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高橋(禎)
委員 どうもこの点について
小坂労働大臣は、明瞭な
答えをすると、何かとんでもないことになるんじやないかという不安があるように感じられてならない。私は決して
政府に対して、ことさらに悪意を持
つて質問しておるのじやない。
それでは私の尊敬する
小坂労働大臣に、私の真情をぶちまけて
お尋ねいたしたいのですが、
小坂労働大臣は、本
会議においても、また先般の本
委員会においても、こういうことをおつしやるのです。
労使関係の事項については、法をも
つて抑制、規律することはできる限り最小限とし、
労使の良識と健全な慣行の成熟にゆだねることが望ましい、こういうことを繰返しおつしやるのであります。ところが、これは率直に申し上げますが、はなはだ失礼な言い分かもしれませんけれ
ども、
小坂労働大臣からこの
言葉を聞くたびに、私は実は小坂労政というものは一体徹底して行くかどうかということを、非常に不安に思
つておるのです。非常に人柄のいい、教養の高い方にはありがちな、何か
はつきりしたことをするのをおそれる。胸中深く決するところがおありなんでしようけれ
ども、その表現等においても非常に遠慮されておるのじやないか、そういうふうに私は
考えて、これで一体現下のむずかしい
日本の労働問題を
解決して行けるかどうか。私は、お
考えがあるのだ
つたら大胆率直にこれを
国民の前にさらけ出して、この問題
解決のために
国民の協力を求めるという方途に出られなければならぬと思うのであります。それで、抑制規律することはできるだけ最小限としよう。この抑制という
言葉は、いかにも制圧とかあるいは抑圧とか、すなわち弾圧を連想させるような
言葉なんです。私はやはり抑圧、制圧というようなものは、民主主義の
日本においてとるべきものじやないと思
つておる。しかし規律ということは、これは必要なんです。これは
国家という大
社会の統一を保
つて行きますためには、どうしても規律が必要なんです。抑圧とか制圧とかは、もちろん遠慮しなければならぬけれ
ども、
憲法を守るという立場に立
つて——この
法律案に
関係のあるところを申しますと、
憲法は
勤労者の団結権なり団体交渉権なり団体行動権を保障いたしております。しかしこの保障は、どこまでも
社会公共の福祉に沿う限度においてということは、もう良識ある者は異論はないと私は思うのです。従
つて、決して自由放任の手放しのものではないのです。やはり一方において資本家に対して財産権はこれを保障する。しかしその内容は公共の福祉に沿うように定める。また他方
勤労者に対して団結権なり団体交渉権なり団体行動権を保障するが、しかしその権利の内容は公共の福祉に沿うように定めなければならないし、公共の福祉に沿う範囲内においてこの権利を行使しなければならぬということは、
確信をも
つて申し上げ得ることなんです。従
つてその公共の福祉に沿うか沿わないかというこの規律を守ることは、堂々と自信を持
つてだれに遠慮するというような態度に出る必要はないと思うのです。この限界線を見出すことに
努力して、
はつきりしたならばこれを決定するのに躊躇するところはないと私は
考える。ところが、ここでお伺いしたいのは、
小坂労働大臣は、何か規律するということと抑制するということと混同されて、そういうことを
はつきりすることはどうもよろしくないのだ、遠慮しなければならないのだと、こうい
つたような弱い
気持をも
つてこの問題に対処しておられるのではないかということを、はなはだ失礼かもしれませんけれ
ども、私は感ずるのです。ところが、そういう場合に起りますのは、一つのものの限界線を定めるわけですから、
確信を持たないで遠慮しながら限界線を定めるときに、案外遠慮したために正しい線を踏みはずすことがあるということを私はおそれる。その踏みはずしが、ときには
経営者の不利益となることもありましようし、ときにはまた
勤労者の不利益になることもあると思うのですが、えて今
審議されておるような
法律案の制定に関してそういうふうな
考えで行われるときには、いかにも
言葉では遠慮してお
つて、やさしい
言葉をも
つて、自分の行動を粉飾するような態度でなさ
つておられるが、
勤労者側にはとんでもない不利益を招くことになる。悪意があるとは申しませんが、そこを
はつきりした態度をおとりにならぬと、どうも規律と抑制とを混同されて、しかも遠慮しながら、
勤労者の不利益になるような線を定められるようなことになりはしないか。
一般の
労働問題解決のためにも、こういう問題は十分
考えなければならぬ問題だと思うのでありますが、こういう
経営者と
勤労者とのいわゆる公共の福祉という問題について、
小坂労働大臣はいかなる限界線を小坂
労働行政において打立てようとされるかという点を、ひとつ率直に
お答えを願いたいと思うのであります。