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1953-07-14 第16回国会 衆議院 予算委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十四日(火曜日)     午後一時四十五分開議  出席委員    委員長 尾崎 末吉君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 川崎 秀二君    理事 八百板 正君 理事 今澄  勇君    理事 池田正之輔君       相川 勝六君    江藤 夏雄君       小林 絹治君    迫水 久常君       庄司 一郎君    高橋圓三郎君       富田 健治君    中川源一郎君       中村  清君    羽田武嗣郎君       葉梨新五郎君    原 健三郎君       船越  弘君    本間 俊一君       八木 一郎君    稻葉  修君       小山倉之助君    河野 金昇君       櫻内 義雄君    中村三之丞君       古井 喜實君    勝間田清一君       福田 昌子君    武藤運十郎君       八木 一男君    横路 節雄君       和田 博雄君    加藤 鐐造君       小平  忠君    河野  密君       中居英太郎君    平野 力三君       三宅 正一君    石橋 湛山君       河野 一郎君    黒田 寿男君       福田 赳夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         文 部 大 臣 大達 茂雄君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         農 林 大 臣 保利  茂君         通商産業大臣  岡野 清豪君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         建 設 大 臣 戸塚九一郎君         国 務 大 臣 塚田十一郎君         国 務 大 臣 安藤 正純君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         内閣官房長官  福永 健司君         法制局長官   佐藤 達夫君         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君         通商産業事務官         (企業局長)  中野 哲夫君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 七月十四日  委員北れい吉君辞任につき、その補欠として石  橋湛山君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算  昭和二十八年度特別会計予算  昭和二十八年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 尾崎末吉

    尾崎委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年度一般会計予算外二案を一括議題といたします。総括質疑に入ります。中村三之丞君。
  3. 中村三之丞

    中村(三)委員 予算審議もだんだん終りに近づいて参つたのでありますが、各政党は、予算案に対するその態度を決定しなければなりません。われわれ在野党には独自の政策があります。政府また予算編成方針を有せられ、与党また政策を持つておられます。吉田内閣が衆議院において単独絶対多数を有せられるとするならば、問題はありますまいが、吉田内閣は事実上相対的多数を有するにすぎません。見方によりましては、不安定政権であるといわなければならないのであります。そこで政府は、予算上における自己の方針をあくまで貫徹せられんとするのでありますか。また調整的態度をもつて予算の通過をはかられんとせられるのでありますか。総理大臣所信を承りたいのであります。
  4. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。政府としては、提出したこの予算案をもつて、一応この線で参りたいと考えております。しかしながら予算審議の間において、もし適当な案があり、また政府のとつておる方針に沿うものがあるならば、喜んで委員会あるいは議会の意見に耳を傾ける考えでおります。何となれば、今日最も急を要するものは、政界の安定であり、従つて財界の安定でありますから、政府としてはあえて原案に固執はいたしません。もし理由のある、もつともと考えられる修正があるならば、これに対しては十分耳を傾けて研究をいたします。
  5. 中村三之丞

    中村(三)委員 われわれの予算上における考え政策は、国民的要求にかかるものであり、従つて政府はこの点に深く考えらるべきであると思います。吉田総理大臣外交界の長老でありますが、われわれに響く外交上のお考えは、外交由来秘密性のものである、交渉の妥結がなつた後に発表すればいいのであるというようなお考えを持つて来られたように思います。私は、MSA問題のごとき、国民注視の問題が起つております際には、外交交渉経過を刻々国民に知らしめられて、国民意見を徴する、あるいはその支持を受けるということが、今日の民主的外交であると思うのであります。過去のことは私は問いません。ことに吉田内閣は相対的多数にすぎないのでありますから、従来のような独善秘密外交で押し通すことは事実できないはずであります。この点について総理大臣の御見解を承りたいのであります。
  6. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。わが内閣が絶対多数を持つておるといなとにかかわらず、国民輿論傾向に対して十分注意をすべきことは当然であります。私の外交はあえて秘密独善と言われるが、これに対する批評は御自由でありますが、秘密がいいといい、公開がいいといい、これは極端に申せば両方悪いのであります。かつてソビエトは公開外交を唱えておつた。ところが今日最も秘密外交をいたしておるので、要は交渉を妨げざる範囲において、国民交渉経過を知らすべきことは当然であり、私はそれに努めております。交渉の結果のみを公表することを私の方針といたしておつたわけではない。また独善と言われますが、ひとりよがりではないのであります。輿論傾向あるいは国論の向うところについては、これまでも十分注意をいたしたつもりであります。
  7. 中村三之丞

    中村(三)委員 われわれの感ずるところはそうではないのであります。われわれは外交を暴露しようというものではありません。ソ連秘密外交なつたと言われますが、それはソ連は全体主義的独裁政治の国で、好むべからざる国であるのであります。日本民主主義国家として発展する、総理大臣みずからも日本民主的発展を希望し、それを主張せられるとするならば、外交公開的でなければならない、これが私の申し上げるところでありまして、この点、特に総理大臣のお考えを煩わし、ことにMSA問題についてはさよう進められんことを私は要求いたしておきます。  次にお伺いをいたしておきたいことは、ソ連のベリヤ追放事件なるものは、おそらく国際外交の上において注意を要する事件であると思います。こういう海外において起りましたる事件国会を通じて広く国民に知らしめ、また時の政府がその見通しはつきりせられることが、国民外交の第一歩を感ずるのでありまして、ここに外務大臣より簡単明瞭にお話を願いたいのであります。
  8. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 実は今度の問題は、ほんとうの真相というものはおそらくどこでも把握できていないだろうと思います。大体において今までの情勢から判断して、こうであろう、ああであろうということにすぎないのでありますが、しかし結論的に言えば、これは一種の権力闘争であつたことは間違いないわけであります。その結果において、ベリヤ氏は今まで緩和政策を主張して来たから、あの人がいなくなつて今度はまた強硬政策に出るであろうとか、朝鮮の問題も変化して来るのではないかというような、いろいろな説があるわけでありますが、私どもが研究しました結果は、ソ連が持ち出しました平和攻勢と称する政策は、新しい政権になつてマレンコフ氏も了承の上に行われたものと考えられますので、べリヤ粛清ということによつてソ連外交政策がここで一新するというようなことは考えられません。依然として従来と同様に平和攻勢を続けて来るであろう、従つて大きな変化はないであろう、少くともここ当分は同じような方針で来るであろう、こう私ども考えております。
  9. 中村三之丞

    中村(三)委員 次は、本委員会における総理大臣お答えによりますと、MSA援助受けてもよいという底意を持つておられるようであります。一時その経過を隠しておられたようでありますが、わが党の委員質問によつてわかつたのですが、着々進めておるようでありまして、現在この予備的交渉がどこまで進んでおるか、どういうふうになつて行くか、またそれがために近く臨時国会を開かれるという考えがあるのかどうか、お伺いいたしたいのであります。
  10. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 MSAの問題につきましては、先般発表しました往復書簡がありましたが、これをわれわれ判断いたしまして、究極のところは今後交渉してみなければわかりませんけれども、一応の考えとしては、こういうふうなものならば援助受けたいという希望を持ちまして交渉に入ろうとしております。交渉自体は、アメリカ側でおそらくいろいろの準備の必要があつたのでありましよう、まだやつてはおりませんがもうほとんど準備完了したように聞いておりまりので、ここ一両日中に第一回の交渉を始め得ると思つております。
  11. 中村三之丞

    中村(三)委員 アメリカ予算は七月から始まりつつあります。そこでこの国会中に話がまとまるかまとまらないかは別問題といたしましても、政府が何らかの結果を得られた場合においては、やはり臨時国会はお開きにならなければなるまいと思いますが、いかがですか。
  12. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 もちろん交渉の結果にもよりましようが、臨時国会という問題になりますと、いろいろほかの事情も考えなければなりませんし、これは閣議等で決定される問題でありまして、今からどうということは私から申し上げられませんが、ただできるだけ早い機会に国会に提出して承認を求める考えでおりますということだけは申し上げられると思います。
  13. 中村三之丞

    中村(三)委員 MSAをわれわれが見てみますと、これはだれしも気のつくところでありますが、軍事援助経済援助技術援助の三本建になつておるようであります。そうして相互安全保障法とともに、経済援助法相互防衛援助法国際開発法などが総合的に発動されるものであると思います。従つてその発動の方向は、今日われわれも想像し、また判断し得るのであります。私ども考えは、この援助法は三本建であるけれども軍事援助中心であつて、このため経済力の増進をする。それがため技術発展をはかる。すなわちMSA援助対象となるところの経済防衛経済であり、その技術軍用技術である、かように解釈せられるのであります。ことに今から二、三年前、ユーゴスラビアアメリカとの間に結ばれた相互防衛協定アメリカ大使ユーゴスラビア外務大臣代理との間に交換された書簡を見ましても、ユーゴスラビアの早魃で食糧が不足をしておるということは、ユーゴスラビア防衛力を弱めるものである。ゆえにアメリカはこれを強めるため援助をするのであるという意味のことがありました。これは私が英文より意訳したのにすぎませんが、大体そういうようにいわれておる。また外務省アメリカ大使館との間に交換せられてわれわれに発表せられたあの文書でありますか書簡でありますか、これらを見ましても、外務省の、おそらく外務大臣でありましよう、外務大臣経済力安定発展先決要件であるとの問いに対して、アメリカ側経済力安定発展一つエレメントである、要素であると答えております。もとよりその要素という前にエツセンシアル言つて実質的根本的要素言つておりますが、この点についても、私はここで外務大臣に明らかにしていただきたいのであります。外務大臣見解を承ります。
  14. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 MSA援助は、おつしやるように軍事的の援助がその中心をなしておりますが、しかし特別の場合には純然たる経済援助だけの場合もあるのであります。たとえばアメリカポイントフオアのごときものは、これは遠まわりしてぐるぐるまわれば結局防衛力ということになるかもしれませんが、しかしポイントフオア考え出しましたときは、未開発地開発ということでありまして、これをそのまま取入れておりますから、ポイントフオアのごときは私は純経済援助だと思います。しかし日本の場合はポイントフオアは適用されるわけに行きませんから、軍事的というのはちよつと誤弊があるかもしれませんが、一般的に言えば、軍事的援助の範疇に入ると思います。そこでこちらの質問は、先決であるといつて聞いたのに対して、向う必須条件と訳しましたが、エツセンシアルだ、こう言つて参りました。先方の言うのとこちらの聞くのとは全然一致をいたしておりませんが、これはアメリカ側見解を述べたのでありますから、一致しないでもいたし方がないのでありまして、ただその内容がわれわれから見てさしつかえがなければいいわけであります。私ども先決条件というのに対して必須条件と答えておりますが、これでも私はさしつかえない、食い違いはありますが、先方考えはよくわかつておりますから、さしつかえない、こう考えております。
  15. 中村三之丞

    中村(三)委員 私は外務大臣の御見解のようでないと思います。向う底意は、プリーレクイジツトということを向うエレメントという言葉を使つておる。これはわれわれの注目するところであります。そうしますと外務大臣は、このMSA経済援助だけをお受けになるというお考えでございましようか、三本お受けになるというのでしようか。ちよつと確かめておきます。
  16. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の質問は、MSA援助経済的援助かという意味質問ではないのでありまして、われわれとしては保安隊なり警備隊なりに対する武器その他の完成品援助がおもであろうと思つております。つまり防衛力増強ということがおもであろうと思うけれども、それに対しては経済の安定ということが必須の要件である。つまり日本経済がうまく行かなくては、防衛力というものはちやんと強化することができないのだ。そこでそれをしつかり頭に入れて、日本経済が同時に立ち行くような考え方をしてもらうことが必要であるという質問に対しまして、その通りだと実質的には答えた、こうわれわれは判断しおります。
  17. 中村三之丞

    中村(三)委員 相互安全保障法を読んでみますと、至るところに、一国の軍隊である、あるいは軍用完成品である、あるいは軍用装備の調達というような文字がある。一国の軍隊はアームトホーセズ、そこでこの法律の目標とするところは、被援助国に対する防衛軍独立軍隊の拡充、それの完成相手とするのでありまして、保安隊のような警察隊防衛軍のあいのこのようなものを相手としているのではない。よし相手としても、それを強化するという方向に導こうとするものではないとも私ども考えるのでございますが、外務大臣はどういうふうにお考えでございますか。
  18. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私もその通りだと思います。MSA目標は他国の軍隊対象としております。しかしこれは、世界中軍隊のない国というのはないのでありますから、あたりまえのことだと思います。ただ日本の場合は憲法規定がありまして、軍隊を持たないということになつておりますから、これは世界中唯一とは申しませんけれども、ほとんど唯一例外と言い得る国であります。従つて日本に対しましては例外的措置を講ずる必要が出て来るのでありまして、現に伝えられておりますダレス長官証言の中にも、日本には軍隊を禁ずる憲法があるので、それを頭に置いて見るべきである、それから日本に対してはただいまの保安隊対象として考えているということを言われておりますから、日本の場合は例外であつて、ほとんど世界唯一例外的事実である、こう考えます。
  19. 中村三之丞

    中村(三)委員 しかしつい数日前のダレス国務長官上院歳出委員会における証言を見てみますと、純粋なる防衛軍的性質のものである、これが今後創設せらるべきものであるということを言つておる。私は英語の原文を持つておりませんからわかりませんが、とにかく純粋なる防衛軍的性質ということ、ここに私たち考えなければならぬ。政府もこの点をはつきりせられないと誤解受けるのではないか。防衛軍的性質である。これは除々に明らかになつて来るでありましようが、私たちは念のため外務大臣にお伺いいたしておかなければならない。いかがですか。
  20. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは日本でもたいへん新聞等で問題になつたのは御承知通りでありますが、それがアメリカにむし返されたと見えまして、本日入手しました報道によりますと、ダレス長官は自分のアメリカ国会における証言が非常に誤解されたと思われるので、その誤解を解くといつて国務省から発表をいたしております。それによりますと、たとえば十個師団と言つたのはどういう意味でもるとか、日本についてはただいまのところ保安隊考えているとかいうようなことで、今お読みになりましたのと同様かどうかわかりませんが、新聞にずつと出ましたダレス証言というものに対して誤解を解くような声明をいたしておりまして、もうきようの夕刊にもさつき見ましたらちよつと出ております。
  21. 中村三之丞

    中村(三)委員 この点が私は微妙な動きを招来すると思います。われわれはこれに注意を要すると思います。  総理大臣伺いますが、MSA援助はわれわれの受け慈善事業でもない、MSA援助自由世界におけるともに存しともに助けるというのが、根本主義であり原則であらなければならぬと思います。従つて交渉なすつておられる場合ありするならば、強大国たるアメリカでありますが、われわれもまた今日独立国家であります。ゆえにこれの交渉にあたりましては、行政協定のようなあとに論議を残す、あるいは一部の人々から、またわれわれも国民的感情として考えます国民的屈辱のような跡のないように、共存共助の立場において、主張すべきは主張するという態度をもつて進まなければならないと思うのでありますが、総理大臣の御決意を承つておきたいのであります。
  22. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。今の御意見は当然なことであつて政府としてはいささかも屈辱的条約を結ぶ意思をもつて交渉はいたしておらないのであります。また同時に米国政府日本に対して無理をしい、もしくは憲法に違反するとかあるいは日本において受入れられないようなむずかしい条件は私は出して来ないと想像いたします。何となれば今日日本独立完成し、もしくは経済自立完成して、日本が太平洋において共産主義に対する防衛第一線たることを米国政府は念願といたしているのでありますから、そこに無理な条件は持ち出すことはないのみならず、またお話のような屈辱的条約を結べば国民はこれを承知いたしますまいから、政府はむろんかくのごとき条約は結ばないつもりであります。
  23. 中村三之丞

    中村(三)委員 本委員会におきましては賠償問題につきまして論議が行われました。私はこれを繰返しませんが、ただ言及せられない一つの問題がある。それは旧南洋統治地域における沈船の引揚げにつきましてはその後どうなつているかということでありまして、これは外務大臣よりお答え願います。
  24. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これにつきましては平和条約におきまして、その関係国日本との間の協定によつて処分されるということになつております。ところが先般、ちよつと日は忘れましたが、ハワイの方のアメリカの官憲からこの艦船の引揚げについての入札をするという報道がありましたので、これは二国間の協定ができてからの話でなければならぬわけでありますので、その点について実情を調査するとともに、この平和条約規定等を指摘することをただいま命じておりますが、ただいまのところ、まだその結果は言つて参りません。
  25. 中村三之丞

    中村(三)委員 大蔵大臣にお伺いをいたします。政府予算編成方針は、朝鮮事変等休戦に伴う日本経済界の変動については、あまり考慮に入れられてないように思うのであります。暫定予算なら別でありましようが、来年三月までの予算を編成せらるるにあたりましては、これは考慮に入れられなければいけない、こういうふうに思うのですが、どういうふうにお見通しですか。
  26. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 予算書をごらんのごとくに、若干の考慮はいたしてございますことは御承知通りでありますか、しかし私どもは二十八年度中には多分急激な変化はない、こういうふうに見通しておりますので、またこれが二十九年度になりますと、相当な先へり変化等を識り込んだ政策を立てなければならぬと考えますが、当面二十八年庭中には国際収支その他のものを見ましても、そう急激な変化はない、かように考えておりますので、時勢の推移に伴うだけの必要な調整行つた程度にとどめたのであります。
  27. 中村三之丞

    中村(三)委員 現に最近財界において休戦に伴う波動が起つている。不渡り手形の問題であるとか特需会社の整理問題とか、これは今後どういうふうに発展して行くか、これをどうして食いとめて行くか。おそらく大蔵大臣はこれを食いとめるのに全力をあげておられると思いますが、またこれが波及して戦争反動景気に広がる、不景気になるようならば、財政方針は相当行き詰まつて来る。この点大蔵大臣予算編成にあたつて甘い考えであるということは私ははつきりしていると思う。そこで財政の規模を一兆円以内にとどめられた。もとより特別会計がありますから、統計を計算すれば一兆八、九千億円になるでありましよう。私は大蔵大臣にお伺いしたいことは、今日の財政は単なる財政ではない、今まで言われておつた広義財政というものよりももつと砕けて、予算そのもの予算編成そのもの一つの進歩した会計、こういう形で行くことが経済発展にマツチするゆえんであると思います。ゆえにわれわれは今日の予算社会保障費を優先的に計上する、教育費を確実に計上して行く、ことに生産予算の推進ということに重点を置いているのであります。生産予算というものは予算を通じて生産力増強をはからんとするのみならず、これによつて経済の基盤が拡大し、産業経済発展するにつれて、完全雇用方向に近づけて行く。予算に、消極的なる失業対策というような経費は必要であるかもしれませんが、それよりも生産予算の実体と掲げ、生産予算を通じて完全雇用の理想を達するということが、今後の方向でなければならぬと私たちは信じておるのであります。さらに相当お金がばらまかれるという。しかしこれは私は、今まで予算不成立ために早魃状態になつてつた日本財界を、秩序的に潤すことができるとするならば、散布超過一千億円あえて私はびつくりする必要はないと思う。ただこれを秩序的に上手に散布して、これが予算が遅れたために、待つておる日本財界経済に潤いを与えるということは、私はこれを遠慮する必要はないと思う。大蔵大臣財政金融軌道化と申ますか、そういうことをおつしやつておりますが、私はこの生産予算意味からいつて、この点は勇敢に実行せられていいのじやないか。ただ申し上げておきますが、われわれは極端なるインフレーシヨンを排するものであります。同時に極端なるデフレーシヨンも排するのであります。ゆえにこの予算実行にあたりましては、私は大蔵大臣が、秩序的にこの予算生産予算として、国民経済を潤すという方向に努力せらるべきであると思うのでありますが、大蔵大臣所信を伺つておきたいのであります。
  28. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 大体ごもつともな意見と承つたのであります。私ども予算編成にあたりましては、申すまでもなくインフレにも持つて行かない。しかしデフレにも持つて行かない。また日本を、国際収支の均衡を目的乏して、できるだけすみやかに自立経済に持つて行きたい。こういうような考え方から、常に財政投融資等もその面から考えておつて、ごらんのごとく基幹産業、すなわち電源開発であるとか、造船であるとか、あるいは石炭、鉄鋼その他のものに巨額の投融資をしておることは、御承知通りであります。さようなことによりまして、一面あるいは財界の一時的の不況から起つて来るような失業者も、漸次それに吸収し得るような道も開いて行きたい。特に食糧増産対策、公共事業等に、相当巨額の金を投じておるのもそれがためであります。全面的に見まして、私どもが基幹産業に特に重点を置いておるのは、一般のものもこの影響によつて漸次国際競争力を力づけて行く、こういうような点から日本自立経済をすみやかならしめる、こういう点が一番のねらいになつておるのであります。従いまして私どもは、この戦後数年間というものは、日本が大体においてインフレーシヨン傾向に向つてつたことは、中村さん御承知通りだが、その後やや安定するような条件がいろいろ加わつて来ておる。従つて単に金融とか財政とかいうものを切り離さずに、財政金融のいわゆる一体化という考えのもとに、多少弾力性を持たせて、日本経済あるいは財政を処置して行くことが必要であろうという根本の考え方から、さような措置をとつておる次第であります。
  29. 中村三之丞

    中村(三)委員 現内閣は、ことに大蔵省は、減税公債をずいぶん熱心に固執しておられる。これはどうなつたか私は存じませんが、一応議論をします。減税公債なるものは、西ドイツの財政援助法を大蔵官僚がまねたものである。そこで昨年以来一つの成案として発表せられておりますが、募集総額や条件をしばしば変更し、しかも今日会計年度は三分の一も進んで来ている。およそ公債というものは、これを買うという魅力がなければならない。ちようど公債は花嫁のようなものだと私は思う。ところがこの減税付公債という花嫁さんは、もうもみくしやにされてしまつた。これがかりに実行されるとして——私は修正案はどうなつているか存じませんが、それを離れて、こんなくしやしやな減税公債を消化する見込みがおありですか。結局は金融機関に持つて行き、金融機関だけ減税の恩典をほのぼのと浴するというだけにすぎないと思うのでございますが、いかがでございますか。
  30. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 減税国債については、いろいろな議論があることも、私は承知いたしております。しかしながら私どもは、これをいわゆる投資特別会計に移して活用するということが、今あなたのおつしやつた、いわゆる生産の増強に大いに役立つわけである。しからば何もこれは魅力がないじやないかと言われますが、むろんそれは議論の点はもみくちやにされているかもしれないが、しかし魅力のあるということは、減税という大きな魅力があるのでありまして、それによつてどもは、今お話なつた点からいいますと、金融機関に大体百二十億を予定しており、そのほかの一般のものに八十億を予定いたしておるのでありまして、合計二百億で、当初の三百億は、お話のごとくに大体三分の一過ぎたから、その消化の点を考慮いたしまして、二百億としている次第でございます。
  31. 中村三之丞

    中村(三)委員 私は減税公債は魅力がない。結局法人に対して税務署が強制募集すると、私は断言いたしておきます。  次に予算の問題で注目を要することは、おそらく保安庁予算であると思います。保安庁予算を見ますと、二百八十億円の翌年度繰越しと、三十二億円の不用額を持つている。昨日第一分科会において、この内容を保安庁政府委員より承つてみますと、ますます保安庁予算なるものは消化し切れないものである。不消化なものである。ことに昨年来の使い方を見てみますと、相当濫費が行われている。その積算の基礎においてずさんである。総額において過大である。ことに軽飛行機を五十機買うといわれた。発動機でありますか、これが更新のため五十六基。艦船を建造せられるといわれた。そこで保安庁長官にお伺いいたしますが、この多額の繰越額と数十億の不用額は、あなたの保安庁の予算の不消化である。もつと強く言えば、不始末である。こなれ切れない予算を編成したというところに、保安庁長官は責任がなければならない。ことに飛行機、艦船をどうしてこしらえて行くかということを、保安庁政府委員伺いますと、いや国産にするとか、外国に注文するとかはつきりしない。日本に、たとい軽飛行機でありましても、これを引受けるところの航空工業が今日発達しておるかどうか。敗戦の結果、日本の航空事業はめちやめちやにたたきつぶされております。そういうところへ持つてつて、もとより国産において今後航空機の製造を進められるということをアメリカあたりと話合いしてできるかもしれませんが、今日は航空工業能力は非常に弱い低調なものである。しからばこの百機に近い飛行機、この船舶はこれを外国に注文しなければなりますまい。ことに船舶のごときは総合工業であります。飛行機またしかりでありましよう。この国産が不可能であるとするならば、外国に注文をする。われわれはこの予算をかりに通しましても、来月実行になる、それから会計年度は来年三月、はたしてそういう計画があなた方こなし切れますか、また繰越しになるか、うやむやになつてしまう。私をして言わしむれば、保安庁予算は胃腸病にかかつておる。胃腸病をなおすためにこの予算を削減するというのがわれわれの考えである。われわれは保安庁経費はあたかも往年の臨時軍事費の放漫さに似ておるという断定を下しておるのである。ゆえにこの保安庁経費を健全なものとして行きたい。これが私たちの精神であります。保安庁官はわれわれの志をありがたくお受けにならなければいけない、いかがでありますか。
  32. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。二十八年度予算におきまして、陸上の方で五十機、海上の方で五十機、艦船その他相当数をつくることを計画いたしまして、予算に要求しておる次第であります。しかし何分にもかようなものは、でき上つたものをすぐ買うのと事違うのであります。計画は早く立てておかなければなりません。しこうして十分なる計画のもとに、よく性能を発揮し得るものをつくらせなければいけない、ここに悩みがあるのであります。そこらですでにでき上つてものを買うのとは大いに事違うのであります。飛行機にいたしましても、大体の計画は立てておりまして、最も適切なものをつくりたいという考えでやつておるのであります。そこでただいま仰せのごとく、これを外国から買う、あるいは内地でつくらせるか、これはいくらでも考え方はありましよう。しかしわれわれといたしましては、なるたけ金のかからない、しこうして性能のよいものを手に入れたいとせつかく考えておるのであります。そこで日本の飛行機の工場は、終戦後めちやめちやになつておる。これは一面において理由がありましようが、ただいま着々として復興にいそしんでおつて、あるものについては、これは計画通りの設計ができ得るものと私は考えておるので承ります。そこでそのうちの一部については、やはり日本の将来の航空工業発達の見地からつくらせてみたい。あるいはまた一面において、早く手に入れたいという見地からは外国のものを買つて行きたい、こう考えて借ります。船にいたしましても、でき上つた船をすぐ買うのではありません。十分に設計をいたしまして、そうしてその設計のもとに、なるたけ性能のいいものをつくり上げたい、こう考えておる次第であります。この設計にはやはり相当の日数がいることは当然であります。計画だけは立てておかなければならぬ。すぐ計画を実行いたすということはできかねるのであります。そこに相当の日数のあることを御了承願いたいのであります。二十八年度予算においては、この計画を立てて、その予算を請求いたしておる次第であります。その金の支払いは、それができ上つた後において払うのであります。その間のずれはやむを得ないと考えております。しかしわれわれといたしましては、国費を濫費しないように十分性能のいいものをつくつて国家のお役に立てたい、こう考えておる次第であります。
  33. 中村三之丞

    中村(三)委員 あなたの御答弁は傾聴に値しない。(笑声)それは政府委員にしたつて、あなたにしても、こういう飛行機を買う、艦船を買う、一体艦船についてそういうものの注文をなさる船台の余裕がどれだけあるということを計画なさつておられますかと、きのう聞いてもわからない、言わない、進んで言うておられない、また国産機を買うというなら、どういうところへどういう注文をするか、大体いつごろ完成できるのだ、また外国からお買いになるならば、どういう外国のものを買うのだ、これがはつきりわからなければならぬじやございませんか。そうしてただ計画は、飛行機をやるのだ、中にはあのヘリコプターも買うんだ、何でも買うんだ、まつたくあなた子供みたいじやありませんか、保安庁長官の予算編成は……(「国費の濫用だよ」「おもちやの兵隊だもの」と呼ぶ者あり)これではわれわれは、ほかの問題は知りませんよ、私は予算の上において木村長官を信用することはできない。(「その通り」)  次は通産大臣にお伺いいたします。通産大臣は産業の合理化ということを叫ばれておるが、一体現内閣が今なぜそういうことをあわてまくつて言われるのか。一体朝鮮戦争というものは五年も十年も続くものじやない。いつかはやむのであるということを考えておかなければならない。しかるに、朝鮮景気に酔いしれた——財界は、これは別ですよ。この朝鮮景気に政府まで酔つてしまつて朝鮮休戦に伴うこの日本経済界の変動に対して、何の考えもなかつたのじやないかと思います。朝鮮ブームに昼寝をしておられたのが吉田さんであると私は思う。(「今でも昼寝している」と呼ぶ者あり)今はどうか存じませんが、そういうところへどかつとやつて来た。そこであわてて産業の合理化であるとか、コストの引下げなどと言い出して来た。私は岡野さんに伺いますが、コストの引下げもいいです。しかしながら、日本の生産が国際水準にはるかに離れて優秀でなければならない。今後の日本の貿易を振興するにしても、産業経済発展するにしても、安くて悪い品物をいくらおつくりになつてもだめです。値段において多少高くても、この品物は長持ちする、その機械は一分の狂いもない、こういうところに日本経済信用か海外において高まるのである。こういうことに力を入れてもらわなければいけない。由来官僚諸君のやり方は、一つのことが起ると、すぐそこへ走つてしまう。そして全体の総合計画を見ない、こういう欠陥があると私は思うのである。岡野通産大臣の御答弁をお願いいたします。
  34. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。産業の合理化ということは、朝鮮休戦ができそうだというために始めたことじやございませんで、もうすでに過去二、三年来産業合理化のために、設備の近代化とか技術の向上とかいう方面に相当思いをいたしまして、いろいろの施策を講じておる次第であります。その点につきましては、むろん考えておるのでございますが、お説の通りに、今日本で、コストは高い、今後国際の貿易場裡で、競争が非常に激化してくる、そういう場合には、われわれといたしましては、ますますこれを下げて行かなければならぬというので、なおあらためてそれ以上の合理化政策考えておる次第であります。一例をあげますれば、今度独禁法を改正いたしまして、合理化カルナルもつくつていただきたい、こういうようなことにいたしておる次第であります。
  35. 中村三之丞

    中村(三)委員 紙の上の計画じやだめなのです。ことに今のあなたの御演説、この間あたりの御演説を聞いてみますと、みな部下の官僚の進言だけなのです。広く財界相手に呼びかけなければだめです。そこで、この点を一つ申し上げてお考えを願つておきます。産業の合理化というものは五つの方向がある。第一は機械設備の近代化をはかること、第二は、原材料を確保すること、これには安い原料を買い入れることである。アメリカあたりから、高い原料を買い入れたつてしかたがない、第三は、原材料の原単位の改善をはかることである。第四は、労働生産性の向上をはかることである。第五は、経営管理の高度化をはかることであります。通産大臣の御所見を承りたい。
  36. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。今、一、二とおあげになりました設備の近代化、これはすでに着手しておりまして、予算措置もいたしております。それから原料を買うのに、その買付地を選定しなければならぬ。これもお説の通りでございまして、できるだけその方面に力を尽しておるわけでございます。それから、買値でございますが、これは相手方のあることでございまして、その買値に対しましては、むろん各種の業者が相当やつておると思いますが、よく日本の輸入業者が、自分自身で競争しまして、外国の輸出価格をせり上げるということもございますので、法的措置を講じて、今回これを規制したいと考えております。労働力の強化は、むろんでございます。とにかく生産というものは労働力が一番大事なことであります。その辺のところは、よく心得ております。経営の合理化につきましても、むろんわれわれといたしまして、いろいろな手を打つております。ただおぼしめしのような非常にいい結果が、この点において起きておりませんが、おいおい将来に向つてお説のような方向に進んで行きたいと思つております。
  37. 中村三之丞

    中村(三)委員 地方問題、教育問題についても聞きたいのですが省略いたします。
  38. 尾崎末吉

    尾崎委員長 時間がちようど一ぱいでございますから……。
  39. 中村三之丞

    中村(三)委員 最後に一言いたします。無謀なる国会解散によりまして、予算は不成立になりました。しかし、予算不成立によつて、行政、国民生活、国民経済、地方財政等に及ぼしました好ましからざる影響は、またそれかために遅れました点は、とりもどして行かなければなりません。ゆえにわれわれは、国民の要望するところの予算は成立せしめなければならないと思います。しかしながら、われわれは在野党として、主義、政策を持つておるのでありますから、修正案を提起したのであります。(「まだ出てない」と呼ぶ者あり)いずれ出るでありましよう。いずれにいたしましても、われわれは公表してあります。そこで自由党の態度はどこであるか、今日ただいま、私は存じませんが、これによつて予算が修正されて、政府もこれに同調して行かれるというならば、この修正予算というものが実現した場合の予算実行の責任は政府にあるのであります。われわれは予算予算、政治問題は政治問題と、明らかに区別するものであることをここに申し上げておく次第でございます。
  40. 川崎秀二

    ○川崎委員 関連質問があります。
  41. 尾崎末吉

    尾崎委員長 川崎君の関連質問を許します。二問程度に願います。
  42. 川崎秀二

    ○川崎委員 先ほど中村委員によつて提起されました新しい問題は、かなり重要なものを含んでいると思うのであります。旧日本の南洋委任統治地域の領海、すなわちマリアナ諸島、ウエーキ、ポナペ、トラツク諸島等の周辺で沈没した船の所有権の問題と、この沈船の引揚げの問題は、かねてアメリカ側日本側との間において、これをいかにするかということについて、研究が重ねられて来たと思うのであります。ところが一昨年ハワイの高等弁務官が旧南洋海域の沈船の入札を公表して、そうして入札をする直前にこれがとりやめになつたといういきさつがあります。それは平和条約が成立して、平和条約第四条によつて、これらの艦船の処分については、両国間において細日協定をしてから、そうして入札をするかどうかということのとりきめをするというふうにきめられたからであると考えておるのであります。先ほど中村委員から質問になりました件は、その後どうなつているかということであつたのでありますが、これに対して岡崎外務大臣お答えによれば、最近またまたハワイの高等弁務官が日本側に対して、これを一般競争、国際入札をする、こういうことを通知をして来たので、それはまだきまつておらないから、間違いではないかという意味で、あなたが今お問合せ中だ、こういう御答弁であつたと思うのであります。  そこでお伺いいたしたいのは一体そのハワイの高等弁務官からこちらに対しまして、いわゆるサルベージ業者に対して発せられた文書なるものは、いつごろ日本に来たものであるかどうかという点と、あなたはそれに対して、新木大使なり、あるいは直接文書をもつて、いつお問合せになつたものかどうか、この点をぜひお伺いしたい。  質問が二、三問に限られておりますので、とりまとめて申し上げますが、第二は、いわゆる旧日本南洋統治地域等での領海で沈没した船の所有権は、どちら側にあるのか。私どもの研究したところによると、一般公海、すなわち、太平洋のまん中で沈んだものは当然日本。その次は、フイリピンとかそういうかつての敵国の領海で沈没したものはこれは当然敵国、すなわち当時の敵国であるアメリカ側、あるいはフイリピン、それから、中立国の場合においては、これは日本側が所有権を主張することはできない。これは、いろいろの解釈があると思うのですが、私は、この旧日本統治地域等で沈没したる艦船というものは、両方で話合いをするまでは、日本側に所有権があるべきものと思うのであります。この点に対するあなたの御解釈と、さらに、こういうとりきめが行われるまでに、ハワイの高等弁務官が、一方的にこれを通告して来たことは、平和条約第四条の違反ではないかと考えるのであります。その三点に対してのあなたの見解を伺つておきたいと思うのであります。
  43. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 両国間のとりきめによるべきものを、先方でかつてに処分しようとすれば、これは平和条約規定に反すると思います。しかしこれは何か誤解であろうかと思いますので、追つて適当な措置は講じます。それから南洋委任統治諸島等の沿海といいますか、公海でないところにありまする問題は、いろいろ議論があるようでありまして、われわれの方では、一応日本側の所有に属するものと考えておりますが、これはまだ議論があると思います。従つて両国間の話合いの必要があると考えております。それから日本のサルベージ業者によこしました通知、これは私の記憶では、ハワイの高等弁務官ということでありましたから、こちらからハワイに照会をいたしたと記憶しておりますが、そこの点は資料をもつてお答えいたします。
  44. 川崎秀二

    ○川崎委員 そうすると、先ほど中村氏にお答えなつたことは、こちらで調査しておると言われたけれども、いつそれを調査し、交渉されましたか。
  45. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それはハワイの高等弁務官の方について調べるために、ハワイの総領事に通知をしたと記憶しておりますが、資料をもつて正確に申し上げます。
  46. 川崎秀二

    ○川崎委員 何月ごろかわかりませんか。
  47. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ちよつと記憶がありません。間違えるといけませんから……。何でもないから、調べるとすぐわかるのです。平和条約規定に基いて、これは意味が違うということになつて、言つたと記憶しております。
  48. 川崎秀二

    ○川崎委員 少くとも細目協定がきまるまでに、アメリカ側がハワイの高等弁務官を通じて、こういう入札に付するということを言つて来たのは、明らかに条約違反ではないか。あなたは何かの間違いじやないかと、外交官である建前から、非常に慎重に仰せられましたが、われわれはそう思うのであります。これはきわめて重大な問題であつて、それと同時に、あなたがこれらの交渉をしておることの一事が、もしハワイ高等弁務官が発せられた事前に、十分の細目とりきめをしないということになると、外務省の非常な怠慢行為だと思うのであります。先般来、河野一郎氏から提起された対米債権の問題でも、外務省はこれを関知しなかつたというような事実があつて予算委員会は相当緊張したことがあります。それと同様の種類の問題が、ここに起つて来たと見なければならないのでありまして、南洋の艦船の問題は、現に私ども資料を手元に持つておりますが、これによると、すでにこの領海で沈没した艦船は、九十八隻、総トン数にして四十三万四千二百二十四トン、それから全体の太平洋の領海並びに公海で沈んだ船を全部入れると、一千二百三十隻、三百八十八万五千八百八十トンという、非常に大きなものであつて、これらはほとんど手がつけられておらない状態であります。これに対して、ハワイの高等弁務官のような措置がとられると、この入札参加の要件は、アメリカ海軍省から信託統治地域にいる保証状を得た者、こういう厳格な規定がある。その他二つの条件がついておりまして、これでは、日本側が非常に不利な立場に立ちはしませんか。それと、もしそれ以前において交渉がほんとうになかつたということになると、外務省の非常な怠慢行為になると思いますが、御答弁を願いたいと思います。
  49. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この交渉は、アメリカばかりの問題じやありません。たとえば台湾に対しては、国民政府との間に、二国間の交渉をしなければならぬ。その他にも交渉を要する事件はたくさんありますが、いろいろ複雑な関係がありますので、進捗していないのが多い状況であります。しかしいずれも、これはほとんど世界各国に対して——各国といつては語弊がありますが、非常に多くの国とやるのでありますから、いろいろその間には資料を整えることもあるし、また相手方の意向もいろいろまちまちでありますから、怠慢とお考えになるのはやむを得ませんが、交渉が進捗しないのは、これはやむを得ないと考えております。しかしその高等弁務官の入札条件と伝えられるようなものは、これは二国間の交渉ができてからやるべきものとわれわれは考えておるのでありますから、その入札条件等は、もちろん取消されるものと考えておるわけであります。これは交渉ができなければ問題にならないものと考えております。
  50. 尾崎末吉

    尾崎委員長 川崎右、簡潔に願います。
  51. 川崎秀二

    ○川崎委員 それでは最後に……。どうも岡崎外務大臣の答弁を聞いておつても、私の得た印象では——大蔵省の方ではこの問題について非常に深く研究しているらしいのです。そうして大蔵省の理財局長から外務省条約局長に——こういうことが行われたとするならば、アメリカの行為は平和条約違反ではないか。すなわちこれらの領海で沈んだ船の処分については、両国において細目協定をとりきめた後でなければ一切の発動はできないと、ちやんと規定をされておるにかかわらず、かかる問題が提起されたのであります。それを外務省は初めのうちはお気づきにならなかつた。少くとも怠慢であつたということは、間違いない事実だと思う。大蔵省の理財局長から五月二日に、外務省条約局長あての文書が出ている。それによつて初めて交渉するというようなやり方で、外務省というものが勤まるものかどうか。これは岡崎君に付して深く論究をしたいけれども、本日は問題を提起したということだけでとどめる次第であります。
  52. 尾崎末吉

    尾崎委員長 和田博雄君。
  53. 和田博雄

    ○和田委員 私は、今一番大きな問題であります日本経済自立、並びに日本独立の問題につきまして、それを中心として、総理以下の各閣僚にもお尋ねしたいと思うのであります。  MSAの問題が、当予算委員会においても、本会議においても、今度の国会で最も多く論ぜられましたのは、私は日本が今直面しておりますいわば日本の悩み、日本の悲劇の、ちようど象徴だと思うのであります。MSAという形で、日本のわれわれが今後解決して行かなければならない大きな悩みが、そこに出て来ておるように思うのであります。そこでその問題を経済自立の問題と関連して聞きます前に、少しく問題がはずれますが、簡単にただ一つの問題を、行政管理庁長官にお聞きしておきたいと思うのであります。これは吉田総理も演説において、しばしば行政の簡素化、あるいは行政の能率化の問題については、触れられておるのでありまして、問題自体は重要でありますが、私の今日の質問の本論からは少しくはずれる問題であります。ごく簡単に二回だけ聞いておきたいと思うのであります。  それは今度の政府は行政監察の強化という名前で、行政管理庁設置法の一部改正法律案を出されておるのでありますが、それはどういう点で行政監察が強化されておるのか、その点をまず御説明を願いたいと思います。
  54. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 行政監察の強化ということを強く考えましたのは、だんだんと国費が尨大になり、行政機構も複雑多岐になりますので、これだけのものがほんとうに国民ためにうまく行われるというためには、今までありきたりの方法を伝統的に踏襲して行くということだけではいけないということで、行政自体に内省をした方がいいのではないかという考え方から出たものであります。そこでこれを徹底的に強化をいたしますためには、機構の整備や、それから現在すでにある監察機構、あるいは会計検査院、大蔵省の監察機構、それから各省内部にあります自己監察の機構、そういうものを合せて行政管理庁の監察機構というものを統合して、総合的にもう一度再検討してみなければならないと考えておるのでありますが、これは行政機構改革の際の考えるべき問題の一環として考える方が適当じやないか、こういうように考えておりますので、行政監察の強化はただいまのところ二段構えに考えて、当面まず現在の機構でもつてできるだけのことをしたい。その次の段階において、今申し上げましたような徹底的な検討をして建直しをしたい。そこで当面の措置といたしましては、現在すでに監察機構があるのでありますから、これに法的措置でなお十分でない点をただいま内閣委員会に法案を出して、少くとも各省か今まで自己監察のときに持つている程度の権限を行政管理庁にも持たせたいというようにして監察をさせると同時に、監察がうまく行きますためにはどうしても監察に当る吏員の訓練をしなければなりませんので、現在の監察機構は御承知のように、経済調査庁から移管いたしました人たちによつてつておりますので、この機構ができまして以来まだ三年八箇月、まだ経験も十分でありませんのでこの訓練をし、そうして最小限度に必要な法的措置をして、とりあえず当面非常に問題になつておりますところの公共事業費でありますとか、補助金でありますとか、そういうものから手にかけられるだけの最大限の能力を発揮いたし、こういうように二段構えにしてやつておるけであります。
  55. 和田博雄

    ○和田委員 二段構えの方法で監察を強化すると言われるのでありますが、むしろ問題はその二段構えと言われておられるあとの方のことをやられないと、行政監察というものは効果を上げないのではないかと思うのであります。今あなたのおつしやつたように、会計検査院であるとかあるいは大蔵省であるとかあるいは行政管理庁というような三つの役所がありまして、監査を受ける方から言いますれば、みんなほとんどその監査を受ける事柄は同じものであります。各方面からそれぞれの立場から、多くの目をもつて監査をするということもまた一つのとりえはあるとは思いますが、しかし現状から言いますれば、むしろ監査を受ける方は煩雑であつて、そのために非常な事務の停滞を来すおそれもあるし、むしろこういうものを統一して、ほんとうの行政監査ができるような仕組みに早くされることが、私は監査の効果を上げることになると思うのでありまして、今長官が御説明になつたように、そういう御意向があるとすれば非常にけつこうだと思うのでありますが、それは一体あなたとしてはいつ実行に移すお考えであるのか、こういう問題は私は早ければ早いほどいいと思うのでありまして、現在の機構をただ使つて行くというごまかしの、その場限りの方法によりましては、どんなにその意図がよくても効果は上らないように思うのでありますが、その点についての御意見伺いたい。
  56. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 御指摘のように私も行政監察強化のほんとうのねらいは、これからあとに考えておる措置によつて行われなけなばならない、こういうように考えております。ただ今御承知のように政府は、行政機構の改革というものを再び真剣に取上げて再検討いたしておるわけであります。国の中央の機構をどうするか、地方の機構をどうするか、従つてこの行政監察の機構の面から取上げるという場合には、この一環として取上げるのが一番適当じやないか。そこで今行政機構の改革は、二十九年度の予算編成に間に合せるということを目標にしてを進めておりますので、地方におきましては地方制度調査会、それから国におきましては行政審議会におきまして、それぞれ諮問をいたしまして、その結論を八月末までに得たい。政府といたしましてはそれと並行して独自の検討をして参りまして、少くとも二十九年度の予算編成に間に合うような時期、従つて九月ないし十月のころにはそういう成案を得たいという考えで進めておるわけであります。
  57. 和田博雄

    ○和田委員 私はこの行政監察の制度というものを、一般の行政機構の改革とそう無理やりに結びつけてお考えになる必要はないと思うのであります。行政機構の改革はこれはもちろん各行政庁が時の政府の政管を忠実に実行して行く、それで能率が上るようなそういう行政庁にして行けばいいのでありますが、いやしくも行政を監察するという立場に立てば、そのときの政府がどういう政府であろうが、少くとも監察の対象になるのが行政であるならば、その構造のいかんにかかわらず、監察機構そのものは最も効果の上るような事柄を早くおやりになつた方がいいと思うのでありまして、どうも一般の行政機構の改革と結びつけてお考えになつているところに、いつものような、実際これを実行なさるところの誠意なりあるいはその真意なりが疑われるのでありまして、私は行政監察の問題は、行政機構全般のものとそう関連させなくてもできる範囲の改革ではないかと思うのでありますが、そういう点についてはいかがお考えになりますか。
  58. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 もちろん考え方といたしまして、これを強化をいたしますためには、行政機構改革と一緒にやらないでもできる仕事でありますが、ただ現在すでに行政監察をやつておるのでありますからして、現在やつておるのと並行して考えて行つてやるならば、これは機構改革のときにその一環としてやる方がより便利であり、非難にいいものがその機会にはできる。現在何もやつておらないということで、早急にことを始めるという場合には、拙速をたつとんでどんなものでもやるということも考えられますが、今のような状態でやりますときには、私は機構改革のときに一環としてやることが適当である、こう考えます。
  59. 和田博雄

    ○和田委員 どうもただいまの御答弁は、聰明なる塚田君にしてはちよつとつじつまが合わぬと思うのであります。それならばなぜ一体、行政監察の効果が上るという名目のもとで、微温的な行政管理庁の一部改正の法律なんか出されるのか説明かつかない。こういうような手はずでやられるならば、切り離して十分解決ができるというのならば、私はおやりになつたらやれるのじやないかと思うのでありまして、そういう点はこれ以上表れしても意見の相違になりますから、この程度でやめておきます。  MSAの問題を中心にしてお聞きしたいと思うのでありますが、MSAの問題は今まであらゆる点から質問されまして、いわば質問はかなり重複すると思うのであります。しかし私は、今まで政府の答弁を拝聴いたしておりまして、どうもふに落ちない点、確かめておきたい点もございますので、問題が多少重複いたしましても、ひとつ簡潔にわかりやすく御答弁を総理以下各閣僚にお願いをしておきたいと思うのであります。  MSAの問題は、日本の安全保障に直接つながる問題でございまして、非常に重要でございますので、一体日本MSA援助についてどういう援助受けようとしておるのかということを、先般本会議においても聞いたわけでありますが、これは私の考えでは、日本に対する援助はどうしても純軍事援助だ、いわゆる完成兵器の援助が主であつて、おそらくこれがもう九九%ぐらいまでも占めてしまうのではないかというようにさえ考えられるのございますが、政府は今交渉されようとしておりますところの援助は、一体そういう純軍事的な援助受けられるつもりでやつておられるのであるか。そうではなしに、重点はむしろ純軍事的な、完成兵器ではなしに、日本の防衛生産、俗な言葉でいえば防衛生産を伸ばして行く、言いかえると軍需産業をアメリカ援助受け日本に確立して行く、こういうような意図を持つた援助交渉されようとしておるのであるか、この点についてこれは総理大臣からお答えを願いたいと思います。
  60. 吉田茂

    吉田国務大臣 米国政府の力は、この間外務大臣からして問合せをいたして、その往復文書の報告だけしか聞いておりませんが、これは私の推察でありますが、今日米国政府日本に対する考え方は、単に軍事援助以外に日本経済自立考えておるのではないか。つまり日本においては軍隊がないのでありますから、先ほど外務大臣が説明いたした通り、他国と同じような考え方ではなくして、日本の現在の組織の上においてさらにこれを強化するとともに、日本経済技術に対しても相当な援助を与えたいという気持ではないか、これは私の想像であります。
  61. 和田博雄

    ○和田委員 総理大臣としましては、アメリカ日本経済自立を促進するというため援助考えておるのではないかという御推定でございますが、そうしますと、総理大臣と上ますればそういう援助を実は日本受けたいのだ、そういう意図で今後交渉して行くつもりだ、こういうふうに了解してよろしゆうございますか。
  62. 吉田茂

    吉田国務大臣 ちよつと聞き漏らしましたが……。
  63. 和田博雄

    ○和田委員 アメリカ日本経済自立を促進するため援助MSAで与えようというように総理大臣考えておられるわけですから、日本としてはそういう経済自立の助けになるようなMSA受けたいのだ、こういうおつもりで御交渉になるのかどうかということです。
  64. 吉田茂

    吉田国務大臣 まだ交渉方針はきまつておりませんから、ここでどうという確言はできませんが、私の想像するところでは、米国は単に軍事援助のみではなくして、日本経済自立、その中には今の兵器生産を日本において興す、あるいは日本の兵器生産事業を盛り立てる、あるいは拡張するというふうな考えがありはしないか、これは甘い考えでありますが、私の感じではそこまで行くのではないか。というのは軍事援助だけでは非常に限られた話でありまして、日本軍隊を持つとかあるいは海軍を持つておれば別でありますけれども、現在の機構を強化するだけでありますれば、そう大して問題にするほどのこともないのではないか。ゆえに米国政府としては、常に日本経済自立考えておるようであります。現在の日本経済機構だけでは、不十分ではないかということは始終言われておりますから、ゆえに米国政府の期待するところ、あるいは考えておることは、日本経済自立できるところまでを考えておるのではないか、これは想像であります。
  65. 和田博雄

    ○和田委員 総理のお考えをわれわれから見ますと非常な疑問が出て来るのでありますが、その点に関して今度は通産大臣にちよつとお聞きしたいのであります。日本の防衛生産、今現にいろいろ鉄砲のたまや大砲のたまをつくつておる、その防衛生産の二十七年度におきまするアメリカの注文、言いかえますと、いわゆる特需として日本が獲得しましたドルはどのくらいでございますか、またその注文の内容はどういうものであるかを、もう一ぺんはつきり御答弁願いたいと思います。
  66. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。二十七年度の——ちよつと今詳細手元にございませんから、政府委員から申させますが、私が、あなたの御質問に合うかどうかわかりませんが、いわゆる狭義の特需はどのくらいになつておるか先ほど調べてみましたが、これは二十六年の七月からことしの六月までの間に狭義の特需が七億三千六百万ドル出ております。
  67. 和田博雄

    ○和田委員 それはいいのです。そうではなしに、現実にいわゆる防衛生産として直接受けた注文です。兵器生産と言そた方がいいかもしれない。
  68. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 兵器生産は、朝鮮戦争が起りましてそれから後今日までに注文を受けましたのが六千五百万ドルと考えております。しかしこれは六月以前でございますから、その後注文を受けたかもしれません。それは事務当局の方から答弁いたさせます。
  69. 中野哲夫

    ○中野政府委員 お答え申し上げます。最近まで判明いたしまして六月末までは約九千万ドルでございます。
  70. 和田博雄

    ○和田委員 MSA援助が、総理大臣とされましては日本の防衛生産、軍需生産を確立するといいますか、育てて行く、そのため援助アメリカ側としても相当考えておるのではないかという御推定をされたわけでありますが、これは結局日本自立経済の問題にとつても大きな重要さを持つ事柄でありまして、朝鮮の戦争がやまつていわゆる特需がどうしても減つて来る。その埋め合せがMSA援助総理大臣が想像されておるような、日本の軍需産業に対する援助、こういうものか一部あると仮定しまして、通産大臣の方では、いわゆる日本の産業をあずかつておられる大臣の方では、どういう程度にそれがあるかということについて、お考えなりあるいはその推測なりを持つておられるかを聞いておきたいと思うのであります。
  71. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。ただいまのところでは、今まで通り程度の注文が出て来るものと考えておりまして、そう大差ないものと私は考えております。
  72. 和田博雄

    ○和田委員 従来通りの額の注文といえば、せいぜい年間一億ドルだと思うのであります。そこでお聞きしたいと思いますが、日本のいわゆる兵器産業、そういつたようなものは今の日本の実力として、どういうような種類のものをどの程度に注文を受けてこれをこなして行けるか。日本の兵器生産というものの基礎は、あなたがお考えになつておるMSAが具体化してときに、十かにこれをこなして行けるだけの技術  を持ち、またそれだけの工業の実力を持ておるかどうか、その点についてあなつたの見通しをお聞きしたいと思うのであります。
  73. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。先ほど一億ドルくらい年に兵器生産があるというお話でございました。これはちよつと私の調べるところとは違います。先ほど申し上げましたように朝鮮事変が起きましてから六月ごろまでの間に、六千五百万ドルと申しましたが、事務当局ではその後一箇月にふえまして九千万ドルになつたと言われたのですが、これは二年間ですから約一年に四千万ドルくらい出ればいい方だと思います。それでただいまの兵器生産の設備といたしましては、私は十分こなしておると思うのでありまして、むしろ軍工廠の敷地等を払い下げてくれというようなことも言つておることもございまして、いろいろ遊休設備を使用すれば幾分これが増加できるものと思います。ただいま必要がありませんからこの程度になつております。しかしもう一つ申し上げておきたいことは、こういうことを見込んで、いろいろ兵器生産をやる会社が濫立しやせぬかというおそれが非常にありますので、今回武器等製造法案というものを出しまして濫立を防ぐことにしております。
  74. 和田博雄

    ○和田委員 私のお聞きしたいことはMSA援助というものをただいま日本交渉されておる。そうするとその交渉が成り立つか成り立たぬかは将来の問題でありますが、しかし事実はMSA援助受けたいといつたようなお気持で、政府としては交渉されておるのだろうと思うのであります。初めから受ける必要がなければ交渉する必要はないのでありまして、そうなつて来るとMSA援助を——私はこの点吉田総理とは意見を非常に異にしますが、日本の兵器生産を育成して行くため援助というものはあつてもごくわずかなものであります。しかしそれをかりに総理の言うように相当あるのだ、こう見てみましたときにおいても、日本がその注文を十分受けて、そしてほんとうの兵器をつくつて行くだけの日本の工業力というものは残念ながら——あなたの方の言葉で言えば残念ということになるでしようが、ないと思うのです。非常に微弱だろうと思います。ことに今の兵器の注文の内容を分析してみましても、少し手の込んだものはできていないのであります。占領軍が日本を占領して以後何を一番初めに目がけたかと言えば、御承知のように日本の軍需工業の基礎を破壊するということであります。ポツダム宣言の実行によつてこれを破壊する、日本が再び軍国主義にならぬように軍需工業自体の基礎を破壊して、そして日本が自分でしかも優秀な武器をつくつて軍国主義の国になつて行くことをはばむ、これが私は一生懸命にやつたことだと思うのであります。日本の賠償問題ももとはそこにあつたと思うのであります。それがだんだんかわつて来て日本には保安隊ができた、またアメリカ一つ外交政策としてMSA援助というものがとられて、日本にも適用になるという段階に今来ているわけです。そのときに政府MSA援助交渉をされる以上は、一体どういう援助を国としては受けようとするのか、という態度はつきりと政府としておきめになつておかなければならないのでございまして、交渉の途中においてこれをきめるとかいうことには相ならないと思うのであります。それには日本の防衛の生産、軍需生産の現状なりあるいは向うMSA援助の性質なりをよく見きわめて——これは岡崎君に言わしめれば、今まで外務省で研究されておつたそうでありますから、そういうことをきめた上で、吉田総理とされては交渉に当らなければ、MSA援助というものについても具体的な結論は出て来ずに、向うから押されてしまうような気がいたすのであります。吉田さんは今まで軍備はしないのだ、保安隊は軍備ではないという名目のもとに、非常に私は消極的な抵抗はされて来たと思うのであります。日本の再軍備を堂々と改進党のように主張せずに、非常に消極的な態度をとつて来られたという点は——今まではそういう外交でここへ来たと私は思います。しかしMSA援助がこれだけ表面化して、日本アメリカとが交渉をしようという段階になりますならば、安保条約がきめられたあの状態から、MSA援助受ければ一歩進むことは確かであります。再軍備の方向に対して一歩あるいは数歩進んで来ることは確かであります。七月のあの「世界」にル・モンド紙の記者が書いておるように、あなたが消極的になされて来た抵抗自体が、MSAというものを受けるか受けないかということによつて、少くとも再軍備に対する日本方向は大きくかわつて来る段階だと思うのであります。だからこそ今度の国会においては、このMSAが非常な論議中心になつておると考えます。日本が軍備をしない、警察の状態で行くのだ、そして日本日本の安全を守つて行くのだという立場に立たれる限り、私はMSAに対しましては、吉田総理とされてはこれを受けるという積極的な意欲はどうも——私どもは物事を論理的に考え過ぎますが起つて来ないかと思うのでありますが、その点に対しましては吉田総理は、どのようなお考えをして今後この問題について処理されて行くのであるかにつきまして、これはいろいろ外交上のことがありましようけれども国民にあなたの決意なり心境を訴える意味で御答弁を願いたいと思います。
  75. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは今後の交渉により、もしくは米国政府の真意を確かめない限りは、政府としては的確と申しますか、突き進んで御希望のようなことは申しにくいのでありますが、政府といたしては常に申します通り日本の防衛は日本の国力に応ずるもの、国力が増大すればあるいは漸増すれば、これに伴うだけのことはいたしますが、ただいまのところはお話のような再軍備まで持つて行くという考えはございません。
  76. 和田博雄

    ○和田委員 その点につきましては私は十分国民の声、あるいは野党の主張を御傾聴になつて、そうしてあなたとしての態度をおきめ願つて日本の再軍備あるいは日本独立という点についてのがんばりを示してもらいたいと私は思うのであります。なおこまかいことについてはつつ込んだ質問をしたいのでありますが、これは別の面から岡崎国務大臣にお聞きしたいと思うのであります。  このMSA援助受けます場合には、その前に相互安全保障協定というものを結ばなければならぬと思うのでありますが、これはそういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  77. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 大体その通りだと思います。
  78. 和田博雄

    ○和田委員 大体というのじやなく、結ぶのが普通じやないですか。
  79. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私もそう思うのでありますが、日本の場合はまだ交渉がまとまつておりませんから、大体と、こう申し上げます。
  80. 和田博雄

    ○和田委員 しかし今まで安全保障法によるところの援助受けて、相互の協定を結ばず受けたような例はないじやございませんか。
  81. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ないと思います。
  82. 和田博雄

    ○和田委員 私もそうだろうと思うのです。これはどうしても結ぶのがあたりまえであつて、結ばずにやるということはまあないと思うのであります。私はこういう立場から開いているのですから、その点はよく御理解願いたいと思うのであります。相互安全保障法という条約が現にアメリカにあるわけです。この客観的な事実の上に立つて、そしてその法律がはつきりと書いておるところのその規定従つてMSAというものがやはり日本の場合においても適用になるのだ、日本の場合にいろいろな特例があるのだということは、これはあまりわれわれとしては考えられないのでありますが、多少特例があるにしても、出発点はどうしても客観的事実であろうと思うのです。ですから政府とされてもこの法律をまともに解釈をし、これは今までMSA援助を外国に与えたその事例などを各観的に見た場合においては、日本においてもどうしてもこうなるだろうというだけの推定はできると思う。その場合には私は率直にお答えになつてちつともかまわぬと思う。その後の交渉によつてMSAに関する日米相互の協定がもつと日本に——あなたたちの立場から行けばそれはプラスであつて、われわれは出発点としてはどこまでも客観的に物事を見て行きたいと思うのでありまして、その点から質問しておりますから、そのつもりでお答え願いたいと思います。間違つたことがあれば御訂正くださつてけつこうだと思います。  それからそういうふうに考えますと、これはどうしても相互安全保障協定というものは双方とも義務を負うものである、これは前に黒田君もちよつと触れましたが、そのときの答弁もはつきりしなかつたのでありますが、双務契約だ、両方が義務を負うのだということにどうしてもなる、向う援助を与える、こちらは何らかの義務を提供するということになると思いますが、それはそういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  83. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それではこれからは日本受けたことを仮定して申し上げますから、決定的のことじやありませんが、決定したようなお答えになりますが、そう思います。
  84. 和田博雄

    ○和田委員 そうだと思うのです。そうしますとこれはやはり安保条約が一番問題になつて来るのでありまして、安全保障条約の第四条に「この条約は、国際連合又はその他による日本区域における国際の平和と安全の維持のため充分な定をする国際連合の措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置が効力を生じたと日本国及びアメリカ合衆国の政府が認めた時はいつでも効力を失うものとする。」こういう規定があるわけですね。私どもMSA援助というものはアメリカはすぐに日本を再軍備をさすとか、あるいはそういうことは考えていないとしても、この四条の状態が日本側においても促進される。少くとも四条の状態になるように一歩MSAをてこにして進めて行く、こう私は考える。やはりアメリカの方には、アメリカ外交政策として、ことにダレスのとつておる巻返し政策一つの現われとして、どうしてもそういうように私ども考えられるのでありますが、その点についての御意見はいかがでございましようか。
  85. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これも程度の問題でありますが、この間の二十六日のアメリカの返事の第一項の、平和条約第五条の三項を引いておりますのは、やはりそういう意味であろうと考えております。
  86. 和田博雄

    ○和田委員 私はその点は岡崎さんの答弁で満足するので、私もそうだと思います。MSAは、やはり一つの集団安全保障、あるいは個別的な安全保障の措置というものを一つの大きな基本目的にしておりますから、そうならざるを得ないと思うのであります。そういたしますと、ここに問題が出て来るのでありまして、安全保障条約では、日本の自衛力漸増ということはいわば期待されておつたわけでありますが、今度MSA援助受けて相互安全保障協定を結びますと、この協定で、少くとも第四条に包含されておるだけのことは、自衛力漸増という点については、やはりどうも日本がある種の義務を負わざるを得ない立場になるというように解釈されるのですが、いかがでございましようか。
  87. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはいよいよ協定をつくつてみての話でありますが、この五百十条の(a)項の中には、防衛力発展し維持するという文句がありまして、この限りにおいては普通ならば義務を負うわけであります。しかしその防衛力発展し維持するというのは、その国の経済上、政治上の考慮とか、あるいはその国の人口とか資源とかいういろいろな条件がついおります。従つて、何でもかんでもやるということじやないのでありますから、まあ結果において協定を結んでみなければわかりませんが、もしその程度の義務であるならばさしつかえないものと一応考えております。
  88. 和田博雄

    ○和田委員 だから結局この四条で期待されておる自衛力漸増という限度においては、日本はそれを一つの義務として受けるということになる、こう解釈していいわけですね。
  89. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それが自衛力漸増ということのそれとすぐひつかかつて義務になるかどうかわかりませんが、先般も総理からお答えしたと記憶しておりますが、安全保障条約の前文にある自衛力漸増の期待ということは、アメリカ側からいえば期待である。しかし日本側からいえばそういうことに持つて行きたい、また持つて行こうとしておるのだ、こういう考えであります。ただ、いろいろな条件があるからすぐできないのだ、従つて、その程度のことがどういうふうな表わし方になるかわかりませんが、そういうような種類のものは協定の中に入るであろうとは考えております。
  90. 和田博雄

    ○和田委員 日にちは忘れましたが、先日の総理大臣お答えは非常にわれわれは明快だつたと思うのです。今やつている自衛力の漸増という点で、今やつている保安隊なら保安隊というものは軍隊ではない、漸増してやつている過程においては軍隊ではないのだ、しかしこれがある段階まで行つた場合には、保安隊ということが言えなくなつた場合には、自衛力漸増が完成した場合にはこれがはつきりと軍隊となつて、保局隊は性質をかえるのではないかということを言われたのでありまして、これは吉田さんの立場としては、私は一応論理は通つていると思います。ぼくらの考えとは違いますが、論理は通つていると思う。ここで自衛力漸増というものが、まだその内容は政府はつきり言わないのでありますが、とにかく一応義務づけられて来るということになりますと、この相互協定を結ぶ場合には、言いかえますとMSA援助受ける場合には、交渉の過程において、少くともこれは向うから当然要求されますでしようし、こちらからも防衛力の計画というものは出さざるを得なくなつて来ると私は思うのでありまして、それを出さずに交渉ができるということは、ちよつとわれわれしろうとにはどうも考えが及ばないのですが、その点についてはこの間本会議でお伺いしたときには、岡崎さんはどうもまつ正面から答弁されなかつたのでありますが、その点どうでございましようか。これは交渉の途中においてこちらが防衛力の計画が立たない限りは、交渉はほんとうに地につかないと思うのであります。世開発銀行の援助受ける場合においてすら、たとえばあそこヘダムをつくる、ここの川の工事をやるといつたようなときでも、この間ガーナーが来たときなんかでも、非常に厖大な資料を各省とも出しているし、政府としても出されたように知つているわけでありますが、こういう重要なMSA援助の場合に、この交渉の場合にだけ、何らこちらの計画を出さずに、その交渉が始まるなり実を結ぶということは、ちよつと私どもには考えられない。ただ、吉田内閣が、その自衛力漸増の計画をどうお考えになつているか、その内容をどうお考えになつているか、その性質をどうお考えになつているかということは別問題であります。しかしながら、とにかく自衛力漸増警備計画、あるいは防衛計画というものは出さざるを得ないと思うのでありますがその点についてはいかがでありましようか。
  91. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は必ずしもその必要はないのだろうと思います。そういうものがあつて出ればなお話は簡単でよく行くだろうと思いますが、しかし自衛力の漸増というのは、よく伝えられるように、保安隊の数をふやすとか警備隊の数をふやすということだけにはとどまらないのであります。御承和のように、保安庁で原要求を出されたときは、今の予算に盛られたときよりもはるかに多いのでありますが、それでも十分でないので、財政が許せばもつとちやんとした計画をつくりたいという意向もあるようであります。船なども、一隻つくりましてもずいぶん金のかかるものでありますから現状で置いて、政府としては国力が許し経済力が許すようになれば、将来はできるだけ防衛力を強めて行きたいということは、先方もよくわかると思うのです。そこで、現状では人の数等はふやすことが実際的でないとしますれば、どういうふうな装備でこれを補うかという問題にもなつて来ようと思いますが、しかし、そういう計画がなければ援助ができないというほど、かた苦しいものではないだろうと考えております。
  92. 和田博雄

    ○和田委員 私は、政府がそういう希望的推測をしておられることについては今とやかく言いませんが、もちろん防衛計画がすぐに人数をふやすだけの計画だとも思つておりません。もちろん、何年度には装備をまず主にして、これを完全なものにして行くということも、その計画としては成り立つと思います。しかし、それだけでその計画が終るものではないと私は思う。やはり人数もふやし、あるいは装備をもつとよくして行くという計画は、どうしても不可分に伴うのでありまして、今はなるほど保安隊を十一万から十八万——向うが要求するような十八万なり三十万なりは断る。また、そういう計画を政府はあるいはお出しにならぬかもしれない。しかしMSA援助というものは、やはり二年なり三年なり相当長期にわたるものであります。従いまして、その点について、ことに総理大臣の言われているような、日本経済自立というものについての援助というものもあるだろうというお考えをかりにこちらが立てるとすれば、経済面においてもまたは警備計画の面においても、何らかの長期的な計画というものがそこになければ、援助を与えるアメリカ側からいつても、援助の与えようがないのではないかと私は思うのであります。先般その点についても保安庁の木村君に尋ねてみたら、現在の装備の点において欠けているのは、通信であるとか、そんな方面のものであつて、ほかの方は十分なのだ、守れるのだということを言われておるのです。ところが岡崎さんは、そうじやないのだ、今の装備はあらゆる点で不備なんだということを前から本会議でも言つておられる。そこに多少の食い違いがあつたと私は思うのでありますが、もしも今のようにこちらから計画を出さずに、そうして、いいのだろうということで推し進む以上は、その前提として、今の保安隊の装備で、少くとも兵器の点については十分なのだということでないと、これはなかなか納得が行きにくいのであります。おそらく向うではそういうことで満足するとは思いませんが、こちらの立場としては、そうでなければこれはつじつまが合わないように私は思うのであります。  そこで今度は、これは木村さんにお聞きしたいのでありますが、防衛計画というものは、いずれは出さなければならぬものであるとすれば、早くお出しになつた方が、政府としてはこの場合はいいのじやないかと思うのであります。出さずにおいて、そしてカーテンのうしろでいろいろと抵抗をされるよりは、政府がほんとうに今の保安隊軍隊ではない、そしてこれでは不十分だ、警察力なんだといわれるならば、警備計画をお出しになつて日本はこれで行くのだということをお示しになつた方が——それに対して立場はいろいろ違います。われわれはもとよりそういう立場はとりませんが、私は少くとも今この大きな問題を処理して行く外交としては、そういう態度に出られた方が、よほど国民の疑いを晴らし、また国民外交としてのもつといい知恵が出て来る、反対をするにしても、堂堂たる反対ができると私は思うのであります。そういうことが、ほんとうの自主独立の国の外交だと私は思うのであります。ことに木村さんは、一旦総理に出して、そしてそれを総理は緒方さんにお返しになつて、また手元に返つた一つの試案を持つておられる。これは責任の持てない案だということを木村さんはこの予算委員会において答弁されておる。しかしいやしくも一つの行政庁の長官が、自分の責任の持てないようなものを総理大臣に出すような、そんなばかげた責任のないことはないと私は思うのであります。また同時にそれだけ責任の持てないものを、なぜそれならば——こういうことは言いたくないが、旅先では話をされるのでありますか。旅先の放言は、これは吉田内閣のほんとうのお家芸だとも言えるのでありまして、旅ではかつてにそういうことをしやべる。総理に出した試案は無責任だという。これは日本の安全保障の仕事を守つておられる木村長官としては、どうも私は納得が行かない、この点について、私は吉田総理に実はお聞きしたいのであります。こういう閣僚が責任のないものをあなたのお手元に出し、旅先では責任のないことをしやべる。そしてその事柄が日本の安全に非常に関係しておることであるというような事態につきましては、総理として一体どういう考えを持つておられるのか。私は閣僚を十分取締られる責任にある総理としての御答弁を願いたい。
  93. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。ただいま和田君が、いかにも私が旅先で警備計画を発表したように申されておりますが、私は警備計画の内容を発表した覚えはありません。断じてさようなことはないことを御了承願いたいのであります。そこで警備計画をほんとうに立てると申しますと、これは申すまでもなく一国の財政にも関係いたします。また技術面の方からもこれは検討しなければならぬ。また人員の点からも研究しなければならぬ。また訓練の点からも研究しなければならぬ。これは大蔵省あるいは通産省、経済審議庁、あるいは運輸省、各方面の関係官庁が集まつて、そうしてこれは立案にかかるべきものだろうと思います。もちろん私は、さような立案は望ましいことと考えております。しかし私のいわゆる警備計画試案なるものは、さようなものではないのであります。要するに日本の治安情勢の変化に伴つて、治安力を増加する場合において、どうしたらいいかという一応の心構えを自分でつくつたのであります。それでこれは庁内の議も経ていないのであります。一つの案を立てますにつきましては、庁内において相当の研究機関があるのであります。それらのものとよく協議して立案すべきである。私は一通りの心構えとして、将来庁議にかけるべき一つの前提条件としてやつたわけであります。総理にこれを示したというのは、私はこういう案で将来進みたいが、なおよくこれは研究しなくちやならぬ、こういうことであるのであります。もちろん総理は成案を得てから見たいというので、副総理の手から私に返つたような次第であります。総理もこれは見ておられないのであります。さような次第でありまして、このMSAの問題と関連して、将来日本の防衛計画なりあるいは警備計画なり立てるということになりますと、先刻申し上げました通り、各官省が十分協議をいたしまして、これはやるべき仕事であるのであります。ただ単に保安庁だけでやるべきものじやないと私は考えております。
  94. 尾崎末吉

    尾崎委員長 和田君、あと四分ほどでございます。     〔「同じことだよ」と呼ぶ者あり〕
  95. 和田博雄

    ○和田委員 同じことだと言われておりますが、同じことということは、それほど国民が疑惑を持つておるということなのです。与党の立場からすれば、あるいは早くやめてもらいたいと思うかもしれぬが、そうはなかなか行かないのであります。  それでこういうように思うのです。MSA援助交渉が始まつてから案を立てると、こう今木村長官が言われましたが、しかしMSAの問題は、こと数日の間に始まつたことではないので、もう前からこれはわかつておることなのです。それで正式の交渉はあるいは数日中に始まつたかもしれませんが、MSAの問題を研究しておる限りにおいては、保安庁が中心になる。その援助の実態は、やはり保安庁に対する援助だということはだれでもわかるのでありまして、その意味においてあなたが警備計画をお立てになつて、たとえそれが試案であろうが、その点については研究されておつたことは事実なのであつて、そういうことを一々今ここで私はせんさくしませんが、私もやはり長官としては、これは出すのが当然であつて、いろいろ言いくるめてその場をのがれることは、ほんとうじやないと思うのですよ。政治家としては、やはり堂々と出されるべきだと思う、その方がよほど政治が明るくなると思う、それをただいろいろな言葉を使つてごまかされておるから、そこでいろいろな質問なり疑問が出て来るのであります。  そこで私は日本の防衛生産という点にも関連して、工業の基礎である機械工業の点について、若干の質問をしてみたいと思うのであります。やはり日本の工業の基礎がしつかりしておらずに、どんな援助受けるとか、しかもその援助受けて防衛生産を中軸にして、この不景気を打開するとか、特需のなくなつたあとの自立経済を立てるとかいつてみても、工業的の基礎が薄弱であれば、私はそういうことは砂上の楼閣だと思うのであります。そこで通産大臣に簡単にお聞きしたいのでありますが、機械工業について特需の中で、一体二十七年度にはどの程度の割合を機械工業の製品が占めておつたか、その内容はどういうものであつたか、その点がわかつておればお尋ねしたいのであります。
  96. 中野哲夫

    ○中野政府委員 数字にわたりますので私からお答え申し上げたいと思います。昭和二十七年度の特需の総額に占める機械の受注は、約八千六百万ドル、三〇%程度と心得ております。
  97. 尾崎末吉

    尾崎委員長 ちようど時間が一ぱいでございますので、あと一問にしていただきたい。
  98. 和田博雄

    ○和田委員 多少基礎的数字の上から通産大臣に聞きたかつたのでありますが、通産大臣がおりませんから、この問題はいずれあとにしまして、ただ総理大臣に聞いておきたいのであります。  今お聞きのように、日本の工業というものは、産業というものは、非常に基礎が脆弱であります。そうして防衛生産といい、あるいは軍需工業の育成といつてみても、これはなかなかその育成には骨が折れるし、またかりにそれを育成してみたところで、日本経済がそれによつて安定するものではないのであります。今はMSAでかりにアメリカからいろいろな援助がありましても、その援助がなくなつたあかつきにおいては、これはみんな日本国民に税金として返つて来るのであります。厖大な軍需生産をやつて、そこに保安隊がかりに軍備でないとしても、それを漸増してやつて行けば行くほど、国民経済力とのつり合いというものは、私はだんだんとれなくなつて来ると思うのであります。今でさえ予算の中で千何百億というものを現にとつておるわけであります。MSA受けて、一時はその負担が減るようなことを言う人がありますが、これは結局減らないのであつて、二年なり三年の後には、みんな日本国民がそれを負担しなければならなくなつて来るのであります。また一方からいつて、軍需工業を中抽にして、日本経済を運営しようとすればするほど、日本国民に密着している平和産業、輸出産業というものは、いわゆるコスト高、物価高によつて伸びない。だんだん縮まつて来る。みんなしわ寄せはそこに来るのであります。しかも平和産業に従事しておるところの人たちは、中小企業が大部分であります。日本の人口のうち、あるいは産業のうちで、一番大きい部分を占めてる中小企業が、それに大きく関与しているのであります。こういう意味におきまして、MSA援助については、日本が将来平和にほんとうにやつて行くつもりであるならば、これは総理大臣として十分に国内の産業の実情あるいはそれに従事しておるところの人たちの現実の生活といつたものをよく御勘案になつて独立後の日本の首相としてはずかしくない交渉をして、私の希望としてはこういうものは一蹴して、政府としては平和な産業によつて日本の進路を開いて行いくという気魂と政策とを示してもらいたいのでありますが、その点に対して吉田総理の御意見をお伺いいたします。
  99. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えします。MSAによつて日本経済援助を与えない、結果は日本国民の負担になるというようなものであつたならば受けられないという結論になるのであります。受ける以上は何らかのプラスになると政府は確信をして、その気魂をもつて交渉いたしております。
  100. 尾崎末吉

    尾崎委員長 今澄勇君。
  101. 今澄勇

    今澄委員 私はまず総理大臣にお伺いをいたしますが、最近ワシントンにおいて、日本の総理みずから現下の諸懸案解決のために、ワシントンに来るのを大歓迎であるという向うの情報でありますが、現在アメリカ日本との間には、この予算委員会の審議の過程を通じてみても、幾多の懸案があります。この際総理みずからこれらの懸案解決のためにお行きになることが、現下の日本の情勢では必要であると私ども考えますが、これに対しての総理の御見解なりお見通しを、ひとつお伺いいたしておきたいと思います。
  102. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。新聞に私が米国訪問でありますか、きまつたように報道しておりますが、これは私の関知しないところであります。またアメリカがはたして私が参りますのを歓迎してくれるかくれないか、これも私の承知いたさないところであります。要するにまだ何らアメリカに行くことについて考えを持つておらないのであります。
  103. 今澄勇

    今澄委員 しからば遣米使節団として、大蔵大臣を派遣するとか、あるいは池田政調会長が派遣されるとか、いろいろうわさされておりますが、総理は自分でお行きになるならぬはともかくとして、この際諸懸案解決のために、外務大臣なり大蔵大臣なりを、アメリカに御派遣になる御意思があるかどうか、伺つておきたいと思います。
  104. 吉田茂

    吉田国務大臣 これはいろいろな問題がございます。アメリカばかりでなく、日仏公債もまだ解決いたしておりません。そういうようなことがありますから、今後の事態によりましてだれか適当な者が参つて、そして従来の懸案になつておるものを解決いたしたい、こう考えております。しかしだれをやるかということはまだきまつておりません。
  105. 今澄勇

    今澄委員 大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、今度改進党と自由党との間で調整せられました予算案の修正は、本日に至るもまだ手続きがなされておらぬようでありますから、本格的な予算組みかえをして、書類として提出することが不可能なように、われわれ社会党からはながめられるのでありますが、これは予算総則によつておやりになるか、それとも財政法の臨時特例法でおやりになる御意思であるか、大蔵大臣のこれに対するお見通しをまず伺つておきたいと思います。
  106. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 大蔵省としては原案の成立を希望しておるのであります。しかし今の情勢は修正案が出て来る模様でありますが、最後の決定も見ておらぬようなぐあいでありますから、その修正案の内容等もまだ十分明らかでありません。しかし私どもは議会の権能で修正されるものなら、この権能に対してかれこれ言うべき考えは持つておりません。またいかなる方法でやられるかということについても、かれこれ議会の権能にくちばしを入れようとは考えておりません。
  107. 今澄勇

    今澄委員 そこで私はもう一度総理大臣にお伺いをいたしたいのであります。私ども予算の修正あるいは予算の変更といいましても、それにはおのずから限度のあることで、自由党吉田内閣が出したこれまでの予算は、いわば竹馬の両足を切つて、健全財政を基礎とした自由党内閣の性格の表現であります。ところが今私どもが持つております情報による修正案というものは、米価の問題を初めとして船舶の利子補給等の物の考え方が、この竹馬の両足を切つた自由党の性格とはうらはらな、いわば男から女になりかわるような、予算の性格の根底をくつがえすものであると思う。だから私はかような予算の持つておる基礎的な性格を根本的にくつがえしても、吉田内閣国会が修正をするごとならば、その修正に応じて悠々として内閣担当の責任をずつと続けて行くのであるか、これに対して長い間選挙の公約等々と比べてみて、何らかの御見解なり、御所信はないものかどうか、私は総理大臣にぜひ伺つておきたいと思うのであります。
  108. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。今お話のようなわが党内閣の基礎といいますか、政策の基礎を動かすような修正には応ずることはできませんが、しかし今日国民の要望いたしておりますことば財界、政界の安定であります。予算案を通じて一部なりとも安定ができればけつこうだと思いますから、できるだけ要望には応じはいたしますが、その結果予算の基礎的方針を変更するようなことは、いたさないつもりであります。
  109. 今澄勇

    今澄委員 この点は総理大臣お答えでございましたが、私は予算案ができ上つて参りましたならば、この予算案を組みかえて提出いたしました提出の責任者なり、政府に対して予算の基礎的性格がどうであるかということを、十分ひとつお伺いするつもりであります。そしてその際また総理の御答弁に基いて、米価の問題、その他船舶の補給金等が、この基礎的性格に反するものであるかどうであるかということについてお伺いをすることにして、本日はこの問題はこの程度にしておきます。  次にもう一つ総理大臣にお伺いいたしますが、この前の不成立予算の際は警察法、義務教育法等の重要法案をこの不成立予算と並んで政府国会に提出した。特に警察法のごときは緊急やむを得ざるものであるという説明が、速記録を見ましても載つておるのであります。そのときに出たスト規制法だけは今国会にも強引に出しておるが、これらの警察法なりその他の法律案が、この予算案と一緒についておらないのは、一体吉田内閣としてはどういう見通しと、いかなる変化を来したという観点から警察法をお出しにならなかつたのか。あるいはこれらの警察法を出す必要がないほど、治安の状態が良好になつたものであるとお認めになつておるのであるか、総理からお伺いいたしたいと思います。
  110. 吉田茂

    吉田国務大臣 政府としては予算国会に提出し、その他の重要な法案は順次出すつもりであります。
  111. 今澄勇

    今澄委員 とにかくこの前出たときの速記録を見ると、警察法は緊急やむを得ざるものであるから、本予算予算的措置は盛つていないけれども、とりあえずこれを出すのであるという政府の答弁であつた。しかるに今国会予算に次いで順次出すのであるとおつしやいましても、そういうふうなことでは私どもはどうにも判断ができない。私はこの問題はぜひ治安の状態その他等を承りたいので、法務大臣をぜひお呼びを願いたいと思います。時間の関係がありますから次の問題に移りますが、結局この予算案は改進党の要望があれば、竹馬の足を切つても、とにかく修正に応ずる。それからこの前の国会では緊急やむを得ざるものとして予算案に費用を計上しないままで出した法律案も改進党の賛成が得られないと思えば、ひつ込めるということになれば、総結論としてこの予算案を批評すれば、これをやぶにらみ予算であり、ウインク予算であつて、何らの信念のない、基礎的性格と責任において組まれてやろうとする予算案でないということを、総理に申し上げて、ぜひひとつ御反省を願いたいと思うのであります。  そこで私は大蔵大臣に非常にじみな問題でありますが、お伺いをいたしておきたいのは、この予算案の歳入の点を見ると、まず根本的な矛盾があるのであります。歳入の部面において前年度に比して申告所得税が八十六億円の減少、法人税が百六十七億円の減少、源泉所得税は百五十六億円の増となつておるのであります。しかるにこれについて国民所得の推定を経済審議庁から私どもに渡された資料によつて見ると、個人の業主所得は昨年に比べて四七%の増、それから金を貸した個人の利子所得が二三・一%の増、これは個人的な申告所得であります。法人所得が一一・一%の増、勤労所得が一〇・九%の増というように出ております。そうするとこの予算案でかけられておる税金の高と、業主所得、法人所得、国民所得推計においてわれわれが判断してみると、これは逆になつておるのである。はたして経済審議庁の資料が正しいとすれば——大蔵省が出した申告所得税の減、法人所得税の減、源泉所得税の増というものは、経済審議庁の調査を信用しておらぬということに結論として相なるのであるが、大蔵大臣はいかなる観点から申告所得税と法人所得税を減少せしめて、源泉所得税を増加せしめたのであるか。まず大蔵大臣からお伺いをいたしたいと思います。
  112. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 法人所得税は大体二十六年九月期が最盛期であつた考えます。爾来法人の収益は多少減少しておりますので、二十八年度の予算においても大体一割の収入減を見込んで、そういうふうに立ててあるのであります。なお中小企業各種の企業の申告につきましても、同様な観点から多少経済情勢を織り込んで見てあるのであります。しかし一方源泉所得税の方は、これは給料その他がだんだん上つて行きまして、そういう収入の増加に伴つて源泉所得税がふえておるのでありまして、この点は私は何らふしぎはない、かように考えておる次第でございます。
  113. 今澄勇

    今澄委員 私は経済審議庁長官にお聞きをしますが、大蔵大臣はふしぎはないと言うたけれども国民所得というのは所得の結果を表わしているものではなくて、将来ふえるであろう所得をはじいたところの国民所得の推定の総計である。経済審議庁が推定したその数字が、大蔵省から今間違つている、源泉所得の方が、それよりよけいふえるという御答弁でしたが、それでよろしいのでございますか。
  114. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。課税上の所得と、経済審議庁で計算しておりますところの国民所得とは、時期的に多少のずれがあるということが一つの原因でございます。もう一つ重要なる差は、われわれの方といたしましては、納付金とか、非課税法人の所得とか、免税所得とかいうものは、やはり国民所得のうちに入るべきものと思つて加えておりまして、課税上の所得のうちではそういうものは全部抜いてございますから、そこに少し食い違いがございます。それから源泉の方でございますが、われわれの方で申し上げておるところの国民所得は、課税におきまして勤労控除とか、扶養控除とか、基礎控除とかいうものかございます。そういうものをやはり国民所得のうちに入れてやつておりますが、課税の場合にはそんなものを控除しますから、ここにも食い違いが出て来るものと考えております。
  115. 今澄勇

    今澄委員 まことに苦しい御答弁で、私どもはそういうあなたの言いのがれを追究はしませんが、おそらくは納税対象の把握しがたいという点と、いま一つは徴税者の手心が、この申告所得に加わつておるというところから、こういう結果に大蔵省は査定したものと私は考えます。源泉所得、申告所得、法人所得、昭和二十七年を一〇〇とすると二十八年度は源泉所得が一〇一・八%、申告所得が八九%、一番これが下落、法人所得が九%で源泉の次に続いている。このパーセンテージをながめると、ことごとに勤労生活者の犠牲の上に歳入面のつじつまを合せて行こういう吉田内閣の基本的な性格が、この傾向の上に現われておると思うのであつて、源泉所得とか申告法人税の比較対照についての不均衡は、私は承認することはできません。われわれはこの際少くとも月収二万円、家族四人の免税を全部断行するとうことで、八百五十二億の実質減税を予算案の歳入面に組み込んで、社会党両派がわれわれの信ずる正しい歳入の面を主張いたしたいと考えておるのでありますが、大蔵大臣はかような私ども見解について、いかなるお考えでございますか、お答えを願いたいと思います。
  116. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいまお示しになつたパーセンテージは、減税後のパーセンテージをお示しになつたものと思うのであります。私どもは現在の税制は、まだ改善する点がありますので、根本的改正をしたいというので、おそくとも八月一日から発足する委員会には、これを付議する考えでおりますが、今のところではこれが妥当なりと、私ども考えておる次第でございます。
  117. 今澄勇

    今澄委員 この問題は非常に重要な問題で、私はこの歳入面において源泉所得中心の、こういう大きな比重を源泉所得にかけるというやり方は、ぜひ是正願わなければならぬと思います。  次に同じく経済審砥用が出ました産業資金供給の見込みという資料に基いて見ますと、一般金融機関の貸出しが昨年度の七千九百十六億から本年度は七千五十四億と減少いたしておりまして、八百六十億の引揚げということに数字が出ております。この結果本年下期に予想せられる予算関係から出る政府のいわゆる財政資金の放出一千百億の散布超過が、この貸出しの縮小によつて吸収されるということ、これがおそらく大蔵大臣としてインフレを避け得るという一つの論点になつているのだろうと私は思います。しかしながらこの際問題となるのは、財政資金の散布で潤おうのは大企業である。金融の引締めによつて困るのは中小企業であります。私は本日の新聞にも出ているように、金融の引締めを極端にやつて、これから来る購売力を押えて、そこで企業の合理化を進めようなどというような、いわゆる金融資本家のやり方なんていうものは、この財政面における散布超過をむしろ補うどころか、部面が違う大企業は財政散布でこれが大きな収益を増加するが、中小企業がこの自由競争的な金融引締めでばたばた倒れて行く。こうなると、私は本予算案一つの大きな欠陥は、中小企業について何らの思いやりある対策がとられていないということ、これがこの予算の基本的な欠陥であると思うのであります。政府がこの中小企業金融公庫に百億の金を出してつくり上げるというその構想は、かつて中小企業庁でできた二百億円の中小企業資金特別会計、この事務局案を時の池田通商産業大臣は却下したのであるけれども、これをつくつてやろうという、かような中小企業救済に熱心な事務局が、わずか百億の中小企業金融公庫の姿となつて、片や財政の資金散布超過をこのような金融の引揚げで吸収して行くということになれば、これはもう中小企業者はまつたくこの予算執行のもとにおいては惨めなものにならざるを得ない。かように私は考えているのであるが、大蔵大臣はこれに対していかなる救済策の見通しがあるのか伺つておきたいと思います。
  118. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この中小企業金融につきましては、御承知のごとく今度新しくつくるものは中小企業金融公庫の百億円及び開発銀行より支出すべき百二十億円でありますが、そのほかにもあるいは国民金融公庫に対し、あるいは商工中金に対し、そのほかそういうようなことをやりますほかに、御承知のように預託金のいわゆる指定預託等をやつているのでありまして、今度の水害でもすでにさつそく十五億やりましたが、そういうようなぐあいにやつております。さらに今澄さんもよく御承知ですが、やはり資金の一番大きい元になつているものは、何といつても地方銀行が千万円以下のものに貸し出している金額、これは三割二、三分におそらく上つておりましよう。それからいわゆる中央の大都市の銀行におきましても、これは相当額、今のところは二割見当かと思いますが、やはり貸出しをしている。これをふやすことが一番効果がある。従つてそういう方面にいろいろその資金運用方についての勧奨をいたしている次第でございまして、なお公庫が出発した当初においては大体そうでありますが、今後とも資金の必要に応じてやつて参りますから、中小企業にはいろいろな悪いしわを寄せ持つて行かないように、あらゆる努力を傾けるつもりであります。     〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕
  119. 今澄勇

    今澄委員 今の地方銀行の中小企業金融は三割八分に大体なつていると私どもは見ておりますが、これがやはり今度の財政資金の散布超過を金融で引締めるという態度においては、おそらくはまつ先に引揚げるものであろうが、これは大蔵大臣の権力をもつてしてはとめることのできない自由形態にある。だから私はこの予算案は、おそらくは中小企業が塗炭の苦しみにあえぐものであるということをこの際申し上げて、ぜひ御注意を喚起いたしておきますが、時間がありませんので、引続いて、私は金利政策についてお伺いいたしたいと思います。  今や輸出増進のためには、金利の引下げが絶対に必要であることは、この予算案における過日来の公述人のいろいろな御意見からも明らかであります。しかるに財政の散超を金融面から調節しようとするならば、この金利を引下げなければならぬという日本自立経済の貿易達成の一番最大の課題に反して、ある程度今度は金利を上げて行かなければならぬという状態になつて来る。このことはおそらくは大蔵大臣としては注目すべき一番大きな日本経済の当面する矛盾であると考えられるのであります。すでに五分五厘でありました国債の借りかえが六分二厘五毛という高率で、今日借りかえを、政府が発表しなければならぬというそのやり方は、いわゆる金利政策と金融政策というものが、財政資金の散布超過と、いわゆる貸出しの引揚げということとからんで、どこに調整の重点を置いて行つたらいいかという政府の大きなジレンマを、ここに現わしたものであると見なければならぬのであります。大蔵大臣財政金融一本建でやるとおつしやるけれども、さような抽象的な表現では、この上りつつある金利、国債金利の引上げと、しかも日本が輸出のためにはどうしても果さなければならぬ金利の低下という、この矛盾する二つの問題を、大蔵大臣はいかに解決されようとするのか。御答弁願いたいと思います。
  120. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 最初にお答えしておきますが、さつきちよつと御返事を忘れておりましたけれども、私ども財政投融資、いわゆる資金の散布超過、こういうものに何も大企業に偏しているわけではございません。投融資は基幹産業に主として向ける。またいわゆる散布超過に対して金融措置をとります場合には、主として大銀行等のオーバー・ローンその他のものの調節をやる考えでございまして、そういつた中小企業にしわ寄せする考えは毛頭ないということを、最初にお断り申し上げておきます。  次に今いろいろとお話が出ましたが、ちよつと要点は何でしたろうか。
  121. 今澄勇

    今澄委員 輸出をやろうと思えば金利を引下げなければならぬ。それから……。
  122. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 わかりました。その輸出につきましては、私どもは御承知のごとくに輸出入銀行の金利を、あるものは五分に引上げているし、またいわゆる両建預金というものを差止めまして、このごろ実質金利の引下げを行つております。なおできますならば一層金利を引下げたいと思つて、各銀行に呼びかけている次第であります。  公債について今お話がございましたが、公債についての金利はまだきめておりませんが、御承知のごとくにこれは今度の借りかえが約二百億見当あるかと思いますが、この分はいわゆる市中銀行で消化し得る範囲に金利を置きませんと、市中銀行で消化しない場合には、日本銀行の引受けとなつて、いわゆ赤字公債発行と選ぶところがなくなりますから、銀行としてはもつと高い利息を希望しておりますけれども、まず消化可能の一番最小限度の利息というところに持つて参りたいと思つている次第でございます。
  123. 今澄勇

    今澄委員 岡野通産大臣に伺いますが、かように金利がどんどん上げられて、日本自立経済貿易の振興の上に、一体行けるものかどうか。常に大蔵省の考え方というものは、国で自立経済とかなんとか言うているけれども、輸出振興に関してはこういう態度ばかりとつてつて、まことに私は日本自立経済の達成、輸出産業振興の上に大きな妨害をなしていると思うが、ちよつと岡野さんの御意見を伺つておきます。
  124. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。金利政策に関しましては、大蔵大臣の申し上げました通りでございますが、しかしわれわれが輸出貿易を考えます点におきましては、ある特殊な非常に日本の対外的な収支に影響するようなものにつきましては、やはり金利によりましてまずその負担を軽くするというのが得策であると考えまして、今までも造船資金に対する手当をやつておりますが、これは御承知でもございましようが、ただいま太平洋の運賃がハドルという中に、船会社がそのうちニドルの金利を払つている。こういうことでは対外的に国際競争ができませんから、その意味におきまして大きな見地から、輸出貿易を促進するというような意味から、ある特殊の例を開いているわけであります。
  125. 今澄勇

    今澄委員 輸出貿易をやるためには、国家が補助したりしてまで一割近い金利を三割五分にしなければならぬときに、全体的な金利が上つて行こうというような金融政策のもとで、通産大臣が幾らおやりになつても、日本の貿易は振興しないと私は思います。  なお大蔵大臣にもう一つ聞いておきますが、今まで庶民関係から金を吸収しておりました宝くじは、一体大蔵省としては今後も続けておやりになるのか。これは中断をせられるのか。ついでにお伺いをいたしておきます。
  126. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 宝くじについては、競輪とか競馬というものに比べれば、比較的弊害の少い部分ではないかと私は考えております。しかし消化の点等もございまして、今のところはだんだん規模を小さくしておりますが、これから先々は、こういうものは消化の点等を考えると、漸次やめて行くことになるのではないかと思つております。ただ消化する力がありますれば、さらに考えてもよいと存じておりますが、今の傾向はだんだん縮小する傾向にございます。
  127. 今澄勇

    今澄委員 せつかく法務総裁が見えましたからお伺いしますが、この前の不成立予算の際に、警察法、義務教育法等いろいろ予算について出た法律案について、わが党の河野委員からの質問に対して、あなたは、予算の中に金額を計上しないけれども、警察法の改正を出したのは緊急やむを得ざるものであるから、この法案を出したのであるという御説明をせられておりますが、それからわずか半歳もたたざる今日において、この予算案にはこういう警察法等のものがついておらぬのだが、治安がその間に格段の改善を見たのか。どういうわけでこれをおやめになつたのかということを、私は速記録をながめながら不審に思いましたので、お伺いをいたします。
  128. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えをいたします。私法務委員会に出ておりまして失礼いたしました。警察法の改正につきましては、実はただいまでもいろいろ案を練つているわけでありまして、近い将来に再び改正案を提出して、御審議を願いたいと思つております。そこでこの前、国内、国際の情勢が警察法の改正を必要としているとあれほど言つたのに、今度どうして出さないかという御疑念は、一応当然だと思うのであります。国内の情勢から申せば、私は過日どなたかに申し上げましたように、表向きは非常に平穏でありますが、底に流れている空気というものは、やはり軍事訓練をやつたり、武装蜂起の準備をやつておるような向きも見られますので、相当緊張を要すると思つております。また国際情勢も、この前申し上げましたように、国内の擾乱的傾向というものと連関性を持つておりますので、これも十分に治安当局としては戒心を要すると思つております。ですからそういう観点から考えますと、一刻も早く完全なる警察法の改正案の作成に努力して、御審議を願わければならぬ、これが私どもの最善の努めであると思うのでございます。ところがなぜ今なお慎重にやつておるかと申しますと、ごく飾らずに率直に申し上げますが、総選挙後国内の政界分野の変動がありまして、この変動は国民がつくつた変動でありますから、私は敬意を表する必要があると思います。また実際申しまして、特に御承知のように、やはり与党以外の方の考え方というものも再検討する必要があり、私は再検討すべきときであると思つております。かれこれ勘案いたしまして、多数の御協力を得るような改正案をつくりたい。これがごく飾らない心音でございますから、さよう御承知願います。
  129. 今澄勇

    今澄委員 まことに率直な答弁で、私深く追究しませんが、結論としては、われわれは警察法法の悪等には反対であるが、この前、諸般の情勢から行くならば、断じて緊急やむを得ざるものであると、あれほど言つていたのに、この国会には、与党勢力が狭まつたからというて、もうこれを見限るということになると、まことに信念のなき議会における答弁でありまして、真に緊急やむを得ざるものと信ずるならば、議会における反対勢力が多ければ、法務大臣としては責任を負うて辞職をして行くのが、民主政治の新しいあり方だと思う。しかもこれは吉田内閣全体に通じている一つの大きな不明朗であつて、改進党との政策協定の問題といい、今の警察法の問題といい、政府は何らの信念なく、そのとき、そのときの情勢で右顧左眄するものである、私はかように判断しなければならぬと思いますが、法務大臣はいかに考えておられるか。なお私は、法務大臣の考え方の中には、MSAの受入れで、おそらく日本の治安力は、保安隊の実質的な増強の結果、この法律を出さなくても、現状の国内治安の上にはそう心配はないのである、という御判断の上に基かれておるものがあるのではないかと思うのでありますが、この点について法務大臣から明確な御答弁を、もう一度煩わしたいと思います。
  130. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申し上げます。実はMSAとは関係ないのでありまして、ちよつと事件が起れば、すぐ保安隊のごやつかいになるというのでは、世の中がいかにも角々しくなりますので、やはり普通の治安の事件は警察がやるべきだ、こう考えまして、民衆に親しまれながら、しかもしつかりした腰のある警察、なかなかこの二つの課題はむずかしいのでありますが、この調和を考えて今計画しておる次第でございます。
  131. 今澄勇

    今澄委員 そこで話題を転じまして、私は日本で一番大事な貿易振興の問題について伺いたいのであります。時間の関係上、詳しく追究できませんが、一国の総理大臣みずから貿易の振興について、施政演説の中であれだけの時間をさいたということは、私は重大問題であると思つておるのに、その総理の施政演説が終つてまだ間もないのに、世界的な貿易規模の縮小傾向朝鮮休戦に伴う再軍備の緩和、それから来る軍需資材の価格の停滞、生産地帯たるオープン・アカウント地域のドル不足の激化、南方への日本の輸出減少傾向等、現在現われておりまする貿易の現状は、まことに寒心にたえないので、この予算案の最後の質問で、私は日本自立経済の中心である貿易について、少し掘り下げてみたいと思うのでありますが、その前に大蔵大臣に、現在ポンドの手持ちは一体幾らあるか、この間ドルから切りかえたスワツプの二千五百万ドルもほとんど使われたということであるが、ポンドの手持ちの現在高をちよつとお聞きいたしておきたいと思います。
  132. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 日々異動がありますが、五月末で三千万ポンドと考えております。     〔小峯委員長代理退席、委員長着席〕
  133. 今澄勇

    今澄委員 そのポンドが、私はそんなに今あるとは思つておらないのであります。大体私どもは一千万ポンド見当しかないと思う。それで政府はドル地域からの輸入に対して、ここ三箇月の外貨予算もまだ組めないような状態で、まことにあわれさんたんたるものであるが、そういう概括的な答弁ではなくして、もう一度大蔵大臣は念を押してポンドの手持ちを御発表願いたいと思います。  さらにもう一つ、私は先ほど金利の点で申し上げましたが、貿易の振興の一番大事なのはコストの引下げである。このコストの引下げで一番大事な金利は、先ほどお話のような状態であるが、今度また電話料も上る。これらのコストの中心になるべきあらゆるものが、金利、電話料、通信料金とみな上つて来る。そうしてこのコストの低下を一体どこではかるかというのが、私は政府考え方でなければならぬと思う。ちようど労働大臣が見えておられるが、今国会に警察法も出さないし、その他の教育関係の法律も出さないで、スト規制法だけは万難を排して出したというのは、いつに労働者の低賃金で、コストの引下げを行おうという、この内閣の基本的な性格の現われではないか。少くとも金利も上る。電話料も上る、みな上る中で、労働者の賃金に対する一つの大きな圧力として、このスト規制法が今国会に出ているものとすれば、政府の基礎的な政策は、まことに言語道断といわなければならぬ。西ドイツにおいては労働者の賃金は大体日本の三倍である。しかして彼らは民主主義の結果参政権とともに、企業の運営に関する企業権、運営についての発言権を与えられて、ストライキはほとんどない。しかも一その三倍の労賃ででき上つた品物は、日本の品物と比べて四割も安いという、このドイツの現状から見るときに、このコスト高いいうことの一番の中心を労働賃金に置こうとしている政策は、まつたく誤りもまたはなはだしいものであつて、私はこの点を十分ひとつ認識してもらわなければならぬと思うが、労働大臣の御見解を承つておきたいと思います。
  134. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えを申し上げます。今国会にスト規制法案を出しましたのは、さきの国会の審議の際は明らかでございますが、あれは労働者の持つところの争議権を剥奪するものではないのでありまして、本来不当であり、あるいは社会通念上非であるという、こうした争議方法は御遠慮願いたい、こういうことでございます。  ただいま御指摘の西ドイツの場合でございますが、最近におきまして、御承知の同意決定法について注目すべき論文が二つあつたかと思うのであります。一つ経済同友会の郷司浩平君が某新聞紙に寄せられたものであり、一つは世界週報に出ておりました稻葉秀三君の報告であります。この二つの報告を見ておりまして、私ども感じますることは、これは御承知のように一九五一年にできたもので、まだ鉄鋼において実現されているのみでございまして、この全般的な評価については早いと思われますけれども、この報告によりますと、労働者の企業参加というものはある程度形式的なものであり、実態はあくまで経営者側にあるのであつて、こうしたものを日本において適用してもうまく行くまい、こういうものを適用いたしますには、経営参加を認めるだけの基礎的な条件が、まだ日本においてととのつていないのではないか、こういうような報告をされております。またあくまで諮問機関であつて、同意決定の機関ではないというふうに承知しております。  なお賃金でございますが、西ドイツの場合の賃金と単純に比較してみますことは若干問題があるのでありまして、一時間当りの賃金を食糧換算いたしますと、西ドイツが三八、日本が二六ということで、若干西ドイツの方がよくなつておりますが、御指摘のような相違はない、こう考えております。
  135. 今澄勇

    今澄委員 そこで時間がありませんので、私は通産大臣に一つ聞かなければならぬのですが、とにかく輸出に関して船運賃がまた大きな問題で、私どもは諸外国に対抗するために、今度政府がとつた一割の貸付金利を三分五厘とするとの補給的な利子補給の、この竹馬は悪いとは思いません。しかしながらこの船運賃だけ利子補給的な、補給金的な竹馬を継いでおいて、鉄鋼とか石炭とか肥料とかいうような重要基礎産業に補給金を認めなかつた理由を、通産大臣から簡単に承つておきたいと思います。
  136. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。これも今問題になつているところでございまして、研究中でございますが、今お説の補給金ということでございますが、私は利子補給は、まあ補給でもございましようけれども、いわゆる完全な意味の補給じやないと思います。今後やはり石炭とか、鉄鋼というものに対しては、相当金利並びに税法上の措置をしまして、基幹産業を生かして行くという方向に向つて行きたい思います。
  137. 今澄勇

    今澄委員 結局通産省の鉄鋼、石炭、肥料にも補給金をやりたいという事務当局案を、大蔵省との折衝においてけられたということは、もう天下周知の事実であります。私は大蔵大臣に聞きますが、少くとも現在のコストの引下げ、労働賃金その他いろいろな問題をながめてみると、大蔵省が考えているようなこのやり方では、何一つ輸出は伸張しない。この船運賃を引下げるための造船会社に対する金利の補給ということは、少くとも補給金政策の一角が破れたものである、これは何人に聞かしても明白な事実であります。かような補給金的な政策が行われなければ、日本の輸出というものは伸びないものであるという客観的な事実がここに追い込んだのであつて、こういう補給金的な政策をとらなければならぬとするならば、私は大蔵大臣にお伺いをしておきたいのでありますが、こういう統制的な企業経理の監査——日本財政投資といえども、開銀から行われていると言われているが、その開銀には政府が国家資金を出したのである。その国家の金が投げ出されておるところの重要な日本の工業、企業会社で、これらの会社の社用族と称し、宴会、高級自動車、土曜日はいつもゴルフが会社経理のもとにおいて行われておる現状を、このまま見過している、いわゆる開銀の財政投資を国民は許さないであろうとともに、もう一つは今こういう補給金政策が行われるとすれば、少くとも政府はこれらのいわゆる重要基礎産業について、経理監査並びにその資金の使い方について、いま少しく私は何か国民にこたえるべき政策をとらなければならぬと思うがこれに対する大蔵大臣の御意見を承つておきたいと思います。
  138. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 大蔵省としましては、そういう種類の会社に対しましては、各種の計表を徴し、監査することもできることになつておるのでありまして、今後とも厳重監査の実をあげて行きたいと考えております。なお今いろいろお話がありましたけれども、私どもは補給金制度というものはやはりすべきものでない。金利の補給というものは、どこの国でもやつておるのであります。しかし補給金というものを直接やることになると、すぐにそれが各国にいろいろな衝動を与えまして、その結果は決してよくございません。私どもも税制の面、金融の面、金利の面その他で大蔵省がやり得る輸出奨励制度をとつておることは、各項目をごらんになれば、よく御承知通りであると存じます。
  139. 今澄勇

    今澄委員 私は今のいわゆる財政投資は、輸出産業の基礎をつちかうために重点的になすべきであつて、補給金政案をわれわれも急にとろうとするものではないが、かかる総花的な財政投資、しかもそれに伴う政府の監督を何らしない態度、しかも高級自動車の氾濫という今日の現状は、私は大まかに見て吉田内閣のいわゆる自由経済という名のもとにおいては、なかなか是正することのできない現状で、これが日本の輸出貿易を阻害しておる最大の原因であると思うが、これらの問題について、特に輸出の振興を念願しておられる総理大臣は、いかようにお考えになりますか、お答弁願いたいと思います。
  140. 吉田茂

    吉田国務大臣 輸出の奨励については、今大蔵大臣からすでにお答えした通りでありますが、この輸出振興のためには、あるいは輸入を抑制するとか、またその他の方法もありましようが、とにかく国民がなるべく耐乏生活に耐えて、そうして消費経済の方に行かずに、金利もしくは生産費等を下げて参つて、国際競争に耐えるようにして行くのが、本筋ではないかと思つております。
  141. 尾崎末吉

    尾崎委員長 今澄君に申し上げます。もう時間が少しでありますから簡潔に願います。
  142. 今澄勇

    今澄委員 いま五分予定時間があるから聞きますが、大蔵大臣に、今の日本の約十億ドルと言われておる外貨は、国内銀行に幾ら預けてその金利は幾ら、外国銀行に幾ら預けて、これは私はほとんど無利子と思うが、その利子は何分であるか、ちよつとここで御報告願いたいと思います。
  143. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 現在のところドルに換算しまして大体九億八千万ドル見当かと思います。これは日々動いております。そのうち大体八割は外銀に預託しております。日本の銀行にも約一億ドル預託しております。なお外国銀行の分は大部分は定則預金になつてつて、利回りは一分四分の三、こういうふうになつております。
  144. 今澄勇

    今澄委員 私の申し上げたいのは、たとえば四分の利子を日本の国内為替銀行に預けてとるとすれば、十億ドルとして年間に四千万ドルの収入であるが、分程度の利子で安く外国銀行に預けておれば年間千万ドルの収入である。日本がこれらの外貨の預け先を日本の国内銀行にかえるだけで、かような大きな収益があるにもかかわらず、これを放置していつまでも外国銀行に預けておるということは、まことに政府の怠慢であると思うが一体どうか。  それからもう一つ、この外貨はどれだけあれば日本の貿易の基礎として適当であるか、日本の通貨安定の基礎として、将来の金本位等ともにらんで、一体どの程度握つておればよいか。もし過剰の外貨が残るとすれば、国内の生産その他の投資に使うのではなくて、東南アジア等にクレジツトを与えて、東南アジア各国の購買力を高めて、賠償の問題ともからみ、日本の輸出貿易を盛んにするということが、私は現下一番適当な方策であると思うが、これについて大蔵大臣見解を承つておきたいと思います。
  145. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 大部分が定期預金になつておるということは申し上げた通りでありまして、定期預金は国際的にそういうふうになつておるのであります。それからこれは日本の銀行へも必要に応じて預託するように考えております。  それから今お話の通貨の安定についての外貨の用については、現在のところ御承知のように日本の輸入、国際的の支払いと合せ大体二十億ほどあります。従いまして現在の九億ではその半ばにも満たないという状況であります。さらにまた日本の特需というものが、二十七年度の例で見ると八億ドルからあるが、それをわずかに出ておるという程度であります。従つてどもはこの程度の外貨は必要がある、こういうふうに考えておる次第であります。もつとも、これがずつと引続いてこういう外貨があるという見込みでありますれば、これはまた別に考えをしなければなりませんが、いわゆる特需等が漸減しても、自立経済が立つて行くようにという考え方でおりますから、さように考えておる次第であります。
  146. 今澄勇

    今澄委員 今の日本経済の一番大きな最後のかなめは外貨である。これは日本の通貨の安定、貿易の振興、並びに将来の賠償、いろいろな問題に十分活用しなければならぬのに、今の大蔵大臣の答弁では、私ども国民代表としてまことに寒心にたえない。  私は岡崎、木村両大臣にも聞きたいことがあるが、時間がないので総理に最後に総括して聞きます。総理大臣は第四次吉田内閣が成立してから今日まで、一例を農林大臣にとるならば小笠原さんが十月就任、十二月廣川さんが就任、三月田子さんが就任、五月には内田さんが大臣に就任して、六月には保利さんが就任、わずか六箇月のうちに五名も大臣がかわつておるのであるが、これは病気であるとか何であるとかいうようなことでは、とても説明することのできない一つの異変でなければならぬと思います。一体総理は各省大臣というものをどういうふうにお考えになつておるのか、ちよつとお伺いしておきたいと思います。
  147. 吉田茂

    吉田国務大臣 各省大臣は重要な地位でありまして、軽々に更迭いたす考えはありませんが、病気その他のやむを得ざる事情でかえたのであります。
  148. 今澄勇

    今澄委員 総理大臣の今の答弁では側としても満足ができない。わずか六箇月の間に総理大臣が農林大臣を五名もとりかえて、しかも政策的には竹馬的な米の二重価格であるとか、あるいは利子の補給であるとかいうようなところまでも妥協をしなくてはならないで、しかも保安庁長官は、おそらくは総理大臣と打合せたこともあるのじやないかと思うけれども、出すべき防衛計画も、国民ひとしく知つておるけれどもこれも出さない、外務大臣にしても、アメリカとの交渉においてはMSAを初めあらゆる対米債権その他一切のものが、御承知のように非常に不明朗で、国民を非常な当惑のうちに置いておるのであるから、吉田さんはこの際政策協定などをして、自由党の基礎的な政策を妥協するよりも、六箇月間に大臣を五人もかえなければならないような状態であるとするならば、閣僚の地位を重んずるものとするならば、総理自身も責任をとらなければならないような状態にあると私は考える。総理大臣のこれに対する見解を伺つて賛同を終ります。
  149. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えいたします。これはやむを得ざる必要があるならば、半日といえどもとりかえます。
  150. 尾崎末吉

  151. 河野一郎

    河野(一)委員 私はこの際総理大臣その他に二つの点についてお尋ねをいたしたいのであります。第一問は保安隊の問題についてお尋ねをいたしたい。この際まことに恐縮ですが、総理大臣から保安隊の使命ということについて、ちよつとひとつお答えおき願いたいと思います。
  152. 吉田茂

    吉田国務大臣 保安隊の使命は国内の治安を維持して、そうして国の安定を保ち、秩序を保つのを任務といたします。
  153. 河野一郎

    河野(一)委員 よくお聞きをいただきたいのですが、今の御答弁はけつこうでございます。しからばそれはいつごろの治安を維持するつもりでおやりになるのですか。
  154. 吉田茂

    吉田国務大臣 保安大臣からお答えします。
  155. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 治安はその情勢いかんによつて終始かわるものであります。しかしながらわれわれは現下の情勢を常に直視いたして、それに万違算のないように措置することを研究し、またとりはからいます。
  156. 河野一郎

    河野(一)委員 それならば、総理大臣お答えでなくともけつこうです。重ねて申し上げておきますが、締めくくりでありますから特に総理大臣御出席のもとに私は承つておりますので、各閣僚の答弁は即総理大臣の答弁として了承いたします。そういうことで今の保安庁長官の御答弁、これは今晩の治安も責任をお待ちになることができますか。
  157. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 今晩とは限らず、終始日本の治安情勢をよく直視して、万違算のないようにするのが、その使命であります。
  158. 河野一郎

    河野(一)委員 私はここに速記録を朗読いたしますが……。     〔「予算を半分に削られてどうするのだ」と呼び、その他発言する者あり〕
  159. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御静粛に願います。
  160. 河野一郎

    河野(一)委員 総理大臣、あなたのお留守のうちに保安庁長官がこういう答弁をしておられる。これを私は非常に重大に考えます。この速記録を全国の国民は読みます。読んだときに、一体今私がなぜこういうばかばかしいお尋ねをしたかという問題がわかつて来る。あなたはこういう答弁をしていらつしやる。たとえば保安隊の編成、装備について同僚辻君の質問に対して、こういう答弁が速記録に載つている。「お答えいたします。まず編成の点でありますが、お説の点ごもつともであります。十分に研究して、どういうぐあいにして行くかということについてまだ結論を得ませんが、今のままではいかぬと考えております。」それから辻君から今の保安隊はだめだ、こういう点においていけない、アメリカのまねしておるのだし、こういうむだがあると言われた。それはあなたはことごとくおわかりだろうと思う。あなたの答弁はことごとく辻君の意見を肯定して、今言うように、編成の点については今のままではいけないと思つている、こういうように速記録に出ておるのです。それから装備の点についても、「ただいまの段階におきましては、これは十分なものではないと考えす。また適切なものではないと考えます。この点につきましては今後大いに研究して、保安隊として有効適切なものに切りかえて行きたいと考えます。」こう言つておられる。われわれ国民は、総理の今の保安隊の使命についての御答弁を承つて、国内治安は警察力をもつてしては十分でないという場合を考慮して、貴重な国費を千数百億これに使うということなのです。にもかかわらず保安隊の責任者たるあなたの答弁がこういうふうな、編成の点についてもかえて行かなければいけないんだ、装備の点についてもそうなんだという答弁でありますと、一体この保安隊をいつ使うつもりなのか、いつになればこれは一人前に使えるのだという疑問が起ることは、当然だと私は思うのですが、一体この答弁はこれでよろしいのですか、どうですか。
  161. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。私はこれでいいと思つております。この辻君との質疑応答は、私はしごく剴切なものと考えております。と申しますのは、御承知通り保安隊は昨年十一月に警察予備隊から切りかえられたのです。警察予備隊は発足後約三箇年、この三箇年の間にいろいろの変化があつたのであります。そこで編成、装備の点でも一応はやつておりますが、われわれといたしましてはだんだんこれを日本的のものに修正して、よりよいものにして行きたい、これが念願であります。この編成の点におきましても、ただいま各管区一万五千をもつて編成しておるのであります。これにも十分の検討を加える余地がある。これを申しておるのであります。ただいまの治安情勢にかんがみて今の編成では、これはなおよく研究して修正すべきものがあれば修正して行きたい、これなんであります。また装備の点におきましても、これは完璧なものではないと私は思います。十分に研究して、よりよい装備を持たしてやりたい、これなんであります。決して私は現在の編成、装備の点において、日本の治安が維持されないとは申しておりません。われわれは日進月歩でありますから、よく考えて万違算のないように、修正すべきものは修正し、謙虚な気持でこの保安隊の育成に当りたい、こう考えております。
  162. 河野一郎

    河野(一)委員 この席でつまらぬ形容詞をいくら使つたつてだめですよ。そんなうまいことをあなたがたがいくら言つたからといつて、それによつてどうということはない。こういうふうなことでこの日進月歩だとか——何が一体日進月歩ですか。(笑声)そんな形容詞は一体何になりますか。そういうことではない。保安隊の装備、編成が今のでいけないということをあなたがお認めになるならば、なぜすぐにかえないか。いけないと認められてどういうふうにかえられるつもりか、御意見を承りたい。
  163. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 全部いけないとは言つておりません。改正すべきものは改正いたしたい。ことに編成のことについては、治安情勢の変化において、われわれ今一管区一万五千のものを何名に縮減して、そして管区を多くするかということは、十分に研究してやるべきものであると考えております。
  164. 河野一郎

    河野(一)委員 時間がありませんから簡単にやります。それならば承ります。あなたは辻君から指摘されてから、そういう御心境になつたのか、辻君から指摘される前から、そういう御心境であつたのか、御答弁願います。
  165. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 もより前から研究中であるのであります。われわれもこの研究の結果によつて、この編成について改正すべきものは改正したいという気持でおつたところが、たまたま辻君からそういう質問がありましたから、私はまさにその通りである、こう答えたのであります。
  166. 河野一郎

    河野(一)委員 前からそういうふうに悪いということはわかつてつた、こう言うことは予算を最小限度に切り詰めなければいかぬ。辻君の意見によれば、日本の国内の治安の維持ならば、一万数千はいらない、平時編成でよろしい、八千でよろしいというようなことが書いてある。そういうふうなことをごもつともでございますとあなたがおつしやるならば、なぜそういうふうにやらないのか、前からわかつておるならば、なぜそういうふうに予算も少くして要求されないのか、一体どれがほんとうかわからぬじやありませんか。防衛五箇年計画をつくつた新聞にしやべつたかと思うと、しやべらぬと言つてみたり、総理に出したと言つたかと思うと、それは出さぬと言つてみたり、あなたのおやりになることは全然信念がないじやありませんか。いやしくも一国の国務大臣、しかも治安の衝に立つ者が、これはこれで完璧なものではない、そんなばかな答弁をされる人があるものですか。自分が責任を持つておる以上は、これが最善だ、常にこれが最善なりという自信がなければいけないじやないですか。それを、自分がやつておる、責任の担当者がこれは最善ではないのだ、これではまずいのだ、まずいとわかつておる、かえなければいけないのだということを知りながら平気でおる、しかもそれを平気で国民に対してそういう答弁をするなんていうばかなことがあるわけはないじやありませんか。それを謙虚な気持でやるのだ、謙虚な気持はけつこうだが、そういうふうに自分がやつておることは全然まずいのだというようなことでは、今日国内治安は、先般の犬養法務相の答弁によつても、いろいろな点において非常にめんどうなことがあるのだ。そういうふうなことがあるから、われわれは法安庁費におきましても、ほんとうならもつと削りたい、もつと大きく削りたいのだけれども、一方においてそういうふうな治安の点もあるからがまんをしておる。ところがせつかくかけるその金が、今あなたがここで答弁されておるようなことであるならば、てんでなつていないじやありませんか、編成だつてかえようと思えばかえる点がある。装備もまだこれではうまくないのだ、うまくないからかえるのだと言つているうちに、重大な事態が起つたらどうするか。そのあとになつてあなたが腹を切つたつて間に合わない。あなたはときどき腹を切る切るとおつしやるが、あなたの腹なんか幾つ切つたつて問題にならぬですよ。(笑声)そんなことではない。さらにこの間の答弁によれば、持つておる装備にしてもそうだ、武器にしてもそうだ、これはアメリカのスクラツプみたいなものではないかと辻君が言えば、それについてあなたはある程度肯定しておられる。戦車のごときも、こんなものは日本に向かないと言えば、それもそうだそうだ。ことごとく辻君の言うことをあなたは肯定しておるではないか。こんなことでもつて保安隊の責任者がのろのろしておる。われわれはこんなばかばかしいものとは思つていなかつた日本中こんなばかばかしいものとは思うていなかつた。こんなつまらぬことをやつておるのなら、これだけの貴重な予算をかけてたまるものですか。総理大臣、今の点について一体どうお考えになりますか。
  167. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私から御答弁いたします。(「総理心々」と呼ぶ者あり)よく速記録をごらんください。今の保安隊はさようなものでは決してないのであります。と申すのは、今仰せになつた武器、これは日本製ではないのでありますよ。アメリカから借りておるのでありますよ。アメリカから借りておるのは万全ということは言えません。それは日本の青年によく適当するものをつくつて持たせたいというのが私の気持であります。しかし日本財政からいつてやむを得ない。やむを得ないからアメリカから借りておる。これは文句は言えない。どうぞ河野君ももう少し予算をお考えになつてつていただきたい。編成もそうです。
  168. 河野一郎

    河野(一)委員 よろしい、そこで……。
  169. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 いや、よろしい、私も答弁する。——編成も私は完全なものとは言つていない。この編成も、十一万をどういうぐあいに編成して持つて行くかということは、これは大問題なんだ。そこにわれわれは終始研究しておる。必ずしもわれわれは現在のものを完全無欠なものとは思つていない。世の中に完全無欠なものはないのでありますから、終始われわれは研究し、研究を重ねて、よりよいものにするということは、当然のことであると私は考えておる。
  170. 河野一郎

    河野(一)委員 一体、アメリカのものを借りているのだから仕方がない——借りて演習をやるのならいいですよ、観兵式をやるのならいいですよ、けいこをするのならそれでよろしい。治安が一朝重大な段階に今晩にでもなつたら、これは、アメリカから借りているものだから間に合わないで済みますか。こんなものでは間に合わない、アメリカから借りているものだから仕方がない。こういう戦車では通れる橋があまりない。渡れる橋も少いというような戦車を、幾らそろえておいたところが、一つの師団に二千両のトラツクを置いたところが、それじやだめだろう。そういうようなことではいけない。借り物の兵器だからだめだ、借り物の兵器だから十分なことはできない。予算がない。予算がないなら、なぜ予算を要求なさいませんか。国内の治安が大事か、予算が少いから国内の治安が維持できなくても、そうなつてもやむを得ぬという考えか、どつちなんだ。
  171. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 それだから、二十八年度予算においてわれわれは要求しておるのであります。しかし、アメリカから借りたものを、全部私は廃品とは申しておりません。よく速記録をごらんなさい。使えるものは大いに使えるのだ。しかし、M二四というあの戦車は、もちろんこれは大きなものであつて日本の間に合わないと言つておる。但し、これは訓練用においてわれわれは大いに使うのだ、こう言つておるのです。
  172. 河野一郎

    河野(一)委員 それだからぼくが言うているのではありませんか。この保安隊はいつから使うのだ。二十八年度の予算で要求しているじやないかと言つておるが、二十八年度予算が通らなければ使い道がない保安隊じやないか、だから私は言つている。二十八年度の予算を要求しているというが、二十八年度の予算が通つて、ほんとうに間に合う武器を持たなければ、間に合わぬ保安隊だと言つておる。
  173. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。決して間に合わないとは言いません。M二四の戦車は間に合わなくても、ほかのものが間に合うのであります。保安隊は精神力が旺盛であつて、ただいま持つておるもので十分に間に合うのであります。御安心ください。
  174. 河野一郎

    河野(一)委員 そういう精神力が旺盛だという、精神力で片づけるのは東条と同じだ。武器がないのかといえば、精神力で片づけるということで……(「飛躍しているぞ」と呼ぶ者あり)飛躍じやない。速記録を読んで見たまえ。  総理大臣、私は総理大臣に承りたい。今のようなことで——こういう答弁をなさなければよろしい。こういう答弁をなさるから、私はこういう疑問を持つた。よろしゆうございますか。こういう答弁をあなたがして、そうして編成においても、直さなければいけない。今のものではうまくないのだ——それはほんとうだと思う。あなたはほんとうのことを言われたと思う。ほんとうのことを言えばこういうことになるというのでは、困つたものだという議論が起つて来る。私たちは今までこういうことはわからぬから、速記録を読んで初めて気がついた。気がつけば、国民は皆、私と同じ考えを持つて保安隊というものは、一体何をやつているのだということになる。だから専門家の意見を聞いてみなければ、これはわからぬということになる。そうすると、あなたの今言われるような答弁では、武器は二十八年度の予算を、だから要求しているではないかというなら、二十八年度の予算が通つて、鉄砲ができて、大砲ができるころにならなければ、間に合わないということになるのはあたりまえじやないか。兵器はだめだというのだから、まぜこぜの鉄砲で、こういう鉄砲もあれば、ああいう鉄砲もある。銃火器を持つて来ても、こんなのもあれば、あんなのもある。だから、戦争のときには間に合わないということを、辻君が指摘したら、大体その通りだと言つておる。それじやそういう疑問を持つのはあたりまえじやありませんか。それだから言うのです。
  175. 尾崎末吉

    尾崎委員長 質疑応答はなるべくお静かに、なるべく徹底するように、お願いたいします。
  176. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。速記録をよくごらんなさい。私はアメリカから借りておる武器は全部間に合わぬとは申しておりません。十分に間い合うものもあるのだ、しかしわれわれとしては、なるたけ日本の青年に合うような武器を持たせてやりたい、これが私の希望であるのであります。今のアメリカから借りておる武器では、ただいまのところ十分にこれをこなして行くことは、確信を持つておるのであります。ただ戦車については、これは日本の道路には不適当である、こういうことを私は申しておるのであります。
  177. 河野一郎

    河野(一)委員 まあ大体これだけ指摘しておけば、総理も聞いておつて、多少はわかつたろうと思うから、この問題はこの程度で私は言いません。言いませんが、木村さんも言葉じりをつかまえるようなことを言つて、速記録をよく読めばわかる——よく読まなくてもわかるようなことになつていなければだめです。よく読まなければわからぬというようなことではだめだ。そうでなしに、あなたも、気持はこうだとか、こういうような言葉が入つているとかいうようなところまで行かなければ、あとになつて弁明しなければわからぬようなことでは困るのであつて、この速記録をそのまま、辻君の質問とあの答弁とをそのまま読みますと、あなたが今ここでお答えになつているようなことにはならないのです。ならないから私はあえて申し上げたのであつて、その通りわかるようなら、何もこんなところで持ち出しはせぬ。その点をよく反省なさつて、そして今の保安隊の行き方が、アメリカの強い圧力を受けているために、これでは困るのだ、これはこうしたいのだ、やるなら早くやるとか、今のままではだめならためとか言うて、しつかりなさらぬとだめだということを私は強く指摘する。ひとつ申し上げることを十分に冷静にお聞きおきをいただきたい。この点は総理にもあらためてここで所見をただすべきでありますけれども、これはあとのことで承らなければなりませんから、総理はよくお聞きになり、同時にまた速記録をお読みになつて、そういうものではだめなんだということを自覚していただかないと、日本の治安の責任を持つ者といたしましては非常に心細いものである、また、専門家は、心細いものであつて、今の保安隊ではだめだということを言う人がたくさんあるのであります。あるから言うのです。このことをひとつ御自覚願いたいと思う。  そこで次に私は総理大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、きようはこまかな質問はやめまして、総括的にひとつ二、三お尋ねをいたしたいと思うのであります。第一は先般の総理の御答弁によりまして、アメリカかがガリオア、イロア等の物資が二十億か、二十一億ドルわが国に来ておるということは事実であります。ところがこの二十億前後のものを、私が通産当局から詳細にわたつて内容を資料としてちようだいいたしまして、いろいろ検討もいたしてみましたが、この十二億前後のものがわが国に入つて、これがどう処理れたか、どういうふうにこれがわが国の資産として残つておるかということを検討いたしますと、大体九億ドル程度のものはわが国の資産勘定にこれを計算することができるのであります。ところが少くとも十億ドル程度のものがどこへどういうふうになつたのか、これはわからないのであります。私の調査ではわかりませんが、占領中非常に長期にわたつて総理大臣並びに外務大臣を務めておいでた総理から、この点についてひとつ御説明を願いたいと思います。
  178. 吉田茂

    吉田国務大臣 所管大臣からお答えいたします。
  179. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 かわつて私から申し上げさせていただきますが、これは御承知通りに、向うでは二十一億五千万ドルと書いておるそうでございます。しかしわれわれがたしか向うからの勘定と合せまして積み立てておりますのは、見返り資金特別会計として八億四千七百万ドルであります。そういたしますと、十一億五千三百万ドルは——億四千七百万ドルは見返り資金で積み立てております。そうしますと御質問の十一億五千三百万ドルはどうしたのか、こういう御質問であると私は解釈いたします。そこでこれは、あの当時は御承知通りに外貨資金は全部向うが持つておりまして、操作をしております。貿易特別会計でいろいろ輸出とか輸入とか、ガリオアが入つて来るとか、そしてそれをどうするとかいうことを整理しておつたのですが、それを考えてみますと、特別会計は御承知のように一般会計のように値段も、価格も標準がないのであります。一般会計では価格は幾ら、こういうことになります。そういたしますと、向うから金が入つて来ますが、その金がどうなつたかと申しますと、日本で原材料をとにかく向うから入れます。そうしますと輸入品は外国が高い場合もございます。しかし当時マル公でございますから、日本の内地には非常に安く売らなければならぬ、こういう点で、まず食い込まれる。それからまたその当時はインフレが非常に盛んなときでございました。外国へ物を輸出しようといたしますときに輸出ができないのです。しかしやはり当時、外国に物を出さなければなりませんから、内地でインフレが高進して非常に高いものになつているものを買い込みまして、外国の非常に安い値段に換算する、こういうふうに売つた、すなわち輸出入の調整に用いられたと認められるわけであります。そこでその点がどういうふうになつているかということは、これはもうわれわれとしてはどうしてもわかりませんものでございますから、その当時の措置といたしましては、総司令部が一手に握つておられたものでありますから、どういうふうになりましたか、内容はわかりませんが、ただいま申し上げましたように、日本のインフレ高進において物価か……。
  180. 河野一郎

    河野(一)委員 インフレは同じではありませんか。向うの物を持つて来て、こつちで同じで売れるのですから……。
  181. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 内地はマル公でありますから、高くは売れないのです。
  182. 河野一郎

    河野(一)委員 君がわからなければ、総理大臣が答弁をしたらいいじやないか。——総理大臣が御答弁がありませんから、重ねて承りますが、今の通産大臣の御答弁では、結局わからないのだということなんですが、これは今通産大臣になられた岡野さんから聞くのは、私は無理だと思うのです。またあなたがこれについてとやかく言う筋合いのものではないと思うのです。その当時から引続いて外務大臣総理大臣をやつておられるから、吉田さんからひとつ承つてみたい、こういうことで、私は承つておるのです。なぜ私がこれを質問するかと言いますと、とにかく占領中とは申しながら、今申し上げますように厳密に計算しますと、八億四千万ドルに、先般私が指摘いたしました四千七百万ドルか何かある。そのほかにも貿易特別会計から一般会計に繰入れた六、七十億のものがある。そういうものと全部通算いたしますと、私は約九億ドルから九億五千万ドルというふうに計算する。そうするとどうしてもここに十億ドルないし十一億ドル、日本の金にすれば、少くとも三千五百億から四千億円に該当する金が、議会も知らなければ国民もわからぬうちに、これがわからぬなりになつてしまつたということでは困る。一体これはどこにどういう原因があつて、どういう関係でということを、わかる範囲のことは知らすといい。また調べてこれを明らかにするということが、当然の責務だと私は思うのです。これを全然なさずに、過ぎてしまつたことだから、これはわからないのだというようなことで、先般総理もお話になります通りに、ガリオアその他のものはアメリカでは払えとはまだ言わない、言わないが日本国民の名誉にかけても、これは払うという気持を持たなければいかぬのだというお話でございましたが、私もそれは総理とまつたく同感だ。しかしそれならば、それがほんとうに二十億ドルなのか二十一億ドルなのかということが明確にならなければ、われわれはこれを承認する必要はない、断じて日本国民の名誉にかけて承認する必要はない、払う必要はないと私は思う。その点について明確であり、われわれが断じてこれは責任を負うべきものだ、国民が負うべきものだということであれば、私は総理とまつたく同感であるが、その基礎が何のことかわからぬ。外交が軟弱であつて向うから一方的に通告されたから、そのままこれを了承するのだということで、だれが一体これを払いますか。しかも日本国民は一ぺん金を払つてつておるのです。来たものは金を払つてつておる。ただこれをもらつて食つちやつたわけでも、着ちやつたわけでもない。大部分はわれわれが金を払つてつておる。それを政府当局が為替が上つたとか下つたとか、インフレであつたとかなかつたとかいうようなことで、予算とも関係がなければ、議会とも関係がないうちに、これがいつの間にやら、やみからやみに消えてしまつてわからぬということで一体済みますか、この点を明確にしてもらいたい。年限がたてばたつほど、わからなくなると思う。そうしてわからなくなつたから、だれが責任をとるかわからぬということでは、国民として、はなはだ迷惑千万であります。
  183. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。当時私は通産大臣をしておりませんから……。     〔「あなたではわからない」と呼び、その他発言する者多し〕
  184. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御静粛に願います。
  185. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 しかしながらただいまの考え方といたしましては、結局今仰せのことはガリオア、イロアというものが、ぜひ払わなければならぬという前提のもとにおいて、不明確では困るとおつしやるのです。そこでわれわれは債務と心得ておるということなんです。   「総理大臣が払うと言つたじやな   いか」と呼び、その他発言する者   あり〕
  186. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御質問は、委員長の許可を受けて発言してください。
  187. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 債務と心得る。しかし今後これが向うとの話合いによりまして、どういうふうな内容になるかということがきまらなければ、債務に確定はいたしません。しかしわれわれとしては概括的に債務と心得る。しかしながらこれが債務になるときには、むろん国会の承認を得なければなりませんし、その事前においては、十分日米両国がこれを検討しまして、なるほどそれはもらつたものである、それはそういうものでない、ということはやらなければならぬ。しかし先ほども申しました通り、二十四年四月一日以降において、見返り資金ができた以後ははつきりしております。それ以前のことは、まつたはつきりしてない、こういうことであります。
  188. 河野一郎

    河野(一)委員 そういうことだから、なるべく早くこういうことは、はつきりしておかなければいかぬではないか。政府の内部でもわからぬ。わからぬことがだんだん年限がたつて行けば、ますますわからなくなつてしまうではないか。一体国民から言えば、それは政府に金を払つたのです。ただで国民はもらつたのではありません。国民からはみな金をとつておいて、しかもその金がつじつまが合わない、こういうことになつておるからおかしいと言うのです。だから明確にしておかなければ、われわれは納得ができないと言うのです。それをただ政府は、アメリカがやつたのだから、わからないというようなことで一体済みますか。なぜそのときにはつきりしないのですか。今からでもおそくない、なぜはつきりしないのです。国民の方からはちやんと金をとつた国民から金をとつておきながら、そうして一方アメリカから、これだけやつたという通告がちやんと政府に来ております。アメリカの方からは通告が来ておる、国民の方からは金をとつた。ところが中に入つておる政府が、その金をどうしたかわからぬ。アメリカから言つて来たものが自分のふに落ちなければ、アメリカの方から通告を受けたときに、この通告は了承できませんと、なぜおつしやらぬのか。     〔発言する者あり〕
  189. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御静粛に願います。
  190. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 アメリカから通告が来たということは、私は承知しておりません。二十一億五千万ドルということは、向うの教書に載つていることを知つておるだけでございます。
  191. 河野一郎

    河野(一)委員 そうすると日本政府とし、またわれわれとしましては、向うからはガリオア、イロアに対しては幾らというようなことは全然言うていない、そういう通告もなければ、われわれの方においては、そういう金額については、責任を負う必要はなしということに了承してよろしゆうございますか。(「外務大臣だ」と呼ぶ者あり)
  192. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 私でいけなければ、外務大臣にも答弁させますけれども、われわれは二十一億五千万ドルという数字は、向うの書類で見たのでございまして、そういうものは少くとも通産大臣の権限内では受付けておりません。
  193. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 この前も申しました通り、占領中からガリオア・イロアの問題を明確にしようという先方の希望は承知しております。しかしこちらにもまだ調べる書類が十分ないのだ、その当時はまだできないという返事をいたしておりましたが、その後も先方から数字はこれだけだということを言つて来たことはないのであります。先方態度は、おそらく話を始めるとすれば、そこで先方の資料を出してこれだけあるということの説明をするだろうと思いますが、しかしその額が何であるかというようなことはまだ全然言つて来ておりません。
  194. 河野一郎

    河野(一)委員 そうすると先方からも言つて来ぬが、こちらにも資料がないというようなことになると、一体これはどういうことになるのですか。この点を総理大臣から承りたいのですが、今でわからぬものは先に行けば行くほどわからなくなるという気持がするのですが、どういうことになりますか。総理大臣御答弁願います。
  195. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 私の方は実は交渉をするときにはその係になると思いますが、ただいまのみならず、前から不完全ではありましようけれども、書類とか材料とかいうものが全然ないわけではないと思つて、その当時の関係しておる各省、たとえば貿易庁もありましようし、そのときの通産省に当るものもありましよう。そういう方面にはできるだけ資料を集めるようには頼んでおきました。
  196. 河野一郎

    河野(一)委員 総理は三十分にお出かけだそうですが、そういう今の岡崎君のような答弁で、ただ今ここへ出て来て思いつきの答弁をされては困る。これは重大な問題ですから。今のように方々に頼んである——頼んであつたところが今わかつていない。私は分科会で請求して現在政府にある——私にうそのことを言うなら別ですよ。うそでなしに政府が責任を持つて議会に提出した資料であるとするならば、これはわかつていない。私はきよう午後政府から資料をちようだいした。この資料によればわからないのです。これはわからないのだから、それを今あなたのようなことを言つて、この場の答弁をごまかして行くようなことでは困る。質問の時間は私は責任を持ちますが、この予算委員会を通じてはつきり申し上げておく。吉田総理は、この日米間における占領中における国民の負担に関する非常に多額の金額について、政府は怠慢にして何らその処置を講ぜず、しかもわれわれより質問をすれば答弁をせず、これでは国民としては全然政府を信頼することはできないという結論にならざるを得ぬのであります。特に本日の質問においてわれわれ国民がガリオア・イロア等によつて得たところの援助物資については、それぞれ通産省の係官の説明によりましても、当時のマル公によつてこれは処分した、国民はマル公によつて払下げを受けておる、そうしてそれぞれしかるべき金額、代償を払つておる、そうして金は払つた国民の側からは金は払つたが、米国のいうところの二十一億のこれらの物資に対して、政府はその物資をどこへどういうふうに処分したか存じませんが、この委員会質問を通じては遺憾ながら明確にならない。ただ明確になつたものは、八億数千万ドル、それから私が指摘いたしました四千七百万ドルの対米未決済の債権、それから貿易特別会計か何かのしりの一般会計に繰入れた六百何億、これだけのものがあるけれども、その他の十一億ドル、約四千億になんなんとするものについては、まつたくわからないという結論に達したということになるのであります。これは私は全国民とともに、吉田さんの遺憾ながらこれが税政の第一であるということを、鼓を鳴らして攻撃せざるを得ぬのでありますが、これに対して総理はこの際率直なる所見を述べられんことを希望します。
  197. 吉田茂

    吉田国務大臣 この問題はしばしば申しますが、ガリオア資金にしても、これは向うは債権として考えているわけではないが、日本として払うべきものは払う、いかなるものを払うか、どれだけ払うかということは、交渉の上において米国から資料を取寄せ、日本の資料と突き合せた上で初めてわかるものであります。しこうして今お尋ねの問題については、いずれ通産省から資料を添えてお話を申し上げます。
  198. 尾崎末吉

  199. 河野一郎

    河野(一)委員 私は総理に……。
  200. 尾崎末吉

    尾崎委員長 それじやもう一問に願います。
  201. 河野一郎

    河野(一)委員 対米の債務があるとかないとかということは別にします。対米の債務はあるとか、ないとかいうことは別にしましても、アメリカからこれだけの物資が入つた、入つたというこの事実に対して、わが国内においてこれが換金された、金にかえられてこれが国庫に入つた、それは今申し上げた通りなんです。そうすると、ここに行方不明になつたわけのわからぬ国会の承認、国民の了解を得ないでかつてにされた金が四千億あるという、この事実は動かすことができない。これま先ほどの通産大臣の答弁によつても、貿易のしりがどうとか、インフレであつたとか、なかつたとかいうようなことならば、その都度なぜ国会の承認を得ておやりにならないか。国会には何ら関係を持たず、国民には何ら了解を持たずに、今日この段階においてこれが問題になるということは、はなはだ遺憾だ。独立中といえども議会の承認はことごとに予算、決算みな会計法によつてつて来たのであります。これを何らの話なしに——独立してからでもよろしい。こういう事態になつたことははなはだ遺憾だという国民に遺憾の意の一片の表明もなしに、そうしてのんべんくらりと大きな顔をして国会を通ろうというようなことは、断じて国民として許すわけに参らぬということを通告して私の質問をやめます。
  202. 尾崎末吉

    尾崎委員長 福田赳夫君。     〔「総理は五時半までいる約束じやないか話が違うじやないか」「呼んで来い、呼んで来い」と呼び、その他発言する者多し〕
  203. 福田赳夫

    福田(赳)委員 私は総理に対して質問したいのです。
  204. 尾崎末吉

    尾崎委員長 福田君に申しますが、あまり御質問になるような時間がないのです。副総理もおりますから他の大臣でひとつ……。
  205. 福田赳夫

    福田(赳)委員 そういう約束なんだから……。     〔「あしたやれ、あしたやれ」と呼び、その他発言する者多し〕
  206. 尾崎末吉

    尾崎委員長 それでは福田君の十分間の質問を保留いたしまして、明日午前十時より委員会を開くことといたします。なお時間に変更等がある場合は、公報をもつてお知らせいたしますから、御了承願いたいと思います。これにて散会いたします、     午後五時三十一分散会