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1953-07-31 第16回国会 参議院 外務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月三十一日(金曜日)    午前十一時五十六分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     佐藤 尚武君    理事            徳川 頼貞君            佐多 忠隆君            加藤シヅエ君    委員            石原幹市郎君            小滝  彬君            高良 とみ君            中田 吉雄君            羽生 三七君            杉原 荒太君   政府委員    外務政務次官  小滝  彬君    外務省経済局長 黄田多喜夫君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       神田襄太郎君   説明員    法務省民事局参    事官      平賀 健太君    外務省経済局参    事官      森  治樹君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○日本国アメリカ合衆国との間の友  好通商航海条約批准について承認  を求めるの件(内閣提出、衆議院送  付)   —————————————
  2. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 只今から外務委員会を開きます。  本日の議題は、日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海条約批准について承認を求めるの件であります。質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 杉原荒太

    杉原荒太君 この間私が質問しておいたのに対して一つ先に答弁して頂きたいのです。あの仲裁判断についての執行判決の問題です。
  4. 下田武三

    政府委員下田武三君) この前私差支えがございまして出られないときに御質問がありましたそうでございますが、御質問ポイントは第四条の第二項の中頃の規定「その契約従つて正当にされた判断で、判断がされた地の法令に基いて確定しており、且つ、執行することができるものは、公の秩序及び善良風俗に反しない限り、いずれの一方の締約国管轄裁判所に提起される執行判決を求める訴に関しても既に確定しているものとみなされ、且つ、その判断についてその裁判所から執行判決言渡を受けることができる。」という規定がございまするが、ここに掲げてあります、外国で行われました仲裁判断効力が認められるための要件が、これだけでいいのかという点に質問ポイントがおありだつたというように伺つてつたのでございますが、その点でございますか。
  5. 杉原荒太

    杉原荒太君 もう少し正確に言うと、つまり執行判決要件がこれで充足しているか、これだけでそういうことを定める趣旨規定かどうかという点です。これだつたら少くともこの文字の上からすれば、そういうふうにまあ一応読めますがね。それだから、執行判決を求めますね、そのときに一定の要件を備えていなくちやならんですね。その要件がここに掲げていただけの要件を備えておれば、日本裁判所ではすべて執行判決を与えるについての必要な要件が全部これで充たされているんだと、こういうふうに取らなくちやならんかどうかという問題です。
  6. 下田武三

    政府委員下田武三君) この点につきましては法務省とよく協議いたしまして、大体ここに掲げた要件で差支えないということに見解は統一されておるのでございまするが、日本民事訴訟法では、外国仲裁判断に関する規定はございませんので、結局民事訴訟法規定を準用するという考え方が先ず第一にあるわけでございますが、そうしますと、ここには判断がされた他の法令に基いて確定していることと、それから執行することができることと、而もその判断が公の秩序及び善良風俗に反しないこと、ということが要件になつておりまするが、この判断形容句としての正当にされた判断ということも一つ要件になると思うのでありますが、国内法との関係につきまして問題となりまするのは、日本民訴にも仲裁手続の第八百条で、「仲裁判断ハ当事者間二於テ確定シタル裁判所判決ト同一効カヲ有ス」という規定がございます。そこで判断判決同一効力を有するということになりますので、結局これは外国裁判所判決日本でどういうように見るかという問題に帰着するわけでありまするが、そこで、はね返りまして民事訟訴法の第二百条の外国判決承認の問題と同じと考えてよろしいことになると思うのであります。そうしますと、民訴の二百条には四つ外国判決承認されるための要件を掲げております。第一は「法令ハ条約於テ外国裁判所裁判権否認セサルコト」、これは今回の場合問題は何らございません。第三には「外国裁判所判決ヵ日本ニ於ケル公秩序又ハ善良風俗ニセサルコト」、これはこの条約でも明言しております。四は「相互保証アルコト」、これもこの条約の目的がいわゆる相互保証にあるのでございますから問題はないと存じます。  そこでただ一つ問題になるのは、第二百条の第二号の「敗訴ノ被告ヵ日本人ナル場合二於テ公示送達ニ依ラスシテ訴訟ノ開始二必要ナル呼出ハ命令送達受ケタルコト又ハ」命令送達を受けてはいないが「応訴シタルコト」という要件がございます。そこで法務省と御相談しまして一致しました見解は、この二つの場合、二号の要件が満足されてない場合には、これはデユーリー・レンダード、正当にレンダーされた判断でないと考えよう、そういう解釈によりまして、結局ここに掲げてある要件だけでいいんだという解釈になつておるのでございます。
  7. 杉原荒太

    杉原荒太君 もつと具体的にこの問題点をとらえると、つまり外国仲裁判断について、それの効力だとか或いは更に執行力の問題、そして執行力を与えるために日本執行判決を取らなきやならん問題、そういうことについて民訴に特別の規定がない、それで仲裁判断に対する現在の民事訴訟法規定を準用する。そこまではわかります、それよりほかないでしよう。それだから私は、併し準用すると言うても、そこははつきりしないから、なおこの間の仲裁判断条約をやるときも、もつ日本国内法ちやんと整備することが必要じやないか、少くともそのほうが先決的にやらなきやならんことじやないかということを申上げておいたんだが、その問題はそれとして、ここで準用して行く場合、この執行判決を受けるための要件として、いろいろ日本民訴規定してあるその中に、この仲裁判断そのものがこの取消を得べき事由というものがあつた場合には、執行判決を受けられないという規定がありますね。そうしてその事由というものを列挙してある。そういう民訴に掲げてある要件は、ここに書いてあること以外に、それのプラスとして私は必要なことだろうと思うのだ、実は。それだからここに書いてあるだけで、そういうことは考慮しないでいいんだ、要件の中に入らなくともいいというわけにはいかんだろうと私は実は思つている。そしてさつき確かにそれは一つのとらまえ所の解釈にせられるんじやないかと思えた点は、正当になされた判断という所にそういうようなものを含まれるというふうな解釈じやないかと思うけれども、ここに書いてあるのは、その正当か否かの決する基準は、契約従つてとこうあるので、契約の条項というものに従つておるかどうかということが正当なる基準になつて来るものだと私は解釈する。そうして普通の我々の法律常識からしても、これは当然にここに書いてあることプラス国内法の他の要件というものを備えておらなきやいかんことだと思う。そうでないと実際問題は動かんと思う。それだからここにあるだけでいいんだというと、ほかの国内法に書いてある要件は除外してしまうのだ、そこは充足しなくてもいいということになつてしまう。ところがそれがどつちかということは、実際問題の解決について当事者が争う場合には問題になる点なんです。これは仲裁判断についての場合は知らんけれども、外国関係執行判決を求める場合のケースは今まで非常に少いけれども、曽て例の相互保証要件、而もそれが条約保証されている要件というのが備わつておらなければいけないということで、その要件を欠くの故を以て、アメリカの、上海だつたかどこかでやつた外国関係執行判決が、要件を備えていないということで処理されたことがある。これは非常に重要な問題なんです。それだから、私の見るところでは、ここに掲げてある要件は非常に妥当なことが書いてあるんですよ。併しこれだけで十分の要件じやなくて、これプラスそれぞれの国内法に要求している要件というものは、やはり充足しなくちやいかんのだと私は思う。それだからここの書き方としても、そういう意味のことがちよつと加わつておらなきや私はこれは不備な規定だと思う。
  8. 下田武三

    政府委員下田武三君) 御尤もな御意見だとは存じます。私余りこの方面のことは詳しくございませんので、若し間違えたことを言いましたら、法務省平賀参事官がお見えになつておりますので補足をお願いすることといたしまして、一応私の考え方を申しますと、おつしやいます通り仲裁判断確定するという基準を、判断がされた地の法令だけに任していいかどうかという問題だろうと思うのですが、そういう点は成るほど日本では日本民訴仲裁手続につきまして、判断取消訴えが提起されてそれが確定しない間は判断自体確定しないという、いろいろな場合にございまするが、この条約ではその判断確定しておるかどうかということは、判断が下された地の法令に任す、そういうきめ方をしておるわけであります。でございますからアメリカ判断がされたものを、もう一回日本確定しておるかどうかということをもうチエツクしないで、判断がされた地の法令確定しておればそれでいいと言つて判断地法令に任すという主義をとつておるわけであります。そこで我が方としては「公の秩序及び善良風俗に反しない限り」というその点だけをチエツクすればいい、そしてこれは民事訴訟法の二百条に掲げてある外国判決効力に対して四つ掲げてある最も大きな要件でありまして、判断確定しておるかどうかという点だけを外国判断のされた地の法令に任す、その代り日本としては公の秩序善良風俗に反しないかどうかという点を最大のチエツクのポイントとする、そういう考え方にこの規定はなつておるのだろうと思います。
  9. 杉原荒太

    杉原荒太君 私も仲裁判断確定ということが、どこの法律によつて何するかということ、その判断のなされた地の法令従つてするということが、そういう建前執行判決などを与えることはそれでいいですよ。その点は確定しておるかどうか、そうしてそれを立証するのは又方法があるけれども、それはそれでいいと思うのですよ、確定なりや否やの問題は。併しここの問題は判決確定しておるかどうかの問題よりも、その執行判決要件がどれどれの要件を備えておればその執行判決要件が充足されるかどうかという問題ですよ、私の言うておるのは。
  10. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 大体条約局長から御説明になつたのと同じことでございますが、我が民事訴訟法におきましては、お説の通り外国仲裁判断に関する明文規定がないのでございます。併し将来の解釈といたしましては、明文規定はないけれども、やはり外国仲裁判断効力は我が民訴建前の下においても承認される、而して執行判決を得れば執行力を与えられるという解釈が定石だと思うのでございます。この外国仲裁判断に対して執行判決を与えた場合の要件は何かと申しますと、第一には、その外国仲裁判断が、その準拠法従つて有効になされておつて且つ確定しておること、それから第二の要件といたしましては、我が国の公の秩序善良風俗に反しないこと、それから第三は、先ほど条約局長が御説明になりました、民訴法第二百条の第二号に当る規定、即ち仲裁判断に即してこれを申上げますと、当事者がその仲裁手続におきまして適法に代理せられておること、及び仲裁手続において審訊の機会を与えられたこと、こういうことになるだろうと思うのでございます。それだけの要件が備わつておれば、執行判決を得られるという解釈になつておるのでございます。  そこで本条約で果してそれだけの要件が満たされておるかと申上げますと、先ず我が国の公の秩序善良風俗に反してはいけないという点は、ここに明文が設けられてございますので問題はないと思うのでございます。それからその準拠法従つて確定した仲裁判断でなくちやならんという点も、明文がございますのでその点もよろしいと思うのでございます。問題になりますのは、その仲裁判断準拠法従つて適法になされておるかどうかという点なのであります。本来ならば、若し我が国裁判所仲裁判決を求める訴えが提起されまして、我が国裁判所が審査をいたしまして、若し準拠法従つてない、準拠法の定めるところの手続に違背しておるというような事由がありましたならば、訴えに対し請求を棄却するということになるわけであります。で、外国仲裁判断につきましては、民訴八百一条の取消事由が掲げてありますが、八百一条は適用がないと解すべきでありまして、八百一条というのは、我が国民訴法規定に準拠してなされました仲裁判断に対して八百一条が適用あるのでありまして、外国仲裁判断に関しましては、やはりその準拠法規定しておりますところの要件を具備することが必要なんで、要件を若し具備してなかつたならば、やはり我が国裁判所においては、仲裁判断を求める訴えに対しましては、請求を棄却すべきこととなるのであります。  一体それではこの条約ではどの点でそれが賄われるかということになるのでありますが、これは先ほど条約局長が御説明になりましたように、やはりこの契約従つて正当にされた判断というところで読むことができるんじやないか。これはいま委員もおつしやいましたように、この正当にというのは契約従つてということの修飾の言葉であつて手続従つておるということじやないという御見解、それも成るほど御もつとものようでありますけれども、私どもといたしましては、やはりこれは契約従つておるということと、それからやはり正当にされたという二つのことを言つておるのじやないかというふうに解するのでございます。それからいま一つ要件即ち当事者がその仲裁判断仲裁手続におきまして、適法に代理されていたかどうか、及び審訊されたかどうか、この点につきましては、やはり大多数の国におきましては、仲裁手続要件としてはそういう手続上の要件が掲げてあると思うのでございますが、若し万一仲裁判断準拠法においてそういう要件が掲げられてないということになりますと、これはやはり何と申しますか、法の一般原則に関する問題、まさしく英米なんかではパブリック・ポリシイに関するものじやないかと考えるのでございます。その点につきましては、この条約日本文のほうで言いますと、公の秩序善良風俗に反すると、この中に含めて解釈してもいいんじやないか、こういうふうに思つておる次第でございます。
  11. 杉原荒太

    杉原荒太君 それじやさつき外国仲裁判断には八百一条を適用しないと言われたですね。そうすると八百二条の第二項というのはどうなるのです。執行判決要件のこれはどうなるのです。
  12. 平賀健太

    説明員平賀健太君) この八百二条の二項は直接は適用ございませんので、やはりその趣旨は只今申上げましたように、仲裁判断準拠法で定められておる取消原因がある場合でありましたらば、やはり請求を棄却するということになると思うのであります。でありますから八百一条は直接適用がないのであつて、八百一条に相当する仲裁判断準拠法規定適用になつて来る、そういうふうに考えられるべきものだと思うのでございます。
  13. 杉原荒太

    杉原荒太君 そうするとあなたの言われるのは、実際の結果は同じになるかも知れんが、併しこれは法律的に言うと、むしろこの八百二条の第二項のほうは準用されるんだと、そうして準用されて、併しここに言うその八百一条の内容が、その準拠法の法の内容でいいんだと、こういうふうに説明すべきものじやないですか。
  14. 平賀健太

    説明員平賀健太君) 或いはそちらのほうがより適切であるかも存じません。
  15. 杉原荒太

    杉原荒太君 大体わかりましたけれども、そういうふうに非常にいろいろこみ入つた説明をせにやならんことになるので、私こういうときは何にも遠慮することもないし、そうしてこれは遠慮とか何とかで決するものでなくて非常に厳格な法律問題なんだ。それだから国内法のことをちよつとここで謳つておくほうが、こういう条約を作るときには適当だろうと思うんですよ。これはもう一つ仲裁判断などのほうはそこは非常に精密に法律家が作つておるから、非常にそこは洩れのないように国内法などを十分考慮に入れて条約の中に規定してあつたと思う。これなどはそういう点から言うと余り私は荒つぽ過ぎる規定だと思う。  それからもう一つついでに尋ねたいのですが、実際の必要からしてこの条約には仲裁判断執行力の問題も規定してあるけれども、判決の場合のことは何にも書いてないけれどもそれはどうしたのか。或いは外国関係判決効力及び執行力に関する国際条約があつたと思うが、あれは日米とも入つていますかね、あれはまだ入つていなかつたんじやないですかね。入つていないとすれば、ああいうのこそ実際の実益、必要はそつちのほうに私はむしろあると思う。仲裁判断すべき場合に執行力まで外国裁判所にたよつて来るというケースは割方私は少ないんじやないかと思う。むしろ判決のほうに実際の必要性があるかと思うのだけれども、それがここに規定していないようだけれども、それはどういうわけですか。これを書くぐらいなら判決執行力の問題。
  16. 下田武三

    政府委員下田武三君) 外国仲裁判断効力に関してこんな詳しい規定を設けながら、かんじんの外国裁判所判決効力について何にも規定を設けないのはおかしいじやないかという、ごもつともではございまするが結局それは当事国国内法令に任して、それぞれの相手国国内法を信頼してその取扱に任す。特にその点について両締約国のおのおのの裁判所判決効力について改めて規定する必要はないという考えからでございます。
  17. 杉原荒太

    杉原荒太君 それは非常におかしいですよ、そうじやないんですよ。つまり相互保証という要件が必要でしようが、日本民訴法によると、外国執行判決要件が必要でしようが、それが大事なんですよ。これを書くために、今までだつて実際さつき言つたようなケースが起つておるので、いろいろ書かんでもいいけれども、少くともそこのつまり相互保証に当るだけの規定を何らかの形で作ることが実際の必要があるのですよ。少くともそれくらいこの条約の中に入れておけば非常に私はよかつたと思う。条約局長の言われたのは少しその点でおかしいと思う。そういうのについては改めて相互保証というのに該当する日米間の、つまり一つの、これもどういうそれが条約でなくちやならんかどうかというようなことなど非常に議論のあることだけれども、あれで何か多くの、必ずしも、同じようなことを外国の何で規定しておるといいんだというような説もあるようだが、実際それは非常な抽象論であつて、実際問題はそう行かんですよ、本当に。少くともそれにしたつてはつきりとあなたとほうの、自分のほうでも執行力を認めますということをはつきりした外交文書で取らん以上、決して日本裁判所じやくれませんよ。その辺はむしろ一番いいのは、こういう大きな条約じやなくてもいいけれども、何らかの協定、少くとも日米間の合意というものを作ることが必要なんです。
  18. 下田武三

    政府委員下田武三君) ごもつともの御意見とは拝聴いたしましたが、この条約と問題としては確かにその問題があると存じます。併しこの日本国内法考え方から申しますと、民訴の二百条に申します相互保証というものは必ずしも条約を以てする保証を必要としなくて、実際に外国法令、この条約の場合ですとアメリカ法令でそういう保証を与えておつて、又一方日本法令でそういう保証を与えておつて、実際問題としての相互保証が確実になし得るという事実があれば、それで十分であるという見解もあるようでございます。併しこの問題は非常に大事な問題だと思いますので、一方全般的に司法共助の場合などにつきましても、一々そういう場合にアメリカ側が同様のことを日本裁判所に対してしてくれるかというようなことを、一々文書外務省アメリカ大使館の間にやつておるような煩瑣な場合なんかありまして、判決効力相互承認を含む全般的な司法共助の問題といたしまして何か考えてみたいと思いまして、この問題は実は前から考えておりました問題の一部なのでございます。
  19. 杉原荒太

    杉原荒太君 学者など書いたのにはよくそう書いてありますがね、併し実際は裁判所判決などそうじやないし、又そういうことで実際行かんですよ。そして御承知のように、この外国判決執行力の問題は、日本でもう実際言うと学者などもそう今まで実際問題まで立入つてよく研究している人は割に私は少いと思うんです。書物にはよくそう書いてあるけれども、今までの裁判所判決の例などからしてもその説じやない判決例もあるぐらいで、も、と言うよりもあるぐらいで、その点はただ……、第一それにしたつてその事実の立証とかそんな誰も彼も何してもだめですよ。少くとも条約というのじやなくてもいいですよ、条約という形式じやなくてもいいけれども日米間に何らか外交文書というかそういうものがないと、やはり実際の処理は私できないだろうと思う。そういう意味において、日米間の合意をするという必要性がそこに非常にあるだろうと思います。併しその必要性を認めておられるから私はこれ以上言わんけれども。
  20. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ほかに御質疑はございませんか。
  21. 高良とみ

    高良とみ君 この通商航海条約は初めから御説明のあつた通り、最初のものであるからテスト・ケースとして模範的なものであるというお話がありましたが、それに帰りましてそうしますと、今後締結されるよその国との条約もこの模範に従つて大体その線において締結して間違いはありませんか。
  22. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) おつしやいます通り、この条約は一年に亘りまして非常に苦労いたしまして作りました条約でございますので、他国と締結いたします際にも成るべくこの線に沿いました条約を作りたいという希望を持つております。ただ各国それぞれの事情もございますので、果してその通りに参りますかどうか、これは交渉の結果でございますけれども、念願といたしましてはそういう方向へ進みたいと考えております。
  23. 高良とみ

    高良とみ君 その一、二の例といたしまして、例えば旧株は三年間は留め置いておりますが、今後相当な外資法によつて日本旧株を取得する自由が出て来た場合に、日本の事業が相当な程度まで外国資本に支配されるということにならないようにする保証についても、どの国がこういう締結をしても大丈夫でありますか。
  24. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 旧株の取得の三年間の留保というものは御承知通り議定書で書いてございますが、本文が一般抽象的に適用されるもので、大体議定書に書かれておりますことは本文原則とするのであるけれども、その国々の事情によりまして今直ちに本文規定してあるようなことをやるわけには行かない。従つて例外的な事項としてそういうアンダースタンデイングをするんだというようなことが書いてございます次第で、従いまして他国と新たに条約を締結するために交渉いたしています際に、議定書に書かれているようなことは恐らく他締約国事情によりまして或いは日本事情によりまして、それが三年とか或いは四年とか或いは二年とか或いは書かないとかいうふうに変つて行くだろうと思うのでございますが、条約の一条から二十五条に書いてありますような規定に関しましては、大体本条約を手本といたしましてこの線でやりたいと考えております。
  25. 高良とみ

    高良とみ君 もう一つの例として、只今問題に上つておりました四つの、判決をその地で執行することに対する民事訴訟の実例におきましても、やはり他の国と通商航海条約を結ぶときにも、これで差支えなく行けるというお見通しでございますか。種々な国が出て来ると思うのでありますが、これは特権的なものでないと考えて間違いありませんか。
  26. 下田武三

    政府委員下田武三君) 外国仲裁契約効力及びその判断効力規定は、これは日本とどこの国との間につきましても理論的には該当し得るものであります。但し一番末節のアメリカがフエデラル・ステートでありましたときに置きました規定は必要ないかと思いますが、それ以外の規定はどこの国にも理論的には該当し得るものであろうと思います。ただ問題は非常にまだ仲裁判断なんかの発達してない国又その実益のない国に対しては、こういう規定を入れることが必要であるかどうかという問題はございますが、理論的には該当し得る規定でございます。それから又この規定につきましては、何も平等、不平等というような政治的な意味は入つて来ない規定だと存じます。
  27. 高良とみ

    高良とみ君 それからもう一つ只今の裁判の問題は、実際になると随分複雑な様相が現出されるだろうと想像できるんでありますが、銀行業務の預金等の既得権を持つておる国がすでにありますが、これは他の国に対してはこういうことはどうなるお見通しでありますか。即ちこれは占領中に持つた特定な国の銀行にはこういう権利が与えられたけれども、今後は例えば英国の銀行がやりたいというような場合或いはほかの国がやりたいという場合には、これは拡大或いは適用されるお見通しでありますか、或いはこれは特定なものと考えておられますか。    〔委員長退席、理事徳川頼貞委員長席に着く〕
  28. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 既得権を尊重するということは、これは大体国際的な慣行と申しますか、国際的な確立されました原則でございまして、既得権をいたずらに変え得るということになりますと、経済の安定が期せられないということに相成ります次第で、従いまして既得権を尊重するということは、日本が非常なる状態におかれていたということとは必ずしも関係はないのでございます。従いましてほかの国と結びます場合には既得権の尊重ということは是非これは語わなければならん条項だと存じております。  それから占領中の既得権とおつしやいましたけれども、これは実は占領がなかりせば生まれなかつたであろうというような権利ではないのでございまして、例えばアメリカの銀行も戦前におきましても日本におきまして預金業務というものを行なつていたのであります。従いましてこれは既得権の尊重という自体が原則でございまして、占領中に与えた特権即ち占領がなかりせば与えなかつたであろうような権利を与えておる。そういうふうに御解釈になられましては非常に困るのでございます。そうではないのでございまして、戦争前から、戦争がなくてもやはり与えたであろうような権利であります。これが戦争がなかりせばなかつたであろうような権利だというように御解釈になると、実はそうではないのでございますから御了承願います。
  29. 高良とみ

    高良とみ君 戦争前からやつてつた一つの銀行はそうでありますが、併し実際上占領中にバンク・オブ・アメリカとかチエース・ナシヨナルとか、ナシヨナル・シティがふえたそうですね。それからアメリカのエキスプレスその他のものがふえておりますことが、やはり私の言う意味に含まれておつたわけであります。それと同じように今後経済関係がほかの国ともつと密接になつて来た場合に、やはり今度は占領というようなことはないにしても、これはどうしても銀行業務等をもほかの香上銀行に与えるとかいうような希望も出て来た場合には、そのときに対処するおつもりであつて、こういう友好通商航海条約などをする場合には、それが一つの模範の型にはならないとお考えですか、或いはこれはやはり一つの今後も行い得る型とお考えになりますか。
  30. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 今仰せになりましたような銀行は、結局アメリカのナショナル・シティ・バンクというふうなものと同じような状態にございますし、それから同じような機能を果しておりまして、本条約において申上げましたような、日本の経済にむしろ寄与している、邪魔にはなつていない或いは反対に経済の発展に寄与しているというふうな機能をいたしておると存じますので、相手国日本に同様な待遇を与えるということを条件といたしまして、本条約と同じような取極めを結ぶという方向になるだろうと思います。
  31. 高良とみ

    高良とみ君 なお念のために銀行業務或いはエキスプレスのようなものは特別である、併しその他の国の経営する主要な経済事業に対しまして、殊に政府事業等に対しましては、今後ともに投資或いは経済活動を、日本の経済が相当に発展するまでは守つて行くという御趣旨だと了承するのでありますが、こういう多少とも特権的なものが現われておりまするので、今後ほかの国と、英国のみでなくカナダその他の国と、通商協定を結びますときに、それがどこまでもやはり互恵平等であつて、そうして経済に寄与して行くならば銀行業務、運輸、飛行機等のほかにもガス、電力、製鉄、石油それらのものに対しましても、そのときの必要に応じて通商の特権を与えて行くということは別に差支えないということでありますか。それとも相当に通商協定は互恵平等であるから向うが許すならばこちらもやるし、そうでなかつたらやつて行かない、そういう御方針でありますか、一応御説明願いたい。
  32. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 通商航海条約原則として互恵平等というのがあくまで本流を貫く原則でございます。各国によりましてそれぞれ事情を異にいたしますので、殊にこの七条の二項に書いてございますように、制限業種というふうなものは各国によつて又その時代々々によりましてその必要性が変つて参りますので、本条約に書いてございますような業種をそのままほかの条約に移し替えるということは恐らく困難であろうと存じますが、あくまで互恵平等の立場を持しつつ、而もそのときの事情に応じまして又その国の事情に応じましてこの制限業種というものの範囲を確定して行くということに相成るだろうと思います。
  33. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますとこの外資、日本の株を外国の資本が取得して来ることに対しても、やはり互恵平等の立場において同様に考えて、よその国との差別待遇はないと了承してよろしうございますか。
  34. 下田武三

    政府委員下田武三君) さようであります。
  35. 杉原荒太

    杉原荒太君 八条ですね。自由職業だとかそれから学術、教育、宗教的の慈善の活動などを規定したこれと、第一条との関係はどうなりますか。    〔理事徳川頼貞君退席、委員長着席〕
  36. 下田武三

    政府委員下田武三君) 第八条の自由職業の規定と、第一条の関係と申しますと、一体第一条で入国するには一定の目的を掲げた者でなければ第一入ることができない。第一条でその目的の制限を置いておきながら、第八条でこういういろんなことを掲げておいても、その関係が一体どうなるのかという御質問かと思うのでありまするが、結局第一条の第一項に(a)(b)(c)と三つの入国目的を掲げております。その(c)に「外国人の入国及び在留に関する法令の認めるその他の目的」ということを言つておりますのでありまして、この締約国の「法令の認めるその他の目的」というのが割合に広範な規定になつておりますので、第八条で掲げました職業の種類はおおむねカバーされている。我が国の出入国管理令の第四条を見ましても、この通過者、観光客、学術研究機関における研究又は教育或いは音楽、美術、文学その他芸術上又は学術上の活動、演劇、スポーツその他の興行或いは宗教上の活動を行うこと、それから報道機関或いは技術、技能の提供者、公私の機関によつて招聘される者とか或いは熟練労働に従事しようとする者というように、非常に広範な規定をしておりますので、大体第八条の業種は第一条の第一項の(c)の締約国法令で認められるものというところに包括されまして、両者の間に矛盾は実際問題として生じない、こういうように考えております。
  37. 杉原荒太

    杉原荒太君 それはその通りだろうと思うし、私もその点念のためにお尋ねしたのだが、そこで実際上非常にアメリカに行こうという者は、一体自分たちの入国は認められるかどうか。条約上認められているかどうか。その国の法令の認める目的に合致しておれば、それは向うの国内法上許されるだけじやなくて、今度の条約の第一条によつて条約上の権利として又同時に保障されるのですね。それでアメリカのその国内法上どういうものが許されているかということを知ることが非常に必要なことになつて来るわけだが、例えば私が弁護士をやるためにアメリカに行こうというとき、それは今国内法上どうなつておりますか。許されますか。
  38. 下田武三

    政府委員下田武三君) 先ず日本人がアメリカに入ろうといたしますと、日本人と外国人との不平等の点は移民法の改正によりまして除去されましたが、なお且つ千九百何年の基準年度をおぼえておりませんが、一定の時期において米国におつた者に対して何%の比率ということで弾き出されましたときの人数の制限、日本人は一年間に百八十五人となつておりますが、その人数の制限にひつかかることになると思います。それで、その人数の中に入つた場合にどうなるかと申しますと、アメリカの新移民法に、やはり大体日本の出入国管理令の第四条と同じような規定がございまして、通過者のほかに条約承認の或いは学術機関と申しますか留学生、それから国際機関の代表者、役員、専門家、特殊技能者という方もあります。或いは新聞記者、情報関係の記者、ここに申しましたのは移民に該当しない、つまり百八十五人の枠外の人でございます。弁護士は非移民、つまり先ほど申しました業種の中には入らないのではないか。従つて弁護士をやるために行くのは、百八十五人のクオンタムの中に入りまして、そうしてその中に入つたとしますと、結局各州によつて外国人に弁護士業に従事することを認める州であればできる。認めない州であればできないということになると思います。
  39. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  40. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは速記をつけて下さい。委員会は暫時休憩いたします。    午後零時五十六分休憩    —————・—————    午後二時四十五分開会
  41. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは午前に引続きまして外務委員会を再開いたします。  日米通商航海条約につきまして質疑を続行いたします。質疑のある方はどうぞ御発言を願います。
  42. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 最初にこの日米通商航海条約の国会における取扱方について伺いたいのでございますが、これは政府当局に伺つたらよろしいのですか、委員長に伺つたらよろしいのでございますか。ちよつとわからないのでございますが、若しこの参議院において会期満期になるまでにこの審議が終了しないということになりますと、衆議院だけが承認したという形になりました場合には、どういうふうな取扱になるのでございましよう。
  43. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それは会期が延長されないで本日限りに会期終了ということになりますると国会かなくなつてしまいますので、そうしますると、単に一院だけで承認があつたというだけでは通商条約承認は成立いたしません。二院でパスしなければならんということになりまするからして、次の会期において又新たにやり直さなければならんということになります。
  44. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 その場合には次の会期のときに又衆議院からやり直すのでございますか。
  45. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) さようでございます。
  46. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 若し会期か延長になりますか、どういうことになりますか今のところまだ判明しておりませんので、私どももこの取扱について十分わからないのでございますが、若し会期が延長になりまして十分な時間が許されますならば、私どもはこれを逐条審議にして頂きたい。こういう希望を持つております。このことを先ず申上げておきたいと思います。
  47. 羽生三七

    ○羽生三七君 私も加藤委員と同様で、会期延長になつた場合には逐条審議をお願いしたいと思います。
  48. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 まだ逐条審議もいたしておりませんし、十分なこちらに審議時間がございませんで、まだ甚だ不勉強だと思うのでございますが、今日は二三の点について政府当局に伺いたいと思います。  甚だ順序不同でございますが、最初に伺いたいことはこの既得権の問題でございますが、この問題の中で旧株取得の三年間という期間が保留されておりますが、この三年というようなこの三という数字、三年間というようなこの期限がどういうような根拠でこういう保留期間をおきめになりましたか、その根拠を伺いたいと思います。
  49. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 三年というのは短いじやないか、政府のほうでは或いはもう少し長いのを要求したのじやないかという質問はこれまでも受けたことがありますが、大体三年間これを留保しておいたら、その頃は経済の情勢もよくなり、株式の数というものも現在の倍程度になるのであつて、三年間を留保しておいたら差支えないだろうということにして、この三年というものをきめたのであります。数字的に申しますと、今株式の数が大体五千億ぐらいに上つておりまして、そのうち外国人が百億円程度、まあ極めて全般に比べましたならば少いものでありますが、この五千億円の株式が存在しておるわけなのであります。それに対しまして今増資がどれくらい年々行われておるかということを我々のほうで調べまして、大体現在は千五百億円程度の増資をしております。これは今後の資産の再評価等いろいろな問題によつて影響されますから或いはもつとこれよりか多くなるかも知れませんけれども、三年たてば大体現在の倍一兆億円程度のものになるだろう、そうしてその間に日本の経済力というものも現在よりは伸びて行くであろうという見当を立てまして、そうして現在の外国人の株式所有額というものを考えてみますると、その一兆億円の株の中でそれほど大きな多数の株が外国人に買い占められるというような心配はないのじやないか、こういうことを考えたわけでございます。殊に今までの状況から考えてみまして、送金の保証のついたもの以外で円で投資して日本で円の株としていつまでも持つておこうというような人は非常に少いのでありまして、三年後にこれが自由に買えるようになつも送金保証のない株をたくさん買うというようなことはあり得ないだろうという見当に基いたものであります。こういうような点から三年というものを考えておいたら大した支障はないという各省との協議に基いて決定いたした次第であります。
  50. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 今政府が見込んでいらつしやいますような今お上げになりましたような数字や状況、そういうようなものに対して三年を経過したのちにそういうような数字や状況に到達していない場合には、この三年をもう少し猶予期間を延長するというようなそういうことができるでございましようか。
  51. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 条約といたしましてはこの三年間というのがきちんと書いてありまするから、三年を過ぎたらこの留保は解消するわけでありますが、併し万が一にも非常に重大なる支障というようなことが生じたならば、二十四条によつて先方へ好意的考慮を求めるということも全然不可能ではないというように考えておる次第であります。
  52. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 同じくこの既得権の問題でございますが、占領中というような特別の状態におかれました場合の既得権、銀行業務の中で或る銀行だけには預金信託業務をも認める。それが既得権であるというような、こういうような占領下の既得権というようなことはこの条約の精神と矛盾しているというふうにお考えになりませんでしようか。
  53. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) この条約を締結するに当りまして一体どういう既得権があるか、又戦時中に得たものにどういうものがあるか、いろいろ洗つてみたのでありまするが、今おつしやいました預金業務というものは成るほど占領中に認めたものであります。これが唯一のものであると私どもは考えておるのでありますが、併しこの預金業務も実は占領中であつたから特に認めたのではなく、戦前にもナシヨナル・シティ・銀行で認めておつたものであります。併し戦前におきましてはナシヨナル・シティーつであつたのが戦後になりましてバンク・オブ・アメリカ、チエース・ナシヨナル・バンクが参りましたので、この二つが同様に権利を得たという違いがあるだけであつて、もともと占領下であつたために強制されて認めたというような性質のものではないのであります。而も又預金額はどこの銀行も公表はいたしませんけれども、アメリカの銀行が占めておる金額は大体八十億程度のもののようでございます。そうすれば特に日本の銀行を圧迫するというようなことはなしに、却つて外資の導入にもこの程度の営業というようなことを認めるのが日本経済界にも有利であるという考え方もありましたのでこれを認めた次第であります。従いまして占領中であつて特に先方が獲得したというようなものではございませんので、既得権を相互的に認めるということについてむしろ日本側が向うに帰化する資格を持つた人の米国において持ち得る農業権であるとか、農業用の土地の所有権を認めてもらつたぼうが却つて日本にとつて有利であるという考え方から相互的に既得権を認めるようにいたした次第であります。
  54. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういたしますとそういう既得権は、日本アメリカに対して与えるということと、日本人が向うにおいて土地を所有するということと何か交換条件になつておるのでございますか。
  55. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) この条約を御覧になるとわかります通りにこれは相互的な規定でございますから、日本が認め、向うも認める相互的な規定になつておりまするから、当然日本人も同様にこの制限業種について既得権は尊重するわけであります。
  56. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 日本人の向うにおける既得権というものはどういうものでございますか。
  57. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 日本人が向うに行つてつておる権利のうちで七条第二項に規定してございまするところのいわゆる既得権に該当するものとしましては、日本人が向うに行つてつておりますのは農業が大部分であります。約五万人の者が農業に従事いたしております。それから先ほど加藤委員がおつしやいました三年間という問題は既得権とは何にも関係はございません。既得権の問題ではございません。
  58. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 三年間が既得権と申したのは、それは確かに既得権の問題とは違つたことを私はちよつとまずく申したのでございます。既得権としては占領中及び戦争前の既得権をそのまま継承して認める、こういうことでございますね。
  59. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) さようでございます。
  60. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それから今度この条約承認されましていよいよ成立するという時期と、それから占領後との間に起りました事態についてどういうことになるのでございましよう。
  61. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) この条約の成立或いは実施ということと無関係でございます。ここに七条の第二項に制限業種がずつと列挙してございます。その制限業種のうちでまだ制限をし得るというふうな法律にしてないものが殆んど大部分でございます。それで制限を付するというような法律ができまして、それが実施されるまでの既得権というふうなものがございますとそれを認めなければならん。こういうことになりますので、制限しようというものがございますならば、早くに及んでそれをやつたほうがその効果を達し得るという関係になつておるのでございます。
  62. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういうことになりますと、この条約の成立する期間が延びて参りますと、その間に何か将来は制限せらるべきもので、今のうちに既得権をとつておこうというような動きがございますか。又すでに何か例えば銀行業務のようなもので、将来制限さるべきもので今すぐに始めておけば既得権としてとれるというようなものが具体的にございますでしようか。
  63. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 株式取得なんかは御承知のように今許可しなくてもいい認可事項になつております。それから新株の取得は届出だけでございますが、それは大したことではない。そういうようにいたしますと、新たに既得権だというようなことで持ち得る、将来主張し得るようなことがあるということはちよつと考えつかないのであります。例えば銀行の場合にいたしましても、これは認可を要することでありますので、若しそういうようなものがいやであつたならば認可しないというだけでございますので、銀行に関しましても早くきめるものならきめておかないと既得権にされるというふうなものは、差当りの問題としてちよつと思いつかないような状態でございます。
  64. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 どうも私お金のことは余りよくわからないのでございますけれども、既得権として銀行業務の中に預金業務、信託業務が許される銀行ができるということでございますが、預金は日本人が外国の銀行に無制限にできるわけでございますね。それは預金したお金は為替管理というようなことはどういうような関連になることでございましよう。
  65. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 外国銀行は銀行預金を取り得るということになつておりまするけれども、銀行預金は無論為替管理の統制の下にございまするので、普通の日本の銀行に預けたと同様に取扱われまして、外国銀行に預けたがゆえに差別を生ずるということは何らございません。
  66. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 為替は管理されるといたしましても、何か日本に例えば経済恐慌が起つたというようなときに、アメリカの銀行に資本の逃避が行われるというような御心配はないでしようか。
  67. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 先ほど政務次官からも御説明申上げましたが只今アメリカの銀行が三つございますけれども、これに預けてありますところの預金の額というものは、日本の銀行に預けてあります総預金の大体〇・五%くらいでございましよう。大したことはないというふうな状況でございますので、資本等でアメリカの銀行に流れて行くというふうな憂いは先ずないというふうに我々は見ております。
  68. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 現在がそうであるからとおつしやつて、将来も全然危険がないというような根拠はどういうところにあるのでございましようか。
  69. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これは戦前、戦争中、現在というふうなものから演繹いたしまして、そういう虞れはないということ、これはこの条文が問題になりました際にも大蔵省とか或いは銀行界の方々というふうなかたにも十分相談いたしたのでございますけれども、只今申上げましたような過去、現在というふうなところから類推いたしまして、そういうことはないという結論に達したのであります。
  70. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 次にこの条約が成立いたしますと、国内法に優先するということになつているのだそうでございますが、国内法に優先するというものも具体的にどういうような場合が起つたときにどういうふうに優先するかというようなことを何か具体的な例を示して説明して頂けませんでしようか。
  71. 下田武三

    政府委員下田武三君) 例えばけさほど杉原委員から御質問がありました外国仲裁判断効力に関する第四条第二項の規定はその例でございますが、実は日本民事訴訟法には国内の仲裁手続に関する規定はございまするけれども、外国仲裁規定に基いてなされた判断規定は全然ないのであります。そこで民事訴訟法規定を準用はいたしますが、結局この条約自体が準用するに当つて解釈をきめる場合には条約が優先する。結局通商航海条約では全部の法律関係は到底きめられませんので、原則的事項を規定いたしまして、そして国内法にぴつたり当てはまらない場合等もございますので、そういう場合には条約のほうが優先する。そういう関係になつて参ると思います。
  72. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 例えば、日本におけるアメリカの銀行と日本の銀行とが何か競争、利子を安くして何かサービスをするというような競争か何かが将来起るというようなそういうような可能性があるかどうでしようか。
  73. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 条約の全般を通じまして、外国の銀行に対しましても国民待遇以上のもを与えておりませんので、そういう場合が仮にあつたといたしましても、多分これはないと思います。と申しますのは、大蔵省の銀行の監督の立場からできないだろうと思いますけれども、そういうことがあつたと仮定いたしましても、外国の銀行なるがゆえに内国の銀行よりもよりよい待遇を受けるというふうなことはございません。若しそういう何か外国の銀行であるがゆえに差別待遇を受け、それが日本の銀行よりもよいというふうなことが起りはしないかというふうな御疑念でございましたならば、それはございません。
  74. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 どの個条でございましたか忘れましたが、日本において米人が経営するところの私企業を圧迫しないために、例えば米国人が何か私企業を経営している場合に、それに対しての税率というようなもので圧迫するとか何とかいうようなことはあり得るでございましようか。
  75. 下田武三

    政府委員下田武三君) そういう場合はございません。外国の事業につきましては、その事業活動をなすことを許すべきかどうかという点で問題が起りますが、一たん許しましたら日本法令に基いてその事業活動が認められるのでありまして、その場合には内国民待遇でざざいますから、日本の同種の企業と同じ形において扱われるわけでございます。
  76. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 建前はそういうふうになつておりましても、例えば日本人もその企業をやつているしアメリカ人もその企業をやつているときに、その規模がアメリカ人のやつている企業のほうがずつと大きい有利な経営をやつているというようなときに、若し何か税金の税法が変りまして、その企業をやつている日本人もアメリカ人も同様に大変税金で圧迫されて行くというようなことが若し起りました場合には、それはアメリカ人であろうと日本人であろうと、その企業をやつている人がその税金の圧迫から受ける影響というものは同じでございましようか。事実においては、そのよりよく余計圧迫を受けるものは大きいものを経営している人が圧迫を受けるという場合があり得るのでございますけれども、これはどうですか。
  77. 下田武三

    政府委員下田武三君) たとえて申しますと、コカコラというアメリカの清涼飲料を作つております企業がございますが、それが日本でコカコラを作ろうという場合には、大体そういう事業をやるための資金を日本に入れるときに、これは日本の生産力増強に何ら役に立たないとすればスクリーンされて外資が入つて来ないと思いますが、仮に外資が入つてきてコカコラを日本で作るということを認められましたと仮定すると、これは日本のシャンぺン・サイダーや何とかシロップと同じ清涼飲料の製造事業と同じ法律、同じ取締法規を受けるわけでありまして、衛生その他の見地からも同じ規則を適用されるでありましようし、又この間も現に問題もありましたが、日本で発売するためには日本の名前を明記しなければいかんというような点も同じように適用になるでありましよう。又税金の問題ですと、これは本店はアメリカにあるわけでありまするから、支店と本店とダブつて一つの企業全体としては日本の支店で上げたコカコラ会社の利益に対して日本でもかける、アメリカでもかけるという二重課税か起つてはまずいので、その点按分して両国で課税するという規定もほかにございます。それからコカコラ会社が非常な収益を日本で上げるといたしますと、これは法人税その他で日本の小さな清原飲料水の製造会社に比べて税率が累進課税で非常に高くなるということがあると思いますが、法規の適用関係つまり法律上の受ける待遇というものは理論的には完全に日本の清涼飲料製造会社と同じ地位に立たされるわけでございまして、あとに実際問題としてはその競争力とか又競争の結果収益をたくさん上げた場合には、事実上その税の負担の事由というものがおのずから違う場合もありますが、法律上の関係では全く平等の立場に置かれるわけであります。
  78. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 加藤さんのお話になつたのは、向うのほうが資本力が多いから同じ税をかけても結局日本のほうがより損害をこうむるし、アメリカのほうが競争力が強いのでそれだけが実質上得をするのじやないかという御質問つたのじやないかと思います。これについては今法的なお話もありましたが、実際問題として考えてみますと、日本は相当法人税が高い、そこでアメリカのほうで資本家もなかなか日本で努力しようとしないというような事実があります。又非常に圧迫的になりますると、普通の場合、外国の資本家はその会社をそれだけで立てて行くようなことは、例えば日本では何としてもその会社を盛り立てて非常に苦しみながらも経営して行かなければならないけれども、日本のほうで非常に圧迫的な税をかけるとか、或いはそういう法制を設けました場合は、その資産を売り飛ばして日本人に渡して帰つて行くのが普通の場合であります。自動車なんかでも自動車業法ができましたときにも結局出て行かなければならない。世界的に発展している会社でありますれば、日本のような、資本家にとつて興味のないような所であつたならば、無理をして日本の会社をつぶしてあくまでここにがん張るというよりは、むしろそういう場合には退却するのが国際投資におけるいわゆる普通の場合であろうと考えます。
  79. 羽生三七

    ○羽生三七君 この、本条約に関する議事録の中に、これは日本の公企業とアメリカの私企業との調整措置を規定してあるそうですが、お差支えなかつたら御説明願いたい。
  80. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) そういうことはございません。たしか十八条でございますか、只今は御承知通りの案文になつておりまするけれども、当初そのあとのほうに、今もうその条文にはございませんが、その十八条のあとのほうに、公共企業と私企業とがある場合には、公企業に余り利益を与えないで同じような利益を私企業にも与えろ、つまり公企業に余り保護措置をとつてそれによつて企業をこわすというようなことをやつては困るというふうな規定があつたのでございます。併しこれはそういたしますと、公企業をやるためには公企業をやるだけの理由があつてやるので、やつぱり何かベネフィットをやらなければ意味がないじやないか。それと私企業を全く同じ立場にするということは意味がないのでこれは削除いたしました。従つて今御覧のような条文になつておりますので、その分は削除されましたので問題はないのであります。
  81. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 不動産を取得いたします場合にはどういうようなことになるのでございますか。
  82. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 不動産の取得はおのおの国内法によるということになつております。従いまして全く国内法によつてやるという場合だけでございます。
  83. 羽生三七

    ○羽生三七君 それに関連して。国内法ですから当然土地の取得とか或いは賃貸借の場合は、日本で言えば農地調整法に準拠せられてやるわけですね。
  84. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 賃貸なんかは取得というのではありませんので、賃貸に関しましては九条に土地及び建物の賃貸、占有及び使用については内国民待遇ということになつております。取得につきましては内国法によるということになつております。
  85. 羽生三七

    ○羽生三七君 それでは、当然所有するということはわかるのですか、占有ということになるとどうなるのですか、どう違うのですか。所有と賃貸借と占有と。
  86. 下田武三

    政府委員下田武三君) 土地の賃貸借は借料を払つて借りる場合であります。それから占有というのはその借料その他の関係を除きまして事実上占有する。又使用ということも借料等の関係を除きまして使用するということで別に国内法の字句に合わして考えてあるわけではありません。そのあらゆる場合を網羅するためにこういう字を使つておるだけであります。
  87. 羽生三七

    ○羽生三七君 その解釈はいいのですが、農地調整法に準拠しなければ土地等のそういう移動はできないと思うか、或いはここに規定されておるようなものは。だからそれは当然国内法で言えば農地調整法に準拠すると思いますが、アメリカ人であるか故に農地調整法などを無視するということはないのですか。
  88. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 外国人については外国人土地法がございまして、向うのほうが許してある国に対しては日本国内法によつて所有を許すということになつておりますので、全部所有し得る資格がある国民については日本国内法によつてやる、こういうことになつております。
  89. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういたしますと、土地を外国人の名義に書換えることができるわけですか。
  90. 下田武三

    政府委員下田武三君) 外国人土地法は相互主義を原則といたしまして、若しアメリカ日本人に対しても土地の所有を認める場合には日本も認めるという相互条件を視定しております。でありまするからアメリカ人が日本人から土地を買つて名義を書き換えるという場合には外国人土地法の規定に基きまして名義の書換をやる、日本の法律によつてやるということになります。
  91. 羽生三七

    ○羽生三七君 先ほどお話の外国人土地法ですが、昭和十二年頃の制定のようですが、それは現在、施行令というのですか、それは廃止になつておるということですが、そうですか。
  92. 下田武三

    政府委員下田武三君) 外国人土地法で或る国を先ず指定しなければならないわけです。その国を指定する政令が一度もまだ出たことがないのでございます。それから只今廃止になつた施行令と申しますのは、戦時中軍事上の見地から外国人に所有を禁ずる土地の範囲を規定した施行令がございます。ところがこれは終戦と共に廃止になりました。ですから現在外国人土地法を根拠といたしまして外国人に対し、いかなる国を指定しても又いかなる範囲を指定しても禁じておる実際の政令はないわけでございます。
  93. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうすると禁じておる実際の政令がなければ、当然国内法ですべての土地問題を処理すると思いますが、その場合には当然農地調整法に準拠しなければならんと思うのですが、それでいいのですか。
  94. 下田武三

    政府委員下田武三君) その通りでございます。土地収用法初めその他土地に関する一切の国内法令適用になるわけです。
  95. 高良とみ

    高良とみ君 関連質問。その外国人土地法の施行令等が日本にはあるのでありますが、アメリカにおいても日本人の土地を所有することに対して最近の法令が変化があつたんですが、というのは従来はアメリカの多くの州においてはその州の人、アメリカ市民以外が、ことに日本人などが土地を所有することは殆んどできなかつた。その点が戦後大分移民法も変つたようですが、土地所有権は今どうなつておりますか。
  96. 下田武三

    政府委員下田武三君) 加州等におきまして日本人に土地の所有を許さなかつた、差別的法令がございましたのは事実でございまするが、これは移民法の改正によりまして日本人というのは米国に帰化資格を有する人間ということになりましたので、帰化有資格者は土地の所有を認められることになつておりますので、その差別関係は全然解消いたしまして、日本人も帰化有資格者として土地の所有を認められることになりました。
  97. 高良とみ

    高良とみ君 只今の立法はあらゆる州においてでありましたか、そうしてその年限は何年間でありましようか。
  98. 下田武三

    政府委員下田武三君) あらゆる州においてそうなつております。年限はなくて永久にそうなります。
  99. 高良とみ

    高良とみ君 いつから施行されておりますか。
  100. 下田武三

    政府委員下田武三君) アメリカの新移民法ができましてからこのかた、それから将来ずつとそうなることと思います。
  101. 高良とみ

    高良とみ君 そのアメリカの新移民法が各州で批准を受けて効力を発したのは何年何月ですか。
  102. 下田武三

    政府委員下田武三君) 新移民法は各州ばらばらの法律でござませんで、フエデラル法で米国全部を支配する法律でございます。去年の十二月に施行されております。
  103. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 自由職業による活動というようなことでございますけれども、日本人がアメリカへ行つて労働をすることはいけないわけなんでございますね、それはこの条約でどういうところからいけないということになつたんですか。
  104. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これは第一条に大体入国居住のことを規定しておりますけれども、大体その中に条約商人とか条約投資家とかいうもののことは保障いたしております。それから第三項で入国及び入国後の取扱について、公共目的のための制限に関する当事国の権限を留保するということが規定してございます。只今労働のみの目的をもつて向うへ行つて労働に従事するということは三項に該当いたしますので、そのほうになります。
  105. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 メイドとか美容師とかそういうようなものはどういう範囲に入るのでございましようか。
  106. 下田武三

    政府委員下田武三君) 米国の移民法にも日本の出入国管理令と同様にどういう目的でなら許すかという範囲を書いておりまするが、メイドのごときはアメリカ人の被用者として別に移民法のほうだと関係なしに入れると思いますが、美容師のような特殊技能者はやはり移民法割当以外に入れることになつております。それ以外の一般、ただ筋肉労働だけを売るというだけの労働者は年八十五人の移民のほうに含まれまして、やはり数的な制限があるわけでございます。
  107. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私の質問はここまでで終ります。
  108. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 今朝私が申しましたことを繰返して申上げたいと思うのでありますが、何となれば、少し私一個で責任を引受けるにしては余り重過ぎると思いますので皆様方にお諮りいたすわけであります。と申しまするのは、皆様すでに御承知通りに、この会期が延長されるかどうかということはまだきまらないもようであります。或いは数十分乃至は数時間のうちにきまるかも知れませんが、会期が延長になつた場合は勿論これは問題ございません。この条約の審議を更に続行するだけの余裕ができて来るわけでありまするから問題ないのでありますが、不幸にして会期延長にならなかつたという場合を想像いたしますと、少し私のこれから申上げる心配が出て来るのであります。即ちこの条約は本日中に委員会を上げてそうして本会議に上程しなければ参議院の承認は得られなかつたということになつてしまいます。そうしますると衆議院の承認はあつたのでありまするが、参議院の承認がなかつたためにこの条約に対する国会の承認が与えられなかつた、即ち政府は批准をすることはできなかつた条約従つて成立しない。こういうような大きな問題にまで発展して行くわけでありますので、さて然らばこの条約を成立させるかさせないかということ、これは皆様方の勿論各会派の態度によつてきまるわけでありまするけれども、それが右になるか左になるかということを今すぐさまにでもきめて頂かなければ、先ほど申しましたように今日中にこの条約を本会議に上程するわけに行かない、こういうようなことになるのであります。果してそれで皆様方も仕方がないというふうにお考えになるかどうか。皆様方の御意向を私は存じないでおいてただ成行に任して、流れるから流れ放しということにしておきますれば、これは委員長としても非常に大きな責任を負わなければなりませんので、皆様方に改めてお諮りするわけであります。このまま質疑を続行しまして本会議が始まるときまで参りますか。本会議が始まりましたならば私はこの委員会はもはや定足数を持つということは不可能だろうと思います。そうなれば先ほど申しましたよう、この条約はこの会期中にはできないということになるわけであります。その点どういうふうに取運ぶのかよろしいでありましようか、これを一つ皆さん方にお諮りを申上げてそうしてきめたいと思います。
  109. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 質疑者といいますか、まだ質疑は大分残つておるのですか、どんなものでしようか。
  110. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 これからやるのです。
  111. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 どのくらいなんでありましようか。余りないようであればできるだけ急いで上げてもらうというのも方法でしようし。
  112. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 先ほど加藤、羽生両委員の御発言がありましたが、それによりますると、若し会期か延長されれば質疑を続行して逐条審議に入つてもらいたい。さもなければ今日のところの質疑は二三にとどめておく、こういうようなお話でありました。佐多委員からはまだ質疑がある、こういうようなことであります。このままにしておけば質疑はずつと続くだろうと思います。
  113. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 石原さん一つ、重要なポストにおられるからよくわかるだろうと思うが、会期の関係はつきり一つ真相をお伺いすると大体わかると思うのですがね。
  114. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 真相は私もこれは非常にこの委員会に関係があると思いますので、先ほど参議院側の幹部には聞いてみましたが、四時頃になればわかるかも知れんということでありまたが、誰もはつきり言う人がなかつたのであります。
  115. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 河井議長は会期延長のことについて何か政府から通達を受けていらつしやいませんか。
  116. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 何らきまつた考えはお持ちになつておりません。
  117. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 議長に対して正式に政府から申入があつたのでありますか。政府から河井議長に対して何か会期延長のことについて申入があつたのですか。
  118. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) これは政府から申入れるのでなく衆議院から申入れがあればあるのであります。それに関しましてまだそれは丁度三時頃の話でありましたが、衆議院の常任委員長懇談会で非常にこの問題でもめておると、こういうことでありました。それ以来の話は何もなかつた。河井議長に衆議院からまだ何らの話もない、こういうことであります。
  119. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 ちよつと速記をとめて懇談にして下さい。
  120. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  121. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記を始めて下さい。  質疑を続行いたします。
  122. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 従来この渡航の許可とか旅券の発給の手続、そういうものに非常に面倒なものがあるようですが、仮にこの条約が発効することになれば、アメリカとの関係においてはそういう渡航の許可だとか旅券の発給に関する手続だとか、査証の問題とか、そういうものはどういうふうに変化して来ますか。
  123. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) それらのことは第一条に規定してあるところでございますが、旅券の発給はこの条約等に殆んど関係なく、これはむしろ国内問題でございますのでこの条約とは関係ございません。査証の問題になりますと、この第一条の規定に従いまして、第一条で入ろうとする条約商人とか条約投資家というふうなものはどんどん査証が容易にもらえると、只今アメリカとの関係におきまして査証について問題が起つておりますのは、これらの条約が発効すれば何らの問題のないであろうと思われるようなものが実は問題を起しているのでありまして、従いまして、条約が発効いたしますればその問題は解消いたすということになる次第であります。
  124. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その問題というのは具体的に言えばどういうことなんですか。
  125. 下田武三

    政府委員下田武三君) この第一条第一項の入国の目的は、入国の保証が得られるという点でございまして、いま経済局長が申上げましたように、商業活動を行う商社の人間でありますとか企業の関係者、それからそれぞれの国内法で在留することを認められておる者というカテゴリーのものは相手国に入ることがもう保証されておるわけであります。現在は何らの保証かございませんために非常にうるさいチエツクを受けるわけであります。支那に行つたことがありはしないかとかなんとかもう過去のその人の旅行先まで問題になるくらいで実に厄介なのであります。で、たまたま許されましても三カ月の滞在しか許されません。その三カ月過ぎますときに延長を申請いたしますともう一回三カ月、都合六カ月延長が許されるという実に不自由なのでございます。で、これはアメリカに入国することか不自由だけならよろしいのでございまするが、今の情勢におきまして中南米方面に商売を拡げようといたしましても、わざわざ中南米だけに人間を出すということが各商社ともなかなかそこまでは手が届きかねる。そうしますとどうしてもニューヨークにおる支店の社員をちよつとペルーとかコロンビヤとかに行かせたいと思いましても、一たんアメリカを出てコロンビヤに行きますと、今度は入るときに又入国の指示をされるということで、この条約保証を得られますと、ニユーヨークの支店員は、ちよつと用があれば中南米、ブラジルでもどこでも臨時に出かけ又入つて来られるという点で、第一条の第一項の入国の査証ということは簡単なことでございまするが、実際上は非常に大きな意味を持つて来ることになると存ずるのであります。
  126. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、この約条が発効すると、只今おつしやつたその人が過去にどこか中国に旅行したとかソ連に旅行したとか、そういうことの故にチエツクを受けるというようなことはなくなるのですか。
  127. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 只今下田条約局長が御説明になりましたように、ちよつとミスリーデイングな点があつたのではないかと思いますが、条約商人、条約投資家というようなものに関してはこれは保証されるわけであります。ただ第三項に国内法に基いていろいろな留保をしてもそれはその範囲内でということがございますので、若しアメリカ国内法によつて例えば或る種の政治活動をした者とか何とかというふうなことがありといたしますれば、その点の制約はこれは受けるということになるのでございます。ただミスリーデイングかと申上げましたのは、恐らく満州へ旅行した者とか何とかいう者につきましては非常に今までうるそうございましたが、その点は国内法にはございません。恐らくそんなことはないと思いますが、その他のことで制約する条項があるというふうなことがありますれば、これは第三項の発動がある、こういうわけであります。
  128. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、第三項の「公の秩序を維持し、及び公衆の健康、道徳又は安全を保護するため必要な措置を執る締約国の権利の行使を妨げるものではない。」というこの「必要な措置」というのは、アメリカの国民に対する以上に、日本人であるが故にそれとは異なつた措置をとる権利を行うことを妨げるものでないというふうに解釈しなければならんのですか。
  129. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 日本の国民であるが故にということはございません。と申しますのは最恵国待遇ということがございますので、その日本国民のみを新顔として差別待遇するということはできないわけでありますけれども、ほかの国にも同様に当てはまるのだというふうなことがありますれば、それは日本の国民にも適用がある、こういうわけであります。
  130. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そういう最恵国待遇でなくて内国民待遇を排除する意味なのかどうか。
  131. 下田武三

    政府委員下田武三君) これは外国人が入つて来る問題でございます。から、内国民待遇の問題は起らずに最恵国待遇の問題が起ると思いますが、その場合に第三項の留保というのはどこの国でもやつております。日本の国でも出入国管理令でたとえて申しますと、伝染病患者とか或いは麻薬取締違反者とか、或いは売淫あつせん業者とか、そういう道徳上、健康上好ましからざるもの、こういうものはたとえ第一項の保証でおれは条約商人だからと言いましても、それが伝染病患者なら入れないことができる、その権利を留保するというのが第三項の趣旨でございます。
  132. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、さつきの期間の問題はあとでお尋ねしますが、期間の問題でなくていま渡航その他に障碍になつておるというようなことが、この条約発効のために取除かれるというその障碍とか取除かれるものとかいうものは具体的にはどういうことなんですか。さつき一二の例を上げられたのでそれを質問してみるとどうも三項の規定でそれは依然として残つておるのだというお話だから、そうなると障碍が取除かれるということは実質的には何にもなくなるんじやないかという疑いが起るのですが。
  133. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) それはそうでございませんので、例えば現在では条約商人、条約投資家というものでもアメリカに入る査証をもらい得るという保証は何にもないのであります。ただ今言つておりますのはテンポラリー・ヴイジターというかつこうでなんと言いますか、柄のないところに柄をすげるというふうなことも実は行われているというふうなあれでありまして、それもテンポラリー・ヴイジターでやると三カ月ぐらいもらえるということでやつておるのであります。ところがこれが条約が発効いたしますと、そういうことはございませんので期間の点は別にいたしましても堂々と保証されてリザーヴがもらえるということになりますと、その差違はそれは大きな差違でございます。
  134. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうするとその期間の問題ですが、先ほどお話になつた三ヵ月しかおれないし、或いは更新するとしても一回限りの更新ぐらいに過ぎない、そういうのが現在相当期間に来ていて、従つてこの条約を早く発効させないとそういうものに対する支障が非常にたくさん溜つているというような御説明があつたと思うのですが、実際にいま一月ぐらい、現に或いはこの一月ぐらいの間にそういうものが支障になつてつているというような数、或いは種類、どういう種類の人たちが溜つているか、それらを具体的に御説明願いたい。
  135. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 具体的に何十ぐらいございますか、これは只今資料を持合しておりませんけれども、これが実は今は少しよく動き出したのであります。と申しますのは、もうすぐ発効される、調印も済んだし発効待ちなんだということで実は何と言いますか話合つてスムースに行くようになりました。ところが昨年の十二月に例のマッカラン法が通りまして無条約の国の者は入れないというときには実は非常に多く溜りまして、それが全部入れなくなるというふうな状況であつたのであります。それからもつと具体的な例を申上げますと、加州に銀行ができましてそこに人が行つている。ところがテンポラリー・ヴイジターの資格で行つておりますので、三カ月或いはせいぜい六カ月ということでもう帰らなければならない。もつと延ばしてくれというとテンポラリー・ヴイジターはそんなにおるわけに行かないのだということで、日本において待つております人のみならず、現に向うに行つております人にイクステンシヨンができないというふうなことで困つておる、このほうが或い多いかも知まれせん。それから例えば家族なんかが行きます場合にもテンポラリー・ウイジターというふうなことでやつて行くということにいたしますとそのほうの人が非常に多い。こういうふうな例は日本においてヴィザ待ちの人よりむしろ多いだろうと思つております。
  136. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それが非常に困るのだという御説明がたびたびあるから、一体数量的に見て或いは種類としてどれだけぐらいあるのだろうか。ただ困る困るといつておられるのじや事情がわからない。今現にもう期限切れになつて来てどうしても更新のできないのがこれくらいあるとか、或いは一カ月のうちには更にこれくらいになる等々のことが一応おわかりになつているはずだと思います。
  137. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 佐多委員の御質問も御もつともでありまするけれども、外務省で旅券を出しますと、そののちヴィザをとるのは各個人がめいめいで行つてとるわけでありまして、それを一々今度は照会を出してみないと、まあ出入国管理庁と連絡してみれば、今までの旅券発給のものと、そうして税関を越して行つたものとの調査でもしないと正確な数字が出ないので、これをやるということになれば相当時日をかけないとはつきりした数字は出ないのだろうと思います。ただ私どもも知つておりますが、学生でも一応六カ月でなければいけないというので、行つて現に帰つて来てこの間又出かけたのも私あつせんしたので知つておりますが、そういう人もありまするし、読売新聞で住友銀行が非常に困つてつてサンフランシスコで開いた店もこのために或いは閉鎖しなければならないのじやないかというような記事が出ておりましたが、そういう実例は相当知つておりまするが、数のほうは今後取調べさせないとすぐには出ないかと考えます。
  138. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 どうも一、二の例がただあるだけで、実際に実情としてどういう数量的に、或いは期間的に困つているかという具体的な実情かよくわからないのでありますが、どうもその辺の御説明も不十分ですから、これはまあもう一遍あとでやることにいたしまして、次にそれでは今度のこの条約が発効したために国内法との関連の問題があつちこつちに出て来ると思うのですが、その条約発効に関連して、国内法のどの部面にどういう関連が出て来、従つてどういう修正をしなければならんとか改正をしなければならんとかいうようなふうに見当を付けておられるのですか。その一つ一つの関連を少し御説明を願いたいと思います。事実があれば表か何かにして詳しく御説明を願いたいのですが。
  139. 下田武三

    ○府府委員下田武三君) この条約の締結に伴いまして直さなければならない国内法一つもございません。と申しますのは、これは極く一般的な待遇を定めます条約でありまして、その待遇というものは、具体的にはそれぞれ自国人が相手国に行つた場合にその相手国国内法に従う。で、相手国人と同じような内国民待遇を保障せられるというのが本条約を通じての一貫した精神でございますので、結局特に違つた待遇をするための条約でございましたら国内法改正の問題がございまするが、大体現在の相手国国内法を認めた上での内国民待遇を保障してもらおうということでございますので、国内法関係日本側で直さなければならないものは一つもございません。
  140. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、国内法がある限りはその国内法が十全に効力を発揮する、これに影響されることは毛頭ないのだというふうに考えていていいわけですか。
  141. 下田武三

    政府委員下田武三君) その通りでございます。ただ一つ困りますことは、現在国内法というのは情勢の変化によりまして変り得るものでございまするから、その国内法を将来変えるときにその変える自由まで束縛されては困るという問題が半面生ずるわけでございます。そこで先般お尋ねのような、例えば企業の国家管理をする場合にはやはり問題が生じ得ますのでその場合のことも規定します。或いは制限業種につきましても制限する限度を定める権利は、国内法の自主権に鑑がみましてやはり留保いたさなければならないわけでございます。そうすると、そこで既得権の問題が生ずるのでありまするが、将来この条約締約国国内法を釘付けにするということまで約束するわけには参りません。  そこで制限業種について或る制限を定める権利を留保いたしまして、将来情勢の変化によつてたとえ国内法を変えても、将来国内法が変つたときまで許されていたものは既得権として引続いてなすことができる。結局現在の国内法を前提とはいたしまするが、その結果将来まで拘束を受けることを不便といたしまする部面につきましては、やはり権利を留保いたしておるのであります。そういう関係になつておるわけであります。
  142. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると現在の国内法である限りは、その国内法が十全に効力を発揮するんでしようが、将来それと違つた国内法或いは改正法ができた場合には、それも何ら制約を受けるものではないというふうに考えていいんですか。それとも今の御説明だと何か制約を受けるような御説明でもあるのでありますが、そのところがはつきりしないんですが、例を上げればさつきの公有権の問題、そういう問題が国内法としてできれば、これは国内法でできたんだからということで何らこれに制約されることなしにずつと行ける、或いは現在の外貨法は全部十全の効力を発揮するので、将来この外資法を若干いろいろな事情の変化によつて改正する、その場合にはこれにチエツクされるのか。
  143. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 外資法につきましては例の旧株取得を三年後に認めるということになりますが、それによつて影響を受けるわけであります。改正しなければならんということになります。これが唯一の直接的な国内法を改正を要する点だろうと思います。その他の点については条約局長から説明いたします。
  144. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 特別なああいう例は一つあるでしようが、そうでなくて一般的なほかの条項で外資法を改訂をなければならん、修正をしなければならん問題が生じて来る。そのときに、いや、それはこの条項に抵触するからそれは困るんだというふうな抑制ならチエツクが出て来るものかどうか。
  145. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 例えばそれの一番出て来まする問題は私は七条二項だろうと思います。これによつて制限業種はこれこれだということを約束しておるのであります。従いましてここに書いてございません鉄鋼業というようなものを制限業種にしてやろうという場合には、この条約の影響を受けましてそれはできない、少くとも協議事項にして同意を得た上でなければできない、そういう七条二項の制限業種の関係が一番多いだろうと思います。  それから先ほどおつしやいました公有にする、国有にするというふうな場合はこれはできます。できますれどもやる場合には正当なコンペンセイシヨンを払えということが出て来ますけれども、それを遂行する限り国有をするのに何ら妨げになるものではございません。
  146. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それではその問題はもう少し一つ一つ具体的にお尋ねして行きますが、先ず第六条三項の問題ですが、例の「公共のためにする場合を除く外、収用し、又は使用してはならず」というこの条項は、日本の憲法第二十九条ですか、財産権の不可侵の規定をそのままここへ持つて来られたものだというふうに考えていいのかどうか。
  147. 下田武三

    政府委員下田武三君) その通りでございます。
  148. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうするとあの条項には例えば「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。」正当な補償をすればいいということになつているのですね。然るにこの条約においては正当な補償だけでなくて迅速に行わなければならん。この迅速ということをこの間もちよつと問題にしたのですが、はつきりわからないのですが、例えばそのほかの国々でも同じような規定だというお話でしたが、この迅速というような言葉は皆同じなんですか。
  149. 下田武三

    政府委員下田武三君) 憲法第二十九条の「正当な補償」という字句の中には、価格の点において正当であり、又補償の実行の時期において正当であるというあらゆる点を含んでおると存じます。ただ憲法は簡潔的に大原則を謳つたものでございますから、正当な補償という一言で言つておりますが、実際問題としてはこれを詳しく規定する必要がございまして、日本で申しますと例えば土地収用法なんかでも迅速な補償をしなくちやならんというふうに、個々の特別法ではもつと詳しく規定しておるわけでありまして、結局憲法の正当な補償という字句の具体的な解釈は、それぞれの土地収用法のような個別法で書いてありますので、大体この条約の六条三項に掲げました条件は、日本国内法考え方とも一致しておる次第でございます。
  150. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いや、それならばここも正当なということだけで評価が正当であるのみならず、補償の時期についても正当なということを含ましているのだ、そういう意味で憲法と同じだというならばわかるのですが、そうでなくて迅速にということを特に入れているコロンビヤとの条約は、原文がどうなつているのか私、原文をまだ拝見していないのでわかりませんが、翻訳によると即時にというような言葉を使つてある。そうなると迅速にということは非常に限定された意味になるのですね。併し大きな、この公共化しなければならない、国営化しなければならないような事業の補償というのは、そんなに迅速にできるはずのものじやないし、相当長期を要すると思います。そうだとすると、もうそういうものを全然これでとめてしまつているということになる。
  151. 下田武三

    政府委員下田武三君) これはこう書いてありますからといつて日本の国内で日本人が与えられる補償以上のものを要求する権利を向うに与えるのではございませんので、第三項にこれは内国民待遇の原則を誰つておりますが、結局内国民と同様の補償を与えられればそれでいいわけでありまして、迅速という点につきましても例えば土地収用法でもそういうふうに謳つておりますし、又実際に換価することができるものでなければならないということも書いてありますが、これも土地収用法には「損失の補償は、金銭をもつてするものとする」というように書いてありまして、大体今日文明国で公用徴収なり土地収用なりをいたします場合の共通した観念をそのままとつているわけでありまして、従いましてこれが非常に日本に不利に作用するような主張をなす根拠をアメリカ側に与えるという御心配は要らないと思います。で、万一これで問題が起りましても結局これは日本の収用であり、日本法令によつて行われるものでありますから、米国人が不満がありましたら日本裁判所訴えて、日本裁判所日本法令を公正に適用して解決すればいい問題でございまするから、その点の御心配は第一には法令建前が各国大体こういう収用の場合に共通の観念をとつておることと、第二は実際問題になつた場合には日本裁判所が公正な判断を下せばいいのであるという点から、御心配の点は大丈夫ではないかと存ずるのであります。
  152. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いや、その実際の国際的な慣行なり何なりを規定しているんだからいいというようなお話ですけれども、私たちの感じからすればこういう規定アメリカがする場合とイギリスがする場合と非常にやはり感じなり主張なりが違うよう気がするのです。そこでなかなか安心がならないのですが、例えば補償は実際に換価することができるものでなければならんという規定があつて、土地収用法もそうなつているからというようなお話ですが、土地なんかの場合は或いはそうかも知れませんけれども、国営にするかどうかというような非常に大きな問題の収用の場合には、場合によつては実際に換価することかできるかどうか疑問であるような、例えば交付公債で補償をするというような問題も起り得ると思うのであります。ところがそういうものはこれではできないということになるんじやないかと思います。そうなると国内法で公用徴収を憲法で一般的に制約しているのとは違つて非常に細かく非常にシヴイヤーになつているという感じがするのです。そこいらはどういうふうに考えたらいいか。
  153. 下田武三

    政府委員下田武三君) 先ほどから申上げております通り、大体米側としては日本憲法の公正な規定に信頼しておりますし、従つて憲法の下にあります国内法令につきましても別に心配をしておりません。でございまするから共産主義国家で行われましたような独裁的な権力を以て圧力を加えて人民の不平を抑えつけるというようなやり方ならともかくでありますが、文明国におきましてひどいことをすれば、先ず影響のある国民か不満を述べて国民が承知しないと思うのであります。その国民の不平を意に介しないような制度の国でしたらこれは別問題でありますが、民主主義国家で若しひどい補償の仕方をしましたら国民が第一だまつていないと思います。その場合にはアメリカ人も国民の不平不満と同程度の不平不満は洩らすかも知れませんが、文明国の共通の観念の下に行われる補償でありましたならば、これはもうアメリカ人は納得せざるを得ない。イギリスの労働党内閣のときに幾多の企業が国家管理になりました。又フランスにおきましても従来四大鉄道会社が国営に全部合併されてしまいました。又ルノーのような私立自動車会社が国有の自動車工場に変つてしまいました。そういう場合にも別にフランスなりイギリスの国民と同じ程度の補償をアメリカ人が与えられまして満足しておるのでありまするから、日本におきましても共産独裁主義的な暴圧さえ加えなければ、日本が民主主義体制の下で日本人も納得するような補償をいたします限りは、アメリカ人も決して文句は言えないはずだと考えております。
  154. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それは問題がないのです。何でも国会を外にして権力的に暴力的に収奪をするということを問題にしておるではなく、これは飽くまでも国会において正当に規定をしてそれでやる。ただその場合に迅速に行われなければならんとか、或いは実際に換価することができるものでなければならんということがこんなに明瞭に書いてあれば、これをたてにとつて反対なり何なりをすることは可能になつて来る。そうだと憲法に規定しておるよりも、もつと深くそういうものを制約しておることになる危険性があるし、向うは向うとしてこれを唯一のたてにとる限りは合理的な主張ができるのじやないか、そういうことを許す結果にならないかという心配なのです。
  155. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 六条の四項に三項も含めまして「私有企業を公有に移し、又は公の管理の下に置くことに関するすべての事項について、内国民待遇及び最恵国待遇よりも不利でない待遇を与えられる。」つまり内国民に対すると同じことをやるのだということを書いてございまして、従いまして若し本当に時間がかかつて、普通迅速だと思うけれども迅速ではないのだというふうな場合でも、内国民と同じ待遇という規定がございますので、御疑念の点はこれで十分カバーされると思つております。
  156. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ただ例えば「実際に換価することができるもの」というような場合には、内国民の場合は交付公債でやれる、そういう場合も相当考えなければならんと思う。社会党の考え方でも、或る者は場合によつては交付公債でやるのだということすら考えておる、これは内国民の待遇のときにはそうなると思うのです。そのことと実際に換価することができるものでなければならんということは背離しないのかどうか。
  157. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 内国民待遇を与えるということによりまして、今おつしやるような公債を発行するというふうなことでも内国民よりもいい待遇をやるるものでないのだということは、これは一貫せる大きな主義であります。従いまして内国民と同じような待遇を与える、内国民よりも悪からざる待遇を与えるということで解決し得ると思います。
  158. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その公共のためにする場合というのは法律に明示した目的に従つてやることを必要とするのか、或いは行政措置として社会的にそれが有用である、有益であるというような情勢判断によつてそれをなすことも妨げないのか。
  159. 下田武三

    政府委員下田武三君) これは憲法二十九条の建前から申しまして、行政官庁の裁量で勝手に収用するということは許されないのであると思います。従いまして土地は土地収用法がありますからできますし、何か特定の企業を国有或いは公有にするという場合には、当然憲法の建前からいたしまして先ず収用を行うための特別法が国会の御承認を得て制定せられて、その法律の適用としてやはり収用されなければならないと考えます。
  160. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、何かこのお手本になつたといわれるコロンビアとの条約ですか、あれは必ずしも法律によることだけでなくて、そういうふうに社会的に有益であるという判断の下にもできるのだというような規定になつていて、そこは少し違つていたのじやないかと思いますが、どうなんですか。
  161. 下田武三

    政府委員下田武三君) コロンビアの条約には公共の目的のためにというのと、社会的に有益であるというのと入つておりますが、これもやはり社会的に有益ということは行政官庁の自由裁量できめるのでなくして、いざ収用するという場合には法令が必要なんだろうと存じます。
  162. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そこは原文はどうなつておるかわかりませんが、訳文には法律に定める公共の目的の場合及び社会的に有益であるという理由による場合、この二つに切つてあるのですね。これはどういうふうに解釈するのか。
  163. 下田武三

    政府委員下田武三君) これは原文によりますと、法律の定めるところに従いというのが、公共の目的と社会的に有益と両方にかかつております。
  164. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ああそうですか。それからこの条約によると、いろいろな財産が保護されることになつておるのですが、その財産とは何ぞやというような規定はあるのですか、ないのですか。
  165. 下田武三

    政府委員下田武三君) 別に財産の定義を定めた規定はございません。
  166. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ここでは具体的にはどういうのを財産と考えておられるのですか。
  167. 下田武三

    政府委員下田武三君) これは結局それぞれの締約国国内法によつて財産とみなしうるものはすべて財産になるわけであります。
  168. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それも全部国内法通りと考えておけばいいということですね。
  169. 下田武三

    政府委員下田武三君) さようでございます。
  170. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それからよく例の問題になる銀行業務ですが、預金、信託、そういうものを一応認められることになるのですが、さつきそれらの業務は占領中に発生したものかどうかということで高良委員との間に二三質疑があつたように思うのですが、そこではつきりしないのですが、一体そういうアメリカ銀行の預金というようなものは戦前といいますか、或いは終戦前といいますか、それにはどの程度あつたのですか。それから従つて又占領後発生したそういうものはどことどこで、それから、金額的にどういうふうに増加して来たのか、その辺をもう少し御説明を願いたいと思います。
  171. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 戦前日本にありました外国系の銀行は、インター・ナシヨナル・バンキング・コーポレーシヨンというのが横浜、神戸、東京にございました。それからパーク・ユニオン・フォーリン・バンキング・コーポレーシヨンは横浜、東京。アメリカン・エキスプレス・カンパニー・コーポレーシヨンは横浜・神戸。アジア・バンキング・コーポレーシヨンは横浜、神戸。ナシヨナル・シティー・バンクは大阪、横浜、神戸、東京。それから香上銀行が横浜、神戸、長崎、東京。それからチヤータード・バンクが東京、横浜、神戸。日仏銀行は東京、横浜、神戸。
  172. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 アメリカ関係のやつだけでいいのです。
  173. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) そうしますと、アメリカ関係は先ほど申しましたものであります。それから終戦後新たに行いましたのがバンク・オブ・アメリカとチエース・ナシヨナルであります。それから先ほど預金や、信託の業務を銀行ができるようになつたとおつしやつたのでありますけれども、これはできるできないは、今ありますところのナシヨナル・シティとバンク・オブ・アメリカとチェース・ナシヨナル、これを除きましてはこれを認可するかしないかは将来のものに関しましては日本がきめ得ることでありまして、既得権として認めますのはそれだけであります。
  174. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 三行ですか、四行ですか。
  175. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 三行であります。四行と申しますのは、アメリカン・エキス・プレスが現在申請中でありますが、これはまだはつきりはたしかきまつていないと思います。
  176. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうですが、まあその三行が新らしく出て来るし、前からあつたやつもあるでしようが、それらの前からあつたのは為替業務をやつていただけで、ここで今新たに既得権として認められたようなことはやらなかつたのじやないですか。
  177. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) そうではございませんで、信託業務はいま私ははつきり覚えておりませんが、為替と領金の業務をやつておりました。
  178. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 終戦前ですか。そうすると日本側にはまあそういうものがそういう形で出て来るのでしようが、アメリカには日本のものはどの程度出ているのですか。
  179. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 只今アメリカに参つております日本の銀行は、東京銀行、住友銀行、千代田銀行がニューヨーク、三和銀行はサンフランシスコ、駐在員がおりますのが第一銀行でシカゴ、これだけおります。只今申上げましたのは為替業務のみをやつております。
  180. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 為替業務だけですね。
  181. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) それから一般業務、領金業務も含んでやつておりますものでは、現地の法人になりました加州東京銀行、加州住友銀行、この二つは本店はサンフランシスコで支店がロスアンゼルスにございます。
  182. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると日本側の銀行で向うで領金業務をやつているというのはないわけですね。それからこれは許されておるのかどうか。
  183. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これは州によつて違いますので許しておる所と許してない所とございます。不幸にして只今のところニューヨーク州はこれを許しませんでそれができないということになつておりますが、本邦の銀行の支店を許して領金業務を許すという所ではやり得るわけであります。それから加州は一般業務、預金業務を含んでやつておりますが、これは現地法人にしたほうが都合がよいというので現地法人になつておりますので、日本の銀行の支店というわけではございません。  それから先ほど私が、戦前に日本にありましたアメリカの銀行がやつておりました業務で、信託業務ははつきり覚えていないと申上げましたが、これは全部一般業務全般をやつております。
  184. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると今の御説明によりますと、日本側の銀行は殆んどそういう業務はアメリカではやれていない、アメリカでやる場合には、向うの企業名にしてやらなければならない、そのほうが都合がいいかどうかということになつておるのですが、それらは今後条約が発効すれば、必ずしも日本名を使わなくてもやれるようになるのかどうか。或いはもう禁止されておる所は、これは各州でできないということになるのですか。
  185. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) それは議定書の四に書いてございますように、アメリカの州或いは準州がそれを許しておるかどうかということによりまして、向うが許していなければやはり日本のそういう業務はできませんけれども、それが向うが許していない場合にはこつちも許さない、相互主義でやる、こういうことになつております。
  186. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると向うで許されておる所と許されていない所と、その区別、表か何かできておりますか。
  187. 森治樹

    説明員(森治樹君) 日本の銀行のアメリカの州による取扱で現在外務省で調査をいたしておりますのは、我が方の銀行の進出を予想せられる州に限つて調査いたした表はございます。  先ずニューヨークで御説明申上げますと、外国銀行の支店設置は可能でございます。但しその外国銀行の支店は為替業務に限定せられまして、預金業務はこれを行うことはできません。カリフオルニアにおきましては、支店設置は可能でございますが、外国の支店の形態においては預金業務及び信託業務はできません。ハワイにおきましても支店設置は可能でございますが為替業務に限定せられております。なお現地の法人の設立はカリフォルニアでは許されておりまして、現地法人の設立が許可されました場合には、その銀行への外国の資本参加に対する制限もなく、その業務に対する制限もございません。ニューヨークにおきましては法律上はニューヨーク州の法人の設立が可能でありまするが、ニューヨークの銀行監督官が実際上は認可しないだろうと思うということになつております。ハワイにおきましては設立可能でありまして業務に制限ございません。
  188. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうするとこの日本に許される三行というのは本拠は向うではどこにあるのですか。
  189. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) バンク・オブ・アメリカはサンフランシコでありまして、その他の二行はニューヨークであります。
  190. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうするとニューヨーク、サンフランシスコは今お話のように何か為替業務しかできないのですが、そういう所に本拠を持つておる銀行が日本に来ると日本では預金業務ができるということになると、相互主義はそこでは守られてないということになつておるわけですか。
  191. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 現在日本にありますところの三つの銀行に対しましてはそうでございます。但し将来そういう所から来るものに関しては、制限し得るという恰好になつて参ります。  それからニューヨーク・ステートのバンキング・アクトというものは百年以上前にできましたもので非常に何と申しますか古いものです。それが未だに続いておる。でそれは恐らく見通しでありますけれども近く改廃される場合にはそういう制限がなくなることを希望しておりますし、そういうことも根拠のない希望ではないのじやないかと考えております。
  192. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 将来改正される見込があるならば、改正されたときにそういう問題は解決すればいいように思うのですが、私たちは例えばNATO条約の駐留軍の規定等々の問題も批准し発効したときに、又日本の行政協定も直すということまで言つておるのだから、恐らく近い機会に変えられるだろうからそれを見越してという必要はないと思います。
  193. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 近い将来にそれを改廃されるであろうからそれを見越してという意味ではございませんで、非常に古くて何と申しますか現代の感覚には合わないような法律が未だに続いておるということを申上げたのであります。従いましてこれが改廃を見越してそのときにやるということは、やることは希望さるべきだと存じますけれども、いま向うの銀行がこつちに来てやつておることは害をなしていないのみならず、我々は日本の経済にも寄与しておるということを考えておりますので、従つてそのギヤツプができないというためにも存続を許して差支えないものであるという考え方からそういうふうにいたしておるのであります。
  194. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 向うがこつちに来ていて預金業務をやつておることが、日本の経済なり金融に対してプラスになつておるかマイナスになつておるかという点は、見る人によつていろいろ意見があると思うのです。又違う見地もあると思うのです。併しそれならば、政府はそれがこの限りにおいては実質上プラスであるという判断だと、相互主義はここではゆがめられているのだが、その実際上のプラスを勘案して、相互主義を貫くことはここに関する限りは放棄しているのだというふうにお考えになつているのかどうか。
  195. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) これは銀行の預金業務についてはそうなるかも知れませんが、そう申しますれば今度アメリカ側から言えばアメリカ人は日本では農業の権利は認められていない。ところが相当農業の土地に関する日本人の既得権というものを向うは認めておるわけでありますからして、佐多委員のおつしやるようなことをアメリカ側から言えば、自分のほうが非常に損だ、一方的に日本人のこういう所有権なり農業をやる権利を認めておるということでありまして、ただ一つの業種だけを見て実際上相互的になつていないから、日本が非常に不利をそのまま引受けたのだという議論は必ずしも正当じやないというふうに考えております。
  196. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 だから或いはそういう全体を見て、そのほうが相殺して得だから、そういう観点から相互主義を傷つけてもこれはやつたほうがいいのだというふうにお考えになるのか。或いはさつき言つたようにただ銀行だけを限つてみても向うの預金業務その他を許すことが却つて実質上日本プラスになるから、そういう意味で許したのだというようにお考えになるのか。とにかく相互主義が傷つけられておることは事実なんじやないですか。
  197. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 銀行業務だけについて言えば誠にその通りかと考えます。併し先ほど森参事官からも申しましたように、事実上サンフランシスコでは住友や東京銀行は預金業務を行なつておる。勿論向うの法人としてではありますが、事実上向うの法人になつたからといつて大きな不利はない。日本でナシヨナル・バンクやナシヨナル・シティが行なつておると同じ業務は実際上認められておるわけでありまして、お説のように或いは法律的に言えば厳格な相互主義ではないかも知れないけれども、全体をにらみ合せたときに認めるほうが日本のために却つて有利だという考えでこれを承認したのであります。
  198. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 サンフランシスコでやつておると言われるけれどもそれは向うの法人の名前に変えてやらなければならない。向うが堂々とこつちへ来てやつておるように堂々とやつておるわけじやない。それはそのほうが税金その他の関係からいいのだという理由もあるかも知れませんけれども、少くともこつちはアメリカ銀行と同じように堂々とやれるだけの権能は持つていない。  それから更に日本人が向うに持つておる土地その他等勘案すれば相殺プラス・マイナス同じことなんだというお話がありましたが、そこでこの間、土地所有の問題についての資料をお出し願いたいと言つておいたのですが、何か出て来た資料は一体日本人の所有なのか、或いは日系のアメリカ人の所有なのかそこらがはつきりしないのですが、私が断片的に聞いたところによりますると日本人は土地は殆んど持つていない、皆向うの人の名前にしておるか、さもなければ向うの二世でなければ持つてないというような実情なんで、この間率出しになつた資料はその諸君の所有しておる土地じやないかと思うのですが、そこのところがはつきりしないのです。
  199. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 差上げてあります表は一世のものであります。
  200. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それじやその問題は後に述べますが、それからここで言われておる既得権というのは今の銀行のそれとは別として、造船とか鉱山会社あたりの株式、そういうもので既得権というものはないのですか。
  201. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 日本においてアメリカ人が鉱山なんかやつておるというものはございません。
  202. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いやそうですか、そうすると鉱山会社の株式というものも持つていない。
  203. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 制限業種の株を持つておるという者はございます。これは約全体でたしか三億だつたと存じておりますが、そのブレークダウンはどうだつたか今覚えておりませんが、制限業種全般に亘りまして約三割の株を持つておる。
  204. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうするとよく言われる既得権というようなものの種類とそれの内容、それを取得するに至つた経緯、そういうものは何か全般に亘つてわかるような資料と御説明を願いたい。
  205. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これは既得権というものは、あたかも我々も交渉いたしますときに、占領中に、戦争なかりせば得なかつたであろうというような既得権を残しておくというようなことを要求しておるかと思いまして、実はそんな不合理なことは許すべきものではないというので交渉いたしたのでございます。そういたしましたところ、向うからそういう意思は毛頭ないが、若し占領中に占領なかりせば得なかつたであろうというふうなものがあつたら申出てくれ、そういうものは全部無効にすることにちつともやぶさかでないという回答でございまして、その結果調べてみましたところが七条第二項の後段によつて既得権となり得るものというものは、只今申上げました銀行そのほかには制限業種における、株式の取得、それだけであります。株式は約只今申上げました通り三億ございますが、ブレークダウンをたとえて申上げますと、工業が約八十二万株で一億、それからガス電気が八万七千株で四千万円、造船が二十五万株で二千七百万円、それから水産が九万株で五百八十八万円、乳業が九千株で六十二万円、合計が二百三十四万株で二億八千五百万円、こういうふうになつております。
  206. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それはあとでその資料をお出し願いたい。それから今の預金、例えばこの間のお話によるとアメリカ人の銀行預金が八十五億ぐらいであるというようなお話だつたが、ああいう銀行の預金が占領中にできたというのはどういういきさつによるのですか。
  207. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 恐らく大株といたしましては例のCMP(セントラル・モーシヨン・ピクチュア・エクスチェンジ)が日本で映画をやりまして、その売上金が初め大体ブロックされておりました、それが今でも十五億円ぐらい残つております。その十五億円と申しますのは、その当初からだんだん交渉いたしまして相当のパーセンテージを送金せしめるということにいたしましたので減つて参りましたけれども、一時は相当の額に上つておりましたが、恐らくこれが預金の大部分をなしたものであろうと思います。
  208. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今のCMPというやつはアメリカ人の国内円の預金ですか、それとも内国人の預金なんですか。
  209. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) アメリカのです。
  210. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今のアメリカの八十五億といううちでアメリカ人の国内預金でなくて日本人のものというのはあるのですか。
  211. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これは銀行のなかなか営業の機密でございますので、まあ役所のほうから調べれば不可能じやないと思いますけれども、正確に幾らどうなつておるかということはどうも調べることは普通困難じやないかと思います。
  212. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その預金の機密性の保持というような点ですが、これは日本の銀行に対しては銀行法その他で場合によつては、そういうものを調べることができるのですが、その程度のことはアメリカ銀行に対してもできるのですかどうなんですか。
  213. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 日本の銀行に対してやれますことは無論外国の銀行に対してもできますので、役所のほうからということで調べればこれは不可能じやない。ただやはりこれを公表するということはなかなか信義にもとるといいますか、銀行の立場もありますので。これは調べることはできます。
  214. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それから旧株取得の外国人の蓄積円は今どれくらいあるのですか。
  215. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 先ほど申上げましたように映画関係が約十五億残つております。これが約今後も月に一億ぐらいの割でふえて行くのじやないかと存じますが、この映画関係のやつは送金のパーセンテージをきめましてそれ以上はもう送らせない、それから残つたやつは一応これはブロックするというふうな約束に相成つております。  そのほかの蓄積円はどのくらいあるかと申しますとこれは映画関係が一番多くございまして、その他がどのくらいであるかということはちよつと手許には資料がございません。
  216. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 今、旧株のことを言われたのじやないですか。
  217. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 旧株取得によるやつです。
  218. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 私の調べましたところでは、これまでも申上げましたように百億円のうち株式は新株で大体七六%、旧株で一三%という比率になつておりまして、その旧株の一三%は大部分アメリカ人であります。新株のほうの七六%、七十五億円のうち約アメリカ人が持つておるのは金額にして大体五十億円ぐらい、こういう比率になつております。それでその旧株のほうの内容を申しますと、一三%即ち大体十三億のうち大部分は外貨送金の保証の付いたもの、即ち許可を得てとつた例えば技術契約をするとかいろいろな契約をいたしまして、そうして外資委員会の議を経てとつたものが大部分であつて、送金保証のないもの、現在私どもがこの条約に関して問題にしておりますところの円で買つて、そうして蓄積して置くという今この条約上問題になつておる種類の旧株というものは殆んどノミナルなもので、大した金額に上つていないというのが今まで調べたところの結果であります。
  219. 高良とみ

    高良とみ君 関連質問よろしうございますか。
  220. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) どうぞ。
  221. 高良とみ

    高良とみ君 ちよつと席をはずしましたが、日本人が外国の株を取得する権利はやはりアメリカの場合は何の制限もなくやれるのでございますか。
  222. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) その通りでございます。自由でございます。
  223. 高良とみ

    高良とみ君 大分世界の情勢も変つて来ておりまするけれども、従来しばらく前までは大分各国とも自分の国の事業を保護する意味で五〇%以下くらいしか許されなかつたものなんですが、そうして日本が例えば支那を席巻しておりました時代にも汪兆銘は四九%ぐらいまでしか日本に許さなかつたというような例なんかもあるので、その点は今は世界各国が皆無制限にお互いによその国の株を取得する権利をお互いに認めつつある傾向ぶ見えましようか。
  224. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 傾向といたしましてどつちの傾向に行つてるかということは、どつちかと申しますと恐らく自由の方向に行つていると思います。で、ただ日本におきましては御承知のように、七条二項におきまして相当の制限業種がある。これが相当広いのでございますがこの範囲内におきましては例えば四九%でなして全然持たせない、或いは一〇%以上は持たせないということをしようとそれは自由でありまして、そのために制限業種のあれが他条約と比べましては相当広い事業が条項としてあるわけでございます。
  225. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと、一番この株を持つて簡単に、この制限されているような国家的或いは公衆の福祉に関係するものではない、いわば安きにつくような投資的なもの、或いは賭博的なものなどの会社に外国資本或いはいわゆる第三国資本というものがどんどん入つて来る虞れがあるのではないか。又殊に銀行において治安が安定しないときは資本が逃避して来てそれが一つの長く続く逃避となつて日本に固定して来る。端的に言えば植民地的な傾向がこの業界の下層へずつとしみこんで行くという傾向を、こういう互恵的な通商条約では防ぐことができないものじやないか……。
  226. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) その点はお配りしてありますものの四十二頁に議定書の第六というのがございますが、それに「いずれの一方の締約国も、外資の導入について、第十二条2で定める通貨準備の保護のため必要な制限をすることができる。」つまりそういう目的のために例えば賭博場を建設するというふうなためにそういうものが入つて来るというふうな場合には、それは日本の経済に寄与するところが少しと認めますれば、それを許可することを拒絶することができるのであります。従いまして、この議定書の六でそういうことを防遏して行く措置を講じているわけであります。
  227. 高良とみ

    高良とみ君 その今のお話の六の通貨準備の保護のためというこれの内地における為替管理でありましようが、為替管理以外にこれを保護して行く立法の基礎をお示し願いたいと思います。
  228. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これはこの議定書の十五の旧株の取得をとにかく三年間は制限しておるということ、それから若し為替の制限を受けないでいいんだということでありますれば、これは議定書の六の審査というものは受けなくていいということになるのでありまするけれども、これがやはり物が入つて来、或いは投資をいたしましてそれで事業をやろうという本当の目的は、その収益を何とかしてやはり本国に送りたいんだというのが殆んど大部分のものでありまして、従いましてこの投資しつ放しで何も送金しなくてもいいんだというふうなものでありますれば、これは表面上それを制限することは、ほかの法令によつてはできますけれども、この条約そのものによつてはできがたいかも知れませんけれども、そういう場合は極めて稀有の場合でございまして、従いまして百のうちの九十九というものは、これで殆んど網をかぶせ得るというふうにできておると存ずるのであります。
  229. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 これは更に問題があると思いますが、それは後にしまして先のほうを続けます。そうすると、いま次官のお話によると百億の株式投資の中に旧株は一三%程度というお話ですね。そうすると、この旧株取得が日本経済に混乱を起すとか何とかというような懸念はちつとも考えられないということになるのですか。
  230. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 非常に今少いということが一つ。もう一つは、この少いもののもう殆ど大部分は、この外貨送金の保証のあるものなんです。ということはスターリンをして日本で技術を導入しなければならん。そうすると、株式を四〇%は持たさなければならんというような関係から、外資委員会の審議を経てそして許可をしたものなんです。でありますからして、旧株を三年たつたあとでも送金もなしに非常にたくさんの者が飛びついて来るだろうというようには想像できないわけであります。今のところは、それは旧株を許可制度になつておるから制限されておるということを佐多委員としてはお考えになるでありましようけれども、併し本式に投資しようとする者がこの日本の経済情勢から見まして、そう日本に円をたくさんだくわえておいてここでスペキュレーシヨンをやろうというようなものはそう大きなものにならないだろう。而も又増資なども行われましたならば旧株の面白味もだんだんなくなつて来る、こういうような考え方でおります。
  231. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いや、今のような十三億程度だし、大したことはないのだということの議論から行けば、三年を経過する間に制限をしなければならんというようなことも必要はないということになるのですね。
  232. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) それは今は三年間は制限しておるわけなんです。
  233. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 だからその三年間はここ当分は制限をしておられることは、やはり旧株取得による日本の経済にいろいろな悪い影響を与えられることが考えられるということを前提にして、少くとも三年はとめて置かなければならんというお考えなんじやないですか。
  234. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) その通りであります。
  235. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 この条約は将来ほかの国とやはり友好通商航海条約を結ぶサンプルになるというようなことがあるのでございましようか。
  236. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) これは非常に詳細に規定せられておりまして、でき得ればこうした条約が他の国とも結ばれることを希望するわけであります。併し各国いろいろ考え方も違いますし相手方の立場も考えなければならないので、丁度これと同じ条約が多数の国とできるかできないかは疑問でありますが、通商条約の形式としては非常によく整つたものであるというふうに私は考えておるものであります。
  237. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういうような将来まあ日米間ではこの程度でまあお作りになつて、それで今度はほかの国と結ぶ場合に、これを基準にして結ぶことが非常に不利になるような場合が起つて来ると思うのでありますけれども、この旧株取得の問題や事業活動の問題やそういうような場合に、まあアメリかとの場合はこういうふうにしましたけれども、あとの国とはそういうわけには行きませんというようなことが言えるものでございましようか。
  238. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 通商条約原則として最恵国待遇或いは内国民待遇というような規定を持つておるのでありまして、或る特定の事項について相互主義でなければならん。対価を以て与えたものについては対価がない限り与えないというような条項も設ける場合がありまするが、併し原則としては、こういう待遇をアメリカに与えましたならば、他の国と結ぶ最恵国待遇の条項によつてこれに均霑するものと考えなければならないと思います。
  239. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 今次官のお話だと、日本に来て、将来自分のアメリカ本国に送金できるというようなものに対しては資本を投入するだろうけれども、アメリカのお金として本国送金のできる可能性のないようなものは、結局どんどんお金を持つて来て投資するようなことは大体考えられないとおつしやつたわけでございますね。ところが今度アメリカとでなくて最恵国待遇として、例えば華僑が盛んに活躍しておる、その華僑の本国というような国とこういうような条件でやつてくれというようなときには、立場が今度は非常に違つて来るわけじやないでしようか。
  240. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 資本の投資というような場合には経済状態のいい所へ入つて行くのが原則でありまして、その意味においては華僑あたりが日本へ円を持つて来て、ためて置くということも考えられるわけであります。併し、これは日本の経済にとつてそれほど大きなものではないでありましようし、又場合によつてはそれが日本の経済にいい影響をもたらすということもあるだろうと考えます。この条約がございまするためにこれに均霑して他の国が非常にたくさんの資本を日本へ持つて来る何らの保証はなくともどんどん投資するというようなことは私ども今のところは想像いたしていない次第であります。これまでも自由にやつてつたわけであります。
  241. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  242. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記をつけて下さい。  それでは本日の質疑はこの程度で打切りまして、外務委員会は散会いたします。    午後五時二分散会