○清井
政府委員 ただいま小山委員からの御質問でございますが、さんまの問題を一例にと
つての
お話でございましたので、私からこれについてお答え申し上げます。さんまの問題につきましては、御承知の
通り北海道の沿岸漁民と東北関東の沿岸漁民との間の問題でございます。か
つて戦前においては、さんまの漁期は全国一本でございました。九月二十日ないし九月中旬を目標といたしまして一本だつたのでございます。その後戦後になりまして、情勢が非常にかわ
つて参りまして、特に問題になりましたのは、御承知の
通りさんまというものは、八月の初旬から
北海道の沿岸を通
つてずつと南下をいたして参りまして、太平洋岸を漸次南下いたしまして、ずつと四国、九州辺まで南下する、こういう経路をなしておるわけであります。従いまして八月の初旬から
北海道沿岸にはさんまの群が現われておる、こういうことになるわけであります。そのほか
北海道の沿岸漁民は、か
つてはいわしその他によ
つて相当の漁獲も得ておつたのでありますが、最近に至りまして、その他魚種の漁獲が相当減りまして、沿岸漁民はさんまでもとらなければや
つて行けないというような状況に
なつて来ておるのであります。またさんま漁業に従うところの
漁船の大きさを考えてみますと、
北海道のさんま漁業に従う船は二十トン以下が大
部分であります。約四百隻であります。そのほか二十トン以上の船がごくわずかであります。内地のさんま漁業に従う船は主として底びき網のかつお、まぐろの漁業をしておつた者が、その漁業の裏作的な関係で引続いて行うところの漁業でございまして、百トン以上の船が約二千隻以上でございまして、二百トン以上の船が約五十隻、そういうふうに、内地と
北海道では、ひとしくさんま漁業と申しましても、いろいろ状況が違うわけであります。
北海道の沿岸の漁民の問題、さんまの魚群の回遊の問題、それからさんま漁業に従う
漁船の大きさの問題、あるいは数の問題等、相当事情が違
つておるわけであります。かかる前提のもとに、実はさんま漁業につきましては、昨年漁業者同士が会談を
行つたのであります。役所がタツチするよりも、関係の業者によ
つて話合いをつけた方が、一番円満であるという観点から、
北海道の沿岸漁業者と内地のさんま関係の沿岸漁業者と会談をいたしまして、両者の円満解決の結果、
北海道は八月七日にする、内地は九月二十日に漁業をする、そういうことに
なつておるのであります。ところが、昨年になりましたところが、御本知の
通りさんまは六千万貫あるいは七千万貫とれたという大豊漁でございました。
北海道はその一割足らずの四百万貫であります。そういうような状況でありまして、相当魚価が下
つて来たのであります。そこで実は問題が起りまして、内地側といたしましても、
北海道が早目に出漁してさんまをとつたから、魚価がこんなに下つたんた、だから昨年約束したことは御破算だということと、
北海道と内地と漁期を一本にしろということを主張したのであります。
北海道といたしましては、せつかく昨年業者同士で話をきめたのではないか、なぜ話をかえる必要があるか、去年の話
通りやつたらいいじやないかという主張でありました。端的に申し上げますと、そういうことでありました。そこで私どもは昨年せつかく漁業者の方々が会談をされたのであるから、ことしも漁業者同士の話合いでや
つて行つたらよかろうということに基きまして、去る五月の初旬から漁業者にお集まり願いまして、三回、四回、数日にわた
つて、ほとんど徹夜で議論をいたしまして、漁業者の会談が行われたのでありますが、ただいま申し上げたような、内地は漁期を一本にしろ、
北海道は去年とかえる必要はないというようなことで、基本的に対立いたしまして、とうとう漁業の会談も、ものわかれに
なつたのであります。
そこで私どもといたしましては、漁期も切迫しておる関係上、これをそのまま放置しておくわけに行かない。そこで何とか水産庁で対案をつくらなければならぬということを考えまして、実は私どもといたしましてはいろいろ考えました結果、そのときの漁業者の方々の御意見を十分考えまして、そこで考えました線は、ただいまは八月七日と九月二十日で、四十四日開いておりますけれども、その差を一月にするということにしてか
行つたのであります。それから八月七日に
北海道が漁業を始めますけれども、これは少し早いから、少し落そうじやないかということで、八月七日の漁期を五日下げまして、八月の十三日ということにいたしまして、
北海道はことしは八月十二日から漁業を始める、内地はそれから一月遅れて九月十二日に始めるということにいたしたいと思
つております。従いまして、
北海道は昨年よりも五日おそくなりましたし、内地は昨年よりも八日早いということになりまして、四十四日の差が三十日に
なつたのであります。一月にいたしました理由は、さんま漁業は、月が照
つておりますとできないのであります。やみ夜でないとできないのであります。やみ夜からやみ夜へ、約一月という計算をいたしまして、大体一月なら公平であろうということで一月という計算をしたのであります。実はこの計算はぽこつと水産庁で
出したわけじやありませんで、漁業者の会談の間に、ちらちらと、こういう案はどうであろうかというように実は
出しまして、今私が申し上げたような案としても、やはり方向としては、そんなところにおちつこうという御意向があつたのであります。それを私どもはつかみまして、両方に公平に、四十四日の差を三十日にし、
北海道は五日下げるということにいたした方が、
北海道側にと
つても内地側にと
つても、やはり妥協の線としては妥当なところであろう、こういうように考えた次第であります。
北海道の方に言わしめれば、すべて損になる。漁期は五日下るし、内地と四十四日の差が三十日になることは非常な損になるが、内地側から言わせれば、一本化という線がくずれましたので、また損になるということで、長い間の紛争の結果、また皆さんの御意向を、大体こんなところで納めたら、納まるのではないかということでやつたのがこの線であります。
私どもといたしましては、この改正はさんま漁業取締規則という規則の改正になるのであります。この改正は、中央漁業調整
審議会がございまして、これは漁業法に基くところの重要規則、法律等を諮問する機関であります。その中央漁業調整
審議会に、土曜日にただいまの件を提案して、さんま漁業取締規則の改正案を付議いたしました。同
審議会は、数時間にわたりまして慎重御
審議になりました結果、結局
政府から
出しましたところの諮問案が妥当である。但しきわめて重要な問題であるから、すみやかにさんま漁業の問題について協議して、しつかりした案をつくれ、本年は漁期が迫
つておるから、これでよかろう、こういう実は結論になりましたので、この結論に基いて今後改正に進みたいと思
つております。