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1953-06-27 第16回国会 衆議院 労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年六月二十七日(土曜日)     午後二時四十一分開議  出席委員    委員長 赤松  勇君    理事 倉石 忠雄君 理事 丹羽喬四郎君    理事 持永 義夫君 理事 高橋 禎一君    理事 山花 秀雄君 理事 矢尾喜三郎君    理事 中  助松君       相川 勝六君    池田  清君       鈴木 正文君    田渕 光一君       野田 卯一君    三浦寅之助君       三和 精一君    吉武 惠市君       佐藤 芳男君    黒澤 幸一君       多賀谷真稔君    井堀 繁雄君       熊本 虎三君    中澤 茂一君       中原 健次君  出席国務大臣         労 働 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         労働政務次官  安井  謙君         労働事務官         (労政局長)  中西  実君         労働基準監督官         (基準局長)  亀井  光君         労働事務官         (職業安定局失         業対策課長)  澁谷 直藏君  委員外出席者         専  門  員 浜口金一郎君     ――――――――――――― 六月二十四日  委員保利茂辞任につき、その補欠として三和  精一君が議長指名委員に選任された。 六月二十五日  委員相川勝六君及び三池信辞任につき、その  補欠として田中伊三次君及び田渕光一君が議長  の指名委員に選任された。 六月二十七日  委員田中伊三次君辞任につき、その補欠として  相川勝六君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 六月二十二日  緊急失業対策法労働組合法との関係に関する  陳情書(  第三八一号)  北海道の失業対策事業労務者に対する冬期加給  金に関する陳情書  (第三八二号)  日雇労働者賃金引上げ等に関する陳情書  (第三八三号)  失業対策事業に関する陳情書  (第四〇九号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法  の規制に関する法律案内閣提出第二一号)  労働行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 赤松勇

    赤松委員長 これより会議を開きます。  この際倉石忠雄君より議事進行に関して発言を求められておりますから、これを許します。倉石忠雄君。
  3. 倉石忠雄

    倉石委員 法案審議関係がございますので、議事に入る前に委員長お尋ねをしておきたいと存ずるのであります。  赤松委員長が御就任以来、非常に政務に御熱心であられることは、衷心より敬意を表しておる次第でありますが、今回国会開会中に地方に御出張になりまして、いろいろ学者や労働組合代表者と御会見になつたというお話でありますが、どういう御資格で、どういう手続によつておやりになつたのかを、委員長から承つておきたいと思います。
  4. 赤松勇

    赤松委員長 お答えいたします。実は私労働委員長就任をいたして以来、むろんスト規制法公労法が、この国会再開後即日提案されることは、全然予想もしておりませんでした。そうでなく、一般労働立法労働行政に関しまして、非常に浅薄な知識しかございませんので、私自身委員長としての心構えをつくるため、また二つには、主として公正なる意見を持つておられると思われまする学識経験者、あるいは言論界法曹界方々の御意見を拝聴いたしまして、今後の委員会運営に関する資料にしたい、かように考えまして、個人資格におきまして、六月の五日ごろ実は招請状を差上げました。東京におきましては、新聞で御承知のごとく、六月十日第一議員会館におきまして、東大の教授あるいは慶応の藤林教授を初め、いわゆる日本労働法権威者と呼ばれまする方々の御参集をお願いいたしまして、御意見を拝聴したわけでございます。すでにそのときは京都、名古屋等のそういう方面方々にも招請状を出しておりましたので、再開と同時に公労法スト規制法等重要な法案が出て参りまして、この審議もむろん重要でございますが、去る六月二十日の理事会でございますが、一応理事の皆さんの御了承を得まして、さらに委員長代理衆議院規則第三十八条第二項によりまして山花秀雄君を指名し、さらに議長に対しましては請暇の手続をいたしまして、議長のお許しを得て関西へ参つた次第でございます。以上のようなわけでありまして、ただ私といたしましては、公正なる御意見を持つておられます言論界あるいは法曹界あるいは学界の方々の御意見をお聞きしたい。ちようど小坂労働大臣が先般学識経験者をお招きになりまして、御意見をお聞きになつたと同じような心構えでやつたのございますから、決して他意なかつたのでございます。
  5. 倉石忠雄

    倉石委員 大体わかりましたが、そうしますと、各地でいわば公聴会のようなものを開催されましたことは、労働委員長としておやりになつたのでないと了解してさしつかえありませんか。
  6. 赤松勇

    赤松委員長 その通りでございます。
  7. 倉石忠雄

    倉石委員 そういたしますと、労働委員会の専属であるところの専門員をお連れになるということは、これは労働委員長としてお連れになつたのでなければならないと思うのでありますが、その点はどういう御資格でお連れになりましたか。
  8. 赤松勇

    赤松委員長 お答えいたします。この点につきましては、私いろいろお話を承りましても、十分に頭に入れることができません。またいろいろな資料等関係もございまして、実はお願いをしたわけでございます。これは専門員及び調査員には何ら責任が、ございません。私がこれを要求いたしましてお連れいたしました。もしその点におきましてとかくの点がございましたならば、私の責任でございますから、さよう御了承を願います。
  9. 倉石忠雄

    倉石委員 いやしくも法律案の手持ちになつておる委員会委員長が、国会開会中に私用で、しかもその法案関係のある公聴会のような形をとられたというようなことは、おそらく新憲法になりましてからは、御承知のように先例のないことであります。しかも御招請なされました御書面には「衆議院労働委員長」と明記してありまして、これは労働委員長である赤松個人といつたような、昔それらしき言葉づかいが社会党の先輩から発せられたのでありますが、私どもといたしましては、委員長が御不在なために労働委員会が開催されなかつたことも、委員長よく御存じの通りであります。しかも労働委員長赤松君でなければ、個人赤松君が招請をされたということによつて、そういうふうに大勢の者が来て、そこで公聴会のような形のものが開かれるはずはないのでありまして、私ども労働委員長としての赤松君が——形はわれわれ委員会にお諮りになつておらないのでありますから、たとい個人の御資格であると仰せられましても、やはり私ども労働委員会としては、これはきわめて重視しなければならないことだと思うのであります。その点に対する委員長の御見解を承りたいと思います。
  10. 赤松勇

    赤松委員長 実は私第一国会からずつといろいろ委員長地方出張を見ておりますが、委員会の決定を経て、議長の許可を得まして公聴会等をおやりになることは、しばしば見て参りました。たとえば建設委員会あるいは通産委員会等、それぞれの委員会におきまして、委員長個人がその知識を得るために地方出張されまして、そうしていろいろな会合を催しておられますことは、私は数十の例を知つておるわけでございます。この点につきましては、こういう幾つかの例もございますので、私といたしましては、何らこの点につきましては手落ちはない、かように考えております。またもし委員会招集に何かさしさわりのあるような御質問でありといたしますならば、倉石労働委員長も御案内のように、委員長代理指名して参りましたので、その間山花秀雄君が委員長代理として、もし委員会三分の一以上の所定手続をもつて委員会開会を御要求なさいますならば、それに対して適当な方法でまた御相談申し上げまして、あるいは委員会を招集したでございましよう。その点は山花自身いかように諮つたかは存じませんけれども、私といたしましては、委員会開催に何らさしつかえのないような所定手続をふんで参つたということをばお答え申し上げます。
  11. 倉石忠雄

    倉石委員 法案審議を急ぎますから、あまり長くやつておることは御遠慮いたしますが、しかしこれは当労働委員会の将来の運営にも非常に関係のあることでありますから、やはり明らかにすべきところは明らかにしておかなければなりません。  しからば労働委員長赤松勇として御招請になりましたのは、今個人としての招請をなされたと言われておりますが、相手方の受取る印象は、あくまでも労働委員長という公職であります。しかも、もし個人で御旅行なさるということであつたならば、労働委員会の直属である専門員なぞを無断でお連れになるはずはないのでありまして、この点はきわめて不明確でありますので、その点をもう一度念を押して確かめておきたいと存じます。
  12. 赤松勇

    赤松委員長 重ねてお答えいたしまするが、先ほど私があなたにお答え申し上げた通りでございます。
  13. 倉石忠雄

    倉石委員 それでは私どもはこれ以上追究いたしませんが、赤松委員長のおやりになりましたこのたびの事柄は、はなはだ遺憾であつたということを申し上げて、私の議事進行を打切りたいと思います。
  14. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 委員長、今のに関連して……。
  15. 赤松勇

    赤松委員長 理事会では申合せといいますか、了解といいますか、先般の小坂労働大臣の御説明に対して、すぐ質疑に入るということになつておりましたので、ひとつ理事会での了解を御了承願います。
  16. 赤松勇

    赤松委員長 それでは電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案及び労働行政に関する件を一括議題といたし、質疑を許します。高橋禎一君。
  17. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 小坂労働大臣にお伺いいたしたいのでありますが、質問に入ります前に、私は労働委員といたしまして、労働委員長及び政府当局に要望いたしたいと思うのであります。  労働委員会は現在重要な法案を付託されまして、この法案審議には、民主的かつ能率的にわれわれが審議いたさなければならないことを痛感いたしておるのであります。今上程されております電気事業及び石炭鉱業スト規制に関する法律案は、もうすでに十日も前に付託されておる。ところが労働委員会は今日まで一回しか開かれておらぬというような実情であります。私は衆議院の他の委員会と比較しまして、あまりにも委員会運営が能率的でないということを思うのでありまして、その点については、先ほど倉石委員から問題を提起されました赤松委員長の問題、これについては十分将来民主的にかつ能率的に委員会運営して行くということを誓われた言葉であると解するのであります。ところが、私のいま一つ遺憾に思つておりますことは、先般の委員会を開きました際に、実は私ども理事といたしましても、この委員会を開くにあたつては、いろいろ努力をいたしたわけであります。ところが、さて委員会を開きますと、労働大臣はただこの法案提案理由説明されて、そうして労働行政一般に関する意見を開陳されて、さつさと引揚げられた。何か御都合があつたというようなお話でありましたが、私そのときの模様を見ておりますと、赤松委員長政府のそのさしつかえの申入れを待つておりましたためだろうかどうか知りませんけれども、ただちにそれに快諾を与えられて、結局委員会はほとんど実質的の審議に入ることができないで終つたというような実情であります。私ははたして政府におかれては、この今上程されておる電気事業及び石炭鉱業に関するスト規制法案というものについて、しつかりとした確信を持つて、そうしてこれは経営者側にも労働者側にも利益になることで、しかもこの法律日本現下労働問題解決のためにぜひとも、成立させなければならぬという熱意を持つてこの法案審議の促進に努力されるお考えがあるのかどうか、この点をまずお伺いいたしたいのであります。  なお、私のこの際労働大臣にお伺いいたしたい点は、提案理由の御説明にも現われておるのでありますが、昨冬行われました電気事業及び石炭鉱業の両ストライキは非常に大規模のものである、国民経済国民日常生活に与えた脅威損害とは実に甚大なものである、こう言つておられるのでありまして、抽象的には、私はこれは同感であります。こういうふうな重大なストライキがほとんど時を同じゆうして起つて参りました原因は何であるか、私はその点をはつきりとお伺いいたしたいわけであります。これは国家労働行政に対する施策が不徹底であつたためではないか、あるいはもつと根本に、政治全体の貧困のために、こういうストライキを誘致するようなことになつたものではないかどうか、あるいはまた単にこの争議行為に対する規則に関する法律の不備なるがゆえに、このような争議が起つたものであるかどうか。何と申しましてもストライキというものは、しかもこういうふうな国民経済国民日常生活にきわめて大きい脅威損害を与えるような大規模ストライキというものは、日本再建の途上にある今日、国民全体がそういうストライキの起らないようにということを希望しておるに違いないのであります。しかしながら、われわれはそのストライキの起りました原因をしつかりとつかんで、その原因を除去するということに努力いたさなければ、もしも方面違い施策を講ずるということであれば、かえつて国民の輿望、期待に反するような結果が起るということを痛感いたしておるのであります。昨冬起りました電気事業及び石炭鉱業の両ストライキは一体何が原因であつたか、この点をお伺いいたしたいのであります。
  18. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えを申し上げます。最初に、高橋さんには非常に御苦心をいただきまして、委員会開会するというところまでこぎつけていただいたのでございますが、最初委員会におきまして、私が提案理由説明をいたした後退席したということについて御疑念のあつたことでございます、高橋さんに御説明をしなかつたことは、私の手落ちであるかもしれませんが、非常にお考え違いがあるので、一応私の考えを申さしていただきたいと思います。  私は委員会に出ておりまする以上、政府というものは、委員会全体の御意思を尊重して、それによつて政府法案説明なり御答弁なりを申し上げるべきものである、こういう見解を持つておるのであります。当日委員長より、私の提案理由説明が終りましたならば私に退席してよろしいからというお一話がございましたので、私は御指示と思つて退席したのであります。なおそのとき、私は予算委員会におるから、もしあなたが私の出る必要があると認められれば、すぐに呼んでもらいたい、こういうことで予算委員会の方に行つておりまして、その後帰つて来たらすでに散会していた、こういうようなわけで、懇談会であるから大臣は出ておらぬ方がよろしいというようなお考えに私はとりまして、今のような誤解を受けたことは、私といたしましてもはなはだ遺憾に存じております。申すまでもなく、私どもはこの法案につきましては、過去の国会においてもすでに衆議院を通過しておるものでございまするし、また高橋さんの所属せられる改進党の御意見も十分に盛り込んで出しておる法案でございますので、こうした法案を出すことによつて産業の平和が来される、一日も早く日本経済が軌道に乗つて労使間の協調、正常なる運営というものが来される、こういう確信のもとにこの法案を提出しておる次第で、ございまして、どうかその点十分御理解の上御審議を願いたいと思います。  次に、スト原因が那辺にあつたかということでございます。これは率直に申しまして、終戦直後以来占領軍当局日本におりまして、事実上国民自主性に基く政治上並びに経済上の活動というものは規制せられておつた。それが占領解除独立とともに非常にほうはいとして一種のレジスタンスの気分が起きて来た。これが非常に民主的な形においてそれが発揮せられるならばよろしいのでありますが、中にはその気分をあるのりを越えて爆発させるという面もあるのでありまして、そうしたようなことが相まちまして、ああした一般社会通念上非常に不当であると考えられるような争議が行われて、遂に緊急調整までも炭鉱の方については出たような事態であつたのでございます。そうしたようなことであつたのでありますが、独立後だんだん日がたつに従いまして、一般の良識と、さらに民主的な労使活動というものが助成せられると期待いたしているのであります。この法も、そうした今までの社会通念上違法あるいは非なりと認められるものを明確化する、こういう趣旨であることはもとよりでございます。
  19. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 ただいまの小坂労働大臣の御答弁は、実は私のお尋ねしたことに対する答えとしては、私は非常に不十分だと考えます。と申しますのは、昨冬生起しましたところの電気事業及び石炭鉱業に関する二つストライキは、何が原因で起つたのであるか。これは第一に、過去数年間における吉田内閣政治貧困がこういう事態を招いたものであるとお考えになるかどうかということ、第二にはいわゆる経営者側労働者に対する関係において不十分な点があつたのではないかという点、第三には、労働行政施策がよろしくなかつたのではないかどうかという点、第四に労働争議に関する規制が不十分であつたから、こういうストライキが起つたのであるかどうか、この四つの問題を一つ一つ明確にお答えを願いたいと思うのであります。若干私の問いに触れた点もありましたけれども、はなはだ明瞭を欠きますので、重ねてお伺いをいたす次第であります。
  20. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 一つずつお答え申し上げろということでございますれば、申し上げますけれども、大観いたしまして、日本独立以後の精神的な空白、また敗戦によつて受けたところの大きな経済的な打撃、そういうものから来るところの経済的な貧困、そうしたものがいろいろ相かみ合わされましてああした事態になつたのではないか、こう思つておる次第でございます。
  21. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 どうも私の質問に対してお答えがあつたというふうに私には感じられないのでありますが、それではこの点をひとつお伺いいたしたい。あの両ストライキまで起つたのは、電気事業及び石炭鉱業に従事する人たち、すなわち労働者に対する争議方法規制が不十分であつたから起つたのだというふうにお考えになるか、その点をひとつお伺いいたします。
  22. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 直接のお答えでないので、はなはだ恐縮でありますが、規則が不十分であつたかなかつたかということですが、ああした争議は本来やるべきでないのです。それによつて、一部の人の争議というものが国家全体に対して非常に大きな経済的な打撃を与えるし、また一般家庭生活に対しても大きな損害を与えるのであるから、そうしたものはやらないのだ。本来社会通念上非であるということを明確にしておこうということで、この法案を御審議つておるのでございます。それが一体労働政策としてよかつたのかどうか、あるいは吉田内閣政策がよかつたかどうかということになりますと、どうも私がここで答弁すべき自由を持たない、むしろこれは他の経済政策における委員会等において御審議をいただいた方があるいは妥当ではないかと思うような問題なので、非常に高橋さんには申訳なのでありますが、あなたの御質問に対して一々正確なお答えをすることができなかつたのであります。しかし、ごく大観してそういうことは言えると思います。なおそうした争議行為というものが、たとえば石炭保安ストというものは、鉱山保安法によつていかぬことになつておる、あるいは労調法三十六条によつて、これはいけないものだと思われておるということを考えておりまするし、あるいは電源スト停電ストというものも、社会通念上否であると考えておるのでありますけれども、今回私労働大臣を拝命いたしまして以来、慎重にこの法案をいかに取扱うかを考え薫りましたのですが、たまたま六月の八日に電産の関東地本から、やはり労調法の規定に基きまして十日前に予告を必要とするのであるからといつて統一協約を締結することを会社側がはばむから、いよいよ二十日から争議に入る、その争議には事務スト停電スト電源スト、その他労力提供拒否等ストに入る予定であるという通告をよこしておるのであります。ですから私は、政策がいいから争議が起きないとか、悪いから争議が起きないとか、一概に言えないと思うのであります。政策がいくらよくても、争議は少いでありましようが、しかし起きるのであります。その起きた場合の争議というものは、ストライキ権というものは当然あるべきもので、私は規制する考えは毛頭持つておりません。ただ今言うような、こうしたストライキ方法はいけないのであるということを明確にしておく必要があるということが、この法案をここに御審議を願つておる趣旨なんです。ですから、そういう趣旨に基いて、ひとつ高橋さんにもお考えを願いたい、こういう趣旨で申し上げておるのであります。
  23. 高橋禎一

    高橋禎一委員 高橋さん高橋さんと、非常に親しみのある言葉お答えになるのですが、私も個人的には、小坂労相の人格なり識見なりに非常な敬意を払つておるわけなんです。けれども、この法案は何と申しましても大きな問題を持つておるわけであります。すなわち憲法の問題にまでさかのぼらなければ、解決のつかない大きな問題があるわけです。従つて労働大臣は、第十五特別国会で通過したこの法案であつて、しかも改進党もそれに賛成をしておるのだから、まあ今度もひとつよろしく頼むというような考え方では、私どもはとうてい自分の責任を果すためのお話とは受取れないのです。私どもはどこまでも何らの先入観も持たないで、国民全体の代表気持でこの重大問題ととつくんで、十分に審議して、そうして憲法守つて行き、経営者労働者も立つて行ける道をここにしつかり見出して、それを法律の上に実現して行こう、こういう気持お尋ねをしておるわけなのであります。いろいろお尋ねしましたけれども、どうもはつきりとした、私の満足するような御答弁はないのです。  そこで、こういう法案を提出されました動機はと申しますと、これはもう大臣提案理由説明にも明らかになつておりますように、昨冬行われたところの両ストライキ、これが大規模のものであり、国民経済国民日常生活に与える脅威損害というものは非常に大きいから、これを何とかして防止しなければならない。だからこの法律案をここに提出するのだという、この法律案提出動機というものは、もう私は争うことはできないと思うのであります。こういう法案をお出しになつたのが昨冬の両ストライキですから、あの両ストライキは、電気事業石炭鉱業に従事しておる労働者争議行為方法に対しての規制が十分でなかつたから起つたのだなというふうにお考えになるのであるかどうか、その点をお伺いいたしたいわけであります。
  24. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは私といたしましては、水かけ論になるかもしれませんけれども政府施策におきましても、それはできるだけ万全なものでなければならないと思います。今まで私ども自由党としまして、昨冬のストライキが起きる時までの政策が十全であつたかというと、十全であつたとはいえぬと思うのであります。しかしわれわれとしては、不断の努力をいたしまして、これをさらによくしよう、日本経済状態を改善し、国民生活を日とともに月とともに向上しよう、こういうことは考えておるわけであります。しかし一方におきまして——これを申し上げると答えにならぬとおつしやるのですけれども、一方におきまして、そういう政策を改善し、国民生活を充実させる、勤労者にその生活を享受してもらうように、できるだけの措置をするということと、一方この法案によつて、こうした社会に大きな迷惑を及ぼすようなストライキというものは、これは本来社会通念上許さるべきものでない、こういう範囲を明らかにすることは別の問題であろう、こう思いまするので、先ほどからそういうことを申し上げておるのであります。この法案スト規制法と書いてあるので、何かストライキ権を、今まであつたものを著しく制限するのだ、制約するのだ、こういうような印象を与えるので、そういう御議論があるいは出るかと思うのでありますが、そうじやないのです。われわれは、ここにあるところの、本来いけないところのものを、ここまでやつてはいけないのだ、違法性の阻却される範囲はここまでであるということを明確にすることが、この法案趣旨であるということを、繰返すようでありますが申し上げておきます。
  25. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 どうもこの点について小坂労働大臣は、明瞭な答えをすると、何かとんでもないことになるんじやないかという不安があるように感じられてならない。私は決して政府に対して、ことさらに悪意を持つて質問しておるのじやない。  それでは私の尊敬する小坂労働大臣に、私の真情をぶちまけてお尋ねいたしたいのですが、小坂労働大臣は、本会議においても、また先般の本委員会においても、こういうことをおつしやるのです。労使関係の事項については、法をもつて抑制、規律することはできる限り最小限とし、労使の良識と健全な慣行の成熟にゆだねることが望ましい、こういうことを繰返しおつしやるのであります。ところが、これは率直に申し上げますが、はなはだ失礼な言い分かもしれませんけれども小坂労働大臣からこの言葉を聞くたびに、私は実は小坂労政というものは一体徹底して行くかどうかということを、非常に不安に思つておるのです。非常に人柄のいい、教養の高い方にはありがちな、何かはつきりしたことをするのをおそれる。胸中深く決するところがおありなんでしようけれども、その表現等においても非常に遠慮されておるのじやないか、そういうふうに私は考えて、これで一体現下のむずかしい日本の労働問題を解決して行けるかどうか。私は、お考えがあるのだつたら大胆率直にこれを国民の前にさらけ出して、この問題解決のために国民の協力を求めるという方途に出られなければならぬと思うのであります。それで、抑制規律することはできるだけ最小限としよう。この抑制という言葉は、いかにも制圧とかあるいは抑圧とか、すなわち弾圧を連想させるような言葉なんです。私はやはり抑圧、制圧というようなものは、民主主義の日本においてとるべきものじやないと思つておる。しかし規律ということは、これは必要なんです。これは国家という大社会の統一を保つて行きますためには、どうしても規律が必要なんです。抑圧とか制圧とかは、もちろん遠慮しなければならぬけれども憲法を守るという立場に立つて——この法律案関係のあるところを申しますと、憲法勤労者の団結権なり団体交渉権なり団体行動権を保障いたしております。しかしこの保障は、どこまでも社会公共の福祉に沿う限度においてということは、もう良識ある者は異論はないと私は思うのです。従つて、決して自由放任の手放しのものではないのです。やはり一方において資本家に対して財産権はこれを保障する。しかしその内容は公共の福祉に沿うように定める。また他方勤労者に対して団結権なり団体交渉権なり団体行動権を保障するが、しかしその権利の内容は公共の福祉に沿うように定めなければならないし、公共の福祉に沿う範囲内においてこの権利を行使しなければならぬということは、確信をもつて申し上げ得ることなんです。従つてその公共の福祉に沿うか沿わないかというこの規律を守ることは、堂々と自信を持つてだれに遠慮するというような態度に出る必要はないと思うのです。この限界線を見出すことに努力して、はつきりしたならばこれを決定するのに躊躇するところはないと私は考える。ところが、ここでお伺いしたいのは、小坂労働大臣は、何か規律するということと抑制するということと混同されて、そういうことをはつきりすることはどうもよろしくないのだ、遠慮しなければならないのだと、こういつたような弱い気持をもつてこの問題に対処しておられるのではないかということを、はなはだ失礼かもしれませんけれども、私は感ずるのです。ところが、そういう場合に起りますのは、一つのものの限界線を定めるわけですから、確信を持たないで遠慮しながら限界線を定めるときに、案外遠慮したために正しい線を踏みはずすことがあるということを私はおそれる。その踏みはずしが、ときには経営者の不利益となることもありましようし、ときにはまた勤労者の不利益になることもあると思うのですが、えて今審議されておるような法律案の制定に関してそういうふうな考えで行われるときには、いかにも言葉では遠慮しておつて、やさしい言葉をもつて、自分の行動を粉飾するような態度でなさつておられるが、勤労者側にはとんでもない不利益を招くことになる。悪意があるとは申しませんが、そこをはつきりした態度をおとりにならぬと、どうも規律と抑制とを混同されて、しかも遠慮しながら、勤労者の不利益になるような線を定められるようなことになりはしないか。一般労働問題解決のためにも、こういう問題は十分考えなければならぬ問題だと思うのでありますが、こういう経営者勤労者とのいわゆる公共の福祉という問題について、小坂労働大臣はいかなる限界線を小坂労働行政において打立てようとされるかという点を、ひとつ率直にお答えを願いたいと思うのであります。
  26. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 最初の点はなはだ不明確である、明確に答えろということでありますから、お答えいたすのでありますが、労使関係の事項は、労使の良識と慣行の成熟をまつて決定されて行くことが望ましいのであります。また労使が良識によつて行動することを期待しておるのでありますが、昨年の大ストライキの経験にかんがみまして、この点は法をもつて補う必要を痛感いたしたので、この法案を提出しておるわけであります。  それから公共の福祉と基本的人権の調和といつたような意味のことでありましたが、もちろん私は法律家でないので、あまり法律用語などを使うとおかしいかもしれませんが、憲法十二条、十三条におきましては、公共の福祉のために基本的人権は使われねばならぬし、また侵してはならぬということが書いてあります。そういう意味から言うと、二十八条の団体行動権というものは、当然公共の福祉との調和によつて行使しなければならぬ限界があるのだと考えております。
  27. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 どうも私は労働大臣の御答弁で満足はできないのでありますが、同じことを繰返しておつても際限がなさそうですから先へ参ります。今労働大臣は、自分は法律家でないからとおつしやつたのですが、これはあげ足をとるわけでも何でもございませんが、今論議されておるところのスト規制法案は、重大なる法律問題を包蔵しておるわけです。法律知識なくして解決し得ない問題であると私は確信しております。労働大臣にその知識がないと申し上げるのではないのですけれども、ここで私がお伺いしたいのは、これは第十五特別国会でも通過した、そして事務当局の説明によれば、現在のところこれ以上の方法はないのだというので、その上に乗つかつて、決して間違いないものであろう、そうしてこれは今度の国会を通過するであろうというような、率直に言えば、無責任な安易な気持でこの問題に臨まれたのではたいへんだ、こういうことであります。わずかの条文しか持たない法律案でありますから、憲法から出発してこの法律案に至るまでの法律関係は、徹底的にこれを究明されなければ、将来たいへんな事態が起るということを覚悟されなければならぬと思うのであります。この法案審議において、法律に関する知識ということを抜きにしては、私ども小坂労働大臣お尋ねをすることはほとんどないのです。重要なる法律問題としてお尋ねをいたしますから、そういう意味でお答えを願わなければなりません。  そこで私が先ほど、昨冬の両ストライキの起りました原因は何であるかとお尋ねしても、どうもその御答弁はぼやけております。しかしそれは後日に譲るといたしまして、この法案を提出されました動機は、先ほどのお答えでは、やはりこのスト規制に関する制度が確立していないと申しますか、あるいは不十分であるために、この際はこの法律を制定することが、将来争議行為の生起を若干防ぎ得るというようなお気持でこれをお出しになつたものと私は了承いたします。そこでこれは公共の福祉にも関係するわけでありますが、昨冬行われました両ストライキは大規模のものであり、国民経済国民日常生活に与えた脅威損害とは実に甚大なものである、こう抽象的におつしやられただけでは、これは私ども新聞を見たり、あるいはまた内々にいろいろ事情を聞いて、そのどうであつたかということは若干は存じておりますけれども、私はこの際あのストライキが、国民経済にどう影響をしたか、あるいは国民日常生活にどういう脅威損害を与えたか、大規模であつたか。その規模はこうであつた。これらについてあの両ストライキをめぐつてこの原因なりあるいは結果なりを十分政府において御調査になつておるはずである、こう思うのであります。それが調査されないでは、ただ常識的に今大臣がこの提案理由説明なさつたようなことは言われないと思う。この点を明確にしておくことは、この問題を解決するのに、いわゆる公共の福祉ということにも重大な関係を持つわけでありますが、その点を調査されましたか、調査の結果はどうであつたかということを明らかにしていただきたいと思います。
  28. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えします。どうも非常に御不満のようですが、私とい免しましても、争議原因は何であつたかといわれて、そう一言に言えるような関係ではないと思つております。社会現象というものは非常に複雑なものでありまして、それをこの際どれが原因争議が起きたかというようなことを端的に言うことは、むしろ問題を複雑にするだけであつて、意味がないのではないか、こういうふうに考えておるので、そう申し上げたのであります。今争議によつて起きたところの被害の調査はできておるかというお話でありますが、これは常識的に考えましても、お互い市民生活をしております者が受けた精神的物質的損害、また、ことに中小企業のこうむつたところの大きな損害というものは、これは相当甚大なものであるということは言うまでもないと思います。この法律との関係において炭鉱の保安要員の引揚げはいかぬ、こう言つていることでありますから、炭鉱の保安要員の引揚げによつて受けた損害はどうであるかということについては、これまた、もしそういうことが行われれば、御承知のように日本の炭鉱におきましては非常に温水の多いところがありまするし、また有毒ガスが充満するところもありますし、また落盤をする。そういう事態が起きますれば、国家の資源の滅失はもとより、まじめな勤労者はその後において帰るべき職場を失うのでありますから、これは当然法律によつてすでにいかぬことになつておるのでありますが、しかもなおそういうことをやつてもかまわぬという考え方が一部にあるから、今回これを明確にする必要があるということで、この法律が提出されておるわけであります。  なお、私が法律にしろうとであるということを申し上げたのは、私は何も弁護士とか、そういう職務ではないということで、謙遜して言つただけでありますから、御遠慮なく……。
  29. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 それでは法律家でないから、謙遜して言つたのだとおつしやつたので、非常に意を強うした次第であります。あまり私だけ時間をとりましては何ですから、この法案の具体的な点についてお尋ねをいたしたいと思います。  まず順序といたしまして、憲法第二十八条が勤労者の団体行動権を保障する、こう規定いたしておりますが、この法案は、憲法の保障しておるところの勤労者の団体行動権を侵害するものであるかどうかという点について、労働大臣の所見を承りたいのであります。
  30. 赤松勇

    赤松委員長 ちよつと待つてください、高橋君。委員長としてお尋ねしておきますが、先ほど昨年の炭労と電産のストライキの発生原因についてお尋ねいたしましたね。これにつきまして小坂労働大臣からいろいろ経済的問題も伴つておるので、これは他の閣僚から説明した方がよいだろうという御発言がありましたが、それでよろしゆうございますね。
  31. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 けつこうです。
  32. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 他の閣僚から言つた方がよいということは私は申しません。  なお、ただいまのこうした争議権を押えた場合に、他にどういう争議権があるか、団体行動権が保障されるかというお話でありますが、電気の場合はもちろん検針ストとかあるいは集金ストとか、そうした業務ストができるわけであります。それからあるいは株主総会を招集することを拒否したり、資材ストであるとか、そうしたスト方法はあるわけであります。大体電源に働く人たちというのは、ごく一部に限られており、他の大部分の人は争議権というものは依然として存在するわけでありますから、この点におきましては、別に特に争議権の規制となるということはないと考えております。なお炭鉱につきましては、もちろん保安要員の引揚げはできないが、他の炭鉱におきまする勤労者諸君は、堂々とストライキの権利を持つて資本家というか、使用者側に対抗せられたらよい、こう考えております。
  33. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 何か今の御答弁は、原稿を取違えてお読みになつたような感じがするほど、私の質問とは的はずれでありますが、私のお尋ねいたしましたのは憲法第二十八条は勤労者の団体行動権を保障しておるのであるが、ここで審議しておりますところの政府提出の電気事業及び石炭鉱業争議行為方法規制に関する法律の持つこの内容をもつてすれば、いわゆる憲法の二十八条によつて保障しておるところの勤労者の団体行動権を侵害するものであるかどうか。侵害するものでないというのであれば、その根拠をしつかりとお示しになつて答弁願いたい、こういうふうにお尋ねいたしたわけであります。
  34. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 憲法第十二条におきましては御承知のように「この憲法国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う。」とうたつております。第十三条におきましては「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」こう書いてあるのでありまして、公共の福祉のためにこの基本的人権というものは伸ばされねばならず、また「公共の福祉に反しない限り」という制限を置かれておるものであります。だから二十八条においても当然公共の福祉に反しないという制限があると思います。こういうふうに当然二十八条はこれを予想して書いたのだ、こういう見解を持つております。
  35. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そうすると、そういう見解でこのスト規制法憲法第二十八条の勤労者の団体行動権を侵害するものではない、こうおつしやるのですね。
  36. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その通りでございます。何ら侵害するものと考えておりません。
  37. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 労働組合法の第一条第二項によりますと「労働組合の団体交渉その他の行為であつて前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。但し、いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。」こういう規定があることは、もちろん労働大臣御存じの通りでございますが、この規定というのは、労働大臣はこの暴力の行使以外のいわゆる争議行為というものは、刑法第三十五条の規定の適用があるものとするというふうにお考えになるかどうか、その点をお伺いいたしたいのであります。
  38. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 暴力の行使というものは、手段の違法性が強調されておるのでありますが、その他にこの目的の違法性、たとえば政治ストであるとか、そうしたものもあると思いますし、また目的と手段の均衡性を著しく失している場合ということもあると思うのです。そうしたこの目的と手段の均衡性を失しているという意味におきまして、ここに問題となつておりまする炭鉱の保安要員の引揚げ、あるいは電源ストあるいは停電スト、給電指令所の職場放棄、電源あるいは給電所における職場放棄、そうしたものはその面におきまして著しくこの均衡を失しているということになるので、この労組法一条二項の適用になる、こう思つております。
  39. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そうすると労働大臣は、暴力の行使だけでなく、その他にもいわゆる労働組合法第一条第二項のこの「正当なもの」といわれない争議行為があるんだというふうにお考えのように承つたわけでありますが、そういたしますと、この「正当なものについて」という正当なもの、すなわち労働組合法第一条第二項における正当なも  のと不正当なものとの限界は、どういうものさしによつておきめになるのか、そのものさしを承りたいわけです。
  40. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 目的と手段の均衡性が失われるという場合のものさしであります。これは社会通念であると思います。
  41. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 その目的と手段との——ちよつとはつきりわかりませんでしたが、均衡性が失うとか、そういうことでは、ちよつと私には了解できないのです。はなはだ恐縮ですが、もう一度今のところを言葉をかえてひとつ御説明願いたいと思います。
  42. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 政府委員から……。
  43. 赤松勇

    赤松委員長 あなたに対する要求ですから……。
  44. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 それじやもう一度私が言つて、さらに御満足にならなければ政府委員からさせましよう。  どう言いますか、この生活権を守るという目的で団体行動を起す、その結果、その手段が著しく国家公共の福祉を阻害する、影響を及ぼすということであれば、これは労組法第一条第二項の場合に該当するのである、こういうふうに思つております。
  45. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 これはもちろん労働大臣はおわかりになつておる。自分は知つておるんだけれども、謙遜して法律家でないと言うたくらいであるから、もちろんおわかりになつておると思う。私はこれが急所であると考えております。すなわち憲法で保障された勤労者の団体行動権が正当なものはこれか、不正当なものはこれかという、その限界を労働組合法第一条第二項はきめているわけなんです。こう思いますから、この点の標準というものを、このものさしを誤つたらたいへんなことになるんだ、こう考えておるから今お尋ねをいたしたわけであります。これは政府委員の方からでもけつこうですが、今の点に関連をして政府としては、この線は正しい、これが不正の限界である、こういうこの標準というものは、現在の法律制度としてはどうなつておるんだということを、ひとつ御説明願いたいと思います。
  46. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 抽象的に申しましたので、さらに具体的に申し上げることにいたします。電気の場合は電気事業の特殊性というものがあると思うのであります。これは国民経済国民生活に常時不可欠であるところのエネルギー源であるということが第一点であります。第二点は、電気事業というものは高度の独占性を持つておりまして、代替性がほとんどないという点であります。第三は、生産即消費であるという点であります。生産の停滞はただちに消費の停滞を来し、貯蔵がまつたく不可能であるという点であります。第四は、きわめて少数の者の行為でもつて、広い範囲の送電を停止、混乱せしめるという点であります。第五の点といたしましては、以上の結果といたしまして、争議行為としての電気の停廃というものは、労使当事者よりも第三者たる需要者にはるかに甚大な損害を与える、こういう点であります。さらに石炭鉱業につきましても、これと同様エネルギー源でありますし、限られたる地下資源である。それと同時に、危険度が非常に高いのでありまして、一日もこれが保安はゆるがせにできない、こういう点がございます。そういう点があるから、そうしたものの争議は公共の利益に著しい影響、損害を与える、こういうふうに考えております。
  47. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 質疑応答がはなはだ軌道に乗らないような感じがして実は困るのでありますが、私のお尋ねいたしましたのは、いわゆる憲法に保障しているところの勤労者の団体行動権の限界を具体的に現行法でもつていかに定めておるか、それに関連して政府委員の方の御答弁を願いたいと思います。
  48. 中西実

    ○中西政府委員 この一条の二項の「正当な」という限界につきましては、社会通念による。最終的には裁判所の認定になるわけでありますが、明らかに明文をもつて正当でないとされておるものもございます。たとえば労調法の三十六条で保安施設の停廃、これあたりは争議行為としても、してはならないとはつきり出ておるのもあります。また労調法三十八条で、緊急調整の決定のあつた場合は五十日間ストをやつてはいけない、こういうものもあります。やはり労調法の二十六条で調停案が出まして、その解釈に疑義があつて紛争のある場合に、これは十五日間の期限を経ませんければできないというような、明らかに正当でない争議行為というものを明文化しておる点もございます。しかしそれ以外のものは一体どういうものさしで判断するかということになりますれば、これは先ほど来大臣が申し上げておりますように、目的手段の均衡の問題が大体の基準になり、結局は公共の福祉ということが限界で、社会通念で個々の場合にきめるよりいたし方ないじやなかろうか、かように存じております。最終的にはもちろん裁判所において判定される、かような関係になるのではなかろうかと思つております。
  49. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 労働大臣お尋ねをいたしたいのですが、今政府委員答弁にありましたように、この労働組合法第一条第二項の規定するところの正当なもの、不正当なものという問題に関しては、現行法で不正だということを規定したものが一部あり、それから一部はまた規定していないものがあるわけです。今審議中のこのスト規正法案の内容をなすところの行為は、今まで規定してあるものに関するのであるか、規定していないものに関するのであるか。もし両方にまたがるのであれば、どこの部分は今まで規定してある分に関連し、どの点は現行法では規定をしてないのであるか、具体的にひとつお答え願いたいと思うのであります。
  50. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 不当あるいは社会通念上非なりということの確認であるということを申し上げておるわけでありまして、不当といつておりまする部分につきましては、炭鉱の保安要員の引揚げということは労調法三十六条にもあるのであります。さらに労組法第一条二項の考え方を、今御説明したように適用して参りますれば、これは他の部分、電源ストあるいは停電ストについてこれは適用されると考えておりますけれども社会通念上本来非であると考えているものを法によつて明らかにしようという部分にこれはなるかと思います。
  51. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 労働組合法の第一条第二項というのは、これは刑法第三十五条の問題に関連しての規定なんです。いわばこの規定は刑法総則の規定と見るべきものだと私は思いますが、その刑法総則の規定を適用するかせぬかという問題に関連して、このスト規制法案というものが意味があるわけなんです。ですから、大臣は不当だとか、不妥当だとかよくそういう言葉を使われますけれども、そういう不徹底なものじやなくして、不正行為、いわゆる争議行為でなかつたならば犯罪行為になるというものが、問題の対象になると私は理解いたしております。そこでお尋ねいたしたのは、スト規制法案に含んでおるところの行為は、従来法律に不正として取締り規定のあるものと、そうでないものとあるのかどうか、それらの点についてお尋ねをしたわけなんです。今大臣の御答弁では、それがどうも私にははつきり理解できなかつたんですが、政府委員の御答弁を願いたいと思います。
  52. 中西実

    ○中西政府委員 明らかに今度の法律と従来の法律とである程度重複いたしておりますのは、労調法の三十六条の人命に関する保安施設の停廃であります。それ以外のものは従来から裁判所の判決によりまして、あるいはわれわれの行政解釈によりまして非とされておるもの、さらに昨年の経験から社会通念上明らかに非となつたもの、これを今回規定したものでございます。
  53. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今判決というお話がありましたから、ひとつ判決を引用しますと、昭和二十七年の七月三日に東京高等裁判所において、例の川崎変電所の事件について、御存じのように停電ストが審理されて無罪になつた。停電ストはこの事案においては犯罪にならない、こういうふうに判決が下つて、検事も上告せずして確定して、とにかく政府とじてはその裁判所の意見に服した、こういう結果になつておるのですが、今おつしやつたところとは非常に相反した事柄だと私は思うのです。そうして、この高等裁判所の判決があつたために、昨冬の電気事業に関する停電ストの取締りについて、政府においては非常に弱腰になられたというようなことを言つておる人もあるわけなんですが、従来不正であつたものをそのままこの法律案において取上げたというべきものでなくして、従来は裁判所において無罪となつたようなものでも、この法案の中には取上げられておるのだというように思えるのです。少し質問がこまかい方に行き過ぎましたけれども、この際一応御説明願いたいと思います。
  54. 中西実

    ○中西政府委員 先ほど申しました判例の中で、実は最高裁で決定になりました判例で、争議行為というものは、労務不提供が一応の限界であり、積極的な作為による正常な業務の運営阻害は、これは争議行為として認めることはできないという判例がありました。ただいま仰せになりました昨年の七月三日の川崎の変電所のストにつきましては、実は前国会労働委員会におきましても、検察当局から弁明をいたしておるように、手続の手違いから上告するのを忘れておりまして、期限が過ぎた、そのために当然最高裁にまわるべきものが高裁でとどまつておりますので、行政解釈といたしましては、やはり相かわらず不当なものであるというふうに考えておるわけであります。
  55. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今おつしやつた最高裁の判決で、いわゆるスト行為というのは、その本質が不作為のものである、こういう考えでもつて今の停電ストの問題を解決になろうとされるのですが、そういう不作為的なものでなければ、争議行為としては許されないということをここで確言なさることができますでしようか。
  56. 中西実

    ○中西政府委員 労働争議の大体の原則は、そういうところにあると考えられております。ただただいま提案になつております、電気関係スト規制につきましては、これは不作為、作為という問題を越えまして、結局先ほど来大臣から申し上げております目的と手段との均衡の非常な不均衡というように、公共の福祉という関係考えて参りたいと存じておる次第であります。
  57. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 停電ストについては、先ほど申した判例のほかに、昭和二十五年二月十七日に福岡地方裁判所柳河支部で、やはり停電スト一般公衆に害を加えるものであることは避けられない事実であるが、これを主たる目的としない限り、必ずしも不当でないという判決があつた。すなわちストの本質は不作為的なものであるというふうに断定を下して、そこを一つの線にして解決をつけて行くことは、私は非常にむずかしいと考えるのであります。東京高等裁判所の判決は不服であつたけれども、訴訟の手続の行き違いから上告をしなかつたのだと言われる。一方福岡地方裁判所の方はどういう手違いであつたのか、あるいはどういう考えでそれが確定したのであるかは存じませんけれども、こういうふうに作為的な行為についても、やはり争議行為として合法的なものであるというような判例があるわけなんです。こういつたような判例を全部くつがえして、この法案にこういう規定をされるということは、私は従来不正であるとしておつたものをそのままここに注意的に、宣言的に取上げたものであるということは筋が通らないと思うのですが、政府はほんとうにそのようにお考えであるのか、その点を明確にお答え願いたいと考えます。
  58. 中西実

    ○中西政府委員 大体において、先ほど申しましたように、明らかに従来から法律上も違法であるというものもございますし、さらに従来から、社会通念上どうも妥当でないと考えられておつたものも含んでおるわけであります。従つて裁判の判例等によりまして若干われわれと結論において違うものが出ておりますが、実は最高裁のこの点に関する判例がいまだ一つもないのでございまして、われわれとしましては、やはり社会通念上、現在適当でないと考えられるものをここに並べたというふうに考えております。
  59. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そういたしますと、政府としては、この労働組合法第一条第二項の規定の適用から、将来不正当だと思えるものは、随時というとちよつと語弊があるかもしれませんけれども、たとえばストライキの起つたこと等を動機として、これを宣言的にでも法律化して行かれるというような御意向があるのかどうか、そこを伺いたいわけであります。
  60. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 将来の問題に属しますが、それはそのときの社会通念が決定することだと思います。  それから先ほどの答弁で、最高裁の判例のことを申しておりましたが、最高裁の判例が公共の福祉に反しない限度においてということをうたつているのは、御承知通り昭和二十四年五月十八日の判例にございます。、
  61. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 いろいろの問題があるわけでありますが、この点を最後にお伺いしておきたいと思うのであります。  憲法の保障しておるところの勤労者の団体行動権は、公共の福祉に沿うように行使されなければならぬ。これは私もそのように思うのでありますが、さて、それを法制的に具体化して参りますためには、今日までその目的で制定されて参りました労働組合法の第一条第二項が基本になると思うのであります。この規定の上から見て不正当なもの、すなわち刑法第三十五条の規定を適用しないで、言葉をかえれば犯罪として取扱うところのものについては、もしもものさしがはつきりすれば、正当なものはこれ、不正当なものはこれというふうに示すことが、ストライキが不正なる犯罪行為になるような争議行為を防止するために、考え方によつては必要なことであると思うわけであります。ただ誤つたものさしで規定されたら、これは労働者の権利を侵害することになる。正しいものであれば、もう大いに宣言してもいい。そこに線をはつきりしていいと思う。そういうことについて将来何かお考えがあるかどうか。これを先ほどお尋ねしたのですが、どうも明瞭なお答えのように思えませんでしたから、重ねてお尋ねをいたすわけであります。これは決して遠慮するとか、あるいは何か気がねをしながら、悪いことでもするような気持でやる必要はないのです。これが間違つた線ならばたいへんですけれども、正しい線であれば何でもないのです。そういうふうに努力して行こうとか、そういうふうな方針であるとかいう点についてお考えがあれば承つておきたい。ただこの際電気事業と炭鉱事業だけ取上げてやつておけばそれでいいんだ、当分楽だというような一時的な行き当りばつたりのようなお考えであるのかどうか、政府の根本的な態度をお尋ねいたしたい。
  62. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 将来のことは今お答え申し上げた通りでございまして、一一これを列挙してやるということは、現在のところ非常にむずかしい問題であると考えておりますが、この法案によつてお諮りいたしておりまする内容は、あらためて申し上げますが、この点は社会通念上非であるから、ここにこれはこういうことをすれば労働法上の保護を失うし、刑法の適用を受ける、こうした範囲を明瞭にするのは、電源スト停電スト、給電指令所の職場放棄、野放し送電、さらに保安要員の職場放棄といつたものでございます。
  63. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今どういう方針だということは申されないので、方針があつて申されないのか、あるいはないのか、そのところはわかりませんが、それはそれでおいて——政府の所見がはつきりしないために、今ただこれだけを取上げられているが、これでも従来の法律解釈なり、あるいは裁判例等から見て労働者争議権を侵害された、こう解釈する人が相当あるわけです。のみならず、将来同じような意図のもとに、これに類似したような動機のたびごとにこの種の法律が生れて来るのではないかというようなことで、まあ労働者の一部で非常に心配をして、政府が言われると、それは疑心暗鬼であるといわれるかもしれませんけれども、とにかく相当心配をしている人がたくさんあるわけです。そこが明瞭を欠くために、現在の日本勤労者一般人たちを刺激しているのです。現下の日本労働問題解決のために、いろいろむずかしい問題が起つて来るのではないかということをもわれわれ考えられるわけですが、その点について、政府はこういう法律はつつても、断じて労働問題解決に支障の来るようなことはないのだという確信をお持ちになつているかどうか、その点をお伺いいたします。
  64. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この問題については、他産業に及ぼす意思を現在持つておりません。これは先ほどお答えいたしましたように、電気事業におきまして、電源並びに給電指令所、変電所等に勤務する人は非常に少数であるということ、あるいは炭鉱においての保安要員というものは非常に重要な職務をになう者でありますると同時に、非常に少数である。こういう点であります。しかしこうしたものは社会通念が基礎になるのでありますから、将来の問題としてどうなるかということは、そのときの社会通念が決定することだと思いますが、現在私どもといたしましては、他産業に及ぼすということは考えておりません。
  65. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 このスト規制法案法律化されることによつて、現在は正しいとして取扱われ、あるいはまた正上いか正しくないか不明瞭なので、いわゆる刑罰法規の運用でそれを取締りの対象として取上げるのは不相当である。こういうふうなものが今度は明瞭になつたので、犯罪行為として取締りの対象になる。こういうことによつて電気事業石炭鉱業に関する限り勤労者側に非常に不利益になつた、こう解釈する人が多数あるということを私ども考えなければならぬと思うのですが、そういうときに、その問題解決のために、労使間の協調と申しますか、公平に両者の利益を擁護する施策を講じようというようなお考えがあるのか、あるいはこの法律をつくりつぱなしでほうつておかれるのか、それらの点について、お考えがあれば承りたいと思います。
  66. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この法律案を可決していただくことによりまして、こうした非常に妥当ならざるもの、あるいは社会通念上非であるというものの範囲が明確になると思います。そこで労働問題について争議をなし得る一つの限界は、従来もそういうふうに考えるべきものであつたのが明確になりまするが、それによつて私はさらに健全な労使間の協調がその後においても行われることを期待し、また確信しているわけであります。ただそれでほうつておくかということでありますが、私は先般も御案内のように、労働問題協議会というものの設置を提案いたしておりまして、そうした場において自由に労使間に物を言つていただき、そうして社会の良識ある人、しかも自由に物の言える人等がこれを判断いたしまして解決の場をつくりたい、こう考えておるのであります。
  67. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 昨年冬のストライキに関連して、犯罪行為がありましたかどうですか、その点をお伺いしたいと思います。
  68. 中西実

    ○中西政府委員 詳細は検察方面にもう一ぺん確かめたいと思いますが、石炭関係ではございませんでして、電産関係で徳島と長野で若干起訴されたことを聞いております。
  69. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 この法案は、刑法第三十五条の運用に関する問題なんでして、私は法務大臣の御出席を求めて質問いたしまして、その後にまた再び小坂労働大臣お尋ねいたしたいと思うので、それらの質問を留保いたしまして、本日はこれをもつて打切りたいと思います。
  70. 赤松勇

  71. 倉石忠雄

    倉石委員 高橋委員の御質問は、きわめて重要な問題であると存ずるので、私どもも伺いたいと思つてつた点が多々あるのでありますが、この際明確にしておきたいと思いますのは、本案の至るところに「公共の福祉を擁護するため」という文字が書いてあるが、「公共の福祉」というのは、その事業の公共性ということであるか、その点をひとつ政府委員から御答弁を願います。
  72. 中西実

    ○中西政府委員 公共の福祉は、もちろん事業の性格によりまするが、結局争議権と公共の福祉との調和というふうに考えております。そこで争議行為がどの程度許されるか、つまり争議行為の正当性——これは結局抽象的な表現になりますけれども、もろもろの一般的基本的人権と、それと争議権との調和ということになるのじやないかと思うのでありまして、このことは、憲法の十二条、十三条との関連で、当然憲法の期待しておるところではないかというふうに考えております。
  73. 倉石忠雄

    倉石委員 高橋君が先ほど労働組合法についてお尋ねになりました御精神も、やはりわれわれと同じ心配を持つておられたからだろうと推察いたしておつたのでありますが、労働組合法第一条第二項に——労働組合法は、われわれが改正するときに非常に論議が行われたのでありますが、そもそも労働争議に対して、われわれは何ものにも優先して憲法の条章はあくまでも守らなくちやならない。ことにわれわれ国会議員としては、これが常に念頭から去らないのであります。憲法第二十八条によれば「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」となつておるのでありまして、これはあくまでも遵奉しなければならない。そこでなるべくこういう基本人権を規制するようなことはやらないのが、われわれの理想であります。そこで、今の公共の福祉が問題になつて参りますが、労働組合法第一条第二項の最後のところに「但し、いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。」というやつを、改正のときにわれわれが入れた。憲法第二十八条の労働権を規制することは、この二項にあるもの以外はなるべくやらない、こういうことがわれわれの理想なんであります。そこで今の公共の福祉の問題になつて参りまして、もう一つは、公共の福祉のほかに、他の法律によつて——すでに私ども国民代表が制定をいたしました法律の中、しかも本日御審議になつております法案に一番関係のある電気及びガスに関する臨時措置に関する法律、この中には旧公共事業令ももちろん運用することをうたつております。もう一つは、先ほどお話になりました鉱山保安法、それから労調法第三十六条、こういうところで、すでにこういうような行為はしてはならないということを明確に規定してあるのでありますが、先ほど質疑応答のうちに、こういう法律がすでに存在しているにもかかわらず、最高裁の判決などでは、不作為によるものはこれは律法でないという判決を下されておるように承つておるのであります。こういう今申し上げました二つ、三つの法律によつてすでに規制を受けているものを重複して今度の法律規制されようとしておる、こういうことでありますから、私どもは、法体系からいえば、既存のこういう法律を改正することが一番いいんじやないか、こういうふうに思つたのであります。解散後相当長期間あつたのでありますが、政府はどうしてそういう態度をおとりにならないで、こういう法律案をお出しになりましたか、政府のお考えを承りたいのであります。
  74. 中西実

    ○中西政府委員 旧公共事業令と鉱山保安法、これあたりにちようど今提案になつておりますスト規制法の内容になることをしてはならないという規定が確かにございます。ただ従来は、争議行為は結局は業務の妨害を伴うものでありまして、それが争議行為なるがゆえに違法性を阻却されておるということで、今の旧公共事業令に規定しております内容のもの、あるいは鉱山保安法で規定しておりますもの、この争議行為との関連ではたして違法性を阻却するかどうか、きわめて不明瞭でございましたので、従来はそこに相当な疑義があつたのであります。そこでこういつた旧公共事業令あるいは鉱山保安法、これの改正で行けるのじやないかというようなお話もございますけれども、これは結局争議行為の正当性という限界は、この原則としましては労組法一条の二項の「正当なもの」ということの解釈について、労使が良識をもつて判断をするということを期待しておりまして、で得べくんばいろいろと規制的なものをつくらずに、労使の間によい慣行ができますことが望ましいのでありますが、不幸にして昨年の事例等も出ましたので、そこでとりあえず電気、石炭、これについて現におそれのある正当でないものについてだけこの際取上げて、別個に臨時的に規定しよう、こういう趣旨で今回の臨時の立法になつたわけでございます。
  75. 倉石忠雄

    倉石委員 どうも私まだよく了解できないのでありますが、こういう単独立法を特に必要とした理由はどこにあるか。私はそう幾つも法律をつくらないで、既存の法律を改正することによつて足りるものを、新しく単独法をつくる必要がどこにあつたかということを、もう少し説明していただきたい。
  76. 中西実

    ○中西政府委員 本来労使関係の調整等につきましては、労調法がございますし、労働組合のあり方等につきましては、労組法がございます。この労使関係の調整ということに関しましては、昨年労調法の一応の改正がございまして、労使間の調整の方法は、あれによつて一応のルールがきめられたものと思うのであります。今度の法案は、労使関係の調整というふうなものではございませんで、もつぱら公益擁護の立場から、現在の社念通念に照しまして必要な規制をするというにとどまるものでありまして、当面現実に問題になりました石炭電気のみを対象とする、こういう当然の内容のものを一応明確にするというような意味で出されましたので、そこで形といたしましても臨時立法ということで提案されており、なおかつこうとしましても別個の法案として提出した、かように存ずる次第であります。
  77. 倉石忠雄

    倉石委員 私ども考えているところによりますと、公共の福祉を阻害するものは、もちろんこれは国民の喜ばないところでありますから、これを遠慮してもらうことは当然であります。ところが、公共の福祉ということを考えるならば、なぜ電産と炭労の二つだけに限つたか。他にわれわれ一般国民が迷惑するものが非常にたくさんあります。たとえば、今これからなまの魚の輸送を依頼されておる通運会社の従業員がストライキをやつたら、一般の人は非常に困るでありましよう。またわれわれが通勤する場合の私営鉄道などを考えてみてもその通り。でありますから、公共の福祉ということを考えるならば、基本的にそういうことを総括的にお考えになるべきであつて、これはこの前の議会でやはり本案を審議いたしましたときも、私たちは政府に強く要望いたした。この点については政党政派にかかわらず、同じ気持であつたのでありますが、今申しましたようにその間に相当長い期間があつたにもかかわらず、同じような法律を出されたということは、私どもとしてはまことに遺憾千万であります。しかしながら、今政府委員お話によれば、やはりどうしても公共の福祉を守るために本案の提出の余儀なきに至つた。それは私も了解いたしますが、それならば電気産業及び炭労の労働運動のあり方に、現在やはりこういうような法律を制定しなければならないと思われる客観的情勢があつたのかどうか、そういうことについて御説明を願います。
  78. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ごもつともな御説であると拝聴いたしました。但し、私どもとしましては、昨年の大争議の苦い経験にかんがみまして、とにかくこの炭鉱の保安要員の引揚げの問題と、電源ストあるいは停電スト等の問題については、何か応急に措置をする必要があろう、こう考えましてこの法案を出したのでありますが、この法案を出す以前にお話のようなことは当然に考えるべきことでありますし、またでき得ればこれは労使双方間の良識にまつということが妥当であろうとも考えておつたのでありますが、実は一部にあの苦い経験を国民になめさせたにもかかわらず、依然としてこの停電スト電源ストというものを含んだ争議行為に入る予定であるといつて通告して来たものがあるのであります。そういうものもありますし、なお賃金闘争、自己批判書というようなものが炭労の大会等においてもあるようでございますが、そういうものの中にございます考え方を見ましても、これはやはりこういうものによつて規制をしておかないと、政府といたしまして一般国民に非常な迷惑をかけることもはかり得ない、何かこういうものを規制する必要があろう、そういう情勢が感ぜられましたので、この法案を再び提案した次第でございます。
  79. 倉石忠雄

    倉石委員 そういたしますと、逆に考えますと、同じ公共の福祉に関係のある事業でも、そういうおそれのあるものだけとりあえず臨時的に立法措置を講ずるのである。こういうふうにわれわれは解釈いたしたいのでありますが、そういたしますと、先ほど同僚の高橋君がお尋ねになりました他の公共の福祉に関係を持つている事業に対しては、先ほどは将来のことであると申されておりますけれども、たとえば金属鉱山などでも、今まで鉱山保安法でこれは明らかに違法なりと明確になつておる。保安要員の引揚げなどについては、ストライキをやつた炭労だけは新しくこの法律によつて取締りを受けるが、金属鉱山などがやつた場合にはこの法律の適用を受けません。しかしわれわれの解釈によれば、鉱山保安法によつてすでにこれは違法なりとなつておるのでありますが、そういう場合に、政府はどういう解釈をおとりになりますか。
  80. 中西実

    ○中西政府委員 金属鉱山と石炭鉱山と若干技術的にも事情は違いますけれども、保安法規ということになりますれば、やはり目的と手段との均衡上正当のものでないというふうに解釈をせざるを得ないんじやないかと思います。ただ、特に今度の法律の中に石炭だけにいたしましたのは、金属鉱山につきましては現実の心配も非常に少いということで、昨年経験しました石炭だけにとどめたのであります。
  81. 倉石忠雄

    倉石委員 これは先ほど高橋君のお尋ねでも明確でなかつたのでありますが、私どもの聞知いたしておる情報によれば、この法律ができた後においては、他の同系の山などにおいても、やはり争議行為としてこれは一つの戦術と考えなければならないというふうなことをいわれております。将来のことはその場合にとおつしやるのでありますが、私どもは、やはり政府としてはそういう点について明確なる意思を決定しておかれる必要があると思う。公共の福祉を守るということが憲法によつて明らかにされておるのであり、政府はそういう職分を持つている。従つて高橋君のお尋ねのように、同じような公共の福祉に反する事業のストライキが起きた場合には、どういう考えを持つておられるかということを、私どもは本案審議について明確にしておく必要があると思います。
  82. 中西実

    ○中西政府委員 他の公益事業におきまする争議は、もちろん公衆に相当な被害を与えるものでございますが、ただ先ほども高橋委員のおつしやいましたごとく、憲法二十八条の団体行動権はできる限りこれを尊重するというのが憲法趣旨でもございますので、争議行為として行われます場合に、必ずや若干の迷惑はやむを得ないところでございまして、そこで国民感情と申しますか、現在の社会通念上、これがたまらないと思われる点だけにしぼつてすることが適当ではなかろうか。たとえば、日通の例が先ほども出たのでございますが、過去のストを見ておりましても、生鮮魚介は必ず輸送停止の外に置いて輸送を確保したり、また私鉄におきましても、そう長期にわたるストは今までもございませんでした。若干の公衆に対する迷惑はやむを得ないと思いますが、電気につきましては、特に目的と手段の関係考えました場合、当事者のこうむる被害がきわめて少いにかかわらず、関係のない第三者のこうむる精神的物質的な損害が非常に大きい。それからまた電気事業の特性からいたしまして、生産と消費が同時でございまして、貯蔵がきかないというようなことで、従つてこれの代替するものもございませんので、非常な公益性にもとるという結果が生じます。そういうような関係で、電気の正常な供給の停廃は、現在におきましては、すでに国民感情としまして耐えられないものになつておるというふうに考えられるのでございます。石炭山の保安放棄につきましては、そのものを大体において、滅却する、あるいは効用をなくするに近いところの結果を生ずることでございまして、基本的な諸原理との調和におきまして、どうしてもこれは行き過ぎであるというので、この点もはつきりすべきである。さしあたつて実害がさらに予想もされ、また国民感情としてとうてい耐えられないこの二つに限られたというふうに考えております。
  83. 倉石忠雄

    倉石委員 それでは他の産業には、ただいまのところ及ぼす考えはない、こういうふうにわれわれは了解してよろしゆうございますか。
  84. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 はあ。
  85. 倉石忠雄

    倉石委員 ただいま政府委員の御説の中で、一般国民感情というお言葉を用いられたのでありますが、私はこの点については非常に政府もわれわれも慎重でなければならないと思うのであります。およそ労働組合労働争議をいたしますときには、多少一般の人に迷惑のかかるのはあたりまえのことであります。またそういう武力がなければ、労働組合争議をしたところで何らの痛痒も感じないかもしれない。しかしながら、われわれは一般方々の迷惑は、もちろんこれはなるべくしない方がよいのでありますけれども、私ども労働者側の立場に立つてみれば、どうしても憲法二十八条による労働基本権というものは、あくまでも守つてやることを考えなければ、これはこのことだけで済まなくなる、結局日本は右旋回して行かざるを得ないということになるのでありまして、国民もわれわれも、多少は足を奪われてはなはだ迷惑なことがあつても、あるいは電気を消されて迷惑なことがあつても、何がゆえに一体こういうような争議が起きたのだということを理解してもらうように、国民に自覚を持つてもらいたいというのが私どもの理想であります。だからして、電気を消された、電車をとめられたということだけで、労組はけしからぬというふうなことを一時非常に騒ぎましたが、私はその国民ががやがや騒ぐということだけに動かされて、政府がそれに便乗して、憲法二十八条の基本権を侵害するおそれのあるような行為はなるべくやつてはならないし、われわれはあくまでもこれは守らなければならないのでありまして、われわれはそういう態度を、いかなる政府がおとりになつても断固として反対せざるを得ないのであります。最近とかく、これは占領中に定められた法律であつて国情に合わないとかなんとかいう話がありまして、そうして、とかく戦争前にある一部の階級がその上にあぐらをかいて、のんきな経営をやつてつたような時代に逆もどりしようとする傾向がちらほら見えることは、われわれは実に遺憾千万であります。この占領軍が日本におる間におやりになつた行為の中では、幾多批判しなければならぬものもありますが、ともかくもわれわれは終戦以来獲得いたしました民主主義の根本精神というものは、あくまでも守り抜かなければならぬと思うのでありまして、私は今この公共の福祉の問題が出ましたついでにお尋ねいたしておきますが、この労働法の改正にしても、またこういう法律の制定をされるにあたつても、政府はその基本的観念においてあくまでもわれわれと同様に民主主義は守るんだという建前で労働行政をおやりになるのであるかどうかということを承つておきたいと存じます。
  86. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 まことに同感でございます。われわれといたしまして、政府といたしましても、あくまでも民主主義の線はわれわれ日本国発展の基本的な原理と考えて行きたいと思います。ストライキが起きるということにつきまして、これはもちろん私どもとして労組側を責めるに急であつて、資本家の怠慢を責めないというようなことはいたしません。資本家と申しますか、経営者側におきましても、十分組合側の納得を得るような諸般の施設もし、また行動において、あるいは感情においても対等の立場に立つて労組側といろいろ話をして、企業の健全な運営、そして産業の平和を確立することに努力をしてもらわなければならぬというふうに考えておる次第でございまするが、この法律案につきましては、そこにやはり一部の、組合運動について何かこれを悪用いたしまして、その大規模な公衆に及ぼす迷惑をも顧みず、ただ団体利己主義のゆえに、自分らの何か特殊な目的のために、これを運用したということもあるというふうなことを言うものもありますので、政府としては、そうした情勢もいろいろ考慮の中に入れまして、この法律を提案する判断の基礎にいたした次第であります。
  87. 倉石忠雄

    倉石委員 政府当局も私どもとまつたく御同様のお考えであることを承りまして、意を強うするわけであります。そこで、私は先ほどの高橋君のお尋ねによつて、大体この労働基本権と憲法十二条の公共の福祉との調整についての政府の御意向も了承いたしたのでありますが、もう少し具体的にひとつお尋ねいたしてみたいと思うのであります。先ほど中西政府委員お話によりますと、最高裁の判決で不作為によるものは罰せられないというふうなお話があつたと思うのでありますが、今度の法律案によりますと、たとえば第二条の電気産業のスイツチ・オフは、電気ガス臨時措置法の中でも、すでに禁止せられておるわけでありますが、スイツチ・オフでなくてウオーク・アウトは今までの措置令の中では違法であると認められておらないかどうか。
  88. 中西実

    ○中西政府委員 その点につきましての最高裁の判例がまだございませんので、最終的な法解釈がきまつていないわけでございます。ただ昨年の経験からいたしまして、ウオーク・アウトと電気の正常な供給に影響ある行為、これはすべて同じく非であるというふうに判断いたしております。
  89. 倉石忠雄

    倉石委員 それならばお尋ねいたしますが、先ほど私が申しました電気及びガスに関する臨時措置に関する法律及び旧公共事業令、鉱山保安法の中に制定してありますものが、全部ただいま審議いたしております三箇条の中に包含されておると私は思うのでありますが、政府の御見解はいかがでしようか。
  90. 中西実

    ○中西政府委員 労働争議の面から見るか、あるいは業務の面から見るかで見方が違いますが、内容としては大体含んでおるように存じます。ただ先ほども申しましたように、争議行為は常に正常な業務の停廃あるいは異常を来すものでありまして、その問いずれが優先するか。つまり争議行為の正当性が優先するか、あるいは業務の正常な運営ということが優先するか、その点がはつきりいたしませんので、この際法律はつきりさせる、こういう趣旨でございます。
  91. 倉石忠雄

    倉石委員 それはおかしな話だと私は思うのであります。普通の業務関係において、ここに書いてある公共事業法八十三条及び八十五条でこれは違法なりと認定せらるべきものである。それが今政府委員お話によりますと、これは業務規定であつて争議行為としてこういうことをやつても違法であるかないかということがまだ明確でない、こうおつしやるのでありますか。
  92. 中西実

    ○中西政府委員 電気で申しますと旧公共事業令の内容、それから石炭山で申しますと鉱山保安法がある。これはそれに規定してありますものに違反いたしますれば、ただちに刑罰になります。そこで労働争議ということになりますと、その間すべてが違法性を阻却されるのではございませんで、結局このたび提出いたしましたこの行為の内容のものが違法性を持ち、それ以外のものは、結局争議行為として一応の正当性を認められて違法性を阻却する、こういう関係になるのでございます。
  93. 倉石忠雄

    倉石委員 少し明確にしておかなくてはならなくなつて来たのですが、そういたしますと、公共事業令八十三条及び八十五条によつて違法なりと認定せらるべき行為というものは、どういう職務にある者がこういう行為をしてはならないというのでありますか。
  94. 中西実

    ○中西政府委員 旧公共事業令の八十五条に「電気又はガスの供給を、正当の事由がないのに取り扱わず、又は不当な取扱をしたときは、三年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。」というのがございます。そこで「正当の事由」という範囲につきまして今回の法律で明確にしたという関係になると思います。
  95. 倉石忠雄

    倉石委員 そういたしますと、あなた方の想定によれば、この旧公共事業令八十五条は、どういう人がこの行為をやつた場合に罰せられますか。これは従業員でしよう。職員及びその業務に従事する勤労者がこの行為をやれば罰せられるのではないのですか。
  96. 中西実

    ○中西政府委員 規定は「公益事業に従事する者」ということになつております。ただこれに対して、たとえばそれを命令したというような人たちも、これは刑法の理論によりまして同じくこの適用を受けるということになるのであります。
  97. 倉石忠雄

    倉石委員 そこで関連してお尋ねいたしますが、今命令とおつしやつた。そうしますと、破壊活動防止法の第四条かに、これを教唆といつたか、扇動、そそのかすという言葉を使いましたか、そういう言葉があります。今度の電気事業及び石炭鉱業における争議行為方法規制に関する法律案の中には書いてありませんけれども、そそのかす、教唆というものも含まれると解釈されますか。
  98. 中西実

    ○中西政府委員 法制局の見解によりますと、刑法上共犯になる程度のものに限られておりまして、そそのかしの程度のものは含まないという話であります。
  99. 倉石忠雄

    倉石委員 そうしますと、自発的にスイツチ・オフをしたのでなくして、争議が始まつたからというので、スイツチ・オフはしないが、ウオーク・アウトをされてしまうと電気事業というものは非常に危険であることは、御承知通りである。そこでウオーク・アウトもやはり新法によつて罰せられることになりますね。
  100. 中西実

    ○中西政府委員 さようでございます。
  101. 倉石忠雄

    倉石委員 そこでこの旧公共事業令第八十五条の「正当の事由がないのに取り扱わず」の中の「正当」という文字の解釈は、労働組合法第一条による労働争議行為の正当というふうに解釈してよろしいですか。労働争議の手段としてこういうことをやつても罰せられないというふうに解釈すべきであるかどうか。
  102. 中西実

    ○中西政府委員 労組法一条の二項の「正当」は、これはつまり争議行為の正当、不正当を判断するときの正当という意味でございまして、八十五条の「正当」は、結局業務運営の面からの正当ということでありますから、そこで争議行為のものは入りますが、そのほかの事業運営上、たとえば渇水期に正当なルートの命令がありまして供給しないというようなものは、これは「正当の」ということになると思います。
  103. 倉石忠雄

    倉石委員 大分明確になつて参りましたが、そういたしますと、この「公益事業に従事する者」という中には、経営者も職員も労働組合も入つておる、こういうわけでありますか。
  104. 中西実

    ○中西政府委員 さようでございます。
  105. 倉石忠雄

    倉石委員 そうしますと、この公益事業に従事する者が、今中西政府委員お話のような正当な事由は別にいたしまして、そうでなくして、労働争議としてスイツチ・オフをやつたり不当な取扱いをしたときには、「三年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する」という本条の適用を受ける、こういうわけでありますね。
  106. 中西実

    ○中西政府委員 そういうことになります。
  107. 倉石忠雄

    倉石委員 そういたしますと、よけいわからなくなるのは、どうしてこういう法律を新しくつくる必要があるかということです。
  108. 中西実

    ○中西政府委員 労働法上の正当、不当という範囲につきまして明確を欠きますので、そこで労働法上不当であるということを今度の提案いたします法案によつてはつきりしたいということでありまして、この八十五条の「正当の事由がない」というところからは、ただちには出て来ないというふうに考えております。
  109. 倉石忠雄

    倉石委員 労働法上の労働争議をした場合に、この公共事業令八十五条の適用はなるのでありますから、労働争議としてこういう行為をしても当然罰せられるのではないですか。
  110. 中西実

    ○中西政府委員 従来その点が明確を欠いておるということであります。
  111. 倉石忠雄

    倉石委員 そこで明確を欠いておるから確認規定のようなものをこの際設ける必要がある、こうなつて参りました。その点はわれわれも了解いたしましたが、しからば、また元にもどりますが、この電気産業と炭労だけに限つたということは、はなはだ片手落ちなやり方ではないですか。もつと基本的に考えるべきであつたと私どもが言うのはその点であります。しかし、それは今私ども申してもいたし方のないことでありまして、これは前国会において私からも要望いたしておりますし、また他の委員諸君からもこの点についていろいろ熱心な御質疑のあつたことでありまして、私どもは、政府として時間があつたにもかかわらずそういう処置にお出にならなかつたことを、はなはだ遺憾に存ずるのでありますが、本日は、先ほど赤松委員長と他の会派の方々と御相談いたしまして、この程度で打切ろうということでありますから御遠慮申し上げまして、私は次回に譲ることとし、本日は質疑を打切りたいと思います。
  112. 赤松勇

    赤松委員長 次会は公報をもつてお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十三分散会