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1953-07-02 第16回国会 衆議院 労働委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二日(木曜日)     午後二時四十五分開議  出席委員    委員長 赤松  勇君    理事 倉石 忠雄君 理事 丹羽喬四郎君    理事 持永 義夫君 理事 高橋 禎一君    理事 山花 秀雄君 理事 矢尾喜三郎君    理事 山村新治郎君       相川 勝六君    池田  清君       鈴木 正文君    三浦寅之助君       吉武 惠市君    佐藤 芳男君       黒澤 幸一君    多賀谷真稔君       井堀 繁雄君    熊本 虎三君       中澤 茂一君    中原 健次君  出席国務大臣         労 働 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         労働事務官         (労政局長)  中西  実君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      亀井  光君         労働事務官         (職業安定局失         業対策課長)  渋谷 直藏君  委員外出席者         專  門  員 浜口金一郎君     ――――――――――――― 七月二日  委員館俊三君辞任につき、その補欠として中原  健次君が議長の指名で委員に退任された。     ――――――――――――― 七月一日  電気産業及び石炭鉱業における争議行為方法  の規制に関する法律案反対陳情書  (第五三一号)  香川県に労災病院設置陳情書  (第五五七号)  日雇労務者に対する夏期手当支給に関する陳情  書  (第五五八号)  失業対策事業に関する陳情書  (第六一四号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法  の規制に関する法律案内閣提出第二一号)  公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律  案(山花秀雄君外六名提出衆法第二号)  地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律  案(山花秀雄君外六名提出衆法第三号)  労働行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 赤松勇

    赤松委員長 これより会議を開きます。  電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案、及び労働行政に関する件を一括議題といたしまして、質疑を許します。熊本虎三君。
  3. 熊本虎三

    熊本委員 昨日から引続き御質問を申し上げておりまして、その関連の中途でございますが、この機会労働大臣に承つておきたいことがございます。  それは、先日の委員会高橋委員からもちよつとお話がございましたが、参議院における労働大臣答弁の問題に関しまして、そのときは速記録を見ましてという答弁に相なつてつたのであります。ところが速記録を調べてみますと、二十九日の参議院の本会議において藤田君に対する答弁労働大臣は「この際、関係組合の中から、かかるストライキは誤まりであつて、これを再び繰返さぬ旨の宣言国民に対して発するような意思はないものかどうか。むしろこの点をお尋ね申し上げたいと思う。」こういうふうに、労働大臣答弁の中に、みずから労働組合意思をただそうとする積極性があります。これに対しまして石川君から質問がありました。その質問は「特に先ほど藤田議員質問に答えて、そのことの是非は別として、自粛声明を出すということを強要するような答弁の一部がございましたが、若し自粛声明を出したといたしましたら、この法案撤回する用意があるかどうか、承わりたいと存じます。」かような質問でございます。それに答えて労働大臣は「なお、関係組合におきまして只今議題となつておるこうした法案関連して自粛声明があつた場合どうするかということの御質疑がございましたが、関係組合におきまして、公式な立場において、ここに議題となつているような公益を害する争議行為はなすべきではないという自粛声明を発することが仮にありますれば、当然これは考慮せねばならぬ、こう考えております。」と御答弁されております。この経緯から見まして、石川君の質問に対する答弁は、もし関係労働組合が公式にしかも声明を発しその自粛誓つたとするならば、当然労働大臣考慮する、こういうことに相なつておるのでありますから、従つて場合によつては本案を撤回してもよろしいという結論に相なると存じます。その意思がおありになるかどうかをこの機会に念のため承つておきたいと存じます。
  4. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ただいま速記録を読み上げながらの御質問でございましたが、その他私の言つたことはまだあるのでございます。藤田議員に対する御答弁は、私はその速記録を今ここに持つておりませんが、撤回する意思があるかという御質問に対しては、たしか撤回する意思はありませんとお答えしておると思います。なお、そう人に何か強要するよりは、自分の方で、そういうように公益に害のある争議というものは国民に迷惑をかけた、もうこういうことは本来不当であつて、すべきではないというような、むしろ反省がないかどうかということを逆にお尋ねしたいくらいであるという気持を申したのでありました。それについて、どなたでしたか、私も名前を記憶いたしませんが、その次の御質問者が、そういうことは不謹慎である、こういうお話がございましたので、その点は、実はその後の石川清一氏だつたと思いますが、その御答弁の冒頭に取消しております。この関係のものは撤回する意思はないというところまではその通りでありますが、その後の問題については、取消しますと言つておりますので、取消したものと御了承願いたいと思います。  なお、その後においての石川君の御質問に対しての答弁にあたりまして、私は昨日でありましたかも高橋君にお答えしたのでありますが、その答弁はよく読んでいただきますと、仮定のことには答えられない、仮定の問題には答えられないという意味同意語である。これは仮定でありますが、しかしそういうことがかりにあるといたしますれば、その問題について考慮するということはあたりまえだということでございまして、そこには撤回するというような文字を使つておる事実はございません。さよう御了承願います。
  5. 熊本虎三

    熊本委員 大臣みずから速記録をごらんになつておらないということでありますから……。
  6. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 いや、手元に持つておらないということです。
  7. 熊本虎三

    熊本委員 お読みを願いたいと思います。「繰返し申し上げますが、石川君の質問は、特に」と、この問題に関する限りは、ほかとの関連性を断つております。そうして最後には「この法案撤回する用意があるかどうか、承りたい」こう言つておるのに対して自粛声明を発することが仮にありますれば、当然これは考慮せねばならぬ、こう考えてあります」ということは、撤回する意思があるかどうかに対する考慮であつて、ほかに何ら付言されたようなことの関連性がございません。従つてどもから考えますと一労組の方においての自粛するような態度が明確になれば、当然この法案は必要がないという結論に相なるということになつております。従つて、そういうような労働大臣の御意思でありますならば、われわれはこれをことさらに真剣に重大問題として審議する必要すらもないかと考えるくらいでございまして、その点につきましては、重大な問題であろうと存じます。  なお一方国会の重視といいますか、尊重といいますか、こういう点から言いましても、たとえば労働組合がそれに対する態度声明をしたからといつて、他の一切の国内的な関連性を無視して、やめてもよろしい、考慮してもよろしいというがごときは、はなはだ国会軽視のきらいがあると考えまして、問題はしかく重大であろうかと存じますので、労働大臣の重ねての御答弁を願います。
  8. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この問題につきましては、昨日も高橋議員お答えいたした通りでございますが、その点については、私もここに速記録写しを持つて来ております。最後の点についてただいま問題になりましたが、その点は昨日も御質疑があつたので、その前段の点については、ただいまここには速記録を持つておりませんと申し上げましたが、最後の点については私ども写しを持つております考慮しなければならぬということを、熊本委員法案撤回ということに御解釈なさつておるようですが、発言者意図はそうではございません。申すまでもなく、その関係組合がどういう意思を表明したかということが、ただちにその結果として、政府法案撤回考慮せねばならぬというような関連性を持つものではないと私は思います。考慮ということは、そういう事態が起きましたならば、私どもの方としても、そういう事態がどういうものであるかということを考慮すると同時に、国会の御意思というものを判断せねばならぬのでありますから、種々そうした関連におきまして私どもとしては考慮する。撤回考慮するとか、そうした前提はございません。要するに、そういう問題が起れば、その起きた事態について考慮をするのでありまして、そのことからいたしまして、ただいまのような、審議する必要はないという御懸念は出て来ない、こう考えております。
  9. 熊本虎三

    熊本委員 百歩譲つて、ただいまの答弁をそのまま大臣の御意思であつた考えてみましても、考慮せねばならぬというその考慮とは、一体いかなることを申しておるのか、その点をお尋ねしたいと思います。
  10. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 考慮ということは、そのままおとりいただいてよろしいと思います。それを取上げてどういうものかということを種々検討する。そうしてその文字に現われた問題、あるいはどういう意図を持つておるのかということをいろいろと考究する、こういうことかと思います。
  11. 熊本虎三

    熊本委員 多分これには重大な関連質問があろうかと思いますから、私一人が申し上げることは遠慮したいと思いますが、しかし労働大臣答弁は、はなはだもつてわれわれには了解しがたいのであります。先ほど特に速記録を読み上げて、労働大臣考慮というものに関連する部分は朗読してあります。そうしてこの質問に対しての大臣答弁は、考慮とは、スト規制法提案しているが、そのスト規制法に対して自分たち考慮しなければならないということである。そのスト規制法に対して考慮するということは、提案をやめるか、修正するか、こういうこと以外には考慮の余地はないはずであつて、その考慮を、ただ考えるということでは、これは逃げ口上ではないかと私は考えるので、これでは私は了承はできません。
  12. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 まだ誤解があるようでありますから、重ねて申し上げますが、私はその質問お答えをする前に、しぼつてその御質問趣旨を申し上げて、それに対してお答えをするということを申しておるのでありましてその前段は、ただいま議題となつておるこうした法案関連して自粛声明があつた場合どうするかということの御質疑がございましたがということでお答えしておる。どうするか——撤回するかということではなくて、どうするかということであるから、どうするか、こうするかということは、そういう事態が出てそういうものがあつたならば、それはどういうものかということを考究する、考慮する、こういう意味で申し上げておいた次第でございます。どうぞ誤解のないようにお願いいたします。
  13. 熊本虎三

    熊本委員 事は非常に重大でございます。私が率直に申し上げますならば、労働大臣自身のこの法案に関する信念の程度であります。小坂労働大臣の人格や識見等から行きまして、こういうスト規制法のような単独法をもつて、憲法第二十八条によつて保障されたる労働者労働権、しかも裁判権によつてすら今日のところは無罪の判決を受けている現状において、これを規制し圧迫するということは、労働大臣の良心においても、これははなはだうなずけないところがあろうと考えて、十分労働大臣自身が悩まれておるところではないかと思う。従つて法案に対する信念の度合いは、至るところで答弁の中に現われておる。みずから自信のないような法案をわれわれが審議して、そうしてこれに対する結論をどこへ持つて行くかということにつきましては、よほど慎重な審議をしなければならない、かように考えておるであります。労働大臣ほんとう考え方、そうしてこれに対する答弁等については、十分にその真意、その信念のほどを漏らしてもらわなければならない。その上に立つてこの質疑応答の問題が国会の問題になることは当然でございます。どうかもう一度御答弁願います。
  14. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この法案提案理由にもございますが、こうしたことが国民経済並びに国民日常生活に関する重要性にかんがみ、公共福祉の擁護のためにぜひ必要である、こう考えております。なお、この速記録についていろいろお話がございましたが、速記録の他の部分を読み上げますと、私は他のことも言つておるのでありますが、この法案撤回する意思は毛頭ございませんということを申し上げておきます。仮定の問題には答えられぬと言つてしまえば、それでよかつたのかもしれませんが、これはどうもあまり味もそつけもないという野党側の御意見のようでございましたから、その裏を返して同意語を申した次第でございまして、それからかような誤解の生ずることは、まことに私としては遺憾に存ずる次第でございます。
  15. 山村新治郎

    山村委員 関連して、ただいま労働大臣参議院における答弁の問題について、熊本委員から御質問がございましたが、大臣は、この問題については、まず前段において、いろいろな答弁中、不十分な言辞があつたら取消すということを申添えてあるということを申されて、一応の逃げを打つておられる感があります。この問題となるべきところの答弁というものは、しかもあなたが「不十分な言辞がありましたから、取消します」と言つてから後において申された言葉に、問題点があるのでございます。すなわち、答弁中に不十分のところがあつたならば取消すということを言われた後におきまして、石川議員質問をあなたは繰返されて——あなた自身の品から発せられて、しかもそれに対して答えられておるのです。しからば石川議員がどういう質問をしたかと申しますならば、もし自粛声明を出すようなことがありましたならば、この法案撤回する用意があるかどうか承りたいということを石川議員は言われておるのであります。ところがそれに対しましてあなたは「なお、関係組合におきまして只今議題となつておるこうした法案関連して自粛声明があつた場合どうするかということの御質疑がございましたが、」ということで、石川議員撤回する意思があるかどうかということを問われたことを、あなたは答弁の一つの資料としてこの質問を繰返されておるわけであります。すなわち、石川議員撤回する意思があるかどうかということを言われました。それに対して、表現はどうするかというお言葉でございましたが、石川議員質問そのものは、撤回する意思があるかどうかということについての質問であつたのであります。すなわち、撤回するということの説明をあなたが肯定されながら、しかも答えられた言葉は「公式な立場において、ここに議題となつているような公益を害する争議行為はなすべきでないという自粛声明を発することが仮にありますれば、当然」——しかも「当然」という言葉を丁寧に加えられておりまして、「当然これは考慮せねばならぬ、」こう答弁されておるのであります。すなわち、これを精密に分解して参りますならば、石川議員撤回する用意があるかどうかということを質問されて、石川さんがこれに対してどうするかというような御質問があつたが、ということをあなたが答えられつつ、その場合には当然これは考慮しなければならないということを言われておるのでありまして、ただいまこの委員会におきまして答えられておる趣旨とは、およそうらはらな答弁がなされておるのではないかと、私は思うのであります。従いまして、参議院におけるところの言いまわし方は非常に拙劣であつたとか、あるいはまたこれは間違いであつたということについて、大臣はここで確認をされるかどうかを、まず承りたいと思います。
  16. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私の意思は、今申し上げた通りでございまして、さような誤解が生ずるといたしますれば、これは私の言いまわし方の不十分さの結果であろう、こう思うのでありまして、私の意思を明確にいたしたいと思います。私は撤回する意思はございません。
  17. 山村新治郎

    山村委員 意思最初からかわつておらないという今の御答弁でございましたが、そのときの速記録残つた意思は、明らかに撤回することを考慮するという御意思が発表されておるのです。これに対する責任をどういうふうにおとりになりますか。
  18. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これはそういうふうにきめつけられると、私としても心外でございます。前に申したように、その場合どうするかということの御質問でありますが、どうするかということについては、考慮する。そういう場合が出たら、出てもどういうこともないというのじやなくて、それが出たのを見たらば、どうするということを考慮いたします、こういう趣旨でございまして、責任というものはどうも私としては——言い方が不十分であつたということがございますれば、言い方については、今申し上げましたような趣旨であつたということを補足いたしますが、その点については御了承を願いたいと考えております。
  19. 山村新治郎

    山村委員 それでは参議院における答弁は間違いであつたということを御肯定なされますか。
  20. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ここに書いてある通りでございます、別に間違いとも存じておりません。ただそういう誤解を特に生ずるおそれがあるとすれば、補足して申し上げるということでございます。
  21. 山村新治郎

    山村委員 ここに書いてあるのは、繰返すようでございますが、石川議員質問は、はつきりと法案撤回する用意があるかどうかということを質問されている。それに対して、そういう行動をとられた場合にはどうするかという御質問がありましたが、ということを念を押されて、これに対して考慮するということが言われている。しからば、あなたはどういう点を考慮されるというお考えでございましようか。
  22. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 どうするかということを御質問になつたのは、今お話があるように、速記録を読んでみれば、撤回する用意があるかどうかと言われたのだそうでありますが、その場の空気といたしまして、私はどうするのだ、こういう御質問があつたと存じまして、どうするかということの御質疑でありますが、そういうことがあれば、それは考慮せねばならぬ、こういうことを申したのであります。考慮内容については、それこそ仮定の問題にはお答えできない。——もうこういうことになりますれば、私も用心いたしまして、どうも潤いも、そつけもないようなお答えで恐縮でございますが、そうした仮定にはお答え申し上げることはできぬ、こういうふうに申すよりほか方法がないと思います。
  23. 山村新治郎

    山村委員 非常にはつきりした大臣の御意思が発表されたようでございますが、問題は、先ほど熊本委員が言われたように、大体この答弁をされておりますころから、大臣としては、この法案に対する確たる信念がないために、こういうようなあやふやな答弁をされているのじやないかと私は思うのでございます。特に石川議員はつきりと、自粛声明を出すということになつた場合においては撤回する用意があるかどうかということの質問があつたに対して、当然これは考慮するというふうに発言しているということは、きようはどういう御遁辞をなさろうとも、これはやはり見のがすことのできない重大な答弁じやないかと私は思うのでございます。従いまして、委員長といたしましては、参議院石川議員とお打合せの上、この問題につきましてのはつきりした結論を出していただきたいことを、私から要望いたします。きよう大臣とこの問題の言葉のやりとりについて論争をいたしておりましても、きりがございませんから、あるいは大臣が、この参議院における言葉は間違いであつたということの御取消しがあるか、あるいはまたこれに対して、当時の石川茂員からもそのときの模様を承りまして、この点につきましては、委員長においてしかるべく善処されんことを要望いたしまして、私の関連質問は一応留保いたしておきます。
  24. 矢尾喜三郎

    矢尾委員 この問題に関連してお尋ねいたしたいと思います。  小坂労働大臣は、さき熊本委員質問に対しまして、架空の問題、将来の問題に対してお答えできぬということは、味もそつけもないからかく申したのであると言われておりますけれども、その前の答弁のときに、反対労働大臣は「この際、関係組合の申から、かかるストライキ門まりであつて、これを再び繰返さぬ旨の宣言国民に対して発するような意思はないものかどうか。むしろこの点をお尋ねを申し上げたいと思う。」ということを言うておられるのでありまして、この点は、将来の問題とか架空の問題とかいうことを申されておりますけれども最初こういう質問が発せられたというその原因は、小坂労働大臣みずからが、先に質問者に対して逆に質問をしておられるという建前から出ているのでございますが、この点に対してどういうお考えでこういう質問をされたのであるかということをお伺いしたいと思います。
  25. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は労使関係が非常に安定して——日本経済基盤も、御承知のごとく非常に脆弱なのでありますから、こういう際に、労使ほんとう良識をもつて争議を解決して行くというよい慣行ができることを衷心より期待し、希望しておるのであります。そういう際に、やはり公益という点から、国民の全体に非常な迷惑を及ぼすような争議行為というものは、その良識従つてやらないというふうなことが、従来とも望ましかつたと思うのであります。本来とも、そういうことは当然すべきでない、不当なことである、こういうことは言えると思つておるのでありますけれども、昨年の電産、炭労のストライキによつて、こういうことは公衆に非常に迷惑を及ぼす、社会通念上こういうことは不当である、すべきでないんだ、こういうことが私は成熟して来たと思つておるのであります。しかしなお一方において、かかる争議というものは正当な争議行為であるという考え方を持つておる人が強いので、この法案はどうしても出さねばならぬ、こういうふうに私としては決意をするに至つたのでございまして、むしろこうした不当な争議行為も、争議行為としてはやらざるを得ぬのだ、それは正当である、そうした背景のあることが、この法案提出背景をなしておるのではないか、こういうふうに私は思つておるのであります。  そこで、そうしたような問題を、私といたしましては、これは労組自身において、そういう考え方をとつてもらうということになりますれば、非常に日本労働界も安定して来るのではないか。そうして、もちろん使用者側においても、十分組合員各位に対する深い理解と良識をもつてこれに臨むというような慣行ができて来ることになりますれば、非常に望ましいことではないかと思つておることは事実でございます。それでこの法案撤回するかどうかという御質問がございましたので、撤回するという意思はない、しかしといつて、今のようなことをむしろ考えてもらえぬものだろうかという気持言つたところが、行政府が立法府に対してそういう質問を強要するような発言のあつたことは遺憾であるというお話がございましたので、これは私の表現の不十分さのためにそういう誤解を生じたのであるから、これは取消す、こういうことを申した次第であります。
  26. 矢尾喜三郎

    矢尾委員 ただいまの御答弁で、いろいろ申されましたが、その内容におきまして、政府提案した規制法撤回するという意思がないということは、提案せられました趣旨から、公共福祉とかなんとかいうことを申しておられるのでございまして、もしもこういうようなことがあれば考慮するということを申されたのでありまして、最初労働大臣が、私がさきに読み上げましたように、組合側質問をせられた。今労働大臣説明をせられたけれども、これに対して、もしも労働組合自粛するという声明をした場合においてはどうするかという質問に対して、考慮するということは、この速記録を読まなくとも、御承知の通り考慮をするということを申されたのでありまして、少くとも労働組合自粛声明をするかしないかということによつて労働大臣の腹がきまるのであります。ただ単に、現在の場合においてどうかと言われた場合においては、提案せられたのであるから、これは撤回する意思がないということは当然でありますけれども労働組合が現実にやるということを声明した場合において考慮するということの意義は、考究するとかなんとかいういろいろな言葉をもつて表現せられましたけれども、この問題に関する限りにおいて考慮するということは、たとえば君がこういうぐあいにこういうことを実行するならば、おれは考慮するという答えの考慮は、それに対する考慮という意味でありまして、ほかの問題に対しての考慮ではないと私は思うのであります。この点に対しまして、労働大臣考慮をするということを言われたその内容につきまして、どういう意思によつて言われたかということを私はお聞きしたいのであります。いわゆる仮定の問題には答弁できぬとおつしやるかもわかりませんけれども、この問題は仮定の問題であるかどうかわからないが、最初労働大臣から出た問題ではあり、それを実行した場合においてはどうするかということに対して、考慮するという答弁でありますから、考慮という意義は、どういう意義においてこの問題について申されたのであるかということについての労働大臣の率直な御意見をお伺いしたいと思います。現在においては心境の変化を来すとか、あるいは周囲の事情によつて、どういうようになつておられるかは存じませんけれども、少くとも私は参議院答弁のときにおいては、労働大臣のいわゆる純真なる気持において答弁されたものであると考えておるのでございます。そういう意味において、このときに答弁せられた気持を率直に表現してもらいたいのであります。
  27. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 確かにおつしやる通りであるのでありますが、その考慮ということは、労組側がどうとかこうとかいうことに関連してないということはないと思います。それについてどうこうということであろうと思うのであります。なるほど私が言い出したかもしれませんが、何か新しい事態があれば、政府はそれに対してできるだけの考慮を払うことは当然であろうと思うのであります。しかし何もないのに、ただあつたらどういう考慮をするんだと聞かれても、私としても、実はお答えのしようがないのであります。これは議会答弁として逃げるわけでもなんでもない。実はこういうことがあつたら、この場合はどうする、どういう考慮をするのだということでないと、私としてはお答えのしようがありません。
  28. 矢尾喜三郎

    矢尾委員 ただいまの答弁は、先ほどの答弁を繰返しておられるような答弁にすぎないのでございますけれども、現在の日本の労働運動界における重大な問題は、このスト規制法に集中されておるのでございます。新聞あるいはその他において御承知の通り、このスト規制法をめぐつて、重大なる段階に突入するような形勢も見受けられるのでございます。そのときにおきまして、労働組合の正常なる発展を希望されるならば、少くとも私は労働大臣におきましても、この際この問題について率直な意見を表明していただきまして、そうして最悪の段階になるようなことは、私たちとしても極力これを阻止しなければならないと思うのでございます。労働組合みずからが立ち上つてこういう声明をし、将来においても労働大臣が要望されておるような事態が起りますことを私たちは希望しておるのでございますから、この重大なるスト規制法を審議する上におきましても、労働大臣としては、撤回するとか、しないとかいう問題ではなくして、少くともこの法案には三年間こういう事態が起らなければこの法案は継続してやらないというようなことになつておるのでございまして、三年間やるかやらないかというような問題において、この法案が打切られるか打切られないかというようなことになつておるのでございますから、三年たたずとも、今日においてそういう三年後に期待しておられるような事態はつきりとわかつて来た場合においては、私はこの法案の必要はない、こう考えておりますので、そういう点につきまして、重ねて労働大臣の所見を承りたいと思います。
  29. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 産業平和、労使間の協調ということに対しての希望というものは、私も矢尾さんと同じであろうと思うのであります。ただ実態的には、関係組合においてどう考えるかということもございますが、この法案は、御承知のように政府提案して、国会で御審議を願つております。政府としてはこれを可決せられんことを希望いたしておるわけでございまして、そうしたものと同一の何か拘束力がございませんことには、私も行政府の閣僚の一人としまして、軽々しくこの問題を扱うということはできないと思います。抽象的には、私も産業平和を衷心より希望いたす矢尾さんのお考えとまつたく同一であるというふうに申し上げておきます。
  30. 赤松勇

    赤松委員長 労働大臣に、問題の性質を明らかにするためにちよつとお尋ねいたします。先ほど取消したという御答弁がございましたが、これは藤田議員答弁に対してお取消しになりましたか、石川議員答弁に対してお取消しになりましたか、そのいずれでございますか。
  31. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えいたします。前にもはつきり言つておるのでございますが、藤田議員質問に対して、非常に私が挑発的な言辞言つたことがけしからぬ、こういうお話がございましたから、その点は取消したわけです。あとの石川議員の問題その他については、全然取消しておりませんから、そのままにお考えになつてさしつかえありません。
  32. 赤松勇

    赤松委員長 そういたしますと、問題になつておりますのは、石川議員質問に対して、大臣から「自粛声明を発することが仮にありますれば、当然これは考慮せねばならぬ、こう考えております。」という御答弁でございますね。
  33. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そうでございます。
  34. 赤松勇

  35. 山花秀雄

    山花委員 先ほど熊本山村、矢尾の三委員労働大臣に対する質問で、いろいろお答えがございました。私は拝聴しておりまして、たいへんふに落ちない点がたくさんございますので、重ねて関連した質問をいたします。  二十九日の参議院会議における議事録は、労働大臣の手元にもございましようし、私もただいまここに持つておりますが、ここで労働大臣は、藤田参議院議員の質問に対して「かかるストライキが誤まりであつて、これを再び繰返さぬ旨の宣言国民に対して発するような意思はないものかどうか。むしろこの点をお尋ねを申上げたいと思う。」といつて、一応藤田議員に、ただいま読み上げましたような問題をお尋ねしておるのであります。それに関連いたしまして、石川参議院議員から「先ほど藤田議員質問に答えて、そのことの是非は別として、自粛声明を出すということを強要するような答弁の一部がございましたが、若し自粛声明を出したといたしましたら、この法案撤回する用意があるかどうか、承りたいと存じます。」こういう質問があつたのであります。それに答えて大臣は、この速記録にも明らかになつておりますように「公式な立場において、ここに議題となつているような公益を害する争議行為はなすべきでないという自粛声明を発することが仮に」——かりにという言葉を使つておりますが「仮にありますれば、当然これは考慮せねばならぬ、こう考えております。」こういう御答弁であります。この三つの、藤田議員発言石川議員発言労働大臣発言、これを常識的に、労働省のよく言われる社会通念の観念からこれを考察いたしましても、これは当然撤回意思があるかないかという点を考慮するとお答えになつておると、私どもは理解せざるを得ぬのであります。ところが、労働大臣の御答弁は、まあ味つけ答弁というような言葉表現で、私はその言葉を聞いておりますと、非常に重要なこの法案を審議するに際して、いささか妥当を欠くような態度がその言葉の中に現われておるのでございます。私どもはこの問題は単に電気事業石炭鉱業関連する五十万労働者の基本的権利の問題というふうには考えておりません。少くとも日本労働者全体の基本的人権に関する問題と考えて、真剣に審議しておるのでございます。どうか労働大臣におかれましても、真剣にこの点を御答弁を願いたい。そしてこの討議の中から、新しい日本の民主主義の労働運動を生み出して行く、そういう指導的役割を労働委員会から発するような、そういう委員会にしていただきたいと思います。一言希望を申し上げまして、再度私の質問に対して明確なる納得の行く御答弁を願いたいのです。
  36. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えを申し上げます。私といたしましても、先ほども答弁申し上げました通り、労働関係の諸問題というものは、非常に重要です。しかも、日本経済自体非常な脆弱性を内に包蔵しながら、どうしてもなし遂げなければならない復興への困難な道を歩んでおると考えております。その道を達成するに際しての労働問題というものは、今までに劣らぬ、いや非常に重要な時期にあると考えておるのであります。しかもなお、そういう際に、いたずらに観念的なストライキ万能という考えがありますれば、これは規制する必要があろう、こう思つておるのでありまして、何とかして安定関係を打立てたいという気持は、実は私においては人一倍強いつもりであります。以上をもつて答弁といたします。
  37. 山花秀雄

    山花委員 私は、大臣のこの委員会における答弁態度信念をお聞きしました。それと同時に、この問題は先ほどほかの委員からもたびたび質問がございましたように、撤回する点を考慮するとお考えなつたかどうかという質問をしておるのでございます。それに対して答弁がございません。再度明確な答弁を願います。
  38. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 明確に御答弁申し上げます。この問題は、あつたらどうするかというから、あつたらあつたときに考えるとこう申しておるのであります。言葉をもつと平たく申し上げますと、そういうことになると思います。ところが現実にまだ何にもないのであります。何にもないのに、あつたらどうする、そういうことだけでは、私としては何ともお答えいたしようがないのであります。何かそういう事実でもございますれば、うそれに対してどうということを明快にまたお答え申し上げることができると思いますが、現状におきましては何もないのであるということを重ねて申し上げておきます。
  39. 赤松勇

    赤松委員長 山村新治郎君から関連質問を求められておりますが、よろしゆうございますか。——山村君。
  40. 山村新治郎

    山村委員 山花君の質問に対して、あつたらどうするかという仮定質問には答えられないという御答弁がありましたが、あなた自身が本会議場において、はつきりと、そういうことはむしろできないのかということを聞かれておるのではありませんか。従つて、聞かれた場合のあなたの心構えというものは、あつたはずです。そのときの心構えをまず伺いたい。
  41. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 いや、これはよく読んでいただきたいのです。前のは、むしろ聞きたいくらいのものだということを申し上げておるのです。それについては、はなはだ不謹慎であるというおしかりがありましたから、それは取消した。ですから、何とお答えしたら御満足が行くのでしようか、どうも私にはわからないのですけれども……。要するに、何もないところに、あつたらどうするのだという話だけでは、——あると言いましても、これは社会現象でございますから、いろいろな条件というものが、そこになければならぬと思うのです。まだその事態がないのですから、その条件も従つてむろんないですね。それをどうする、どういう心構えだと聞かれても、しかも私も責任のある立場において、何ともお答えのしようがないことは、親友山村君においてよく御了解願いたいと思います。
  42. 山村新治郎

    山村委員 非常に重大な問題でございますので、個人的な懇意は懇意で、これははつきりさせなければならないのです。そこでくどいようでございますが、重ねてお尋ねしたい点は、大臣はつきりと、そういうことを希望するということを答弁され、同時に議員に反対質問されているのです。希望されておるということは、そのことが実現した場合におけるところの御用意があつたはずであります。そのときの御心境を承りたいのです。最初の、前段におけるあなたの質問に対する御心境を承りたいのです。
  43. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その前をちよつと申し上げましよう。「本法案は従来から不当或いは妥当ならざるものと考えられていた争議行為の範囲を明確にすることでありまするが、一部には、これらの行為というものは、なお正当なものであるという見解を持しておる者があるのでありまして、それでは公共福祉が侵害される現実の危険があると考えられまするので、ここに提案をした次第でございます。民主的労働組合の諸君には、本法案趣旨については御理解が得られることと確信いたしております。なお、昨年のストライキにつきましては、あのような第三者である多数の国民に重大な迷惑をかけるような争議行為はすべきでなかつた、誤まつていたという反省が、関係者の中に多いということを聞くのでございまするが、この際、関係組合の中から、かかるストライキは誤まりであつて、これを再び繰返さぬ旨の宣言国民に対して発するような意思はないものかどうか。むしろこの点をお尋ねを申上げたいと思う。」——これは非常に日本語の複雑なところでございまして、むしろお尋ねしたい気持でございますと、こういうのでございますから、そうおきめつけになられますと、何とも、どういうようにして御理解を願うか、私も判断に困るのでございますが、御了承願えたものと考えます。
  44. 山村新治郎

    山村委員 おそらく大臣は、これに対して御答弁はできないだろうと思いますが、特に大事な点は、先ほども熊本委員とともにお尋ね申し上げました大臣答弁中、はつきりと参議院の本会議場において、撤回する意思はないということを申し添えてあるという御答弁がございました。ところが、その日の速記録に全部目を通して見ましたときに、撤回する意思がないということは一言も言われておりません。石川議員はつきりと、撤回する意思があるかどうかということを尋ねられておるのです。それに対して、撤回する意思の云々については、大臣は触れられておりませんで、そういう場合におきましては当然これを考慮しなければならないということを答弁されておるのです。
  45. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 速記録はあとでよく見まして、私は確かに言つたと記憶しておりますので、またお目にかけるなりいたしたと思いますけれども、要するに、そういう仮定があつたらどうするか——まだ何もないのですよ、自粛声明も何も。そういう仮定があつたらどうするかというんですね。しかし自粛声明といつても、いろいろございましようし、どういう形でやるかという条件もありましようし、それからまた、いかなる形において、公式の度がどういうものかということについても、どういうことかわかりません。それが何年間ぐらい有効なものか、組合の幹部がかわつてしまえばそれつきりということもありましようし、いろいろな点があるだろうと思います。しかも、問題それ自体が何も出ていないんですね。そこで私ももつと人が悪ければ、仮定の問題には答えられぬと言つてしまえば、もうそれつきりなんです。しかし、せつかくお間きになるのだから、そういう事態が起きたら、そのときはそのときで考慮いたします、こうお答えしただけなのでございます。なお撤回する意思がありませんということは、まだ何箇所も言つたと思いますが——その前も言つております。「本法案は現実の必要から提案いたしたのでありまして、決して争議権を抑圧し労働者福祉を阻害するということになるとは考えておりませんから、これを撤回する意思はございません。」……。
  46. 山村新治郎

    山村委員 だれに答えたのですか。
  47. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは藤田議員でございます。それからなお松浦清一君に言つた、これは「撤回する意思はございません。(拍手)」こうなつております。
  48. 山村新治郎

    山村委員 そういうようにふまじめな答弁をされては私は問題になると思うのです。私たちの問題といたしておりますのは、石川議員はつきりと、そういう声明を出した場合において、撤回する意思があるかということを質問したことに対するところの、関連質問をしておるのです。あなたが大臣になる前に政府が言われたことを、あえて聞こうとしておるのじやないのです。松浦君やあるいは藤田議員に対する答弁というものは別の段階においてあなたが答弁をされ、撤回する意思がないという答弁であつた。しかしここで問題になつておりますのは、石川議員はつきりと、この関係労働組合がこういうようなストライキをしないという声明を出した場合には、撤回するところの意思があるかという質問をされておることに対して、あなたは、要するに撤回するという意味を十分含ませて、考慮をされるということを答弁されておるのです。すなわち、石川君の質問に対しては——いいですか、わからないといけないから丁寧に申上げますが、そういう、ストライキはしないという声明を出した場合におけるところの労働省の態度いかんという質問に対しては、これは十分考慮をしなければならないといつて、むしろ前段において答えられた言葉を否定せられておりながら、新しい段階が起つたならば、これは考えなくちやならないということを申されておるのです。石川議員質問に対しては、少くとも撤回する意思がないということを答えてはおらないで、むしろそうした場合には当然——御丁寧に「当然」という言葉つけ加えて、考慮するということを言われておる。日本語は非常に複雑であると言われれば、それまででありますけれども、私はこの言葉は、さつきも山花委員が言われましたように、石川議員質問をされ、それに対して「当然」という形容詞まで丁寧につけて答えられておるということは、実際重大な問題だと思うのです。特にそういう点からいいまして、あなたが撤回する意思がないということを、石川議員質問に対しては、答えておらないということは、これは速記録はつきりしておりますが、あなたとしても認められればよろしいと思うのです。従つて、新しい段階におけるところの状況に対しまして、はたして撤回する意思があるかということに対する答弁は、あなたは当然これを考慮されるということを言われておるのです。従いまして、私はあなたと親しい立場ですから、あえて変なあげ足とりはしませんが、参議院におけるところの言葉が誤つてつたならば、誤りであつたと言われた方が賢明ではないかと思うのです。同時に、仮定におけるところの質問には答えられないということを言われておりますが、あなた自身が、一体これを再び繰返さぬ旨の宣言国民に対して発する意思がないものかどうかを、「むしろこの点をお尋ね申し上げたい」ということを言つておるのは、少くとも日本語的な解釈からいえば、こういうような宣言をしてほしいということを希望したと思うのです。そうすれば、希望しておる状況が出た場合には、あなたはどういう行動をとられる御意思があるかということを私は尋ねたいのであります。
  49. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えを申し上げます。私の言葉が不十分であつたために、いろいろ誤解があるようでございますから、あらためて申し上げますが、私としては、この法案を御審議願つておる以上、すみやかに可決せられんことをこいねがつておるわけでございまして、そのほかのことは考えておりません。
  50. 山村新治郎

    山村委員 それでは再度お尋ねいたしますが、かりに両組合から、この対象になるようなストライキをやらないということを声明した場合においても、政府としては、組合に対して温情的な思いやりある処置をとられる御意思がないものでございましようか。
  51. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 政府といたしましては、常にまじめな勤労者に深い思いやりを持ちたいと思います。但し、今の御質問のような仮定の問題にはお答えできません。
  52. 山花秀雄

    山花委員 労働大臣答弁を聞いておりますと、簡単に一言率直に心境をお答えになれば、議事がこのように長引きはいたしません。むしろ労働大臣答弁は、議事の妨害をやつておるのではないかと思われるので、私ははなはだ遺憾に考えております。そこでお尋ねしたいことは、労働大臣は、こういうことを答弁なさつていらつしやるのです。先ほど労働大臣が読み上げましたから明確でございますが、「民主的労働組合の諸君には、本法案趣旨については御理解を得られることと確信いたしております。」こう答弁しているのです。この理解しておるかどうかという点です。民主的労働組合といえば、大体どのような労働組合かということは、よくおわかりになつておると思うのです。おそらく日本労働組合は、フアツシヨの愛国的労働組合は別でございますけれども、他の一切の労働組合はこれに反対しておるのです。ところが労働大臣は「御理解が得られることと確信いたしております」と、こう答えておられるのですが、今の労働組合の動きに対して、どうお考えになつておるか。そして理解を得ることができると、なお確信しておられるかどうか、お答えを願いたい。
  53. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この法案はもつともであるということを、御理解願えると考えております。
  54. 山花秀雄

    山花委員 私がただいま申し上げましたのは、大臣も、労働運動については、とにかく労働大臣になられたのだから、相当常識的な理解力を持つておられると思うのです。そこで今の民主的労働組合が、この法案に対して理解をしておるかどうかという点です。大臣は理解しておられると確信すると、こうここで答えておるのですが、理解しておるかどうか、なおその確信を持たれるかどうか、これをお尋ねしておるのです。
  55. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 説明等が不十分で、御理解を願えていない方もあると思いますが、しかしよく理解しておられる方もあると思います。現在のところ反対をしておられる方でも、私どもが十分誠意を尽して御説明をすることによつて、御理解を願えると考えます。
  56. 山花秀雄

    山花委員 誠意を床して労働組合に訴える、これはただいまだけの発言ではございません、労働大臣はたびたびそういう発言をされておるのです。ところが、私はその言葉を非常に空虚に感ずるのです。誠意を尽すだけの手段を、この立法措置にあたつて尽したかどうか。労働大臣は、就任されましたときに、これは車中談でございましたが、労使協議会を持つて、今後の労使間の運営をうまくやるように努力すると言われたのです。こういうような、おそらくすべての労働組合反対を予想できるような法律案を上程するときに、そういう理解を得るために努力したかどうか。労使協議会なら労使協議会という今後の労使間をうまく運営して行くような一つの制度をつくろうとお考えになつたのだから、そういうところへ、一応こういう重要なる法律案を出すがどうかというような、そういり諮問的なことをやられたかどうか。やらずに出したということになると、おそらく労使協議会なんというのは、世の中をごまかす一つのゼスチユアとわれわれは理解したいのです。一体労働大臣は、これについて理解し得るような積極的努力を尽されたかどうかという点を、この際明確に御答弁願いたい。
  57. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 労働問題協議会につきましては、私はぜひあれをりつぱなものにして参りたいと思つて、今準備中でございます。まだこれもできてないのでございますが、着々準備を進めておりますから、御承知願いたいと思います。  なお、この法律案は、たびたび御説明申し上げますように、不当なるものの範囲を明らかにするものでありまして、協議会とは別の範疇に属するものと存じます。全然組合側の理解を得るように努力しなかつたではないかというお話でありますが、そうではないのでございまして、私としては私なりに努力をいたしました。
  58. 山花秀雄

    山花委員 法案提案にあたつて、不当なる労働行為の範囲を明らかにするために、この法律案を急遽出したのだ、こういう御答弁でございます。ところが、どの説明を見ても、御理解を願うとかなんとかいうようなことをたびたび言つておられるのです。しかも、この法律案労働者に対して重要な関連性のあることは、ばかでない限りは、どなただつて常識的にわかる問題であります。そうして労働組合の意向を尊重する、労働組合に積極的理解を願う、こういうことを言つておられるのです。そこで私のお尋ねしていることは、労働者の生存権の活殺を握るようなこの重要なる法律案提案するときに、労働組合に理解してもらうような積極的努力をなされたかどうかということであります。これはこの前倉石委員からも質問がございましたように、今度の原案は、前の国会における改進党の修正案を入れた原案を出しておられるのです。そこで安易な気持で、どうせ改進党と自由党の原案だから、すらすらと通る、そういうような安易な気持で出されたかどうか。そういう安易な気持で出されたとするならば、今日の労働関係一般に対する認識に欠けた、労働大臣の職責の勤まらない、価格者といえないというような極言もしたいような事態です。先ほども申し上げましたように、労働組合に対する積極的理解を得るような手段方法を講じたかどうかという点、講じたならば講じた、講じなかつたならば講じなかつたという点を、ひとつはつきり御答弁を願いたい。
  59. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 繰返して申し上げて、たいへん恐縮でありますが、この法案提案するにあたりましては、当然不当なものの範囲を明確にするものであるという私ども考えでございます。これは前国会におきましても、消費者代表は全部賛成をいたしましたのみならず、一日も早きこの法案の成立を希望いたしておつたのであります。前国会におきましても、国民の代表である本院におきまして通過をいたしておるのでありまして——そのことのゆえに、私は必ずしもこれがすらすらと通過するとは考えておりません。そういう安易な気持はありませんが、しかし行政府といたしましては、あくまで院議を尊重いたします。従つて、院議によつて一度可決されたものは、特別の変化のない限りこれを国会提案するということは、私どもとして当然なすべきことであろうと考えております。  なお、組合に対してどうしたかというお話でございますが、先ほど申し上げたように、御理解を願うような努力をいたしておる次第であります。
  60. 山花秀雄

    山花委員 繰返し繰返し同じようなことを問答するのは、いたずらに時間を空費する問題でございますから、一応私の関連した質問は打切ります。  最後に一つ念を押しておきたいことは、二十九日の参議院会議において労働大臣のなさつた答弁と、ただいま本委員会でなさつた答弁とは、私は格段の違いを来しておると認識いたしますが、そういうように認識してよろしゆうございましようか。労働大臣の御所見を承ります。
  61. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 さような認識は誤りであると思います。
  62. 山花秀雄

    山花委員 これは私は社会通念で、ひとつ良識ある判断——お互いの意見の相違で違うといえば、それつきりの話でございますが、参議院でなされた答弁は、労働大臣は、もし労働組合政府の意向を迎えるような声明を出してくれれば、法案撤回用意があることを胸中深く蔵しておられて、質疑に対する答弁をなされたのではないか、かように私どもは常識的に理解せざるを得ぬのであります。ところが、本労働委員会における答弁は、何かあげ足でもとられたらたいへんだという戦々きようきようたる態度答弁をなさつていられるように、私どもは理解せざるを得ぬのであります。私はほかに疑義もありますが、いろいろ関連質問もあるそうでございますから、一応私の質問は終りますが、やはり参議院答弁も衆議院の答弁も、あるいは日常会話においても、首尾一貫性のある発言をなされんことを希望して、私の関連質問を一応終りたいと思います。
  63. 熊本虎三

    熊本委員 いろいろ関連質問によりまして、聞かしていただきましたが、聞けば聞くほどわからなくなるのであります。と申し上げますのは、スト規制法案の提案説明前段の中に「労使関係につきましては、法をもつてこれを抑制規律することは、できる限り最小限とし、労使良識と健全な慣行の成熟にゆだねることが望ましい」というふうに説明されております。それほど望まれておる提案者が、これをあえて出さなければならなかつた現出は、昨冬行われた電産、炭労争議の行為が、あまりにも社会的に影響が大きかつたからであるという説明になつておる。従つて労働大臣は、ここであいまいな答弁をされますけれども、藤岡君の質問に答えて、逆質問をされております。要するに関係労組がそういう声明をして、あらためて正常に帰つてもらいたいという心情は、これは当然労働省になくてはならないはずである。従つて、それを取消したのがおかしい。もしそうだとするならば、それはここで提案説明をされておりますところの、かような労使良識と健全な慣行の成熟にまかせることが望ましいなどというようなことは、これは単なる詭弁として説明されておるかどうか、そこに怪しい関係が生じ来る。私どもは、労働大臣提案説明の精神を心からこいねがつておるとすれば、繰返し言いますが、藤田君の質問に対する逆質問は、労働大臣の真意でなくてはならぬ、かように考える。ところが、今度は次の石川君の質問の要点は、先ほどから繰返し申し上げますが、ほかの方のものとの関連性はありましても、特にこれは労組においてそういう自粛自戒、国民に誓うがごとき態度があつたならば、これを撤回するかと想定の質問をしております。従つて労働大臣は、そういう場合があつたならば特に考慮するというお答えも、私は妥当だと考える。しかるに、われわれは審議の過程において、そういうような労働省の関係、特に労働大臣の御意思があるならば、われわれはまたこの法案の審議に十分慎重な態度をもつて、これに臨まなければならないと思うから、質問をしておるにもかかわらず、それは客観局勢がそうなつて来ても撤回する意思はないと今度はおつしやる。そうなつて来ると、終始一貫支離滅裂、さつぱり労働省の本心がわからないということに相なつて来るわけであります。そういうようなことでは、われわれは単なる労組の問題ばかりでなく、単なる日本労働者の問題ばかりでなく、日本の現状からして、いかに日本の経済を再建し、いかに日本国民全体の生活の向上と安定をはかるかということに重大なる関連性があるからして、われわれはこの法案と真剣に取組んでおるのでありますが、しかしながら、審議の過程において言を左右にし、右と言うかと思えば左と言うがごとき答弁を労働省の、特にその責任の衝にある労働大臣がされたのでは、われわれは何を目標にこの審議を進めていいのか、はなはだ迷わざるを得ない。こればかりに拘泥していたのでは、私は次にたくさん質問したいことを持つておりますので、これ以上の質問を避けたいと思いますが、こういうわれわれの考え方や、われわれの真剣なる態度に対して一体労働大臣はどういうふうにお考えになつて、さような場当り的な答弁をされるのか、もう一ぺん御答弁を願いたいと存じます。
  64. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 昨年の苦い経験にかんがみまして、この法律案は当然不当なものの範囲を明確にするということでございます。政府といたしましては、この法案国会提案して、すみやかに御審議可決せられんことをお願いいたしておる次第であります。この点につきましては、終始一貫しております。ただ、仮定の問題には答えられないのであります。しかし、その仮定の問題が出たらどうするかという仮定の問題は、現実の問題とせられんことを望む、というとまた問題になるかもしれませんが、せられてから問題にしていただきたいと希望いたします。
  65. 熊本虎三

    熊本委員 ますますわからなくなるのでありまして、ここで出されようとする法案も、先ほど繰返し言いますように、「労使良識と健全な慣行の成熟にゆだねることが望ましい」と言つておられる。しかして昨年ああいう争議があつて、またないとはいえないからそういうときの場合にこれを出そうと、こう仮定しておつしやつておる。だからして、そういうことがないというような客観情勢が出て来るならば、その必要はないはずであります。仮定のものには答弁できないと言われるけれども、あるかもしれないところの問題に対して、われわれはこの法案を審議させられつつあるのであります。こういう答弁では、われわれは断じて承服はできません。しかし、これだけに拘泥いたしましては、これはきようではらちがあくまいと思いますから、私はきようはこれ以上追究することをやめまして、いずれ党に持ち帰つて、党においても十分この点について松副いたしまして、あらためて質問を繰返すことにして、この点は打切りといたします。  私は昨日安定所の日雇い労務者に関する質問を続けておつたのでありますが、第二項の問題については、すでに関連質問といたしまして、山花君から御質問がございました。あと三項目ございますが、その中の、たとえば日雇い労務者の健康保険の問題につきましては、これはその主管が厚生省にあります。従つて昨日の答弁にも、その主管が厚生省にあるからというような逃げ口上のようなことを言われたのでありますが、しかしながら、これはやはり労働省の関係する労務者の問題でありますから、これらは法案の審議については、労働省は非常な関心を持つてこれに努力をされつつあることを知つております。そこで私は、ここでお答えを願うことを、いろいろたくさん持つておりますから避けますが、ただ今提案されておる原案は、まことにその意義を失するがごとき冷淡なものでございます。従つてこれに対しましては、せめて普通健康保険に匹敵するようなものに、国の犠牲においてこれが改善されるよう、労働省は努力をしていただきたい。  なお就労日数の問題につきましては、昨日給与問題と関連していろいろお尋ねをいたしました。給与体系は昨日の議論で大体明確になつてつたのでありますが、PWの線でものをきめるとしますれば、大よその係数から出て来るものは、大した値上げにならないではないかと考えます。問題の中心は、就労日数の対象の問題に関連するのでありまして、この就労日数を増大するということは当然のことでありますから、よしんば給与体系がどうできようとも、就労問題に関しましては、完全な就労ができるようにせしむべきであると考えておりますので、この点について十分なる努力を願いたい。  なお、失業保険につきましても、一々私がここで説明するまでもなく、その実施の後における現状は、日雇い労働者の最低を満たすに足るものでございません。これらにつきましても、その不備欠陥をためて、十分に考慮をしていただきたい、これら一括いたしまして政府の御答弁を願つておきたい、かように存じます。
  66. 渋谷直藏

    ○渋谷(直)政府委員 お答えを申し上げます。第一番目に出ました日雇い労働者の健康保険の問題でございますが、これは昨日も御答弁申し上げましたように、厚生省の所管でございます。従いまして、厚生省におきましても、ただいま御指摘になつたような点につきましては、十分に検討を加えたのでございますけれども、慎重研究の結果、ただいま百会に提出されたような法案内容を得るに至つたのでございます。この問題につきましては、所管省でない労働省としては、これ以上意見の発表は差控えたいと存じます。  次に、就労口数の増加の問題でございますが、これにつきましては、労働省といたしましてもできるだけの努力をして、就労日数の増大に努めて来ておるわけでございます。三年前、二十四年、五年あたりにおきましては、全国の就労日数が十八日程度であつたのでございますが、これが二十日になり、さらに本年度におきましては、一日を増加して二十一日になつた。こういうぐあいに年を追うて改善されて来ておりますことは、御了承いただけるかと思うのでございます。  それから最後に日雇い失業保険の改正の問題でございます。待機期間の短縮なり撤廃という問題をめぐりまして、労働組合の方から種々陳情のあることは、私どもも十分承知しております。従いまして、何とかして待機期間の短縮をはかりたい、こういう方向でもつて目下研究をしているわけでございますが、昨日の御質問に対して答弁いたしましたように、遺憾ながら日雇い労働者の失業保険の場合におきましては、保険経済が赤字になつておるわけでございますので、当面私どもといたしましては、この保険経済を黒字にするということに全努力を傾注しておる次第でございます。そうして保険経済が黒字になつて参りました場合には、失業保険の待機期間を短縮する方向に向つて努力をしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  67. 熊本虎三

    熊本委員 次にお尋ねいたしたいのは、労働基準法に関する問題でございます。  労働基準法の二十条の解雇の場合における使用者の義務でございます。これに対しまして基準局は、昭和二十四年一月八日、基収五十四号の通達によつて解明をされております。これは今日そのまま実施をされておりますかどうか、お尋ねいたしたいと存じます。
  68. 亀井光

    ○亀井政府委員 今の御質問趣旨は、昭和二十五年五月一日の通牒が、現在もそのまま効力を発生しているかというのでありますが、その通りであります。
  69. 熊本虎三

    熊本委員 そういたしますと、解雇の場合は、三十日以前に予告するか、または三十日以上の手当を支給せよということになつておりますので、そのことの実施がされない限りは、これは契約に基く解雇にはならないという前提を了承してよろしゆうございましようか。
  70. 亀井光

    ○亀井政府委員 第二十条によりますと、一箇月前の予告かあるいは三十日分の予告手当を支給しまして即時解雇し得るという規定になつております。その場合に、もしそういう、たとえば解雇予告をしない、あるいはまた予告手当を支給しないでただちに解雇した場合に、その解雇の効力はどうかという法律問題でございます。われわれとしましては、その場合におきましては、即時解雇の効力は無効であるという見解をとつております。但し、その場合におきまして、使用者が解雇をする意思を持つておるということが明らかであると、無効ではございますが、そのときに解雇予告をしたものとみなします。従いまして、三十日過ぎますと解雇がそこに成立するので、その三十日間につきましては、解雇予告手当を出しますか、あるいは失業手当を支給するか、どちらか使用者に義務づけておるという解釈をとつております。
  71. 熊本虎三

    熊本委員 解雇予告をしても、手当は支払わなければならない、こういうような条件の解決せざる間、解雇が成立しないということになれば、われわれからいえば、これは雇用契約の継続だ、こう解釈してよろしいかどうか。
  72. 亀井光

    ○亀井政府委員 その問題につきましては、判例も有効説、無効説、あるいは有効転換説という折衷案もございます。われわれがとつております解釈は、ただいま申し上げた通りでございまして、すなわち予告もせず、あるいは予告手当も支給しないで即時に解雇したるものは無効である。但し、その意思表示において、使用者側の解雇する意思が明白である場合におきましては、そのときに解雇予告があつたものとみなされる。従つて三十日後におきましては、その解雇は有効として成立するが、法律違反としてその三十日間の問題が処理されなければならぬ。従つてその場合には、雇用が継続したとみなし、休業手当を支給するか、あるいはその予告手当を支給するか、そういう方法をとつておる判例もございます。われわれはそういう解釈を現在とつております。
  73. 熊本虎三

    熊本委員 そう解釈いたしますと、ほんとうは今の御説明のように、二十六条において使用者の都合による休業、言いかえますならば、休業手当の六〇%以上を支給しなければならない、こういうことが有効になると考えますが、その通りでよろしゆうございますか。
  74. 亀井光

    ○亀井政府委員 ただいま御説明申し上げましたように、引続き雇用契約が三十日間でございますから、休業手当の問題が出て参ります。あるいはもし本人がただちに解雇予告手当を支給しますと、その時からその日数に応じまして、有効になつて参るという説であります。
  75. 熊本虎三

    熊本委員 それをお聞きいたしまして、次にお尋ねいたしたいことは、米国極東海軍司令部に働いておりました労働者、運転手、雑役、守衛、修理等に働いておつた四百五十四名でございますが、この問題が昨年十一月の中ごろから十二月の中ごろまでに全員整理をされておる。そうして基準局のこれに対しまするところの意見は、一月二十一日に基準法二十条の違反であると確認されておる。そうなつて参りますれば、当然一方においては予告手当を支給しなければならない。さらに今お尋ねいたしましたように、雇用契約が一方的であつて、手当も払つておらないのであるから、従つてそれはわれわれからいえば、今日までの賃金の百分の六十を請求する資格ありと、かように考えておるのでありますが、これは相手方が政府責任である。これは一体どういう考え方でこれをどう処理しようとされるか、お尋ねいたしたいと存じます。
  76. 亀井光

    ○亀井政府委員 ただいま御質問のございました米国極東海軍司令部の移転に伴いまする解雇予告手当の支給の問題でございます。この経過は、すでに熊本委員は御承知の通りと思いますが、昨年の十月二十日に予告をいたしまして、十一月十八日付をもつて解雇するという予告をしたわけであります。ところが、十月二十四日になりまして、日本人管理者が、司令部の移転が延びたために十月二十日にした予告は撤回するという旨を申し出まして、労働者もそれに同意をいたしたわけでございます。ところが、その後十一月十五日になりまして、先般撤回した予告はそのまま生きておるのだ、従つて十二月一日にお前らは解雇するのだという通達があつたわけであります。そこで法律論としましては、この十一月十五日になされました解雇予告の撤回の取消しが、どういう法律的な効果を持つて来るかという問題が争われたわけであります。労働者側は、この解雇予告の撤回の取消しに応じないという労働者が四百五十名おつたわけでございます。従いまして、そうなりますと、われわれの法律解釈から申しますと、十一月十五日にあらためて解雇予告がなされたものと見なされるわけでございます。従つて、それから後の解雇予告手当につきましては支給すべきであるという認定を東京労働基準局長がいたしまして、これを特別調達庁の方に文書をもつて通告したわけであります。従いまして、特別調達庁としましては、ただちにその趣旨を体しまして、現地の司令部と折衡をいたしたわけでございますが、現地の海軍司令部からは、これに対して、予告手当を支給する義務がないという回答が参りました。その後再三折衝をいたしたのでございますが、これに対しまする明快な回答を司令部から受けることができなかつたわけでございます。従つて労働省としましては、一月二十一日の認定によりまして、一応われわれの手を離れた問題ではございますが、しかし解雇されました労働者の生活不安を考えますと、調達庁をしてできるだけ早く予告手当を支払わしめることが、労働者のために必要でございますので、再々調達庁に督促をいたしまして、その実現方につきまして努力して参つたわけでございます。調達庁の方としましては、ただいま申し上げましたように、司令部の方からこれに対しまする拒否の通知を受けましたので、実は板ばさみになりまして、結局日米合同委員会にこの問題を持ち上げるということになりまして、五月十四日に特調から外務省に文書をもちましてその申請をいたしたわけでございます。外務省としましては、日米合同委員会にこの問題を取上げますと、いろいろ時間的に相当のひまがかかりまして、かえつていい結果が出ないおそれがあるんじやなかろうかということで、別の外交折衝によつて何とか処置したい、そしてその目安がつきました後に、形式的に日米合同委員会にかけて、その処理をはかつて行くというふうに、目下外務省がせつかく努力しておるように私は聞いております。
  77. 熊本虎三

    熊本委員 努力されておることはわからぬではございませんが、すでに半年を経過しております。しかも、このことは同じ労働省内の基準局においては基準法違反と決定し、調達庁ではこれに対していまだ仮払いをもやつておらない。そうして基準法違反のしつぱなしで、事実上どんなに努力したといつても、相手方に対してはその誠意は通じておらない。これを一体労働大臣はどうお考えになつておるか。われわれから考えますならば、当然これに要するところの概略七百四十万円というものは、やはり調達庁が仮払いの形式においてでもこれを支払うべきである、遵法の精神があるならば。それをやらないで、相手方との折衝のみに日を過して、労働者を戸惑わしておるというこの現状を、労働大臣はどうするつもりか、御答弁願いたい。
  78. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御趣旨は同感でございます。調達庁の方の関係におきまして、仮払いをするということが、資金上この問題についてできないような仕組みになつておるようでございまして、米軍の方と資金繰りについても打合せねばならぬものでございますから、その方が解決しませんと、やはりいかんともしがたいというふうな報告を受けております。私といたしましても、この問題はできるだけ早く解決してもらいたいということで、外務省を督励しておるような次第でございます。
  79. 熊本虎三

    熊本委員 しかもこの問題は、十五国会で取上げられて、多くの委員諸君から十分に質疑が行われ、ただちにそれが実施をやるという答弁をされておる。それから今日まで、まだこれが放擲されておるという現状である。いやしくも政府がみずから法を執行する任におりながら、その法を犯して、そうして他の手続その他の事務的な問題からこれを放擲するというようなことをあえて行つておきながら、弱小企業においてこれをなし得ざるものについて、ぴしぴしと罰則をそのまま実行に移すというがごとき態度は、はなはだ妥当を欠いておると思う。従つて当局者は、ただちに他に範を示す意味においても、これが実施さるべきであると考えるのに、先ほどのような、まだあいまいな答弁であつて、はなはだ遺憾千万と心得ます。本会議もあるようでありますので、時間の関係もございますから、私きようはこれで、たくさんの質問は保留いたしまして、また明日に譲ろうかと思つておりますが、どうかこの問題の処理については、至急に政府責任をもつて、特に労働大臣は処置をされるように願いたいと存じますが、もう一ぺんその意思について御答弁を願つておきたいと思います。
  80. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私就任いたしまして以来、そうした問題が他にも一つございまして——これは御承知のごとく、進駐軍時代に勤務しており、駐留軍になつてから、当然もらうべき退職手当を今までもらわなかつた人が十九万人ぐらいおる。その金額がまた六十五億円に上るという話を聞きまして、それはいかぬというので、私自身折衝いたしました。そうして御承知のごとくこの問題は解決いたしたのでございます。ただいま御指摘の問題も、実は私も外務省にそういうことを申しておりますけれども、御趣旨はまつたく同感でございますから、極力努力いたしたいと思います。
  81. 山花秀雄

    山花委員 先ほど私、熊本委員参議院労働大臣答弁に対する質問関連質問をいたしまして、あまり長くなるので、熊本委員にかえつて失礼と存じまして、一応質問を打切りましたが、この問題に関しては、なお多くの疑義を蔵しておりますので、私の質問順位がまわつて来ましたときに、あらためてもう少し質問をしたいと思います。一応先ほどの関連質問はこの際留保しておきたいと思います。  それからただいま熊本委員から質問のございました元極東海軍司令部勤務者の解雇予告手当の問題に関してでありますが、労働大臣から、至急すみやかにこの問題の解決のために善処したいという御答弁がございました。まことにけつこうな御答弁でございます。この問題は、前国会におきまして、三月三日亀井労働省労働基準局長よりいろいろ説明がございまして、当労働委員会でも取上げた問題でございます。概算は大体金額にいたしまして七百三十二万円ということになつております。善処していただくのはけつこうでございますが、もう半年以上も経過しておりますので、一体いつごろこの善処の形のめどがつくものでございましようか。もし期間的におわかりになりましたならば、ひとつそのめどをお託していただければ、多くの労働者諸君も安心するのではなかろうかと思いますので、もし一応の見通しがつけば、お答えを願いたいと思います。
  82. 亀井光

    ○亀井政府委員 何日までというはつきりしためどは、実はまだ立つていたいのでございますが、先日外務省と打合せましたところ、先ほど申し上げました外交打衝の件については、口頭における折衝は一応済んで、あとは文書によつてサインをとるまでになつておるというふうなお答えをいただいたのでございまして、われわれはそういう趣旨からいたしまして、さらにこの問題の具体化につきまして、先ほど大臣から御答弁いたしましたように善処いたしたいと思います。こまかい具体的な問題につきましては、外務省の係の方から御答弁をいただいた方が適当じやないかと思います。
  83. 赤松勇

    赤松委員長 なおどうでしよう、政府側の方で外務省の方と折衝されまして、もう一度御答弁を願いたいと思います。  なお熊本委員から資料の提出の要求もされておりますから、できるだけ早く……。  次会は明三日午後一時より開会いたすこととし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十五分散会