○
国務大臣(
石井光次郎君)
日本航空株式会社法案の題案
理由について御
説明申上げます。
航空事業殊に国際航空事業は国際交通の促進、貿易外収支の改善等に寄与すること多大なものがあり、今や近代国家の進歩発展に必要不可欠のものであると共に、ますますその重要性を加えることは明かであります。従いまして、世界の航空界に比べて著しく立ち遅れているわが国といたしましても、速かに国際航空事業を開始することが極めて緊要であると存じます。併しながら、自主的な国際航空事業により、且つ公正な競争にま
つて国際航空界に進出するためには、
相当多額の資金を要するのでありまして、例えば優秀な航空機は一機七、八億円もいたすのでありますが、これは民間の資本力のみを以ては中々困難なことであります。これがため、英、仏、蘭その他主要各国は国際航空運送事業に対し、国家出資、各種の補助金その他直接間接の助成を行
なつているのでありまして、
政府といたしましても右の各国の実例に徴し、この事業に積極的な国家的助成策を講ずることとし、十億円の
政府出資を本年度の予算案に計上すると共に、民間の資本力をも結集して、
我が国の資金、施設、技術の全力を一本に集中して、強固な
基礎を有する特殊法人を設立し、これをして国際線及びその基盤となる国内
幹線を総合的に経営せしめることが最も妥当であるとの結論に達した次第であります。以上の意味において、その特殊法人の
基礎法規として、ここに本
法律案を
提案した次第であります。
なお、この
日本航空株式会社なる新会社は、
政府出資による特殊法人ではありますが、
政府の干渉はできるだけ排除し、民間企業の長所を発揮し得るよう特に十分なる考慮を払つた次第でございます。
以下その
内容を大略申上げます。
先ず会社の目的でありますが、本会社は、国際路線及びその基盤となるところの国内
幹線における定期航空運送事業並びにこれに附帯する事業を経営することを
規定しております。本会社が国際航空のほか、国内
幹線をも実施することにつきましては、何分にも当初は少い機数を以て、これを最も効率的に使用する必要がありますので、国際線と共通に使用できる大型機を使う国内
幹線を包含せしめた次第でありまして、このことは単に航究機の効率的運用の点のみならず、
整備施設の充実、乗員の訓練及び間接費の低減という点からも必要であると存ずる次第であります。
本会社の株式は、会社の性格上記名式、額面株式とし、又その所有については航空法第四条の趣旨に基き、三分の一以上の外国資本を排除いたし得るよう株式の譲渡制限に関する
規定を設けたのであります。
次に、
政府は本会社に十億円出資することをこの
法律の附則において明らかにしており、且つ本会社に対しては、
政府出資の外、助成策として、社債発行限度を通常の株式会社の二倍まで拡張し、又公益上必要のある路線の運営維持のために将来補助金を交付し得る途も開いてございます。
次に、本会社に対してはできるだけ民間企業の特色を発揮し得るよう
政府の統制を避けるのが趣旨でありますが、ただ
政府出資等の会社の特殊性から、最小限度の規制はこれを行う必要があるのでありまして、かかる規制といたしましては、代表取締役の決定の決議、定款の変更、社債募集その他重要な財産的処分を運輸
大臣の認可の対象といたしました。その他、毎営業年度終了後における財産目録等の提出、
日本航空株式会社の商号の独占その他この
法律の施行を確保するため必要な罰則について
規定いたしました。
最後に、附則において会社設立の際の
手続及び経過的措置を定めたのでありまして、即ち、本法は公布の日から施行いたすこととし、会社の設立事務は運輸
大臣が任命する設立
委員に行はせることといたしております。
又現在の
日本航空株式会社は、株主総会の特別決議があつたときは、本会社に営業全部を出資し、本会社にその権利義務を承継して解散することを定めましたが、その際における現在の
日本航空株式会社の資産については
臨時に
運輸省に置く評価審査会の公正な評価によ
つて本会社に引継ぐようにいたしました。その他、本会社設立の際の
政府出資分等に対する登録税の免除、
運輸省設置法の
改正等
関係法令についても所要り
改正を行うことといたしております。
以上簡単ではありますが、本法案の
提案理由ならびにその
内容の概略を御
説明申上げた次第であります。何とぞ十分御審議の上、速かに可決せられますよう御願いいたします。