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芦田委員 竹島の問題についての御返事がありません。まことに遺憾でありますが、結局
政府は何もしなか
つたし、今後もまた何もしないという御
方針と了解します。
もう
一つつけ加えて申します。先般
木村保安庁長官は、
保安隊と
海上警備隊においては志気旺盛だと申された。今日の
保安隊は
吉田内閣の私生児である。私生児であるばかりでなく、世間ではこれを畸型児だと言
つております。なるほど
軍隊に似て
軍隊にあらず、警察に似て警察にあらずという姿、どう見ても日陰者といいたい姿である。精神的に日陰者である結果は、
木村長官が志気は旺盛であるといわれても、その志気旺盛の裏に恐るべき絶望感がひそんでおる。彼らの多くは迷
つております。少壮幹部の偽らない告白を聞いてごらんなさい。彼らは自国を守る熱情をも
つて、薄給に甘んじてはぜ集ま
つて来た青年です。それが世間から白眼視され、肩身の狭い思いで、制服さえも町の中では身に着けることができない気持でおる。もつと重大なことは、彼らが国に忠誠をささげんとする心持を表わすことさえも、差控えなければならないような境遇におる。今の
保安隊、
海上警備隊の青年たちは、この現在のこんとんたる世相の中にあえぎながらも、身を張
つて民族の自由と
独立を守ろうという熱情に燃えて集ま
つた純情な青年なのです。彼らをして前途に希望を持てないという絶望感に陥らしめるは、まことに容易ならぬ損失だと思います。私はあえて御返答を得ようとは思いません。どうかこの点をとくと
考えていた、だきたい。あの純情に燃えた青年たちを私は殺したくありません、
最後に
一つだけつけ加えて私の
質問の結論といたします。
吉田総理が老躯をひつさげてこの難局に際して、国政燮理の任に当ろうとされる意気は、私は深く了とするものであります。
吉田総理の外々たる憂国の念慮については、何人も疑うものはありません。だが今日までの施政の跡を顧みて、われわれはときにはなはだ残念だと思うことがあります。私は民主主義の運用に最も大事なことは、政治家のリーダーシツプ、すなわち政治的指導力を発揮すること、反対
意見に対しては、寛容の精神をも
つて臨むことだと信じておる。特に今日の政治に欠けておるものは、政治の指導力であります。なかんずく
国防外交の指導についてこれを痛感いたします。
吉田内閣は、なぜもつと率直大胆にその情熱を傾けて、所信を
国民に披瀝し、
国民の理解と協力とを求めることに努力せられないのであるか。軍備の問題でも、
軍事援助の問題でも、ないしは基地供与の問題でも、
国民は問題の核心をつかむことができない。いたずらに反米運動の波にあおられて右往左往しておる。善良な
国民は、勢い身近の屋根の上から大声でどなるものに引きずられて、合理的な帰趨が見つからない悩みに生きておる。
日本の
現状は、思想的にも経済的にも決して
政府が楽観せられるようななまやさしい状態ではありません。各方面ともに思い切
つた革新を必要としておる。しかしいろいろと思い悩んで、最後には今の政治の行き詰まりを打開しなければどうにもならぬというところに舞いもど
つて来る。これがその結論でしよう。今日ほど
国民がよき政治、力強き政治指導を待望しておるときはないと思う。私は
吉田総理が心を平らかにして、野人の言に耳を傾けられんことを要望いたしまして私の
質問を終ります。ありがとうございました。(拍手)