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1953-07-03 第16回国会 衆議院 労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月三日(金曜日)     午後三時十九分開議  出席委員    委員長 赤松  勇君    理事 倉石 忠雄君 理事 丹羽喬四郎君    理事 持永 義夫君 理事 高橋 禎一君    理事 山花 秀雄君 理事 矢尾喜三郎君       荒舩清十郎君    池田  清君       鈴木 正文君    田渕 光一君       野田 卯一君    三浦寅之助君       山中 貞則君    吉武 惠市君       佐藤 芳男君    黒澤 幸一君       多賀谷真稔君    井堀 繁雄君       春日 一幸君    熊本 虎三君       中原 健次君  出席国務大臣         労 働 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         労働事務官         (労政局長)  中西  実君         労働事務官         (職業安定局失         業対策課長)  澁谷 直藏君  委員外出席者         労働事務次官  齋藤 邦吉君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    和田 勝美君         専  門  員 浜口金一郎君     ————————————— 七月三日  委員相川勝六君、三和精一君及び中澤茂一君辞  任につき、その補欠として山中貞則君、荒舩清  十郎君及び春日一幸君が議長の指名で委員に選  任された。     ————————————— 七月二日  自由労務者就労条件改善等に関する請願(櫻  井奎夫君紹介)(第二三〇〇号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任  電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法  の規制に関する法律案内閣提出第二一号)  公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律  案(山花秀雄君外六名提出衆法第二号)  地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律  案(山花秀雄君外六名提出衆法第三号)  労働行政に関する件     —————————————
  2. 赤松勇

    赤松委員長 これより会議を開きます。  小委員補欠選任の件についてお諮りいたします。昨二日委員館俊三君が委員を辞任せられましたので、ただいまけい肺病対策小委員が一名欠員になつております。この際補欠選任を行わなければなりませんが、これは前例によりまして委員長より指名いたすことに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 赤松勇

    赤松委員長 異議なしと認めます。けい肺病対策小委員中原健次君を指名いたします。     —————————————
  4. 赤松勇

    赤松委員長 それでは電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案及び労働行政に関する件を一括議題といたしまして質疑を許します。熊本虎三君。
  5. 熊本虎三

    熊本委員 質疑はたくさんございますが、なかなか思うよう進んで参りません。お許しを得まして、問題は日本の今後の労働行政は非常に重大だと考えまして、これに対しまする労働大臣の所感を承つておきたい、かように存じます。  あらためて申し上げるまでもなく、日本人口増加は、一年に百五十万になろうといたしております。従つて稼働人口は年々八十万以上の増加を見つつあるのでありまして、この現在の稼働人口に対する就労比率至つて低位であります。しかも、これから日本産業の開発に伴つて日本再建のための企業というものには、おのずから限定があるのであつて、これらを考え合せて、労働省における日本労働行政の大綱について、いかなる御定見施策を持つていられますか、これについてお尋ねをしておきたいと存じます。
  6. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えを申し上げます。労働問題が重要であることにつきましては、まことに私もさように強く考えておるのであります。御指摘のごとく、人口増加、それに加うるに国土の狭小という条件がありますので、全体の雇用量をいかにして増大するかということについては、非常に問題が多々ありますことは、私から申し上げげるまでもないことであると考えます。政府といたしましては、ただいま経済審議庁を中心といたしまして、五箇年間の企業見通し等について諸種の研究をしておりますが、私どもとしましては、その間におきまして、各企業間において産業平和が招来せられ、労使がその間に十分なる理解と協力をして参るようなふうな傾向を馴致いたしまするために、できる限りの施策をとつて参りたい、こう考えております。
  7. 熊本虎三

    熊本委員 大臣には数字がおわかりにならない、といつては失礼でありますが、事務的な問題に関しますから、あるいは労働大臣でなくてもいいと思いますが、具体的に質問をいたしますから、お答えを願いたいと存じます。二十七年度における稼働人口数及び就労実数はどういう数字になつておるか、お答え願いたいと思います。
  8. 赤松勇

    赤松委員長 熊本君にお尋ねいたします。渋谷政府委員から答えるそうですが、よろしゆうございますか。
  9. 熊本虎三

    熊本委員 はい。
  10. 澁谷直藏

    澁谷(直)政府委員 はなはだ恐縮でありますが、御質問の趣旨でございますが、過剰人口というと、どういう意味でありますか。
  11. 熊本虎三

    熊本委員 稼働人口でございます。
  12. 澁谷直藏

    澁谷(直)政府委員 二十七年の総人口が八千五百五十九万——これは内閣労働力調査による調査でございます。そのうち十四才以上の人口が五千七百四十四万、うち労働力人口が三千七百七十五万であります。
  13. 熊本虎三

    熊本委員 実際の就労数お答え願いたいと思います。
  14. 澁谷直藏

    澁谷(直)政府委員 そのうちの実際の就業者は、二十七年の平均にいたしまして、三千七百二十八万でございます。
  15. 熊本虎三

    熊本委員 さらに、求職者指数は一箇年間にどういうふうになつておりますか、お答え願いたいと思います。
  16. 澁谷直藏

    澁谷(直)政府委員 安定所窓口におきまして、どの程度の人間が、求職活動をしておるかという状況につきまして御説明を申し上げます。常用労働者の場合でございますが、昭和二十七年間におきましては、毎月安定所に来て、求職活動をしておる者の数が最少が十二月の八十四万でございまして、最高は三月の百九万を数えております。昭和二十八年、すなわち本年に入りましてはこれが相当ふえまして、一月、二月、三月ともに百十万を越えております。そういつたような状況でございます。
  17. 熊本虎三

    熊本委員 その求職者に対する実際の就職数はどうなつておりますか。
  18. 澁谷直藏

    澁谷(直)政府委員 これに対しまして、求人数状況を申し上げますと、昭和二十七年におきまして、一月——三月、これは例年新規学校卒業者に対する、求人がございますので、増加するのでございますが、三月が最高でございまして、四十三万でございます。その他普通の月におきましては、大体二十三、四万というところで推移をいたしております。こういつた求人数に対しまして、約八、九十万の、求職者がおる。実際の就職者の数といたしましては、昭和二十七年の年間を通じまして、大体十五万程度平均になつておるわけでございます。昭和二十八年に入りましては、先ほど申しましたように、新規学卒があります関係上、求職の数も、一、二、三月を通じて百十万を越えております。これに対しまする、求人数も相当増加いたしまして、一月が四十四万、二月が五十万、三月が四十九万こういうふうに求人数増加いたしております。その結果、実際に就職いたしました数といたしては、一月が十三万、二月が十八万、三月が二十一万、こういつた状況でございます。
  19. 熊本虎三

    熊本委員 二十七年度におきまする大学並びに高等学校卒業者就職率は、どういうふうになつておるか、お答え願いたいと思います。
  20. 澁谷直藏

    澁谷(直)政府委員 お答え申し上げます。昭和二十七年の中学校及び高等学校卒業者就職状況でございますが、昭和二十七年三月の卒業者中、安定所求職申込みをいたしました者の数は、男女合せまして四十万八千二百八十三名となつておるわけでございます。その中で実際に就職いたしました者の数が、この八八%の就職率を示しておりまして、二十四万四千六百八十七名、ほかに補導所に入所しました者の数が一万八十七名という状況でございます。本年はそれが前年と比べてどうであるかということを申し上げますと、昭和二十八年の三月の卒業者安定所求職申込みをしました者の数が、男女合せまして、三十九万六千五百三十二名、前年に比べまして、申込みました者の数において一万一千七百五十一名の減少となつております。それで就職の結果はどうであるかと申しますと、就職率におきまして九三・一%、前年度に比較いたしまして四・九%の増加となつております。その就職した実数におきましても、五月末現在におきまして二十七万五百十五名、補導所に入所いたしました数が一万一千七百三十一名、こういう状況でありまして、いずれも前年に比べて就職率は高まつております。
  21. 熊本虎三

    熊本委員 大臣お尋ねいたしますが、私の持つておる数字と少し違いがあるようでございます。特に学校卒業生就職率等につきまして、私は文部省の報告を持つておりますが、それによれば、ただいまの答弁は相当就職率がふえております。ただいまの答弁をそのままといたしましても、いささか昨年との比率が上昇しておるということは言い得ますけれども、しかしながら、現在の安定所を通ずる求職者の数に対しまする事実上の就職率等から比較いたしまして、現在の失業者というものは、百数十万を突破しておると推定できるのでございまま。  そこで今度は、現在いわれておりますところの企業合理化等の問題が強く打出されようとしておるのでございますが、これらの企業合理化という線は、従来の慣例からいたしまして、おおむね安易なる労働者賃金の低下、あるいはまた人員の整理、こういうものによつてこれをなし遂げようとする傾向が非常に強いのであります。従つてこれらの観点から推移いたしますれば、将来の日本労働事情には、非常な困難性が想像されるのでありますが、労働大臣のお考え方お答え願いたいと存じます。
  22. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御指摘のように、失業者がややふえて来ております。その点は、私どもも非常に懸念しております。二十八年の三月は、御承知のように内閣統計局調査によりますと、六十一万人という数字が出ております。これは一週間求職の意思を持ちながら、完全にその機会を得なかつたものでありますが、これが四月になりまして五十三万人。これは学校卒業生が出るときの関係もございましようが、その数字は減つております。しかし、ただいまのお話もございますが、今労働大臣としての立場で、各省大臣といろいろ連絡をとつてみておりまするが、各省における意向もまだ十分判明しておりませんので、その情勢を実際に見つつあるような状態であるのでございます。
  23. 熊本虎三

    熊本委員 昨年度の実際就労数三千七百数十万と先ほどお答えがございましたが、私の数字によりますれば、実際就労三千六百八十九万という数字を私は手元に持つております。この中の就労内容を見ますならば、農林業に千六百四十七万、非農林業に二千四十二万という数字に相なつております。しかしながら、現在の日本実情からいたしまして、千六百万を越える農林業への就労は、すでにオーバーの状態にあつて、これより以上の収容力は、絶対にないと私は考えております。従つて、非農林業の方面を見ますれば、内閣統計によりましても、これを八種別にわけて、おのおのの数字があげられておりますが、しかしながら、日本産業経済と相まつて国民生活の安定を考慮しますならば、その最も建設的な意見としては、三つの部門にわかれると思う。それは八種別のうちの建設、鉱業並びに製造工業の三部門でなくてはならない。その他の商業、交通あるいは官公庁というふうな部面に対する増員は、許されないと考えます。従つて、これから年々増加いたしますところの稼働人口力八十万、これをも合せて、これを包容するためには、何といたしましても鉱業並びに製造工業の発展、これによつてオーバーするところの稼働人口を収容する以外にないと考える次第でございます。はたして私の考える通りといたしますならば、その三部門に包容されております現在の収容人員八百六十五万でありまして、これが十箇年の後にはさらに八百万を増加する稼動人口でありまして、これに対処すべき対策といたしましては、直接の労働省関係ではないとは言いますけれども労働省が十分なる勘案によつて労働対策を樹立するにあらざれば、近きに失業問題のために日本労働事情が混乱するというときが来ないとは保証できないのであります。これらの問題に関する大臣考え方及び見通しを、いま一度御答弁つておきたいと存じます。
  24. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えいたします。御指摘のごとき点は、私も同感でございます。各省とよく連絡をとりまして、雇用規模拡大について、私としては私なりの主張をいたしておる次第でございます。各省において十分有効需要の増大を考え、また産業において産業規模の伸張を考え、雇用量を増大するごとく要望しておる次第であります。
  25. 熊本虎三

    熊本委員 ただいまのお答えで、大体は了承できるのでありますが、これらの問題に関しまする事案は、非常に重大でありまして、ただちにそのことが実施されるものではございません。すなわち今日から日本経済政策産業政策というものに対しまして計画性を与え、その計画の中において、まず第一に完全雇用の線を打出す、それによつて吸収でき得ざる消極面としての失業対策というものが現われて来ることを見のがしてはならない。この両面におきまするところの健全なる対策の樹立こそ、日本の単なる経済の安定、生活の向上というのみならず、日本全体に流れますところの国民思想の問題にまで影響すると考えるのでありまして、これらの問題を十分御検討を賜わりたいと存じます。  なおこれに関連いたしましてちよつと承つておきたいことは、現在の失業対策事情第一線実情であります。私ども調査をいたしますと、安定所におきまする職員の現在の待遇及びこれらに対しまするところの対策等は、はなはだ冷酷であります。これらの問題に関しまして、少くとも国の政策その他社会事情による安定事業につきましては、このために努力しつつある第一線職員について相当考慮して、これらを優遇しなければならないと考えておるにもかかわらず、まことに冷淡であります。その実情等について御説明を願い、これに対する対策としてはいかなるものを持つておるかについて、御答弁を願つておきたいと存じます。
  26. 澁谷直藏

    澁谷(直)政府委員 お答え申し上げます。全国第一線の機関といたしましては、四百二十の安定所と百二十箇所の出張所がございまして、これに一万三千に近い職員が働いておるわけでございます。ただいま熊本委員から御指摘がございましたように、失業対策事業拡大等事情もございまして、安定所における第一線職員の若心は、実に甚大なるものがあるのでございまして、私ども中央の者といたしましては、でき得る限りその職員労苦に報いるように、毎年懸命の努力を払つておる次第でございます。まず第一に、非常に朝早くから出て参りまして仕事を始めますために、それに報いるだけの超過勤務手当という問題につきましても、できるだけ実際に働いただけの超過勤務手当を確保したいということに力を注ぎまして、これは逐年その総額において増加して参りまして、現在におきましては、ほぼ実際の超過勤務に応ずるだけの超過勤務手当を支払い得るという状況に至つておる次第でございます。  それから、普通のデスクにおいて仕事をしている職員と違いまして、いわば現業的な仕事でもございますので、人事院とも折衡いたしまして、二年前から、第一線職員日雇い労働紹介に従事しておる職員に対しましては、大きな安定所並びに中程度安定所におきましては一号俸、その他の安定所におきましては二分の一号俸の特別の増俸の措置を講じておる次第でございます。これでもつて、十分とは決して考えておらないのでございまして、財政その他の都合もございまして、必ずしも私どもが満足するという程度には至つていないかと思いますが、中央のわれわれといたしましては、第一線職員労苦に少しでも多く報いるように今後ともできるだけの努力をして参りたいというふうに、考えておる次第でございます。
  27. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 緊急性がありますので、関連質問をさせていただきます。  今度の風水害で、失業者でなくて仕事がない人がおるわけです。すなわち、炭鉱は、六月二十九日現在でも、西日本で全坑埋没が四十坑と数えられております。その他坑内浸水は相当の数に上つておる。それから鉄道の輸送が全然ききませんので、送炭不能となつております。送炭不能というのは、ポケットその他の貯炭場がない場合には、出炭停止となるわけであります。こういう状態が現在続出しております。この問題に対して、大きな炭鉱でありますと休業補償もくれるでありましようけれども、現在の基準法では、必ずしも休業補償をやれということにはなつていないようであります。そこで非常に問題が起る。ことに全坑埋没炭鉱では、ポンプ方がおればいいのでありまして、坑外には片づけの仕事もない状態であります。水が引きますと、仕事はあります。しかしその間少くとも一週間か二週間、長きは二月もかかるわけであります。この問題に対して、政府はいかに考えられておるか。この対策はどういうように立てておられるか、お尋ねいたしたい。
  28. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今回の北九州の水害につきましては、先般も熊本委員からも御注意がありましたが、まことに非常な事態でございますので、私どもとしては、できる限りの措置をいたしたいと思つておる次第でございます。現地からの報告によりますと、まことに想像以上の重大な被害でございます。そこで政府としましては、今までにない思い切つた措置をとるということで、企業に対しましても融資をするということにいたしまして、そのために企業におきましては、これを勤労者賃金支払い等に対しまして支障を来さざるように、いろいろと有効に活用してくれることを期待しておるわけでございますが、さらに、今とにかく水が一ぱいである。そうしたような関係で、職安窓口へ見える方も、現在のところは少いのでありますけれども、そうした関係でお見えになる方に対しましては、これはまた現在ございますわく相当部分を使つていただくように考えておるのでございまして、職安窓口においでになる方については、臨時に仕事をされる部分について給与を差上げるような仕組みをするように配慮をいたしておる次第でございます。なお事務的には事務次官からお答え申し上げます。
  29. 齋藤邦吉

    齋藤説明員 炭鉱その他におきまして、操業休止の場合の労働者の問題のお尋ねでございますが、御承知のように基準法休業手当を出すところもありましようが、出さぬところも、国の方で強制するわけに参りませんので、あると思います。そこでそういう場合に、これを失業保険法適用措置することが適当かどうか、これはやはり問題がございまして、今にわかに失業保険法適用によつて救済するというわけには参らぬかと思います。しかしながら、現実問題として、こうした災害で操業休止になりまして、まことにお気の毒な方々でもありますので、私どもとしましては、できますならば失業対策事業のある程度わく拡大によりまして、しばらく失業対策事業でお働きいただきまして、これによつて賃金を支給する、こういう道が最も適当ではないだろうか、かように存じて、実は昨晩九州の方からもそうした情報も参りましたので、目下そういう方針で研究をいたしまして措置いたしたいと存じております。
  30. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 炭鉱は、御存じのように集団的にあるわけであります。普通の場合でありますと、あるいはわく拡大程度仕事があるかと思うのですが、筑豊炭田には十数万の労働者が密集しておるわけで、とうていそういうことはできないのであります。なぜここにこういう状態が起つたかということを検討してみなければならないのでありますが、これは率直に申しますと、歴代の政府の責任であると思う。そもそも基準法二十六条がもしないということになりますと、こういう状態はあまり起つていないのです。むしろ基準法の二十六条ができたためにこういう問題が起つた、こう言われてもしかたがないと思うのであります。それは御存じのように民法の五百三十六条の一項あるいは二項で、この問題の解釈について、これは市民法的な問題であるから、労働法的にはむしろこういう場合の危険負担使用者がすべきであるという議論が、当時なされておつたことは御存じ通りであります。ことに近畿あるいは中国を襲いました昭和九年あるいは十三年の風水害でも、法律上これは当時非常に論争されて来た。当時の孫田、末弘あるいは菊地、これらの教授は、ことごとく賃金請求権はあるのだ、こういうように言われており、ドイツ学会においても論争になつておる。ところが、この二十六条ができて、そのおかげで百分の百もらえるものが百分の六十しかもらえない。しかも厳格に労働法規定されました関係で、むしろ払わなくてもいいのだ、こういう状態を呈して来たと思うのです。しかしながら、当時基準法ができます際には、答申案条件がついておるのであります。すなわち、昭和二十一年十二月二十四日の総会における労務法制審議会の御答申案には、次のような事項が決議されておる。すなわち現下におけるわが国産業実情にかんがみ、政府労働者または使用者のいずれの責めにも帰すべからざる事由による休業に対しては、労働者生活を保障するごとく施策を講じられたい、こういう答申書が出ておるのであります。しかるに今日までこれが放置されておつたところにこの問題があると思うのであります。これは私病でありましても現在健康保険の給付が受けられ、失業者であればもちろん失業保険がもらえるのですが、これは失業者ではない、雇用関係は継続しておりますけれども仕事がないのであります。おそらく全坑埋没の会社は、いかに融資されましても、賃金まで支払うことはあり得ないと思う。それでありますから、この答申案に対して労働省としてはどういうように考えて来たか、また今後どういうようにするつもりであるか、これをお尋ねいたしたいと思います。
  31. 和田勝美

    和田説明員 ただいま基準法制定当時の審議会の決議をお読み上げになりまして、二十六条はかえつて民法との関係からしてじやまになるという御意見のようでございましたが、私どもの二十六条に対する考え方は、民法の方でございますと、労務提供がございますれば、それに対して金額を払わなければならない、労務提供がなければ払わなくてもいいことになつておる。ただそういう条項がございますが、御存じのように、民法規定任意規定でございます。だから休業の際は金額払わないという約束をいたしますれば、使用者側休業手当を一文も払わないくてもいいことになるわけであります。それに対して基準法の二十六条は、そういう特約を許さないのであります。そういう特約がありましても、基準法の二十六条によりまして、百分の六十は必ず払わなければならない。それだけの価値が二十六条にございます。特約がない場合は、二十六条によらず、金額民法規定によつて払うことになりまして、二十六条が民法規定との関係からじやまになつておるとは、私ども解釈いたしておりません。
  32. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今後の対策を聞いておるのです。
  33. 和田勝美

    和田説明員 今後も、ただいまのところ、そういうように取扱いをいたして、民法よりも上まわつた方法をいたしておるわけであります。さしあたつてこの二十六条をどうかえるというような考え方は、私どもつておりません。
  34. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私はむしろ労使双方責めに帰すべかざる場合の政府措置をお聞きしておつたのですが、解釈論についてお答えがありましたからは、私再度反駁したいと思う。特約というのは合意であります。でありますから、何も特約しない場合が多い。こういう不時の場合は特約していない。しかも使用者責めに帰すべき場合には、労務提供をしなくても、行きたくとも仕事がないという場合には、全額もらえるのです。ですから、形式上からいうならば、これはむしろ下つた規定であるということを学者が言つておる。そこで裁判所は、この解釈については非常に苦慮しておる。また寺本元労働次官も、とにかく百分の六十だけは強制力があるけれども、あとの百分の四十については裁判所でおもらいなさい、こういうことまで本に書いておる。であるから、私は二十六条の解釈については申しませんけれども、しかし、それを出すについては、労務法制審議会で非常に問題があつた結果、遂に政府に、この問題については保障しなければならない、そういう施策をしなければならないという答申案を出したわけであります。その答申案が出されておつたにかかわらず、今まで何らこれに対する法律的な制度、あるいは裏づけが全然出されていない。これに対して政府はどう思うかという質問であります。
  35. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 基準法の二十六条を援用してお話ですが、今度の災害は、私冒頭にも申し上げましたように、異常の災害であります。法の範囲内においては、当然なすべきことはなすのでありますが、それ以外に思い切つた措置をとりたい、こういうことを申し上げておるのでございます。それではどういうように思い切つた措置をとるかということになりますと、今現地に大野国務相が行つておりまして、現地を見て、場合によつては本省に同意を求めることもありますが、その場でできることは、各省関係官も行つておりますので、ひとつ従来にない措置を勇猛果敢にやろうということであります。いずれにいたしましても、あの異常な災害を受けられた不幸な方々に対しては、できるだけあたたかい気持で処して行きたいと思つておる次第であります。  なお、先ほど失対事業の話に多少触れられたのでありますが、現在ありますわく内でできるだけいたしまするが、もちろん総額として、多少変動があります場合は、これは予備費から補填させるようにしたいと思いまして、財政当局にもその話をいたしております。何にいたしましても、まだ水が引かない状態のところも多いわけで、どのくらいのことになりますか、現在のところは明瞭に見当はつきかねる次第でありますが、いずれにいたしましても、できる限りの措置をいたしたいと思つておるわけであります。
  36. 赤松勇

    赤松委員長 多賀谷君、ちよつと待つてください。先ほど基準法解釈の問題について事務当局に答弁を求めたのは、予算の問題は労働大臣から、基準法解釈につきましては、あなたから御質問がありましたから、和田説明員に許したのですが、一応あの基準法解釈につきましての答弁がなかつたので、和田説明員から説明つてよろしゆうございますか。
  37. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 よろしいです。
  38. 和田勝美

    和田説明員 先ほども申しましたが、民法の方は、特約がなければ全額払うことになるわけであります。そのときには、基準法の二十六条は別に発動をしないわけであります。民法の方で特約がございますと、基準法規定が生きて参りまして、そういう特約があまりしても、休業手当は六〇%までは払わなければならないことになります。その特約があつたかないかということになりますと、これは裁判所の問題になりまして、あと四〇%の、先ほど前次官の著書を引いてお話になりましたが、前次官の著書にありましたように私どもも考えております。
  39. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 解釈論はもうやりたくないのですが、特約のない場合が多いのですから、普通のケースでありますと民法で行く。これだけ言つておきます。  それから大臣に再度質問いたしますが、私は糊塗的なことを言つておるのではない。制度として、これは今度の風水害だけでなくて、部分的な風水害が起りましても、あるいは天災地変が起りましても、考え方では労使双方のいずれの責めでもない場合が非常に多いのであります。一つの炭鉱あるいは一部分のブロックの炭鉱で起つた——炭鉱だけではありません。工場でも起るのですが、こういつたときに、一体政府としてはどういう恒久的な対策を持つておるのか、それを聞いておるわけであります。
  40. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御質問の趣旨ちよつと解しかねるのでありますが、政府として今回の風水害の事態にかんがみまして、敗戦後の財政逼迫の状態のゆえとはいいながら、非常に糊塗的な工事を積み上げて来た、こういうことについては深く反省をしなければならぬ。もつと思い切つて公共事業費等についても十分なことをしなければならぬ、こういうことを考えておる次第でございます。あるいは御質問の趣旨を取違えているかもしれませんが……。
  41. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは風水害でなくても、要するに失業はしていない、雇用契約はあるのですけれども考え方によつて労使双方いずれの責めでもない休業が起り得るのです。風水害とかこういう場合だけでなくて、こういう事件は幾らでもあるのです。日常毎日のごとくあるかもしれません。こういう問題です。この問題に対して、生活保護をする何らの措置が講ぜられていないのです。これはしなければならぬという答申案が出ているのですから、政治的に申しましても、こういう大きな場合にあるいは施策をするということは、率直に申しまして比較的通りやすい。こういう点もありますので、政府としては労使双方いずれの責めでもない休業の場合に対して、どういう政策を持つておるのか、それをお聞きしておるわけです。
  42. 齋藤邦吉

    齋藤説明員 労使双方責めに帰すべからざる場合の休業の問題でございますが、労働法の建前としては、やはりそれを事業主の負担にするというわけには何としても参らぬのじやないだろうか、かように考えております。しかしながら、これだけで済ませる問題でないことは、先ほど来申し上げている通りでありまして、私どもが現在の法制のもとでやり得る問題は、先ほど申し上げましたような一般的な罹災救助のほかに、失業対策事業わくによりまして——これは正確なりくつからいえば、ちよつと無理だと思いますけれども、やはり無理だと申しましても、こういう際でありますから、そういうことを言つてはおれませんので、そういうことをいたします。それと同時に、さらにまた将来の問題といたしましては、これは諸外国にもある例でありまして、いつも問題になるわけでありますが、労使双方責めに帰すべからざる事由による休業の場合の失業保険の制度、こういうものがありまして、この点については、将来制度としては慎重に、まじめに研究して行くべきものじやないだろうか。基準法の問題としてでなく、その責めに帰すべからざる一時休業のものを、失業保険の建前において何とかできないだろうか、これは制度としては一番筋じやないだろうか。その点の方向において真剣に研究をいたしてみたい、かように存じておる次第であります。
  43. 春日一幸

    春日委員 関連をいたしまして、失業対策について伺います。ただいま小坂労働大臣は、多賀谷君の質問に対して、法が規定する範囲内のことは当然行わなければならない、こういうことを言つておられる。しからば貴殿は、大体この緊急失業対策法(「貴殿とは何だ」と呼ぶ者あり)貴殿とはあなたということです。
  44. 赤松勇

    赤松委員長 御静粛に願います。
  45. 春日一幸

    春日委員 その緊急失業対策法の第一条の中には「この法律は」からいろいろあつて、そのあとに「公共事業にできるだけ多数の失業者を吸収し、その生活の安定を図るとともに」こういうことがあります。それで生活の安定をはからなければならないが、しかるところ、この緊急失対労働者賃金を見てみなければなりません。それによると、現在家族数が三・九といたしまして、これらの労働者の受ける月平均収入は、五千四百八十円であります。これを他の収入といろいろ比較してみるのでありますが、官公吏が要求をしておるものは一万八千八百円であり、人事院が勧告しておるものは一万三千四百円でありますが、さらにまた民間労働者の収入というものは、高い者は二万円を越えており、低い者といえども一万数千円を越えております。さらにその最低の者、すなわち何も働かないで生活保護法によつて政府の給付を受けておる者が、家族が三九とした場合、その額は現在六千三百六十六円になつております。何にも働かないで生活保護法の適用を受ければ六千三百六十六円もらえる者が、働いた場合五千四百八十円しかもらいない。あなたはただいま法の範囲内のことは当然政府がその義務を果す責任があると言つておられるのだが、さすれば彼らの生活を安定せしむるためには、少くとも生活援護者たちが受けているその収入より下まわるというようなことでは、この法律の指向する精神は政府によつて実施されてないと思う。これは現在稼働日数二十一日として全国平均賃金二百五十円で推算した収入になるわけであります。これをひとつ生活を安定せしむることのために、相当額これを上げる必要があると思うが、これに対してあなたはどういうお考えをお持ちになつておりますか、お伺いいたしたいと思います。
  46. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 春日委員承知のように、この賃金の改訂につきましては、先ごろ五月に、PWといつておりますが、一般賃金調査をいたしまして、その結果は現在集計をいたしておる過程にあるのであります。七月中ごろになりましておそらくその集計がまとまると思いますから、それによつて善処したいと思います。  ただこれが生活保護法との関係について言われた点ですが、これは保護法の関係は、これ以上に出ると、みなそういうものがなくなるのであります。日雇い関係のいわゆる失業対策事業に従事する者につきましては、これ以上とられる場合は、さらにこれに加算されて行く建前でございます。なおその差額の数字的な基礎については、私の承知しておるところが少し明確でありませんから、明確を期するために渋谷政府委員からお答えいたさせます。
  47. 澁谷直藏

    澁谷(直)政府委員 ただいまの御質問の件につきましては、先般熊本委員からも同じ御質問があつたわけでございます。この件につきましては、生活保護法の適用を受ける家族が、その家族数が多くて、しかも何らの収入がないという場合につきましては、そういつた事態が起り得る可能性は確かにございます。その点は、私ども承知いたしておるのでございますが、ただ失業対策法の場合は、あくまでも同じような仕事に働く民間の労務者の賃金を基準といたしまして、それより一割程度低く定める、こういうのが法律の建前でございます。従いまして、私どもといたしましては、失業しておる不幸な方々でございますので、できるだけその生活の安定をはかるということは当然でございますので、でき得る限りの努力をいたしておるわけでございます。たとえば就労日数の問題にいたしましても、三年前は全国平均が十八日程度であつたのでございますが、昨年は全国平均二十日、さらに本年度におきましてはこれを二十一日に増大する。予算の総額を見ましても登録失業労働者の数は横ばいよりも若干減少しておるのでございますけれども、予算の総額におきましては前年度の八十億に対しまして、本年度はこれを九十七億に増大しておるわけでございます。ただ問題は、賃金を引上げるという必要は確かにあると思いますけれども、法の建前から申しまして、同種の作業の民間の賃金を基準としなければならぬ、こういう建前でございますので、ただいま大臣から御答弁がありましたように、五月に調査を実施いたしましたその結果をもちまして必要な措置を講じたい、こういうことで、目下準備を進めておるわけでございます。
  48. 春日一幸

    春日委員 その地方における同一業種よりも、大体一割方安く賃金を定めなければならない。大体こういうふうに法律もきめてあり、なおあなたの御答弁もそこにあつたのでありますが、そこでお伺いしたいことは、現在土木工事、トロツコ押しやもつこかつぎ、そういうふうなところの重労働の賃金は二百七十五円くらいであるが、こんなもので食えないことは、あなた常識だつてもわかることだ。そういうふうなことは詭弁であつて、現実の問題といたしまして、そんなことは大した資料も何も調査する必要はない。大工さんを雇つてみるとか、あるいは日雇い人夫を雇つても、二百七十五円で来るような人があれば、どんどんあつせんされたらよろしかろうと思うのだが、現実の問題といたしまして、少くともこれは生活と結び合せて考えなければならぬ。その人の生活を安定せしめるために、この緊急失対土木事業という法律ができておる。すなわち二百五十円では暮して行けないからこそ、彼ら全国四十万の労働者は、すでにあなたのところに陳情して来ているPWの資料がなければ、あなたは二百五十円で彼らが暮して行けるかどうかということがわからないのですか。少くとも生活保護法という法律ですら、働かないでただもらう金で三・六人の家族数で六千数百円もらつておる。それを彼ら土木工事に重労働をして働いておつて、なおかつ、これが五千四百八十円しかもらえない。この資料をあなたには多少修正すると言われるが、三割も五割も違うわけはない、何パーセントというごくわずかな差額であろうと思う。そういう意味合いにおきまして、PWの資料というものは、別に法律に基礎があるわけじやない。すなわち、そういうふうなPWの調査資料によるのでなければ、賃金を上げることはできないという法律上の規定というものはありはしない。ただあなた方が、かつてにそういうことを言つているだけであなた方の一方的な独断である。従つて、そんなものは何ら権威のない考え方である。問題は、この法律規定でなければならない。第一条のこの法律の目的とするところでなければならないと思います。そうだとすれば、現在二百五十円では食つて行けないのだから、何とかして一割ないし二割これを上げてもらいたいという要請が現実に行われておる。しかもそのことは、彼らの非常に大きな生活恐怖、生活不安、生活困難、こういう姿になつて現われて来ておる。やむにやまれぬ全国代表があなたのところに陳情に行つておるのだが、これが五月になり、七月になんなんとしてまだ結論が出ない。そんなばかなことはない。もう一箇月にも二箇月にもなんなんとしておる。そういうことでなくして、ほんとうに彼らは、その日に目当をもらつてつて、そのもらつてつた現金でその日の米を買つておるのだから、その結論を二箇月も出さないということは、実に労働行政の怠慢である。私はこのことを強く指摘したいと思うのであります。従いまして、この機会に彼らの要請をかなえて、二百五十円とか二百六十円にしても、これはとてもとても暮して行けない金額だから、せつかく生活の安定をはかるという趣旨のもとに、この法律施策ができておるのだから、何とか食つて行けるように、しかもその土地における九割程度賃金が確保できるだけの予算措置を講ずる義務があると私は思う。現在あなたは、そういうことを言うておられるけれども、現在国会に提出されておる予算の中には、それに必要な財源措置が講ぜられてはおりません。従つて、これに対する対策をすみやかに講ぜられたいと思うが、労働大臣はこれに対していかに考えておられるか、御答弁を願いたい。
  49. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御承知のように、この法律によりまして、一般賃金よりも一割方安くということになつておりますので、一般賃金なるものを十分精査せねばならぬと考えておりまして、その集計をまつて善処するというのでございますが、もちろん一般賃金は高騰の傾向にございますので、その結果においては若干上るだろうと思います。
  50. 春日一幸

    春日委員 ではそれは一般賃金の九割ということが標準になつているのだから、一般賃金の集計ができれば、これは相当巨額のベースアツプが行われる、こういうことに私はその代表に発表しておきますから、さよう御承知を願います。  それから次は、夏季手当に関する問題であります。     〔発言する者あり〕
  51. 赤松勇

    赤松委員長 静粛に願います。
  52. 春日一幸

    春日委員 政府では、さきに二日分の支払いを行うための措置がいろいろ行われております。しかるところ、彼らは二日分だけではとても夏季手当という要請の内容を満たすことができないので、少なくとも十五日分ほしいということを言つているのですが、これはいろいろの問題で疑問があり、われわれ議員仲間において、いろいろデイスカツシヨンいたしました結果、四日分という程度が何人も納得できる手当であろう、こういうふうに考えているわけであります。従いまして、これは官公労に対する追払いの措置についても、目下官公労の組合と政府との間においてなお折衝中のことになつておりますが、この日雇い労務者の問題についても、二日分の外に更に二日分程度のものを追払いの形において何らか措置を講ずる意思はないか。現実の問題といたしまして、PWの集計が遅れているために、当然ベースアツプがもつとずつと以前にさかのぼつて行われなければならないのに、なおかつそのことが行われていない。従つて、今ここで二日分の夏季手当が四日分になつたところで、それはずれているベース・アツプをそこで補充する形にはならないけれどもしかし気は心というものであります。そこでこの二日分程度を何とか追払いの形において措置して彼らの生活のきわめて困難な状態を、たとい少しでも救済するだけの心持はないかどうか、この問題について御答弁を願いたい。
  53. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほどのあなたの御意見についてでありますが私はPWの調査の結果、その九割ということになつているから、PWの結果が出たらこれに対する若干の修正、善処をするであろうということを申したのでございまして、非常に巨額なものというふうに御発表になりますと、かえつて事が混乱するといけませんから、そういう事実だけを、形容詞を抜きにして御発表願いたいと思います。  それから、今の夏季手当の問題ですが、これは昨年は御承知のようになかつたのであります。しかし本年は昨年の衆議院の御決議の趣旨もありますし、二日分、六千七百万円でございますか、全国に夏季手当を差上げる手配をしたわけであります。
  54. 春日一幸

    春日委員 二日分のことは、もはやその趣旨できめられているということは承知しております。しかし彼らは、二日分では足らない。このことは、あたかも官公労の諸君が、〇・五もらうことはきまつているが、〇・五では足らないから、あと〇・二五くれという要請が行われていると同様に、その軌を一にした要請が、日雇い労働者の諸君から行われているのであります。従つて、官公労の諸君に何らかの措置をすると同じような精神をもつて、一視同仁の精神……(「一視同仁は古いぞ」と呼ぶ者あり)法律の前には国民は平等であるという立場において、日雇い労務者のためにも、何らかの追払いをする必要があると思うが、その点はどうであるか、この点を明らかにいたされたい。
  55. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 財政上の都合で、目下のところ非常に困難であると思います。
  56. 赤松勇

    赤松委員長 委員の皆さんに御協力をお願いしたいと思うのでございます。非常に重大な労働行政一般に関する質問でございますから、できる限り議事進行に御協力をお願いしたい。今までずつとうまく参りまして、非常にスムーズに進行しておりますから、ぜひ御協力をお願いしたいと思います。
  57. 春日一幸

    春日委員 それは困難であると思うと言われるが、そのことは私どもよくわかつております。しかし困難な中においても、なおかつ何らかの方法を講じて、お互いの同胞がトロツコ押しをし、もつこかつぎをして、一箇月働いて五千四百円しかもらえない。しかも夏が来て、お互いの小さい子供に夏のゆかたも買つてやりたい。やがて盆が来る、新しいげたの一つも買つてやりたい、たなばたのために、何か買つてやりたい、こういう気持が、お互い日本国民だつたら、あなたの心の中にもわいて来てよさそうなものだと思う。昨日も私は本会議において、あなたのことにちよつと言及したのでありますが、左派の細迫君の表現によると、あなたは非常に知性のある方だと言われておる。われわれもそのことを強く期待しております。働こうという意思があり、働こうという力があつても職場がない、この気の毒な諸君が、お盆を迎えて、祖先のまつりごとの一つもしたい。そのときの供えものを買うために、何とかひとつ夏季手当をくれ、お盆の手当をくれと言つている。官公労に対しては〇・五払つておる。しかしながら官公労に対しても、なお何らかの措置をしようということが政府の心構えの中にあることが明白にされております。しかも、こういうことについては院が議決しておる。それだのに、日雇い労務者だけに対しては、予算がないから出せない。このことは、弱い者に片手落ちになる。困難な中においても、なおかつ可能な線を見出して行くことが、細迫氏の言うところの知性のある労働大臣のよき労働行政でなければならぬと思う。あなたは、その困難の中においてなお努力すべきであると思うが、これに対して何らかの御見解を承りたい。
  58. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 春日委員承知のように、これは昨年はゼロであつたものでございます。しかし今年はぜひともこちらから進んで差上げようということで、省として二日分決定して支払つた次第でございます。しかし、さらにこの上というお話でございますが、先ほども答弁したように、財政上困難だと思います。しかしながら、御意見は十分承つておきます。
  59. 春日一幸

    春日委員 財政上非常に困難であるが、なおかつ何らかの努力をしよう、こういうぐあいに了承いたしました。これまたそのように発表いたしておきます。(笑声)
  60. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私の言葉のままにおとりを願いたいと思います。私は、御意見は十分承つておきますと申し上げた次第でございます。
  61. 井堀繁雄

    ○井堀委員 先ほども風水害に対する労働者の救援については、かなり強い御回答があつたようでありますが、残念なことには、非常に抽象的であります。われわれといたしましては、この当面しております非常な大きな範囲にわたる労働者生活の問題は、より具体的なものが必要であると思いますので、実は私のほんの思いつきでありますが、労働大臣の熱心な御主張を実現される御意思を伺うために申し上げたいのであります。それは御案内のように、北九州さらに中国等におきましては、労働者の協同組織になります労働金庫が、労働者の消費資金や、こういう非常時の場合における融資の道を開いておるのでありますが、この労働金庫が、幸いにも福岡県にも山口県にも広島県にも存在いたしております。このような機関を活用されますことによつて、きわめて小範囲でありましようが、緊急の事態を救済するに役立つと信じておりますので、労働大臣はこの労働金庫に対して政府の資金を相当額預金し、それを労働者の当面の生活資金に貸与するというような道を御指導なさる御意思があるかどうかをお尋ねいたしたいと思います。
  62. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この際労働金庫を御活用いただくことは、非常にけつこうだと思います。これに対して政府の資金を入れるかどうかということでありますが、従来までもそうでありますが、政府の資金が直接労働金庫に行つたことはないのでありまして、政府としてはやはり府県に対して相当の助成をするということになつております。従つて府県においていかに判断されるかという問題ではないかと考えておる次第であります。
  63. 井堀繁雄

    ○井堀委員 現在各府県の労働金庫の実情を見ますと、地方の公共団体は、すでに多額の預託をいたしておる。あるいは定期預金その他の方法で預金をいたしまして、労働金庫の労働者に対する福利活動を援助しておりますことは、御案内の通りであります。政府がこれに援助してないということは、どういう事情に基くかは別にいたしまして、今日のような非常事態にこそ、政府はこのことを踏み切つて行う時期ではないかと私は考えるのであります。さらに言及いたしたいと思いますのは、熊本委員からも発言がありましたが、明確な御答弁がなかつたのであります。たとえば、労働者の零細な資金がすでに八百億を数えようとしております厚生年金の積立金のごときが、大蔵の運用部にそのまま凍結されておるのであります。この金は一般の凍結された資金と同じ意味において運営されておるのでありまして、こういう労働者が日ごろから積み立てております巨額な金が、こういう場合に還元融資されないということ自体も不合理である。こういうものさえ今日動かされないというのでありますならば、これに見合うべき国家の資金が、こういう機関を通じて労働者の緊急事態を救うということでなけらねば、何ぼ思い切つた方法を講ずるといつても、一番簡単にすぐに実行のできるようなことに躊躇されるようでありましては、大臣がここでいかに力んでみましても、労働者に信用されぬと思うのであります。こういうときにこそ、大臣は大胆にこういうものに答弁さるるべきではないかと思うのであります。よくお考えいただいて——答弁がすぐできなければ、後刻でもけつこうであります。私の信ずるところによりますと、地方の公共団体がすでに行つておりますことを、国家が財源に名をかりて躊躇する問題ではありません。政府には、莫大の預金が一般の市中銀行に預託されております。この一般の市中銀行と同列において扱うということさえ可能なのであります。ことに今言うように消費資金に対する正規の機関がございません。質屋か公設質屋以上のものはございません。こういうときにかかる機関があるのでありますから、こういう機関を活用できないということでありましては、どんなにりつぱなことを言われましても、信用ができない一つの事実だと私は思いますので、こういうものについては、簡単に答弁するような御用意があつてしかるべきだと思います。今すぐでなくても、後刻でもけつこうでありますから、その心構えだけでも伺つておきたいと思います。
  64. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お話の点は、十分事務当局に検討させてみることにいたします。
  65. 中原健次

    中原委員 私はさきの春日委員のきわめて適切な御指摘について、ちよつと質疑いたします。PWの日額の調査が完了したらということについて、それと大体一〇%程度を下まわる日額を決定する、こういうふうになつておるわけではありますが、一番かんじんなことは、日額の労賃単価ということではなくて、その月に実収入を幾ら確保せしめるか、これが一番大事なのであります。従いまして、失対の関係費の中に労賃に見合う予算のわく拡大しておかなければ、これは意味がないと思います。この点について、大臣の御決意を伺いたい。
  66. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 失対事業費の増額ににつきましては、御承知のように昨年に比べて十七億円増加しておるわけであります。その内容は、一日の就労者十五万人が十六万八千人になつた、あるいは、従来就労日数が二十日であつたものが二十一日になつた。これは逐年増加して来ておりますが、今後も私はできるだけ努力して、その点を拡大したいと考えておるわけであります。二十八年度の不成立予算に比べまして、今回の予算は、御承知のようにほとんど各項目において異動がないのでございまして、この点だけは特に認めてもらつておるような状態でございます。今後もこの傾向は私としてはできるだけ配慮いたしたいと思つております。
  67. 中原健次

    中原委員 かんじんなことは、まずこうなんです。なるほど漸次就労日数を増加させておることについてはわかるのですが、しかし、そういうわずかばかりのいわゆる逐増では、今日の失業労働者が要求しておるものにほんとうにこたえるには、まことにほど遠いものがあるわけであります。従つて、この点につきましては、やはり実際のPWの調査に基いて出て来るであろうところの数字を基礎にして対策を講じられるということを承認するといたしましても、実際の月収額にこれを見合せて行くという対策が立てられなければならぬと思います。従いまして、わずかばかりの就労日数の逐増というのでは、とても追いつかないということをはつきり御確認願いたい。しかしてそういう確認の上に立つて、月収額をどのように高めて行くかということの御成算をひとつ御発表願いたいと思います。
  68. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 就労日数二十一日では非常にわずかではないかというお考えもありましようけれども、これは他の一般の民間の失業労働者が働いております日数も、大体それと見合つておるかと考えております。しかし、二十一日で、それだけの賃金かといいますと、そのほかに御承知のように今回日雇い労働者の失業保険を御審議願つておるわけでありますが、それによりまして、さらに増給されることになるという点を御承知願いたいと思います。
  69. 中原健次

    中原委員 各種各様の救済対策は当然講ぜられるであろうと思いますが、しかし、私はこの問題を論議する場合に、政府の諸君にひとつ御反省を願いたいと思うことがあるのです。それは何かと申しますと、失業労働者々々々と口々に簡単に片づけておられるようですが、一体何が失業させたか、この問題はきわめて重大だと思います。それは労働者自身が失業を求めたのであろうか、あるいはみずから怠惰であつたがために失業したのであるか。そうではなかつたのであります。戦後の政府施策が、遂に失業を急増させるに至り、その結果が今日をもたらしておるのであります。従つて失業者に対する政府の政治責任というものは、きわめて重大なものがあると私どもは考えております。従つて、その政治責任にこたえるために、政府が先ほどの風水害対策として、勇猛果敢に対策を講ずると言はれた、そのような考え方が、やはりこれにも関連して当然出て来るものだと思うのであります。これらのことについての御見解を承つておきたいと思います。
  70. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私ども、できるだけ雇用機会の増大をはかりたいと考えておりますし、不幸にしてその機会に漏れた方々に対しては、応急失業対策事業におきまして、できるだけ臨時的な雇用にしろ、機会をお与え申し上げるように考えておる次第でありますが、予算面でみまして二十七年度の公共事業費といたしまして、農業公共事業も含めまして千二百三十八億円でありますが、本年度におきましては、千五百五十五億と、差引三百十七億円の増大を見ておるのであります。人員にいたしますと、八十九万九千人でございまするが、二十七年度はこれが七十六万九千人でありまして、十三万の増加を見ておるわけであります。失業対策事業費も先ほど触れたのでありますが、九十七億円となつております。これは昨年度は八十億円で十七億円の増加を見ております。なお人員におきまして十六万八千人となつておりまして、前年の十五万人に対し一万八千人の増加を見ておるわけであります。さらに失業保険では、昨年度は六百三十七億円でありますが、本年度は八百三十九億円と増大いたしております。その他職業補導におきましても一千二百九十万の増大をみておるのでありまして、それぞれこれにつきましては全力を尽しておるような次第でございます。何にいたしましても、全体の予算のわくが乏しいのでございますが、そのわく内においての最善を尽して、ただいま申し上げたような雇用機会の増大、さらに失業対策事業の活用ということに力をいたしておるつもりでごいます。何にしましても、これは一労働省だけの問題ではなくして、全体の経済政策と関連のある問題でございますので、これは私どもとしまして、いたし得る限界はございますけれども、もちろんその限界内においての努力はするつもりでございます。
  71. 中原健次

    中原委員 もちろんそうなんでして、労働省だけの責任でもなければ、労働省だけの問題でもありません。従つてそれだけ発言がしよいと思います。労働省としては、こういう意向であるということが強く出せると思います。結局、全体としての経済産業政策なりあるいは政治方針の基本的問題との関連で、失業問題は労働大臣としては相当強く主張されることができると思います。そういう意味で失業者を対象とした予算のわく拡大というのは、失業者の実際の月収手取りの確保、こういうところに重点をお置にならなければ、せつかくの御苦心が、実はかえつてあだになるという結果になります。失業者が今日暮しております生活水準は、今ここで私の説明を要しませんほどに、悲惨なものがあるわけであります。従つてこのことを特に強く御考慮に入れられまして、今度こそは、どうしてもそういう全体のわくでやれば、当然そうなつて参りますが、その単位の基礎になるものを一人の就労働者の月収、これだけは確保せしめるという基準をまず先に求めて、その基準にこたえられるようなわく拡大のきめ方をしていただきたい、こういうことなんです。  それから、ついでですからお尋ねしておきますが、先ほど春日委員から強調になりました夏季手当の問題です。実は夏季手当の問題につきましては、そういう状況の中に支払つている労賃のことでありますからなお一層夏季手当の問題は特に重要性があると思います。日ごろ相当食えるだけの収入を確保されております場合ならば夏季手当は少々がまんしてもいい、少くともしんぼうしようということも言い得るのでありますが、日常食べられない、いわゆるマイナス続きの生活をしている状況でありますがゆえにこそ、夏季手当は特にこの際はり込んで出して差上げなければならぬということになるのです。そういう見地から考えますと、十五日の夏季手当の要求は決して過大ではありません。非常に遠慮気味の要求であるということを私は強調いたします。従つて十五日の要求というのは、もうこれに値切りをかけないで、そつくりそのままこたえて差上げるような御努力を願いたいし、単なる努力じやありません、それに実の結ぶように御決意を御表明願いたい。このことを最後にお尋ねいたしまして、委員長の御趣旨の通りに進行に協力させていただきたいと思います。
  72. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほども答弁いたしましたのですが、予算上非常に困難であると思つております。
  73. 赤松勇

    赤松委員長 この際政府にお願いしておきますが、中原委員の御質問、非常に緊急そして適切な御質問であると思いまするので、よく御配慮の上適当なる機会に御答弁をお願いいたします。
  74. 熊本虎三

    熊本委員 関連質問が多いので、本家はどこへか行つたような形でございますが、先ほどからお尋ねしておりましたいろいろの労働事情から来る出先機関の安定事務については、非常に重要性があります。これに対して先ほど御答弁がございまして、最近にそういう改革ができておるといたしますれば、まことに幸いでございますが、私ども失業対策委員として数年間やつて参りました間には、労働省自信が労働基準法を蹂躙して、朝の五時から勤勉これ努めて、あの重要な安定事務に当られておる職員に対しては、まことに冷酷な態度でございました。従つてそれにつきましての最近の具体的な改善の方法について、書類をもつて一応われわれの参考としてこれを御提示願えれば幸いだと存じて、お願いをいたしておきます。  なお安定所の内容を見ますと、実質上、登録労働者の中から安定事務に従事せしめておる向きが多分にあるのであります。最近の事情はどうなつておりまするか、これらの点についても、何かの資料を出していただくように、お願いいたしておきたいと存じます。  先ほど来、私が質問して参りました総合的なものは、とにかく日本労働事情は、今日までも楽ではなかつたのであります。これからますます難になるというこの問題について、当局の重大なる決意と、これに対しまする計画性を帯びていただきたいということを御質問したわけでありまして、その答弁必ずしも満足ではございませんが、その点は以上で打切つておきたいと存じます。ただそういうような実情の中における労働問題、特に具体的に言いますならば、労使間の問題は、これからますます微妙な立場に立つて行くのではないか、かように考えるわけでございます。従つてこの前の委員会で、高橋君の質問に対して法務大臣は、おおむね自分たちの役割は、その原因について探究するのでなくて、現われたる現象に対して処置をするのだ、こう答弁されました。一国の国務大臣としては、はなはだ当を得たる答弁とは考えませんが、法務大臣としての、いわゆる労働争議に現われる取締りとしては、一応納得できるかとも存じます。労働大臣は、そういうような法務大臣答弁したるがごとき、現われたる単なる現象によつて処置するという態度であつてはならない。言うまでもなく、労使間の問題から起つて参ります特に労働争議のごときは、これからますます深刻になろうとする、先ほどの質疑の中にありましたこの前提の上に立つて、起ります労働争議の原因、その動機について探求することが重大であると考えますが、その点についてのお答えを願いたいと存じます。
  75. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は労使間の問題は、労使それぞれが自主的な立場において良識をもつてこれを解決して行くという、よい慣行を確立してもらうように希望いたしておりますが、なお政府といたしましては、そうした労働争議の原因について、自分たちの感覚からいたしまして十分これを検討する、できるだけ日本産業平和がもたらされるように努力をして参りたいと考えております。
  76. 熊本虎三

    熊本委員 重ねてお尋ねいたしますが、自由主義経済、すなわち資本主義経済のもとにおいては、営利追求の経営であることは言うまでもございません。従いまして、もし労働組合にその力がないとすれば、営利本位の経営者は、その労働条件に対して、みずから進んでこれを改善するがごとき態度は、大よそまれであるといわなければならない。従つて、おおむね世の中に現われますところの労働争議というような問題は、共産党のごとくに、暴力的な社会変革を目ざすものは別として、そうでない限り、民主主義の基盤の上に立つた労働組合である限りにおいては、その原因おおむね資本家にありとわれわれは考えるのでありますが、労働大臣の所見いかんをお伺いいたしたいと存じます。
  77. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は労使対等の立場によつて交渉するのが、民主主義の労働組合のあり方であり、民主主義的な体制のもとにおけるあり方であると思つておるのであります。そこで、争議のあつた場合、どちらに非があるかということは、これは双方にある場合もありましようし、経営者側にある場合もありましよう、労働組合側にある場合もありましよう、種々様々であろうかと考えております。
  78. 熊本虎三

    熊本委員 その原因動機につきましては、おのおの立場を異にするのでありますが、労働大臣が私の質問そのままを承認した形における答弁は、いささか困難かと存じますから、これはこれ以上追究しないことにいたしますが、われわれから考えますと、またわれわれの体験をもつていたしますならば、その責任がおおむね経営者にあるということを確信を持つて申し上げることができます。そこにこそ労使の対等なる原則が打立てられるはずである。従つて労働大臣といたしましては、あくまでもかくのごとき営利本位の資本主義経営下における労働者の地位は、これをできる限り向上せしめ、そうしてあとう限りの権利をこれに付与すべきであるという原則は、いなむことはできないと考えますが、その点についてのお答えを願います。
  79. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 労働基本権というものは、できるだけこれを伸張させたいと考えております。但し、憲法の十二条、十三条にありますように、そうした基本権も、公共の福祉のために用いられなければならぬし、公共の福祉を害するに至つてはならぬ、こういう制約があると考えております。
  80. 熊本虎三

    熊本委員 その御信念がございますれば、その信念の上に立つて、たとえば提案されておりますところのスト規制の問題についても、一貫したる政府の態度がほしいと考えるのであります。そこで私は、昨日の問題にも触れますが、こういう原則の上に打立てられておりまするがために、労使関係におけるいわゆる法的処置というものについては最小限にとどめたいというのが提案理由であろうと考えます。そこから出発して参りますならば、あくまでもそうしたような情勢が現われて来ること、言いかえますならば、社会情勢がそこまで到達することをこいねがうのであつて、そうでなくして、法をもつて規制するということは、これは次善の措置であつて、御本心ではないということには間違いなかろうと思いますが、念のためお尋ねしておきたいと思います。
  81. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は、法律というものはできるだけ少い方がいいと考えておりますが但し現実の必要がありますれば、やはり法をもつて規制せざるを得ない、こう考えております。
  82. 山花秀雄

    山花委員 熊本委員質問に関連いたしまして、一言質問したいと思いますが、質問する前に、委員長にひとつお尋ねしたいと思うのです。この前の委員会に、例の特需関係の、行政協定第三条に基く基地であるかどうかという点につきまして、労働省の方から、次の委員会までに資料を提出するように、これは労働省の方で了承されていたのでありますが、いまだに正式に発表がございません。どうなつたのでございますか。
  83. 中西実

    ○中西政府委員 まことに申訳ございませんでしたが、先ほど謄写が刷れて参りましたので、さつそく差上げたいと思います。
  84. 山花秀雄

    山花委員 謄写ができておりましたならば、本委員会開会前に一応配付願えば、非常によかつたと思うのであります。それによつてまた新しい質問をしたい点が多々ございますが、きようはもう間に合いませんので、委員会が終つてからでも、ひとつ配付を願いたいと思います。  それから、先ほどから各委員質疑応答を聞いておりますと、私の感じでは、労働大臣、それに続く政府委員の方方の答弁は当を得ていない。何かその場をごまかして過せばよいというような、そういう不謹慎な点が多々見られるのでございます。昨日も私は労働大臣にこの点を強く申し上げたのでございますが、熊本委員関連質問でございましたから、若干遠慮申し上げておきましたので、この際ひとつ、はつきり誠意のある御答弁をお願いしたいのでございます。これは目下上程されてありますストライキの規制に関する法律案の審議に最も重要な点と思いますので、再度質問をするのでございます。  昨日も若干いたしましたが、二十九日の参議院本会議における労働大臣答弁でございます。これについて、昨日は熊本委員あるいは山村委員その他の委員から再三質疑がなされてありますが、はつきりこの委員会において、労働大臣答弁を確認したいと思いますので、もう一度御答弁を願いたいと思うのであります。  労働大臣は石川君への答弁に際しまして——その前の藤田君への答弁は、一応これは不十分な言辞があつたから取消す、こういう前提の下にずつと答弁が続いておりまして、石川君への答弁は、これは、自粛声明を労働組合で出せば、この法案を撤回する用意があるかどうか承りたい、こういう質問に対して労働大臣は、「自粛声明を発することが仮にありますれば、当然これは考慮せねばならぬ、こう考えております。」と、答弁をなすつておるのであります。私はこの石川君の質問に対して、労働大臣が、ただいま申しましたような答弁をしたということは、胸中深くこの法案に対して、まあ、ざつくばらんに申し上げますと、迷つておられるのではないかと、こう考えるのでございますが、労働大臣はこの点についてどうお考えになつておるかということを、まず第一にお聞きしたいのであります。
  85. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 昨日も申し上げたことでございますが、重ねての御質問でありますからお答えを申し上げます。  私は、藤田議員に対する答弁は別といたしまして、その次になされました松浦清一君に対する答弁の最後におきまして、「最後に、本法案を撤回する意思はないかということでございましたが、只今申上げましたような趣旨のものでございまするから、当面の緊急問題に対処する必要があると思いまするので、撤回する意思はございません。」こう答えております。その次の、ただいまの問題になつております石川清一君に対する答弁の最後におきまして「なお、関係組合におきまして只今議題となつておるこうした法案に関連して、自粛声明があつた場合、どうするかということの御質疑がございましたが、関係組合におきまして、公式な立場において、ここに議題となつているような公益を害する争議はなすべきでない」——しないと言つたのではなく、「なすべきでないという自粛声明を発することが仮にありますれば、当然これは考慮せねばならぬ、こう考えております。」ということを申したのでございます。これは何も私が迷いを生じておるのでも何でもなくして、前段において、これは必要であるから撤回する意思はないということを明瞭に申しておるので、その前の御質問が、撤回する意思はないのかということを聞かれたのかどうか、その点、実は長い質問でありましたので明瞭でなかつたので、どうするかという御質問であるか——こういうことはすべきではないということになれば、そのときはそのときで考えなければならぬ、こういう意味で申したのであります。従いまして一昨日も明らかにいたしましたように、私は本法案を撤回をするというような意思はございません。迷いもないつもりであります。
  86. 山花秀雄

    山花委員 ただいまの大臣お答えは、石川議員の質疑をはつきり聞かれなかつた、長い質疑であるからはつきり聞かれなかつた……。
  87. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 はつきりわからないと申しますと誤解があるのでございますが、長い質問があつたので、この前にも答弁していることもあるし、撤回する意思があるかどうかというふうに聞かれたのか、その点が非常に不分明でございました。どうするかと、こう聞かれたと思いまして、どうするのかと言われれば、そういう問題が出たならば出たときのことだ。これは裏を返せば、仮定の問題には答えられぬということになりますが、こう言いますと、従来からこの答弁は味もそつけもなさ過ぎるという評がございますので、少しそれを分析して、親切に答えたつもりでありましたところが、こういう誤解を生じましたのは、私の言葉が足りなかつたためと思いまして、その点釈明いたしておきます。
  88. 山花秀雄

    山花委員 私が今再度お尋ねしましたことは、労働大臣お答えの中で、石川議員の、この法案を撤回する用意があるかどうかというような党について、あんまり長い質問であつたから十分その意思を了承し切れながつたと、こう答えたのであります。そこに私は労働大臣の不謹慎と申しましようか、そういう点がうかがわれるのであります。この一問一答は、議員がもう真剣になつて、この議場において、あるいは参議院の議場においてやつておるのです。しかも一番重要なただいまになつて、それはどうするかというふうに聞いたとか、撤回するというふうには聞き取れなかつたというようなことは、私から言わせれば、何か弁解をしておるというふうに感じておるのであります。そういうような不謹慎なことをやめて、一言一聞き漏らさない態度で、これから答弁をやつていただきたいと思うのでございます。  さらにお尋ねしたいことは、この石川議員の説明がありまして後に、この答えておることで「当然これは」と言うておる。この「当然」というのには、やはり石川議員の撤回する意思ありやいなやにこの当然という言葉が出て来ておると思うのです。この当然という意味を労働大臣からお聞かせを願いたい。
  89. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 当然というのは、当然、あたりまえということでございます。そういう仮定の問題が出て来たら、仮定の問題は仮定の問題が出て来たときのことだという意味でございます。
  90. 山花秀雄

    山花委員 仮定々々と言つておりますが、そういう議論を進めて行くならば、この法案自体が仮定です。労働争議をやるかやらぬかわからぬ。(「去年やつた」と呼ぶ者あり)去年やつたことは済んでおるのです。これからやるかやらないかわからない。これは仮定です。そこで今石川議員が、法案を撤回する意思ありやいなやということを言つておるのは、現実の問題です。労働組合がそういう声明をしたらということを言つておる。     〔発言する者多し〕
  91. 赤松勇

    赤松委員長 静粛に願います。
  92. 山花秀雄

    山花委員 そこで当然ということを言つておる。当然を、日本人の考え方から文字通り解釈したら、一体どうなるか、そういう点をひとつはつきりしてもらいたい。そういうふうに逃げ口上は、ひとつやめにしていただきたい。率直にそのときの心境を中心にお答え願えればいいのです。
  93. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私としましては、つけ加えることはございません。ただ先ほど申し上げた通りでございます。
  94. 赤松勇

    赤松委員長 次会は明四日午後零時三十分より開会いたします。(発言する者多し)  本日はこれにて散会いたします。     午後五時三分散会