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山本(勝)
委員 私はただいまの問題で、やはり国民を代表しておる国
会議員として、
公社の総裁とそれから労組とに申し上げておきたいと思う。
〔
委員長退席、
山花委員長代理着席〕
それは、妥結してまことにおめでたいということは私も同感でございます。しかしながら、
専売公社というものは、ほかの個人企業と違
つて、いわば国家の財産ともいうべきもので、もともと申しますと、国民の血税をも
つてでき上
つたとい
つても言い過ぎではない。従
つて、ほかの私企業のごとくに、税金を納めるとか、あの厖大な設備に対して金利を負担しておるというようなことはないというわけだと思いますが、そういう特別に恵まれた一つの企業といえば企業であります。従
つて、今後経営者と
労働者との間にもんちやくを起さぬようにという他の同僚
委員からの言葉がありましたが、もちろんそのことも私は希望いたしますけれども、しかし、それだけで経営者と
労働者の間が円満に今後はかど
つて行くというだけでは、全国民を代表する国
会議員としてはとうてい満足できないのであります。国鉄も同様でありますが、
専売公社という特殊の恵まれた企業であるということを
考え、常に国家の財産ともいうべきものだということを念頭に置かれますならば、ただ経営者と
労働者だけが幸福に暮すということで、それでうまく
行つておるというふうに
考えてもらいたくないのであります。今日国鉄問題も、
決算委員会でしばしば問題になりましたが、だんだん追究して行きますと、結局国鉄の経営者が、国鉄内部のことだけをうまくや
つて行けば、それで大成功だという
考えで、国鉄の従業員、その家族、そういう者を幸福にして行くことができれば、それで国鉄の経営者としては十分に成功したものというふうに
考えて、それが国家の財産である、全国民の血ででき上
つたものだということを忘れたというか、軽く見たところに、ああいう大きな問題が起
つた根源があるように思うのであります。ですから、私はこの機会に、この問題が妥結したことを喜ぶと同時に、
専売公社内部をうまくやる、成績をあげるということ以上に、常に国家の財産であるということを念頭に置いて、
労働者の
諸君も、また総裁においてもや
つていただきたい、これが私のお願いであります。
非常にうまく
解決できました、これが、ただいまこちらで問題にな
つております炭鉱問題におきましても同様に
解決できれば、まことにけつこうでありますけれども、炭鉱のごときは、すでに終戦直後において昭和二十二年にできたあの復興金融金庫から借りた金は、ドツジがや
つて参りましてから、昭和二十四年の春以来は貸し付けていない。わずか一年半の間に炭鉱が復興のために借りた復興金融金庫からの借金が今日なお三百何十億というものが残
つておるのであります。そういう三百何十億円の炭鉱
関係の国家資金が、もし規定
通り引揚げられたら、おそらく全国の炭鉱は立ちどころにつぶれてしまうであろうと思う。そういうふうにして戦争の間に荒廃したところの産業を
——炭鉱だけではございません、ほかの事業にいたしましても、とにかく急場にほ
つておくわけに行きませんものですから、国家が厖大な資金をつぎ込んで復興した。その厖大なる資金をつぎ込んだところにインフレーシヨンが起
つた。そのインフレーシヨンの弊害は、全国民がこれを負担したのであります。この全国民がその弊害を負担したところの根本にな
つておる国家が、どんどん金を
出して硫安をつくり石炭をつくるということをもしや
つておらなか
つたら、おそらく今日の硫安会社も、今日の炭鉱業者もないと私は思
つておるのであります。要するに、私の
考えでは、先ほど来いろいろと理論闘争も行われましたけれども、こまかな重要な問題だとか、あるいは外国炭の問題だとか、あるいは炭鉱業者がやり方がまずいとか、あるいは労組の方の
要求がどうだとかいうふうなことも、もちろんこまかく言えばあるでありましようけれども、そういう問題よりも、もつと大きく戦争で荒廃したものを、あの大きなインフレーシヨンを起すだけの厖大なる国家資本でどうにかこうにか無理無体にここまで復興して来たというその無理が、今日あらゆる問題にな
つて現われて来ておる。ですから資本家のやり方にも、
労働者諸君の行き方にも、いろいろ
考えるべきところはありましようけれども、それよりも何よりも、もつと根本は、本来ならばつぶれてしま
つておるものを、無理にここまでささえて来たというか、仕上げて来たところにその無理が出て来ておるんだと私は思うのであります。そういうわけで、
専売公社だの国鉄だのというふうな、金利も負担せず、また税金も納めないというふうなところは別でありますし、また少し値上げさえすれば、もうそれで
解決して行くような国家の独占事業は別でありますけれども、そうでなくて、国内におきましても、また外国との猛烈な競争をして行かなければならぬような日本の産業は、復興したの独立したのと申しますけれども、一皮むいて中を見ますと、どの事業も金利の負担にもまじめには耐えられない。資本の食いつぶしをや
つて今日の生活
程度を維持しておるのだと私は思う。先ほど吉武
委員から、まことに傾聴すべき
意見がありましたけれども、ただ一言吉武
委員が、消費生活はようやく戦前のレベルに復帰したという言葉がついでに申され、また労組
関係の方からも、国民の消費生活というか、生活
程度を向上させることが大切だというふうなことが言われましたが、私の
考えはまるで違う。私は今日の日本の消費生活は
一般に高過ぎると思う。戦前の水準に達したというのは、個人のさいふから
出した生活費だけを
計算するから、九六%まで復活したということを審議庁が言
つておるのであ
つて、そうではなくて、
国会の資金あるいは会社の金、そういうもので飲んだり食
つたりする消費生活を加えますと、個人が自分のさいふから
出したものだけが九六%復活したのであ
つて、その他の公の金や会社の金で飲んだり食
つたり旅行したりというものを入れますと、私は戦前よりもはるかに高くな
つておると思う。ただ例外があります。例外はありますけれども、結局今日の日本の産業を根本的に
解決をするためには、お互いに争
つてお
つたところで
解決しない。それよりも、勝
つた国ですらも、もつと貧しい生活をしておるのでありますから、われわれはただアメリカの援助とかあるいは特需とか、あるいは資本の食いつぶしとかいうふうなことで、消費生活の水準を維持して行くの、あるいはこれからもつと向上さすのとい
つておるようなことは、これはとうていできることではないので、ただ苦しみをみんな平等にするということが大切であります。平等とい
つても、機械的な平等ではありませんけれども、惱みをともにするということを、吉田総理大臣以下国
会議員も官吏も各種の産業の者も、資本家も、
労働者も、ともに抱き合
つて泣いて行くという気持は必要でありますけれども、要するに皆がともにもつと生活を下げて、窮乏に耐えて、そうして手を引き合
つて行くという立場をとらぬ限りは、やれ資本家がいかぬの、
労働者がいかぬのと言
つてお
つても、私は、とうてい日本の産業は持つものではないと思う。ですから、もちろんこまかな点の改むべき点もありますけれども、合理化がどうの、計画がどうのなどと
考えても、われわれの力では、そういう合理的な方法などで
解決するのには、あまりに問題が大き過ぎる、私はかように
考える。結局天佑神助を祈りながら、お互いに手を握り合
つて行くという、そういう神の力を借りなければ突破できないような事態だと私は思う。アメリカのような国ですらも、アイゼンハウワーが、全能の神の援助なしではアメリカの当面している問題は
解決できぬと言
つておる。いわんや、敗戦国の日本が、今日まではとにもかくにもアメリカの援助だの、あるいはその他いろいろなことで、あるいは資本の食いつぶしでや
つて来ましたけれども、今後はとうていこれではや
つては行けない。総合開発などと言
つておるが、片つぱしから国土が荒廃にまかされておる。どんどん山は流れ、町が埋ま
つて行くというように、一方で国土が荒廃にまかされておりながら、他の一方で国土総合開発などという偉そうなことを言
つてみたり、あるいは金利の負担もできないような海運業に金の面の援助をしておきながら、海運の振興などと言
つておるが、振興どころの騒ぎではない。利子の負担をしてやらなければつぶれてしまう。炭鉱もこれは同様だと思
つておるのでありますから、私は、少しほかの方と
考えは違うかもしれぬが、こまかいところで対立することではとうてい
解決できない。全部が苦しみをともにするという意味において、これは
解決して行かなければならぬ。およそ職業を失う、仕事を失うということほど、人生にと
つて悲惨なことはありませんから、従
つて今職を失うという人がいかに真剣に闘おうとするか、その気持はよくわかります。よくわかりますから、この闘う気持は、多少その中に不純なものや不合理なものがありましても、
労働省にいたしましても、政府にいたしましても、職を失う者の気持というものは十分頭に置いて
解決に当
つてもらいたいと思うのであります。しかし問題は、結局先ほど申し上げましたように、そういうこまかなことでは
解決できない事態だということを、私は申し上げて、ひ
とつ参考にこれをお
考え願いたいと思う。これは
質問ではありません。
専売公社の妥結を喜ぶという声ばかり起りましたから、ただ喜んでおるだけでは困るということのついでに、ほかの産業は
専売公社のようには恵まれておりませんよということを
専売公社の方もよくのみ込んでお帰り願いたいということを一言申し上げます。