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1953-07-03 第16回国会 参議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月三日(金曜日)    午後二時十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     佐藤 尚武君    理事            徳川 頼貞君            佐多 忠隆君    委員            古池 信三君            梶原 茂嘉君            高良 とみ君            中田 吉雄君            加藤シヅエ君            鶴見 祐輔君   政府委員    外務政務次官  小滝  彬君    外務省参事官    (外務大臣官    房審議室付)  島  重信君    外務省欧米局長 土屋  隼君    外務省条約局長 下田 武三君    外務省国際協力    局長      伊関佑二郎君   説明員    外務省経済局次    長       小田部謙一君    食糧庁業務第二    部長      寺田庄次郎君    運輸省航空局国    際課長     奈良橋一郎君   —————————————   本日の会議に付した事件航空業務に関する日本国オランダ  王国との間の協定締結について承  認を求めるの件(内閣提出) ○航空業務に関する日本国とスゥェー  デンとの間の協定締結について承  認を求めるの件(内閣提出) ○航空業務に関する日本国とノールゥ  エーとの間の協定締結について承  認を求めるの件(内閣提出) ○航空業務に関する日本国とデンマー  クとの間の協定締結について承認  を求めるの件(内閣提出) ○航空業務に関する日本国タイとの  間の協定締結について承認を求め  るの件(内閣提出) ○国際航空運送についてのある規則の  統一に関する条約の批准について承  認を求めるの件(内閣提出) ○国際小麦協定を修正更新する協定の  受諾について承認を求めるの件(内  閣送付) ○国際情勢等に関する調査の件  (米兵暴行事件に関する件)  (MSAに関する件) ○決議案の取扱に関する件   —————————————
  2. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) では只今より外務委員会を開きます。議題公報掲載通りであります。  先ず航空業務に関する協定五件を一括して議題といたします。本件内容の概略について政府より説明を求めます。
  3. 下田武三

    政府委員下田武三君) 詳しいことは御質疑の際にお答えすることといたして、極くかいつまんだあらましを申上げたいと思います。  御承知のように、日本はすでにアメリカイギリスには先に航空協定締結しておりまして、前の国会におきまして御承認を得ておるのでありまするが、それに引続きまして、本日御審議を願います、オランダ及びスカンジナヴイア三国それからタイとその五つ協定を結びましたので、御承認を求めておる次第でございまするが、この五つ協定内容は、先に御承認を得ましたアメリカ及びイギリスとの協定ともう殆んど同様でございます。ただ国名を変えたというぐらいの点でございまするが、強いて相違を申述べますと、スカンジナヴイア三国、スウエーデンノールウエーデンマーク三国との協定には今までなかつた交換公文が附属しております。それは御承知通りSASと申しますスカンジナヴイア三国の共同経営航空会社がございますので、而も各国別に結びます協定でございまするから、この共同経営会社につきましても、一々それぞれの国との間に話合をする必要がありますので、三国別に同じような交換公文をいたしたのであります。これが今までにない新たなものでございます。  それからオランダスウエーデンデンマークノールウエーの四つとタイとの協定を比べますと、二点ほど違いがございます。他の四国との間の十二条に締約国はお互いに統計表を提供するということを規定しておりまするが、タイとの間には統計表提供規定がございません。これは実はなかなか繁雑な仕事でありまして、且つ実益も大してないので、タイとの間にはこの協定を入れなかつたわけであります。それからもう一つタイと爾余の四カ国との協定相違は、戦前日本タイとの間には一九三九年の航空協定がございましたが、この協定が発効しますと、戦前協定に取り代るという趣旨規定を十九条に入れました。これが第二の相違点でございます。従いまして、統計表の十二条がない代りに、戦前協定の処置をきめました十九条が加わりましたので、結局条文の数においては全部十九条になつております。これが今までの協定との差でございます。  極く内容をかいつまんで申しますると、日本とこれらの国との間の航空業務はどこを飛んで行つても差支えないというわけではございません。これは締約国との間でそれぞれ特定路線というものをきめまして、この特定路線というのは附表なつてついておりますが、この特定した路線の上を飛ぶという建前なつております。又締約国航空会社であればどこの会社でも勝手に飛んでいいというのではございませんで、それぞれ締約国が指定して相手国に通知した指定航空企業というものをきめまして、その航空企業だけが先ほど申しました特定路線の上を飛べる、そういう建前なつております。指定航空企業は、スカンジナヴイア三国は先ほど申上げましたSASでございますが、オランダは御承知KLMでございます。タイはTACと申しております、タイ・エヤー・カンパニーでございます。日本は新たに設立されまする新らしい日本航空株式会社が恐らく指定されることになるだろうと思います。これらの指定した航空企業だけがきまつた路線を飛べるということになる建前でございます。  なお協定の主な条項を二、三拾いますと、第六条に、相手国に乗り入れた場合に、飛行場のいろいろな施設使用料等はその相手国自身航空会社と同じ待遇、内国民待遇を与える。又税関或いは消費税その他の課税上も相手航空会社と同じ待遇を受けるという、内国民待遇がございます。又八条、九条という所に、航空業務の運営を双方締約国に、公平且つ均等な機会を与えるようにされなければいけない、という原則が謳つてあります半面におきまして、いずれの国も相手方に迷惑をかけるような不当な影響を及ぼすことをやつてはいかんという規定もございます。  それから運賃のきめ方につきましては、それぞれの協定の十条に細かい規定がございます。大体主な規定はそういうようなことでございます。なお詳しいことは御質疑に応じまして御説明申上げたいと思います。
  4. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 本件につきまして御質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 今回締結する国以外に、近く同じような種類の協定を結ぶ必要のある事情があるでしようか。
  6. 下田武三

    政府委員下田武三君) 今後どういう国と結ぶかという点につきましては、ビルマ、インド、パキスタン、更に南米のブラジル、アルゼンチン、ペルーその他の国等を考えております。
  7. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 余り具体的な話合には入つておらないわけでありますか。
  8. 下田武三

    政府委員下田武三君) 定義の程度はいたしておりまするが、具体的なネゴシエイシヨンはまだいたしておりません。
  9. 中田吉雄

    中田吉雄君 このたび出ていますこの協定は、殆んどアメリカ並びイギリスと結んだのと同様なものである、それをモデルケースにしてやつたということですが、そこで問題になりますのは、米英との協定日本の将来の航空に対して不利な条件を押付けていないかどうかということが問題になると思うのです。特にアメリカと結んだのは殆んどその後結ばれる諸協定条約モデルケースなつて、そしてそれが日本外交自主権が確立していない現在においては、ともすれば非常に不利になつて行くような傾向があるのですが、私まだ不勉強でその米、英を見ていないのですが、衆参両院外交委員会等において米、英の条約でどういうような点が問題になり、将来の日本国際航空等について支障になるというような点はなかつたんですか。そういう点について議会で質疑応答を通じまして、問題になつたような諸点がありましたなら御教示願いたい。
  10. 下田武三

    政府委員下田武三君) 御懸念のような御質問は前にもございました。そこでどういうお答えをいたしましたかと申しますると、実はこの航空協定は、平和条約の十三条におきまして、連合国側から航空協定締結を申込んだならば、日本側は受けて交渉しなくちやならんという義務を負つております。そこで外務省におきましては、早くから航空庁とも御相談いたしまして、やがては各国協定を結ばなければならないというので、世界のあらゆる航空協定のテキストを研究いたしまして、大体日本案モデルアグリーメント典型案を作つておいたのでございます。そこでアメリカとの交渉におきましても、イギリスとの交渉におきましても、日本側典型案基礎になりましてできておるのでございます。従いまして、大体世界航空協定のひな型には二つありまして、アメリカ型とイギリス型とございます。そこでアメリカに対しましては、アメリカ型のモデル交渉基礎として採用いたします。その次には大体ヨーロツパ諸国イギリス型に応じておりまするので、ヨーロツパ諸国とはイギリス型に副つた日本モデルアグリーメントの案を作りまして、これを先方に出しまして交渉したのであります。そうして殆んど日本案がそのまま通つておるのでございます。でありますから、行政上法律的に不利だ、一方的に押付けられるというような懸念のある規定は全然ございません。  そこでそういうお答えを申しましたときに、重ねて質問の出ました点は、日本航空業務については後進国である。すでに英、米その他は世界で非常に手広くやつておるじやないか、その競争上の不利があるのではないか、これは事実である。競争上の不利があることはこれはあとから参加するものの不利であることはいなめませんが、併しそれの場合に対処しまして、先ほど申上げました、双方締約国は公正且つ均等な機会を持たなければいかんという規定を、いずれの国との協定にも設けたわけでございます。従いまして、法律的の意味においては如何なる不平等もございません。ただ事実上の競争関係がありますので、これは日本は立遅れでございますが、能率を挙げてサービスをよくして、これから競争に打勝つて行くと、それ以外にはないと存じます。
  11. 中田吉雄

    中田吉雄君 御趣旨はわかりましたが、この北欧諸国のやつております、スカンジナヴイア・エア・ラインですか、ああいう小国でよくも米英等競争して、ああいう国際航空競争に堪えているという点は非常に驚歎に値いすると思うのですが、条約上の平等の原則を確立されたということは、あとからよく調べてその真偽は検討いたしますが、なぜああいうふうにやつたか、ああいうふうに国際航空に乗出して、対抗して、十分競争に堪えているかというような問題について、外務省としては余り調査されていないのですか。そういう点について御案内でしたら。
  12. 下田武三

    政府委員下田武三君) お答えいたします。北欧三国と航空協定を結びますときに、SASという非常に特殊な形態をとつておりますこの企業組織特殊性につきまして一応調査いたしました。先方にも質問いたしました。その結果只今、私どもが承知しております範囲内では、最初ノールウエーデンマークスウエーデンそれぞれ独立の各自国の航空会社を立ててやつてつたけれども、何分にも只今お話通り小国であるため、ほかの国との競争において非常な不利を感じたし、又経済的にも損であるということがわかつたので、三国が相談いたしまして、スウエーデンが三、ノールウエーデンマークが二、三、二、二の割合で資本を出し合つてSASという一種の国際法人のような企業組織にしたのであります。御承知通りこの三国は、航空事業以外のあらゆる点におきまして、いろいろな部面におきまして殆んど常に合同の立場をとつておりますし、又非常に風俗習慣等も似通つた国でありますので、こういうやり方をすることによつて非常に便利が多かつたということは想像されるわけであります。日本航空事業にそれをひき比べまして、こういうようなことができるかどうか、或いはこういうような組織をとることがいいかどうかという点につきましては、私は今のところまだ大した研究はいたしておりません。ただこのスカンジナヴイア三国のような長い間の歴史的な関係で、そういう状況にあつた国だからこそこういうことができたと思うのでありまして、又こういう組織でやつて行くことの利益は十分に我々もくみとることができるのでありまして、現在SASアメリカイギリスの大きな国等航空企業に対抗いたしまして、十分、場合によりましてはそれ以上の成績を挙げているということは非常に我々としても学ぶべきところであろうとは思つています。
  13. 中田吉雄

    中田吉雄君 平和条約の第十三条の(b)を読んでみますと、「一又は二以上の前記の協定締結されるまで、日本国は、この条約最初効力発生の時から四年間、この効力発生の日にいずれかの連合国が行使しているところよりも不利でない航空交通の権利及び特権に関する待遇当該連合国に与え、」又均等の原則を保つというようなことがあるのですが、国際航空における各国競争上問題になるような点はどこにあるのですか。いろいろなエア・ラインがあるわけでありますが、どういう点が問題になるのですか。
  14. 下田武三

    政府委員下田武三君) 航空庁から主管当局としての御説明伺つた方がいいと思いますが。
  15. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) ちよつと只今の御質問の御趣旨はつきりいたしませんが。
  16. 中田吉雄

    中田吉雄君 これにはいろいろな同じような、不平等な不利な条件を与えないような協定を結ぶというようなことがあるのです、平和条約の十三条には。そうしますといろいろな各国がまあ国際的な航空事業に進出しておるのですが、どういう点が問題になるのですか、競争上一番問題になるのは。
  17. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) 例えば運賃の問題でございますが、只今のところ世界の大きな国際航空会社は、殆んどそういう会社が集つて組織しております国際民間航空協会というところできめました運賃を採用しておりますが、その協会に入つておりませんいわゆるアウトサイダーのような会社はそれよりもずつと低い運賃で運行をやつております。こういうのは非常に一つの何と申しますか、公平を欠くような、均衡を欠くようなサービスということになると思います。  それからこういうことも殆んどないと思いますが、外国航空会社自分の国へ入つて参りますときに、自分の国の航空企業に対して課すいろいろな条件よりも不当な条件を課す、例えば着陸料金自分の国の国際航空会社に対しては非常に安くしますが、外国国際航空会社が入つて来ますときには高い着陸料金を取る、こういうようなのも一つ差別待遇ということになると思います。併しこういう例は殆んど聞いておりません。
  18. 中田吉雄

    中田吉雄君 あとで結構ですから一つ国際的な競争の現状ですね、それを大体知るような簡単な統計的な資料をまとめてお願いしたいと思います。
  19. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) 承知いたしました。
  20. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 日本国内にある国際航空に使う飛行場、それからアメリカ駐留軍使つておる飛行場、それらの飛行場使用と、民間航空運送協定とはどういうふうな関連を持つのでしようか、その点を一つ
  21. 下田武三

    政府委員下田武三君) 御承知のように羽田でも米軍使つておる部分日本側民間航空使つておる部分とございますが、この協定を結びました相手方航空機は、日本に参りました場合に民間使用に供せられておる施設だけを利用しておる、そういう関係なつております。
  22. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると飛行場部分でこの民間使用する部分と、駐留軍が軍事的に使用する部分場所的に全部区別されておるのですか。
  23. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) 只今日本航空会社使つております飛行場といたしましては、具体的に申上げまして千歳、三沢、仙台、東京大阪、岩国、福岡とこれだけございますが、そのうちで羽田だけは日本側に返還されまして、その返還されました羽田飛行場駐留軍に貸しておる、こういう形になつております。但しその場所は同じ所を使つて、同じ交通航空管制を実施しております。それからあと飛行場行政協定に基きまして駐留軍に貸しておるわけでございまして、それを日本側共同使用をしておる、こういう形になつております。その場所滑走路も何もかも共同使用いたしております。
  24. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると向うに貸しておる飛行場行政協定で貸して、それをこつちから使わしてもらつておるという形になるわけですか。
  25. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) そういことでございます。
  26. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、それとこのアメリカとの民間航空運送協定というものとは何か関係があるのですか、どうなんですか。
  27. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) 協定の中には東京大阪福岡という工合に書いておると思いますが、但し現在日本側管理の下にありますのが東京だけでございますので、あと福岡大阪につきましては、これが日本側管理権の下に返還されて、日本側が自由にこの管理をすることができるようになつたときに使用させる、こういうことを議事録の中に付けてあると思います。
  28. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それは日本管理に返つて来た場合にはそれでいいのですが、そうでなくて今軍用飛行場として駐留軍が主として使つている。それを日本が使わしてもらうというのは、どういう協定なり或いはどういう取極めによるのかということです。それはこの民間航空協定関係があるのかどうかという点です。
  29. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) その点はこの民間航空運送協定とは全然関係がございませんで、別に日米合同委員会駐留軍日本側との間に協定を作つておりまして、それに基いて共同使用をいたしております。
  30. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうするとその合同委員会協定内容というのを何か文書にして示してもらえますか。
  31. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) 後ほどお届けいたします。
  32. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その場合に今お挙げになつたその飛行場ですね、日本側管理しているもの、それから向う管理しているもの、それで共用している状態、それも同時にわかるような資料にして一つお出し願いたい。
  33. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) 承知しました。
  34. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それから今後ローカル飛行場が相当作られるような話を聞いているのですが、そういうローカル飛行場が今後新らしくできた場合には、それを駐留軍が同時に使うというようなことが今後も考えられるかどうか。
  35. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) 日本側で新らしく飛行場を作るということは、現在のところ殆んど考えておりません。漸次駐留軍側から返還されて参りました飛行場の或るものについて、それに多少の改修を加えて日本民間航空に使うということは考えておりますが、新らしく作るということは費用の関係その他からして考えておりません。その場合にも駐留軍側日本側が作りました飛行場を使うというようなことは先ずないものと考えております。
  36. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならばさつきお出し願うように願つた資料の中で、現在駐留軍がまだ使用はしていないけれども管理を保有しているようなものも全部一つ書き出して頂き、そのうちに返還される見込のもの或いはその返還される見込の中に日本側としてローカルに使おうとしておられるのがどこどこか、そういうのも全部わかるように一つお願いをしたいのです。同時に、日本に返還されて新たに日本民間航空ローカルに使うような飛行場は、新設ではないけれども今後相当な財政支出なり何なりをして設備を補修するとか改装しなければならんと思いますが、それらのものは今の御説明によると今後はもう駐留軍使用されるような懸念は絶対にないというふうに承知しておいていいのかどうか、その点を改めてお尋ねいたします。
  37. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) 駐留軍から返還されて参ります飛行場は、向うでもう不要になつたからということで大体返つて来ておりますので、それに改修を加えたものであつても、駐留軍側が再びそれをたとえ共同使用であろうと使うというようなことは先ずないであろうと私は思います。
  38. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 特にその点を念を入れてお聞きしているのは、実は具体的に私の出身の鹿児島市の鴨池飛行場跡というのがあるのですが、これは今管轄はどこになつているのかよく知りませんが、或いは駐留軍にあるのか或いはすでに日本に返還されているのかどうか知りませんが、これが何か民間航空ローカル飛行場に使われるようにしたいという希望が一つある。ところがそれに対して、そういう意味で純粋に民間の而もローカル飛行場に使う、或いは国際的になつてもいいが、純粋に民間商業航空場として使うのならば双手を挙げて賛成だけれども、それを新らしぐ飛行場に改装して、日本財政支出ででき上つた場合には又駐留軍の或いは軍事的な飛行場に使われるというのでは困る、そういうものになるのならば絶対に反対をせざるを得ないという考え方、運動があるのです。そこでその点をはつきりお聞きしておきたいと思つたのですが、今の御説明によると今後のものは駐留軍が軍事的に使うようなことは絶対にない、こういうふうに承知しておいていいですか。
  39. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) 私の申上げましたのは一般的に申上げましたので、鴨池が現在どういう工合なつておりますか、その点につきましてはもう一度事情はつきり確かめてお答え申上げたいと思います。
  40. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 鴨池が特殊的にどうなつているかというのも問題ですが、一般的に今後もそういうものが使われるような懸念を持つ必要はないかどうか、その点一つ外務省のほうにお聞きしたいと思います。
  41. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 今まで駐留軍のほうでは大体必要なものを全部これまでの合同委員会の席上を通じまして申入れておりまして、今後返すことがあつても、これを殖やすということは絶対にないと承知して頂いて差支えないと思います。ただ、今使つておる方で施設をもう少し拡張しなきやならん、滑走路をもう少し拡げなきやならんというようなケースは二、三ありますけれども、他を取るということはないと承知して頂いて差支えないと思います。
  42. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 なお資料に詳しく一つお願いしたいと思います。
  43. 中田吉雄

    中田吉雄君 条約局長は、この条約には不平等要素はないので、ただ実質的な競争力によるそういうものだけだと言われたのですが、まあいろいろ検討をしてみねばいけないのですが、確信を持つてそう言えますか、これを。そういう際に、一つ後進国の遅れた産業が国際競争に耐え更に進出するにはやはり相当保護的な要素も要ると思うのですが、それは国内のそういう航空政策でやればいいので、条約上の問題でないというふうに考えていられるのですか。その辺どうでしようが。
  44. 下田武三

    政府委員下田武三君) 御質問の前段につきましては、私は先ほど申しましたように法律関係としては絶対に不平等はないということを再び申上げたいと思います。残るところは競争上の実力関係だけであります。  それから御質問の第二の点につきましては、これは実は新らしい日本航空会社に対しまして政府出資十億円、民間出資十億円、二十億円ということが考えられておりますが、これは現在の財政規模としていたし方がないと思いますが、現在コメツトのジエツト航空機が二十億円一台でするというのです。それからD・C・シツクスも七、八億円するという状態でありまして、外国航空会社資本金と比べますともう雲泥の差なんであります。その点はやはり例えばオランダKLM、これも全額出資であります。その他の国でも全額或いは殆んどマジヨリテイーが政府出資なつておる。そして資本金の額は日本航空など比べものにならないほど大きいという状態でございますから、日本が太刀打できるような規模航空会社を先ず作り、そうして経験を経て実力競争で勝つて行くということは、これはなかなかなまやさしいことではないと存じます。これは併し協定上の問題ではなくて日本自身の覚悟と決心の問題であると存じます。
  45. 中田吉雄

    中田吉雄君 そういうふうな、まだ私実はこの条約をよく読んでいないのですが、十分対抗できるような国家的な助成に対する、そういうことを反対するような意見は条約締結の際になかつたのですか。強度な国家的な助成によつて相手競争力をそぐというような航空政策に対する問題は、折衝の際にはなかつたのですか。
  46. 下田武三

    政府委員下田武三君) もう列国とも民間航空会社に非常に助成政策をとつておりますので、どこの国からも国家の助成を禁じようというような提議を受けたことはございません。
  47. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 資料の提出等が求められましたので、本日は質疑はこの程度にとどめておきたいと存じまするが、御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは本日は質疑をこの程度にとどめまして、次回更に続行することにいたします。  では速記を中止しまして、先ほどお諮りいたしましたフランスの戦犯釈放に関する決議案について御協議申上げたいと思います。    午後二時四十九分速記中止    —————・—————    午後三時七分速記開始
  49. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記を付けて下さい。  次に国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約の批准について承認を求めるの件であります。先ず本件について概略の説明政府に求めます。
  50. 下田武三

    政府委員下田武三君) 概略の説明を申上げさせて頂きたいと思います。この条約はやはり平和条約によりまて、平和条約の発効後一年以内に日本が加入することになつておりますものの一つでございます。そこで前の国会に御審議を求めまして上程中であつたのでございますが、衆議院解散のために審議未了に終りましたので、政府は止むを得ず平和条約の期限内の一年以内に加入の措置をすでにとつてしまつておるのでございます。そこで憲法第七十三条三号の但書によりまして、爾後の御承認を求めておるわけでございます。  この条約の取扱つております問題は、国内の輸送でございましたならば各国国内法できめられるわけでございますが、何分国際航空輸送でございますから、これはどうしても条約で国家間で約束をするほかないというわけでありまするが、そこでどういうことを取扱つておりますかと申しますと、国際航空運送条件を運送証券の面と、もう一つは運送人の責任の面で統一的に規制する、そういうことを目的とした条約でございます。運送証券と申しますのは、御承知の飛行機にお乗りになりますと旅客切符をくれますが、その旅客切符ともう一つ荷物をお預けになりますと手荷物切符というのをくれますが、その手荷物切符、第三番目といたしましては、貨物を輸送します場合に航空運送状というものがございまするが、その旅客切符、手荷物切符、航空運送状の三つを航空証券といたしまして、これをどういうふうに記載しなければいかんとか、又どういうふうな手続で作成しなくてはいかんとかいう、そういう方式を定めておるのでございます。又万一お客さんが切符を持たないで乗つたときはどうするか、そういう場合の取扱も定めております。  第二の取扱題目であります運送人の責任につきましては、貨物が破壊、滅失或いは毀損いたしました場合、これは勿論運送人が責任を負うのであります。又飛行機によつて運ぶのは急ぐからでありますが、それが何らかの理由によつて延着したというような場合にも運送人に責任を負わしております。そこで航空運送というのは非常に危険の多いものでございまするが、この危険の多い運送をやつておる運送人に余り重い責任を負わすことは合理的でないので、運送人の責任を軽減いたしておる部面もあるのであります。どういう場合に軽減されますかと申しますと、運送人がこの損害の発生の防止について必要なすべての措置をとつたということを証明いたしましたら、責任を免れる。つまり損害発生防止の措置をとつたという挙証責任を運送人に負わせますと共に、その証明ができたときは責任を免除してやる。それから航空機の操縦その他の航空自体から来る過失、これは運送人の責任でないので、パイロツトなり何なりの過失でございますから、その場合にも運送人の責任を免除するという建前なつております。それから最後に責任が免除されます場合は、被害者にも過失がある場合の過失相殺の場合であります。旅客が危いことを飛行機の中でやつて火がついた、或いは貨物の中にうつかりして発火性の物を入れたというような、お客にも責任があるようなことで被害が起つた、この場合にも運送人の責任を免除いたしておるのであります。そこでそんなに運送人の責任を免除するのは少し行き過ぎではないかという御懸念が起ると思うのでございまするが、どういう観点からそういうことをきめましたかと申しますと、これは飛行機の運送が危いからといつて、余りに運送人の責任を重くいたしますと、これは航空料金が高くなつてしまう。重い責任を負わされるのじや料金をうんと頂かなければやれませんと運送人は申すでありましよう。そうなりますと、せつかくの文明の利器を料金が高いために利用できなくなるというようなことになりましたら、これは元も子もなくなるのでありますから、そういう見地から只今申上げましたように運送人の責任を軽減或いは免除いたしておるのであります。最後に運送人の責任の限度と申しますか、金額的の限度をこの条約は定めております。それはどういう限度になつておりますかと申しますと、お客さんが乗つた場合に最高の限度は十二万五千フラン、日本円に直しますと三百六十五万円までは旅客に対して責任を負わなければいけない。それから手荷物や貨物の場合には一キロ当り二百五十フラン、日本円に直しますと一キロ当り三千七百円までは運送人が責任を負う。それから旅客が自分で保管する、飛行機の中に大事な物をお持込みになります、旅客が保管しておる荷物については、これは幾ら持つても一人当り五千フラン、日本円に直しますと十四万六千円になりまするが、ただそれだけに運送人の責任を金額的の限度で打切つておるのでございます。  誠に簡単な説明でございまするが、あとは御質疑に応じましてお答えいたすことにしたいと思います。
  51. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 本件について質疑のあるかたは順次御発言をお願いいたします。
  52. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 この条約締結に関連して御説明にありましたように、我が国における国際航空運送がいよいよ近く開始する運びになつて来た。そのことがこの条約締結一つ日本としての意味合であろうと思うのですが、先ほど中田委員からも他の条約の関連で御質問があつたのでありますけれども、現在の日本国際航空運送についての大体の計画、もくろみ等について一つお示しを願いたいと思います。
  53. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) 只今日本には定期国内航空運送事業をやつております日本航空株式会社がございますが、この会社を中心といたしまして政府が十億出資いたしまして、総額二十億の新らしい日本航空株式会社を設立いたしまして、国際航空運送事業に当ることを予定いたしております。これに必要な法案は只今本国会に提出いたしまして御審議を願つております。この会社が設立いたしますのが十月の末日あたりを予定いたしておりますが、すでに国際線に必要な航空機は本月の終り頃から順次入つて参りますので、それを試験飛行いたしまして、十一月の一日から東京からハワイを通りましてサンフランシスコに飛ぶ国際線、それから東京から沖繩へ飛びます国際線、これを予定いたしております。但しこれはアメリカ側の許可を必要といたしますので、その許可の手続その他で多少遅れることになるかも知れないと考えております。そのほかの国際線の予定といたしましては、本年度におきましては、只今の沖繩を通りまして更に台北まで伸びる線と、そのほかに東京から香港を経ましてバンコツクに参ります線、この三つを本年度としては取りあえず予定いたしております。
  54. 中田吉雄

    中田吉雄君 ちよつとそれに関連してですが、日本外国に出ますのに支払う外貨は航空関係でどれくらいなんですか。
  55. 奈良橋一郎

    説明員奈良橋一郎君) 正確なる数字を今記憶しておりませんから、後ほどお答え申上げることにいたします。
  56. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 非常に広い意味で考えると、日本国際航空運送に伸展して行く基盤ができて行くことは広い意味での自衛力増強に寄与することかと考えておるのです。従つて現在問題になつておりまする相互安全保障計画の一環として、アメリカのこれに対する援助を期待するというふうなことは、考え得ることかどうか、一つ御意見を伺いたい。
  57. 下田武三

    政府委員下田武三君) 日本民間航空を発達さして行きますについて、アメリカの援助をMSAを通じて受けるということは私は不可能だと思います。直接には不可能だと思います。ただ間接には、現にヨーロツパの航空会社でも、戦争で長距離爆撃の経験のある人を民間航空のパイロツトに使つておるようであります。オランダKLMのごときは、オランダが長距離爆撃機を持たない、戦闘機のパイロツトはうんといるのですが、長距離爆撃機のパイロツトがいないために、KLMなんかは米国人、イギリス人、ドイツ人、長距離爆撃機の経験のある国の旧飛行士を雇つて民間航空のパイロツトに使つているようでございます。でございますから間接には、現在日本は長距離はもとより大した飛行機を持つておりませんが、とにかく軍用機であれ、操縦をする人間が日本国民の中にできるという意味におきましては、それが一定の期間任務を終えて民間人になつた場合にこれを航空会社で雇うということができる、せいぜいそれくらいの程度で間接に関係があると申せば申せるかも知れませんが、直接には何らMSA援助とは関係を生じないと思います。
  58. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 MSAの援助を軍事援助に限定していつて考えますとお話の通りだと思います。あれを広く経済援助だとか、特に技術援助という面から見ていけば、話の折衝如何によつては、将来のことになるかもわかりませんが、或る程度の期待ができるのじやないかという感じもするのですけれども、それも困難ですか。
  59. 下田武三

    政府委員下田武三君) 御質問は将来の点までも含めての御質問でございましたが、将来の点は或いはその可能性があるかも知れません。併し只今問題になつておりますのは、大体俗に軍事援助といわれている部面がアメリカの予算で計上されようとしておるわけでございまするから、元の水道の口が軍事援助だけでございまするから、現実の目前の問題としてはあり得ないと、こう存じます。
  60. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 質疑の最中でありますが、先ほどのフランスのあれは急ぎますので、ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  61. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記をつけて下さい。  それでは先ほどの質疑を続行いたします。ほかに御質疑がございましたらばどうぞ御発言をお願いいたします。
  62. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今御説明によると、沖繩への航空路或いはアメリカヘの航空路を計画しておられるという話ですが、その場合にアメリカの許可をとらなければならんというお話なんですが、これは沖繩線に対してもアメリカの許可をとるということですか。沖繩線に対してまでアメリカの許可をとらなければならないというのは、条約上はどういうあれに基くのですか。
  63. 下田武三

    政府委員下田武三君) 御承知のように平和条約第三条で沖繩を含む南西諸島を米国の信託統治地域にすることを予定しておりまして、それまでの間は立法、司法、行政の三権をアメリカ側が行使することを日本承認しております。従いましてこれは領土主権は潜在的に日本が持つているのでありますが、現実の施政をアメリカが行なつております関係上、航空関係の許可その他も今アメリカの権限になつておりますので、どうしても乗入れには、現実にそういう権限を持つておるアメリカ当局の許可を得る必要がある、そういう関係なつております。
  64. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると逆にその場合に、沖繩、日本間の航空路をアメリカが開こうとした場合には、アメリカ日本の許可その他必要なしに開けますか。
  65. 下田武三

    政府委員下田武三君) アメリカ日本、沖繩間をやろうとする場合には、日本の乗入れだけについて許可を要請すれば足りるので、沖繩自体は現在アメリカ側が現実に施政をやつておりますから、アメリカ国内法上の問題になると存じます。
  66. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それは主権が日本にあつても、行政上或いは立法上、司法上の権能を持つている、施政権を持つているというだけのことで日本にはおかまいなしにやれるかどうかということです。主権国には何の断わりもなしにやれるかどうかということです。
  67. 下田武三

    政府委員下田武三君) 仰せの通りであります。日本の主権は現在眠つておるので、潜在主権でございまするから仰せの通りになるのでございますが、先ほど五つ航空協定につきまして御説明申上げるのを忘れましたが、実はこれは非常にデリケートな問題でございまして、この附属交換公文がございまして、沖繩は現在アメリカが施政権を行使しておるが、日本は将来これを完全な日本の主権行使の下に返すという事態を予想いたしまして、その場合どうするかということも五ヵ国との間にとりきめてあるわけでございます。でありますから平和条約第三条では、この日本が取返す場合のことまで予想した規定はございませんが、その不備を各国との個別的の航空協定で実は補つて交換公文規定しておるわけでございます。
  68. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、その沖繩線を開設する場合にアメリカの許可を得るのですが、その場合には前の附属交換公文に付けてあつたような、残存主権についての日本国が有する請求権を害するものでないとかいうようなあれは、やはりくつ付けて承認をとられるのか、そういう必要はもう全然ないのか。
  69. 下田武三

    政府委員下田武三君) 現在沖繩の施政権は包括的にアメリカに認めてしまつておりますから、その限りにおきましては、もう一々アメリカ側から潜在主権を持つておる日本について伺いを立てるということを要求する必要はない、そういうようにとれます。
  70. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 この交換公文の中に、日本国が沖繩に対する行政上、立法上及び司法上の権能を再び行使する場合には、ということを説明しておられるのですが、これは一体その行使の開始をいつ頃と予定してこれを作られたのか、更にそれらの問題に対する交渉は今どういうことになつておるのか、そいつの御説明を願いたいと思います。
  71. 下田武三

    政府委員下田武三君) 御承知のように、平和条約を作ります前に日本政府としては非常な努力をいたしまして、平和条約締結交渉の最も重視した交渉題目の一つであつたのがこの領土の問題でございまするが、あらゆる完璧な資料をそろえて先方に出して、歴史的にも、民族的にも、経済的にもこれは日本であるという主張を強くして参つたわけであります。それで結局平和条約は第三条のような規定になりましたが、その後の情勢の変化と申しますか、アメリカの為政者も、御存じのダレス自身が潜在主権を日本は持つておるというような声明をいたすに至つたのであります。でございまするから、情勢は日本側にとつて好転しておるわけであります。勿論先ほどの五カ国との協定で、附属交換公文でこういうことを申しますについても、ちやんとアメリカ側に了解を得た上でこういうことを規定しておるのであります。でございますから、日本政府としては不断の努力をしておるわけでありまするが、いつそれで立法、司法、行政の三権が日本に復帰するかという点は、只今のところは全然これは見通しが立たない。これは大きく世界情勢、冷たい戦争でも解決いたしましたら大きく情勢が動くかも知れませんが、只今のところいつという見通しは申上げる材料を持つておりません。
  72. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 MSAの援助その他で防衛力を強化するというようなことになれば、今のようなこの要求なり何なりは更にむずかしくなるのじやないかと思うのですが、それとの関連においてはどういうふうに見ておられますか。
  73. 下田武三

    政府委員下田武三君) MSAの援助というのは、まだその自由主義国の集団安全保障体制で、極東で大きな穴になつているのは日本でありますから、その穴を埋めようという非常にまだ初歩の問題でありまして、日本自身が集団保障体制の中に入つて、一人立ちして積極的な軍事的義務を負うというような事態にいつなるか、尤もこれは遠い先のごとでありまして、従いましてこのMSAから来る自衛力の漸増ということが、直ちにこの沖繩の三権の回復というところに結び付くというまでには、これはまあなかなかの段階、時間、距離のあることだろうと存じます。
  74. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その自衛力を強化することをまあ要請されるでありましようが、その自衛力を強化する場合に個別的な自衛力、日本自体の自衛力の強化という点から沖繩を返してもらうというふうな方法になるのか、或いはそうじやなくて集団的な自衛力を強化するというような問題から、むしろ沖繩に対する軍事施設その他が更に大規模にやられて、そのために行政上、立法上、司法上の権能を再び行使することは半永久的に、或いは殆んど永久的に日本はできなくなるというような形勢になるのか。その辺の見通はどういうふうに考えておられるのですか。
  75. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) これはMSAの援助との関係というよりも、むしろ国際情勢がどう動くかということに大きな関係があるだろうと思います。MSAの援助によつて日本の自衛力は強化されて、而も又一面国際情勢が緩和するというようなことになれば、これは沖繩の軍事的な必要性が減じて、そうして日本行政権、司法権、立法権というものが行使されるようになるかとも存じますが、併し今のところではそれがいつであるかわからない。従いまして、我々といたしましては、沖繩が事実上日本のこれまでの領土であつたと同じような待遇を受けるようになるように、行政上の措置についていろいろ取極めをやつておることは皆様御存じの通りでございます。でありますからして、現在のところでは、相互の交通とか経済関係とか、或いは恩給の問題とか、そうした問題について個々に取極めをして、できるだけ不都合のないような措置をとるという点も根本論と同時に実際措置としてこれを努力されておるのが現情であります。
  76. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その問題になると個々の問題については、実際上日本が権能を行使するような形に持つて行くのだというようなお話ですが、今挙げたような個々の点を日本が権能を持つということは、権能を持つということよりか、むしろ責任を負担する、例えば生活の問題なり教育の問題なり等々についての負担をこつちが負うだけで、権能は依然として向うにあるのだという結果にしかならないと思うのであります。まあそれらの点は議論になりますから、而も主題から離れますので、他の機会に譲ります。
  77. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) ほかに御質疑はございませんか……。ではこの件の質疑はとの程度にとどめておいて、次の議題に入りたいと存じます。   —————————————
  78. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 次は国際小麦協定を修正更新する協定の受諾について承認を求めるの件であります。先ず本件について政府より概略の御説明を伺います。
  79. 下田武三

    政府委員下田武三君) 簡単に御説明申上げます。最初に、日本はこの修正更新されました前の協定の当事国になつておりますので、その前の協定とどう違うかという点を御説明申上げたいと存じますが、前の協定と違う主な点が三つございます。  第一は、保証、数量ということがございまするが、これは、日本がこれだけは買うという買入保証数量のことでございまするが、輸出国については、逆に売渡の保証数量というのがございます。この当事国全体の保証数量を合計いたしますと、輸出国の売渡保証数量も、輸入国の買入保証数量も総額はぴつたり合うわけでございまするが、その総額が前の協定におきましては千五百八十一万トンであつたのでありまするが、新協定におきましては、これを増額いたしまして千六百二十万トンにいたしております。なお、我が国の買入保証数量は前の協定では五十万トンとなつておりましたが、新協定ではこれを倍の百万トンに増額されております。  第二の前の協定との相違点は価格でございまするが、価格には最高基準価格と最低基準価額と二つございます。前の協定におきましては最低基準価格は一ブツシエルが一ドル五十セントであつたのでありますが、新協定におきましてはこれを一ドル五十五セント、五セント引上げております。又前の協定におきましては最高価格は一ドル八十セントと定めておりましたが、これも増額されまして新協定におきましては二ドル五セントになつております。  第三の相違点は、前の協定の有効期間は四年であつたのでございまするが、新らしい協定の有効期間は三年と、一年短縮されておるのであります。  そこでどういう一体仕組でこの協定が動いて行くのかという点を申しますと、建前といたしましては、原則は飽くまで自由取引、自由販売なのであります。つまり最高価格と最低価格の問で買手と売手が自由に協議する値段で買つていいわけなのであります。又、勿論その買う数量は、買手と売手の保証数量の範囲内でやはり自由にやつていいのであります。ところが、小麦というものは世界の需給がなかなか一致しません。それが特別の取引になりますとなおさら一致いたしません。又不作その他の変態的な事態が起りまして、輸出国も困るし輸入国も困るという事態が起りがちなのでございますので、それを調整するのがこの協定の大目標でございます。そこで、どういう仕組みでそれを調整いたしますかと申しますと、例えば小麦を買いたい、買入国がどうしても買おうと思つても買えないという事態が起つたといたします。そうしますと、この協定の下に設立されております国際小麦理事会というのがございまするが、その理事会に援助を申入れることができるのであります。買いたくも買えないから援助をしてくれという申出をいたすのであります。そうすると、援助申出を受けました国際小麦理事会は、輸出国に対しまして例えば日本に売渡したらどうかという勧誘をいたすのであります。勧誘をいたしまてもなかなかよろしい売りましようという国が出て参りませんときに、どういたしますかというと、理事会は輸出国に対してこれこれの数量、これこれの品質のものを要求するという決定をいたすのであります。この理事会が要求を出しました以上は、売渡す方の輸出国の側は売渡の申出をする義務があるのでございます。そこで、申出の義務があろのでございまするから、売渡す方では申出をいたすのでございまするが、その場合に、いくらで買うか、どういう条件で引渡すか、そういうような価格なり、売渡す条件というものが一応当事者にまかされるのであります。併しそういう場合にはなかなか当事者の意見が一致しないわけでありまするから、売買当事者の間で意見の不一致が生じました場合に、又理事会にかけて理事会に付託いたすのであります。そうすると、国際小麦理事会でこれこれの価格でこれこれの条件で売渡しなさいという最後的の決定をいたすのであります。そういうような段階を経まして、只今は買入れたい国が買えなくて困る事例を申しましたが、それを裏返せば全く同じ径路で売りたい国が売れないで困つておるという場合、只今の理事会に対する要請、その要請を受けて理事会が勧誘しても申出がない場合には、どれだけの数量のどの品質のものを買えという決定をいたしまして、そうして買うほうに申出させる。先ほど申上げました裏腹のプロセスが行われるわけであります。  大体の仕組はそうでございまするが、二三附加えますと、第七条に在庫量という、一定の水準の小麦の在庫量を保持しなくちやいかんという義務を、これは売渡すほうにも買入れるほうにも負わしております。これは、売渡すほうにも在庫量が一つもないということは、非常に協定の実施を妨げ、又世界の需給の調節の円滑を欠く次第でありまするから、売渡すほうにも一定のレベルの在庫量を持たし、又買入れるほうも在庫量を持たせて、準備なくして困つたからと言つていろいろ泣きつかれても困るのでありまするから、買手国のほうにも一定の水準の在庫量を持たす、そういうような規定もあるのでございます。  なお、詳しいことは御質問に応じまして関係の向きからお答えさして頂きたいと思います。
  80. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 本件について御質問がございましたならば御発言を願います。
  81. 中田吉雄

    中田吉雄君 国際の小麦の生産状況が過剰で食糧が非常に豊富になつた際に、むしろ不利だと思うのにこういう枠を拡大し、そうして最低最高の値段を上げたりしておるようなことはどういう意味ですか。まあ国際小麦協定でそういうように入手するのは得ですが、今上昇線をたどつておる、過剰になつておる。アメリカは綿花と小麦はもう過剰で非常に弱り切つて、弱気の際にこういうことは非常に不利だと思う。特にイギリスなんかはですからこの小麦協定に対しては最近非常に消極的な態度をとつておるのに、日本はどうしてこういうような、むしろストツクをかかえるような、非常に不利だと思うような、こういう取極めをされようとするのですか。とにかく生産状況と、こういう協定が食糧入手の我が国の国際収支に及ぼす影響ですね。こういう条約は有利な入手に役立つかどうかという点です。
  82. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 詳細は農林省の係官が見えていると存じますからそのほうからお答えすることにいたしまして、概略的にこの小麦協定をなぜ作つたか、更にこの修正した小麦協定になぜ入つたかという点を申上げたいと存じます。  今中田委員が指摘されました通り、成るほどアメリカでは小麦が豊作であることは事実でありますけれども、御承知のようにアメリカでは支持価格制度というような制度を設けまして政府が買上げて行く。今のアメリカの相場を見ましても、その最高価格よりはまだ二十五セントか三十セント程度高いのが事実であります。併しそれかといつて今後又下つて行くだろうという点を中田委員が御指摘になるだろうと思いますけれども、併し幾ら下りましても最低価格の一ドル五十セントを割るというようなことは、この三年間には予想できないだろうと思います。而も先ほどのお説に御指摘になりましたイギリスなどとは多少事情が違いまして、イギリスのほうは濠州がある、濠州はこの協定に一応入つていることになりますけれども、濠州とイギリスとの関係でもつてこれに入らなくても適当量を適当な価格で買入れることができるかも知れない。が併し日本は麦にいたしましても百五十万トンから百六十万トンは年々入れなきやならない。その際にこの協定に入つておれば現に安い小麦を買入れてそれだけ、事務当局で調べたところによりますると五百万ドルから六百万ドルは年に外貨の支出が少くて済むだろうというふうに計算しておりまするので、そういう利点も考えなければならない。日本としてはイギリスなどと違つて小麦協定に入りまして日本の必要とする小麦を確保しておいたほうが有利であるという立場から、この小麦協定に入つたわけであります。なお詳細の今の在庫の量とかアメリカの制度というような点については農林省側から説明させたいと存じます。
  83. 中田吉雄

    中田吉雄君 どうもカナダやオーストラリアを持つていますので特殊事情はわかるのですが、我々の最近の調査によつてイギリスアメリカからMSAの援助を受けて小麦を背負わされて非常に弱つておるのです。ああいう大国ですら小麦をMSAに背負わされて過剰小麦で非常に弱つて、特にこの小麦協定の改訂については非常に消極的な態度をとつているのです。アメリカは未曽有の豊作です、十一億ブツシエル以上恐らくあるでしよう。そういう際に、どうも小瀧政務次官の説明では、特に最低値と最高値段とを、国際的に非常に不足している時ならともかくも、どうして上げざるを得なかつたかという点についても一つ説明頂きたいと思います。
  84. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) とにかく日本の増産計画によりましても百五、六十万トンの小麦を海外から入れなきやならん。而も米について考えまするならば、最近東亜諸国でも生産が伸びたといつてもまだ米の買付は非常に困難であるし、価格において倍以上もするという実情でありまするのに対して、この協定を作つて、それはアメリカの値段が最高値段より下つて来るというときには、それほど有利な直接的な影響は出て来ないかも知れないけれども、最高値段で買わなきやならないわけで、義務付けられるのは最高値段で、若し下つたときに不利があるとすれば最低値段で縛られることになるのですが、その最低値段たるや一ブツシエル一ドル五十セントといえば到底我々はそこまでは下つて行かないと思う。そうすれば現に日本もこの協定によつて影響を受けております。それが最高価格が一ドル八十セントから二ドル五セントに上つてもこれを受けた方が有利であるということは言えるだろうと思います。この一ドル八十セントをきめたのは朝鮮事変前の物価のもつと安かつた時であります。アメリカとしてこれを主張し、まあ結局こういうところに落着いたわけでありまするが、最低価格一ドル五十五セントで縛られることはあり得ないとすれば、少くともこの協定によつて失うところはないということは中田委員も御了承下さるだろうと思うのであります。
  85. 中田吉雄

    中田吉雄君 最低価格が五セント高くなつたのは、国際的な過剰な状態とはどう関連がありますか。一般物価の上昇なんかを見ておるのですか、どうなのですか。それでしたら、それとの関連をもう少し農林省のほうから一つ詳しくいろいろな関係を御説明を願いたいと思います。
  86. 寺田庄次郎

    説明員寺田庄次郎君) 只今の最低価格が従来の最低価格より上つたのはどういう理由かという御質問でございますが、全体に最低、最高価格を今回は引上げたわけでございますが、引上げる理由といたしましては、この協定当時の価格というものが最高価格を相当上廻つてつたということが、一つの大きなフアクターであつたと私は考えます。又一般世界の物価指数等からいたしましても、この最初協定ができました当時よりは相当物価も上つておりまするし、輸出国といたしましては生産費も上つておるというふうな理由から、全体として前の協定価格を引上げざるを得ないであろうという空気が全体的に支配しておつたと考えるのであります。従つて最低値を据置いて最高を上げるということでなくして、最高、最低の一般基準を引上げるという問題であつたわけでありまして、大体最高と最低の開きは五十セントが適当であるということが全体の会議の空気でありまして、この点につきましてはイギリスも最高、最低の開きの五十セントということが大体妥当であるというふうに考えておつたようでありまして、従つて全体の価格が上つたから引上げたというふうに私どもは考えております。
  87. 中田吉雄

    中田吉雄君 とにかく今回は、今御説明を受けた航空その他の協定等に比べて、これは極めて国際収支に重大な影響を及ぼす。これは朝鮮の冷戦が非常にああいう危機の状態からもつと高い冷戦緩和になり、しかもアメリカはもう農産物価格の支持政策で弱り切つておる、この過剰滞貨の処理をどうするかというような際に、こんな義務付けられておるものを五十万トンから百万トンに枠を拡大して紐付けをせられるようなことより、自由な売手市場から選択した方が遥かにいいと私は思う。特にイギリスはこういう措置をとつて、この協定に対して非常に消極的だということを私は知つておる。小麦の不足の国はデンマークその他たくさんあると思いますが、そういう諸国はこういう協定に対してどういう態度をとつておるのでしようか、わかりましたらお知らせ願いたい。
  88. 下田武三

    政府委員下田武三君) 先般の国際小麦会議では、国の数といたしましては勿論輸入国のほうが多いわけでありまするが、デンマークオランダその他たくさんヨーロツパの国が参加しておりまするが、イギリスのと違います点は、イギリスは非常に濠州からたくさんの小麦を買つております。そこで御指摘のようにイギリスはこの協定に署名しなかつたのでありまするが、それはなぜそういう態度に出られたかと申しますと、濠州としてはイギリスに買つてもらわなければ困るという弱味がございます。ですからイギリスは、よしそんならおれは脱退して、その代り濠州から好きな値段で相談ずくで買うぞと、形い態度に出られるわけでありますが、ほかのヨーロツパの輸入国につきましては、そういう都合のいい地位には全然ないのでございます。日本と全く同じなわけでありまするから、イギリスの場合は全く伝統的にそういう強味を持つておる例外でございまして、そういう特別な国を持つていない輸入国としては、先ほど来問題になつております世界の小麦のエキスパートが一堂に会しまして、そうして価格については最も議論のあつたところでありまして、そのエキスパートが相談しまして、この三年間は絶対にこれ以上は下りつこないという専門的な意見できめられたものでありまするから、なかなか最低価格より以下に国際価格が下つて日本が損するというような事態は絶対に予想せられない。現在の市場価格で買いますのと、この協定を利用して買う場合と、現在のあれですと年間八百万ドルの日本の利益になつておるのでありますが、或いは来年もう少し下ればそれが七百万ドル、六百万ドルと下るかも知れませんが、少くともこの三年間は世界のエキスパートが一堂に会してこれ以上下るまいときめた値段でありますから、日本が間違つても損するというようなことは万あり得ないことと考えます。
  89. 中田吉雄

    中田吉雄君 この五十万トンを百万トンに枠を拡大されたのですが、これは結局アメリカから買うわけなんですか。
  90. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) 買入れますのはアメリカのみならず、カナダでも濠州でも日本の適当だと思われる国がありましたならば、この輸入国の中に入つております国で、オーストラリア、カナダ、フランス、アメリカ、その国で最もコマーシヤル・ベースで安く買えるという所から買うことになつております。
  91. 中田吉雄

    中田吉雄君 昨年はどういう状態でしたか。
  92. 小田部謙一

    説明員小田部謙一君) 昨年はアメリカから協定小麦は三十四万七千トン、カナダから協定小麦十一万一千トン、オーストラリアから協定小麦六万八千トン入れておりますが、そのほかにアメリカ合衆国から協定外の小麦を八十万八千トン、カナダから協定外の小麦三十五万トン、合計百六十八万四千トンで、協定小麦が五十二万六千トン、協定外の小麦が百十五万八千トンであります。
  93. 中田吉雄

    中田吉雄君 これは最近経団連ですか、米を入れるよりかも小麦をたくさん入れたほうが食生活の改善からも、外貨の節約の面からもいいというようなそういう食糧政策の転換をも含めての枠の増大ですか、どうですか。
  94. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 勿論それも考慮に入つておりますが、それよりも現実に昨年の今小田部次長の申しました通り輸入を見ましても、百六十万トン入れている際、協定外の小麦が百十五万八千トン入つている。それは非常に高い値段で買つたわけです。でありまするから成るべく外貨を節約して而も食生活なり困らないようにという趣旨でできたものであります。ところが併し過剰小麦があるじやないかとおつしやるけれども、併しその過剰な小麦は主としてアメリカであります。ところがアメリカのほうはCIF価格が標準になつて二ドル二十一セントときめて、それは最高価格よりまだ高いわけであります。でありまするからして、この協定に入つておれば二ドル二十一セントのものが二ドル五セントで買えるという有利な点があるわけであります。こういうような関係からともかく日本で少くとも百五十万トンの需要があるのだから、それなら協定価格で五十万トン買うよりも、もつと百万トン買つたほうがそれだけ外貨の節約になる。であるからその枠を広げたほうがよろしいという考え方から百万トンに殖やしたのであります。
  95. 中田吉雄

    中田吉雄君 そういうふうにドル地域のアメリカから入れれば、ドルの支払が要るわけですが、貿易政策から考えると、アメリカは、スカーフからまぐろからミシンから高関税で入れないようにしている。他の方面から食糧を入れればそれによつて日本の商品も出せる。米なんかでしたら成るほど若干の不利益はあるが、そういう協定によつて八百万ドルの何があつたか、或いはそういう輸出の点を考慮したりすると、果してどうかという貿易政策全体から考えると問題じやないかと思うのです。成るほどアメリカから安く若干買える、併しアメリカはもう高関税で、日本商品入るべからずで、入れない。それよりか若干高いが、併しそれはバーターのようにしてあちらから入れることによつて東南アジアその他に日本の貿易を伸ばすというような政策全体から考えますと、バランス・シートは問題じやない、かと思うのですが、特に小瀧次官はその方面詳しいわけですが、そういう考慮をもつてお話になつたでしようか。
  96. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) お説明御尤もなんでありまして、大体今の計画でありますと米を九十六万トンぐらい東南アジアから入れるということになつております。併し黄変米がありいろいろ問題を起しましたが、これも向うの治安も十分よくなつていないので限度がある。そこで大体九十六万トン程度を予定しておるのであります。小麦につきましてはアルゼンチンからは大体三十万トンぐらい入れるという計画をしまして、いろいろ協定国と申しますか、今でいうオープン・アカウントの国であるとか、或いはスターリング協定の国というような所を考えてみましても、小麦をそういう所から入れる限度というのは五十万トン程度を越さないだろうと思います。でありますからして、この百万トンを入れるがために米の輸入が非常に削減されるとか、或いは小麦を他の高い地域から買つても、それによつて日本の品物が売れるのを阻止するというような懸念はないと思います。又例としてまぐろとか或いはスカーフとかミシンをおとりになりましたけれども、すでに新聞でも御承知通りスカーフについては関税審議会のほうでは高関税を提案したけれども、大統領の権限によつてこれを再考慮することを求められてこれも実施せられないで済んでおるし、又まぐろとか或いはミシンについても今懸案の状態でありますが、アメリカ政府としてはできるだけ貿易によつて自由国家諸国を支持して行こうという政策をとつているだろうと思います。その政策には変りがない。互恵通商協定のあの案も通つたわけであります。  ただ日本アメリカと違うのは、日本は原料の輸入国であり、アメリカは製品を輸入しているというような点において、関税率というようなものを比較してみれば、成るほどアメリカのほうが高いかも知れませんが、こうした国情の相違というものも考慮の中に入れなければならないかと思います。
  97. 中田吉雄

    中田吉雄君 この期限を四年から三年に短縮されたのも、今度の協定相違点一つだと言われたのですが、こういう国際情勢の際にもつと短くすることはどんなものですか、この長短の利害得失ですね。そういう考慮をどういうふうになされたのでしようか。
  98. 下田武三

    政府委員下田武三君) 先ずこの種の国際協定といたしましては三年というのが最短期だろうと存じます。せつかくこういう協定を結ぶのでしたら普通五年或いは十年でございますけれども、併し今の価格の変動等の点もありまして、大体この種の協定としての最も短い三年という年数がとられたのではないかと思つております。
  99. 中田吉雄

    中田吉雄君 まあ食糧生産に安定性を与えろということ、そういう意味も含まれていると思うのですが、大体これが一番短いのですか。
  100. 下田武三

    政府委員下田武三君) 私はこういう国際的な協定で、三年以下の二年或いは一年というようなものを存じませんので。
  101. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 頂きました資料では、価格の点、相場の点でありますが、五十二年の分が出ておるのです。新らしいそれ以後の分、最近の海外の小麦の市況に関する資料一つお出しを願いたいと思います。  それから今回の修正でベースがアップされるのでありますが、アップするについての基準はどういうわけで最低及び最高があの程度に上つたか、この基準を一つ説明願いたい。
  102. 寺田庄次郎

    説明員寺田庄次郎君) 最近の小麦の市価につきまてしは只今資料を作つて御配付いたしたいと思います。価格の引上の基準についてのお尋ねでございまするが、これは実は最初はフレキシブル・フオミユラーという案がありまして、それによつて或る程度フレキシビリティを持たしたらどうか、こういう意見もあつたのでありますが、実際の協定の行き方といたしましては、全然さような理論的なものには基かないで、輸出国側と輸入国側とがそれぞれの会合を持ちまして、お互いの意見をまとめながらお互いに歩み寄つて行くというふうないわゆるネゴシエーシヨンによつてきまつたものでありまして、ちやんとした基準というものはありませんのでございます。
  103. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 そうすると今度の基準を上げたについても、輸出国と輸入国との会議におけるネゴシエーシヨンできめた、こういうわけでありますか。
  104. 寺田庄次郎

    説明員寺田庄次郎君) さようでございます。
  105. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 別のことになりますけれども、最近の新聞によりますと、アメリカ政府としての責任に属しておる手持が相当多量になつておる。これは小麦だけに限らんと思いますけれども、アメリカの大統領が国会に対して、それらの手持の穀類を海外に無償又は有償で処分し得る権限を与えるようにという要請をされておる、という趣旨の報道があるのであります。それについての何らかの方法がありますか、どうですか。
  106. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 只今のところは我々は何ら公けの報告には接しておりません。
  107. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 一つ適当の機会に情報を得られるようにお願いいたします。若しそういうことになりますれば、この小麦協定関係においてアメリカ政府から買うということが可能なのかどうか、その点を伺いたいと思います。
  108. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 協定上から申しましてアメリカ政府のストックを買うことは可能であります。
  109. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 先ほど先ず三年間は最低を下ることはないと断言し得るというお話でありましたけれども、私その断言は甚だ危険だと思うのです。御承知のように大きく相場が変ればその程度の変動というものは短かい時間に起り得る可能性があると思うのであります。特にアメリカにストックされておる大量の穀類が、通常の商業機能じやなくて海外に放出されるようになつて来ますと、相当私は現在下落の方向に行きつつある市場に非常な影響を及ぼすであろうというふうにも考えるのであります。その点を今から検討しておく必要がありはしないか。現在アメリカの新政策によつてアメリカ政府の責任に属しておる穀類の数量と、そのうち小麦の数量との資料がありましたら一つお知らせを願いたいと思います。
  110. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは小麦協定に関しまする質疑は本日は大体この点で打切りたいと思います。又後日続行をすることにお願いいたします。   —————————————
  111. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 次は九州における日本人に対する米兵の暴行事件議題といたします。
  112. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 去る五月二十五日二十時十分香椎線海の中道駅において勤務中の機関車乗務員に対して一米軍人による傷害事件が発生いたしましたが、この事件内容は、西戸崎発香椎行列車貨物第六七七列車が海の中道駅二番線にて行違い列車待合せ中、一名の酒気を帯びた米軍人が機関車に忍び上り、背後より突然投炭シヨベルにて乗務中の機関助士池上巖氏の顔面を毆打し、続いて機関士黒永四雄氏の頭部を殴打して抵抗され逃走した。こういう事件でございますが、この事件につきまして外務当局がどういう報告をお受けになり、又どんな処置をなさつていらつしやるか、御報告を承わりたいと思います。
  113. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 只今事件につきましては私の方も警察から事件の概要の報告を受けております。現地におきましては、日本側の申入によりまして現地米軍が犯人の捜査に当つておりますが、未だに犯人はつかまつておりません。一時、この翌二十六日の十時大体被疑者とおぼしき者五名を、米軍の方でキヤンプ・ハカタと申しますか、博多のキヤンプで出しまして、この被害者に面会をさしたのでありますが、犯人の人相等が判明しておらないために、結局犯人を確認し得なかつたのであります。その後捜査を続けておりますが、未だに犯人が見つかつておりません。普通こうした事件が起きますと、警察が米軍に連絡いたしまして、或いは米軍単独で或いは共同して犯人の捜査に当るわけでありますが、この事件はなかなか犯人が見つかりませんので、外務省といたしましても合同委員会におきまして、現地のこの米軍捜査当局を督励して早く犯人を逮捕するようにということを申しております。
  114. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 只今御報告を承わりましたのでございますが、なかなかこういうような犯人がつかまらないと、だんだん時期がたつにつれていよいよその捜査がむずかしくなつて、犯人をつかまえることが非常にむずかしいのではないかというふうに考えられるのでございますが、事柄が機関車の機関士というような人命を預つている人間にこういうような危害が加えられるようなことは、非常に重大な問題だと思うのでございます。それで今後こういうようなことの事件の発生を防ぐために、当局としてどういうような方法を考えていらつしやるか、それを承わりたいと思います。
  115. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 先ほども申しましたように、普通の犯罪の場合は外務省が特に米軍当局に申入れるということはいたさないのでありますが、この事件につきましては特に申入をいたしたわけでありまして、今後厳重に注意するようにということは十分申してございます。  全体につきまして申上げますと、講和発効後の一年間は、その前の一年間に比べますと、こういう外国軍隊の犯罪件数は六千二百五十七件から三千三百八十二件というふうにかなり減つてつております。全体の傾向はよくなつて来ております。又検挙率は八二%ということになつております。
  116. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 まあ只今御報告を承わりましてその範囲においては了承いたしましたが、こういうような問題が起りますということは、やはりこの行政協定の刑事裁判権の問題が、非常に不明朗のままに放置されているというところに大きな原因があるのではないかというふうに私どもは考えますので、これは世論といたしましても、こういうような裁判権がそのままになつているということに対して、非常に批判の声が高まつておりますので、外務当局としては、これに対してどういうようなことを考えていらつしやいますか、この機会に承わりたいと思います。
  117. 下田武三

    政府委員下田武三君) 一般的な問題に入りましたですが、只今事件等の関連について申上げますと、裁判権がどちらにあるかという問題と、犯罪が多く発生するか少く発生するかという問題とは直接関係がないと存じます。只今伊関局長が申しましたように犯罪件数は約半分近く減つておりますし、検挙率も八二%という割合に高率になつております。それで日本側は裁判権がないといたしましても、行政協定の十七条で日本側は逮捕権は持つておるわけであります。でございますから、米軍といえども犯罪を犯したことがわかれば、日本側の警察は逮捕することができるわけであります。併し裁判権がないから向うに引渡すわけでありまするから、結局この行政協定規定が不満足であるから犯罪が多く発生し、或いは犯罪が多く発生してもそれを検挙することができないという直接の関連は持つて参らないと存じます。  第二の問題といたしまして、行政協定の改正問題がどうなつているかという点でございますが、これは御承知のように、行政協定の十七条の第一項に、行政協定発効後一年たちましても、御承知の、一年たつてナツト協定が発効しておれば、日本側の選択によつてナツト協定と同じような刑事裁判権に関する規定を採用するという規定がございます。その規定に基きまして日本は四月の十四日にすでにナツト協定を選択するぞという申入をアメリカ側にいたしております。  なお十七条の第五項に一年たつて若しナツト協定が発効していない場合には、日本側は刑事裁判権の規定を再考慮することを申入れることができるとなつておりますが、この再考慮の申入も四月十四日に同時にいたしておるのであります。ただどういうように再考慮しろという内容については申入していないのであります。なぜかと申しますと、四月の十四日現在におきまして、アメリカはすでに上院の外交委員会で満場一致ナツト協定の採択を決議して、残るところは上院の本会議だけという形勢だつたのでございます。でございますから、間もなくアメリカのナツト協定批准が眼の前に見えておるときに、わざわざナツト協定以上のものを日本側から持ち出してそのように再考慮してくれと申入れることはばかげたことであると存じまして、取りあえず第一条のナツト協定の選択権の行使と、それから若しナツト協定の発効が非常に伸びるような場合には日本側が第五項に従つて再考慮の申入するぞという前触れの申入をいたしておるのであります。
  118. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 この事件に関連してちよつと伺つておきたいのでございますが、こういうような米軍或いは軍属、こういうような米国側が何か日本人に危害を与えた場合に損害賠償をすることができる、即ち損害賠償の最高額というものは、例えば殺された場合、それから非常にひどい危害を身体に与えられた場合、そういうようなときの賠償額というものはどういう基準になつておるのでございますか、承わりたいと思います。
  119. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) お答えいたします。私もちよつとはつきりいたしませんが、たしか米軍であるからその危害損害の額が違うというのでなくて、誰から被害を受けてもこういう場合同じ額だと思います。ですから日本人から被害を受けた場合でも額は同じにしたのであります。その額は同じであります。
  120. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 たしか占領中は米軍であるという理由で額がきまつてつたように思うのでありますが、それが今そのまま存在しておるのでございますか、全然そんなものはなくなつておるのでございますか。
  121. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) その点は全然変つております。占領中は要するに米軍は何も出さない、日本政府から或る程度見舞金を出すというふうな、最初はジープにしかれて死んでも五百円という時代もありました。逐次その後上げて参りましたが、これは占領中は日本政府が適当に代つて見舞金を出すというふうなことにしておりました。今度はちやんと民法によりますか何によりますか、そういう法律の規定により、日本側の法律の規定によるものと同じ額を出すことにすつかり変つたわけです。
  122. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そうすると、その損害賠償は相手米軍であるということは何も関係がないということになるのですか。
  123. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 国家賠償法によつて賠償するということになりまして、米国の兵であるというので額が違うというのではありません。
  124. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういたしますと、連合軍占領時代は日本政府が代つて賠償するというそのときの基準は、今日何にも参考にならないわけでございますか。
  125. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) その通りでございます。
  126. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 先だつて新聞にその基準か何か出ていたのでございますが、死亡した場合に五万円ということが書いてございましたけれども、そうなんでございましようか。
  127. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) もつと多額に支払つております。三十万円程度支払つたケースもございます。
  128. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 それではこの事件の御報告はこの程度にいたしまして、なお犯人の逮捕を早急に行われたい。犯人の逮捕が不可能な場合には事件の確認をされたい。それから治療費、慰藉料の支払を要求してもらいたい。こういうような要求が被害者から参つておりますので、この機会にこれを申入をいたしておきたいと思います。
  129. 中田吉雄

    中田吉雄君 それに関連したような事件なんですが、私六月十日から青森の軍事基地の調査に参つたわけでありますが、その際に大三沢ですか、あすこの高館P・X事件ですね。あすこに勤めています日本の労務者、特に若い婦人を含めて軍票の収支が合わないということで、若い女性を全裸体にして調査をやつたというので、人権蹂躙の非常に大きな問題を起していましたが、これはその後どうなりましたか。
  130. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) あの事件につきましては、何かPXで物がなくなつておつてそれで捜査をしたわけです。身体検査で多少盗品が現われたという事実はあるにはあつたのでありますが、ああいうふうな身体検査ができるかどうか、こういうことが合法的な行為であるかどうかという点につきましては、法務府或いは外務省条約局等において研究いたしておりますが、今のところできるだろうという意見もありますし、違法ではないのじやないかというふうな意見もございますが、もう少しよく研究するようにということでまだはつきりした結論を出しておりません。ただいずれにしましても、たとい違法でないといたしましても、この日本人の感じから申しまして、殊に女を裸にするというようなことは極力避けるべきで、非常に妥当でないということは勿論考えられます。それで合同委員会を通じまして、こうしたことを将来やらないようにということを厳重に申しております。ただ違法であるかどうかという点につきましては目下研究中であります。
  131. 中田吉雄

    中田吉雄君 それは一体どういう権限でやるんですか。その違法でない点というのはどういう権限に基いてそういうことになるのですか。それを一つ承わりたい。
  132. 下田武三

    政府委員下田武三君) これはいろいろのほうから説明がつくと思いますが、行政協定の第三条に、施設内の管理についての必要な権利を米軍側に認めております。でありますから施設内の管理の問題としてやることもできるでしようし、又他の方面では米軍の財産の安全を保全するということも日本側の義務になつております。でございまするから、米軍施設内の物が紛失する、或いは物が盗まれて闇に流れておる嫌疑があるという点から、そこに入つております日本人の使用人を調べるということは、度を越さなければやはり当然のことじやないか。あのときは婦人の検査はやはり婦人をして別室でやらしたという程度の配慮はしておるようでありまするが、多少行き過ぎだつた点はあるかも知れませんが、これを一概に不法であるとまでは結論が出ないじやないかと只今のところ思つております。
  133. 中田吉雄

    中田吉雄君 行政協定只今説明を受けたのは第三条の3かと思うのですが、「合衆国軍隊が使用する施設及び区域における作業は、公共の」これですか、どこですか。管理権を持つておるわけですか、そういういろいろな権利を。併し、そういうことは、ああいう仕方を是認するものではない、まあ法的によしあるとしても。  それからもう一つ伊関局長にお尋ねしたいのは、それとからんで青森の地方法務局と八戸市の人権擁護委員会が合同調査をやつたようですが、その後の結論はどうなつたか、それも併せてお伺いしたい。
  134. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) その後の報告はまだ聞いておりません。
  135. 下田武三

    政府委員下田武三君) 第三条の1「合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、使用、運営、防衛又は管理のため必要な又は適当な権利、権力及び権能を有する。」という条項。もう一つ行政協定の第二十三条に「日本国及び合衆国は、合衆国軍隊、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族並びにこれらのものの財産の安全を確保するため随時に必要となるべき措置を執ることについて協力するものとする。」という条項と後段は「日本国政府は、その領域において合衆国の設備、備品、財産、記録及び公務上の充分な安全及び保護を確保するため、並びに適用されるべき日本国の法令に基いて犯人を罰するため、必要な立法を求め、及び必要なその他の措置を執ることに同意する。」という条項がございますが、この二つが関係を持つて参りますと思います。
  136. 中田吉雄

    中田吉雄君 伊関局長はそういうことのないように申入れたと言われるのですが、どこにされたのでしようか、それは。
  137. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) これはいつもそういうルートがきまつておりまして、合同委員会向うの代表に申入れるのであります。
  138. 中田吉雄

    中田吉雄君 合同委員会は、これはあちらの民事係のラムレー大尉とか聞いておつたのですが、そちらに伝達してもうそういうことのないように今後保証があつたのでしようか。特に日米合同委員会では、今後そういう場合もPXなんかでは予想されるのですが、ないという御返事があつたのでしようか。それから又できるかできないかという問題がこういうケースから起きたのですが、それについてはつきりそういうことがよし起つても、それは日本の官憲によつてやらせるとかいうような、トラブルを少くするような措置をこういう事態からおとりになつたことがありますか。
  139. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 普通申入れますと、向う向うとして事情を十分調べまして、そうして向うの調べた情報を提供して来るのが普通であります。その上でそれではどうしようというような話になるわけでありますが、今度のは情報を持つておりません。こちらは警察の情報に基いて、こういうことは非常に妥当を欠くというので厳重に注意して欲しいと申入れたのであります。向うは調査した上で返事をする、それでまだ返事は来ておりません。
  140. 中田吉雄

    中田吉雄君 この裸にされて調査された人のほうからはもうそれで泣寝入のようなことになつたのですか。その後どうなつたでしよう。
  141. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) そういう場合は直接外務省に参るのではございません。地方の県等を通じまして局長その他に手続が行くのでありまして、外務省にはそういう個々のケースは参りません。
  142. 中田吉雄

    中田吉雄君 この問題については今後大きなやはり基地問題にからんでのいろいろな問題の一つだと思いますので、調査してその結果について一つ御報告願いたいと思います。やはりこれは外務省も非常に関係のある問題だと思います。それをお願いしてこの問題を打切ります。   —————————————
  143. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 本日予定しました議題のうちで、MSAに関する外務省説明が残つております。土屋欧米局長も先刻来お見えになつておりまするが、本件は如何取計らいましようか。
  144. 中田吉雄

    中田吉雄君 少し技術的な、本格的な審査に参考になりますようないろいろな点をお尋ねいたしたいと思いますが。
  145. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それでは本日このまま質疑に入りますか、それでは中田君。
  146. 中田吉雄

    中田吉雄君 この七月一日にアメリカの議会の上院の本会議で五十三億一千八百七十三万ドルですか、MSAに関する予算がいよいよ議決されたそうですが、我々政府並びに関係されます局長各位等の御説明を受けてもなかなかいろいろな事情もあつて、その全貌を理解するに苦しむので、一つお願いしたいと思うのですが、アメリカの特に日本に関する部分のMSAのこの委員会における速記録を国会に提出して頂きたいのですが、外務省ではお取寄せになつておるでしようか、その点を先ずお伺いしたいと思います。
  147. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 速記録は発表されたものと、それから恐らく今後暫くたちましてから発表されるだろうというものと、大体二つ取扱を考えておりますが、発表されましたものにつきましては千何百ページに亘る大部のものでございますが、漸く最近外務省も二部手に入れました。聞くところによりますと、議会図書館にもその一部があるそうでございますので、そちらのほうの御利用も考えて頂けるかと思います。先日もこの委員会でしたか、提出するようにとのお話でございましたが、何せ大部のものでもございまするし、翻訳の都合もございまするので最近の機会にお出しできるかどうか、私も甚だ心許なく思つておる次第であります。従つてでき得べくんば、そのうち恐らく議員各位の御参考になると思われます日本関係部分だけを摘出して翻訳し、これを資料として提出できるかと思つております。  それから只今お話になりました最近の議事の問題につきましては、まだ恐らく記録も出ていないことだと思います。私どもも受取つておりません。これは到着次第考えてみる予定でありますが、大分先のことではないかというふうに見ておるわけであります。
  148. 中田吉雄

    中田吉雄君 新聞やその他外国通信等で見ますると、アメリカ国民の高い税金を納めての、その負担による対外援助だというので、外交委員会等におきましては二十七回の聴聞会を開いて、それに関して千三百頁の厖大な記録ができている。それほど慎重に審議されているわけであります。而も日本の運命に関する問題が、日本の国会におきましては極く表面的なことしか資料がないのでできない。是非私はアメリカが何を予定しているかという全貌を、政府のいろいろな国会通過を容易ならしめるためのような説明でなしに、何かの資料によつてアメリカが一体日本に何を求め、どのような防衛上の努力を要するものかというような点を見たいと思いますので、至急に日本に関する部分は全訳して是非これは出して頂きたいと思いますが、やはり長い時間を要しますか。
  149. 土屋隼

    政府委員(土屋隼君) 只今出ておりますお話の千何百頁に亘るものは、仮にこれを今の外務省が持つておりますスタツフで全訳して委員各位にお配りするということを想定いたしますと、恐らく三カ月先になるだろうと思います。従つてこれは現実の問題といたしまして、国会の御論議を頂く段階に、まだ報告するなんというのはこれから先の話で、その際皆さんが御審議に必要なる材料は私どもも全力を尽しまして提出する予定でございますが、御覧の通り現在日本といたしましてはMSAの交渉を始めるという段階でございますので、御論議頂く場合までには材料として手許にあるものをできるだけ揃えたいと考えております。
  150. 中田吉雄

    中田吉雄君 一つ大変な手数だと思うのですが、是非日本に関する部分は大分祕密事項があつて削除されているようですが、公表された記録は全訳を願つて日本に関する部分は至急にお願いしたいと思います。それを希望しておきます。それで、いよいよ来週から新聞の伝えるところによるとアメリカ側と交渉に入られるやに聞いているのですが、日本側交渉に当られるスタツフも決定したと思うのですが、どういう陣容でこれに対処されるのですか、そういうことが決定していましたらお知らせ願いたいと思います。
  151. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) こちらの申入に対して向うも会談に応じようということは言つて来たばかりでありまして、向うの陣容がどれだけの大きさであるかもわかりませんので、我々の方ではまだはつきりそうした陣容を決定する段階に至つておらないのであります。併し外務省関係局長は勿論それに参加しなければならないだろうし、関係各省の首脳部の人も加わるようになるだろうとは思いますけれども、まだ何ら決定しておりません。
  152. 中田吉雄

    中田吉雄君 新聞ではたいていの新聞が来週、もう余すところ僅かですが、来週月曜日頃から入るのじやないかというふうに出ているのですが、あれは全く新聞情報で信憑性ないわけですか。
  153. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 来週早々始めるということになつております。でありまするが、その人の名前などは新聞でいろいろ書かれますが、まだ確定しているわけでなし、向うと会つてどれだけの組織にするか、どういう顔触れでするかをその上で確定したいというふうに考えております。
  154. 中田吉雄

    中田吉雄君 講和、安保両条約並びに行政協定は、私の乏しい知識を以て調べてみても世界稀に見る屈辱的な条約で、恐らく今後はああいう過ちは再び犯さぬという固い決意をされてすでに万全の布陣ができていると思うのですが、まだそういう段階では甚だ心配するわけですが、一体それはまだできていないのですか。普通、外交の常套手段なんですか。
  155. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) これまでも議会でずつと御説明申上げておりまするように、関係の局もございますし関係の係官もおるわけであります。できるだけ皆様の期待に副うように最善を尽したいと思い今準備いたしておりまするが、先ほどの御質問は正式の代表が誰になるかという点であつたかと思いますので、その点は確定いたしておらないということを申し上げたわけです。
  156. 中田吉雄

    中田吉雄君 それからこの交渉は一体どれぐらいかかる予定でございましようか。我々が一番心配いたしますのは、交渉アメリカ話合つてかなり引張つて行つて、そして国民の代表であるこの国会が閉会後に取極めをされるんではないかということを一番我々といたしましては心配するわけですが、一体どれぐらいな期間を必要とする御予定でございますか。
  157. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) まだ交渉も開始しておりませんし、見通しをつけるということが非常に困難だと思います。併し先ほど中田委員から御指摘がありましたように、成るべく引張つて議会が済んでから静かに事を納めようというような意思は毛頭ないということを私断言して憚らないものであります。殊に相手方もいよいよ日本に援助を与えるということになれば、できるだけ早く予算の都合もありますので解決いたしたいということを希望しておるであろうということは当然想像されることであり、又私ども政府側といたしましても結局議会の御承認を得なければならないものでありまするから、あとに残つたらそれが実施できない、こういう結果になりますので、もうできるだけ早くこれを片附けて行きたいということを念願している次第であります。
  158. 中田吉雄

    中田吉雄君 アメリカのMSA援助の会計年度は七月一日からだと承わつているのですが、もうすでに大体そういう事実上の協定は受けんでも約束だけその前にしておいたらいいというような話も聞いているのですが、その関係はどうですか承わりたい点と。政府はやはり憲法上の事前でも事後でもいいという点で、国会通過を容易ならしめるために調印後に批准条項を附して国会の了承を求められるという立場をおとりなんですか。外交を国民的な背景において有利に闘い取るというような意味から、調印をするまでに国会で先に承認を得て、調印と同時に発効するという形式があるのですが、我々としてはやはり日本の置かれた弱い国際環境から有利に闘うには、国民的な背景の上にやるという意味で事後よりも事前のほうがいいと思いますが、政府はどちらをおとりの用意ですか。若し国会が閉会になりましたならば改めて召集して、先に国会にかけてそして承認を求めて調印まで持つて行くというような方式をとられますか。一旦調印しておいてそして既成事実を作つて、批判的な精神の必ずしも十分でないというようにして、国会通過も容易だという既成事実を押附けるというような考えから、我々はあとのほうをとられると思うのですが、そのいずれをおとりになる政府の御方針ですか。
  159. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 七月一日からアメリカ側の会計年度は始まつておりまするけれども、大体アジアに対する援助額というものは十億ドルというように決定しておりまして、これをどことどこへ振分けるかということは相互安全保障本部長官が検討いたしまして大統領の裁可を得てきめるわけでありまするから、早いほうがいいけれども必ずしも七月一日までにやらなければ困るという事情はなかろうと存じます。又仮に一応きまりましてもその後も変更し得るようなフレキシブルな規定なつておりまするから、早いほうがよろしいけれども、丁度期限がいつまででなきやならないという事情はないし、又前以てもうすでに額はきめて話がついているというようなことは絶対に事実としてはないわけであります。  それから国会の承認をいつ求めるかというお話でありまするが、又批准条項の附いたものであるかそうでないものであるかという御質問でありまするが、これがどういう形式になるかは向う話合つてみなければわからないのでありまして、どつちにするかということが今からきまつているわけではございません。併し調印しない前に国会の御承認を得るのも、調印をして批准条項の附いたものでやるにいたしましても、この取極めが確定するまでは、飽くまで批准条項の附いたものであつたら批准効果の時であり、又調印前に国会に出すとすればその国会の御承認を得て調印した時に確定するわけでありまするから、いずれにしてもこれは事前に御承認を得るというように当然御解釈できると思います。でありますから、先ほどの航空業務の統一に関する条約のようなものは例外的の場合でありまして、勿論効力発生の前に国会にかける考えでおります。
  160. 中田吉雄

    中田吉雄君 いろいろな御解釈を承わつたのですが、小瀧政務次官個人としてはどつちがいいと思いますか。又日本政府としてはアメリカが批准条項を付けようといたします際にどちらを主張されるか、それはやつてみんとわからんというのですか、一体どうなのですか。
  161. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 私個人の考えということで申しますと、これは法律的には全然同じ効果のものであります。調印をしてすぐ効力を発生するようになつておつても、批准効果によつて効力を発生するようになつておつても、全然法律的に同じであるというふうに解釈しております。
  162. 中田吉雄

    中田吉雄君 国際法上の知識に乏しい私でもそれくらいのことは知つておる。ただこの弱い立場に置かれた日本としてそのいずれをとつたほうが有利な取極めができるか、こういうことについての御見解を聞いておる。それを効果は後であろうが前であろうが同じことはそれは私も知つておる。私はやはり国民の代表である国会のそういう背景の上にやらざるを得ないというこういう立場におかれておる。そのことがアメリカをして十分慎重に考慮させるでしようし、私は有利ではないかと思う。
  163. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) この双方の合意がまだできていない途中のものを議会にかけるということは考えられないのでありまして、結局この調印前に承認を得るか、又は批准条項によつてその批准前に承認を得るかということについては、これはそのときの情勢によると思います。もう議会が済んでおる、併しこれは放つておけないという場合には、或いは調印をしてそのあとで批准条項を設けて、国会の承認を得るという方法によることもありましようし、先ほども申しましたように、結局向うとの話合関係もありますし、その時期等にもよるので、一概にいずれがよいかということは私は断言いたしかねます。
  164. 中田吉雄

    中田吉雄君 そうすると、今国会は大体七月中、或いは若干延びるのではないかと思うのですが、この国会には間に合わんではないかと思うのですがどうなんですか、大体の予想は。
  165. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 予想をつけることは非常に困難でありますけれども、私どもの気持といたしましては、あとに残したらそれだけ長引きますから、できるだけ早く交渉を進めまして、今国会で御承認を受けたいという考えでおります。
  166. 中田吉雄

    中田吉雄君 これから御折衝に入るのですが、国会に中間報告をされるような用意がありますか。
  167. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) これは交渉の場合は、私からそういうことを申上げるまでもございませんが、発表し得るものと発表し得ないものと、先方との話合関係もありまするけれども、併し私どもとしてはできるだけ皆さんに様子がわかるように、最大限に進行の途中においても一度区切りのつきましたときには、御報告を申上げたいと考えております。
  168. 中田吉雄

    中田吉雄君 いろいろの御事情もあると思うのですが、できるだけこの国会中にけりをつけるというようなことを希望しておきます。  それからもう一つ、我々の心配しますのは、安保条約がたつた五カ条のような包括的なものにして、実際国民の運命に関するような重要問題は、そして国会を通過しないと予想されるような問題は、挙げて実施細目に譲るというような手順がとられるのではないかということを心配するのですが、その点についてのお考えを伺いたい。
  169. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) 御趣旨はよく私どもも同感でありまするがただ併しMSA援助に関する相互防衛条約というようなものには或る程度の機密というようなものもありますので、今までの例を見ましてもそうながながとしたものではない、併し内容になるようなものにつきましても、勿論できるだけ詳細に掲げるように努めるつもりでありますけれども、そうした性質のものであるという点も御了承願いたいと思います。これまでの例から見ましても、もうすでに皆さんも承知かと思いますが、そういうような特異性のある点を御了承願いたいと思います。
  170. 中田吉雄

    中田吉雄君 これはまあ私の大学の友達も若干外務省におるのですが、とにかく安保条約行政協定、大した条約を結んだものだと言つて驚歎さえしておる人もあるわけですから、是非一つそういうような安保条約行政協定のような二の舞をふんで後世史家のきびしい批判を受けることのないように、一つふんどしを締めて日本の運命と対決するという考えを持つて頂きたいと思うわけであります。そういう実施細目にエスケープするというようなことのないように一つ真剣に小瀧政務次官に強く要求しておきます。
  171. 小滝彬

    政府委員小滝彬君) お説のほど十分体しまして最善の努力をしたいと考えております。
  172. 中田吉雄

    中田吉雄君 私はこのMSAを受けるかどうかということは非常に重大な問題であると思いますので、特にアメリカ日本に要請しておるものは何であるかというような点、更にそういうことは国際情勢をどう判断するか、そして自衛力漸増というような形式が日本の安全を保障するかというような問題点、一つ岡崎外務大臣並びに外務省の首脳部と、国際情勢の分析その他でここに地図を掲げて近く対決をしたいという考えを持つておりますので、今日は大臣もおられませんが、たくさんいろいろな点で一つ意見を交えてみたいと思いますので、今日はこの程度に私の質問はいたしておきます。一つそういう準備を、ここに地図を掲げてどのような政策をとつたほうが日本の安全のためにいいかという問題で、一つ我が党の立場と論陣を張りたいと思いますので、一つ準備をして、いい加減なことでないように一つお願いしたいということを希望いたしまして、今日はこれで私の質問を終ります。
  173. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) まだお諮りすることが二件ほどございますけれども、政府委員のかたがたはもうこれでお引取り願つて結構だと思います。ただ小瀧次官だけは外務委員としてお残り願いたいと思います。   —————————————
  174. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) お諮りしたいことが二件ございますが、そのうちの一つは、先ほど御採決になりましたもの、明日本会議においてします感謝決議の上程についてであります。提案理由の説明は、フイリピンに関しまする決議案は徳川頼貞君にお願いしたいと思います。と申しますのは徳川君は日比協会の会長であられまするし、又前の外務委員長であつたというような関係から最も適任であろうかと考えるわけであります。又もう一つのフランスに関する決議案は、若し御賛成を得ますならば、私が提案者となりましてよろしいと思つております。この点御承認を頂けましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  175. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) それではそういうことにお願い申上げます。ちよつと速記をとめて下さい。    午後五時九分速記中止    —————・—————    午後五時二十三分速記開始
  176. 佐藤尚武

    委員長佐藤尚武君) 速記を始めて下さい。本日はこれで散会いたします。    午後五時二十四分散会