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1953-08-03 第16回国会 参議院 外務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年八月三日(月曜日)    午後二時十二分開会   —————————————   委員の異動 本日委員佐多忠隆君辞任につき、その 補欠として亀田得治君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     佐藤 尚武君    理事            徳川 頼貞君            加藤シヅエ君    委員            石原幹市郎君            小滝  彬君            亀田 得治君            中田 吉雄君            羽生 三七君            鶴見 祐輔君            杉原 荒太君   政府委員    外務政務次官  小滝  彬君    外務省経済局長 黄田多喜夫君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       神田譲太郎君   説明員    外務省経済局参    事官      森  治樹君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○日本国アメリカ合衆国との間の友  好通商航海条約批准について承認  を求めるの件(内閣提出、衆議院送  付)   —————————————
  2. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 只今より外務委員会を開会いたします。  議題は日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海条約批准について承認を求めるの件であります。これから質疑に入るわけでありますが、その前に私から一言申上げて皆様の御考慮を煩わしたいと思いますのは、この通商条約一般のその他の条約と同じように、これは日本外国との関係を律するものでありまするし、こういう重大な問題は申すまでもないことながら超党派的にお考えを願いまして、そうして日本国民のためにどうあらねばならないかという意味合からして御審議を煩わしたいと思うのでございます。これは申すまでもないことでありますけれども、そういう意味合においてこれからこの委員会を開きまして、そうして通商条約に関しまする審議の継続をお願いいたしたいと存じます。
  3. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 議事進行についてちよつと申上げてみたいと思うのでありますが、懇談の形をとつて頂いたらどうかと思います。
  4. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では速記をとめて下さい。    午後二時十五分速記中止    ——————————    午後二時四十七分速記開始
  5. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記をつけて下さい。それではいよいよ質疑に入るわけでありまするが、その質疑をどういう形でやりまするか、それも一つ意見ございましたらばお知らせ頂きたいと思います。或いは去る金曜日の会議のときに会期延長になれば逐条審議に移りたいという御希望も二人の委員から申出がございました。或いは仕事をてきぱきはかどらせるためにはむしろ逐条でやつて行くほうが早いのじやないかと思いますが、これは併し皆さん方の多数の御意見によつてきめたいと思います。但しその逐条審議に参りましてもすでにその多くの条文については先ほども申上げました通りに、かなり質疑がすでに行われておつたということもこれは速記録にのつておりまするからして事実であります。そういうことをお含みの上で逐条なり或いは主な条項を取上げるなり、いずれの方法でも多数の御意見によつてきめたいと思います。
  6. 羽生三七

    羽生三七君 外務大臣に特に質問がある場合も起るし、ない場合もあるでしようが、非常に外務大臣不熱心ですね、この条約については。
  7. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) いろいろなほかの委員会があるから……。
  8. 羽生三七

    羽生三七君 条約が重要だというのにほかの委員会があるというのは少し私はふに落ちんと思う。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 やはり逐条審議最後ですからして頂きたいと思うのです。細かくやはり見たいと思うのです。そして逐条審議の途中で、そういうものに関連して外務大臣なり或いは通産大臣に来てもらいたいというふうな問題が起りました場合にはすぐ連絡をとつてもらいたい、そういうふうなことで進めたらかえつて早いのじやないかと思います。前後しないで。
  10. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 今の亀田君の御提案御異議ございませんか。
  11. 中田吉雄

    中田吉雄君 大変我々予算委員会に出ておつて恐縮ですが、概括的なことをときどこさしはさむことも了承して頂きたいと思います。大体関連してではありますが、大変欠席しておつて恐縮ですが、そういうふうに。
  12. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 もちろん異議ないと思いますけれども逐条々々で問題が起きたときに、やはり外務大臣通産大臣が来ないから次に進めないということがあつても困りますから、やつてみて問題が集約されて来ると思うので、適当なときに外務大臣通産大臣に来て頂いて、それらの問題をまとめてさばいてもらう、向うの言われることも結局そういうことだと思いますが、そう持つて行つていいのじやないかと思います。一条々々でここにこういう問題があるから大臣を呼んで来い、又大臣が来んから次に進めんというよりは、むしろ私はできれば更に明日の午前とか午後大臣の都合のいいときに来ることを今日から約束しておいて、大臣に質問すべき条項をそのときにまとめて質問するということが議事進行上僕は早いのじやないかと思いますので、一条々々で大臣ほら呼んで来いと言つているのではなかなか面倒じやないですか、亀田さんどうですか。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 大体そういう取扱でいいと思いますけれども、特に今すぐ聞かなければならないという問題はそんなになかろうと思うので、まとめておいて、あなたがおつしやるように適当な時間にやるように……。
  14. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは明朝外務大臣に来てもらい、若し明朝できれば外務大臣要求は明朝にしてもらうというふうにして今から逐条審議を始めて頂いて、外務大臣なり或いは通産大臣に質問する事項をとりまとめておいて頂くということにして、そして明日の朝外務大臣が来られたときにそれをまとめて質問する、こういうような仕組で一つつて頂きたい。
  15. 中田吉雄

    中田吉雄君 それではお願いいたしておきますが、明日いつか適当な機会に、通産省で御調査になりました二百八十七社の三カ年の外資がどういうふうに入つて来ているか、その影響がどうかというような調査がもうできて、外資白書というものを出される準備ができておるそうですから、新聞の伝えるところでは。それを何か謄写でもして大体の要綱がわかるようにして一つ説明頂きたいと思うのですがね、いつか。  それからもう一つはそれと関連して外務省で広範な調査をされて、在外商社実態調査されたという、そしてその結論がいろいろ出ているのですがね。
  16. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 日本在外商社ですか。
  17. 中田吉雄

    中田吉雄君 ええそうです。それも通商航海条約日本の貿易の発展には非常に影響があると思うのです。それも一つ合せてそのときに、それは七月二日の日本経済かなり詳しく在外商社実態調査をなされた結果が、これも要約して出ていますから一つ是非お願いしたい。
  18. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは外務大臣に明日の朝、それから外務大臣が若し明日の朝来られるならば、今の通産省当局は午後に来るようにというようにして、外務大臣若し明日の朝来られないようならば午後に廻して……。  それでは逐条に入ります。第一が前文でございます。
  19. 中田吉雄

    中田吉雄君 たしかこの委員会でも大分外務省の御当局から聞いたと思いますが、この条約アメリカコロンビアとの条約モデルケースにされたということですが、一つそれに入る前で大変恐縮ですが、その後実は今朝からコロンビアは一体どういう国で、アメリカとの経済のコネクシヨンはどうなつているかということを一々調査してみたのですが、どうしてそういう国のところをモデルケースにされたかということをお伺いしたい。
  20. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) よくこの条約アメリカコロンビアとの間の条約モデルケースになつているということを伺うのでありますけれども、実はアメリカコロンビアの間の条約一つ参考にいたしましたまでで、そのほかにイタリアアメリカイギリスとデンマーク、それからイスラエルというふうないろいろな条約がございまして、コロンビアは単なるその多数の中の一つという関係だけでございまして、それがモデルなつたというわけではないのでございます。ただコロンビアのやつは割合に新しいもので、いろいろなアメリカが作りました条約のうちで何と申しますか、いい点を集める上においては相当古きを参考としたということはございますので、そういう点ではコロンビアというのも割に役に立つたのでありますけれども、たつた一つモデルというわけではございませんで、たくさんの条約一つというのが本当でございます。
  21. 中田吉雄

    中田吉雄君 併しまあ前文の書き出しなんかは殆んど同じようなスタイルになつているのですがね。そこで私いろいろコロンビア産業実態を調べて例えば石油資本に対する各国投下割合を見ても殆んど七〇%はアメリカ資本で、あとイギリス、カナダ、オランダ等が若干ついておる。更に輸出にいたしましても八〇%はアメリカであり、輸入でも同様に殆んどアメリカ経済にインテグレートされたような関係になつているのです。そういうところがモデルケースなつたということは何とはなしに非常に不安を感ずるのですがね。そしてそういうことが結局我が国とアメリカとの経済発展段階相違からして、私はこの条約が施行された際にはコロンビアが置かれているようなとは言いませんが、強くアメリカ経済に結付けられてしまうような影響が起りはしないかというふうに考えるのですが、それでしたらその他も参照されたというのですが、その関係について一つお伺いしたいと思います。
  22. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 前文なんかもコロンビアと同じだというふうな御発言でございましたが、これはイタリアその他の国の前文なんかも大体同じような書き方でございます。つまり古い通商航海条約にはその後、できた時代に合わないものが非常に多い。そういう新しい事態をも取入れて作ろうというのが戦後のアメリカ通商航海条約に対する態度でございまして、従いましてその後の考え方からいたしますると、内容等にもおのずから同一なものができて来る。従つて戦後作りましたアメリカ条約というのは大体この型でございます。ただ前後或いは客観情勢相違によりまして少しの差があるということは事実でございますけれども、大体の立て方はこういう立て方であります。  それからコロンビアアメリカとの関係を見ると石油に関しても投資の七〇%はアメリカが占めておるというお話でございますが、この点は恐らく当委員会も問題になりました第七条の関係が一番その御発言関係が深い条項だと思います。それでは投資或いは外国人事業活動というものを大体第一項におきましては、これは自由にするという原則を謳つてございます。これは新しいお互いに事業活動を自由にして、自由なる外資流入とか交流とかいうことをやろうという理想でありますが、ただそれを第七条の第二項におきまして相当しぼつてございます。このしぼり方が一体どうであるかということによつて投資がどのくらいできるかということのこれが目標、標準になるわけでございますけれども、この第七条の第二項は相当これが広いのでございまして、これはアメリカが戦後その他の国と結びました条約に比べますると、そのしぼり方が非常にきついしぼり方であります。というのは事業活動制限する業種というものが相当広くしてあります。これは余り広くすると外資流入はそれだけ狭くなる。入りにくくなる。これは又無制限に拡げると外国資本による把握を恐れなければならないというふうなことになりまして、この第七条第二項の制限業種をどのくらいにするかということは、本条約交渉に当りまして一番の関所と申しますか問題点なつたところでありますけれども、そこまで相当広くとつてあるということは、アメリカ資本による日本産業把握と申しますか、それが相当制限を受けるという関係になりまして、アメリカ資本石油産業において七〇%を占めておるという御発言でございすが、これは石油産業制限業種になつておりますので、これをどのくらいにしぼるかということに、一にかかつておるわけであります。
  23. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) この前文条約シヤツポをかぶせたようなものでありまして、条約内容がきまつて、それから前文ができたのでありますから、私の考えでは第一条からずつと入つて頂いて、そして又最後シヤツポに帰つて行くというのがいいやり方じやないかと思います。
  24. 亀田得治

    亀田得治君 今委員長からそのようなお話がありましたので、簡単に一つだけお聞きしておきます。  只今第七条の二項についても御答弁の中でお話がありましたが、これはその第七条に入つたときにもう少し確めたいと思うのですが、前文の中で、例えば「相互に有益な投資促進し」こういうことが目的一つに書かれております。これは一体相互といえば日本からもアメリカに対する投資ということが予想されておるはずなんですが、どういうものが一体予想されているか、何も具体的な現実的なそういうものはないのだが、形式はやはり平等にしておかなければならないと思うから、体裁上にこういうふうにしてあるというのか、一つ卒直にこの考え方お話願いたい。
  25. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 前文には四つの大体目的が謳つてございます。一つは平和及び友好関係の強化。第二は経済文化関係促進。第三が相互に有利な通商関係、それから第四が只今仰せになりました相互に有益な投資促進ということであります。つまりこれらの四つ目的を達成するためにこの条約を結んだのだということに相成るわけでございますが、これらの目的、いずれも具体的に只今どういうことがあるのだということを頭に置いてやつたのではございませんので、ただ抽象的にこれらいずれもどなたが見られましても誠に立派なことであるという抽象的なことでございます。従いましてアメリカも現に頭にどういうものがあつて投資促進考えられたのだということではありません。そのことは日本側から向うにやる場合にも同様な関係でありまして具体的にどういうことが頭にあつたというわけのものではありません。
  26. 亀田得治

    亀田得治君 日本側の場合には極めて抽象的な意味しかないと思いますが、アメリカ側の場合には相当具体的なものをいろいろ持つて書かれておるものだと思いますが、それはどうなんでしようか。
  27. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 戦後の関係を見ますと、アメリカのほうから日本投資されるというふうなものが非常に多くてかつこうは一方的になつております。又戦後の日本経済復興のためには投資促進ということは、私どものほうから申しましても歓迎すべきであるということからこういうふうにしたわけであります。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると前文に書かれておる実体というものは文章と少し違うような気がしますが、そういうふうに受けとつていいでしようか。
  29. 下田武三

    政府委員下田武三君) 御尤もでございまするが、その問題の前提として、一体通商航海条約というものはどういうものかという問題を確かめませんと話がわからなくなるのだと思うのでございます。通商航海条約はまず水や空気のように白紙の状態で国家間の通商関係基本的原則を定めようとするものであります。従いましてそのときの偶発的な事情というものは深くとらわれる必要がないと申しますか、むしろ長い間の関係を律しようとするところが根本問題であります。従いまして通商関係関税の問題にいたしましても、日本人のまぐろの罐詰が安くて困るから関税を高くしろ、或いは絹のスカーフが安いから関税を高くしろとか、成るほど関税の面ではアメリカのほうが不利じやないかと思うかも知れませんが、併しながら通商航海条約建前が、法律的に平等な建前を保障しよう、内国民待遇或いは最恵国待遇をできるだけ保障しよう、通商航海条約関係いたしまして根本的な政策的な問題があるとすれば、これは鎖国主義をとるか或いは門戸開放主義をとるかということが前提の問題だろうと思うのであります。そうしますと、日本のような国は鎖国主義とつたら生きて行けん国であります。どうしても門戸開放主義をとらなければならないのであります。今日世界門戸開放主義を最も欲する国とすればアメリカ日本だろうと思うのであります。アメリカはあり余る資本、あり余る生産力を擁しまして成るべく各国と広く活動を行いたい、これに対して日本は狭小な国家と貧弱な資源とあり余る人口を擁しまして、どこに行つて日本生産品関税上の公正な待遇を与えられ、どこに日本人が出かけてつてもその国の国民と同じような内国民待遇を受ける、その国にいる第三国人と同じ待遇を受けるということが日本人といたしましては最も大事な問題だと思うのです。それで外資の問題でもこれは世間では非常にその問題を大きく取扱つておられ、又現実にこの交渉に参加しておられた経済局長の頭にも外資の問題ということが非常に大きく写つておられるようでありますが、併しそれは関税であるとか、外資の問題であるとか、或いは企業の問題、これは全般の一部分にしか過ぎないのであります。根本日本国民世界のどこに行つても内国民待遇最恵国待遇を受ける、日本生産物がどこに行つても公正な関税上の待遇を受けるというのが狙いでありまして、政策の根本のところは結局門戸開放主義によるべきか、或いは鎖国主義によるべきかということが問題だと思うのであります。そうしますとその根本の点につきましては、どう考えてみましても、私は日本といたしましては、どこの国にいたしましても門戸開放主義による通商航海条約を結ぶべきであると確信いたしております。  ただ終戦後の日本経済状況を見ますと、これは如何に門戸開放主義をいたしましても暫定的には全部門戸を開放するわけには行きません。そこで経済局長交渉で最も苦心されましたところは、この日本の現在の経済状況に鑑みて、不当な影響を受けないための防波堤をたくさん作ることに苦心しておられた。併しこれは暫定的な問題でありまして、通商航海条約の大きな長い目で見た流れから見ますと、やはり一つの派生的な問題にしか過ぎないのではないか、そういうふうに私は考えております。
  30. 亀田得治

    亀田得治君 ちよつと私の考えが間違つておれば一つ教えて頂きたいのですが、どうも何か実体形式が違う。そして実体のままを書くと何か不平等条約を結んでおるというふうな非難を恐れて、実際には何も予定されていないことが同じように平等に書かれておるのですね。こういうことはかえつて日本の大衆を迷わすのじやないかと思うのですね。日本経済実態というものをありのまま条約の上に表わしているということのほうがよほど率直であり正直なんじやないか。文化関係とか平和の関係通商関係、これはいいと思うのですが、第四番目のことなんかは一方的に書かれたところで少しも私は不自然じやないと思うのです。金を持つておる者と持つてらん者なんですから当り前のことなんですね。そういう書き方が一体されていけないのかどうか。今あなたのお話を聞きますと通商航海条約というものは空気のようなもので具体的な現実の現象に余りとらわれないようにして一般的にきめて行く。まあ私はその気持もわかりますが、全然問題にならないようなことをことさらに平等というふうな名前にとらわれてこういう書き方をしている。私は一般の立法でもそういう真実とそれを表現する仕方の形式のギヤツプ、こういうことは極めて避けなければいかんことだと思いますので、こういう条約前文にこの文句が入つていることが非常に実は気になるのですが、私は君の考え条約に関する知識が足らんからだめなのだということなんでしようか、どうでしようか。
  31. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) これは大して無意義なわけではないのであります。もちろん今日本では資本が乏しい、外国への投資というものは認めていない。ただ東南アジヤだけは許可を得まして投資することもできる。そういう意味で成るほど日本にとつて十分利用価値はないというふうにお考えになるでありましようけれども、御承知のようにアメリカには二世のみならず帰化することのできる種類の日本人、一世も相当いるわけであります。その際にアメリカでドルを得てそうして投資するというような場合に、アメリカ人日本で受けると同様な投資に対する待遇を確保してもらうということは非常に意味のあることでありまして、もちろんその大きさからいえば経済力によつて差があるわけでありますが、併しその人個々にとつて相当な数がいつているのでありますから、資本に対する保証ということは非常に意義があることでありまして、当無相互主義的に日本側もとるべき権利をとつておく。そしてそれが実際上アメリカ行つている日本人にとつては非常に大きな便益を受けるものである、こういうように私ども考えておる次第であります。
  32. 亀田得治

    亀田得治君 今の御説明でわかりましたが、例えばこれと同じような前文アメリカとほかの国との間でも結ばれておるようですが、例えばコロンビアなんかでもアメリカに対する新しい投資というものは恐らくないと思うのですが、それはどういう状況でしようか。
  33. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) アメリカに在留しておる者の投資というものは、コロンビアといえどもあり得るだろうと思います。
  34. 亀田得治

    亀田得治君 私今新しいと申上げましたのは、そういう自然にあちらにおる人が投下して行くというようなものでなしに、特に新しくアメリカ資本を注ぎ込んで、そこで事業を起して行こう、そういつたようなことは殆んどなかろうと思うのですがどんな状況でしよう。
  35. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) それは仰せ通りだと思います。そういうことをすれば結局資本の逃避になつて通貨関係の不安定な国から資本が逃げて行くということになるから、むしろその国として抑えようというのが残念ながら現在の実情だろうと思います。
  36. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、従来アメリカ日本人もおりますが、事業をやつている者も幾らかありましよう、そういう非常に狭い範囲についてはやはりこういうことが平等の立場で考えられなければならない、当面は。そういうふうなことで大体解釈しておつてよろしいでしようか。
  37. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 私は今丁度ここに統計は持つておりませんが、数にしたら、むしろアメリカにおる日本人で、そういろ関係を持つておる者が、日本にいるところのアメリカ人のほうが或いは資本の額においては多いかも知れないけれども却つて日本人のほうでこれによつて便益を受ける者が数の上では多いだろうというように考えておるのであります。
  38. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 只今アメリカ日本との関係におきましては、日本商社アメリカ行つて活動しているというものが約四十ございます。海運会社が十四、銀行が五つというふうにございますが、これらもアメリカ人日本に来て日本人と共同してやつていると同様に、これは日本人向う行つて提携をやつて投資活動をやるという一つの例になつております。
  39. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 先ほど数をはつきり覚えていないと申しましたが、在米の日本人二世でなしに日本の国籍を持つている者が六万八千、それに対して日本におる米国人は七千人であります。
  40. 中田吉雄

    中田吉雄君 ちよつと外れるようで恐縮ですが、この条約は大体アメリカのほうから、試案を出されて、そうしてこちらから意見を言われて、いろいろな要求に合わないところを是正するというような形をとられたのですか。安保条約なんかも大体そうだろうと思うのですけれども、今度のMSAでは双方が出して行くように形が変つておるように思うのですが。
  41. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) その点については随分説明がありましたけれども、もう一度。
  42. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これは去年の暮から始めまして、両方から案を出しておるようにしまして、その結果私の考えでは、向うから出した点をこつちが修正、削除したというふうな点のほうが多いと思つております。
  43. 中田吉雄

    中田吉雄君 それからこれも初めの「両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し」こういうことはコロンビア条約にもあるし、これも一つのレトリツクですか。
  44. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) さようでございます。
  45. 中田吉雄

    中田吉雄君 私は、アメリカ日本とのペルリが来まして以来の日米の関係発展の歴史的な調査においてはむしろ敵対関係のほうが多いのです、実際。それは大体日露戦争まではやはりアメリカはソヴイエトなんかを阻止するということもありましたし、非常に援助してくれておる。その後は一貫してロンドン軍縮会議からワシントン軍縮会議、満洲国不承認、そうして又その前に日米の航海条約を破棄しているように、非常に事実に即しないわざとらしいように思う。こういうような事実に即しないようなことをどんどんやつて行くと、これは非常に重要だと思うのですけれども、グルー元大使が、日本は早晩強力な国になるだろう、併しそれに対して経済的なチヤンスを与えるともう一遍日本は西欧諸国と破局的な戦争をせざるを得ないようになるだろうということを朝日の昨日の夕刊に書いております。これは非常に重要な、そうして西欧諸国がチヤンスを日本に与えるかどうか、これはあまりにも事態をもつと突き詰めてはつきりした形に、言うべきことは言つて再び起らないようにせんと、美しい言葉で事態を糊塗しておると、元グルー大使の心配されるようなことになる。そういう考えというものがここに表われておるのじやないかと思うのですがね。
  46. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) この最近の戦争に至る前の数年間、この数年間及び戦争中これは友好関係の一番悪いとき、これは当然のことでありますけれども、それを年数にいたしますと無論これは例外でありまして、それを除きましては両国間には友好な関係が多いということは否定できないであろうと思うのです。それからたとえ両国間の関係がむしろ悪かつたときのほうが多いのだと仮定いたしましても、通商航海条約に前の国との間に悪かつたということは書かないというのが普通の何と申しますか習慣でございます。ただやはり事実はどうかと申しますと、両国間の存在しておりました関係友好関係、これは戦争によつて一時と絶えましたけれども、そのほうが続いてやつておるという関係でございます。
  47. 中田吉雄

    中田吉雄君 まあそういうように一つのレトリツクとして書かれたもののように私は了承いたしますけれども、政府が外交をやられるならば私は明治三十七、八年の日露戦争までがやはりよくて、その後は非常にやはり日本の強国となることを問題にしておつたので相半ばすると思うのです。それはそういう例も一つ参考にして頂きたいと思います。それでいいです。
  48. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは前文はその程度にしておきまして……
  49. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 これはあとで又……
  50. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) そういたしましよう。では第一条。
  51. 羽生三七

    羽生三七君 第一条の二行目の「当該国民相当な額を支払う」ということは、「相当な額」というのはどういう程度か、何かあるのですか、基準というものが。ただ漠然と相当というだけですか。
  52. 下田武三

    政府委員下田武三君) これは別に額で幾らというような明確な限界は申上げられませんし、又ここできめてすべきことでもないと思います。おのずから良識的に五ドルの金を持つて行つておれはアメリカ事業をするのだから入国させろということは実質的にだめで、とにかく企業的活動を行うという目的にふさわしい資本を投下するという、専ら常識で判断すべき問題だろうと思います。
  53. 亀田得治

    亀田得治君 まあこういう言葉は結局常識的な判断になろうかと思いますが、これは併し交渉の過程においては具体的にもう少し突つ込んだ意見の交換というか、そういうものはなされなかつたでしようか。
  54. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 別に数字で幾らだとかいうふうな議論はいたしませんでした。投資活動と認められる程度の額ということで双方直ちに了解いたしまして、従いまして具体的に幾らだとかいうようなことは問題になつたことはございません。
  55. 亀田得治

    亀田得治君 例えばまあ対象になつておる企業の資本の半分、三分の一、これは勿論相当な額になろうと思うのです。それから併し十分の一程度だということになると企業によつて相当疑問が出て来ようと思います。もちろん十分の一ぐらいであつてもその企業にとつてその十分の一が非常に大事なんだというような場合には又違うかと思うのですが、併しそれよりももつと少くて五十分の一、百分の一程度なんだ、そういうような場合には恐らく該当しないと思うのですが、どういうふうなお考えですか。
  56. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 五十分の一でも「相当な額」という工合にもなり得ると思います。具体的な一々の場合について判断さるべきものでありまして、投資活動と認められる程度ということだけで、あとはその一々の具体的なケースに任したわけであります。
  57. 亀田得治

    亀田得治君 この(C)の「外国人の入国及び在留に関する法令の認めるその他の目的」、これは第一項の三番目の項目になつておりますが、この点は日本アメリカの国内法の差異によつて結局取扱が違つて来ることになるわけでしようね。
  58. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) さようでございます。日本におきましては出入国管理令、アメリカの場合におきましては例えば通過とか観光とか勉学とか、そういうふうなことも規定しておりますので、そういうことを指しておるわけであります。
  59. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、お聞きしたいのは、現状ではその取扱が双方の国内法の関係は大体同じようですか。随分違う点もあるようにちよつと聞くのですが、あるとすればどういうような点でしようか。
  60. 下田武三

    政府委員下田武三君) これはどこの国でも出入国管理令式の法令がございまして、又どこの国でも大体同じものを規定しております。今経済局長が申しました通過、観光、勉学或いは報道のために行く新聞記者、大体同じ関連で規定しております。たとえ文字の上に差がありましても解釈で実質的には同じ待遇を受けることになると思います。
  61. 亀田得治

    亀田得治君 ちよつとお聞きしますが、思想的な問題を理由にしての出入国関係の取扱の差異ですね、これはどうなんでしようか、日本アメリカで。
  62. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 通商航海条約で最も明確に入国、滞在というものを保証いたしておりますのは条約商人、条約投資家というものでありまして、そのほかは大体その国内一般法に任せるということになつておりますので、その点の差異はおのずから出て来る余地があるわけであります。ただその場合におきましても、こういうものは大体相互的に取扱うのが慣例でありますことは、只今条約局長から申上げた通りでありまして、そういう場合には入国管理令の第五条というものによつて向うがやつたような場合にこつちもやり得るということが規定してございますので、大体相互的に取扱をなすというのが慣例でございます。
  63. 亀田得治

    亀田得治君 それから次の第三項ですね、これは一項二項に対する一つ制限規定になるわけですが、公けの秩序、それから公衆の健康、道徳又は安全、これはもう少し具体的な意見の交換があつたと思いますが、どういうような意味でしようか。
  64. 下田武三

    政府委員下田武三君) これは日本の出入国管理令でも伝染病患者或いは貧困者、放浪者、阿片の吸飲者或いは売淫、売淫のあつせん業者、そういうようなものの入国を禁ずることになつております。従いまして第一項で入国の権利を持つておる者、即ちまあ条約商人でありましようとも伝染病その他であれば第三項で入れないということができる。そういうふうに全然別の観点から国の公けの秩序又は保健道徳上の見地から、たとえ一項の理由からいいますと入れるものでもなお且つ締約国はお互いに入国を禁ずることができるという留保の規定でございます。
  65. 亀田得治

    亀田得治君 今御説明なつたような点はわかりますが、この公けの秩序ですね、これはどういうふうなのですか。今御説明なつたのはあとのほうに該当するような場合だと思うのですが。
  66. 下田武三

    政府委員下田武三君) 出入国管理の公けの秩序というのがございますが、アメリカ側は御承知の例のマツカラン法、一九五〇年破壊活動取締法というのがありまして、なかなかきびしい適用ぶりをいたしておるようでございます。
  67. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 日本人アメリカに旅行したいと思うときに、今のような思想上の取締の解釈の範囲というものが必ずしも一致していないと思いますけれども、例えばこの間徳川夢声氏がアメリカに行こうとしたときに大変問題になつたというような、その問題は解決いたしましたけれども今後ともあの程度のような問題が起つて、どうしてもこの人は公けの秩序を破壊すると認定されるようになるのですが、ああいうようなことで思想上の問題で入国できないというようなことが起るというような場合には、日本においては現在そんなような狭義な解釈で入国を拒否するということは欧米人に対してはそういうふうな例は起らないと思いますけれども、今後アメリカのように比較的狭小な解釈で旅行を制限するということになると、いきおい日本もそれに対処してそんなことをやらなければならんような事態が起り得るとお考えになるでしようか。
  68. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) この間起りました徳川夢声さんのケースは、あれはパリでヴイザのアプリケーシエンを出されましたので、十分審査する余裕がなかつたというので、一応とにかくとめておいてあと調べるということだけだつたようでございます。従いましてその後調べてみたら何もないというので入国のヴイザが出たというわけであります。従いまして若し日本のほうから申請があつたならばああいう悶着みたいなことがなくて済んだのじやないかと思う事例であります。ただ向うのほうが相当この点に気をやんでやつておる、相当厳重にやつておるというのが事実のようでありまして、さて日本も必ずしも同一にしなければならないかどうかという点になりますと、この点は私少しくらいの差があつて各国の自由に任せるべき問題であろうと考えております。
  69. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは第一条はそれでよろしうございますか。では第二条。
  70. 亀田得治

    亀田得治君 第二条の第二項抑留された人の待遇の問題でございますが、これは先だつての神戸でアメリカ人が暴行して日本の刑務所に入つた、そういうときに私ども法曹の間では問題になつたのですが、ここに待遇としては「相当且つ人道的な待遇」、成るほど言葉はこれでよろしいのですが、アメリカ日本との習慣なり或るはいろいろな文化の水準の違いがある、一体どこを標準にしてのことでしようか。
  71. 下田武三

    政府委員下田武三君) お話のようにアメリカ世界中で一番生活水準が高いのでありますが、併し日本におきまして米人を拘置する場合に、本国で受けておるほどのぜいたくな待遇を与える必要はないと私は思います。これは常識的に考えましてひどい待遇さえしなければいいのだ、そういうように考えております。
  72. 亀田得治

    亀田得治君 それは当然そうなると思いますが、日本人の刑務所における待遇よりも何か少しよくしてやるように考えなければならないかどうか、それはどういうふうなお考えですか。
  73. 下田武三

    政府委員下田武三君) これはまあ大体日本人なみでいいと思います。あとは刑務所のデイスクレシヨンによりまして風俗、習慣の違いで、はしが使えないものにフオークを貸してやるというような配慮をしてやれば結構でありますけれども、特にこれがために国内水準以上のぜいたくはさしてやる必要は私はないと思つております。
  74. 亀田得治

    亀田得治君 そういう場合にはどうもいろいろな所から苦情が出て来るようにも聞くのですが、それはどうでしようか。日本の刑務所ならばそれで私は押切つていいと思うのですがその点の自信はどうでしようか。そういう注文なんかは聞く必要がないと……
  75. 下田武三

    政府委員下田武三君) これは個々の場合に或いは下平を言うものがあるかも知れませんが、その不平は非常に重大な不平であれば、且つそういう事例が非常に大きければアメリカ側から何とか外交交渉でよくしてくれないかということを言つて来るかも知れませんが、今日本の刑務所もなかなかきれいによくなつておりますので、一方又アメリカの刑務所も相当きたないものがあるという話を私聞きまして、そう大きな待遇上の間隔は起り得ないのじやないかと思つております。
  76. 亀田得治

    亀田得治君 それはそういう例外的なのもありますが、相当アメリカ人にしてみたら低い待遇になることは間違いないのです。併し御答弁のような態度で御解釈になつておればそれでまあ私どもも了解いたします。  それから(d)の「自己の防ぎよに当然必要なすべての手段」とありますが、これは結局訴訟制度上認められた諸般の権利を意味しておることになると思いますが、これは両国間で相当その間の法規が違うわけですが、これは当然日本アメリカ人が扱われる場合には、日本の訴訟制度上のいろいろな防禦手段、こういうふうに解釈していいわけでしようね。
  77. 下田武三

    政府委員下田武三君) 仰せ通りであります。憲法三十四条並びに刑事訴訟法の定めるところによりまして、国が法で認めております防禦手段をそのまま与えればいいということになつております。
  78. 徳川頼貞

    ○徳川頼貞君 私もこの第二条の第二項の点について一つ質問いたしたいと思うのですが、第二項に本国の領事官云々というようなことが書いてありますが、今この領事官の認知のことについてはこの条約の中にはないのではないでしようか。それはどういうわけでしようか。
  79. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) それでは別に領事職務条約というものを結ぶつもりでおりますけれども、ここに書いてありますことはもとよりの領事官に通報したいと言つても、それをとめるとか何とかいうことのないように又つかまえたほうではもよりの地にあるその者の本国の領事官に直ちに通報するということを、極めて当然なことを当然の通りに書いただけでございます。
  80. 徳川頼貞

    ○徳川頼貞君 そのことはわかつておるのですが、併し一九一一年、明治四十四年に締結された前の通商条約の中には、その第三条に領事官の認知というものが書いてあるのですが、今度はどうしてそれを除かれたのですか。
  81. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これは領事職務条約というものを、本通商航海条約が結ばれましたならば直ちにそれに追つかけて、そういうものを結びたいというつもりでお互いにありますのでそつちのほうに残してあるわけであります。
  82. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 第二条は大体それでよろしうございますか。それでは第二条。
  83. 亀田得治

    亀田得治君 第二項の終りにこれこれの者に対して「強制的な社会保障制度を定める法令の適用について、内国民待遇を与えられる。」となつておりますがこの範囲ですね。まあいろいろな法規上の恐らく社会保障制度がございますが、ここに強制的な社会保障制度、とお書きになつておるのは、そのうちの幾らかの部分をとつていらつしやるのだと思いますが、もう少しここを具体的に御説明願いたいと思うのです。
  84. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 日本の法令で具体的に申しまして、第一項に該当いたしますものといたしましては、労働基準法、船員法とか労働者災害補償法というものが日本側では具体的事例であります。
  85. 亀田得治

    亀田得治君 アメリカのほうはどうでしようか。
  86. 下田武三

    政府委員下田武三君) 米国の社会保障制度は連邦法(フエデラル・ロー)と州法の両方で規律されております。第三条第一項の労働者災害補償法につきましては、連邦法といたしまして沖仲仕及び港湾労働者補償法というのがございます。この法律以外の労働者災害補償法はすべて州法によつて規律されております。第二項の失業、老令、疾病、死亡による所得の喪失等の場合の社会保障につきましては、連邦法といたしまして社会保障法というのがございまして、これは老令及び遺族の保険と失業保険と両方を定めております。それ以外の点は州法によつておりますがそれは四十八州、それぞれ法律の名前も又内容も異なつております。
  87. 亀田得治

    亀田得治君 これは当然なことだと思つておるのですが、併しちよつと確かめておきたいのですが、アメリカの法律によつてあちらにいる日本人が補償を求める、その際にアメリカ人が支給されると同じだけの金額を受けることになると思いますが、日本人は生活水準が少し違うから半分でいいのだとか、そういうことにはならないと思いますが、そうでしようね。
  88. 下田武三

    政府委員下田武三君) アメリカ人が受けると同じ補償、つまり日本の水準よりも遥かに高い補償金をもらうということがこの内国民待遇を与えると規定した眼目でありまして、この点は実際問題からいうと日本人のほうが得するわけであります。
  89. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 健康保険のようなものはどうでございますか。
  90. 下田武三

    政府委員下田武三君) 第二項のほうでカバーされております。
  91. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ほかに御質疑が……では第四条に移ります。
  92. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 第四条についてはこの間も随分いろいろ質問したのですが、もう一つこの四条の一番末段の所、いわゆる第二項の末段、これも非常にわかりにくい条文ですが、ここの承認というのはどういう性質のもので、どういう法律効果を生ずるものですか。
  93. 下田武三

    政府委員下田武三君) この承認という漠然たる言葉を使つておりますが、その意味はやはり前段の判断が執行力を与えられ、且つ執行を受けるために執行判決の言渡を請求することができるという前段の実体的規定と同じ待遇を受けると認めるという意味だろうと存じます。
  94. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 つまり仲裁判断の確定力についても又執行力についてもそういうことになるのだということなんですね。
  95. 下田武三

    政府委員下田武三君) 仰せ通り解しております。
  96. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 そうすると、ここの一番初めの見出しのアメリカ合衆国の領事官のなされた判断、例えば日本でなされた判断も当然適用を受けて来るね。そうするとそこでアメリカの他の州で判断された承認というものと同種の限度においてのみということになつて来るのだが、そうすると今度はこれが具体的にどうなつて来るかというと、昨日一昨日非常に私が質問した問題もこの制約を受けて来るのだね。つまり他の州の州法でいろいろのここのもう一つ前の、この間私が質問しておつたところのあの条項よりも、もつと多い確定力を認めたり或いは執行力を認めるについて条件をおく価値としてならば、それは当然必要とされて来るわけでしよう。
  97. 下田武三

    政府委員下田武三君) その通りであろうと思います。
  98. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 こういうところからしても、これはどうしてもやはりそれはアメリカのほうのことだけ規定してあるけれども、やはり日本側でも又実際の必要からしても日本の国内法のために留保というものがやはり必要になんだね。それから少くともこれはこの間のそこを解釈論で補うか、これの立法論としては別として実際問題はどうしてもそうなつて来ると思うのだ。
  99. 下田武三

    政府委員下田武三君) 御指摘の通り、この前のお話、御意見通り問題がございまして、これはやはり将来十分考慮いたしまして、善処いたすべき必要がある問題と存じます。
  100. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 第四条ほかに御質疑ございませんか。では第五条に移ります。
  101. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 第五条の第一項に「不当な又は差別的な措置を執つてはならない」と規定しておるのだけれども、差別ということは誰と誰との差別をしてはいかんというのですか。誰との比較をいつておるのですか。
  102. 下田武三

    政府委員下田武三君) これは相手締約国人及び第三国人との両方との比較をいつておるのだろうと思います。
  103. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 つまり内国民待遇及び最恵国待遇ですね。
  104. 下田武三

    政府委員下田武三君) その通りでございます。
  105. 亀田得治

    亀田得治君 第一項の後段に「取得することを不当に妨げてはならない」となつておりますが、これはなんでしようか、必要があれば或る程度の措置はできるという意味でございましようか。
  106. 下田武三

    政府委員下田武三君) 例えば日本の会社がアメリカの会社と技術援助契約を締結して或る技術を導入した、そういう場合にその技術を利用して生産すべき品物の原材料が割当物資であるような場合に、或る原材料の供給を日本の会社に対して制限ないし禁止するというようなことが不当な差別待遇というので、つまり平つたく言いまして常識的に不当なことをするなという理由でございまして、そこを不当だとか不当でないとかいうことの特別な強い意味をここに持つておるわけではございません。
  107. 亀田得治

    亀田得治君 これもそれじや常識的にそのときの事情で判断されるというわけですね。
  108. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) さようでございます。
  109. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことは併し条約を締結されるときに具体的にその都度相当か不相当かということが条約の効力発生後問題になるようでは随分ややこしいと思うのです。従つてこうい正うようなことについては相当具体的な事例を挙げたお話があつたろうと思うのですが、そういうようなことは大して意見を交換されておらないのでしようか。
  110. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 只今私が申上げましたような割当物資であるというような場合には、その割当物資を正当にもらう権利があるのにそれをやらないというふうなのが具体的な例でありまして、つまりここに「妨げてはならない」といい切りに書きますといかなる理窟があつてもできないのかということも生じますので、そこで不当にやつてはいかんということを言いましてその中を広くしてあるということでありまして、更に仰せになりましたような極めて正当化すべき理由がある場合においては無論でき得るのだということでありますけれども、それを不当にやつてはいかん、こういうわけであります。
  111. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今のに関連しますが、さつきこれを不当というのは極く常識的に見て不当、こういう事実的な問題について常識というものがあるものではない。そこで、国内法を基準にして不当という言葉を使つてあるけれども、それにもちろん違反しないでもやはりその精神に基いて行政措置をやつて行かなければならん、こういう趣旨でしよう。ただ単に客観的な基準がなくて、ただ常識的に不当というようなそういうことならばこれは条約の規定に第一ならない。
  112. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 例えば通貨別に割当をやつておるような場合、これは許さなければならないというようなことになつておりますけれども、通貨別割当をやつていて、それで例えばポンドというようなものの間に差別をするというふうなことになりますればこれは不当だと、その基準とすべきものはやはり国内法で一般に許されているものは許すべきだと、こういうことであります。
  113. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では第六条に移ります、一番問題が起りましたのは第七条でありまするからして、第六条はその程度にとどめまして……。
  114. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 ちよつと、第六条の第四項に一番初めの段のところですがね。「いかなる場合にも、内国民待遇及び最恵国待遇よりも不利でない待遇を与えられる」というのは非常に妙なおかしな書き方だが、これはむしろなぜ一体内国民待遇及び最恵国待遇を与えると書かないのか、非常におかしいのですね。(笑声)特別の意味でもあればだけれども、これはあるはずないと思うのだが、特別の意味でもあつたのかどうか。
  115. 下田武三

    政府委員下田武三君) 別に特別意味はございません。
  116. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では第七条。
  117. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 八月二日附の読売新聞に「既得権無制限に拡大日米通商条約に抜け道」というような記事が出ておるのでございますが、御覧になりましたでしようか。私これを見てどういうことなのかよくわからないのですけれども、何か抜け道があるというように書かれているのでございますが、実際に抜け道が本当にあるのでございますか。ここに書かれていること自体私にはわからないのでございますが、これを説明して頂きたいと思います。
  118. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) つまり第七条の第一項におきましては、原則として自由活動にしようということが書いてありまして、第二項で制限業種というものが列挙いたしてございます。その制限業種というものは相当広く書いてございます。但し制限業種にいたしましても現在法規が直ちにあるかと申しまするとまだ殆んどないのであります。つまり将来必要が生じた場合には制限を課することができると、例えば造船業の株を何ぼ以上持つてはいけないという法律は只今のところございません。従いまして、二年後に造船業の株を外国人が持ち得るのは一〇%に限るのだということを規定いたしましたにしても、それは二年後に法律ができました以後にでなければ既得権には遡らないのだというのが七条二項の後段にございます。例えば二年後に一〇%以上は持てないのだとしてもそれまでに持つたら困るじやないかと、それを早くやらなきやだめじやないのかというのがその一つの観点であります。それが一番大きなここに書かれておる理由だと思います。恐らく一番大きな理由はそれでありますが、これは只今でも御承知のように、条約の効力が発効いたしまして三年間は旧株の取得は制限し得るということになつておりますので、旧株を取得するということは三年間できません。それから必要あればそれまでに法律的構成を整えることができるということになつております。それから新株の取得に関しましては、新株の大体割当というものがきまつておりまして、市場に出される分というものは極めて少いものだということでありますし、それから現在持たれている株式がどういうことになつておるかということは先だつて来しばしばお話申上げましたように、制限業種に関する限りの株の取得というものは極めて少いもので、従いまして、理窟上はそういうことが行われうるように見えまするけれども、実際上そういうことが起りうるというのは極めてポシビリテイが少いのでありまして、理窟上とそれから実際上とではそこに非常に大きな差異があるというふうに考えて差支えないものと考えております。
  119. 亀田得治

    亀田得治君 これは今までに随分御論議になつた場所だということですから大変質問が重複するようになつていかがかと思いますが。
  120. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 重要な事項ですからどうぞ。
  121. 亀田得治

    亀田得治君 これで行きますと既存の事業はともかくそのままやれる、こういうことですね、アメリカ人の既存の事業はそのまま続けて。恐らくお示しがあつたと思いますが、日本の国内におけるアメリカ人の既存業務というのは制限事業についてどの程度になつておるのでしようか。
  122. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 既存権を認めるという七条二項後段の規定は、この制限業種についてのみの規定であります。それで制限業種につきまして今どういうものがあるかと申しますと、これは当委員会でももうしばしばお話申上げたのでありますけれどもアメリカの銀行がございます。只今ありますところはナシヨナル・シテイ・バンク・オブ・ニユーヨーク、チエース・ナシヨナル、バンク・オブ・アメリカこの三つがあります。これらが銀行業務のうち預金業務と信託業務は制限をなし得る業務だということが第七条の第二項に書いてありますけれども、この銀行業務中の預金業務、信託業務を行なつておるものが只今申上げましたように三つあるのであります。それが既得権を日本側において尊重する一番大きな、まあ唯一と申上げてもいいくらいなものであります。そのほかに一体何があるかというので、この条文を残します上において差支えがあつては困るというのでしらみつぶしに調べたのでありますけれども、そのほかの問題といたしましては株式を少しばかり持つておるやはり制限業種、例えば鉱業、運輸、公共事業、造船、銀行、水産というようなものに関しまして全部で約二百万株、約三億円に上る株式を持つておりますが、この銀行とそれから制限業種に属するものの株式の保有、これだけが例外でありまして、そのほかには只今のところ何にもございません。
  123. 亀田得治

    亀田得治君 その既得権を持つておる銀行なんかはこの第七条の第一項の「直接であると、代理人によつてであると、又は何らかの形態の適法な団体を通じてであるとを問わず」というのが当然ここにそういう既得権を持つておる業者に適用されて来ると思うのですが、この二つが一緒になりますと、この三つの銀行を適当にうまく運用して行けばアメリカの金融資本というものがどれだけでも日本の中に入つて来れるというふうに私なると思うのですが、そうなりますると結局この既存の三つの銀行だけに限つているのだということが実質上は骨抜きになつてしまうように感ずるのですが、それはどうでしようか。
  124. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) そうではございません。と申しますのは、既得権というものを尊重するというものは、もうすでに今あるやつでなければならない。従いまして只今申上げました三つだけがやり得るのでありまして、そのほかに新らしいものを作ろうとか、その新らしいものが、直接であると或いは代理人によつてであると或いは云々というようなことでありましても、これらは制限し得る業種に、或いは制限し得る事例に属するのでありまして、従いましてそれが無限に拡大されて日本の金融を撹乱するというふうなことはあり得ないのであります。
  125. 亀田得治

    亀田得治君 併し第二項にはそういうふうに明確には書かれておらないと思います。一項は原則ですから、一項においては事業体は直接自分の名前で活動してもいいし、代理人又はいろいろなどんな団体を通じてもいい、ここに書いてあるようないろいろな活動ができる、こうなつておる。そうして第二項では成るほど初めに制限規定がありますが、これは業務の種類の制限に過ぎない。従つてこの種類から除かれたものは結局第一項の活動ができるという解釈になるのです。だから今加藤さんが言われたような心配が現実に私はあろうと思うのですが、この条約交渉の際に現実にそれじや銀行の場合は三つの銀行だけである。そしてこれが現在持つている支店をふやさないとかそういつたような、何といいますか内輪の取極というものはなされておるのでしようか。
  126. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これは本条は最も多く議論になり最も長時間を費しました条文でございます。従いましてその交渉過程から申しましても無論三つに限るということはこれはもう何ら疑う余地のないところでございますし、又ここに書いてあるこの条文からも、それは無論そういうふうに書いてあるのです。つまり第一項は原則であります。それから第二項は制限業種というものが書いてあります。従つて銀行業務のうち預金業務或いは信託業務というものを行うことは制限し得るのであります。ところが今挙げました三つの銀行というものはそれを現にやつておる。従つてそれだけを認めてやろう、新らしいものがやつて参りましてそして支店なり或いは代理店というものを作ろうという場合には、それを許可するか許可しないかということはこれは挙げて日本政府の自由でありまして、それを好ましからずと認めた場合にはこれを制限し得ることはここに書いてあります条文の通りでありまして、何らそれを妨げることはここに規定してないのであります。
  127. 亀田得治

    亀田得治君 その点はそういうふうに御説明になるけれども、やはりこれは見解の相違になつてこじれる部分じやないかと思うのです。その点は少しあとにしまして、第一項の事業主体、これは今までは全部締約国の国民及び会社、こういうふうな表現だけでずつとやつて来ておる。ところが重要な第七条に来て何故「直接であると、代理人によつてであると、又は何らかの形態の適法な団体を通じてであると、問わず」このような何か主体をぼやかしたような書き方をする必要があつたのか、この点から御説明願います。
  128. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) このことは今までの条文は例えば身体を拘束された場合にはというふうなことが書いてありまして、自然人の場合が非常に多いのであります。ところが第七条に参りますとこれは事業活動の問題であります。従いましてその事業活動を行います場合はその直接の御本人がやる場合、それから会社の形態でやる場合、或いは直接やらずに代理人を通じてやる場合ということがこれが一番多い場合でありますので、事業活動に関しましてはこういうことを書く必要があるということから、そういうことにしておるわけであります。
  129. 亀田得治

    亀田得治君 今までの場合でも単にそういう人格に関することだけじやなしに、事業活動に関連するような意味のところもありました。併しまあそれは主として事業活動じやないのであるということなら一応理解しておきますが、何らかの形態の適法な団体を通じてというような場合は事業主体と別箇に何か団体ができておるわけですね。そうしたら、その団体自身が事業主体ということになつておれば、それでも対象がはつきりするのと違いますか。実際に活動しておる団体以外に更にそれを操つておる何らかの資本主と、いいますか、そういうのが予想されておるようですが、それはアメリカの内部の問題であつて日本としてはこれは単にそれも事業の主体の一つとして解釈しておればいいんじやないですか。
  130. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 何らかの形態の適法な団体を通じてやるという場合には、その団体そのものがなんと申しますか論議の対象になるということはお説の通りであります。
  131. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、その場合の事業主体は、この事業主体を通じて活動しておる背後におる人じやなく、表面に出ておる団体の意味ですか。この文章はそういうふうに読めないと思いますが、そういう団体に対しまして事業正体そのものは背後の国民又は会社、こういうようにも読めるのですが、どうでしようか。
  132. 下田武三

    政府委員下田武三君) これは適法な団体を通じてと書いてございますので、団体を通じてというのは、一つのう事業活動のやる形態でありまして、この条約目的とするのは表面どういう形態をとつておろうとその実体アメリカ人であればそれを抑える、そういうところを狙つておるわけであります。
  133. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、この事業の主体、それから何か問題があつた場合の我々の取扱の対象というものは、初めのほうに書いてあるこの「締約国の国民及び会社」これだけでいいわけですね。
  134. 下田武三

    政府委員下田武三君) それだけでいいわけでありますが、アメリカの自動車会社がそれぞれの支店を日本に設けないで、自動車会社が共同して一つのコオポレーシヨンみたいなものを日本で作るというような場合も予想されますので、要するにどういう形で事業活動を行おうと、この規定の狙うところはその背後にあるアメリカ国民又は会社、それを抑えるのだというのが趣旨でございます。
  135. 亀田得治

    亀田得治君 わかりました。あの代理店による活動といいますか、これはもう少し具体的に言いますとどういうことを予想されておるでしようか。いろいろな形態が考えられると思いますが。
  136. 下田武三

    政府委員下田武三君) これはアメリカ石油会社が日本石油会社と代理契約を結んで、日本では表面上日本石油会社の仕事のようになつておるが、仕事の実体は代理契約に基いてアメリカにある、アメリカ石油会社が行なつておるのだというような場合を指すのだろうと思います。
  137. 亀田得治

    亀田得治君 それから今おつしやつたような場合もあるでしようが、アメリカ人資本だけを日本に持つて来て、そうして別な日本人にいろいろ仕事をやらしておる、そういつたようなことなんかも予想されておるのでしようか、
  138. 下田武三

    政府委員下田武三君) その場合もこの規定の対象になるわけであります。
  139. 亀田得治

    亀田得治君 それから次の何らかの形態の適法な団体、さつきあなた一つの例をおつしやつたのですが、もう少し具体的な例を予想されるものをお聞きしたい。
  140. 下田武三

    政府委員下田武三君) ちよつと例といいますと頭に浮ばないのでございますが、要するに日本の法令で許されておる団体であればどういう形でもいいわけであります。
  141. 亀田得治

    亀田得治君 それが法人であつても法人でなくてもいいわけですか。
  142. 下田武三

    政府委員下田武三君) 法人であつても法人でなくてもよろしうございます。
  143. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、この第一項の原則の解釈は、アメリカ人日本における活動というものが随分自由なあらゆる形態でなし得ると思うのです。それでどうしても第二項との関係を私了解できないのですが、第二項は活動の方法を制限しているわけじやない、業種に対する制限ですよ、この仕方は。従つて現在ある例えば三つの銀行、これは活動の形態としては、今おつしやつたような第一項のいろいろな形での活動というものは私これが結ばれればこれを禁ずる理由はないと思うのです。と思うのですが、先ほどからその点をあなたは否定なさるようですがどうしてですか。
  144. 下田武三

    政府委員下田武三君) この一項でこういう事業活動を行う形態について融通無擬な規定を置きましたが、これはそのまま二項にもかかつて来るわけであります。でございまするから制限業種を実際はアメリカ人がやつておきながら、その融通無擬であるのを利用いたしまして、日本人がやつておるような形をとつて制限業種をやろうとするときにも、第一項の規定の仕方がそのままかかつて参りまするから、ちよつと待て、お前は実体アメリカ人じやないかと言つてひつかけることができるわけであります。
  145. 亀田得治

    亀田得治君 いや私の言うのは、制限業種であるが既得権だということで活動ができる三つの銀行がこの第一項のあらゆる活動を実際にやるのですよ。実際にやつたら何でもできるじやないですか。そうしてその三つの銀行が新たに支店もどんどん設けられるし、それから三つの銀行がアメリカの国内でどれだけの資本を調達して来ようとこんなことは自由なんですから、その三つの銀行さえ通ずれば何でもできるということに私なると思うのですが。
  146. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) そうではございません。それは第七条第二項をお読み下さるとおわかりでありますけれども、ここには制限業種というものを挙げまして例えば「航空運送、水上運送、銀行業務若しくは土地その他の天然資源の開発を行う企業を設立し、当該企業における利益を取得し」云々というものを制限できるということに書いてございまして、それらの制限業種に入るものであるならばそれを制限し得るということが書いてあります。従いまして例えば新しくチエース・ナシヨナルが神戸に支店を持つという場合には、それはいけないということが言い得るわけなのであります。それから本店のほうから金をどんどん送つて来てということになりますれば、もつと先に十二条の第二項に制限し得るということが書いてございますので、それもちやんと縛つてあるということでございます。
  147. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、既得のそういう会社に対してでも活動の限度をきめるのだ、こういう考え方ですね。
  148. 下田武三

    政府委員下田武三君) 第一項の主眼は、相手国人であれば相手国の会社が事業活動をなすことについて内国民待遇を与えられるということが規定の主眼なんでありますて、只今の御質問の点は米国三銀行が自由活動を認められておる、而も将来それを制限した場合になお且つ既得権としてその活動を認められておる。そうすると、たつた三つの会社でもその銀行を通じてアメリカ資本がどんどん導入されてきてそれで日本でいろいろな仕事を又始めやしないかという問題だろうと思いますが、この外資の導入につきましては又別の所で規定しておりまして、その導入した外資に対する利潤の送金を欲するならばそれは制限する。よろしい日本へつぎこんだが永久に日本に残しますというのですと、外資導入法の建前からチエツクする必要はないのですが、若しもうけたらアメリカ国に持つて帰りますぞ、それは待てと言つてチエツクできる。併し外資導入の方のチエツクの規定にひつかかりますから、例えば三銀行を認めましても、のべつにそれを通じて外貨がどんどん入つて来て、それで日本事業活動を擾乱するとか或いは抑制するという懸念は別の規定で差押えられることになります。
  149. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことならわかるのですが、そういたしますと、第七条そのものとしては私どもの心配のような事態が起り得る可能性があると思うのです。で、別にそう外資導入法によつて制限できる、こう言つているのですが、外資導入法にかからないような金のつぎこみ方であれば、結局何らの制限がないということになるわけですね。
  150. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 仰せになりました点が二点ございまして、一点は現にある銀行を通ずるならば、それが代理店だとか、或いは適法に設立されたところの団体だとか、こういうものをダミーを使つて、そうして向うでも銀行みたいなものを使つて制限業種のことをやり得るのじやないかとおつしやいましたがそれはそうは参りません。というのは、七条の第二項にそういう活動制限したり何かすることができるのだということを書いてありますからそれはできません。それから金をどんどん注ぎ込むことによつ日本が危いかということを第二点としておつしやいましたので、その第二点のほうは十二条の第二項、議定書の第六項ということによつてそちらもチエツクできるということを申上げたのでありまして、第二点のほうは安心だけれども第一点のほうは心配じやないかとおつしやいましたが、第一点のほうも御心配はないということを申上げたのであります。
  151. 亀田得治

    亀田得治君 あなたがそういう例えば三銀行のいろいろな無限の活動に対して制限できるとおつしやるのは、第二項の四行目の「限度を定める権利を留保する。」これのことですか。
  152. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) さようでございます。
  153. 亀田得治

    亀田得治君 これですが、但書以下によつて結局除外されておるのじやないですか。
  154. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 除外されておりますのは只今申上げた三つの銀行であります。この銀行三つだけはこれは認めてやるのだということはここできめてある。従いましてその銀行が新たに又新らしいものを使つて、同様な預金業務とか信託業務とかいうものをやろうとする場合にはそれは制限し得る、そういう関係になるのです。
  155. 亀田得治

    亀田得治君 それはわかるのですが、その銀行の名前でやると称して、事実又銀行の名前でずつと支店を置いたりいろいろしておるのです。それは取締れぬのじやないですかというのです。日本としては裏の内容がわからんでしよう。そういう場合に仕方がない、先ほどおつしやつた外資導入法の関係からの制約がつかないのかどうか。
  156. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これは只今申上げました三つの銀行、これの支店が東京にございます。そのほかには今ありません。従いまして新らしく例えばほかの支店を大阪に作ろうという場合には、それは日本制限し得るものに入りますのでそれは制限し得るということになつておるのであります。
  157. 亀田得治

    亀田得治君 制限から除外したでしよう。但書によつて制限から除外すれば第一項の原則に戻つて来るのですよ。私突然に外務委員になりましたので十分こちらも研究しておらんのですが。
  158. 森治樹

    説明員(森治樹君) 只今黄田局長から申されましたことを附言いたして申上げますと、只今御質問の点は、アメリカの銀行が現在日本で例えば日本の会社を使つて制限業種を行う場合と、然らずして第七条一項に掲げてあります制限されていない業種を行う場合、この二つが含まれておると思います。でアメリカの銀行が日本制限業種を新たに一つのダミーを使いまして行おうとする場合には、第七条第二項によつて制限し得るわけであります。従いましてアメリカの銀行が現在有していない支店を新たに設置しようとする場合には、どういう形態をとりましてもそれを防止し得るわけであります。併しながらアメリカの銀行が一つのダミーを使いまして、第一項に掲げてあります業種即ち制限し得ない原則として外国人の企業活動を認める事業を営む場合には、これは新たな企業の進出でございますけれども条約上これを禁止しない建前になつておりますので、第七条のみから申上げますればその銀行は第七条第一項の業種を行い得るということになるのでございます。従いましてこれを禁止しまするためには、只今局長が申されましたようにほかの条文によるほかはないのでございます。
  159. 亀田得治

    亀田得治君 私もそういう解釈が大体正しいだろうと思うのですが、外資導入法による抑え方はちよつともう一遍要点だけおつしやつてくれませんか、さつきあなたおつしやつたような。
  160. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これは第十二条に規定してあるのでありますけれども、大体為替の制限というものは行わない、原則として自由にするのだという理想主義的なことを書いてあります。併し第二項に行きまして各国は一定の目的のために為替制限をなし得るということを規定いたしまして、それでそれを更に議定書の第六項に至りまして、外資が入つて参ります場合は審査することができる、つまり日本経済の健全なる発達に資さないようなものは審査して断ることができるということが規定してございます。それによりまして都合悪い日本で困るというようなものは、審査の結果断るということができることになつておるのであります。
  161. 亀田得治

    亀田得治君 この第一項ど第二項の関係と、外資導入法等の関連も考えまして、明日適当な時間にもう一度質疑させてもらいたいと思います。そうして同じく第二項の中の終の「その会社が行うことを許される本質的に国際的な業務に必要な機能を営むための支店及び代理店を維持する権利を否認してはならない」と書いてあるのですが、「本質的に国際的な業務に必要な機能」とは具体的にどのようなことでしようか。
  162. 下田武三

    政府委員下田武三君) これは専ら対外的の業務、つまりシツピングでございますとか、対外通信をやる通信会社、外国の為替の業務をやる為替銀行、そういうようなものでございます。
  163. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止
  164. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記を付けて下さい。
  165. 亀田得治

    亀田得治君 先ほどの国際的な業務に必要な機能、これはシツピングとか通信とか為替業務とかこういうふうにおつしやつたのですが、事業の種類によつてはこれはもつともつと広く解釈できる余地があるのと違いますか。
  166. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これはここに書いてございますように運送事業、通信事業又は銀行業を営む会社に対してということがございまして、それらのものに限りというわけでございます。
  167. 亀田得治

    亀田得治君 併しこういう事業は随分国際的ですから、従つてこの字句の解釈いかんによつては全然制限されないのと一緒になりませんか。もう少し内容を具体的にこれこれこれなんだ、通信事業についてはこうだ、銀行についてはこう、運送事業についてはこれだけのことをいうんだということがきまつていなければ、アメリカ側のほうはいやこれだけはどうしても心要なんだというふうに言つて、やはり問題がこじれるのと違いますか。
  168. 下田武三

    政府委員下田武三君) 御指摘の二項の末段の趣旨は、二項の一番初めで航空運送、水上運送等を制限業種に指定して、これを制限することができるように規定しております。そこでアメリカの航空会社が東京、大阪、或いは東京、福岡間の国内航空事業をやろうとする場合にこれはいかんということが言えます。併しパン・アメリカンその他国際航空業務に従事しておりますから、支店だけは是非日本に設けさせてくれという要求があつた場合に支店もいかんのだ、航空事業制限業種にしたら支店もいかんというようなことは余りに無理だ、そこで支店か或いは代理店を維持することだけは否認しない、そういう趣旨の但書でございます。  そこで範囲はここに書いてありますように、運送、通信、銀行とここに限られておりまするから、この三つのものも相当広範な活動は行いますでしようが、なお且つこの三つ以外のものについては支店の設置も許さないことができるわけであります。
  169. 亀田得治

    亀田得治君 併しこれは条約交渉の過程においてそういう具体的な内容について、双方の考え方は議事録とかそういうものによつてとどめられておるのでしようか。
  170. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これは只今条約局長から申上げました通りの理由で、一これらの三つの業務に対しては只今申上げました理由で支店と代理店を置かせようというだけのことでございまして、従いましてそれ以上のことは何にもございません。
  171. 亀田得治

    亀田得治君 支店と代理店はここに書いてあるからいいのです。その支店と代理店を置くのは「国際的な業務に必要な機能」ということで制限があるわけですね。この制限というものは実際上はもう何らアメリカの会社にとつては痛痒を感じないのじやないか、こういうことを言つておるわけなんです。国際的な業務に必要であればもう当然置ける、そういうことになるわけですね。併し私の意見ですが、例えば世界的にずつと航空事業をやつておるそういう会社は、どこの国にでも当然支店は置けるのですか、そういう慣習になつておるのですか。
  172. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 大体通信事業或いは航空事業というふうなものを営んでおります場合には、支店とか或いは代理店とかというものを置くのは慣習でございます。従いましてここにも書いてございます通りに、国際的な事務である、従つてその国際的な業務の必要な機能を行うための支店或いは代理店というものを維持することは認めよう、こういうわけでございます。
  173. 中田吉雄

    中田吉雄君 これは私が明日お願いしています日本に入つて来ておる資本がどうキヤツチしておるかということと関連して、こういうふうな広範な維持を許すことがいいかどうか、更に制限業種はこのくらいでいいかどうかということになるわけですが、戦前アメリカと結んでいました通商航海条約ですか、あれはどうなんですか、これは私非常に今度は日本資本が不足しておるという意味で、資本の導入を歓迎されるというような意味で、こういう措置をとられながら重要産業だけは防衛する、こういうふうな態度をとられたと思うのですが、古いものはどうなんですか。
  174. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 古い条約におきましては、事業活動に関しましては内国民待遇を与えられる業種といたしまして、業種の列挙をいたしております。それから支店等の設置というふうなことを書き且つ役員の雇用とかいうふうなことを書いてございますけれども、新らしい条約におけるがごとく制限業種とか或いは既得権だとかいうふうなことは何にも触れておりません。
  175. 中田吉雄

    中田吉雄君 その点が非常に或る限定されたもの以外は全部許せということになつて、この点を私あちこち財界等の人のこの条約ができたときのを見ますと、相当危惧の念を持つておる向きも多いんですがね。例えば吉田総理の相当な相談役である日本化薬の原さんとか、或いは東京銀行の誰とかまあたくさんあるんです。ですからこれは私は明日いろいろ通産省の御説明を受けてそれから御質問しようと思うんですが、この銀行のことについて、日本アメリカにあるそういう為替なんかの関係はどうなんですか。
  176. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 日本の銀行にしてアメリカ行つてつている銀行のことだと了解いたしますが、為替業務以外に預金業務或いはここに制限業種になつておりますところの信託業務というものを行なつておりますものは、サンフランシスコ、ロサンゼルスに加州東京銀行、加州住友銀行というのを作りましてこれをやつております。これは但し日本の法人としてではなしに現地の法人としてやつております。と言いますのは、ニユーヨーク及びカリフオルニアにおきましては州法によつて外国の銀行がこれらの両州で業務に従事することを禁止しておりますが、然るにもかかわらず現地の法人となつてやるということは禁じておりませんので、東京銀行及び住友銀行はカリフオルニアの州法に基きまして加州東京銀行、加州住友銀行というものを設立いたしまして、サンフランシスコとロサンゼルスであらゆる銀行業務というものを行なつております。その他為替業務を行なつておりますものといたしましては、住友銀行ニユーヨーク、千代田銀行ニユーヨーク、三和銀行サンフランシスコ、東京銀行ニユーヨーク、第一銀行のシカゴというものがございます。
  177. 亀田得治

    亀田得治君 それからこの制限業種に対してこれは絶対的な制限権じやないと思うのですね。この書き方は限度をきめる権利を留保する、こういうことなんですから原則はやはり飽くまでも自由と、こういう見解でしようか。
  178. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) この限度をきめると申しますのは、一〇%にするのもよろしい、或いは六〇%まで認めてやろうというのもよろしい、或いは零にするのもよろしい、つまり絶対的に参加せしめないということをすることも自由であります。
  179. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことは併しはつきりしていなんじやないんですか。活動の限度をきめるんですよ。全然禁止又は限度とこういうふうに書いてあるのであればいいのですが、これでは私できないと思うのですが。
  180. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 限度は零だということも自由であります。
  181. 亀田得治

    亀田得治君 それはまあ数学者の言うようなことなんですがね。そういうことは普通の常識の言葉では限度をきめるんであります。やはりあの営業の自由ということが原則になつておるんですから、あなたのような解釈なら私誠に日本経済にとつては適切だと思うんですけれども、私どものほうで一方的に解釈しておつたつてそんな主観的な一方的なものではだめですから、アメリカのほうもそう言つておりますか。
  182. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これは何も問題はございませんで、例えば零はいけないんだと申しますると一%はいかんというようなことを書かなければなりませんけれども、そういうことはないんであります。それは限度をきめる自由と申しますのは、これは零、参加を全部拒絶するんだということもこれも全く自由に任されておるのであります。
  183. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 関連して。その書き方は普通の法文の書き方としてはならんから、この間質問したのです。それに対する答弁としては、ただこつちだけの解釈ということじや答弁にならんので、この間私の聞いたときは、その点が交渉の過程において問題になつて、この交渉の過程において全然の禁止も含まれているのだという説明つたから一態了承した。併しこの書き方は僕はそういう趣旨ならそういうふうに書くのが当り前で、これは書き方としては私はまずいと思うけれども、併し交渉の過程において向うの了解でそういうことだつたからというから一応了解した。ただこの書き方をすればこれは零も含みます。そんな乱暴なことはないですよ。
  184. 亀田得治

    亀田得治君 本当に今関連質問でおつしやつたようなことだと思うのですがね。アメリカのほうはそんなことを了解しますか、限度は限度ですよ。
  185. 下田武三

    政府委員下田武三君) その点は交渉の際にお互いの意見の不一致はなくはつきり了解がついておるのであります。つまり全面的に禁止することも、この限度を定める権利の中に入つておるという点については意見がはつきり一致しております。  なお念のため申上げますが、この二項の趣旨は、つまり外国人であるがために参加する限度を定める特別立法をする権利を留保しておるわけであります。特別立法がない場合はどうかというと、これは公益事業というのは日本人でも許可事業であります。銀行を始めると言つても銀行は大蔵省が許可しなければ銀行設立はできないのであります。それで大蔵省が日本人ですら適当でないと思う場合には許可しないのであります。併しそれは何も外国人を目あてとしての特別立法ではないわけであつて日本国内でおよそ銀行業務をやり或いは航空事業をやろうと思えば、それぞれ大蔵大臣なり運輸大臣の許可が要るわけであります。ただその場合に外国人であるが故をもつて限度を定めようという特別立法をしてもよいということであつて、その前の段階で外国人であろうと日本人であろうと、お前は不適当だから許可しないのだということをするのは、これは完全に自由なのであります。つまり第一項では内国民待遇を与えるというのはそのことを言つておるわけであります。
  186. 中田吉雄

    中田吉雄君 この銀行業務に関してですが、この条約とは別に日本が今持つている手持外貨が、五月三十一日で私の調査では九億九千六百万ドル、十億ドルぐらいあるのですがね。殆んどその外国銀行だけにその九割を殆んど無利子にひとしいもので預けておるのです。これは私大きな、日本の金に直すと二千五百億ぐらいになるのですがね、手持外貨を、アメリカが殆んど主なんですが、それを定期にしても一%ぐらい預けておつて、それは現在預金業務というものをやれないという形になつてそうなつておるのでしようか。その関係を一遍大蔵省に尋ねてみようと思つてつたのですが、それはどうなんでしようか。
  187. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これは日本の銀行が外国為替の預金ができないということとはこれは関係ございませんで、一番安全な道はアメリカのフエデラル・リザーヴ・バンクに預けるというのが、これが一番安全な道であるけれども、それをやるよりももう少しいい方法があるからというので、フエデラル・リザーヴ・ボードにやるのは一部にいたしまして、たしかほかの銀行、市中銀行のほうにもやつておると思いますが、これはむしろ私から申上げませんで、大蔵省のほうからあれしたほうがいいのじやないかと思います。
  188. 中田吉雄

    中田吉雄君 そうしますと、私の予算委員会でもらつた資料では、先に申しましたように、九億九千六百万ドルあつて外国銀行にその八割九分、七億六千六百万ドル預けておるのです。そうして殆んどただです。そういうことは、日本の銀行が海外に支店を持つてつて、そういうことはできないという規定のためではないのですか、そのことだけを承わつておきます。
  189. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) そうではございません。
  190. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今の第二項の末段のところですね、さつき問題になつた「本質的に国際的な業務に必要な機能を営むための支店及び代理店を維持する」というのですが、その上に「その会社が行うことを許される」とこうあるのですが許されるというのは何によつて許されるというのか、とにかく許されたものじやないと言われるのだが、何によつて許されたのか。
  191. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 例えば航空協定を作つて日本で国際航空をアメリカの会社に許すということになつた場合、その国際的な業務に必要な機能ということでございます。
  192. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 つまりそうすると今の御説明は、たとえで言われたのですけれども、もつと本質的にいうと、条約上許されたという要件を備えておらんといけない、そういう趣旨かね。
  193. 下田武三

    政府委員下田武三君) 条約上並びに国内法上だと思います。
  194. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それじやその国内法というのはどつちの国内法ですか。
  195. 下田武三

    政府委員下田武三君) これは日本で支店の設置が問題になる場合は、日本の国内法を意味するものだと思います。
  196. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 これじやその趣旨が一つもわからないのだが、つまり会社が行うことを許される本質的に国際的な業務というのか、或いはその会社の本国法によつて会社の業務としてそういうことが本質上許されておるという意味なのか、或いはこつちでも更に許されていなければならないのか、或いは更にプラス条約上許されておらなければならないのか、それが一つわからない。  それじや、今の説明じや、結局総合してもう全部その要件を備えておらんければならんということになるのかね。
  197. 下田武三

    政府委員下田武三君) 条約でも許されず、或いは国内法でも許されず、又いずれか一方で許されないという場合には、支店を設置することはできない、こういう結果になると思います。
  198. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 ちよと私の質問の正面から答えていないのだが、第一、先ず問題はこの許されるというのが条約上許されておる要件を必要とするか、本条約の他の規定ないし全然別個の条約の規定によつて許されておるという要件が、必要であるかないかが大事な問題である。これはそれを必要とするか、それを明確に認めておかんといかんという解釈です。
  199. 下田武三

    政府委員下田武三君) 国際的業務でありまするから、通商条約一般的規定以外に政務次官が言われましたように、航空協定でトラフイツク・ランデイング等をやる、そういう業務をやる必要上、支店を設置するのでありまするから、この条約だけでなくて、ほかの協定でも許されておるということが必要であろうと思います。
  200. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ではお約束の時間も過ぎましたので、第七条を大体この程度にとめまして、明日は又亀田委員からの御質疑があると思います。それから又明日は通産省関係局長が午前中は来られないぞうでありまするけれども、課長でよろしいということであるならば明日午前中来てもらいましよう。午後外務大臣をお呼びする。こういうことで明日質疑続行ということにお願いいたします。  それでは本日は委員会を散会いたします。    午後五時六分散会