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1953-07-16 第16回国会 参議院 外務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十六日(木曜日)    午後二時二十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     佐藤 尚武君    理事            徳川 頼貞君            佐多 忠隆君            加藤シヅエ君    委員            古池 信三君            高良 とみ君            中田 吉雄君            羽生 三七君            杉原 荒太君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    保安政務次官  前田 正男君    保安庁次長   増原 恵吉君    保安庁長官官房    長       上村健太郎君    保安庁保安局長 山田  誠君    外務政務次官  小滝  彬君    外務大臣官房長 大江  晃君    外務省欧米局長 土屋  隼君    外務省経済局長 黄田多喜夫君    外務省条約局長 下田 武三君   事務局側    常任委員会専門    員       神田襄太郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○国の援助等を必要とする帰国者に関  する領事官職務等に関する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○在外公館名称及び位置を定める法  律等の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○団結権及び団体交渉権についての原  則の適用に関する条約(第九十八  号)の批准について承認を求めるの  件(内閣送付) ○工業及び商業における労働監督に関  する条約(第八十一号)の批准につ  いて承認を求めるの件(内閣送付) ○職業安定組織構成に関する条約  (第八十八号)の批准について承認  を求めるの件(内閣送付) ○日本国アメリカ合衆国との間の友  好通商航海条約批准について承認  を求めるの件(内閣送付) ○国際情勢等に関する調査の件(MS  Aに関する件)   —————————————
  2. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 只今より外務委員会を開きます。議題公報掲載通りであります。  まず、国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官職務等に関する法律案在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。右の二件については前回質疑を終了しておりますので直ちに討論に入ります。御意見のあるかたは、それぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。別に御発言はございませんか。……別に御発言もないようでありますから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 御異議ないものと認めます。それではこれより採決に入ります。国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官職務等に関する法律案在外公館名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案、右両案につきまして採決いたします。本案原案通り可決することに賛成のかたの挙手を願います。    〔賛成者挙手
  4. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 全会一致であります。よつて本案原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお本会議における口頭報告内容は、本院規則第百四条によつてあらかじめ多数意見者承認を得なければなりませんが、これは慣例により委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 御異議ないものと認めます。それから本院規則第七十二条により、委員長が議院に提出する報告書について、多数意見者署名を付することになつておりまするから、本案を可とされたかたは順次御署名をお願いします。   多数意見者署名     古池信三  徳川頼貞     高良 とみ  中田 吉雄     杉原 荒太  加藤シヅエ     羽生 三七
  6. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 次に団結権及び団体交渉権についての原則適用に関する条約(第九十八号)の批准について承認を求めるの件、工業及び商業における労働監督に関する条約(第八十八号)の批准について承認を求めるの件、職業安定組織構成に関する条約(第八十八号)の批准について承認を求めるの件、以上三件を一括して議題といたします。政府提案理由説明を求めます。
  7. 下田武三

    政府委員下田武三君) 只今議題となりました工業及び商業における労働監督に関する条約(第八十一号)職業安定組織構成に関する条約(第八十八号)並びに団結権及び団体交渉権についての原則適用に関する条約(第九十八号)について提案理由説明いたします。  工業及び商業における労働監督に関する条約は、一九四七年に国際労働機関ILO)の第三十回総会で採択されたものでありまして、一九五〇年四月に効力を生じ、最近までに批准した国は十六箇国を数えております。  この条約目的は、ILO加盟国労働監督制度を採用せさて各国における労働者保護に関する法規を忠実に実施せしめ、これによつて労働者保護を確保しようとするものであります。わが国におきましては、労働基準法により監督機関設置が定められておりまして、監督機関の任務、監督官の権限、資格等この条約規定内容は、すべて実施されているのであります。  次に、職業安定組織構成に関する条約は、一九四八年にILOの第三十一回総会で採択されたものでありまして、一九五〇年八月に効力を生じ、最近までに批准した国は十六箇国であります。  この条約は、職業安定組織設置による雇用市場組織化目的としたものでありまして、これによつて失業防止及び雇用の増大を計らんとするものであります。わが国におきましては、すでに職業安定法により職業安定組織が維持されておりますほか、安定組織構成業務内容等この条約規定する条件は、すべて同法、失業保険法等により充されております。  次に、団結権及び団体交渉権についての原則適用に関する条約は、一九四九年にILOの第三十二回総会で採択されたものでありまして、一九五一年七月に効力を生じ、最近までの批准国は十一箇国であります。  この条約は、労働者に与えられるべき基本的権利であります団結権及び団体交渉権の擁護を目的としたものであります。わが国におきましては、すでに労働組合法及び公共企業体等労働関係法によりまして、これらの権利保障を確保しております。  この三条約は、戦後わが国が初めて批准する労働条約となるわけでありますが、これらの条約批准することにより、わが国が公正な国際労働について慣行を遵守している実情を広く世界に知らせ、又、将来もこれを維持して行くことを国際間に約束いたしますことは、ILO憲章趣旨に副つた国際協力を進める点からいたしましても、又我が国の海外における信用を高める点から見ましても極めて有意義であると考えます。  以上の点を了察せられ、御審議上速かに御承認あらんことを希望する次第であります。
  8. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 右の三点に対する質疑は次回に譲ります。   —————————————
  9. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 次に、日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海条約批准について承認を求めるの件を議題といたします。政府提案理由説明を求めます。
  10. 中田吉雄

    中田吉雄君 ちよつと、その前に大変恐縮ですが、この日程を組むのは理事会を招集頂いて理事に御相談になつて逐次組んであるのでしようか、どうなつておるのでしよう。他の委員会はたいてい、理事会を前に招集して、そして何を議題にするかということを組んでおるのですが、どうなつておるのでしようか。
  11. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 理事会をずつと前に開きまして、そうして大体の日程はそのときに御説明申上げて順次これを日程に上せるということをお話申上げていたので、毎日々々の日程については、特に重要な問題のときでないと、かけないで参ましたが……。
  12. 中田吉雄

    中田吉雄君 ではいつか知りませんが、大体全部そういう日程で組んで行くという御了承を得ておられるんですか。
  13. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) はあ、ずつと前でございますね。こういう問題は上つておる、それから又こういう条約なり議案なりが出て来る予定になつておるということは、皆さんがたに御了解を得て、そうして日程を組んで参つております。  ただ大臣の来られる日時がはつきりお約束が、これはおできにならないので、それで狂つたりすることがありまするけれども、本日はこの通商航海条約提案理由大臣御自分でなさるということで、それで今とり上げたわけです。この提案理由説明が済みましたならば、これはあとの問題になりまするがMSAの問題に入つて、そうしてこの前の続きの御質問があつたらばそれをやつて頂きたいと、そういうふうに考えます。
  14. 中田吉雄

    中田吉雄君 まあ佐藤先生議長をしておられましたし、皆が遠慮しておる思うのです。なかなか他の委員会ではやはり議事を組むのはやかましいんです。それで佐藤先生敬意を表して大体御一任しておるという恰好になつておると思うのですが、一つ成るべく他の委員会慣例を尊重したような恰好で今後お願いしておきます。
  15. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) いや私に対する個人的な何とかということは今まで一つもなかつたように思いまするけれども、併しそういう御希望でありまするならば、いま中田委員の申された通りにいたします。理事にいちいちお集まり願うのは随分大変だと思いまして、こちらこそ御遠慮申上げておつたようなわけであります。
  16. 中田吉雄

    中田吉雄君 くどいようですが、なかなかよその委員は皆やはり日程の組み方については、たいていそういうふうなことなしにはしないので、併しまあ前議長でもあらせられましたし、その識見と抱負その他民主的運営等敬意を表して黙つておると思うのですが、大体慣行はそうなつておりますからして、今後その点十分御勘案のほどをお願いしておきます。
  17. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 結構でございます。  それでは提案理由岡崎外務大臣にお願いいたします。
  18. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今議題となりました日本国アメリカ合衆国との間の友好通商航海条約批准について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  日米両国間における現在の通商航海関係は、サン・フランシスコ平和条約第十二条の規定によつて規律されているわけでありますが、この規定は、暫定的な性質のものであるばかりでなく、我が国にとつて十分な待遇保障規定しているとは申せません。従つて政府は、先ず米国との間に平等互恵立場に立ち、且つ、包括的な待遇保障を含む新しい通商航海条約を締結するため、一昨年末から在京米国政府代表との間で非公式な折衝を始めました。我が国にとりましては、戦後初めて締結する通商航海条約でありますから、慎重の上にも慎重を期して交渉いたしました結果、漸く本年二月下旬に至り、我が国の主張を十分に取り入れた条約案の妥結を見ましたので、条文、字句の整理を施した上、四月二日に私とマーフイー前米国大使との間に署名調印を了した次第であります。  日米両国間の通商航海関係は、この条約によつて初めて安定した基礎の上に置かれることとなるわけでありまして、両国間の友好関係並びに両国民の間の一層緊密な経済的及び文化的関係を促進するところが大きいと認められますので、ここにこの協定批准について御承認を求める次第であります。  何とぞ慎重御審議の上、速かに御承認あらんことを希望いたします。
  19. 中田吉雄

    中田吉雄君 通商航海条約について資料の提供をお願いしておきます。戦前アメリカと結んでいましたこの種の条約があつたように思いますが、太平洋戦争前に廃棄されましたあの全文を頂きたいと思います。それをお願いしておきます。
  20. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 本件に対する質疑は次回に譲ります。   —————————————
  21. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 国際情勢に関する件を議題といたします。  質疑のあるかたは順次御発言を願います。
  22. 羽生三七

    羽生三七君 保安庁長官は見えられますか。
  23. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) すぐ来られるそうです。
  24. 羽生三七

    羽生三七君 それでは外務大臣一つお願いいたします。国際情勢についてですが、MSAの問題に関する質問をする前に、他の問題でちよつとお尋ねしたいのですが、それは北大西洋条約アメリカ上院で多分今明日中に批准される段階に来たようでありますが、その場合、当然この日本においても日米行政協定の改訂を考慮されると私どもは考えておるのでありますが、政府見解は如何でありますか、この点を先ず伺いたい。
  25. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その通りでありまして、只今準備しております。
  26. 羽生三七

    羽生三七君 それでは続いてMSAの問題について二、三お尋ねをいたします。先日外務大臣アリソンアメリカ大使との間で交渉の開始のための最初の会談が行われたようで、その際の両者の発表を拝見いたしたわけでありますが、これによりますると、相互安全保障による被援助国義務は、同法五百十一条の(a)項に規定されているが、この実施上の義務は、日本国連加盟国なつあとに発生するということをアリソン大使言つておるわけでありますが、それではその加盟国なつた場合、実施上五百十一条(a)項の義務履行をする場合には、当然憲法改正をしなければならんことになると思いますが、そういうことになりますか、如何ですか。
  27. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは必ずしもそうはならないと思うのであります。これは、日本政府のきめるところによりましようが、非常に極端なことを言いますれば、極く人口も少い小さい国ではありましようけれども、一、二の国は軍隊を持つておらない。又軍隊を持つておらないから軍事的義務を負えないということを最初に申した上で、国連加盟しておる国もあるくらいでありまするから、必ずしも憲法改正を要するとは考えません。  又仮にこちらで憲法改正をして軍備を持つたとしましても、その一番問題となりまする国連要請において軍隊を出す義務というのは、これは又特別協定を作らなければそういう義務はすぐには発生しないのでありまして、現在国連加盟国で、まだそういう特別協定を作つておる国はないはずであります。従つていろいろな意味からいたしまして、すぐにそういうような結論は出て来ないと思います。
  28. 羽生三七

    羽生三七君 そうしますと、この五百十一条の(a)項の規定による日本実質上課せられた義務というのは、仮に国連加盟ができた場合、アリソン氏の言明と関連してどういうふうに違いますか。
  29. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 国連加盟をしますれば、その今私が言いましたような特別の軍事的とかというような問題は別にして、いろいろの意味で我々のほうでも国連加盟国としての義務は生ずるわけであります。只今加盟国ではありませんから、我々は国連憲章を尊重して、これに適合するような行動をとつておりまするけれども、これは一方的なものであつて日本がやりたくなければしなくてもいい、極端なことを言えば、理窟から言うとそういうことになる。国連加盟すれば、これは国連憲章は非常に長うございますから一々私から説明するのもむずかしいのですけれども、幾つもの義務があるわけであります。これは加盟国としての義務は当然生ずるわけであります。その加盟国としての義務は、国連憲章を尊重するという建前でMSAもできておりますから、それでやはり義務が出て来るということはあり得る。ですから重なつているわけです。
  30. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると実質上には、加盟したあとでも前でも、そう大して違いはないと解してよろしいですか。軍事的な条項は。
  31. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) その点は、日本政府決定によりましては非常に違いがあるだろうと思います。
  32. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると日本の自主的な決定がない限り、相手方によつて義務的に制約されるということはそう大してはないと考えてよいわけですか。
  33. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) MSAによつて援助を受ける場合にはやはり援助を受ける以上は義務が生じます。その義務の生ずるのは、実質的には非常に大きなものはないと思いまするけれども、例えば機密を保持しなければならんとか、或いは解釈のしようですが、政治上、経済上の事情が許す範囲で自衛の力を発展させ、維持させる、こういうようなことが義務と言えば義務となります。
  34. 羽生三七

    羽生三七君 そうするとアリソン氏の言う国連加盟後に発生する義務というのは、具体的にはどういうことになるのですか。今の加盟前との違いというのは、外務大臣説明では、そう大した違いはないというようにもとれるのですが、何か向う言明は非常に大きなものを加盟後の日本に期待しておるようにとれるのでありますが、これは私の感違いでありますか。
  35. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は実はアリソン氏に直接聞いてみるひまがなかつたから確めてはおりませんが、私がちよつとあれを聞いたときの感じでは、例えば集団安全保障とかそういう問題ではないかと思うのでありますが、ここに条約局長がおりますから、もう少し詳しく何かわかつておれば……
  36. 羽生三七

    羽生三七君 ちよつと承りたい。
  37. 下田武三

    政府委員下田武三君) まだ米国側の詳しい見解を聞き質すひまがございませんのでございますが、私どもの受けました印象では、日本MSAを受けることになつてその結果MSA法の五百十一条の義務を引受けることになるが、その義務日本がすでに加盟を申請している国連加盟が実現した場合には、実質的には同様なことを引受けることになるのであつて、何にも日本にとつて目新らしい義務を買うようになる問題ではないんだということを言わんとするのが主点であると思うのであります。勿論これは二つの説明でございまするが、法律的に詳しく言いますれば、国連憲章にはMSAと全然無関係ないろいろな義務規定しております。でございまするから、法律的に言えば必ずしもそうとは言えませんが、併し国連憲章五条日本平和条約並びに安保条約でも国連憲章五条というものを前文に書いておりまするが、アリソン大使言つたのは、国連憲章五条義務というものを差当り考えて、あの義務は別に日本にとつて別目新らしいものではないということを言おうとしたのだが向う趣旨であろうと了解しております。
  38. 羽生三七

    羽生三七君 外務大臣へのお尋ねはまだありますが後にいたしまして、今の問題にいずれ関連するこにとなるのですが、保安庁長官に。それはちよつと唐突なことになるのですが、自由党改新党予算共同修正案を作成されて、いま明日の日程になつておるわけです。その場合の財源捻出等保安庁費に大幅に求められている。そうしますと、一方で外務省MSA援助アメリカに求めるか、求めないかの協議を始めながら、一方ではその主体となるべき保安庁費の非常な大幅の削減をするという驚くべき矛盾について、政府はこれの矛盾とか責任とかをお考えになられんのでありますか。
  39. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 保安庁庁費予算要求は、私らは十分慎重に検討いたしましてやつたのであります。聞くところによりますると、改新党のほうから相当大幅の修正案が出るとかいうことを聞いておりますが、その内容についてはまだ詳しいことはわかつておりません。併し我々といたしましては是非とも原案を認められんことを切に希望している次第であります。相当これが修正になりますると支障も来るんじやないかと考えております。併しながら議会でこれを修正されるということになればこれは止むを得ません。その修正された範囲内において全力を尽して行きたいと、こう考えている次第であります。  そうして今お尋ねMSA関係でありますが、これは御尤もと考えますが、併し我々はそのMSA内容についてまだ何にも承知していないので、これはどこまで保安庁に影響を持つて来るかということは今後の問題であると思つております。内容を十分承知した上において研究してみたいとこう考えております。
  40. 羽生三七

    羽生三七君 これはどうも少し変だと思います。内容の詳しいことを御検討なさらなくとも、このMSA援助内容の、主たるものが当然保安隊の装備の拡充強化であることは、もう全国に一人も知らない者はない、これは明白なのであります。その予算を私たちはまあ大幅に削減することは非常に結構だと思つております。日本でほかに財源を求めるとすればそれ以外に当分なかろうと思つておりますが、我々の立場からすれば結構と思うのでありますが、而も与党である皆さん自由党のほうで一番大事な国防の施設上ゆるがせにできないと言つてつて、五億とか十億とかならなんですが、百億近くも削減して、それでやつて行けると言いながら、片つ方でMSAの大幅な援助を外国に求めるということでは非常に政治的な重大な矛盾だと思う。これはもう内容がきまらなければというが、きまらなくてもわかつております。MSA援助保安隊拡充強化以外にないということははつきりわかつております。これは如何ですか。
  41. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 恐らくそこへ持つて来るだろうと考えております。そこで私は要求しておりまする原案をどこまでもお認め願いたいということで折角今努力中であります。
  42. 羽生三七

    羽生三七君 折角の木村保安庁長官の御希望にもかかわらず、結果はおよそその意思に反したことになるだろうと思いますが、この点はいずれ一応予算委員会等で論議されることだと思いますので、私はまあこれ以上は申上げません。  そこでもう一つ長官にお伺いしたいことは、ダレス氏が先般日本保安隊の十箇師団、三十五万増員案というものをアメリカで何か発表された。その後字句誤解があつてはいけないということでいろいろ訂正されたことは事実でありますが、この発表があつたことは事実であります。併しその次の発表の際に濠州、フィリピンとの了解も成り立つておるということでありますが、相手国了解はありませんか。日本には全然話はなかつたのでありますか。
  43. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。全然話はありません。而も三十五万の増員ですか、計画ですか、そういうことについてダレス氏が本当に言つたかどうか私も疑問に思つております。仮にそれが本当に言われたとしても、三十五万人増強するということはなかなか容易なことでありません。これは十分我々は真偽について検討してみたい、こう考えております。
  44. 中田吉雄

    中田吉雄君 それに関連して。どうも木村保安庁長官の言はおかしいと思う。もうそれはダレス長官がこの間の上院歳出委員会で、日本保安隊は十箇師団の目標まで増強されると思うという証言をやつて非常に重大な反響を巻き起こしましたから、長官みずから十三日にこの誤解を解くため記者団会見をやつて、もう各国政府に通告し。日本政府にもちやんとその増強要請をしているというのです。そのことをちやんと十三日の記者団会見で証言している。それにもかかわらずそういうことを言われるということは甚だ我々としては遺憾に堪えない。非常にこの日本人の心を心としての施政だか何だかわけがわからんということになるわけなんです。もう殆んど各国政府日本政府に対しても言つて、併しそれは日本政府自体決定すべきもので、強制的な措置を伴うものでないということをちやんと言つている。
  45. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。ダレス氏がさようなことを我々のところに言つて参つておりません。それは何かの誤伝だろうと思います。
  46. 中田吉雄

    中田吉雄君 いやそんなことはない。それは私が各種の情報を集めたのでは、何んでもダークセン氏が来た際にもそれからマーフイ大使がおやめになつて現在のアリソン大使が就任された際にも、もうちやんと増強のことを強く要請した。そういうことはもうずつと出ているのです。
  47. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。少くとも私の手許にはさようなことは言つて来ておりません。
  48. 中田吉雄

    中田吉雄君 そういうことを当の責任者である保安庁長官が知らずして、一体どうして日本の治安や防衛の問題がやれるということがあるでしようか。私は全く国会乗切策の、又アメリカに遠慮しての、極めて憐むべき心事から出た発言だと思います。はつきりそういう要請はあつたが、日本立場としてはこうだということが、一体言えないのですか。
  49. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) はつきり申上げます。私の手許にダレス氏からさような要請はありません。
  50. 中田吉雄

    中田吉雄君 それは総理大臣のところにはなかつたのですか。何かそういうことについて相談はありませんでしたか。
  51. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 総理大臣から私の手許にもそういうようなことを知らせず、又さような話があつたということを私に伝えておりません。これもはつきり申上げます。
  52. 羽生三七

    羽生三七君 ちよつとさつきのところに戻つて、もう一点だけ承わつておきたい。若し将来集団安全保障への参加というようなことが具体的な問題になつたその場合には、憲法改正ということは当然の問題になつて来ると思いますが、これは如何でしようか。日本集団安全保障に参加する、しないは日本人自身の問題でしようが、その場合の憲法上との関係は如何でしよう。
  53. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。集団安全保障の下にどういうことをやるかということはまだわかつておりませんが、少くともそれによつて日本が戦力を持とうということになりまするとお説の通り憲法改正の問題が起つて来るであろうと思います。
  54. 羽生三七

    羽生三七君 後学のために承わつておきたいと思うのですが、集団安全保障に参加する場合に戦力を持たないで、参加できるというようなことはあり得ると思いますか。
  55. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私はあり得るだろうと思いますが、集団安全保障条約内容如何によりますれば、日本憲法改正してまでそれに参加するかしないかこれは問題であります。参加するにいたしましても、日本憲法下においてできるだけの協力をするという意味合の下においてできることは私は可能であろうと、こう考えております。
  56. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 先ほどのMSA援助を受けたとして、その場合に日本が引受けなければならない義務が何であるかという問題ですが、どうも先ほどの御説明ではよくわからないのですが、昨日のアリソン大使のあいさつによると、これらの義務相互安全保障法第五百十一条(a)項に明文があるとして、そうしてそれらの義務日本国連の参加国となつた場合には当然に引受けなければならない義務であるとは言つているのですが、そこで言う義務なるものはずつと、五百十一(a)項の六カ項目に亘る義務、それを全部説明していると思うのですがそういうふうに了解していいのですか。
  57. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はそう思いました。
  58. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうするとそれらの義務の中で、それでは一つずつお尋ねしたいと思うのですが、第一に国際協力の義務を述べていると思うのです。そこでその場合に国際間の理解と親善の増進、国際平和維持への協同、これが五百十一条(a)項の第一。第二の国際情勢の緊迫の原因を除去するために相互に合意される行動をとるという点。それらを義務付けるというふうに言ついるのですが、そういうものが協定によつて義務付けられるとした場合に、日本の外交政策の自主性というようなものは傷つけられないとお考えになるかどうか。日本の外交の自主性と今のそういう義務との関係をどういうふうにお考えになりますか。
  59. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) こんなことを言うのはおかしいようですが、外交政策の自主性ということが、ほかの問題を全部はずしちやつて何でもかんでも自主性で行くのだというようなことには、今の世界の一般の考え方はなつていないと思うのです。で、例えばこういうことは国連憲章にもその趣旨がありまするし、国連加盟している国はどうせこういう考え方に行くわけです。それでそれじや国連に加入している世界の殆どの大部分の国は外交官に自主性がないのかということでございますが、私はそういう意味ではなくて、今ではお互いに助け合つてお互いに譲るべきことは譲り、殊に大きな極端なことを言えば北大西洋条約で兵器の規格まで同じようなものを作るということがあつたり、シユーマン・プランをやつたりする状況の下においては、或る程度はお互いに譲り合つて話合つてそういうことをやることは、自主性とはちつとも関係ないと思います。いわんやこれは相互に合意された上の行動でありますから勿論差支えないと思います。
  60. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それならばもう一つお尋ねしますが、国際間の緊迫の原因を取除くために相互に合意した行動を取るということを言つておりますが、今日本MSA援助を受けたとした場合に考えられるそういう義務内容、行動の種類というようなものはどういうものだとお考えになつておりますか。
  61. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は今直接にそういうことがどういう具体的な事実になつて出て来るか、ちよつと想定ができないのですが、ただいろいろな意味国際間の緊迫を解く必要があるという例を一般的に上げてみれば、例えば大きな意味では輸入制限をするというようなことも一つの緊迫を生ずる理由にもなりましよう。それから例えば領土の係争事件があるとすれば、これは日本の場合ではありませんが、領土をどつちの領土だなんとという議論をしている場合もありましよう。その他いろいろな国際間の緊迫を生ず要等るような懸案がある場合もありましようと思いますから、そういうときに、具体的にそういうことが今直ぐには考えられなくても、そういうものをできるだけ取除くという原則については、これはまあ結構だと思つております。
  62. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それならばもつとその点を具体的にお尋ねしますが、例えば今後日本が対ソ対中共の政策の転換を図る、そうしてこれらとの間に親善関係を結び、更には講和条約なり何なりを結ぶというような意味での大きな政策転換を図るというようなことも今後考えなければならないと思うのですが、そういう方向に転換する場合には、若しMSA援助を受けて国際協力の義務を、特にアメリカとの協力の義務を負わされて行くという場合には、そういう外交政策についてはアメリカ側と協議をするとか、或いはそれの了解を得るとかいうなことが必要だとお考えになるのかどうか。
  63. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それはどこから出て来る義務か私にはわかりませんが、国際間の緊迫を除去するためにいろいろなことを合意してやるという、そこからはそういうことばどうも出て来ないようです。
  64. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いや、アメリカの考え方によれば国際間の緊迫の原因を取除くためにはむしろ防衛力の増大をするということが必要だ等々のことを主張するのじやないかと思うのです。そうだとするとそういう条約上の義務を負うとすれば、対ソ或いは対中共政策を今私が言つたような方向に転換をするというようなことは、それはアメリカ的な考え方から言えば逆行するごとになりやしないか。そういう場合に条約上の義務日本の外交政策の自主性とはどういう関係になるか。
  65. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) どうもあなたのおつしやることは理解できるけれども条約上の義務としては出て来ないようです。
  66. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それじやその国際協力の義務ではないかも知れんという問題になると思いますから、次の問題に移りますが、この防衛力増強義務は昨日の説明によると、「合衆国が一方の当事国である多数国間若しくは二国間の協定又は条約に基いて自国が受諾した軍事的義務を履行する」という例の(3)項が上げてあると思うのですが、この場合に昨日の説明によると、安保条約においてすでに引受けた義務でいいんだ、これは六月二十六日の書簡にもそれはつきりしているというふうに説明をしているようですし、更に岡崎大臣自身もそういうふうなあいさつをしておられると思いますが、ところがすぐそれに引続いて、然るに次に、自国の防衛力と自由世界の防衛力の発展と維持のために、自国の政治的経済的安定と矛盾しない限りにおいて自国の人力、資源、施設、一般的経済状態が許す限り全面的な寄与を行う、この義務を負わなければならないのだということを言つていると思うのですが、こういう義務は一体安保条約においてすでに引受けた義務だとお考えになつているのかどうか。
  67. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) いやこれは私は別問題だと思います。それであとのほうは軍事的義務というのじやない、別の問題であろうと思います。今の続きを申しますと、つまり五百十一条にも御承知のように第三、第四項と別々に分れて書いてある。これは一緒のものじやない、別のものであります。
  68. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 別のものではあるが、その義務も勿論負うということを言つているわけでしよう、向うで。その義務なるものは安保条約では負うているとお考えになつているのですか。
  69. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ですから私のほうで言うのは、第三項の義務というのは安保条約で負つている義務だけでいいのでなかろうか、こういう意味です第四項のほうは別の義務であります。
  70. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それならばもう一つお尋ねしますが、安保条約で負つている義務というのは、たびたびお聞するのですがはつきりしないので改めて聞くのですが、どういう義務だとお考えになるか。
  71. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは直接には第一条のアメリカ合衆国の陸海空軍を日本の国内及び附近に配備する権利日本は与えている。従つてアメリカにこういう権利を与えているということは、日本から言えばそういう義務を負つていることになる。それから第二条は基地若しくは基地における何々を第三国に供与しない、こういう義務を負つている。
  72. 中田吉雄

    中田吉雄君 岡崎外務大臣お尋ねいたしますが、先に羽生委員お尋ねした問題ですが、アリソン大使の十五日ですかそのときの演説の中にある、実質的にはそれらの義務日本国連の参加国となつた際には引受けるところの義務であるということを、海外出兵との関係なんですが、先に両氏が質問された際に、朝鮮出兵等の問題でいろいろお話になつたが、この国連憲章の四十三条ですか、兵力提供に関します特別協定を結んでいないにもかかわらず朝鮮にまあ出兵するわけですが、三十九条の勧告に基くものだと思うのですが、加盟した際にそういう勧告がありますればそういう勧告に応ずる場合どうなりますか。
  73. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それはそのときの政府がきめる問題であります。
  74. 中田吉雄

    中田吉雄君 若しその勧告に応じて保安隊を海外に出すとするならば、現行憲法とは、政府決定は別にしてどうなりますか。
  75. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは保安庁長官がおられますから私から言うのはおかしいのですが、保安庁法ではそういうことはできないことになつていると思います。
  76. 中田吉雄

    中田吉雄君 保安庁長官、それに関しまする御所見。
  77. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) その通りであります。
  78. 中田吉雄

    中田吉雄君 アメリカも、いつかも申しましたように平和憲法を結んだことを非常に後悔している。併し日本国連加盟して、その国連への加盟によつて決議なり勧告があれば、それに出しても現行憲法を逸脱しない、現行憲法範囲でやれる。こういう解釈も、日本の平和憲法をどうして逃れながら再軍備させ、どうして海外に出すかと苦慮して考え上げた一つ見解として、そういう見解があるのですが、どうです。
  79. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そういう見解がありましようとも、今申上げました通り日本保安隊は外国に出動すべきものじやないと考えております。
  80. 中田吉雄

    中田吉雄君 保安庁法の何条に基いて…。
  81. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 四条であります。
  82. 中田吉雄

    中田吉雄君 ちよつと読んでみて下さい。
  83. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 「わが国の平和と秩序を維持し、人命及び財産をの保護するめ、」特別に必要なる場合にこれを運営、管理することをきめておるのであります。
  84. 中田吉雄

    中田吉雄君 今の規定では全然そういうことができない。その条項ではできないと思います。その点について。
  85. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私はさように解しております。国内の平和と秩序を維持するために…。
  86. 羽生三七

    羽生三七君 木村長官ちよつとお尋ねいたしますが、アメリカでもアリソン大使の言にあるように、今後の日本のこの自衛力の増強というものを期待しておると思う。日本が今後どういうふうに運営して行くかということは、日本自身にその態様等は任せられておりますけれどもそれを期待しておると思う。そこで今安保条約で当面する問題を、糊塗しておると言つちや変だけれども糊塗しておるわけですが、その場合に永久に日本アメリカ軍の国内駐留を要請しておるわけに行かないから、他日日本が独立した自衛力を持つということを想定して、政府でも木村長官保安隊の運営というものを考えておられると思う。当然そう思う。そうすると日米安保条約に委ねなくても日本が独立した自衛力を持つという場合、それは現在の人員とか或いは装備から言つて、どういうときに日本が独立した自衛力を持つたとお考えになるか。
  87. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは私も常に言つておることであります。独立国家となつた以上は自分の国の手によつて自分の国を守るという態勢は一日も早くとつて行くことになると、私はこう考えております。そこで今は日本の財政状況その他の各面からいろいろ制約がありまして、止むを得ず直侵略に対してはアメリカの駐留軍の手による、国内の平和と秩序を維持するために保安隊がある。両々相待つて日本の秩序を維持しておるわけであります。併しこの態勢をいつまで続けるかということに問題があろうと思います。  そこで一番問題はアメリカの駐留軍が引揚げた場合にどうするかということです。これは大問題だろうと思う、率直に申しますと。そのときに日本がどうしていいのか、今から考えておく必要があるのじやないか。これは私は国民ともども考慮しなくちやならん問題だろうと考えます。そこで差当りの問題といたしましては、十一万の保安隊、一万の警備隊でとにかく日本の平和と秩序を維持しているわけであります。併し日本経済力が許し、又国民がこれではいかんのだということの気運が醸成されまするとここに初めて増強の問題が出て来るんじやないかと考えております。その時期はいつであるかということは今から速断することができませんけれども、やがてそんな時期が来るんじやないかと私は思つております。率直に言うと、それは併しどこまでも日本の民生の安定を害するようなことであつてはならん。日本のともども国民の生活をおびやかすようなことであつては、いくら保安隊増員したつてこれは根本がいけないのです。国民の生活をおびやかさない程度において将来どこまでこれを増強して行くかということはなかなか容易なことではありませんが、併し我々としてはやはりそういう面についてもふだんから十分研究して行く必要はあるということを私は率直に申上げたい。ただ然らば今すぐどうしたらいいかということについては申上げることができないような状態であります。
  88. 羽生三七

    羽生三七君 どうも私おかしいと思うので、まあそういうお考えでお進みになることはよくわかりますが、そうすると十一万の人員をこれよりふやす意思は今のところはないと、国民のまあ将来の考え方にもよる、経済上の条件にもよる、将来は考えなければならんときもあるかも知れない、これはまあ一応わかるのであります。そうすると今度いよいよMSA交渉を始める前に人員もふやさん、それから装備もできりや強化したほうがいいけれども、これもどうなるかわからん、そんなことでMSA交渉ということはできるんでしようかね。そうなれば人員もふやさなければ装備の点では例えばどの程度の飛行機を持つか、持たんか、ジェット機を持つとか持たんとかという議論があるわけですが、飛行機を持つとか或いは戦車がどの程度になるか、或いは機銃なんかどれだけになるか、そういうことがなければ、ただ人員もふやしません、将来経済事情によつては装備を強化したいという、そんなことでは向うが期待しておる、アリソン氏が何度も言つている、それは日本の自主的な決定に委ねるが、併し日本保安隊増強を期待するという言明から考えて果してそんなことで交渉ができますか。
  89. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 尤もでありますが、それでありますから今度のMSA交渉内容につきましては初めからアメリカでもどういう考えを持つているか、又アメリカの駐留軍の引揚問題もこれにからまつて来るのであります。それらの点については十分将来検討した上で何分の対策を講じたい、これが我々の心境であります。
  90. 羽生三七

    羽生三七君 それはわかりますが、併しこの交渉が半年一年かかるとは思えないんです。少くとも一、ニカ月中には順次交渉して成案を得られると思います。その代りその際来たから一つ考えてみようじやないかというようなことでは問題にならんと思います。その場合にはどの程度の人員とか或いは人員は現在通りなら装備を拡充するとかいうことですね、少くとも一、ニカ月中にはまとめなければならん。その場合に急に保安庁なり経済審議庁に命じてさあ今晩中に作れというようなことはないと思います。何らかの構想があるんじやないかと思う。だから私は木村長官が言われた五カ年計画なんということは申しません。これは別の問題ですからここで言う必要はありませんが、併し何らかの成案をお持ちにならなくて、今後MSA交渉ができるということは常識上考えられないのですよ。それをどうしてそのように出たとこ勝負みたいに政府言つておられるか、どうも私は了解ができない。もつと率直に言われて、賛成する人もあるでしよう、反対する人もあるでしよう、それは外交上機密に属することもあるでしよう。併し誰が見ても常識だと思われるのは率直にお話になつて十分国民の納得するようになさるのが当然だと思います。これは外務大臣と両方の御所見を承わつておきたいと思います。
  91. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 至極御尤もであります。それでありまするから我々も十分これは研究中なんであります。併しこれは直ちにどの案がいい、この案がいいという成案というものは持つていないということは事実であります。これは各方面に亘つて研究を要するんであります。例えば装備の点についても日本の生産力の問題、技術の点も考えなくちやならんわけで、全部装備をもらつていいとは我々考えていない。それから人員にいたしましてもすぐそごから狩り集めるというわけにはいかない。船に乗り込ませる者に対しても私は少くとも五年かかると思う。これらの教育の点はどうするのですか。又国民所得の点、これは将来の見通しはどうであるが、そういうことからいろいろ研究してみまするとなかなか容易じやないのであります。併しそれだけの資料は十分に集めて、いざという場合に間に合うようにいたしたい、こう考える次第であります。
  92. 羽生三七

    羽生三七君 その三年も五年も先のことは勿論それこそ先方の考もあるでしようから追つておきめになるでしようが、とにかく援助法に基いて向うの議会がすでに承認していることですから、これは予算上の問題ですから実施上速かに成立させることになるのです。その場合に立案を事務当局に命じてそれからということなんですかね。少くとも第一次年度の何らかの計画というものがおありでなくて交渉に入られるということは、どんなに私たちが素人の常識で考えても了解できないのです。これはお持ちになつていると思う。何らか何年計画までなくとも、いいんですよ、お持ちになつていることは大体、この程度のことを考えておると、そういうものがあつた一つそのお考えを伺いたい。
  93. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) いや、持つておりますれば、私は率直に……
  94. 中田吉雄

    中田吉雄君 怠慢じやないか、そういうものを作らないということは……。
  95. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) ……お話しいたします。それはそういうものじやないのです。なかなかこれは各方面から検討を要するものであります。恐らくこれは第一案も第二案も第三案も出て来るでありましよう。それですから我々はあらゆる資料を集めて只今検討中であります。成案を得ておりません。これは私、率直に申し上げます。
  96. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 さつきのもう少し続きをやりますが、それじやどうも今のお話を聞いていて更にわからなくなつたのですが、先ほどのその援助を受けるための義務の第三、軍事的義務は今お話のように安保条約によつてすでに引受けた義務だというふうに一応了解しておきます。  それならばアリソン大使が言う次の言、即ち自国の防衛力及び自由世界の防衛カの増進及び維持のために完全なる寄与をなすという義務は、一体内容的にはどういうものだというふうにお考えになつているか。それからこれは義務として負わなければならないというふうにお考えになつているかどうか、外務大臣にお伺いします。
  97. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は義務として負うべきものだと思うのであります。
  98. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうするとそれは内容的にはどういうことですか。
  99. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはまあ幾つかに分れるのでありますが、第一は自国の防衛力になるわけであります。これについては安全保障条約にはいわゆる期待という字を使つてあります。アメリカ側から言えば期待である。併しこの保安条約の前文に、アメリカ側から言えば期待と書いてあるが、これは期待だから日本は全然考慮しなくていいんだというふうなそんな条約じやないと私は考える。日本から言えばやはり二の期待に副うべく努力するのが当然だと思う。従つて日本から言えば義務、これは明確に言う条約上の義務じやありませんけれども、併しこの期待に副うべく努力するのが当然である。又現に少くとも今の内閣はほかの条件が許すならば自衛力の漸増をしたいという考えでいるのであつて、この点は一向今の考えと矛盾しないと。ただここにある通り経済的、政治的、いろいろな条件が入つているわけであります。只今すぐに自衛カの漸増ができるかどうか。まあこれは装備のいいのをもらえばそれだけでも漸増になると思いますが、その非常に目に立つような漸増ができるかどうか、これは別問題であります。  それから今度自由世界の防衛力の増進及び維持のために、いろいろなまあ全面的な寄与をする、これもずつと同じ条件がついているわけであります。例えばこの全部の自由諸国にこんなことはできますまいが、その一部の国には武器を作つて売るという場合もありましようし、又必要な機械を供給するという場合もありましよう。これは併し恐らく自国の経済ということを考慮しますから、結局特需のような恰好になるのじやないかと思いますが、そういう意味でできるだけ相手に、ほかの国に対してもそういう寄与をいたしたい。これも今まで政府が始終言つていることと同様なことです。そういうな義務と考えております。
  100. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、その二つの義務のうちの前の自国の防衛力に関する義務からもう少しお尋ねして行きたいと思うのですが、この自国の防衛力増強に関する義務安保条約では負つていなかつたのが、今度のMSAを受けるために新たに義務として受けなければならないことになつたものというふうに了解していいのですか。
  101. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 法律的に言えばそうだと思います。
  102. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、ここで一つ新しい義務が出て来たというふうに解釈していいのじやないかと思いますが、そうなれば自国の防衛力なるものの内容はどういうものだというふうにお考えになりますか。
  103. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは安保条約にもすでにありますように、攻撃的な脅威となるようなものとか、国際連合の目的に反するようなことに用いられる軍備は避けながら、将来は直接間接の侵略に対する自国の防衛のためにするその防衛力の増強、こう考えます。
  104. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると、それは攻撃的な力でないというだけで防衛に関する限りは単に間接侵略だけでなくて、直接侵略の場合にも防衛力としてそれを排除するような内容の力でなければならんというふうにはつきりお考えになつておるわけですか。
  105. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) だんだんそうなるべきだと思います。
  106. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それは、そのテンポなり態様はどうでもいい。まあ一応後の問題にしますが、性質的には直接侵略に対する防衛力であるというふうにお考えになつておるわけですね。
  107. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは漸増的にやるのですから……。
  108. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 漸増的であろうと、急増的であろうとそこはちつともかまわないのです。性質的に直接侵略を受けて防衛する力、それを義務として負わなければならんというふうに受けておられるかどうか。
  109. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 将来はそういうふうになるように努力する義務がある。その通りです。
  110. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いや、将来はそういうふうになるように努力するということになると、さつきおつしやつたそれは安保条約にすでに引受けている義務じやないけれどもアメリカからの期待を政治道徳的に遂行し実現しなければならない性質のものだということにぽかされて来るのですが、その程度ならばすでに安保条約で引受けているといつてもいいんだと思うのです。大臣もそうおつしやつておる。そうでなくて私が聞きたいのはそういう期待とか何とかいうような、将来とか漸増とかいうようなそういう態様なりテンポの問題でなくて、性質的に今度のMSAを受けることによつて新たに直接侵略に対応する力、防衛力を義務として引受けるのかどうか。
  111. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) だからこれは政治的、経済的の安定を害しないで、人力とか資源とか施設とかその他一般産業の条件が許す範囲でやるのですからして、今すぐにそうなるかどうかは別問題として、そういう条件が許すという場合にはそこまで行くという義務です。
  112. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それはそういういろいろ限定的なものはついておりますが、とにかくそういう意味での防衛力を持つということは義務になる……。
  113. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 窮極的な義務になります。
  114. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうすると前には、安保条約では国内治安の確保という点で保安隊という力を持ち、それを漸増するというふうな考え方として、従つてこれは憲法第九条に違反するものでないという考え方だつたと思うのですが、今のようなお話になつて国内で発生する間接侵略だけでなくて、直接侵略に対しても防衛し得るような力を持つことが、それはいろいろな限定がありいろいろなタイミングな問題はあるにしてもそういう力を持つことを義務づけられているということになれば、それは明かに憲法第九条に違反するということになると思うのですが、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  115. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はそれは違うと思います。なぜかと言いますれば、これはまあ議論になるところと思いまするが、只今保安隊憲法に違反しないものだ。こういう前提の下に議論しなければならない。戦力に至らないもので違反しないものだ。そこで若し、これは仮定の議論ですが、保安庁法の中に、今は国内の治安平和を維持するということになつているが、仮に保安庁法の中にこの保安隊で直接侵略にも防衛するのだという任務を課せられたと仮定する。そうすれば保安隊は直接侵略に対しても向うわけであります。併しながら保安隊実質が今と変らなければやはり保安隊は戦力ではない。こういうことには成立つわけであります。すぐ戦力とか憲法違反とかいう問題にはならないと思います。
  116. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それはおかしいので、保安隊の御審議を願つたときには、これが国内治安の確保のためだから、先ほど木村長官もしばしばお引きになるのだけれども、第四条ですか、そういう任務しか持つていないのだからあれは憲法違反でないのだということで今までずつと議論をして来られたと思うのです。然るに保安隊がさような直接侵略に対する防衛力たる任務を持つならば、憲法違反でないだろうとおつしやるけれども、我々から言えば持つこと自体がすでに憲法違反じやないか。そういう仮に自衛力であろうとも交戦権なり或いは軍力なるものを一切放棄をするということが、あの憲法第九条の精神であり考え方だつたんです。それをふみはずすと言われるのならば、これは明瞭に憲法違反だ。
  117. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 木村長官がおられるときに、かようなことを言つちやおかしいのですが、木村長官説明を今まで私はそばで聞いておりますと保安隊は戦力でないという御説明のように思います。
  118. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 戦力でないというのは、国内治安の確保だけに関するからです。
  119. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 国内治安の確保だから、或いは国外に当るからというので、中身は何にも違わないのに戦力になつたりならなかつたりするのはおかしい。戦力というのは一定の、木村長官の御説明のように総合的な力であつて、これがどこへ向けようともその向けたことによつて戦力になる戦力にならんという議論じやないと思います。尤もこれは私の私見だから木村長官のお考えは……。
  120. 羽生三七

    羽生三七君 私一点だけですが、これは木村長官お尋ねすることになるかも知れませんが、例えば空軍と海軍はアメリカが持つている。地上部隊だけの義務日本が、義務と言つちや変ですが日本が負う。そうすると近代戦力というものは、陸海空の三軍のコンビネーシヨンで成立つわけですが、日本が地上部隊だけで外敵云々の問題は別として、それは外敵であろうと内乱であろうと何か問題があつた場合は、海空はよその国で持つて日本が地上部隊の役割を担当するから、これは日本自身が近代的な装備を持つた戦力に対応する近代国家になると思うのです。そのコンビネーシヨンの関係で行くとこれは立派な偉大な戦力になると思うのでありますが、これはどうですか。
  121. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御承知の通り憲法でどういうことを規定しておるか。憲法第九条第一項には御承知の通り、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」この規定を設けられた趣旨というものは、結局は、日本はああいう軍事力を持つて侵略戦争をやつた従つて将来かような愚を再び繰返すようなことがあつてはいけない、そこでこれを禁止した規定でありまして、この規定の裏側はいわゆる自衛力というものを否定したわけではありません。要するに自衛権というものは一独立国家たる以上ば如何なる国でも持つておる、この規定によつて自衛力を否定されたわけではないのです。併し自衛力の名のもとにこの厖大なる軍事力を持つてそれを逆用して侵略戦争なんかやつてはこれはいかんというので、憲法第九条第二項によつて陸海空軍その他の戦力はこれを保持してはならん、こういう規定を設けてある。それからこの戦力ということは、結局はこの侵略戦争に用いられるような近代装備を持つた一つの大きな総合力、こういうふうに解すべきであろうと考えます。そこで陸軍だけだつてそうです。陸軍も、武力です。日本は四面海に挾まれておるのであります。海軍力もない、空軍力もない日本は、到底他国の侵略の道具に使うようなことはできないわけのものです。そこで陸海空軍その他の戦力という規定から見ましても、陸だけでは近代戦争を遂行し得る能力たる戦力には該当しない、こう解すべきであると我々は考えております。併しそれにも規定は別といたしまして、およそそんな大きな陸軍力を単独に持つというようなことは我々ちよつと想像しかねるのであります。一体軍事力と言えばバランスのとれたものでなければならんので、一国において厖大なる一つの陸軍なり海軍なり空軍なりというものを持つということは、これは国柄にもよります、ソヴイエトのような国であれば陸軍だけ、或いは空軍だけ両々相待つてつて行く、海軍は必要ないかもしれん。日本のような島国では到底さようなことは想像できない。我々は陸軍だけで直ちにこれを戦力なりと言うことはちよつとおかしな話であると思います。
  122. 羽生三七

    羽生三七君 私はこれ以上議論になりますので尋ねませんが、私はやはり日本の陸軍が何十万になるか、勿論遠い将来のことでしよう、保安隊もそんなことはすぐ起ることじやない。又やれもしないでしよう。又同時に空軍や海軍が近代戦争に対応するようなものを今すぐに日本経済情勢からも諸般の政治情勢からもできるとも考えておりません。どこかの国が期待するところはやはり日本にそんな大きな空軍力、海軍力を持つことは私は考えておらんと思う。一人立ちできることは期待しているが、日本は地上部隊の担当で十分だと私は考えておると思われる筋が相当あると思うのです。だからそういう意味で言うと、空海というのはどこかが持つて日本の持つている保安隊というのは、地上部隊の装備拡充強化をすることを期待しておるのでないか。そういう場合一は理窟はとにかくとして、立派な近代戦力の一環をなすという気がいたしますが、これは議論ですからよろしうございます。
  123. 中田吉雄

    中田吉雄君 木村保安庁長官お尋ねしますが、法制局と打合をされて、戦力という概念をはつきり統一されたということですが、私が承わりたいのは、憲法上禁止している戦力とは、近代戦争遂行に役立つ程度の装備編成を備えるものだ、こういうことで、日本の警察予備隊なり保安隊は戦力でない、こういう立場をとつておられる。そういたしますと、米ソの間に挾まれた日本の性格的な現在の地位、或いは兵器の発展段階というようなものを考慮いたしまして、どの程度まで一体増強してもそれは現行憲法に触れない装備であるか、一体どの程度までは触れないか。その点はつきり日本の置かれた国際環境、アジアにおける現在の地位というようなものを一つ御考慮になつて、現段階においてはどの程度まで現在の警察予備隊、海上保安隊等を増強してもこの規定に触れないか、その点具体的に一つはつきりしてもらいたい。
  124. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それが具体的に申しかねることはしばしば述べた通りであります。要するに、それはその国の置かれた環境及びその時代によります。昔戦力であつた時代が今では、そのものが戦力でないということにもなりましようし、それを具体的にどこまで行けば戦力になる、どこまで行けば戦力に至らん、一線を画することはできないのでありまして、そのときの保安隊なら保安隊の現状を見てそうして戦力に至るか至らないかということは客観的に判断すべきものであろうと考えております。
  125. 中田吉雄

    中田吉雄君 そうしますと、少くとも現在アメリカ的な表現によると、原子爆弾的な革命的な兵器、水素爆弾というようなものもできておるのですが、そういうものができた現在、そういうものを考慮すると、この木村さんの御採用になつておる概念から言えば、日本の警察予備隊や海上保安隊をいくら殖やしたつて憲法上禁止しておる戦力にならんというようにとれて行くと思うのですが、どうですか。
  126. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それは今からはつきり基準を設けて、どこまでなら戦力、どこまでになれば戦力に至らんものだということは申しかねるのでありまして、保安隊が、これは仮定論でありまするが、増強するといたします。その増強する範囲は、ここまでであれば先ず戦力に至らんだろうということは、そのときの政府がこれを客観的に判断して、そうして国会の承認を求めることになるだろうと、我々はこう考えます。
  127. 中田吉雄

    中田吉雄君 そうしますと、具体的に木村保安庁長官の下でお立てになつたという警備計画等では、二十万までとかいうような巷間の説もありますし、更に新聞にも出ておりましたが四、五万ぐらいふやせる、それがアメリカMSA援助要請に答えての現段階におけるぎりぎり一ぱいなんだというようなことが保安庁見解だというようなことが出ておつたのですが、それはどこから出たかは別にしまして、保安隊を四、五万ふやすようなことは憲法にまだ触れないというようにおとりですか。
  128. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それは我我は、これははつきりした計画を立てる場合に申すべきことでありまして、我々は計画を立てるときに戦力に至らない程度までのものを、我々の考えですよ、考えて計画を立ててそうしてそれを御判断を願うということになると思います。直ちに今幾万までが戦力になるかどうかということは、これは申上げることはできない。
  129. 中田吉雄

    中田吉雄君 そういう見解から言うと、いくらふやしても憲法に触れないというアメリカ要請に答えるのですが、更にお尋ねしますが、昨年の七月のクリスチャン・サイエンス・モ二ターには、吉田総理とダレス長官との間に話がついた、それは日本には平和憲法がある、再軍備反対の社会党左派等の世論も強い、だから警察、その頃は警察予備隊は軍隊ではないのだと言うことによつて日本憲法をそらして、実質上の再軍備をするんだという話がついている、それによつてつているんだということが出ておつたんですが、そういうことは知りませんか。
  130. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は存じません。
  131. 中田吉雄

    中田吉雄君 全く保安庁長官ともあろうものが、ダレス長官のそういう吉田総理との話も知らずにやるというような人に、日本の一国の保安をお任せすることは甚だ心細いわけですが、更にお尋ねしますが、昭和二十年の八月六日に広島に原子爆弾が落ち、百後に長崎に厚子爆弾が落ちておるのですが、あのときには、一体日本の陸軍はあそこに幾らおつたと思われますか。
  132. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 細かい数字はよくわかりません。
  133. 中田吉雄

    中田吉雄君 米ソの対立の中において、日本の安全を考えようとする人が、少くともアメリカが、国務省の発表によつても原爆を三百持ち、ソヴィエトも少くともその十分の一ぐらいは持つているというような際に、そういうことについても通じておられないということでは、甚だ頼りないわけですが、私の調査では、アメリカが敵前上陸をした際に瀬戸内海その他に叩き落すために、東条さんが虎の子のように大切にした日本の陸軍十万が広島におり、長崎に三万の精鋭がおつたということなんです。それにもかかわらずたつた二発の原爆で吹飛んでしまつた。こういうことを考えると、一体本村保安庁長官はそういう際における、アメリカは三百発以上も持ち、ソヴィエトがそういう際にその十分の一ぐらいは持つた地政学的な配置におかれて、一体こういうようなもので安全が保障できると思われるか。更にそういうような革命的な日本の陸軍が十万なり三万なり吹飛ばされたようなことから言うと、この木村長官の戦力解釈から行くと、幾らもう軍隊を作つたつて、我々の言うそういうものを作つたつて憲法違反にならんという考えに通ずると思うのですが、どうですか。
  134. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今のお説を拝聴いたしておりますると、保安隊がすでにもう直接侵略を目的として設置されたもののように受取れるのですね。保安隊の性格というものはもう前々から申上げておるように、いわゆる国内の平和と治安、ひいてはいわゆる集団暴徒が侵入して来た場合にこれが内地の平和を守るための一つの部隊である。原子爆弾がどうするとか仰せになりましたがそんなものは我々は考えていないのです。根本は内地の平和と秩序を維持するための部隊なのであります。原子爆弾を持つて来てこれに対応するということになりますると、これは大きな原子力を持たなければならんということになります。我々の手におきましては、さようなことは、今憲法の解釈上も又国家財政上からもこれは許すことはできません。悲しいかなそうなんであります。
  135. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そこでさつきの問題に帰りますが、木村長官のお話によると、保安隊は国内治安の確保を目的とした部隊だから従つて戦力じやないし、憲法に違反してないんだというふうにこれはもう前々から明瞭だと思うのです。然るに今MSAを受けることによつて負わなければならない義務として、防衛的な性格のものであろうとも、直接侵略に対坑する一つの力なんだというようなことになれば、これは明らかに憲法規定されたことを越えてやることだから憲法違反になるというふうにまで考えられると思うのですが、木村長官はそのことについて。
  136. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。戦力の問題でありますが、戦力は今申上げましたように、根本の建前として外国に対して侵略戦争をし得るような大きな総合装備力であると私は思います。そこで保安隊がその性格が変つたらどうかということでありますが、この性格の変つたときにどれだけの範囲の装備力を持つかということは、これは客観的に判断すべきものであろうと思う。そこで戦力問題が出て来る。ただ問題は、主としていわゆる外国と戦争をするための目的として置くのであれば、これは私は憲法改正しなくちやならんと考えております。併しその戦力じやなしに外国の集団暴徒に対してあらかじめこれを準備する、いわゆる戦争をするためではない、突然暴徒が集団的に侵入して来た場合に、これに備えるということになりますと、これは何にも憲法において自衛権は放棄しているわけでも何でもありませんから、戦力に至らざる程度の自衛力というものは憲法上持つて差支ない、こう考えております。
  137. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 だからそれは外国から暴徒が入つて来る等々のことは、これは厳密な意味における直接侵略の問題じやないと思うのです。今直接侵略の問題として論議されていることは、外国の軍隊軍隊として国土に入つて来たときに、これを防衛をするという機能を保安隊が持つた場合には憲法違反じやないか。ところがアリソン説明によると、日本が負わなければならない義務は、防衛的なものでありさえすれば直接侵略に対抗する勢力であつてもいいんだ、又防衛的な性質のものだからそれはいいじやないかというようなことで、その義務を負わせようとして来ているのです。そこで外務大臣に、そういう防衛的な性質のものであれば、如何なる力といえども防衛力である限りにおいては戦力でないし、従つて憲法に違反しないという考えに変つて来られたのかどうか。
  138. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はだからさつきから、これは全く仮定的の議論だと言つておるのですよ。それでつまり戦力というのは木村長官も言われるように一種の総合的な力なんだから、その戦力がこういう目的なら戦力になるし、こういう目的なら戦力にならないというような、同じ総合的な力が目的になつて戦力になるのだ、戦力にならないのだというのはちよつと受けとれないような気がする。
  139. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 性質規定の問題ですからね。どれだけの規模だとか、どれだけの種類になつたから戦力だとか戦力でないという問題でなくて、如何なる規模であろうと、如何なる種類のものであろうと、性質的に一体戦力になるかどうかということが問題になつておる。そこでここで言われるような、アリソン言つておるような或いはダレスが防衛的な性質のものだからかまわんじやないかというような力であるならば、それが直接侵略に対抗する力である限りは戦力だと規定しなければならんじやないか。
  140. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはあなたの御質問が、何か今MSAを受ければすにぐ直接の侵略に対抗するような部隊を作る義務ができるのだというように無理に持つて行こうとされておるのであります。これはここにもたくさん書いてあるように、経済的能力を超えて直ちに治安部隊の増強意味するものじやないのだというようなことも言つておるし、それからもうさんざ経済的だ何だということを言つておるのであつて、窮極においては、そういうことになりましようけれども、今直ぐにそういう義務を引受けるという問題ではない。従つて、先ほど私が言つたのは、それは理窟をただ言つただけで仮定的なものだとこう言いましたが、今のMSAの御質問ならばこれは将来日本がきめる問題であつて、それはいろいろ案件がついておる、今直ちにそういう義務を引受けるのではない。
  141. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いやいやそんなことでなくて、ちやんとアリソン日本が引受けることになる次の義務は云々として、今の問題をちやんと明示しておるのですよ。だから、それは時期的に今年でなくたつていいかも知れないけれども、このMSAを引受ける以上はそういう義務義務として生ずるのだということをはつきり言つておる。ただそこで申訳を言つているのは、防衛的な性質のものに過ぎないのだということで言訳をしておるだけです。
  142. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはもう安保条約でも同じことでありまして、我々は、期待とは書いてあるけれども、そこまで行こうと努力しておることは政府はちつとも隠していない。
  143. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そこでさつきから問題になつておるのは、安保条約では義務じやないのだ、アメリカが期待しておるのだという意味であれば憲法違反でないと旨つてあなたがたはあれを逃げて来られたのですよ。それで、今になつちや、もうすでにそれが安保条約義務じやなかつたけれども義務に近いものだとか何とか言つてごまかし、更に、ここに至つては明らかに義務としてこれを引受けるのだということをはつきり言つておられるのでしよう。
  144. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) だからあなたの言う理窟はおかしい。長い間将来かかつて先のほうになつて何かの形ができるわけです。今は直ちに保安隊増強する意味じやないんだとアリソン言つておるのであつて、そこが途中において付加条項を変えなければならん場合もある、併し、それは憲法も変えなければいかんかも知れないがそれは先のほうの話てあつて、国民の大多数が改正していいということになれば政府がやるだけの話であつて、その目標に向つてはおるけれども、今直ちにそういう義務を引受けるということではない。ただ憲法改正義務をここで引受けたというのでもなければ、憲法違反を引受けたという意味でも何でもない。
  145. 羽生三七

    羽生三七君 どうも先ほど来承わつておると、質疑応答の過程に私が先ほども申上げたのですが、いずれ加盟後であろうと前であろうと、又現在の保安隊MSA援助後の保安隊の問題と考えてどこにも大した差がないのだというふうに受取れるのです。御両氏の御答弁を聞いていると日本が大騒ぎしてMSAを議論しているいろいろな世間の世論の実態とは大分反しておつて、何をつかんでいいのか、一体その実態が何なのか、さつぱり見当がつかんことになると私は思うのですが、少くともアメリカは何らかの期待をし、日本では、これは又財界筋は違つた期待をしておる。これはいささか当て外れかも知れませんが、何か実質的に少くともすでに会談を開始し、一歩を踏み出された今日、それはこの程度のものだ、それは一応外務大臣はプリンシプルだと言われましたけれども実質的に交渉の過程に委ねることであろうとも、併し外務省として、或いは保安庁として、アメリカに今度逆に日本が期待するものはこの程度のものだ、そういうものがなしで交渉ができるということは、どうしたつて私今考えられないことだ。だから私たちは話を聞いたからその結果をとらまえてどうこうというのではない。問題の所在を明らかにしたいということが念願であるので、率直にお話を願いたい。
  146. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それは衆議院では、帆足君が、恐らくあなたがたの同志じやないかと思うが、帆足君がこういうことを言われた。このMSAを受けるについて何もそう神経質にならないでいいじやないか、受けるならさつさと受けたらいいじやないか、今までとどこが変るのかと、こういう御質問があつた。いや私は神経質に騒いでおるのではない。今までと余り変らない、例えば保安隊は今までも借りてはおるけれども武器の援助を受けておる。それから弾丸等はアメリカ日本国内に発註して、それをアメリカが買い上げて、保安隊に引渡しておるものもある。それから朝鮮特需等もある。それを今度はMSAで一本にして保安隊とか警備隊に対する武器の援助もありましよう。或いはそれに必要なものを国内でアメリカが註文して買つてこれを引渡すというものもありましよう。それからこれは直接の援助じやないけれども域外買付というものもありましよう従つて、今度MSAとなるから形は変るけれども、そうして従つて正式に協定を作るからそこに例えば機密保持の義務だとか、或いは今言つた防衛力を将来は発展し維持させる義務だとかいうものもできて来ますが、実質的に私はそうえらく変つたものではない、こう思つております。
  147. 羽生三七

    羽生三七君 そういたしますと、どうでしようか、私も多分そうだと思う。その意味保安隊に与えられたいろいろな貸与武器等が正式にMSA協定になつてそれに移行して行くだけだ、ただそれだけだと、ただ問題は、向うの期待とMSA援助による期待と、日本で先ほど来若干論議しておる義務、その義務もそう確定的なものでないでしようがそういうものが生ずる。そういう出て来る義務なり期待なりに拘束されるようなことをしなくても、今の通りじやいけないですか、そう大して変りがなければ。
  148. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは、MSAアメリカの法律にそうはつきり書いてあるのだからして、アメリカとしてはMSAによる援助をやるということになれば、この法律の五百十一条に書いてある六項目というものを充たす必要が私はあると思う。その意味で世界各国ともにこの協定を結んでおるわけでありますからそういう意味日本もやらなければならん、こういうことです。
  149. 高良とみ

    高良とみ君 私は全然違う立場から伺いたいと思うのですが、白紙の立場でこれを発言して、いろいろな戦力問題や、或いはアメリカの世論等、その他世界のMSAを受けた国の意見等は一応ここに伏せておきまして、只今早速お配り頂きましたこのアリソン大使岡崎外務大臣との会話の内容に少しく私了解し得ないところがございますので、少し御説明を頂きたいのですが、先ほど義務であると言われたことで、これはまあ新らしく、道義的な義務のみでなく法律的な義務に、このMSAを結べばそういうことになると、私はそう解釈したのですが、その通りでよろしいですか。
  150. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 間違いありません。
  151. 高良とみ

    高良とみ君 それから、その義務というのは、八ページに書いてありますところの、ダレス長官が言つたところの保安隊に関する何らかの増強についての決定は、これはもう勿論日本政府及び国民がするものであろうが、その「決定の如何に拘らず、われわれは自由世界の集団的安全保障のために、これらの部隊に装備を与える用意がある。」というと、決定の如拘わらず向うでは用意して待つているのだと、つまりもう端的に申せば、日本におりまする駐留軍が朝鮮戦争で用意された武器なのかどうか知りませんが、とにかく決定の如何にかかわらずこちらでは用意してしまつておると、こういうふうに解釈してよろしいか。
  152. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは決定の場合は…、ちよつと訳が正確じやないかも知れん。これを見ると、Once their decisions have been made、whatever they may be、we are prepared in the interests of the collective security of the free world to help to equip these forces. 従つその決定がなされれば、それがどういう決定でもそれに従うということですね。
  153. 高良とみ

    高良とみ君 その内容によつたということですね。
  154. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) そういうわけです。
  155. 高良とみ

    高良とみ君 わかります、それは。そうならば、向うの言う自発的ということを多少考えたのだと思うのですが、その次に伺いたいのは、それに軍事援助を効果的な利用の確保のために適当な措置をとることに同意を求められるでありましようということは、それは保安庁長官に伺いたいのでありまするが、その適当な措置をとる義務がこちらに生じているということは御了承だろうと思うのですが。つまり、軍事援助を受けるのに効果的にこれを利用する適当な措置をとるという用意がなかつたならば、この義務を受けることができないわけです。それを求められるのでありましようと書いてある。
  156. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それはアリソン希望なんですね、恐らく。
  157. 高良とみ

    高良とみ君 併し、義務であるならば、やはり何らか保安隊において、長官においてその適当な措置は部隊装備に関するものがある……。
  158. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは何も日本に限つたものじやないのです。五百十一条の(a)項の(6)に亘るわけです。合衆国が供与する経済的及び軍事援助が有効に利用されることを保障するために適当な手段をとる、これは極く常識的なことで、例えば武器を借りて来たけれどもそれを野原に放り出して何も使わないということじやないということです。
  159. 高良とみ

    高良とみ君 それはわかります。だからかつこの中にあるのだと思いますが、それを同意しなければならないのでありますから、従つて、受入れる側においては部隊に装備を与えるのに他に適当な処置をとる用意があるのが当然ではないかとこう考えたもので長官に伺つたのでありますが、すると今のところでは保安庁長官はこれによつてMSAについては、今の保安隊の装備等については何ら御考慮になつておらないと了承いたしてよろしうございますか。
  160. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) このMSA援助問題に関しまして交渉がどう発展するかわかりませんが、その交渉の結果に基きまして適当な処置をとるべき場合においてはとりたいと、こう考えております。
  161. 高良とみ

    高良とみ君 それから先ほど岡崎大臣のお話にも完全な装備になるまでという言葉が洩れていたと思いますが、先方が、まあいわゆる相手のあることでありますが、その相手のほうの意思はアイゼンハワー大統領が十分な防備を建設し維持するために多年に亘り準備態勢を整え、そうしてその軍事力というものは健全な経済的な基礎の上に立つてやらなければならないということをアイゼンハワーとしてはもう大前提を出しておるのでありますから、岡崎外務大臣に伺いたいのは、日本の装備が先ほど保安庁長官の言われたような、アメリカ軍が引揚げてもいいようなところまで日本の自衛軍だと思いますが、自衛軍の完全な装備ができるまで多年に亘り十分な準備態勢が進んで行くものと了承してよろしいのでありますか。そのことを今日謳われないで、要するに先様の意思は日本が十分な集団安全保障をやり得る完全な装備に至るまで、多年に亘つて十分な防備を建設することを目的とするMSA援助と了承して間違いありませんか。
  162. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) ちよつとおつしやることがよくわからないのですが、もう一遍おつしやつて下さい。
  163. 高良とみ

    高良とみ君 三頁であります。要するに、アイゼンハワー大統領はそういうことを目的にしておると、それを日本が約束するということ……。
  164. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それはその通りです。
  165. 高良とみ

    高良とみ君 私はこの前に土屋欧米局長その他からざつとMSA説明を聞いたときに、何年まで続けるのであろうと勿論自発的であり、又日本経済に合うようにということでありまするが、これが義務として多年に亘り十分な防備を建設して行くことを期待されておりまする、而もそれは軍事力ということになりますると、内容の如何にかかわらずやはり非常に長い間のひもつきであるというように端的に言わざるを得んのでありますが、国民はそういうふうに了承してよろしいのでありますか。これから十分に防備ができるまで長いことアメリカMSA援助を相互満足の行くまでやるというふうに了承して間違いありませんが。
  166. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) アメリカ援助がいつまで来るか、これは別問題であります。日本としては独立国として自分の国を自分で守るという努力を、まあ長いことかかるかも知れませんが、これはやるのが当然でありますから、このMSA援助は途中でなくなつてしまうかも知れません。併しながら、我々の努力は続くのが当り前であります。
  167. 高良とみ

    高良とみ君 併しながら、この集団安全保障ということがあるのでありまして、ただ自衛のためだけでないのでありまするから、これはアメリカの国会の討論等を見ましても、この援助は決して日本の自衛のためにのみ与えるものではないということは明らかになつております。そうしますと、日本はこの、くらいでもう十分であります、もう陸軍は僅かなもので、又少しの沿岸警備艦隊ぐらいで十分だと言いましても、いや集団安全保障のためにはこれでは不十分であるから如何なることがあつても、第三次世界大戦が起つても十分な用意がなければならないということを言われたときに、やはりこれは義務として前にこれぐらい援助したものがその後中断されては困ると考えてむしろ今大臣がお話になつたように途中で切れるということが考えられることがありますけれども、そうでなく、逆さにいやもつともつと言つて食わされるときには、義務である限りは持たなければならないと考えるのでありますか。
  168. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それはおかしな話で援助を受けるのはこちらですから、もううたくさんだと言うのにそれを向うから受けろ受けろということは考えられません。(「そんなことはないよ、今だつて押しかけじやないか」と呼ぶ者あり)
  169. 高良とみ

    高良とみ君 併し一部もらいまして、この集団安全保障、そのうちには国連にも入るかも知れませんけれども、それによつて義務である限りはやはりひもつきとして両方合意をするまで持つて行かなければならないのでありまするので、幸いに多少アメリカのタックス・ペイヤーもこのことは深く考えておると思うのでありますけれども、これだけのものを今本年度の予算アメリカであれだけで通つて来年から先はどうなるかわからないという状態でありますから、それから先は又どうなるかわからないのでありますからこれが一年だけ、二年だけという期限がない限り、やはりその先は見なければならないというのが常識ではないのでしようか。
  170. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは援助を受ける協定ですから、援助を受けなくなつてしまえば協定はなくなつてしまいます。
  171. 高良とみ

    高良とみ君 それならば何か時限的な制限がありますか。
  172. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 受けなくなればそれでおしまいです。
  173. 高良とみ

    高良とみ君 それは何年ごとに更新するというようなお話か、或いはそういうことが駐米大使を通して何か内約があるのでありますか。
  174. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) まだ交渉をしておりませんからそんなことはわかりませんが、我々としてはこれは援助を受けるということになれば一年でおしまいというのはちよつと困るとむしろ思つておりますので、又来年も必要じやないかと思つております。これはまあ私の専門じやありませんから別ですが、併しそれについては別に協定とか話合とかいうものは何もありません。
  175. 高良とみ

    高良とみ君 この国際緊張を解くということの考えの下にいろいろな考え方があると思うのです。で木村長官は勿論日本日本の国を守るだけのまあ戦力でないところの自衛力を持つた場合に、それがよその国の緊張を高めるものになる程度のことはお考えにならないかも知れませんけれども、そうした場合それは精神的な意味での戦力と考えることはできないのですか。近隣四方八方に日本が相当な圧力をもつてそうして備えておると、いうことは緊張を増すという程度にはならないのですか。
  176. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そうは考えません。それが外国を侵すような力があつてこそ初めてさような懸念が生ずるのであります。外国を侵すような力に至らないものであればさような緊張は全然発しないものだと思います。
  177. 高良とみ

    高良とみ君 こういう問題が国民の間に慎重に考慮を払われておるというのも、もともと自衛軍の名の下に幾多の戦争が行われて来たからでありますことは御承知の通りであります。そこで、できるならば今長官が考えておられる自衛力というのは、憲法に抵触しない自衛力というのは、要するにアメリカが帰つてつて完全に日本がみずからを護り得るという程度のものを考えておられるのだろうと思いますが、それは憲法に抵触しない、又近隣を緊張させない程度のものについては何年くらいの見当で考えておられるかどうか、お示しを願えれば仕合せであります。
  178. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々が考えておりますのは、他国に対して脅威を与えない、又実質的に侵略の具に供せられるような虞れのない程度のものを考えておるのであります。併しそれは何年において供するかということは今考えておりません。
  179. 高良とみ

    高良とみ君 恐縮でありますが、岡崎外務大臣に伺いたいのは、先ほど…。
  180. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ちよつと失礼いたします。外務大臣はもう十分ばかりで退席される必要があるそうでございます。それに杉原委員から発言を求められております。そのつもりでどうぞ。
  181. 高良とみ

    高良とみ君 じやもう一点だけ。先ほどこの国際緊張の原因としての輸入制限等というお話がありましたが、これはどういう意味でありますか、もう少し詳しくお話し願いたいと思います。
  182. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) つまり輸入制限問題とか輸出制限とかいうものは、この前、戦争が起る前も、例えば日本に対しては油を供給しないとか何とかいうことが非常に国際緊張の原因になつたわけであります。又日本は今輸出をしなければ食つて行かれないような状況だから、どこもかしこも輸出をとめちまえば日本人は食えなくなる、これは困るということに当然なるのであります。極端な場合にはそういうことも一つ国際緊張の原因になり得るということであります。
  183. 高良とみ

    高良とみ君 もう一つですが、そうしますと、MSAを受けた場合には、具体的に今アメリカがしておるところのバトル法で、国府もそうですが、大陸とか或いはアジア諸国との貿易はやはりアメリカ会議範囲においてのみ行われるという、そういうやはり義務が生ずるとお考えになりますか。
  184. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 国府なんかの話は、これは中共が侵略者という銘を打たれておることと、それからほかの共産国家がこれに応援しておるのじやないかという考えから、国際的に相談して戦略物資を送らないという話ですから、これは又別の問題だと思います。私のは一般的に申したいのであります。この援助を受ける場合にはバトル法が適用されると仮に仮定して議論しますと、イギリスもフランスもイタリーも皆援助を受けておる。従つてさようにしてバトル法も適用されておるわけであります。日本もその際にはそのようになる。現に日本は中共輸出は固く抑えられておつて西欧諸国はゆるやかじやないかという、こういう非難もあるくらいでありますからして、バトル法が適用されたからといつて、現に西欧諸国は日本よりゆるやかにやつておるのであれば、これによつて中共貿易が更に何か厳重になるとかいうような問題にはならんと思います。
  185. 杉原荒太

    杉原荒太君 外務大臣あと十分以内ということでありますから、私はこの問題は極めて重要な問題でありますから、この次の機会に譲りたいと思うのでありまするが、先ほどから同僚議員との問答を聞いておりまして、殊に今度の問題はただ単に両国政府の政策をただ語り合うというだけじやなくして、更にこれが協定となり、条約となり、条約上の権利義務関係に立つことになる。それだけにこれに対する見解というものは、今の政府当局といえどもその見解は極めて客観性を持つていなければならない。単なる主観であつてはいかん。これは内閣が変つたつて、又次の内閣によつて又国全体が権利義務関係に立つて来る。従つて非常に厳格に私は論議すべき問題だと思う。先ほどから聞いておりまして、私非常に重大な点で外務大臣の答弁を聞いておりまして感じましたことの一つは、今度の協定によつていろいろな国が負担をするわけでありますが、その中でとにかく実態は防衛力の増強義務を新たに負担するのです。そこでその防衛力を増強するという義務の性質、範囲の問題と、その義務を履行して行くに当つての履行の態様の問題、これを混同しておられはせんかという私は疑問をもつておる。私この次にそういう点詳しく正確な一つ御答弁をお願いしたいと思つております。今日は時間がありませんからこれだけ申上げておきます。
  186. 中田吉雄

    中田吉雄君 ちよつと内容ではなしに、岡崎外務大臣にお伺いしますが、いよいよ先般来から正式な交渉が始まつておるのですが、大体いろいろな政府の御準備と見通しもあると思うのですが、いつ頃この協定はでき上るというふうに予想されていますか。
  187. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはまだ実は昨日初めて顔合せをやつただけでこれから話してみないとどうもわかりませんが、私の勘ではこれは一月以上かかるのではないかと思つております。
  188. 中田吉雄

    中田吉雄君 そうしますとまだ確定していないかと思いますが、国会は今月いつぱい或いは延びても来月上旬ちよつとだと思いますが、もう国会は閉じてしまうと思うのですが、非常に日本の国家の性格にも関する問題ですが、国会を臨時に召集されて直ちにお諮りになるというようなお考えですか。そういう問題どういうふうにお考えですか。
  189. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは話合つてみて、実質的に早くこの協定実施しなければならないという必要を認めれば、それは早く国会の承認を求めなければいかん。併し多少延びても実質的には変りがないのだということになりや次の機会を待つということになります。これはちよつとまだ内容はつきりしませんからわかりません。
  190. 中田吉雄

    中田吉雄君 国会の承認は事前にお求めのつもりですか、事後のつもりですか、それはどうでしよう。
  191. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはいつでも事前だ事後だという議論がありますが、何の事前かということを伺わなければわからない。我々は締結の事前に承認を求めます。憲法通りであります。
  192. 中田吉雄

    中田吉雄君 いや案ができたら話合つて一つ、国会が承認すれば発効するような形で、講和条約や安全保障条約のような形の国会の承認を求める形式かどうかというのです。
  193. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは私たびたび繰返しておるのですが、なかなか御理解を得られないということは、調印と同時にあなたのおつしやるような効力を発生する条約ならば、調印の前に両国間の合意がはつきりきまつて、そうして国会の承認を求めて、調印をすればすぐ発効する。そのときでも国会の承認を求める前には、両国間の合意ははつきりきまるのです。
  194. 中田吉雄

    中田吉雄君 それはわかつておる。
  195. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) それと、調印をして国会の承認を求めるときも、調印のときには両国間の合意は、とにかく両政府間の合意は成立つわけである。その間に何にも差異はないのです。  若し調印したから工合が悪いとか、調印しなければ直しても平気なんだ、そういうようなことはないのです。(「そんなことは知つておる」と呼ぶ者あり)それなら調印後にどつちにしても実質的には変りがないということです。それをどつちにするかということは、今後の相談によつてきまるわけです。
  196. 中田吉雄

    中田吉雄君 それは講和、安保両条約がああいう形になつて大変なことになつておるからです。そういうことのないように特に国民的な強い要請を国会に反映して有利な取りきめができるためにそう言つておる。大体あなた自身がああいう講和、安保両条約を結んで、現職の大臣という栄職を持ちながら神奈川県における選挙が極めて困難であつたということは、ああいう両条約の当然な帰結として、県民の鋭い批判から出ておるのじやないですか。
  197. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) そんなことは絶対に違いますよ。講和条約安保条約は国会の絶対多数で、あなたは反対せられたか知れんけれども絶対多数の承認を得ておるのです。何ら困つたことはない。或いは私が選挙で苦しいか苦しくないかは、そんなことは講和、安保の両条約と何も関係ない。
  198. 中田吉雄

    中田吉雄君 私も神奈川県にたびたび行きましたが、選挙事務長が逃亡して漸く選挙の問題が現在に起きておるようなことは、講和、安保両条約関係がないというようなことは断じて否定できないのです。
  199. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は講和、安保条約を調印した者でもなければ、私はそのときは官房長官として別の職務をやつてつた
  200. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 時間が来ましたがこの辺で……。
  201. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ちよつと、じやこの内容的な問題は先ほど杉原委員も言われたように非常に重大な問題で、今問題の戸口に来ておる、これは序論ですから、これから本論に入るつもりですから、そのおつもりで一つ更にお二人の御出席を次の機会にお願いしたいと思います。  それから今の問題ですが、成るほど調印とか批准とかいうそういう手続的な問題は別として、一体そういうふうに案が遅れるとすればその協定の案の内容、そういうものについての討議をやるために特別に更に臨時国会をお開きになるお見込があるかどうか、その辺はどうですか。
  202. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは今も中田君にお答えしたように、早くこれを実施に移す必要が生ずると認められればそういう処置もとりましようし、実質的にはこれは一両日を争わないのだという結論になれば次の機会を待つことでありましよう
  203. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 私のお聞きしたいのは、そういうふうにすでに案が確定してしまつて協定がきまつてしまつて調印してしまつて、そして既成の事実としてそれをかけられるのではなくて、話しされる段階においてそれに関する意見を、国民の、或いは国会の意見を聞きながら協定をまとめて行くというような用意を更に続けてとられるおつもりはないかどうか。ただもう今は成るほど幸か不幸か、国会があるから国会のある間はそういう御議論も聞きましよう。併しもう国会が済んでしまつたら、幸か不幸か国会がなくて諮る機会もないのだからそのままにしておいて調印をしてしまつて、既成の事実としてあとで御批准を願いますという態度をとるのかどうか。その辺の心がまえなり気持はどうなのかというのです。
  204. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは国会の承認を求めるとかいうような憲法上の問題ではないのですが、実質的には国会がある限りは国会にできるだけ内容説明できる範囲でやりますし、又質問にも答えます。国会がないときは止むを得ないのでありますから、新聞等を通じてできるだけ内容その他を発表いたします。
  205. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 たまたま国会があるからかけるのだということではなしに、こういう問題に関する限りは国会を特別に、臨時に開いてでも、そういう内容に関する討議なり等々を尽して協定を結ぶような方向に持つて行くというような努力はされないのかどうか。
  206. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは内閣全体のことでもあり、又党としての考え方もあり、これは私限りで御返事すべきことではない。私の言えることはできるだけ国民に周知させるためには、若し国会が開会してなければ新聞等を通じて発表する、こういうことを申上げられるだけであります。
  207. 羽生三七

    羽生三七君 先ほどの中田さん、只交の佐多さんのお話に関連して。結局今まで事前、事後の解釈は別として、今の少くとも政府の外交上の見通しと、まあ外交上ばかりでなくてもその他にもあつたのですが、既成事実を作つてそのあとに問題を合理化して行く、そういう傾向が非常に多いと思うのです。そこで今度のような場合はできる限り、問題の性質も重要であるし、十分国民の納得行くような形で論議を尽した上で問題の具体的な解決を期待するというのが皆さんの御意見だと思うのです。だから私は希望として、既成事実を作り上げてしまつてあとからそれを合理化して行くということのないようなお計らいを希望します。
  208. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 既成事実とおつしやるけれども、仮に調印と同時に効力を発生するものなら、その前に国会の承認を求めるのですから、そのときだつて両方の意見が合わなければ国会に提出ができない。いいかげんな案でまだきまつておりませんといものを国会の承認を求めるわけに行かない。はつきりきまつてからです。
  209. 羽生三七

    羽生三七君 それは違います。政府は合意しておるかも知れない、併し国民なり国会が必ずしも政府と一体ではない。それぞれ違つた立場をとつておる。従つて国会の正当なる或いは国民の多くの人が理解をせられる形でないと、政府自身は合意にきめられてもあとから批判の対象になることは、今までの過程でも幾らもある。だからそれを十分納得の行くように処理されるのが賢明である。
  210. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 国会の承認を求めるときに当つて、両方の合意ができたものでなければ、これは何だか先はわかりませんけれども承認願いますといつて国会に御承認を求めるわけに行かない。
  211. 羽生三七

    羽生三七君 それはちよつとおかしい。そうすると国会の了解の上でやられるわけですか。
  212. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) だから国会の承認を求めるというのは、両方ではつきり案文がきまらなければ国会の承認は求められないというのです。
  213. 羽生三七

    羽生三七君 わかりました。政府の合意ができたあとで、なかなかそれを修正したり或いは変更したりするということは殆んど困難だということは、今日までのあらゆる事実がこれを証明しておるわけです。だから合意の過程に至る前にいろいろな意見を反映するということを希望するということを私は申上げております。これならば御理解願えると思います。
  214. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) もう約束の時間がとつくに過ぎておりますから他の機会に改めて……。
  215. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 他の機会に改めてやりましよう
  216. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では外務委員会は本日はこれで散会いたします。    午後四時三十八分散会