運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1953-08-06 第16回国会 衆議院 労働委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年八月六日(木曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長代理理事 矢尾喜三郎君    理事 持永 義夫君 理事 佐藤 芳男君    理事 山花 秀雄君       池田  清君    田中伊三次君       吉武 恵市君    荒木萬壽夫君       黒澤 幸一君    多賀谷真稔君       井堀 繁雄君    長  正路君       中原 健次君  出席政府委員         警  視  長         (国家地方警察         本部警備部長) 山口 喜雄君         総理府事務官         (調達庁労務         部長)     中村 文彦君         大蔵事務官         (主計局給与課         長)      岸本  晋君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      龜井  光君  委員外出席者         警  視  正         (国家地方警察         本部警備部警備         第一課長)   三輪 良雄君         外務事務官         (国際協力局次         長)      関 守三郎君         労働事務官         (労政局労働組         合課長)    山崎 五郎君         日本専売公社職         員部長     本田 榮一君         参  考  人         (全専売労働組         合執行委員)  遠藤 留藏君         参  考  人         (全専売労働組         合副中央執行委         員長)     齋藤 一雄君         参  考  人         (全駐留軍労働         組合中央執行委         員長)     市川  誠君         参  考  人         (第二港湾駐留         軍要員労働組合         闘争委員長)  中島 博佳君         参  考  人         (横浜陸上輸送         部隊労働組合執         行委員長)   平野團十郎君         専  門  員 濱口金一郎君     ――――――――――――― 八月六日  委員福永健司君辞任につき、その補欠として倉  石忠雄君が議長の指名委員に選任された。 同日  倉石忠雄君が理事補欠当選した。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  小委員補欠選任  労働行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 矢尾喜三郎

    矢尾委員長代理 これより会議を開きます。  本日赤松委員長は午前中事故がありますので、赤松委員長が見えますまで、私が委員長の職務を行いますから、御了承を願います。  労働行政一般について調査を進めます。  本日ただいままでにお見えになつております参考人は、駐留軍労務者争議関係については、市川誠君、中島博佳君、平野團十郎君でございますから、御了承を願います。  それではまず参考人各位の御意見を聴取いたしました後に質疑を許します。市川参考人
  3. 市川誠

    市川参考人 ただいま委員長から御指名をいただきました全駐留軍労働組合中央執行委員長市川誠でございます。現在私どもの加盟の組合に発生いたしておりますところ争議の問題につきまして、参考人として以下陳述をいたします。  九州の福岡小倉支部の問題でありますが、この支部におきましては、数箇月以前から、職場に起つております労働条件の問題につきまして、その改善を要求いたしまして、日本政府代表でありますところ渉外労務管理事務所長並びに知事に対しまして、交渉をいたしておりました。小倉支部の要求しております項目といたしましては、十項目ございまして、その一つは、シエン軍曹追放、第二項としてはフォーマン吉森合田追放、第三項としては、PMOの矢場、松崎両名の解雇取消し、第四項としては、同じくPMOの芦川の追放、第五項としては、普通警備員として勤務いたしております者の給与改善のために、この職種保安警備員に切りかえるという問題、第六番目としては、山田の解雇取消し、第七項としては、小倉のTBPの北原の解雇取消し、第八番目としては、労働者に濫発されておりますところ警告状の廃止の問題、第九番目としては、軍直接雇用労働者労働条件給与等政府雇用労働者並改善すること、第十番目としては、直接雇用労働者に関する労働条件改善の問題についての団体交渉の再開、以上の十項目につきまして、県当事者並びに渉外労務管理事務所と数箇月にわたつて交渉いたして参つたのであります。  組合側誠意をもつてあくまでも平和的な交渉によつて解決をしようというこの態度に対しまして、政府出先機関でありますところ県側渉外労務管理事務所におきましては、一向に誠意が示されませんので、小倉支部といたしましては、やむを得ず最後の手段といたしまして、七月の二十八日に福岡県知事にあてまして、ストライキ事前通告行つたのであります。全駐労の組合といたしましては、調達庁との間に締結しております労働協約におきまして、全国的な規模のストライキの場合には五日前に、地方的なストライキの場合には二日前に事前通告をすることが定められておりますので、この労働協約に定める事項を私どもは守りまして、この事前通告行つたのであります。  この通告は、七月三十一日の午前八時より八月五日の午前八時までの間において、四十八時間のストライキに突入するという通告であります。通告をいたした後におきましても、あくまでも平和的な交渉によつて解決をする努力をいたしておりましたので、実際にストライキに突入いたしましたのは、八月三日の午前零時から四十八時間のストライキに突入いたしたのであります。このストライキ突入後に幾つかの事件が起つております。以下それらについて申し上げたいと存じます。  その一つは、警備隊勤務特殊警備員であります水岩光次に対するところ傷害発砲事件であります。特殊警備員水岩光次は四十四歳でありますが、小倉支部城野分会――ここの職場は死体の処理をいたしているところであります。ここに勤務いたしておつたのでありますが、八月三日の午前一時に勤務明けとなつて帰りまして、同日の七時に、ストライキに入つております支部ビケ隊に参加するために、表門に集合いたしたのでありますが、支部ピク隊編成都合によりまして、八時三十分ごろ一旦家に帰宅をいたしました。翌日の八月四日の午前七時四十分ごろ、ピケに参加するためにキヤンブ表門に集合いたしまして、八時三十分ごろ指定された部署に同僚の矢頭政太とともにピケラインについたのであります。水岩の指定された部署は、表門から少し離れた場所でキヤンプに沿つた道路に面しました金網べいのところでありました。この金網べいは、一度破れたことがありまして、その後修繕をされていたのでありますが、今回のストに際して、軍側でわざわざこの金網を破りまして、そこからスト破りを入れるために、ちようど人がくぐれる程度に穴が明けられたところでありました。そこに水岩矢頭の二名がキャンプの方に背を向けてすわつていたのであります。  午前九時五十分ごろキャンプの中を巡回していたところアメリカ軍将校――これは中尉と報告されておりますが、これが一名、兵か下士官か作業衣のため不明でありますが、四名のアメリカ軍の、計五名がやつて参りまして、キャンプの中から声をかけたので、両名は一度振り向いたのでありますが、何を言つたかわからないので、元のようにキャンプに背を向けて向き直つたところ、再び声をかけられたので振り返つてみますと、今度は将校ピストル水岩の胸に突きつけていたので、二人とも非常に驚いて立ち上つたところ兵隊の一名が金網の破れたところからペプシコーラのあきびん水岩を目がけて投げつけ、頭にぶつけたので、水岩は頭に手をやつてみましたところ、血が流れ出て来たので、驚いて逃げ出しましたところ、走つて行く背後からピストルを発射されたのであります。ピストルによるところのけがは幸いになかつたのでありますが、あきびんを投げつけられたことによりまして、水岩は頭部に全治二週間ほどの負傷を負つたのであります。  次の事件といたしましては、八月四日の朝でありますが、北方分会ピケットラインにおきまして、徒歩で来ましたメイドさんに対しまして、ピケ隊員ストライキ協力方説得中、ゲートに出ていたところMPが上空に空けてピストルを発砲し、ピケ隊に対して威嚇行つた事件があつたのです。幸いこれによるところ負傷者はなかつたのであります。たまたく以上八月四日に、軍側将校あるいはMP等の、ストライキピケ隊に対するところの二つの威嚇発砲事件が起つたのであります。  八月三日の零時からストライキに入つたのでありまして、もちろん三日にも若干のトラブルがありました。たとえば、八月三日の昏どろ、キヤンブ小倉正門分ピケットラインにおきまして、高速度で運転して来た軍用車のバンバーにひつかけられて負傷したり、またバスの中から、ピケ隊員日本人労働者が乗つておりますので、説得しておりてもらうように話しかけておる際に、兵隊が車を洗うところのブラシでなぐりつけましたために、二、三名の軽傷者が出たというような事件があつたのであります。四十八時間のストライキ中に、この種事件が起つたのであります。  さらにこの争議に関しましての問題といたしましては、八月の四日に至りまして、ロックアウトというような新しい事態が起つております。この点につきましては、八月四日の午前十時四十分ころ、小倉総合司令部司令官アルホード大佐の名前によりまして、渉外労務管理事務所長あてに、次のような文書が出されました結果、八月五日、事実上のロックアウトが行われるというような事態になつたのであります。以下通告文要旨を読んでみます。  一、今次ストライキ基本点となつている、組合が主張する十項目については、組合、貴事務所――これは労管をさしております――及び軍の間に、満足すべき協定に定していない。  二、本賞は問題点となつている十項目についての満足すべき協定ができるまでは、現在のストライキに参加している従業員が、当該施設に復帰することができないことを通告する。  三、上記協定は書面によつて作成され、かつ労管所長労組委員長小倉総合補給司令官により証明されるべきものである。  四、本官は貴下に対して、このことを遅滞なく知事組合長通告することを要求するとともに、貴下はさらに収入の道を制限された従業員生活を救済するため、上記協定ができる限り速やかにできるよう、交渉の準備を進めることを要求する。 以上が通告文要旨であります。この通告によりまして、組合側といたしましては、三日の零時から四十八時間のストライキに入つたのでありまして、五日には、労働組合側といたしましては、職場に復帰して就業する態勢にあつたのでありますが、この通告によりまして就業の意思というものは打切られたというような状態になつたのであります。全駐労といたしましては、この通告に関しまして、小倉支部報告を受けましたので、私どもといたしましては、政府と結んでおります労働協約におきまして、双方が争議行為事前通告をする義務を、労働協約の二十七条の二項によつてつております。この場合におきましても、当然政府側ロックアウト措置をとる場合には、労働協約の二十七条の二項によつて、二日前にその通告がなさるべきものであるにもかかわらず、抜打ち的にこの措置がとられておることにつきまして、中央におきましては、調達庁に対しまして抗議を申し入れました。なお、さらにこの通告は、小倉総合司令部司令官の名によつて出されておりますが、この種の労働組合ストライキに対する対抗措置としてのロックアウトが、現地司令官の一存によつて措置されたものであるか、ないしは極東陸軍部隊司令部指令あるいは極東軍司令部指令によつてなされたものであるか、この間の事情を明らかにして、なるべくすみやかに組合側に回答するように調達庁に申し入れたのであります。この申入れに対しましては、ただいままで政府側から何らの回答に接しておらないのであります。  しかし現地におきましては、組合といたしましても、この措置に対しまして、小倉支部から政府代表機関でありますところ知事に対しまして、抗議を申し入れ、折衝いたしたのであります。もちろん小倉支部といたしましても、要求の十項目に対するところの具体的な解決につきまして、政府代表並びに軍代表を交えまして、いわゆる三者の交渉会議を持つたのであります。この交渉会議は五日の午後一時から六時まで持たれましたが、軍側からは司令官労務士官、モーター・ブールの隊長と、さらにまた西南地区司令部からキヤプテン・ヒユースが出席いたしました。県側からは三鳥総務部長中村渉外課長労管所長等が出席いたし、組合側からは藤井委員長以下三役が出席いたしまして交渉いたしました。その結果、現在までの中央本部に対する報告によりますれば、十項目中、七項目につきましては、三者の間に合意点を見出し得たのでありますが、三項目残つております。この三項目フォーマンであります吉森合田追放の問題と、警告状の濫発の問題、PMO悪質ブオーマン追放の問題が残つております。大体問題が残つております点は、たまたまこの争議経過におきまして、軍側におきまして労務担当士官が交代をいたしましたというような事情もあつて、若干遺憾の点があるのでありますが、事態といたしましては、問題を平和的に解決するため、労働組合側としての最善の努力を今なお続けておるのであります。  なお、さらにロックアウトの問題に対する措置といたしましては、交渉の結果、一応就労手当を支給するというような線が出ておりますが、この点につきましても、組合側といたしましては、法律上の雇用主であります日本政府側ロックアウトの正式な意思表示をしない場合においては、組合側といたしましては、当然普通の賃金を請求できる権利があるというように考えておりまして、今後の交渉によつて解決いたしたいと考えておるのであります。  小倉支部ストライキをめぐりまして起つた事件について、以上きわめて概要を申し上げたのでありますが、このストライキ行為に対するところ軍側発砲事件は、すでに過般も日本製鋼赤羽工場ストライキの際にも起つた事件でありますし、またロックアウト措置につきましても、最近横浜でも一事例がありましたが、政府雇用労働者が働く職場に起つた問題といたしましては、きわめて注目すべき問題であるというように考えまして、全駐労といたしましても、現在各学者あるいは弁護士等とも協議をいたしまして、この具体的な対策の検討なり、これによつて受けた組合側の損害の補償の問題等につきましても、検討いたしておる次第であります。  以上は、小倉支部という一局地に起つた問題でありますが、この種の争議が発生することの原因というものは、過日も当労働委員会においていろいろと御審議をいただきましたところの、日本政府アメリカ側との間に締結されておりますところ日米労務基本契約の、現在行われておる契約に、きわめて多くの不備欠陥があることから、具体的な交渉によつて問題が解決点に到達し得ないというようなところに、根本的な原因があるように考えられております。私どもといたしましては、この小倉に起りましたところの具体的な発砲事件並びにロックアウトに対する問題はもちろんでありますが、これらの事情の十分な調査によりまして、将来におけるところ駐留軍労使関係の問題に関する措置といたしまして、国会方面におきましても十分な御配慮をいただきまして、苦しい労働条件下に働いております駐留軍労働者の保護というような見地につきまして、十分な御配慮を賜わりたいと存ずるのであります。  以上概要について申し上げましたが、細部につきましては、御質問等によつてお答えを申し上げたいと思います。私の参考人としての陳述は一応終了いたします。
  4. 矢尾喜三郎

  5. 中島博佳

    中島参考人 ただいま御紹介いただきました第二港湾駐留軍要員労組関争委員長中島であります。  私たちの具体的な実力行使によるところ闘争は、先月の二十二日から八日間にわたりまして、ストライキという行動で行われましたけれども、それ以前にわれわれの闘争は一箇月以上の長い経過を経ております。  問題が出されましたのは、六月の十二日、いきなり米軍の方から、明日からこのスケジュールで仕事をせよという指令が出まして、このスグゾユールで仕事をすることがいやな岩は一箇月後に解雇する。このスクジュールには二十四時間以内に全員署名を済ましてしまえという命令が、いきなり十二日に出されたわけであります。  ところが、その内容を見ましたところが、朝は六時四十分の出勤であり、午後は二十三時の退出というようなスケジユールがその中に含まれておるわけです。三交替制でありますけれども、われわれ港湾に働いておる者といたしましては、当然はしけで沖へ出て行く時間がある。はしけで沖へ出て行つて、沖ではしけで交替してもどつて来たならば、二十三時に交替したのでは、当然家には帰れない。夜勤並びに十一時の場合には家へ帰れないといたしますと、大体において月の半分は家に帰れない職場にとまらなくてはならない。朝六時四十分という時間にいたしましても、われわれは七時から出勤するという最初条件で、しかも七時に出勤できる者というので、距離や何かをはかりまして、採用されている。従つて朝の二十分早く出るということは、非常に苦痛である。しかも、現在までの仕事状態から見て、七時を二十分繰上げて六時四十分にするという必要は、全然認められないというような問題から端を発したわけです。  さらには、懲罰規定というものを軍が一方的に出しまして、この懲罰規定によつてどんどん懲罰をして行くんだ、一回目が戒告、二回目が云々、三回目、七回目となると首を切る。七回という数字を見ますと、非常に甘い寛大な処置のようでありますけれども、われわれの職種検数員でありますから、これはもう毎日何トンという荷物を揚げるわけです。しかし、その何トンという荷物の中には、小さい荷物もありますので、数千個という品物をわれわれは荷上げするわけです。数千個の中に一つミスがあるということは、これはもういかに人間の最高の全力を尽してみても当然出て来るミスで、世界中の港湾検数員の統計を見ても、こういうミスというものは、当然検数員の、ミスとしては含まれておるわけです。これが七回というのでは、一箇月以内に全部がひつかかつてしまう可能性のあるほどの数なんです。これをやつたならばもう首にするのだ、こういうような問題をいきなり出されましたので、われわれの方としてはサインをすることはできない。いろいろ考える余裕交渉する余裕を与えてくれ、こういうことを申し込んだのですが、軍の方としましては、いや、契約軍隊個人なんだ。それでやめたいものは、いつでもやめてくれということをいつてがんとして譲らない。そこでわれわれの方ではやむなく全員サインを拒否してしまつたところが、軍の方では全員を首にするわけにも行かないから、また三日ほどそれを延ばして、今度はいよいよ最後だ、サインしろというので職制を通じてまた持つて来た。われわれの方ではサインはしたいけれども、実際にそれをやつたら、職場をやめなければならない。実際に労働ができない。だから話合いを持とうじやないかというのですが、あくまで契約軍隊個人であるから、組合相手にしないという立場から押し付けられまして、しかもそれがすべて時間を区切つているのが、二十四時間という形でやつて参りまして、二回目もわれわれの方はやむなく拒否した。今まで仕事は何らの支障なくやつているんじやないか、話合いをしようというのですが、やはり軍の方としては、がんとして応じない。それで七月の初めだつたと思いますが、最終的に第三回目を持つて来た。われわれの方としては、やむなく全員三回目のサインも返上してしまつたのです。  その間に、われわれの方としては労管を通じまして、三者会談でもつて日本政府と軍と労働組合で話し合おうじやないかということを申し入れましたけれども、軍の方では、一箇月にわたつてがんとしてつつぱねていた。ところがみんなの団結がかたくて、なかなかサインをしない。組合相手にしなければ、話が実際上どうにも進まない状況になつたと判断したのか、七月の九日になつて、突然向うの方から、きよう三者会談をやるから出て来いという話があつたわけです。それでわれわれの方では、これはありがたい、とにかく話し合おうというなら、こちらの望んでいたことだし、これ以上われわれの望むことはないというので話合いに行きました。  その三者会談の議事の内容は、先日代議士の皆さん方の方には私たちの方からプリントで渡つておると私は思つておるのですが、その内容といたしましては、軍の方では、日本人の人権を全部認めていない。最初からお前らいやだつたらやめろ、横浜には失業者が山ほどおるのだから、いやならいつでもやめろ、こういうことを申すのです。そんなことを言つても、実際無理ではないか。われわれの交通状况はこうなんだ。あなた方は、うちにはストーブがあり、自動車を持つておるから、何時でも来られるかしらないが、われわれの方は、こんろで火を起したりなんかしておるのだ。しかも市電の終発がなくなれば、うちに帰れないのだ。こういうことを申しましたところが、いや、われわれの方は日本交通機関と相談して、お前らの出勤退出をきめるのではない、こういうことを申すのです。あまりひどいので、それじや幾らなんでも民主主義と話が違うではないか、こう申しましたら、いや、民主主義というものは、別に首切りに対して、こういうものは首切つてはいかないというわくなんか少しもきめておらない、民主主義首切りでも自由なんだ。しかも民主主義は、雇つておる者の生活を保障しなければならないといつたような義務はさらにないのだ、首切りは全部かつてなんだ、これは行政協定によつて行われておるのだ、こういうことを申します。政府の方も県の方も、労管の方も見えておりまして、法律はそうとしても、日本人国民感情というものがあるのだから、そういうむちやをやらないで、ひとつ話合いで進めてほしいということを申したのですが、向うの方としては、がんとしてそうではない、やらなければ首だとの一本やり。それでとうとう追い込まれまして、私たちはやむにやまれず、七月の二十二日を期して無期限のストライキにつつ込んだということになつたわけです。  それから、その間に起りました種々の事件を申し上げますと、まず七月の二十人目に、警察と軍とはスト破りを編成いたしまして、これと内外ともに打合せて、ピケラインを強行突破して来た。そのときは夜明けの六時半前でありまして、まだ朝の連中は出て来ない。夜、夜勤でそのまま道路ばたに寝ころんでおつた人が、わずかに十人ばかりいた。そこへ六十人くらいの人が四列の縦隊に並んでやつて来た。そこで一人の人間説得行つたところが、先頭のスト破り人間が、いきなり彼をひつぱたいたというところから、通す通さないで、とうとう乱闘というような状態になつた。そのとき警察のとつた態度はどうであるかと申しますと、あらかじめ私服の刑事を五、六人張り込ませてあつたという話を聞いております。そうしてこちらの方の都合の悪いこと、組合員スト破りのたれかれをなぐつたとか、あるいはけつとばしたというようなことは、警察の方は刻明に調べてよく知つている。ところがわれわれの方がなぐられたという点については、ただの一人も、知りなかつた、見てなかつた、気がつかなかつたという一点ばりである。それでわれわれの方のピケ隊人間が、二八現行犯として警察ひつパられて行りた。一人の者は釈放されましたけれども、あとの一人は現在まだ入つております。それからそのうちの一人山本という人がひつパられて、港湾の中の水上暑に連れて行かれた。ところが、何時間たつても出て来ない。それでわれわれの方といたしましては、基地の中に連れて行かれて、何時間たつても出て来ないので、一体どうなつているだろう、心配だからひとつ行つてみようじやないかと申しまして、私と星君とそれから加瀬さんというこの三人が代表として入りましたところが、日本人のガードがおりまして、チェッカーの人が入つて来たらガード・セクションに連れて来てくれということになつているから、ガード・セクションこ来てくれという話で、では行きましようと言つて行きまして、用事は何だと言いますから、この中の水上署の派出所に行きたい、これわれこういう事件で、どういうことになつているか、とにかく行つてみたいからと申しましたところが、じや、待つておれ、といつて、外で待たされまして、中で電話をかけていた。それからしばらくしまして、じや、ついて来いと申しますので、われわれついて行つたのです。ところが、水上署の前を通り過ぎようとしますから、水上署はここじやないか、どこまで行くのだと言いましたところが、いや、いいからついて来いというので、連れて行かれましたところが、われわれの課長のいるところ――メジャー・クラークというのがわれわれの課長ですが、彼のいる部屋なんです。そうして行きましたところが、いきなり、どうだ、お前ら働く気か。働く気なんかありはしない、今ストをやつているじやないか、実はこれこれで問題が起つたので水上署に行こうとしたらここに連れて来られた、話がずいぶん違うじやないか、と申しましたところが、いきなり紙を出しまして、サインしろ、こういう話なんです。そこでその紙を見ましたところが、組合の要求している項目を全部否定しまして、これを認めます、何ら要求はいたしませんという内容の紙をわれわれ三名に突きつけまして、サインしろということなんです。こんなものはサインできないと言いましたところが、サインできなければ三十日で解雇だと申しまして、われわれ三名のところ米軍のたくましい兵隊たち六、七人が来て腕ずくでパスを取上げて、われわれは門の外におつぽり出されたという事件が二十六日に起つております。  それから二十七日に至りまして、今度は米軍の方が何とかピクを破ろうという意図のもとに――日本人のドライバーの人、CYMGとかYODのドライバーの人がたくさん車を運転して来ます。ところピケ隊の前まで来て、同じ日本人労働者が闘つているから、われわれはきようは帰るよと言つて、どんどんまわれ右をして帰つてしまう。この状態を見て米軍の方は、今度はピケ隊の物の五、六メートルほど前に五、六人兵隊がやつて来まして、そうして日本人の運転している車がそこでとまつてまわれ右をしようとすると、たちまちその運転台に飛び乗つて、お前はとりかく横の助手台にすわれ、おれが運転して入ると言つて、いやがる運転手をみな助手台の方にやりまして、ピケラインを突破して行く。われわれの方としては、米軍の運転する車は一応とめないという建前をとつおりますから、どんどん入つてしまう。ピケラインを突破して物の十メートルばかり行きますと、そこで下車して日本人のドライバーに運転さして、彼らはまたもとのラインの外に帰つてしまう。五、六人いて、それを一日中やつているという状態が出て来たのです。助手台にすわらされた運転手は、ピク・ラインのそばを通るときに、みんな悲痛な顔をして、ごめんよ、まことに済まないと言つてつて行くという状況が現われております。  それからさらに二十七日に至りまして、日本人の運転して来た自家用車がある。それに高級船員が乗つている、われわれはこう判断して、それで運転手に対して、とにかくここで車をとめてくれないかと説得しようといたしましたところが、かたわらにおりましたMPが、これは海軍の将校が乗つているのだとかなんとか言いざま、いきなりうちピケ隊の一人をけ飛ばした。とにかく日本人が運転しているのだから話だけはさしてくれ、説得するのだというのを二、三回突き飛ばした。突き飛ばされた本人がここに来ておりますが、さらにもう一人、あまり乱暴なことをするんじやないと言つて出て行つたピケ隊員に対して、いきなりピストルひつこ抜いて、しかもがちやがちやと装填して、何を言うか、といつて、彼のどてつぱらにピストルの銃口を突きつけた。その状態わ見て、われわれみんな走つて行つたのです。そうしたところが、その人もなかなか気丈夫な人で、何を言うか、お前日本人が撃てるものなら撃つてみろ、だてや粋興でピケラインを張つているのではない。食うか食われぬかで、生活のためにやつているのだからということで、腹にピストルを突きつけられていたのを腹で押し返した。あまつさえ、われわれがたくさん走つて行つたので、警察の方も収拾がつかなくなり、MPとしても収拾がつかなくなつて、ほかのMPが急いでやつて来て、ピストルだけは納めさせた。ところが、そのとき警察がとつた態度というものは、MPの方は全然やめてくれとか、制止しない、われわれの方だけ、やめろ、やめろである。しかもそのあとになりまして――この事件は非常にゆゆしい問題であると思う。日本人の人権をまつたく無視しているので、われわれは国会なり、しかるべきところ行つて問題にしたいから、あなた方目の前で見ていたのだから証人になつてくれと申しましたところが、いや、それはかんべんしてくれだの、ちようどおれはあのときうしろを向いていたかもしれぬというようなことを申しまして、ただの一人として証人になろうとしない。ちようど横浜の加賀町署の交通係が来ていたときに、こういうことが行われました。  それから不当解雇の件につききまして、われわれが三十日にストを解いて入りましてから、一応向うは、いやいやながらハスを返してくれましたけれども、私ここで言いたいことは、日本人労働者が、日本の中でまつた日本人としての人権を無視されてこき使われている状態があるということなんです。基地の中というものは、皆さん御存じだと思うのですが、まつたく掛外状態でありまして、日本人の人権なんて何も認められていない、まつたく犬ねこのようにこき使われていて、二言目に言われるのは、失業者は多いから、お前らはいつでもいやならやめろということの一事に尽きるわけです。あの広い職場の中に、手洗いもなければ洗面所もない。たまに気のきいたのがあるかと思うと、日本人入るべからず。日本人に対する厚生施設もなければ、衛生施設も何にもない。そういう状態の中で、どんどん経費削減という名目のもとに労働だけは過重になるし、賃金は切り下げられて行くという状態が現在あるということなんです。  それから、われわれの方といたしましては、現在全駐加盟の方向で、全駐の執行委員会では可決されましたけれども闘争資金の関係上、いまだ入会金を納めろいうその入会金のくめんがつかなかつたので、実際上の手続は全部完了しておりませんけれども、この間において、われわれの闘争が始まると同時に、全駐の方といたしましては、あれは正式加盟の組合ではないのだ、よつてわれわれの方はあれに対して積極的な応援はできないというような趣旨のことを新聞で発表されたということは、われわれ基地労働者の、第二港湾の闘いが非常に困難になつた、しかもこの点についてはCYMG、YODその他いろいろな基地の労働者が非常に憤慨しているという事実をここで述べて、大体現在までの報告にいたしたいと思います。
  6. 矢尾喜三郎

  7. 平野團十郎

    ○平野参考人 私がただいま御紹介にあずかりました全駐労神奈川県地区本部横浜陸上輸送部隊支部、一名CYMGといつております。本日私がここで訴えることは、先月の十七日に部隊のある一部、バス・セクションに起りました問題から、ストライキにまで発展したのであります。  バス・セクションにおきましては、非常に労働が苛酷で、スクジュール問題を職場のマネージャ治を通じて何回となく部隊長に変更するようにと、スケジュールの変更を迫つておりましたが、なかなかスケジュールの変更をしてくれないのでありまして、これでは普通のことでは、いくら頼んでもスケジュールをかえてくれないので、終点に行きまして、タバコ一服つける間もないというような余裕のない、八時間が八時間まるまる走つているような状態で、非常にからだは弱つて病気欠勤する人が多い、欠勤する人が多ければ、出勤した人がその人の分まで働くというような、非常に苛酷な労働をしいられておつたので、そこで普通のことではとてもかえられないのだ、朝の最もラッシュ・アワーの時間において、大きな打撃を加えてやらなければいけないというので、ただその一つのセクションだけで、組合には通じないでもつて夜勤と日勤との交代時間、夜勤が朝八時半に退勤になるから、日勤の者が朝六時半に出勤するという、その時間に対しまして、夜勤が二時間の早退、日勤が二時間遅刻というような行動をとつたのであります。そうしまして、そのときは二時間遅刻して入りまして、その日には兵隊の方が用意されまして、十分には動きませんが、その日の運転手は一人も車へ乗せないで、部隊長いわく、きようはお前たちは疲れているだろうから、きようはここで帰つて、あすの朝普通の出勤に出て来い、それでもし働くのがいやな者は、いつでも退職届を出していいからということで、その日に帰されたのであります。  それで、午後一時半に出勤する組がありますので、その人たちが午前のことを聞いて非常に心配して動揺しているので、午前帰された中の高梨という運転手が、午後の人には話がしてないんだから、午後の者はそのまま仕事につくようにと言うために部隊に入りましたところ、たまたまパスのマネージヤーの白川というものが将校にさつそく伝えて、何か扇動に来ているからというので、さつそく将校の部屋にその高梨というものをひつつて行きまして、お前何に来た、お前はもう午前中に帰れといつたのだから、ここは来る場所じやない、なぜ来たということで、ゲートまで連れられて、パス、ライセンスを取上げられて追い出されたわけです。そしてその人間には即日解雇の言い渡しがあつたのであります。それからちようどそのときに、診断書を出して休んでいた人が、診断書が切れたので出勤して行きましたところが、その人間もその遅刻の仲間と同じと見て、朝帰された時間以外に出て行つたものだから、やはりそれもパス、ライセンスをとられて、即日解雇の言い渡しがあつた。それからもう一人は、やはり梅津という運転手ですが、これも即日解雇の言い渡しをされたのであります。  そこで、その問題を取上げまして、私どもは神奈川県地区本部にお願いして、県庁と団体交渉を三回ほど持ちましたが、どうしても結論が出ないので、今度は神奈川県地区本部のあつせんで、軍と三者会談を去る二十七日に持ちましたのです。  ところが、その前に三者会談を持つておりまして、もうどうしても職場が収拾がつかないので、神奈川県の地区本部の副委員長勝島氏の指令によりまして、労管スト通告を十七日に出しましたのです。そうしていつでも実力行使に入れるという、五日前にスト通告を出しておきました。そうして二十七日の三者会談が決裂いたしましたので、二十八日から実力行使に入つたのであります。二十八日から七十二時間の実力行使通告をいたしまして突入しました。  それから三十日の朝五時でストライキ時間が切れますので、二十九日の夕方拡大闘争委員会を開きまして、続行か打切りかという二つの問題で討議しましたところ、大多数をもつてスト続行ということに決定されたとたん、夕方の八時ごろになりますと、労管からいわゆるロックアウトの作業場閉止という通知が出されたのであります。そこでスト続行ということは打切りになりまして、あくる朝の六時からロックアウトで、これはストではない、もうロックアウトですから入ることができないというようなことで、それから三十一日に、夕方県から参りまして、軍と県と労組と話合いがしたいから、その下交渉としてちよつと労管に来てくれないかという通知がありましたけれども、それでは機関にかけてから返事をするからといつて帰してやりました。ところがまた夕方おそく自動車をもつて、機関にかけたろうかどうだろうかといつて、自動車で迎えに来ましたけれども、またそれはあとから行くからいいということでけ飛ばして、いろいろ機関にはかつてみたのですが、やはりこれは下交渉した方がいいだろうということになりまして、私とほかの委員と三人で労管に行きまして、県の木村係長と労管所長、それから労管の係長三人とでいろいろ話合いましたところ、軍と団体交渉を、三者会談を持ちたいのだ、労組の方はどうだろうかというので、それはよかろう、それじや持とうということになりまして――その前にさかのぼりますが、三十一日の十一時半ごろに神奈川県の地区本部に県から電話があつたそうです。それは本人から聞いたわけじやない、ほかの人から聞いたのですが、地区本部としましては、おれの方は、ロックアウトするなら、四十八時間前に通知しなければ協約違反だから、おれはそんなものは聞かぬといつて、地区本部ではけ飛ばしたそうです。それで私らの方の単組の方へ、支部の方へ直後県から来たのだと思います。  それで一日から、一日、三日、四日と軍と三者会談を持ちました。その軍の方の代表としては、AFFE、極東陸軍司令部ですか、そのドーテーという労働課長と、それからキャンプ横浜横浜地区司令官のジャカード大佐、それから輸送部隊部隊長のスミス中佐、それから横浜地区の労務士官ターナー中尉、それからあと東京の方から二人ほど立会いに来た少佐の方がありました。それと県の方は佐々木局長、斉藤労務課長、それから労管所長その他係長五名、労組の方からは私初め、執行委員五名の代表でもつて、三日間会談をやりました。三日間やりましたものの、得るところはほとんどないような状態です。  そうして軍は、労働三法を完全に適用するのだと言いながら、現在一部の部隊においては、衛生、厚生、福利施設など、便所とかあるいは手洗所とかいうものは、もうすでに二月に軍から文書をもつて、四月から工事にかかるからという回答がありながら、いまだに全然なされていないというような状態で、こういう点をつつ込んだところ、この点では軍の方は黙つてしまいました。軍は労働三法を守ると言つているけれども、こういう点は基準法第何条に違反している、すでに文書で回答しておきながらいまだに完成していないのはどういうわけだ、こういうふうにつつ込んだのですが、この点に関しては、軍の方も何とも言いませんでした。しかし人事権、管理権に対しては絶対に譲りません。それから昨年十月マネージャー追放問題のときに、クラーク声明が出ておりまして、日本人管理者であつても、軍の不利益になるものは、ただちに調査して処置しなければならないというクラークの声明を持ち出したところが、ドーテー氏いわく、クラーク声明はおれの方で出したのだ、どうしろとおれの方のかつてだ、いやならやめろというような状態なんです。それで結局ロックアウトは、五日の午前六時から解かれたのであります。  それで、残された問題が、今五件ほどあるのです。それは労働強化の問題、パスのスケジユールの問題は、実際に軍と労組と県と路線に乗せてみて、それから決定するということで、今五項目ほど残されております。  それから、今度の三者会談をやりまして、いかに軍というものがわれわれ日本人の人権を無視しているかということを、はつきり知ることができました。そうして考えてみるのに、われわれは日本政府の雇用であるから、労働条件その他のことについて軍と交渉するというのは間違いであつたということが、はつきりわかりました。われわれ労働者は、あくまで政府に対して交渉すればいいのであつて政府が軍と交渉すれば、それで足りるのであります。そういう点にはつきり気づいたのであります。  それから委員会の方へお願いしておきたいことは、ピケラインで起きた問題ですが、ピケラインでもつて裏切者が中からバスを運転して出る来るときに、一台は非常なスピードで出たのでピケラインを突破してしまいましたが、これはいけないというので、あとピケ隊の青年がその道路に寝てしまつた。寝てしまつたから、それをひくことができないので、やはりとめたわけです。とめたところが、そのピケ隊の青年がドアを破つてその車の中に入つて、運転手をひきずりおろしたというような事件が起きたのであります。そのときに、こちらのピケ隊にいた青年も兵隊になぐられて、これは一週間の診断書をとつてありますが、日本人としてもそういうふうなけがをしているわけなんです。そのときに、たまたまそこに居舎せて運転手をなぐつたという問題は、お互いに話合いがついたのですが、その後にその白川マネージャーというのは名前をあげて、書記長、副委員長外十一名に逮捕状が出ているわけなんです。そのうち、今一名が留置されていますが、その他の者はまだ見つかつておらないで、もぐつております。この逮捕状をぜひ至急に解除していただくようにお願いするのであります。  それから、先ほども第二港湾さんの方から話が出ているのですが、全駐労の神奈川地区本部の方でかつてストライキをやつたんだからというので、権利停止を食つているのです。しかしこの点は、勝島地区本部の副委員長が、労管に五日前に出せといつた指示があつて出した。その後も、この状態ではどうにもしようがないだろう、だから、早く五日前に出しておけ、その後は本部の方へ行つておれが地方の事情を話して指令を出させるようにするからということで、実際の実情を見て、副委員長の指示によつてわれわれがやつたそのストライキが、ストライキ中におきまして権利停止という通告を受けたのです。これはどういうわけか、私らにもわからないのであつて、統制違反とか、規約違反とか言われているのですが、その点もひとつ御研究なさつていただきたいと思います。  以上であります。
  8. 矢尾喜三郎

    矢尾委員長代理 以上をもちまして、駐留軍労務者争議関係についての公述は終りましたので、質疑を許します。  なお政府側から関国際協力局次長、中村調達庁労務部長、山口国警警備部長が出席されておりますから、御了承願います。
  9. 山花秀雄

    ○山花委員 一言質問したいと思います。  各地における労働争議に関連して、次々と不祥事の出ましたことを、われわれといたしましてもたいへん遺憾に思つているのでございますが、特に駐留軍関係労務者にとつては、重大な死活の問題といわれている米軍から最近提起されました労務基本契約について、そのいきさつがどういうふうになつているかという点――これは前の労働委員会でも論議になりましたので、この際駐留軍労働組合中央執行委員長市川君が来ておりますので、最近の事情を一言お話願いたいと思うのであります。
  10. 市川誠

    市川参考人 お答えを申し上げます。御質疑になりました点につきましては、私去る七月二十三日並びに二十四日の当委員会におきまして、参考人として一応の経過を申し上げたのでありますが、その後の状態について申し上げますと、昨日午後二時から軍代表政府代表及び労働組合代表を交えて、いわゆる三者会議が外務省において開催されたのであります。この三者会議につきましては、その前日の四日の日に、調達庁の福島長官から組合に対して正式の通知がありましたので、私どもといたしましても、日米労務基本基約の問題につきまして、平和的な交渉によつて解決の方法を発見するための努力最後まで続ける考えでありますし、この申出を受諾いたしまして、会議に出席いたしたのであります。  昨五日の三者会議におきましては、午後の二時から開会されまして、当初会議の予定時間は五時間というふうに限られておりましたので、しかも全駐労といたしましては、すでに契約軍案に対する修正意見を七月二十五日に調達庁長官、労働大臣に提出をいたしまして、これに対する政府並びに軍側からの最終的な回答を、八月六日の午後一時に文書で組合側に提示されるように要求いたしてありましたが、その前日の会議でありますから、修正意見全般について討議することを無理と考えましたので、組合の修正意見のうちから、重要と思われる事項につきまして、軍並びに政府側の回答を求めたのであります。  その主要な事項の第一点といたしましては、軍側におきましては、新しい基本契約については、期限を定めない案になつております。このような契約期間が未確定、永久的な性格を帯びるという点については、すこぶる疑義がありますので、この点について契約の期間の単位を六箇月にして、もし延長する場合には、六箇月を単位として延長するというような方法に修正する考えがあるかないかという点をただしたのです。これに対する軍側の回答としては、一年くらいなら期間を確定することができるという程度の回答があつたのです。政府といたしましては、組合の六箇月あるいは軍側の一年というどちらにも、反対することはできないというような、きわめて消極的な回答がなされたのであります。  第二項の問題といたしましては、きわめて重要な事項、いわゆる人事管理の点について、組合側が尋ねたのであります。これは軍側契約四条の中に、人事管理につきまして、すでに以前軍側政府側との間で、正式文書によつて協定されておりますところの共同管理に関する三原則、これに対しまして、軍側が完全にこの共同管理の原則を確認されるかいないかという点を尋ねたのであります。それと関連いたしまして、今度の軍案では、保安の人事措置並びに人員整理、好ましからざる者の就業停止、労務者の指名及び採用については、軍が一方的な特権を主張しておりますので、この条項を削除するかどうかという点についてただしたのでありますが、これに対する軍側の回答はノー・コメントであります。もちろん軍側といたしましては、回答はアドミラル・ハンロンがなされたのでありますが、このノー・コメントに付随いたしまして、話し合う準備ができていない、こういうような説明であります。政府の回答としては、軍と交渉中であり、この際答えない方がよいと考えるというような回答で、はなはだ不満であつたのであります。特にこの条項につきましては、日本政府側としては調達庁の前長官根道廣吉氏並びに労働省の労政局長が、軍側のロ―トン少将、ミルバン少将と正式な文書によつて共同管理の原則を確認しておきながら、なおかつこの組合側の質問に対して、軍側の最高責任者がノー・コメントという意思を表示されたことに対して、私は非常な不満を感じたのであります。  第三点といたしましては、警備員と消防夫のストライキの参加禁止の条項は、労働基本権の侵害であるから、契約書中より削除すべきであると思うがどうかという質問をしたのでありますが、これに対しましては、はつきり言えない、しかし効果的な譲歩ができるのではないかと思うというような趣旨の説明がなされたのであります。政府側といたしましては、組合の意見はもつともと思うが、さらに効果の上る代案を考えているというような回答がなされた程度であります。  第四点といたしましては、保安上の解雇の基準として、軍案の契約主文の五条に、非常にこまかく書いてありました。これによりますと、軍側の一方的な拡大解釈なり、あるいは一方的な権限の行使によつて、かなり濫用の余地があるように考えておりますので、組合側といたしましては、基準を明確にして、拡大解釈及び濫用を防ぐように緩和することを承認するかどうかということをただしたのでありますが、これに対する軍側の回答は、組合側に危惧を抱かれぬように考えている、しかしその点についても考えるという程度の答えでありました。  第五点といたしましては、軍側労働政策の中に書いてあるのでありますが、労働組合以外のいわゆる親睦団体等とも同様に交渉するように書いてありましたので、この点については不合理である。特に労働組合との団体交渉というものを、単なる話合いというような契約条項にしてありますので、法律によるところ団体交渉権、いわゆる協議決定制度を明確にすることを要求し、その点が確認できるかどうかとただしたのでありますが、軍側の回答はノー・コメントでありました。  第六点といたしましては、いろいろな労働問題に関しまして、組合労働委員会のあつせんや調停を申請した場合の労働委員会措置に対するところの尊重がなされるかどうか、さらに日本の裁判所で判決したこの判決に従うことを確認するかどうかという点をただしたのでありますが、これにつきましては、軍側の回答といたしましては、さらに政府とも協議して行きたい、こういうような返事でありました。特に基地内の組合活動に関しまして、専従者が組合に連絡するための室内への立入りの問題、組合関係の文書の配付、休憩時間中の連絡、掲示板の利用等について、組合要求をいれるかどうかという点をただしたのですが、これについてはノー・コメントというような回答でありました。  第七点の問題については、給与の問題につきまして、かねてから分科会等で確認されておりましたところの新しい契約に切りかえる場合に、現在の労働者のもらつておる賃金が下る危険があるのであります。その点について、切りかえの場合に給与を下げないという保証を完全にするかどうかという点をただしたのであります。この点については、保証する意図があるという程度でありまして、的確に確答を得ることはできなかつたのであります。  さらにこまかい事項といたしましても、褒賞条項の適用を受けた者に対してのベース・アップが将来あつた場合、あるいは昇給が適当に行われるかどうか、このことを確認できるかどうかという点についてもただしたのでありますが、これについても、きわめてあいまいな回答しか来なかつたのであります。  給与問題については、さらに軍案の附属の一のステップを現在十段階にわけられておりますが、これを組合案は十四に拡大を要求しております。さらに単純肉体労働者等の賃金が下る危険がありますので、組合意見を尊重して大幅に草案を修正することの約束ができるかどうかということをただしたのですが、これについてもノー・コメントでありました。  さらにまた、軍案の附属の三の中に管理手続の問題が書かれておりますが、これについては、いわゆる共同管理の原則に反しまして、軍則だけが一方的に給与の決定権等を持つようになつておりますので、これを削除するように組合としては要求をしておるのでありますが、その点については、軍側として共同管理の原則を拘束しないというようなあいまいな答えがなされたのであります。管理手続の中には、ストライキ行つた場合には、ストライキ行つたために期末手当等の支給について他の労働者と異なつた不利な取扱いを受けるような規定がなされておりますので、これの削除を要求したのでありますが、これについてもノー・コメントであります。さらにまた現在の規定によるところのいろいろな夜勤手当等の支給、これが軍案では引下げられておりますので、この既得条件を切り下げないということが保証されるかどうかということをただしたのですが、これについては訂正をするというような御回答がありました。  第八点といたしましては、労働政策の中に、非常に苛酷な制裁の基準が記されておるのです。たとえば一年のうちに三回職場をうろついたら解雇であるとか、上役の悪口を三回言つた解雇であるというような、ひどい制裁規定があるので、これを修正して緩和する気があるかどうかという点をただしたのですが、これについては緩和して行くように考えるというような回答がなされたのです。  大体昨日はこの程度のことについて、組合側の八項目に対して、軍並びに政府の回答を聞いたのでありますが、組合側といたしましては、最終回答を六日の午後一時にもらう建前になつておりますので、その前日にされた会議において、このような不確定な回答よりなされなかつたことについて、非常な不満を感じております。本日の新聞紙等には、かなり契約改訂についての明るい見通しがあるようにも記載されておりますが、私どもは、昨日の三者会議において、実際に軍側の回答、政府側の回答を聞いたその事実から判断いたしますれば、十二月からすでに行われております契約改訂の交渉の中において、過去において経験したと同様に、やはり誠意というものについて組合側が信頼しておる場合には、ある場合に必ずうつちやりを食うというような点を数々経験しておりますので昨日の会議においても、十分な信頼を寄せることが不可能のような事実がここに出て来ておつたのです。組合側といたしましては、すでに組合の修正意見というものは最低のものでありますので、本日の政府側の最終的な回答を待つて組合の修正意見が取入れられない場合には、臨時全国大会で決定したところの既定の方針に沿つて、実力を行使するという事態もやむを得ないというような事態に追い込まれておる次第であります。当労働委員会で、前回も労働大臣等に対しまして、いわゆる契約改訂に関する政府態度についてただされまして、いろいろな配慮をされておることについて、私ども組合といたしましては、深く敬意を表するものでありますが、事態といたしましては、一向に進展いたしておらないという段階にありますことを、御質問に対してお答え申し上げます。
  11. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいま駐留軍労働組合の責任者の市川君から、昨日来の交渉についていろいろ経過報告がございました。本日は政府側といたしまして、調達庁並びに外務省の方々、あるいは労働省の方々も参つておられますので、多分昨日の三者会談の実情はよくおわかりになつておると思うのであります。従つて、ただいま市川委員長報告されました事項について、それぞれの関係当局の方々から、間違つておるか間違つていないかという確認を願いたいと思います。それを中心に質問を続けて行きたいと思いますので、労働当局、調達庁、外務省、これらの関係係官から、ひとつ御答弁をお願いしたいと思います。
  12. 中村文彦

    中村(文)政府委員 ただいまお尋ねの点について、調達庁といたしまして申し上げます。ただいまの市川委員長報告で、おおむね経過は尽されておると思います。ただ、私ただいま報告を聞いておりまして考えましたことは、軍が、あるいは政府が回答を留保いたしておりますその経過につきましては、なるほどノー・コメントというようなことで運ばれて参つたのが大部分でございますが、その聞きわめてデリケートな表現がなされております。と申しますのは、軍といたしましては、できるだけこれらの事項を考慮したいという空気が見えるのでございます。従いまして、今後の交渉によりましては、組合の意向というものは相当尊重されまして、できるだけの考慮をされるものではなかろうか、こういう考え方を抱いておるわけであります。なお、最後つたと思いますが、この契約締結の見込みいかんということについての発言が、組合側から出ました。組合の意向としては、九月一日を期してやりたい――御承知の通り、昨年の六月末をもちまして、一応この契約は切れまして、その後次々と延長されて参つておるような始末でございまして、その間軍側とも折衝いたして参つておるのでございますが、一年たちましても、なおかつ結論を見ないような次第でありますので、組合といたしましては、かような不安定な状態に置かれることはきわめて遺憾であるというふうな御趣旨の御発言だつたと思います。これにつきましても、軍は、九月一日と言うまでもなく、できるならばもつと早期に締結したい、九月一日ということについては異存はないというふうな意向のようでございます。政府といたしましても、もちろんそれはそうでありまして、われわれといたしましても、いたずらにかような不安定な状態が遷延されることは望ましくないことでございますので、早期に、できるだけの努力を払いまして、九月一日を目途としてやることは異存はないという考え方を持つ次第でございます。  以上簡単でございますが……。
  13. 関守三郎

    ○関説明員 ただいまの中村さんのお話で尽きておると思うのでございますが、一点だけ私から追加して申し上げたいと思います。それは、米軍としては、これを決して最後案とは考えておらないということを非常に強調すると同時に、この交渉をいたずらに遷延するということは考えておらないということを、非常にはつきり言つております。ただしかしながら、米軍としては、この日本政府並びに組合の修正案というものを受取つたのは、これを英文に直して、彼らが読めるようなことにして受取つたのは三日でありまして、従つてこれを十分検討するひまがないから、多くの点については、考慮を加えるけれども、現在におきましてはイエス、ノーということをはつきり言うことはできない、従つてもう少し待つてくれないか、こういうことが米軍の回答の趣旨でございました。ノー・コメント、今一切言えないということは、何もかにも言えないというわけではございません。たとえば、例の、私どももこれは絶対にのめないと思いますが、警備員とか消防員のストライキを禁止する、ストライキに参加しないという約束をしなければこれを雇わぬ、雇つてつた者はこれを首にするとかいうようなことにつきましては、十分に考えるということを向うもはつきり言つおるので、われわれとしてもこれはのめないし、必ず向うも修正して来るものだと観測しております。ただ現在ではそれ以上のことは言えないということを、彼らははつきり言つておるわけであります。大体私の追加して御説明申し上げたいことは以上の通りであります。
  14. 山花秀雄

    ○山花委員 いろいろ質問したい点がたくさんございます。特に小倉横浜地方における不祥事件についても、質疑を重ねたいと思いますが、龜井基準局長が一時から席をはずされるそうでございまして、同僚議員の井堀君から基準問題について重要な質問があるそうでございますから、井掘君に発言を譲りまして、井掘君の質疑が終つてから継続して質問することにいたします。
  15. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私も駐留軍関係については、参考人その他にお尋ねいたしたい点がございますが、政府側の御都合があるようでありますから、先に私の質問をお許しいただきます。  さきに本委員会で審議されました近江絹糸紡績の不当労働行為並びに労働基準法違反事件につきましては、労働省において実情調査をして本委員会に報告する運びになりましたが、本日その報告を受けたいと思うのであります。さらに、その後中部日本新聞の記事によりますと、近江絹糸におきまして、その後も頻繁に基準法違反に類する行為や不当労働行為に相当する事柄が報道されております。私の手元にあります七月二十日付の新聞によりますと、労働組合の七月の定期大会における役員改選にあたつて十一名の役員候補者が立候補し、選挙に入る直前に、会社側からそれらの候補者に、それぞれの工場長もしくは常務等から、立候補を断念するきつい勧告が行われて、そのためにこれらの候補者が全部断念することになつて、結果は会社の意図する従来の役員を再び役員に選任するというような結果になつたという報道をいたしております。かくのごときは明確に不当労働行為に該当することは申すまでもありませんが、新聞記事でありますから、労働省としてはその後調査の際、かかる事態についても十分御調査ができておると思うのでありますが、この際このことについてもわかつておりまするならば、詳しくは御報告を願いたいと思います。
  16. 龜井光

    龜井政府委員 御質問の第二点の問題は、労政局所管でございますが、私この前の委員会において御質問がございました信教の自由の問題、寄宿舎の自治の問題、あるいは給与ベースの問題、これらの問題につきまして、現地について調査をしました結果につきまして、ごく概況を申し上げたいと思います。  見ました工場は、大垣の工場と彦根の工場――これは近江絹糸の中でも一番大きな工場であります。この工場におきまする信教の自由が拘束されておるのじやないかという先般の御質問の点でございます。大垣工場におきましては、男子寮が毎金曜日、女子寮が毎土曜日、彦根工場におきましては男子寮が毎水曜日、女子寮が毎土曜日を連絡日といたしまして、この主催は、あとで申し上げまする寄宿舎の自治会の主催で行つておるようであります。その日に交代制で出番を待つております時間を利用いたしまして、二十分ないし三十分間程度工場内の講堂に集めまして、工場長あるいは工場の幹部または寮生係――これは経営者の側の任命を受けました寮生係が、工場におきまする労務管理事項の指示、あるいは寄宿舎生活におきまするいろいろな注意事項等の連絡示達を行つておるのであります。この場合に、この講堂には仏壇がまつつてあるそうでございますが、その前でそういう指示連絡をするそうであります。その際に鑑と称しておるのでございますが、真宗西本願寺派の宗旨の次第を書いたものでございます、これを朗読させるということのようであります。しかし、寄宿舎の寮生がこの連絡日に講堂に集まることは、強制をされていない。またこの講堂においてその鑑を朗読することも強制をされていない。たとえばキリスト教信者は、ほかの者が鑑を朗読をしておる間にバイブルを読む者もあるというような――これは労働者から直接聞いたことでございます。従つてそういう点の強制はないようであります。  ただ問題は、その出席は、自治会においては任意であるという一応の建前をとつておるのでありますが、寮生活の指導権を持つております経営者側の寮生係というような者の、精神的な何らかの威圧と申しますか、そういうようなものが加わつて、やむを得ず全員がその会同に出席しなければならないというような心理的影響を与えておることは、うかがわれるのでありますが、会社側がこれを強制するある、いは鑑を読むことを強制するというようなことは見当らないようでございます。また会社側が労働者を雇います際においても、その信教の内容をもつて採用の条件とするというようなこともしていないようでございまして、キリスト教の信者も、現に彦根の工場におきましては百六名おりまして、外出し、日曜日等においては教会に自由にお参りをしておるような状況のようであります。従いまして、信教の自由自体につきましては強制的な措置はないが、しかし寮生係からします粕神的な圧力というものが加わつて、多少そこに自由を束縛するやの感がある程度でございます。これを法律的に見まして、ただちにそれをもつて法律違反であるか、あるいは憲法の信教の自由の侵害であるかということになりますと、根拠が非常に乏しいという点、ただそういうことが一般の寮生活者にとりまして望ましくない面もございますが、われわれの立場からいたしましては、そういうことをあまり強く打ち出さないようにという注意は、現地の基準局なり、監督署からいたしておるようでありますが、さらにこれを禁止しまたこれに対しまして制限を加えまする法的の根拠というか。証拠というか、そういうようなものが乏しい現状であります。  それから寄宿舎の自治につきましては、先ほどもちよつと触れましたように、寮生で組織しております自治会が寄宿舎の自治の運営に当つておるのでありまして、寮生の中から自治会の会長、寮長、室長、副室長というような役員がそれぞれ選任されまして、会社の系統の機関でございます寮生係と緊密な連絡をしながら、自治の目的達成に努力をしておるというような実情でございます。ただこの際におきましても、そういう自治役員の選挙に、多少寮生係等の意思が動いておることはうかがわれる点もございますが、これまたはつきり明確な根拠をつかむことが、非常にむずかしい点があるようであります。自治会の諸行事につきましても、大体自治会の申合せによりまして、それぞれ行事計画を立てまして、行事を行つておるようであります。先ほど申し上げました講堂に集まりまして、いろいろと連絡を受けますのもその一つでございます。また外出、外泊等につきましても、これを特別拘束するというような点は見えないのでありまして、通常の寄宿舎で行われておりますような届出をすることによりまして外出も、また外泊も受けられるという実情でございまして、この面でそれほどの強い拘束はないように思います。ただ午後八時以降にわたりまする外出が月二回以上にも達しますと、一箇月間外出をとめるというような内規があるようでございまして、これは申合せ事項になつておるようでありますが、そういうようなこともあるやに聞いておりますが、その程度のものでございます。  そのほか労務管理の上から、いろいろな方法を講じておるようでございまして、宝くじ会あるいは貯蓄会をつくるというような、いろいろの点から労働者の福利厚生という面を一応考慮しながらやつておるようでございます。この点も労働者の引とめ策というふうなことになるかならぬか、そういう意図でやつているかどうかという問題になりますと、これもまた事実認定が非常にむずかしい点があるように思います。  それから賃金の状況でございますが、これは賃金規則及び工員昇給規程の定めるところによりましてやつておるようでありまして、初任給につきましては、大垣の工場におきましては、満十五歳の初任給は四千三百円、――これは近くの日清紡等の工場に比べますと、大体同じ程度のものでございますが、その後の昇給は、近江絹糸の場合におきましては、他の工場に比べまして、昇給率が悪いようでございます。従つて勤続年数が長くなれば、そこに次第に賃金の差がついて行くというのが実情でございます。現在の従業者――これは大垣の工場でございますが、それの平均年齢は男子十七・五歳、女子が十六・五歳、平均勤続年数は一年八箇月、こういう点も他の同種の工場に比べますと、平均年齢が非常に低い、また勤続年数も少いというような実態に見受けられるのであります。  一般の労働基準法違反の問題につきましては、先般の委員会でも御説明した通りでございまして、われわれとしましては、この工場が従来とも法律違反を多数行つて、司法処分にも数回されました、いわゆるいわくつきの工場でございますので、厳重に監督をしておるのであります。それで違反を発見いたしますと、その是正状況は非常にいいのでございまして、ただちに是正をいたしておるようでございます。最近におきましては、著しい違反は特別見当らないという現状でございます。  なお、根本におきましてそういう工場でございますので、われわれとしましても、十分の注意をいたしまして、監督を実施して参りたいと考えております。
  17. 山崎五郎

    ○山崎説明員 近江絹糸彦根工場における役員改選に対する会社側の介入の問題についてお答えいたします。この問題については、私も産業経済新聞で、社長が組合の選挙に干渉したという記事を読みましたので、さつそく県当局の方に、この事実の有無の調査を依頼したのですが、県当局からは、調査が非常に困難であるとの回答がありました。そこで私の方としては、全繊同盟の滋賀県支部調査によると、こういう事実があるが、どうかということを重ねて照会いたしました。しかるところ、県当局では、おおよそそのような状況にあると思うが、今しばらく待つていただきたいという御回答を得ております。全繊滋賀支部調査によりますと、新聞記事の内容とあまり大差はないのでありますが、近江絹糸彦根労組の役員改選は、例年の通り今年も七月に行われることになり、十五日に立候補を締切り、二十日までに候補者氏名を発表、二十五日に選挙との公示が選挙管理委員長から発表された。そこで十五日、立候補を締め切つたところ、男子工員が十一名がそれぞれ立候補した。ところが工員立候補は同労組において初めてでもあつたが、十六日突然夏川社長が同工場に現われ、午後五時工場広場に全男子工員を集め、会社は目下全繊と闘争中で、今後も徹底的に闘う等と話し、あわせて男子工員の立候補辞退勧告をなした。次いで同十六日午後八時頃より事務所応接間に右立候補者十一名中八名、会社より注意人物視されていたものがあるのですが、これが呼ばれ、工場副長、工務部次長、同労組選挙管理委員長等から、会社は全繊という外部団体と闘つているときでもあり、君たちとしては、組合の執行委員になれたとしても、これらの外敵と闘つて行ける自信があるか、だから組合のことは、今までの組合のことに経験を持つ年長者の人にまかせておいた方がよいだろうとの辞退勧告を強要した。よつて右八名は、辞退はするが、それに対する保障を明示せよと要求したところ、夏川社長に谷口工場長が電話連絡した結果、会社は辞退するなら現在までのことを水に流しておこうと述べた。そこで八名のものは、さらに会社の誓約書を出せと要求し、結局、文書にて転勤、転番、転科等を一切しない、しかし今後については君たちの成積いかんによつてはいたしかたないという誓約書をとつた。翌十七日、残りの立候補者三名も形勢不利と見て、やむなく辞退の届出を出すに至つた。そして遂に同午後六時から、事務所二階で全員(立候補辞退者十一名)を集めて会食をなし、円満解決したことにされた。十八日、午前十一時三十分より、工場長が男子寮生全員を集めて、立候補した十一名の諸君は事情により辞退したが、諸君は会社が圧迫したと誤解せぬようにとの話をした。その後二十二日に至り、突如として選挙管理委員長名をもつて、立候補締切り及び投票日を変更して、不当介入の事実の隠蔽をはかつた。このようにして、再び立候補の機会が外面上与えられたとしても、さきの十一名が会社の圧迫をおそれて、立候補できないのは言うまでもない。かくして組合の自主性は完全に失われ、民主的に運営されないばかりか、組合員の真の意向は何ら組合に反映され得なくなつているというのが、全繊滋賀支部調査内容であります。  でありますので、この新聞記事あるいは全繊滋賀支部調査のような事態であるといたしますれば、これは明らかに不当労働行為でありますで、それにはそれ相応の措置を考えなければならないと思つておりますが、会社側の方では頑強にこれを否定しておるようであります。新聞記事に書いてあるのを見ますと、谷口工場長はこの事件について「十六日に社長が工場に来たことは事実だが、このほど米国から帰つたばかりなので、米国紡績界の実情や日本の現状等を男子工員に話したもので、決して立候補辞退を勧告したことはない、また工場長初め工場幹部も勧告したこともなく、またする必要のものでもないから、このような事実については全然知らない」と否定しておりますが、同様これに対して組合員は、その事実があると言つていることも新聞に載つておりますので、労政局といたしましては、この事実の調査を待つてしかるべく措置したい、こういうふうに考えております。
  18. 井堀繁雄

    ○井堀委員 ただいま龜井政府委員から調査報告を伺つたのでありますが、その中で、たとえば基準法違反が法律的に成り立つか成り立たないかというきわめて微妙な関係に置かれている事実を、報告されているようであります。ことに信教の自由の問題につきまして、基準法はもちろん、特に女子労働、少年労働の保護という法の精神から行きまして、本人の自主的な意思によつて、たとえば労働組合法のごとく、労働者団体交渉の力であるとかストライキの手段に訴えるというような行為が、能力的に困難だと思われる者を法律によつて保護するというところに、基準法のねらいがあるわけであります、従つて労働行政の中にありましても、基準監督署がそういう点、特に重視しなければならぬごとは説明を要しまいと思うところが、今の報告の中で私の非常に遺憾に思いますことは、基準法正反の事案ないしは法律の解釈から来る問題について、まだ自信がおありにならないということでございます。それで特に注意を喚起いたしたいと思いますのは、今の報告の中にも、すでに明らかになつておりますように、強制しておるかおらぬかということ――これは他のものと違いまして精神的な作用を生むのでありますから、相手方、すなわち女工さんがどういう受け方をするかにあると思うのです。たとえば、報告されておりますように、会社側の人々によつて招集されておるということは明らかになりました。自主的にそれらの人々がやるのについても無理があるのであつて、ましてや経営者側、ことに寮もしくは寄宿生活を管理する人人は、かなり強い力を相手方に与えるものであることは、たびたび問題にされているところであります。そういう寮の係が会社側の意を受けて――しかも社憲になつている。社長さんみずからが陣頭に立つて布教のために――先ほども報告の中にありましたように、たびたび本願寺から人を呼んでこれを布教しようというような態度は、多くを説明するまでもなく、会社の意図がすぐわかるわけであります。そういう意図を受けている人たちが、これから講堂に集まつて礼拝をするからと言うと、それを拒む力があるものとお考えになるかどうか。私はその場合拒むことは困難であると思う。もちろんキリスト教信者もありましようし、その他の宗教を持つている者がそれに集まらなくてもよいという自由は、保障されていると思うのでありますが、しかし現に報告されたように、集まつているという事実、その会合に出ていてバイブルを読むというようなことは、これはあまりにもつけたりだと思うのであります。お釈迦さまの教えを説く場所に来てバイブルを持つている、そんな示威行動をやるくらいなら、そういう集会に参加しないという自由をまず主張すると思う。そういう点は語らずして落ちていると思うのでありまして、こういう車掌に対して、基準監督の衝にある者としては、敏感な注意力を発揮すべきであると思う。この点だけをもつてしても、基準法を巧妙に蹂躙する最も悪質な違反であると思われる。でありますから、それをただちに法律ひつかけて処分することを私ども目的とするのではないのでありますが、かようなか弱い女子労働者が、かくのごとき巧妙な、陰険な労務管理のもとにしいたげられているということは、見のがすことができない。いろいろな観点から重視しなければならぬので質問しているのでありますから、その点を十分御留意願つて、今後一段と監督していただきたい。私は当然違反になると考えますので、巧妙に立ちまわつているものは検挙なさつて、法の精神を生かすように注意願いたい。信教の自由の問題については、以上のような性質のものでありますから一段と監督をお願いいたしておきます。  それから寄宿舎の自治の問題についても同様な趣旨の報告がありました。たとえば寮生係の指導という言葉が使われておりますが、自治の中に指導は必要でありません。会社側の意思のあるものが指導するということは、自治を乱すという証拠を露骨に示すものである。指導というのは、一体どういうことを意味するか。寮生活に対する自治ということについては、その寮生活を管理する人々、すなわち会社側は、建物の管理であるとか、あるいは経営者、管理者として与えられた義務の範囲を越えてはならぬことは言うまでもありません。その自治会の中に入り込んでいることは事実です。他の繊維産業は、自治権については、厳に禁止せられている。こういう点、自治が尊重されてだんだんよいものになつているのに、ここの場合だけは極端に対藤的なものであるという事実は、今の報告でも明らかである。こういう点、巧妙に法網をくぐろうとする意図のあることが想像されますので、御注意願いたいと思うのであります。特に八時以後の外出が二回にわたつた場合外出を禁止するというやり方は、これは自治的な規定だと言つておりますけれども、違反です。こういう片鱗は、いかに隠そうとしても、衣の下によろいが現われるというようなぐあいに、ちらほらと出て来ているのであります。こういう点厳重に監督を行われなければ、違反などというものは決して監督でき場るものではありません。  さらに労務管理全般にわたりそういうことがうかがえるのであります。ことに賃金の報告で私の受けた印象は、初任給が非常によくて上昇率が悪い、勤続年数が非常に短かいというようなことは、多くを語る必要はないのである。いかに新しい労働力、農村の過剰労働力をむやみやたらに搾取しておるかということは、チーブ・レーバーを隠そうとする大きな国際的な不名誉でもありますし、重大なことであります。ことに、この会社として最近羊毛をやろうとしておりますから、こういう点については、特に注意を要すべきことだと思います。今後は出先だけにまかせることなく、こういうものに対しては、一段と重点的に監督をなさつて、厳重な態度で臨まれんことを要望いたしておきます。  さらに、不当労働行為の問題については、今山崎組合課長からの報告で、大体私の承知しておる範囲とほぼ同様でありますから、ただここに伺いますのは、不当労働行為が明らかに成立する事実を、新聞も伝え、あるいは全繊同盟の調査も明らかにされております。これは地方労働委員会の問題になると思います。ただ残念なことは、ここにも現われておりますように、労働者の自主的な活動というものが、巧妙な労務管理の前に押えられて来ておるわけです。それは労働法の恩沢を受ける根本的な資格を奪われているという点に注意しなければならぬのである。ただわれわれは不当労働行為が成立したから処罰するというのではなくて、不当労働行為の精神は、憲法や労働者の団結権、団体行動の自由、団体交渉に対する自由人としての資格を保護しておるのであります。それを打ちこわすようた行為を、先ほどいうように、か弱い者には精神的な、あるいは宗教の力を借りたり、狡猾な労務管理の中にこれを抑えて来ておるわけでありますから、こういう点については、私はそれぞれの持場々々を動員されて、徹底的にこういう事態を防止されるように希望いたしておきたいと思います。  時間がございませんので、この類似の問題でまたお尋ねするかもわかりませんが、ついでにもう一件、基準法に関連した顕著な違反事実がございますので、お尋ねをいたしたい。  それは去る一日に埼玉県の草加町に発生いたしました事件であります。草加に所在いたしまする鈴本日本堂トクホン工場で爆発事件が起りまして、即死二名、入院直後三名死亡し、六名の死亡者が出ており、重軽傷死亡を合せまして十一名の被害者が出ておりますが、その中で五名までが十六歳という少年であります。聞くところによりますと、高等学校のアルバイトのようであります。そういう人々が、この事故のために五人まで死亡しております。この工場の模様について、労働組合調査や地元の監督署の調査を聞いて見ますと、その設備や、また危険な作業をするかしないかというようなことについても、監督署自身に明らかでなかつたというような驚くべきごとを聞いたのであります。瞬時にして、その部屋におりました人々が全部死亡しております。隣の部屋におつた人が重傷を負つておる。そういう設備が、今日事故が起つてから初めて発見されるというようなことであつて、しかも東京にごく接近した場所におけるこういうような事態については、看過できない大問題たと思うのであります。こういう点についてどのような御調査があり、あるいはそういうものに対する処置をどういうふうにしておられるかを、この際お尋ねしてみたいと思います。
  19. 龜井光

    龜井政府委員 お答えいたします。鈴本日本堂におきまする爆発事故の概況につきましては、ただいま御質問の中にございましたように、去る八月一日午前十時四十分に、この事故が起つたのでございます。事故の原因としまして、われわれが調査しました結果発見しましたことは、ここで製造しておりまするいわゆるトクホンという貼付薬は、その使用しまする原料の中に、石油ベンジンを含んでおるわけであります。石油ベンジンそのほか生ゴム、亜鉛華、樹脂、大豆油、はつか脳、龍脳、サルチル酸、こういうふうな薬品と石油ベンジンとを攪拌いたしまして、それをスフの布地に塗付しましてそれをさらに乾燥、すなわちベンジンを乾燥蒸発させまして、貼付薬を製造するというのが工程であります。その際、この事故の起りました建物は、鉄筋コンクリートの四十二坪の建物でございまして、この中におきまして、蒸発しましたベンジンが部屋中に充満をしておる。そこに動力をとめるためにスイッチを切つたのでありますが、そのスイッチが安全装置をつけてないスイッチでございまして、従つてそのスイッチの火花から、その充満しましたベンジンのガスに点火して爆発したものと認められるのであります。従荘は、木造の建物でこの製造工程をやつて来たのであります。しかも通風のよい建物で、外気に接して製造しておりましたために、ベンジンの蒸発しましたものは、すぐに外部に流出するというふうなことからいたしまして、爆発事故が起らなかつた、危険作業とは認めがたい状態にあつたわけでございます。ところが、今回の事故の起りましたこの四十二坪の鉄筋コンクリートの建物は、本年の六月中旬に元成をしておりまして、これにつきまする設置届も監督署に行われておりませんし、あるいは作業開始届も行われておらないうちに、この建物において作業を開始しました結果、通風が悪いために、ベンジンの蒸気が部屋に充満をし、それにさつき申し上げました電気のスイッチからする発火で点火したという状況であるのであります。  そこで、基準法の違反の問題として取上げられまするものは、まず第一に、根本的にこの事業場がそういう工場の建物を設置するについての設置届がなかつた。設置届がありますれば、監督署から監督に参りまして、それに対する変更命令も行い得る措置もできたと思いますが、設置届がなかつた。さらにまた作業を開始するにつきましても、何らの届出がなかつた、いわば監督署の知らない間にこういう建物においてそういう危険な作業が行われたというところに、大きな基準法の違反があるわけでございます。さらにまた、そういう危険のおそれあるスイッチにつきましては、火花の散らない安全装置を施す義務があるわけでございますが、そういう点についての装置が行われていない。またそういう危険のある作業につきまして、お話のような年少者を使用していたというところにも、違反があるわけでございます。従いまして、われわれとしまして、この問題が監督署の不知の間に起つた、知らないから監督署として責任がないということは、われわれとして言いたくはないのでございまして、明らかに私、監督署としてもこの問題につきまして一半の責任があろうかと存じます。なぜならば、そういうことについての状況は、届出があるまでもなく、監督署として絶えず管内の状況につきまして精通しておらなければならない立場にあるわけであります。そういう趣旨で、われわれとしましては、監督署の責任というものは重々感じておる次第でございますが、この爆発に対します措置としましては、これらの違反事項につきまして、ただちに検察当局と打合せいたしまして、目下司法処分の手続をいたしておる次第でございます。  さらにまた、この作業場におきます作業につきましては、われわれは一定の条件を完備するまでは操業を開始することを禁止をいたしております。すなわち、その建物を永久に使用しないか、使用するとすれば、労働安全衛生規則に定められております基準に合致するものに改造する、あるいはその他の措置が講ぜられるまでは、操業を開始することを目下禁止をいたしておりまして、これらの措置を見ました上、この操業を認めるかどうかの処置をとりたいと考えております。  また被害所に対します労災補憤にうきましては、即刻に手続をとつておりまして、おそらくきようあすには本人に手交されることになろうかと思います。ただ問題は、使用者側の違反、重大なる瑕疵というものがございますので、この点に関しまする使用者側の責任も追究しなければならぬかと思つております。また聞くところによりますと、使用者側としましても、死亡しました労働者の遺族に対しまして相当の見舞金を支給するよう決定されたということの通知を受けておるわけであります。  この例にかんがみましても、また昨年の暮れの名古屋の東亜合成の爆発事故以来、われわれとしましては、化学工場の爆発につきましては関心を非常に強く注ぎまして、この予防措置に尽力して参つて来たわけでございますが、たまたまこういう事故の起りましたことは、まことに遺憾にたえない次第でございまして、本日並びに明日にわたりまして、全国の安全衛生課長会議を開いておりますので、その席におきましても、今後こういう事態の発生しないように十分注意を喚起して行きたいというふうに考えております。
  20. 井堀繁雄

    ○井堀委員 事実は明らかになりましたが、ただこういう事柄が知らないうちに行われて、災害が起つたということは、疑う余地がないようでございます。ただこういうことでありましては、私どもは基準監督機関の中でも、労働者の人命に及ぶ危険な点については積極的な監督が行われておるものと思つて、法を信ずる者としては、実は安心をしておつたわけですが、今御説明がありましたことで私どもが驚いたのは、そういう設備を届出なしに使つているというようなこと、しかもあの場所は、いやがおうでも監督官は往復しなければならぬ場所です。そういうところを今まで知らなかつたという点が、どうも了解ができない。前回もお尋ねいたしましたように、善意に解釈するとして、監督官の数が少いために、仕事が多いためにというお話がありましたが、こういう点をどうして労働者は予算の中に積極的に要望して来なかつたのか、こういう問題は、さつきも指摘されておりますように、いつも起つたあとで大騒ぎをするのです。こういうようなことはちよつと気をつければ防止できたのじやないか。監督官さえ気をつければそれでいいわけで、届出してなければ、すぐに処分もできることだし、そういう点について今後気をつけるとはいうものの、ただ単に訓辞をしたり、あるいは安全週間をやるということで、こういうことは解決できる問題ではないと私は思う。やはりこういう問題を中心にして、すみやかに監督官を増員する必要がある、あるいは監督官の活動に対する費用を要求するとかいうふうなことがあつてしかるべきじやないか。最近労働省の監督行政に対する怠慢の傾向は、目に余るものがある。これは、一つは吉田自由党の政策から来るものだと思うのであります。こういう政策は、私は単なる保守政策として見送るわけにはいかぬと思う。これはやはりきわめて恐るべき人命の軽視である。産業のにない手である労働者に対する無関心から起つて来る政策の一つの片鱗でもあると思うのであります。その一線に立つている人たちの訴えなり叫びというものが、今日のように、そういう権力に押し流されているようなことであつては、法はまつたく無意味になると私は思う。そうでなくても、最近基準法の改正を口にするようになりましてから、特に監督署の出先が――この前私はちよつとお尋ねをいたしましたが、最初の意図は、確かに労働法の周知方のために協力を求める民間団体としての基準協会とかいろいろな団体ができておりますけれども、そういうものが、まつた労働基準監督署を監視しり、圧力を加えるような役割を持つていると、労働者の間から非難が起つているくらいです。こういうものに対して十分注意をしなければならぬと私は思うのでありまして、今度の事件などについて思い当る節があるのではないかと思いますが、そういう点について、もし思い当る節があれば、この機会に率直に委員会に報告されておくことがよくはないかと思います。
  21. 龜井光

    龜井政府委員 思い当る節はないかという御質問でございますが、今特別に思い当る節は実はないのでございます。ただお話の中にもありましたし、また私が御説明いたしましたように、これは確かに監督署としましても大きな手落ちがあつたということは、率直に私は認めます。これは予算がないとか、人員が足りないとかいうような問題も、もちろんありましようが、それよりも、監督官の目のつけどころ、すなわち監督官の質の問題が、やはり大きく影響して来ようかと思います。従いまして、特に安全衛生というふうな技術的な問題につきましては、研究も勉強もなかなか足りない現状でございますので、昨年来そういう点からいたしまして、監督官の資質の向上をはかつて行くという点に尽力をいたすとともに、またきまりました予算の範囲内で合理的に経理をいたして、できるだけの予算を有効に活用して行くというふうな方途も考え、諸般のいろいろ総合されました力で、足らないところを補つて行きたいという気持でいるわけであります。
  22. 井堀繁雄

    ○井堀委員 それではちよつとお尋ねいたしますが、今度の事故については、やはり出先監督官の手落ちになるというふうにお認めになるとすると、こういう場合、その出先の手落ちに対して、どういう処置をおとりになるのですか。
  23. 龜井光

    龜井政府委員 業務上の手落ちに対しましては、国家公務員の懲罰規定がございます。但し懲罰をすることだけでいいのかどうかという問題につきましては、なお私どもとしましては研究させていただきたいと思う次第でございます。
  24. 井堀繁雄

    ○井堀委員 事柄はたびたび繰返して言つていることで明らかなように、一方はこの不時の災難のために六名まで、しかも年の若い人たちが命を失つているわけです。この責任は、もちろん経営者にあることは明らかでありますが、またその原因が監督の不行届きにあつたということをお認めになる以上は、その責任の地位にある方としては、行政処分の問題についてどうかというふうな御答弁では、ちよつと納得できかねるのであります。この点の見解をもつと明確になさることが大切なことじやないかと私は思います。
  25. 龜井光

    龜井政府委員 御質問の趣旨を、その監督官本人についてどうかというふうに私とりましたものですから、そういうお答えをいたしました。全般的な問題としましては、先ほども一端を申し述べましたいろいろな方策もございます。足りないところは何かといえば、予算の問題もあるでございましよう、あるいは人員の問題もあるでございましよう、しかしこれは、この事故があつたからすぐにというふうには、なかなか行きかねる状況であります。従つて私といたしましては、先ほども申し上げましたように、監督官の質をよくする、そのための施策は今年からやつております。また本日、明日の安全衛生課長会議におきまして、この問題について責任者として下部の監督機関に対しまする指導力を強める意味においてもやつて行きたい。われわれといたしましては、足りないところは、いずれ予算的な措置が講ぜられる時期が来ますれば、その際において、さらにこれについて努力して行きたいと思つております。現在におきましても、監督官の旅費あるいは安全衛生関係のそういう監察の旅費というようなものにつきましては、御承知のような削減を受けておるわけでありまして、こういう問題につきましても、私どもとしては、十分な活動ができますような努力を進めて行きたいと考えております。
  26. 井堀繁雄

    ○井堀委員 これ以上は、労働大臣もしくは政府の責任ある人の御答弁でなければどうかと思いますので、委員長にお願いしておきたいと思いますが、次の機会において労働大臣からこのことについて明確な方針を伺いたいと思いますので、おとりはからい願いたい。きようはこの程度にいたしておきます。
  27. 矢尾喜三郎

    矢尾委員長代理 一応これをもつて休憩いたします。二時半から再開いたします。     午後一時二十二分休憩     ―――――――――――――     午後三時十三分開議
  28. 矢尾喜三郎

    矢尾委員長代理 休憩前に引続いて会議を開きます。  山花秀雄君。
  29. 山花秀雄

    ○山花委員 調達庁の方にお尋ねをいたします。駐留軍関係の給与の問題でありますが、駐留軍の関係の労働契約は、他の工場、職場契約とは若干異なつた契約行つておりまして、現場は軍に使用されておりますけれども、労使の関係は、駐留軍労務者調達庁にあると伺つておるのであります。その給与につきましては、そういう関係上、一般の国家公務員の給与にならつて支払が行われていると聞いておるのでありますが、この点間違いない解釈でございますかどうか、お答えを願いたいと思います。
  30. 中村文彦

    中村(文)政府委員 お答えいたします。ただいまのお尋ねの点でありますが、駐留軍労務の関係につきましては、雇用関係は政府と労務者の関係でございます。軍はその間にありまして、使用関係に立つておるのであります。従いまして、給与の決定の仕方につきましては、やはり政府が全般の情勢、経済情勢あるいは生活状況その他を考慮いたしましてきめるという線をとつております。なお基準につきましては、従来とも国家公務員の線を参考にいたしましてきめる方針でございますが、それをさらに詳細に申し上げますと、技能工系統は、従来は労働大臣がきめますところの基準がありまして、それに応じてきめ、事務系統は、国家公務員のいわゆる職能的な身分を中心にした基準を考えるという二通りの系統をとつて参りました。ところが御承知の通り、昨年の四月二十八日に平和条約が調印されました後におきましては、御承知の法律第百七十四号が出まして、それに基きまして、技能工系統は労働大臣の定めますところの基準による線は変更いたしまして、別に定める方針をとつたわけであります。ただ、現在におきましては、従来のいろいろないきさつもありますので、その基準をそのままに生かしておきまして、それによつてベース・アツプその他を考えて行くという態度であります。
  31. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいまのお答えによりますと、技能工に関しては一般の基準を用い、事務系統には大体国家公務員の基準を用いて来た。しかしながら、技能工に関しては、去年から定めるところの標準が若干かわつて来た、こういうように承つたのでありますが、一般給与に基いて行われるところの諸手当、すなわち民間給与におきましては賞与に類するもの、国家公務員関係におきましては夏季手当というものに準ずるもの、これらも技能工、事務系統含んで、最近は一般公務員に支給される額を右へならえという形で行われておるかどうか、この点お伺いいたします。
  32. 中村文彦

    中村(文)政府委員 お答えいたします。諸手当のうち、特に御指摘の年末あるいは夏季手当というようなものにつきましては、技能工系統あるいは事務系統の別なく、国家公務員の線に沿うて実施する方針をとつております。これを具体的に申し上げますれば、時期、率を公務員に実施の率、時期に応じまして、そのまま適用するという方針であります。
  33. 山花秀雄

    ○山花委員 そこでお伺いしたいのでございますが、本年度の夏季手当は一般公務員は〇・五ということになつたのであります。最近これでは少いというので、特例のような形で年末手当の繰上げ支給を〇・二五と定められたのでございます。両者合せまして〇・七五が一応支給されておるのでございますが、やはりこういうような率で駐留軍関係の労務者に支給されたものであるかという点をお尋ねいたします。
  34. 中村文彦

    中村(文)政府委員 ただいま御指摘の〇・五につきましては、政府がきめましたように、六月十五日現在在職する者につきまして支給するという方針をとりました。なお最近きまりました〇・二五の問題につきましては、国家公務員においては八月四日在職する者という線で出ておりますので、われわれといたしましても、その線で出すように指示いたしております。
  35. 山花秀雄

    ○山花委員 駐留軍関係の労働者が、朝鮮の休戦に伴いまして相当多く整理をされるのではなかろうか、こういう杞憂を駐留軍関係の多くの労働者が特つておるのであります。また具体的に最近各地の駐留軍関係の職場において、そういう傾向が現われて来ておるのでございます。駐留軍労務者は、占領支配後引続いて、言語、風俗、人情、習慣の興なるところで、しかも戦勝者という優位なる観念を持つた彼らの中にあつて、約八年間にわたる長い間、その任務遂行のために尽力をして来た。また隠忍自重、忍従の生活行つて来たことは、だれしも認めるところでございます。ところが、この機に及んで整理、退職というような傾向が現われて来ておりますが、一般公務員の場合でありますと、政府都合によつて整理をする場合には、特別の退職手当が支給されておるのであります。駐留軍関係の整理、退職の問題もやはり一般公務員が政府の御都合によつて整理されるのと同じ内容条件を持つておると私は思うのでございますが、そういうような場合に、やはり一般公務員の例にならつて、特別支給、はつきり申し上げますと、きめられた額の八割の特別支給というような特例が設けられるものであるかどうか。私は設けて上かるべきだと考えておりますが、調達庁の方においては、どういうふうにお考えになつておるか。この際、この問題は関連性のある非常に重要な問題になつておりますから、はつきりお答えを願いたいと思うのであります。
  36. 中村文彦

    中村(文)政府委員 お答えいたします。退職金のお尋ねでございますがいわゆる今日のPESO労務者は、終戦以来いろいろな事情がからんで参つたわけでございますが、当時われわれが考えておりましたことは、軍がいつ何どき引揚げるやらもわかりませず、また軍の作戦的な状況、われわれには十分把握できませず、またいかような考慮を車が払うかというようなことにつきましても、とうてい想像もできなかつたものでございますから、これらの労務者の勤務期間というものは、きわめて短かいものであろうという想定をいたしました。それからなお先ほど御指摘にもありましたように、言語なり風俗なり習慣なり、いろいろな状況において全然煙いますので、非常に御苦労の多いことも、われわれは察知、想像いたしたわけでございます。従いまして、これらの状況から考慮いたしまして、当時退職金につきましては、きわめて有利だと思われますような算出方法を講じたわけであります。従いまして、ただいまの御指摘のように、行政管理庁が行政整理その他を行われる状況、事情を考慮してはどうかというお話だと存じますが、われわれはすでに当時から、非常に勤務期間も短かく、また本人の希望だけを十分にいれるわけにも行かないような事情のもとに退職解雇するような事態に相なるのではなかろうかというふうなことも考えておりましたので、先ほど申し上げたような方針をとつてつているわけであります。従いまして、しいて申しますれば、われわれはすでにあの当時から実は今回あることを期して退職手当その他を考えておつたのだというふうに申し上げたいと存じます。従つて、今日ただちに八割増しというふうなことは考えるまでもないのではないかというふうな考えでございます。
  37. 山花秀雄

    ○山花委員 いろいろな関係上、駐留軍関係の労務者は、一般公務員より退職手当の率において非常に有利な、よい率を今日まで支級されて来た、従つて今日の段階においては、特別の考慮を払わなくてもいいんじやないかというように答弁を承つたのでございますが、現在一般公務員が退職してもらう退職手当と、駐留軍関係の労働者がもらう退職手当、これはかりの話でございますが、五年勤めた場合に、どれくらいの開きが今日退職手当として定められておるかという点、どのくらい率が逢うかという点をはつきりさせるために、一応御説明を願いたいと思うのであります。
  38. 中村文彦

    中村(文)政府委員 お答えいたします。先はどの御説明がちよつと足りなかつたので補足いたしますが、駐留軍労務者の退職手当につきましては、二通りの考え方をとつております。つまり軍の都合によります退職については規定の一〇〇%を出す、それから自分の都合によりましていわゆる退職申出をするものにつきましては、それの半額五〇%にとどめるということにしております。これは実は自己退職が非常に頻繁に行われ詳しい、またすぐ就職をするというふうな傾向がありましたので、それを何とかこの際押えようということで、実は自己の都合による退職には比較的手薄い扱いが行われたのでございます。  今お尋ねの五年程度の退職手当の問題でございますが、軍の都合によります退職手当につきましては、大まかな計算でございますが、日額といたしまして大体二百五十日分ぐらいでございます。それから自己の都合により退職いたしますものは、その半分の百二十五日分くらいでございます。これは政府の方の職員につきましては、十分な検討もできておりませんが、大体百二十五日分くらいの見当になつているのであります。従つて、もしこれが行政整理で行きますればそれの八〇%増しということになりますと、大体近いところ行つて、しかも駐留軍関係は多少有利ではなかろうか、こういう見通しを持つております。
  39. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいまのお答えによりますと、駐留軍関係においては、軍の方から退職を強要して来た場合には、大体五年勤めて二百五十日分くらい、自己退職の場合には百二十五日分くらい、国家公務員の場合には、自己退職の場合は大体百二十五日分くらい。だから、これに定員減というような行政整理の場合には八割が加算されるから、大体似たようなものである、こういう御答弁でございましたが、この数字を正確なものとして受取つて間違いないと考えてよろしゆうございますか。
  40. 中村文彦

    中村(文)政府委員 正確な数字につきましては、別に調査いたしまして、お答えをいたしたいと存じます。
  41. 山花秀雄

    ○山花委員 私は当然駐留軍関係の労働者については、大量的な馘首があるということは否定できない今日の社会情勢になつておりますので、そういう場合に、雇用主調達庁である関係上、従来の級与の支給の慣例が国家公務員に準じておる、こういう見地から、そういう場合に遭遇したときには、定員減のときと同じような扱いがされるものである、こう考えまして、一応その真意をただしたのであります。ところが、そういう扱いはいたしかねるという御答弁でございます。そこで、内容についてお伺いしたのでございますが、内容においては大体国家公務員が八割増しもらう内容とあまり違わないという御答弁でございます。ところがこの数字の正確さについては後日調査してお答えをする――私もはつきり申し上げますと、正確なる数字をここに持つておりませんので、これ以上お尋ねするわけには参りませんから、私もひとつ正確に調査をして、この問題について再度質疑をして行きたいと思うのでございます。  しかしながら、労働行政としてひとつお考え願いたいことは、今度労務基本契約を中心に、おそらく本日駐留軍労働組合は全国一斉に五日間の通告期間を置いてストライキをやるだろうということが予想されておるのでございます。今まで占領政策下におきましても、また講和発効後における駐留軍労働者の労務担当におきましても、大体の傾向としては、何ら支障なく円満裡に今日まで来たのでございますけれども、この期に及んで両者が対立をして、また最近各所において、本日問題になつておりますような不祥事件が、個々の職場においてすら頻発しておる。こういう状況を考えましたときに、全国的な大きなストライキを、政府労働政策として防止する点に力点を置かなくてはならぬと考えるのであります。そういう意味からいたしましても、一方的に解雇をする場合には特別の手当を支給するというのが、日本の労使間において慣行として認められたる一つの制度であります。私はそういう制度を政府当局としてはふんでいただきたいと思うのであります。この問題につきましては、後日正確に数字を調査いたしまして、再度質問をしたいと思うのであります。  昨日齋藤国警長官からいろいろ小倉事件、それから横浜の第二港湾労働事件につきまして御報告がございました。本日参考人からの、小倉の問題あるいは第二海湾の問題、または陸上運送部隊労働組合関係の陳述と、ずいぶん食い違つたところがございます。ここでひとつお尋ねいたしたいことは、横浜の陸上輸送部隊労働組合の――昨日齋藤長官は、これは市警に関係することであるから、自分は詳しく知らない。明日十分調査して御報告を申し上げる、こう言われたのでございますが、本日御出席の三輪課長さんは、これらの問題について、一応長官から御報告を受けて調査されて出席をされておるのではなかろうかと思いますので、横浜の陸上輸送部隊労働組合に関する二十八日、二十九日にわたる不祥事件の概略につきまして一応御説明願つて、それで当局者及び各組合を代表する参考人陳述が終つたのでありますから、その上で質問を続けて行きたいと思いますので、三輪課長さんの方から、一応市警の問題ではございますが、昨日のお約束もございますので、御説明を承りたいと思うのであります。
  42. 三輪良雄

    ○三輪説明員 昨日命を受けまして、横浜市警当局にお願いをいたしまして、その間の事情をお知らせを願つてございますので、それにつきまして御報告をいたします。  C・Y・M・G支部闘争状況でございますが、この支部職場は、市内の中院区松影町所在のPVPセクシヨン――これはバス、乗用車のモーター・ブールであります。それから市内保土ケ谷区川辺町所在のCVPセクシヨン――これはトラックのモーター・プ―ルでございます。それから北辰セクシヨン――これは自動車の修理工場でございます。この三箇所でございますが、各職場の入口にピケラインを七月二十八日午前五時から設定いたしまして、ストに突入いたしました。  第一日の二十八日でございますが、バス、乗用車のモーター・ブールの方は、午前五時ごろから、正門、通用門、花園橋際の三箇所にピケラインを設定いたしまして、ピケ員は合計五十名くらいを配置しまして、非組合員に対する就労拒否の説得をいたしておつたのでありますが、別に紛争の事犯等はございませんでした。  他のトラックのモーター・ブールと自動車修理工場の方は、当日午前五時ごろから正門、裏門、消防署側通用門の三箇所にピケラインを設定いたしまして、ピケ員四、五十名が配置されておりましたが、非組合員、第二組合員等は、非常口その他から百名ぐらい入場いたしまして就労いたしましたが、別にその間に紛争の事犯等は発生いたしませんでした。  第二日の七月二十九日でございますが、午前六時五十分ごろ、バス、乗用車のモーター・ブールの通用門のピケラインに、そのセクションのバスの運転手でございますが、非組合員である渡辺という人が部隊内からハスを運転してピケラインにさしかかりましたところが、山口支部書記長ほか十五、六名がピケラインにおりまして、われわれがストで闘つておるのに、単を運転するとは、労働者に対する裏切りであると罵倒し、車を停車せしめ、竹ざおで車の中をかきまわし、同人のあご等に傷を与えました。さらに運転台から車外におろしまして、その際時計、めがね等が紛失をいたしたというのでありますが、後に時計は発見をいたしております。そういう事件が起りました。  もう一つの修理工場の方は、特別の事件はございませんでした。  第三日、三十日には、それぞれ紛争の事件はなく、三十一日午前六時ストを中止いたしまして、ピケラインを解除いたしてお手わけでございます。  一応ごく概要はそういうことでございますが、その事件と申しますのを、なおもう少し詳しく御報告をいたしますと、二十九日の七時十五分ごろに、同部隊の勤務員であります自動車運転手渡辺という人が、バスを運転いたしまして横浜駅に行こうといたしました。その門を出た際にその出入口のところピケ隊からスト破りとして、先ほど申し上げましたような暴行及び傷害を受けておるわけでございます。さらに所持をいたしておりました腕時計、めがね等を紛失をいたしておるという事件でございましたので、警察といたしましては、その後被害を受けました本人から供述の調書をとり、さらに現場に目撃をいたしておりましたバス支配人の白川という人の証言をとり、もう一つ、たまたまそこにおりました横浜陸上輸送部隊の米軍の軍人でありますフイリップ・スタブオードという人が、事件発生の直後に現場の状況を撮影をいたしました写真がございます。これをあわせて、証人に見せて証言をとつたというような結果、十一名に逮捕状の発付を受けまして、三十日午前五時容疑者の逮捕に向いまして、そのうち二名を自宅から検挙をいたしておりますが、他の人々は不在のため検挙できておりません。しかしその方々は、一名はその現場にいなかつたということを本人が言つておられますし、もう一名は、現場におつたけれども、その暴行には参加していなかつたということを言つておられます。他の関係者の所在もまだつかんでおりませんので、一応そういうことで、お二人は同日の夕刻に家に帰つていただいておりますが、なお三十一日に他の二名を検挙をいたしました。この方は横浜の地検に送致をいたしまして、ただいま勾留中に属しておるわけでございます。その他の問題につきましては、今なお横浜市警におきまして捜査を続行中であるということであります。
  43. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいまの御報告と、きよう組合の責任者が陳述いたしました点に若干の食い違いもございますが、これはあとでただすことにいたしまして、十一名に逮捕状を出したのは、これは写真証拠による見込み捜査で逮捕状を出したということを聞いておるのでございますけれども、そういうような事情で逮捕状を出されたのであるかどうか
  44. 三輪良雄

    ○三輪説明員 お答えをいたします。市警の御通知によりますと、先ほども申し上げました通り、被害者は危害を加えた人々の名前はよく存じておりません。目撃者でありますバスの支配人の白川という人は、十一名の名前をよくわかつておりまして、その人の証言によつておるのが大部分でございます。なお現場のその直後の写真を見まして、その中に今の十一名中三名は明らかに認められるということであります。なお、そのうち二名につきましては、被害者もその人に間違いがないというような証言をいたしておりますが、これは後のことでございますから、逮捕状をとりましたことにつきましては、目撃者の証言と、それにあわせまして、一部の者につきましてはその写真の中にありますものとして、疎明資料を出して逮捕状を請求したのであります。
  45. 山花秀雄

    ○山花委員 目撃者である白川というのは、これは労働組合から職場追放されておる、俗にいう反動的分子の一人であることが明らかであります。こういう人の証言が、はたして信憑性のある証言であるかどうかという点は、もう少く警察当局においても、その目撃者の立場というものを十分しんしやくして、信用の度合いをきめることが、私は必要ではないかと思うのであります。特に写真により、それらの目撃者あるいは被害者の調書に合せて実在していた人々を逮捕したのでなかろうかと思うのでありますが、当日病気で出勤せず寝ている人が逮捕されて、後にすぐ釈放されたという事実が、組合陳述としてうたわれておるのでございます。こういうような点は、そこに何か人権蹂躙のきらいが十分に私はあると思うのであります。もう少く慎重なる態度が、警察当局としては、特にこういう労働争議に関連する問題については、なおさら慎重な態度が必要であろうと考えます。国警と市警との立場は、若干違つておりますが、国警として、こういう市警のとつた態度が全面的に是認されるべきものであるかどうか、こういう点について、ひとつ国警の御意見を伺いたいと思います。
  46. 三輪良雄

    ○三輪説明員 お答えをいたします。証人の証言の信憑性につきましては、御指摘の通り、その証人がいかなる人であつたかということも、十分考慮しなければならない問題であろうと存じます。ただこの事件は、まだ捜査中でございますので、本人が近くにおりましたということ以外に、その点の裏づけもいたしておらないような状態でございます。こういう捜査の中途でございますので、一般的に逮捕状の請求は慎重の上にも慎重を期すべきであるということにつきましては、御指摘の通りでございますけれども、具体的の事実につきまして適不適を申すのは、いささかまだ事件の途中でございますので、差控えた方が適当じやなかろうかと考えます。御了承願います。
  47. 山花秀雄

    ○山花委員 横浜の第二港湾の場合でも、小倉駐留軍関係の争議の場合でも、昨日の国警長官のお話によると、空砲を撃つた、こういうことを一応報告されたのでありますが、組合当事者の報告ピストルを腹中に当てて威嚇をした、こういう証言がなされまして、その間重大な食い違いが起つておるのであります。せんだつて赤羽の日鋼の労働争議におきましても、アメリカ軍当局による発砲騒ぎがございました。そのときの労働調査報告によりますと、緊急の事態に立ち至つていないのに発砲したから、これは正当防衛とも言い得ないし、きわめて遺憾な事実であるということが、労働省当局から発言をされたのであります。それらの問題が、今後当然言語、風俗、習慣の異なる場所でございますから、起き得ることが予想されておるのでございますけれども昨日国警長官は、小倉横浜の問題にからんで、今後は憲兵司令部に注意を申入れしたい。あるいはした。――私はしたか、したいか、この点はちよつと聞き違いかもわかりませんが、かりに申入れをしたいといたしましたならば、もうきようは昨日からでも二十四時間経営しておりますので、そういう申入れをなすつたのかどうか。私どもは赤羽のときに、今後のそういう事態を考えて申入れをすべきでなかつたかと思うのでございますが、昨日国警長官は、注意を申入れしたいというふうに聞いたのでございますが、本日までにそういうような事務が完了されたものであるかどうか、もしおわかりでございましたならば、お答えを願いたいのでございます。
  48. 三輪良雄

    ○三輪説明員 お答えをいたします。昨日下命がございまして、本日電話をもつて一応こういう申入れをいたしてございます。私どもアメリカ軍の中の組織が十分わかりませんので、憲兵隊当局で軍全体にそういうものが言えるかどうかという点に、若干疑念もございましたので、事態につきましては、駐留軍労務者ストライキに関し、駐留軍の軍人との間に、今まで不祥な事件もしばしば起つておりますので、それらに対する駐留軍の軍人に対しまして、ストライキの意義を十分わかるようにして、もらいたいということ、あるいは先ほど御指摘もありましたように、異民族でございますので、周囲をとり囲まれるということになりますと、すぐに身の危険を感ずるというようなことで、今までの関係者も、いずれもそういうことを陳述をいたしておるようでございます。これらの点につきまして、私どもとしては、そういう事態が相当険悪な事態と見えても、身に危険を感ずる必要はまつたくないのだという点について、なお軍人に注意をしていただきたい。つきましては、そういう事態について私の方で書面にして差上げるが、もし憲兵隊でそういう権限がないというようなことであるならば、これは日米合同委員会を通じまして、正式の機関を通じてお願いをするということを申入れいたしまして、先ほど中間的でございますが、憲兵隊でやつてくれるというようでございますから、さつそくに書面にいたしまして要求をいたすつもりでございます。
  49. 山花秀雄

    ○山花委員 午前の会議に、アメリカ軍日本の労務者の間における日米の労務基本契約についてその見通しはどうかという私の質問に対して、調達庁も外務省の方も、やや楽観的な意味のことを申し述べられたのでございます。外務当局はただいまお見えになつていないようでございますので、調達庁の方にお尋ねをいたしますが、これが円満に収まるような確信を持たれるかどうかという点について、お考えのほどをお示し願いたいと思います。
  50. 中村文彦

    中村(文)政府委員 ただいまのお尋ねは、この契約が円満に進行して、予定通り締結されるかという趣旨かと承りましたので、お答えいたしますが、昨日の三者会議の席上の模様から判断いたしますと、軍は昨日の回答が不十分な理由としては、組合なりあるいは日本政府なりの意向の伝達が大分遅れて、十分に検討する時間もないので、本日は十分な回答をいたしがたいという態度が中心をなしまして、その上で考慮するという線がいろいろ出ておるとわれわれは考えております。従いまして、軍といたしましては、この問題は重要事項としておりまして、慎重な態度が見えております。ただその席上からの空気を判定をいたしますと、先ほども申し上げましたように、軍としても、相当労働組合なり、あるいはわれわれの意向というものにつきましては、尊重する態度が見えたというふうに考えます。なお、けさほど申し上げました通り、この契約の締結時期についての発言が労働組合にありました際にも、九月一日というようなことを待たずに、できるならばもつと早く締結をしたいというようなことも言うておるようでありますので、われわれといたしましては、軍もやはりそのような気持があるのではないか。従つて、この問題はできるだけ早い時期に締結を見るという見通しを持つている次第でございます。
  51. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいまの報告を聞いておりますと、何か甘いという感じを私どもは受けるのでございます。今度の基本労務契約というものは、単なる一片の労働者と使用者の間における契約条項という、そういう軽いものではないと考えているのでございます。独立国家としての日本と、友好国家としてのアメリカとの親善関係が、この労務契約を中心に成り立つか、それとも俗にいう反米感情を国民全体が持つか、国家と国家の外交上に重大なる影響を及ぼすのが、この一片の労務契約の中に含まれていると考えるから、私どもは特にこの問題を重要視いたしまして論議をしているのでございます。軍当局から示されました契約内容の一、二点を申し上げましても、いかに隷属国家に対する優越国家としての、占領支配と同じような観念をもつて臨んでいるかということが、局外者であるわれわれといたしましても、そういうようなことがらがうかがわれるのであります。第一に人事管理の点におきましても、軍側の一方的意向によつて出勤停止、解雇が行い得るという点であります。第二に保安関係、すなわち警備員及び消防関係者の採用にあたつては、絶対にストライキを行わないという誓約書を入れろ、それを入れない限り採用しない。この点は、午前の外務当局の言明によりましても、これだけはもうどんなことがあつても除去して行きたいと言明をされました。第三には組合活動に関する点であります。組合専従者は、休憩時間中といえども、その施設内に入ることもできないし、実際の組合活動を封鎖されている。特に組合員相互の休憩時間中における組合活動も禁止しているという点であります。これは二つ、三つの例でございますが、これらの諸点は、国内労働立法をまるつきり頭から蹂躙をしている具体的な事実でございます。去る七月二十三日の労働大臣に対する質疑におきましても、労働大臣は八月一日からの実施を延期してもらつて、独立国家にぶさわしい改正を、すなわち面目を保てる程度にまで軍に了解をしてもらつて、国内労働者に了解し得るような段階にまでこぎつけるために懸命な努力を払いたい、こう言明をされたのでございますが、具体的に進行している政府と軍との間におけるこの労務契約は、特に昨日は三者会談を持たれたと聞いているのでございますが、おそらく私どもの入手いたしましたこの会議内容、またこの会議の将来を考えて参りますと、必然的に駐留軍関係の労働者が、一斉に全国ゼネストを行うという気配がたいへん濃厚である。私どももまた、ただいまのアメリカ軍当局の態度日本政府がこれに対処するところの、具体的に申し上げますと非常に軟弱なる態度は、これらの駐留軍労働者をして激興せしめ、ストライキに突入するのではなかろうかと考えておるのでございます。もしストライキに突入いたしますと、先ほど申し上げましたように、せつかく築いた日米間の親善関係も、これらのことによつて蹉跌を来すおそれがございますので、この際そういうただいま御回答になつたような甘い考えを捨てて、緊褌一番、大いに独立国家にふさわしい強い意思を持つて対外折衝に当られたいという希望を申し上げまして、ほかの同僚議員もたくさん質問がございますそうでありますから、一応意見だけを申し上げまして、私の質問を終りたいと思うのであります。
  52. 井堀繁雄

    ○井堀委員 今の山花委員の質問に関連して、ちよつとお尋ねいたしておきたいと思うのであります。今までの参考人のお話の中で、小倉争議の場合でも、横浜の場合でも、一応報告をそのまま認めての話でありますが、当然の争議行為としてピケラインが張られておる。これを発砲したり、あるいは器物をふつけたりしておるという事実が行われておる。これは、言うまでもなく、日本労働三法の建前からすれば、争議行為に対する明らかな妨害行為になるわけです。こういう事態が発生して、はなはだ遺憾に思うのでありますが、そこで日米の基本的労務契約をつくろうとする場合に、明らかにいたしておきたい点が一、二あるのであります。  それは、日本政府がアメリカと労務に対する契約をする場合に、日本政府としては、そのもとに雇用される人人が。すでに労働組合を組織しておるわけでありますから、当然そこで労働契約労働協約の形をとつて来ると思うのです。でありますから、この労働協約と日米の労務基本契約との間の問題について、われわれは詳しく知りたいと思うのでありますが、もし日本労働法に基いて、労働組合日本政府労働協約を結ぶとすれば、その労働協約に基いて日米の労務基本契約というものができて来るというのが一応正しい、またそうしなければ、契約が困難ではないかという考えを持つのであります。ことに、今までいろいろな事故が発生しておる点も、そういうところにあると思いますので、この点をまず明らかにしておきたいと思います。それから労働組合契約を結ばれる政府の当面の立場にあるものは、調達庁であろうと思いますが、調達庁は、この点についてどういうふうにお考えになつておるか。それから労働省としては、この問題についてどのような協力をいたしておるか、この点についてひとつ見解をはつきりと伺つておきたいと思います。
  53. 中村文彦

    中村(文)政府委員 ただいまお尋ねでございますが、お示しにもありましたように、契約内応のうちに、労働条件その他いろいろな労働者の利害関係が密接なものがあります。従いまして、三者会議が昨年の十二月初め持たれました際に、この席上で確認せられたことは契約となり、また適当な事項は労働協約となるという確認がなされております。従いまして、ただいま御指摘のような事項につきましては、もちろんわれわれとしましても、十分含みながら話合いを進めておるわけであります。  なお、われわれが当初この労働協約交渉に当ります際、当時から、労働条件その他労働者に利害関係のあります事項につきましては、従来の労働協約に基きますれば、あらかじめ労働組合と相談しなければならないという約束もありますので、これらについては、ただちに契約で縛るわけには行かないということも再々確認いたして、話を進めてるわけでございます。
  54. 井堀繁雄

    ○井堀委員 そういたしますと、ある部分は労働契約、ある部分は労働協約、こういうようにお答えでございますが、実際問題としては、労働条件について一方の労働者が団体を組織して団体交渉を申し入れる限りにおいては、労働協約が優先するというのが常識だと思うのでありますが、それを部分的に労働契約といい、労働協約というふうにお使いになるというのは、どういう点にそういう扱い方ができるであろうかという疑念を持つておりますので、明確していただきたいと思います。
  55. 中村文彦

    中村(文)政府委員 言葉が足りなかつたのでございますが、一昨年の七月一日より効力を発しました労働契約内容といたしまして、附属書類の中に大部分の労働条件がうたわれております。従いまして、これらにつきましては、今回の新しい契約の締結の際にいかような扱いをするかということが、根本をなしたわけであります。しかしながら、話はちよつとそれますが、この関係はいわゆる三者関係に相なりまして、軍と日本政府とはいわゆる雇用主の立場に立つわけであります。これは分類が不十分でございますが、政府雇用主軍側が使用主という関係でございます。それと労働者労働組合というものとの関係になると考えます。従いまして、政府と軍との間で意見の調整を完全に尽しておいて、それから組合話合いを十分につけませんと、いろいろな契約をとりまとめる上から行きましても、非常に支障があるという判断をわれわれはいたしております。従いまして、雇用主側に立ちますものの意見の調整が、まず大事だという考え方がありまして、そういう意味で話合いが進められたわけであります。従つて契約最初だというふうな考え方ではなく、まずわれわれの考え方を十分に固めておきまして、労働者なり労働組合ともよく話合いをすることに運はなければならないだろうという考え方を実は持つたわけであります。従つて、その意味で昨年の五月以来十一月まで、実は横浜でやつたのでありますが、軍とわが方との意見の調整が困難だという判断を軍がつけまして、十二月からそれを三者会談でやる、その席上では今申します通り軍、政府組合の三者が出て、その間で円満な意見をととのえよう、こういうことに相なつたわけであります。従つて、昨年の十二月当初よりは、その間に論議されましたことが契約にもなり、また労働協約にもなるという性格を持つたわけであります。さようなわけでありますので、御了承を願います。
  56. 井堀繁雄

    ○井堀委員 そういたしますと、今のお話によりますと、特殊の場合でありましようが、協約と契約の場合は、協約がはるかに優先することはいうまでもないわけであります。そこで、この種の場合は並行して行われるというふうに聞えるのでありますが、日本労働法を尊重して行こうとすれば、労働者と雇い主が――この場合は政府でありますが、雇い主と労働者の間においては、団体交渉の形において結ばれた労働協約というものが、あくまで法律の建前からいえば保護を受ける最も優先的なものになるわけであります。そこでたまたま契約が生れても、この契約は無効になるというのが国内法の建前であります。ところが、今のお話によりますと、一方には労働協約で一応のものをきめてしまうと、契約が出て来た場合に因る、こういうようなお話のようにもとれます。そうすると明らかに国内法はこの場合においては効力を押えられるわけであります。これは非常に重大なことだと思いますので、くどいようでありますけれども、ただしておるわけであります。
  57. 中村文彦

    中村(文)政府委員 その点は、私どもも実は十分含んでおりまして、昨年の九月から十一月まで、軍と直接われわれが交渉いたしました席上におきましても、はつきりと申し出ております。かりに軍と政府とが意見が合致いたしましても、労働組合とのいわゆる団体交渉の席でまとまらないような点につきましては、承諾はいたしかねるという事情だけは、あらかじめ含んでもらわなければ困るということは、再三申し入れております。なお十二月以降につきましては、先ほど申しましたような事情でありますので、この間のそうした齟齬はなかろうと考えております。
  58. 井堀繁雄

    ○井堀委員 たいへん明らかになつて参りました。そうすると協約は契約の建前に従つて結ばるべきものであるという解釈になるようであります。そういたしますと、基本契約は、三者でいろいろ話合いが進められておるようでありますが、もしある程度それが固まつてしまいますと、団体交渉に対しては一種の圧力になつて、フェアな団体交渉は行えなくなる、こういう危険が生ずると思いますが、どうでしようか。
  59. 中村文彦

    中村(文)政府委員 今日の状況では、われわれはこの三者会議の継続方を希望しておりますが、その席上で意見が闘わされて結論が出た事項につきましては、もしこれが労働条件その他を含むものでありますれば、それがただちに協約その他になりましようし、またさような関係のないことにつきましては、契約だけに残るようなことになると思います。従いまして、今のお尋ねのような御懸念はないというように考えております。
  60. 井堀繁雄

    ○井堀委員 どうもこれは徹底しないようなきらいがあります。今私のお尋ねしたのに、はつきり答えをいただいたわけでありますが、労働契約労働協約の場合は、国内法でいえば労働協約が優先する。そこで、労働協約は雇い主である政府労働者との間の団体交渉の形において行われるわけであります。ところが、その事前に三者の会議において、もし契約が結ばれておるとすれば、その契約は、雇い主側としては、すなわち政府としては労働組合側に対して押しつけて来る。これでは決して公正な団体交渉にならない。ですから、そういうことは、労働法からいえばいけないわけです。そこで私が今質問をしておるのです。ですから、日本の国内法を相手方が尊重するということが名目であつてはならないわけであります。実質的に日本労働法が尊重されるということになれば、基本契約を結ぶ際には、あらかじめ団体交渉による労働協約というものの見通しがついて並行的に行われるか、もしくは一番無難な方法であるとすれば、先に団体交渉によつて労働協約日本政府が結んで、その結んだもので相手方と契約するという行き方か正しい。ところが、今そういうふうに行われていなかということを伺いましたので、私は質問したのですが、その点どうもはつきりした答弁がいただけませんから、もう一度伺います。
  61. 中村文彦

    中村(文)政府委員 実は三者会議の場といいますのは、一面におきましては、労働契約交渉の場であります。また一面におきましては団体協約の交渉の場にもなると考えるわけでございます。と申しますのは、先ほど勢頭に申しました通り、そのうち労働者労働条件その他に関する事項につきましては、意見が三者間で合致したものにつきましては契約に盛り込むという話合いもできておるわけであります。従いまして、この三者会議話合いができました事項を、労働組合に押しつけるというようなことにはならないと考えます。というのは、その三者と申しますのは関係労働組合がそれぞれ参加いたしました会議でありまして、その間三軒間で完全な意見の一致を見たあかつきにおいて、初めて会議として意見の決定を見ることと相なる申合せになつておりますので、さようなことはないというふうに考えます。また、もしかりにさような事態がありといたしますならば、御指摘の通り、もろちん国内法で申されますところ労働組合の保障された団体交渉の結果が、この契約によつて支配されるということはあり得べからざることだと私どもは考えております。
  62. 井堀繁雄

    ○井堀委員 そこで、次には三者の会議が問題になると思うのです。これを一種の予備会議だというふうに解するならば、それでよろしいのでありますが、私どもは、その三者の会議というものに対しては、一つの圧力を感ずるのであります。日本政府でさえ相手方との間にとかく公正を欠くと疑われておる米国と、日本労働組合がこれに参加して協議を行うということが、はたして雇い主と労働者団体交渉におけるフェアな形であるかどうかということについては、たいへん疑問を持つ。でありますから、私のお尋ねしているのは、日本の国内法としての労働法の関係からすれば、雇い主である政府労働組合との間に協約を結ばれて、その結果をもつて日本政府とアメリカの間に労務契約を結ぶことが正しい行き方なんだが、それがとられていないものでありますから、今お尋ねしているように、実際的には三者会議というものを、明らかに労働組合側はきらつたわけです。でありますから、一番完全なやり方とすれば、直接の雇い主である日本政府労働組合との間に――これなら人情、風俗何ら懸念することはございませんから、その間に十分の審議をして、そうして協約ができたならば、それに其いてアメリカとの間に日本の労務契約を結ぶというなら、これは故障は起らぬ。そうすれば、さつき申し上げたように、ストライキが起つた場合には、あくまで協約に基いての事柄ですから、すなわちアメリカは使用者であつても、雇い主は日本政府でありますから、日本政府の解釈と異なるような行為を相手が行えば、それは日本の国内法に基いて処断さるべきである。でありますから、先ほど刑事事件が起つているようなことを聞きまして、真相は私はよくわかりませんけれども参考人のお話によれば、合法的な争議行為である。その行為に相手威嚇を加えたり――それは誤解に基くものであつたとしても、しかし結果はやはり争議行為の妨害になるわけであります。そしてそのことが原因になつて傷害事件が起つたり、その他の犯罪行為が行われて、その犯罪行為だけが処罰されるというのはばかな話である。根本を見きわめないで、起つた現象だけを処罰するということが起りますならば、何ということはない、日本労働者は非常な迷惑をこうむるという結果になる。こういう事態が発生せぬようにするには、日本の国内法に規定されておりますように、雇い主は日本政府でありますから、いわば日本政府がやはり責任ある立場に立つて労働協約を結ばれて、その上に立つてなさるべきではないか、こういう考え方を持つておりますから、伺つたのであります。そこで今後基本契約を結ぶ上については、そういうことが今後どういうぐあいになされるかという方針がはつきりしておるかどうかを、この際お尋ねしておきたいのであります。
  63. 中村文彦

    中村(文)政府委員 ただいま御指摘の点は、ごもつともな点でございます。われわれといたしましても、順調な条件のもとに考えますならば、さような手はずで進めらるべきものだと考えておりますが、ただ遺憾ながら、もし労働組合政府との間にかりに話合いができて、その上で今度は政府と軍との間に調整をはかるということになりますと、いたずらに日時を費すだけの結果になりまして、かえつて非常に困難が伴うという事態も考慮されます。従つて昨年の十二月初めから、このような一種かわつたものでありますけれども、三者会議というものが持たれるようになつたと考えるのでございます。その席上、いろいろな圧力というふうなお話もありましたけれども、むしろ今日まで比較的円満に重要な発言が行われつつ進んで来たのではなかろうかというふうに考えます。ただ三月になりまして、突如としてこの交渉が停止されました事情は、これは軍の間におきまする内部事情のように私考えるのであります。と申しますのは、FECがまとめて参つたのが、三軍の関係から相当きつい希望的な見解なり意見なりが出まして、その調整に日を要した。従つて、その問われわれとの交渉が持たれなかつたというような事態のように考えるのであります。従つて、今後開かれますこの会議には、これらの調整も漸次できたようでありますし、われわれといたしましても、この際己心憚ない意見を発表いたしまして、軍の再考方を煩わして、その上で早急な結論を出したいというふうに考えるのであります。なお先ほど来山花委員からもお話がありましたように、労働大臣も、その点につきましては重大な関心をお持ちのようでありますから、われわれといたしましても、もちろん早急にこれらの交渉が円満な結論を見るように努力したという考えを持つておる次第であります。
  64. 井堀繁雄

    ○井堀委員 この問題は、労働省の考え方も重要でありましようから――本日は大臣もおいでになりませんので、再度向いたいと思いますが、国内法が尊重されるという原則が認められる以上においては、団体交渉による労働協約というものは、あくまで公平に何らの圧力も加わらないでとりきめられるように善処すべきでちると思います。そこで三者の会議が、ややもすれば労働者側を両方二つの力で合せて押えることの起らないように留意すべきでもると警告をいたしまして、国内法が正しく行われることを希望しておきます。労働省の方の見解について、もしお答えができればこの機会に承つておきたいのであります。
  65. 山崎五郎

    ○山崎説明員 その問題につきまして、私室は所管外の問題でありますので、はつきりどういう経過になつておるか聞いておりませんが、今中村部長が説明されたように、やはり三者会談におきまして、基本契約労働協約の表裏一体の問題を解決するよりはかなかろうか、こういうように考えております。ただ政府労働組合との関係でありますが、これが基本契約労働契約がいずれが先か、重要であるかという点になりますと、労働組合との関係におきましては、これは明らかに私は労働協約に重点を置いて行くべきだと考えますが、政府労働組合との間に雇用関係があつて、実際働いておるところは、米軍の中において働いておる。言いかえますと、米軍が使用しておるような状況でありますので、政府、軍、労働組合等の関係から見ますと、必ずしもそういうふうにいえない点があると思います。  それから団体交渉の問題でありますが、団体交渉で協約を改めることはもちろんできると思いますし、基本契約の中でも、団体交渉できめる、あるいはきめなければならないとしてあるものもありますので、それほど基本契約によつて労働権の内容が制約されるというようなことはないと存じます。
  66. 井堀繁雄

    ○井堀委員 労働省にもう一ぺんお尋ねしておきたいのですが、国内法で労働協約契約の問題は、協約が優先することはきまつておる。そこで問題は、調達庁の場合は、日本政府を代表しての雇い主である。さらにその雇い主が作業場別にあるわけです。それが労働協約に違反するようなことがあつたりした場合は、当然雇い主の立場から、日本政府が責任を持つべきである。それは経済条件のみならず、労働協約に基く一切の事柄であります。その責任さえ持てばいい。要するに、責任を明らかにしてないものだから、今まで事故が起つて来ておる。これはもう過去の事実です。過去の事実は、労働協約契約との間があいまいだから、こういう問題が起つて来る。労働省が、またそれにあいまいな説明を加えるようなことであつてはならぬと思う。ただいまはつきり答弁できると思つて聞いたところが、ただいまのように調達庁のおしりに乗るような答弁は、まつたく遺憾十万であります。これは労働省の意見を聞くまでもなく、きわめて明確なことです。もし今のように並行して行うとするならば、日本政府労働協約相手方として責任ある態度をとれば、今まで報告されたような問題は解消する。今までのような事実が起つても、その責任は日本政府にある。日本政府の責任のとりようなんです。過去はとにかくとして、今後はそういうことのないようにしなければならぬ。そういう意味で、基本契約の結び方が問題になる。協約が先に行われて結ばれさえすれば、責任はその範囲できまる。ところ契約を結んで、その契約相手方からこう言われてしかたがないからというので、組合に押しつけるような結果になつて来れば、その契約に対して、労働組合側が責任を持たぬのはあたりまえです。しかも、その責任は政府が持たなければならぬにかかわらず、労働者が引受けておるという姿が今まで現われておる。これは労働省当局としては、まことにまずいと思う。もも少しはつきりさせてもらいたい。
  67. 中原健次

    ○中原委員 関連して。ただいまの井堀君の御質問の点は、重大な問題です。この点に対する腹構えというものは、労働省であろうと調達庁の場合であろうと、これは統一した立場で固めていただかなければならぬ、このように思うのです。なぜかと申しますと、今日まで起つて参りました各種の紛争というものは、そのようなあやふやな約束ごとの中に持ち上つておると考えるからであります。先般来からしばしば聞くことでありますが、たとえば、使用者側としての米軍の方で一方的につくり上げたスヶジュールを押しつけて参つて、そのスケジュールが非常に苛酷なものであるがために、日本労働者はそれに耐えられない。耐えられないから、それに対していろいろ意見をさしはさむと、それはお前たちの体力が足りないのである、できなければやめて行け、こういうしぐさで解雇がしばしば言い渡されておる実情であるのであります。従いまして、米軍のつくり上げました労務の基本的な考え方というものが、日本労働者の実情をまつたく考慮することなしに、きわめて一方的に米軍都合のいい立場からこれを強要して来る。このような形に実情がなつておるわけなのでありますから、いやしくも、これは雇い人側としての政府が、労働省側の、すなわち労働組合側の意向を十分くみ入れた上においてつくり上げた協約に基いて、その協約事項を基本として米軍側との労務契約を取結ぶということに、はつきりうたつていただかなければならぬと思うのであります。今までのやり方というものは、先ほど調達庁側からもおつしやつたように、まず向うの御意向をそんたくして、向うの御意向に沿わしめるように日本労働者に労務協約を押しつけて行くというようなあり方が、今日までの実情であつたとわれわれは解するのであります。従つて行政協定にいうところの、日本の労務の調達は日本政府の協力を得てこれをするという、この協力というのは、まさに日本政府をして日本労働者を押えつけせしめて労務の調達をするのである、こういうことにつながつて来ると私は思うのであります。おそらくそういうふうには解釈しておいでにならぬだろうと思いますけれども、実情はそういうことに相なつておると思います。従いまして、今度の労務基本契約とかいう軍の案そのものは、これはどちらかといえば、日本労働者にとつて必要でない、そんなことは政府がかつて向うととりきめごとをせられて行くものと見るだけなんでありまして、ほんとうをいえば、日本労働組合としては、そんな基本契約にイエスともノーとも言う必要はない。実はそのようなものが日本労働者を使うための基本的な範疇になることになつて参りましたのでは、これはとんでもないことなんです。そういうような事柄が今基本契約を結ぶということのために、いろいろいわれておるわけでありますが、これは私どもから考えれば、当然必要のないことを実は問題にしておる。だから、日本政府としては、もうこれ以上の労務は提供できない、労働時間はこうだ、これ以上はとうてい無理だというくらいのことを、はつきり言い切るだけの腹構えがなくちやならぬと私は思う。今日アメリカ側日本との折衝の場合は、これは単なる言葉じやだめなんでありまして、腹であります。その腹のきめ方がしつかりしていなければ、政府が観念的にはどのようにいいことを考えておいでになられましても、それはそらごとに終るのでありまして、もはやそういうときではないようにわれわれは心得ております。従つて日本の国民の立場を心から考えられる政府である以上は、まずそういうふうなはつきりした心構えで望んでもらいたい。ほんとうをいうと、この問題は、もつとそれぞれの責任当局が協議されて、言いかえれば、閣議がこの問題を取上げて、閣議が統一した方針を出して、日本政府が体当りでぶつかつて行く、これくらいの気構えがなければならぬと私は思う。先日も労働大臣にこのことについてただしたときに、労働大臣は簡単に考えられ、私は楽観いたしております、こういうことを平気で答えておるのであります。とんでもない考え違いだと思う。楽観どころじやない、これはとうていそういうようなことで答えるような基本契約の事項じやございません。中に盛つてあるものを一々点検してみまずと、たいへんなんです、顔色をかえて立ち上らなければならぬような内容になつておると思う。しかるに、それを楽観論をもつて答えられたのであります。もちろん楽観論をもつて答えた労働大臣は、おそらくその答えのように、この問題はあくまでも労働者の立場から固執して、日本労働者の基本権をほんとうに守るための努力をする。言葉をかえていえば、闘うであろう、私はそう言いたいのでありますがはだしてどうか。従つて調達庁も、労働大臣のそのような言葉にそつくりこたえるような態度が堅持されて行かなければならぬように思います。ここに三者会談についての第二港湾労組の方から出されておる文書だけで伺いましても、ターナーとかいう中尉が申しておる言葉ですが、時間割をどのようにしようが、だれの首を切ろうが、これは部隊のかつてだ、こういうけしからぬことを三者会談の席上で発言いたしております。このような言葉が平気で出るアメリカ軍当局の考え方というものは、日本労働者の基本権など問題じやない、まつたく犬か、ねこか豚を使うような気持で接しておるものと断ぜざるを得ないような感じがする。そうでなかつたら、こんなばかなことは言えない。しかも、この労働時間の問題に関しましても、とんでもない労働時間のとりきめをしようとしておるわけであります。六時四十分の出勤、こういうようなことがその間出て来るわけでありますが、向うの諸君は自動車をもつて走りまわるのですから、六時であろうが、四時であろうが、苦痛はな働者には、足はその時間にはありません、す早く起きて、みずからてくてくと走りまわらなければならぬのであります。その労働者に対して、そういうとんでもない時間割を押しつけておいて、これでは困ると言えば、ただいま申したようなことを平気で言うてのけるというようなところに、問題があるわけであります。従つて、この考えというものは、すべてに一貫しておると私は思う。すべての行動に、すべての向う日本労働者を使う態度に現われておると考えます。だからこそ、最近ああいういろいろな不祥事件が出て来るわけです。しかも、それに対して労働者が当然の権利として争議を行い、あるいはピケを張つてこれに応待して抵抗して行くという場合に、むしろ向うの方からしばしば挑戦的な態度をとつておる。ピストルを擬して日本労働者威嚇する。そうなつて参りますと、よほど考えておりましても、少々興奮するのは当然です。そのときは命がけです。少々興奮して、少しばかり腕の振り方が強かつたら、すぐに集団暴動だ、こういうような認定をもつて臨まれたのでは、たまつたものではありません。従つて、井堀君がしきりに繰返して申されましたように、これが一番大事な点です。この点については、少し蛇足になつたかもしれませんが、事があまり重大でありますから、念を押しておきます。まず日本政府労働組合と協約をはつきりいたしまして、その協約を不動の基礎としてその上に立つて軍側と折衝する、こういうことにしてもらいたい。従つてこの問題は、同時に皆さんのそれぞれの上司に伝えてもらいたいし、いやそれだけではいかぬのです。そこで目の前に起つておるこの基本契約の問題を今論議しておるのでありますから、各省関係の大臣も、これは閣議に出して大いに練つてもらいたい。内閣総理大臣以下が統一した考え方をもつて臨まなかつたら、これはとうていだめだと思う。労働大臣が先日申されました楽観論は、私はあまりにものんき過ぎると思う。そんなことではないと思う。このことについて、私に再度蛇足ではございましたけれども、つけ加えておきます。何か御感想があれば伺つておきますし、御感想がございませんければ、ただ私は最後にお願いします。これは皆さんのそれぞれの所属首長に伝えてもらいたい。そしてぜひともその言葉を単なるここでの聞捨てになさらずに、ほんとうに日本の国民という立場にお立ちになつて――これは単にひとり駐留軍関係労働者諸君だけの問題ではございません。これは引延ばして全国民の問題でありますから、このことは繰返して申し上げておきます。
  68. 中村文彦

    中村(文)政府委員 ただいまのお尋ねにつきまして、調達庁の担当者でありまする労務部長としてお答えしますが、御趣旨の線は私どもも十分わかります。私どもも、決して占領下といえども、もちろん軍の言いなりに動いたわけではございませんけれども、占領下と、昨年の四月二十九日以後の状況におきましては、おのずから状況も違つておることもわれわれは認識いたしております。従いまして、政府といたしましても、この点は強く腹をきめられておることと私は考えております。なお、先ほど御指摘になりました、労働大臣はたまたま調達庁の主管大臣でございまして、強い御決意がごひろうあつたわけでありまして、私どももその旨は十分くみまして、決して甘い考え方ではなく、むしろ労働大臣の強い御決意だと私は考えまして、実は事に当つてつたわけであります。従いまして御指摘のありました線は、もちろん十分に上司にも伝えますが、われわれもまた今御指摘になりました線と、そう違つた線でいろいろな折衝の場に臨んでおるものでないということは御了承いただきたいと思います。
  69. 中原健次

    ○中原委員 関連いたしまして、ついでにもう一点お尋ねしておきたいと思います。それは過日、横浜の第二港湾の諸君のピケラインを破るために派遣されたピケライン破りの人々の中に、水上警察の警官が私服で参つてつた、こういうことが指摘されておるのであります。これについて、国警の課長の方ではおわかりにならぬかと思いますけれども、一応こういうことを耳にいたしております。もしこれが真であつたといたしますと、これはたいへんなことです。ピケ破りの中に警官が私服で参つてつた、これは一体何事かということになるのでありまして、これは御存じであれば、ぜひとも伺いたいと思いますが、もし御存じでございませねば、真相を御調査願いたい、こういうふうに思うのであります。
  70. 三輪良雄

    ○三輪説明員 お答えをいたします。ピケ破りの中に私服警官がいたという事実は、私は承知をいたしておりません。その点につきましては、御指摘の通り、なお横浜市警につきまして詳細を伺つてみるつもりでございます。ただ、労働争議につきましては、もとより警察が介入する筋ではございませんが、いろいろ問題も起ることでありますから、制服のパトロールももとよりそれを見ることでございましようし、あるいは私服要員も市内を見てまわりますので、そういうところに立ち入つたかと存じますけれども警察側から考えまして、ピケ破りが入ります中に、警察官が、たとい私服といえどもつておるということは、とうてい考えられません。その事実につきましては、御指摘もございますので、なお横浜市警について詳細取調べてみたいと存じます。
  71. 矢尾喜三郎

    矢尾委員長代理 黒澤幸一君。
  72. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 中島参考人にちよつとお聞きしたいと思います。第二港湾駐留軍の問題につきまして、昨日齋藤国警長官の御説明と、中島参考人の先ほどの御説明に食い違いがありますので、念のため再度聞きたいと思うのでありますが、七月二十七日のMPピケ員との問題につきまして、昨日齋藤国警長官は、MPピケ員に対しまして、手で横によけたのであるというような御説明だけでありまして、その間あなたが申しましたような、MPピケ員に対しまして暴行のあつたことを、何らわれわれに説明がなかつたように私は承知しておるのでありますが、その点、先ほど申しましたことと相違がないのであるかどうか、お聞きしたいと思うのであります。なお先ほど山花委員からも申されましたように、齋藤国警長官は、MPはピク員の方にピストルの銃口を向けたとしか申しておりません。ところが、先ほどあなたの御説明では、MPが銃弾を装填いたしまして、。ヒケ員の横腹にその銃口を押しつけたという御説明になつておりまして、そこに国警長官との大きな食い違いがあるのでありますが、その点なお重ねてお聞きしておきたいと思います。
  73. 中島博佳

    中島参考人 その点についてお答えいたします。先ほど私が申し上げましたように、ピケ隊員を数回にわたりMPが胸を突きまして、しかも相手のからだが大きかつたので、こちらの方のピケ隊員が一メートルもニメートルも突き飛ばされ、そのあげくの果てに、向うの手が胸を突こうとしましたのが、向うの方が背が高かつたので、三回目ぐらいだと思いますが、そのときに手がすべりまして、ピケ隊員のほつペたを爪で傷つけております。そのピケ隊員は、現在私と一緒にこちらに参つております。その人のほつぺたには、歴然として傷あとが残つており、しかもそれに対する診断書を持つております。  それから拳銃の件につきましては、国警長官が言われたように、漫然とピケ隊員の方に向けたというのではありませんで、一尺ないし一尺五寸の間隔において向い合つていて、明らかに、ガチヤガチヤとたまを装填して本人の横腹に突きつけたという点については、私のただいまの話と全然かわつておりません。なお、そのときに拳銃を突きつけられたピケ隊員は、現在休んでおりまして出て来ておりませんけれども、その人と一緒に胸を突き飛ばされたピケ隊員がここにおりますから、ぜひその人の具体的なそのときの模様をお聞き願えたら幸いだと思います。
  74. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 国警長官が本日参つておりませんので、三輪課長さんにお聞きすることはどうかと思うのですが、今お聞きのような国警長官と組合の代表の方の御説明の違いがあるのでありますが、その点おわかりになりましたら、御答弁願いたい。
  75. 三輪良雄

    ○三輪説明員 お答えいたします。突き飛ばされたとか、ピク員に対してピストルを突きつけたということにつきましては、組合側がそういうふうにおつしやつていることは、横浜の市警のお知らせによつても承知をいたしておりますけれども、事実がどのようであつたかということにつきましては、米軍関係当局が、なおその関係のMP等を調べておるようでございますし、またそこをたまたま警察の方で見ておらなかつたようでございますので、具体的事実につきましては、私ども承知をいたしておりません。
  76. 黒澤幸一

    ○黒澤委員 私、昨日の齋藤国警長官のその点についての御説明は、メモしておりましたので、私がただいま申し上げた点は間違いないと確信しておるのでありますが、ただいまの三輪課長さんと国警長官の話の中にまた違いがあるのでないかと思われるのであります。MPピケ員を突き飛ばしたというようなことが、今課長さんのお話にもあつたのでありますが、昨日の国警長官の御説明には、そういうこともなく、MPピケ員を手で横に押しのけたという軽い表現をしておるのでありまして、その点につきましては、そういう長官と課長さんと――これは現地からの報告によりましてそういう相違を来しておるのではないかと思うのでありますが、この点非常に私は重大に考えておりますので、なお現地調査をして、真相を明らかにしてもらいたい、こう考えます。なお国警長官のそうした点を考えますと、MPの行為に対して非常に軽く取扱つておるように私には見えるのであります。ことに、現地におきましてこの問題が発生いたしましたときに、加賀町署の交通係がそこにおりまして、その警察官は、ピク員に対しては非常に強い制止をしておつた、しかしMPに対しましては、何らの制止をしない。どうして制止をしないのかというようなことを組合員の方からも言われたということを私は聞いておるのでありますが、こういう場合に、警察官はMPのそうした行為に対して制止することができないのであるかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
  77. 三輪良雄

    ○三輪説明員 お答えをいたします。最初に、先ほど私の言葉が足りませんでしたのでつけ加えますが、昨日長官の答えましたことと私のただいま申し上げしまたことと、MPのやりました行為について重大な食い違いがあるという御指摘でございますが、私は先ほど申し上げましたように、組合側のその当時ピケにおりました人の話ではそういうことであつたということを、組合側の言として横浜市警からは来ておりますけれども、具体的な事実が、警察の方で調べた結果そうであつたというようなことにつきましては、承知いたしておりませんので、その点は御了承を願いたいと存じます。  また第二の点の、MPがもし御指摘のように拳銃に装填をいたしまして、これをピケ隊員に向けるというようなことでありますれば、これは当然その行為そのものにつきまして、警察官が阻止することはできると思います。ただ、これを犯罪として逮捕するとかいうことになりますと、MPが公務のためにやつておりますものにつきましては、逮捕いたすというわけには参りません。具体的にそういう危険な状態に対して制止をするということは、もとよりできることと存じます。
  78. 山花秀雄

    ○山花委員 最後に一点、労働省にお尋ねをしたいのでありますが、日米労務基本契約は、目下その契約を行うかいなかについて進行中であることは、御承知の通りでございます。ところが、進駐軍関係労務以外の、俗にいう特需関係の各工場におきましては、八月一日から実施される軍当局の要請に基いてということで、現実にはこの基本契約を実行しておるのであります。これは、何と申しますか、たいへん行き過ぎであると私どもは考えておるのでございます。日本の資本家と特需を潤おすところの軍当局との間に、そういう契約がどんどん進行しておりますが、基本的に駐留軍労務との間のこの労務基本契約が締結に至らない限りにおいては、特需関係の資本家と特需を潤おすところのこの軍当局との契約が、当該工場における従来の労働協約との関係において、いずれを優先的に考えるべきであるかという点について、労働省当局の見解をこの際明らかにしていただきたいと思うのであります。
  79. 山崎五郎

    ○山崎説明員 特需工場との関係の労務契約は、特需契約によつて契約をなされていると思いますので、調達契約によつてつているのでありまして、今度の基本契約とは関係がないと、こういうふうに思つております。
  80. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいま労働省の御見解によりますと、今度の基本実約は何ら関係がない、こういう御見解でございますが、現君におきまして八月一日から案施を要請されたる今度の日米労務基本契約を特需工場においては行つておるのであります。そういたしますと、こういう基本契約は、一方的意思によつて彼らが行つても、これを労働者側としては、無効であると認定してよろしいのであるかどうかということ、これに対して見解をひとつ明らかにしていただきたい。そうすることによつて、当該工場の労働組合は、またこの問題に関して処置を講ずることだろうと思いますので、労働省当局の見解をこの際明らかにしていただきたいと思うのであります。
  81. 山崎五郎

    ○山崎説明員 これは軍と特需工場とが直接やつておるのでありまして、政府はこれにタッチしておらないのであります。なお人事条項については、もちろん問題があると考えております。
  82. 山花秀雄

    ○山花委員 基地の中にある特需関係の労働組合におきましては、行政協定第三条に災いされまして、その基地内においては、国内労働三法が適用されないという労働省の従来の見解でございました。ところが、特需関係の工場には、基地以外にあるところもたくさんございます。それらのところにおいては、国内労働三法が優先的に適用されるべきであるというのが従来労働省の見解でございました。そこで、問題になりますのは、特需関係の特別の労務の契約でございましたならば、これはまた別個の問題でございますが、目下駐留軍労働右に当てはめようとするこの日米労務幕本契約が、そのままそつくり八月一日から実施されるものとして、各工場に適用をされておるというのが今日の実情でございます。これらに対して、労働省当局のただいまの見解の説明は、あまりにも責任のがれの答弁をいたしておると私どもは断定せざるを得ぬのであります。少くとも労働省の役割は、サービスの省として、その役割が規定されておるのであります。従つて、こういう問題については、みずから乗り出して善処すべき建前にあるのではなかろうかと私どもは考えておるのでございますが、こういう私どもの考え方が間違つておるかどうかという点について、いま一度労働省当局の御樋門を願いたいのであります。
  83. 山崎五郎

    ○山崎説明員 お答えいたします。人事条項につきましては、これを改訂せしむべく交渉中でございます。なお八月一日から、今山花さんの指摘しておられました特需工場に対する基本契約の原案をそのまま押しつけた等のお話は、実は私まだそのような話を聞いておらないのでありまして、いずれにせよ調査しなければならないと思いますので、さつそく実態を見ましてから、その措置あるいは考え方を示したいと思います。
  84. 山花秀雄

    ○山花委員 日米労務基本契約の八月一日からの実施について、特需工場においてそれをそのまま施行しておるということは今初耳だ、追つて調査して善処したいという労働省当局のただいまの回答でございました。そこで、特需の関係をやつておる組合は、御承知のように、関東方面でも特需労働組合連合会という一つの連合組織を、若干の組合が持つておるのでございます。その連合会に問い合せ、調査されると、問題はすぐ明白になる関係になつておりますので、これはひとつ至急調査されまして、サービス省である労働省の役割を十分果していただきたいことをお願いいたしまして、あとに専売関係の重要問題も控えておりますので、私の質問はこれで打切りたいと思います。
  85. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 労働省に資料の提出をお願いいたします。駐留軍労働組合争議中における米兵との衝突について、講和発効後いかなる事件が起つたか、労働省の関知する範囲においてお答えを願いたいと思います。さらにそれが刑事的な事件を伴う場合には国警の方から資料を協力して出していただきたい、かように考えるわけであります。  第二点は、日本国に駐留する合衆国軍隊の使用に対する日本人及び通常日本国に居住する他国人の労務提供に関する基本契約は、単なる一つ労働協約というのでなくて、むしろ私はこの場合の契約というのは、条約的な関係のものであろうと思います。そこで日本国と合衆国との間でこれを交渉することになつておるわけですが、十九万からの労務者の労働条件をきめるについて、政府はいかなる態度をもつてこの軍案に対して交渉をされたか、この点について十分なる資料を提出してもらいたい。文書によつて回答していたたきたいと思うのであります。もしそれができないということならば、できない理由をお聞かせ願いたいと思います。これはあとに譲ります。
  86. 矢尾喜三郎

    矢尾委員長代理 次に専売公社仲裁裁定の実施について出席せられました参考人は、齋藤一雄君、遠藤留藏君でありますから御了承願います。  それではまず参考人各位の御意見を聴取し、後に質疑を行うことにいたします。  全専売労働組合副執行委員長齋藤一雄君にお願いいたします。
  87. 齋藤一雄

    ○齋藤参考人 ただいま御紹介いただきました全専売の齋藤であります。私のあとで遠藤留藏君から、業績賞与の専門的なことにつきましては説明されますので、私は業績賞与に対する全般的な組合側の考えについて申し述べたいと思うのであります。  昨年の十一月二十七日に、日本専売公社と全専売労働組合の賃金紛争に関しまして裁定第九号が提示されました。この裁定第九号の第六項目に、まつたく新しい制度として業績賞与の支給という措置が示されておるわけであります。これにつきまして、組合といたしましても、新しい制度であり、かつ新しい労働条件であるというふうに考えましたので、ただちに公社との間に団体交渉を行いまして、この取扱いについて交渉行つてつたのであります。今日まで十数回にわたり団体交渉を継続して参りましたが、現在のところ、いまだにこの紛争が解決をしておらないという現状でございます。  組合は、本年六月の中旬に至りまして、昭和二十七年度における決算の結果が明らかになりました。その結果三十二億円の予定以上の利益金が見込まれることになりましたので、五月二十九日に公社側に対しまして、三十二億円の三分の一に相当する金額、すなわち全職員の二箇月分に相当する金額の業績賞与の要求を行つたわけであります。その後六月二十四日の団体交渉に至りまして、公社側は、この組合側の要求に対しまして、一箇月程度の支給について回答を行つて参りました。これは正式というよりも、団体交渉の席上においてさような発言をしたわけでありますが、公社は一箇月以上の業績賞与に相当する金額を、予備費の中に組み込んでおるという発言を行つたわけであります。そうして公社側は、昭和二十八年度の予算が国会を通過すれば、この業績賞与の支給は可能であるから、ただちに組合との間に配分に対する交渉を行いたい。なおこの配分に関する交渉の結束によつて、大蔵大臣の承認が一箇月か、あるいはそれ以上か、それ以下かということにもなるので、この配分の問題を先議して、その後において総額の決定を行いたい、こういうふうに言つてつたわけでございます。そこで組合側は、七月中旬より配分の問題についての団体交渉行つて参りました。そうして七月二十四日に一部の対立点を残しまして双方の意見がほぼ一致しました。総額の決定を見さえすれば、この業績賞与の実施が可能になるという段階に参つたわけでございますが、大蔵省は、公社と組合団体交渉の結果、ほぼ支給できるという事態に立ち至りましても、大臣の承認をすることなく今日に至りまして、業績賞与の問題はいまだ全然目安がつかない。すなわち昨年の十一月に提示された裁定の完全実施がいまだに実施されておらないような現状でございます。  このように本問題が長引いて参りましたのは、公社側の自主性のない態度が、最も大きな原因をなしております。このように業績賞与が未解決のまま紛糾を続けておるのは、公社に公労法の第一条の目的にうたつておるところの、労働慣行を確立しようとするところ意思が全然認められない、そのためにこの業績賞与の問題につきましても、大蔵当局との折衝を理由といたしまして紛糾が続いておるわけであります。  昨日、公社の小川総務部長が本委員会に参りまして、その際にこういうことを申しておりました。公社としては一箇月分以上を職員に支給したいというふうに考えておるが、現在のところ大蔵当局と折衝中でありまして、その折衝結果によらなければ、職員に幾ら支給できるかがわからない、こういうことを申されておつたわけでございますが、もしも大蔵当局と専売公社の両者が交渉することにより、あるいは折衝することによりまして業績賞与というものはきまる、こういうことになりますと、昨年の仲裁裁定に示されておりますところの業績賞与の精神とは、ずいぶんかわつた精神になる。またそういうことであるならば、一体公労法ないしは労働法というものは、存在価値があるのかどうかということすら考えられるのでありまして、私どもとしては公社の自主性のない態度に対しまして、はなはだ遺憾に感じておる次第であります。  また今日までの大蔵当局の考え方はどうかと申し上げますと、昭和二十七年度に専売の職員が上げたところの三十二億の予定以上の益金は、これは必ずしも職員の努力だけではない、その他の理由もある。いわゆる機械設備あるいはその他のいろいろな事情があつて、三十二億円の益金が上つたのであるから、これを全部職員にわける、あるいはその半分をわける、こういうようなことは覆い得ない。大蔵当局としては、職員の能力の向上によつて得たところの益金分だけを職員に支給すればいい、こういうようなことを申しておるわけであります。  しかしながら、御承知のように、昨年の専売の仲裁裁定におきましては、裁定理由の末尾の方に書いてあるわけでございますが、この決算賞与は、企業の経理能力とは関係ないから支給ができるんだ、こういうふうなことを書いてございます。また本年度の予算総則を見ましても、専売公社の章の第八条の第二項には、昭和二十七年度の業績賞与につきましては、その予定以上の益金の一部を職員に支給することができるというふうに書いてあるわけであります。でありますから、職員の能力の向上という部分を判断して、あるいは計量して職員に業績賞与を支給するということはあり得ないことでありまして、予算総則に従いましても、三十二億円の一部を職員に対し支給すればいい、こういうことになつておるわけであります。ところが、大蔵当局においては、そういうことを理由にいたしまして仲裁裁定を拒否し、この実施をはばもうというふうに考えておるとしか、私どもは考えられないわけであります。  この三十二億円の益金を上げるためには、専売職員は非常な苦労をして参りました。特に第四・四半期におきましては、職員は月三十時間ないし三十六時間以上の超過勤務を行いまして、その結果三十二億円の益金を生んだわけでございます。専売職員が益金を予定以上に生むとか生まないとかいうことは、職員の努力――要するに労働条件の変更とかあるいは能力の向上、そういうことによりまして生れるのでありまして、また職員がそういう益金を生むまいというふうに反対的に考えたならば、おそらく専売職員は、予定以上の収入どころか、予定の収入すらも上げないようなことができる。これは専売職員が事実そういうふうに考え、あるいはそういう行動をしたならば、合法的にできるのでありまして、予定以上の益金を生んだということは、これはやはり専売職員が努力した結果であるわけであります。  特にそういう点について一例を申し上げますと、昭和二十六年並びに二十五年においては、光が異常な売れ行まを示しました。これは二十五年のたしか四月だつたと思いますが、光が値下げをいたしまして、その結果非常な売れ行きを示したわけでありますが、当初専売公社は、当然そういう売れ行まが上向をするということは予想をしておつたわけでありますが、その予想以上に売れ行きが上りまして、機械設備を改善しなければ、とうてい需要に間に合わないというような事態に立ち至りました。そのときに、製造部のある職員はこう言つておりました。昔の専売局時代であるならば、われわれとしてはこういうふうに光がいくら売れても、まだほかにパットもあり、新生もあるのであるから、そういう方面を買つてもらえばよいので、機械設備を変更する必要はない。今まではそういうことはしなかつた。しかしながら日本専売公社になつて、秋山総裁は前だれ主義のいわゆる商法を説いておる。そのために、非常な無理をして機械設備をかえて、光の増勢に応じなければならない。こういうことは、実際給料はいつもきまつてもらつておるのであるから、ばからしいけれども、総裁もそういう方針であるから、われわれもそういうことをやつておるのだというようなことを言つております。事案私どもの賃金というものを考えていただけば、よくわかるのでありますが、予算制度によりまして、歳出予算の中から賃金というものが支出されております。私どもがいくらもうけても、そのもうけた金は全部国庫へ納付されてしまう、そういうような予算制度の中にありますから、私どもがいくら努力をしようが努力しまいが、専売益金が多くなろうと少なかろうと、国家のためにどういう大きな影響があろうとなかろうと、私どもは普通の定められた労働条件で、定められた仕事をしておれば、実際には国家に非常に大きな影響を与えることが可能なわけでございます。そういう専売公社の予算制度というものに非常に欠陥がある。ここにやはり仲裁委員会が目をつけて、こういう制度で職員の能力の向上はできないというふうに考えられて、おそらく仲裁裁定第九号において、仲裁委員会は業績賞与を支給するような措置をとつたのではないかというふうに私どもは考えておるわけであります。そういう今の予算制度の中において、でき得る限り職員の努力に報ゆるところの給与制度、そういうものを打立てようというふうに仲裁委員会が考え、またそういうことが私どもとしても当然なものであるというふうに考えておるわけであります。大蔵当局においては、公務員あるいはその他の公企体との均衡上において、そういうものは支給が非常にむずかしいというようなことを言いまして、今日までこの業績賞与の問題が未解決になつておるというのが実情であります。  私どもは、むろんこのような裁定にいうところのそのままの業績賞与を、必ずしも欲しておるものではありません。なぜならば、昭和二十六年以降の専売益金の傾向から見ますと、昭和二十六年の当初予算においては千百六十九億の専売益金が見込まれておりますが、しかしながら、これが補正を受けまして、決算の際におきましては千二百五十七億の専売益金の納付ということになつておりまして、年間八十八億の益金が増加されておる。まだ二十七年度においては、今度は当初予算においては千二百六十八億に組まれておりまして、それが補正によつて千四百十九億に修正を受けておるのであります。なお昭和二十七年度におきましては、予定以上に三十二億の益金を出したわけでございますから、実際国庫に納付した金額というものは、千四百五十一億になつておるというのが、現状でありまして、その結果昭和二十八年度、本年度の予算におきましては千四百六十六億の専売益金が見込まれておる。こういうように私ども努力して専売益金を上げれば上げるほど、この専売益金の翌年度の査定が高くなつて行くというような現状でありまして、こういうようなことが続いて行くならば、私どもはみずから労働条件を強化して、自分で自分の首を絞めるというような結果になりますので、必ずしもこの業績賞与に賛成するものではありませんが、しかしながら、仲裁裁定というものは、私どもの罷業権を奪つたその代償としてそういう機関が設けらられた。でありますから、その仲裁裁定の中に盛られたことは、確実に実施されなければならないというふうに私どもは考えておりまして、この業績賞与が一日も早く解決することを望んでおる次第であります。  なお、最後に一言申し上げたいのでございますが、それは業績賞与と生産報償金の関係でございます。昨日の小川総務部長の発言によりましても、組合は生産報償金の要求を行つておらないから、おそらくあきらめたものと公社としては考えておる、こういうことを言われており申したが、私どもは決して生産報償金の要求を放棄したものではございません。なぜならば生産報償金には、歴史的な問題がございます。この報償金は昭和二十三年の二月四日に、当時の全国専売局労働組合が三日間にわたるところストライキを打ちました。その結果、生産報償金制度というものが設けられたわけであります。しかしながら、この生産報償金の支給対象は、一部の職員、すなわち製造関係の職員のみに限られておりました。そういう関係から、公社になつてからの第一回目の裁定すなわち昭和二十五年の判定第二号において、仲裁委員会は、二部の職員に生産報償金を支給することは、これは不公平であるから、全職員を対象とするところの賞与制度というものに切りかえたらどうか。そのために、生産報償金をそういうふうにかえたらどうかということを、仲裁裁定で述べておるわけでございます。私どもはそういうような歴史的な事実に基いて、この生産報償金を獲得しておるわけでございますが、この精神となつておるところは何かと申しますと、この生産報償金は、製造数量、いわゆる予定製造数量の一〇〇%を完遂すれば、生産報償金はすべて出される、そういう制度でございます。しかしながら、今回の業績賞与においては、生産報償金との関係が全然裁定にもうたわれてならないわけでございます。それはなぜかと申しますと、これは推測でございますが、業績賞与は、予定以上の益金を生んだ場合において支給されるものである。ところが生産報償金は、予定の益金を生めば、これは支給されるものであるわけであります。ですから、今回の業績賞与は、生産報償金とは全然趣旨を別個にいたしておるものでありまして、予定以上の収入の場合には業績賞与、予定通りの利益を上げた場合においては生産報償金の支給、こういうように私どもは考えておるわけであります。でありますから、昨日小川総務部長が発言されましたが、生産報償金が今年度の予算の中において削られておるのは、これは奨励手当と期末手当に肩がわりになつておるのであつて、奨励手当と期末手当の方が額が多いから、だから生産報償金を削つて、奨励手当、期末手当を設けた、こういうふうに言つておりましたが、そういうようなことは、私どもはどうしても納得のできない問題でありまして、またこれは一つのごまかしであるというふうに考えております。すなわち労働慣行としてこの生産報償金は支給されて来たのでありますから、私どもは、労働協約を締結してはおりませんが、少くとも紳士協定は締結されておるということを言い得るのではないかというふうに考えております。そういうようなわけで、組合といたしましては決して生産報償金の要求を放棄したわけではなく、今後においてこの生産報償金の要求を行いたいというふうに考えておるわけであります。  最後に申し上げたいことは、今日まで仲裁裁定が出されるたびに、その仲裁裁定をめぐつて紛争が継続して参りました。裁定が出されることによつて、なおかつ紛争が激化するというのが、今までの私どもの専売公社と全専売労働組合との関係でございます。これはやはり公社が自主性がないと同時に、公労法そのものにも大きな欠陥があるからであります。公労法の第一条においては、団体交渉の慣行と手続を確立することが大きな前提となつております。しかしながら、公社はそういう前提を無視いたしまして、ことさらにそういう慣行をつくりたがらない。これもやはり一面から考えれば、日本専売公社法によつて大蔵大臣の監督を受けておる、こういうような公社の立場もございますが、しかしながら、公労法をこういうように実際専売公社法によつて無視するような取扱いをするならば、私どもはこの公労法というものはもう必要ないから、労働法によつて規律してもらいたいというふうに考えております。そういう点について根本的に改められなければ、今日の業績賞与がかように長引いておりますが、今後発生するところ労働問題すべては、このように一年以上の紛争を惹起するというような事態になつて参りますので、その点について十分御考慮を願いたいというように考えております。  はなはだ簡単でございますが、私の公述といたします。
  88. 矢尾喜三郎

    矢尾委員長代理 次に遠藤留藏君の公述を願います。
  89. 遠藤留藏

    ○遠藤参考人 ただいま委員長から発言を許されました全専売労働組合の執行委員をやつております遠藤留藏でございます。  ただいま齊藤副委員長より、業績賞与の経過につきまして詳細に述べられましたので、その細部的な点につきまして、私から若干申し上げまして、本委員会においてすべからく早く本問題についての解決のできるようにお願いしたい、かように考えまして細部的な点を申し上げたいと思つておる次第であります。  昨年の十一月二十七日に提示されました仲裁裁定書でございますが、これは労働委員会におきましても、昨年末におきまして十分論議されましたので、私からくどくどは申し上げませんが、その理由書の中でございますが、理由書の第九項の中に、こういうことがあるわけであります。「本年度の煙草専売事業は格別の増産を要請され、これがため今後恐らくは平均月三十時間に近い異例な超過勤務を余儀なくされるのではないかと思われる。その意味では以上の裁定になお多少の不足を覚える余地を認め」、こういうふうにあるわけであります。この意味は、この仲裁裁定第九号の際は、一万三千百円という金額が提示されましたが、労働生産性というものから考慮した場合において、なお金額が不足のために、この業績賞与というふうなものをつけ加えたのだというふうに私たちは解釈しておるわけでございます。ところが、こういうふうな点を明確に仲裁委員会においてしておるわけであります。  それでその理由書の次に、これに関連をいたしまして、当然この業績賞与は団体交渉において、その制度方法については決定されるべきものであるが、「例えば」という表現を使いまして、例えばその予定以上の益金の四分の一までであつて、かつ一人当り職員の基準賃金の一箇月分を限度とする、こういうふうに仲裁委員会の理由書の中に明確かにあるわけでございます。  でありますから、私たちは、当然団体交渉を長く行つたのでございますが、昨日の小川総務部長の答弁にもありましたように、公社としては支給したいと考えておるが、大蔵省との折衝が成位しないために支給することができなしということを、小川総務部長言つておりましたが、これは仲裁裁定に出されました根本的な考え方を、まつたく無視した発言であると私たちは考えておるわけでございます。それというのは、先ほど申しましたように業績賞与を四分の一にするか、あるいは三分の一にするか、一箇月にするか、あるいは二箇月にするかということについては、先ほども申し上げましたように、「例えば」という言葉を仲裁委員会が使つておりますが、その前に原則としては団体交渉できめるべきであるということを明らかにしておりますので、何も公社が大蔵省と折衝するものでなく、当然これは団体交渉において四分の一とかあるいは三分の一とか、一箇月とか二箇月間というふうなものをきめて、その後大蔵大臣の承認を得るというのが当然の手続ではないか、かように考えておる次第でございます。  なお、これに関連いたしまして、本国会におきまして、わざわざ予算総則を変更し、あるいは公社法の一部に修正を行つたという観点に立ちますならば、組合と公社が団体交渉行つて、それから大蔵大臣の承認を得べきである、こういうふうに考えますが、まつたく仲裁裁定の考え方、公労法の趣旨が踏みにじられて来ておる。こういうふうな点につきましては、きわめて遺憾なことであると考えておる次第でございます。  それから、昨日の小川総務部長の答弁の中にあつたのでありますが、予備金のことであります。小川総務部長は、予備金についての算出の基礎はない、またどういうふうなものにこれを使用するかということについても、当初は考えておらない、予備金は何にでも使え、また算出としては総支出金額の約二%、十六億柱度組みたかつたのであるが、これは諸般の情勢から十二億五千万円という金額に削減された、こういうふうなことを言つておりますが、仲裁裁定というものを総体的に考えてみましたときに、この国会におきまして専売公社関係の予算が決定されましたが、予算書の款項目をいくら調べましても、業績賞与に支給すべき款項目の予算は一銭もありません。そうしますと、当然これは支給しなければならない金額でございますから、予備金の中に業績賞与に支払うべき金というものは入つておらなければならないというふうに考えておる次第でございます。これはたしか昨年の今ころでございますが、大蔵当局と公社の折衝しておる途中におきまする予備金に対する考え方は、今日の段階におきましては、予備金から業績賞与を支給しなければならないというふうな段階にありますので、一・四半期過ぎまして、二・四半期に入りました今日におきましては、この予備金の使途についても、大体めどがついておるのではないか、こういうふうに考えておる次第でありますが、昨日の小川総務部長の答弁におきましては、そういう点についてきわめて不明瞭な立場にありましたので、この点についても明らかにしなければならないのではないか、かように考えておる次第であります。  それからもう一点、これは齋藤副委員長からも報告されたので、簡潔に申し上げますが、小川総務部長が、生船報奨金と夏季手当、年末手当と交換をしたような発言をしておつたのでございますが、これは二十四年の十二月二十八日に提示されました仲裁裁定の三項目の中にこういうことが書いてありますので、参考までに申し上げてみますと「公社は組合と協議して現行の生産報償金制度に再検討を加え、次年度以降これを公社の企業体たる性質に適する合理的賞与制度に改変すること」と主文がなつておりまして、その理由といたしましては、予算措置まで当然生産報償金の予算というものを拡大し、またそれに主要なる措置を講じまして、当然賞与制度に改めろというふうに、理由書に明らかになつております。また昨年の仲裁裁定におきましても、生産報償金の取扱いと業績賞与の取扱いは、まつたく別個に行つておりますので、生産報償金の予算そのものと、夏季手当あるいは年末手当と振りかえたという点につきましては、はなはだ遺憾な点だと考える次第であります。この点につきましては、組合と公社が、この問題に関連して、なお一層今後紛争が起るのではないかと考えられますので、こういうふうな点につきましても、事前に解決のできるよう方途を講じていただければ、きわめてけつこうではないかと考えておる次第であります。  それから、昨日大蔵省の主計局の答弁の中に、業績賞与については、いろいろ専売公社と協議を行つておるが、三十二億という益金は、職員の努力によるものか、あるいはどういうふうなものかについては、原価計算を行わなければそれは不明瞭であるから、まだきめておらない、こういうふうな答弁があつたのでございますが、これはまつたく仲裁裁定を無視した発言であると考えておる次第であります。これが仲裁裁定の主文には、決算において予定以上の利益を生じた場合は、公社は、その一部を業績賞与として支給しなければならないとありますから、職員の努力というふうなものがどのような形に現われたかという科学的な分析をしなければ、その業績賞与が支給できないということではない。そういうふうに予定以上の益金が決算において上つたという結論が出た場合においては、それに伴つて業績賞与を支給すべきであるとなつておりますので、この点につきましても、大蔵当局の答弁につきましては、私たちは納得の行かないものがありますし、また仲裁裁定を無視する発言であると考えておる次第であります。以上に点にかんがみまして、裁定の趣旨の通りに実行できるように本委員会において御努力をお願いしたいと考える次第でございます。  こういうふうな問題をなぜ私たちがこういうところで申し上げなければならないかということでございますが、とにかく公共企業体になりまして、四年有余箇月経ております。専売におきましても、仲裁裁定あるいは労働協約というものを締結いたしましても、それに関しまして大蔵当局が――予算問題でいろいろと折衝するのは当然だと考えておりますが、労働問題につきましてまでその協定を行い、あるいは裁定が提示され、今回の場合は国会までが承認をしておるこの業績賞与の問題につきましても、今になつて種々干与いたしますことは、なお一層この紛争を長引かせるおそれがありますので、こういうふうな点につきましても、本委員会におきまして、公労法の根本的な趣旨に基きまして明らかにしていただくことを特にお願いいたしまして、私の参考人としての公述を終りたいと思います。
  90. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員長 代理以上をもちまして参考人陳述は終りましたので、質疑を許します。中原健次君。
  91. 中原健次

    ○中原委員 一応最初にはつきりしておきたいと思いますが、この問題は結局において大蔵省がしばしば障害にさえなつておる問題であるわけであります。従つて、大蔵省の出席は、もとよりきわめて当然なことでありまして、必ず出席せしめるように、委員長の方でおとりはからいをお願いいたしたいと思います。この場合は、そういうような関係で大蔵省が出席しておりませんので、公社に対する質疑を一、二いたしたいと思います。  まず第一番に、二十四年十二月の仲裁裁定に明記しておりまする第三項の「公社は組合と協議をして現行の生産報償金制度に再検討を加え、次年度以降これを公社の企業体たる性質に適する合理的賞与制度に改変すること。」この第三項の仲裁裁定の趣旨があると思うのでございますが、これについて公社側は、二十四年十二月裁定以後今日まで、これが実現のためにどのようにとりはからいをせられたか、その経緯について、まず最初に伺つておきたいと思います。
  92. 本田榮一

    ○本田説明員 ただいまの昭和二十四年に出ました仲裁裁定にうたわれた報償金制度の賞与制度化の問題であります。これにつきましては、私実は昨年この関係の仕事を担当するようになつたのでありますが、私の参ります前におきましても、この問題はいろいろ労使当事者間におきまして、それぞれ議論も闘わせまして、どういう制度がいいかということで団体交渉もたびたび持たれたように伺つております。その後私が着任いたしましてからは、しばしば団体交渉ももちろん持つたのでありますし、また案をつくり、これがために特に組合側と公社側との小委員制度を設けまして、小委員会においてこれが検討を加える。そうしてある案をもつて大蔵省主計当局等に対しても折衝をして参つたのでありますが、当時業績賞与あるいはベース・アップ等の問題もからみますし、またただいま組合側から問題になりました奨励手当あるいは期末手当等の制度化の問題からもいたしまして、この賞与制度については、今組合側とも実は小委員会が停頓しておるような状況にあります。しかし業績賞与の制度が、昨年仲裁裁定においてうたわれましたので、従つてそれらの制度の活用、あるいは今後の改善等について、それらの点を補つた賞与制度というものができ上るのじやないかということを期待しておるような次第であります。
  93. 中原健次

    ○中原委員 この第三項の実現を期するために、組合側の御見解を聞いてみたいと思いますが、組合の方としては、この問題についてどのようにお考えになつておいでになるのか。なお、ただいま部長からの御答弁がありましたが、大体あのような経過であつたか、それをひとつ伺いたい。
  94. 齋藤一雄

    ○齋藤参考人 大体経過はただいまの本田職員部長の言われたような経過でございます。しかしながら、考え方といいましようか、私どもが今回の業績賞与でもつて大体解決して行きたいというような発言をされておりますが、私どもは先ほど申し上げましたように、生産報償金と今回の業績賞与とは、全然別個の問題であるというふうに解釈しております。それは、なぜそのようなことを申し上げるかと申しますと、当初仲裁委員会におきましては、生産報償金を合理的な賞与を打立てることによつて、それと肩かえしたらどうかという御意向でありました。しかしながら、その後公社並びに組合団体交渉行つて参りましたところ、今回の業績賞与と同じように大蔵省の承認がなかなか得られなくて交渉が渋滞して参りましたために、仲裁委員会では非常に気をもんでおりまして、早くこの賞与制度というものを樹立したらどうかと、たびたび組合の方にも非公式に申入れがあつたわけであります。今回、昨年の仲裁裁定において今度は業績賞与というものが出て参りました。私どもは、むろん業績賞与が裁定第二号によるところの合理的な賞与制度というものと同一性格のものであるかどうかという点については、よく知りませんが、しかしながら、今回の業績賞与では、生産報償金については全然触れておりません。そこで私が先ほど申し上げましたように、生産報償金というものは一〇〇%私ども仕事を完遂すれば、出されておつたものである。今回の業績賞与は一〇〇%以上私ども仕事を完遂した場合に支給される、こういうふうな形になつております。私どもは、当然性格が違う。ですから、前の合理的な賞与制度というものは、仲裁委員会においては一応たな上げいたしまして、業績賞与というものが、全然別個の考え方に立つて新しく制定された、あるいはそういう勧告を行つたというふうに考えております。
  95. 中原健次

    ○中原委員 公社側にお尋ねいたしますが、ただいまの組合の副執行委員長の御説の中にありました報償金の制度の、今日まで続いて参りました労働慣行の実績と、今回の業績賞与との関係は、まつたく別のように思いますが、どうような御解釈になつておりますか。
  96. 本田榮一

    ○本田説明員 この点につきましては、昨日も総務部長の小川君から御説明を申し上げたように承つたのでありますが、報償金の制度がいまだに制度としてあるものかどうかということについては、組合側においては既得権的なものだという主張をしておるわけでありまして、これは議論のあるところだろうと思うのであります。しかし、私どもといたしましては、いつまでも安定性のないところの給与体系のもとにおいて組合の人たちが働くということは、合理的ではないと思いますので、合理的な全体としての給与体系の中において、報償金という、のもながめなくちやならぬじやないか、こう考えて参つたわけであります。     〔矢尾委員長代理退席、山花委員長代理着席〕従つて、たまたま昨年賃金の引上げ問題に伴いまして、調停仲裁の際においてこれが議論されましたときに、業績賞与の制度は、実は私どもが進んで仲裁委員会の方々に申し上げて、そうしてでき上つた制度なのであります。従つて、調停から仲裁にまわりまするその紛争事項としての賞与制度というものは、何らなかつたわけであります。と申しますのは、今申しましたように、長らく懸案になつておりまする報償金の制度、あるいはときどきと申しますか、恒久的に、いつも同じように給与の支給を要求するために起るところ労働紛争、こういうものをできるだけなくして、秩序ある合理的な給与体系の中においてわれわれとしても労務管理を進めて参りたい、こう存じておりましたので、今申しましたような報償金の制度についても、それは既得権としていまだあるのだという主張も、私はあえて否定しようとも思いませんけれどもしかし、そう、いつたものの全部を含めて合理的な給与制度というものを考えますときに、ここに新たに期末手当あるいは奨励手当というものが安定した制度として予算の中に細まれることに相なりました際でもあり、また新たに業績賞与という制度が認められることになつたわけでありますので、この制度を全体として合理的に運用して行くことによつて、報償金という問題についての解決もはかりたい、こういうふうに実は考えておる次第であります。
  97. 中原健次

    ○中原委員 続いてお尋ねいたしますが、それでは昨年十一月裁定の第五項並びに第六項、二つ項がわかれて記述されておりますが、この両項目の関係は、どういうふうに御解釈になつておりますか――読んでみましようか。第五項は「公社は、夏季に支給した報償金の外に、当初予定された額の報償金を支給する。」第六項は「本年度決算において、予定以上の利益を生じた場合は、公社は、その一部を業績賞与として職員に支給する。」こういうのです。二つの項目がわかれて書かれております。この関係であります。
  98. 本田榮一

    ○本田説明員 第五項の報償金のことについて書いてありますことは、もちろん第六項の業績賞与と特別関連を持たせて書いてあるというふうにも受取れないかもしれません。この点は、先刻も申しましたように、若干お互いに議論もできる点じやないかと思います。ただ五項目において、報償金を支給するというふうに書いておりますことは、その当時の解決方法として、現実にこの報償金をもつて夏季手当にかえたということになつておりましたので、従つてその点をここで明確にうたつた、こういうふうに考える次第であります。
  99. 中原健次

    ○中原委員 それではこの五項並びに六項との関係というのは、必ずしも関連させているとは言い切れないというわけになりますね。――もちろんそうだと思います。これははつきり関連いたしておりません。項目がかわつております。従つて、第五項であえて「報償金」というと文字を明記いたしまして、これを支給するということを決定しておりますことは、当然報償金制度という今日までの慣行を認めておる、生かしておることを承認しておる。あえてこれをここに重ねて指摘しておりますのは、二十四年度のあの裁定に基いて合理的な適切な賞与制度を確立しておらないから、やはりこのことがここで指摘されておる、こういうふうに解釈しております。従いまして二十四年度の裁定の場合、賞与制度が確立を見なければ報償金というこの制度は消えないことになるのです。本年度に関して、特に第六項で、予定以上の利益を生じた場合には、公社はその一部を業績賞与として職員に支給すべしということを指摘いたしましたのは、すなわち今回の二十七年度の仲裁裁定の性格上、そのような部分からの財源を捻出せしめて、総体としての職員の給与総額を拡大しなければならない、こういうことを仲裁委員会が考えたからであろうと思いまするし、またさきのお言葉から考えましても、公社御自身としても、そのようなことを含められたものとわれわれは解するのであります。大体労使関係と申しましても、専売公社の業務の場合は、非常に特殊性があるわけでありまして、その特殊性の中に、職員諸君もまた考え方が、必ずしも一般民間企業と同じではなしに、相当大きい見地で仕事ができるようになつておると思うのです。そういう関係で、このような多様性の賞与制度と申しますか、基本給に附加する別個の給与が副次的に当然考えられて来たのだろうと思うのです。従つて、そういう一つの特殊性から来た非常に副次的な、複数的な基本給に対するプラス制度が出ておる、あるいはそういう慣行もどんどん出て来ようとしておるということを意味するものであろうと私どもは解釈するわけです。つきましては、せつかくこういう裁定が行われまして、本月は八月ですから、もう九箇月も十箇月も経過しておることになるわけであります。これは申し上げるまでもございませんけれども労働者は、受取る給与に関しましては、時間が遷延することは価値が減少することになるわけです。そうであつてみれば、もはや、せつかく予算も確定を見たわけでありますから、従つてこの確定の機を逸せずして、ただちにこの裁定実施のためにあらゆる努力を傾けていただくことが本来ではなかろうか、このように考えます。それに関しまして、部長の御見解を承りたいと思います。
  100. 本田榮一

    ○本田説明員 ただいままことに御親切な御忠告を受けたのでありまして、私自身労務関係を担当することになりまして、ちようど一年以上になりますが、ただいまお話のように、ほんとうに、要求があつて出すという、そういうやり方はいたしたくない、こう考えておりますので、従つて組合の方たが当然の権利として御要求になつてから、さてというような、そうしたつもりは毛頭ございません。予算は御存じのようにやつと通つたばかりでございますが、まだ通らぬうちから、実は小委員会の制度も設けまして、配分等について話合いもいたしておるような状況でございますので、できるだけ早く、われわれとしても、十分とは行かずとも、できるだけ満足するような額を大蔵省から御承認をいただいて、そうして組合の人たに差上げることができるように努力いたしたいと考えます。
  101. 中原健次

    ○中原委員 それに関連しまして、先ほど再々公述の中にもございましたが、予算総則の中で、本年度に関しましてはわざわざこういう文句が書かれておるわけです。「二十八年度において、職員に対し特別の給与として支給するため前項に定める給与総額を変更することができる。」と、わざわざちやんとわくもできておるのであります。別に困難な事情もないと思いますし、加えて三十二億の予定以上の益金ができておるわけでありまして、これはどのような分析をいたしてみましても、職員諸君の努力がその基礎になつておることは申すまでもないと思います。大体この利益というものは、労働なしには生じません。従つて、あらゆる労働の結集が、そこに三十二億の予定以上の利益を生んだものであるということは、論議の余地がございません。そうであつてみれば、かりに大蔵省がどのようなきゆうくつなことを言おうといたしましても、わざわざ予算総則にこれだけのものを規定されておるということも前提とされまするし、しかも、それにこたえるための、裏づけとしての予算は、三十二億の予定以上の益金が控えております。この点で、私は別に逡巡される根拠はないように思うのでありまして、むしろこの際、このことについてあまり時間をとることのないようにせられて、ただちにこれが実現のために御着手になつたらどうであろうか、こういうふうに考えますが、部長の御見解を承りたいと思います。
  102. 本田榮一

    ○本田説明員 先刻組合の方から発言のありました中で、私承つておりまして、大蔵省の人たちのために一言申し上げたいと思うのでありますが、業績賞与の制度を実施することについて、大蔵省側が何かこれをはばんでおるかのように受取れるような言葉があつたのでありまするが、この点は若干誤解があるのじやないかと思つております。予算も通りませんので、即時よこせと言われても、やれないというのが実情であつたわけでありますので、この点はひとつ御了解をいただきたいと思います。  それから、ただいまお話の通り、予算はやつと通つたばかりであります。前々から予算が通つてやれるようになるための準備は、小委員会を設けて配分案について話し合つてつたわけでございますので、この点はお話の通りわれわれとしても、できるだけ早く実施できるようにいたしたいと思つております。
  103. 中原健次

    ○中原委員 最後に、もう一点お尋ねしておきます。ただいま局長の言葉で想像できますように、極力時間を早くして答えを出すということでありますが、お考えを願わなければなりませんのは、もう盆もやつて参りました。従つて、去年の暮れに決定された裁定に基いてやることでありますから、もう心の用意ができておると思いますの、で――私の解釈は、八月十三日を盆と考えておるので、この盆に間に合せてもらいたいということを言うたのです。  そこで、これはちよつと話が別になるかもしれませんけれども、昨日総務部長にお尋ねした点でありますが、予備費が十二億五千七百数十万円というこの数字なんです。先ほど組合側の話によりますと、その中にまずざつと一箇月分くらい職員諸君に支払いとして充当すべきものが包含されておるというように、私は受取つたのでありますが、もちろんこれでは話のつじつまとしてはちよつと合いません。これは先ほど組合の諸君の御主張では、三十二億の中の少くとも三分の一、すなわちおおよそ二箇月分少々越える程度のものを業績賞与として要求しておるということでありましたから、ちようどそれにぴつたり当てはまる額ではありませんけれども、いずれにしましても、この予備費の中にそういうものがまつたく含まれておらないというふうな解釈になつて参りますと、またそこで話が食い違つて来る。昨日の小川総務部長の話では、内容としてはまつたく呉体的な計算の基礎がないのだ、とにかく全予算の二割、二形を予備費として組みたいと思つたが、それを少し下げて十三億幾らにしたのだ、こういうまことにつかみどころのない御答弁でありました。しかし、それではあまりにも話がへんにとれますので、この点について、あなたの御見解を伺いたい。
  104. 本田榮一

    ○本田説明員 昨日総務部長がどういうお話を申し上げたかよくかわりませんが、予備費というものの性質からいたしまして、われわれとしては、業績賞与を出す場合においては、その財源としては予備費が充てられるだろう、また充てられるということは常識的にも考えられるということで、予算の編成の際においても、まあまあ予備費が十二、三億あれば、普通それだけ一応こたえることができるだろう、こういうような折衝の過程であつたように実は承つて、私としても、それならばいいだろうと忠つてつたようなわけでございます。しかし、災害その他で、ほかの方に使わなくちやならぬというようなことで、その財源に充てることができないということが起り得るかもわかりませんけれども、その点がやはり今後の大蔵省との折衝等にまたなくちやならぬ点であると存じておるわけであります。
  105. 山花秀雄

    ○山花委員長代理 お諮りいたします。ただいま大蔵省当局より岸本主計局給与課長が出席されております。各委員会に出席が予定されておりますので、岸本課長に対する質問のみを先にやつていただきたいと思います。  中原健次君。
  106. 中原健次

    ○中原委員 多賀谷君の質問が控えておりますので、簡単に一、二点だけ伺つておきます。給与課長の御見解として、昭和二十七年の十一月の仲裁裁定の第六項、いわゆる業績賞与と銘打ちましたこの特別賞与の裁定に対して、どのような御見解をお持ちでありますか、伺つておきたい。
  107. 岸本晋

    ○岸本政府委員 昨年度の専売の裁定がございました業績賞与の精神と申しますか、つまり働けばそれに応じた報酬をもらえる、こういう考え方は、私ども、非常にけつこうなことである。今までそうした制度がないのは、むしろおかしいのじやないかというようにも考えておるわけでございます。ただ、それは考え方の問題でございまして、現実に、たとえば本年度の三十二億の利益のうち、どれくらいがその業績賞与に当るのかという問題になりますと、やはりいろいろ検討を要する点がございます。なお現在研究をいたしておる次第でございます。
  108. 中原健次

    ○中原委員 それでは三十二億の予定以上の益金というものは、はたして職員諸君の努力がどれほどその中の内容になつているかについては、いまだなおかつ研究を要する、こういう御解釈なんですか、承りたい。
  109. 岸本晋

    ○岸本政府委員 実は三十二億という予定以上の利益が確定いたしましたのは先月の三十一日でございまして、そのうちの、つまり業績賞与を出す分の検討は、現在いたしておるわけでございます。資料がなかなかそろわないものもございまして、われわれとしては、できるだけ急いではおるのでございますが、なお結論には達していないという段階でございます。
  110. 中原健次

    ○中原委員 これもわかりやすいりくつですが、すなわち業績を高めたということは、それだけ仕事をたくさんしたということにはなる。仕事をたくさんしたから、その業績が上つて、予定以上の益金も当然結論として出て来た、こういうことに結局はなると思います。従つて、この三十二億の総額がそのまま職員諸君の仕事の余剰量がこれを生んだというふうに、きつばり言い切れるかどうかについては、それはその他のいろいろな設備、あるいはさまざまな生産様式から来るいろいろな利益も考慮されるであろうと思いますが、しかしながら、その中の少くともほとんどの部分、主要部分は、やはり労働力にまたなければ出て来ないのじやないか、こういうふうに思うのです。従つて、厳重に精算していただくことはけつこうでございまするが、少くともこの三十二億のうち、今職員諸君の要求しておりまする組合側の要求は、三分の一を業績賞与としてもらいたいということを主張しておるのでありますが、その総額の三分の一くらいが請求されたからといつて、この予定以上の益金の中に不当に割込んで行くということにはならないように、これは常識上、大ざつぱに考えてもなると思うのです。厳密な計算をなさつても、これは別に不安はないと思うのです。全額をもらいたいというのじやないのですから、これはないと思うのです。そうなつて見れば、もうすでに華本方針というものは大体昨年の十一月裁定の場合に出ておるわけでありますから、当然この裁定は当局としては従わなければならぬし、少くともこれに対しては誠実を傾けておこたえをいたすという努力がなければ、裁定の権威がまつたくなくなつてしまうと思うのです。そうでありますれば、まつたく今日、なるほど予算の決定は三十一日ではございましたけれども、そしてまた、なるほどそれから日にちは一週間もようやくたつたにすぎませんけれども、だからと申しましても、もうすでに既定の事実でありまして、もうすでに見当のついたことでありますから、私はさつそくにもこれに対して結論をお出しになることは不可能ではないのではないか、こういうふうに考えるのであります。この点について、いかがでしようか、それともなかなか相当時間を要するとお思いになられましようか、この点について伺いたい。
  111. 岸本晋

    ○岸本政府委員 先ほど申し上げました通り、まだ最終の結論には達していないのでございますが、これを待つておられる職員の方々の気持も、われわれよくわかりますので、できるだけ急いで最終の結論に到達いたしたい、かように考えています。
  112. 中原健次

    ○中原委員 先ほども本田部長に申し上げたことでありますが、給与を受ける立場から考えますと、時間が遷延したのでは権威がありません。これはおわかり願えると思うのです。従つて、やはりありがたみのあの間に支払う、こういうことは私は当然なされなければ、やがて給与問題を考えられる場合に、その目的に沿わないことになるのじやないか、かように考えます。つきましては、この業旗賞与に関する取扱いは、慎重な御極付はもとより必要だと思いますけれども、そういつまでも検討女たといつてみたところで、際限のないことでありますから、ほんとうに文字通り大至急に、少くともこの十三日の盆には間に合わすというように、ひとつお運びが願いたいのです。私はこのことをしつこく申し上げます、そうでないと意味がないからであります。何とぞこの点について、大蔵省の御見解と御努力を期待いたします。  なお、せつかくお越しいただいたのですから、この専売公社の給与総則の中の第八条の後段ですが、ここに「二十八年度において、職員に対し特別の給与として支給するため前項に定める給与総額を変更することができるしと書いてありますが、これは何をねらつたものでしようか、お尋ねしたい。
  113. 岸本晋

    ○岸本政府委員 二十八年度の専売公社の予算総則の中のただいま御指摘の点でございますが、前段の方は、申し上げますまでもなく、二十七年度業績賞与でございます。後段の方は、やはり精神はその業績賞与と同じようなつもりで書いたものでございます。まあほとんど同じようなことを期待いたしております。
  114. 中原健次

    ○中原委員 いろいろお尋ねしたいと考えますが、時間の関係もあるそうでありますから、以上の点で質問を打切ります。  ただ最後にお願いしたいことは、何はともあれ、給与問題は非常にデリケートな人情問題でありますから、妙なことを申しますけれども、その点を十分おくみとりの上、ほんとうに意義のある支払いの方法、支給の方法を講じられるようお願いをいたしまして、質問を打切ります。
  115. 山花秀雄

    ○山花委員長代理 多賀谷真稔君。
  116. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大蔵省にお尋ねいたしたいと思います。昨日も、また本日もでありますが、予定以上の利益を生じた、これに職員の能率向上に基くものがどのくらい入つておるかということを検討しているというお答えであります。この裁定の文面から申しますと、なるほど、職員の能率向上というものがどのくらいの内容になつておるかということは、確かに予定以上の利益を上げた分について検討さるべきは当然であろうと思いますけれども、裁定そのものについては、むしろ労働が非常に強化になつておるということを、理由にせられておるわけであります。労働が強化になつてつておるから、この現在の裁定では多少不足に感ぜられるからこれを認めたのだということを言つておる。そういうことになりますと、今も中原委員から御指摘のあつたごとく、「例えば」と例示をいたしておりますけれども、この例示によりましても、四分の一という数字をあげておるわけであります。そこで四分の一といいましても、三十二億あれば八億でありまして、一箇月以上でありますが、今検討されていることは、一箇月以上何とかして出してやりたいという意味でいろいろ検討されおるのかどうか、お尋ねいたしたいと思います。
  117. 岸本晋

    ○岸本政府委員 その点は、具体的にただいま一箇月以上ということを申し上げるまでには至つておらないのであります。先ほども技術的な問題を申し上げたのでありますが、つまり職員の能率向上とか労働強化というものは、厳密に計算をやつてみませんことには、どの部分で支出が節約されている、あるいは收入増加があるかという点は、出て参らないわけでありまして、その点はもう少し数字的につつ込んで研究してから結論を出したい、かように考えております。
  118. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 すでに仲裁委員会でも、そういうことを予定して四分の一という数字をとつておるわけであります。四分の三というのには、いろいろな要素があるだろう。あるいは実際は、逆に四分の三が労働者の能率の向上によつて得たものかもしれぬ。あるいは五分の四はそれで得たものかもしれぬが、とにかく一応四分の一という例示をしておるわけです。そういう場合に、大蔵省としては、さらにそれを厳密に検討されることは、後になつてけつこうですけれども、今給与の問題は、きわめて迅速を要する問題であります。これは債務としては、むしろ確定をしておる債務であります。ただその金額が確定をしていないということでございまして、予算にも予備費にしか計上できないという事情もありましようけれども、それは債務が不確定であるという意味ではなくて、債務は確定しているが金額が不確定だというのですから、これは一刻も早く実施すべきものだと思うのであります。ことに専売の場合は、ほかの工場の場合なんかとは違いまして、ことにタバコの場合は速報によつても刻たにわかる状態にあるわけでありますから、一月に幾ら收益を得たかということは、専売におきましては十分把握できる。こういう事情において、大体どの程度出して、またお盆を前にしてどの程度出してやるということは、当然大蔵当局としては十分考慮さるべきが至当であろうと思う。一体いつまで検討されるのか、いつまでに出してやるというのか、それをお尋ねいたしたいと思います。
  119. 岸本晋

    ○岸本政府委員 いつまでという日時を示せということでございますが、ちよつと今私責任をもつて何日までということは申し上げかねるのであります。中原、多賀谷両先生の御希望、御意見もございますが、われわれとしてできる限り急いで努力はいたしたいとは考えております。
  120. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この仲裁裁定をされる場合に、四分の一という数字をあげられた。何もこれに固執するわけではございませんけれども、少くとも三十二億という厖大な利益が出るとは考えていなかつたと思う。それが三十二億という金額が出、その三十二億の四分の一にいたしましても八億という数字が出て来るわけであります。その場合、一箇月ということを限度にしておりますが、大蔵省としては一箇月以上は必ず出してやるというおつもりであるかどうか、お尋ねいたしたい。
  121. 岸本晋

    ○岸本政府委員 裁定の精神を尊重して一箇月を出す、これはもとより望ましいことではございます。ただ昨日も申し上げたのでありますが、他面において、公社の資本維持と申しますか、財政で出資しました財産でございますから、資本の維持ということもやはり他面において必要ではなかろうかと考えております。今一箇月すぐ出せるということは、ちよつと私責任をもつて申し上げかねる次第でございます。
  122. 中原健次

    ○中原委員 関連して。どうも御答弁がばかにもやもやするようですが、何かうしろの方には複雑なことでもあるのですか、そういう感じがします。いやしくも給与課長としては、これだけの裁定が出て、しかもこれが去年の暮れの裁定なんです。今日までにも腹づもりはできていなければならぬはずです。それが急に課長の方かと何かもたもたされるような印象を与えるごとき御答弁しか聞かれぬということになりますと、われわれとしては非常に失望するわけです。そうすると、大蔵省というものは、やはり何とかりくつをつけて給与を削ろう、いわゆる低賃金政策の手本を示そうというようなところが、今度の専売公社の場合に出ておるような感じさえするのです。それではまつたく給与課長御自身の給与問題に関しての役割は、私どもの期待したのとは逆な役割を持つていすにすわつておいでになるのではないか、こういうように思われるわけですが、それはどうでございましようか。しかし、そういうことでは困るのであつて、やはりこれだけの裁定が出て、しかもこれはりくつを申し上げるまでもなく、仲裁委員会という仲裁機関が設定された意味をお考えになつたら、これくらいの問題については、そうもたもたされる必要はないのではないか。労働大臣に言わしむれば、仲裁裁定はほとんど実施しておるという御答弁をいたしておる。これは労働大臣の私弁ですけれども、とんでもない無責任な答弁だと私は思つているのです。不幸にしてこの席においでにならぬから申し上げませんが、実際はほとんど実施しておらぬのです。ほとんど実施しておらぬということになれば、公共企業体労働者のこれからの労働運動のやり方については、ぼんように考えなければならぬ。このままではまつたく骨抜きにされてしまして、何にもできないということになるのであります。そういうことに追い込まないようにするために、仲裁裁定の尊重ということがあると思うのです。たとえば、そうした仲裁裁定を尊重されて、仲裁裁定そのものは少くともそのままに受取るという心構えが当然あるべきものだと思うのです。ただ、たまたま予算上、資金上とかいう逃げ道があるから、何とかかんとか言うておるにすぎないのであつて、これはほんとうの本則じやない。本則は、仲裁裁定はこれをそのままに実施するというのが本来の建前だと思う。ところが本来の建前の方がどうも変則のようになつて今日に至つているわけですから、せめてもはつきりと仲裁裁定で指摘されました予定以上の益金に対する措置については、いささかも躊躇逡巡される必要はないと私は思う。これは言葉じりをとらえるのではありませんけれども、先ほどから実際の利益というものが、ほとんど労働努力によつて生れたものでもないかのような言葉使いをなさつているような気がするのです。これはちよつとどうかと思うのです。やはりもともとの生産が増強されて来ませんと、利益は上らぬのだと思う。ですから、そういうふうに考えて行きますと、その間に、特に値上げしたわけでもなんでもありませんし、そうであつてみれば、おそらくこの利益というものは、生産がそれだけ増加しておるのだということになると私は思う。その他の方面にこの利益が配分される分は、ほとんどないのではないか、実際はそう思えるのです。ですから、これが実際に職員の努力によつてできたものかどうかということを分析して行くために、その時間をおやりになるということになつて来れば、これはやはり何らかその間に、極端な表現をしますれば、言いのがれをつくつて、できるだけこちらに出す金を押えて行くという底意が大蔵省にあるというふうに疑われても、しかたがないと思うのです。私はそのように疑いたくありません。あなたの態度全体から受取れます私どもの感じからいえば、これはもちろん誠意をもつてこのことに臨んで尽してくださることを信じますけれども、そういう誤解を与えると思う。従つて私は、このことをここにもう一度念を押して申し上げておきます。
  123. 岸本晋

    ○岸本政府委員 私の申し上げ方が足りなかつたと思いますが、やはり未定のこともございますので、何かお話のような印象を与えたことは残念でございますが、私どもは、この問題は、専売公社ばかりでなく、二十八年度予算から三公社五企業特別会計全部に同じ制度が適用される問題でございまして、その最初の組みかえでございますので、できるだけ裁定の精神を尊重し、合理的な解決方向と申しますか、基準を発見して行きたい、かように考えておる次第でございます。決して頭からなるべく職員にまわすものを少くしようとか、そういう考えでものを考えておるのではないということを申し上げておきます。
  124. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 先ほど公社の職員部長から、予備費の件につきまして、災害等の関係があつて云々という話があつたのですが、しかし私は二十七年度の決算についての問題は、何も二十八年度に起つた災害とは関係がないと思う。ただ、たまたま不確定の金額であるがために予備費にまわつた、本来生産報償金を予算にはつきり明確に組んでおつたような仕方からすれば、この二十七年度の決算も、腰だめではありますけれども、予算に計上すべきであつて、予備費の中に入れるべきではないと思いますが、それを申し上げましても、もういたし方がありません。とにかく、金額が不確定であるから予備費に組むということになる。ですから、二十八年度の災害とは全然関係がないものである、かように考えますが、大蔵省としてはどういうふうに考えておられるか、お聞きしたいと思います。
  125. 岸本晋

    ○岸本政府委員 二十八年度の予備費は、たしか十二億でございますが、これはやはり本年度における不時のいろいろな出資を予想いたしまして立てたものでございます。決算吉につきましては別に特に立てておりませんので、金額が確定いたしまして支給することに相なりますれば、やはりこの予備費から出すよりほかに方法がなかろう、かように考えます。
  126. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ちよつと問いと答えが食い違うようであります。私は、災害その他の支出を要する場合に予備費から出されることはけつこうでありまして、当然出されてしかるべきであろうと思う。しかし、それが多かつたからといつて、この二十七年度の決算の結果による業績賞与というものが減らされる理由はないと私は考えるわけで、この問題については、さらに足りないということになれば、予算上の措置を講ずべきであると考えるわけであります。そこで時間もないそうでありますので、私よ希望だけを申しておきますが、そういうことで二十七年度の決算に伴う業績賞与が削減されることのないように希望いたしまして、大蔵省に対する質問を終ります。  次に公社に対して質問いたします。  公労法ができた趣旨につきましては、参考人である組合側からも、また中原委員からも御指摘があつたと思う。そこで、これは予算上、資金上不可能の支出ではない。なるほど大蔵省の承認は必要でございますが、こういう予算上当然支出することが可能である問題については、公社としましては十分なる決意を持つてつてもらいたいと私は考えるわけであります。そこで、仲裁の効力を実施できるように、公社としては金額等も条件付できめて大蔵省に折衝してもらいたい。そういう態度でないと、とうてい仲裁の効力は実行できないので、公労法を根本的にわれわれは検討しなければならぬ段階に立つわけであります。これに対して、今後職員部長は、この問題、ことに業績手当の問題について、いつごろまでに折衝して支給するか、この問題に対するあなたの覚悟をお聞かせ願いたい。
  127. 本田榮一

    ○本田説明員 ただいま専売公社の側として、できるだけ組合の要求に沿うて仲裁裁定の実施をはかるようにというお話でありますが、これはごもつともなことでありまして、先刻も申し上げましたように、われわれとしては大蔵省に対しましても、至急にこれの支出ができますように折衝している次第でございます。それからまた、組合とも委員会を設けまして、できるだけ早く実現いたすようにしている次第でございますから、その点御了承願いたいと思います。
  128. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は先ほどから、この業績手当の問題は不確定金額の任務であるということを言つておりますけれども、なるほど幾ら予定以上の利益が生ずるかということは不確定ですけれども、一箇月というのは確定しているわけです。ですから、公社として折衝する場合には、当然一箇月というものを組んで折衝すべきが妥当であろうと思う。もう一箇月以上出そうという気持ならば、これは私はあえて言わないわけです。一応一箇月というめどで交渉されるということを聞いておりますが、それだけの覚悟があれば、当然一箇月という予算を組んで、そうしてこういういろいろな問題の起る予備費から出すという変態的な形態でなくやらるべきであると私は思うわけであります。さらに報償金の問題につきましても、この給与は二十七年度の給与に対する仲裁でありまして、当然二十七年度は報償金のほかにさらに業績賞与を出す。これは考え方としましては、二十八年度の給与ではなく、二十七年度の追加の給与になるわけであります。でありますから、当然二十八年度としては、報償金も組んで、さらに二十七年度の給与の追加として、業績賞与を組まるべきが至当であると思う。そういうことでないと、あなたが今からいかに交渉されましても、きわめてむずかしい追い込まれる段階に来ると思うのであります。そういうことから、私はこの問題については、ことに職員部長は責任を持つて今後折衝してもらうことを切望して、私の質問を終ります。     ―――――――――――――
  129. 山花秀雄

    ○山花委員長代理 なおこの際お諮りいたしますが、理事倉石忠雄君が去る一日一旦委員を辞任されましたので、ただいま理事並びに港湾労働に関する小委員がそれぞれ欠員となつております。この際理事並びに小委員補欠選挙を行わなくてはなりませんが、これは先例によりまして、選挙の手続を省略いたしまして、委員長より指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  130. 山花秀雄

    ○山花委員長代理 御異議なければ、理事並びに港湾労働に関する小委員倉石忠雄君を再び指名いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時四十二分散会