運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-09-02 第16回国会 衆議院 労働委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年九月二日(水曜日)     午後一時四十七分開議  出席委員    委員長 赤松 勇君    理事 倉石 忠雄君 理事 山花 秀雄君    理事 矢尾喜三郎君       吉武 惠市君    藤田 義光君       黒澤 幸一君    多賀谷真稔君       稲富 稜人君    井堀 繁雄君       長  正路君    山本 勝市君       中原 健次君  委員外出席者         通商産業事務官         (石炭局長)  佐久  洋君         労働政務次官  安井  謙君         労働事務官         (労政局長)  中西  實君         日本専売公社総         裁       入間野武雄君         参  考  人         (公共企業体等         仲裁委員会委員         長)      今井 一男君         参  考  人         (全専売労働組         合中央執行委員         長)      平林  剛君         参  考  人         (全専売労働組         合中央執行委         員)      遠藤 留藏君         参  考  人         (日本炭鉱労働         組合中央執行委         員)      片山 信雄君         参  考  人         (三井鉱山労働         組合連合会委員         長)      畠山義之助君         専  門  員 濱口金一郎君     ————————————— 八月十日  委員三木武夫辞任につき、その補欠として高  橋禎一君が議長指名委員に選任された。 九月二日  委員川崎秀二辞任につき、その補欠として藤  田義光君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中助松君死去につき、山本勝市君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 八月十日  公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律  案(山花秀雄君外六名提出衆法第二号)  地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律  案(山花秀雄君外六名提出衆法第三号)  失業対策労使関係及び労働基準に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  日本専売公社仲裁裁定実施に関する件  石炭鉱業の争議問題に関する件     —————————————
  2. 赤松勇

    赤松委員長 これより会議を開きます。  まず日本専売公社仲裁裁定実施について調査を進めます。  この際お諮りいたしますが、本件につきまして、今井一男君、平林剛君、遠藤留藏君の三名を、参考人といたしまして意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なしと認めさよう決定いたします。  遠藤参考人発言を許します。
  4. 遠藤留藏

    遠藤参考人 ただいま委員長より発言が許されましたので、専売仲裁裁定に伴います紛争の経過を簡単に申し上げてみたいと考えております。  昨年の賃金闘争におきまして、仲裁裁定結論といたしまして賃金は一万三千百円という金額が提示されまして、その仲裁裁定の第六項に新たに業績賞与という項が挿入されたわけであります。これは昨年の十一月二十七日に提示された仲裁裁定でございますから、本来ならば当然これは昨年度中に全部解決すべきものだ、こういうふうに労働慣行から私たちは判断しておるのでありますが、たまたま先ほど申し上げました仲裁裁定第九号の主文第六項の業績賞与の件につきましては、その理由書を見ますと、専売公社の二十七年度の決算の結果、予定以上の利益金があがつた場合においては、その利益金の四分の一程度として最高限度額を一箇月とするというふうに書いてありますので、当然これは仲裁委員会から私たちに示されたものだというふうに私たちは判断しておつたわけでございます。ところがこれに対しまして、二十七年度の決算の結果として、七月の三十一日に三十二億という予定以上の益金があがつておりますので、これはどういうふうに計算いたしましても、最低金額一人平均一箇月分程度金額支給しなければならないような金額になつて来るのでございます。この点につきましては、裁定書に書いてありますので、公社側といたしましても、一箇月分程度支給したい。但し、前回の第十六国会決定されました専売公社予算総則の中に、業績賞与支給する場合におきましては、大蔵大臣承認を得て支出をする、こういうふうにありますので、公社といたしましては大蔵省折衝して、最低一箇月分程度支給したい、こういうふうに再三申しておりましたし、私たちも当然仲裁裁定理由書の四分の一あるいは一箇月限度というものは、「例えば」という条文を使つておりますので、これは労使双方においてまとまるならば、三分の一であろうとも、あるいは一箇月分を越えてもあえてさしつかえない、当然かように考えましたので、組合はこの三十二億について種々検討を行いました結果、二万八千百二十八円という、一人当り平均月額の約二箇月分の業績賞与支給するように公社団体交渉を行つたわけでございます。ところが、決算が明示され、公社側大蔵省種々折衝行つたのでございます。またその期間中、第十六国会の末におきましても、本労働委員会においていろいろと質疑、あるいはこの問題を取上げて早期解決努力していただいたのでございますが、その際大蔵省当局は、現在その三十二億のうち職員努力幾らであるか、そういうふうなものを種々検討しておるから、まだ明示する段階ではない、こういうふうに再三申しまして、労働委員会においては最終結論を明示しなかつたのでございますが、最近に至りまして、正式に組合に、公社側大蔵大臣承認を得た金額として〇・五という、私たちにはきわめて納得の行かない金額が提示されたわけでございます。それで組合はただちに団体交渉を連日開催いたしまして、昨日から団体交渉最終的に開催いたしました結果、最後的には一人当り月額平均の〇・九という数字が提示されたのでございますが、実際上におきましては、これは支給の方法によりましては、若干欠勤者とかあるいは休職者には支給しないとか、種々そういうような財源等を勘案いたしまして、最後的に検討してみますと、〇・九二という数字公社側は出るというふうに言つておりますが——、こういうふうな数字の点につきましては、いまだ私たち最終的確認行つておりませんが、大体〇・九近くの数字が提示されたということでございます。  ところが、先ほど申し上げましたように、この業績賞与というものはただ単に金額だけで解決すゑものではなく、その三十二億の予定以上の益金がどういうふうな形において算出が行われ、どういうふうな計算行つてこの〇・九という数字なつたかというふうな考え方が明示されて、初めて金額というものが算出されるわけでございますが、現在までの団体交渉におきましては、大蔵省から承認を得た額に伴います三十二億をどうやつて一人当り月額の〇・九という数字算出したかにつきましては、公社側は全然明示しておらないような状況でございます。  こういうふうな状態でありますために、私たちといたしましては、一日も早くこの紛争について仲裁裁定の趣旨に従つて解決を行いたい、かように考えておる次第でございます。私が最初申し上げましたように、本問題は二十七年度の紛争として当然解決すべきものでありましたが、ただ単に債務不確定といいますか、こういうふうな金額があつたために、今日までこの紛争が継続されておるというふうな事項でありますので、なるべく早くこの紛争解決努力したいと考えております。先ほど申し上げましたような、大蔵省及び公社側のこの仲裁裁定に対します考え方あるいはその他の種々の条件におきまして、いまだこの紛争解決でき得ないために、組合側は現在全面的な超過勤務拒否行つております。この全面的な超過勤務拒否を行いますと、タバコ産業は、御承知のように、蒸気というものがないと、作業ができないようになつておりますので、朝通常出勤をいたしまして、タバコ製造しようと考えておりますと、朝の一時間半、夕方の一時間というものは、まつたタバコ製造ができないようになりますので、実働八時間労働を行いましても、実際上においてはそれから二時間半というものは、タバコ製造することができないような状態になつておる。こういうふうな経緯になつておりますので、大蔵省あるいは公社等におきましても、こういうふうな点を十分考え、またその三十二億というふうなものについて、職員努力したのでございますから——本年度もまた補正予算におきまして、再び専売公社益金を増額しようと考えておりますが、そういうふうな形に行うとするならば、当然この三十二億というものは、どういうような考え方で配分するかという、その支給の具体的な内容を明示いたしまして、職員にそれだけのものをこういうふうな考え方支給するからこれだけの努力を願いたい、当然そういうふうな形において二十八年度の業務を遂行すべきものである、こういうふうに私たち考えておりますが、そういうふうな点についても一向に明示されておらない。  こういうふうな段階にありますので、この紛争につきまして、できるだけ早く本委員会におきましても御努力を願いたいと考えまして、仲裁裁定が提示されましてから今日まで私たち団体交渉を重ねて参りまして、何とか〇・九二という金額が出された経緯だけを簡単に申し上げまして、私の公述を終りたいと思います。
  5. 赤松勇

    赤松委員長 参考人に対する御質疑はございませんか。
  6. 山花秀雄

    山花委員 ただいま参考人遠藤君から詳細な説明がございましたが、関連する問題がたくさんございますので、先ほど委員長説明によりますと、専売公社の総裁並びに仲裁委員会今井委員長おいでになるという話でございましたが、まだおいでになつていないのでしようか。できれば、それらの説明を聞いて、関連しながら質問をしたいと思うのであります。
  7. 赤松勇

    赤松委員長 ただいま請求をいたしまして、大蔵省及び専売公社側はすぐ出席するからという回答がございました。その間もし組合の方の参考人に御質問があれば、御質問をしながら、間もなく出席するのを待つ、さよう運営をしたいと思います。
  8. 山花秀雄

    山花委員 きようの参考人としては遠藤君と専売労組委員長平林君がおいでになると聞いておるのですが、平林君はやはりまだおいでになつていないのですか。
  9. 赤松勇

    赤松委員長 遠藤君どうですか、平林君は。
  10. 遠藤留藏

    遠藤参考人 平林委員長は、昨夜から団体交渉をまだ継続しておりまして、こちらの方に私だけが先に参りまして、委員会が開会になりましたら、ただちにこちらの方に来るように電話をもつて連絡しておりますので、平林委員長は、あとわずかの時間でこちらの方に参ると思います。
  11. 山花秀雄

    山花委員 先ほど私がお問いいたしましたのは、やはりこの問題は、関係者各位おいでになつて、それぞれの説明を聞いて質問をした方が、問題の所在も明らかになり、またわれわれの意見も、その明らかな問題の所在に立脚して開陳をして行きたい、こういう意味でお尋ねしたのでございますが、いまだお見えになつておりませんので、結論といたしましては、へんぱな、またびつこな答弁がなされるだろうと思いますが、一応時間も考慮いたしまして、遠藤君がいろいろ説明されたことについて若干質問をしたいと思うのであります。  ただいま専売労組といたしましては、超過勤務拒否して、この問題の解決の衝に当つておる、超過勤務拒否することによつて、前後の時間が約二時間半ほど作業影響する、こういう説明でございました。そこで超過勤務拒否することによつてタバコ製造に対して、どのくらいの影響があるかということを、組合側でお認めになつておるかどうかという点、もしおわかりでございましたら御説明願いたいと思います。
  12. 遠藤留藏

    遠藤参考人 私の方で本年度の予算と総体的な勤務時間、それから製造数量、そういうものから総体的に計算をしてみますと、一時間当り平均生産数量は、タバコ本数にいたしますと三千八百万本という数字になるわけであります。こういうような形になりますので、金額におきましても、これは私の方で概算したものがありますが、各品種によつてこの金額が異なりますので、こういうような公の場所で発表することは避けたいと考えます。本数計算ができますが、実際上の各品種別がどういうふうな形で現状販売されておるか、こういうふうな形になりますと、金額の面につきましては、大まかな計算はできますが、こういうふうな公の場所では避けていただきたい、かように考えております。
  13. 山花秀雄

    山花委員 ただいまの説明によりますと、金額は避けたいが、大体一時間当り三千八百万本の製造本数影響を及ぼす、こういう説明でございました。聞くところによりますと、単に超勤拒否するというのでなくて、休暇をとる態度を専売労組でおきめになつたということをを聞いておるのでありますが、三分の一ほど休暇をとる——これは私の聞き誤りかどうかわかりませんが、もしそういう戦術をとられる場合には、なお一層製造能力影響すると思いますが、現にそういう戦術をとつておられるのか。もしとられた場合には製造本数にどのくらい影響するかという点が組合でおわかりになつておられましたならば、御説明を願いたいと思います。
  14. 遠藤留藏

    遠藤参考人 私たちの方は、先ほど申しました全面的な超過勤務拒否と、それから本月の一日から、昨日と本日と明日と三日間にわたりまして三万八千人の組合員全員休暇をとる、こういうふうになつております。でありますから、一日平均三割三分の職員休暇をとつておるような状態になつております。そのほかに病欠それから休職者こういうような人々がありますので、一月平均約四割近くなります。タバコ製造関係はほとんど流れ作業でありますので、一定工場におきまして半数の人が休みますと、次の工場が、たとえば人員が倍ありましても、その倍の人員の半分の人々がほとんど休業しなければならない。こういうふうな状態で、一定分業別になつておりますけれども、それが全部流れ作業になつております関係上、三分の一ずつの休暇をこの三日間続行いたしますと、現実に一日平均タバコ製造数量一般の平日の製造タバコ数量の約半数になつて来ておる、こういうふうな形において現在報告されておるような状態でございます。  それからこの三割休暇全面超勤拒否行つておりますので、先ほど申しましたように、タバコ製造数量通常の日の約半数に落ちておる、こういう現状でございます。但し、こういうタバコ製造数量が、ただちに益金影響するかどうかという問題でございますが、これも私たち計算によりますと、約半月程度在庫品がございます。それから小売店には約一週間程度在庫品がありますので、ただちに影響するようなことはありませんが、こういうふうな紛争が長引くことによりまして、大体在庫品が全部なくなりつつありますので、おそらくあと二週間後におきましては、店先にタバコが消えるような状態が来るのではないか、さような状態にあります。そういう点は、私たちは国民のために、公共企業体職員として好ましくないと考えておりますが、公共企業体労働関係法に基く賃金附帯事項として出されました業績賞与をいまだに解決しておらない。大蔵省及び公社がそういうふうな処置行つておるのでありまして、このことにつきましてはやむを得ない、そういう考え方でこういう処置行つておるわけでございます。
  15. 赤松勇

    赤松委員長 この際安井政務次官にお尋ねいたしますが、ただいまあと二週間でタバコがなくなるかもわからない、こういうお話もございます。ことに益金が一千四百億近く見込まれているので、国家財政の上にも非常に重大な関係があると思います。サービス省として労働省があるのですけれども、これは大蔵省専売公社の問題ではなくて、やはり政府全体の大きな問題であると思うのです。これにつきまして、むろん労働省といたしましては、大蔵省に対しましていろいろな折衡もあり、その間の政治的御努力もあろうかと思いますので、この際これに関しまして労働省の御意見をひとつ述べていただきたいと思います。
  16. 安井謙

    安井説明員 ただいま委員長からお話がございましたが、この問題につきましては、労働省といたしましても非常に関心を持つておりまして、御存じの通り従来の法規でこの余剰金処分ができなかつたのを、できるように、この八月一日から施行令も出たような次第であります。ただ現実の問題といたしましては、財源専売公社大蔵省との間でその処分決定するような建前になつておりまして、今どの金額が適当であるという具体的なところまで、労働省としては立ち入つていないので、これはむしろ直接団体交渉なりその他の面で、早急に片づくようなことを希望いたしておる次第でございます。
  17. 山花秀雄

    山花委員 ただいま労働省側見解といたしまして、安井政務次官の方から御回答がございました。そこで労働省に一つお尋ねいたしたいことは、専売に働く労働者諸君は、公社法による公企労法労働組合法を施行されておることは御承知通りであります。公企労法によりますと、仲裁裁定委員会決定は、最終結論として双方これに従わなくてはならぬ、こういう規定があることは労働省もよく御承知通りであります。従来とかくその場合には、予算的措置というような問題で、仲裁裁定委員会決定双方従うということに難色を来していたことは、われわれもよく知つておるのでございます。こういう問題は、また法規の改正によつて改めて行きたいと思いますが、ただいま専売の問題は、異常なる益金が出て、しかもその益金は、仲裁裁定委員会の四分の一を上らずというような決定によりましても、なお支払う財政的余地が十分あることがうかがわれるのでございまして、こういうような場合には、専売労組要求しておりますことは、決して過当な要求をしていない、最低線の妥当な要求をしておる、こういう解釈をしておるのでございますが、労働省の立場からは、ただいま専売労組が懸命に団体交渉をしておりますところのこの要求額を過当とお考えになるか、それとも妥当とお考えになるか。これらの点につきましては、労働省側も一応の見解があるだろうと思いますので、この際はつきり伺わしていただければ、われわれは非常に後々の参考になると思いますので、ひとつ労働省見解を御披瀝願いたいと思います。
  18. 赤松勇

    赤松委員長 山花委員委員長として御了解を求めておきたいと思いますが、かねて出席の御要求のございました小坂労働大臣は、本日日米労務基本契約の問題につきまして、なおアメリカ軍側折衝中でございまして、そのために本日は出席できない、明日は必ず出席する。中西労政局長もその方面をただいまやつているわけでございますけれども、委員諸君の強い御要求もございますので、中西労政局長をただいま出席をさせるというので、労働省から出ました。労働大臣アメリカ軍との折衝のこともございますので、本日出席できないということだけは、ひとつ御了解願いたいと思います。
  19. 安井謙

    安井説明員 今幾ら金額が妥当であるか、労働省はどう思うかというお話でございますが、この点につきましては、ただいま労働省として、かくかくのものがよかろうという裁定のようなもの、あるいは見解をここでお述べいたしかねる事情にまだあるわけでございます。そこで、出ておりまする余剰金を、ひとつ専売公社あるいは大蔵省組合側との交渉によつて、自主的になるべく折合いを早期につけていただきたい、こう考える次第でございます。
  20. 山花秀雄

    山花委員 この種の問題に関しまして、往々にして労働省見解として披瀝されておりますことは、公企労法の例の裁定案双方従わなくてはならぬ、これは当然だ、こう労働省としては披瀝されておるのでございます。その場合、難関になりますことは、大蔵当局において、予算がない。この予算問題で、いつもひつかかつておるのでありますが、今度の場合には、職員諸君努力によりまして異常なる利益金を上げていて、予算がないというような理由のないこの現状において、公企労法解釈として従来労働省がとつておられましたように仲裁裁定を妥当とお認めになるか、また労働省としては、この仲裁裁定妥当性をお考えになつて大蔵当局に向つてサービス省としての役割をお果しになるかどうかということをお聞きしておるのでありまして、金額幾らが妥当かどうかというようなことは聞いていないのでありますから、ひとつその点誤解のないように聞いていただいて、御答弁を願いたいと思います。
  21. 安井謙

    安井説明員 ただいまのお話通りでございまして、これは財源はある問題です。そのある財源で、幾らが妥当であるかということが、今掛合いの問題になつておろうかと思いますが、第一段階としては、やはり仲裁裁定にまで持つて行つて、そこの段階できめていただく筋のものじやなかろうかと思つております。これはなるべくそういう筋で早急に片づくように、側面的な方面労働省としてもできる限り努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  22. 山花秀雄

    山花委員 ただいまの安井政務次官の御答弁によりますと、財源はある、そうして、仲裁委員会裁定の線は妥当であるから、その線で解決することが望ましいと労働省としては考える、こういうふうに承つたのでございますが、私のこの承りようが間違いないかどうか、ひとつ労働省当局の御見解をもう一度お聞かせを願いたいと思うのでございます。
  23. 安井謙

    安井説明員 大体そのように心得ております。
  24. 山花秀雄

    山花委員 そこで専売労組遠藤君にお尋ねをしたいと思うのでありますが、この問題解決のために、労働組合といたしましては、超勤拒否を行い、あるいは休暇をとる、こういう戦術目的完遂のために対抗されておる。そうしてそのことによつて製造能力に相当大きな影響を及ぼす。大体説明によりますと、休暇をとると、その三日間の業績は平素の半分ぐらいしか能率が上らない、こういう事情と承つたのでございます。そこで、専売労組といたしましては、とにかく、異常なる努力の結果思いがけないこの余剰金額出したのであるから、仲裁裁定委員会は四分の一というような限度を付しておるけれども、三分の一をもらいたい。これは機械設備三分の一、資本収益三分の一、労務提供三分の一という、大体労働常識的慣行によつて三分の一をもらいたい、こういう要求公社の方にお出しになつておると聞いておるのでございますが、三分の一ということになりますと、今問題になつている一箇月分よりははるかに上まわつた金額になると思うのでございますが、そういう要求をお出しになつて交渉の結果、一箇月というのがめどになつておるのか、それとも、その要求をあくまで闘い取るために組合としては努力されておるのかどうか、この点組合側の意向を、公社あるいは大蔵省その他に質問をいたす参考として、お聞きをしたいと思うのであります。
  25. 遠藤留藏

    遠藤参考人 組合といたしましては、先ほど公述の際申し上げましたように、三分の一という計算行つたのは、ただいた山花先生から言われた通りでございます。考え方といたしましては、一般民間産業業績賞与、そういうふうなものに関連をいたしまして、私たちといたしましては、三分の一といたしました。それで三十二億からこれを機械的に計算いたしますと、一人当り平均金額が二万八千百二十八円というような金額になつて来るわけでございます。そこで、仲裁委員会から示されました四分の一とし、最高限度額を一箇月分とすること、こういうことにつきましては、「例えば」という条項がありましたので、私たちは、組合組合なりのその算出の基礎におきまして要求したのでございますが、この紛争が長引くことはあまり芳ばしくないと考えますので、でき得ることならば、この仲裁委員会で示されたような線で妥結することもやむを得ないのではないか、かように考えまして現在交渉行つておるような次第でございます。しかし、それが仲裁委員会から示されたような金額、一箇月を限度とする金額より下まわつたような場合においては、絶対にこの協定には全組合員あげて反対をするような状態にありますために、とうていそういうふうな条件では協定することは不可能である。でありますから、最低限度額におきましては一箇月分は確保しなければ、本問題の紛争解決は困難であろう、こういうふうに考えておる次第でございます。  そこで、この点につきまして、なぜこういうふうに全組合員が最低限度額を一箇月分というふうなものと認識したかということでございます。組合は二箇月分というふうなものを掲げておりますから、最低幾らになるというようなことは全然申しておりませんが、公社側におきまして、一箇月分程度金額支給したい、当然支給すべきであるとして、団体交渉の席上あるいは公社の幹部が出張する際、あるいは前回の第十五国会におきましても小川総務部長が参りまして申し上げましたように、公社側自体が一箇月分程度はどうしても支給するのが妥当であるというふうになつておりますので、これは組合員自体におきましても、公社側主張を妥当と認めるのではないのでございますが、どんな最悪の事態におきましても、最低一箇月分の金額はどうしても確保したいというふうに全組合員が思つておりますので、先ほど申し上げましたように一箇月分を割るような金額でございましたならば協定でき得ませんが、種々の配分方法におきまして若干問題がありますが、そういうふうな点におきまして組合の主張がある程度通るようでありますと、一箇月程度金額でも私は妥結ができるのではないか、かように考えておる次第でございます。
  26. 山花秀雄

    山花委員 ただいま組合側遠藤君の御説明によりますと、組合としては余剰利益金の三分の一を一つの考え方として打出しておる。一般の各大衆諸君は、異例の余剰金出した、また従来努力した結果として、二箇月分を要求しておる。しかしながら今日の段階で問題を円満に収拾するために、一応の不満があつても、仲裁裁定委員会の線で妥結をしよう、こうたいへん幅広い譲歩をなさつたようなお話でございました。組合側説明によりますと、専売公社の側も、仲裁裁定委員会の線だけは妥当であるから努力したいということをしばしば言つておる。専売公社の方がおいでになれば、またその意向を私はあらためて聞こうと思いますが、ただいま労働省見解といたしましても、予算的には何ら支障がないのであるから、当然これは公労法の精神に基いて仲裁裁定委員会裁定の線で解決すべきが妥当であると考える、こういうように当事者、関係各省においては一箇月という線が出ておるのでございますが、ただひとり大蔵当局がこれに難色を示しておる。そして最初大蔵当局としては〇・七五箇月分を出すという意向を披瀝した。それが専売公社と労組の団体交渉によつて、〇・八五箇月分を大蔵当局が出す腹を示して来た、こういうふうに承つたのでございますが、それから団交が進められて、ただいまの段階では組合側遠藤君の説明によりますと、〇・九月分だけは出すようになつた。この団体交渉の結果〇・九十すことになつたことは、大蔵当局としての意向が専売公社の方に反映をして〇・九になつたのか。まだ大蔵省当局としては意向を示していないが、何らかの運営によつて專売公社としてそこまで出し得る見通しがついたので、労働組合の方に回答をなさつたのか。もし労働組合の方でおわかりになつておりましたならば、大蔵当局は今どのような考え専売公社を通じて労組側に知らしておるかということをお聞かせを願いたいと思います。
  27. 赤松勇

    赤松委員長 この際吉武委員に御了解を得ておきたいと思いますが、昨日御希望のございました改進党への申入れにつきましては、私よりしております。改進党でもこれを了とされまして、本日川崎秀二君にかわりまして藤田義光君が御出席になつておりますから、さよう御了承願います。なお、山花君、ただいま専売公社では団体交渉行つておりまして、総裁、副総裁は団交の席上に出ておるそうでございます。しかし皆さんからの要求もございまして、総裁または副総裁のいずれかが、ただちに出席するという回答がございました。
  28. 遠藤留藏

    遠藤参考人 〇・九の予算的な問題につきましての大蔵省の態度でございますが、私たち団体交渉において現在まで明らかにされておりました経過を若干説明いたしますと、当初は〇・五あるいは〇・六、それからその後におきまして〇・八五、〇・九、こういうふうに、団体交渉なり、あるいは超過勤務拒否、それから休暇戦術というふうなものを行うたびごとに、その金額が増加されて来ております。また団体交渉の席上に、公社側が明らかにしております金額でございますから、当然これは大蔵省の了解を得た金額であると私たちは判断しております。というのは、もう一つの条件といたしまして、この業績賞与は予備金から支出を行うことになつておりますし、その予備金から業績賞与に支出する場合においては大蔵大臣承認を得てと、こういうふうに予算総則にありますので、この〇・九は公社の内部操作とかそういうふうなものではなく、当然大蔵省承認を得た金額である、こういうふうに私たちは把握をしておる次第でございます。
  29. 山花秀雄

    山花委員 ただいまの説明によりますと、大体大蔵当局の〇・九箇月分を業績賞与として出すという意図が明らかになりました。労組側はあと〇・一を出してもらえるならば、この種の問題は円満に解決する見通しも、大体われわれは了承できるような段階であると思うのであります。  そこで、組合側に対する私の一応質問を終りました。あと仲裁委員会今井さんであるとか、あるいは大蔵当局専売公社のそれぞれ責任のある担当官に来ていただいて、質疑を重ねたいと思います。他の委員からもし質問がございましたならば、ひとつ他の委員にかわつていただきたいと思います。
  30. 赤松勇

    赤松委員長 安井政務次官、どうですか。財政上にも無理はない、それから出せない法律上の障害はもちろんない、こういうのですが、大蔵省側で三分の一出せない、あるいは四分の一出せない、こう言つておるその理由というものは何でございますか。先般の委員会におきましては、給与課長は、これは国鉄その他の給与の問題と関係があるというようなことを言つておりましたが、少くとも今山花委員が指摘したように、公労法第三十五条の精神というものは、そういうものではない。従いまして、能率を上げた結果そういう余剰金が出た、これを業績賞与として配分することは、すでに仲裁委員会において認めておるのでありますから、仲裁委員会結論として、当然充てるべきである、その限度も四分の一と示されておるというのです。これに対して大蔵当局が頑強にこれを拒否する根拠というものはどこにあるのですか。そういう点について労働省が、もし大蔵省との間に交渉していない、あるいは話合いをしていないということになりますと、私は政府部内の不統一あるいは労働省の怠慢であるというふうにも考えられるのでありますが、こういう点について、労働省見解はいかがでありますか。
  31. 安井謙

    安井説明員 今の幾らが妥当であるかという点になりますと、これは労働省が今云々する段階でなかろうと考えて、差控えておる次第でございます。原則といたしましては仲裁裁定の線を尊重することが好ましい、こういうふうに考えている次第でございます。さらに大蔵省当局が、これにつきまして異論を持つております根拠は、先ほどの委員長お話にありましたように、他の企業体との振合い、そういつた点も根拠になつておるのであろうというふうに心得ております。
  32. 赤松勇

    赤松委員長 中西氏が来るまで私から再度質問してみたいと思います。  公労法の三十五条は拘束力を持つておるということは、御案内の通りですね。その三十五条で拘束されないのは第十六条でございますね。これは予算上資金上不可能だという場合にのみ初めて問題になる。ところが、公社側の方においては、これは支払う能力があるということを言つておるのです。そうだとすれば、公労法の精神からいえば、また労働省の建前からいえば、大蔵省に対して、公社側が資金上当然出し得るものについては出してやるように政府部内で意見を統一されて、できるだけ労働者の権利なりあるいは福祉なりを守つて行くというのが労働省の建前であります。私は無責任だと思う。大蔵省との折衝は全然行われていない、単なる団交の問題だ、こういうふうな御回答は、これは大蔵省がタッチしていなければ、団交の問題として従業員対公社側の問題に帰着するでしようが、現実に政府の一機関であるところの大蔵省がタッチして、そうして仲裁委員会なりあるいは公社側が出せるというものを、出さないようにしているというこの事実については、目をおおうことができない。そうだとすれば、当然労働省大蔵省に、公労法の規定する精神にのつとつて至急問題を円満に解決するように督促するのが、私は労働省の責任でないかと思う。これについて、政務次官はどうお考えでありますかつ
  33. 安井謙

    安井説明員 労働省は怠慢ではないかというお話でございますが、何と申しましても、第一義的には団交で片づけていただく、そうしてさらに仲裁裁定の線でこれが片づくことが望ましいと考えておりまして、立ち入つたお話ができないのをたいへん残念に思います。ただこれは議論になるかもしれませんが、交渉額を剰余金のどこまで出したらいいというようなとりきめもない際でございますし、さらにこの決定大蔵大臣にまかせられておるというような事情でございますので、そういつた点をお含みいただきまして、労働省の態度を御了承願いたい。
  34. 赤松勇

    赤松委員長 ただ私の心配するのは、二週間でタバコが切れる。そうすると、公共の福祉に反します。それはど公共の福祉に対して関心を持つておられる労働省の態度を伺つたわけでございます。  中西説明員が出て来られましたが、御質問はございませんか。
  35. 山本勝市

    山本(勝)委員 ちよつと政務次官にお伺いいたしますが、大蔵省側は、今の三十五条の但書によつて予算上不可能だというようなお話ですが、ただ予算上不可能だということだけでなしに、不可能ないきさつというか、その理由説明してもらいたい。大蔵省側が予算ないし資金の関係で不可能だと言うのは、どういう理由で不可能なのか、労働省側でおわかりであつたら伺いたいと思います。おそらく労働省の方でも知つておられるだろうと思う。
  36. 安井謙

    安井説明員 これは予算上資金上不可能と申すより、おそらくはほかの団体その他との振合い上ここまでは困難である、こういう見解であろうかと思います。
  37. 山本勝市

    山本(勝)委員 それは間違いございませんか。委員長が今言われた通り、三十五条の但書の場合、要するに十六条によつてやる場合は、公共企業体予算上または資金上不可能な資金の支出については、仲裁裁定というものに拘束されないということだけが書かれておるのですが、大蔵省もがんばつている以上は、ただほかとのつり合い云云というのではなくして、やはり法律上の根拠なしにがんばつているのではない。ですから、金がないというわけではないでしようけれども、公共企業体のことでありますから、普通の私企業と違つて、利益なら利益の計算の仕方も、やり方いかんによつては違つて来るのではないかと思うのですが、何か十六条によつてがんばつておられると思う。そうでなしにただ他とのつり合いということでがんばつておるのだという労働省の観測は間違いございませんか。
  38. 安井謙

    安井説明員 具体的な公社財源の内容その他につきましては、直接責任者からお聞き取りをいただきたいと存じますが、剰余金が三十二億予定以上のものが出ている、その範囲での議論であろうと私は心得ておる次第であります。
  39. 山本勝市

    山本(勝)委員 大蔵省には、来られたら伺いますが、労働省としては、そういう問題が起つておる場合に、それぞれの当事者の主張は、はつきりと了解しておられるに相違ない。組合側の主張する根拠、それから公社側の主張及び根拠、それに対して大蔵省が故障があるというのならば、どういう理由で反対しているのかということも、労働省としては了解しておられるに違いないと思うので、労働省として了解しておられるところを承りたり。
  40. 中西實

    中西説明員 実はどういう理由大蔵省あたりが今の主張を出しておるのでありますか、詳細は聞いておらないのでございますが、法律関係から言いますと、十六条で予算上質金上可能なものというのは、この利益金を一部賞与として出すという場合には大蔵大臣の認可がいるわけであります。大蔵大臣がどの程度認可するかということは、大蔵大臣の裁量にまかされておるのでありまして、従つて大蔵大臣としましてこれ以上は出せないとして認可いたしませんければ、やはり十六条の予算上資金上不可能だということになるわけであります。そういう関係で、おそらく今政務次官が言われましたように、専売公社は、とにかく独占的にやつておりまして、益金が三十数億あがつておることも確かでございます。しかし、それかといつて、これをできるだけ組合員がとるということも、他との関係から見まして非常に不穏当になるのではないか。従つてどの程度まで仲裁委の趣旨を生かして出されるか、これはやはり大蔵大臣に権限は一応あるかつこうになつております。従つて大蔵大臣として今〇・五箇月分以上は困るということで、それ以上認可いたしませんければ、やはり十六条によりまして、資金上予算上不可能だということになるのであります。
  41. 赤松勇

    赤松委員長 ちよつと、今の御答弁の中で、組合がそういうことを要求することは不穏当だということがございましたが、それでよろしゆうございますか。
  42. 中西實

    中西説明員 利益金が上つただけ、全部を受取るというようなことになりますと……。
  43. 赤松勇

    赤松委員長 全部ということは要求していません。
  44. 中西實

    中西説明員 極端に言いますれば、そのうちどの程度要求するかという限度の問題だろうと思います。従つてその限度につきましては、やはり全体をにらんで財政上その他の関係から大蔵大臣が裁量する、こういう関係になろうかと思います。
  45. 山本勝市

    山本(勝)委員 もう一度お伺いしますが、今のは要するに大蔵大臣がこれだけときめることが、資金上あるいは予算上可能か不可能かということは、結局大蔵大臣がきめる。大蔵大臣がきめた根拠は、おそらくほかとのつり合いだろう。これは労働省の方で一つの推測ですか。
  46. 中西實

    中西説明員 そうです。
  47. 山本勝市

    山本(勝)委員 別に大蔵大臣あるいは大蔵省当局について聞かれたわけではない。  一応それでそちらの意見はわかりました。
  48. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 中西労政局長にお伺いしますが、今度の問題は、資金上予算上不可能な問題ですか、ちよつとお尋ねいたしたいと思います。
  49. 中西實

    中西説明員 先ほど言いましたように、大蔵大臣が認可いたしますれば可能になるし、認可いたしませんければ不可能になるという、従来からもこういつたケースにおいては、そういう解釈なのであります。
  50. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは予算の問題と関連はありますけれども、現在の予算は十二億という予備金が出ておる。ですから、大蔵大臣さえ認可すれば、予算上は可能な問題である。むしろこの問題は、協定ができていないというところに問題の根本がある。協定に至つていないのであります。ですから、予算上不可能であるかどうかじやなくて、協定ができていないというところに問題があるのであつて、むしろ内部的な問題である、私はこういうように判断をしておる。現在この協定そのものが成立しなくて、今協定ができようかという段階にあるわけです。協定の折衝をしておるのであります。でありますから、十六条のところまで行つていないのであります。しかるに、十六条を引用された意味はどういうわけですか。これは予備金が当然十二億あるわけです。
  51. 中西實

    中西説明員 おつしやる通りであります、どの程度団体交渉決定されるか、まだわかりません。もし決定されたとしましても、それが大蔵大臣の認可を得ませんければ、十六条の関係でその協定は効力を生じない、こういう関係になる。さらに、これが争いになりまして調停委員会に持ち込まれ、仲裁委に持ち込まれて仲裁裁定になる。その場合に、やはり三十五条の問題になつて来るわけであります。
  52. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうも政務次官並びに労政局長答弁があやふやで、あやまちがあるように感ぜられる。私の質問にお答えされたのは、それは正しいと私は思うのですが、初めの答弁とは、議事録を見ればわかるが、非常に食い違いがある。何か資金上不可能な支出の問題で今大蔵省折衝をしておるという感じを与えたわけです。そうでなくて、仲裁委は、なるほど仲裁はありました。しかし仲裁委は、「例えば」という例示的な文句を使つてあるので——これがはつきり一箇月でやれということになつておれば、これはまた問題が別個の問題となつて来るわけであります。ですから、一応例示しておるのに問題がある。そこで、それに基いて協議をして団体交渉をしておる、こういうケースであります。いやしくも労働省が、しかも政務次官がここへ来て答弁をするのに、事件がどういうことかということを十分把握せずして答弁しておる。こういう不見識のことでありますから、事態は解決しないと思います。もう少しよく把握してもらいたいと思います。
  53. 山花秀雄

    山花委員 ただいま山本委員の方からの質問に、労政局長と政務次官はそれぞれお答えになりました。このお答えが、まつたく違つた答えがされておるのであります。そこで、政務次官の意見労働省意見とするか、労政局長意見労働省意見とするかという判断に、われわれは迷うわけであります。その前に労働委員長の方からも、若干政務次官に質問いたしましたときに、政務次官がお答えになつたお答えと、山本委員質問に対するお答えと同じように私は聞いておるのであります。それは十六条の予算上、資金上には何らの不足もない、当然これは仲裁裁定委員会裁定を尊重すべきである。それを大蔵当局が出せないというのは、国鉄その他いろいろ公企労法関係のこの適用を受ける労働者諸君に対する給与に関連があつて大蔵当局は渋つておるのではないかと、こういう御答弁でございました。ただいま中西労政局長の御答弁は、大蔵大臣の意向によつて、その意向の示すところが予算上質金上これが不足を来たすというようなことで出せないような結果になるのではないか、こういう説明で、一方は予算上資金上何ら障害がないと言われるし、一方は予算上資金上障害を来たすような説明をされておる。そこでどちらの見解が私どもは労働省の正規の統一された見解かという点について、了解に苦しむのであります。この際当事者の御両者がおいでになつておるのでございますから、ひとつゆつくり意見を統一されて、統一された労働省意見を開陳していただかないと、あとあとの政府当局に対する質問のやり方もございますので、ひとつ意見を統一して御回答を願いたいと思うのです。
  54. 赤松勇

    赤松委員長 意見を統一される必要はありませんか。
  55. 中西實

    中西説明員 はつきりしております。食い違いの点がよくわからないのでありますが、現在の段階は当事者双方で話合いをしておる、しかし公社側といたしましては、たといある協定をしようといたしましても、実行ができるかどうか。これは一応内々やはり財政関係を握つております、また認可権を持つております大蔵省の意向を聞きつつやらなければ、意味はないというので、当事者の交渉段階でございますが、内々大蔵省意見も聞いてやりつつあるという段階であろうと思います。これが正式に協定になりますれば、十六条の問題になつて参りますし、それからさらに調停仲裁という段階になりまして、仲裁裁定が出ますれば、これが三十五条の問題になつて来る、こういうことになろうかと思います。そこで、現在におきましては、まだ実は労働省の介入といいますか、労働省がいろいろといたします段階でなく、もつぱら当事者、それから下交渉としまして大蔵省、この段階にあるように存ずるのであります。
  56. 赤松勇

    赤松委員長 ちよつと委員の皆さんに申し上げますが、仲裁委員長今井一男さんが御出席になりましたから、さよう御承知願います。
  57. 山花秀雄

    山花委員 去年の十一月二十七日にこの裁定が出て、この裁定の第六項及び理由の第九項に業績賞与のことがうたわれておるのであります。そこでこの業績賞与の点につきましては、職員諸君努力によつて予定以上の剰余金があがれば、四分の一を限度としてこれを業績賞与として支給すべし、これが仲裁委員会の一つの結論考え、この結論に当事者双方は不満ながら従わなくてはならぬ、こう解釈しておるのであります。ところで、その当時は決算が行われておりませんから、十億出るものか、二十億出るものか、あるいは三、四十億出るものか、これはわからないと思うのでありますが、今日一応決算上の余剰利益金というのが三十二億出た。そういたしますと、仲裁裁定委員会結論である四分の一、また組合側がただいま最終の線として妥結をせんと要求をしておる一箇月というような点につきましては、資金上の苦しみというものは、私はないと思うのです。そこで、なければ、当然この双方従わなくてはならぬという公労法の精神に従つて大蔵当局も、専売公社組合側も、それぞれ不満があつても、これに従つてもらわなくてはならぬということは、法律の精神を守るゆえんになると私は思うのです。ただいま中西労政局長お話だと、大蔵大臣の意向によつて予算的資金的やり繰りがきまるのだ。そうしますと、大蔵大臣の意向と、公労法三十五条の精神と、一体どちらがその権限が強いかというようなことにもなろうと思うのであります。まだ双方この業績賞与金額決定していないから、予算上資金上の余地があるかないかわからない。これは決定してから、もし大蔵大臣が反対であれば、再び仲裁裁定委員会の議に持ち出すべき性格のものだ、二重の手間をかける必要は私はないと思うのです。去年の十一月二十七日の仲裁裁定委員会裁定の精神を尊重して法律を守る建前に立てば、予算上資金上りつぱにやり繰りができるのでありますから、スムースに問題を解決して——たとえば労働組合の態度によつて生産が半減する。たとえば三日間の例をとつてみましても、一日半の利益金がそこで消耗する。一年間に専売公社利益金を相当あげておると思うのでありますが、一日半の利益金がそこで消耗するということになりましても、まだこれで解決するわけじやない。解決しなければ、なお休暇とつたり、超勤拒否の態度に労働組合は出ると思うのです。そういたしますと、国家財政の唯一の財源の基礎になつておりますところの専売益金にも相当影響を及ぼすし、またここ二週間もたてば、店頭はタバコの品切になるというような事態も引起すと、組合側では説明をされておるのであります。タバコを愛する人々に対しても、相当大きな打撃を与えると思うのであります。国民生活の上にも影響を与え、国家財政の上にも影響を与えるということがはつきりわかつております。この段階におきましては、やはりそれぞれの関係者が法律の精神を守るということで、この問題をスムーズに解決をした方が、あらゆる点から見て私は非常に利益になると思うのであります。そういう点で、労働省としては労働者に対するサービス省としての精神を生かして、もう少し側面的でも、単に組合公社にまかせるというような拱手傍観的な立場でなくして、積極的に問題解決のために努力されるべきが至当ではないかと思うのでありますが、そういう意向を持つておられるやいなや。なお傍観的態度で両者の交渉にゆだねるという態度を維持されてこの問題を過されるかどうか。これらの点につきまして、いま一度確信ある対策の御回答を願いたいと思うのであります。
  58. 安井謙

    安井説明員 お話もごもつともだと存じますし、労働省といたしましても、一応さらに調査いたしまして善処いたしたいと思う次第でございます。
  59. 藤田義光

    ○藤田委員 私は本日ただいま当委員を拝命いたしまして、あるいは質問が要点をはずれるかもしれませんが、しろうとなるがために、本問題の核心をついた点もありはしないかと思いまして、二、三お伺いしたいと思います。  まず第一には、先ほど中西局長の御答弁にありましたが、公労法十六条の問題は、先年国鉄裁定に対しましても同様な大問題が起きまして、非常に複雑な規定でありますが、大蔵大臣が認可権を持つているという点が、どうもはつきりしないのであります。十六条の規定は、資金の追加支出に関する国会との関連規定であつて、現在専売公社のごとく、すでに貸借対照表上の超過利益が出ている場合におきましては、これは十六条に全然関係ないのじやないか。従つて大蔵大臣の認可権という法律的な根拠は、私今のところはつきりいたしませんが、十六条の関係とそれから大蔵大臣の認可権、この関連をいま少しく御説明願いまして、それに基いて質問をいたしたいと思います。
  60. 中西實

    中西説明員 予算の支出につきまして、公社の総裁が自由にできる部門もございますし、また会計法その他の関係で、公社法にそのもとが大体ございますが、大蔵大臣の認可を要するというふうな規定もございます。今問題になつておりますのは、今年度の予算総則の八条の二項に、もしも専売納付金の額が予定の額を越えた場合には一部を職員に出すことができる。しかしこの場合は大蔵大臣承認を経て出せる。こういう総則があるのでございます。それが根拠になりまして、やはり大蔵大臣承認がなければ、予算上資金上はできないことになつておる、こういうことでございます。
  61. 藤田義光

    ○藤田委員 そこで二十八年度予算総則にあります大蔵大臣承認というもののデフイニシヨンですが、先ほど中西局長が言われました認可というものより、ずつと弱いんじやないか。むしろ国家財政全般を把握しております大蔵大臣の了解を求めればよろしいという程度に、予算委員会でわれわれは了承しておるのでありますが、認可権というのは、少し局長の発言が強過ぎるんじやないかということをお伺いしたい。  それと関連いたしまして、仲裁委員の方も見えておりますが、こういう裁定案の中に例示的な文句を使われましたいきさつでございます。これを簡単でけつこうでございますから、お伺いしておきたいと思うのであります。
  62. 中西實

    中西説明員 確かにおつしやいますように、認可と承認は違うかと存じます。しかしこの場合におきましては、承認がなければやはりできないという意味において、結局認可を受けるのと結果においては同じになるというふうに、一応われわれの方では解釈をいたしておるのであります。
  63. 藤田義光

    ○藤田委員 仲裁委員の方の御答弁あとまわしにしまして質問したいと思います。法律論になつて恐縮ですが、認可と承認ということは、法律の効果においては非常な相違を来すんじやないかと考えおります。従いまして、こういう弱い承認という総則の文句がありますので、この際先ほど山花委員から言われましたように、サービス省としての労働省が乗り出せば、大蔵大臣は問題ないんじやないか。国家財政を握つております大蔵省といたしましては、現在のごとく組合員が超過勤務拒否する事態を一日でも早く解決することが、国家財政を確保するために最も必要な問題であり、ひいては、こういう問題を労働省が放任することによりまして、パブリック・コーポレーシヨンというものの制度そのものにひびが入るのじやないか。よほど注意しないと、今後公労法の適用を受けております他の従業員にも、国家財政上憂慮すべき事態が起きはしないか、かように考えておりますが、その点に関しまして局長はどういう考えでおられますか、お伺したいと思います。
  64. 中西實

    中西説明員 労働省の立場からは、ちよつと申しにくいのでございますが、これはひとつ大蔵省の方から十分にお聞き取りいただきたいと思います。ただ専売公社だけに今こういう特例があります。しかも専売公社は、益金が上るのが当然で、相当な額上るべきものでございます。その益金をどの程度従業員に出すか。これは他に同じような公社もございます。たとえば一般公務員にこの間〇・五、さらに〇・二五いただいたわけでありますが、これは全部に出ております。そのほかに、そうもうけがあるからといつて、一体いくら出していいものかどうか、これはやはり相当考慮の余地があるのじやないか。これは労働省の立場からは、きわめて言いたくないところでありますけれども、当然やはりその配慮はいるのじやないかという考えでございます。
  65. 藤田義光

    ○藤田委員 今の局長の御答弁の、つまりもうけがあるから配分するという感覚が、われわれに非常に疑問に思われる点であります。私は専売従業員の労働の成果という点を見まして、一般、会計国庫納付金に全然支障を来さないで、しかもある程度以上の益金予定された場合におきましては、組合員の功績というものを考えたいわゆる賞与、制度というものが、非常に専売公社運営の妙を発揮するいい制度だ。これは仲裁委員の最近のヒットだというふうに考えておる一人でありまして、むし、ろそういう美風は、ほかの電電公社、あるいは国鉄等に波及していいと考えております。この際専売従業員に最初のテスト・ケースとしてこういう善政を施したらどうか。この際大蔵大臣は、国家財政を救うために大いにこういう制度を活用してもらいたいと考えておるのでありまして、利益があるからただちに組合員にそれを分配しろという意見ではありません。従いまして、組合員の努力の結晶も相当加味された益金であるから、その点を考えることが、一般企業体の妙味を発揮する一つの有力な材料ではないかというふうに考えております。政務次官の御答弁による他の公社従業員とのバランスを考えておるということになれば、他の公社におきましても、今後裁定等でこういうことは当然右へならえして来る。益金がふえるということは、国家的に非常なプラスでありますから、むしろこの際思い切つて大蔵大臣ならやるべきでありますが、大蔵省の方がおられませんで、どういう理由大蔵省がこういうことに対して躊躇しているかということにつきまして、非常な疑問を持つております。むしろこの際国家財政を特別会計から補給する意味におきまして、思い切つた措置をとるべきではないかと考えておりますが、いま一度政務次官のお考えをお聞きしておきます。
  66. 安井謙

    安井説明員 ごもつともなただいまのお話であると存じますが、やはり公社であります限り、その算定の基準といたしまして、他の公社との振合いということも一応考慮に入れるべき筋合いではないかと思う。しかし実際は、その奨励のためにも、でき得る限りこれが妥当の線におちつくように、労働省といたしましても、さらに善処をいたしたいと考えております。
  67. 藤田義光

    ○藤田委員 ただいまの政務次官の御答弁からしますると、公労法の適用を受けるすべての公社あるいはその他の従業員の所属する官庁に同様な裁定がなければ、バランスがとれぬから出せない。すべての公社その他類似したもの、いわゆる公労法の適用あるものに同様な裁定がなければ、バランスを失するから、大蔵省として支出できないというような議論も出て来るのではないかと思うのでありますが、私は、こういういい前例でありますからこの際思い切つてつくるべきではないか。仲裁委員裁定の趣旨もそこにあるのではないかというふうに考えるのであります。仲裁委員の方がこの裁定をされたときに例示的なことを勧告されておりますが、これはどういういきさつで、「例えば」というような表現を使われて、しかもその中に相当具体的なことを言われたのでありますか、その根拠をお伺いしておきたいと思います。
  68. 今井一男

    今井参考人 今からもう四年以上前になると思いますが、第一次の国鉄裁定並びに第一次の専売裁定におきましても、業績賞与のような部分を含めました裁定を実は出したのであります。もともと仲裁委員会考え方は、この出しましたものそのものが、文字通りそのまま行われるということを目標にはしておりません。それよりは、それを基礎にして、両当事者が紛争解決できるということを一番中心の眼目としております。従いまして、われわれの提示いたしましたものに対しまして、両者が御相談の上、それを上まわつたりあるいは下まわつたりしたお約束ができましても、仲裁委員会としては、何もこれに対してかれこれ申すような考え方は持つておりません。しかし、この業績賞与につきましては、その後、話によりますと、専売におきましては両者間にかなりお話合いが進んでおりながらも、また両者間で必ずしも原則的に反対でないのにもかかわらず、実行がされておらないといつたお話を聞いております。しかし、はたして前の第一次の裁定の場合の、すなわち二十五年三月に出したその裁定の原案をおやりになる御意思か、御意思でないかということは確定しがたかつたのでありますけれども、そういつた状態の際に、実は昨年の十一月に今回の裁定を出すような形に相なりました。その際いわゆるベース賃金の問題は、明白に金額出したのでありますが、委員会の相談によりますと、どうもこれでは若干不足ぎみを感ずる。従つて、それ以上のものは、むしろかせいでとつてほしい、こういつた意味合いから業績賞与制度を本年度の決算にはぜひ設けてしかるべきである、こういう裁定を下したのであります。しかしながら、今申し上げましたように、それまでの沿革上、この問題については、両者間にいろいろ意見がある模様でありましたから、従つてわれわれの方があまりにかたいもの、きまりきつた確定したものを差上げることは、かえつて両当事者の交渉上不都合を生じはしないか、いかような趣旨にかわりましても、むしろその精神をうたつておけば、その方が最初のやり方としては両者間に好都合ではないか、かように考えたのでありますけれども、しかし、一方それまで三年近くかかつても話が進まないというところから見ますと、またぼんやりしていてもいけない、両方をにらみまして例示的に、しかもある程度具体的に、こういつた精神のもとにたとえばこういつた案はいかがなものであろうか、これを中心にお話をおきめ願いたい。もしも実施にあたつて両者の意見が一致しないときには、当委員会でお世話しましよう、こういう結果に相なつた次第であります。われわれの考え方といたしましては、歳入で予定されました金額以上の収入があるということが一つの条件、並びに国会認められました経費をさらに節約したという二つの要素がからみまして、しかも与えられた益金を完納いたしまして、いわゆる現金関係においても予定以上の成績を上げる、また資産、負債を考慮しました貸借対照表の関係においても、予想以上の利益を上げる、しかも自分たちがもらうと同額以上のものを国家にさらにまたよけい納めるということになれば、企業的にも国に全然御迷惑がかからないで、しかも能率増進になるのではないか。今までいろいろ官業の事業成績が悪いという点は、働いてもなまけておつても、すべて画一であるというところに、根幹があるのではないかというような見地から、こういうふうな裁定をこしらえました。但し、その具体的な内容は、いま少し両者で御検討をいただくように、わざと余地を残した次第であります。
  69. 藤田義光

    ○藤田委員 ただいま言われました通り、貸借対照表上、あるいは予算上支障なく、益金が出ておるのでありまして、ただいまの御答弁を拝聴しておりますと、裁定というものには相当ゆとりがある。大体その近くの線で話合いをしてくれという、非常に幅のある御答弁でありましたが、公労法二十五条には、御存じの通り裁定に対しましては、当事者双方最終決定として服従しなくてはならぬという厳然たる規定があるのであります。この三十五条の立法趣旨からしましても、当然いま少しく仲裁委員会裁定というものが権威があつてしかるべきではないか。もし国家財政上も支障がない、むしろ従業員に歓喜努力されることによつて、国家収入がふえるという見通しがある際におきまして、この裁定が、大蔵大臣の単なるバランスの問題で守られぬというようなことになりますと、三十五条の規定の趣旨はまつたく没却されるということを感ずるのであります。こういう点に関するただいまの御答弁では、私はまだはつきりしないのでありますが、最終決定として、当事者双方裁定に服従しなければならぬという厳然たる規定と、今日の専売公社裁定に対するトラブルというものには、法律の趣旨と現実の動きが、相当遊離してしまつておるというような気持がいたします。この点は仲裁委員としては、どういうふうな感じを持つておられますか、お伺いしたいと思います。
  70. 今井一男

    今井参考人 私どももよく研究をいたさなかつたのでありますが、お呼出しをいただきまして、本年度の予算総則を拝見いたしますと、どうも仲裁委員の立場からは、筋としておかしいような文字が入つておるように思うのであります。と申しますのは、先ほど藤田委員も仰せになりましたが、第一次国鉄裁定の場合に、あの当時は給与総額というようなわくがございませんでした。そこで国会では非常なやかましい議論を展開されたのでありますが、その際一番問題になりましたことは、政府が、具体的に申せば、大蔵大臣がよろしいと言えば、資金上に可能になる。いけないと言えば不可能になるということがいいかどうか。すなわち、大蔵大臣の会計法上の承認ということが、法規裁量なりや自由裁量なりやという、非常にむずかしい議論が展開されたのであります。その結果であろうと私推察するのでありますが、二十五年度からは、そういう問題をなくすためと想像されますが、給与総額というわくが、新しく予算総則に設けられました。これは、大蔵大臣がその間に入つて来ると、とにかく官公労系統の労働運動に非常によろしくない影響を与えはしないか。そこで給与総額に影響のある場合には、全体の予算のわくは、かりに国会承認の範囲内においても、その問題は国会に持つて来い、国会できめてやるという御趣旨のもとに、わざわざ給与総額というものがきめられたと思うのです。従来は、すなわち公務員の時代には、こういうことは全部政府限りでやられたものであります。しかるに、公社になりまして、しかも途中二十五年度から新しく入りましたゆえんは、私はそういう御趣旨であろうと解釈いたしておるのであります。ところが、本年度の予算総則を見ますと、業績賞与に関する限り、また大蔵大臣という文字が出ております。これは給与総額というものを新しく設けられた趣旨から申すと、理論的にどうも一致しない。こういつたことが、とかくいろいろの紛議を起すもとになりますので、国会のおきめになつたことをかれこれ批判がましいことを申し上げることは恐縮で、ありますが、私は仲裁委員会の立場から申せば、こういつたことはひとつ理論的に筋を通していただくこと。できれば、私どもといたしましては、予算全体のわくを国会で御承認になりました以上は、企業体であります以上、その企業体として一体これを人件費に多く使うか、物件費に多く使うか、あるいは高給者を少く雇うか、安い月給の者をたくさん雇うか、そういつたことこそ、企業の経営者におまかせするのが、企業の能率を発揮するゆえんであろうと思います。それを公務員のように何級何号の人間何人、こうきめて行くことは、企業の能率を発揮するゆえんではないと思うのであります。たまたま、よく申しますが、専売予算は甘い、これは予算上余裕があることは当然だという陰口を耳にするのであります。これはまつた予算を公正に確定することは、技術上非常に困難なことであります。従つて一度国会でこういう予算のわくをおきめになつた身上は、やはりそれを根拠にして、それ以上成績を上げたとか、それ以上節約したとか、こういつたことを根拠にして議論せざるを得ないと思う。それが世の中の秩序を保つゆえんであろうと考えます。悪ければ悪いで、後に幾らでもいじる機会もありますから、こういう際に、あまりほかの方の角度の見方を入れますと、今後のこういつた性質の労働運動なり、あるいは企業の能率の増進なりに、よろしい影響はないであろう、かように考えるのであります。
  71. 藤田義光

    ○藤田委員 ただいまの仲裁委員の御答弁に、私まつたく賛成でありまして、その御答弁に関連して、いま一つ労働次官にお尋ねしたいのであります。貸借対照表あるいは、予算上何ら支障ない支出である、しかも公労法第十六条の反面解釈からまして——予算上資金上不可能な支出は政府は拘束されないのであります。しかし予算上、特に資金上何ら不可能にあらざる今回の裁定に対する支出に対しましては、政府は拘束されるという反面解釈が当然出て来るわけであります。従いまして、バランスだけの問題で大蔵省が二の足を踏んでおるならば、この際労働省サービス省として、当然もう少し積極的に動いてもらいたい。そうすることによつて、ただいま仲裁委員が言われました通り労働運動の健全化、あるいは生産の増強というものが期せられるのであります。こういう必要あるいは予定以上の収入が上りましても、しかも法律の根拠あるいは裁定があつても、大蔵大臣の裁断によりまして、当然の要求が満たされないということになりますと、官業に対する将来の暗影をかざすのじやないか、そうすることによつて、むしろ大蔵大臣が自分の首を絞めて行くという結果になるのではないかと思うのであります。超過勤務拒否することによつてタバコの減産という憂慮すべき、しかも国家収入の五分の一近くを納付する専売公社の従業員の問題でありますがゆえに、これはわれわれ相当深刻な大問題であるというふうに考えております。昨日の改進党の役員会におきましても、あまりに政府が無策である。しかも当事者双方においてある程度の気持の一致を見ているというようなことも聞いているのであります。にもかかわらず、大蔵大臣の一方的なはからいによりまして、この問題がペンデイングになつておるということは、憂慮すべき事態ではないかと私は考えておる。いま少しく思い切つて何か大蔵省の了解工作をやられる気持がありますかどうですか。サービス省としての立場から、この際重ねてお伺いいたします。
  72. 安井謙

    安井説明員 藤田委員お話の御趣旨は、まこにごもつともであると存ずるのであります。先ほど労政局長答弁いたしましたように、予算総則八条二項で、一応大蔵大臣承認を得るという条項も、これは現実の問題としては、承認しなければいかぬ場合ができて来ようと思つております。しかし、御趣旨につきましては、非常にごもつともなお話だと存じますので、できる限り研究をいたしまして、善処いたしたいと思います。
  73. 赤松勇

    赤松委員長 どうでございましようか。大蔵省はもう出たというのです。なを出席をしておりませんが、やはりこの問題は大蔵省出席をいたしまして、当然答弁する義務もございますので、少し留保しておきまして、出席をいたしましたならば、特に今井仲裁委員長大蔵省の先輩でございますから、大いにこういう問題につきましても、大蔵省の蒙を用いてもらいたいと思つておりますので、暫時これを保留いたしまして、次の問題に移りたいと思いますが、御異議はございませんか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり〕     —————————————
  74. 赤松勇

    赤松委員長 それでは、次に石炭鉱業の争議関係について調査を進めます。  この際お諮りいたしますが、本件につきましては片山信雄君、畠山義之助君、両君を参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 赤松勇

    赤松委員長 御異議なしと認めます。さように決定いたします。  片山参考人、畠山参考人質疑を許しますが、まず最近石炭鉱業におけるいろいろな企業整備の問題が起きておると思います。これにつきましてその実情を述べていただきたいと思います。
  76. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 経営者の方は御出席になりませんか。
  77. 赤松勇

    赤松委員長 経営者の方に通告をいたしましたが、石炭鉱業連盟の早川専務理事及び三井鉱山社長の山川良一君、この二人は多忙のため出席をしかねる、こういう回答でありました。
  78. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 なるほど委員会といたしましては、単なる早川勝個人ではなくて、やはり石炭鉱業連盟の代表であればいいわけです。また三井鉱山株式会社におきましても、当然山川さん個人でなくても、あるいは労働部長でも、総務部長でもいいわけでありますが、全然経営者が来られないということに対して、当委員会としては非常に遺憾に考えるわけであります。ことに大量解雇というのは、単に首を切れば経営者は済むというのじやなくて、社会問題としても、またそのあとの問題をどうするかという問題につきましても、政府としても、また国家としても大きな問題である。でありますから、当然単なる一つの企業が行くか行かないかということでなくして、われわれは国家的にこれを考えなければならぬ、こういうように考えるのですが、経営者が来ないということに対して、委員長が何らかの形で糾明をしてもらいたい、こういうことを希望いたしまして、議事進行をお願いしたいと思います。
  79. 赤松勇

  80. 片山信雄

    ○片山参考人 私は、今炭労が三井を中心にして企業整備の問題で経営者と真剣に闘争を続けておりますが、そのよつて来ました原因につきまして、一言意見を述べたいと思います。  まず、石炭産業が、今日のように経営者をして企業合理化という言葉を口にさせなければならないようになつたその原因の一端でありますが、経営者も企業合理化を発表するに際しまして、組合側に、その原因の一つに高炭価問題を取上げております。しかし、その高炭価問題のよつて来ました原因ははたして何であろうかという点でありますが、まず第一点は、炭鉱労働者賃金が従来あまりにも低かつたという原因がその一つではあるまいか。すなわち炭鉱の機械化が、今日諸外国の炭鉱の作業内容に比べますと非常に劣つております。しかし、このことは、炭鉱の経営者が、ただ炭鉱労働者賃金が従来非常に安かつたために、積極的に機械の導入に対する働きかけが少かつた、そういうふうなものに対する考慮が非常に劣つてつたということが原因ではあるまいか。炭鉱労働者は御存じのように、請負制賃金という賃金制度を現在持つておりますが、この賃金制度こそ、炭鉱労働者をして牛馬のごとく、あの劣悪な労働条件の中で、坑内で労働を続けさせておる実態であります。いわゆる賃金協定で一応賃金が協定されますと、必然的にその労働量が賃金に付帯してつけられるわけでありますが、そういたしますと、炭鉱労働者賃金が低いがゆえに高賃金をとりたいために、労働基準法あるいは鉱山保安法で保護された炭鉱労働者の権利をすら放棄して、ひたすらに自分の賃金獲得のためにあくせくして、今日まで労働を続けて来た結果であります。これらのことをまず第一に御認識を願いまして、炭鉱の機械化が遅れたゆえんが炭鉱労働者の低賃金にあつた。まず機械化の問題につきましても、現在政府なりあるいは経営者がとつております機械化の方策を見ますと、やはり労働密度の点だけが考慮された機械化が促進されておるような感をわれわれは受けるわけであります。すなわち炭鉱の運搬系統の短縮、あるいは採炭切羽のカッペの採用、選炭施設の維持改善というような問題につきましては、炭鉱の石炭採掘の機械化というものが非常に遅れ、ただ単に労働密度を上げるという点に重点が置かれておることも、炭鉱労働者賃金が低いという一つの原因である。すなわち炭鉱労働者賃金があまりに低いために、機械化をするよりも労働者を酷使する方が、なおかつ炭鉱の経理面からすると有利であるという点炉、高炭価の原因ではあるまいか。これらのことは、炭鉱労働者賃金をそれでは引上げることにして、炭鉱の石炭コスト高の問題でありますが、高炭価の問題につきましても、炭鉱労働者賃金を引上げましても、必ずしも日本産業の全般に影響するような高炭価問題にはならないであろう。これは一つ例を英米にとりましても、日本の炭鉱労働者よりも数倍高い賃金を、現在英米ではそれぞれ炭鉱労働者がとつておりますが、英国におきましても、炭価の中に占める労務費の割合は大体六四%。日本の場合には四八%の労務費を占めておりますが、日本の炭鉱労務者の賃金よりも数倍高いイギリスにおいてすら、その炭価の中に占める労務費の割合は六四%という高率を占めておる。しかしながらイギリスにおいては、何らイギリスの国民生活を左右するほど高炭価問題が現在云々されておらない。こういう点からしても、ただ単に炭鉱労務者の労務費の問題だけで、炭価問題は解決できる問題ではないというふうに、われわれは考えるわけであります。  次に、貯炭の増加の問題であります。このことは外国炭の輸入あるいは重油転換等におきまして、最近とみに経営者あるいは政府、一般市場で言われるようになりましたが、このことは政府が根本的に産業面に対するメスを入れなければ、解決できない問題ではあるまいか。経営者が、現在貯炭増加のために、労働者を馘首すると言つておりますが、しかし、その裏を十分われわれが観察する場合には、非常に欺瞞的な発表であるといわざるを得ないわけであります。すわなち経営者は、八百万トン以上の貯炭を現在持つておる、そのために労働者をここで人員整理をして、そして貯炭の増加を防ぐ、いわゆる生産制限という考え方を打出しております。しかしながら経営者の言つておる裏をかいでみますと、労働者をここで何割か人員整理をしまして、その残つた労働者で現在の出炭量をやはり維持しようというところに、企業合理化という一つの名前がとられておるように、われわれは感ずるわけであります。炭鉱労働者の現在の従業員を一割なら一割削減して、そうして残りの者でやはり一割減の出炭を続けておつたならば、何ら合理化にはならない。そのためには、やはり一割労務者を解雇しますと、残つた者で従来の出炭、あるいは従来以上の出炭を上げなければならないというところに、企業合理化のねらいがありますので、炭鉱労働者をただ単に首を切つたということだけで、この貯炭の問題はとうてい解決できるものではない。それらの点につきましては、政府がやはり重油転換あるいは外国炭の輸入というような問題に、もう少し根本的なメスを入れていただかなければ、この問題は解決できない。特に日本の産業の興隆というものは、やはり日本国民を対象にして、日本国民の生活の向上というものがその根本でなければならない、しかしながら、外国炭の輸入あるいは重油転換のために、日本の炭鉱労働者が塗炭の苦しみに追い込まれるようなことで、はたして健全なる産業の計画というものがあろうかという点に、われわれは非常に疑問を持つわけであります。特に重油転換——昭和二十七年度の重油転換を石炭に換算しますと大体二百万トン、二十八年度には四百万トンだという一つの推定量が出されておりますが、これらの石炭に換算した重油が日本の工業を維持するということになりますと、その重油産出国であるアメリカ、あるいはその他の国に日本の産業が従属するというおそれもわれわれは十分に考えなければならない。そういうふうな点を考えると、いま少し日本の総合的経済計画というものが、政府によつて打出さるべきであろうというふうにわれわれは考えるわけであります。  現在経営者が今申しました高炭価問題、あるいは貯炭増加の問題を取上げまして、企業整備を打出して、人員整理をして、その企業整備の目的を達成するという考え方労働組合にそれぞれ申入れをしております。そして北海道では三菱、三井、北炭、明治、九州方面では杵島炭鉱を初め、その他二、三に企業整備問題に関連する首切りが出ております。これに対しまして、炭労は本年三月の鬼怒川大会におきまして、企業整備反対、いわゆる会社のいう首切り反対闘争というものを打出しまして、現在その首切り反対闘争がまつたく最高潮にあるわけであります。これをこのまま放置しますならば、私たちはどのように発展するであろうか。ただ単に労使間の紛争というだけにはとどまらないで、社会問題までも起すのではあるまいかという一つの不安があるわけであります。三井におきましては、一応月末までで希望退職というものの打切りをやりまして、本月の四日までにそれぞれ五名の個人指名の解雇をするという現在の段階でありますが、組合としましては、一応この個人指名の解雇をはね返す闘争を指令しております。その場合、経営者がとる手段としましては、解雇該当者の入坑拒否のいわゆる仮処分の執行を裁判所に申入れをするのではあるまいか。もしも裁判所が軽々しくこの仮処分の執行をするといたしましたならば、あれほど現在北海道あるいは九州で盛り上つております炭鉱労働者の生活に関連する大きい要求というものは、その仮処分を突破してまでも、自分の職場に入つて仕事を続けたいという素朴な感情からする一つの状態を巻き起すのではあるまいか。こういう点を考えますと、ここらにもやはり政府として何らかの対策が講じられなければならない段階である、このまま放置すればただ単に労使間の問題だというだけのことでなくなるのではあるまいか。こういう点につきましても、政府としていま一段の努力をなさるべきではあるまいか。これは第十六国会最終日の前日でありましたが、参議院の労働委員会で、やはりこういう問題についての労使それぞれの意見を徴されましたが、ただ意見の聞きつぱなしでありまして、その後何らの措置が講ぜられておらない。こういう点につきましても、政府としていま一段の努力があるべきであろうし、また本日炭労は第七回の臨時大会を開催しておりまして、われわれは非常に多忙な中でありますが、お招きによりましてここに出て参つたわけであります。私たち意見をただ労働組合の一方的な意見だということで聞きつぱなしであつてはならないと思うわけであります。この点につきましてはわれわれが信頼する国民の代表である皆さん方の賢明なる御努力によりまして、何らかの対策が講ぜられるべきであるというふうに私たちは信じて疑いません。  以上のことを簡単に申し上げまして、現在の労使間の企業整備に対する首切り反対闘争の経過の概略を御説明いたしました。
  81. 赤松勇

    赤松委員長 参考人に対する質疑がありましたらどうぞ。——それでは続いて畠山参考人
  82. 畠山義之助

    ○畠山参考人 私三井鉱山労働組合の連合会委員長畠山であります。  供述を申し上げる前に、三井鉱山労働組合の実態を申し上げたいと思います。御存じでもありましようが、三井鉱山の総事業所は六つありまして、北海道に三つ、九州に三つあります。従業員数は北海道は大体四千人の山が一つと、五千人以上の山が一つと九州は一万九千人の御存じのような三池の鉱業所が一つと、それから九千人の田川鉱業所、それから四千五百人の山野鉱業所と三つあるわけであります。大体三井のこの三つの鉱業所と、あるいはその他三菱の十六の鉱業所のこれら会社の内容状態から、問題が発生しておるわけでありますが、そういう状態で、われわれは八月の七日に新聞紙上で御承知のように、約七千名に余る首切りの通告を受けたわけでありますが、その前に七日、八日にわたつて、会社側から説明を聞いたわけであります。われわれ自体といたしましても、いろいろ問題はあるのでありますが、当時会社側の経理内容の説明によりますれば、大体ざつと申し上げますと、今年度の上期のこのままの状態で行くならば、十五、六億の赤字になる。いわゆる貯炭増加の問題とコスト高の問題が一番かなめをなすわけでありますが、しかしわれわれがこの内容の実態を検討してみた場合に、むしろ逆に五千五百何がしの余剰金が生れる。こういう考え方から、会社の経営状態考えてみますと、私どもは逆にむしろ黒字になるのではないか。この点が反対の第一点であります。  さらに、この内容について具体的な例を申し上げますれば、現在三井鉱山の従業員数は大体六万人であります。それの退職引当金が大体三十五億組まれておるわけでありますが、これは六万人の従業員が全員退職する場合に使用する金であります。しかしながら、三井鉱山の実態から行きますれば、どのような不況な状態になろうとも、六万人の人間が一斉にやめるということは、現段階としてはとうてい考えられない。しからば、この三十五億何がしの退職引当金が、会社の首脳部の言うように当面あるというならば、こういう余剰金を企業面へ使用する意図はないのかという点が問題であります。それからまた月々の自然退職人員は、大体三百から五百でありまして、年間を通じました引当金は大体一億ないし三億円であります。それがトン当りにいたしますと、大体六十円から九十円の経費になるわけでありまして、二百八十三円の引当金を組んでおるわけであります。こういう面から行きまして、最終的には五百十二円の彼らの言う経理の内容と、われわれが検討した場合の経理の内容が食い違う。そこで先ほど申しましたように、彼らの説明しておるところの十何億かの赤字は、赤字でなくして、このままの状態でもし七千何人かの首切りが強行されるならば、逆に十何億かの黒字があるということを立証いたすようなわけであります。  われわれとしましては、第二番目に、現在会社が強行せんとする首切りの問題でありますが、この問題につきましては、昭和二十五年十一月、すでに三井鉱山といたしましては、一万二千名余りの希望退職をやつたわけであります。この当時のわれわれの考え方としましては、会社の終戦後から来る人間の余剰問題とか、そういう問題から考えまして、われわれもあまり深く考えないで、この希望退職の問題を認めたわけでありますが、その後に起きた問題は何かといいますと、その場合に会社がわれわれと団体交渉の席上において、会社の首脳部が口をすつぱくして言つた言葉の中に、一つには高炭価、高能率、高賃金の問題があつたわけであります。この問題につきましては、当初われわれといたしましては、われわれ従業員の生活の向上あるいはその他の問題から、ああいう一万二千人の希望退職を認めるという結果になつたわけでありますが、その結果起き現象は、すでにわれわれ身をもつて体験したわけであります。なるほど高能率については、一万二千人の従業員がおつた当時よりも、一万二千人やめた後における能率は、依然として下つておりません。その下らないという理由は、大体残つた人員につきまして、約三割以上の労働強化がなされたわけであります。そこで当然、それぞれの職場から、本人の希望によつてやめたあとにおける職場の人員の補充——これが配置転換という問題でありますが、十年あるいは十五年も同一職場についておつたたちが、強制的に坑内の方に追いやられ、しかもその結果、職場についてからの災害率は非常に多いのであります。そこで、こういう面からわれわれといたしましては、会社が現在強行せんとする希望退職——今次の場合は若干かわりまして、三段階にわかれております。第一段階は希望退職という面、その次は退職の勧告、それから第三段階には解雇という状態になつておるわけでありますが、七日、八日の交渉の中で、われわれといたしましては、こういう現状から来る組合員の不安動揺、こういうものを見越しまして、やはり現在の経営状態がどうであるか、あるいはまた会社が言つておるような各坑の閉鎖、こういう問題をいろいろ論議した結果における減少人員、こういう面をさらに討議して、しからば何人の減少がなければならないかという結論がもし出るならば、この減少人員に対し、どういう形式——解雇かあるいは退職を願うかという、こういう順を追つた問題を討議すべきじやないかというのが、われわれの当初の主張点であつたわけでありますが、会社といたしましては、先ほど申し上げました解雇基準、希望退職、あるいはまた公傷常習者とか病人あるいは高年者というようなものを、一括的に発表されたわけであります。その一括的に発表された結果、どういう現象が起きたかといいますと、当時新聞紙上でも皆さん方御承知のように、この経理内容を自分なりに判断して、すでに自殺未遂者が何人か出ております。こういう問題につきましては、われわれといたしましても、社会的な、あるいは人道上許されない問題が起るがゆえに、当然会社の経理状態の面から交渉に入つて、その後にいろいろ交渉すべきではないかというふうに言つたわけでありますが、その面につきましても、われわれの主張が通りませんで、現状になつておるわけであります。われわれの方といたしましては、すでに保安遵法闘争の形で闘つておるわけでありますが、遵法闘争というものは、すでに先ほども片山さんからお話がありましたように、非常に炭鉱の災害率が多いわけでありまして、はつきりと保安法を遵法した場合には、ある坑によつては石炭がほとんど一トンも出ないような状態になるわけであります。しかしわれわれは、日常生活という面から、本意ではないのでありますが、ある程度それを見越した形の作業を継続させられて来たわけであります。そういう面から、災害率が高いという現状から、われわれはそういう公傷常習者という彼らの解雇基準の中における考え方も、従業員個々の人につきまして自分から希望するものはないわけです。そういうことが彼らの解雇基準という形になるならば、やはりわれわれが身をもつて自分の命を守らなければならないという考え方が、保安闘争のきつかけであります。それで明日が解雇の一斉になされる日であります。この場合におけるわれわれの考え方につきましては、強行就業という指令を出しております。あるいは会社側といたしましては、強硬にこれに措置する。こういう状態が明後四日に迫つております。北海道のある町におきましては、全町民の一割五分に当る人間が失業するという重大なる様相になつております。こういう面につきましても、会社の経営内容からいつても、あるいは各事業場における個々の作業場の問題から行きましても、会社の言うように、当然七千何人かの人間を解雇しなければ三井鉱山が成り立たないということは、どうしても納得が行かない。同時に、われわれといたしましては、彼らが撤回するまで、われわれの主張を通すべく、現在敢然闘つておるわけであります。
  83. 赤松勇

    赤松委員長 この際政府のこの問題に対する御意見をお伺いしてみたいと思います。通産省から佐久石炭局長が来ておられますので、まず石炭局長から御意見を伺いたいと思います。
  84. 佐久洋

    ○佐久説明員 先般来炭鉱における馘首問題が、かなり紛糾をいたしておりまして、実は私も非常に心配をいたしておるわけであります。事の起りにつきましては、もとを探ればいろいろ深い原因もございますが、最近の現象といたしましては、何分にも石炭の消費が生産を下まわつておるということが、大きな原因になつておると思います。これにつきましては、もちろん統制時代でありますれば、生産の制限というような政府の措置がとり得るのでありますが、今日まつたくの自由経済でありますので、過剰貯炭ということになれば、おのずから経営者各自が、将来の消費状況を自分で判断して、これに対処して行くということにならざるを得ないのであります。また一面、先ほどお話が出ておりましたが、高炭価問題というのが、石炭の側がら見れば、必ずしも原因のない、いたずらに非難を受くべき高炭価ではないと思いますが、石炭の消費あるいは輸出産業という面から、非常に強く高炭価問題の攻撃を受けておるわけであります。それに付随いたしまして、おのずから外国炭の輸入がふえる、あるいは重油がとつてかわるというような現象が、現実に各事業者の方において出ております。そういつた問題に対処する関係で、どうしても石炭の山自体においては、作業場の集約を行う、あるいは生産の制限を行わざるを得ない。従つて、その結果労働者の整理の問題が起きて来る。これは私は、今の経済の状況においては、やむを得ない現象ではないかというふうに思つておるのであります。  ただ先ほどお話が出ておりましたが、外国炭の輸入なりあるいは重油の輸入の問題につきましては、これは参議院の労働委員会でも、私申し上げたのでありますが、石炭局長といたしましては、現在のやり方にはまつたく反対でございます。たとえば、重油の輸入が相当に伸びております。これは一昨年の電力飢饉のときに、重油でも何でも使つて、とにかく電力危機を乗り越えてくれというような措置を、当時通産省がとつたそうでありますが、それも一つの原因でありましようし、また昨年の長いストのときにも、かなり大きな重油転換が行われておりまして、本年度の石炭にかわるべき重油需要というものは、相当量に上つております。これは過去において重油に転換したものについては、再びこれを石炭の施設にかえろということはちよつと困難でありますが、少くとも将来転換を予想されるものについては、その引当てとしての重油の輸入は考えないという行き方をとるべきであろうというのが、私の今日までの主張でございます。ただ、通産省内部といたしましては、石炭を掘る関係の者と石炭を使う関係の者との間に、大きな意見の開きがございまして、その間の調整がなかなか困難でございます。本年度の下期の重油の輸入に要する外貨予算を組むにあたりましても、現在その問題を中心にして折衝をいたしておるところであります。  それから外国炭の輸入の問題は、主として製鉄及びガラス会社用炭でありますが、これは一般炭は全然入つておりません、粘結炭でございます。ただここにおきましても、計算の基準と申しますか、内地炭と外国炭の配合比率をどういうふうにするか、あるいは、コール・レーシヨをどこに置くかということによつて、輸入数量というものは、若干の変更が可能でございます。私どもとしては、昨年の秋以前に内地炭と外地炭との比率が、ある慣行として行われておりましたが、それに返るようにという主張をいたしております。重油の問題につきましては、設備の制限をやるとかいうような方法を別に講じますれば、将来の、少くとも石炭にかわる分の重油輸入というものは抑制し得るわけでありますが、一面水産業関係では、もつと多量に重油を輸入してほしいという強い要望もございます。ただ、今のように設備の制限というようなことをやらないでおつたのでは、重油の輸入を抑制するということは、どうも筋柄からいうとむずかしいのではないかという状態でございます。  大体今気がついておりますのは、以上の点でございます。
  85. 安井謙

    安井説明員 石炭の解雇の問題につきましては、ただいま通産省からもお話がありました通りに、日本の労働問題から申しますと、労働省としては、できる限りやむを得ない解雇者を、就職あつせんその他によつてつて行く、さらに進みましては、先ほど通産省のお話通りに、重油の輸入制限をやる、あるいは輸入石炭についての適切な措置をとるということについて、十分協力して進めたいと思つておる次第であります。なおいろいろな具体的問題につきましては、労政局長から御説明申し上げたいと思います。
  86. 赤松勇

    赤松委員長 労働省としてどう考えるかということです。(「大臣に聞け」と呼ぶ者あり)大臣には問いますけれども——それじやまた質問を願います。
  87. 吉武恵市

    ○吉武委員 私は政府当局並びに炭労の方に、一、二お尋ねをしたいのでありますが、ただいま石炭局長のお言葉の中で大体出ておる問題でありますが、今回の人員整理の問題は、端的な原因は私は貯炭の問題だと思うのであります。すでに八百万トンから貯炭が出ておるというときに、石炭の置場もないような状態に追い込んでおつて、しかも従来の人員をかかえて出炭をするということは、事業としてはあり得ない。従つて人員の整理という問題が出て、今労働政務次官も、やむを得ないというお言葉があつたのでありますが、こういうふうになるのに、私はやはり政府においても相当の考慮を払わるべきものではなかつたかと思うのであります。というのは、終戦後日本の生産規模を拡大して行くということで、通産省においては、増産対策を立てられて、そうして今年だけでも大体四千八百万トンでありますか、来年再来年あたりは五千万トンを目標にして計画を立てられ、しかも合理化資金まで世話をされるという状況である。それが今年になつて、生産の面において多少伸びが悪いという点もあるでありましようが、一方外国炭を入れる、あるいは重油を無制限に入れる、そうして所期の四千八百万トンの増産計画は今日では四千四百万トン程度、それでも余りはしないかという状態になつておる。企業というものは、自然にそういう変動の起る点もありますけれども、石炭という問題は、いるといつても、簡単にすぐ増産のできる問題じやない。私はかつて労働関係関係をしておりまして、増産の面についても相当苦労をして参りました。終戦直後の際にも、石炭の不足のために非常に企業が困つた。そこであらゆる面を督促して、増産態勢に追い込んで行つた、炭住が足りなければ、復金の金を出してやらせるという措置までおとりになつた。それが急に方針がかわつたわけではありませんが、ほつたらかしにされて、四千四、五百万トンを切るような状態になる。人の余るのは当然である。そうすれば、企業とすれば、それだけ余つた人員をかかえているわけに行かぬから、整理という状態になる。これが日本の今後の出炭として大体その程度だということになれば、今度の犠牲だけで済むかもしれませんが、これをほつたらかされると、またもつとひどくなりはせぬかと思う。そうすると、また次に整理ということでは、私は石炭というものが基礎産業であるだけに、重大な問題であると考える。今のお話では、外国炭は大して関係がないようなお説でありますが、私の聞いているところでは、強粘結は外から仰がなければならぬでしようが、弱粘結が相当入つているように思う。これはわずかであつても、日本で増産のできるものであれば、その点は多少通産省の方でチエツクする道がないことはないと思う。それから重油の問題でございます。この問題も、私は相当大きな問題であると思う。この数字は、私今はつきりした数字を持つておりませんけれども、自分の記憶では、一昨年あたりでは百万キロリッターくらいのものが、昨年二百万キロリッター、倍くらいになつている。今年は四百万キロリッターくらいの輸入見込みだということも言われている。毎年々々倍になつて来るということになりますと、これは私は石炭界においては相当影響が大きいと思う。これは労働省の方の関係もあり、ただ通産行政だなどというふうに簡単にお考えになると、私はたいへんだと思う。日本の将来の燃料というものがこういうふうなことで行くということでお立てになつたならば、それはそれで一つの考え方もあり、またいいと思うのですが、これをほつたらかしになさると、先々どうなるかという問題である。そうしてにわかに石炭がいるというようなときになつて、一体どういうふうに御処置になるか。石炭局長としては、自分としてははなはだ遺憾に思いますと、こういうお答えでございます。これは石炭局長としてはそうでしようが、ただ石炭局長として自分はこう思う、やむを得ぬということでは済まぬ。通産省全体として、この石炭対策というものにはつきりした対策を立てられて、通産省全体としての一つの見通しを早急に立てられる必要があるのじやないか、かように存ずるわけであります。  なお、私は、炭労の方がちようどお見えになつてのことでございますから、自分の意見を申し上げてみたいと思うのでありますが、なるほど賃金が低いために日本の機械化が進まなかつたという点も私はあるだろうと思います。だから、漸次待遇の改善も必要でございましようが、同時に、機械化をして能率を上げるということは、これは必然の勢いになると思う。その際には、あるいは結果的には人が過剰になる。今のように生産量がふえない限りは人員が過剰になるという結果になるかもしれませんが、これは私は企業としては自然の勢いであると思うのであります、ただ今年の整理問題の直接の原因になつているところの貯炭の問題は、これは私自身の感ずるところから申しますと、今石炭局長からもお話がありましたが、起りは一昨年の秋である。一昨年の秋、御承知のように、非常に電力危機に際会をした。そのときに、石炭は出ない、電力はない。たいへんなところに追い込まれて、やむを得ぬから外国からも石炭を入れようじやないか。あるいは、重油はその当時は高かつたのであります。石炭よりも高かつたけれども、それでは生産というものがとまるから、やむを得ずやろうじやないかということが、実は重油転換の発端であると私は記憶している。ところが、問題は、昨年の暮れの石炭争議でもそうでございますが、これは私が言うのじやなくて、世間から静かにお聞きになればもつともだとお感じになるでありましようが、争議が非常に影響しております。昨年の暮れの二箇月間の争議というものは、一般の企業に対して非常な影響力を与えている。一般大衆の電燈が消えたりついたりするという不便さも、もちろん大きな声でありますが、中小企業等に至りましては、石炭がないために、一月か二月企業ををとめて休んでおるという状況が相当あつたわけであります。そうすると、企業面から見れば、それは二月間休むということは大きなことでありますから、こんなあぶない石炭に頼つているよりも、重油によつた方がいいじやないかという傾向がとうとうとして流れ、特に大阪方面行つてお聞きになれば明瞭でありますが、石炭を相手にしていると、毎年のように争議が起る。毎年暮れに一月も休まれた日にはたいへんだ、何千万円も損をしているという話まで私聞いているのであります。でありますから、重油が安くなつて来たという点も一つはございますが、もともと起りというのは、争議によつて一月も二月も仕事ができないような状況に追い込まれるというのは懲り懲りだという気持があるのでありまして——それがために争議は一切やめなければならぬという極端なことは申しません。それは労働者として待遇改善のためにやむを得ない手段に出ることはあるでありましよう。これは私どもは、そのおやりになることについて全面的に反対をするわけではありませんが、昨年暮れに行われた争議等を私は静かに考えてみますと、確かに無理がある。これはあなた方の幹部のおやりになつたことか、他の方がおやりになつたことか存じませんが、無理がある。昨年の暮れの電産にしても炭労にしても、炭労などは御承知のように坑内夫約五百円程度のものが一躍千円要求される。一般の物価はどうかというと、物価指数を見ますと、生産費の面におきましても横ばい、わずかに上つておるかという状況であるときに——私はだから賃金が維持されてよいということではありません、若干の待遇改善が年々行われることは、これはけつこうなことでありますが、五百円の坑内賃金が、物価の変動がさほどでないのに、一躍一千円でなければいかぬといつて、そうして二月も争議をされるということは、これは私は相当お考えにならなければならぬ問題であると思います。というのは、今度のつまり重油、外炭の入る動向にかんがみても、これは昨年の争議というものに非常に懲り懲りしたことが拍車をかけておるような感じがするのであります。これは希望を申し上げるのでありますけれども、同時に善処をしていただきたい。私どもは、皆様方が整理をされて、失業の群に入られることは希望いたしません。国家としては、そういう者が出れば職を与えなければならぬのでありますから、できればそのままで生産が維持され、能率を上げ、そうして外国市場においても伸びて行く態勢の確立することを希望するわけでありますけれども、今言つたような状況ならば、われわれがいかに無理だから整理をするなといつても、そういう状況であるという点——政府当局にも先ほど申しましたように、石炭が基礎産業でありますだけに、ただやむを得ないとか、あるいはどうも自分はこう思うけれども、なかなかほかが言うことを聞いてくれないというなことで、簡単にこの問題を過されずに、速急に基本の線というものを確立される必要がある、かように存じます。御意見を承りたいと思います。
  88. 佐久洋

    ○佐久説明員 私の申し方が、あるいは誤解を生むもとになつたかと思いますが、私が先ほど、石炭局長としてはこう思うかということを申し上げたのは、調整に非常に骨が折れるという趣旨を申し上げるつもりで申し上げたのでありまして、決してこれを軽々しく取扱うというつもりはございません。現に通産省の中で、輸入炭の問題なり重油の問題なりを会議するときには、他のいかなる会議にも見られないくらいの激論を常に展開しておるといわれるくらいの評判をとつて、石炭局はえらい気の荒いやつばかりそろつているといつて、常に非難されるくらい、私としては努力いたしておるつもりであります。なお今後におきましても、最善の努力をいたしたい、かように考えております。  それから、お話のございました、過去におきましては、例の経済安定本部五箇年計画というものに基きまして、年々の生産計画なり、あるいはそれに付随する電力とか資金とかいう問題が検討されて参つたのでありますが、安定五箇年計画によりますと、本年の生産というのは、たしか五千百五十万トンだつたと記憶いたします。その当時想定されました石炭消費者諸産業の伸びというものは、最初計画されたものに比較いたしまして、非常に低調に展開されたのであります。それが今日問題を起しましたもとでありまして、従来の安本五箇年計画を今後もそのまま踏襲することには、問題があろうと思います。もう一つは、だんだんと各産業が——決して今安定した状況とは考えておりませんが、安定に向うに従つて、動力源というものについて、石炭が占める地位がどの程度かということは、再検討されなくてはならぬのではないか、こういうふうに私思つておりまして、電源開発などの進む状況に従い、あるいは国際情勢が安定するということになれば、重油の攻勢などはさらに強まるという心配もございます。そういう点を考慮いたしまして、総合的なエネルギーの計画というものを別に考えなくてはいけないだろう、そういうことで経済審議庁と今話をいたしておるところでございます。  それからなお重油の問題について、一昨年あたり二十万キロリットルぐらいのものが、ことしあたりは四百万キロリットルになつたというお話でありますが、ことしの四百万キロリットルと申すのは、石炭にかわる重油だけではございませんので、全使用量を申しておるのであります。それから一昨年の私の数字は三十八万キロリットルとありますが、これは石炭にかわつて重油が使用された量だけであります。  それから弱粘も輸入しておるではないかというお話でありましたが、これは本年の製鉄について申しますと、年間の出銑計画を四百万トンといたしまして、石炭の全使用量がその計算で参りますと七百三十万トンほどになります。そのうち国内炭でまかなう分が二百八十六万トン、それをさらに細分いたしますと、強粘結が三十七万五千トン、弱粘結が二百四十八万トン、それから輸入炭が同じく二百八十六万トンでありますが、これは今の数字と逆になりまして、強粘結が二百四十八万トンで、弱粘結が三十七万五千トン、一応こういう計画になつております。これは弱粘の国内でまかなえない部分を輸入する、こういう計画でございます。この問題も先ほどちよつと申しましたが、下期の外炭輸入計画にあたりましては、もつと選炭をいたしまして、さらに国内供給量を増そうということを私の方で考えております。ただ従来供給された数字をかなり上まわる数字になりますので、その点で消費の側に立つ人の方からは、かなり不安があるのではないかということを言われております。私の方ではかなり詳細な数字を検討いたしまして、できるだけ弱粘なんかについては輸入を減らしたい、こういうふうに考えております。
  89. 片山信雄

    ○片山参考人 ただいまの御質問でありますが、貯炭増の問題と人員解雇の件であります。この点につきましては、先ほど参考意見として申し上げましたときに一言触れましたように、やはり今炭鉱の経営者が人員整理を出しております。その原因の中に、貯炭増加というのを出しているわけです。しかし、これはやはり政府あるいは国民あるいは炭鉱労働者を欺瞞する炭鉱経営者の捏造した言葉であると私たち考えるのであります。人員整理をしたから貯炭増加が防げるというものではないということなんであります。これを言いかえますと、炭鉱合理化という名前の人員整理でありますので、百人おつた炭鉱従業員で今まで月百トン生産しておつたのを九十人としたのでは、合理化ということにはならないのでありまして、今まで百人で月百トンを出しておつたのを、九十人で百トン出すというところに合理化の名目がありまして、炭鉱経営の合理化と人員整理というものを経営者は結びつけております。そういたしますと、今大体全国で三万人を上まわるような経営者の解雇総数の実態でありますが、三万人炭鉱労働者を首を切りましても、やはり出炭量というものは現在の出炭を維持したいというところに、いわゆる炭鉱経営者のいう人員整理とそれから企業合理化は、貯炭増加とは関連性が全然ない、矛盾があるという点が、私たちは言いたいわけであります。  それから機械化をやはり促進しなければならない。現在機械化がされておるのは、労働密度をただ上げるということだけに、経営者は機械化の主目標を置いておるようでありますが、これはやはり採炭切羽の機械化というものが、重点的に取上げられなければならない。採炭切羽の機械化と申しますと、やはり個人当りの能率というものはずつと上つて来ます。そうすると日本の総需要量といいますか、それと出炭量との問題が出て来ましようが、従来の重油転換あるいは外国炭の輸入というものを総括的に見ますと、大体二十八年度では、現在石炭の代替として使つておる重油を石炭に換算しますと四百万トンだという一つのことを言われておりますが、それと外国炭の四百万トン、これは必ずしも日本で産出する石炭では全部まかなえないにしましても、現在業者が手持ちしておりますところの四百万トンくらいの貯炭量に、大体重油転換でやつておるものだけでも該当するのではないか。こういう点からして、政府としても、やはりそこらに根本的な総合的な産業の計画性があつてよろしいのではないか。そうしますと、個人当りの能率がそれより上つて来ますと、やはりそこでは産業の総括的な問題あるいは国民生活の全般的な向上という面からしましても、当然労働時間の短縮ということがいわれるのではないか。労働者あるいは経営者が一体となつて能率を上げることによつて、それらの者を失業させて違う職業につかすということも必要でもありましようが、何といいましても、全般的に労働者の生活レベルを上げるということ、あるいは国民全般の生活を向上させるという大きな目標に合致させるためには、これはいずれの産業でもいえることでありますが、能率の上昇と同時に国民全般の生活向上というものが、必然的に伴つて行かなければならない。ただ、それをある一部の経営者が独占的にその利潤を追求することであつてはならないということを、私たちは言いたいわけでありまして、この点が経営者のいう合理化と、私たちの念願する産業の合理化ということについての根本的な相違ではあるまいか。  次に、昨年のストの問題でありますが、昨年のストでこういう結果が生じたのではあるまいか、またそのときの要求額があまりにも常識はずれではなかつたかという御指摘でありましたが、私たちは、昨年の炭労の要求として出しました金額は、炭労だけでなしに、大体総評傘下の各単産ともに、それくらいの要求額出しております。しかしながら、よその単産ではそういうような結果が起きなくて、炭鉱においてそういうふうな長い争離になつたということは、組合側要求額は、何もよその産業とかわつておらなかつた。特に炭鉱労働者のその当時の賃金というものは、坑内夫の平均賃金は大体月収一万円程度であります。しかしながら官公吏賃金——その当時出されておりました人事院の勧告においても一万二千円くらいの数字出しておりましたので、当然賃金の上昇ということが考えられたわけであります。ただ炭鉱労働組合賃金要求額が非常に高かつたからああいうふうに争議が長引いたということには、私は納得できない。そういうことを言われるならば、よその産業でもそういうことが起るだろうと思われるのに、よその産業ではなく、炭鉱労働組合でこういう問題が起きたということは、何に原因しておるかといいますと、そういうふうに炭鉱労働者賃金がその当時一万円程度であつたものを、よその産業ではすでに一万何千円という収入を月に得ておる。そういうふうにささやかなものであるにかかわらず、経営者が賃金引下げという態度で強硬に出て来た。そうして炭鉱労働組合の誠実なる要求にも応じなく、数次の申入れにもかかわらず誠実なる団体交渉が持たれなかつた。そうしてああいうふうな悲惨な状態に追い込まれた。炭鉱労働者としましても、六十三日というストライキは、実際身を削るような思いでありました。そういうふうな苦しい思いをして、これが故意にそういうことをした、あるいはみずからがそういう墓穴を掘つたというふうには、私たちにはどうしても考えられない。一日も早く正常な姿で自分の職場に帰りたいという素朴な観念は、やはり労働者が素朴であれば素朴であるほど、常に維持している問題でありまして、特に親子三代にわたるような炭鉱労働者の場合には、その職場の一つずつ、あるいは坑内の柱の一本々々にも、やはり親の代からの愛情のつながりかあるわけでありまして、こういうものを労働者みずからが妨害するというような考え方はとうていとらない。そういう点で、何が原因であつたかという点については、経営者も十分考えるべきである。そしてそういうふうな悲惨な状態にまで放任しておつた政府こそ、この問題についていま少しの考慮を払わるべきであるまいか。こういう点につきましては、私は政府が何も施策をしなかつたということだけ言うわけではございきましても、北海道、九州では非常な深刻な様相を呈しております。それにもかかわらず、政府としては何らの動きを示しておらない。今も畠山委員長から発表がありましたが、企業整備の該当者がダイナマイトで自殺をした。あるいは本日の新聞にも出ておりましたが、親子三人の炭鉱労働者が池にはまつて自殺をしておつた。こういうふうな悲惨な社会問題まで引起している。あるいはここ二、三日のうちには、予測しないような不幸なる事態が起らないとも限らない。こういう切迫したときにおきましても、なお何らの策が講じられないというところに私たちは大きな不満を申し上げたい。こういう致府の無為無策が、昨年の争議におきましてもそのまま出されて、ああいう結果になつた。従いまして、炭鉱労働者要求が不当であつた、あるいは炭鉱労働者が不見識なことをやつたから、昨年のようなことになつたのだという点は、私は当らないと思います。昨年の六十三日という長いストライキが重油転換という問題が起きたその原因の一つであるいう点については、若干認めてざるを得ないとしましても、それは何も炭鉱労働者の責任ではない。重油転換になつたこと、あるいは外国炭の輸入を促進させたことのしわ寄せが、全部炭鉱労働者の上におおいかぶさつて来ることに、私たちは不満を申し上げたいのであります。
  90. 吉武恵市

    ○吉武委員 ただいまの御意見でありますが、なるほど今度の人員整理の中には、合理化という点もあるいは含まれておるでありましよう。含まれておるかもしれませんが、しかし現実に今年は八百万トンの貯炭がすでにある。昨年の炭労ストの前九月は、たしか私は四百万トンかあるいは五百万トン程度つたと思いますが、それが今年は、もうすでに七月ごろから八百万トン台が出ておるという状況なんです。これは現実の姿です。そうしますと、合理化によつて整理するとかなんとかいう問題どころじやない。四千八百万トンの増産目標を立てておつたものが、四千四百万トンを下まわるというような状態になれば、これはやはり企業としてはほつておくわけに行かない。今年だけだ、来年はそうじやないというはつきりした見通しがあれば、労働者を犠牲にするということは私ども好まない。それは先ほど三井炭鉱からお話があつたように、退職の引当金があればそれででも一時をしのぐという方法もあるでありましよう。しかしながら、今の状態なれば、片一方では重油が入る。外国炭が入る。しかも生産目標はそういう状態で、貯炭があるということになると、これは企業として当然いいことじやないけれども、私はやむを得ぬ状態じやないかと思う。そこで、この問題の起つて来る原因は、要するに一つは高炭価であります。何といつてもコストが高い。外国のものを入れる方が安い。そうすると、企業としては、石炭に直接関係のあるものは遠慮するでありましようが、そうでないところから見れば、九州の石炭を買うのに比べて、外国の重油がそろばんをはじいて安ければ買うというのは、経済としてはやむを得ぬことであります。それをほつておいていいとは私は申しません。従つて通産省としては、そういう点は相当考慮を払つてチェックする手段は、私は当然とらるべきであると思うけれども、非常に内地炭価を高くして、それをただ法律の力だけに頼つてチエツクするということは、これは私は長続きがしないと思う。やはり国際経済の上においては、実力で闘うということでなければ勝てないと思う。  そのもう一つの原因は、先ほど申しましたように、何といつても争議で二月も休まれては困るというのが身にしみておる。これは私は現在の炭鉱労働者賃金の状況というものが、あれで十分だということを言つておるわけではありません。日本の経済の今日の状態において、労働者諸君の待遇というものは、私はよいとは思わない。ようやく戦前の率に実質賃金が返つて来たのでありますが、かりに返つて来ても、これはますますよくなるのが当然です。しかし、今の状態においては一拳にできない。昨年の争議も、皆さんが今お話なつたように、炭鉱自体がやつたわけではない、一般要求に従つて炭鉱がやつた。それはその通りです。それは総評がマーケット・バスケットという方式をとられて、そうして賃金闘争をされ、炭労がそれに乗つて出られたのであります。これは私はあなたに申し上げるわけではありませんが、総評というものについて私は意見を申します。今日の総評の態度というものは、私は、ほんとうにまじめに働かれるところの労働者の待遇を、ほんとうに考えてやつておられるのか。ほかに政治的な意図を多分に含めて、そうして労働者をかり立てて闘争々々、毎年のようにそういう状況である。その結果は外国炭やあるいは重油を入れて、結局自分ののどを絞めさせる。これはまあ総評は総評のお考えでおやりになることでありましようが、私どもとしては、はなはだ遺憾である。労働者のほんとうの実質を考えておやりになるのなら、いいけれども、昨年の争議などというものは、一面経済的な面があつたことは事実でありますけれども、その裏面に当るところに政治的な傾向がある。今年総評の大会においてとられた態度等を見ましても、私は多分に左翼偏向の傾向が出ておると思う。労働者諸君、特にまつ黒になつて働かれる炭鉱の労働者諸君には、私は感謝をいたします。石炭の増産から日本の産業というものが復興の緒についた。その点は非常にわれわれは感謝するのでありますが、そのまじめな何もわからない労働者諸君を、ただ政治的にかり立てて、そうして政治闘争の具に使う。その結果はどうかというと、外国炭や重油を輸入さして、そうして人員整理の結果を招いた。これは私ははなはだ遺憾に思います。あなた方は、炭鉱の多数の労働者の代表としてほんとうにお考えになつて、今ここへおいでになつておると私は思います。われわれも、もちろん協力をしたいと思いますが、ひとつ皆さん方も十分その点をお含みを願いたい。  私はこれで終ります。
  91. 赤松勇

  92. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 重油転換の問題が、先ほどから盛んに出ております。これは組合の方にお尋ねしておきたいと思います。先ほど吉武委員が、炭労の闘争のことを指摘し、あたかも重油転換がなされたのは、炭労争議が長引いたのが原因である、しかもそれは組合が起したのだ、こういうようなことでありましたが、なるほど炭労争議が重油転換をもたらした一つの契機になつたということは事実である。しかしやはり日本の石炭が重油よりも高いということが根本的である。さらにこの問題は、中山さんも指摘しておりましたが、中労委が入つて来ることを、むしろ拒んで逃げまわつたのが経営者だ。こういうことを言つておる点において、はたして経営者が将来重油転換のことを考えたら、こういう見通しのない経営者はもつてのほかである、むしろ経営者の見通しがないことがこれをもたらしたのだ。こういう意味において、労働者の責任を追究するということは、私は経営者としてはあり得ないと考えるのですが、一体経営者は団交の席上——ことに三井にお尋ねいたしますが、そういう責任の追究をされておるかどうか、お尋ねいたしたいと思います。
  93. 赤松勇

    赤松委員長 それでは片山君から発言要求がありましたから、片山参考人から答えていただいて、そのあと三井の畠山さんからお答え願います。片山参考人
  94. 片山信雄

    ○片山参考人 吉武委員からお尋ねがありましたが、昨年ストに入る前に、その当時の貯炭が四百幾万トンというように言われましたが、私たちが当時把握いたしました資料によりますと、七百二十万トンという数字が一応つかめたわけでありまして、現在約八百万トンの貯炭がありますが、あまり大差がないように私たち考えております。  それから高炭価の問題でありますが、炭鉱の石炭が高いから、やはり重油に転換するのだ、あるいは外国炭を輸入しなければならないのだという考え方の根本につきましても、炭労としましては若干疑義を持つておるわけであります。外国炭にしましても、重油にしましても、やはりドルで買わなければならない。そういたしますと、日本の産業でせつかく獲得しましたドルが、重油あるいは石炭を買い入れるためにまた流れ出る。そういうことをするよりも、獲得したドルでもう少し適切なる方法がとられないか。それらの問題を調整するためには、やはり国内炭で自給するような国全般としての考慮が払わるべきではないか。たとえば、石炭の国家管理といつたような問題、こういうふうなことまでも一応考えられて、総合的な一つの判断に基いて産業計画が立てらるべきではないか、このようにも考えるわけであります。  それから、総評の問題でありますが、総評が何か労働者の素朴な要求とは違つて、故意に何らか一つのものを持つておるというふうなことであります。左翼化という表現でなされましたが、私はこの総評の左翼化ということは、非常に納得行かない。どのようになつたら左翼になるのか、右翼になるのかという点については、私の方でお聞きしたい。労働組合が、ほんとうに労働者のために闘うようになつたのが左翼だと言われるなら、それは左翼でしようし、労働組合労働者のためでなしに、あるいは経営者と一緒になつて物事を考えるようになつたことが健全なる労働組合で、それが右翼だと言われるなら、それは右翼でありましよう。しかし私たちは、現在の炭労あるいは炭労が加盟しております総評というものは、最近こそほんとうに労働組合としての真価を出したのではないか。今までの総評あるいは炭労——これは日本の労働組合の全般にいえることでありますが、ポツダム組合だといわれておりました性格をだんだん脱却し脱皮しまして、ほんとうの労働組合の姿に返りつつあるということを私たちは指摘したい。このことが左翼化と言われるなら、私たちはそれは左翼化であろうというふうに認識をいたします。そういうふうな考え方で、総評の考え方は何も故意に労働者を苦しめる闘いをやつておるというふうには全然考えておりませんし、もしそういうことが組合員の一人々々に考えられるようなことがあつた場合には、炭労という労働組合あるいは総評という労働組合は、即日姿を消すであろうということを私は皆さん方の前に高言してはばかりません。ほんとうに労働組合労働者の真の意見を代表しておらないのだ、そういうものは組合員自体で労働組合という看板をはずす時期が必ず来る、このように考えております。  次に重油転換の問題で、多賀谷委員からの御質問でありますが、このことは御説の通りでありまして、私もそのように考えております。るる今まで申し上げました通り、重油転換ということが考えられる場合には、経営者としてなぜそのような態度をとらなかつたか。昨年の争議の原因が、やはり経営者にその責任の大部分があつたということを考えるならば、当然そのとき経営者はストのあとに来るいろいろな問題を総合的に考えて、ストライキに対する対策というものを考えなければならない。いわゆる労務政策というものも、ただ労働者からしぼれるだけしぼるというだけでなしに、労務政策というものは、会社の経営と密接な関係があるので、将来の会社の経営がどのようになつて行くかということを十分考慮して労務政策がとられてしかるべきである。しかし、その当時の経営者は、あまりにも労働組合の組織の破壊あるいは労働者を低賃金に押えつけることだけに狂奔いたしまして、あのような愚劣な態度をとつたことを、私たちは経営者に率直に責めたい。このように考えておるわけであります。
  95. 赤松勇

    赤松委員長 それからもう一つ、多賀谷君からの御質問ですが、値上げの要求をしたでしよう。そうすると、向うから値下げの回答をして来ましたね。そういう点について、中労委がいろいろあつせんしようとしても逃げまわつてつたという事実、そういう点についてどうかという御質問があつたですね。
  96. 片山信雄

    ○片山参考人 失礼いたしました。その点につきまして、昨年の賃金交渉の際に、炭労といたしましては、事態をこのまま放任することは、炭鉱労働者あるいは炭鉱の経営者の問題だけでなしに、社会的に波及するであろうという点を十分考慮いたしまして、連盟に対して再三団体交渉の申入れをいたしました。しかしながら、連盟としては団体交渉に応じなかつたわけであります。この間、中労委が入るということもありましたが、経営者は、なぜか中労委の介入を非常にきらつた。私たちもやはり風聞ではありますが、経営者が中労委の介入をきらつたことは、中労委が入つて来ると、炭鉱の経理がやはり俎上に上つて来る。そうした場合に、その当時炭鉱経営者がやつてつたように、利潤がほんとうにそれほど少かつたものであれば、あるいは賃金を下げなければならないような実態であつたならば、炭鉱経営者は中労委の前にその経理実態を率直にさらすべきでありましようが、しかしながら、なぜか経理実態を中労委に見せることを非常にきらつた。そのために中労委の介入を拒んだというようなことを聞いておりますが、しかしながら、経営者から中労委の介入を断るという明確な言葉を聞いたわけでなしに、そういうことを風聞として承つております。
  97. 赤松勇

  98. 畠山義之助

    ○畠山参考人 経営者の責任追究の問題でありますが、われわれとしても、一応追究の面については考えております。しからば、どういうことかと言いますれば、簡単に申しますと、先ほど申しましたように、昭和二十五年に一万二千人の希望退職を募集して強行いたしたわけでありますが、その後すぐ一月足らずにさらに人員を採用しております。現段階におきましては大体五千六百人ほどその後に採用しておりますし、あるいはまた企業の面においては、つい最近まで一つの企業に相当な資金を注入しておつたわけでありますが、それがこのような問題から、それも急激に廃止する、こういう非常に一貫性のない経営の方針であります。あるいはまたその他の問題におきましても、われわれといたしましては、さらにこういう点から考えて追究しよう一思つておるわけでありますが、しかしながら、交渉の決裂の状態が先ほども若干申し上げましたように労働協約の面で決裂したわけであります。それはどういうことかと申しますれば、先ほど申し上げましたように、このよつてつた原因は何か。この問題と、それからそのあとに起きる余剰人員を、しからばどうして整理するかという問題と、大体その二段階にわかれるわけであります。われわれといたしましては、先ほど申し上げましたように労働協約の実情から行きまして、まず先に、よつてつた原因を双方で相当慎重に協議する心要があるのではないか。従つて、その後にどういう結果になるか、また組合側が主張するところの、全然人員を整理しなくても現在の苦境を切り抜ける方法はないかいう問題、あるいはまた会社側が主張しておりますように、どうしても七千何がしかの人間を整理しなければならないかということにつきましては、やはりこういうふうな席上で双方相当審議しなければならない問題ではないか。しからば、その協議を経たあとで会社側の言う主張が通つたとするならば、当然整理する基準内容とか、あるいはまたその方向も示さるべきが至当であつて、そのよつてつた原因も、あるいは整理すべき基準内容も、あるいはまたその日にちまでも一挙に発表するということにつきましては、相当組合に与えるところの影響、あるいはまたその協議をスムーズに進ませるという問題、あるいは終戦来組合と会社がとつて参りました団体交渉の正常なルールに反するのではないか。従つて、そういう正常な形においてその会社、組合双方協議した上に立つて結論いかんによつては、当然そういう提案もなされるであろう。こういうのがわれわれの主張でありますが、会社側の主張いたしますのは、合理化の中に全部包含されておる、従つて組合側の主張に対してはどうしても了承できない。どうしてもこの整理基準を撤回しないわけでありまして、この協約の手続上の問題から交渉が決裂して、現段階になつておるわけであります。従つてそういう点から会社側がいろいろと説明いたしました内容には入つておりません。従つて、この当然終結される点につきましては、会社から提示された内容に関しまして、われわれといたしましても、十分にわれわれの主張を申し述べる。その段階において先ほど申しました山川社長以下現在の首脳者の責任はわれわれの角度から追求したい、かように考えております。さらに詳しく具体的なことを主張するならば、当然委員長さんに申し上げますが、ここに担当部長が来ておりますので、もしさしつかえなければ発言を許していただきたい。
  99. 赤松勇

    赤松委員長 この際委員の皆さんにお諮りをいたしますが、先ほど来問題になつておりました専売業績賞与の問題ですが、何か団体交渉が妥結をしたというふうに、ただいまお話がありました。それで一応御質問もありましたから、この際平林委員長と人間野専売公社総裁が来ておられますので、発言を求めまして、その結果を報告していただこうと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 赤松勇

    赤松委員長 ではさよう決定いたします。人間野総裁。
  101. 入間野武雄

    ○入間野説明員 平素いろいろの問題につきまして特に御配慮にあずかつておりますことを、まことにありがたいと存じております。過日来、業績賞与の問題につきまして組合側交渉いたしておりましたが、先ほど円満に妥結いたしましたので、この点を御報告申し上げまして、皆様方のただいままでの御配慮に対して、厚く感謝いたしますとともに、お喜びいただきたいと存じます。
  102. 赤松勇

    赤松委員長 どうも御苦労さんでした。実は本労働委員会におきましては、業績賞与の問題につきまして、公社側と全専売労働組合との間に、かねて団体交渉中でございましたこの件につきまして、また大蔵省の意向等につきまして、種々質問があつたわけでございますけれども、両者の間に合意の上でそういう妥結に達したということは、たいへん喜ばしいことだと思います。この際労組側を代表して平林委員長発言を許します。
  103. 平林剛

    平林参考人 私どもの業績賞与の件につきまして、国会からたいへん御心配をいただきましたが、実は昨日からほとんど徹夜で交渉を行いまして、本日ただいまより少し前に、双方意見に合致点を見まして、妥結をすることになりました。本来、この業績賞与につきましては、組合側仲裁裁定を中心にして解釈いたしますれば、特別に公社側と争うことなく、お互いに裁定に示された額で意見の一致を見るのが当然でありましたが、現在の大蔵省の政策、専売公社の立場から、今日まで紛争が長引いて参りました。私どもは、当初主張いたしましたように、裁定に示された一箇月分の業績賞与をもつて打切る決意で交渉いたしておりましたが、諸般の事情から大むね満足すべき結論に速しましたので、これで妥結いたしたのであります。これは私ども組合が公労法の趣旨を守ることを主張して団結して闘つただけではなくて、今回国会等において公労法の建前を守るべく、有形無形、間接的な御援助があつたから、政府並びに専売公社を今日の段階に招き寄せたものだと考えまして、この際国会の御努力に対して深く感謝の意をささげるものであります。なお、私自身といたしましては、本日の結論は必ずしも心から満足すべきものではありませんが、諸般の事情から妥結をいたしたのでありまして、公労法に盛られた精神の点から行きますと、画竜点睛を欠く点があると思います。しかしわれわれとしては、ごくわずかな段階にまで参りましたので、実質的にこれを解決することにいたしたのでありますが、公労法上における精神の欠けたる点については、今後の問題として処理をして参りたいと思うのであります。何分常に問題をはらむ公労法でありますので、国会においては、やむを得ず諸般の事情から妥結をしたわれわれの立場を御検討願いまして、今後の公労法改正において、この精神を生かしていただくようお願いをいたしまして、私の意見を終りたいと思います。
  104. 赤松勇

    赤松委員長 この際一言申し上げます。当労働委員会におきましては、公企労法の改正法立案が議員立法で提案をされまして、前国会以来継続審議中でございます。できる限り公労法の改正を急ぎまして、よりよい労使の慣行をしきたい、かように考えておるわけであります。本委員会におきまして非常な関心を持つておりました日米労務基本契約の問題及び今度の専売業績賞与の問題に関しまして、二つが、不満足でございましても、両者の合意を得まして、その円満なる妥結を見たということは、本委員会といたしましては喜びにたえません。これに関係されました各方面の皆さんの御努力に厚く敬意を表し、ここに喜びの言葉を申し上げる次第でございます。
  105. 山花秀雄

    山花委員 ただいま専売公社の総裁と専売労組委員長の両者から、ただいままで本委員会で論議の的になつておりました両者間の紛争が円満に解決したという報告を聞きまして、私ども非常に喜んでおるものであります。私どもは、専売労組が最も譲歩した線で、仲裁裁定の線でこの問題の解決をはかるという意気込みでやつておられますので、必ずこの問題は円満に解決するという一応の確信を持つておりましたが、大蔵当局関係もいろいろございましようが、了解するところにならず、そこにいたずらなる紛争が起きて、結論から申し上げますと、タバコの生産にも重大な影響を及ぼすような結果を生じておりましたことを憂慮していたのでございます。円満に解決いたしました以上、この問題について、もう論議することはございませんが、ただ一言お尋ねをいたしておきたいことは、大蔵当局最終的な了承のもとに、あとあと解決した事項について再び紛争のないような、そこまではつきりと解決したのであるかどうか。ただ専売公社と労組との間の解決点であつたかということを、多少私ども心配しておりますので、この点ひとつお答えを願えれば幸いだと思います。
  106. 入間野武雄

    ○入間野説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。本日妥結しました額につきましては、大蔵当局の了解を得ておるので、さよう御了承願いたいと思います。
  107. 山花秀雄

    山花委員 大蔵当局との御了解もつき、解決したということでございますから、この問題に関しては、もうほんとに円満に解決したと思うのでございます。  ここで、私として双方にお願いしたいことは、再びかかる紛争が起きないように、双方で十分それぞれの立場を了解し、納得の上で、今後の生産増強のために邁進されんことを切望いたしまして、ただいま人間野総裁の方からもおめでたの御催促がありましたから、おめでとうと申しまして、私の質問を終ります。
  108. 山本勝市

    山本(勝)委員 私はただいまの問題で、やはり国民を代表しておる国会議員として、公社の総裁とそれから労組とに申し上げておきたいと思う。     〔委員長退席、山花委員長代理着席〕 それは、妥結してまことにおめでたいということは私も同感でございます。しかしながら、専売公社というものは、ほかの個人企業と違つて、いわば国家の財産ともいうべきもので、もともと申しますと、国民の血税をもつてでき上つたといつても言い過ぎではない。従つて、ほかの私企業のごとくに、税金を納めるとか、あの厖大な設備に対して金利を負担しておるというようなことはないというわけだと思いますが、そういう特別に恵まれた一つの企業といえば企業であります。従つて、今後経営者と労働者との間にもんちやくを起さぬようにという他の同僚委員からの言葉がありましたが、もちろんそのことも私は希望いたしますけれども、しかし、それだけで経営者と労働者の間が円満に今後はかどつて行くというだけでは、全国民を代表する国会議員としてはとうてい満足できないのであります。国鉄も同様でありますが、専売公社という特殊の恵まれた企業であるということを考え、常に国家の財産ともいうべきものだということを念頭に置かれますならば、ただ経営者と労働者だけが幸福に暮すということで、それでうまく行つておるというふうに考えてもらいたくないのであります。今日国鉄問題も、決算委員会でしばしば問題になりましたが、だんだん追究して行きますと、結局国鉄の経営者が、国鉄内部のことだけをうまくやつて行けば、それで大成功だという考えで、国鉄の従業員、その家族、そういう者を幸福にして行くことができれば、それで国鉄の経営者としては十分に成功したものというふうに考えて、それが国家の財産である、全国民の血ででき上つたものだということを忘れたというか、軽く見たところに、ああいう大きな問題が起つた根源があるように思うのであります。ですから、私はこの機会に、この問題が妥結したことを喜ぶと同時に、専売公社内部をうまくやる、成績をあげるということ以上に、常に国家の財産であるということを念頭に置いて、労働者諸君も、また総裁においてもやつていただきたい、これが私のお願いであります。  非常にうまく解決できました、これが、ただいまこちらで問題になつております炭鉱問題におきましても同様に解決できれば、まことにけつこうでありますけれども、炭鉱のごときは、すでに終戦直後において昭和二十二年にできたあの復興金融金庫から借りた金は、ドツジがやつて参りましてから、昭和二十四年の春以来は貸し付けていない。わずか一年半の間に炭鉱が復興のために借りた復興金融金庫からの借金が今日なお三百何十億というものが残つておるのであります。そういう三百何十億円の炭鉱関係の国家資金が、もし規定通り引揚げられたら、おそらく全国の炭鉱は立ちどころにつぶれてしまうであろうと思う。そういうふうにして戦争の間に荒廃したところの産業を——炭鉱だけではございません、ほかの事業にいたしましても、とにかく急場にほつておくわけに行きませんものですから、国家が厖大な資金をつぎ込んで復興した。その厖大なる資金をつぎ込んだところにインフレーシヨンが起つた。そのインフレーシヨンの弊害は、全国民がこれを負担したのであります。この全国民がその弊害を負担したところの根本になつておる国家が、どんどん金を出して硫安をつくり石炭をつくるということをもしやつておらなかつたら、おそらく今日の硫安会社も、今日の炭鉱業者もないと私は思つておるのであります。要するに、私の考えでは、先ほど来いろいろと理論闘争も行われましたけれども、こまかな重要な問題だとか、あるいは外国炭の問題だとか、あるいは炭鉱業者がやり方がまずいとか、あるいは労組の方の要求がどうだとかいうふうなことも、もちろんこまかく言えばあるでありましようけれども、そういう問題よりも、もつと大きく戦争で荒廃したものを、あの大きなインフレーシヨンを起すだけの厖大なる国家資本でどうにかこうにか無理無体にここまで復興して来たというその無理が、今日あらゆる問題になつて現われて来ておる。ですから資本家のやり方にも、労働者諸君の行き方にも、いろいろ考えるべきところはありましようけれども、それよりも何よりも、もつと根本は、本来ならばつぶれてしまつておるものを、無理にここまでささえて来たというか、仕上げて来たところにその無理が出て来ておるんだと私は思うのであります。そういうわけで、専売公社だの国鉄だのというふうな、金利も負担せず、また税金も納めないというふうなところは別でありますし、また少し値上げさえすれば、もうそれで解決して行くような国家の独占事業は別でありますけれども、そうでなくて、国内におきましても、また外国との猛烈な競争をして行かなければならぬような日本の産業は、復興したの独立したのと申しますけれども、一皮むいて中を見ますと、どの事業も金利の負担にもまじめには耐えられない。資本の食いつぶしをやつて今日の生活程度を維持しておるのだと私は思う。先ほど吉武委員から、まことに傾聴すべき意見がありましたけれども、ただ一言吉武委員が、消費生活はようやく戦前のレベルに復帰したという言葉がついでに申され、また労組関係の方からも、国民の消費生活というか、生活程度を向上させることが大切だというふうなことが言われましたが、私の考えはまるで違う。私は今日の日本の消費生活は一般に高過ぎると思う。戦前の水準に達したというのは、個人のさいふから出した生活費だけを計算するから、九六%まで復活したということを審議庁が言つておるのであつて、そうではなくて、国会の資金あるいは会社の金、そういうもので飲んだり食つたりする消費生活を加えますと、個人が自分のさいふから出したものだけが九六%復活したのであつて、その他の公の金や会社の金で飲んだり食つたり旅行したりというものを入れますと、私は戦前よりもはるかに高くなつておると思う。ただ例外があります。例外はありますけれども、結局今日の日本の産業を根本的に解決をするためには、お互いに争つてつたところで解決しない。それよりも、勝つた国ですらも、もつと貧しい生活をしておるのでありますから、われわれはただアメリカの援助とかあるいは特需とか、あるいは資本の食いつぶしとかいうふうなことで、消費生活の水準を維持して行くの、あるいはこれからもつと向上さすのといつておるようなことは、これはとうていできることではないので、ただ苦しみをみんな平等にするということが大切であります。平等といつても、機械的な平等ではありませんけれども、惱みをともにするということを、吉田総理大臣以下国会議員も官吏も各種の産業の者も、資本家も、労働者も、ともに抱き合つて泣いて行くという気持は必要でありますけれども、要するに皆がともにもつと生活を下げて、窮乏に耐えて、そうして手を引き合つて行くという立場をとらぬ限りは、やれ資本家がいかぬの、労働者がいかぬのと言つてつても、私は、とうてい日本の産業は持つものではないと思う。ですから、もちろんこまかな点の改むべき点もありますけれども、合理化がどうの、計画がどうのなどと考えても、われわれの力では、そういう合理的な方法などで解決するのには、あまりに問題が大き過ぎる、私はかように考える。結局天佑神助を祈りながら、お互いに手を握り合つて行くという、そういう神の力を借りなければ突破できないような事態だと私は思う。アメリカのような国ですらも、アイゼンハウワーが、全能の神の援助なしではアメリカの当面している問題は解決できぬと言つておる。いわんや、敗戦国の日本が、今日まではとにもかくにもアメリカの援助だの、あるいはその他いろいろなことで、あるいは資本の食いつぶしでやつて来ましたけれども、今後はとうていこれではやつては行けない。総合開発などと言つておるが、片つぱしから国土が荒廃にまかされておる。どんどん山は流れ、町が埋まつて行くというように、一方で国土が荒廃にまかされておりながら、他の一方で国土総合開発などという偉そうなことを言つてみたり、あるいは金利の負担もできないような海運業に金の面の援助をしておきながら、海運の振興などと言つておるが、振興どころの騒ぎではない。利子の負担をしてやらなければつぶれてしまう。炭鉱もこれは同様だと思つておるのでありますから、私は、少しほかの方と考えは違うかもしれぬが、こまかいところで対立することではとうてい解決できない。全部が苦しみをともにするという意味において、これは解決して行かなければならぬ。およそ職業を失う、仕事を失うということほど、人生にとつて悲惨なことはありませんから、従つて今職を失うという人がいかに真剣に闘おうとするか、その気持はよくわかります。よくわかりますから、この闘う気持は、多少その中に不純なものや不合理なものがありましても、労働省にいたしましても、政府にいたしましても、職を失う者の気持というものは十分頭に置いて解決に当つてもらいたいと思うのであります。しかし問題は、結局先ほど申し上げましたように、そういうこまかなことでは解決できない事態だということを、私は申し上げて、ひとつ参考にこれをお考え願いたいと思う。これは質問ではありません。専売公社の妥結を喜ぶという声ばかり起りましたから、ただ喜んでおるだけでは困るということのついでに、ほかの産業は専売公社のようには恵まれておりませんよということを専売公社の方もよくのみ込んでお帰り願いたいということを一言申し上げます。
  109. 入間野武雄

    ○入間野説明員 専売公社に関するただいまの御意見につきましては、とくと拝承いたしました。御承知通り、私どもは予算で縛られて仕事をいたしております。ただ、四万従業員をかかえておりますので、この人たちが幸福になれかしと常に祈つております。そうだからと申しまして、私は決して予算を濫費する心持はありません。不肖就任日なお浅いわけでございますけれども、できるだけ予算を節約して、少しでも多くの納付金を納めて国家財政に寄与し、また一般の負担の軽減に多少なりともお役に立つならば仕合せであると常に念願いたしております。先ほどの御高説はとくと拝承いたしました。ありがとうございました。
  110. 中原健次

    ○中原委員 いまさらこのたびの専売公社仲裁裁定の問題に関することについてお尋ね申し上げる必要もないし、またそれに対しましてとやかく御答弁を求めることも差控えたいと考えておりましたが一つだけお聞きしておかなければいけないと考えますから、老婆心ながらつけ加えてみたい思うのであります。そのことは、今度の専売公社労働組合紛争の原因は、何と申しましても、公労法に示されました仲裁裁定——労使間の紛争を処理するための手段として、本来ならば労働者に争議権を与えて、その争議権の正当なる行使を通して解決へ持つて行くというのが、当然あるべき労働手段であつたと思うのであります。しかるに、そのことが法によつて拒否されて、そのかわりとして、仲裁機関による仲裁制度が設けられ、その仲裁機関としての仲裁委員会が下した裁定に対して、しばしば政府の方の一方的な解釈によつてこれが実現をはばまれ、従いましてその三十五条の示すところを蹂躙する、こういうことが繰返されて今日に至つておるわけであります。もちろん小坂労働大臣によると、仲裁裁定は、ほとんど完全に実施されておるのだそうでありますけれども、労働組合の側から考えましても、おそらく公社の側におかれましても、第三者として公正に見ましても、これはまことに責任のない、ただその場のがれの体裁をつくろうた御答弁でしかなかつたのでありますが、そのような関係から、今度の業績賞与の問題に関しましても、先ほど今井仲裁委員長のお説の中にもありましたように、これは長い間の懸案でもありましたので、これをいまさら紛争に持つて行かなければ解決せぬような、そういう問題ではなかつたはずであります。しかるに、大蔵省当局の御解釈がまことに念が入りまして、こういうことになつたものと私どもは見ております。本来ならば、これはもうお盆の前に、りつぱに、労働者側のいまさらのような要求をまつまでもなく、仲裁裁定の示すところに従つて、話のわかる結論を示さるべきであつたと思うのでございます。しかるにそうならないで、今日に問題が持ち越され、せつかく仲裁裁定で示されたものを、また労働者の力をもつてこれを解決しなければならぬというような妙なことに歪曲されておるのです。これに対しては、労働省当局の先ほどの御答弁でも、ほんとうははなはだ不満足であります。一体どういう立場から物を見ておるのか、私どもは了解に苦しみます。そのような問題でありましたので、できればここで大蔵省当局から、この結論的な数字を出すのに時間のかかつた経過なり、あるいは一応出されたはずのパーセンテージなりというもののよるところの根拠、こういうものを私ははつきり聞きたいところなんです。なぜそういうような計数をお出しになられたか。大体裁定によれば、超過部分に対する少くとも四分の一というわくがある。しかもその四分の一は、しかしながら一月分以内で、以上ではないというふうにさらに念が入つておるとすれば、もうそのわくだけで考えれば、結論はりくつの余地も何もない。ことに三十二億に対する職員諸君努力が、その中でどれだけの地位を占めるかということについては、これはいまさらそれを検討しようとするところに、実はなるべく職員諸君努力に対するパーセンテージを極力押し下げて行こうという努力があるということさえ、われわれはうかがわれる。でありますから、かれこれ考えますと、この紛争がとりあえず、本日三者の方が一応不満ながらも一致を見た。つまり労働組合側の御報告に基けば、何かかなり苦しいところがあるようにうかがい知るわけでありますが、しかしそれにもかかわらず労働組合ががまんして、三者の妥結のために努力をせられたということにつきましては、私どもは、むしろ労働組合側の痛苦がその中に内在しておる点を察知することができるようなわけであります。従いまして、ただいま山本委員からいろいろ御注意があましたが、その御注意にもかかわりませず、この公共企業体に関する労使の問題については、特にそういういろいろ複雑な内容が伏在するわけであります。そういう点も誤解のないように御理解が願いたいと思うのであります。そのことが、今後私は、これらの諸問題をほんとうに正しく導き上げることになるものではないか。第三者側の誤解がありますと、やはり問題が妥当公正な結論に達しがたくなるのではないかということをおそれますので、一言申し上げるわけであります。  なお、今後本委員会でも、また本委員会だけでなくて国会外におきましても、労働問題が事実当面複雑な様相を持つて台頭いたしております。こういう段階でありますだけに、それだけに、少くとも本委員会といたしましては、きわめて適切なる、妥当なる判断の上にこれらの問題を考えて行かなければならぬ。こういうふうに思いますために、一言蛇足でありますけれども、この問題が、決して専売公社が特に恵まれておるから、こういう問題を引起したのではなくして、むしろ解決するための実力が押えられておるために、仲裁委員会裁定にそれを求めた。その裁定に対する大蔵省当局の理解が非常に乏しかつた、こういうことがこの紛争をあえて遷延せしめたのでありますから、この点をつけ加えて明確にいたしておきたいと考えます。ただ一言私の見解を申し上げまして、この問題の妥結に対する喜びを付言いたします。     —————————————
  111. 山花秀雄

    山花委員長代理 多賀谷真稔君。
  112. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 二、三点お尋ねしたいと思いますが、先ほど片山参考人は、むしろ今度の人員整理によつて、残された人員によつて増産がされる、こういうような見方をされておつた。また同僚議員であります吉武委員は、現在の貯炭を一掃するために生産制限がなされるべきが妥当である、こういう食い違つた意見が述べられておりますが、私は、これは両方とも真理があると思うのです。大局的に見ますと、石炭業界としては、やはり生産制限の方向に行つておる。そこで各企業体は、おのおの一〇%ないし一五%を目標として生産制限をしておる。しかし、事実裏面においては、各企業体は残された人員で何とか増産しようという動きになつておる。なかんずく、販売市場を確保したい、お客さんをぜひ逃がしたくないというところで、むしろ小さな山から石炭を買つてでもこの関係を結んでおきたい、確保したい、こういう動きになることは当然であろうと思うわけであります。そこで私は、この全般的な傾向としての出炭抑制並びに生産制限は、高炭価の問題について考えますならば、むしろ高炭価問題の解決でなくして、この高い現在の炭価を維持するための炭鉱経営者の政策であるように考えるわけでございます。そこで考は、過般西日本の水害後の労働事情並びに現在起きております紛争につきまして、持永委員あるいは荒木委員とともに各炭鉱をまわりまして、労使双方意見を聞きました。どの経営者に、一体炭価は下るんですかと聞きましても、だれも明確な返事はされない。そこで私は三井の労働組合にお尋ねいたしたいと思いますが、経営者は、今度の解雇で一体炭価が幾らくらい下るか、またいつごろからそういう事態になるか、こういうことを明確に示しておられたかどうか、お尋ねいたしたいと思います。
  113. 畠山義之助

    ○畠山参考人 われわれに対する説明の範図では、コストは下るとは申しておりません。ただ十何億かの赤字になる関係上、どうしても、本来ならば一万百余名の人員を整理しなければならないところであるが、今回の場合は若干控えて七千余名である、こういう説明でありましたので、その面から行きましても、あるいはわれわれに会社側が出しました経理上の説明から行きましても、この高炭価、いわゆるコストは下るとは毛頭考えておりません。従つて、どの程度下るかという質問に対しても、会社側の方といたしましては、どの程度下るかという確実なる回答はいたしておりません。従つてわれわれといたしましては、先ほど申し上げましたように、これは一般的にいわれております炭価の引下げ、いわゆるコストの引下げということは表面的でありまして、実際問題といたしましては、さらにこれ以上の利潤を追求する一つの手段にすぎないのではないか、かように考えておりますので、先ほど申し上げましたように、はつきりといつごろからどれくらい下るかという回答はいたしておりません。
  114. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 三井の労働組合にお尋ねいたしますが、三井の石炭は売れない石炭ではないと常識的に考えられるわけであります。そこで全般的な貯炭の状態を見ましても、六月から七月にかけまして、貯炭は、増勢の傾向を一時停止しております。さらに八月十日、二十日と参りますと、速報によりましても、事実貯炭は下つている。今から需要期に入る状態になつて、貯炭はこれ以上増加するどころか、むしろ減じて行くというのが私の見方でありますが、一体三井は、現在貯炭の状態はどうなつておるか、お尋ねいたしたいと思います。
  115. 畠山義之助

    ○畠山参考人 われわれにこの案を出された当時の貯炭といたしましては、大体五十万トンちよつとあつたわけであります。従つて三井の場合の経理状態の本質的な説明の仕方といたしまして、先ほど説明申し上げましたように、日本でも一番大きいと言われている九州の三池の事業所が一番問題であるわけでありまして、たまたま言われているところを聞きますれば、三池の貯炭が二十五万トンになつた場合には、経理面的にも相当切迫した状態になる、こういうような一般鉱山内部のうわさであります。この三池の貯炭におきましても二十万トンちよつとまでは先般行つたわけでありますが、三池の貯炭すらも現段階では大体十万トン。従つて三井の鉱山全体で最高度に行つた場合の貯炭の数は、先ほど申し上げましたように、五十万トン前後でありますが、現在は四十万トンを割つているというような現状でありまして、彼らが取上げた一番の時期といたしましては、夏期の需要の時期が一番問題でありまして、われわれといたしましても、これからの需要度を増す場合に、会社がいう九月末までには全国貯炭が一千万トン以上も増加するという前提のもとに、また今後もこのままの形ではたして増加するかどうかということについては、相当問題があると思う。従つて、その点から考え、あるいはまた三井鉱山のただいまの状態から行きまして、他社より品質あるいはカロリーの程度におきましても悪いということは、われわれ毛頭聞いておりません。あるいは現在出ております問題が具体化する前に、彼らがどのようなことを言つてつたかということをあえて申しますならば、少くとも炭鉱界の日本全国の出炭量の中でも何割というものを出炭しておる。あるいはまた会社の経理状態からいつても、経営状態その他の問題におきましても、炭鉱界では一方の雄である。従つて日本一をあえて彼らが唱えておつたということも、私が先ほどから説明いたしました経済力からいたしましても、そういうように豪語してから何日もたたないうちに、一番悪いという経理状態説明があつたということは、われわれといたしましては、どうしても納得が行かない。七千有余名の人員をどうしても首切りしなければならないという観点は、どの点からも生れて来ないと、われわれはかよう考えております。
  116. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 三井の先ほどの報告で、計画性のないという点を強調された中に、昨年企業費を投入して事業をやつたけれども、現在の状態ではそれをやめておる、こういう報告がなされておりましたが、具体的にはどういう炭鉱であるのか、またどういう状態であるのか、簡単でよろしゆうございますから御説明願いたいと思います。
  117. 畠山義之助

    ○畠山参考人 具体的に、簡単に説明いたします。先ほど劈頭に申し上げましたように、三井鉱山の事業所は六つでありまして、従つて他社が言われておるように、埋蔵量がなくなつて坑をやめるという事業所は一つもないわけであります。従つて埋蔵量はおそらく日本全国で一であるというふうに彼らも強調しておりますし、われわれもその点は了承しておるわけでありますが、この問題につきまして一つの例をあげますならば、北海道の砂川鉱業所の例でありますが、彼らの言つております内容では、三坑という坑と文珠という坑が大体廃坑しておるということになつております。この三坑と文珠の問題につきましては、今こういう時期になつたということでなく、すでに何年か前からこういう問題があつて、斜坑では限度に来た、いわゆる経費のかかることから縦坑に切りかえなければ、どうにも維持費の点で継続できないということは、彼らが何年か前から考えておつた問題であります。従つて、この問題につきましては、二十六年度に終戦以来の最高の利潤を上げた場合に、どういう面へ企業費の注入をしておつたかと言いますれば、斜坑では、すでに底をついた企業費の注入ということはいたしておりません。もちろんその反面には三池の初島、砂川の一坑の縦坑の問題とか、そういう企業費の注入をいたしておりますが、しかしあの石炭が一番需要度を要請された当時において、どういう政策をしておつたかというと、やはり利潤を上げる、いわばもうけ主義一本で、炭鉱の言葉でいえば、たぬき掘りというので、石炭を掘ればよいという全然計画性のない方法で石炭を出すという一方に偏した経営の状態であろうと、われわれ自体もその面についてある団体交渉の席上で追究したこともありますし、あるいはまたこのままの採掘方法で行つたならば、将来はどうなるかということの面の追究をいたしたこともあります。そういう面から行きますれば、先ほど申した砂川の三坑とか文珠の場合、やはり斜坑でこれ以上何とか切りかえようという考え方のもとであろうと思いますが、つい最近まで相当数の企業費の注入もいたしておりますのが現状であります。この問題が、しからば最近いわれているところの貯炭の問題とか、あるいは企業費云々という問題にからんで、もしやるとするならば、あまりにも無計画であり、あまりにも見通しのない経営のやり方ではないか、そういうふうに考えて、私たちは企業費注入という面から追究する必要性も生れて来るのではないか、かように考えております。
  118. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 われわれが仄聞するところによりますと、今度何パーセントでありますか、はつきりわかりませんが、一〇%ないし一五%、こういう数字を各炭鉱は申し合せて出炭抑制をする、こういうように聞いておるわけであります。これは独禁法が改正になりましても、やはり公正取引委員会の認可がいる問題でありまして、こういう事実に対しましては、国会議員として非常に注目しているわけでありますが、組合として、こういう申合せがあつたか、なかつたか、これがわかりましたらお尋ねいたしたい。
  119. 畠山義之助

    ○畠山参考人 申合せがあつたという確聞は、われわれもいたしておりませんが、しかしながら先ほどからいろいろ申し上げました三井鉱山の場合の経理状態の問題、あるいはまたコストの問題から行きましても、どうしても他社と同一に急激な首切りをやらなければならないという問題は、どうしても生れて来ない。こういう面からいいますれば、やはり三菱が出、三井が出、あるいは全然首切りをやらないといわれる北炭、太平洋においても、やはり同一の問題において同種の首切りが出ている。この問題を逆に考えて行つた場合には、あるいは石炭鉱業連盟の中で、そういう同種の首切りあるいは企業の整備をしなければならないという申合せがあつたんじやないかという判断は与えておりますが、しかしながら、どこで何日にどういうことを申し合せたかということについては、はつきりした確聞はいたしておりません。     〔山花委員長代理退席、委員長着席〕
  120. 赤松勇

    赤松委員長 多賀谷君、いかがですか、きようはもう五時半になりましたし、藤田義光君もあす質問されるようですから……。政府の通産大臣も、労働大臣もあすお見えになるようですから、引続き明日やるということにして、本日はこれで散会したいと思いますが……。
  121. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 石炭局長の気持はよくわかりますが、通産大臣に特に御出席願いたい。
  122. 赤松勇

    赤松委員長 それではさよう御了承願います。  なお石炭鉱業の争議関係につきましては、次会にも継続して調査を進めたいと存じますから、本日御出席願いました片山参考人及び畠山参考人の両君は、次会にも御足労ながら再び御出席願いたいと存じますから御了承を願います。  本日はこの程度にとどめまして、次会は明三日午後一時より開会いたすこととし、これにて散会いたします。     午後五時二十八分散会