○
政府委員(
下田武三君) 概略の
説明を申上げさせて頂きたいと思います。この
条約はやはり
平和条約によりまて、
平和条約の発効後一年以内に
日本が加入することに
なつておりますものの
一つでございます。そこで前の国会に御
審議を求めまして上程中であ
つたのでございますが、衆議院解散のために
審議未了に終りましたので、
政府は止むを得ず
平和条約の期限内の一年以内に加入の措置をすでにと
つてしま
つておるのでございます。そこで憲法第七十三条三号の但書によりまして、爾後の御
承認を求めておるわけでございます。
この
条約の取扱
つております問題は、
国内の輸送でございましたならば
各国の
国内法できめられるわけでございますが、何分
国際航空輸送でございますから、これはどうしても
条約で国家間で約束をするほかないというわけでありまするが、そこでどういうことを取扱
つておりますかと申しますと、
国際航空運送の
条件を運送証券の面と、もう
一つは運送人の責任の面で統一的に規制する、そういうことを目的とした
条約でございます。運送証券と申しますのは、御
承知の飛行機にお乗りになりますと旅客切符をくれますが、その旅客切符ともう
一つ荷物をお預けになりますと手荷物切符というのをくれますが、その手荷物切符、第三番目といたしましては、貨物を輸送します場合に
航空運送状というものがございまするが、その旅客切符、手荷物切符、
航空運送状の三つを
航空証券といたしまして、これをどういうふうに記載しなければいかんとか、又どういうふうな手続で作成しなくてはいかんとかいう、そういう方式を定めておるのでございます。又万一お客さんが切符を持たないで乗
つたときはどうするか、そういう場合の取扱も定めております。
第二の取扱題目であります運送人の責任につきましては、貨物が破壊、滅失或いは毀損いたしました場合、これは勿論運送人が責任を負うのであります。又飛行機によ
つて運ぶのは急ぐからでありますが、それが何らかの理由によ
つて延着したというような場合にも運送人に責任を負わしております。そこで
航空運送というのは非常に危険の多いものでございまするが、この危険の多い運送をや
つておる運送人に余り重い責任を負わすことは合理的でないので、運送人の責任を軽減いたしておる部面もあるのであります。どういう場合に軽減されますかと申しますと、運送人がこの損害の発生の防止について必要なすべての措置をと
つたということを証明いたしましたら、責任を免れる。つまり損害発生防止の措置をと
つたという挙証責任を運送人に負わせますと共に、その証明ができたときは責任を免除してやる。それから
航空機の操縦その他の
航空自体から来る過失、これは運送人の責任でないので、パイロツトなり何なりの過失でございますから、その場合にも運送人の責任を免除するという
建前に
なつております。それから最後に責任が免除されます場合は、被害者にも過失がある場合の過失相殺の場合であります。旅客が危いことを飛行機の中でや
つて火がついた、或いは貨物の中にうつかりして発火性の物を入れたというような、お客にも責任があるようなことで被害が起
つた、この場合にも運送人の責任を免除いたしておるのであります。そこでそんなに運送人の責任を免除するのは少し行き過ぎではないかという御
懸念が起ると思うのでございまするが、どういう観点からそういうことをきめましたかと申しますと、これは飛行機の運送が危いからとい
つて、余りに運送人の責任を重くいたしますと、これは
航空料金が高く
なつてしまう。重い責任を負わされるのじや料金をうんと頂かなければやれませんと運送人は申すでありましよう。そうなりますと、せつかくの文明の利器を料金が高いために利用できなくなるというようなことになりましたら、これは元も子もなくなるのでありますから、そういう見地から
只今申上げましたように運送人の責任を軽減或いは免除いたしておるのであります。最後に運送人の責任の限度と申しますか、金額的の限度をこの
条約は定めております。それはどういう限度に
なつておりますかと申しますと、お客さんが乗
つた場合に最高の限度は十二万五千フラン、
日本円に直しますと三百六十五万円までは旅客に対して責任を負わなければいけない。それから手荷物や貨物の場合には一キロ当り二百五十フラン、
日本円に直しますと一キロ当り三千七百円までは運送人が責任を負う。それから旅客が
自分で保管する、飛行機の中に大事な物をお持込みになります、旅客が保管しておる荷物については、これは幾ら持
つても一人当り五千フラン、
日本円に直しますと十四万六千円になりまするが、ただそれだけに運送人の責任を金額的の限度で打切
つておるのでございます。
誠に簡単な
説明でございまするが、
あとは御
質疑に応じまして
お答えいたすことにしたいと思います。