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政府委員(松井一郎君)
郵政省の郵務
局長でございます。
只今のお尋ねに対しまして、私丁度昨年のブラツセル
会議に出ておりましたので、その間のいきさつを
お話し申上げたいと思います。
御承知のように第二次世界大戦後非常に
航空機が
発達いたしまして、今日
外国郵便の殆んど七割というものは
航空郵便にな
つております。そこで世界中に
航空郵便を輸送するためには、お互いに郵政庁間において
責任を持
つて引受けて、そうしてその決済率というものをきめておかなければ、これは
郵便物を送れないわけであります。その決済率をどういうふうにきめるかということが、実際問題といたしましては、やはりその当時における
航空会社に対する支払運賃というものを無視しては、これはやりにくい問題で、必ずしもそれに拘束せられるわけではありませんが、やはりそれが
一つの基準になる、そこで
郵便物の
運送料をどういうふうにきめるかということについて、一九四七年にパリで行われました万国郵便
会議におきまして、その当時は実は
日本はまだ占領中で出席を許されなかつたわけでありますが、いろいろ議論いたしました結果、大体において書状、手紙、それから葉書類ですが、そういうものについては、原則としてヨーロツパ地域においては一トン・一キロメートルというトン・キロ計算でありますが、金フランとして三フラン、これは金フランというのは或る抽象的な貨幣でございまして、金何匁というふうな
一つの観念上の貨幣でございます。これを大体今の
アメリカ・ドルの数字で換算いたしますと、一金フランが大体百二十円くらいにな
つております。これがいわゆるA地域というものであります。ところがその当時はまだヨーロツパ以外において、殊にアジア
方面においては、余り
航空路が
発達しておらなかつたのです。こういう所へ
航空路を伸ばして行くには、いろいろコストがかかるというので、B地域というものは六フラン、つまり倍を取るということがパリ
会議できまつたわけであります。ところがその後世界の
航空路は御承知のように非常な
発達を遂げまして、
競争が激甚にな
つて来る、且つ又
航空郵便の
利用率が多くなるので、この六フランというのは如何にも高いという声が中間に起りまして、そうして御承知のイアタと言
つて世界の主な
航空会社が入
つておる
一つのアソシエーシヨンでありますが、このイアタのメンバーと各郵政庁の幹事役とが中間において会合いたしまして、もつと
値下げはできないものだろうかというような話をいたしました結果、六フランと三フランとの結合地域については五フランに
値下げしようじやないかというのが、丁度一昨年のこの
会議からそういう話があつたわけであります。
そこへ今度ブラツセル
会議に出まして、又新たなる角度でこれを検討したわけであります。丁度このブラツセル
会議には、これは郵政庁だけではきめかねる問題でありますので、世界の各主要
航空会社のイアタのメンバー、それから先日
日本も加入を認められたかに承知いたしておりますイカオ、これは
フランス語でオアシーとい
つておりますが、それも出て来まして、そうしていろいろと論争しました。これは恐らく万国郵便
会議で最も激しい議論を戦わした問題でありますが、大体の傾向を申上げますと、世界の
飛行機におけるコストというものはだんだん下
つておる、これはオアシーから出た資料で以て認定できる、併し各国の
航空機会社の経済状況というものは、むしろ悪化しておるということが出された資料でわかつたわけであります。これは申上げるまでもなく、非常に急速に各国が
航空機会社を作つた
関係上、その
航空路の
発達に必ずしも需要面が随従しなかつたという面が反映しておるのだろうと思います。そこで大体
アメリカとか、そういう世界の
航空路を持
つておる国は、どうもこのままでは
赤字が殖える、そこでむしろ
郵便料金は値上げしてもらいたいというような態度をとつたわけであります。併し
自分で世界の
航空路を持
つておらない多数の国にと
つては、それは別問題だ、コストが下
つておれば当然下げるべきではないかというのが、中小国の基本的
考えであります。この両者が論戦を重ねました結果、一応
委員会におきましては六フラン地域は撤廃しよう、全部三フランにしようということに
なつたわけであります。併し総会におきまして、それでは従来の六フラン地域が三フランになると、
郵便料金が半分に減
つてしまう、現実問題として
航空会社に与える非常に大きな影響というもの、結局それは
航空機を持
つておる
会社に
補助金で面倒を見るより仕方がない問題だ、それは余り酷だというので、中間案が出まして、先日
国会で御承認を得まして
日本も批准いたしましたブラツセル条約の最終案は、金三フランではあるが、併しこの七月一日現在におきまして三フラン以上払
つておつた地域については、四フランにしようということに
なつたわけであります。ところがこの条約の
規定を
日本に当てはめてみますと、
日本は従来殆んど六フラン地域であつたわけであります。これが今度は四フランに
なつたのであります。その
関係でそこに
航空料の支払として約二割ばかりを七月一日以降減らさなければならない、
日本においては
航空便では御承知のコンビネーシヨン
料金というものをと
つておりまして、基本
料金と
航空料金と一括した
料金体系をと
つておる
関係上、これを総合した目から見ると、一割の
値下げにな
つております。併し
航空料の支払の減るという面から見ますと、二割の低減にな
つておるわけであります。その
理由は、結局コストが下
つて来たからそうしようじやないかという論に尽きるようであります。勿論
郵便物の
料金というものをどうきめるかについては、これはいろいろ見方はあるようであります。
会議において有力な発言をした国の案としては、
郵便物も普通
貨物も同じじやないか、郵便を運んだから特別に高い
料金を払う必要はどこにもない、もつと下げろ、ニフランでいいじやないかというような案すら出たのでありますが、余りにも現状に対する大きな変革というものは、いろいろな
方面において面白くない影響を与えるであろうというので妥協されたのが今度のブラツセル案でございます。