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政府委員(粟沢一男君) お手許にお配りしてございます「民間航空の現状」というものがございます。これに基いて御
説明申上げたいと思います。
御承知のように
戦争までは相当の技術基準で
発達しておりました
日本の航空も、敗戦と同時に一切の航空活動を停止、禁止されまして、航空機の生産或いは運航、研究、所有、一切のことを禁止されたわけであります。爾来約七年に近くいわゆる航空の空白時代があ
つたわけであります。昨年平和条約が発効と同時にその制限が解除されまして、今日は御承知のように航空活動は一切自由である、こういう状況に
なつておるのであります。その間に、ここにも書いてございますように、一昨年の十月から非常に変則的な、
日本航空のノース・ウエストの飛行機による国内航空の運航というものが開始されて、爾来引続いて現在に至
つております。この
日本航空は御承知かと思いますが、昨年からノース・ウエストによるチャーター飛行をやめまして、一切自分で飛行機を所有して運行いたしております。ただ併し遺憾ながらまだ操縦士が
日本人に
なつておりません、現在アメリカ人による運航をいたしておるのは甚だ残念に思
つております。
順序としまして、
国際航空の状況を御
説明申上げます。只今
日本に乗り入れております
外国の航空会社はここに書いてございますように十一社ございます。アメリカが二社、イギリスが一社、カナダ、豪州、フィリピン、タィ、中国、これは台湾中国でございます。オランダ、エール・フランス、それにノールウエー、スエーデン、デンマークの共営いたしておりますSASの
合計十一社が現在
日本に乗り入れております。
国際航空は御承知のように今日非常に発展しておりまして外貨の節約、或いは
国際交通の
促進の面から、すでに実用
機関に
なつておりますので、
日本といたしましてもできるだけ速かにこれを開始したいと思いまして本
国会にも
国際航空を
実施するための航空会社を一社設立する、それに対しまして
政府が千億の
出資をする、現在の
日本航空会社はこれに対して営業の全部を
出資をするという形の法律を提案いたしております。後ほど御
審議を頂くことになると思いますが、よろしくお願いいたしたいと存ずる次第であります。なお、その
国際航空をいたしますにつきましても、或いは現在の日航のルートを
実施いたしますについても相当の航空機が必要なんでございまして、概算いたしまして今年度だけでも航空機の
資金として二十億に達する金額が必要なのであります。これらの
資金獲得ためにも航空機を抵当に入れる動産抵当の方法が非常に要望されておりまして、現在の売渡し、譲渡の担保形式では非常に不備でありまして是非航空機を動産であるけれども抵当に入れる途を開いて欲しいという要望があ
つたのでありまして、航空機抵当
法案を同じくこの
国会に提案いたしております。この点につきましても同じく御
審議を頂きたいと存ずる次第であります。
次に国内航空の
事業概略でございます。先ほど申上げましたように日航は現在自分の所有する飛行機、これはDC四型であります、六機持ちまして、現在御承知のように福岡、東京、札幌間というものを毎日二回往復いたしております。これの最近の実績は、お手許にございます
資料にも書いてございますが、大体六〇%乃至六五%の
旅客利用率を見ております。
国際的に申しまして六一%を超えた程度の利用率があれば運送
事業も大体ペイする標準に
なつております。日航といたしましても、過去において創業以来現在まで相当の、一億を超える赤字を出しております。現在ではこの状況で進めば大体国内線としては黒字を出し得るという状況でございます。なお、営業
関係につきましてやや詳しく書いてございますので御覧頂けばわかると思います。
次に、日航以外の会社のいわゆる
航空事業の免許状況でございますが、これは別表、お手許にございますが、別表にも載せております
通り定期航空会社として現在日航だけ、そのほかに不定期と申しておりますが、これは
旅客等を積みまして、いわゆる遊覧飛行その他エア・タクシーのごときものを呼んでおります。これは現在ここにございますように四社免許をいたしております。
それからその次の紙にございます航空機使用
事業と申しますのは、下の欄の
事業内容に書いてございますように非常に多くの、いわゆる産業航空と申しております空中測量、写真撮影、宣伝その他の
事業をいたすものでございます。定期、不定期以外の航空機を使用して行います
事業は一切これに全部入
つております。これは現在十六社免許に
なつております。民間航空の現状と申しますプリントは、先月のものでございますので十五社と書いてございますが、現在は十六社に
なつております。
次に飛行場の現状を若干申上げたいと存じます。御承知のように
戦争中
日本は相当数の飛行場を作
つておりました。現在いわゆる飛行場と通常称せられるものが約九十ほどございます。そのうちに五十を超える飛行場が現在アメリカの空軍その他で使
つてございます。勿論
日本でも定期航空、或いは先ほど申上げました産業航空、或いは新聞社の自家用の飛行機等がそれらのうち相当の
部分を共用いたしております。それらの細かい個所別のことにつきましては省略いたします。
なお現在の数の飛行場でも将来ローカル線等を開始いたしますためには、
滑走路の状況、或いは航空通信その他の保安
施設につきまして若干欠けるところがございまして、それらにつきましては、なお
予算要求等をいたして飛行場の
整備をいたさなければなりません。そういうものが若干ございます。それらを
整備いたしまして、成るべく早く現在の日航のや
つております以外のローカル線も開始いたしたいと私どもは考えておるのでございます。
次に航空保安
施設でございますが、これは御承知でもございましようが、航空燈台或いは航空無線、ラジオ・ビーコンとい
つたようなものが相当数使われております。なお現在東京で御覧になります高い建物、或いはアンテナ等にあります赤い電気、あの明滅いたしております赤い電気も、航空障害燈と申しております。これも保安
施設の一種でございます。これらのものはここに書いてございますように、ラジオ・ビーコンが現在二十二ヵ所、航空燈台は大体東京以西でございますが、二十九カ所ございまして、只今航空局の
職員の手によりまして
運営いたしております。なお、そのうちでアメリカ空軍のみが使用いたすものがございます。先方の要請で作りましてアメリカ空軍の専用いたしておりますものは航空局の
職員が
運営いたしております。防衛分担金から出しまする先方の
資金を
日本の
予算に入れまして、それによ
つて歳入を立てまして
運営いたしている次第でございます。
次に、航空通信でございますが、そのうち特に羽田にございます
国際航空通信というものが、
ちよつと特別のものでございます。御承知の
通り、
国際民間機が田本に入
つて参りますのに、羽田の
一つ前の飛行場と羽田との間の基地連絡、或いはその飛んで参ります飛行機との無線連絡というものが航空保安上絶対に必要でございますが、これは
戦争中にアメリカの
施設ができてお
つたのでございます。こういうものは、
日本に
外国法人の
施設を許すことができないという
建前によりまして、只今
日本で買収いたしまして、航空局の手で
運営いたしております。なお、このほか航空通信といたしましては、御承知のように札幌或いは三沢、東京、福岡、名古屋、大阪とい
つたような民間定期航空をいたしております所には、全部無線の航空通信
施設が備えてございまして定期航空の安全を確保するために日夜業務に従事しております。
次に、航空
交通管制の状況でございますが、これは多少御
説明を要する点があると思うのでございますが、大体只今の航空はすべて計器飛行によるのが原則でございまして、夜間でも或いは非常に曇
つておりますときでも定期航空は出発しなければならんということになります。そういう場合に必ず通らなければならない航空路というものを指定してございます。ここにその地図を持
つて参りましたが、この幅をと
つて線を引いてございますのが航空路でございます。相当な幅、十マイルでございます。この幅だけに航空を限定いたしまして、而もその交叉点或いは屈曲いたします要所々々にすべてラジオ・ビーコンその他の
施設をつけておりまして、この航空路を飛べば大体飛行機は現在安全に飛べるという
建前に
なつております。但し、今御覧になりましたように、
一定の幅をと
つております。現在
日本の空に相当の軍用機と民間機が無数に飛んでおります。それらにこの航空路を秩序立
つて安全に飛ばすためには、やはり空におきましても道路にありますような
交通統制というものが必要でございます。例えば上り便は必ず千フィート、二千フィートという偶数の高さを飛び、下り便は千五百フィート、二千五百フィートという奇数の高さを飛ばなければならない。スピードについても、雲の中で追越して追突するようなことは避けなければならない。こういうような
関係がございますので、すべて
日本の空間を或る範囲に分割いたしまして、その範囲内の航空機の
情勢は、地上のレーダー、或いは無線によりまして全部一ヵ所でコントロールいたしております。なお飛行場等につきましては、非常に頻繁に発着がございますので、これにつきましても、待機中の航空機の動静、或いは発着の順位その他につきまして、飛行場の係官が管制いたしております。それらの事務を航空
交通管制と称しております。現在は、その管制業務によりまして、この
日本の空間全部がコントロールされているわけでざいます。それが只今、
戦争以後、米軍の軍用機が飛んで参りましてアメリカの管制に上
つて航空
交通管制が行われているわけでございます。日米間の協定によりまして、成るべく早く
日本の空は
日本人の管制官で
交通管制を行うという
建前にするということになりまして、只今この
交通管制官の要員を訓練中でございまして、早ければ来年くらいには
日本人の手によ
つて交通管制が行われるという見込を持
つて只今進めております。今年度
予算にもこれが訓練要員の要求を提出いたしてございます。現在のごとくアメリカ人によりまして
交通管制をいたしている状況では、緊急の場合にもパイロットは英語を話せなければ非常に危険であるとい
つたような不便がございますので、速かに
日本人による
交通管制に移したいと念願いたしている次第でございます。
次に、航空機のパイロット、その他乗組員の現状でございます。現在は、定期運送用の操縦士が三十二名、上級
事業用操縦士が一名、
事業用及び自家用操縦士が百五十五名、航空士、通信士等の資格をと
つた者が百七十八名という現状に
なつております。すべてこれは航空法によりまして試験を通
つた者でなければこの業務に従事できないという規定に
なつております。
次に、登録航空機の現状でございます。現在はここに書いてございますように、飛行機で単発機が四十四機、双発機が八機、四発機が六機、回転翼航空機とございますのはヘリコプターでございます。これが十機、それからグライダーが五十四機、これだけのものが登録した飛行機でございまして、そのうち、次に書いてある飛行機九機、ヘリコプターが二機、グライダー十七機、計二十八機はまだ耐空証明を受けておりません。これは
実施中の航空機でございます。
次に、
国際航空
関係でございますが、これは御承知の
通り、
国際民間航空条約というものがございまして、各国とも
相互に乗入れをする場合には、航空協定を締結して
相互に
許可を得て乗入れるということに
なつてございまして、只今の航空協定の状況を申上げますと、アメリカとイギリスはすでに航空協定を締結いたしまして、
国会の御承認を得て現在
実施いたしております。それからスエーデン、デンマーク、ノルウエー、オランダ、タイ、この五カ国は、協定の案文は、
相互に同意をいたしまして調印いたしましたが、本
国会に御承認を得べく提出準備中でございます。なおそのほかにもフランス或いはカナダ、台湾、フィリピン、南米というような、
日本がこれから乗入れいたしたいと希望している国々とは、それぞれ今後航空双務協定を結いたさなければならんということに
なつているわけでございます。
大体以上で、非常に概略でございますが、
我が国の民間航空の現状を御
説明申上げました。なお
資料には、そのあとに世界の航空事情というのが書いてございます。大体各国とも特に
国際航空には
政府が百%
出資、或いは相当の補助金を以ちましてこれをバツク・アップしているという状況が書いてございます。これは御参考にいたして頂ければ結構と存じます。非常に概略でございますが
説明を終ります。