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1953-07-10 第16回国会 衆議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月十日(金曜日)     午前十一時五分開議  出席委員    委員長 尾崎 末吉君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 川崎 秀二君    理事 八百板 正君 理事 今澄  勇君    理事 池田正之輔君       相川 勝六君    植木庚子郎君       江藤 夏雄君    小林 絹治君       迫水 久常君    庄司 一郎君       鈴木 正文君    田中  元君       高橋圓三郎君    富田 健治君       中村  清君    灘尾 弘吉君       葉梨新五郎君    原 健三郎君       船越  弘君    本間 俊一君       八木 一郎君    栗田 英男君       小山倉之助君    河野 金昇君       河本 敏夫君    中村三之丞君       古井 喜實君    村瀬 宣親君       石山 權作君    勝間田清一君       八木 一男君    横路 節雄君       和田 博雄君    加藤 鐐造君       小平  忠君    小林  進君       河野  密君    三宅 正一君       門司  亮君    北 れい吉君       河野 一郎君    山本 勝市君       黒田 寿男君    福田 赳夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         農 林 大 臣 保利  茂君         通商産業大臣  岡野 清豪君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         建 設 大 臣 戸塚九一郎君         国 務 大 臣 塚田十一郎君         国 務 大 臣 安藤 正純君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     横田 正俊君         調達庁長官   根道 廣吉君         経済審議庁次長 平井富三郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君         大蔵事務官         (理財局次長) 酒井 俊彦君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君         建設政務次官  南  好雄君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 七月十日  委員有田二郎君、村瀬宣親君、早稻田柳右エ門  君、片島港君、岡良一君、平野力三君及び門司  亮君辞任につき、その補欠として鈴木正文君、  稻葉修君、栗田英男君、福田昌子君、三宅正一  君、小林進君及び中居英太郎君が議長の指名で  委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算  昭和二十八年度特別会計予算  昭和二十八年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 尾崎末吉

    尾崎委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年度一般会計予算外二案を一括議題として、質疑を継続いたします。山本勝市君。
  3. 山本勝市

    山本(勝)委員 財政経済根本問題について若干の質問をいたします。  第一に政局の安定の問題でありますが、これが予算審議の過程を通じてわかりますように、きわめて重大な関係を持つておるのでありますが、吉田総理施政方針演説の中にも、政局の安定は時局要請である、こういうことをはつきりとうたつております。まさしくこの政局の安定ということが国民のすべての要望であると思うのであります。この国民すべての要望である政局の安定が時局要請であるという自覚の上に、政局をあえて担当せられた吉田総理を初め現政府は、この政局の安定について何らかの構想を持つておられるに相違ないと思うのであります。まずいかなる方法時局要請である政局の安定をはかろうと考えておられるのか、このことを伺います。
  4. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをいたします。敗戦後の日本の再建をいたしますには、御指摘のように政局の安定ということが先決問題であると考えます。それには、さかのぼりまして前の国会における衆議院解散当時の野党連合不信任案等のこともありますけれども、なるべくそれにまつわるいろいろな感情を一擲いたしまして、主義政策の一致する政党の間には、この時局の乗切りを何とかひざを突き合せて懇談する機会を得たいと思つて政府としては焦慮いたしておりますが、今日まで具体化しておりませんけれども政府は総選挙後の時局に処しまして、まずもつて政局安定が何よりの時局要請であると考えまして、その機会をつくるべく考えておる次第であります。今回の予算につきましても、現に改進党との間にもお互い両党の政調関係の者が、虚心坦懐に相談をいたしておりますのもその一環でございます。
  5. 山本勝市

    山本(勝)委員 政局の安定を望んでおられるということはわかりましたか、そうして野党ひざを交えて協力を求めるという御趣旨のようでありますが、そのほかにないと思いますけれども、鎌倉に重光改党総裁を訪問されたということは、やはり政局を安定させるという希望を達成したい、こういう意味で訪問されたのでありましようか。
  6. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 さようであります。
  7. 山本勝市

    山本(勝)委員 私もそれに違いないこ思うのでありますが、そこに一つ了解しがたい点が生れて来るのは、重光総裁だけをたずねて協力を求められたのに、鳩山総裁またその他の野党総裁をたずねられないで今日に至つたのは、何か特別の事情があるのでありましようか、その点を伺いたいと思います。
  8. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 先ほども申し上げましたが、主義政策を大体一にするものに相談をかけたいという気持根本でありまして、社会党はそれは社会主義政党でありますので、われわれ自由主義政党と個々の問題は別にいたしまして、容易に話がしにくい。かような点からまずもつて改進党に話をつけた次第であります。
  9. 山本勝市

    山本(勝)委員 改進党を総裁が訪問してやられたことはわかりますけれども、しかし主義政策を異にしておりましても、ほんとうに早く予算を通して政局を乗り切りたいということであれは、社会党両派を訪問することも当然だと私は思います。また主義政策という点から申しましても、鳩山総裁を訪問すべきではないかと思いますが、どうして訪問されなかつたのか承りたいと思います。
  10. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 こういう妥協話にはおのずから時機がありますので、分自党の方は、先般の国会で自由党から分裂した、いわゆる分党して行かれた。その直後、まだわれわれの解釈といたしましては時機が熟さないという気持で、まだその方の工作をやらなかつたりであります。
  11. 山本勝市

    山本(勝)委員 時間が限定されておりますから、私はこれ以上申しませんが、鳩山分自党時機でないか。あるいは野党政策が違うからほつておけ、こういうふうな総理初め内閣の態度が、かえつて問題をこじらせている。野党各派といえども今日すみやかに予算を通して、そうして日本産業に対する打撃を救わねばならぬということは熱心に考えておるのです。それにもかかわらず、こういうふうにこじらせる根本の理由、政局不安定の原因はいろいろありましようけれども吉田総理初め内閣が、自分たちの方にもないかということを反省されることが、私は第一条件でなければならぬと思うのです。しかしこの点は総理もおりませんし、大体のお考えはわかりましたので、次の問題に移ることにいたします。この問題はそれでけつこうです。  それから第二に伺いたいことは、副総理、はありません。利根川の治水の問題について、実は建設大臣に伺いたいと思つてつたのですが、建設大臣が参議院の方に出ておられるけれども、個人的に会つて、必ず対処する、今政府委員の方からも必ず意に沿うから質問をかんべんしてくれということでありますから省略いたします。  第三に大蔵大臣経審長官外務大臣すべて関連して来るのでありますが、まず財政規模に関する問題についてお伺いいたします。小笠原国務大臣施政方針演説を読んでみますと、またこの委員会における予算証明書を読んでみますと、財政規模は極力圧縮をした、それで昭和二十七年度の予算と比べて一般会計において三百五十七億ばかりの増加にとどめた、こういうふうな説明でありますが、私はこういうふうに考える。日本政府は毎年々々追加予算を出して来た。おそらく今年も追加予算は出るものと思う。出さないと断言した年でも出して来ておる。いわんや不在はいろいろな問題が、懸案が残つておりまして、改進党との間の政策協定の問題なども大きな原因でありましようが、あとまわしにしておる問題もたくさんある。また台風の災害が多い年でありますし、おそらく追加予算を出さないでは済まないと思う。大臣自身も必要が起れば出しますと言つております。必要が起らなければ出さぬというわけでありましようが、しかし正直に言つて例年出して来たのと比べまして、本年の実際の実情を考えますると出さざるを得ないと思う。そうしますと、昨二十七年度の追加予算があつた後の予算財政規模と本年の当初予算とを比較して、これこれの増加にとどまるということは私は無意味だと思う。無意味というよりも、むしろ国民の方では誤解をして、今年の予算一般会計において九千六百八十三億円だ、昨年に比べて三百五十七億の増加にすぎないのだ、こうとりましようけれども、実際は昨年の場合には、当初予算ではなくして追加予算が行われた後の数字であります。今年の場合のはそうでなくて追加予算の入つていない当初予算である。ですからもし比較するとしたら、むしろ昨年の当初予算と今年の当初予算とを比較する方が実際に近い。そういたしますと一般会計だけでも数字の上では三百五十七億の増加ではなくて千百五十五億の増加になる。こういう状況大蔵大臣インフレーシヨンを防ぐ自信があるかどうか、これを伺いたい。
  12. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 実は私どもは今度の二十八年度予算編成にあたりましては、補正予算等を組まないという建前で編成いたしましたので、前年度の予算と比較いたしまして仰せのごとく増加になつておりますが、しかし財政投融資まで合せて、いわゆる日本財政規模から見ますれば、七十七億円の減少になつていることは、山本さんがよく御承知通りであります。実は今度の災害等でどれくらいのことになるか、これはまだよくわかりません。しかし災害予備金というものも御承知のごとくこの予算通りますと合計百億円計上してあります。ただいままでに使つたものは凍霜害に五億円、それからそのほかに約一億円ほどとりました。今度の分については四億出すことにいたしましたが、そんな程度でございまして、まだ相当残つております。金融措置はしばらく別といたしまして、財政上国が出し得るものについては、どの程度になるか、これはまだよくわかりませんが、そこでこの間、山本さんが今おつしやつたように、必要が起りますれば、補正予算を組むと申しましたが、しかし大体において今の災害を除きますと、今仰せなつたような点等もございますが、改進党との関係から今いろいろ相談しておるようなものもございまして、これは金額はそう大きいものでないように私ども承知しております。しかし金額にかかわらず、ないものについては補正予算を組まなければならぬことになりましようが、はたして一般予備費等を見ても、なおその必要ありやいなや、その金額等についてはまだ断定を許しません。従いまして私どもは大体今の予算、それからまたかりに補正予算を組みます場合でも、必要最小限度のもので、二十七年度のような千億に上るような補正予算は全然想像もいたしておりません。ごく少額な必要最小限度のものと考えておるのであります。従いまして、私どもインフレには断じて持つて行かない。これは山本さんも御承知通りに、日本の今のオーバー・ローンのようなものを三千億を越しておるような状況でありまして、また指定預金のようなものも、現在かれこれ六百二十億ほどあるかと思います。そういうようなこともございますし、資金も一度に出すわけでございませんから、資金を出す場合には金融上の操作を行う、いわば財政資金とこの市場金融との調整をとりつつやつて参りますれば、インフレに持つて行くことはない、かように信じておる次第でございます。
  13. 山本勝市

    山本(勝)委員 追加予算は出さぬし、また出しても最小限度にとどめる。金融財政一体的操作によつてインフレにはしない。答弁としてはよくわかります。実際問題としてうまく行くか行かぬかは別問題として、そのように答弁されることは予期しておつたのでありますが、そこでお伺い申しますが、大蔵大臣よく聞いてください。大蔵大臣演説の中に、インフレをとらないが、デフレーシヨン政策もいかぬ、通貨価値を安定させなければならぬ。通貨価値の安定なくしては、資本の蓄積も経済の復興もできない、こういうお考えであるようですが、さよう了解してよろしゆうございますか。
  14. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 仰せ通りでございます。
  15. 山本勝市

    山本(勝)委員 通貨価値を安定させるという言葉のほかに、物価水準はこれを維持する、インフレにもしない、デフレにもしない、物価水準は維持するという言葉もありますが、要するに通貨価値を安定さすというのと、物価水準を維持してインフレにもデフレにも持つて行かぬ、こういう方針とは同じことと了解してよろしゆうございますか。
  16. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは全然同じとも申されませんが、通貨価値のそれは御承知のごとく、物価水準の方は何と申しましても、需給関係でわかることでございます。それから通貨の安定の方は、国際的にも大きな関係があることは、山本さんよく御承知通りで、この点で財政収支の点から操作して参ります関係でございますから、需給関係で動揺する物価というものとは全然同一ではございませんが、しかし私どもは大体においては、いわゆる通貨の安定ということと、物価水準の、まあ波瀾がなきというような意味を加えましたら、ほぼ一致するのじやないかと思います。今申しました通り、厳格な意味で一致する次第ではございません。
  17. 山本勝市

    山本(勝)委員 この席で議論になつてもいけませんから、これ以上言いません。ただ国内通貨価値、対外的な日本通貨価値ではなく、国内における物に対する金の価値というのは、金の方からいえば通貨価値、物の力からいえば物価、これは御承知通り大体裏表と考えていいかと思いますが、問題は物価水準インフレにも持つて行かない、デフレにも持つて行かない、大体安定の線で行くという考え方でありますか。
  18. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私ども日本物価水準は、山本さんもよく御承知のごとく国際的には高いと存じます。従いまして徐々に国際水準に近づけるように持つて行くという政策をとつておるので、その点からいわゆる金融等で、あるいは機械を輸入さす等で、いわば基幹産業近代化合理化等をやつておるのはそういつた関係でございます。
  19. 山本勝市

    山本(勝)委員 私の質問は実は経済審議庁にも十日も前に出しておるし、また大臣の方から尋ねられると質問要旨を出しておる。私がこれから何を聞こうとするかは十分御承知だと思います。問題は、私がどうしても理解できないのは、大蔵大臣の方では物価水準は安定さすのであつてインフレにも持つて行かない、デフレにも持つて行かない、こういう考えはつきりしておると思う。ところが通産大臣経済審議庁長官の方の貿易振興に関する意見、それから総理大臣演説の中にもはつきり出ておりますが、日本物価水準というものが、世界物価水準に比べてひどく高いので、輸出貿易を振興さすためには、国際物価水準までさや寄せをするのだとはつきりうたつておられる。しかも国際物価水準そのものがなお下向きの傾向にあることもうたつておられる。すでに二割も三割も水準が高いといわれておるものが、さらに下向きになつておるものを追いかけて、そうして日本物価水準をそこにさや寄せするということは、非常なデフレ政策と申しますか、言葉は違いましても、政府方針としては、物価水準を引下げるという政策と了解される。物価水準は下げないのだという主張と、物価水準は下げるのだという主張が、同じ政府財政経済政策担当大臣演説の中に同時にうたわれておるものですから、政府は一体どれがほんとうなんだということを聞きたい。
  20. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今仰せ質問要旨を実はいただいておらないのでございますが、仰せなつた点は、意失するところは、日本物価水準を急激にかえないという意味でございまして、私どもも常に日本物価水準国際水準より高いから、日本の品物に国際輸出競争力をつけるためにも、漸次水準を下げて行くべきであるというのが私ども根本考え方であります。しかしながらその下げるのは、生産者とかその他の儀性でなくて、設備の合理化近代化で自然と下るように持つて行きたい、こういうので実は努力をしておる次第でございます。
  21. 山本勝市

    山本(勝)委員 近代化とか合理化方法の問題はいろいろありましようし、あるいは急激にやるが除々にやるという問題もありましよう。しかしいずれにしましても、非常に割高になつておる日本物価水準国際水準にまで下げて行く、それによつて国際競争力を強めて、輸出を振興しようという方針、これはインフレデフレもいけない、ただ物価水準は安定さすのだという考え方とは、そこに矛盾があると了解してよろしゆうございますか。
  22. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私はそれはある意味から言えば矛盾かもしれないが、私は実は矛盾がないと思つておる。と申しますのは、物価水準というものを急激に下げるのだということを言わずとも、これは合理化その他のことによりまして物価水準国際競争力に近づけて参るという努力をするのでございます。またそれが増産その他の関係で下つて行くということは、これは需給関係上当然起つて来るわけでございます。私どもとしては、つまり日本の今の経済をば、インフレにもデフレにも持つて行かないのだというのがそのねらいでありまして、物価というものとデフレというものは、全然一致したものではないと私は思いますので、デフレということが即物価の下落でないということは、山本さんの方がよく御承知であります。私ども意味するところは、通貨の点を強調しておるのでありまして、その点から日本インフレにもデフレにも持つて行かない、こういうのであります。それでは物価はどうかということになりますと、一方では物価水準は今より高めない、つまりインフレーシヨンに持つて行かないという点が強く私ども主張した意義でありまして、この点は多少言葉のあやまりもございましようから御了解が願えることと思うのでございます。
  23. 山本勝市

    山本(勝)委員 私は実際問題としては、何とかひどいインフレにしないで防ぐというのが、現在の予算を見まして精一ぱいではないか、いわんやそれを国際水準にまで下げるということは、大臣為替レートには絶対に手をつけぬと申しておられますが、絶対に手をつけないで合理化とかあるいはいういろな方法で、物価水準をそこまで付つて行くということは実際むずかしい。実際上の心配はむしろインフレを防ぐというところにおありだろうと思いますが、時間の関係で、大蔵大臣のおつしやつた点で、まだ残つておる点がありますが、何も大臣を責めるのが他の目的じやないのですから、何かの機会とつくりまた伺いたいと思います。  次に私が了解しがたい一つの点は、これは岡崎外務大臣外交方針演説の中には非常な自由貿易主義がうたわれておる。外務大臣とつお聞きを願いますが、「自由なる貿易により通商奇規模の拡大をはかることは、単にわが国一国にとつて必要なばかりでなく、世界全体の経済発展生活水準向上のためにも欠くべからざることであります。」という言い出しで、「われわれは、各国が互いに門戸を開き、より自由にその経済を発展せしめ得るような通商貿易の制度が世界に行わるべきことを強く要請するものであります。」というので、議事録を見ますと、拍手というので括弧がついております。その途中は省略いたしましたけれども、これは明らかに自由貿易自由通商、そうして各国関税ないし輸入制限を打破して行く、こういう行き方で、まことにけつこうなことだと思います。ところが経済審議庁長官が今ここにおられませんけれども審議庁長官経済政策に関する演説は、輸出はいろいろな方法で伸張して行く、輸入の方はむしろ押えて行く、そうして食糧とかあるいは化学繊維とか、いろんな面で自給度を高めて行く、そうして何年かの後には五億ドルばかりの外貨の支払いが節約できるということをはつきりうたつておるのであります。この経済審議庁長官考え方は、俗にいう保護貿易主義というふうにだれにもとるだろう。極端なアウタルキーなどはもちろん願つておられないに相違ありません。しかし少くとも岡崎外務大臣構想、基本的な考え方と、それから通産大臣経済審議庁長官考え方とは型が違う。この関係はどういうふうに理解したらいいか。これはおそらく何らかの解決を見ておられるに相違ないと思いますが、一応外務大臣のお考えを願いたいと思います。
  24. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の申したことはおつしやる通り、たとえば関税障壁を無理につくつて国内産業を興そうという意味じやありませんで、外国貿易に関する限りは輸入も自由にしますけれども国内産業助長策を講じて、できるだけ重要産業について自給度を高めて行く、その結果自然に輸入の必要がなくなつてしまうものは、これはいたし方ないのであります。ただそれに対して関税障壁を設けるとか、その他の方法を講ずることさえしなければ私はいいだろうと思つております。そでただ問題になりますのは、極端な、る奢侈品でありまして、これは今の日小経済からいえば、むしろ必要の程度は非常に少いものと私は考えております。通産大臣もこれは考えておると思います。そこで輸入につきましてもできるだけ自由にはいたしますけれども、その間にあまりぜいたく品をむやみに輸入するということはどうか。しかしこれにつきましても、輸入をいたします場はいろいろありますし、また百貨においてはおのずから制限があるのでありますから、それを奢侈品に振り向けるのでなくても、相手国から輸入するものは相当ある、こう考えております。輸入制限しておいて、輸出だけふやそうということは、私は今の経済情勢では無理だと思いますから、輸入はやはりどんどんやつて、そうして輸出も盛んにしなければならぬと思います。ただその際に奢侈品であり、また非常に極端なものだけは、これはちよつと考えさせられる点もある、通産大臣考えはこういう意味であると私は承知いたしております。その程度におきましては私も同感なのであります。
  25. 山本勝市

    山本(勝)委員 岡崎大臣考えはわかりました。通産大臣説明は、そういう奢侈品輸入を抑制するということをはつきりうたつております。それは抑制するという言葉で表わしておるのは奢侈品でありますけれども、しかしその構想そのものの内容を見ますと、食糧自給、それから化学繊維を短かい期間に非常な増産をして、結局綿の輸入に払つておる外貨を節約しよう、こういうねらいであることははつきりしておる。五億ドルの節約などというものは、ただ奢侈品輸入を押えて得られるものじやありません。構想は確かにそこにある。そうすると、たとえばアジア貿易考えましても、インドから綿を買わないで、なるべく日本化学繊維でまかなつて行く、これは一つ考え方でありますけれども、それではたして、インドの方で、日本自由貿易主張を掲げて行つた場合に、日本ほんとうにそう信じてやつておると考えるかどうか。インドとしても、まさか綿が日本にとつて奢侈品とも考えていないでしよう。そうすると、外交上、よそのところは自由貿易関税なんかやめろ、輸入統制はやめろ、おれの方はやる、世界平和を主張しながら、着々として軍備を充実して行く、といつたようなことにとりはしないか。あの施政方針は、どの演説も閣議で相談されたに相違ないと思いますけれども、私はやはり少し練りようが足りないと思う。非常に基本的なもので、やはりそこに開きがある。ただ奢侈品を抑制するというぐらいの意味とは了解しがたいのですが、いかがでしようか。
  26. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 経済審議庁長官としての御演説に対しましては、私からとやかく申すことは差控えますけれども、私のねらつておるところは、要するに関税障壁とか、輸入制限の制度を廃止したいという趣旨であります。国内で自然に——自然でなくても、産業が勃興して、そのために輸入が必要でなくなれば、それに要した外貨は、ほかの方に十分振り向け得るので、私としては、インドなりその他の国々が、今日本考えておりますところを誤解するとは考えませんけれども、御注意の点もありますから、この点はさらによく検討いたしたいと思います。
  27. 尾崎末吉

    尾崎委員長 山本君に申し上げますが、経済審議庁次長が見えておりますから、答弁させましようか。
  28. 山本勝市

    山本(勝)委員 私に対する答弁は、経済審議庁の長官でなくても、政府の責任において答弁していただけば、どなたでもいいのです。ただ、あとになつて、これは政府委員が答弁したことで、政府の責任でないとか、あるいは、それは大蔵大臣が言つたことで、総理大臣はおれは責任を負わぬというようなことでは、困るだけであつて、別に総理大臣がおられなくても、政府委員だけでもいいのです。そのかわり、政府委員の言つたことに対しては、あとで総理大臣初め政府自身が、言わぬとは言わないで、責任をとる、こういうことであれば、どなたから答弁をいただいてもけつこうであります。
  29. 平井富三郎

    ○平井政府委員 お答え申し上げます。外務大臣の施政演説経済審議庁長官の施政演説の関連でございますが、経済審議庁長官演説の中で特に強調いたしました点は、現在の日本経済が、約八億ドルの臨時収入によつてまかなわれておる。この臨時収入なしに国際収支のバランスを合せる、国民生活水準の維持なりあるいは向上なりをはかつて行くということが、真の経済自立である。こういう観点から、八億ドルの臨時収入をいかにして正常な収入で埋め合せて行くか、こういう点を中心に申し上げたわけであります。従いまして、現在の輸出水準が十二億ドル弱、約十二億ドル・ベースの輸出水準でございます。数年の間にこの八億ドルの輸出をふやすということも、常識的に考えましても、なかなかむずかしいわけであります。従いまして、輸出の振興をはかりますと同時に、できるだけ食糧とか綿花とかのようなものにつきましては、輸入を減して行く方法考えなければならぬ。と申ましすのは、食糧なり綿花なりは、現場の日本の人口が増加するに従いまして、年々数千万ドルずつふえて行くのであります。かりに五年間人口増加のまま、食糧なり経済政策なりに何ら手を打たないということになりますれば、五年後には、約三億ドルの外貨の追加支出を要することになります。従つて、そういう面から申し上げましても、食糧なりあるいは化学繊維増産をやらなければならぬということになります。しかし輸出の振興ということについては、外務大臣の御意見と同で、ございまして、できるだけ輸出を伸ばして行きたいというように考えておるわけであります。従いまして、輸出輸入関係輸入をすれば輸出がふえるというような関係につきましても、各国との貿易協定その他につきましては、十分外務大臣演説されましたような方針で進んで参りたい、かように考えておりまして、経済審議庁長官演説外務大臣演説と、本質的に差異はないのであります。その点は御了承を願いたいと思います。
  30. 山本勝市

    山本(勝)委員 ただいまの答弁は、そういう主張をするのだという筋道とか、動機を述べられたにすぎない。いかなることでも原因はあるし、りくつはある。どろぼうにも五分のりくつがあるということを申しますが、どういう構想でも無理由にやつたわけではありませんから、それはこういうつもりでやつたという説明は立ちます。しかし問題は、ふぐは食いたし、命は惜ししということがありますが、両方理由はあるが、それは両立しない。まるを描こうという要求を説明し、また三角を描こうという要求の理由を説明してみましても、まるい三角を描くということは、実際にはできない。そこを私は言うのです。そういうことを主張した動機を聞いておるのではない。先ほど申しました、物価水準を、インフレでもデフレでもなく、安定さすのだ、通貨価値を上げも下げもしないで、安定さすのだという主張と、国際水準まで下げる、言いかえると、国内通貨価値を上げるという主張とは、両方理由がありましても、同時に実現することはできないから、これをはつきりして、どの程度の調節をするとか、どこに重点を置いておる、どこをできるだけやるとかいうことを、はつきりきめないといけないと思います。先ほどの国際物価水準さや寄せするという考え方と、通貨価値を安定するという考え方とは、これは矛盾しないのですか。
  31. 平井富三郎

    ○平井政府委員 先ほどの貿易の問題でございますが、ただいま食糧あるいは綿花の大部分の輸入先はアメリカであります。従いましてドル輸出の限界を考えましても、これはある程度輸入を節減しなければ、ドルとの関係において、非常な大きな赤字を今後残して行くという関係になるわけであります。従いまして、今後の輸入の増大をむしろ押えて行く。経済演説で申し上げましたように、五年後の輸入のべースというものは、現在の十八億ドルのベースは、十六億ドル・べースに下る程度であります。輸入の増大はむしろ減して、若干現在の水準よりも輸入減を見て行く、こういう関係でございます。それから物価水準の問題につきましては、今後の財政金融を通じまして、インフレの起さない。あるいはデフレによつて無理に物価を急激に下げて行くことは考えておらない。従つて大蔵大臣の財政演説の中に、インフレも起さず、あるいはデフレによつて物価の急激な引下げということも考えておらぬと言われておりますが、私ども大蔵大臣の御意見のように考えておるわけでございます。ただ個々の輸出物価を見ますと、たとえば繊維等につきましては、十分国際競争力があるわけであります。しかし機械等について見ますれば、現在問題になつておりますプラント輸出を見ましても、一割程度の値幅があるわけであります。従つてこういうように国際価格から見て特に高い水準にある物資については、合理化その他の処置によつて、この値幅を消滅さして、国際価格にさや寄せして参りたい、かように考えております。
  32. 山本勝市

    山本(勝)委員 どうもその点は、デフレにはしないという説明であつたのが、今の説明では急激にはしないということにかわつて来た。私は物価水準はあくまで維持する、通貨価値は維持する、これが大蔵大臣の信念であろうと思つておつた。ところが今度は、国際物価さや寄せするためにだんだんと下げて行くのだが、急激には下げない、こういうふうにかわつて来ましたが、私はそのことに賛成、不賛成というのじやなくて、もう一度よく研究してもらいたいと思うのです。なおきようは審議庁の次長が責任答弁をされるわけでありますが、五億ドルの外貨を節約し得るという構想で、審議庁長官が五箇年間の試案というものを経済安定委員会で出された。また本会議説明を見ましても、試案とはなつておりませんが、大体内容は同じような構想を述べられました。私はその五億ドルと計算したときに、物価というものが、あるいは価格というものが今のままで安定しておるのだという一つの前提に立つておるのじやないか。生産と需要と価格という三つのものは同時に相関的に動くことは言うまでもありません。ですから短期間に生産の非常な変化があるような政策が行われたとしますと、必ず価格の上に大きな変動を来す。どれだけの変動を来すかという測定はなかなかむずかしいのでありますけれども、現在の価格そのままで計算すると、五億ドルになるというのでしようが、しかし日本がかりに予想のごとく、化学繊維についての政府政策が実現したとして、綿を買わないということになつた場合の綿の価格が、今日のまま維持されるということの保証は何もありません。むしろ非常な値下りをするというような場合も考えられる。だからそのときになつて——今なら五億ドルですけれども、はたしてこれが五億ドルの節約になるのか、それともまたそうでなしに、向うから買うた方が節約になるのかということは、これは一つの問題です。よく農林省あたりでも、豚を飼えとか、蜜ばちを飼えとかなんとか奨励をする場合に、補助金を出したりいろいろな融資をしたりすれば、それはふえます。生産をふやすことはわけはない。全部をバランスをとつてふやすことは、これは生産力に限界があるからむずかしいでしようが、ある特殊のところに力こぶを入れて、それをふやすということはわけはない。わけはないけれども、豚はふえたが値が下つて困つた、蜜ばちは飼つたけれども値が下つてどうにもならぬというのが、これが実際上なめておる実例であります。ですからいろいろ長期の計画を立てられるのもけつこう、見通しを立てられるのもけつこうですが、生産及び需要の計画を立てるときには、十分ではなくても、必ず価格の変動に適応した、できるだけ正確な見通しを同時に立ててやらなければならぬ。価格を抜きにしておいて、そうして生産はどれだけふやす、それで需要はどうというふうな、いわゆる物動計画式なことを私は繰返してもらいたくない。これは総理言葉で言う国民を惑わすものだということに、ある意味で当ることになると思う。資本主義の経済は価格法則によつて支配されるといいますが、資本主義の経済でなくたつて社会主義経済つて、価格法則の支配を免れるわけには行かぬと私は信じておるのです。従つていろいろな構想が単に作文に終ることになる。まだ害がなくてけつこうですけれども、実際に、それに補助金を出すとかあるいは金利をどうするとかいつてやられるときには、それが実を結んだときにはたして価格がどうなるか、そのときに補助金をやめても、あるいは融資をやめても、りつぱに伸びて行くだけの力を持つかどうかということを考慮に入れて計画を立ててもらいたい。  時間が来たというのでせき立てられますので、私の質問はこれで終ります。
  33. 尾崎末吉

    尾崎委員長 八百板正君。
  34. 八百板正

    ○八百板委員 先に大蔵大臣から、税金がふえておりますのに減税とおつしやいますのはどういうわけでございますか、お伺いします。
  35. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 現行税制に基いて賦課するときにはかくかくになる、しかし税率をかえることによつてこれこれになるというところから、いわゆる減税と申しておるのであります。
  36. 八百板正

    ○八百板委員 そうしますと、税率を直したのであつて、すなわち減税ではないのでありますから、国民を惑わすような一千二十三億の減税だなどと宣伝せらるることは、国民に財政の実態を知らせる上には、とるべからざる態度であると思うのでございますが、常に率直を尊重し、物事を誠実に処理して行かるる小笠原大蔵大臣になつて、なおかつ前と同じようなごまかしの宣伝を続けられるということは、小笠原さんのためにまことに惜しむのであります。この際そういう点について、これは減税ではない、もつと税金をふやすところをややかげんをしたのであるということを天下に明らかにした方がよろしいと思うのでございますが、いかがでごさいましようか。
  37. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 国民所得の増加に伴いまして、現行税率によればこれがふえて参るのでありますが、そのふえて参るものを率を下げることによつてふやさないのでございますから、私は今仰せのごとくに、単純な減税という言葉はどうか知りませんが、私ども制度上減税とこう申すことはよろしいと考えております。
  38. 八百板正

    ○八百板委員 たとえば今度の大蔵省の出しました数字を見ても明らかなように、これを源泉所得の分について考えてみますならば、所得税の源泉では事実上四十九億の増税になつております。そこでちよつと数字が見つからないのでありますが、勤労者の所得が前と同じだとしますならば、基礎控除の引上げと扶養控除の引上げによつて、勤労所得者はどれだけの減税を受けたということになるのでございましようか、何か数字がありましたら……。
  39. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 数字はあとで政府委員から説明いたさせますが、御承知のごとく、今度は基礎控除もまた扶養家族に対する控除の額等もふやしましたので、ただいま仰せなつたように、源泉所得による租税収入はふえておりますが、在来のまま行きますともつと増加いたすのでございまして、私どもから申しますれば、ごく大ざつぱな数字でありますが、大体四人家族の者で十八万円までの勤労所得者は何ら租税を出さないで済むというところまで減税されておるのであります。所得がふえて来ますから自然それに伴いまして納税額はふえて参るのでありますが、今度の措置によりまして、制度上それだけの減税のことに相なつております。
  40. 八百板正

    ○八百板委員 今申し上げました源泉課税の対象となる主として勤労者の場合について考えてみますならば、その他一般の場合についても過大な見積りが基礎になつておることは明らかでありますが、勤労所得者の源泉課税の対象となる場合、明らかに収入がふえたということは、物価高によるインフレ等の事情のために、いわば月給が上つたのであつて、担税力の増大ではないのであります。この点をどういうふうにお考えになつておられますか、伺いたいと存じます。
  41. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは八百板さんのお調べになつたものがあると存じますが、かりに昨年十一月を基準として考えますれば、CPIにおいてはごくわずかにふえておるかと思いますが、CPSにおいては下つております。なおまた一般の点から見まして、物価は横ばいその他の状況にございますから、現実収入は相当増加いたしておると私は見ております。同じ給料所得者といたしますれば現実収入はふえておる、かように考えております。
  42. 八百板正

    ○八百板委員 私は勤労者の所得の増加を担税力の増加とみなして、税金をよけいに見積つて行くという考え方に賛成できないのであります。大蔵大臣に対する質問は、あまり時間もございませんからあと一、二の点にとどめたいと思いますが、この前の向井大蔵大臣の際に、私は国の税金のとり方、使い方を国民に対して周知徹底せしめるために、簡単なパンフレットのようなものを大蔵省の予算においてつくつて国民の批判の前に明らかにすべきであるということを述べましたところ、そうしたい、賛成だという意味の発言があつたのであります。大蔵大臣はかわられましたが、考え方にはかわりがなかろうと思いますので、たとえばこれを一村に十部か二十部くらい出しますと、かりに十円くらいのものでも五、六百万円の費用でできるのではないかと思うのでありますが、これをやつていただけますかどうか、小笠原大蔵大臣に伺いたいと思います。
  43. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 まだやつていないそうであります。何か考えようということになつて、実はまだそのままになつておるということであります。これは一旦ここでお約束しておりますことが延びておりますことは、はなはだ恐縮に存じております。従いましてさようなものをつくりたい、至急つくるとことにいたしまして、皆様の御理解を得たいと存じております。
  44. 八百板正

    ○八百板委員 それをつくりたいとおつしやいますが、それを予算的に出す費目等については、何らかのやりくりは、五、六百万円程度でありますから、できると思うのでございますが、それをはつきり何らかの捻出の方法があるとお答えいただけますか。
  45. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 予算の費目にはございませんが、彼此流用し得る分がございますから、やり得ることと存じております。
  46. 八百板正

    ○八百板委員 これはぜひ実行していただきたいと存じます。  なお今度の税制のやり方を見ましても、あるいは財政金融政策全体を見ましても、いわゆる資本家的資本の蓄積がいよいよ露骨に強行せられて極るという感じが強いのであります。     〔委員長退席、西村(直)委員長代理着席〕  今日の新聞に金利体系を再編成しようという大蔵省並びに自由党の案が出ておりますが、たとえばこの一つを取上げてみましても、預金の金利の引下げをやるが、その金利の引下げによる分については、別途に租税制度の上から預金利子に対する課税率を直して、金利の引下げによる分の差を埋め合せるというふうな考え方が出ておるようであります。と同時に、今度は一方貸付金利の引下げについては、預金の利子の引下げの程度において引下げるというふうな考え方が盛られておりますが、大蔵省のこういう考え方はこの通りでございましようか、お伺いいたしたいと思います。
  47. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この件については私はまだ何ら聞いておりません。それからまた省内でいろいろ調べてはおるようでございますが、まだ何ら意見はまとまつていないようであります。ただ今お話の中で、日本の貸出し金利というものはどうも少し高過ぎる、だからこれはでき得るだけ金融業者の協力を得て引下げたい、こうは考えております。それに伴う税制その他のことについては、私はまだ何ら聞いておりません、また部内でも何ら意見がまとまつたものはございません。
  48. 八百板正

    ○八百板委員 まだまとまつていないそうでありますから、お考え方だけを伺つておきたいと思いますが、金利の問題が問題になりまする考え方の中心は、一つには預金の利子と貸出しの金利が幅が多過ぎるという点が、やはり大きい問題ではなかろうかと思うのであります。そういう点について預金の利子を下げても、その分を税制上の考慮で同じくらいにしてやつて、その部分だけを貸出しの方で下げるというのでは、あまりにも金融資本偏重の金利政策だというふうな感じを強く受けるのでございますが、そういう点について大蔵大臣はどういう見解を持つておられるか、伺つておきたいと存じます。
  49. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 八百枝さんも御承知のように、現在の日本では資本の蓄積はきわめて大切であります。従いましてさような場合に預金の金利を引下げることは、おそらくその目的に背馳するのではないか、かように考えます。私は現在のいわゆる預金と申しますか、資金コストと貸出しとの利ざやは相当大き過ぎる、これをもう少し縮めるところにぜひ持つて参るように、金融業者の協力を得たいと思つておるのでございますが、何分戦前に比べますと取扱い資金量が少いのであります。その結果ある程度そういうことになつておるように思いますので、銀行につきましてもやはり経営の合理化といいますか、そういうことをやつてもらつて、銀行か持つておる公共的使命から、一方には資本の蓄積に努力するとともに、他方には金利の引下げに努めてもらいたい。従つてその中間等における費用を極力圧縮してもらいたい、かように切望しておるものでございます。
  50. 八百板正

    ○八百板委員 貧しい日本の資本の蓄積が、日本経済再建のために必要でありという考え方には、必ずしも反対するものではございませんが、その資本の蓄積がいわゆる大資本を中心として、金融資本に集められて行くというところに、はたして日本経済の将来のために、どうであろうかという問題があるだろうと思うのでありますが、ただいまのお話を伺いますと、資金の少いという事情から金融機関のコストの引下げ、そのための合理化金融機関の公共性にかんがみて、そういうことが取上げられなければならないと言われましたが、それは銀行に対する単なる訓示的な考え方だけでは、達成せられないだろうと私は思うのであります。今御承知のように銀行は金を貸す場合にも、たとえば再建預金というような形、あるいは歩積み預金というようなことが行われておるようであります。言うまでもなく再建というのは貸出しの際に、いの一部を預金させる条件で貸し出すわけであります。さらにまた歩積みは手形割引にあたりまして、そのうちの一定の額を同様に預金させるという条件で割引をする、こういうやり方であります。でありますから非常に巧妙なる詐欺的な行為といわなければならないのであります。かりに百万円の金を借りようと思えば、二十万なり三十万なりは、初めからその銀行に預金させられる、そこで預金の利子と貸出しの利子の差額がいわばすつかりごまかされてとられてしまう、金を借りる弱味から、そういう状態が非常に横行しておるという傾向を見るのでありますが、こういう傾向は銀行の間にどの程度に行われておると、大蔵大臣はお考えになつておられますか。さらにまたそういう二重三重に利ざやをかせぐというような銀行のいわば詐欺的な手段に対して、どういう監督と抑制を加えることによつて、いわゆる公共機関としての使命を果させることができるとお考えになつておるか、この点伺つておきたいと存じます。
  51. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 御承知のように私ども資金統制法とかいうような法的権限をもつて、今日銀行に臨んでおるわけではございません。従いまして私どもは銀行業者を指導する、またそれに積極的に協力を求めてやつておることは、今まで常にそういう方法でやつております。  それから仰せになりましたいわゆる両建あるいは歩積みという問題でございますが、その弊害のことが昨年指摘されましたので、これはまことにごもつともでありますところから、銀行業者に再建のことはやめるようにということを申し渡しておりまして、最近では再建というようなことは、私はほとんどなくなつておると存じております。今仰せなつた再建も歩積みもなくなつておると思いますが、ただかりに今の例で申しますれば、一応百万円貸し出します。一度にその百万円の金を使うわけではございませんから、従つて多少の残高はございましよう。多少の残高が銀行にあることはやむを得ぬことと存じますが、あるいはこれはまた当然のことと思います。しかし再建もしくは歩積みというようなことで貸出しをするということはしないようにと言つて、銀行に話をしてございまして、銀行はその点は自粛しておると私は信じております。
  52. 八百板正

    ○八百板委員 自粛をしておらないところにこの問題があると、私ども考えているのでありますが、この資本の蓄積が、いわゆる日本経済の再建のために必要であるという名のもとに、またそうした方が効率が高いという考え方の上に、大産業と大資本に集中して、そうしていわゆるかつての集中排除の結果、現に新たな財閥の形成という形になつて、現われているのでございますが、こういうふうなやり方をやつて行きますと、貧しい日本の場合においては、すぐに壁にぶつかつてしまいまして日本経済の全体が停滞して動かなくなるという危険か当然に起つて来るわけであります。でありますから、いわゆる資本蓄積の方法、税制のやり方、こういうやり方の結果は、たとえば社会保障制度、そういうふうな面で、これを多く国民に返してやるというふうな政策が伴つて行かなければならないのでありますが、そういうふうな点について大蔵大臣考え方は、今日の全体の財政経済の傾向が、いわゆるそういう偏向をはなはだしくしているものであると考えられておらるるかどうか、この点について小笠原さんの意見を承つておきたいと存じます。
  53. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 昨日もどなたかの御質問にお答え申し上げました通り日本のいわゆ金融業者の貸出上は、大資本に偏重しているということは私は申されないと思います。一千万円以下の中小企業に対する貸出しが八千数百億円、総貸出高の三割六分に上つておることは、御答弁申し上げておいたようなことでございまして、私はさようには考えておりません。なおいろいろなものを社会保障費の増額に向けてはどうかという八百板さんの御意見に対しましては、私も社会保障費は今日のところ決して厚いとは考えておりません。従いまして昨年度に比べますと、相当増額いたしましたことも、これはお手元の数字でよくごらんを願えることと思うのでございますが、しかし今後とも社会保障費の問題については考えますけれども、国全体としての資金の配分というものから見ますと、やはり二十八年度予算としては、この程度であろうと、かように実は私は考えている次第であります。
  54. 八百板正

    ○八百板委員 議論になりますから、そういう貸出しの傾向が大産業だけではないというお話についても時間もございませんので、それ以上追究いたしませんが、それはすでに具体的に、たとえば十一銀行の貸出しの相手方がどういう産業であり、その状態がどういうふうな数字になつているかということは、すでに明らかなところであります。いわゆる大資本を中心とする資本の蓄積が、国家権力の援護のもとに行われているという事実は、これを否定することはできないのであります。こういうふうなやり方をして参りますと、そこがら起つて来る社会不安は当然に経済政策では救済できなくなりますから、権力的な方法によつてこれを片づけて行くという形になつて日本の忌ましい方向が一層強まつて行くのでありますから、こういう点については大蔵大臣の大きな角度からの再検討が、願われなければならないと思うのであります。  農林大臣がお見えになつておりますから、大蔵大臣関係する部分について、先にちよつと伺つて行きますが、肥料の問題が具体的な問題として、また大きく取上げられております。この間農林大臣は、肥料委員会の答申をまつて政府は態度をきめるということを言われておりますが、ぐるぐる幾たびか変改いたしましたところの肥料委員会の結論は、いわば結論のない結論となつて答申せられております。帰するところ、肥料工業に対して、あるいは肥料問題に対して、名前はどうあろうが補給金的なものを何らかの形で、何らかの機関に出すか出さないかというところに焦点があるわけであります。大蔵大臣は財政を預かる立場から、肥料工業に対して何らかの形において、補助金的な補給金的なものを出すのか出さないのか、これをこの際はつきりと意見を述べていただきたいと存じます。
  55. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私どもとしては補給金、補助金等の問題は、ただいまのところ考えておりません。
  56. 八百板正

    ○八百板委員 農林大臣は、あの答申を基礎にして、どういう形で肥料問題をまとめて行こうとお考えになつておられますか、その対策をひとつお示しいただきたいと思います。
  57. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えいたします。去る五日に肥料委員会の答申がまとまりまして、それに基きまして、ただいまあの答申案がまとまりましたいきさつ等にもかんがみまして、慎重に立案をいたしておるところでございますから、立案ができましたならば御審議を煩わしたいと思つております。
  58. 八百板正

    ○八百板委員 立案をするにあたつて考え方、それをひとつお示しいただきたいのであります。
  59. 保利茂

    ○保利国務大臣 できるだけ答申案の趣意に沿いまして、立案をいたしたいと考えております。
  60. 八百板正

    ○八百板委員 答申案のどういう趣意に沿つて立案をするのであるか、その点を具体的にしていただきたいと思います。
  61. 保利茂

    ○保利国務大臣 従いまして、答申案のできましたいきさつ等を十分検討いたしまして、立案をいたして参るつもりであります。
  62. 八百板正

    ○八百板委員 答申案のできましたいきさつは、どうにもこうにもけりがつかなくて、どこを向いているかわからないという状態でありますが、そういうどこを向いておるかわからないといういきさつをそのまま取入れて、これをやられるのでありますならば、一層こんがらがるのでありますが、そういうふうに考えてよろしゆうございますか。
  63. 保利茂

    ○保利国務大臣 答申案がまとまつて出ておりますから、まとまりましたにつきましては、まとまつたいきさつ。またいろいろの意見が盛り込まれておるわけでございますから、その意見を十分研究いたしまして立案をいたしたいと思つております。
  64. 八百板正

    ○八百板委員 答申案の内容とは逆もどりしたところの案が、政府並びに自由党方面から出ておるように新聞紙上伝えられておりますが、その点はいかがでございますか。たとえば、また硫安の輸出会社をつくるというような考え方などがあるようですね。
  65. 保利茂

    ○保利国務大臣 そういう考え方もあるようでございますが、私はまだいずれとも決しかねております。
  66. 八百板正

    ○八百板委員 そうすると、何にもきまつていないのですか。
  67. 保利茂

    ○保利国務大臣 きまりましたならば、御審議を煩わすつもりでおります。
  68. 八百板正

    ○八百板委員 農林大臣ともあろうものが、農民の——日本の農業は多肥農業でありまして、ほとんど肥料に依存する度合いが強いのであります。とりわけ米に対して供出制度をとつておる建前上、肥料問題に対しては農林大臣は大きな責任を持たなければならないのであります。それを今までは肥料委員会の答申が出るからからといつてこれを待つてつて、今度出ますと、さらにまたその出ましたごたごたしたいきさつを考慮して、もう一ぺん考えるというのであつては、これは無方針もはなはだしいものであると思います。一体農林大臣は肥料政策というものを、どういう角度からきめるべきであるというふうにお考えになつておられるか、その大体の方向をお示し願いたいと思います。
  69. 保利茂

    ○保利国務大臣 肥料の消費の関係から申しまして、これは内地の農村に関連するきわめて重大な問題でございます。従つて需給安定、価格の安定ということは、農家経済の上から行きましても、きわめて重要な問題でございますから、そういう観点から検討をいたしております。
  70. 八百板正

    ○八百板委員 農林大臣はどうも肥料のことは御存じないようであります。それだけのお話では、幾らお話しても話にならないのでありますが、一体肥料を安くするつもりですか、それとも現状のままでやつて行こうというのですか、そこをまずお伺いします。
  71. 保利茂

    ○保利国務大臣 これはもう答申案にも、その趣意は十分書いておりますように、今日の国際規格から見ましても、できるだけ合理化によつて、これを引下げて行かなければならぬ、従つて肥料価格の引下げについては、できるだけの努力を払わなければならぬという考えであります。
  72. 八百板正

    ○八百板委員 できるだけ合理化によつてと言われるが、できるだけというのでは全然具体性がないのであります。秋肥を前にして、肥料の価格は具体的な決定をしなければならぬ段階に迫つておるのであります。肥料の価格を下げて、一方また輸出の問題を処理するという問題は、今相当急がれた関係でありますが、いつごろまでにこの案を固める用意を持つておられますかを伺つておきます。
  73. 保利茂

    ○保利国務大臣 いつごろまでにということでなしに、大急ぎで検討をいたします。
  74. 八百板正

    ○八百板委員 大急ぎといつても、大体の目安というものがなければいけないのでありますから、大体いつごろまでにということをお答え願いたいと思います。
  75. 保利茂

    ○保利国務大臣 ただいま申し上げますように、国会は開会中でありますし、会期の関係もございますので、できます限りこの国会の御審議を煩わすように、立案を急ぎたいと思います
  76. 八百板正

    ○八百板委員 開会中に肥料政策に関する何らかの法案を出そうという意味でございますか。
  77. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えします。私のただいまの考えは、そういう考えで進んでおります。
  78. 西村直己

    西村(直)委員長代理 八百板君にちよつと御相談いたしますが、もう大体よろしゆうございますか、時間も経過していますから。
  79. 八百板正

    ○八百板委員 時間もございませんから、もう少したつてからいずれ分科会で、こまかくお聞きすることにして、あとがあるから端折つて申し上げるわでありますが、肥料の問題はその程度にいたします。  これもこの前の農林大臣からのお約束の引継ぎでありますが、米の問題について、供出制度に関連いたしまして、食糧関係の度量衡の関係が統一されていないわけであります。たとえば割当は石で行き、それから農民の場合は、目方と石と両方で責任を持たせられる。ところが配給の方、売る方はキロで行くというようなわけで、毎日食べている自分の米が、一升幾らだと開き直つて聞かれても、さあ幾らだろうといつた調子で、答えられないという状態であります。こういうような状態でありますと、勢い生産者価格と消費者価格の差額というような、そういう中間経費に対する国民の批判も目が届かないということになつて、いろいろ問題が起りますから、これは統一してもらいたい。しかし、外国との関係もありまして、日本だけで統一できない場合がありますから、せめて発表する場合だけでも一目瞭然とわかるようにしていただきたいという注文をいたしましたところが、これはたしか前の廣川農林大臣でございましたが、そうするという御返事があつたのであります。大臣はしよつちゆうかわつても、やはり吉田内閣として一貫した責任をとつてくださると思うのですが、これをひとつそういうふうに取扱つていただけないものでございましようか。
  80. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは直率に申しまして、私ども自身も一升、二升の方はすぐわかりますけれども、何キロと言われてもちよつとすぐにはぴんと来ない。これは正直に言うと、私どももそういう感じをいたしております。従いまして一升二升とか何キロキロというような数字相違点から中間経費をごまかす、そういうことで、これを使つているのではないと思いますけれども、御趣意の点は私も同感でございますから、そういうふうにできるだけ扱うことにいたしたいと思います。
  81. 八百板正

    ○八百板委員 お尋ねいたしておりますのは、この前の農林大臣も、そうおつしやられたのでありますから、できるだけそうやるというのでなくて、これからの食糧の価格その他の数字的な発表の場合などあらゆる機会に、何らかの形において換算して、そして国民に一見してすぐわかるようにする、こういうふうにひとつ御確約をいただきたいと思います。
  82. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは事務のとり方によつてでき得ますならば、私はそういたしたい。
  83. 八百板正

    ○八百板委員 それは事務のとり方といつても、若干の換算等の手間がかかる場合があるわけでありますが、そういう方針で今後対外発表はやるのであると決定せられますならば、すぐさまできることでありますから、そういう意味でやつていただきたいと思いますが、いかがでございましようか。
  84. 保利茂

    ○保利国務大臣 できるだけ御趣意に沿うようにいたします。
  85. 八百板正

    ○八百板委員 農業団体再編成の問題について、農林大臣の基本的な考え方を伺つておきます。
  86. 保利茂

    ○保利国務大臣 農業団体の再編成をどういう考えでやつておるかということでございますが、私は過去の産業組合活動と当時からの農村の実情から見まして、農村の共同経済活動というものは、農村経済を向上せしめて行きます上にきわめて必要である、従いましてまた農民、農業の面からするいわゆる利益代表の機関としての団体の必要性もある、それを漸次実情に即しつついろいろの団体もございますから、できる限り各機関における摩擦を少くして、これを強化して参るという方向で行くべきである、そういう考えのもとに、ただいま農業委員会及び農業協同組合法の改正案の御審議を煩わしておるわけでございます。
  87. 西村直己

    西村(直)委員長代理 八百板君に申し上げますが、あとわずかの時間にお願いいたします。
  88. 八百板正

    ○八百板委員 農業団体の根本的な考え方として、経済行為は農業協同組合にこれをやらせる。この考え方は異存がなかろうと思うわけであります。そこでやはり農業団体、農民団体の場合に問題になりますのは、農民の利益代表と申しましようか、農民の経済的社会的地位の向上のための、そういう農民の機関というものをどういう形で置くか、こういう点であろうと思うのでありますが、こういう点について今の政府考え方は、そういう農民団体を保護助成するという形で、お金を出して育てて行こうという行き方をとつているわけでありますが、一体そういう農民の利益代表の機関というものは、だれを相手にしてどういう活動をするというふうに御認識になつておられますか。この点ちよつと伺つておきます。
  89. 保利茂

    ○保利国務大臣 農業委員会委員は、個々の農民の直接選挙によつて、農業及び農民の利益代表者として選び上げておるわけでございますから、この農業委員を基礎としてその強化——従つて利益代表としての公正活発な活動を促して行く方向に持つて行くことが、妥当であろうかと思つております。
  90. 八百板正

    ○八百板委員 農業委員会の機能ということが問題になるわけでありますが、現在の農業委員会は農業委員会の機能を果しておりませんから、当然にこれは解体しまして、そうして農業委員会の持つ農地行政の部分を分離して、そうして農地法の精神をその機関を通じて行わせる、こういうような方側が正しい方向だと思うのでありますか、その場合に農民の経済的、社会的地位を向上するための農民の団体なり、農民組織というものは、当然今日の日本の農業の状態のもとにおいては、政府なりあるいは政治のやり方に対して、農民の立場からこれを要請し、そうして農民の社会的地位の向上、経済的地位の向上をはかる、こういう活動にならざるを得ないわけでございます。であるとしますならば、そういう農政活動を行う団体に対して、お金をやつてひもをつけるという考え方は、本来の農民団体の方向を誤るもりだと私は思うのでありますが、そういうふうな点についてはどうお考えになつておりますか。
  91. 保利茂

    ○保利国務大臣 ごもつともなことでございますが、しかしこの農業委員会の公正活発な活動を促して参ります上に、基本的な経費としましては、あるいは組織に要する費用であるとか、あるいは調査に要する費用でありますとか、そういう最小限の経費等の幾分かについて、国が補助して、その活動を促して行くということにしたいと思いますゆえんのものは、農業部門はほかの産業部門と違いまして、きわめて零細な負担力の弱い農家によつて営まれておるわけでございますから、従つてそこに基本的な経費の一部を助成して参りましても、私は農民、農業の利益代表の機能をそれによつて失わしめるものではない。端的に申しますれば、いわゆる御用化して行くようなことには絶対にならぬ、こういうふうに考えております。
  92. 八百板正

    ○八百板委員 今の農林大臣のお話によりますると、そういうお考えでありますならば、やはり農民の団結権と申しましようか、団体交渉権と申しましようか、そういうようなものを法制的に認めましたところの、たとえば農民組織法とかあるいは農民組合法とか、そういうような形において農民団体の利益代表機関を考えて、そうして農民の社会的、経済的地位の向上、発展のために自主的な農民団体の活動を促す、こういう方向が正しいのではないかと思うのでありまするが、こういう点について農林大臣はいかがお考えでございましようか。
  93. 保利茂

    ○保利国務大臣 お考えとしては十分お考えがあると存じますが、私どもとしましては、利益代表の機関としては農業委員会に期待をいたし、今日農政活動をしておられる農民組合はそこに法制的なものもなく、行政庁の関与もなくまつたく、自由、自主に農政活動を続けられるというところに意義があると思われまするから、これを法制化する考えは、研究は十分いたして行かなければならぬと存じますけれども、ただいまはその考えを持つておりません。
  94. 八百板正

    ○八百板委員 それでは外務大臣にお伺いいたします。どうもお待たせいたしました。ワシントン電報の伝えるところによりますと、一部報道機関はMSAの問題について、相互安全保障協定はもうすぐにもできるのだ、こういうふうな報道が一部流されておりまするが、進行状態はどの程度でございましようか。
  95. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 あの新聞報道を私も見ましたが、どうも何か誤報ではないかと思うのであります。まだ実は先方の準備の都合もありまして、急いではおるようでありまするが、話は始めてないのであります。
  96. 八百板正

    ○八百板委員 今までの外務大臣のお話によりますると、協定については国会の承認を求めるとたびたび言つておられまするし、その場合に事前にというふうなことを言つておられますが、これは調印の前に国会の承認を求める、こういうふうにはつきり理解してよろしいかどうか。これが効力の発生が国会の承認によつて効力が発生するというのでありますれば、これは憲法上におけるいわゆる事後という考え方になりまするから、国会において承認を受けた後に調印締結の手続をとる、こういうふうな意味のものと解してよろしいと思うのでありますが、はつきりそういうふうに解してよろしいかどうか、従つてもしそういうことになれば、今まだ交渉が進んでおらないとすれば、この国会にうつかりすると間に合わない場合もあるわけでありますが、そういう場合に当然臨時国会を開いて承認を求めて、その上で調印締結ということになるわけでありまするが、その点をひとつはつきり御返事を承りたいと思います。ひとつはつきり御答弁をいただければ、これで打切ります。
  97. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 憲法の解釈において私は八百板君と違うように考えます。憲法には調印の事前または事後にとは書いてないのでありまして、締結について締結の事前にまたは事後と書いてあります。締結といいますると、その条約によりまして国家の意思が拘束されるときが締結でありまして、それでないその以前は締結とは私は言えないと思うのであります。そこでもし調印と同時に効力を発生する条約であるならば、調印の前にちやんと両国政府の合意によつて、たとえばそこにイニシヤルをしてきめたものを国会に提出して国会の承認を得たならば、それがそのまま効を発して条約となるのであります。     〔西村(直)委員長代理退席、委員長着席〕  それから批准条項を付しますれば、その協定案が両方の代表によつて署名されますと確定いたしまして、その確定したものを国会に出しまして、国会の承認を得れば批准行為をいたしてこれで効力を発生することになります。いずれにいたしましても、調印と同時に効力を発生する条約でありましても、調印の前にははつきり両国の合意が必要なのであります。つまりその意味で批准行為を必要とするものについてその前に調印するのと何らかわりがないのであります。要するに批准行為を必要とする条約でありながら、調印する前には両方の意思がきまつておりませんからして、国会の承認を求めるといいましても何を求めるか確定したものがないのであります。従いまして調印と同時に効力を発生する条約にあつては、調印の前に、やむを得ざる場合のみ事後に国会の承認を求める。批准行為をもつて効力発生とする条約にありましては、普通調印をしまして条約の案が確定したときにこの案を国会に提出して、幸いに国会の承認を得ればそこで批准行為をやることができるのでありまして、そこで効力を発生する。つまり調印の前とか後とかにはきまつてないのでありまして、その条約が調印をもつて効力を発生するものか、あるいは批准行為をもつて効力を発生するものかによりまして差があるのであります。  それから臨時国会というような問題につきましては、これは、いつできるかということにもよりましようし、交渉がこれから始まるのでありますが、その結果にもよりまして、ぜひ急いで国会の承認を求めなければならぬかどうかという判断にもよりますので、ただいまのところどうするかということはまだ申し上げる段階に至つておりません。
  98. 尾崎末吉

    尾崎委員長 門司亮君。
  99. 門司亮

    門司委員 最初に、総理大臣がおいでになりませんので、総理大臣の代理として緒方総理にひとつ御答弁を願つておきたいと思います。総理大臣は、施政演説の中に地方の行政は非常に重要視されたような演説をなされております。ところが行政組織の最高の府であります閣僚を見てみますと、遺憾ながら地方行政に関する専任の大臣を置いておられない。一万有余の日本の地方自治体は、地方制度調査会ができて適正規模の問題が町村に叫ばれ、さらに自治体のあり方がいかようなものになるかということについては非常に関心を持つておりますのと同時に、財政的な問題等についても心配をしておるのである。この際せつかく総理大臣が、施政演説の中に地方行政はきわめて重大であるということを申し述べられておりながら、兼任の大臣で置かれるということについては、私は地方の自治体のすべてがかなり大きな失望をしておるということは事実であると思うのでありますが、内閣方針として専任大臣を置かないでいいというようにお考えになつておるかどうか、この点をひとつ明確に御答弁をしておいていただきたいと思います。
  100. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 いろいろ御意見もあるようでございますが、ただいまのところ地方自治庁長官が郵政大臣を兼ねておりますことによりまして、国政上不都合を生じておるとは考えておりません。
  101. 門司亮

    門司委員 さしつかえないというような御答弁でございますが、それは専任を置かなくても、事務的のものだけで書類を見て、あるいはそれに判を押しておるというだけならば、何も専任大臣でなくてもいいと思うが、少くとも地方の自治体が、先ほど申し上げたように、非常に重大な時局に当面をいたしておりますので、従つて政府としても私はおそらく総理大臣の施政演説の中に特に地方自治体のことを言われたのは、その辺を考慮されて言われたことだと思う。そういたしますと、事務的に行政上にさしつかえがないから兼任大臣でたくさんだという御答弁は、総理の施政演説のお考えと社会の今日の現状とに相いれない、反したものであるように考えておりますので、私は御質問を申し上げたのでありまして、その点の認識は一体どうであるかということ、いわゆる今日の地方行政というものが重大な時局になつているような段階であるが、あるいは兼任大臣程度で事務的の処理をして行けばいいというような段階であるかどうかということについての所信をひとつこの際伺つておきたいと思うのであります。
  102. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 地方自治のことは、政府といたしましても、総理大臣の施政演説に申し上げましたように、非常にこれは民主政治の基盤といたしまして重大であると考えておりまするし、どこまでも地方自治を尊重いたしまして、これを育成強化して参りたい考えは少しも動いておりません。大臣が郵政相を兼ねておることについて不十分でないか、あるいは事務的処理だけではいけないということでありますが、自治庁長官につきましては特にその方面の蘊蓄、見識の高い人間を選んだつもりであります。御指摘でありますけれども、今までのところ別に不都合を生じたと考えていないのであります。
  103. 門司亮

    門司委員 これは重ねて問うようでありますが、今までのところさしつかえがないようだというお話でありますが、問題は、先ほど申し上げましたように、単に事務的の処理をするという段階ではございませんで、私どもといたしましては、一方において地方制度調査会という大きな機構で、将来の日本の自治体をどうするかということを研究をいたしております。従つて政府の内割におきましても、やはり専任の大臣を置いていただいて、そうしてこの地方制度調査会と相並行して調査研究するという、きわめて重大な段階であると私は思う。もし政府にその用意がなかつたならば、地方制度調査会でいかに学者をお集めになつて、あるいはその道の人をお集めになつて研究されましても、それを十分に処理し、それを十分に行政の中に取入れて行くだけの用意がなかつたならば、地方制度調査会というものは何にもならぬと思う。従つて私はこういう観点から考えて参りますと、今の副総理の御答弁でははなはだ不満である。同時にまた現内閣が地方の自治体、さらに地方の行政に対して非常にむづかしい段階に立至つておるから、一方において地方制度調査会というものをこしらえて、そうして政府の責任をここにのがれようとするものの考え方ではないかということに解釈してさしつかえがあるかどうか。
  104. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 地方制度調査会に政府は隠れるつもりは少しもないのでありまして、地方制度調査会にもせつかく御勉強を願つて、八月中にはぜひ成案を得たいと考えておりまする一方に、事務当局の方におきましても、ただ地方制度調査会の成果を待つだけでなく、今勉強して将来の制度の基本的のあり方につきまして研究いたしております。地方制度が非常に重大なことは、ただいま申し上げました通りで、これにつきましては、特に総理が施政演説に力を注ぎましたように、この地方制度調査会の成果を待ちながら、これは相当力を入れて実績を上げたつもりであります。
  105. 門司亮

    門司委員 どうも私の満足する答弁ではありませんが、時間もございますので、これ以上私は追究はいたしませんが、ただここでお聞きを願つておきたいと思いますことは、先ほども申し上げましたように、地方制度調査会が十分なる意見を立てて参りましても、ほんとうに受入れの態勢が政府になかつたならば、これはお座なりのものになる。従つてこの点を私は憂えておるのでありまして、政府におかれましてはこの点は十分われわれの意のあるところ、というよりも、むしろ地方公共団体の全体の意のあるところを十分尊重していただきたい。このことを申し加えておきます。  その次に大蔵大臣にお聞きをいたしたいと思うのでありますが、地方財政の今日非常に困つておることは御存じの通りであります。これに対しては主管の大臣であります塚田自治庁長官からいろいろお話も承つておるのでありますが、今日までの当委員会の質疑応答をずつと新聞で拝見をいたしておりますと、二十七年度までの赤字、いわゆる現在地方に積つております赤字は約五百億余りありまして、これらの赤字については何らか特別の処置をとるというような答弁がなされておるのでありますが、これは単に自治庁長官としてのお考えであつてはならないのでありまして、これを裏づけするものは大蔵省であることに間違いがございません。従つて大蔵大臣はこの現在累積されて、地方の自治体が財政的に行き詰つておりますのを打開することのために、五百億に余ります赤字の処置についていかなる方法をお考えになつておるか、具体的な御意見をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  106. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 地方財政に相当の赤字が出ていることは私も認めておるのでありますけれども、この赤字の原因がどこにあるかということにつきましては、地方制度調査会の答申を待たないとはつきりいたしません。もしその赤字の原因にして、たとえばわれわれが国の職員と同様な人件費を見ておるのでありますが、それを国の職員以上に地方自治庁が欠員をそのまま置いてやるとか、あるいは自分の費用でやつておる、こういうような場合でございますと、国の財政計画というものは国の職員と同様に見ておるのでありますから、さような地方自治体の任意にやつたものに対して国がこれを出すべきでなかろう、原因がもしそうであれば、そういうものもあろうかと思いますけれども原因が国として出すべきものであるということになりますれば、もちろん国として処置いたしたいと考えておるのでございます。従いましてどういうことに原因しておるかということの調査を待つておる、その調査ができましたらこれに対して善処いたしたいと考えております。
  107. 門司亮

    門司委員 地方制度調査会という重宝なものができて参りまして、政府はこれにみな隠れればよいことになるのでありまして、私も地方制度調査会にあいにくおるものでございまして、どうも話がしにくいようになりますが、今大臣のお話は、国の責任においてもし赤字が出ておるとすれば、当然それは国の責任において処理するというふうに私は解釈いたします。そこで私は現政府に対して、政治的な問題について一言所信を伺つておきたいと思いますが、それは日本の地方財政の問題は、戦午争前におきましてはすでに御承知のようであり、さらにこれを実際的に申し上げてみますと、戦後におきましても、昭和二十四年までの地方財政には比較的赤字は少かつたのであります。昭和二十四年を境といたしまして赤字が急激にふえております。この最も大きな原因がどこにあつたかと申しますと、二十四年までには少くとも地方配付税法という法律がありまして、われわれは昭和二十三年に地方配付税法をこしらえて、所得税並びに法人税の三三・一四は必ず地方に配付しなければならないということで、一応地方財政のつかめるものだけをつかむという方針をとつて来ております。ところがこれが二十四年の自由党の内閣になつて、三三・一四をただちに一六・二九に切下げられております。ここに地方財政の赤字の最初の原因が出ておると思う。それから二十五年のいわゆるシヤウプ勧告による税制改革、さらに当時における神戸委員会等における国と地方を通ずる事務配分等の問題によつて、だんだんと地方に事務が配分されて参りまして、これに伴わない財政処置が行われて参りました結果、今日のようになつておることは火を見るよりも明らかであります。もし二十三年にありました地方配付税法が、今日そのままの姿で生きておつたとするならば、年々現在の地方平衡交付金よりも白五十億ないし二百億多額の資金が地方に流れておつたと私は考える。これは数字をごらんになればすぐわかる。従つて今日の地方財政の赤字の政治的責任は、あげて自由党の今日までの施策のしからしむるところであると申し上げても、決して私は過言でないと思う。従つてこの政治責任は当然現政府が負うべきだと思う。こういう観点に立つて大臣はそういうことを是認されるかどうか、明確にひとつ御答弁を願いたいと思います。
  108. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私はまだその辺の事情について十分検討いたしておりません。従いまして、これに対して責任を負うべきかいなやについて御返事をいたしかねます。ただ私どもとしては、地方財政の今窮乏の原因がどこにあるかということ、その原因がわかりますれば、それに対処いたします。また私どもがちよつと知つたところでは、非常に財源が偏在している。その結果一方には富裕な団体もあるが、他方にそういつた窮乏団体もできておるということを見ておりますので、私ども、中央地方を通じた税制の根本的改正をやつて、そういうことに対しても適当な処置をとりたいと考えておる次第でございます。
  109. 門司亮

    門司委員 次にもう一つ政治的にお伺いをしておきたいと思いますことは、国、地方を通ずる税制の問題はあとで聞きますが、私は国と地方を通ずる財政規模の問題で一応お聞きしておきたいと思います。  国並びに地方の財政規模は、御存じのように、昭和十一年の日本の最も平和な年、いわゆる平和の最後の年には、中央の財政規模が一〇〇の場合に、地方の財政規模が一二五であります。これが昭和十二年満州事変に突入して参りましてから、だんだんと地方の財政規模が小さくなつて参りまして、昭和十九年の戦争の最後の年には、中央の一〇〇の財政規模に対して地方はわずかに二五になつております。そうしてそれが戦争後、昭和二十二、三、四あるいは五、六年までは、事務配分がありましたので当然ではありますし、必ずしも私はその数字を是認するわけではありませんが、計数的に見てやや回復して参りました。そして最高八七・八%まで国と地方との財政規模が均衡化して来るような形を示して来たのは事実である。ところが本年度の予算関係を見ますと、これがまただんだんと開いて来まして、国の財政規模に対する地方の財政規模というものは、八五%程度になつておる。こういうことはやはり国の方針がだんだん非常時体制を示しつつある一つの大きな現われだろうと私は考える。従つて今日の田、地方を通ずる財政規模を立てられております大蔵大臣としては、ちようど戦争の前はこういう形を実はとつておるのでありますが、今日の事態がそれと同じような非常時的財政の組方であるというふうに解釈していいかどうか。
  110. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この点については、予算を編成しておる政府委員をして答弁せしめる方がよくわかると思いますから、政府委員をして答弁いたさせます。
  111. 河野一之

    河野(一)政府委員 門司さんの御指摘の通り昭和九年、十年ごろは、地方財政の数字が国家財政より高かつたことは事実でございます。しかし現在ではむしろ逆になつておるというお話でありますが、当時と国、地方を通ずる制度が全然かわつておりまして、たとえば当時は千二百五十億という平衡交付金制度もございませんでしたし、あるいは価格補給金というものがございませんでした。そういうものを引いて考えると、必ずしも国家財政の方が地方財政に比較して厖大になつているという考え方は当らないのじやないかと考える次第であります。
  112. 門司亮

    門司委員 事務当局のただいまの答弁は、はなはだ詭弁でありまして、もう少し地方財政の内容と規模をひとつごらん願いたい。平衡交付金はなかつたが、その当時におきましても、すでに配付税的の性格を持つものはあつたはずであります。ことに昭和十五年には配付税ができております。私は決して今の主計局長の答弁をそのまま受取るわけには参りません。  時間もございませんので、次にただいま大臣仰せになりました税制の改革の問題でありますが、これも地方財政の上にはきわめて重要な問題であることは御存じの通りである。地方財政の問題として、国、地方を通ずる税制の改革をするということは当然であります。ここで私が大臣にお伺いをしておきたいと思いますことは、今大臣がちよつと申されましたように、富裕県があつたり、あるいはは貧弱な町村があつたりして、でこぼこが非常にあるから、これらをならしたいという御意向のように聞きましたが、そういうふうに解釈してよろしゆうございます か。
  113. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいま見まして、財源の偏在によつてそういうことの起つておるところは、これは直したい、かように考えております。
  114. 門司亮

    門司委員 私のこれから聞きますのは、そういうことではございませんで、財源の偏在はありましようとも、なかろうとも、いずれにいたしましても、今日赤字が出るということはおおいきれない一つの大きな問題でありまして、これを改正いたしますには、税制の改革がまず必要だと考える。しかし税制の改革でわれわれが考えなければなりませんことは、往々にいたしまして今日までの税制改革は、新税をこしらえるということがその大部分になつておる。たとえばシヤウプの税制改革に対する勧告案を見ましても、地方に財源を与えた与えたとは言つておりますが、その財源を与えたということは、国の財源を与えたのではなくして、地方の住民からよけいに徴収することを法律できめたということであります。従つて財源を与えるということについては、地方住民の負担による財源の法律的な与え方と、実際上の国の財源を地方に与えるということ、この二つの方法があると思う。もう今日の現状では、地方住民に新しい税法の改革によつて負担をしいるような段階ではないと私は思います。もう負担の限度に達しておると思う。そこでどうしても国、地方を通ずる税制の改革をしよりとするならば、やはり国の持つておりまする財源を地方にいかように与えようかということが、残された唯一の道だと考えております。従つて大臣は一体そういうふうにお考えになるかどうか。
  115. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは調査の上を待たなければ、はつきりした御返事はできませんが、大体お話のごとくじやないかと考えております。ただ私どもか税制改正をいたします一つは、今仰せなつたようなこともありますが、もう一つは、国も税をとる、府県も税をとる、市町村も税をとるということで、それぞれ専門の税務員がたくさんおつて、窓口が三重にもなつておる。こういうようなことでなくて、あるいは昔の付加税がよいかどうか存じませんが、ああいうものであれば、そういうことがなくて済むであろう、もつと税制も簡素化したい、こういうのもまた一つの私のねらいであります。
  116. 門司亮

    門司委員 どうもはつきり要領を得ないのでありますが、税制の事務的の改正は、むろんある程度考えなければならぬかと思つておりますけれども、現在あまり理想的の税制をとつておりますことが、余分な経費をかける一つの理由になつているということは、われわれも認めないわけには参りません。ただ私どもが確認をしておきたいと思いますことは、先ほども申し上げましたように、国、地方を通ずる税制の改革というものは、少くとも国税を地方に委譲するという形をとる以外に、私は現在方法がないと考えておるが、これについてもう一度、そういうことであつていいかどうかということをお答え願いたい。
  117. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 御趣意はよくわかりますが、自分たちの調査の結果、そうなりますかどうか、これはまだ国全体を通じての調査ができませんと、はりきり御返事はできませんが、大体伺つてみたところ、そういうような方角に行くもののように考えられますが、これはまだよくわかりません。
  118. 門司亮

    門司委員 それでは次に、これも今までのこの会議の質疑応答の中によく現われている一つの問題でありますが、二十八年度、二十九年度以降の地方財政に対してはできるだけ赤字を出さないような措置をとつて行くということがしばしば言われておるのであります。従つてもし二十八年度、二十九年度以後の地方財政に対して赤字の出ないようにするということについては、根本的な問題はやはり税制の改革等が行われなければならないと思いますが、さしあたりの問題といたしまして、本年度の地方の赤字も、私はこの数字がそのまま正しいとは思いませんが、知事会、市町村会その他の意見を総合するところによると、やはり二百億余りが赤字になるように伝えられております。従つて少くとも現在の財政規模の上に、もう二百億ないし三百億というようなものが加えられて行かなければ、この赤字の解消はこれ以後にも私はできないと思います。従つて二十八年度、二十九年度の予算をお組みになります場合においては、そういう処置を確実に講じられるかどうかということを、大蔵大臣からひとつはつきり聞いておきたいと思います。
  119. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 二十八年度につきましても、御承知のごとく最初編成しました当時に比べますと、七十億を地方に増加し、また十五億の起債を増加する等の処置をとつております。しかし今申し上げた通り、その原因がどうもはつきりいたしませんので、はたして国の責任でもつてどうこうすべきものかどうかというような問題もあり、またこれは少し言い過ぎるかもしれませんが、地方におきましても地方財政の緊縮はやはり相当必要なんじやないか、特にいわば消費に関するような面の費用を節約して、むしろ建設的な方面に向けるようなぐあいに地方財政も進んで行くべきものじやあるまいか、一般的に申すとさように考えている次第で、地方自体においても相当緊縮に出るべきものじやないか、かように考えている次第でございます。
  120. 門司亮

    門司委員 私はこの機会にあとまだ厚生大臣、それから木村さんにお尋ねいたしますので、短かくしておきたいと思いますが、今の大蔵大臣の答弁でありますが、私どもも地方の冗費を節約することについては、何ら異議がございません。その通りだと思います。しかし中央もやはり地方に冗費を使わせないような方法をひとつつてもらいたい。たとえばこれは卑近な一つの例でありますが、会計検査院の職員が地方に参りましても、延日数にすると七百何日というような間会計検査院から出かけて行つている。いわゆる各省別に出かけて行つて、地方では一日に平均二人くらいの検査官が来ているというようなことで、もてあましている。地方財政平衡交付金法に書かれております通りに、政府が実行していれば問題はありませんが、これをその通りに実行しておりません。従つて中央に地方から陳情団がどんどん出て来ている。これは明らかに政府の施策であります。私は中央がまずそういうものをなくしていただいて、中央がこういう態度をとるからひとつ地方も節約してくれということを、大蔵大臣に、特に地方財政平衡交付金なりあるいはそういう点について、ひとつ御留意を願つておきたいと思います。  時間もありませんから、ただちに私は木村保安庁長官にお尋ねいたしたいと思いますが、私今日まで新聞を通じて見て参りますと、保安庁長官の出されました計画その他がいろいろ問題になつているようであります。私はこの問題をこの際追究しようとは思いませんが、この問題の原因なつた保安庁長官に、たとい試案にいたしましても、それだけの必要を認められた原因が一体どこにあるかということ、おおよそこういうものがもし政府の言つておりますように、対外的の敵を相手としない自衛計画であるといたしますならば、あるいはこれがもう一歩進んで国内の治安の関係からだと言われますならば、国内治安の上にそういうものを必要とするだけの不安定なものがどこにあるかということを、ひとつ明確にこの際お聞かせ願つておきたいと思います。
  121. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 御質問の御趣旨はよくわかります。これは何も具体的の理由があつたわけでも何でもないのであります。ただ将来日本の治安情勢が変化した場合、それに対応して治安力を増加する必要があつた場合に、どうして行つたらいいかというあらかじめの心組みを立てるために、私は一つの試案をつくつたのであります。これはただちに、どういうことが現在起りつつあるから、それに対してどう対処するかというようなことを対象として計画を立てたものではないのであります。
  122. 門司亮

    門司委員 どうもはなはだ奇怪な答弁を聞くのでありますが、おおよそものを立案し、ものを考えようといたします場合には、それに対しまする動機と申しますか、対象とすべきものがなければなりません。それを考えないで、単に政府なりあるいは保安庁長官が、将来かくのごときことがありはしないかというような想定のもとにものを解決されようといたしましても、国民は納得するわけには参りません。やはり政府は、国民を納得させるには、これこれこういう事態が実はできそうだから、これに対処するにはこういうものが必要だという理解と納得がなければ、私は物事は成り立たぬと思う。従つて計画されたものに、私は必ずそういうものがなければならないと思う。もし長官にして、そういうものがなくて、漫然と今日保安隊の装備強化が必要だ、いわゆる自衛力の漸増が必要だということになつて参りますと、私はこれはほんとうに政治上の大きな罪悪だと思う。いたずらに国費を使つてつて——保安隊の諸君には気の毒でありますが、若い者を多く集めて——言葉が悪ければ私は取消してもさしつかえありませんが、多くの若い者を集めて戦さごつこをしておるということにすぎないのではないかと思います。こういうことでは私はいけないと思います。少くとも一国の治安に関係したことでございますので、われわれの目から見ますと、非常に大きなものでありますが、政府はそういう大きな予算を使い、大がかりなものをしようとするには、私は国民を納得させるだけの構想が必要だと思う。今のような答弁では承服することができませんので、もう一度はつきりお答え願いたい。
  123. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。ごもつともな御質問です。そこでわれわれはそういうものについては、いろいろ資料を集めて今後どういう計画を立てるかということについては研究中であります。その成案を得る前に、一応財政的の見地からどういうぐあいにしたらいいかというような、自分の心構えをつくる必要がありまするから、つくつた次第でありまして、今仰せになりますような計画ということについては、これは各省との連絡もありますから、これから十分慎重審議してそれらのことを考えたいと思います。
  124. 門司亮

    門司委員 今の大臣のお答えは逆でありまして、もし、事態がこういうふりになつて来ておる、しかし日本の財政力はこれだけである、従つてこれだけの装備しかできないということなら、一応わかるのでありますが、事態がどうなるかわからぬが、その前にひとつ財政力がこれくらいしかないからこれくらいでよかろうということなら、これはまつたく逆であります。どうしてもわれわれはこれに承服するわけには参りません。それで私はもう一皮つつ込んで聞きたいと思いますことは、そういうことを大臣がお考えになりましたのは——現在公安調査庁でありますか、これらの一つの機関が国にはあるのであります。そうしてこれは昔の特高と全然違うとは言つておりますが、しかし思想動向なりあるいは以外の情報なりというものを集めております。しかも具体的に言うならば、その中に機密費として三億ぐらいの費用が使われておる。はつきり言うならば、これはスパイに使われておる。そういうものが国の機関としてはつきりあるのです。ですから大臣は、もう少し保つきりした国内の治安状況の資料はお持ちになつておると思う。そこで国内では今こういう治安状況にあり、さらにいろいろな団体というか、あるいはいろいろな角度からこれを総合して、こういう騒擾なりあるいはこういう物議をかもしそうであるというぐらいのことは、私はここで長官に御答弁願えると思う。これはある程度わかつておると思う。従つてこの公安調査庁の調査に基きまする国内治安の状況を、ひとつこの際、時間もございませんから、ごく簡単に御説明願えればけつこうだと思います。
  125. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。公安調査庁でそういう資料を集めてやつておるはずであります。しかしそれは法務省の管轄に属するものでありまして、私の方で直接にそういうものは入手いたしておりません。今お尋ねの点はあるいは調査委員会ということではなかろうかと思います。これにつきましては、われわれはいろいろな研究はいたしております。しかしあなたの仰せになりましたような、各国の情報とかいうものは、直接そういうことはいたしていないのであります。
  126. 門司亮

    門司委員 どうも保安庁長官の答弁は私どもには納得が行かぬのでありまして、手管はなるほど法務省かもしれませんか、しかしそれらの問題はやはり、さつき大臣もお答えになりましたように、総合されて、それに対処すべく今日の保安隊というものの存在があると私は思う。それらのものが何ら考慮されないで、そうしてただ十何万の人間を集めて、大砲を撃たせたり飛行機を飛ばしたりしているということになると、先ほど私が申し上げましたようなことになりはしないかと考える。従つてそういうことでないとするならば、やはり国外に対する一つの問題である。私ははつきり申し上げますが、もしこれが戦力である——きのうかおとといの並木君の質問に対しての御答弁に、飛行機は外から来るものだというようなことをいろいろお話になつたようでありますが、もしそういうような企画を立てなければならないというようなことが、外敵と申しますか、外からの侵入をする危険性があるというようなことをお考えになつておるとするならば、私はやはりそれらの問題は、日本の現在置かれております地位は、きわめて微妙な地位ではございますが、少くとも独立しております日本におきましては、やはり政府考えているように、戦力は持たないが、自衛力を持つているという観念に立つならば、その自衛力を立てた仮装敵国とでもいうようなものが、一体いかなるものであるかということをはつきりお示し願つておきたいと思います。
  127. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。仮装敵国などということは考えておりません。申すまでもなく直接侵略に対しては、これはやむを得ずアメリカの駐留軍の手を借りるよりいたし方がないのであります。しかし私が常々言いますように、間接侵略と直接侵略は同時的に起る懸念があるのでありますから、そういう場合においては国内の平和と治安とは乱されるのであります。これは国内の平和と治安を守るべき任務を帯びております保安隊においても、そういう場合には当然行動に移るわけであります。そういうことを考えてみますと、われわれはいろいろの角度から準備が必要である、こう考えております。
  128. 門司亮

    門司委員 もう一言木村さんにお伺いしておきますが、これも今までの答弁の中にあつたことでありまして、なお私のふに落ちない点をもう一言聞いておきますが、現在の協定によつてアメリカの軍隊が日本の直接侵略に対しては、これを守るものである、ということを言われ、さらにこれの徹退の時期は日本経済力ができて、そうしてアメリカの駐留軍を必要としない時期が来れば、日も早く帰つてもらうというような御答弁があつたように、私は記憶をいたしておるのであります。私の記憶違いであれば別でありますが、そう考えて参りますと、現在の保安隊というものは、時期が来れば必ずアメリカの現在の軍隊にかわり得る性格を持つものであるというふうに、われわれ解釈するのでありますが、その通りに解釈してよろしゆうございますか。
  129. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。安保条約第四条によつて、駐留軍の徹退の時期は双方で相談をやるということになつております。その時期はなかなか見当がつかないことは、御承知通りでありますが、それでわれわれといたしましては、常に申しておりますように、一日も早くみずからの手によつてみずからを守る態勢を立てて行きたい。しかしそれが日本の財政力にマツチして行かなければならぬ。そこまで日本が行けるかどうかということは、今後われわれ日本人の覚悟と努力一つにまたなくちやならぬかと考えております。それまではやむを得ず今の体制を整えて行くよりしかたがないではないか、こういう考え方であります。
  130. 門司亮

    門司委員 もう一言聞いておきますが、そうだといたしますと、現在駐留軍の使命というものについての問題は、結局直接侵略に備えるものであるということになりますと、一体直接侵略をわが国に試みようとする国は大体どの辺であるかということを、もし明確に御答弁できるならばお願いいたしたい。
  131. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 いずれの国とはさすことはできませんが、しかしそういう懸念のあることはアメリカも認めております。また日本の安保条約の前文におきましてもそういう危険があるということを明白にうたつておる次第であります。それはいずれの国とを問わず、さような不当な侵略行為のあつた場合にわれわれは備えるということであります。
  132. 門司亮

    門司委員 食事が遅くなつて人権蹂躙だという声もありますから長くは聞きませんが、もう一つ聞いておきたいと思いますことは、アメリカもそういうふうにあるいは認めておるかもしれないというような御答弁でありますと、そこにはやはりそういうものが必ずなければならない。私どもの今日の考え方から申し上げますと、世界のいずれの国もわが国に直接侵略を試みようとするような国は大体ないのじやないかというように、われわれは考えておる。ところが今の御答弁のようにアメリカもあるいはそういうことを考えているかもしれないということになつて参りますと、やはり直接侵略をする国があるというように考えておるからいるのであつて、これが単なる紛争であるとするならば、やはり政府の建前から、日本には直接侵略をする国は大体見当らないから、ひとつ駐留軍は早く帰つてもらうということで、政府が今まで言われておりますように、今の保安隊というものは国内治安を維持するのだということだけにとどめることを明確にするためには、政府は当然アメリカに対して駐留軍の撤退を要求すべきだと考えるが、この点はどうお考えになりますか。
  133. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は世界の平和が一日も早く来らんことをこいねがうものであります。世界各国とも全部軍備撤廃でもすれば、そういう危険はなかろうかと考えております。しかしながら現実の問題としてはさように参らないのであります。いつ何どきそういうような不穏なことがあるかもわからぬということは、これはだれしも考え得ることだろうと考えております。一朝事あるときにそういう備えがなくて、日本が破滅のような状態になるということではいけないのでありますから、御承知通り、安保条約を結んでわれわれの国の平和と、治安を維持して行きたい、こう考えております。
  134. 門司亮

    門司委員 それなら時間も長くなりましたから、最後に聞いておきますが、日本の戦力を持つまでアメリカの駐留軍はお認めになる、こういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  135. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。日本の自衛は自分みずからの力によつてやり得ることをわれわれは望んでおる次第であります。しかし外国の脅威か、今申しますように、全然なくなつた場合は、これは別ものであります。そういう脅威がなくならぬ限りにおいては、安保条約によつてアメリカによつて直接侵略を防ぐ、内地の平和は日本によつて保つ、こういうことのほかに道がなかろうと思います。
  136. 尾崎末吉

    尾崎委員長 川崎君、関連質問を許します。
  137. 川崎秀二

    ○川崎委員 ただいま門司君と木村保安長官の一問一答の中に、直接侵略に対抗するところの自衛力というものを持つことはアメリカでも認めておる、こういうお話であります。私はしばしば木村保安長官の答弁を聞いておりますが、ときには直接侵略に対抗するものを持たなければならぬと言つたり、あるいはこれは単なる国内治安のものであると言つたり、少しも一定性がないのであります。本日ラジオのニユース並びにUP通信によると、重大な報道がワシントンから報道されておる。それはダレス長官が昨日のアメリカ国会における証言の中で、日本は今度の予算において陸軍十箇師団の編成を整備し、これを国会にかけて予算案を審議中である、従つて日本がかくのごとき重大な決意をもつて予算案を審議をしておる際である。日本自身がそれほど予算を盛るのであるから、この際アメリカの最終の目的たる、すなわちアメリカ軍の撤退を目標にしたMSA援助を早急にしなければならぬ。MSAについてアメリカの国会議員各位に御審議を願つておるのは、日本が陸軍十箇師団の編成を整備してその予算をかけておるからであると伝えておるのであります。驚き入つた次第であります。われわれは出て来ておる予算書の内容並びに各閣僚の答弁からは陸軍十箇師団の整備をしておるとは聞いておりません。われわれは光栄ある吉田総理大臣並びにあなたの証言をぜひとも信用したいと思う。再軍備はいたさない、自衛力の強化は国内治安の面のみでございます、これをわれわれはあくまでも信用して行きたいのたが、このダレス長官の証言との差は天地霄壌の差ではないか。こういうものがもし進行しておるとすれば、日本国民はアメリカによつてようやく事態の真相をぼつぼつ知らされることになる。大体アメリカの言う通りに、自衛軍の内容などもだんだん変化して来ておる。半年あるいは一年の差はあるかもしれぬが、アメリカの言つておるさしずに応じて、わが国は自衛力を強化しつつあるのであります。それに対して、断じて自衛力以外のものを持つてはならぬ、すなわち直接侵略に対する自衛軍などというものは持つ必要はないのだというならまともかく、その必要はアメリカ側も認めておるし、自分の方も認めておるというならば、再軍備ではないですか。このダレス長官の証言が真なりやいなや、もし真なりとすれば、日本国民に向つてのみあなた方はうそをついて今日まで来ておることに相なるのであります。私の聞かんとするところのものは、予算の中にそういうものがないというならば、将来もそういうものを出さない、こういうことを確言をしていただくことが必要であると思います。これについてのあなたの答弁を求めたいと思います。
  138. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ダレス長官がどういうことを言つたか、その真偽はわかりません。ただわれわれもそういう報道を受けておるのであります。なおその真相について十分調査してみたいと思います。しかしながら、ダレス氏が何と言おうと、われわれは二十八年度予算において、彼氏の言うがごとく十箇師団に増加するなどという気持でもつてつていないことは、事実明白であります。これはダレス氏がほんとうにどういうことを言つたのであるかよく取調べたいと思います。
  139. 川崎秀二

    ○川崎委員 多分そういう御返事であろうと私も思つておりました。そこであなたの言うことを信用して、しからば再軍備はしない、自衛力の強化も国内治安の程度に今日はとどめておくのだ、そういうことになりますと、門司君が先ほど来御指摘の通り言葉は悪いが、あの若い者に鉄砲を与えて兵隊ごつこをしておるのだという程度にわれわれは了解せざるを得ない。直接侵略に対抗するところの軍隊の卵でもなければ軍隊でもない、こういうふうに了解をいたすことにいたしますが、それでもよろしいかということが一つと、もう一つは、これは私の真のねらいでありますが、予算はこの際削減をさしていただきたい。幸いにして与党の諸君もこれに御同調のようでありますから、この点あなたはその命令に従つて、おそらく削ることに同意せざるを得ないことに相なりましようが、その点の御感想を承つておきたいと思います。
  140. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は常に言つておる通り日本はみずからの手によつてみずからを守るだけの態勢はとつて行きたい。これは大多数の日本国民は同感であろうと考えます。ただ日本の財政力がそれを許さぬから、やむを得ず直接侵略に対してはアメリカ駐留軍の手によつてこれを守るように、間接侵略に対しては日本の保安隊がこれに当る。両々相まつて日本の平和と治安を維持して行くのだ、こういう建前をとつております。日本の財政力が将来許すようなことに相なりますと、再軍備とは言いませんが、自衛力の増加はいたしたいと考えておる次第であります。ただ、二十八年度保安庁費の問題が出ましたから、一言申し上げたいと思いますが、私の考えとしましては、これはどこまでも原案をひとつお認めいただきたいと考える次第であります。
  141. 門司亮

    門司委員 あとは厚生大臣にお伺いしたいと思います。昨日の本委員会におきましても人口問題が取上げられたのでございますが、私の今日聞こうといたしますことは、大臣から率直にお答えを願いたいと思います。御存じのように、年々百二十万ないし百五十万の人口がふえておりまして、このままの増加率を放置いたしておきますと、今政府の立てております食糧五箇年計画にいたしましても、産業経済の計画にいたしましても、すべてがこれはあとをおつかけるということであつて、いつまでたつても満足なものはでき上らないと思う。従つて日本経済自立と完全なる日本の平和を維持して行こうとするには、どうしても人口の調整が重要であると考える。この人口の調整に対して、厚生大臣としてはいかなるお考えをお持ちになつておるか、大胆にお答えを願つておきたいと思います。
  142. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 人口問題に関しましては、本委員会においてたびたび御質問を受け、またたびたび御答弁申し上げております。昨日も大体の構想を御答弁申し上げたのでありますが、人口問題は非常に間口も広く奥行きも深いのであります。これを解決するには、あらゆる面から検討いたし、またあらゆる面からこの解決をはからなくちやいかぬ、それで、この構想については累次申し上げておりますから重ねて申し上げませんが、ただ厚生省といたしましては、従来たとえば優生保護法をつくりあるいは優生保護法を改正いたし、いろいろいたしおりますが、受胎調節という問題を取上げておりますのは、主として母体保護というような面から取上げておるのでありまして、閣議の決定、了解等もその面からいたしておりますが、これはまだ閣議の了解を経べき問題でありますけれども、私の考えとしては、仰せのように、人口は昨年においても百二十五万ほどふえて参つておりまして、出生率も減つておりますが死亡率も減つておる、従つて今後の人口の増加というものは依然として困難な問題でありますから、この受胎調節という問題はやはり人口問題にも関連して取上げなくちやいかぬのじやないか。昭治二十八年度においては三千九百万円の予算を計上しておりまして、あるいは優生保護相談所あるいは指導員等の活躍に資しておりますが、今後はやはりこの問題は重点的に取上げてやつて行きたいと考えております。なおまたその考え方の基礎も、単に母体保護という見地のみならず、人口問題に関連して考えて行くべきじやないか。これは閣議の了解を経ておりませんが、さような考えで今後はやつて行きたい、適当な機会に閣議に了解を得たいと考えております。
  143. 門司亮

    門司委員 そういうお座なりな答弁では今日の人口問題は解決いたしません。優生保護法がありましても、これは単に母体を中心としたものの考え方である。従つてこれは人口の増加に対してどうしようというはつきりした施策じやないと、私はここではつきり申し上げておきますが、もし大臣にしてお考えがあるならば率直に御答弁願いたいと思います。人口がだんだんふえて行きますのについて、現在政府考えておる、あるいは行つておりまするような、たとえば移民の問題であるとか、あるいは優生保護法によつて胎児の調節をはかるというようななまぬるいことで、人口の調節はできないと思う。日本の国土と人口との比例を考えてみますと、今の人口よりも二千万以上が減らなければ、今日の日本の国土の中では、安心して生活することは私はできないと考える。日本がどんなに平和を欲求いたして参りましても、今日のこの人口の状態では、やはり外国から食糧を入れなければなりません。外国から食糧を入れるということになると、もし外国に間違いでもございますと、やはり日本食糧というものはきわめて大きな危険性を持つて来ることになる。同時に人口が多くて日本で生活して行けなくなるということになると、その人口のはけ口をどこかに求めなければならなくなつて来る。このはけ口を求めたことが今次の大戦になつたことは、御存じの通りであります。従つてほんとう日本が平和を欲求して行こうすれば、この国土においてまかなえる、十分やつて行ける人口にして行かなければならない。そうすると少くとも二千万ぐらいの人間が現在の日本の国土の上においては多過ぎると考える。従つて単なる調節というようなことでなくして、将来人口のふえないような、積極的な施策が私は必要だと考える。これについて大臣はそういう施策を一体お考えになつておるかどうか。単なる胎児の調節じやございません。人口の増加をいかにして防止するかという大きな問題であります。これについての大臣の所信を伺つておきたいと思います。
  144. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 御質問の趣旨がちよつとわかりかねるのでありますが、人口がふえて行くからその調節をはかる。調節をはかるということになつて参りますと、従来は人工妊娠中絶等を優生保護法でやつておりましたが、これはいろいろ弊害がありますので、昭和二十七年に優生保護法を改正いたして、受胎調節をやつておるのであります。受胎調節以外にそう方法はないと思います。それに対してたとえば、昨日も詳細に申し上げましたから、重ねては申し上げませんが、今後も政府としても十分の努力を払いたいと申し上げておるのであります。
  145. 尾崎末吉

    尾崎委員長 門司さんに申し上げますが、相当以上に時間を超過しておりますから、あと一問に願います。
  146. 門司亮

    門司委員 私は今の大臣の御答弁は、実際の日本の人口の増加の実情を御承知ないのじやないかと思います。人口の増加を調節するためにはいろいろな手段方法はございますが、今日までとられて参りましたものは、いずれも、実際に人口かふえておりまする階層に対しては十分なる処置ではございません。私は極端なことを言うようでありますが、たとえば計画的に性行為が行われなければ受胎の調節は非常に困難だと思うが、そういうものの持合せをしております家屋が日本に一体どれだけあるか。日本の今日の国民の多くの生活の状態の中にある性行為というものはほとんど行き当りばつたりである。この状態の中にいかに政府が受胎の調節をするというようなことでいろいろな施策を講じて参りましても、生じつかなことでこれを調節するわけには参りませんし、また人口の増加を防ぐわけには参りません。従つて私はここに大胆に申し上げておきますが、もし大臣にしてお考えがあるならば率直に御答弁願いたいと思いますことは、たとえば三人なら三人以上子供をふやさぬということについては、本人の希望があるならば、国費をもつてこれらの調節をするというようなことをお考えになるかどうか、いわゆる三人以上子供ができた者に対して、それ以上子供がふるということを本人が望まない場合に対しては、国費をもつてこれの手術あるいは調節を行うというような、積極的な施策をお考えになつておるようなことがあるかどうかということを最後にひとつ聞いておきたいと思います。
  147. 山縣勝見

    ○山縣国務大臣 ただいま人口問題に対して、大臣は何ら根拠なくしていろいろ施策をしておるのじやないかというお話がありましたが、人口問題につきましては、及ばずながら研究いたして、数字等も研究の上でのことであります。ただいまお話の点は一律に参らぬのであつて、貧富の差あるいは社会環境の差いろいろありますから、問題は個々のいわゆる貧困者あるいは困窮者の面において、受胎調節をいたしたくてもできない面に対してどうするかという問題でありますから、この問題に対しましては善処をいたしたいと申し上げておるのであります。
  148. 尾崎末吉

    尾崎委員長 それでは午後二時三十分より開会することとし、暫時休憩いたします。     午後一時四十六分休憩      ————◇—————     午後三時開議
  149. 尾崎末吉

    尾崎委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。村瀬宣親君。
  150. 村瀬宣親

    村瀬委員 まず私は在外資産の処理方針について緒方総理の所信をただしたいと思うのでございます。在外資産の問題につきましては、平和条約承認審議の際に、第十二国会で活発な論議が展開されたのでありますが、独立後においては、第四次、第五次の吉田内閣は、この問題に対し何らの誠意も方針も示されておりません。占領治下にあつた六年間はやむを得なかつたといたしましても、独立して一年半を経過した今日、かかる日本歴史の重大課題を放任して、いつまでも引揚者に戦争犠牲を強要しておるような道義的、政治責任はきわめて重大であると存ずるのであります。事在外資産に関しては吉田総理からその取扱いをまかされておると、みずから言明されておりまする緒方総理から、最近の経過と方針を詳細に御発表願いたいのであります。
  151. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをいたします。私は別に吉田総理から在外資産の処理につきましてまかされておるわけではないのでありまして、それは私が官房長官をしておるときに、在外資産に関する陳情を受けて、それ以来陳情者の方から緒方総理に一任したからというような行きがかりになつておるので、別に総理からこの処理を私に一任されておるわけではございません。この処理につきましては、各所在国との関係に応じまして、具体的な方策をとることが必要であると、根本的には考えております。わが国の在外資産につきましては、その処理の原則はサンフランシスコ条約に規定されておりますが、この原則にもかかわらず、インド、パキスタン、ブラジル等の諸国は、それらの財産をわが方に返還する旨を申し出て参つておりますので、政府としてはこの返還の促進に努めておる次第であります。また在外資産の大部分は、旧満州国を含む中国及び朝鮮、台湾、樺太に所在しておりますので、朝鮮所在のものにつきましては、昨年及び本年の二回にわたる日韓会談におきまして、その処理方法を交渉いたしまして、また台湾に対しても同様の交渉を行うことを予定しておるのであります。しかし中共地区等に所在いたしまする財産につきましては、これがどう処理されるかは明らかでないので、これに対しどうやつて行つたらいいかということは、現在のところまだ何とも申し上げかねます。
  152. 村瀬宣親

    村瀬委員 私の十尋ねいたしますのは、引揚者の在外資産に対し政府はどういう補償をしようとするのであるか、これを主としてお尋ねしたいのであります。ただいま、何も総理から一任をされておるのではないというお話でありますが、しからば一体在外資産についてはどの大臣が一番真剣に御担当になつておるのでありますか。
  153. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私の関係いたしまする限りにおきましては、昨年と今年と二回にわたりまして、在外資産関係者が非常に多数陳情に見えまして、そのときの約束といたしましては、まず在外資産がどういうふうに処理されておるか、それぞれの現地においてどうなつたか、あるいは日本政府としてどういう調査になつておるか、その調査を一応はつきりさせて、そうしてその数字が出た上でひとつ対策を考えよう、その調査一をすることにつきまして、大蔵省の事務当局を中心に一つの事務当局限りの調査をつくろう、そういうことを申しまして、それぞれ関係事務当局の了解を得ておりますが、まだ調査会をつくるまでに至つておりません。
  154. 村瀬宣親

    村瀬委員 はなはだ熱意のない御答弁でありまして、私たち失望を感ずるのでありますが、申すまでもなく在外資産は、水害で流れたのでもなければ、火災で焼けたものでもないのであります。りつぱに日本の敗戦に対する賠償という大きな任務を果したものであります。もし日本の在外資産がゼロであつたといたしますならば、平和条約の条項ははなはだしく異なつたものとなり、苛酷なものとなつたに違いないのであります。すなわち在外同胞七百万人の粒々辛苦の結昌をことごとく提供したればこそ、あの現金賠償をとらないという平和条約を締結することができたのでありますが、一体緒方総理は、在外資産は、私有財産尊重の立場から、憲法第二十九条第三項によつて当然国家がこれを補償せねばならないものとお考えになるかならないか、伺いたいのであります。
  155. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 日本国憲法は、私有財産権の尊重を認め、私有財産を公共のために用いる場合には正当な補償を行うべき旨を規定しておりますが、在外財産は所在国の法制によつて規律されまする財産であつて、わが国主権の直接及ぶところではないのであります。従いまして在外財産が当該所在国により処分されました場合は、憲法上の問題としては補償の義務を生ずるとは解しておりません。しかしこのような法律論は別といたしまして、財政事情の許す範囲内において、政府といたしましては、他の戦争犠牲者に対する施策とにらみ合せ、でき得る限りのことをやらなければならない、さように考えておりま。
  156. 村瀬宣親

    村瀬委員 何か書いたものをお読みのようでありますが、私は、その点補償の法律上の義務はない、こう断定なさるについては承服はできません。しかしきようは時間が非常に制約されておりますから、お尋ねを続けますが、緒方総理はまさか院議を無視しようとはなさるまい思うのであります。あなたは、昭和二十三年の五月二十五日に衆参両院で全会一致をもつて決議されました引揚同胞対策に関する決議において、在外資産問題処理に関する基本方針が明らかになつておることをか御存じでありますか。御存じならば、この決議に対し政府はいかなる処置をとつて参られたか、それをひとつここで御発表願いたいのであります。
  157. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私そのころ国会におりませんので、その決議の内容を承知しておりませんが、ひとつお示し願いたいと思います。
  158. 村瀬宣親

    村瀬委員 決議は主文がありまして五項、六項となつておりますが、その五項において、引揚者が海外において喪失した財産については、戦争犠牲負担を公平化する原則に基き、国家はできる限りの方途を講ずべきである、こういうふうなりはつきしたことになつております。どういう措置をとつて参られますか。
  159. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 それは先ほど申し上げましたように、法律の関連とは離れて、他の戦争犠牲者とにらみ合せて、財政の許す限りできるだけの補償をしなければならぬ、こういうふうに考えております。
  160. 村瀬宣親

    村瀬委員 私はお考えになつておることを聞いておるのではなくて、どれどれのことをしたか、これについてはこうやつた、あれについてはああしたということをお尋ねしておるのでありますから、そのなさつたことを伺いたいのであります。
  161. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今までの経過を私は存じておりませんので、取調べの上お答え申し上げます。
  162. 村瀬宣親

    村瀬委員 冒頭に申し上げました通り、いかにこれら引揚者を捨てて顧みざる政治が行われておるかということが、今の緒方総理の御答弁にもうかがわれるのであります。この決議をいたした当時は、いかなる決議といえども一字一句進駐軍の許可を得て初めて上程ができたのでありますから、決議が可決いたしましても、これに対し自由に予算を組むという権能は当時の政府にはなかつたわけであります。しかし現在は政府が自由に在外資産問題を処理する権能を持つたのでありますから、この衆参両院における全会一致の決議を尊重なさるならば、何らかの措置は漸を追うてでもなさつておらねばならないはずであります。どういうことをなさつておられたかひとつ御答弁をいただきたいのであります。——しからば在外資産の総額は幾らになつておりますか、根本からして伺つておきます。
  163. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 政府委員の方から申し上げます。
  164. 河野一之

    河野(一)政府委員 在外財産の処理につきましては、前年度におきまして在外公館の借入金の処理ということにつきましては五億八千万円かの、これは国会の御議決を得てやつたわけでありますが、その他の一般的な在外財産の問題につきましては、ことにわが国の在外財産の大部分は満州及び中国にあるのでありまして、なかなかその調査も困難でございます向うの資料によることはもちろんできませんし、こちらに帰られた方々のいろいろな御報告なり、あるいは在外会社の資産その他から調べておるのでございますがなかなか的確の資料が得られないのでございます。しかし大体の見当としておそらく四千億円以上に上るのじやないかということが推察せられる次第であります。
  165. 村瀬宣親

    村瀬委員 四千億とはいつの時代の四千億であるか、昭和二十年当時であるならば、それからは指数もずいぶん上つておるのであります。われわれの考えではおそらく二十兆に及ぶのではないかという計算すら出ておるのであります。二十兆円もあろうかというのに四千億円だというような御答弁では話になりませんから、もうこういうことは次を急ぎますからここでやめておきます。問題は、ほんとうに在外資産を処理して行こうという御方針が現内閣にあるならば、ただちに予算措置はとれなくとも、一歩々々何らかの措置が進められておらねばならないと存ずるのであります。たとえば今政府委員の御答弁になつた在外公館等の借入金を処理したというのは、どうやつたかといいますと、昭和二十四年の六月に整理準備審査会法が出ておるのであります。それから二年たつて二十六年三月に返済の準備に関する法律第五十四号が公布され、続いてその翌年二十七年三月には返済の実施に関する法律を公布してようやくこの問題の処理かついたのであります。在外資産の支払いについてもいずれは在外資産補償法というような法律の制定が必要となるのでありますが、政府は一体いつごろこれらの手続を立法化するお考であるか、その準備はどこまで進められておるのであるか、詳細に承りたいのであります。
  166. 河野一之

    河野(一)政府委員 在外財産の調査につきましては、昭和二十年に一回やつたのでありますが、先ほど申し上げた数字は当時の価格でありまして、現在の価格に直せば相当の金額になるであろうことはおつしやる通りであります。御承知のように非常に巨額の金額でございますし、またその財産の態様もいろいろありまして、これをどうするかということにつきましては、現下の財政事情等からいたしまして早急に決定いたしかねる次第であります。在外公知の借入金につきましても、すべて公平の見地からというような文句も法律に人づておる次第でありまして、そういう点もあわせ考え努力いたしておる次第であります。
  167. 村瀬宣親

    村瀬委員 私は最初から、四千億円か二十兆円か、どちらにしても、それを全額払えというようなことは毛頭申しておりません。予算措置も今年度すぐ出せというのではないのであります。漸を追うて一歩々々階段を踏みつつあるかどうか、じつと立ちどまつておるのか進行しておるのか、進行しておるならばどのような段階にあるのか、それを聞かせてほしいというのでありますから、ただいまのでは答弁にならぬと思いますので、もう一度伺います。
  168. 河野一之

    河野(一)政府委員 平和条約によつては在外財産については一応放棄いたしたようなかつこうになつておるのでございますが、御承知のように在外財産の大部分は中国及び満州にございますし、これらは日本との平和条約に調印する関係にはございません。そういつた関係で、帰趨も明らかでないし、また財産の総額その他につきましても調査の不備がありまして、引揚者の報告等からいろいろやつておるのでありますが、ただいまのところ調査が届くまでに至つておらないのであります。
  169. 村瀬宣親

    村瀬委員 私はそういう御答弁を要求しておるのではないのであります。平和条約に補償の条項が入らなんだ、それは議論し尽されたのでありまして、これはヴエルサイユ条約にも入つておるのに日本だけがよう入れなかつただけであります。根本にさかのぼれば幾らでも議論はあるのであります。しかし、平和条約に入つてないにしても、私有財産を尊重するならば、憲法第二十九条三項は適用しないにしても、これは当然道義的に、政治的にゼロにするわけに行くものではない。ですからこれはどういう段階で進んで行くのであるかというのでありまして、何も平和条約に書いてないからどうだということを聞いておるのではないのであります。ことしの十月に準備調査会をつくるとか、来年の一月にはこういう法律を来すのだとか、その素案はここまで進んでおるとか、もつと誠意のある——ここでわずかにわれわれが聞いておるだけではありません。七百万人の引揚者は、いまなお粒々辛苦の結晶を外国に残しておいて、そうしていまだにみじめな生活に耐えておるのであります。もつと誠意のある御答弁を願いたい。
  170. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 財政事情もあつて、なかなか思うにまかせませんが、しかし調査会等をつくることにつきましては、過日来副総理などから話もありまして、これは調査会をつくつて早く発足しなければなるまい、こういう話は約二週間ほど前からいたしておるような次第でございます。
  171. 村瀬宣親

    村瀬委員 何か食卓の、昼飯のあとででも話合いをしたような口調がありますが、そんな軽い問題ではありません。閣議にでもかけて、ちやんといつどうするという施策だけは講じてなくてはならぬ問題であります。私はただちに予算に盛れというのではないのであります。一歩々々処理に向つて進まねばならないのではないかというのであります。はなはだ私は不満であります。しからば大蔵大臣に私はお尋ねをいたしますが、最も手近な問題、送金小切手の制限解除についてであります。海外引揚者が終戦前後日本国向け取組んだ送金小切手、送金手形等は為替管理法によつてその処分権が停止せられたまま八年を経過しました。これらの送金小切手等は条約発効後は当然解除すべきものであり、政府は昨年四月二十二日の内閣総理大臣の答弁書において、このことを明らかにしておるにもかかわらず、いまなおこれを実施しておりませんのは、どうしたことであるか。これらの決済については関係銀行当事者の方では、大蔵大臣がよしといえばいつでも払うといつてつておる状態であります。いつこの制限を解除するのでありますか、責任ある御答弁を願いたい。
  172. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この問題につきましては、在外債務——向うの方から見ると債権、こちらから見ると債務、その在外債務の問題ともからみ合つておるのでありまして、その点も、向うとの話がつかないうちは、いろいろ処理いたしかねておる点であります。もつともインドのごとくに、何もこれに対して要求しない、こういうところの問題については、とりはからいは容易でございますが、まだそうでない分につきましては、全体の問題のからみ合いがありまして、それを決しかねておる次第であります。
  173. 村瀬宣親

    村瀬委員 はつきりと御答弁をいただきたいのでありますが、しからばこの制限解除は、どことどことの分は解除をした、どことどことの分は解除するわけに行かないという理由を、はつきりここでひとつお示しいただきたい。
  174. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 政府委員より答弁いたさせます。
  175. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 お答えします。ただいま手元にどことどこという詳細な資料を持つておりませんので、ただちに取寄せました上で御答弁いたしたいと思います。
  176. 村瀬宣親

    村瀬委員 こういうことはそうむずかしい問題でないのでありますから、大蔵大臣は大体の勘で覚えておられると思いますが、御答弁できませんか。
  177. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 率直に申しますが、詳細に聞いておるいとまがなくて、まだよく聞いておりません。ただ在外財産の問題につきましては、これは重要な問題だから、さつき話したように、早く調査会でもつくつて考える必要がある。そういうお話になりました小切手の支払いがどうこうという問題につきましては、これは一部税関等にそのまま保留してある分もあるということを聞いておりますが、これも全体の債務とからみ合つての問題だからということを聞いておるだけであります。従つてこまかいことは事務でないと今のところわかりかねるのであります。事務の方で調べまして御返事することにいたしたいと思います。
  178. 村瀬宣親

    村瀬委員 まことに驚き入つた御答弁であります。昭和二十七年四月二十二日付で答弁書第五号、内閣総理大臣吉田茂として、この問題について、ちやんと御答弁になつている。これは吉田茂さんが何もこの答弁書を書いたわけではないでありましよう。きつと大蔵省で書いたものと思う。これは昨年のことであります。そうしてそれには、「具体的な制限の解除若しくは緩和に当つては、個々の事例についてその実情を確認した上これを行うこととし、」とはつきり書いてある。問題は、吉田内閣総理大臣の答弁書によりますれば、個々の事例についてその実情を確認するかしないかという問題であります。これは個々の事例について確認はできるのでありまして、できるのをなさらないのであります。ところがこれは役所の方では、今日のことが明日になつても、明日が一箇月後になつてもとお考えになるかもしれませんが、これを持つておる者は、血のにじむよりな思いで、この解除を待つておるのであります。これがもし解除になるなりば、病気の子供を医者に見せることができるかもしれない、そう いう引揚者ばかりなのであります。もつと熱意をもつて真剣に早急にこれを解決して行きたいと思うのでありますが、何月何日からどこどこの分は必ず解除すると、私は御答弁を承りたい。
  179. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 実は私も在外財産には相当の関係を持つているのてあり致す。従つて強い関心を持つているのでありますが、しかしただいまのとこり、まだ詳細な報告に実は接しておりませんので、御趣意の点はよくわかりますから、至急調べまして、可能な分はとりはからうことにいたします。
  180. 村瀬宣親

    村瀬委員 これは政治に対する信頼の問題にまで及んで参るのであります。一国の内閣総理大臣が文書をもつて国会法七十四条によつた質問に対して答弁を出している。そうしてそれから一年何箇月経つても、その答弁の遡りに行われておらない。こういうことでは一体どこの国の政治かということになるのでありますから、私は責任を持つてとつ小笠原大臣は解決してもらいたいと思う。  もう一つ大蔵大臣に伺うのでありますが、これと同様な問題であります。先ほども何かちよつと混同なさつて御答弁があつたようでありますが、現在税関に保管中の証書類、証券類はなぜ所有者に返還しないのであるか。これまた同じ昨年四月二十二日の内閣総理大臣吉田茂氏の答弁書において、これらは条約発効後すみやかに所有者に返還する準備を進めている、二十七年度末に返還すると、はつきり答えている。現在横須賀の保税倉庫には、これがこも積みになつて積み上げられておるのであります。保険証券、株券、バランス・シートまで入つている。保険証券等が手に入れば、さしあたり保険会社は一万円か何ぼか払うのであります。こういう手近なことを放任しておいて、そうして何か平和条約に補償のことは書いてないとか、挿入してないとかいうようなことを言つてつては、引揚者にとつては泣くにも泣き切れぬのでありますが、一体これをなぜ所有者に返還をなさらないのでありますか、どういう障害があるのでありますか、いつから返還を開始されるか、これを明確に答弁していただきたい。
  181. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは昭和二十五年政令第二百二号に基いて税関に保管してあることは事実でありまして、ただこれらの小切手等は、まだ国交が回復しない地域にわが国民が残しておいた諸財産との関係もあつて、結局本件は終戦に伴う処理案件全体との関連から考究しなければならない問題になつているので、現在のところまだ結論を得ていない、こういうことでございます。
  182. 村瀬宣親

    村瀬委員 これも恐れ入つた御答弁でありますが、そうすると、昭和二十七年四月二十二日に内閣総理大臣が出した答弁書というものは、これはうそを書いたのでありますか。その後何らか変更になる一つの新事態が生じたのでありますか。
  183. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私はただいま御答弁申し上げた以上に承知いたしておりませんから、よく調べまして、さらに善処することにいたします。
  184. 村瀬宣親

    村瀬委員 根本的な問題の解決の能力がないならば、政治担当の能力にも響くわけでありますが、せめてこういう一角からでも親切さを持つて引揚者の生きる道を講ずべきであると思うのであります。こういう問題は、あなたの判一つで幾千人、幾万人の人が助かるのでありまして、しかも一度こうやつて内閣総理大臣の答弁書として国会に出したものであります。それがうそであつたとはいまさら言えた義理ではありません。一旦こういうちやんとした答弁書をつくつた。つくるまでには閣議にかけて方針を決定したのでありましようから、いまさらそれはうそであつたというようなことは言えた義理ではないのでありますから、ぜひともこの答弁書の通り——この答弁書には本年の三月三十一日までには必ず所有者に返すと書いてある。それが有効か無効かは別問題だということもつけ加えてあります。われわれは有効無勢を別に大蔵大臣にきめてもらおうとは思わない。営々として働いた人々が帰つて来て、今まさに瀕死の重症におる者もあるのであります。そういう者はせめて証券だけを手にしても安心して死んで行くに違いない。でありますから、この問題は軽々に扱われては困るのでありまして、大体いつごろ御処置が決定になるのでありますか。もう一度その点承つておきたい。
  185. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 二十七年度末に返すという意図があつて、それの手続を進めておつたそうでございますが、その証券を返還しても、支払いを得られないということは、かえつて期待にそむくというような考え方から延びておるということでございます。しかし今お話になつたような事情もございますから、何もそういう特別な意図についてかれこれ考える必要はなく、返すべきものは返すことに速急にとりはからうことにいたしたいと存じております。
  186. 村瀬宣親

    村瀬委員 速急と言われましたが、いつから開始をなさるのでありますか。前回も引揚者は煮え湯を飲まされておる。速急と言わず、日をお示し願いたい。
  187. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 何月幾日ということは申し上げにくいが、それは私を御信用ください。私は責任をもつてやります。
  188. 村瀬宣親

    村瀬委員 一応おまかせいたしておきます。しかしこれは七百万引揚者の切実なる血とつながつた問題でありますから、真剣にお考え願いたい。  次に、ブラジルにおいては一九五二年にバルガス大統領は、サンフランシスコ講和会蔵前にもかかわらず、枢軸国人資産凍結解除令を公布して、日本人の民間資産返還を実施したことは御承知通りであります。ブラジルにおける不在日本人民間資産は邦貨約九億円といわれております。返還はするけれども、国外持出しが認められていなかつたと思うのでありますが、その後の交渉はどうなつておりましようか。われわれは無条件返還を希望いたしますが、それが認められない場合は、この九億円はどのように利用する御方針であるか。外務大臣でも大蔵大臣でも責任ある御答弁をいただきたいと思います。
  189. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ブラジル側の処置は今おつしやつた通りでありまして、不在所有者のものは別だということに一応なりました。われわれの方では、ブラジルに対しては戦争によつて損害を与えていないのだから、これは全面的に返してもらうべきであるという趣旨で交渉をいたしております。そこでブラジル側としては、戦争被害者のクレームに対して支払わなければならないから、そう日本人だけに全面的にというわけには行かないというお話でありましたが、昨年の十二月であつたかと思いますが、大統領令で、たしか六箇月以内にクレームのある者は申し出よ、それ以後はもうクレームを取合わないからという布告を国内に出しましたので、その期限はもう来ているはずであります。そこでこのクレームの方の処置はまだつかないにしましても、国内におけるクレームはもうこれ以後は来ないわけでありますから、ブラジル側としてはどういうふうな措置をこれに対して講ずるのか方策は立つわけであります。われわれは必ずしもその方策に同意するという立場にはありません。こちらは全面的に返してもらいたいというのでありますけれども、しかしブラジル側の返還ということも、これはやはり日本とブラジルとの関係をよくするために、いわばほかの円に比べれば好意的な措置でありますかしら、ブラジル側の主張が理由ある限りは、われわれはこれに同調して円満に解決したいと思つております。ずつとブラジル大使と交渉いたしておりますか、先方の措置の大体の輪郭がわかりますれば、さらに具体的に交渉のできる段階にもう来ております。     〔委員長退席、西村(久)委員長代理着席〕
  190. 村瀬宣親

    村瀬委員 九億といいますれば、そんなにクレームがあるはずもないのでありまして、これは当然無条件で返還をしてもらつて日本に持ち帰り得るような交渉をなさるのが当然の責任と思うのでありますが、お見込みはどうであるか。もちろんそうはいつても、ブラジルも好意的にやつてくれておることでありますから、持ち帰ることが困難らしいというお見込みの場合は、せめて隣国のアルゼンチンに送金というような措置は、為替管理上とれるのかとれないのか。私がこのことをお尋ねいたしますのは、アルゼンチンは非常に原始漁業の盛んなところでありまして、捕鯨船も一隻打つておるけれども、一回も出漁したことがないという漁業のきわめて拙劣なところのようであります。従つて日本から漁業移民その他を送り出しますならば、これは両国にとつても、日本の海外進出にとつてもきわめて有望と存ずるのでありますが、そういう資金にこの九億円を使うことができるものであるかどうか伺つておきたいと思います。
  191. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の承知しておりますところでは、九億になるかどうかわかりませんが、この返還の問題と、それからこの金がかりに返還されたといたしまして、国外に持ち出す問題とは別問題でありまして、あとの方はブラジルの為替管理その他の規則にひつかかるわけであります。そこでおつしやるようなことができますかどうか、これは隣国であるから幾分やさしいでありましようが、日本に持ち帰れないという原則が正当といたしますれば、なかなか困難じやないかと思います。しかし同時に、ブラジル自身に対しましても、移民その他の問題でわれわれとしては今後ともずいぶん金がいるのです。この金がかりに国外に持ち出されないといたしましても、金融方面にこれを使いたいという意向もありますし、また移民組合のようなものに使いたいというような意向もありまして、使いたい希望者はずいぶんあるようであります。しかしまだ返つて来ませんから決定も何もいたしておりません。元の正金銀行なんかは返還財産の大きなもののようでありますが、いろいろ使い方については国内にもずいぶんあるように聞いております。しかし必ずしもそういうことでなくて、できるならば持ち帰りたいという意図でいろいろ研究いたしております。
  192. 村瀬宣親

    村瀬委員 一瀉千里で質問を続けます。今の問題でまだお聞きたいことがあるのでありますが、次はインドに飛びます。  インドでは、昨年の六月九日調印された条約第四条によつて日本の在外資産は非常に有効に取扱われることにきまつたのでありますが、パキスタンを含めて二千五百万ルーピー、約十八億円といわれておる在外資産がありますが、これはどうなつておりますか。これが返還の手続方は通告を受けましたか、どうですか。
  193. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 大体おつしやるような数額になるのでありまして、その中のパキスタン分がどれだけということは——大体十五億何がしかぐらいがインド自身に残つておるのじやないか、これはわれわれの予想でありますが、正確にはまだわかりません。しかし大体において品物でありますから、額というよりも、たとえば建物であるとか、土地であるとか、そういうものが多いのと、それからほかには銀行に預けてある金でありますから、額の問題はあまり重要でないのであります。たとえば仏様の像が百円であるか一万円であるかという評価の問題は少いのでございます。そこでこちらとしてはいろいろとインド側とも話をして来ておりますが、どういうものですか、インド側としてはまだなかなかはつきりした態度を示しておりません。これにつきましては、インドの西山大使も特に力を入れましてずつと機会あるごとに話しておりまするので、おそらく何か内部に理由があるのじやないかと思います。それがちよつとわからないのでありますが、早く返してもらうように努力をいたしております。
  194. 村瀬宣親

    村瀬委員 次は朝鮮の在外資産、韓国と日本とは戦争状態にあつたことはないのでありますから、賠償とか補償名義で日本の在外資産を取立てられるいわれはないのであります。政府はいかなる方針でこれが交渉に当つて来たか。また今後当ろうとなさるのであるか。朝鮮の休戦協定が成立せんとしておるときに、日韓会談はいつごろ開催される御予想でありますか。
  195. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 御承知のように第一回の日韓会談は、昨年の正月からであつたと思いますが、開催いたしまして、四月に話が会わずしてわかれてしまつたのでありますが、そのおもなる意見の合わなかつた点は、やはり在外資産の問題であります。われわれの方では、領土が分離したのでありますから、その中にある政府関係の資産は、これは相手方に行くのもやむを得ないと思つておりますが、私有財産につきましては、こちら側に請求権ありという建前で、これは国際法等から言えば当然のことでありまするから、ずつと主張して参りました。先方はこれに対して、朝鮮がまだアメリカ軍に占領されておりましたときに、占領軍の司令官のヴエステイング・デイタリーというものを発表しまして、これによつて日本の朝鮮における資産は一切アメリカが取上げるということが一つ、それから後にこの資産は全部韓国政府側に譲渡する、こういうことにいたしたのでありますが、このヴエステイング・デイタリーによりまして、朝鮮側の所有に帰してあるという主張でありますが、われわれの方はヴエステイング・デイタリーというのは、占領軍司令官の権能内のことでありますから、どういうふうにその資産を処分するかということはできるけれども、資産の所有権等の根本的問題を変更することはできないという建前で、法理論を主張して来たのでありますが、遂に主張が合わずしてものわかれになつてしまつた。今度はこういう法理論を主張せずして、実際的に何か解決をはかる方法はないかというので、先々月から韓国側の代表が来まして、日韓会談をただいま再会しております。しかし依然としてこの請求権の問題が一番困難な問題になつて来ておりますので、まだこれも決定はいたしかねるのでありますが、韓国側から——これははなはだ言葉は悪いかもしれませんけれども、韓国の今の状況からいつて、一体日本が韓国から日本の私有財産といえどもこれを持つて出るつもりか、持つて行けるものなら持つてつてみろというような態度であります。これは実際そういうことはできないでありましよう。私どもは日韓関係から言いましても、韓国の経済を破壊するような措置を講ずる意向はごうもない。しかしながら法理的に見ればこちらの主張をいれてもらうのは当然ではないか、実際上の処理はまた別である、こういう建前をとつて来ておりまするが、依然としてまだ解決には至つておりません。
  196. 村瀬宣親

    村瀬委員 次は台湾政府との問題でありますが、これは条約締結によつて、台湾における在外資産については、その第三条において財産及び請求権の処理について規定がしてあるにもかかわらず、その後の取扱いは一向進んでおらないようであります。現在閉鎖機関に管理されておりまする台湾銀行、台湾貯蓄銀行、彰化銀行等の内地預金を見返りとして第二会社をつくろうかというような議も上つているほどでありまして、台湾における在外資産の処理方針が遅れているために、種々の複雑な問題が派生するおそれもあると存ずるのでありますが、政府は一体この台湾とのその後の問題処理に当つてどのような交渉をしておるのであるか、お伺いいたします。
  197. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 台湾には今おつしやつたように、条約でもつて国民政府との間に規定をつくりましたので、実はただちに交渉に入るべき筋合いなのであります。ところがどうも先方でなかなかはつきりした交渉に入らないものでありますから、ただいまのところは残念ながら予備的な話合いをしている段階であります。われわれとしては早く正式な会談にこれを移したいと思つております。実際問題といたしましては、日本人の財産であるか、元から台湾人の財産であるかという点について、大きな会社の資産等は大体はつきりしておりますが、小さいものになりますと、非常に複雑多岐でもつてわからないものがたくさんあるのは事実でありますけれども、わからないものはわからないでしかたがないとわれわれも思つております。早く正式の会談に移して白黒をつけてしまつた方がいいだろうと考えておりますが、ただいまは予備的な会談という段階であつて、先方といろいろ数字をつき合せたり、たとえば戦災でこわれた工場に向うがつぎ込んで修復して、今運転している。そのときのものを一体どういうふうに認めるかという原則論を闘わしているような状況でございます。
  198. 西村久之

    西村(久)委員長代理 村瀬君、なるだけ簡単にお願いいたします。
  199. 村瀬宣親

    村瀬委員 もうすぐ済みます。工場とか住宅とか宅地というような問題は、今外務大臣の御答弁の通りかもしれませんが、台湾銀行、台湾貯蓄銀行、彰化銀行というような金融機関の内地預金等については、せつかくこの条約第三条があるのでありますから、何らかの措置がもつと早くつかねばならぬと思うのであります。これは大蔵大臣でありますか、外務大臣の方でありますか、なぜこれら内地預金等の処理がきまらないのでありますか、その理由をお伺いしたいのであります。
  200. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 半分くらいのお答えになるかもしれませんが、われわれの方でやつておりますと、向う側にやはりいろいろのクレームがありまして、それが必ずしも信憑性があるものばかりはないようでありますが、こんなものがわれわれの方から言えばやはりじやまをしておるのであります。
  201. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 閉鎖機関になつておりますので、その閉鎖機関解除のときまではそのはからいができかねるかと存じおりますが、だんだん交渉を進めて閉鎖機関を解除してもしかるべきものではないかと私は考えております。
  202. 村瀬宣親

    村瀬委員 私はもう二点だけで終ります。  大蔵大臣に伺いたいのでありますが、在外資産処理の企業に及ぼす影響であります。特にこれは海外進出の問題でありますが、昭和二十一年八月十一日、大蔵省は四千二百六十二社に及ぶ特別経理会社と、五百五十の在外会社と、千八十八の閉鎖機関に対して、企業再建整備を指定し、その処置として、一、在外資産はゼロに評価し、全額特別損失とする。二、在外負債はそのまま負債として計上する。三、これが問題でありますが、在外負債と在外資産との両者を有するものは、経理上両者を見合額で相殺するという方針をお示しになりました。しかるに平和条約によつて在外資産が没収されるとともに、相殺した負債額は特別損失額として新規に生じて来ることとなり、相殺負債を有する企業は、その穴埋めをしなければならなくなつて、現に実質的に完了した企業再建整備を根本的にくつがえすことになつております。従つて今後連合国内に支店を開設する予定の企業は、この問題のために海外への進出が危ぶまれるに至つております。現にイタリアにおいては、連合国におけるイタリア在外資産を昨年清算した際に、負債を返済し切れなくてマイナスが残つた。イタリア商社が再び支店をアメリカ国内に開設したとき、アメリカ側の債権者がその支店に対して差押え処分の申請を出したので、イタリア側はその解決にたいへん困つた例があるのであります。在外資産に対する政府の態度を早く明確にせねばならぬ事態が、ここにも横たわつておるのでありますが、この問題をいかに処理せんとなさるのであるか、承りたいのであります。
  203. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 在外会社、閉鎖機関については多少相違する点もございまするが、経理会社の再建整備に対してとつた在外資産及び在外負債取扱いについては今お話の通りであります。また平和条約によつて没収された資産は、負債に対する見合い資産となし得ないから、債務だけが残るという場合も多いかと考えるのであります。しこうして平和条約においても必ず没収されるというのではなく、没収する権利が相手国側にある、こういう意味でございますので、事実その後日本の在外資産を返還してくれたインドのような国も幾つかあるのであります。また一般的には日本の在外資産を処分する場合に、まず日本側に対する債権の回収に充当し、残余を没収する、こういうふうになるものと当方では了解いたしておる次第でございます。さらに平和条約十八条によりますれば、戦前債務については、支払い方法について交渉を促進するという規定もありまするし、国交の回復した諸国におきましては、何らの交渉なしにただちに新たに設置した支店財産について差押えをする、こういうような懸念はないものと考えておる次第であります。
  204. 村瀬宣親

    村瀬委員 私はこれをもつて質問を終りまするが、最後に申し上げておきたい。  緒方総理はそこでお聞きになつたような状態でありまして、核心に触れますると、多くは下僚のお書きになつた書きものをお読みになつたようであります。私は各責任の大臣はもつと引揚げ問題と真剣にとつ組んでいただきたい。政府のいわゆる戦争犠牲者に対する均衡の問題とか、戦時補償打切りの先例があるとか、日本の国力がどうであるとかいうこれらの問題は、すべて政府の逃げ言葉であつて、引揚者は在外資産の全部を今ただちに支払えと要求しておるのではないのであります。政府に真に誠意があるならば、企業体と個人とを区別し、個人の中でも不動産と銀行預金、郵便貯金とを、さらに生活の安定を得ている者としからざる者と区別して、生活困窮者から優先的にその一部を支払うようにすれば、これを具体化する方法もあると思うのであります。あるいは補償の前払いとか、または前貸しの方法を考慮するなど、要は政府にいささかでもこれが解決を進めて行く熱意があるかどうかにかかつておると思うのであります。昭和二十一年の十月二十二日に、第一次吉田内閣のときでありましたが、在外資産の一部補償見返りとして引揚者一世帯に一万五千円交付の方針を決定し、昭和二十二年度当初予算案に百五十億円を計上して、同年十二月六日の閣議でこれを再確認いたしたのでありまするが、当時は占領治下でありましたから、司令部の意向に反するといつてこれが遂に途中でやめられたのであります。昭和二十一年の一万五千円といえば、今の二十万円に匹敵するでありましよう。このときでさえすでにこの決意をなさつたことがあるのであります。爾来これら引揚者に対してまつたく捨てて顧みられないほんとうに冷酷な政治が続けられて参りました。しかし日本もすでに独立したのでありますから、何らかの方法で一歩一歩段階を踏んで、国力に応じた方法で、他の国民と均衡のとれた、ひとり引揚者にのみ戦争犠牲をいつまでも転嫁して、この冷酷な政治を続けるということをここらで終止符を打つていただきますように、特に緒方総理に要求をいたすのでありまするが、なおこれらの前払いとか一部支払いとかその他でき得る範囲のことを何とかお考えになつてみるお気持があるかどうか、最後にもう一度緒方総理の御答弁を要求するのであります。
  205. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ほかの戦争犠牲者と在外資産の所有者との間に気持としての差別は少しもないのでありまして、ただ調査が非常に困難でありますので、遅れておるのでありますが、ただいまお話のようなことは、十分に体して、できるだけ早く問題を解決をしたいと考えております。
  206. 西村久之

    西村(久)委員長代理 勝間田清一君。
  207. 勝間田清一

    ○勝間田委員 いろいろ自立経済の問題が非常に重要な問題になつておる今日、国内のいろいろな計画等は政府からもいろいろ聞いておるわけでありますけれども、しかし今日日本経済の自立という問題を考えて行く場合におきましては、やはり対外的な問題も重要視して参らぬと、この問題は解決しないという感を私は深くいたすのであります。その意味からここに若干の問題について大蔵大臣その他関係大臣についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  一つわれわれの気にかかつている大きな問題は、言うまでもなく、占領中における対日援助の返済の問題であると私は考えるのであります。この問題については今日までは予算の上におきましてはいわゆる債務と考えて、返済すべきものであるという道徳的な答弁が今日までなされて参つた。同時に大きな見積りとして平和回復善後処理費の中に若干それが含まれるという含みのある態度を大体今日までとつて参つた。しかしこの問題を考えてみますると、現在の日本の立場から申しますれば、現在その話を持ち出さない方がよろしいとか、あるいは日本の方から持ち出さない方がよろしいとか、いろいろの配慮はあるに違いないと私は思う。しかしこれはもつと深く考えてみますると、日本の現在の実情から申しまして、これは一面日本の、ある意味においては自主権、他面には支払わねばならぬという条件等々から考えてみますると、私は延ばせば延ばすほどむしろアメリカに有利になるのではないかという懸念を実は持たざるを得ない。だからドイツその他の地域におきましては、こういつた問題についての返債の問題は早くからこれを解決つけて、権利義務を明白ならしめて、同時に主権というものを確立し、内政干渉の道というものも、きつちりそこで断ち切つた形をとろうとしておる、私は引きずればいいとか何とかいう小さな問題ではなく、もう少し大きな問題になつてみると、どうしてもこの問題は早く解決をつくべき時期に来ておるのではないかと考えられてならない。私はその意味で、この対日援助の債務に関する外務大臣の見解を承りたい。まずその点をひとつお尋ねいたします。
  208. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれも別に故意にこれを延ばそうという意思はないのでありますけれども実は率直に申しますと、この中には占領中で書類の整わないものもずいぶんあるのでありますから、こちらとしてはできるだけそういうものを整備してから、話しすべきものはすべきであろう、こう考えておるのであります。しかしお話のように荏苒とこれを延びるままにほつて置いて、それでいいのかということになりますと、非常に考えさせられる問題でありますので、この半年くらいの間、いろいろ考慮をめぐらしておるのであります。まだ結論までには達しておりませんけれども、今おつしやつたように、これは一体どうすべきかということについては、ただほつて置いていいと私ども考えておりません。そうのち資料の整備ということは今となつては、できない部分がずいぶんあるだろうと思いますけれども、こちらの方もやりまして、しかしそれとは別に態度はそうおそからざるうちに、はつきりしなければならぬと思つて、今考え中であります。
  209. 勝間田清一

    ○勝間田委員 この問題について経審長官にお尋ねいたしたいのでありますが、あなたは日本の自立計画をお立てになつており、また岡野試案というものもおつくりになつていらつしやる。この対日援助に対する支払いの問題は、あなたの計画の中に含まれておりますか、その点をお尋ねいたしたいと思います。
  210. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。あれは含めておりません。
  211. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それでは大蔵大臣にお尋ねいたしますが、予算にこの点は今日までずつと計上して参りましたね。常にそれが未使用の形で利用された形をとつて、参りました、そういう予算の組み方自体に、私は非常に疑問を持つておる。経審長官はこの日本経済自立の中に含めておりませんと言い、岡崎さんはなるべく早く解決したいと言われる。ところがあなたの予算の中にはすでに組み込まれておる、そういう実情にある。これは本年度において何らかこの問題が解決せれると考え予算に計上されたのか、その点をお尋ねいたしたい。
  212. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 あの予算に計上してあるのは、ガリオア、イロアとは関係なくて、賠償その他の問題が起つたような場合について計上してある次第でございます。ガリオア、イロアとの問題につきましては、これらのものを私どもも債務と心得ておつて、いろいろ処理しようと考えておりますが、いずれにしましても日本経済、国際収支等に大きな影音を及ぼさない範囲で、かりにこれを債務として支払うことになりましても、その程度でこれはやるべきものであろうと、実は考えておる次第でございます。
  213. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そこで、これとうらはらの問題になつて来るのが、賠償の問題であろうと私は思う。何らかの意味で賠償の支払いという問題と、対日援助の債務の支払いというものとの間には、関連があると考えてよろしいでございましようか。外務大臣にお尋ねいたしたいのであります。
  214. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは直接関連があるということはないのでありますけれども、要するに賠償の条項の中には、存立可能な経済という文句があります。つまり日本の対外支払いが非常に多くなれば、それだけ経済が困難になりますのはもちろんでありますので、こういう意味で対外支払いの総額ということの問題になりますと、これは賠償が幾ら、援助資金が幾ら、かりに支払うとすれば、その総額の問題においては関連が出て来る、こう考えております。
  215. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そこで関連があるということは、日本経済の立場なり、この前の講和条約の立場から明白になつておる。そういたしますれば、あなたが賠償問題を、ここで解決をして行かなければならぬという事態にあるといたしますれば、対日援助の問題をここで出して行くのが、日本の立場から見て当然だと私は思うのです。これはアメリカとの外交交渉においても一番正しい態度だと思う。この賠償を解決して置いて、対日援助の問題は延ばしばしして行くという態度は、私は合理的でないと考える。これは日本の立場からいつて、きわめて重要な問題だと思う。ましてや今日、フイリピンその他に対する賠償処理まで、アメリカ側から要求されて来る、また希望されて来る、これはアリソンが今日までしばしば言われた問題である。またその問題があるいはいろいろの太平洋条約的なものと関連があるかもしれませんけれども、その問題まではあなたにお尋ねしません。しかしそういう疑点が持たれておつて、今日あなたが賠償を進められるという形でありますれば、対日援助に対する債務に対する問題も、同時にきめて行くのが、一番正当な外交の方針であると考えるのでありますが、その点について岡崎さんのお考えをお聞きいたします。
  216. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 実はそういうふうにできれば、一番理想的だと私も思いますが、賠償にしても数箇国あります。これが一度に総額もきまり解決するということは、なかなか困難じやないかと思います。しかしそう申しますと、いやそのおもな国と話がつけば、あとの方はそれにつけ足しになるのだから、大体の見当がつくのじやないかといわれるかもしれませんが、われわれとしては、そう簡単に考えるわけにも行かないと思つております。しかしたとえば、賠償の問題がかりに片づくとしますれば、それによつて日本のこの方面における対外支払いの額がきまるわけであります。そうすればわれわれの経済というものは、ほとんどガラス張りのようなものでありますから、それ以外に対日援助等に対する支払いができるかできないか、できれば一体どの範囲でできるかということは、おのずから私は数字である程度わかつて来るのじやないかと思います。もちろんこれは交渉の余地はたくさんありましよう。従つて一ぺんに全部片づけ得れば理想的ではありますが、もしそれができない場合には、賠償の問題を先に片づけても、それほど支障はないであろう、こう考えますので、片方は、そういうとおかしいですが、相手は金持の国でありますから、まず賠償の問題をどちらかといえば、先に片づける方が順序じやないか、一緒にできればそれに越したことはありません。こう思いますので、賠償の方を今努力しておるような次第であります。
  217. 勝間田清一

    ○勝間田委員 できれば一緒にやりたいが、やむを得なければ先に賠償の方を片づけて、金持であるアメリカには、それからあとで財政経済の許せる範囲でやつて行く、こういうふうに理解してよろしいかと思います。  そこで賠償の問題にさらに入つて参りますと、今までは御存じの通り役務賠償である、これはこの前鈴木委員長から総理大臣に対しての質問に対して、現物賠償もあえて考慮してよろしいという話が実はあつた、これは私は実は非常に重要な問題であろうかと考えるのでありまして、私はフイリピン等には行つたことはございませんけれども、ビルマ等につきましては、この問題については三回にわたつて、現地と話をいたしたこともございます。それで現物賠償を考慮するということになつて参りますれば、勢い一番欲しいのがいわゆる資本財であろうかと思う、たとえば繊維工業に対する設備である、港湾に対するもの、あるいは車両、鉄道輸送といつたような関係の問題が、非常に大きなものになつて来ると私は考える。  そこでもう一ぺんお尋ねしたいと思うのは、講和条約その他に対して、日本の為替収支に重大なる支障を及ぼさないということが、その根本の精神になつておる、しかしある程度資本財を出して行くということになりますれば、どうしても原料の面なり、その他の面から行けば、若干為替の収支に対して影響が出て来ることは、いなめないものだと思う。やはりそこまでつつ込んでやつて行かれる考えであるか、その点をひとつお尋ねをいたしたい。
  218. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 実は各関係国と話合いをいたしてみますると、いわゆるキヤピタル・グツズをほしいという声が圧倒的なんであります。従いまして平和条約の十四条は役務賠償とはなつておりますが、これを解釈次第でキヤピタル・グツズを送り得ると思つておるのであります。従つて先方に非常に強い希望がございますし、またこの問題の解禁がほかのいろいろな関係に影響して来るのでありますから、日本としては、日本の存立可能な、経済を害しないことと、日本外貨のポジシヨンを悪くしないこと、こういうことか根本で、それの結果として役務賠償というような形になつたのでありますから、この二つの条件がそう害されないでできるものならば、規定を少し広義に解釈してさしつかえないだろう、こういう意味で現物というか、キヤピタル・グツズとして考えるのが至当であろうということに、最近結論がなつたのであります。外貨のポジシヨンに多少の影響があり得ると私も思いますけれども、しかしこれが非常に大きな影響があればできませんが、多少でありますならば、役務でも考えようによつては間接にはあるのであります。つまりその品物をもし普通の貿易で出せば外貨がとれるところを、これはとれない。こういう意味で間接にあるのでありますから、要するに外貨のポジシヨンに大きな影響がありやいなやということで判断して行けばよろしい、よろしいといのではないが、やむを得ないということであろう、こう考えて、今のような結論を出しているわけであります。
  219. 勝間田清一

    ○勝間田委員 これは外務大臣も御存じだと思いますが、インドにしても、ビルマにしても、あるいはその他の国にいたしましても、東南アジア諸国は、現在年次計画をもつて建設をいたしておる状態にある。この建設というものと日本経済とがいかに結合するかということは、実はタイムリーの問題だと思う。今日までいろいろな関係があつたにいたしましても、賠償問題等々によつて、アジアのこれらの地域に対する建設に、日本経済協力できなかつたということは、私は岡崎外相だけとは考えませんけれども、吉田内閣の大きな責任であつたと思う。現にあの年次計画に対する資本財、キヤピタル・グツズというものは、ほとんどイギリスやインドから輸入されておる。マシン・ツールにいたしましても、その他のものにいたしましても、全部そうであります。これらの地域から申しますならば、日本の現物支払いというものは、それらの国とは利害関係が対立しておるという関係にむしろあると私は思う。この際日本のマシン・ツールが入るか、イギリスのマシン・ツールが入るかということは、今後の問題を決定する重大な問題だと思う。そこで、賠償問題をほんとうに解決しようとするならば、ああいう年次計画に対して、日本が直接協力する形をやはり強く打出された方がいいのじやないか。それが外貨ポジシヨンに影響があるとすれば、先ほど申された通り金持のアメリカに対して、やはりこの問題に対する理解を要求するというのが当然だと思う。特に対日援助の支払いに対する理解がそこに出て来ると思う。そこでこの賠償問題については、今日までのように商人の取引をするといつたような交渉の問題ではなくて、いかにあの建設に日本協力し得るかという見解の使節団なり、あるいはそういう交渉なりをされるのがほんとうだと私は思う。その見地に立つて、いかに賠償が支払われるか、いかに今後の貿易協定がなされるかということに持つて行かなければならぬと私は考える。今は商行為だけの交渉、あるいは支払いという債権債務というような形における交渉にすぎないのである。     〔西村(久)委員長代理退席、委員長   着席〕 私は、そこを一歩前進する形が当然とられてしかるべきだと思う。そういう場合に東南アジアの開発だからといつて、アメリカ資本をそこの中に介在させて進出して行くという形というものは、インドの場合において失敗している。あるいはそういう疑念を持たれることによつて失敗しておる。だからアメリカの資本によつて東南アジアの開発に、日本が技術的その他のもので協力するという形でなしに、私は直接この賠償問題を契機として結びついて行くという形が正当だと思う。この問題について岡崎さんは特に賠償問題についてあるいは東南アジアに行つてもよろしいとさえ考えておると伝えられておるのですから、この際明白にされて行つた方がよろしいと思いますが、御答弁を願いたい。
  220. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 お説はごもつともだと思います。ただ、弁解はいたしませんが、今までの交渉は、先方が初め八十億とかいう非常に大きな、とても応じ切れないものを持つて来たものですから、これをまずリーズナブルなところに落して行かなければならない。そのために時間が非常にかかつたのですが、大体最近では、まだ隔たりはありますが、リーズナブルなところでなければ実行できないということころに、相互に理解されたと思いますので、だんだん本格的な、実際的な話合いに入り得る時期だと考えます。但しこれも相手国国内事情たとえば大統領選挙が近いとか、国内に政変があつて、まだ内閣ができておらぬということがあつて延び延びにはなりましようけれども、しかしもう本格的な交渉に入るべき時期でありますから、その意味でお話のような趣旨で私も行こうと考えております。  なおアメリカの資本云々のお話がありますが、インド等の問題は、むしろ経営権の問題でありまして、アメリカの資本が入つて来るとか来ないとかいうことではない。むしろあれは資本の方は歓迎したものと思います。またインドネシアにおきましてもTCAは受けておりますから、その点は別に懸念はないと思いますが、賠償は賠償であり、またほかのものはほかのものでありますから、これをごつちやにするつもりはないのです。
  221. 勝間田清一

    ○勝間田委員 今までは金額をきめないで来たが、やはり金額をきめる段階にあると思う。それからビルマからインドネシア、それからカンボジアといつた形で行かれるよりも、私は、ある程度まで総括的に行かれるべきだと思う。これは日本経済日本の誠意を理解してもらう上においては緊急な問題だと思う。従来主張されて来た賠償政策のこういつた方法をかえて、今言つたような金額、あるいは同時的解決といつたものにする意思はございませんか。
  222. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 賠償問題については、金額以外にいろいろな点があるのはもちろんでありますが、現在のところ今までの予備的な話合いで、ほかの問題については大体見当がついたのであります。問題は総額いかんということになつて来ますから、お話のようにもし賠償を本格的にきめるということになれば、総額の問題以外にはほとんどないのであります。  それからほかの国をみな一緒にしたらどうかというお考え、これもずいぶん考えてみましたが、ただいまはまだその時期ではないと思います。というのはたとえばサンフランシスコ条約を調印したが批准しない国、調印もしない国、二国間の条約をつくろうとして調印してない国という区別がありまして、しかも国内状況が、たとえ調印してもすぐに国会の批准にかけ得るような国もあり、かけ得ないところもある。こうなりますと一括するのは時期ではがなと思います。むしろ一括するために遅れるよりは、できるところから先につくつて行つた方がいいのじやないかというつもりで今やつております。
  223. 勝間田清一

    ○勝間田委員 賠償の問題については、やはり謙虚で行つた方がいいと思う。そこで対日援助の問題、賠償の問題等については、やはり謙虚に行つた方がよいと私は思う。そこで一体対日援助の問題、賠償の問題等については、経審長官は、いわゆる需給計画の中に含めておられない。しかしこの問題は当然含まれてしかるべきだと思う。含まれて自立経済計画というものが立案されて行くのが、むしろ日本の必要な準備だと思う。これらの問題についての日本経済政策担当者としての発言というものが、もつと重要視されなければならぬと私は考える。その発言が今日までなされておらない。むしろ外交交渉にだけしか寄せがなされておるという状態である。その意味で今度の経審長官のいわゆる今後の経済自立計画については、その面をひとつはつきりしてもらいたい。そこで今度はこれと関係のある収入の面でありますけれども、これはわれわれももちろん根本的に反対だ、反対だがMSAの問題については、一体どこにどういう援助がなされて来るかということはもうおわかりでしよう。その計画がおわかりだと思う。今までは岡崎さんも言われたが、交渉のいかんによつて、いかなる面に、いかなる援助が入つて来るかということは、すでに計画が立てられておらなければならぬと思う。この点をひとつ岡崎さんにお尋ねすると同時に、こういつた対外債務や、支払いや援助という形における問題を考えてみても、すでにこれは数十億ドルになる。この数十億ドルなるものを無視して、日本経済をやつて行かれても、それは画餅に帰するおそれがあるので、その点についての経済審議庁長官の御計画を、ひとつ同時に承らしてもらいたい。
  224. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 実はMSAの交渉は、先方のいろいろの準備の都合でありましよう、まだ始めておらないのであります。あるいは新聞の報道で正確ではございますまいが、(「新聞はみな正確でない。」と呼ぶ者あり)いや、それは公の報告ではないからという意味でありますが、一億一千万ないし二億などという非常に幅の広い報道になつております。はつきりしたことはまだわかりません。しかしながらわれわれの考えでは従来の各国とのやり方を見ましても、おそらくこの援助なるものは、保安隊なり警備隊なりに対する装備の強化というものが主であつて、それから直接の援助というべきものでないかもしれませんが、いわゆる特需に類する域外買付というものがある、この二つになるのだろうと考えております。
  225. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そこで経審長官にお尋ねしたいのでありますが、今MSA援助が来るのは、結局完成兵器として保安隊に来る武器だ。しかしそこにおまけというものがつく、それは結局どこからかの、いわゆる域外買付というものがなされて来るのだ。それは結局朝鮮の特需が減つて来て、どこかの域外買付がプラスされて、それで若干景品がつくというかつこうになるわけです。そこでそういうものを計画いたしまして、あなたのおつしやる、またあなたの計画にもあるところの高水準外貨日本に対する支払いというものを、どの程度考えていらつしやるのか。特にこのMSAとの関係について、あなたはどう考えておられるか。
  226. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。ただいまのところは御承的の通りMSAの問題が、完成兵器で入つて来るか、金で来るか、どういうふうに入つて来るかわかりませんから、むろん除外しております。しかしながら大まかなところで、三月中にアメリカの声明した、この二、三年は日本に対する特需は減らないだろう、あれを基礎にいたしまして、結局特需が減らないだろうということを考えまして、その特需が減らない間に、正常貿易にして行くのにはどうしたらよいかという計画で、あれにはそういうものは除外して、純経済的に考えておる次第であります。
  227. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そうすると経審長官は、MSAに対する要求はお持ちになつていらつしやらないのですか。
  228. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 私は当てにしておらず、当てにせずにあの計画を立てております。
  229. 勝間田清一

    ○勝間田委員 経審長官は、MSAの方は当てにしないでやつて行くということですね。そこで自分の方からかくかくの経済的な利益があるから、一体MSAをもらうのですか。向うから言われて来るのを見て利益になりそうだから、もらうのですか、どちらでしよう。岡崎さんにお答え願います。
  230. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は専門家ではありませんが、保安隊、警備隊等は、まだ装備をいろいろ必要とするものであると理解しております。ことに船等なかなか入用なものはたくさんあるように思つております。従つてこれを国内でつくるとすれば、それだけ経済を圧迫するわけでありますから、もしこの援助によりまして、こういう装備が来るとなれば、その点は都合がいいと考えております。従つてほかの条件、たとえばこの目的がわれわれの考えているところと、非常に違えば格別でありますが、大体において自由主義国家の提携を強化するとか、その他いろいろな点でもつて、大体の傾向がはつきりいたしおりますから、それならば一方においては日本の防衛力を強化することにもなりますし、それが結果においてはまた経済の面に寄与することにもなると思いますから、これは受けたい、こういうことでこちらから交渉をしたいということを申し入れたわけであります。
  231. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それでは大蔵大臣にお尋ねいたしますが、あなたは保安庁の予算を査定されたわけであります。今外務大臣の言われるような軍艦やその他のものを、MSAで予定されているわけですか。その点をひとつはつきりお尋ねしたいと思います。
  232. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今外務大臣はそう言われましたが、私の方にはまだMSAの内容について、何ら示されておりません。従いまして私の大蔵省の立場としては、これに対してまだ御答弁申し上げる域に達しておりません。
  233. 和田博雄

    ○和田委員 ちよつと関連して……。昨日は私時間がなかつたので、保安庁長官に対する質問を、今ちようど勝間田の触れた点で打切つたのでありま長が、昨日私は保安庁長官に、今の保安隊は装備、編成の上からいつて、完全なものであるかどうかということを聞いたのであります。ところが保安庁官は、現在としてはまあ完全なものだという答えをされて、言葉を濁して去られたのであります。今MSAを受ける点について岡崎君は今の保安隊は装備その他の点で不備なのだから、まだまだMSAを受けてそれを補完してもらう必要がある。その点において国内的な日本の金を直接使わなくてもいいから、その方面でプラスなのだというお話だつたのです。どうも保安庁長官の考え方と、少くとも今の岡崎外相の答弁とには食い違いがあると思う。当の責任者が今の保安隊を編成の上から見て、十分なものであると言つている限り、直接の完成武器を対象とする援助、MSAというものはある意味からいえばいらないものなんです。援助を受けなくてもいいという結論が、当然出て来なければならないものなんです。また経済的に見ても、岡崎長官も経済自立計画の点では、何ら考慮していないとおつしやる。しかし消極的にしろ、日本の国費をその方面に援助を受けた場合に出さなくてもいいということになれば、やはりこれは経済的にそれだけの効果を持つているということに言わざるを得ない。経済の自立をする上からいつても、MSAの援助という新しい要素は取入れて、自立計画を立てなければならぬものだと思うのです。そういう点で各大臣が、それぞれMSAと自立経済との関係については、統一した一つ考え方を持つていない、ばらばらであるということは、予算を審議して行く上からいえば、非常に不満であります。これは政府の方において、はつきりとわれわれの質問に対しては、統一のある答弁をやつてもらいたいと思う。今日はこう言う、明日はこう言うというのでは非常に困るのであります。その点について、ひとつはつきりした御答弁を願いたいのであります。
  234. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の理解しているところでは、木村保安庁長官も、初めの要求は千九百億かと思いますが、それが財政上の都合で査定されて、現在の額になつたわけであります。もちろん保安庁の長官はでたらめな数字を出したのじやなくして、理想的に考えれば、日本の財政は困難といえども、このくらいがほしいと思われて要求されたと私は了解しております。また昨日の答弁でも、ほんとうはもとの要求がほしいのであるけれども、今の財政状況から見て、現在の額でできるだけ努力してやつて行く、こういうお話のように聞いておりました。従いまして、われわれとしては、MSAでその足りない分を補い、またもつと新しい、いい装備ができればなおさらけつこうである、こう考えております。
  235. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それは非常におかしいと思う。岡崎さんは保安庁の長官でもないし、また警備隊の計画の立案者でもない。大蔵大臣は、そういう要請があつたか、予算査定にそれを考慮したかと聞いたらば、そういうことは聞いておらない。私は、大蔵省は大蔵省の予算査定を明確にやつて、その場合にMSAの武器援助があるから、保安庁費はこれこれ削をべきである、この程度の範囲にとどめるべきであるという査定がなされて、私は予算が出されて来ると思う。保安庁長官は、これだけ要求を出したけれども削られた。ほんとうならこれだけ必要なんだけれどもというので、岡崎さんの方に実は陳情されておるようである。話を聞くと、大蔵さんの方は御存じないということである。私はこういう予算の組み方はないと思う。MSAをもらうなら、ここに財政が軽減されるから、保安庁費はこういう予算が組まれたのだということが、正当なことだと思うのでありますが、今の岡崎さんの、船をもらいたいとか、何をもらいたいとかいう計画がどうもあなたの御存じないうちに進められておるようでありますが、あなたはそれについてどう考えられますか。
  236. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 MSAの問題は、最近ようやく話が進められておることは御承知通りであります。従いまして、私どもといたしましては、この予算編成当時において、何らMSAの問題を考慮しません。またこれを受けるとも受けないとも、また国会その他で承認しておるわけでもありませんので、そいうことについてかれこれと、それで予算の査定をすることは、これはでき得ぬことは勝間田さんがよくおわかりのことと思うのであります。従いまして、私ども予算編成にあたつては、MSAの問題は何ら考慮いたしておりません。  それからまた今お話がございましたように、艦船だとか、実物だとか、あるいは域外買付がどうだとか、いろいろな話を最近耳にするのでありますが、しかしそれならば、どれだけの実物が来るのか、どれだけの域外買付があるのか、そういうこともさらに明らかにされておりません。できもせぬ、またまとまつていない、MSAを標準にして予算編成をいたすことは、大蔵当局としてはいたしかねるのであります。
  237. 勝間田清一

    ○勝間田委員 それは大蔵大臣としては当然だと思う。そこでMSAが、岡崎さんのような交渉が今続けられておるわけでありますが、そういう援助がもらましたならば、保安庁費は削りますか。その点をひとつ
  238. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 MSAを日本が受けることになり、その内容がその予算を削つてもよいそうでございますならば、——内容はわかりませんけれどる、内容がよいようでございますれば、それは削ることになりましよう。
  239. 勝間田清一

    ○勝間田委員 私はここに副総理がおられませんから、お尋ねいたしますが、岡崎さんの援助が来れば、保安隊がふえるか、保安隊の装備がふえるか、しからずんば保安庁の経費をそれだけ軽減するか、いわゆる予算の面が軽減されるのか、保安隊の方が拡張されるのか、どちらか一つにならざるを得ないと私は思いますが、政府は、MSAがもらえたならば、一体どちらの政策をとろうとされるのか、これは予算上非常に重要な問題でありますから、お尋ねいたしたいと思います。
  240. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 予算をあずかつておる大蔵省の目で見ますと、たとえば、本年の予算に基きまして艦船等がふえます。艦といふ字を使つていいかどうか知りませんが、船舶その他人員がふえて参ります。またそういつたようなことによつて、自然いわゆる経営費も増加することと考えます。またこれに要する装備の改善等も行われることと考えますので、従つてさつき申した通り、MSAの内容がわかりませんから、同とも申しかねます。また保安庁費につきましても、今つくつておる船その他の関係で、それらの維持費その他がどうなつで参りますか、この内容もわかりませんから、はつきりしたお答えはできませんけれども、もし一切の条件に何もかわりがなければ、向うから参つただけ減ることは事実でありますが、しかしそういうふうな条件でないだろうと思われますので、今のところはつきりした御答弁はいたしかねます。
  241. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そういう条件ではないだろうと思うということは、どういうことですか。
  242. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 それは予算をつくるときに、今と同じことではございますまい。人員の点も多少募集に遅れておるのがございます。また艦船等でまだ向うから約束に基いて申し受けていないものもございます。さらに今予算外国庫の負担等でつくるべき契約はしておるが、でき上つて来る船もございます。従いまして、本年度の予算はこれでいいのでございますが、二十九年度の予算になりますと、そういう保安隊の条件がかわつて参りますから、そこでその意味で申し上げたわけであります。
  243. 勝間田清一

    ○勝間田委員 これ以上責めるのも気の毒でありますから何ですが、アメリカの予算は七月一日からの予算でありまして、しかもその予算の中から日本に援助が与えられるわけであります。日本予算は、御承知通り四月から三月三十一日までの予算である。そこに艦船計画にちやんといろいろな計画が立案されておるわけである。そこに立案されて、予算が組まれておる。アメリカの援助がここに来たならば、これだけ差引きますということになつて、初めて日本経済に消極的ながら効果があつたということに私はなると思う。さもなかつたならば、今年中に保安隊を拡張しなければならぬという理論になつて来ると思う。この問題はまことに矛盾に満ちた問題でありますが、あとの問題もありますので、この程度にいたしておきます。  そこでもう一つ岡崎さんにお尋ねしたいのは、ここ数日来ガットの問題が非常に頻繁になつておると思う。これはアメリカの最近における政策が相当変化したのではないか、私はそう考えられてならない。ここでガットと加入のごく最近のあなたの見込みと、それに対する手段をお尋ねしたい。
  244. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 きのうも申しましたように、アメリカの法案の通過の際に、いわゆるメージャー・ネゴシエーシヨンはしないのだということになつておるようであります、従つて日本関税山交渉がそのメージャー・ネゴシエーシヨンの範疇に入るかどうかという点が問題しなると思いますので、これをいろいろ研究してみたのでありますが、どうもメージャー・ネゴシエーシヨンに入りそうに思われるのであります。そうすると、これは関税交渉をやらないという結果になりますから、ガット加入が延びるのじやないかという懸念が出て来るわけであります。そこで、ただ一方ガット加入の実際的な効果があればいいのであるから、何とか他に便法がないかということを考慮しておるわけでありますが、これは結論はまだ出て来ておりません。実際上加入と同様の効果をあげても、加盟国では、分担金も払わないで、実際上の加盟と同じ効果をあげるということは困るというような意見もあるようでありまして、便法は今考慮中でありますが、どうなりますか。しかしわれわれとしては、日本との関税交渉はメージャー・ネゴシエーシヨンではないという建前で、ただいまのところ交渉をいたしております。
  245. 勝間田清一

    ○勝間田委員 ガットの問題がかなり当初の予定とはかわつて参つたことをきわめて遺憾に実は考えるわけでありますが、時間の関係上次に移ります。  通産大臣は前から中共貿易をよく振興させるということで、非常に御主張になつて、私もたいへん同感であります。そこでいろいろ禁止になつておる品目をはずして行くという御計画は、今までしばしば承つたのでありますけれども、現在実際の大きな問題になつておるのは、やはり日本船を使用した場合の、あるいはそれを使用する場合における保障がどうなるかというような問題もありましようし、あるいは銀行等にLCを開くという問題も、かなり大きな問題になつておる。現在の香港の銀行等をまわつて来れば、実は相当のさやをとられて、割高の状況になつておる。ここにいろいろ問題がございますが、こういう具体的な保障について、あなたが一歩前進させなければ、この問題は解決がついて来ないというのが現実の状況だろうと私は思う。あなたのこれらの諸問題についての御見解を承りたい。
  246. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 船の問題につきましては、これは運輸省の問題でございますが、今のところ制限しておるわけではございません。ただうわさに聞くところによりますと、中共と貿易をしますと、台湾の国民政府の方でそれをやつた商社をブラック・リストに載せるということもあるようでありまして、業者の方でそういうことをおそれるということも振わない原因になつておるのではないかと思います。それから信用状とかなんとかいうようなことにつきましては、むろんわれわれの方で、外国銀行に対して制限しているわけでも何でもありませんで、フリーにやつているわけであります。御承知通り香港上海銀行がこれに当るよりないのでありまして、その方面で、あまり思う通りやれぬ場合もあるのではないかと考えております。しかし今後といたしましては、やはりそういう方面に何とか工夫しなければならぬということだけは考えております。国会が忙しいので、そういう方面によう没頭しておりません。
  247. 勝間田清一

    ○勝間田委員 岡崎さん、渡航の許可の問題について、あなたはやはり依然として禁止されるつもりですか。やはり中共に対して早く国交を開かれたらどうかと思うのですが、いかがでしようか。
  248. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はただいまのところでは、依然として意見はかえておりません。将来休戦協定でもできまして、侵略者というような言葉がなくなる場合には、またこれは別な問題であろうと考えております。
  249. 尾崎末吉

    尾崎委員長 勝間田君に申し上げます。相当時間が経過しておりますから、結論をお急ぎ願います。
  250. 勝間田清一

    ○勝間田委員 貿易の問題につきましてもつと聞きたいことがたくさんありますが、時間もございませんので、農林大臣にひとつお尋ねしたいと思うのであります。あなたは五、六年かかつて一千七百万石増産するという食糧増産計画の数字を出された。これは日本経済自立の要素として、大きな構想の中に含まれておるようでありますが、一ぺん災害が来れば、九州等でもひつくり返るような今日の状態である。今日まで農林省は何回となく年次計画を立てられたけれども、依然として食糧の生産高というものは、一進一退というのが、ここ十数年の傾向になつておる。この一千七百万石をふやすということの確信ある根拠は一体どこにあるか、これをひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  251. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答え申し上げます。食糧増産の具体的な計画につきましては、昨日も申し上げましたように、前々内閣当時から総理大臣の私設の諮問機関と申しますか、学識経験者、この道に相当練達の方々の意見を十分聞かれまして、そして政府で打立てましたものは、少くとも今後十年くらいの食生活の改善等を織り込んだわが国の総合的な食糧自給体制を整えるということが必要である。そして中間目標として、五箇年くらいで、ただいまのお話のような増産目標を達成する計画を推進する。お話のように、一方において増産計画を推進して参りましても、一方からは、年々の災害で、またそれを脅かされて参つておるということもありますが、しかしこの災害に対しましては、一面これを復旧して行く対策をとりつつ、食糧増産の計画は増産の計画として推進して行くという方向で参りたいと思います。先ほどお話の五箇年目標千七百万石の増産計画は、事実におきましては、今年度の予算に現われておりまするように、これが幾らかずれざるを得ない。そこで今年の今御審議願つております予算を基準としまして、もとよりこれは予算上非常に問題もあると存じますが、私どもといたしましては、今後少くとも千五百六十万石程度増産はどうしても達成しなければならぬ。御承知のような需給趨勢に立つておりますから、これだけはどうしてもやり遂げなければならぬ。そこで予算を伴います主として農地の拡張改良、これを具体的に申しますと、およそ今年度を含めまして、向う五箇年間に灌漑排水の受益面積百九十五万町歩、土地改良百二十八万町歩、開墾二十五万町歩、干拓二方七千町歩、合計三百六十万町歩、これによつて期待せられます増産が大よそ千百万石、並びに耕種の改善、たとえば種子の改善改良、あるいは土壌の改善対策、病虫害対策、そういう耕種の改善等に四百五、六十万石の期待を持つ計画を立てて推進して参りたい、こういうふうに考えております。
  252. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そこで、最近例の基地問題で、演習場の問題等がございますけれども、その問題の中で一つだけ私は伺いたいと思うのでありますが、いわゆる国有地で、農民がこれを開墾してつくつてつて、しかもこれは売買された地上権が長い間存在しておるという土地が、日本全国で非常にたくさんの面積を占めております。これが今日までの状態から申しますれば、一箇年間の所得をただ補償する、いわゆる作離れという状態で放置されております。しかし他面民有地から行きますれば、民有地はやはり同様に一箇年間の補償がさなれて、あと借上料というものがずつと支払われておる状態になつております。そこで日本の現在の演習場におけるかつての御料地、あるいは軍用地、あるいはその他の国有地における耕作権は何ら保障されていないというのが今日の状態であると私は思う。そこで農地制度の担当官庁である農林省は、これらの国有地の地域の耕作権の保障を、過去及び将来にわたつて一体どう考えておるか。これをひとつお尋ねいたしたいと思う。
  253. 保利茂

    ○保利国務大臣 私はまだ詳しいことは存じませんけれども、国有地が提供せられて、そこで離作をせられなければならない方々に対してましては、民有農地の場合に準じまして補償をして行くという建前で今日まで処置いたして来ておると思いますが、なお農地局長から説明を申し上げたいと思います。
  254. 平川守

    ○平川政府委員 ただいまの問題につきましては、民有地の場合に準じまして取扱いをいたしたいというふうに、農林省としてはもちろん希望をいたしておるわけであります。しかしこれについては、調達庁の方が直接に担当をいたしておられますので、調達庁の方にそういう方向で折衝をいたしておるわけであります。われわれとしては、ぜひそういうふうにいたしたいと思つております。
  255. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そこで調達庁にお尋ねいたしたいのでありますが、今農林省は民有地に準じてこれを扱いたいという答弁をされておるわけでありますか、調達庁はこれに対していかに処理されるのであるか、ひとつお尋ねをいたしたいと思う。
  256. 根道廣吉

    根道政府委員 お答えいたします。国有地の上に耕作権がありまして、その耕作権が耕地提供等によりまして害されました場合には、当然に民有地における耕作権と同じように補償されなければならぬと考えております。
  257. 勝間田清一

    ○勝間田委員 そこで念のために大蔵大臣に申しますが、大蔵省もその見解をもつて推し進まれるつもりでありますか。
  258. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 そう存じますが、確かなところは政府委員より答弁いたさせます。
  259. 河野一之

    河野(一)政府委員 お答え申し上げます。現実的には耕作権の問題でございまして、国有地等におきまする耕作権につきましては、いつでも用があつたときには返すのだとか、いろいろな問題がございまして、具体的な問題として取扱つております。御趣旨の点につきましては、その通り方針考えておる次第でございます。
  260. 尾崎末吉

    尾崎委員長 勝間田君、結論を願います。
  261. 勝間田清一

    ○勝間田委員 これで結論が出ます。現在は農地法の制度というものをほとんど無視されて、演習が行われておるのが現実だと思う。耕作権が存在すればどうこうという政府答弁をなされておりますけれども、農地調整法におきましては、いわゆる農地というものに対して、従来耕作されておつたものがいかにして引上げられぬようにすべきかという制度が農地委員会制度と相まつてできておる。それを、大蔵省なりその他のものは、耕作権があるかないかという問題以前に、私は農地調整法を見らるべきものだと思う。農地調整法の手続をとられずに、あるときには知事、あるときには農地委員会のそれぞれの許可を得て、耕作権というものが移動いたしておるという実情を見るならば、私は国有地が真に演習場に引上げられる場合においても、それをつくつておつた農民が補償されるのが当然であると考えられてならない。従つて民有地に対する取扱いと、国有地の耕作権に対する取扱いというものは、農地法において明日であると私は考えておる。その意味において、私は今三者の御意見をはつきりお尋ねしたのでありまするが、一致した見解を、特に大蔵省、大蔵大臣にひとつこの点は御記憶を願いたいと思う。現在農民諸君は、ほとんどこれで三省をまわつてつておるというのが、今日の状態であります。  最後に一点だけお尋ねいたします。いよいよ予算審議もここでほとんど終了に近いところになつて参りましたが、聞くところによれば、自由党、改進党等がこれに対する修正案を考えるというのが、今日の状態であると私は聞いております。これは大蔵大臣としては、きわめて重大な問題であろうかと私は思う。そこであなたの今まで予算審議根本になつておつたところの筋はどこにあつたかと申しますれば、まず二百億近いところの公債発行という、この線が一つの大きな筋である。それからいわゆる竹馬をはかないというのが、あなたの根本考え方である。従つて二重米価制度はとらないというのが、あなたの今までの予算説明の底に流れておつた根本的問題である。同時にあなたは、日本の財政というものをここで大きな変化をさせようとされているわけである。従来の超均衡予算をここで切りかえて、これが公債政策等に移りつつあるというのが、今日の実情であり、支払い超過は一千数百億に達しているというような状態になつておる。そこで私は、ここであなたが今日改進党との協調の道が開かれても、この公債政策の面、二重価格の線、この面についてあなたは協調してもよろしいという態度をもつて、今日進められて行くのであるかどうか。あるいはそういう場合でも、自由党、あなたの与党が決定するならば、大蔵大臣はそれをはつきり認めて行くつもりであるか。これは予算審議のほとんど最終段階に入つた今日、私はあなたに聞いておきたいと思う。
  262. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 予算に対する私の基本的態度は、何らかわりはありません。しかしながら国会で修正されることに対して、かれこれ言うことは私の権限に属しません。
  263. 尾崎末吉

  264. 栗田英男

    栗田委員 最初に委員長に申し上げたいのですが、私の質問に対しまして法務大臣から答弁を求めなければならない重大な事件がありまするので、法務大臣の出席を要求いたします。またこれに関連をいたしまして、警視総監の証言も必要でありますので、委員長において、早急に警視総監が当委員会に出席をいたしまして証言ができまするよう、これまた早急におとりはからいを願いたいと思います。
  265. 尾崎末吉

    尾崎委員長 栗田君にお答えいたします。法務大臣はただいま呼んでおります。警視総監は参考人でありますので、それぞれ手続をいたして許可を受けなければなりませんので、突然今お申出になりましても不可能でございます。この段お答え申しておきます。
  266. 栗田英男

    栗田委員 緒方総理にお尋ねをいたします。独禁法の改正でカルテルの認可権が、一番最初は通産省と経済審議庁を除く各省は、ことごとく公取委一本でまとまつておつたようでありますが、閣議の決定において、これが公取委の認定、通産大臣認可というようと決定をいたしました。この経緯を申し述べていただきたい。
  267. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 これは公取委員長から御説明いたします。
  268. 栗田英男

    栗田委員 公取委員長は閣議には出席できません。従つて私は、これが決定いたしました閣議の模様を聞きたいのでありまして、緒方総理か、あるいはまた通産大臣がこの閣議に出席いたしておるならば、私は承りたいと思います。
  269. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 ものができますまでには、いろいろな議論があつたかもしれませんけれども、結局最終的にそういうふうにきまつたのでございます。ですからほかに、何もいきさつがあろうはずがないと私は思つております。
  270. 栗田英男

    栗田委員 これに関連をいたしまして、重大な問題があるのであります。この通産大臣が認可する場合に、何か認可基準というものが一体あるのかどうか。このカルテルの重要な認可の問題で、何ら認可基準かなかつたならば、これは重大な問題であります。一体どのような範囲内においてこれを認可するのか、この問題につきましてお答えを願います。
  271. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 これは非常に大事なことでございますので、ちやんと法律に明文をもつて規定しております。
  272. 栗田英男

    栗田委員 公取委の認定基準というものは、法案に明文をもつて示してありまするけれども通産大臣の認可基準というのは、法案に何ら示してないのであります。そこに非常なる疑問がありますので、かくのごとき重大な問題でありますから、この機会通産大臣に、通産大臣の認可基準を承りたいのであります。
  273. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。御承知通りに公取委員会の認定を待ち、同時に公取委員会の認定がなければ、われわれは認可ができないという、非常な制限を受けております。同時に通産大臣といたしまして、産業行政上財界において非常な混乱が起る、こういうようなことを判定するということになると思います。
  274. 栗田英男

    栗田委員 そうすると、カルテルの認可というものは、通産大臣の認可と公取委の認定と、まつたく同一基準であるというふうに了解をしてさしつかえないかどうか。
  275. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。見るところが違います。と申しますのは、公取委員会の認定と申しますことは、独占禁止という、いわゆる大きな政策の面からそれに対する例外を与えるということで、この程度のことならいいのだ、ところが私どもといたしまして認定をいたすにつきましては、国定経済上、こういう影響を与えるかということは、国家経済上非常に不利な混乱を与えるということを基準にしておりますから、みな観点が違つております。その点は御承知願います。
  276. 栗田英男

    栗田委員 そういたしますと、ここに非常に重大な問題が出て来るのであります。通産大臣の認可というものは、観点が違うと申しますと、必ずしも公取委が認定を与えなくても、通産大臣が認可を与うることがあるかどうかということであります。
  277. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 法律の明文をごらんくださればおわかりの通り、公取委員会の認定がなければ通産大臣は認可をすることはできません。
  278. 栗田英男

    栗田委員 そういたしますと、同じ省内のことでありますので、公取委の認定を経なくても、これは通産大臣が認可を与えるということは絶対にないかどうか。この法案には公取委の認定ということが明文に示されておりますけれども、公取委の認定を受けて通産大臣が認定するというふうになつておる。ところが先ほどの大臣の答弁によりますと、この認可基準の観点というものは公取委と通産省は違うとかように申しております。そこで通産大臣は認可しようと思つても、公取委の観点から認定を与えなかつた場合においては、通産大臣は認可するかどうか。
  279. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 通産大臣が認可いたしたいと存じましても、公取委員会の認定を得られない場合には、認可できません。
  280. 栗田英男

    栗田委員 そういたしますと、公取委の認定を経なければ、いかなる場合においても通産大臣はカルテルの認可を与えることはできないということになります。でありますならば、何もこのように一つの法律内において、通産大臣認可、公取委認定という二本建の、こうした二重の行政というようなことをする必要はない、私はかように思うのでありますが、この点に関しまして大臣の見解を承りたいと思います。
  281. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。公取委は独禁法、すなわち独禁をするということに対して非常な熱意を持つて、その法律の趣旨に沿うて仕事をしている機関であります。われわれといたしましては、たといそういうことがありましても、この程度の場合にはどうしてもやはり何とかしてもらわなければならぬ、そうしなければ国がつぶれる、これは話が大きゆうございましようが、財界に混乱を起すというような場合が出て来ます。そこでわれわれといたしましては、やはりわれわれの観点として財界に混乱を起してはならないというような意味におきまして、この認可をするのであります。しかしたとい国がつぶれても、公取委の立場としてそれがいかぬと仰せになりますれば、ただいま出しております改正案ではできないということになつております。われわれといたしましては、公取委はそういうことはなかろうかと思いますけれども、その点におきましてはなはだ遺憾でございます。
  282. 栗田英男

    栗田委員 現段階において不況カルテルの中で価格協定を認めるということは、私は業界に非常な弊害がある、かように考えておるのでありますが、この点大臣はどのようにお考えですか。
  283. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。価格協定というものは、最後のとことんのところでございまして、どうしても第一次のやり方では財界が救えない、こういう場合に至る一番奥の大事なところでございまして、そういうことはわれわれとしましては厳格に注意をいたしてやることにいたしております。
  284. 栗田英男

    栗田委員 財界が非常な不況に陥つたときにのみ価格協定を認めるということを言つておりますが、この法案によりますと、生産の制限をいたしまして、なお不況がとまらなかつた場合には価格協定を認める、こういう趣旨のようであります。この不況がとまらないということは、これは私は生産数量の制限が足りないから不況を克服することができないのだと思うのでありまして、やはりこうした場合におきましては、不況カルテルの場合における価格協定よりも、むしろ徹底的な生産制限をやらなければならないのじやないか、私はこのような見解を持つておるのでありますが、大臣はいかがでございましようか。
  285. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。先ほども申し上げましたように、生産数量の制限というものが第一次にやらなければならないことでございますが、しかしそれをしてもどうしても混乱が救えないという場合には価格協定をしなければならぬ、こういうことに今なつておるのでございますが、しかし私ども財界におりました人間から考えますと、数量が多過ぎて、いわゆる需給の不均衡が出たときに混乱が起きるのは当然でございますけれども、しかし世の中というものは心理状態というものが非常に影響いたすのでありまして、生きた行政をやつて行きます立場におきましては、その心理状態というものを無視するわけに参りませんので、そういうような最後の価格協定もできるようにしております。
  286. 栗田英男

    栗田委員 私は今日までの通産省の行政指導を見て参りますと、さほど不況が深刻でないのにもかかわらず、すぐ操短なり価格協定をやるというような手を用いやすいのであります。この点に関連をいたしまして、農林大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、国内の需要を満たした上の硫安の輸出は必要であるという前提のもとに私は質問をいたしたいと思います。それは、現況のごとき輸出の赤字をいかに処置するか、すなわち輸出による損失はいつまでも国内の販売価格でカバーするつもりなのか、この点に関しまして農林大臣の御見解を承りたいと思います。
  287. 保利茂

    ○保利国務大臣 これはたびたび論議せられておりますように、しからば国内の需要を満たすだけの生産をいたした場合に、今日の価格で維持できるか、これは多くの人の見解によりますれば、今日の価格以上に上るのではないか、そういう上から出血輸出の損失が内地、消費者に転嫁せられているのみとは断じがたいであろうと思います。要はこの硫安の生産費が実際どのくらいかかつておるのかということが、正確にということはなかなかこれはむずかしいかもしれませんけれども、できるだけ正確に把握をして、そうして内地需要者に対する適正な価格が伴わなければ、この矛盾はなかなか、気持の上からでも解消できないのじやないか、そういうふうに考えます。
  288. 栗田英男

    栗田委員 安定帯価格制度というものを一体いつまで続けて行くつもりなのか、この点に関しまして……。
  289. 保利茂

    ○保利国務大臣 ただいまは安定帯価格でもつて指導いたしておりますが、今日この安定帯価格による需給価格の安定は、一応これは生産費のつかめなない現状のもとにおきましても、大体目的を達しておるのではないか、従いまして肥料対策委員会の答申に基いて、そうして恒久的の措置がとられますまでは、この安定帯価格の方針は続けて行きたい、こう考えます。
  290. 栗田英男

    栗田委員 この際お尋ねをいたしたいのですが、硫安工業というのは非常に巨大資本でありまして、今日まで国家の保護政策になれ過ぎておるのであります。そこで今までのやり方を見ておりますと、とかくカルテル化の傾向が非常に強い。しかも競争の試練というものに非常に乏しいのであります。いろいろな状況で生産制限ができないとかなんとか言いまして、従つて他の産業に比しまして、特に外国の設備等から比較検討いたしますと、非常に合理化が立遅れている。もちろんその関係で国際的に非常に割高になつておるのでありますが、この点に関しまして何か合理化助成策なりあるいは合理化促進策というようなものをお持ちであるかどうか、また今日こういうことを勧奨しておるかどうか、この点に関して……。
  291. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは産業合理化の一環として、特にまた肥料工業の実態からいたしまして、通産当局において特に取上げて合理化の具体方策を進めておる、かように考えておりますが、私は直接これに携つておりません。
  292. 栗田英男

    栗田委員 これは通産大臣にお尋ねをいたしたいのですが、最近のカルテルで品種協定を認めておるようでありますが、私はこの点に関しましては、品種協定によつて合理化を促進されない、かえつて大企業家は安易な道を選ぶのじやないか、こういうふうに非常に心配をしておるのでありますが、この点いかがですか。
  293. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 私はそうとは考えておりません。
  294. 栗田英男

    栗田委員 特にこの品種協定の場合において生産分野が限定をされますので、非常な技術の向上が遅れるということを、特に業界等も心配をいたしておりますが、この点どうか。
  295. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 私はこの硫安の生産につきましては、いろいろ考えてみたこともございますが、合理化はやはりやつて行けると思います。同時にその合理化につきましてはやはり国家資金が出まして、それで合理化を進めておるように聞いております。
  296. 栗田英男

    栗田委員 これは経済審議庁長官にお尋ねをいたします。只見川の問題でありますが、只見川の開発方式に対する結論が出ておるかどうか。もしも結論が出ておらなかつたならば、どの程度の調査といいますか、やつておるかどうか、この点に関しましてお答えを願いたい。
  297. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。只見川の問題につきましては、あらゆる方面、またあらゆるところから今研究しまして、約四、五葉できておるはずでございます。それをただいま調整最中でございまして、まだ結論は得ておりません。
  298. 栗田英男

    栗田委員 どのような方向に持つて行くかという考えがありましたならば経審長官から……。
  299. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 私は技術的、合理的に結論を出してくれるようにということにして、今せつかく検討中でございまして、その方向は合理的、技術的にやつてもらえるだろうと、それを期待している次第であります。
  300. 栗田英男

    栗田委員 新聞紙上の発表を見ますと、電源開発株式会社の総裁は、今月牛にこの方式の結論を得ないと、ことし中に締切りができないということをしばしば発表いたしております。また政府も今月中にまとめてもらわなければならないということを盛んに放送いたしておりますが、一体只見川の開発というものは、電源開発株式会社がやることにおるかどうか、この点に関しまして……。
  301. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答申し上げます。電源開発株式会社がやることになつておるわけでございます。
  302. 栗田英男

    栗田委員 私は電源開発株式会社がこの只見川の地点を開発するということは何ら聞いたことがありませんが、経済審議庁長官は、いかなる根拠によつて電源開発株式会社が只見川の開発を行うというのか、私はその根拠をお聞きいたしたいのであります。いつそのように決定をしたか。
  303. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。決定はいたしておりませんけれども、私のただいまの観測ではそういうことになるだろう、こう考えております。
  304. 栗田英男

    栗田委員 決定をいたしておらないのにもかかわらず、私の考え方ではそうなるだろうなんと言うことは、私は不謹慎もきわまるだろうと思うのであります。少くとも電源開発会社が只見川の開発をやるというようにきまつたならきまつた、きまらないならきまらないというように、私は明確に答弁を求めるものでありまして、多分電源開発株式会社がやることになるだろうなんというような所管長官としての考え方は、私ははなはだ不見識である、かように思うのです。
  305. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。そこで私がまだ結論を得ておりませんというのは、そういうことまでまた結論を得ていないのでありまして、ただ率直にあなたと私との仲で私の考えておるだけのことを申し上げたので、そういうことになつたのですから、最後の結論というものはまだきまつていないということを前提に置いてお考えくださればわかると思います。
  306. 栗田英男

    栗田委員 本年度の電源開発の基本計画ができておるかどうか。
  307. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 私はその点は詳しく存じませんから、政府委員から御答弁いたさせます。
  308. 栗田英男

    栗田委員 電源開発の基本計画ができておるかどうかということは、これはまことに重大なことであつて、これができておるか、できていないかということを所管大臣が知らないというばかな話はないと思うのであります。あなたはこの前の施政方針演説の場合においても、五百五十万キロの電源開発をやるという演説をいたしたではありませんか。これは政府委員ではなくて、大臣みずから御答弁を願います。
  309. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 本年度は只見の決定だけだそうです。ほかはみな継続事業としてやつておるそうです。
  310. 栗田英男

    栗田委員 私は本年度は只見とか継続事業とかいうことを聞いておるのではありません。本年度の基本計画というものができておるかどうかということを聞いておるのであります。
  311. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 只見を決定すればそれで基本計画が立つわけです。
  312. 栗田英男

    栗田委員 電源開発促進法を見ましてもそうでありますが、継続事業といえどもこの基本計画というものはつくらなければならないのです。この点どうですか。
  313. 平井富三郎

    ○平井政府委員 はなはだ恐縮でございますが、御質問の最後もお聞かせいただきたいと思います。
  314. 栗田英男

    栗田委員 電源開発促進法第三条に基く本年度の基本計画というものができておるかどうか。これは経済審議庁における重大な仕事である。これができておるかどうかという点です。いわゆる本年度の電源開発計画です。
  315. 平井富三郎

    ○平井政府委員 二十八年度の電源開発基本計画につきましては、原案としては大体のところ終了しておるわけであります。一番大きな開発計画であります只見の計画につきまして、たとえば本流案をとるとか、あるいは分水案をとるとか、その辺の決定がこれからの問題になりますので、只見の問題を決定いたしますれば、本年度の開発基本計画というものが完成するわけでございます。
  316. 栗田英男

    栗田委員 そうしますと、政府委員にお尋ねいたしますが、電源開発計画というものはできていないんですね。基本計画は……。
  317. 平井富三郎

    ○平井政府委員 形式的には決定しておりません。
  318. 栗田英男

    栗田委員 もう一回答弁を……。
  319. 平井富三郎

    ○平井政府委員 実態的には只見を除きましてはほとんど確定的でございますが、本年度の開発計画といたしましては、只見の開発計画を基本計画に織り込みたいと存じております。従いまして只見が決定されましてから二十八年度の基本計画と、こういたしたいと思います。
  320. 栗田英男

    栗田委員 それは大きな間違いです。この基本計画というものは会計年度の初めに発表しなければならぬ。従つて政府委員にお尋ねいたしますが、今の基本計画を官報に発表してありますか、その点はどうですか。
  321. 平井富三郎

    ○平井政府委員 二十八年度の基本計画はまだ形式的に発表しておりません。
  322. 栗田英男

    栗田委員 これはまつたく経済審議庁の大失態であります。すでに昭和二十八年の七月になつてつても、なお昭和二十八年度の電源開発の基本計画ができておらないのであります。基本計画ができておらなくてよくも五百五十万キロ開発するというような演説ができたわけです。経済審議庁長官の本会議における演説は全部でたらめだということになるのじやありませんか。そこで大蔵大臣にお尋ねしますが、しからば基本計画がないのにもかかわらず電源開発に対して金を出してあるかどうか。
  323. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 電源開発会社に対する出資は、この予算の承認を得た上で出すことに相なつております。
  324. 栗田英男

    栗田委員 しからば電源開発会社に対する出資状況は、今日まで暫定予算の中から出したか出さないか、この点を……。
  325. 河野一之

    河野(一)政府委員 暫定予算で出しております。たしか四十八億であります。
  326. 栗田英男

    栗田委員 暫定予算の中から、なお詳細に四月、五月、六月、七月幾らずつ出したか、念のためにお答えを願います。基本計画のないところに金を出したのであるから重大問題です。
  327. 河野一之

    河野(一)政府委員 ちよつと数字を何でございますが、たしか四、五月の暫定予算で出しております。これは産業投資特別会計ではありませんで、見返り資金でやつておるわけでございます。
  328. 栗田英男

    栗田委員 これは見返り資金特別会計の中から出したのですか。
  329. 河野一之

    河野(一)政府委員 さようであります。
  330. 栗田英男

    栗田委員 そこに食い違いはありませんか。
  331. 河野一之

    河野(一)政府委員 失礼いたしました。見返り資金だけではありませんで、資金運用部からも出しております。
  332. 栗田英男

    栗田委員 私が暫定予算で調べたところから見ると、見返り資金特別会計の中から四月と五月で二十五億円、六月五億円、七月十億円、そのうち電源開発会社に対して二十五億円だけ支払済みになつておるのですが、私の調査が違うかどうか。
  333. 河野一之

    河野(一)政府委員 ちよつと手元に資料を今持ち合せておりませんので、後ほど……。
  334. 栗田英男

    栗田委員 経済審議庁で全然基本計画ができていないのにもかかわらず、かつてに金を出すからそういうことになる。そこで今のは電源開発株式会社分でありますが、九電力の分、すなわち開銀から貸付分に対しては金を出してあるかどうか、大蔵大臣
  335. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 若干出してあると思いますが、政府委員に答弁いたさせます。——開発銀行が出しておるので、開発銀行が幾ら出しておるか、これは開発銀行について調査を求めませんと正確な答弁はいたしかねますので、さよう御了承願います。
  336. 栗田英男

    栗田委員 開発銀行が九電力会社に幾ら貸したかということじやありません。大蔵省から開発銀行に対して、電力開発分として暫定予算の中から幾ら出したかということを聞いておるのであります。
  337. 河野一之

    河野(一)政府委員 特に電力分として幾らというふうな考えでなしに、総額的に考えております。
  338. 栗田英男

    栗田委員 暫定予算の中から総額で幾ら出したのですか。電力と海運と、その他全部まぜてもいいです。
  339. 河野一之

    河野(一)政府委員 開発銀行に百四十五億であります。
  340. 栗田英男

    栗田委員 開発銀行に対しましては、私の調べたところでは百五十四億出ておるのであります。そこでそのように経済審議庁の計画がなく、全然基本計画ができておらないのに、あるいは継続事業なり新規事業に対して、あるいは電源開発株式会社に対して、すでに暫定予算の中から四十億円を出しておる。また九電力会社に対するものとして、百五十四億というものを実際開銀に預託をいたしておるのでありまして、こういうことは、結局何ら計画ができてないところに重大な誤りがあると思います。この点に関しまして大蔵大臣にお答え願います。
  341. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 開発銀行に幾ら出すか、その開発銀行の資金の用途が、たとえば電源開発に幾ら向けるか、造船に幾ら向けるかというようなことは立つております。そのうちの、いわば暫定予算のときでございましたので、ほんの一部を出しておるのでございます。
  342. 栗田英男

    栗田委員 そこでこの電源開発株式会社の問題に関連をいたしまして通産大臣にお尋ねをいたしたいのですが、電源開発株式会社が、今佐久間のダムを建設するのに関連いたしまして、磐城セメントと提携いたして、あそこにセメント工場を建てて、電源開発株式会社かこれを直営しようという計画を持つております。このような申請が通産大臣の手元に出されたかどうか。しかもその内容は、十五億の債務補償をするというようなきわめて虫のいい計画であります。これに対しましてどのような考え方を持つておるか、通産相のお手元にこういう計画が電源開発株式会社の中から行つたかどうか、こういうことは電源開発促進法によつて、かくのごときセメント工場の経営というものが電源開発株式会社に許されるのかどうか、この二点について通産大臣の御所見を承りたいと思います。
  343. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。そういうような話をちらと聞いたこともございます。しかしわれわれといたしましては電源開発会社が何やらセメンとかなんとかいうものと、むろん商売上密切な関係を持つことは一向さしつかえございません。しかしそれが一体となつてやるということは考えておりません。
  344. 栗田英男

    栗田委員 これはあなたの考え方けつこうなんですが、只見川の上流の開発は大体に考えて田子倉と奥只見、この二箇所というふうに考えておるかどうか。
  345. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申します。先ほど御答弁申しましたように私はまだはつきりした結論は聞いておりませんし、また結論を研究させつつあるのでありまして、その過程でございますから、どういうような結果が出て来るかわかりません。少くとも奥只見と田子倉という所は有力なダムの候補地でございますから、それが一緒にやれるか、あるいは別々になるか、その辺のところはこれからの検討にまかしておるわけであります。
  346. 栗田英男

    栗田委員 おそらくこの大規模の開発はもちろん田子倉と奥只見であると思います。この田子倉の開発に関しまして地方自治庁長官にお尋ねいたしたいのですが、塚田さんはいませんか。
  347. 尾崎末吉

    尾崎委員長 今自治庁長官は参ります。前もつて申し上げておきますが、お約束の時間が相当の超過をいたしておりますので、なるべく簡潔にお結びを願います。
  348. 栗田英男

    栗田委員 時間が過ぎたのは政府委員の答弁が遅れたからです。
  349. 尾崎末吉

    尾崎委員長 その点も若干ありますが、御質問の時間が実質においてよけい超過いたしておりますので、なるべく簡潔に願います。
  350. 栗田英男

    栗田委員 塚田自治庁長官にお尋ねいたしたいのですが、ただいま只見川の大きな開発は、田子倉と奥只見であるというように経済審議庁長官からも話があつたのですが、私もまつたく同感です。そこでこの田子倉の点に関しまして、この電源開発株式会社の総裁も早く田子倉の締切り工事をいたしたいということをしばしば新聞で発表いたしております。そこでこの田子倉の問題でありますが、実は先般来私は只見の田子倉の部落からしばしば陳情を受けておるのであります。それはどういう事件かと申しますと、東北電力株式会社が福島県知事を通じまして只見の村長に千五百万円の金を与えたのであります。その千五百万円の金をどうしたかというと、奥只見の宣撫工作のためにこの千五百万円というものを分配いたしたのであります。しかもこの分配の裏にはどういう契約書がとりかわされたかというと、「東北電力株式会社を甲とし、只見村を乙とし甲の田子倉発電所並に滝発電所建設目的達成のため、甲乙の間に左の通り契約する。一、乙は甲の田子倉発電所並に滝発電所建設目的達成のために、甲に対し積極的に協力をする。二、乙は甲の前項工事の施行に当り別紙個書記載の村有地を将来甲に売渡し、甲以外の者に売渡さない事を確約する。但し実地調査の上個所地目、面積等に変更ある場合はそれに依るものとする。三、第二の村有地の売渡し価格は必要な時期に甲乙協議の上之を決定する。四、甲は前項を条件として金一千五百万円を仮渡し金として本契約締結と同時に乙に交付し、本件売買の成立せる時、代金の内より之を精算するものとする。昭和二十八年一月三十日、東北電力株式会社社長内ケ崎贇五郎、只見村長長谷部大作」、これは村会の決議も経ずに千五百万円の金をもらいまして「お前たちこの田子倉がダムになつても反対をするなと言つて、この公有地に生んでいる村民に金を与えておるのであります。このようなことがはたして適当であるかどうか、しかも東北電力株式会社というものは、この田子倉に対する水利権は何ら持つていないのであります。この点に関して自治庁長官の御見解を承りたいのであります。すなわちそれは、只見村のやり方は自治法違反をしているのではないかということであります。
  351. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 お尋ねの点は、一つは村有地を有償で売り渡すという前提のもとに、この前渡金に当る一部分を含めた千五百万円を受取つたということでありますと、議会の承諾なしにそういう契約ができるかという点に一点あり、しかももう一つの点は、そういう金を村長が受取つて、そうしてそういう宣撫工作にその一部分を使つたということは適当であるが、ここにもう一つの点があると思います。後の点は、これは自治法の直接関与した範囲ではないと思うのでありまして、第一の方の点はこれは明らかに自治法に関連があると思う。自治法の考え方から申しますならば、村の条例に何らかの定めがあれば、おそらくそれだけの大きな財産の処分であれば、あるいは住民投票によるということになつているかもしれません。あるいは議会の三分の二以上の賛成によつて賛否を決するということになつているが、あるいは過半数の決議ということになつているが、とにかく議会が住民に諮らねばならないということになつているのではないかと思います。もしそういうぐあいになつているのに、そのきめられている所定の手続をふんでいなければ、これは自治法に抵触するということになる、もし条例にきめてなければ自治法に抵触するということにはならないが、その問題自体が不当かどうかという問題は依然として残つている。不当であるということとして問題が残るならば、これは自治庁長官の監督の権限についてどういう関係にあるかということでありますが、これは自治団体に対しては直接監をしてこれを取消させるという権限はございません。町村の場合には自治庁と府県知事が、もしそれが妥当でないということであれば、これを是正するように勧告をすることができる、こういうことになつております。町村の場合には第一義に府県知事がやるということになつておりますから、この問題の解決には福島県知事がおそらく何らかの措置をすべきである、こういうふうに考えております。
  352. 栗田英男

    栗田委員 この問題は地方自治庁の早急の調査をお願いしたいと思います。  それから経済審議庁長官にお尋ねをいたしますが、この只見川問題は、すでに御案内の通り本流案と分流案で争つているのであります。そこで経済審議庁長官は、今の本流案と分流案のいずれが科学的にあるいは技術的にすぐれているかということを、研究をなすつたことがあるかどうか伺いたい。
  353. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 それが一番大事なことでありまして、今までずいぶん研究いたしました。しこうしてその研究の結果を持ち寄りまして、今その結論を得ようとしている段階であります。
  354. 栗田英男

    栗田委員 私はこの際審議庁長官に私の私え方を申し上げたいのですが、この只見川という川は、日本で一番水量を持つてつて一番急流の川でありまして、これはなかなか日本にも他にありません。そこでこの只見川の特徴というものは何が特徴かというと、川の流れが急であつて、しかも水量が豊富であるということが只見川の特徴なのであります。そこで今何でけんかをしているかというと、この川に対して階段的にダムをつくつて開発するか、上に大きなダムをつくつて一挙に分水するかという二つの考え方がございます。そこで私が考えていることは、急流で水が多いということは、階段的にダムをつくつて行くと、ダムはたくさんつくれるかもしれぬ、高さは高いかもしれぬけれども、これは急流でありますから、水量というものはあまり貯水することができない。技術的に、科学的に、これは本流案よりも分水案の方がすぐれているということは明らかなことである。また私はしばしばOCIの技術団とも会いまして、只見川の問題に対してもずいぶん意見を闘わしたのでありますが、この際 OCIの技術団が日本を離れるときに何と言つて帰つたかというと、日本の政治というものは科学を左右して困る、こう言つてつたのであります。この点は経済審議庁長官に、この本流案、分水案を決定する上において、あくまでも政治的情熱というものを排しまして、科学的に技術的にどちらがすぐれているかという実論に立つてこの決定をお願いしたいと思います。  そこで私は建設大臣にお尋ねいたしますが……。
  355. 尾崎末吉

    尾崎委員長 栗田君に申しますが、——もう三回ほど申しましたが、もう一点で結論を願います。
  356. 栗田英男

    栗田委員 この水利権の問題であります。只見川の開発をしようと思つても、これは問題であります。なぜ問題かというと、これは東京電力が水利権を持つております。しかもこれを許可するのは知事でございます。そこで電源開発株式会社がかりにやろうと思つても、あるいは福島県、新潟県知事なり東京電力が強硬に反対をしたというような場合においては、これは手をつけることができません。一体このような場合において、この水利権問題に関しまして建設大臣としてどのような考え方を持つているか。またこの間の上田、本名のように、行政処分によつて、河川法によつて取消すかどうか、この点に関して建設大臣の御見解を承りたいと思います。
  357. 戸塚九一郎

    ○戸塚国務大臣 水利権の問題は、今法律が古いと申しますか、その後県が地方公共団体になつたというような関係から、ただいまお話のように知事に水利権の許可権があるのでございます。その知事の考え方によつて、ただちに国がお話のような収用というようなことを発動するかどうか、これはまだ考えておりません。目下私の承知いたしておりまするところでは、それぞれ関係者が調整の相談をしているというふうに承知いたしておりますので、その結果を待つてから国としては考えて行きたいと思います。
  358. 栗田英男

    栗田委員 最後に、この只見川問題が今日このように紛糾いたしているということとは何かと思しますと、昨年の上田、本名の水利権の処理が適当でなかつたということに端を発しておるのであります。しかもこの問題にからみましては、私がしばしば警告したように、東京電力から水利権を強奪したということまで言われている。しかも認可にあたつては通産省は公文書を偽造している。その上これに対しましては見返り資金の不当の融資もいたしておるのであります。私はこれは大きな疑獄事件に展開するのではないかということを、すでに昨年以来この問題に関しましては警告をいたしておつたのであります。はたせるかな、昨年以来警視庁はこの問題につきまして、実は私も先ほど警視総監から証言を得たいと思つたのですが、積極的な捜査に乗り出したのであります。しかも警視庁で一番腕ききと言われている樽警部が特捜班を三個班つくりまして、この問題を今盛んにやつております。すでに建設省には、この問題については火がつきました。また通産省に対しましてもこの問題が火がつくことは明らかであります。しかもこの建設問題にからんでは、これはあまりにもばかばかしいことでありますが、当時の野田建設大臣は東山温泉に三日間も滞在いたしまして、一日五十人の芸者を呼んでおるのであります。これはうそでも何でもありません。実に東山温泉の旅館の番頭が申しておるのであります。この只見川の水利権問題の裏には、このような非常な疑獄事件が含まれておるのでありまして、警視庁が捜査するのはあたりまえである。緒方総理がおられぬから、どうも質問の場所がないのでありますが、この只見川問題に関連して当時の内閣に疑獄事件に関連する閣僚が出た場合には、現内閣はどうするか。これは吉田総理緒方総理にお伺いしたいので、出て来られたときにまたこの問題は聞くといたしまして、私の質問はこれで終ります。
  359. 尾崎末吉

    尾崎委員長 小林君に関連質問を許しますが、ごく簡潔に、四五分程度にお願いいたします。小林君。
  360. 小林進

    小林(進)委員 関連して簡単にお伺いいたします。只見川開発が政府の計画に入つておることは主管大臣の御答弁で明らかになつたのであります。ただいま三者会談の結論を電源開発調整億議会に持ち込んで、その審議会が幹事会に命令をして、技術的な調査をしておられるのでありますが、これについて開発会社の総裁の高碕さんが、今月中にこの結論が出なければ、おそらく今年中にこの開発に着手することは不可能だろうというような悲観論を述べておられるのであります。主管大臣といたしまして、この只見川の開発を率本計画通り非常の熱意をもつて今年中にどうしてもやるというお考えでありのか、あるいはもう事ここに至りましては、今年中にはどうも間に合わはいのではないかというので、間に合わないなりに正鵠なる結論を得て慎重にやりたいとお考えになつておるのか、これをお聞きしたい。  あわせて大蔵大臣にもお聞きしたいのでありますが、この予算の中には電源開発の問題が入つております。その電源開発の予算の中には、もちろん只見川開発の予算も予定されておるのでありまして、聞くところによれば現在の着手分として大体四十億が含まれておると見ておるのでありますが、今その開発がぐらついておるのであります。それでもしこの予定が不可能にたつた場合、只見川開発の四十億の予算を一体組みかえされるのか、あるいけよその方に持つて行かれる考えであるのか、以上まず一問をお願いいたします。
  361. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私は今年必ず着手できるようにと思つて、非常に鞭撻して研究をやらしております。
  362. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 電源開発に関する分と存じますが、そのうちどこに幾らということをちよつとここで私は記憶いたしておりません。従いまして電源開発会社に対する投融資の分はよくわかつておりますが、そのうち只見川の問題に幾ら出すかということはよく存じませんので、その点ちよつとお答えいたしかねます。
  363. 小林進

    小林(進)委員 最後の一問のお許しでございますので簡単にいたしたいと思います。そもそも只見川の開発が数年来もみ抜きながら今日までなお延々として参りました根本の理由は、主管官庁であります通産省が、いわゆる本流案を最初から支持いたしまして、只見川分水案に対して、何らこれに対する熱意と、調査をしようという意欲さえも見せなかつた——電源開発調査費に対しまして、国家は実に一億有余の調査費を出しておりますが、その電源開発に投ずる調査費一億のうちの、実に八千万円という巨額の金が只見川開発に投ぜられておる。しかるにその八千万円の調査費の内容は、これごとごとく本流案の調査に使用せられまして、反対側の、今栗田君が言いました分水案の調査の方には、一銭の金も使われていないのであります。こうした主管官庁の片手落ちなやり方が、今日ここまで来ましてもまだ結論が出ていない根本の理由だと思うのであります。こういう通産省の片手落ちなやり方、その事実を一体通産大臣はお認めになりますかどうか、これが一点であります。  第二点といたしましては、ただいま後ほどのお話にありましたように、いわゆる電源開発案について、今度初めて分水案というものが研究の俎上に載せられて、現在二案があります。そのほかまだ二、三案があると言われたのでありますが、電源開発案というのはそもそも今年の春に通産省が発表いたしました官僚試案であります。本流案であります。その本流案を爾後今日に至るまであるいは三者会談だあるいは何々研究だと愚弄するような手練手管を持ちながら今日まで来ました。今日初めてそれを開発会社の案であるというかつこうで見せたのでありますが、内容は昨年から本年の春に至る通産省の案そのままの繰返しでありまして、側らの進歩がないのであります。ごまかしの案であります。この案と、いま一つの案は先ほども言われたOCIの案が入つておるのでありますが、この OCIにも政府は巨額の金を投じて調査を依頼した、その結果のOCIの調査報告書というものは非常にでたらめである、インチキであるということは、あなたが主管をしていられる通産省の技術関係者がみずから承認して、これはだめだ、インチキであるということを言つておるのであります。このOCIの調査報告書が事実あなたの所管の部下が言つていられるようにインチキであるということを所管大臣としてお認めになるかどうか、こうなれば通産省の原案も、OCIの原案も、開発会社の原案も、これことごとく何か政治勢力によつて動かされた一方的な、みなでたらめな案であるということになる。こういうような実情を通産大臣はお認めになるか。少々時期的にずれるけれども、白紙に返して、大臣の権威においてもつと有力なる総合的な調査団を設けて、根本からやり直される意向があるかどうか、以上私はお伺いいたしたいと思うのであります。
  364. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。約八千六百万ほどの調査費が出ておるのでございまして、それにつきましていろいろ私も研究してみましたが、やはり分流案と称する新潟県の方にも調査費が相当出ております。それは数字をただいま申し上げておきますが、しかしこれは間違つておりましたらまた訂正をいたしますが、本流案にまず二百七十一万円かけた、これははつきり本流案にかけたのであります。それから分流案に対して六十一万、それからまた共同の両方合せて必要であるところの調査費が千四百万ずつでございますから二千八百万でございます。そういうことでございまして、調査費がどうであるということについて詳しく必要でございましたら申し上げます。ですからちつとも新潟県方面を調べなかつたということは当りません。それからOCIの案というものは権威がないものじやないかというようなお話でございました。しかし一応相当な権威があるアメリカの技術家の集団でございまして、私ども日本といたしまして尊重していいと思います。それから通産省でできた案とかあるいは何とかいう案を仰せになりましたが、しかしそういう案をみな寄せ集めまして、私が経審長官になりましてから御破算にしまして、新しく計画を出発し直して研究をさしておりますから、どうぞそれまで御猶予願いたい。
  365. 尾崎末吉

    尾崎委員長 これにて一般質疑は終了したしました。分科会の日時及び次回の委員会開会の日時は公報をもつてお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時五十六分散会