事業の保護ということを非常に厚いということにしておりますと、そうすると全部公共事業のほうという理由で以て、私企業は圧迫することなきやという懸念があつたわけでありまして、それで今仰せのような、公共事業に一定の保護を与える場合には、同様の利益が私企業にも行くようにできないだろうかというようなことの一文があつたのでありますが、これは公共事業に一定の保護を与えるということをするには、それだけの理由がある。それを私企業にも及ぼすということになりますと、何のために公共事業に保護を与えるかという理由をそれ自身滅却するということになりますので、その規定は削除いたしまして、只今条文にはそれはございません。
  328. 高良とみ

    高良とみ君 その全体としては、アメリカ日本に対する投資等は、公共事業は勿論制限があるのですが、私企業で行こうという傾向は強いのですか。
  329. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) アメリカは御承知のようにフリー・エンタープライズという状態でありますので、公共企業というふうな分野は極めて少いのであります。従いまして成るべく多くのものをプライベート・エンタープライズでやろうというのが理想でありまして、又現にそういうふうにやつているのでありますが、我が国はまだそこまで、完全に、フリー・エンタープライズというところには行つておりませんので、第十八条の論議の際に、只今申上げましたような点を削除いたしまして、実情に合うようにいたしたというわけでございます。
  330. 高良とみ

    高良とみ君 そこで日本側としては、日本の私企業関係で、条約によつてアメリカのほうの大きな資本を持ち、又多くの経験を持つたアメリカのビジネスと日本のビジネスが競争しなければなりません立場に立つておりまするから、日本の私企業側に悲鳴が上つていると私どもは了承しているのですが、その点が非常に力のある実業の形態と、日本の弱い、まだ資本の蓄積していない形態との間の競争の苦しさというものは、当然これは克服して行かなければならないが、止むを得ないものとお考えになりましようか、どうでしようか。
  331. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) つまりアメリカ人アメリカ活動していて、それが非常に大きいというものと、日本と競争する場合、これは外的の理由でありますが、これは止むを得ないことと存じます。日本に参りまして、それと同じことが繰返される、日本の領域で繰返されるということでは、これではとてもかなわないということは、当然予想されますので、従いましてその点からの観点からいろいろな例外規定制限規定というものが設けられたわけでございます。
  332. 高良とみ

    高良とみ君 併し大臣はどうお思いになりますか。弱い日本の私企業を保護することがこの条約においては余り少な過ぎるのではないかという面についてどうなのでしようか。もう少し日本の私企業が育つまで保護的な条項があつてもいいのじやないかと考えるのですが、如何でしようか。
  333. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は随分ここで入れておると思いますが、例えばどんなことでございましようか。
  334. 高良とみ

    高良とみ君 税金のことも縷々御説明があつて日本の税金が高いから、なかなか外国の資本も入り得ないというような実例もありますし、もつと外国の資本に対する、外資導入という御趣旨でありますが、もつとパテントなどについても、それの一〇%とか一二・三%要求される場合に、これは日本国内の法によるというふうなことは一つの例でありますが、考えられるので、もう少しパテント等で保護……、あと条項にありますが、そういうことでもつと保護が与えられるんではないでしようか。つまりコカコーラならコカコーラというような型のもので日本に入つて来たならば、それは違う名前にする。現在そういうことが随分起つているようですが、又最近の実例から申上げますならば、薬類が入つて来ておりまして、これがパテントの特別の名前を使う。又薬品自身も相当ありますが、それが日本の薬品のマーケツトをだんだん駆逐しつつあるということなどは、何とかもう少し国内産業の保護を考えられていいんじやないかと思いますが、どうでございますか。
  335. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは要するにむずかしい問題で、国内産業の保護は勿論我々も考えなければならんと同時に、国民一般消費者の便利ということも考えなければならんわけです。お話のような議論を進めて行きますと、よその国で日本が綿糸布を売出そうというときに、日本の綿糸布を買うことはない、国内で不便でも我慢して使わなければいかんじやないかというような、極端な保護政策をとります。と、貿易なんというものはなかなかできなくなります。そこで一般消費者の便利から言うと、安くていい物を買いたいという気持がある。ただそれを無制限に許しますれば、折角国内で興ろうという産業が途中で潰れてしまうというので、その舵のとり方であります。この点では我々もこの条約を作るときに一番苦心した問題であつて日本の世界に向つての立場がどうであるか、それとアメリカのような特殊の経済力の強い国に対してどうするかということで、原則的には私は世界中どこへ出してもこの条約で行けるというつもりで作つたんで、ただそれが例外的には今申したような経済の力の差異というものがありますから、暫定的ではあるが、或いは暫定的でないものもありますが、そういうような例外規定を設けておるという趣旨で作つております。この判定については、もう少し、この国内産業を保護したほうがいいだろうというのと、もう少しむしろ国内の消費者がいいものを安く買えるようにしたほうがいいんじやないかというような議論は、これはいずれにしても起るものであつて、まあ我々の考えでは、この程度が一番その間の中庸を得たところではないかということで、こういうことに落ちついたわけです。
  336. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 政府条約調印当時、条約上の商人とか、投資家の入国滞在につきまして、条約が発効するまぐ何か便法措置をとるというようなことを米国に申入れておるとか、或いは入れるというような意向であつたと聞いておつたんですが、今日何かそういう処置がとられておるんでしようか。
  337. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 御承知のようにまだ日本アメリカとは、これが発効いたしませんと無条約状態であります。無条約状態となりますと、例のマツカラン法というようなもので、日本人の入国というものは非常に困難ございます。ところがこの条約が締結されまして、恐らく近く発効するのであろうという見通しも非常に強いのであるからというので、発効間近ということで便法を講じてもらうというふうなことが、これは向うの好意に依頼するということでありますけれども、そういう構想をいたしまして、現にそれよつて幾分、非常に困難な入国の制限が幾分緩和されておるという状態になつてあります。
  338. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 議事進行で一言。大体質疑も相当出ておりますし、殊に逐条審議ですね、これは大体終つたように思いますので、実はもうこれで質疑を終つて討論採決までお願いしたいところでありますが、ちよつと人数が足らんようであります。今日は逐条審議はもうこれで終つたということにして、明日午前中に若し、質問の残りの人があれば質問を少しちよつとして頂いて、直ちに討論採決に入るというところまで取運んで頂きたいと思いましこ、お諮り願いたいと思います。
  339. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 今お説の通りに、かなり十分の時間をかけて逐条審議をやつたわけです。これで逐条審議を終了したものと私も承知して、そういうように考えておる。そこで次の運び方でありますが今石原委員から、明朝の会議で質疑の残りが若しあればそれを終了し討論採決に入る、こういう運びにしたらどうだろうという御意見、私個人としては賛成であります。質疑も今日の状況では大体終了したものと思いまするし、しますれば明日午前の会議で今お話なつたいろいろな道程を辿つて最後のゴールにまで到達することができるんじやないかというように感じるのであります。そうして若し幸いに明日午前の会議を以て終了しますならば、そうして又明日午後の本会議にでも間に合いまするならが緊急上程でもしてもらいましよう。それができなければ六日の本会議においてということに取計らいたいと思います。現在の委員会の審議の状況では、そういうふうに委員長において取計らつて差支えないもののように感じます。
  340. 亀田得治

    亀田得治君 ちよつと、私の質疑終りました。で、杉原さんや中田君、が今おりませんが、或いは十五条以下でしたか、あそこは非常に簡単になつておりますから、或いは少しあるんじやないかと想像するんですけれどもね、なければいいんですけれども……。
  341. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 杉原委員逐条審議を終了するということを承知しつつ帰つて行かれましたので差支えないと思いますが、中田委員は初めから逐条審議に重きを置いておられない、むしろ一般論を主張しておられましたから、いずれ明日もう一回私が念をおして伺います。が併し大体問題が終つたように思いますので、今のような順序で取計らうことといたしまして御協力を願いたいと思います。  それでは本日は、れで散会いたします。    午後五時三十九分散会