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1953-07-22 第16回国会 参議院 外務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十二日(水曜日)    午後二時三十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     佐藤 尚武君    理事      佐多 忠隆君    委員            古池 信三君            小滝  彬君            河井 彌八君            高良 とみ君            羽生 三七君            杉原 荒太君   政府委員    外務政務次官  小滝  彬君    外務省参事官    (外務大臣官房    審議室付)   大野 勝巳君    外務省経済局長 黄田多喜夫君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       神田襄太郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○日本国フランスとの間の文化協定  の批准について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○団結権及び団体交渉権についての原  則の適用に関する条約(第九十八  号)の批准について承認を求めるの  件(内閣提出衆議院送付) ○工業及び商業における労働監督に関  する条約(第八十一号)の批准につ  いて承認を求めるの件(内閣提出、  衆議院送付) ○職業安定組織構成に関する条  約(第八十八号)の批准について承  認を求めるの件(内閣提出衆議院  送付) ○日本国フイリピン共和国との間の  沈没船舶引揚に関する中間賠償協定  の締結について承認を求めるの件  (内閣送付) ○日本国アメリカ合衆国との間の友  好通商航海条約批准について承認  を求めるの件(内閣送付)   —————————————
  2. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 只今より外務委員会を開きます。本日は最初MSAを取上げることになつておりましたが、外務大臣予算委員会に出ておりますので本件あとに廻して次の議題に移ります。   —————————————
  3. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 次に日本国フランスとの間の文化協定批准について承認を求めるの件を議題といたします。質疑のある方はどうぞ順次御発言をお願いいたします。御質疑はございませんか。質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶものあり〕
  4. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは質疑は終了したものと認めます。本件採決都合によりまして次回に延期いたします。   —————————————
  5. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 次に団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約第九十八号の批准について承認を求めるの件、工業及び商業における労働監督に関する条約(第八十一号)の批准について承認を求めるの件、職業安定組織構成に関する条約(第八十八号)の批准について承認を求めるの件、以上三件を一括して議題といたします。質疑のある方の御発言をお願いします。質疑のある方はございませんか。別に御発言もないようでありまするから質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶものあり〕
  6. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では質疑は終了したものと認めます。本件都合によりまして採決は次回にいたします。   —————————————
  7. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは前に戻りまして、国際情勢等に関する調査、MSAの問題を取上げたいと存じます。御質疑のある方はどうぞお願いいたします。
  8. 羽生三七

    羽生三七君 保安庁長官予算委員会ですか。外務大臣は今予算委員会というお話でしたが……。
  9. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ちよつとお待ち下さい。木村保安庁長官予算委員会に出ておられるそうです。今中田委員質疑がありますので、木村長官は在席中です。それが終われば長官はこつちに来られるそうです。
  10. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ちよつと速記をやめて下さい。    〔速記中止
  11. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記を始めて下さい。再びMSAの問題はあとに延ばしまして、日本国フイリツピン共和国との間の沈没船舶引揚に関する中間賠償協定締結について承認を求めるの件、これを議題といたします。質疑のある方はどうぞ御発言をお願いします。別に質疑もないようでありまするからして次に日米友好通商航海条約議題といたします。
  12. 杉原荒太

    杉原荒太君 この条約内容に入る前に総括的な総覧的なことでお伺いしたいことの一つですが、南方のいわゆる東南アジア諸国、或いは更にポンド地域諸国、そういう国がアメリカとの間じやなくしてそのほかの国と結んでいる通商条約、そういうものについてどういうふうな方針態度をとつておるか。そういう点をお尋ねしたいのです。私のお尋ねする趣旨はややもすれば今度の日米通商条約が今後の日本のほかの国と結ぶ条約のいわゆるモデル・トリーテーとしてモデルになるのだというふうな一つ考え方もあり得るのですか。それはどうかすると私の見るところでは現実には必ずしもそうはいかんところがあるのじやないか。東南アジア諸国ポンド地域、その他でもいいのですが、要するに日本と今後通商条約を結んで行かなければならない国々が、日本と結ぶときにどういう態度をとるかということを知りたいからお尋ねするわけです。その点これは非常に問題の範囲が広いわけですから、そう簡単に御説明むずかしいかと思いますけれども、その辺のところを御研究になつておればその要点だけでもお聞きしたいと思います。
  13. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 杉原委員お尋ね東南アジアの国がアメリカ以外の国と結んでおる条約というふうなもののサンプルがあるか、或いは研究したかとおつしやるのでございましたならば、そういうものはまだ研究いたしておりません。ただアメリカ以外の国と日本との関係がどうかというのでございましたならば相当研究いたしたものもありますし、又どういうふうになつているかということは只今でもお答えができます。
  14. 杉原荒太

    杉原荒太君 今まで日本通商関係に関してすでに東南アジア、それからポンド地域等との間に結んでおる通商関係がある条約のことは私今聞く必要はない。私の聞きたいのは極くああいういわゆる貿易協定とか、或いは金融協定とかいうもんじやなくして、まだ日本が本格的な厳密な意味通商航海条約というものは南方諸国と結んでいないと思う。或いはポンド地域などとの間でもまだ結んでいないと思うが、勿論或る部分については戦前条約の一部で認めてあるのだけれども、戦後においてこういつた日米通商航海条約に相当するようなそういう本格的なものを結んでいない。そしてそれに基いて御研究になつているということでありますけれども、それがただ日本側としてはこういうふうに行きたいという希望の案ならば私ここで今聞く必要はない。むしろ向うが一体日本がそれらの国と結ぶ場合にどういう態度に出るかというしことを私は知りたいと思うのです。それの参考につまりそれらの国がアメリカ以外の国と結んでおる条約内容を知りたい。
  15. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 直接のお答えになりますかどうかは私自信がございませんけれども、インド日本との間におきましては通商航海条約を提議いたしましたけれども、もう少し待ちたいということを向うから言つて参つております。  それから中華民国との間には御承知のように平和条約の中に一項を設けましてそれによつて最恵国待遇というふうな通商航海条約内容エツセンスになるものは一応とり入れてございます。  それからその他の東南アジヤ諸国は国交の回復していない国が相当ございますので、まだ何にも通商航海条約の話が持ち上るまでには立ち至つておりません。
  16. 杉原荒太

    杉原荒太君 私の今お尋ねしていることに対する調べたものを一つあとで披露してもらいたいと思います。
  17. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 承わりました。資料をとりそろえて後刻お目にかけることにいたします。
  18. 高良とみ

    高良とみ君 関連質問。今杉原委員からお述べになりました、インド通商航海条約を結ばない、もう少し暫く延ばしたいという真意がどこにあるというふうに御了解になつておりますか。
  19. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 御承知のようにインドは過去一年以上に亙りましてアメリカとの間に通商航海条約審議いたしていたのでありますけれども、恐らく投資条項に関してでございましよう。議をまとめることができませんので未だに締結の運びに至つておりません。従いまして先ず先に手をつけたというふうな米印間のものを先ず最初に仕上げたいという考慮がやはり入つているのかどうかと思いますけれども、とにかくもう暫く待つてくれということを申して来ております。
  20. 高良とみ

    高良とみ君 今回審議いたしております日本アメリカとの友好通商航海条約の中の、資本の導入に関しての措置として一部分には財界などでは、これは又東南アジア諸国に対しても日本はそういう立場をとりたいという意味を持つておるかのような解釈をよく見るのでありますが、そういう点でインドなどもアメリカとの通商航海条約に対して、ただ今御指摘の問題なんか引つかかるとするならば、日本に対してもやはり同じような点で疑念、或いは困難を感じておるのではないかと察せられる節もないではないのでありますが、その点について如何に御考慮になつておりますか。
  21. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) インドに私のほうから通商航海条約締結方を提議いたしました際には、何ら具体的なものは提示いたしませんで、ただ通商航海条約を議するごとに関して向う側の用意を聞いたというだけの問題でありまして、従いましてどういう案文が基礎になるのであるかということは何ら示されていないのであります。  それから日本が今度他国と結びます場合に、御審議を願つております日米通商航海条約みたいのようなものをモデルにいたしましてやるかどうかということに関しましては、我々この日米通商航海条約は非常によくできている条約たと存じますので、できるだけこれに沿いたいという考えは持つております。但し各国国情を異にすることでもありますし、果してそれがその通りに行くかどうかということはわからないのでありますけれども、そういう念願だけは持つております。
  22. 高良とみ

    高良とみ君 更に只今台湾との講和条約の中に最恵国待遇をするということを一条入れてある。それが通商航海条約にからみ得るようなお話がありましたが、インド側に対して数回日本側から通商航海条約の申出がありましたときに、インドも同じようなことをもつて答えておるやに報道を見ておるのであり評す。即ち日本との単独講和条約を結んだときに、そこに最恵国待遇をずると言つておるので、これ以上の通商航海条約の必要を認めないという回答があるように記憶いたしますが、果してそれで十分であるものならば、あえてその上に通商航海条約を結ぼうとしておる日本側の意図はどういうところにあるのでありますか。
  23. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 日本国インドとの間の平和条約につきましても、第二条に最恵国待遇に関する規定がございまして、「締結国はその貿易、海運、航空、その他の通商関係を安定した、且つ友好的な基礎の上に置くために条約、又は協定締結するための交渉を開始することに同意する」という条文がございます。現在でも事実上そういう待遇をくれていることはくれているのでありますし、そういう相互取極にはなつておる。相互にそういう最恵国待遇を与えるという状態ではございまするけれども、併しこれだけでは実は十分ではないのでございます。例えば入国、居住、旅行というふうなことに関しまして、もつと完全な通商航海条約を作りませんと、そういうことに関しまするところの保障は十分でございません。従つて今ありますやつだけではこれは不十分なんであります。そういう目的のためにもやはりちやんとした通商航海条約を作りたいというのが考え方であります。
  24. 高良とみ

    高良とみ君 インド側政府としていろいろ最近の国際通商、及び貿易等の困難を痛感するところがあり、殊にその間に横たわる各国間の通貨の換算の困難等を痛感した結果、そういう各国保護貿易、及び通貨等障害を突破して行こうという困難をあえてするよりも、むしろそれらのものは改善されることを期待しつつ、内容において実質的な東南アジア経済一体化のためにインド側から原料等を持ち来たり、それに対して日本が加工し、これを技術と共に輸出して行くところの一種の友好了解協定みたようなものについて、すでに領事館から申入れをしておるということを聞いておるのでありますが、そういうことについて何らか経済局において御考慮になつておることがありましようか。
  25. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 経済的の提携向う原料を入れてそれを加工して向うへ出すとかいうような具体的な話はございません。ただ向うの資源を相寄つて開発し、それのできたものを日本に入れようというような話は折々ございますし、或るものは緒についております。或るものはうまく行かないというものもあります。  それから経済的な問題を離れまして、技術者協力という問題で、例えば向うから学生を年間限られた数をよこして、それを日本で何と申しますか、教育と申しますか、或いは技術の習熟を与えまして返えすというふうな、そういう種類の取極に関しては向うからも熱意を示しておりますので、できる限り向う希望に応じましていわば技術協力という方向に発展させたいという意向を持つております。
  26. 高良とみ

    高良とみ君 只今言われました技術協力の点ですが、今回の日米通商協定の中にも多少その面は入つていますが、今後ともに東南アジヤ方面に対しては特に長期的な技術協力のために原料をコンスタントに、例えば塩、鉄鉱、スクラツプ、ジユート、綿というふうなものを東南アジア地区から入れまして、それに対してこちらが製品として出して行かないまでも技術を、或いは技術者を派遣して、向う工場を設置し、これらを通じて向うにおいて適当な加工技術を供与するというような形になり得る可能性もあるのではないかと考えられる。そういうときに通商航海条約などがそれをカバーするものであるか。或いはチクニカルな技術交換のようなものは別の条約の形で出て行くことがより最近の傾向であるか。その二つのどちらであるかを伺いたいのです。
  27. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 只今例示なさいましたようなジユート工場向うで作る場合に、それに対して日本技術者を派遣いたしまして技術協力する。そういうことは誠に勧むべきことたと考えますし、現にそういう方向に進んで動いております。  それと日米通商航海条約との関係でございますけれども、御審議を願つております日米通商航海条約によりましても、第五条におきまして技術資本等交流を奨励し、保護するということをうたつております。新たにほかの国と、かかる通商航海条約を結びます際にも、そういう条項を入れましてその種の技術交流をやる。技術提携なりというものを大いに促進させたいということを考えております。
  28. 高良とみ

    高良とみ君 更に具体的な貿易協定につきましては、こういう通商航海条約ができたその上でないと貿易協定の具体的な本年度、来年度というふうな年度別な金額及び品目等を提示した貿易協定は非常に困難に考えられておりますか。特に東南アジア地域につきましては国の都合でそういう条約が遅れている場合に、貿易協定のほうが先に行くというようなことはいかに考えておりますか。
  29. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 普通の順序から望ましい状態を述べまするならば、先ず通商航海条約ができてそれが基本となつて貿易も円滑に動くということが望ましい状態でありましよう。併しなかなか現実の事態は、例えばまだ通商航海条約を結んでおりません。貿易協定はすでに東南アジアの大多数の国と結びましてそれが円滑に動いておりますような次第であります。必ずしも通商航海条約がないために貿易協定が結ばれないとか、或いは貿易が円滑に行かないという関係はございません。
  30. 高良とみ

    高良とみ君 今お話になつた東南アジアの殆んどあらゆる国というお話でありましたが、このイラン或いはその他のエジプト等との話は聞いておりますが、今ちよつと東南アジア諸国との貿易協定の概略を、フイリピンに関し、ビルマに関しその他の東南アジアの国との貿易協定の輪郭をお示し願いたい。
  31. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 先ず中国でございますけれども、中国とは清算勘定貿易協定を結びまして、総額は今詳細に幾らあるかということを記憶いたしておりませんけれども、とにかく清算勘定貿易協定を結びまして中国からはお米、砂糖、塩というようなものを入れておりますし、我が方からは砂糖とか、雑貨、肥料というものを出しております。その数字は記憶いたしておりません。  それからタイ国とも清算協定に基く協定を結びまして、これは御承知通りお米が大部分でございまして昨年も三十五万トソを入れております。  それからビルマインドパキスタンこれらの国はいわゆるスターリング地域に属する国でございまして、スターリング地域を一括いたしまして一般支払協定というものを結んでおりますので、その支払協定に基きまして取引ができております。そのうちパキスタンとだけは貿易協定を作りまして、今年の取引高は約三千万ポンド、片道でありますけれどもそういうことをいたしております。  それからフイリピンともこれ又清算協定を作りましてそれに基いて動いておりますし、インドネシアも同様でございます。ほかにセイロンとはそういう協定というものはございません。ただこれはスターリング・ブロツクに属する国でございますのでそれによつてカバーする。
  32. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますと、ビルマパキスタンインドスターリング・ブロツクであるから、スターリング・ブロツク全体としての英国銀行を通しての支払協定の中に含むという意味で、やはりそこに英国を介在しないでは決済も何もできないという形になりますと、了解してよろしいのですか。
  33. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 内部のからくりがイングランド銀行を経由しておるかどうかということは、これは銀行側事情でございますので私も詳かには存じません。それから構成国の主たるもの、例えばインドビルマパキスタン独立国でございますので、英本国が指示するとか、或いはそういう種類のことはいたしませんでやはり独自に動くと、自分のポンドの手持を利用し得る限りにおいては独立でやる。こういうことになつております。ただれらの一般支払協定というものは取引ポンドでいたしましよう、そういうことが主たる取極め内容でございます。
  34. 高良とみ

    高良とみ君 更にアラブ諸国エジプトイランはまだでしようか、イラク及びイスラエル地方あちらの方面との貿易はどういうものなんですか。協定ができていますか。
  35. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これらの地域とは今までのところ何らの貿易協定、或いは貿易極めというものは持ちませんで、ただ商売の成行きに任せるといいますか何にもなしでやつておりました。ただこれら地域との貿易をますます盛んならしめたいという希望から、先般貿易使節団を派遣いたしまして、たしかあれはシリヤでございましたか、シリヤとは貿易協定を作りました。その他の国とはまだ作つておりません。エジプトとの間に話合をいたしておる。それからイラクともちよつと話合をいたしておりますが、その他の国とはまだ話合を進めるまでに至つておりません。
  36. 杉原荒太

    杉原荒太君 日本の今後の通商貿易に対する障害というものは非常にたくさんある中で、外部的原因につきましてはガツトヘの加入すら認められぬ。又一方英連邦諸国特恵関税というような制度もある。又日本の非常にいい市場と見られておつたアフリカ方面コンゴー盆地に対しては条約日本はその権利を放棄せしめられた。それから中共貿易というものが制限されて来た。そうして又一方今度はヨーロツパでは欧州支払同盟だとか、或いはシユーマン計画というようなものが発足して、ヨーロツパ方面においては非常に通商貿易関係も促進され、それの対外的の競争力というものが非常に強くなつて来ておる。それらの事情を見ますとき、日本の今後の対外経済は容易ならんことだろうと思います。  そうして一方これは止むを得ないことであるけれども、協定貿易というこの方式をとらざるを得ないのでありますけれども、これがどうも行詰りの状態になつておると思う。そこで非常にこれは日本だけで解決できないむずかしい問題もその間に伏在しておるけれども、併し何か努力によつてそこを切り開いて行かなければならない。それの一つ方法としてはどれだけ期待できるか知らんけれども、少しのことでもプラスになることをやつて行く意味において、スイツチ貿易だとか、或いはいわゆる委託加工貿易というようなことも当然これは考えられなくちやならないことだと思う。  そこで私の質問したいことはそのスイツチ貿易であるとか、或いは委託加工貿易について一体どういう方針をとつておるかというのが私の質問の第一点。第二には今度の国会の初めに岡崎外務大臣の演説の中に「多角的決済方法利用等方針交渉を進めております。」ということを言つておる。一体それは具体的に言えばどこどこの国とやつておるのですか。それの交渉の点、これが第二点。それから第三には昨年政府ココム加入したように思う。今までこの国会においても一度も私は明らかにされていないと思うのでありますが、日本ココムに入ることによつていかなる権利義務関係に立つて来ておるかということ。それからそれに附随して今まで中共貿易に対する制限一つ根拠として外務大臣などがいつも言つておるのは、例の朝鮮事変発生後の国連の決議、あの中共侵略者と認めて、そうしてこれに対してなるべく戦略物資を送らんようにという勧告決議従つてつておるのだという説明をする。ところが他方においてはその制限品目解除についてアメリカ側交渉中というようなこともたしか言つておられたと思う。そうすると前の勧告決議根拠になつておるのだというならば、何もこれは日本の自主的にやることであつて、私が言うまでもなくあの勧告決議にはインドのごときは従つてもおらん。勧告に応じておらん。併し日本は応じておる。応じたにしてもこれこそ全く自主的に応じたに違いない。従つてその品目もいかなる品目制限するかということは自主的にきめられる筋合のものだろうか。一体その辺のことはどうであるか。以上の点を……。
  37. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 只今日本貿易阻害原因といたしまして、外的のものと内的のものとあつて、外的のものとしてはガツトの不加入、それから英特恵関税の存在、それから中共貿易制限をされていること、それからヨーロツパにおいてはEPU、シユーマン・プラン等の実施によつて地域的連合みたようなものを形成して、そこでお互い内部貿易を盛んにしようとしておること、従つてそれが日本貿易阻害原因になりはしないかということをおつしやいました。誠に私はそのことはそうであろうと思うのであります。ただこれも内的原因とそれから外的理由というものはどちらが秤にかけたときに強いものであるか。若しコストを安くして非常に出易い態勢をとるということにいたしますれば、その外的理由というものも打ち勝ちがたいものではないとは考えます。併しいずれにいたしましてもそういう外的の阻害条件があるということはこれは認めざるを得ない次第であります。  それからお互いドル不足ということでお説のように今協定貿易というものを相当やつております。協定貿易と申しますのは私の考えておりますのは清算勘定貿易でございますけれども、これが決して理想型ではなくて、やむにやまれぬ一時の便法としてこれをやつておるのだということはお説の通りであります。そうでないような自由貿易のできる時代が早く来るということはこれは希望に堪えない次第でありますが、お尋ねになりましたスイツチ貿易、或いは委託加工貿易に関してどういう態度であるかということを仰せになつたのでありますが、これは主として通産省の取扱つております問題でございますので、私からお答えするのは筋違いかと存じますけれども、私の知つておりますことを申し上げますならば、委託加工貿易がしやすくなるというまでは、或いはこれを抑えるような理由は何も存在いたしません。それを恐らく奨励してやつておることと存じております。  それからスイツチ貿易、これはどうしても間に一人、人が入るということになりますので、このほうは相成るべくならば避けたいというふうな方向へ進んでおります。ただ特定の国に関しましてはスイツチ貿易をやらざるを得ないというふうな貸借関係の国もございますので、そういう場合にはスイツチ貿易を認めてやつて行く状況に相成つております。  それから外務大臣が外交演説の中で申されました多角的貿易を大いにやりたい、これは全くその通りでありまして、只今みたいにバイ・ラテラルな貿易をいたしておりますれば、ともすれば一方交通(ワン・ウエイトラフイツク)になることが多いわけです。従いまして、それを多角的決済方法によりまして貿易を促進するということは申すまでもないことで望ましいことでございまして、例えば先ほど高良さんに申上げましたように一般支払協定、これはイギリス及びその構成員スクーリング・ブロツク等の間におきましては大体多角的決済ということになつております。これは多角貿易一つの形であります。それから例えばEPU諸国に関しまして日本がEPU構成国の二三と、片方では貸越のない、或いは内部においては僭越になつておるという関係が生じておるといたしましたならば、EPUを通じてその決済をやるということもこれが多角的決済一つでありまして、そういうことも現にそういう関係に立つている国がどういうのがあるかということも研究いたしまして、その方法もとりたいということも考えておるのであります。  それからバリにあります非公式の委員会のお話がございましたが、どういう権利とどういう義務とがあるのかということでございますが、例えば権利といたしましてはその委員会におきまして、一定の国に対し輸出し得る一定の種類品目はどのくらいに限りたいということが問題になりました場合に、その会議に参加し自己の権利を主張するということはこれは権利に属する部分であります。それから義務といたしましてはそこで協定に達したと、或いは貿易ができたという場合にそれを守るわけであります。これは当然の義務であります。これは国連の決議に基いて日本が一定品目を輸出していないのだと、これはその通りでございます。若し只今杉原委員のおつしやいましたように、外務大臣アメリカ交渉中だというふうにおつしやつたのだということを杉原委員は仰せになりましたけれども、私はそういう記憶はございませんし、又そうおつしやつているとは私は考えない。
  38. 杉原荒太

    杉原荒太君 私ども先ず第一に、外務大臣国会演説で言つておられる、多角的決済方針でもつて交渉しておるのだと言つておられる、実は多角的決済ということは非常にむずかしい問題だと思つておる。それとこういうことを一体できておるのだろうかということに私は非常に……さつきもポンド地域間限りの支払協定のことを多角的決済と言われたが、これはある種の多角的協定には違いないけれども、これはちよつとそういうことをやつてるからここにこういうことを言つておられるのはちよつと僕にはおかしく聞える。そのほかの何か一体そういうことを現実にやつておられるか。交渉しておるのだと言つているが、どうもその点の説明がなかつたようです。これは実際問題として非常にむずかしい問題です。これが本当にできるものなら苦労はしない。これは非常にむずかしいことだと私は思つておるのです。  それからココムのことはかなり関係国間では秘密になつておるように聞いておるのだけれども、あそこで単なる協議機関というものじやなくして、そこできめたことに必ず従わなければならないというふうな法的な義務がそこに発生するというふうに今の御答弁で聞いたのですが、それはそこの決定というのは一体どういう議決方法できまるのであるか。つまり多数決だとか、満場一致だとか、どうして一体きまるのかという点。それから更に第三にはこれは非常に細かい点だから余り言わないけれども、さつき質問したときも外務大臣が国連の決議を引用せられておるということを言つておる。他方においても交渉しておるのだということは外務大臣がそう言われたとは私は言わなかつた。それはそういうふうなことを言つている向きがあるから私はそう言つたのだ。併しこれは細かい点だから省略いたします。
  39. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 多角決済の点に関しましては一般支払協定のことを申上げましたけれども、これは昔からやつておりますことで新しいことではございません。先ほど例えばEPU諸国との間で多角決済方式にならうようなことを考えておると申上げましたが、それも一つの例です。それから感心した例ではないと私が申上げましたスイツチの例でございますが、これは本格的ではございませんけれどもそれに近いものを持つている例かと存じます。それからバリの委員会できめます議決の方法、それがバインデングと申しますか、そこで非公式の会議できめましたことは各国ともそれを国連協力の線に沿つて果すようにしようという義務でありますが、それがバインデングで動かすことができるのか、できないのか、そこまでの法的のあれがあるものとは、委員会が非公式であります関係上そこまで行くことはむずかしいのではないかと考えますけれども、少くとも国連協力という各国ともそういう線に立つておりまして、ここで結論に到達した以上それをお互いに相守るという一種の義務があるということは当然であろうと考えておるのであります。  それからそれが満場一致か、多数決か、或いは三分の二かという点は、これは各国とも意を尽しまして反対がありますような場合には、その会議を延してでも円満の妥結に達するようにというふうな方法をとつておりますので、その議決の方式がどういうふうなことであるかということはそういう方式でやつて行けるのでありますけれども、必ずしもそこに非常に固苦しい方式があるのではございません。
  40. 杉原荒太

    杉原荒太君 もう一つココムのことをお尋ねしておきたいのですが、ココムに入つたということは、ここにココムについてココムの参加国間の一つの文書できめられた総括的な或る協定のようなものがあつて、その協定にも最初一般憲法的なものがあつてそれに入つたというようなものですか。どうですか。
  41. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) そういうふうなものではございません。
  42. 杉原荒太

    杉原荒太君 私まだ質問ありますけれどもちよつとやむを得ずほかのほうべ行かなければなりませんから、あとで又。
  43. 羽生三七

    羽生三七君 私はこの専門的知識がないのでよくわからないのですが、第十八条に独占的慣行について有害な影響を除去するために適当な処置をとるとあるのでありますが、このことと、日本の国内にある独禁法を本国会政府が改正しようとしておるが、この規定と今の独禁法の改正案というものと非常に矛盾するような感じがするのですが、これは私の思い違いですか。どうですか。
  44. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 十八条に規定しておりますことの精神は羽生さんがおつしやるように、独占的な或いは競争を制限するような商慣習はなるべくやめようということでございます。従いまして問題を大ざつぱにのみ見ますと、十八条と独禁法の緩和、ないしは若しこれを全然廃止するというふうなことになりますると、精神的にはその二つは相矛盾するという関係には相成るだろうと思います。ただそれをもう少し分析いたしますと、日本の独占法に規定しているようなことが、その十八条に言つていることと比重はどうであるかという問題が起るのであります。つまりよく言われておりましたように日本の独占禁止法というものは行過ぎではなかつたか、何もかもカルテルであるとか、或いはトラストであるというようなことにして非常に行過ぎではなかつたか。例えばもとの独占禁止法には重役は二つ以上、或いは三つ以上だつたかと存じますけれども、それもできないというふうなことが規定してあつたのでありまして、従いましてこれをだんだん緩和いたして来まして、一番初めの厳格さは失われているのでありますけれども、それが失われるとしてもまだ行過ぎではないかという点は十分論議の余地があるところであります。従いましてそれを緩和いたしましてもそれが十八条に言うふうな、競争を制限するようなことを有害と認めるというふうなその程度まで行くかどうかということは、これは別問題でありまして、只今ではそうではないというふうな解釈でやつておる次第でございます。
  45. 羽生三七

    羽生三七君 第九条に日本の土地の取得等の問題がありましたが、アメリカで実際に日本人が出切を取得できることがあるのでありますか。
  46. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 土地に関しましては、日本は外国人の土地取得法でございますか、それに基きまして相互主義になつておりまして、相手が日本に認める場合には認めるということになつております。又アメリカにおきましては帰化不能の国民は持てないという州の法律が相当ございまして、昨年の暮にマツカラン法が通過いたしまして日本人も帰化可能の国民ということになつております。従いましてそれらの禁止しておりました州においても日本人は持ち得ることになるということでございまして、現に或る州におきましては日本人が土地を所有いたしまして農耕に従事しておるという所もございます。
  47. 羽生三七

    羽生三七君 今事情を聞いて幾らかわかりましたが、アメリカの全州に亙つて全部そういうふうに日本人が土地を取得したり、或いは権利を所有するということは疑問だと思います。向う日本へ来て土地を取得しようと何をしようとここで条約承認すれば何か無限のような感じがいたしますが、非常に不平等の感じがしますが。
  48. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 御指摘になりました第九条には土地の所有ということは規定しておりませんで、不動産を賃借し、占有し及び使用することに関するということになつております。それから土地の所有は相互主義でございまして、向うの州で認めないものはこつもでも認めないということができるわけであります。
  49. 羽生三七

    羽生三七君 私の言うことは必ずしも取得でなしに、賃貸関係じやなしに、実質上土地の所有権を得るということです。かかる場合に同様に日本人が向うに行つた場合に自由にできるということならわかりますが、それではそれでいいんですか。
  50. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 相互主義でございましてこつちも自由にできる、そういうことであります。
  51. 羽生三七

    羽生三七君 それはアメリカの全州に亙つて何らかの制約はないのですか。州によつて違うのじやないですか。
  52. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 所有権は先ほど申しましたように州によつて違うことになつておりますけれども、賃借権に関しましては全州持ち得るということになつております。
  53. 羽生三七

    羽生三七君 それからこれはちよつと原則的な問題になるのですが、到る所に外国企業に対する課税、販売その他広範囲の内国民待遇の規定があるわけですが、外資導入ということで言えばそれは政府としては一つの狙いですが、国内産業の保護という、立場から言うと非常に広範な権限をもつて外国資本日本の産業を支配し得る条件をここで作つて行くような気がするのですが、そういうことは起らないでしようか。
  54. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) その点は課税とかう何とかいう条文によりますよりも根本は第七条の第二項の問題に相成る次第であります。第七条の第一項には相当広範囲に亙りまして制限し得る業種というものを規定いたしております。それには鉄道、バス、トラツク、電気、ガスそれから造船、それから土地の天然資源の開発というふうなことに亙りまして、非常に多い種類制限業種というものを規定いたしております。従いましてそれらの業種に関しましては法律で制限し得るということになつておりますので、それが日本に関しましては非常に広範な制限業種を認めておりますので、その点が第一に御指摘の心配を緩和と申しますか、排除する規定に相成つております。  それから第十六条の第二項でその内国民待遇を許すということになつておりますのは、これは許された業種に関してそういうことをやるということになつておりますので、この点も御指摘の心配の点はないと考えます。
  55. 羽生三七

    羽生三七君 この勿論業種の制限は七条の二項で規定されておりますが、これでも鉄鋼その他の基幹産業をなぜ列挙しなかつたかということも問題になると思います。それは別として一応の制限はあつてもだんだん今の日本一般の経済上、政治上の諸条件から言いましてアメリカ側が強大な資本を持つてつて来た場合には、非常に外資導入ということを優位におけば別ですが、非常に支配的な地位を作るというような非常に矛盾ですね。外資は欲しいし、さりとて不当に投下資本が拡大して行けば国内産業に対する圧迫は非常に強大化するという矛盾があると思います。
  56. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 私から補足して説明いたします。一体外資が日本へ投下せられる場合というものを考えますと、日本の中へ円を幾らたくさん投下しても彼らとしては殆んど興味がない。そこで大体送金保証のついた投資をしようとするわけであります。ところがこれにつきましては日本通貨擁護の立場から外資法でスクリーンする。これはその条約でも認めておるわけであります。そこで結局問題になりますのはそれじやどんどん入つて来やしないかということは、一方で外資まで止められるならば、それ以下の円でもいいというものがあるかということを現実に調べてみますと、この間佐多委員から資料を出せということでございましたから資料を出させようと思いますけれども、私が今まで調べたところによりますと、日本の全株式五千億円以上の中で外資はこれまでのところ百億円ぐらいしか入つて来ていない。而もその中で送金の保証のないものというものは非常に僅かであります。確か一三%くらいだつたと思います。実際の点から見まして外国人のほうが日本へそれほどたくさん資本を投下するというようなことは、日本政府のほうで外資法で認めれば別でありますけれども、実際問題としてはそういう虞れがあれば外資審議会もございましてそれを抑えることになりますから、それほど大きな危険はないだろうと考えられるわけであります。殊に現在旧株の取得については三年間はこれを認めないということになつておるわけでありまして、三年以後はどうするかという問題もありますけれども、今後増資も行われるでありましようし、又資本の再評価ということもあるので、三年もたてば大体今までの全株式の総額というものは倍くらいになるのではないかというふうに私は計算しております。そうなりまするとこれまでの状況から見まして送金保証のない投資がそれほどあるということは言えないのであつて、今御心配のような点は現実の問題としてま起らないであろうというふうに考えております。
  57. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 非常にアメリカ資本を保護し優遇する規定になつておると思うのですが、なるほど相互的には日本資本があちらでは優遇されるでしようが、実際上の問題として資料をお出しを願えばはつきりすると思いますが、入つて来ているのは殆んど大部分こつちへ入つて来ているので、向うに行くものというのはそうないではないか。それは資料が出て来てから議論したいと思いますが、併しいずれにしても政府は外資を導入することが非常に必要であるという見地の下におやりになつたと思うのですが、一体外資の導入ということがどういう意味において必要なんですか。もつと具体的に言えば特にどういう産業にどういう程度ぐらいの外資導入を必要と考えておられるか。先ずその点をお聞きしたい。
  58. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 本日は大蔵省の係官が来ておりませんので十分責任のある答弁をいたしかねますが、日本資本において非常に弱いということは佐多委員もお認めになることだろうと思います。日本の金利を見ましてもいろいろの企業関係覚ましても資本が貧弱であるという現実でありまして資本を必要とする。併しそれは一体どういう産業か、今までのところは原料が海外から来る関係がございまして石油関係に非常に一番余計出ているわけであります。併しこれまで外資関係のことを取扱つて来た経験から申しますと、外資そのものの額というものは今までも少かつたし或いはそれほどないかも知れないけれども、技術提携の取極めというものはそれに対するローヤリテーとかいろいろ外資の関係も伴つて、併しその本体は非常に日本の大きな利益というものは新技術が入つて来るということだと考えます。今まで技術援助契約というものが二百六十九件ばかりあつてアメリカ関係のが百四十八件ばかりありまするが、日本技術導入という意味において技術を導入する、当然そこには外導関係が伴うのでありますが、その意味において意味があり、そうして日本で一番遅れている技術を入れるという方面に外資の導入が行われることは最も望ましいものではなかろうかというように考えております。
  59. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 技術導入が非常に必要だということはよくわかるのですが、そうであれば技術導入に関連する資金を保護し助長して行けばいいので、ところがこの規定はそういうものに限定されないでもつと一般的に非常に保護している。従つて技術等々を伴わないでただ入つて来て、それが国内円の形で株を買い占めるとか、或いは企業の経営に参加をするとか、支配をするというようなことが可能のような規定ができています。更にもう少し具体的に言えば恐らく今外資導入を最も必要としているのはここに制限業種にあげられている業種がむしろ非常に外資導入が必要だと思う。而もその外資導入は外資は導入するが制限業種であるからして国家的なあらゆる公的な規制をいろいろしなければならん性質のものだと思うのであります。そういうところにむしろ非常に資本は必要なんです。ここに制限業種以外にあげられているような雑多な産業、雑多な事業にはそんなに資金は必要じやないのです。むしろ来てもらうことをシヤツト・アウトしたほうがいいくらいで、それらがどんどん入つて来るからぜいたく商品等々がふえて来る。むしろそういうものは入つて来ないようにシヤツト・アウトすることのほうが日本経済全体の育成の上から言えば必要なんです。それらのことを一体勘案してこの条約はできているのかどうか。
  60. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) その点は十分考慮に入れられているものと考えます。この制限業種なるものは必ずしも制限しなければならないという規定ではなくして、制限し得るということでありまして、この制限業種の中でも特に外資の導入を必要とするようなものであり、その条件にして当方において差支えないと認めたならばこの外資を歓迎することができるのであります。併し一方においては先ほど羽生委員がおつしやつたような御心配もあるから、こういう基幹産業については制限もなし得るというのがこの条約の精神であります。又その他の雑多な産業にどんどん来やしないか。技術協力というような点を明示してそれに関する外資の導入を容易ならしめるようにしたらいいじやないかというお説でありまするが、併し先ほども申しましたように少くとも送金保証のあるものについては政府がこれをスクリーンすることができるのでありまして、現に先ほど申しました株式の中でも外貨送金の保証のないものというものは実は新株について五億ありました。その中でアメリカが二億持つております。旧株では殆んど送金のないものはないという状態でありまして、実際問題としてはやはり金を持つて来て日本へ投資するからにはその果実が、又元本が本国に持ち掃えられるという保証がなければそうどんどん投資するものではないというのが実情であります。又その他のものについては先ほど申しましたように適当に制限することができるのでありまして、この条約があるためにそういう点が非常に混乱状態に陥るということは、それほど心配する必要はないのじやなかろうか。外資法をうまく運用することによつて、そうした弊害を除くことがあろうというふうに考えております。
  61. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それは今までの実績としては外資法が十分に活用されていたから今おつしやるようにそんなにたくさん入つて来なかつたのだ。今度この余約が作られる、そうして発効して来れば外資法との関係はどうなるかということはあとでお聞きしたいと思つているのですが、とにかく一般的に言つて外資法は殆んど骨抜きになつてしまつてその適用されるような面が非常に制限されて来るのじやないか。そういう状況になればさつき言つたような不必要な所に資金が入つて来ることを許す、むしろ望まない所にどんどん入つ来るというようなことになる危険性があるのじやないか。そうだとすればそれは根本的に言えば資本導入に対して一般原則としてこういう自由交流を許すからそういうことになる。非常に資金を必要としている業種についてすら制限をしている。それ以外の不必要と思われる所にはむしろこの制限以上にシヤツト・アウトしておいても何にもかまやしないじやないか。そうして必要な所にだけ入れることを協定をし、而も併し必要であるけれども大体さつき言われたような支配されるとか、コントロールされるとかいうようなことを防ぐためには、更に特殊的にどういう規制をするかということを考えておけばいいんです。そういう意味ではだからこういう資本交流の自由原則を確立する問題ではなくして、もつといかに経済力の弱い日本の経済を資金面からどう保護してやるかということを考える必要があるのじやないか。それらの配慮は殆んどなされていないではないか。或いは似たものはなされているけれども非常に不十分ではないかという感じがずるりですが、それらの点はどうですか。
  62. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 先ず最初の点でありますが、この条約を実施するよりになりましても外資法は少くとも三年間は変える必要はないのであります。外資法は先ほどからしきりに申します外国の投資をスクリーンする。いかなるものを認めるかというようなことは規定してありまするが、この条約等が実施になつて一つ変えなければならないと想定せられるのは三年後においてこの旧株の取得を認めるという点であります。現在の外資法によれば旧株の取得は特別に許可があれば別でありますが、許可のない場合には認められないということになつておりますのでこの点は改正しなければならないけれども、その他はこの条約の実施によつて何ら支障を生じないわけであります。そうして必要な所に入れるような規定を設けたらとおつしやいますが、必要なる所に入れることこそこの外資法の任務で、これは一つの大きなわくをきめたものであります。内部につきましては日本のそのときどきの必要に応じて外資法の運用によつて日本に最も好ましい外資、又好ましい方法、形式において入れることができるのでありまして、それはむしろ条約の問題というよりも外資法の問題でなかろうかと考えます。
  63. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると外資法は殆んどこれに制約されることなしに運用できるというふうにお考えになるのですか。
  64. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) その通りであります。
  65. 羽生三七

    羽生三七君 この十九条の3のこの船舶に関する条件の問題ですが、これは均等の条件ということになつて各国が相互それぞれ条件によつて均等に運航できるわけですが、自国船を中心に運航等を考えるというようなことは非常にむずかしいことに思われるのですがどうですか。自国船第一主義というようなことは非常に困難になるような気がしますが如何ですか。
  66. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 航海についての自由主義を謳つたものでありまして日本としては海運関係には非常な力を入れましてこれを育てて行かなければならないと考えております。その際原則としてこうした自由を享有することが今後の例にもなりますが、大局的に見れば日本の利益になるのではないかというように考えます。ただ今おつしやる点は例えば半分が自国船舶主義というような問題を心の中に描いていらつしやると思いますが、これは協定外の問題であると考えます。
  67. 羽生三七

    羽生三七君 これは日本の経済の現状から見てできる限り自国船第一主義をとるのが有利だと思いますが、その場合の保護的な要素というのは殆んどなくなつて、いま次官は非常にこれで有利になると言われたが、それは相互に均等の条件を作るということは非常に結構なことだけれども、何か日本の現状からいつて日本の船舶を作つてドル支払いなんか節約するという意味からいうと、そういう保護政策とは非常にほど遠いようになると思いますが。
  68. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 十分了解いたしませんけれども、積荷については大体荷主が指定する権利を持つておるわけでありますから、その際国家として自国船主義をとるのだというようなことになりますと、例えばアメリカの小麦は全部アメリカが積むと、相互的になると日本の輸出品はボリユウムのかさばらないもので却つて不利になるだろうというようなことになりますので、自国船舶主義の思想を盛り込んだ相互主義的な条約を作るということは、果して日本のためになるかどうかという点を疑うわけです。
  69. 羽生三七

    羽生三七君 そういうことは条約上に均等の機会を与えているのだから自由だというのですが、ただ先年来日本政府が、或いは一般の民間の経済界の人たちもできるだけ日本の船舶を利用して、政府の政策として経済自立の一環としてでしよう、そういうことからしてなるべく日本船舶を利用することによつて外貨払を節約するという日本経済の自立の一つ方針になつていると思います。然るにそれが均等の条件からそんな方針は崩れてしまつて、相互にそれぞれ自由の条件でできるのですから、荷主がアメリカの船を頼もうが日本の船を頼まうが自由でしようけれども、そういう先ほど申上げましたような政府方針と言いますか、明確に打ち出したわけではないでしようが、我々が了解しておるその考え方、つまり国内船の保護に対する考え方とは幾らかほど遠いものがあるような感じがするのですが、それは感じですから別に条約上出て来るというわけではないでしようが、そういう感じがいたしております。
  70. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) できるだけは自国船でやろうということは日本でも考えなければならないことであり、今までもそういう方針で来たはずであります。それには優秀な船を持たなければならない。結局競争に打勝とうとするには日本の物資を運ぶのに十分なる船隊というものを持たなければならないので、そのほうに努めておるわけであります。条約日本関係の貨物は日本船に必ず積ますというようなことは認めてもらうわけにも行かないので、これは通商条約の問題とは別個のように考えております。
  71. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 第六条の3の収用、使用を禁ホ止している条項ですが、これは具体的にはどういうことを懸念してこういう項を設けたのですか。
  72. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これは別にどういうこどが一致になつてきめたというのではありませんで、第六条は全般に財産の保護の規定でございます。それが財産の保護をしなければいかんけれども特に場合によつて公共のためにする収用ということが起つた場合に正当な補償をせよということでありまして、つまり財産の保護をしなければならんという原則からいたしまして、こういう場合には適当な補償をするということだけの話であつたのでありまして、別にどういうことが直ちに具体的に考えられていたかというわけのものではございません。
  73. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 これは西独なんかとの条約にも同じような条文が入つていますか。
  74. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これはたいていの国との条約にこの趣旨のことが入つております。
  75. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 我々の党では例えば公益事業であるとか、基礎産業であるとか、そういうものの公有化、社会化というのを一つの政綱に掲げているのですが、これまでこういう条文の下によくそういう政策が非常にチエツクされた場合も多いのですが、そういうことは何ら考慮されていないのだというふうに了解していいんですか。
  76. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) そういうことを考慮に入れてこう条文ができているわけではございません。従いまして若しそうした必要がありましたならば、そういうことやるのに何らの条文が支障になるものではございません。
  77. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうするとここで正当なる補償をしなければならない。正当な補償ということを言つているのですが、それはどういうことを考えて正当な補償という規定を出されたのですか。
  78. 下田武三

    政府委員(下田武三君) その点は条文自体にも書いてございまするが、十九頁の一番初めの行に収用し、又収用した財産に十分相当する価格でなければならない。従いまして、百万円のものを収用しておいて一万円しか補償しない。そういうようなことではいけない。そういう意味でございます。
  79. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 これは補償の性質を議論しているのだと思うのですが、換価し得るものでなければならないという補償の性質を規定していると思うのですが、私がお聞きしているのは正当な補償ということは一体どういうものが正当と判定をするのか。例えば電力を社会化する、公有化するという場合にその補償を幾らにするかということは、国内でも非常に問題になるところだと思います。国内法によつてそれが国内において正当なる補償として国会において審議決定されたら、それはアメリカとの関係においてもそのまま認められるのか。或いは別個規定をされるのかどうか。その点をお尋ねしたい。
  80. 下田武三

    政府委員(下田武三君) その正当な補償という問題には二つあると思います。御指摘の性質の問題とそれから価格の問題だと思いますが、大体文明国におきまして国内法で正当の補償なりとして認められる分ならいいと思いまするが、ただこの条約では特に実際に換価することができるものでなければならない。従いまして償還期限が非常に長いような公債を支給して補償をするというようなことは国内法できめまして、日本国民に対してはそれでたとえいいといたしましても、この条約の問題からいたしますと、対外的にはそれで不十分だという問題も起り得ると思います。
  81. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その問題は更にこの迅速にという時期の問題にも関係すると思いまするが、この点もそれじややはり国内決定以外に、向うとの間の決定をとりつけなければ収用はできないかどうか。
  82. 下田武三

    政府委員(下田武三君) やはり長期の公債等で支払うという時期の問題も問題になると思いますが、併しながらこれは仮定の場合でございまして、日本では憲法の第二十九条でやはり正当な補償ということをきめておりますので、これは単に理論上の問題でありまして、実際問題としましては憲法第二十九条に基く国内法の正当の補償がきめられれば、それに対してアメリカ側が不満を言うというような虞れは先ずないとそういうふうに考えております。
  83. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そこが非常に懸念されるところで、例えばイランのアングロ・イラニアン石油会社ですかあれが国有化されたときに、国内においては一応正当な補償を行うということでやつたのでしようが、併しその補償が正当でないとか、或いは補償が迅速に行われていないとかいうようなことで、国有化の問題がイギリスとの関係において非常に難航をしておるという実情じやないかと思うのです。で、若しこの規定が国内法の規定以上のこと或いは以外のことをとりつけなければならないということになれば、そういう決定のために国内の公有化の施策その他が規制されることになる、そういうことまで約束をしているのか。そうでなくても一応国内において正当であり而も迅速と考えたものならば、それをそのまま呑むという了解は簡単にとれるのかどうか。特にこの迅速に行参うということが非常に問題だと思うのですが、電気産業の公有化というような問題、それの補償をするというような問題のときには、かなり長期でなければ補償はできないというような問題になるのです。それがなお且つ迅速に行われなければ収用ができないという規定をたてにとつて反対を始めれば、社会党の社会化政策は全部これでチエツクされるような結果になる。こういう虞れはないのかどうか。
  84. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 先ほど申上ぜましたようにそういうことをチエツクしようというようなことは何にも考えているわけではないのであります。そういうことが起り得るとは私は考えておりません。
  85. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 併しこの条文をそのまま解釈すれば今言つたようなことが起り得る。これは国内法できめさえすればそれが正当であり、適当な時期であると見るという、国内法に従うのだということであれば問題はないのですけれども、併しそれとは別にやつばり了解をとりつけなければならない、この規定によつて制約されるのだということになれば非常なやつぱり規制になると思うのです。で、まあこれを協議されるときにはそういう意図はなかつたかも知れませんけれども、曾つて片山内閣のときにいろいろなそういう社会化なり何なりの問題がたびたび出たときに、これは国内の問題であるから自分たちアメリカ占領軍当局はくちばしはさしはさまないけれども、望むらくはそうでないほうを、というようなサゼツシヨンは始終直接の折衝のときあつたと思うのです。それを今度はこういう条約をたてにとつてそういう阻止なり制限をやらないとは限らない。これは若し我々がそういう公有化の政策をやるとすれば、アメリカ側から見れば非常に好ましくない政策だろうと思います。そういう点からこれをたてにとつて阻止することも可能になるわけです。そういう内政干渉的なことはできない規定としてちやんととりつけてあるのかどうか。
  86. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) この「正当な補償」とか「迅速に」という言葉は、もうどういう言葉を使いましても疑問が起り得ないというふうな言葉は使い得ないのでありまして、従いましてここに「正当な補償」或いは「迅速に」という言葉を使つて、なお御設例のような場合例えば社会党の内閣になりましていろいろな企業が公有化されるというような場合、正当な補償を十分迅速にやりましてそれでこの収用をいたしました場合、主として額でございましようがそういうものが問題になりました場合にも、それは後日果して正当な補償であつたかどうかということに関しまして、補償の額の協議或いは紛争が起り得るということはあり得ますけれども、そのために事前に相手国のこの同意をとりつけるということを要す、従つて企図しているところが行い得ないというふうなことがここに書いてあるのではないのでありまして、従いましてそういう政策がとられました場合にも、十分正当な補償を迅速にやるということをいたしてそして行い得る。但しそれが果して正当な補償であつたかどうかということに関して紛争が起りましたならば、それはそういうことをやつたのちにおいて問題の論議の対象になるということはあり得るでありましよう。
  87. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その正当な補償かどうかということは国内としても非常に問題になる点だと思うんです。殊にいつでも収用のときには問題になることですが、立場によつて非常に何を正当とするかということはいろいろ基準があると思いますが、併しその立場の如何にかかわらず国内においては一応国会において多数によつて決定をするんだと思うんです。そうしておのずから日本のそのときの状態としては一応国会の多数によつて正当なりとする基準が出るけれども、恐らくその場合に正当とした基準は日本の国内においても資本家諸君から見れば、或いは私有者から見れば非常に不正当だという意見が国内ですら成り立ち得る。これは国内的措置として国内で片付けられるが、それを国外においてアメリカがその資本家的な見解なり何なりを主張し始めれば正当でないということが十分に言える。向うとしてはそういう立場からこの条文をたてにとつて、今言つたような公有化をば阻止し得るのかどうか。殊に時期の問題については私は、公有化をする場合には迅速になんということは物理的にもできないことだと思う。そのできないことをここに規定をしていることになつていやしないか。
  88. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 御懸念御尤もではございまするが、もう一つの私どもの見解を裏付けることは、第二条には身体の保護を規定いたしまして第六条で財産の保護を規定しにおりまするが、第二条におきましては「いかなる場合にも国際法の要求する保護及び保障よりも少くない不断の保護及び保障を受けるものとする。」、即ち身体の保護につきましては国際法標準主義をとつております。ところが財産につきましてはこれに対応するものといたしましては、第六条のおしまいに「私有企業を公有に移し、又は公の管理の下に置くことに関するすべての事項について、内国民待遇及び最恵国待遇よりも不利でない待遇を与えられる。」という内国民待遇の主義をとつております。多少財産の保護と身体の保護につきまして考え方の差があるわけでございまして、従いまして内国民待遇の主義をとつておりますが、三項で特に念のために「正当な補償」という言葉を使い、又迅速な補償は実際に換価することができるもので行わなければならない。それから価額については十分に相当する価額でなければならんという念のための言葉を加えております。根本的の考え方としては内国民待遇、つまり日本は文明国であるからそうむちやな補償をするものでない、又現実に黄田局長が答弁して、そういう点の小安をアメリカ側が表明したことはないと聞いておりますので、多少御懸念も御尤もではありまするが、私どもはてう御心配は要らないんじやないかと思つておる次第でございます。
  89. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると大体内国民待遇の原則で国内において、国会において正当であり迅速であると認められているとすれば、そのまま大体において認められるというふうに了承しておいていいんですか。
  90. 下田武三

    政府委員(下田武三君) その通りだと考えておりますが、万一将来そう  いう事例が起りました場合に、やはり先方がコンブレイントを持出すことは絶無ではないと思います。併しその場合には事前にこれをたてにとりまして日本が収用することを阻止しようというようなことはできないと思います。収容されましたあとに至つて日本の裁判所の保護を求めるとか、日本の裁判の結果がやはり日本の国内法に基く措置を正当なりといたします場合には、丁度アングロ・イラニアン会社のように、国際司法裁判所に条約の解釈の問題として訴えるという、司法的な保護手段に訴えることは絶無とは思いませんが、先ずそういうことは例外の場合じやないかと考えます。
  91. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、事後でしか問題が起きないということになるのですが、その三項の末尾の「収用若しくは使用の際又はその前に、適当な準備をしなければならない。」ということを語つてありますね、これはどういうことを意味しているのですか。
  92. 下田武三

    政府委員(下田武三君) これは日本の国内法で収用法を規定いたしました場合には、同時にやはり予算的措置が伴うものであろうと思いますが、日本がその予算的措置につきまして国会承認を得れば、それでいいことだろうと考えます。
  93. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そういうその国内的に整えなければならない準備を正当にしておきさえすれば、特別にアメリカに対する何かの準備をするという必要はないのだというふうに了解しておいていいのですか。
  94. 下田武三

    政府委員(下田武三君) さように了解いたしております。
  95. 羽生三七

    羽生三七君 大変細かいことで一つお伺いしたいと思いますが、第三条にある二項の末尾のほうの「社会保障制度を定める法令の適用」云々ということは、具体的にどういうことなんですか、ちよつとお話して頂きたい。
  96. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 第一項はこの労働者の災害保障でありまして、第二項はいわゆる強制的社会保障と申しますか、年寄とか疾病等に基ずく別に労働によらない事象に対する社会保障でありまして、この強制的な社会保障制度と申しますことは、或る人間が七十歳になるとか或いは失業したとかいうその事実で、直ちに保障の給付の原因になるという意味で、強制的な社会保障制度という字を使つているのであります。
  97. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ちよつと委員長にお伺いしますが、二三の条項内容一つ二つ聞いてもいいのですか、順序としては各条に亙つて……。
  98. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 二三の条項内容ですか、ああどうぞ。
  99. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それじや各条項に亙つて聞きますが、第七条でよく問題になる条約発効当時得ていた権利、いわゆる既得権、これは具体的にどういうものがあるというふうにお考えになりますか。いずれ詳しいことはあとで資料として出して頂きたいと思います。
  100. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) これはアメリカ側から申しますと、この既得権とありますのは制限業種に関してのみの規定でございます。制限し得ると、但しすでに得ている権利はこれを認めようというふうに第七条の二項に書いてあります。従いまして既得権の問題が起りますのは制限業種に関してのみであります。それをアメリカとして何があるかと申しますと、これは銀行業務があります。と申しますのは制限業種の中に銀行業務といたしまして、預金業務又は信託業務を制限業種ということにいたしております。ところが日本に今来ております例えばナシヨナル・シテイ・バンクとかバンク・オブ・アメリカ或いはチエース・ナシヨナル、そういう銀行は預金業務をいたしております。従いましてこれがアメリカといたしましては既得権になります。それから日本側ではどういうものがあるかと申しますと、それは第七条の二項に土地その他の天然資源開発を行う企業ということがありまして、これが制限業種になつております。ところが日本人がアメリカで農業に従事しておる者が相当おります。若し将来アメリカの国或いは州におきまして、外国人には土地を持たせないのだというような趣旨の法律ができましても、それは既得権といたしまして日本人は今まで持つていたものは享有し得る、こういうことになります。
  101. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると日本人の既得権からお尋ねいたしますが、日本人でアメリカの市民権を持たないで、なお且つ土地を既得権として持つているという種類のものは、どの程度あるか。
  102. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 調べたものがあるのでありますが、今ちよつと出てきません。
  103. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それではのちほどそれも出して頂きたいと思います。何かよく既得権の問題のときには、相互主義だからこつちも既得権を認められるのだからというお話のようですけれども、どうも両方対比してみたときに、日本側が持つておる既得権というものは殆んど言うに足らない、向うのほうがたくさん持つている。殆んど比較にならんくらい多くなつているのではないかという感じがいたしますが、それらのことがはつきりわかるように資料としてお出しを願いたいと思います。
  104. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 只今の日 本人がアメリカにおいて農業に従事しておる者がどのくらいかということを後刻数字を取調べいたしまして……只今佐多委員のおつしやつたことはそうであるかというとそうでないのでありまして、比較にならんほど大きいものが向うの既得権としてあるということについては、向うの既得権としてありますのは只今申しました銀行が三つと、アメリカン・エキスプレスがそれに加わりまして四つあるのでありまして、戦前におきましてもナシヨナル・シテー・バンクはそういう業務をなしていたのであります。それから戦争中から戦後にかけましてハンク・オブ・アメリカン、チエース・ナシヨナル・バンク、アメリカン・エキスプレスそれだけが業務を許されておるということでありまして、それを除いては何もないのでありまして、非常に尨大な既得権が向うにあるということはこれは当らないので、銀行業務しかないという関係で、それは極めてはつきりいたしておるのであります。ただ例えば制限業種に上げられしおりますような業種に関して、言うに足らない株式を持つておるというものが少しあるかも知れませんけれども、これはほんの言うに足らないのでありまして、言うに足るものとしては銀行業務だけしかないのであります。而もこの銀行業務を行つておりますこの四つの銀行におきましても、戦前にナシヨナル・シテー・バンクはやつておりましたし、その後やつております銀行にいたしましても弊害を認めるというどころか、却つて日本の経済界に貢献しておるというようなことを我々は考えるのでありまして、決して不均衡に向うの既得権が尨大であるということは、いかようにも言いがたいと思います。
  105. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 アメリカの銀行が日本に預金を持ち、或いは信託業務を既得権こして持つておることが、この日本の経済にプラスになつたのかマイナスになつておるかという点は、いろいろ意見の分れる点であろうと思いますけれども、これは今議論をしないことにしますが、占領中にそれらの四つのアメリカの銀行がそういう権益を新たに獲得したという場ものいきさつはどうだつたのですか。戦前からあるのは一つあと三行は戦後に入つて来た銀行だと思うのです。それが既得権としてそういう業務をできるようになつたいきさつ。
  106. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) 只今申上げましたようにナシヨナル・シテイ・バンクは戦前からやつておりまして、それの継続を今でも許しておるというわけであります。それからバンク・オブ・アメリカとチエース・ナシヨナル・バンクは占領中、即ちスキヤツプがやつておりますときにそれらの業務を許されたのでありますが、たしかスキヤツプが廃止される少し前だつたかと思いますけれども、これらの銀行に対する認可、許可の権利日本側に移譲されまして、それに基きまして新たにアプリケーシヨンを出しましてそうしてそれを審査した結果、これを許すということになつております。
  107. 高良とみ

    高良とみ君 関連して。そうしますと日本の銀行でいわゆる支店、代理店をアメリカに持つているものがかなりあると思うのですが、あれには預金業務は許されているかどうかということをお伺いします。  それから証券会社等が相当に支店を持つておりまして、日本で発行しております証券を、アメリカの主に日本人でありますがそういう者に売る権利を持つていると了承いたしますが、それは制限業務ではないのか。  第三番目には保険会社というものが国際的に進出しておりますが、日本にも相当なアメリカの保険会社が来て業務をやつておりますが、あれはこの中に入らないか、その三つちよつとお答え願いたいと思います。
  108. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 第一の点でございますが、日本の銀行で今アメリカに支店を出しているもので、預金業務を行なつているものがあるかということでございます。これは日本の法人としては預金業務を行なつておらないのでありますが、現地法人としてアメリカの法人となりまして、現にサンフランシスコにおいては住友銀行及び東京銀行が預金業務をやつておる。一体現地法人になるということは戦前から行われたかというと、こういう現地法人になると租税とかいろいろな点有利な関係上ドイツなどでも三菱とか正金が現地法人になつております。そういう工合で実質的には預金業務を現にすでに行なつている銀行があるわけであり、今後も現地法人になる以上、預金業務を認めてもらえる向きが相当あるというふうに了解しております。  なおこれに関係いたしまして、先ほど通商経済局長から説明されておりましたが、日本においての米国の銀行はどれくらい預金をとつているかと申しますと、現在二兆億円ぐらいの総預金の額の中で外国銀行が取扱つているのが約百二十五億円、うちアメリカが八十五億円ということになつております。でありまするからこの外国銀行に預金を認めるということにいたしましても、これは日本の経済界にとつては誠に微々たるものであつて、今後もこの額が非常に大きくふえるというようなことは想像し得ないのであります。この点も経済局から資料として差上げると存じますが、大体そういう数字であります。  その次に証券会社は高良委員承知通り海外に出ておりましてこれを取扱つておりますが、これについては何らその現状は存じません。保険会社も同様でございます。これは国際通商にも非常に必要な機関でありまして、これに対しても制限を設けておりません。
  109. 高良とみ

    高良とみ君 そうしますとアメリカの銀行が日本で業務をやつておるときにはこれは現地法人ではない。そうしてそのほかにもバンク・オブ・インゲランドとか或いはバンクオブ・イソデイアとかいろいろあると思いますが、そういうものが現地法人になつてここで日本の税率にかかるよりも、外国銀行の支店として、外国銀行としてやるほうが高税を払うということになるのですか、どういう損得が両方にあるのか示して頂きたい。
  110. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 租税に関しましてはこの条約なども内国民待遇ということになつてつて差別はないわけであります。併し私がちよつと例として申上げましたのは二重課税の関係などがありまして、実際問題としては、日本の会社でドイツに支店を持つておるというよりも、ドイツ法人にして別個の法人格を持たしたほうが二重課税を避けて都合がいいということで、むしろ外国銀行でおるよりもその国の銀行になつたほうが都合がいいというのが現実の姿であります。
  111. 高良とみ

    高良とみ君 その場合に逆の場合はどうなりますか。つまり外国の銀行が内地の現地法人になつておるということの利害得失はどちらになりますか。
  112. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) これは銀行それぞれの方針もあるでありましようが、現在のところでは日本に関する限り、日本法人になるというようなことを考えておる外国銀行はないようであります。
  113. 高良とみ

    高良とみ君 それから更に関連して。先ほどお話のありました社会保障制度でありますが、第三条、向うで働いておる者が経済扶助を喪失した場合には向うの社会保障の適用を受けるわけなんでありますが、この場合にこれは本当に内国民待遇なんであります。けれども英国などに参りますと、旅行者てもああいう国民保険の恩恵に浴することができるわけでありますが、アメリカの社会保障はペイ・アズ・ユー・ゴー、払いつつ、そうしてこれがあとになつてもらえるという社会保障制度でありますので、その点から行きますと、やはりその均てんを受ける社会保障制度というものは向うで何年か払い込んであつた者に関してのみと了承してよろしうございますか。
  114. 黄田多喜夫

    政府委員黄田多喜夫君) お説の通りでございます。
  115. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは日米通商条約に関しまする質疑は本日はこの程度にとどめておきたいと存じます。
  116. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 この次は日米通商条約、これを更に継続するときには、大蔵省のほうも出席するように要求してもらいたいと思います。
  117. 高良とみ

    高良とみ君 そのときに先ほどお話のあつたガツト加入の件とココム関係がありますので、先ほどの外務省側の説明のほかに通産省としての説明を承わりたいと思いますから、通産省の責任の人でも御出席頂ければ大変はつきりすると思います。
  118. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 承知いたしました。それでは本日はこれで散会いたします。    午後四時四十四分散会