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1953-07-08 第16回国会 衆議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月八日(水曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 尾崎 末吉君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 川崎 秀二君    理事 八百板 正君 理事 今澄  勇君    理事 池田正之輔君       相川 勝六君    有田 二郎君       植木庚子郎君    江藤 夏雄君       小林 絹治君    迫水 久常君       庄司 一郎君    田中  元君       高橋圓三郎君    富田 健治君       中村  清君    灘尾 弘吉君       羽田武嗣郎君    葉梨新五郎君       原 健三郎君    船越  弘君       本間 俊一君    八木 一郎君       稻葉  修君    小山倉之助君       河野 金昇君    河本 敏夫君       中村三之丞君    古井 喜實君     早稻田柳右エ門君    島上善五郎君       武藤運十郎君    八木 一男君       横路 節雄君    加藤 鐐造君       小平  忠君    河野  密君       平野 力三君    三宅 正一君       石橋 湛山君    黒田 寿男君       辻  政信君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         文 部 大 臣 大達 茂雄君         通商産業大臣  岡野 清豪君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         労 働 大 臣 小坂善太郎君         国 務 大 臣 安藤 正純君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         人事院総裁   淺井  清君         総理府事務官         (保安庁保安局         長)      山田  誠君         総理府事務官         (保安庁人事局         長)      加藤 陽三君         総理府事務官         (保安庁経理局         長)      窪谷 直光君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 七月八日  委員櫻内義雄君及び島上善五郎君辞任につき、  その補欠として早稻田柳右エ門君及び福田昌子  君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算  昭和二十八年度特別会計予算  昭和二十八年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 尾崎末吉

    尾崎委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年度一般会計予算外二案を一括議題として質疑を継続いたします。川崎秀二君。
  3. 川崎秀二

    川崎委員 私はすでに本予算委員会で種々な問題について伺いましたので、大した質問もないのであります。ただ警備計画に関連して二、三伺つておきたいと思うのであります。  昨日木村保安庁長官警備計産の内容について遂に御発表がありませんでした。はなはだ遺憾なことと思うのでありますが、すでに総理大臣手元にはこれが提出をされており、従つて木村試案というものがあることだけは明らかであろうと思うのであります。この試案発表されなかつたのは、これを秘密にされておる方がよいのか、あるいは部内の意見がまだとりまとまつておらないから発表しない、こういう意味でありますか。その意味するところをまずお伺いいたしておきたいと思います。
  4. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。昨日も申し上げましたように、いわゆる警備計画なるものは、将来日本治安情勢の変化によつて警備力を増強する必要のある場合に、どうしたらよいかという一応の見当を私自身につけたい、こういう考えで試案をつくつたわけであります。従いましてこれはもとより関係各省との協議を経たものでもないことはもちろん、庁内においてもこれは問題になつていないのであります。もちろんこの警備計画を立てるにつきましては、いろいろな面から研究いたさなくちやならぬので、庁内においても関係各局各課で、みな総合的にこれを判断して、一つ成案を得るわけなのであります。その前提において自分心構えをどうしてやろうかという一応の案をつくつたにすぎないのであります。この意味において私はまだ発表すべき時期でない、こう申したのであります。
  5. 川崎秀二

    川崎委員 そういたしますと、はつきり伺つておきますが、これは秘密事項に該当するものではない、こういうことでございますね。ただ発表すべき段階でない、こういうことでございますね。
  6. 木村篤太郎

    木村国務大臣 そうであります。
  7. 川崎秀二

    川崎委員 再軍備反対論国内に非常に多いわけでありますが、現在の国情の推移するところ、おそらく今後次第に再軍備の傾向に行くと思います。従つて今後この秘密事項国家機密というようなものと国会の審議というものについては、われわれ議員として十分に心得ておかなければならぬものがあります。そこでお伺いをいたしたいのでありますが、たとえば警備計画、その警備計画内容というものはどういうものであるか、兵力量陸海空に大別して書いてある輪郭のごときは、これは秘密事項ではない、しかしこれが事変あるいは国内騒擾等に対して移動するような計画がある場合には、これは秘密事項になりますか、まずその初歩から伺つておきます。
  8. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。もとより今の計画に対しても、全然秘密に関する事項はないとは言えないのであります。一つ警備計画を立てるにつきましては、量の問題をどうするか、質の問題をどうするか、あるいはその配置をどうするかというようなことを勘案するのでありますから、全然秘密事項はないとは申しません。計画がある以上は、いわゆる秘密に関することもその中に含まれておるのでありまして、今仰せになりましたように、これが財政的面においてどういうぐあいにまかなつて行くか、あるいは技術面においてどうまかなつて行くかということの点になりますと、これはあるいは秘密事項ではないということは言えましようが、配置計画あるいは一つの事象を対象として、計画を立てるにおきまして、いろいろそういうような策定がありますので、必ずしもこれが全部秘密じやないということは言えないと考えております。
  9. 川崎秀二

    川崎委員 木村長官検討された試案なるものは、遂に公にはただいままで発表されておらないのでありますがこの計画検討するにあたつて、当然紙の上に書いたブランだけではなしに、たとえばこういう兵力が必要だというような意味ではなしに、当然その兵力を実現しようと思えば、財政計画なりやはり資金計画というようなものも検討はされたと思うのであります。そういうことも並行して一応作業をなされたものでありますか。
  10. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。そういう財政計画とか、あるいは生産方面とかいうことになりますと、これは一庁だけで行くものじやないのであります。もとよりいろいろな面からそういうことの研究はさせておりますが、いわゆる私の試案というものは、見当をつけるだけでありまして、そういう深いところまでは行つておらないのであります。
  11. 川崎秀二

    川崎委員 深いとこるまでは行つていないにしても、一応国民経済との関係を全然考慮なしに試案というものを検討されておらないと思うのですが、多少は検討されたのでしようね。
  12. 木村篤太郎

    木村国務大臣 もとより国民経済を無視してはやれませんから、私の心づもりとして、そういう点についてはやはり触れておるわけであります。
  13. 川崎秀二

    川崎委員 遂にこの警備計画内容なるものは発表されなかつたのでありますが、これについては木村保安庁長官は一部局に対して命令をされて、そしてつくらして、自分手元に置いておいたということですが、木村試案というものを承知されておる方は、どういう程度の方々でありますか。
  14. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは私の試案だけであるのでありまして、もとより保安局長に命じたのですから、保安局長はこれは知つておるだろうと思いますが、その他には知つておる者はないはずであります。ただ私は総理には、一応の心構えができたからということを話して持つてつた。しかしあと総理の意向として、まだ成案になつていないものであれば、これは成案ができてからもらいたいというようなことで、現在私の手元に返つておりますから、ほかの者は知つていないはずであります。
  15. 川崎秀二

    川崎委員 国民経済との問題も一応検討した、木村保安庁長官いかに頭脳明晰なりといえど、財政規模あるいは国民経済というようなことにわたつて、しかも専門的な知識を要する警備力の問題に入つてかなり検討したということでありますが、私は保安庁長官並保安局長だけで、これが試案にせよ、まとまつたものとは考えないのであります。保安局長は当然その部下であるところの人々に対し、あるいは外部旧陸海軍のに対して、いろいろと話を聞いたのではないでしようか。
  16. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。国民経済と申しましても、私どもといたしましては、多少の資料を持つて、あるいは国民所得はどうである、これが来年度は国民所得はどの程度まで伸びて行くかということくらいの財政面については、私も多少知識を持つているつもりであります。これを深く掘り下げて研究することは、十分に各省連絡をとつて行かなければならぬのでありまして、今申し上げました通りただ軍に私の見当をつけるためのことでありますから、さような深いところまでは研究していないのであります。
  17. 川崎秀二

    川崎委員 今の御答弁は、それはわかるのです。しかし保安局長は下の者に対していろいろ折衝したのではないかというのです。
  18. 木村篤太郎

    木村国務大臣 保安局長はやつておりません。私の見当をつけるためで、そこまで深くやつておりません。
  19. 川崎秀二

    川崎委員 そうするとその試案なるものを、内部にしても、これを印刷物にされるとか、あるいは文書に残すとかいうような形式はありますね。当然数字に及んでいることですから、あなたの頭の中にしまつておくということはできないと思う。だからそういうものをつくつたことはありますか。
  20. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。これは役所文書に記録として残すべきものではありまんから、さような手続はとつておりません。御承知でありましようが、役所におきましては、整理保存対象とすべきものはちやんとわかつているのであります。これは整理保存対象となるべきものでございませんから、さような手続はとつておりません。もとより文書にいたすのでありますから、単なる鉛筆書きというわけでございませんが、しかしこれは私の方で、整理保存対象とするべきものでありませんから、保存手続はとつておりません。
  21. 川崎秀二

    川崎委員 鉛筆書き程度ではないということでありますから、その点は了承いたしますが、最初のお話によると、いかにもただ両者が考えたものをまとめているにすぎないということですが、総理大臣手元にまで出したというならば、当然これは何らかの文書形式によつて出したものと見なければならぬ。それは今保安庁の中に残つていませんか。
  22. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。それは残つていないはずであります。
  23. 川崎秀二

    川崎委員 そうすると、総理大臣のところへ出した書類は、書類としてはどうですか、そのあと焼却したとか、いろいろな処置をしたのですか。
  24. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは三通私の手元にあります。
  25. 川崎秀二

    川崎委員 今ちよつとはつきりしませんでしたが……。
  26. 木村篤太郎

    木村国務大臣 三通私の手元にあります。
  27. 川崎秀二

    川崎委員 この防衛力計画の作成は、日本側で自主的に考えられたものと思うのでありますが、木村保安庁長官は、現在進行中のMSA交渉と関連して、当然アメリカ側との交渉の際には、防衛計画というものが必要となつて来ると思われますが、思われませんか。
  28. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。MSAは御承知通り、まだ正式に交渉段階に入つておりませんから、交渉経過いかんによりましてあるいは計画を立てなくてはならぬかと考えております。
  29. 川崎秀二

    川崎委員 昨年の十月、アメリカ空軍参謀長ヴアンデンバーグ氏が来訪された際に、あなたは御面会になりましたか。
  30. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。会つておりません。
  31. 川崎秀二

    川崎委員 保安庁の係官でヴアンデンバーグ空軍参謀長並びにその部下の方と会つた事実はありませんか。
  32. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ないと思います。あれば私に何か通知があるはずであります。さような通知は私に参つておりませんから、会つておりません。
  33. 川崎秀二

    川崎委員 ただいまの御答弁に間違いがなければ仕合せであります。それからそれならば従来ヴアンデンバーグ空軍参謀長というような個人でなしに、たとえば岡崎外相が今日言つておるMSA交渉事前交渉はなかつた折衝はなかつたけれども話合いをしたというようなときに、保安庁部下の方で外務省局課長と一緒にアメリカ大使館人々、あるいはその他のアメリカ側の人と防衛計画に関連して話合いをしたことはありませんか。
  34. 木村篤太郎

    木村国務大臣 さよう事実はありません。あれば私に必ず何かの承諾を求めるなり、あるいは事後に報告があるなりいたしますが、さような事実のないところを見ますと、今仰せになるようなことはないと考えております。
  35. 川崎秀二

    川崎委員 大体木村保安庁長官に対する私の前提になる質問はそのくらいでありますが、私は木村保安庁長官警備計画が、初めはないと言つたやつが、あるけれども発表できないということに、だんそれまた答弁も、この予算委員会が始まつてからかわつて来ておる。そこで警備計画内容に近いと思われるものがあるのでありますが、たとえばここに保安庁内部から出たと思われる木村声明の案の内容なるものがある。ちようど木村長官板付において五年後の警備計画というものに対して構想を明らかにしたが、その後陸軍兵力二十万、海上兵力十数万トン、空軍兵力ジェット磯編成四百八十磯というものが、木村長官の言明を裏づけするがごとく出た。その四百八十機の編成と、それから海上兵力十四万八千トンとのちようど基礎になるような数字らしきものがある。これをひとつつておきますが、たとえば戦闘機隊二十一個中隊で四百八十機ジェット機編成輸送機隊七個中隊半百三十五機編成、軽爆撃機隊十六隊二百八十八機編成哨戒偵隊二十三隊三百二十四機編成練習機隊十六隊二百八十八機編成飛行艇隊四隊十六機編成(軽飛行艇)、合計千五百三十一機、海上兵力、巡洋艦五隻八千トン級四万トン、潜水艦四十五隻千六百トン級七万二千トン、駆逐艇四十五隻八百トン級三万六千トン、合計十四万八千トンというものが、ちようど木村保安庁長官板付声明を裏づけするように出た。保安庁内部からのニュースとして同じ構想を持つた積算基礎がここに出ておる。財政でいえば積算基礎です。兵力でいえば兵力量内容というものに合致したものが私の手元にありますが、そういうものを一応構想として考えられておるかどうか、伺いたいと思います。木村国務大臣 お答えいたします。ただいま板付において私が警備計画構想新聞記者諸君発表したるごとく仰せになりましたが、構想発表したことはごうもありません。これは明白な事実であります。私の申したのは、いろいろ計画を立てる過程においてこれは保安庁だけでやれる仕事じやないのだ、申すまでもなくこういう大きな計画を立てるについては財政面からも、あるいは技術面からも、あるいは人員の方面からも、各方面からも検討をしなければならぬ、しこうしてこれは各省にわたることであるから、各省と互いに連絡をとつて、協議決定すべきものであつて、一保安庁においてやるべき仕事じやないのだ、しかしながら保安庁としても警備計画構想だけは持つていたい、これで自分は一応の心構えをつけておいて、そして今後警備力を増加する場合にどう対処すべきかということの案だけはひとつ立てておきたい、その前提過程において自分心組みをひとつつけておきたいというだけのことでありまして、私は記者諸君に対しては構想は何も申しておりません。従いまして今お読みになりましたようなことには何ら触れていないのであります。
  36. 川崎秀二

    川崎委員 私が一番最後質問したのはそういうことではない。こういうものがあるけれども、あなたの考えられたものもこういうものかと聞いているのです。同じものとは聞いてない。
  37. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。私のはそういうものじやないのです。いわゆる警備計画でありまして、日本治安力の増加することを必要とした場合に、どれだけの警備力を増加することが必要であるか、それに対する一応の心組みということで、今仰せになりましたようなそういうことについては触れておらないのであります。
  38. 川崎秀二

    川崎委員 あなたが考えられた構想とは全然違うということの根拠は、自衛力のあれであつて、これはこういうようなことでは、もう厖大な軍備計画だ、こういう意味ですか。
  39. 木村篤太郎

    木村国務大臣 さようであります。もとより一国として、将来目立して行く上には、さような計画を立てる必要もあるかもわかりませんが、私の何したのはさようなものではないのであります。
  40. 川崎秀二

    川崎委員 木村保安庁長官に対する質問はこれで終ります。実は警備計画と関連して、岡崎外相警備計画の問題に直接触れた部面についてお聞きしたいのでありますが、どうかお答えを願いたいと思います。  外務大臣は今までMSA折衝をされる場合に、予備折衝はなかつた、こういうことになつておるわけです。これは最後までそういうことだろうと思うのです。それでけつこうだと私の方も思つております。それはわれわれの立場をきめる上において非常にけつこうであるからであります。そこで問題は、安全保障計画日本に適用する場合に、相互安全保障長官というものは安全保障法第五百十一条の規定によつて、こういう措置をとらなければならぬということが書いてあります。すなわち安全保障長官はまた安全保障のための努力が成功するために必要な場合には、各国の相互防衛のためにその産業を動員し、かつその金融予算資本及び政治的軍事的資源を本法の目的に合致させるための十分な措置をとり、また自助と相互協化のため他の適当な措置をとることと認めると書いてあります。これは金融予算資本及び政治的軍事的資源というのでありますから、当然防衛計画というものがなければならないと思いますが、あなたは今後のMSA折衝過程におきまして、当然防衛計画の問題に触れて来ると思いますか。
  41. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいま御指摘のは一般的の規定でありまして、一般的にはどこの国でも原則として軍隊を持つております。従いましてこれに基いていろいろの計画も必要な場合があると思います。日本の場合は一種の例外的な特別の場合でありますから、もちろん交渉してみなければ結果はわかりませんけれども現状においては、私どもはそういう計画を立つべき状況になつていないと考えておりますから、この実情がわかれば、この問題は別に必要がないのじやないか、こうただいまのところは考えております。
  42. 川崎秀二

    川崎委員 この往復交換文書が授受される以前におきまして、つまり六月の二十四日以前において、あなたはアメリカ大使館法律顧問バッシンという人と会つたことがありますか。
  43. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はバツシンという人とは何べんも会つていますが、これは常に宴会等の席上であつて用向きのためにはバツシン氏と会つたことはございません。
  44. 川崎秀二

    川崎委員 それではアメリカ大使館の二等書記官フインという人がおります。アメリカ大使館政治部フイン、こういう人とは会つたことがありますか。
  45. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 フイン書記官も私はよく知つておりますが、これも用向きのために会つたことはありません。
  46. 川崎秀二

    川崎委員 あなたの部下で、この方方にむろん会つておられるし、MSA交換文書が発送される以前に話合いをした人はありますね、確実にありますね。
  47. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 確実にあるということは私もまだはつきり言え召せんけれども、むろんフイン書記官にしても、バツシン法律顧問にしても、日本外務省とは常に接触のある人でありますから、もちろん会つていると思います。
  48. 川崎秀二

    川崎委員 その場合に、このMSA援助を受けるに必要な条件に関連して、憲法問題などで議論をしたことがありませんか。
  49. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はそういうことを聞いておりませんが、もちろんMSAについては、いつも申しておるように、在米の日本大使館でも法文その他について質問をしたこともありますから、どういう点でどういう話があつたか、それは私は承知しておりませんが、いろいろ話をして質問したことはもちろんあると思います。
  50. 川崎秀二

    川崎委員 私は質問してこれであなたから引出そうとは思いません。それで、私の方で今まで入手した公的な文書によつて、あなたとあるいはあなたの部下アメリカ側がすでに往復文書の前において、単なる情報の交換とかそういうものでなしに、重要な話合い出しておる、あなたの言うように確かにコミットはしておらぬ、こういうことの証拠をこれはわれわれの側ではなしに、あなた方の官庁から出た文書によつて今から読み上げますから、これについての御感想をあとで承つておきます。  五月三日ダレス国務長官日本MSAを適用すると言明したと報道されているが、アメリカ大使館法律補佐官バツシン氏はその見解として、大統領がかかる政策を公式に決定した後は、米議会に対してそのための予算案提出の問題だけとなり、議会予算を可決すれば、国側としてはMSP……これはあなたの方ではMSAでなしに、MSPと書いてある。相互安全保障計画、プランという意味でしよう。  MSP日本に適用し得る体制となると語つている。   しかしMSP日本に対して具体的に適用されるのは、さらに日米間に相互援助協定を結ばねばならない。この際上記の相互安全保障法第五百十一条とわが国の戦力保持を禁止する憲法第九条との関係が問題となる。バッシン氏の意見によれば、憲法解釈日本政府の問題であり、日米相互援助協定を締結した場合、これが憲法に抵触するか、あるいは憲法改正は、日本国内問題と解釈すると語つている。   MSPが適用される場合の援助形式については、バツシン氏によれば、日米相互援助協定締結日米代表者により交渉されてきまることになるが、日本現状からして、陸海空軍がなく、しかも工業水準が高いところから見て、おそらく完成兵器供与軍事技術訓練の実施、機械原料供与による防衛支持援助が中心となり、TCA……TCAというのは何でもアメリカ技術協力局がやつて)る計画のことをTCAと呼んでいるそうであります。  TCAが行つているようなポイントフォア計画は、日本には適用にならないのではないかと語つている。これは外務省のだれかと語つたわけですね。  また域外調達については、日本防衛産業現状及び将来の規模の問題、日本の持つべき防衛力の大きさにも関連して、これも日米相互防衛協定締結後双方で協議して決定される問題であると表明している。明らかにこれはその前においてこういう見解発表もあり、非公式にしろ交渉があつたものと認めなければならない問題であります。またさらに重大な点は、最後相互安全保障協定を締結する場合のアメリカ側処置についてであります。そのことについてのアメリカ大使館見解もこれに載つておる。そのわけは第八節に共同安全保障協定締結による日米両国取扱い態度、こういう項目になつておる。それには、アメリカ大統領MSP日本に適用することを決定し、米議会がこのための予算を議決しても、MSPによる援助日米共同安全保障協定が締結されねば具体化しない。米大使館政治部フイン二等書記官は非公式に憲法第九条の問題もあり、必ずしもミユーチユアル・セキユリテイ・アクト第五百十一条の文字に拘泥せず、たとえばミリタリーという表現を避けつ内容的に日本防衛力強化という趣旨が実現されれば米国側は満足すると語つている。但し米国とMSPの被援助国間の共同安全保障協定の例を見れば、内容は次のようなものであり、日本にもこれは適用されることになるであろうと言つている。  (一)両当事国の合意する援助を米国がミユーチユアル・セキュリティアクトの条件により、国連憲章及び被援助国の防衛のために供与し、被援助国はこれを米国の許可なくして他国に譲り、または他目的に使用しないこと及び米国において不足している原料半製品で、両当事国の合意するものを被援助国が米国に供与する。  (二)被援助国は防衛力充実をすること及び米国より受けた援助を有効に使用すること。  (三)機密漏洩防止の措置をとること。  (四)特許権技術の相互使用についてとりきめをすること。  (五)米国が被援助国において使用する通貨に関してのとりきめをすること及び援助物資に対する免税措置をすること。  (六)MSPの事務のため両当事国に駐在する職員の身分に関するとりきめをすること。  以上の項目は、いずれの国との共同安全保障協定においても見られるものであるが……。と述べておるが、そのほかに特殊事情により合意によりいかなる条項を挿入するも自由である。   協定成立後、日米両政府の協議により援助が具体化するわけであるがその機構についてアメリカ大使館法律補佐官バッシン氏はその見解として、委員会のごときものを設け日本側外務省保安庁、大蔵省、通産省等の高官、米国側は大使館、極東軍等の代表が出席し、さらにその下に具体的な問題を取扱う小委員会が設けられることになるのではないかと述べている。これはMSA正式交渉前の文書です。(「情報だろう」と呼ぶ者あり)情報ではない。情報どころではない。相互安全保障協定には——これはあなた方の官庁の中から出た材料だ。こういうことをどうしてやつておるのか。しこうして私はあなたに聞きたいのは、これでもあなたは共同文書往復する以前において事務的研究の段階であつたと言うか。
  51. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 あなたの持つておられる文書は、私も通産省から見せてもらいましたが、おそらくそれじやないかと思います。それであるならば、今二点を主として述べられたが、第二点の方は、相互安全保障法等を研究すれば出て来る問題でありまして、何も事新しい問題じやありません。第一点のところに憲法を改正するとかしないとかいう議論があります。これについてはどうも私もふに落ちない点がありますから、多分そのお持ちになつておる書類だと思いますが、通産省からもらいましたから、これについてただいまどういう話をだれがどういうふうにしたのか調査中でありますが、おそらく私の申しているような予備折衝には入つていないことはもちろんであります。ただMSA内容外務省としては伺いただしておるのであつて予備折衝でないことはそれからも私は言えると思います。というのは、こちらの意見は出ていないようでありまして、先方がいろいろの意見を述べておるようであります。しかしこれはさらによく調査をしましてお答えをいたします。
  52. 川崎秀二

    川崎委員 通産省のものであるかどうかは私は言えない。言えないが、多分こういうものの基礎は通産省がかつて折衝して、それだけで出て来るものではない。大本は外務省なんだ。外務省が相当深く入つていろいろなことを研究し、すでに情報をあげて、こちらの意見も出し合つておればこそ、こういうものが出て来るのだ。元がなくて末の方が流れるというわけがありますか。じようだんも休み休み言つてもらいたい。しかしそれらはすべてわれわれは、今までのあなた方の質問答弁においての言いのがれや、その他の場面において食言したことを、十分承知しておるのであるから、私らが判断すればいいことであつて質問はこれで終ります。
  53. 尾崎末吉

    尾崎委員長 横路節雄君。
  54. 横路節雄

    ○横路委員 保安局長質問をいたしたいのですが、六月二十二日、武藤委員質問に答えて、保安局長保安庁長官より警備計画の立案を命ぜられ、そしてこれが作業して、その立案したものについては保安庁長官に提出したと答弁しておるのであります。そこでそのことについて私はお尋ねをいたしますが、保安庁長官から警備計画について立案するようにと命ぜられましたのは、何月ごろでございましようか。その点について第一番目にお尋ねをいたします。
  55. 山田誠

    ○山田政府委員 五月の下旬でございます。
  56. 横路節雄

    ○横路委員 重ねて保安局長にお尋ねいたします。五月の下旬ごろそれを命ぜられたと言いますが、その作業、立案するにあたりまして御相談にあずかり、しかもやはり詳細な作業であつたろうと思うのでございまして、保安局長お一人でやつたわけではないと思うのでございます。従つて保安局長のほかに一体どういう人々がその警備計画の立案に携わつたか、お教えをいただきたいのでございます。
  57. 山田誠

    ○山田政府委員 資料はかねてから保安局の調査課で集りておりますので、調査課長から資料を集めまして私がまとめました。
  58. 横路節雄

    ○横路委員 それでは保安局長にお尋ねいたしますが、保安庁長官から立案を命ぜられたというのは、よく保安庁長官が木村試案だ、木村試案だと言うから、何か保安庁長官が厖大な立案計画を出されて、保安局長にこれでやれ、こういうように命ぜられたのであるか、それであれば木村試案であるということも一応は成り立つかと思つておりましたら、ただいまの保安局長のお話では調査課ですか、調査課長のところで集めておりました資料に基いて保安局長がそれをとりまとめて保安庁官長に出されたというお話でございますが、そういうようになつておりましようか。
  59. 山田誠

    ○山田政府委員 長官から立案の趣旨の御下命がございましたので、その御下命に基きまして、かねてから調査課にあります資料の必要なものを取上げまして私がまとめたわけでございます。
  60. 横路節雄

    ○横路委員 保安局長にお尋ねいたします。保安庁内部に制度調査委員会がありますが、その構成はどういうことになつておりましようか。
  61. 山田誠

    ○山田政府委員 先般大臣からお答えがありましたところでございますが、制度調査委員会の構成は、保安庁の次長、第一幕僚長及び第二幕僚長をもつて構成いたしております。
  62. 横路節雄

    ○横路委員 保安局長にお尋ねいたしますが、五月の下旬ごろに保安庁長官から立案を命ぜられましてとりまとめまして、この前純方副総理のお話ですと、もはや木村保安庁長官からすでに吉田総理に出されてあるその警備計画の案については六月六日に緒方副総理に返されて、緒方副総理から木村保安庁長官に返されておるというのですが、そうすると提出された日にちは六月の五日前だと思うのであります。     〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕 そうすると五月下旬に立案を命ぜられて、六月の五日前に提出されたということになりますと、一週間足らずで立案したということになりますが、そんなぐあいでございますか。
  63. 山田誠

    ○山田政府委員 内容がきわめて雑なものでございますので、ほぼ一週間で作業いたしました。
  64. 横路節雄

    ○横路委員 保安庁長官に提出されました場合には、何かあれでございましようか、タイブで打つたものでも出されたのございますか、鉄筆ででも書かれてまとめて出されたものか、その点についてひとつお尋ねいたします。     〔「よせよ、みつともないよ」と呼び、その他発言する者多し〕
  65. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 静粛に願います。
  66. 山田誠

    ○山田政府委員 タイプで作成いたしました。
  67. 横路節雄

    ○横路委員 私は保安庁長官にお尋ねいたしますが、十二日閣議終了後、保安庁長官は内閣記者団に対して、さきに九日の朝福岡の宿舎でございますか、発表した内容については、これは自分としては了承できる、但し防衛計画五箇年案というようなものではないが、その内容については新聞に書かれてあるものと大体同じだということを発表されておるのでございますが、間違いございませんでしようか。
  68. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。新聞記者団とのやりとりはそう正確なものじやありません。あらためて申しておきます。そこで私の申したのは、二日市において新聞記者団と会見したのは事実である——新聞記者団には私はある程度のことを申したのであります。その申したことは真実である、但し警備五箇年計画などということは自分言つた覚えはない、こういう趣旨であります。
  69. 横路節雄

    ○横路委員 保安庁長官にお寺ねしますが、私は、防衛五箇年計画というようなことについては、今保安庁長官が言われたように、言つたことはない、しかし新聞に出ている内容はその通りだというように言われているのですが、それで間違いございませんかと聞いているのです。防衛五箇年計画案というのではないのですよ。
  70. 木村篤太郎

    木村国務大臣 防衛五箇年計画内容については発表した覚えはない、但し二日市において記者と会見した談話の内容については間違いない、こういう趣旨であります。
  71. 横路節雄

    ○横路委員 保安庁長官にお尋ねしますが、新聞に出ている内容について間違いないというので、私はその内容についてお尋ねをしたいのです。まず第一番目にお尋ねいたしたい点は、いわゆる自衛戦力は違憲でないという点については傾聴に値すると、こう言つている、私は、この傾聴に値するという言葉の持つ意味は、十分研究してみなければならぬ、研究してみてよかつたら、やはりそういう解釈も成り立つのだから、そういうものも取入れなければならぬという意味だと思う。そうでなければ、自衛の戦力は違憲でな、というような考え方は、明らかにものの考え方としてははなはだよくないのだということにならなければなりませんのに、はなはだ傾聴に値するということになれば、これはやはりよく研究したい、なお研究した上で、これを取入れるならば取入れてみたいというような考えにも聞けるのですが、この点については新聞記者団に発表した内容と、本委員会で発表した内容と一致しておりますので、この点についてお尋ねいたします。
  72. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。私は今の点につきまして、傾聴に値するいうことは確かに申しました。と申しますのは、私は、最近においていわゆるこの権威者であります佐々木惣一博士の系統に属する瓦子徒が有力な議論を発表しておりますが、それは分析的にまことによくできている、従いましてその議論は傾聴に値すると言つたのです。傾聴に値するということと、それを自分はただちに採用するということは、全然別個の観念であります。
  73. 横路節雄

    ○横路委員 なおこの点につきましては緒方副総理も、この木村保安庁長官の談話が発表になり、自衛の戦力については違憲でないという点につきまして、やはり同様記者団に対して、私も木村保安庁長官の、自衛の戦力については違憲でないという点は傾聴に値するというその点についてははなはだ同感であると、こう言われているのですが、その点そう言われておりますか。     〔「何べんやるんだ」「この間やつたじやないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  74. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 静粛に願います。
  75. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 新聞記事は往々にして正確を欠くことがありますので、新聞に現われているものは私の言つた通り出ていない場合が相当あります。今御質問になりました点は、先般もどなたかにお答えしたと思いますが、そのとき何人かの新聞記者が、この全体の——当時木村放言と言つておりました、木村放言よりも、この憲法の問題に関する点の方が重大でないかと申しますから、憲法に関する問題は、ただいま保安庁長官から申しましたように、ただ傾聴に値するということを述べてあるだけだ、これは全体のいわゆる放言の方が大きな問題であつて、この方はそれに比べてはずつと小さいということを言つたので、それを是認した意味は少しも言うておりません。
  76. 横路節雄

    ○横路委員 私は保安庁長官にお尋ねします。おとといの六日の日、私は本委員会で吉田総理にお尋ねをしたのですが、いわゆる自衛の戦力は違憲でないという点については、あなたは傾聴に値すると言つているが、総理はまつたく傾聴に値しないと言つている。それはどういう意味かというと、アメリカの駐留軍が駐留を必要としないで、保安隊が直接侵略に対抗できるようになつた場合、いわゆる自衛力を十分に持つた場合、それは明らかに戦力保持だ、その戦力保持の場合には、いかようなことがあつて憲法改正をしなければならぬと言つておる。その点について、あなたの自衛の戦力については違憲でないという点は傾聴に値するというのは、総理がお考えになつておる、いかようにおいても戦力を持つことにおいては憲法を改正しなければならぬという総理の確固たる信念と、はるかにほど違いと思う。この点についてあなたの意見を明らかにしていただきたい。
  77. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。私は前国会においても、本国会においても、引続いて戦力を持つ場合においては憲法を改正しなければならぬと申しております。ただこの問題についてそういう学説がある。その学説は学問として傾聴に値すると言つて、私は何ら矛盾しないと思います。
  78. 横路節雄

    ○横路委員 私は保安庁長官に今の点重ねてお尋ねしますが、戦力という場合に、自衛の戦力とか侵略の戦力とか、そういうようにわけて考えられるものでしようか。総理は戦力はいかようにあつて憲法改正をしなければならぬと言つておる。そこで保安庁長官がもしそういう考えであるならば、傾聴に値するというようなことをおつしやらないで、自衛の戦力であつても、これを持つ場合においては憲法を改正しなければならぬというように御答弁願いたい。傾聴に値するとかしないとかいう言葉のごまかしでしないでもらいたい。
  79. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。私はこの議会において議会の諸君に対して傾聴に値するという言葉は使つておりません。終始一貫戦力を持つ場合には憲法を改正しなければならぬと言つております。ただ学説として傾聴に値すると言つて何が不都合がありますか。
  80. 横路節雄

    ○横路委員 何が不都合があるかと言うから私はあなたに聞きたい。いかような戦力を持つて憲法改正を絶対に必要とするというのがあなたの信念であるならば、そういう学説に迷わされないように、そういう学説は傾聴に値しないとはつきり言つたらいいじやないか。     〔「何を言つておるか」と呼び、その他発言する者多し〕
  81. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 静粛に願います。
  82. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。反対説であつても、それは分析的に学問的に考えてりつぱな議論であれば、傾聴に値するということはしばしば言うことであります。反対論だつて傾聴に値すると言います。
  83. 横路節雄

    ○横路委員 私はあなたにお聞きいたしておきたい。傾聴に値するという日本語の持つ意味は、よく研究してそのことが正しかつたならば、取入れてもよろしいという意味なのです。  その傾聴に値するということは、ただ学説だから何でも聞いておけばいいというのではないのです。これはあなたが明らかに保安庁長官として発表する場合に、よしんば国会でないにしても、新聞記者団に発表したことはその通りであると言つている。いわゆる戦力を持つには憲法を改正しなければならぬというはつきりした態度を表明してもらいたい。あなたは傾聴に値するということを言うが、日本語の持つ傾聴に値いするということは、研究してよければ、その通りつてもいいということなんです。
  84. 木村篤太郎

    木村国務大臣 重ねてお答えいたします。私は終始一貫、戦力を持つ場合には憲法を改正しなければならぬと申しているのであります。ただ傾聴に値するということは、反対論であつてもこれが分析的にあるいはそれを解剖的によくできておれば、傾聴に値するということはしばしば使つておるのであります。これを使つても私は不都合がないと思う。
  85. 横路節雄

    ○横路委員 私は保安庁長官にお尋ねいたしたいのですが、やはりその談話の中で、あなたは十二日の閣議終了後、内閣記者団に対する発表において、志願制度と、それから徴募という点について言及しているわけです。その点につきましてはこういうようにお話をしておりますので、私は一度あなたにお聞きしておきたいと思うのですが、それはこういう内容です。大体毎年の募集の適格者、満十八歳、これが大体一年に九十万人が対象になるのじやないか、そのうち志願によつて採用できる人員というのは、大体十万ないし十二、三万ではないだろうか、そこで現行の二箇年というので行くと、大体二十万ということになるが、現在の憲法のわくではなかなか容易でないので、そこで実際において二十万というようなものについて、どうしてもこれを実現するということになれば、現在の志願制度は財政上無理があるので、まずこれはどうしても徴募制度として考えなければならないのでないだろうか、こういうようにお話をなすつているように私ども拝見しているわけなのです。これは十二日の閣議終了後内閣記者団に対して、その点重ねて記者の諸君から質問されまして、そうしてお答えになつているのですが、その点についてお尋ねをいたします。
  86. 木村篤太郎

    木村国務大臣 それは全然相違しておるのであります。私はここに記者会見においての厚稿を持つておりますから、一応念のためはつきりさせておきます。この募集人員について述べたのでありますがその限界をどこに置くかということについては、一般経済界の好、不況やその他いろいろな条件に左右されることと思われるから、はつきりとは言えないが、毎年の募集適齢者の満十八歳、これは約九十万人であり、そのうち健康上採用できない者と、上級学校へ行く者や、他に就職する者などを除外すると、一箇年の志願によつて採用し得る人員は十万人、多くて十二、三万人を越えないものと思われる。従つて在隊年数を二箇年とすると、二十万人以上の隊員を常時保有することは、現行の法制下では容易なことではないと思われる、こういうのであります。私は決してこれを徴募制にしようとかなんとか言つたことはないのであります。二十万がこの志願制度としては限度であると思う、こう言つたのであります。
  87. 横路節雄

    ○横路委員 保安庁長官にお尋ねしますが、私お尋ねいたしておりますのは今の発表に伴つて、そして十二日の閣議終了後内閣記者団にその点を質問されて、そして内閣記者団の質問に答えている。私が新聞で見たところによれば、保安庁長官は今の点について質問されてこう言つている。計画を実現するには、現在の志願制度は財政上無理があるので、その先決として徴募制度を考えなければならない。私が聞いておるのは今保安庁長官が発表になられた点について、新聞記者から十二日の閣議終了後、重ねてここで聞かれて、今私が申し上げましたような点について、保安庁長官が発表されておるように新聞に見えますので、その点重ねてお尋ねいたしたいのです。
  88. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。それは何新聞の記事か存ごませんが、私の真意はそこではないのであります。おそらくどの新聞にもそう載つていないと思います。
  89. 横路節雄

    ○横路委員 保安庁長官にそう言われますから申し上げるが、十二日の夕方、十三日付の夕刑の読売新聞に今私が読んだ通り書いてある、今保安庁長官はどの新聞にも載つてないというから、何でしたら私は持つて来ておりますからお見せしてもよろしい。
  90. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私はその新聞のことを言つておるのではないのであります。読売新聞は私も見ました。読売新聞は誤解しております。ほかの新聞はすべてその通りつていないのであります。ほかの新聞記者もその記事については多少驚いておるような形勢もあるのであります。
  91. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、保安庁長官に最後にお尋ねしたい点は、保安局長の御答弁でも明らかになりましたことは、従前保安局の調査課において集めた資料の中で、保安庁長官に命ぜられたいわゆる警備計画警備計画については明らかにこれを立案して、総理大臣提出され、総理大臣はこれを緒方副総理に返され、緒方副総理から保安庁長官に返されて、保安庁長官は先ほどこれを三部持つていらつしやるということが明らかになつたわけであります。私たちが本委員会において警備計画の、案として持つているものを出していただきたいというのが、今の経路を通つて保安庁長官が三部保持されている警備計画内容について出していただきたいというのが、本委員会の六月二十六日、さらに今月三日の決議なのです。その点についてなぜ御提出ができないか、重ねて最後にお尋ねいたします。
  92. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。昨日答弁いたしましたように、これはまつたく私の心構えをつくるための試案であります。将来警備計画を正式に立案するにあたりましては、私としての一つ試案を持つていなければならぬ、その研究の段階においての一つ試案であります。これは正式なものでも何でもないのであります。もとより保安庁としては、将来警備計画は立てなければならぬと考えております。それまでの前提の一私の試案として心棒えのものをつくつたにすぎないのであります。これは公表すべきものではないと思つております。
  93. 横路節雄

    ○横路委員 保安庁長官に最後一つだけ聞いておきます。今の試案という意味ですが、それは木村試案というのか、保安庁長官試案というのか、どちらか。あなたは試案々々と言いますが、その持つ意味がいろいろ違つて来ますので、その点木村試案とでもあなたは解されておるのか、それとも保安庁長官試案というのですか、お尋ねいたします。
  94. 木村篤太郎

    木村国務大臣 もとより私は保安庁長官でありますから、保安庁長官としての試案であるとお考え願つてさしつかえないと思います。
  95. 横路節雄

    ○横路委員 ただいま保安庁長官としての試案であるという点が明らかになりましたが、この点は、本委員会においてもそれを要求しておるのでございます。時間もありませんから、これで終ります。
  96. 小峯柳多

    ○小峯委員長代理 中村高一君。
  97. 中村高一

    中村(高)委員 木村保安庁長官警備計画についてお尋ねをいたします前に、外務大臣がお見えになつておりませんが、外交に関する問題につきまして、一応長官にお尋ねいたしておきたいと思うのであります。  それは島根県の竹島の問題であります。海上保安庁の巡視艇を竹島に出したのに対して、韓国政府は竹島に海軍の艦艇を派遣することに決定をしたというような通信が出ておるのであります。韓国側の主張では、最近日本側が韓国の漁船及び漁民をとらえたからこれを保護するためだ、こういう発表をいたしておるようでありますが、海上保安庁の巡視艇が竹島に出ておりますかどうか、お尋ねをいたしておきます。
  98. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。それは私の管轄ではないのでありますが、しかし海上保安庁の船は出ておるというように私は聞き及んでおるのであります。これははつきりしておりません。
  99. 中村高一

    中村(高)委員 今すぐに即答ができないかもしれませんからお調べを願うといたしまして、われわれとしては、こういう問題について、両国の間で双方から船を出し合つて不祥な問題が起るということは、極力避けねばならぬものだと思うのであります。詳細はいずれ外務大臣からも報告を得たいと思うのでありますが、緒方副総理が見えておりますから、この問題について知つておりましたら、緒方副総理からお答えを願いたいと思います。
  100. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えいたしますが、私はまだ何の報告も受けておりませんので、今お答えをいたしかねます。
  101. 中村高一

    中村(高)委員 昨日武藤委員から書類、記録の提出についてお話がありましたが、この問題はほかの問題にも関連をいたしますので、もう一つこの点を、警備計画についてお尋ねをする前に、法制局長官にお尋ねをいたしまして、今後委員会におきまして、政府に必要な書類を要求する場合もあると存じますので、これをもう少し明確にいたしておきたいのであります。     〔小峯委員長代理退席、委員長着席〕 これは保安庁関係書類ではありませんが、昨日問題になりました河野一郎君の質問に関連をいたしまして、対米債権の問題に関連いたした際にも、私は資料の要求をいたしておきました。その内容として韓国に日本政府が売り渡しましたところの売主の氏名であるとか、あるいは荷物を発送した文書、あるいは政府の支払いに関する証書というようなものの請求をいたしておきましたが、こういうものに対して政府は提出する義務があるかどうか、まず法制局長官にお尋ねいたします。
  102. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 昨日二度繰返して申し上げたのでございますが、そういう種類の資料の要求は、今までの私の長い経験から申しましてたびたびあつたわけであります。これは法制に照してみれば、いわゆる非公式の御要求であると私は考えますが、それらに対して今まで何ら摩擦のあつたことを承知いたしません。お出しすべきものはお出し申し上げます。あるいはどうしてもでないものは、かようかくかくという理由を申し上げて、それならばやむを得ないということで、御了承願つて円滑に参つておるわけであります。今昨日の例を御指摘になりましたが、これは法律的には公式のものではないと思います。
  103. 中村高一

    中村(高)委員 私は昨日の問題を聞いておるのではなくて、衆議院規則によると、委員会は「内閣、官公署その他に対し、必要な報告又は記録の提出を要求することができる。」とあるのでありますが、昨日問題になりましたような資料は、この「記録」に該当するかどうか、法制局長官にお尋ねしておるのであります。問題の内容を聞いておるのではないのであります。
  104. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 私昨日初めて伺つたような次第でありまして、実体を突き詰めておりませんので、責任あるお答えはいたしかねます。
  105. 中村高一

    中村(高)委員 長官としては答えられぬというならそれまででありますが、あなたは法制局の方を担当しておるのでありますから、法律論としては答えられるはずでありますが、おそらく影響するところを考えて述べないのだと思うのであります。昨日問題になりました記録は、あなたの御意見だと、整理保存対象となるものが記録であつて整理保存対象にならないものは記録とは言えないというお言葉でありましたが、これはあなた個人の御見解でありますか、それとも国会における先例あるいは解釈、あるいはそういうような法律論に基いた御答弁でありますか、その点をお答え願いたいと存じます。
  106. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 ただいま申しましたように、そういうことで今まで円滑に来ており、また今後も円滑に実際上の話合いで行くのがほんとうのあるべき姿だと思います。たまたまこういうことが表ざたになつて、そうして法律上の言葉をさらけ出して、その範囲がどうのこうのと言うことは、私としては実は忍びないと思います。しかし単刀直入にお尋ねがあれば、これは冷静なる法律判断によつてその言葉の意味を解明せざるを得ないのであります。その立場から申しますと、これは私個人の意見ではないのであります。これは法律職員と申しますか、法律に携わつておる者の立場と、政府の見解というものとを総合しての結論を昨日申し上げたわけであります。ただ今お言葉にありましたように、そういうものに限ると言つた覚えはないのであります。そういうものを中心とした観念であるが、今度のものはそういうものにはほど遠いということを昨日申し上げたわけであります。
  107. 中村高一

    中村(高)委員 とうてい今のようなあいまいな答弁では、われわれは満足することはできませんが、われわれは衆議院の規則に基いてこの問題については対処すればいいことでありますから、問答はその程度でおしまいにいたしておきます。  それでは木村長官警備計画に関しまするお尋ねをいたしたいのでありますが、例の委員会におきましてわれわれが提出を要求いたしました文書については、今も横路君からいろいろ追究をされましたけれども、昨日来提出をしないという方針のようでありますが、われわれは長官がああいうようなものは一つ試案であつて、庁議にも諮つておらないし、あるいは関係省とも協議をしておらぬというようなことをきのう答弁をしておられました。きようは保安局長あるいは保安課というようなものから資料を出させて自分心構えをつくつたと、こういうことでありますが、聞くところによりますと、木村長官が新聞社に発表いたしたもののような、これと同様なものがアメリカに出て、これが発表をされておるというようなことを輝いておるのであります。おそらくそんなばかなことはないと言われると思いますけれども、こういうものが文参書でなくとも、計画自体はアメリカにすでに何らかの形で通告をされておるものではないかどうか、この点をお尋ねいたしておきます。
  108. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。私は新聞記者諸君には発表いたしておりません。さようなものはアメリカヘなんかにも、また私の方から出ておるはずはないのであります。
  109. 中村高一

    中村(高)委員 これからMSAの協定に進行をいたして参りますと、実施の細目について当然アメリカ側と協定が進んで行くものだと思うのでありますが、これに対してはむろん日本からも警備計画というものを出さなければ、MSAの実施の細目についての協定は進行をしないはずだと思うのであります。おそらく保安庁においてもその点については十分考慮の上に、木村長官試案でない保安庁の案というものが、まとめられつつあるのだと思うのでありますが、これはどの程度に進行して、いつごろまでに一体保安庁で正式に検討しておられます案がまとまるものでありますか、これをお尋ねをいたしておきます。
  110. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。このMSAの問題は、今後アメリカとの折衝を待たなければ、われわれとしては何とも答弁のしようがないのであります。今後の折衝の推移にかんがみまして、計画を立てるべきものがあれば立てたいと思います。
  111. 中村高一

    中村(高)委員 長官は今後の折衝の推移に基いてと言うのでありますけれども、いかにもその場限りの答弁のようでありまして、いやしくもアメリカとの間に重要な協定を結ばれるというのに、何も案がなくて今後の折衝に臨むというようなばかなことがとうていわれわれには考えられないのであります。この点は正直につくつてはおるけれども、まだ言明をする時期に達していないというならば、これはわかるのであります。むしろ真剣に検討をすることが当然だと思うのでありますが、何にもなしにその都度交渉の経過に応じて折衝をするというようなことはあり得ないことだと存じますが、案を発表できないというならばこれはよろしいが、真剣に案をつくつておるならばおるということくらいは、この委員会でいやしくも長官として、言明をするということが当然だと存じますが、いかがでしようか。
  112. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。われわれはMSAの問題は別個といたしまして、われわれ日本国家がまずもつて国内の警備体制をどうして行くかということが先決問題であろうと思います。そこでわれわれといたしましては、ぜひにこの警備計画ともいうのを策定いたしたいと考えているわけであります。MSAの問題はアメリカの出方がまだどうなるかはつきりわからないのであります。それを想定してアメリカはどのくらいのことを援助するかということを今われわれの頭に置いてやれるわけはないと思います。その点についていわゆるMSAに関連せる計画というものは、今策定の段階にも至つておりません。
  113. 中村高一

    中村(高)委員 私がお尋ねをいたしておるのは、保安庁自体が計画を持たないというはずはないではないかということを聞いておるのでありまして、あなたが自分でつくつた試案というものも、やはり計画を持たなければならぬという必要があつて、つくつておることだけは明らかであります。五箇年計画というようなこともあなたの立場になれば私はあり得るのだと思うのです。MSAの問題を対象としてやる、やらぬは別といたしましても、少くとも今後の保安庁の漸増計画というものは、総理からも長官からもたびたび言われておるのでありますから、その計画が全然ないというようなことは、われわれはあり得ないと思いますので、やつておるか、やつてないかという、計画を立てておるか、立ててないかというようなことはそんなことは何もびつくりしたり心配をする必要はないのでありますから、五箇年計画なら五箇年計画、その内容はまだきまつておらぬけれども、あくまで国内の治安を保つためには、今後こういう計画は必要だというようなことを、計画を立てておるというようなことは、答弁してもさしつかえないではありませんか。
  114. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいまします。ただいま申し上げた通りであります。中村さんのさつきの御質問は、MSAに関連してどういう計画を立てておるか、立ておるのじやないかという御質問であるから私はこう申し上げたのであります。もとよりわれわれといたしましては、国内の平和と秩序を維持する上において計画を立てなければならぬのであります。そこで木村試案なるものは、これはまず前提の研究条件としての心構えをつくる。今後保安庁において正式に各首脳部が集まつて成案を得たいとせつかく研究中であるのであります。
  115. 中村高一

    中村(高)委員 MSAの問題についても、これは保安庁に重要な関係があるのでありますが、今後立てられます計画について、MSAの方では、一九五七年で軍事援助は打切られるというようなことも発表をされておるのでありますが、もし日本保安庁計画が、MSA援助を問答にいたしております場合においては、もし打切られるという場合には、大きな財政上の変化が来るということも予想せられるのでありますが、こういう点について、今後軍事援助というようなものが続くといたします場合と、打切られます場合とについて、政府は考慮しておられますかどうか、お尋ねいたしておきます。
  116. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。ただいまの御質問は、やはり前の御質問と同じような御趣旨と考えます。MSAの問題につきましては、将来どうなるか、今のところはわれわれは予想もつきかねるのであります。アメリカがどういう内容を持つた援助日本にするかということは、保安庁といたしましては、何ら今わかつておりません。それを目途にいたしましてわれわれが計画を立てるということは、できかねるのであります。しかしながらMSA援助関係なく、日本が将来治安力を増加する場合において、どうしたらいいかということについての計画は立てなくてはならぬ。これは当然の事実である。そこで私はそれを立てる前提として、一応の自分心構えだけをしておきたい。そうしここれは衆知を集めて研究したい。これを研究するにも、いろいろ各方面の材料を要するのであります。ただ保安庁だけでは行きません。財政計画も立てなければいかぬし、あるいは生産計画も立てなければいけない。また技術面の研究もしなければいけないのであります。それをどうするかということで、われわれは今せつかくこれを研究中なのであります。
  117. 中村高一

    中村(高)委員 渡されました本年度の保安庁予算の要求明細書によりますと、保安庁が要求した金額は、査定をされた、今度の予算に出ております七百十八億というような金額ではなくして、一千二百二十四億というような、非常に多額な要請をいたしておるようであります。これも漸増計画に基いた計画が基本になつておると思うのでありますが、本年度要求をいたしました金額は、今後もこうした多額な要請を続けられる御意思かどうか、説明を願いたいと存じます。
  118. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。われわれは大体の目途を立てて予算の要求をしたのであります。従いまして、来年慶においてどれだけかということについては、そのときの情勢いかんを考慮いたしまして、国家の財政計画もありましようから、あらゆる観点からこれを考慮いたして要求をいたしたい、こう考えております。今のところ、それ以上になるか、あるいは減額されるかということについては、即答はいたしかねると思います。
  119. 中村高一

    中村(高)委員 あなたが要求をせられております千二百億という金額は、必要欠くべからさるものとして要請されたと思うのでありますが、七百二十億という本年度の、この出て参りました予算は、これで保安庁としては十分だということでありますかどうか、お尋ねをいたします。
  120. 木村篤太郎

    木村国務大臣 十分とは考えておりません。これは国家の財政計画とにらみ合せて大蔵省で削減したものと考えております。われわれは原案でどこまでも行きたいとは考えておるのでありますが、やむを得ないのであります。
  121. 中村高一

    中村(高)委員 予算関係いたしまして二、三ただしておきたいのであります。現在約十二万に近い保安庁関係人々がおるのでありますが、それは保安官とかあるいは警備官というようなもので、世間でいういわゆる兵隊でありますが、これらに対する給与ベース並びに手当というようなものは、一般に公務員と同様なものであるかどうか、お尋ねをいたします。
  122. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは詳細は経理局長からお答えいたさせます。
  123. 中村高一

    中村(高)委員 それでは別の機会にお尋ねいたします。先般も富士の裾野で保安隊の演習が行われたようでありますが、もし今後保安隊を漸増せられるというようなことになると、おそらく演習場が必要になつて来ると思うのであります。今でさえも米軍の演習場や基地のために、日本の各地の農地あるいは漁場が接収されまして、非常に迷惑をいたしており、住民からは非常な反対のあることは御承知通りでありますが、今後漸増計画が行われます場合に、訓練場とか演習場とかいうようなものを設定する計画がありますかどうか。
  124. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。将来のことはまだ未定でありますが、なるたけこういう農地なんかについて支障のないように処置して行きたいと考えております。なお二十八年度予算において盛り込まれました演習地につきましては、これは予定いたしておるのでありますから、予算が通過され次第、ぜひ設定いたしたいと考えております。しかしこれらにつきましても、なるたけ摩擦のないように、また農民諸君に迷惑をかけないように処置いたしたい。幸いにいたしまして、保安隊の設置につきましては、各方面からいろいろ要求がありますと同時に、この保安隊を育成するについての非常な援助がありますので、演習地の設定等につきましても、きわめて円滑に行き得るのではないかと私は考えております。
  125. 中村高一

    中村(高)委員 今どこかの演習地が予定されておるようなことを言われましたが、どこか予定されておる所がありますか。
  126. 木村篤太郎

    木村国務大臣 予定しておる場所はあります。今政府委員から申し上げます。
  127. 窪谷直光

    窪谷政府委員 お答えいたします。訓練場につきましては、現在調査を続行いたしております。大よその見当もついた地域はございますけれども、まだ予算が成立いたしておりませんので、どこそこというふうに確定をいたした所はございません。
  128. 中村高一

    中村(高)委員 私の聞いておるのは、確定しておる所を聞いておるのではなく、予定しておる所が言えるかどうか。言えないはずはないと思うのでありますけれども、どことどこに演習場を予定しておるか伺いたい。
  129. 窪谷直光

    窪谷政府委員 具体的な場所につきましては目下検討中でありますが、大体の地域から申しますと、北海道に一箇所、総合的な訓練のできます地域をほしいということを考えております。それ以外につきましては、各駐屯地の付近に小さな部隊の訓練をやります訓練場を入手いたしたいということに考えております。従いましてそれぞれの候補地はおおむねは現在の駐屯地の付近ということに相なるかと考えております。
  130. 中村高一

    中村(高)委員 そうすると北海道その他の駐屯地というのでありますが、これは主として昔の軍の設備のあつた所、そういうようなものを大体計画しておりますか。
  131. 窪谷直光

    窪谷政府委員 必ずしも旧軍の施設ということではありません。旧軍の施設は相当部分が開拓地等になつておりまして、これを買いもどすということは非常に困難な地域が相当にございます。従いましてそういうような地域につきましては、むしろそういうものを避けまして、もう少し不便でも山林、原野等というふうなものを物色いたしまして、農耕に対する影響をできるだけ避けて行きたいというふうに考えております。
  132. 中村高一

    中村(高)委員 新たに新しい場所を接収したり何かして、またこれ以上問題を起すというようなことをせずとも、現在米軍が使つておる所などを使わしてもらう。たとえば富士の裾野でも、ああいう所を使わしてもらつて、新しく接収するというようなことを避けられる考えはありませんか。
  133. 窪谷直光

    窪谷政府委員 米軍に対しまして、今提供しております演習場でありまして、保安庁において利用可能なものにつきましては、十分に向う側と話をいたしまして、共用をいたしております。今回予算でお願いをいたしておりますのは、地域的な関係からどうしてもそういう訓練場が利用できないというふうな地帯について考えておるわけであります。
  134. 尾崎末吉

    尾崎委員長 ちよつと申し上げますが、時間が相当経過しておりますので、できるだけ簡単に願います。
  135. 中村高一

    中村(高)委員 海上警備隊で使つておりますフリゲート艦、あるいは上陸支援艇というものを、条約を結びまして貸与を受けております。そのうちで半分だけが現在来ておるのでありますが、残りの半分はいつ来ることになつておりますか。
  136. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。全部で六十八隻借り受けることになつておりますが、現在まで借り受けた実数が五十二隻、あとは九月中に全部引渡しされることになつております。
  137. 中村高一

    中村(高)委員 予定の時間が来ておるそうでありますから、まだ残つておりますけれども外務大臣並びに通産大臣に対する質問を保留いたしまして一応私の質問を終ります。
  138. 尾崎末吉

    尾崎委員長 小平忠君より関連質問の申出があります。これを許しますが、簡潔に願います。
  139. 小平忠

    ○小平(忠)委員 木村長官に関連いたしましてお尋ねいたします。長官がこの委員会に提示されました保安庁の二十八年度の当初の予算要求でありますが、ただいま中村委員から質問されましたように、当初の要求は千二百二十四億円であり、これが査定ば七百十八億円と相当大幅な査定がなされているのでありますが、これは長官のお考えとして、常に長官が言明されまた主張されております国内治安維持のために、一体査定された七百十八億円で国内治安の維持については完璧であるとおつしやるのが、それとも当初要求の千二百二十四億円でなければ、絶対に治安の維持はできないとしておられるのか、その点についてお伺いいたしたい。
  140. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。完璧を期するためには要求額が相当だろうと考えております。これは国家財政事情から考えましてやむを得ず削減されたのであります。その範囲内においてわれわれは全力をあげて日本国内の平和と秩序を守るべく、努力をいたしたいと考えております。
  141. 小平忠

    ○小平(忠)委員 そういたしますと、ただいまの長官の考え方は、今後この計画に基いて、当初の要求に基いて今後毎年この要求額を増額される考えでありますか。さらに一点、これに関連しまして先般本委員会で長官が次のように答弁されたと私は記憶いたしております。そのことは、かりにわが国が外国の直接侵略を受けた際、これは国民としてもわが国としても重要なる問題であるから、その侵略を受けた地帯についてはその近い場所にいるところの消防はもちろんのこと、保安隊はみずから出動いたしまして、この外敵の侵略に当るということは当然であると答弁されましたが、間違いございませんか。
  142. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。最初の問題でありますが、これはやはり時の情勢が非常に大きく左右するのであります。国際情勢から内地の治安情勢、これらのことを全般に考慮いたしまして、予算の策定をいたした次第であります。これは将来ふえるともまた少くなるとも今ただちに申し上げることはできません。  第二点につきましては、これは外国からの集団暴徒が侵入して来たときにおいては、全国民はあげてこれに向うことは、私は当然であろうと考えております。従いましてそのときにおきまして、国内の平和と治安を維持させるために保安隊、警備隊の行動することは当然であろうと私は考えております。
  143. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの御答弁によりますと、保安庁の当初要求のありました千二百二十四億という予算要求は、将来わが国が直接侵略を受けた際、ただいま長官のような構想もとに行動するという考え方で、この予算要求がなされたのであるか。それともそういう問題はこの要求の中には含めていないかという点を一点と、さらにこの保安庁関係のいわゆる給与に関する点でありますが、この給与ベースは国家公務員並の同一のベースであるかどうか。予算編成についての基礎をお伺いいたしたいのであります。
  144. 木村篤太郎

    木村国務大臣 この保安庁において組みました予算は、外国の直接侵略の防衛のためではないのであります。申すまでもなく、外国の直接侵略に対しては、日本独自でこれを守るだけの力はありません。よつてアメリカの駐留軍によつてこれを防衛し、日本国内の平和と治安を維持するために保安隊が設置されておるのであります。しかし私はこういうふうに考える。直接侵略の場合と間接侵略の場合と、おそらく同時的なものであろうと考えておる。従いましてそういう場合に、保安隊は安閑としておるわけではない。もとよりこれに対して、私は集団暴徒に対しては防衛の任に当ると考えております。予算の点におきましては、国内の平和と治安を維持するために組まれておるのでありまして、外国軍の侵入に対する防衛ということについては考えておりません。  給与ベースにつきましては、政府委員からお答えいたします。
  145. 加藤陽三

    加藤政府委員 保安庁の職員のうちで、保安官と警備官につきましては特別の俸給表を定めてあります。これは特別の俸給表でございますが、その根拠は、一般職の公務員について定められております俸給表を基礎といたしまして、それぞれ対応する号俸をとりまして、それをもとにきめておひます。たとえば保安監補で申しますと、これは六十号、一等保安正、一等警備正五十五号というふうに一般俸給表の号を基礎にとりまして、これに対しまして勤務地手当の相当額、超過勤務手当の相当額を加え、さらにそのうちから恩給納付金を差引き、それから医療費——これは国の方で直接に医療費を見ることになつておりますが、これに相当する分を差引きまして計算をいたしまして出ております。一般公務員の給与ベースを基礎にしてできておると申すことができると思います。
  146. 小平忠

    ○小平(忠)委員 ただいまの問題については、一般給与を基礎といたすという御答弁でありますが、その内容につきましては後刻その資料をいただければ幸いに存じますが、いただけますか。
  147. 加藤陽三

    加藤政府委員 資料の御要求でございますが、提出いたします。
  148. 小平忠

    ○小平(忠)委員 最後に、もう一点ただいまの私が関連いたしました質問の第一点は終りました。本件につきましては了解を得ない点もありますが、また午後一般質問の際に伺いたいと思います。  次にもう一点関連いたしまして伺いたい点は、木村長官が警備五箇年計画をあくまでも長官の試案であると最後まで主張されておるのであります。そこでお伺いいたしたいのは、六月の五日か六日と記憶いたしておりますが、警備五箇年計画総理手元提出されましたのは、長官自身が提出されて説明されたのか、あるいは保安庁のいわゆる局長あるいは部長において説明されたのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  149. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。総理に渡したのは正式に提出したのではないのであります。こういうプランてもつて自分は将来策定させたいと思つているのだが、どうであろうかという一応の相談なのであります。これは閣議の開かれる前に、ごく短時間において問答のやりとりがあつただけなのであります。正式の提出ではありません。
  150. 尾崎末吉

  151. 小平忠

    ○小平(忠)委員 委員長関連だ。(「もういいじやないか」と呼ぶ者あり)この問題に関連しておる。
  152. 尾崎末吉

    尾崎委員長 それでは他出君待つてください、もう一問許します。
  153. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は木村長官に、参考としてとか、あるいは正式に出したとかいうことを聞いておるのではないのであります。総理手元提出されたその提出の方法をまず伺つたのでありますが、長官はばかに神経をとがらして、参考として出したということでその長官の意図はわかりました。そういたしますと最後に——今委員長から時間もあれだから最後ということでございますから、最後に伺いますが、長官の常識的な考えとして、総理手元提出されるその資料というものが、かりに参考資料であろうと、あるいは正式な資料であろうと、少くとも役所の局長なり部長が一応参画いたしまして、その所管庁の最高責任者である主管大臣が目を通されて総理手元にこれを提出するという考え方については、われわれの常識から申しますと、少くともこれを試案とか参考という考え方をとるわけには参らないのであります。従つてこれは、今後にも及ぼす影響は甚大でありますから、長官がこの取扱いをされた、すなわち保安庁の局長なり部長が参画し、少くとも木村試案でなくて木村長官試案、ぺ一パープランだ、そういうものが総理手元提出された場合の私え方は、あくまでもこれは個人的な、プライヴェートなものとして処理されるのか、あるいは少くとも行政機関のすなわち公文書に準ずる一つの取扱い——これは厳密に法的な解釈になりますと記録であるとか、あるいは議案、議件という取扱いになりますが、そういつた見解について、あくまでも長官はこれを試案あるいは参考として、という考え方のもとに、今後あらゆる角度からこういう秘密的な方法をもつて保安庁の行政を処理されようと考えておられるのか、この点を第二点として伺い、さらこその関連事項といたしまして、本日の新聞にも報道されておるのでありますが、警備五箇年計画試案内容というものについて、新聞の報ずるところによりますと、改進党の川崎君がこの五箇年計画を入手したのだ、そのうちに爆弾動議が出るだろうというような……(「いらぬことを言うな」と呼ぶ者あり)これは新聞のことであります。そういたしますと、これはきわめて重大なる問題になろうと思うのでありますが、かりにそのような資料を議員が入手されているとした場合に、長官はそれでもわれわれ衆議院の議決の要求にあくまでも従わないで、その提出を拒否されるとおつしやるのか、この点をお伺いいたしたいのであります。
  154. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。これは正式の議案ではありません。正式の議案でありますれば、正式の手続を経て、次長を経てそれぞれ各各所管の部署があります。それに対して私は命ずるのであります。自分試案、いわゆる見当をつけるための一つの目標の案であります。これは正式の起案でも何でもありません。総理に出したのは、総理に対して正式の起案文を提出したのではありません。ただこういう案を持つておるが、これで行こうかどうかという話合いにすぎません。  新聞の記事は、私は存じません。しかし政府といたしましては、さような案を発表したことは断じてありません。
  155. 尾崎末吉

  156. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 木村長官にまずお伺いしたいのでありますが、同僚諸君からいろいろ御論議がありましたので、私は簡潔に二、三の点についてお尋ねいたします。  まず最初にきわめて素朴な質問でありますけれども、先ほど同僚諸君からの御質問によつて、木村議案が長官試案になる、そこでその「し案」という字は私か試みかということは、この言葉から来るニュアンスというものが、いろいろな意味において政治的にも、社会的にも響きが出て来るのであります。その点をひとつ承りたい。
  157. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。試案は私案に通ずるでありましようが、私は試みの、つまり見当をつけるための案であります。
  158. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 それでは試みの案というふうに了承いたします。そこで私は木村さんに率直に申し上げたい。一体この問題は、今後MSAの問題の論議の展開その他によつても、結局は試案であろうが、私案であろうが何であろうが——どうも木村さんの日ごろの性格からいつて、あなたは率直に言われる方なんですから、思い切つてお出しになつて、実はこの程度のものだ、しかし今すぐ実施する意思はあるとかないとか、そこはあなたのお考え一つですが、そういう意味で軽くお出しになるというふうになさつた方が、全体のためにもいいのじやないかというふうに、私個人は考えるのであります。きようだだちにそれに対してイエスかノーかということをあなたに求めませんが、その点をひとつお考えになる御意思があるかどうか。
  159. 木村篤太郎

    木村国務大臣 御親切な御提案であります。しかしいやしくも案を立てるという以上においては、あらゆる角度からこれを研究して行かなければならぬのであります。いやしくもそういう未熟なものを出すということは、世間に大きな誤解を招くと思います。これはわれわれは案を立てなればなりません。こう考えております。その一つ段階として、自分心組みをつくるための、ほんとうの見当をつける案にすぎない。こんなものを世の中に出したら、世間はどう考えるかということであります。案ができましたら、私は大いに世間に対して批判を求めたい、こう考えております。
  160. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 そうすると、お出しになる御意思はないようですが、案がほんとうにできたら出そうとおつしやるのであります。そこで私は保安局長にお尋ねしたい。保安局長は先ほどの御答弁で、長官から五月の下旬に命ぜられて、六月の六日には緒方さんの手元に行つている、その場合に、あなたは調査課長と話合いをしてつくつた、こういうことなんですが、それだけでいいのですか。
  161. 山田誠

    ○山田政府委員 調査課長から資料を提出させまして、私がつくりました。
  162. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 そこで調査委員会と  いうものが保安庁の中につくられました。その調査委員会というものは壇原次長を首班として、第一幕僚長、第二幕僚長の三人でつくつた委員会の構成であるということであります。今のあなたのお話を聞くと、単に役所内で調査課長と話合いをしてつくつたと簡単におつしやつていますけれども、実は三人の委員会の下に事務局があつて、あなたはその事務局長という立場でつくつたのではないですか。
  163. 山田誠

    ○山田政府委員 このたびの特命によります案は、さようなものでありませんで、調査委員会とは全然関係がございません。
  164. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 あなたがそういうような御答弁をなさると、私はかえつてつて来る。事務局があつて、あなたは事務局長としてやつておられる。これは今まであなた方の御答弁に出ていない事実なんです。長官も、三人の委員会だけでやつたというふうに、簡単に御答弁なさつて来ている。ところが事務局というりつぱなものがあつてそれには調査課長なりみんな事務局員が入つてつて、あなたは事務局長だ。従つて、あなたは事務局の立場においていろいろな資料を集められた。これは当然なんです。必要なことなんです。たまたま長官から、プライヴエートかどうか知りませんが、そういう下命があつた。そこであなたは、さつそく間に合つて、それらの機関において集めた資料に基いてつくつて出された、こういうふうに私は了解しているのですがどうですか。
  165. 山田誠

    ○山田政府委員 今回の資料は、調査課において集められた資料を中心としてつくつたものでございます。
  166. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 それはその事務局には調査課長や何かも含んでおるはずじやないのですか。
  167. 山田誠

    ○山田政府委員 この事務局は、私が事務局長をいたしておりますが、保安庁内部の各局各課の者が入つてつております。
  168. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 それはどつちでもいいようなものだけれども、そういう点をこれを悪く解釈すれば、ごまかしておる。三人の委員会で簡単にやつたのだというふうに、前に長官はおつしやるけれども、だんだん調べてみると、事務局があつて、あなたは事務局長であり、その幕僚に事務局というものがあつて、それには今の調査課長や何かが入つてつてつた。そのことが悪いというのではない。ただもつとそういうことを、政府委員としては率直にわれわれの前に開陳するのが義務だと思う。そういうことをなるべく伏せておいて、つかれなければ答弁しないといつたような態度はよろしくない。これをあなたに警告したい。これを長官にもあらためて警告を発しておきます。  そこでこれはまた重複するようでありますが、保安庁長官が心構えとしてそういうものの必要を感じて命ぜられた。これはよくわかる。納得できるのです。しかし国家の保安事務を担当しておる保安庁長官がその必要を感ずると同様に、われわれ国会議員もそれを感ずる。これは立場々々によつて角度は違うでありましようけれども、われわれもそれを感ずる。従つてそういう意味からいつても、きわめてプリミテイヴな、未確定、未完成なものであつても、そういうものがあつたらお出しになつたらどうかというような意味を含めて、先ほどあなたに申し上げたのですが、もう一ぺんその点をはつきりお答え願いたい。
  169. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは保安庁としてそういう案ができたということになれば、私は出したいと思います。試案でまだ私の心構えとしてつくつただけで、案も練つていないものを、これを出しますと、世間ではどう見ましようか。保安庁の案なりと必ず見るのであります。そういうことの誤解を招く点から申しましても、私は一個の試案を出すべきものでないと思います。成案ができましたら、さつそく出してごらんに入れます。
  170. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 そうすると、成案ができたらお出しなさるということでありますが、成案を急いでおつくりになるおつもりはあるのですか、それを伺いたい。
  171. 木村篤太郎

    木村国務大臣 なるべく早くつくりたいと思つております。
  172. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 それでは早くつくりたいということははつきりされました。その点は次に譲ります。  そこで一体今の保安庁というものは、もつぱら国内治安に当るものであるということを、今まで各委員からの応答によつて私は了解したのですが、そういうふうに解釈してよろしいですか。
  173. 木村篤太郎

    木村国務大臣 さようであります。直接侵略に対しては、これを防衛するには莫大な費用がかかります。とうてい日本財政力では、まかないきれないと考えております。
  174. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 そうなつて来ると、私はちよつと疑問が起つて来るのです。そうしますと国内の治安にもつぱら当られるということになつて来ますと、しからば国内の治安の内容対象というものは、木村長官は相当勉強しておられるはずなんです。ところが今日の保安隊の国内の配備状態を見ますと、北海道及び九州に重点を置かれておる。日本国内の真の治安の面から見るならば、私は東京なり横浜なり、大阪、神戸というようなこういう地区が最も重要な地区ではなかろうか、かように考えておるのです。時間もありませんので私の方からしやべりますけれども、北海道は十一万人のうち大体三万近くおる。それから九州には二万数千人。ところが東京には少しおるようですけれども、大阪を見ますと伊丹に衛生部隊が千七百人、それか千僧に施設部隊が千六百人、この京阪神の重要な地帯にそういう特殊部隊しか置いていない。こういう配備の状態でそれでいいのがどうか。そういう点から見ると、あなたは国内治安だ、国内治安だとおつしやるけれども、どうも私どもは納得しかねる点がある、この点についていかがお考えですか。
  175. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは警察の方面との関連も考えなければならないわけです。そこで北海道あたりはどうなのか——国内治安と申しましても、突然外国の侵略等が来ないとも限らないのであります。これは別に戦争するというわけでも何でもありません。どんな手が出るかわかりません。それで北海道あたりにおいては相当人口が稀薄で、ああいう厖大な地域であり、また重要施設がある。それに対してわれわれはどう考えるかということで、賢明なる池田さんもこれを御了解くださることと思います。それで神戸、大阪、東京あたりにおいてはそういう国警という手もあるのであります。しかしこれらの点を十分考慮いたし、配備計画について将来研究いたしたい、こう考えております。
  176. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 今の長官の答弁では私は不満足なのでありますが、時間がありませんから私はそう長くやりませんが、北海道には一番多く三万近く行つておる。重点的に配備しておる。ところが今日本に駐屯しておるアメリカ軍隊というものがこれまた北海道に重点的に置いておる。そこへ持つて来て日本の十一万しかない保安隊も、東京や大阪をがらあきにして北海道にやつておる。こうなつて来ると、国内治安だ、国内治安だとあなたはおつしやつても、これは国民は納得できない。こういう意見もいろいろ出て来る。そういう点についてもあなたは十分お考えおき願いたい。また御研究願いたいのです。  そこで私は次に進みますが、これはむしろ緒方副総理にお尋ねをした方がいいと思うのですが、ただいま木村長官にお尋ねしたと同様の意味合いにおいて、われわれは日本の今の治安状態というものは、単なる国内治安の目的でやつておるのではない。これはあらゆる角度からさように見ておる。国民にもさように映じておる。それを政府はごまかして来ておるのです。そこであなたにお尋ねしたいことは、昨年八月の四日、今の保安庁の開庁式が代々木でありました。そのときに吉田総理が長官を兼務しておられて、初代長官としてそこに閲兵式だか閲兵式だか知りませんが、威儀を正してそこへ君臨されて、そこで数千の部隊を前にして訓辞をされた。その訓辞の内容はこういうことを言われておる。前の方は省きますが、国力が許すならばただちにでも軍隊を持ちたい、新軍備へのため、旧来の軍人と違つた幹部の養成が必要である、兵隊をつくり、あとで幹部を教育するのでは時間の上で間に合わないので、警察予備隊から保安庁なつた理由がそこにある。この保安庁こそ新軍備の基である、こういう演説をされている。これは総理大臣は、私も現場へ行つて聞いておつたが、新軍備の基礎であるということを言われておるのです。それでもなおかつ政府は、あくまでもこれは国内の治安目的だけのものであつて、軍隊ではないというふうに今でもおつしやられるかどうか、確かめておきたいと思います。
  177. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えをいたしますが、総理大臣は今お読み上げになつたような考えは今でも持つておられると思います。物心両面の国力が充実した場合には軍備を持つ、ただ、今の段階においてこれはできないということを理由といたしておられるようでありますが、日本の国力が物心とも充実しない間外敵に対する防衛は、日米安全保障条約によつてアメリカの力を借りてやるというのが、今日の総理大臣構想のように私は想像いたしております。
  178. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 そうすると、将来はできれば早く軍隊を持ちたいという構想もとに、あらゆる準備をなさつておる、たとえば保安隊の幹部養成にいたしましても、そういうお考えで進められておる、そういうふうに了解してよろしいのでございましようか。
  179. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 独立した国には固有の自衛権がある、その自衛権の裏づけとしての自衛力、つまり軍備というものを持つのは当然だということを言つておられますが、ただそれを持つのには、今の日本憲法の建前からも、国力の実際の上からもなかなか容易でない。ただ総理大臣が主義としての再軍備論者でないことははつきりしているようでありますから、どういう段階軍備を持つに至るかということは、まだよほど先のことではないかと考えております。
  180. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 これは緒方さんにお尋ねしても少し無理かと思いますからこれ以上申しませんが、そこで最後木村長官にお尋ねします。先ほども同僚委員から話があつたように、最初保安庁から要求された保安庁費というものは千二百二十四億、ところがそれが削られて七百二十億、ただ来年度に持ち越された国庫債務行為負担という面で百億、合せて八百二十億、こういうふうな数字になつております。ところがこれが今現実に改進党の予算修正案を見ますと二百億さらに削られておる。そうなつて来ますと、その場合にそれでも十分努力だけでまかなつて行く御意思か、それじやとうていやつて行けないとおつしやられるか、その点をひとつつておきたい。
  181. 木村篤太郎

    木村国務大臣 さらに二百億を減額されるということでありますと、大きな支障を来すものと考えております。
  182. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 支障を来すということは、それは金が減るのですから計画に支障を来すことはわかつているのですが、その場合に、かりにそれが改進党の修正予算が本院を通過した場合に、あなたはそれで満足なさるか、それとも何か判の処置を考えられるか、これを承りたいのであります。
  183. 木村篤太郎

    木村国務大臣 その場合にはよく考えてみなければわからぬと思います。今何とも申し上げかねます。
  184. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 そこでもう一つ。これはMSAの問題をわれわれこれから審議したりする場合においても必要なんですが、今の武器は先般来のあなたの御答弁を聞いていると、今の保安庁というものは十分に国内の治安を守り得るということをおつしやつたと私は了解しておるのです。ところが問題は今の保安庁で使つている武器というものが、よしあしは別として、その量において六割内外のものを借りておるのです。まだ日本のものじやない。そういう不確定な形において国内の治安を守り、ひいては外敵にも対抗しようというのか。それを一体いかなる形において確定的な、日本が自由に使えるようなものにしようとするのか。その点はどういうふうにお考えになつておるのか、伺いたい。
  185. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。私は前々から申しておるのであります。日本の保安隊員に対しては日本に適するような武器を持たせたい、しかし日本財政力が許しませんから、やむを得ずアメリカのものを借りておるのであります。これは現段階においていたし方がありません。一日も早く日本財政が立て直つて、適当な武器を持たせたいという信念は、今でもかわりはないのであります。ただやむを得ずアメリカから武器を借りて、これによつて訓練をやるより、ただいまのところは道がないのであります。
  186. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 そうなつて来ますと、これはわれわれも情ないことで、実際の問題としてゆゆしい問題なんですが、これを借りておる。ところが現在の段階においては、日米の間においてさような問題は起きておりませんが、もしも一朝アメリカ国内の輿論なりその他に支配されて、この日本に貸し付けてある武器を引揚げるというような事態が発生しないということは予測できない。国際関係というものはいつどういうふうに激変するかわからない。そういう不安定な形において、あなたは保安庁長官として国内の治安を責任を持つて保てるか。その点をひとつ伺いたい。
  187. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。どうか池田委員その他におかれまして責任を持つてやれるようにしていただきたいのであります。私率直に申しておるが、いかんせんしかたがありません。しかしアメリカとの間には、私はそうやすやす日本からこれを引揚げるということは考えていない。また現実の問題としては引揚げないと思つております。
  188. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 これはこまかく議論をして行きますと切りがありませんが、なぜ私はそういうことを特に言うかというと、外務省から出しておる何とかという新聞に、相当なスペースをとつて、かこいもので、アメリカのタイムズ・ヘラルドに非常に反目的な論説が出ておるといつてこれを誇大に宣伝しておる。そのことのよしあしは今論じませんが、そういうような輿論がアメリカに出て来る。それが日本にとつて幸福か不幸かどうかは知りませんけれども、今の治安の関係から見た場合、アメリカから、何らの条約的な協定もなければ何もなしに、好意によつてただ借りているというような形では、これは済まされないと思う。あなたが御心配なさるようにわれわれも心配しておる。従つてこの問題についてMSAとの関連が出て来ると思いますが、たとえばMSAの問題の関連が出て来ない場合においても、このままの形ではいかぬと思う。財政的にはわれわれは自分で持つ力はない、しかたなしに、情ない状態だけれども借りておらなければならないという場合に、そのままで過して行ける問題ではない。そこであなたはひとつ外交折衝なりに移して、そうして正式に日本の所有権として使い得るような形に持つて行こうとする意思があるかどうか。また今までそういう努力をなさつたことがあるかどうか、これも伺つておきたい。
  189. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは将来MSAとの関連において、ぜひとも解決しなければならぬ問題の一つだと思います。しかしMSAの問題については今後の折衝にまたなければならぬ。今のところは何ともいたし方がありません。しかしこの武器の問題についてはどういう形でか解決させて行きたい、私はこう考えております。日本でつくるかあるいはアメリカ援助を受けて、これをもらつてしまうか、その点については皆さんの良識ある御判断にまつほかないと思います。
  190. 池田正之輔

    ○池田(正)委員 解決したいということをまつきり長官がおつしやられた。そうなつて来ると、これは今後MSA問題を論議し、考慮する場合にも当然起つて来る問題なんです。これは御答弁は求めませんが、最後に「青だけ申し上げます。そういういろいろな問題が出て来るから、むしろあなたの性格のようにさつぱりと、これは実はこういうものだ、しかし政府の正式機関ではないから責任は持てないということでお出しになつても、こんな計画はどうだといつたような批判はお互いに避け得ると思う。そういう意味において、私は冒頭あなたにお考えになつたらどうかということを申し上げた。私は決してあなたに悪意を持つてお伺いしたのじやない。これからいろいろな派生した問題が出て来る。しかも根本的には国内の治安をどうするかという問題が出て来る。ですから私はそう申し上げたので、この点をとくと御考慮なすつた方がいいと思う。しかしこれは私一人の見解で、われわれとしてはあくまでもこの委員会において決議をし、要求した問題でありますから、この問題の善後措置については、なお検討した上で論議を進めたいと思います。これをもつて私の質問を終ります。
  191. 尾崎末吉

  192. 武藤運十郎

    ○武藤委員 木村保安庁長官に申し上げます。予算委員会におきましては、予算案審議にあたりまして必要であると考えた結果、再三にわたる決議をいたしまして、いわゆる警備計画なるものを御提出すべきことを要求いたしたのであります。しかるに昨日来木村長官からの御発言を承つておりますと、全然御提出がない、のみならずその内容についてもお示しがない。さらに要求に応じない理由につきましても首肯すべきものがないのであります。従いまして、私は木村長官は行政府の一員といたしまして立法府の決定を尊重してこれを提出しなければならないものと考えるのであります。昨日佐藤長官からも法律上の見解を値いましたが、佐藤長官も政府の一機関である以上は、良心的な立場に立ちまして公平な法律解釈をするのも非常に困難であろうということも想像されますので、これ以上私は佐藤長官から法律論を伺おうとはしないつもりでございます。しかし一言申し上げておきたいことは、新憲法第六十二条が特に国会の国政調査権というものを認めまして、明治憲法にないところの一条を挿入いたしましたこと、さらに最後の九十九条で、政府その他の公務員が憲法を尊重しなければならぬという条文が入れてありますことは、立法府の国政調査権なり行政府に対する立法府の行政監督権というようなものを非常に高く評価をいたしまして、国会が国権の最高機関であるということを明らかに表わした条文であろうと思うのであります。さらに国会法の百四条あるいは衆議院規則の五十六条、二百五十六条というものは、いずれも憲法の基本的な規定もとといたしまして流れ出ました手続規定であろうと私は思うのであります。この意味におきまして、いやしくも立法府であるところの、国権の最高機関であるところの国会におきまして、資料の提出を要求いたしました場合におきましては、昨日も申し上げましたが、それが予算案の審議に関係があるとかないとか、私のものであるとか、腹づもりであるとかいうようなかつてな理由によりまして、提出を拒絶することは許されないものであろうと思われます。こうようなことが続きますこと、行政府というものがまつたく立法府を無視することになるのでありまして、独裁主義に通じるということにもなるのでございましようし、秘密主義の非難も免れないと思うのであります。ことに木村長官の本日のわが横路君などに対する答弁を伺つておりますと、その態度におきましてもはなはだ不遜でありまして、われわれは感心をしないところでございます。何かこう盗人たけだけしいというような感を受けるのでありまして、非常にわれわれは遺憾でございます。私どもは一委員としてこの問題を要求しておるのではないのでありまして、与野党を含むところの予算委員全員の予算委員会の意思に基いて要求しておるのでございます。その出せない理由を申しますにも、おのずから態度があろうと思うのであります。はなはだ遺憾でございます。私は、木村長官が昨日から今日に至るところの各党の質問要求をもう一度再考、三考されまして、本院の意思に沿われることを要求いたしたいと思うのであります。要求に応じなければ、われわれもまた別途考慮しなければならないということをつけ加えまして、私の発言を終りたいと思います。
  193. 尾崎末吉

    尾崎委員長 それでは午後二時半より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時二十二分休憩      ————◇—————     午後三時二十七分開議
  194. 尾崎末吉

    尾崎委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。この際、本委員会の決議によるいわゆる警備計画の資料要求に関する問題について発言を求められております。これを許します。今澄勇君。
  195. 今澄勇

    今澄委員 本日の木村長官答弁によると、まつたく当委員会の決議を無視し、われわれを納得せしむべき何らの理由もなくして五年計画提出を拒否いたしております。われわれはこの予算委員会において、決議をもつてこれらの資料を要求したのであるから、法律的ないろいろの問題はともかくとしても、政治論としては委員長はかような書類提出について、これを厳重に督促しなければならぬのに、委員長はその職務に忠実なるものとは認めがたいものがある。今後の委員長の態度を一言私は質問をいたします。
  196. 尾崎末吉

    尾崎委員長 お答えいたします。資料要求に関する決議につきましては、委員長としてただちに所要の手続をとりますとともに、去る三日の委員会においては、この決議に対するその後の政府の態度をただすために、本件を取上げまして質疑を行い、その結果昨日政府より正式の回答が行われ、また本日さらに質疑が行われたのであります。委員長としまして、決して本決議の取扱いを等閑にいたしたわけでなく、遺漏なきを期した次第であります。
  197. 今澄勇

    今澄委員 われわれはそうした委員長のとりはからいは、委員長が当予算委員会における職務に忠実であるとは思いません。野党各派を代表して、私はこの機会に委員長に警告を発するとともに、政府にこれからわれわれ野党各派が決定をいたしました基本的な考え方を申し上げて、御反省を願いたいと思うものであります。  第一点は警備五箇年計画も年次計画もない政府が、八百数十億の予算を計上して、本年のごとき莫大なる繰越し量を擁しておることは、実に納得しがたいことであつて保安庁の経費は野党各派、各党それぞれの立場は異なるが、もし政府が五箇年計画なりその他の計画書の提出をいたさざる限りにおいては、これが大幅削減をいたすであろうことをここに政府に通告をいたします。(拍手)  第二点は野党各派においては、政府が計画書の提出なき限りにおいては、保安庁法の一部改正法律案が目下内閣委員会に出ておりますが、これが審議を中止することがあるかもしれぬということを政府に申し伝えておきます、  第三番目には、その他保安庁の要求として予算を伴うものについては、今後絶対にこれが審議には野党各派が応じないものであるということを政府に通告をいたします。  最後に一言申し上げますが、この三点の野党を代表しての私の政府への通告は、防衛計画提出なき限りは木村保安庁長官に対して信任できがたいというわれわれの見解の表明でありまして、野党各派は、政府の出方をこれから勘案して最後的な態度をきめるものであるということを申し入れ、十分政府の反省を望むものであります。(拍手)
  198. 尾崎末吉

    尾崎委員長 委員長より、ただいま今澄勇君の御発言の趣旨は、とくと政府に申し入れることといたします。
  199. 今澄勇

    今澄委員 ただいまの野党各、派を代表しての申入れに対して、緒方副総理の御見解を承つておきます。
  200. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 ただいま今澄君から政府へ申入れの御発言はとくと承りましたが、この御発言に基く政府の警備計画発表につきましては、昨日保安庁長官から申し上げました立場を変改するわけに参らないように思います。政府といたしましてはただただ野党各位の御支援と御協力を懇願する以外にございません。
  201. 今澄勇

    今澄委員 ただいま緒方副総理から答弁がありましたが、重ねてこの申入れは野党各派の理事が正式会合を開いて決定いたしました野党各派の正式な態度であるということを申し述べて、政府の善処をお願いします。
  202. 尾崎末吉

    尾崎委員長 加藤鐐造君。
  203. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 私は岡崎外務大臣に対しまして、MSAの問題に関してなお二点ばかりお伺いをしたいと思います。  その一つは、先般の本議におきまするわが党の加藤勘十君の、MSA援助を受けるということになれば、そこにアメリカ側からの内政干渉が行われることになりはしないかという質問に対しまして、外務大臣はそういうことは絶対にないという御答弁でございましたが、私はこの点になお危惧の念を持つものでございます。この相互安全保障法の第五百十一条の(C)の(一)の中に、こういう文句がございます。前の方は省略いたしまするが、あとの方に、最大の、能率と最小の遅延及び費用により実現するよう、被援助諸国の努力を結集するために、米国は引続きその指導権と資源を使用することを希望する云々とあります。この米国が希望しておりまする指導権というものはどういうものであるか、岡崎外務大臣の御見解を承りたい。
  204. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の考えでは、アメリカは——ほかの国もそうでありますが、アメリカは特に世界の平和維持のために、自由主義諸国の結束を強化して行こうということを提唱しておりまして、この問題については、いわゆる指導権と言いますか、アメリカがリーダーシツプをとつて各国に呼びかけておるのであります。この意味で各国に今後とも呼びかけて、自由主義諸国の、一口に言えば結束強化でありますが、この方向に向つて進もう、こういうことだと考えております。
  205. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 外務大臣は、単に幾つかの国が、いわゆる集団的に防衛態勢を整えて行く上においての結束するための指導権という意味に解せられておるようでありますが、私は単にそういう意味に解するといたしましても、内政干渉が行われるのではないかと考えます。結束を強化するということ、そしてそれは一方におきましてMSA援助を実行して行く過程において、それぞれの国の自衛力の強化と集団的防衛力の強化というようなことが、至るところにこの法律にうたわれております。その援助を与えられた国が、その与えられた援助によつていろいろと防衛力の強化を行つて行く過程において、これは当然国内の政治問題でございますが、そうした国内の政治問題にいろいろとこの指導権を振うということになると思います。岡崎さんは言葉のあやで、国と国との結束を強化するという、きわめて概念的な意味だけに限るような言葉をおつしやいましたけれども援助を受ける国は、当然そのそれぞれの国の政治の内部に入つて指導権を振うということになる、これは必然だと思います。なおそういう点について、援助を受けた国がいわゆる援助を受けたものによつて防衛力を強化して行く、その内政の問題にまで指導権が及ぶものであると私は思うが、外務大臣はどういうふうに考えられますか。
  206. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは決して言葉のあやではないのでありまして、アメリカ側の意向も一般的にたびたび声明されておるのでありますが、内政干渉をするようなことは避ける方針をとつておるようでございます。そこでまた実際上考えましても、たとえばことわざで言うのですが、馬を川のところまでは連れて行くことはできるけれども、水を飲ませることはできないということがよくいわれますが、アメリカ側としては、川のところへ連れて行くまでの努力を自分の資源等を利用してするのであつて、水を飲むか飲まないかは、各国自身できめる問題であろうと思います。また事実そうならざるを得ないのでありまして、これでもつて内政干渉というようなことは私はないと思いまするし、また実情から見ましても、たとえば北大西洋条約諸国のように、条約でお互いに防衛をきめておる国もありますし、ユーゴスラビアとかその他の国のように、そういう条約に入つていない国もあります。各国個々別々であります。必ずしも防衛同盟みたいなものに入つていなければ援助を受けられないということでもありません。事実そうでない国でも受けているところがたくさんあります。従つてこれは一に日本政府が国としてどう考えるかという問題であつて、内政干渉のごときことが行われるとは考えておりません。
  207. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 MSA援助を受けるにあたつて、おそらく何らかの協定が結ばれることになるということは、すでに言つておられます。そしてそれは当然条約に類するものであるから国会の承認を得るというお話でございますが、その国会の承認を得るについて、外務大臣は締結されたあとに承認を得れば足りるものであるという解釈をしておられるようです。私はなおもう一度明確に承りたいと思うことは、憲法第七十三条の三の規定の但書でございます。「但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」としてあります。「事前に、」ということが先に書いてあつて、「時宜によつては」とある。この「時宜」という言葉の解釈はどういうふうに解釈されるか、いろいろあろうと思いますが、とにかくこれは事前に承認を受けることを建前として、場合によつては事後にという解釈になると思いますが、その点承りたいと思います。
  208. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私もその通りに考えております。締結の前に国会の承認を得たいと考えております。よく言われますのは、調印の前に国会の承認を受けよ、こういうお話なのでありまして、調印と同時に効力を発生する条約については、調印の前に国会の承認を必要とする、それから批准条項がある場合には、批准をする前に国会の承認を必要とする、これが憲法の趣旨だと考えております。
  209. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 締結と調印の区別ははつきりしておりまするが、この法の一つの精神から考えて、やはりこういう重要な問題についてはできるだけ事前に国会の了解を得るという建前で行かるべきものではないか。従来吉田内閣の外交は秘密独善外交としばしばいわれておりまするが、できるだけ国民の代表である国会の了解を得て、十分なる了解のもとに条約を締結するという考え方が、今日いずれの国家もとつておる外交政策であると私は思うのでございます。ことに先日来いろいろと各委員から繰返しこのMSA援助の将来について心配しておられる点は、要するに日本の将来に重大な影響があるということでございますので、こうした重要な条約並びに協定を締結する場合には、できるだけ事前に、細大なく国民の代表である国会の了解のもとに進めて行く意思を強く持たれることをわれわれは希望するのでありますが、もう一度そういうことについての心構えについて承りたいと思います。
  210. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほど申しましたのは憲法に基く法律の解釈でございまして、法律の解釈による法制の手続は、これは別であります。そうでなくて、たとえば国会が開かれておるときには国会を通じて国民にできるだけ理解を求める、国会の開かれていないときは、新聞発表その他によつて国民の理解を求める、これは私も当然必要だと考えますので、できるだけ御趣旨のようにしようと思つてあります。
  211. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 次に賠償問題について承りたいと思います。賠償問題は、講和条約が締結されまして二箇年になんなんとしておりますが、まだ一つも解決しておりませんで、これがアジア諸国との貿易に大きな障害となつております。従つて日本のいわゆる自立経済達成の上からいつて、アジア諸国との貿易の急速なる発展ということが要望されておるときに、まず賠償問題の解決が先決要件であることは先日も申し上げた通りでありますが、最近二、三の国と賠償問題の交渉が始まらんとしておるやに新聞等は伝えておるのでございます。特にフィリピンとの間におきましては、最近全戦犯の釈放というような非常な好意を持つた処置において、われわれ日本の国民に非常な好感を与えております。同時に政府こおいても、このフィリピンの処置に対してできるだけ賠償問題の解決を促進する、しかもそれはきわめて好意的な解決方法において進めたい、こういうようなことを声明しておられますが、特に吉田総理大臣は、賠償の原則が平和条約第十四条にはつきりと規定しております範囲を逸脱するかと思われるようなことを声明しておられます。すなわち現物賠償も考えておるような声明をしておられますが、これはフィリピンのこうした全戦犯の釈放というような非常な好意ある処置に対してこたえられる言葉としてはわかるのでございますが、しかしわれわれは日本の持つております賠償能力の限度というものも考えなければなりませんし、それからまた講和条約の規定、明文というものもございますので、その範囲を逸脱するような条件において解決するということも、われわれはこの際とるべきではないと考えるのでございますが、その点どの程度に考えておられるか、それをまず承りたい。
  212. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれもできるだけ賠償を払いたいという気持は同じでありますが、今おつしやつたように日本としての賠償支払い能力にもおのずから限度があります。先方の要求が非常に多い場合にはなかなか国民の税金をそれに流用することも困難でありますので、今まで十分なる結果が得られておりません。しかしすでにフイリピンとの間には中間賠償協定の調印をいたしまして今国会に提案中であります。これが承認されれば、沈船引揚げについては平条和約の批准前といえども日本政府としてはこれを行いたい気持であります。またただいまヴエトナムとの間に沈船引揚げ等の問題について交渉中であります。またインドネシアやビルマに対しましては、日本としてはいつでも何らかの提案に応ずる考えがあるということを明らかにしておりますが、先方からまだはつきりした意向の明示がないのです。ただここで申し上げたいのは、今は賠償の問題が片づいておりませんから、それさえ片づけばすべて貿易でも何でもうまく行くだろうというふうに一般に考えられておりますが、もちろんこれはそのことに非常に役立つと思いますけれども、賠償が万能薬で、これさえ片づけば全部うまく行くのだということには、なかなか貿易というものは行かないのであります。たとえばコストの問題もありましようし、船の問題もありましよう。輸入制限も問題もありましよう。従いましてわれわれは賠償にはもちろんできるだけ誠意をもつて片づけるつもりで交渉いたしますが、同時に貿易その他についてはやはり世界的な競争力の培養ということをまず考えなければいけない。こう思つて努力しておる次第であります。
  213. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 私は別に賠償問題の解決が、貿易促進の万能薬だとは申しておりません。大きな障害であるということだけを申したのであります。そこで、今日は吉田総理大臣はおいでになりませんが、現物賠償も考えておるということを言われましたが、これはどういうものを考えておられるのか。これは岡崎さんは当事者でございますからして、吉田総理大臣の考えについても、およそ知つておられるであろうと思います。あるいはお知りにならなければ、副総理がおわかりの場合は副総理からお聞きいたしたい。
  214. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この賠償は平和条約で、御承知のように役務ということになつております。役務と申しますと、たとえば沈船を引揚げるために、日本の役務を提供してやる、こういうようなことが起るわけであります。ところが先方はいわゆる資本財というか、キヤピタル・グーズがほしいということを、常々言つておるのであります。そこでこれは十四条の解釈にもなりますし、実際の運営にもよりましよう。十四条の主たる目的は、日本に外貨の保有が少いから外貨の負担にならない程度において、また日本の経済力を害しない程度において賠償をやるというのが趣旨であります。従つて平和条約に言つておりますヴアィアブル・エコノミー、日本の経済に支障がなくして外貨の負担を伴わない方法であるならば、先方が特に希望するならば、資本財等についても考慮の方法は条約の範囲内であると考えております。そういう意味のことを総理は申されたのであります。     〔委員長退席、西村(久)委員長代理着席〕
  215. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 沈船引揚げの場合の資材というようなものが、いわゆるこうした現物という範囲に入るという御説明でございますが、私が総理大臣の言葉を新聞で読んだ印象では、どうしてもそういうふうにはとれなかつたのであります。いわゆる平和条約第十四条には、役務賠償ということを明確に規定しておりまして、今外務大臣が言われたように、たとえば沈船引揚げの場合に必要な資材とかいうような一応必要なものは、賠償を受ける連合国側の負担において行うというふうになつておると思います。従つて吉田総理大臣の言われたのは、いわゆる十四条は明らかに役務賠償と規定しておるが、しかしその範囲を越えて何か役務以外の物件、あるいは工場設備とかいうものがあるでありましよう、あるいはまた日本の生産物といううなものもあるでありましよう。そういうふうにとれたのでありますが、その点でははつきり、ないということをおつしやいますのか、もう一度承りたい。
  216. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいま申した通り厳格に役務と限る必要はなくして、日本の経済に特に害を及ぼさないで、しかも外貨負担を伴わないならば、いわめるキャピタル・グーズと申しますか、資本財等の提供も考慮できるのではないか。これは十四条をゆとりをつけて解釈すればそうなり得るのでありまして、これを一般に現物賠償と言つておるように聞きます。現物賠償という意味ははなはだはつきりしないのでありますが、要するに役務だけでなくて品物等も提供できる解釈がつくではないか、こういうことであります。  なおわれわれとしてはそれ以外にいわゆる経済協力というような形で、賠償と並行してプラント輸出とか、あるいは先方の水力電気その他の問題があれば、これについても十分考慮して日本側としてやり得ることはやつてみたい、こういうことも各国に申し入れております。
  217. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 そこで外務大臣日本の賠償能力はどの程度であるというふうにお考えになりますか。今日予算に現われておるところで考えてみますと、大体御説明によると本年度においては百二十億くらいのものが賠償に充てられる予算ではないかと考えております。そこでこれが何年にわたつて支払われるかという問題によつて、大体賠償の限度というものがはつきりして来るわけでおりますが、外務大臣としては大体年々この程度のものを予算に計上して、何年ぐらいに賠償を完了するという考えであるか。聞くところによるとフィリピンとの間にはその年限については大体話合いができておるということであります。あるいは最近の新聞を見ますると、今日フィリピン側から賠償の年限について問合せが来ておるということも伝えられておりますが、その間の事情と外務大臣の大体の考え方を伺いたいと思います。
  218. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはなかなかむずかしい問題でありまして、賠償の総額ということになるのでありますが、これはまだ各関係国との話合いも十分進んでおりません。ここでもつてたとえば非常に大きな金額をどのくらい日本はやるつもりだということが言えればいいのでありますが、これは日本の経済能力からいつてなかなかうまく参らないのであります。ところが先方の期待よりはるかに少い金額をここで申し上げると、日本は一体何をしておるか、こんなものかというので、たちまち議論がむずかしくなるのであります。そこで総額の問題等につきましては、関係国とさらに話合いした上で申し上げたいと思うのであります。この際はひとつこの点は言及をお許し願いたいと思います。  そこで今度は年限の問題でありますが、これは一般にはいろいろあります。たとえば五年から七年の間とか、あるいは五年から十年の間、あるいは十年から十五年の間でどうだろう、大体こういうのが一般の意見でありますからそれをつづめてみますと、最小五年、最大十五年というようなことが出て来るわけであります。こういうのはは交渉の基礎になる数字ではありませんが、まだどこも額がきまつておりませんから、従つてその年限等は、きめておりませんし、話にもまだ上つておりません。もし将来交渉の基礎として数字はどくらいだとおしやるならば、大体普通常識から言つて五年から十五年くらいその間できまるのではないかという予想はつくわけであります。
  219. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 五年から十五年というようなことになりますると、たいへんに長い幅があつて、そのくらいのことならばだれでも言えることですが、フィリピンとの間に従来年限については大体ある程度の了解ができておるということが伝えられております。そうしますと、その年限が大体においてはつきりすれば、賠償の限界ということもはつきりして来るというように考えてお伺いしたわけでございますかり、その点についてもう一応そういう了解事項がありましたならばこの際はつきりとおつしやつていただきたいということでございます。なおこの日本の賠償の基準というものが、いわゆる「存立可能な経済を維持すべきもの」云々という条文が十四条の中にはつきりしるされております。そうしますればそこにおのずから限界というものが出て来ると私は思いまするが、この点大蔵大臣に承りたいと思いましたが、今外務大臣の言葉もありましたので、この点は少しあとにまわしまして、大体一つの参考となる問題がありまするが、それはフイリツピンにおきましては、すでに一九四八年にアメリカとの間で戦争損害補償法によつて協定が行れて、五億二千万ドルというものをアメリカからもらつております。なおそれ以外に一億ドル程度の支払いをアメリカ側に要求しておりまするが、この話合いができますならば、六億二千万ドル、アメリカからもらうわけでございます。戦争による損害という建前でアメリカからこれだけ支払いを受けたいといたしますならば、そういう建前がとられますならば、日本にはそれ以上のものが要求されていいというりくつが成り立つわけであります。そこでそれ以上の支払いをわれわれが承認しなければならないということになるわけですが、この点は日本の場合はそういう建前をとらないで、あくまでも存立可能の経済を維持すべき」云々という十四条の規定が守られるかどうかということ。それからもう一つは、日本とフィリピンとの将来、いわゆるアジアの各国との間におけるところの経済提携、それによつて東南アジアの未開発の国々と日本との提携を将来緊密にするという建前が、賠償問題の解決の上においてとられるかどうか、その点をひとつ明確に承りたい。
  220. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 第一の年数の問題でありますが、これはおつしやる通り、年数と全額というものは離れられないものであります。従つて総額がきまらなければ年数もきめ得ない問題であります。そこでわれわれとしてはまだ年数の問題について一向言及をいたしておらないのであります。それから今お話がありましたが、日本としましてはやはり平和条約の十四条の、「存立可能な経済ということはこれは当然一番大事なことでありますから、この線で解決をしようと思つておりまするが、しかしこれも実は議論があることは御説明するまでもないことでありまして、われわれの方ではこの程度以上は「存立可能な経済」に食い込むと言つても、向うではいやそこまでは行かないという議論もありましようから、実際の問題としてはまた議論の生ずる場合があるのであります。なお最後の、経済協力というようなことにつきましては、われわれは特に賠償の一つの条件とかいうのじやありませんけれども、賠償と並行しまして経済協力という面もぜひ進めて行きたい。賠償でカバーできないものは経済協力の方でカバーできる点もあるだろうと考えておリまして、両方ともに進めて行きたいと思つております。
  221. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 時間の制限がございますから、先にどんどん進めて参りますが、沈船引揚協定が三月十二日に調印されたというようなことが伝えられております。先ほどの話によりましても当然国会の承認を得なければならないものと思いますが、いつ国会の承認を得られるか、もうすでに四箇月になんなんとしておりますから、当然この国会の劈頭に承認を求めらるべきものと考えておりましたが、なぜ今日に生るまでその手続をとられないか伺いたい。
  222. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 御承知のように外務安員会におきましては日限の制限のある条約がたくさんありまして、たとえば六月一ぱいに承認を必要とするもり、あるいは七月の半ばまでに承認をぜひ必要とするもの等がございまして、これを先に承認を得べく努力をいたしたのでありますが、大体その承認の見当もつきましたので、今回中間賠償協定を提出して、日限の定めのあるものが済みますれば、すみやかにこれを提出したいと思つて用意いたしております。
  223. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 そこでもう一つこの問題について承りたいことは、フイリピン近海におきまするところの沈船正内容ですが、どのくらいのものがあつて、そののちどのくらいが引揚げられるか、価格に見積ればどの程度のものになるかというような点について承たい。
  224. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいま私資料を持合せておりませんが、これは調査の果はつきりわかつております。価格ちよつと引揚げてみないとわからなのでありますが、引揚げの費用はわつております。それから何隻ぐらい揚げるか、どこにあるか、これも明にわかつておりますから御要望でありますれば書類として提出いたします。
  225. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 その点は後ほど書類で御提出を願いたいと思います。それからなおこの問題でもう一点承りたいことは、やはり平和条約第十四条でございますが、原材料は当該連合国が供給するとあります。沈船引揚げの場合には先ほどの話でございますると、何か日本側の負担になるようなことを言われましたが、その点はどうなりますか。なおもう一つ先ほどのお話の外国為替の負担となるという問題もこれに関連して参りますが、この内容についてお聞きします。
  226. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 役務と申しましても、普通の場合考えられるのは、たとえば先方でもつて綿花を供給して、日本国内の紡績工場でこれを綿糸布に直して先方に送る。そうすると、国内において綿糸布に直すという役務を提供するけれども、原材料である綿花は相手国から送つて来るということになります。ところが沈船引揚げの場合は、ほとんど材料が必要ないのでありまして、クレーンとか船だとか、こういうものを持つてつて引揚げさえすればよいのであります。従いまして、原材料と申すものはほとんどないのであります。ただ、しいて言いますれば、たとえば船員の飲む水などは、かなり時間がかかるものですから、日本から全部持つて行くわけに行かないので、向うで水を求めるとか、その他木材等が必要な場合に、こちらからわざわざ運賃をかけて持つて行くよりも、向うで求めた方が安いというような、ごくこまかいものはございますが、それ以外にはないのであります。それにつきましては、沈船協定の中では、先方で一時立てかえておいて、あとの精算は後ほど相談してきめる、こういうことになつておりまして、外貨負担という点もほとんど大したものはないと考えております。
  227. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 時間が切迫しておりますから、なお承りたいことがありますが、これは省略いたします。  経済審議庁長官に一点承りたいことは、新聞に出ておりましたので、先ほど審議庁に問合せをいたしまして、資料をいただいたのでございますが、それは経済五箇年計画なるものでございます。この経済五箇年計画というようなものは、相当こまかい点について、いろいろと調査研究の上に立つて計画立案さるべきものであろうと思います。もちろんそういうように工作をなさつた上にできたものであろうと思いますが、発表されたものを見ますると、五箇年後の目標だけが出ておりますが、年次計画というものが当然なければならない。もしこれが目標だけのものでありまするならば、いたずらに世間を惑わすというようなことにもなろうと思いますが、その点について承りたい。その中には、私どもが特に知らんとするところの雇用計画もございませんし、また貿易計画についても、何らこまかい計画というものがありませんが、そういう点について詳細にできておりますか。
  228. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。お説の通り、年次計画なら、毎年毎年のことを詳しく積算して出して行かなければならないのでありますが、急ぎましたもので、まず大目標、五箇年後におきます大ざつぱな計画検討して、今整理中でありまして、年次計画ができましたら、ごらんに入れたいと思います。
  229. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 急いだから来年度の分だけしかできなかつたというならばわかるのですが、急いだから五年先の目標だけをきめて、年次計画はできておらないということになりますと、要するに、五年先どれくらいのものが生産されなければならないか、あるいは消費の水準はどうなるかという目標をきめて、それに合せるようにつくられたものにすぎないと思いますが、そういうやり方でこの計画というものは実現できるものとは思いません。しかしこれは時間がございませんから、いずれ別の機会に承ることといたします。  もう一つ今度は通産大臣として承りたいことは、東南アジア貿易の将来の問題でございます。しばしばこの席においても、東南アジア貿易の開拓については、いろいろな論議が行われました。しかしそれに対する政府当局の御答弁は、まつたく抽象論にすぎなかつたのでございます。そこで一点だけ具体的に聞いてみたいと思いますが、現在の日本の東南アジアヘの輸出は、戦前の大体六割だと私は計算しております。ところが他の国の例を見ますると、イギリスはすでにこの地域において二倍になつておりまするし、ドイツも戦前の水準をはるかに越しております。一番近い日本だけが非常な輸出不振に陥つておるわけです。通産大臣はしばしば、その原因を日本の生産のコスト高に帰しておられるようですが、私はコスト高というだけが原因ではないと考えておる。たとえば今日日本の雑貨製品というものは、世界の水準に比較しても、決して私は高くはないと考えております。そこでこの一つの大きな原因と考えられることは、日本の特にこの地域に対する貿易の中心をなすものは繊維と雑貨であつたのが、今日世界的に繊維と雑貨の輸出は縮小されておるのでございます。その原因等をいろいろ論じておりますれば、時間がかかりますから、省略いたしますが、これはそれぞれの国々、いわゆるアジアにおける後進国といえども、今日これらのものについてのいろいろな生産が行われており、それぞれそれに対する国内産業の保護政策が行われておる。こういうようなところに大きな原因があると思うのでございますが、こういう状態にあるときに、日本のこの地域に対する輸出の将来というものを、どういうふうに切り開いて行こうとしておられるか承りたい。
  230. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。軽工業品は、戦前におきましては、日本としても非常に有力な輸出貿易品でございましたし、ことに東南アジア方面はいい市場であつたのであります。ところが最近に至りまして、東南アジア方面では、みな国内でその生産ができるというような形になりまして、われわれといたしまして、ただいまのところ軽工業品が国際貿易上非常なウエートを持つておるにかかわらず、将来はあまり伸びないのではないかと感ぜられるのであります。その点今東南アジアで必要としておりますものは、いわゆる重化学工業品でございますが、これはこれから向うの方で需要が増して来る見込みでございます。どうしても日本の国際貿易の主要品というものは、軽工業品から重化学工業品に行くべきではないか、少くとも東南アジア方面を相手にしては、そうなつて行くべきではないか。むろん軽工業品といたしましても、繊維というものは国内の需要のためには非常なウエートを持つております。また現在の貿易の中においてもウエートを持つておりますから、これを軽視して行くわけには参りませんが、将来の貿易上の品目の重点としましては、軽工業品はあまり売れるという可能性がなく、だんだんと重化学工業品に移つて行くのじやないか。こういうふうに考えて、われわれいろいろの施策を講じているわけであります。
  231. 西村久之

    西村(久)委員 長代理 加藤さん、時間の関係がありますから、結論をお急ぎ願います。
  232. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 私はそれについては意見がございますし、なお聞きたいと思いますが、時間がございませんから、後日に譲ります。  最後に通産大臣に一つ重要な問題について承りたいことは、今日の中小企業の非常な行詰まりをどうして打開するかという問題でございます。先般も、中小企業者を救うために、今一番必要なものは金融の問題でございますが、この問題を解決する上におきましても、いわゆる中小企業等協同組合法の根本的な改正が必要だという私の意見に対して通産大臣は全面的に賛成せられまして、そして今着々その改正について調査研究準備中であるという御答弁でございましたが、この国会に出されそうにもございません。聞くところによりますと、特殊中小企業安定法というようなものが議員提出で出されて、その点で多少の修正を行われる程度でお茶を濁すというようなことになるようでございますが、私は独占禁止法の大幅な改正を政府が行おうとしております今日におきましては、中小企業等協同組合法の根本的な改正の障害となるのは、今の政府の考えで行きますればなくなると考えます。しかるに大企業を擁護する建前に立つて独占禁止法の大幅な修正を行つて、そしてそれ以前に救済しなければならないところの中小企業の根本的な救済策としての中小企業等協同組合法の改正をなぜ行わないのかという点を承りたい。
  233. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。ただいまのところでは中小企業等協同組合法というものに対してまだ改正をするところまで考えがまとまつておりません。しかし中小企業等協同組合法によりますところの協同組合とか、また特殊中小企業安定法によりますところの調整組合、そういうものが一つの法体系の中に入つて、そしてもう少し効果を上げるという方向に行つたらいいじやないかというようなことがよく言われます。私どもといたしましては、そういう点につきましてぜひそういう方向に進めて行きたいと思いましてやつておりますが、今国会には間に合わぬと思います。しかしながら独禁法の改正なんかに伴いまして、中小企業の安定をもつと確かにするという意味におきまして、中小企業安定法というものを恒久的の立法に、また内容にいたして行くということも考えておりまして、これは議員立法の形において今国会に出るかと考えております。陰ながらその方面に御援助を申し上げる次第であります。
  234. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 なお今の通産大臣の御答弁ですが、私は中小企業安定法というものを実施いたしますときに、この程度のものでは全然役立たないと申し上げます。実際それを実施してみましても何ら役には立たない、そこに私は根本的な欠陥があると思うが、時間がございませんから後日に譲ります。  最後に労働大臣に対していろいろ承りたいと考えて参りましたが、時間の関係で一点だけ承りたいと思うのでありますが、今のスト規制法についてでございます。私は日本の民主化を推進する上において、民主的な労働組合の発達弱化ということが一つの要件であると考えておるのでございます。そこでわれわれもそれを大いに希望し、そのために多少の努力もいたして来たのでございますが、今回自由党の中でも比較的進歩的な思想を持つておると言われておる労働大臣が、こうしたスト規制法を制定しようとせられるについては納得できないものがあるのでございます。と申しますのは、われわれは労働組合の民主化ということは、組合員自体の経験に基くところのいわゆるいろいろな自己批判によつて、そうしてその中から民主的な労働組合に盛り上げて行くということでなければ真の民主的な労働組合というものはできないと考えているのでございます。その点について時間がないので、こちらも詳しい意見を申し述べませんが、今たとえば、昨年の暮れに二大ストに対していろいろな批判の行われた、その上に立つてこうした公益産業についての規制法を考えられたものでありましようが、しかし昨年のあのストライキをやりました労働組合の中にも、たとえば電産は、あのストライキをみずから誤れる点は誤れるものとして自己批判をした上に立つて、できるだけ民主的な組合への努力をしているのでございます。ことに大事な自分らの組織を分裂させてまで、あくまでも組合を正しい民主化の方向に持つて行こうとする血のにじむような努力をしている組合が今日現にあるときに、こういうものをつくるということは、それらの努力に対して単に水をぶつかけるだけではなくして、これを逆もどりさせることになりはしないか。それらの人々の熱意というものを冷却させるだけでなくして、逆の方向に引きもどす結果になりはしないかということを考えるものでございまするが、この点についての労働大臣の御意見を伺いたい。
  235. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えを申し上げます。労働組合におきまして民主的な、しかも健全な発達をしてもらいたいということは私も加藤さんと同様に強く祈念いたしておる次第でございます。政府も従来ともこの立場をとつて参りましたのでございまするが、ただいま御指摘の、今回国会に提案いたしておりまするいわゆるスト規制法案なるものは、昨年の二大争議の苦い経験にかんがみまして、公益と争議権との調和をはかろうとするものでございまして、これは本来ストライキ権の制限でないということは、私もしばしば申し上げている通りでございます。これは御承知のごとく炭鉱におきまして保安要員の引揚げをするというようなことは、これはもう争議権の継続ということを考えれば、本来まじめなる勤労者の、争議が終つて帰るべき職場を失わしめることでもあるし、人命にも危険のあることでありますから、これは御遠慮願いたいということは社念通念上妥当でないもの、あるいは非であるということの確認であると考えているのであります。それでこうしたようなものを三年間一時期限を付して、この期問遠慮してもらいたいということは、その間において健全なる良識がそこにもたらされる、労使間の良識によるところの健全な慣行が習熟されるということを期待しているものでございまして、加藤さん御承知のイカリスにおいても例の炭鉱三角同盟ストのあつたあとは、やはりこうしたストを禁止するという立法を出し、その後の労使の健全化するに従いましてこれを撤廃いたしておるのでありまして、私ども三箇年の時限立法といたしました趣旨もそこにあるのでございます。
  236. 西村久之

    西村(久)委員 長代理 この際中村高一君に関連して質疑を許します。簡潔にお願いいたします。
  237. 中村高一

    中村(高)委員 けさほど質問いたしたときに外務大臣がおりませんでしたが、例の竹島の問題であります。けさ木村保安庁長官は海上保安庁の巡視艇を出したということはわかるが、あとがわからないというのでありますが、漁船及び漁民を日本の海上保安庁の巡視艇が捕えたということで、韓国ではこれに対して軍艦を派遣するということが決定したというのでありましたが、そういう事実がありましたかどうか、御報告願います。
  238. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ごく簡単に申し上げますと、一番初め竹島に韓国の漁民たちがおつたのを発見したのは、五月二十八日でございます。これは島根県の試験船が行つて発見したのでありますか、そこでその後六月二十日過ぎになりまして、海上保安庁の巡視船が竹島に行つたのでありますが、そのときは海が荒れていて向うに着けなかつた。そこでさらに六月二十七日に巡視船が行きましたところが、六名の韓国の漁民がおりましたので、退去を求めたそうであります。しかし漁民たちは天候が回復して、迎えの船が来るまで猶予されたいということであつたので、これを許して帰りましたが、その際に島根県穏地郡五箇村及び不法漁業を禁止するという二つの制札を立てて来たのであります。七月一日に巡視船がさらに竹島に行きましたところが、もうすでに六名の韓国人はおりませんで、こちらで立つてました制札等は何ら異状を認めなかつたそうであります。これに対しまして外務省としては六月二十二日に韓国代表部に対しまして、この竹島における韓国漁民の不法上陸、不法漁業等を指摘して申入れを行つたのであります。これに対しまして本月二十六日に韓国代表部からは、竹島は韓国領土の一部である、従つて日本側から抗議を受ける筋合いのものでないという回答をよこしておりますが、そこで話は今そのままになつております。われわれの方ではさらにこの韓国の申分に対して、これは当然日本の領土であることは問題ないのでありますから、さらに反駁の書面を出すつもりで今用意しておりますが、韓国側も特に畠を荒立てるという気持はないようでありますので、軍艦を派遣するとか何どかいうことは、さしあたり考えられないのであります。
  239. 中村高一

    中村(高)委員 竹島の領土権並びに領海の漁船に関しまして、たびたび両国の間で問題が起つておりますのでこの問題につきましては将来日韓会談等が行われまして、根本的な解決をせられると思いますが、その間においては、政府はいかなる方法でこうした問題を処理いたして行くのか、その点を明確にしておいていただきたい。
  240. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは普通の島でありますと、日本人が住んでおりますから問題はないわけでありますけれども、この竹島は人が住むことができない岩なのであります。従つてだれも住んでおりませんから、これに対してなかなか適当な方法がないのでありますが、こちらとしてはまず巡視船とか監視船とかいうものをなるべく頻繁に出しまして、そうして韓国側の実際にわかめ等をとりに来るのをとめる、それからできるだけ日本側でそちらへ漁船等を出して、漁業に従事させるようにいたして、まず事実上の関係をつけなければならぬと思つております。しかし同時にこれは韓国だけの問題じやありませんで、平和条約におきまして日本が放棄した領土等は明記してありまして、これこれの島とか土地に対しては権利、権原等を放棄するということが明記してあります。この竹島というのは岩でありますが、何らその中に入つておらない。対馬などやあるいは佐渡島と同じように、日本の領土であることは問題ないのでございます。韓国側にも十分この点は指摘して、先方の反省を促すのでありますが、同時に平和条約の調印国に対しても、日本の領土であるということを確認を求めることにしたいと考えております。
  241. 西村久之

    西村(久)委員 長代理 小林絹治君。
  242. 小林絹治

    小林(絹)委員 まず岡崎外務大臣にお尋ねをいたしたいと思います。外相は連日御疲労であつて、長い質問はいたしません。いつも議会においては外務大臣に対しては軟弱外交、秘密外交という攻撃がどこでもあるのであります。おそらく岡崎さんはそういうことはなかろうと思いますが、昨日のこの委員会におきまして、大臣の説明以上に詳しい事情を聞きたいというので経済局長の出席を求めましたところが、三十分間われわれは待たされた。これはどういう次第でありましようか。あるいは外務省内において相当綱紀が乱れておるのではないか。政府委員は常に議会に出席をして大臣を補佐して、いつ何どきでも資料を提出すべき建前のものであるのにもかかわらず、呼ばれてから三十分もしてから出て来る。     〔「一時間々々々」と呼び、その他発言する者多し〕
  243. 西村久之

    西村(久)委員 長代理 静粛に願います。
  244. 小林絹治

    小林(絹)委員 ということはどういうことでしようか、簡単でよろしゆうございますからお答え願いたい。
  245. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいま経済局長は、各国との間の貿易協定その他小麦協定の問題もありますし、いろいろ仕事が多いのでありまして、国会のひまを見てそういう仕事をいたしておりまして、昨日も折あしくちよつと外出しておつたものでありますから、それで時間が少し遅れたのであります。
  246. 小林絹治

    小林(絹)委員 昨日も申したのでありますが、役人仕事というものは世上定評がある。これは日本だけではありません。でありますから、このたび問題になつております件についても、おそらくわが方の役人だけではなくして、向う側の方の役人も、役人仕事をやつておるのであろうと思う。政府はせつかく鞭撻をして成果のあがるように、促進を期せられておることと思いますけれども、いろいろ役人それぞれ担当の仕事がありましようが、何よりも国会が一番大事、一番大事な国会にかんじんの政府委員が出て来ないというようなことは、どうぞ今後ないようにしてもらいたい。過日どつかの新聞で見たのでありますが、外務大臣が外務委員会か何かで欠席をされた。そのときに芦田君が言つたということが書いてある。大臣は国会が一番大事なのだ、フランス大使とか何とかに会いに行くという、そんなことはあとまわしでいいのだということを芦田君が言つたそうでありますが、私はその当時の事情をその現場で見たのではないから、その芦田君の言つたことのよしあしは存じません。けれども趣旨においてはそういうものだと思いますから、どうか今後は政府委員は、常に大臣につき添つて議会に出席され、大臣を補佐して、いつ何どきでも必要のある資料を提出するように、将来よく下僚にお示しを与えていただきたいと思う。  元来私の伺いたいことは、外交官はデグニテイというものが一番大切である欧米における外交界においても、もし外交官が酒の席で大声を出した場合、デグニテイを失墜いたしますから、外交官は勤まらない。そこで岡崎さんは外交官の元締めである。どうか岡崎さんのデグニテイが、いささかでも傷つけられるようなことがないように、もしこれがありますと、わが国にとつて非常な損害であります。この点はよくお願いをいたしたいと思うのでありますが、それにつきましてはわれわれは長年の間、占領行政下においての——岡崎さんにはそういうことはあるまいと思いますけれども、国民から考えますと、ややもすれば占領治下の卑屈な考えがまだ残つておりはしないか、外国にぺこぺこするような習慣が、まだ外交当局に残つておりはしないかという杞憂を持つておるのであります。デイグニテイを十分発揮されて、国の威厳がそこなわれるようなことがないということを、あなたの最も大切な仕事としてやつていただきたいと思う。あなたはお年も若いし、お元気で、しかもスポーツマンである。スポーツマンというものはフエア・プレーなんだ。外交はフエア・プレーなんだ、同じ立場に立つて、国が強いとか弱いとか、金持であるとか貧乏であるとかいうようなことはなくして、サブリミテイというものによつて対等の位置でつき合つて行くのであります。でありますから、どうぞ外交官が常にわが国の威厳を象徴して代表するような態度を、いささかも落さないように、今後とも一層気をおつけになつていただかぬと、わが国にとつて非常な損害があると思いますから、この点についてどういうようなお心構えがありますか。これはあろうと思いますので、国会を通じて国民によく認識さして、安心をさせてもらいたいと思います。簡単に御答弁を願います。
  247. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 おつしやることは一々ごもつともであります。私ももちろんそのつもりでやつておりますが、今後もできるだけ御趣旨に沿うように努力をいたします。
  248. 小林絹治

    小林(絹)委員 占領軍政が関始されて以来、おそらく当初はわれわれ国民も相当な疑いを持つてみておつたのであります。     〔西村(久)委員長代理退席、委員長着席〕 しかるにその後、これは私の考えでありますが、アメリカが親しく日本の朝野に接して、今まで日本は好戦国民であるというような考えを持つてつたが、よくつき合つて話合いをしてみると、日本人は平和愛好の国民であるということがよくわかつた、これが一つ、もう一つは世界情勢の推移変転というものが、日本となお強く結ばなければならないという考えを、彼に持たせたということが一つ、これによつて日米間の親善が促進をされた。しかも占領政治におきましては、われわれにとつて国情に合わないようなこともたをさんあつたと思います。しかしながら非常に感謝をしなければならぬこともたくさんありました。これを総計して見ると、アメリカの占領軍政というものは成功であつたと私は考えておる。わが国の国情に合わないような行き過ぎをしておつたというようなことについては、この議会の当初吉田総理大臣からも、そういう点については是正に努めるということを言われましたから、政府はそのお考えでやつておられることといいます。どうぞその考えで着々と実行してもらいたいと思います。  次にガリオア、エロアの資金の二十億ドルについてであります。これについてはわが国においては議会が感謝決議をしておる。国民は非常な感謝をアメリカに表明いたしたのであります。この内容は、私は占領行政費であろうと考えておる。国民は非常な感謝をアメリカに表明いたしたのであります。この内容は、私は占領行政費であろうと考えておる。でありますからまだこれは請求をしない。おそらく請求をすべき性質のものではないのだと思うのであります。アメリカという国は、人道正義をうたつておる国でありまして、日本の困つておるときに、しかも占領行政の経費として使つた金までも返せということは、よもや言うまいと思います。あるいはマーカツトはどう言つたか知りません。マーカツトの考えがアメリカ政府を代表したものであるかどうか、それも知りません。しかし現在ダレスとか、アイゼンハウアーというような人は、おそらくそういう考えは持つていないのじやないか。もしかりにこの二十億ドルというものを払わなければならぬということになりますと、日本の復興はできません。日本の経済は壊滅いたします。なるほどわが国民としてはこれは払わなければならぬ。向うの親切であるが、これは払わなければならぬという心構えは、さすがに日本国民であるとは思いますけれども、おそらくこれは他のわが国の債権と相殺されるような性質のものでないと私は思うのですが、外務大臣はどう考えておられますか。
  249. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これにつきましては、われわれは依然として債務と心得ておる点についてはかわりがありません。但しその額がどれだけになるか、これは将来の話合いによるのでありまして、日本の経済がこれによつてそこなわれるような支払い方は、できないのは当然であります。しかしながらドイツにおきましても、イタリアにおきましても同様なことがありまして、しかも返済をいたしております。従つて将来これをどれだけ返済するか、どれだけ債務として確立するかは、これは交渉によるのでありまして、また国会の承認がなければできないわけでありますけれども、とにかく一応債務と心得ておる点についてはかわりがないのであります。なお国会の感謝決議等もありますが、かりに返す金でありましても、当時あれだけの金を融通して、日本の食糧の危機等を救つてくれる国は、ほかにはなかつたろうと思うのであります。従つて返す返さぬにかかわらず、とりあえずあの急場をしのぐことができましたのは、やはりこの援助のおかげだと思うので、この点について国会が感謝するのは、これまた至当なことじやないかと思つております。
  250. 小林絹治

    小林(絹)委員 わが方において、占領治下において卑屈な態度がなかつたとは言えまいと思うのでありますが、かりにあつたとしても今日独立国となつた以上は、そういう態度をとらないようにお願いいたしたいわけであります。駐留軍においてもそういう傾向がありはしないかという疑いを私は持つておるのであります。あたかもわが関東軍と日本の中央政府との関係におけるようなものが、先方においてもありはしないかという疑いがありますのは、たとえば基地の問題であります。基地の問題につきましても、私の聞くところによれば、国務省の方針としては、日米親善のためにわずかなことで、日本国民の感情を害しないように極力努めておるという話であります。当然さもなければならぬことであつて、さもあるべきことであると考えるのであります。しかしながらあたかも関東軍の当時のようなことが、もし現在の駐留軍の中にあるといたしますと、この点についてはわれわれとしても相当な対策も講じ、考えなくてはならぬ。クラーク大将という人はとにかく関東軍の大将なんだ。そこで前大使マーフイさんは、クラーク大将がアフリカに上陸したときに、政治工作を一緒にした人である。クラーク大将の言いなりになることは当然の話である。私の聞くところによると、マーフイ大使はクラーク大将の要請によつて駐日大使に来た人である、こう考えておるのである。これはクラーク大将の言いなりになることは当然の話である。現在のアリソン大使も、御承知通りこの人は国務省の極東部長かをしておつた人である。領事なんかもしておつたことがあるので、人間の偉い偉くないは別といたしまして、アメリカにおいては参事官級の人である。この人の貫録、力をもつては、とうていクラークを押えることはできません。クラークを押える力を持つておるものは、おそらく国防長官であろうと思うのでありますが、ペンタゴンを押える力がない限りは、基地なら基地の要求に対して、いろいろ外務省が心配なさつて折衝つても、過日の外務大臣の御答弁のように、基地がだんだん少くなるように努力をすると言われましても、これはむずかしいのではないか、むしろこれはダレスなりアイゼンハウアーに対して、直接にわが方の考えなり希望が届くような方法を、お講じになつたらどうかと思いますけれども、その点についてどうお考えになりますか。
  251. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今クラーク大将のお話が出ましたが、私も始終クラーク大将には面会もいたしておりましてよく承知しておりますが、お話のような考えを持つている人では全然ないのでありまして、できるだけ国民との感情をよくするということに主眼を置いておるのであります。クラーク大将の部隊に対する訓示におきましても、将兵一人一人がアメリカの大使である。日本国民に対して威厳を保つとともに礼節努を重んじて、日米国交改善のために、力すべきものであるということを言つておるくらいでありまして、この点において国民感情を考えることは、人後に落ちない人だと思つております。しかしながらクラーク大将は非常に重い責任を負わされておりまして、一朝何か直接侵略がある場合には、全将兵を率いて、日本のための防衛に当らなければならない大きな責務があります。そのためには常日ごろから、将兵に対する十分なる訓練もいたさなければなりませんし、日本の各地の地理等もよく心得なければならない。また飛行機などの操縦についても、この山の多い日本においていざというときに、十分なる防禦ができるだけの準備をいたさなければならない。そのためにはかなりの人知れぬ苦心があるのでありまして、クラーク大将も最小限度の演習場その他を、必要とするものだけを使うということについては、全然異議がなく、またこれも国土が狭いのであるからして、保安隊等の演習地と共用のできるものはできるだけ共用する、こういう趣旨でやつておりますが、この重い責任を身に負いますと、どうしても将兵の訓練等を現地に即してやらなければならぬ点があるのであります。この意味で必要なものは先方も要求して参りますけれども、しかし不必要なものとか、ぜいたくなものを要求する気持は、全然ないことは私はここで申し上げられるのであります。この点についてはクラーク大将に、私は満腔の信頼を置いております。従つて常に国民の考え方を話をいたしまして、先方も十分理解をしておると信じております。
  252. 小林絹治

    小林(絹)委員 お答えはよくわかりました。私のただいま申し上げたことで、この際補足をいたしておきたいと思いますことは、クラーク大将の駐留軍が行き過ぎをしておるということは思うておりません。外交関係のことにつきましては、事後において折衝をするということが多いので、事前に折衝をするということは少い。しかしながら軍の活動につきましては、事前のことが大事なのであります。こういう基地をこれだけ持つていなければ、日本の防禦ができないという考えから、あつちもほしい、こつちもほしいということになるのでありまして、これはしろうとではわかりませんから、なかなか口ばしをはさみにくいことでありますけれども、しかし政治の方面から見ますと、後になつてもし事件が起つたときには足らなかつたということになるかもしれません。しかしながら起らなかつたときには行き過ぎであつたという非難を受ける場合もあると思うのであります。まことに気の毒な立場でありますが、どうかわが国民の感情をあまり害しないように、根本からの日米親善というものが進められるように、国務省はもとよりクラーク大将におかれても、十分の御配慮をしていたたきたいと思うのであります。それにつきましては、現在アメリカにおります日本の大使が、どういう人か私は知りません、どういうタレントを持つた人で、日本アメリカ駐在大使として力量、手腕、声望、貫録等においてりつばな人であるかもしれないし、そうでないかもしれません。この事実についてとかく申すのではありませんけれども、私の考えでは、少くともアメリカに送る大使は、特にわが国を代表するような、卑近な言葉で申せば総理大臣以上の人物をワシントンに送つて大統領にでも、ダレスにでも始終直接に話のできるような建前になさつたら、たいへんよいのではないかと思いますが、その点について外相のお考えはどうでしようか。
  253. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 駐米大使は御承知のように日本銀行の総裁をやつた人でありまして、私は国内におきましても、閲歴、声望等において欠くるところはないと考えております。特にアメリカとの間には経済的の問題が非常にたくさんありまして、政治上の問題と同時に経済上の問題についても、直接先方に当つて判断の下し得るような人が望ましいと考えて、現在の大使を任命したわけであります。もつとも非常に過労でありまして、昨年ちよつと病気もいたしたくらいでありますが、非常に勉強をいたしてくれておりまして、米国内においても評判がいいのであります。お説のようにできるだけりつぱな人を、アメリカに送るつもりでありますけれども、そうかといつて現在の大使が何かの点において欠くるところがあるとは、決して私は考えておりません。しかし御趣旨は同感でありまして、アメリカには第一級の人間を送りたい、こう常に考えております。
  254. 小林絹治

    小林(絹)委員 アメリカアメリカでありますが、今日各国につかわしております大公使、これについては世間では、あまりに小物ばかりで、日本の外交はさらに振わないという批評もあるのであります。外務大臣は、わが国の最も大切なときでありますから、外務陣営を大刷新して、わが国の最も有能な使臣ととりかえてお送りになるような構想は、今日のところありませんでしようか、いかがでしようか。
  255. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 御趣旨においては私も同感であります。ただ一流の人物とおつしやる、これはその通りでありますけれども、大使、公使となりますと、とかくいろいろ非公式に打明けた話をする必要が出て来る。その際に通訳を間に置いて話をするというのでは、どうしても思うような話はできないのであります。従いましてアメリカ人のようにどこへ行つても英語で話せる、ヨーロッパでもそうでありますが、英語なりフランス語なら、どこでも通用するというのと違いまして、日本の場合はおのずから語学の制限があるのでありますから、選択の範囲はそれだけ狭くなります。狭くなりますけれども、今後とも大公使のふえる所もまだたくさんあるのでありますから、語学の制限ということはありますけれども、できるだけ第一級の人物を送るという点においては、おつしやる通り私も努力しようと考えております。
  256. 小林絹治

    小林(絹)委員 国民外交ということをどこの国でも言うのでありますが、私は占領軍が十五万か十七万か知りませんけれども日本に来られて、それが逐次交代をしておりますから、おそらく五十万人、七十万人というアメリカの人たちが日本に来て、日本に住んで、そして向うへ帰つたと思うのであります。これらの人たちは日本を非常によく理解しておる。日本の弁護をしてくれておる。私の友人がアメリカで講演をして参りましたときにも、日本は真珠湾はどうしたんだと言うような聴衆に対して、聴衆の中から立つて、君たちは日本を知らぬか、私は日本に二年駐屯して来た、日本人は年寄りはこう、女はこう、家庭はこう、日本人というものは平和愛好の、われわれが友だちとすべき国民であると言つて、弁護しておつた。これも一つの国民外交であります。そこで外務省の他国との交渉につきましては、事と次第によつては、発表についての申合せ等がありまして、発表のできないようなことも、当然あるべきことです。でありますが、日本の考えておること、これが外務省文書によつて、各国の外務省と取引をするのにとどまらず、日本の考えがロシヤの百姓にも、ロンドンの職工にも、地中海の漁師にもわかる。世界をあげて日本の考えがわかるという建前の国民外交というものを、とつて行かなければならぬ。これについてはわが国の言論界に対して、外務省は常に緊密な接触を保たなければならない。また各国の言論通信の衝に当つておられる人たちに対しても、もう少し腹を割つた、まる腰になつた立場で、接触を進めらたるのがよいのじやないかと、私は常に考えておるのですが、おそらく岡崎外相はそれをやつておられるのかと思いますが、これに対してお考えはいかがですか。
  257. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この点はお話の通りであります。ただ、今までは、一番大事なのはやはり外国の公使館、大使館等が、日本の国情のよくわかるようなものを、パンフレツトでもいいし、話でもいいのですが、方々その任国においてできるだけ知らせるということが、まず必要であろうと思います。同時に国内でも外国の通信員とか、あるいは日本自体の新聞によく連絡をするということも必要でありましよう。しかし今までは何分にもこういう経費が一文もなかつたのでありますから、非常に困難をいたしました。幸い今度の予算通りますと、この方面の経費も計上してあいますので、今度は実際上経費の面でもできるような仕組みになりますから“今後はできなければ、やり方が悪いのだということにもなるかもしれませんが、今度は予算が通れば、努力するだけの資金的な裏づけもできて来るので、できるだけやろうと思つております。
  258. 小林絹治

    小林(絹)委員 なお一つだけ外務大臣にお尋ねしたいのですが、漁業の問題であります。各国の領海にあらざる公海におけるところの漁業は、国際公法上何ら制限を受けるべきものでないのが原則でありまして、それについては漁族の保存とか、その他共同の利益のために、種々漁業条約を締結しておる次第であります。しかるに一方においては李承晩のラインというようなものができて、わが国の漁業が非常に妨害をされておる。また南支那海、北洋等におきまして、わが漁船が理由なくして拿捕されたものが、おそらく今日まで二百そうくらいになつておりはしないか。われわれはこの大事な仕事に当つている人たちが、何らの理由なくして拿捕されて、これを守つてやる力が現在のわが国にないかと思いますと、残念でしようがない。これについてはいずれ政府において徐々に適切なる方法を講じられることと思いますけれども、今日外務大臣にお尋ねいたしたいのは、南洋方面における統治区域、これに対する日本の漁業が今とめられておるのでありますが、これはアメリカ側交渉をして、一日も早く自由に出漁できるようにすることが大切だと思いますが、こういうことについての交渉をお始めになつたでありましようか、あるいは交渉するお考えでありましようか、お見込み等について、この際お答え願いたいと思います。
  259. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 もとの南洋委任統治の島々におきまして、私も詳しくは存じませんけれども、漁業においては、まぐろとか、かつおとか、非常にいい漁場であるそうであります。その他ココナッツとか、いろいろなものがあります。そこで、これらの資料をずつと集めまして、いかなる形で、日本としてはどのくらいの資本を出して経営できるか、これを経営することが、また土着民の利益になることでありますので、かなり詳細な資料を整えました上で、昨年、かなり前にアメリカ側に書面をもつて申し入れて、その後も督促をいたしております。ただアメリカ側といたしましては、軍事上必要があるということでありまして、これは原子爆弾の実験とか、いろいろなことがあるようでありますが、そのためにまだこちらの方面の海軍等の意向がなかなか固くて、話がついておりませんけれども、申入れは約一年ほど前にいたしまして、その後もずつと続けておりますので、そのうちには何とか一部でも解決できるのではないかと考えております。
  260. 小林絹治

    小林(絹)委員 最後に一点だけ。近ごろ新聞や雑誌の報道等で見まして、駐留軍がわが国の婦女を犯した、その他暴行をしているというようなことが、占領軍政下のときと、ほとんどかわらないほどの数が出て来ている。こういうことは日米間の親善を阻害すること非常に大なるものがある。外相御承知通りアメリカで白人婦女に対して黒人が暴行したときには、法律によらずしてリンチを加えるというような、国民の感情というものはそうはそういうものでありまして、こういうことが今後も続くということでありますと、これは他国が日米間の感情を離間するようなことにも利用するおそれがあります。どうかこれについては、特に御注意御努力を願うようにお願いたしておきます。外相に対する質疑はこれだけにいたします。  次に通産大臣にお伺いいたしたいと思います。それはこの間の通産省において保管されているところの重要書類がやみで流れている。これはどうもわれわれ不思議でしかたがない。通産省というところは、それほど綱紀の弛緩した省であるかというふうに国民が思いはしないか。もちろんこれはあなたの責任ではありません、それは以前のことですから。この通産省というところは一番誘惑の多いところだ。何となれば石炭にしても鉄ににしても、綿糸にしても、その他統制経済のときと同じことをやつておるのでありますから、これはいろいろ外部との接触もあろうと思いますが、しかし今後こういうことがあつては、国民は官庁を信頼しなくなります。国民が官庁を信頼しなくなることほど恐るべきことはない。あなたは銀行家の御出身である事業家である。銀行家というものは非常に手がたいものだ、出動の時間でも一分も遅れぬように、お若いときから鍛えられて来ている人でありますから、おそらくあなたが通産省へお入りになつたら、役人というものはこんなものかと驚かれたのではないかと私は思います。しかしながら役人の大部分は熱心誠実な人ばかりである。たまに機密文書を外へ流すような不心得な者も出て来る。あるいは外貨の割当でもつて賄賂もらうというような人々も出て来るのがありますから、あなたが通産大臣であられる限りは、通産省のことについては、どうぞ国民諸君、安心してください。私がいる限りは絶対綱紀を粛正するというお考えでおやりになつてもらいたいと思うのでありますが、これについての御所信はいかがでしよう。
  261. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。まず第一に申し上げたいことは、一昨日以来問題になつております大事な書類が盗まれた、こういうようなことでございますが、私はそうは考えておりません。大事な、いわゆるわれわれとして保護しなければならぬ書類は、全部金庫並びに倉庫にとつてございまして、これは少しも出ておりません。ただ問題はこういうふうないきさつは、内部的に何と申しますか、連絡事項として官庁間において連絡されたその書類が漏れておるものと、こう考えます。しかしそれにいたしましても、官庁以外に出すべからざるものが出たということになりますと、私はこれはいかぬことだと思います。  それから官紀の粛正でございますが、これは前通産大臣の小笠原さんは、やはり銀行家出身でいらつしやる。その当時から非常に官紀の振起というものをお心がけになりまして、部下に対するいろいろな御注意もなされ、最後には口頭だけではいけないから、文書をもつて通達するというところまで厳粛にやつておるわけであります。私はその方針を踏襲いたしまして、そうして十分お説の通りに粛正をして行きたいと思つております。  それから通産省は統制的な仕事をしておるものですから、ときどき悪いことがあつたということを聞きますけれども、しかしただいまお説の通りに、これはたくさんの中のほんとうに寥々たる者が、数の多い諸君の中から出るということでございまして、あの例外をもつてただいまのりつぱな通産省の官吏諸君を責めるわけにも参りませんし、私自身といたしましても、就任以来まだ一箇月ちよつとしかなりませんが、見ておりますとガラス張りの中で仕事をしているのだという熱心さで、忠実に仕事をしているように見ております。なおただいま御注意の点は十分尊重いたしまして、私の今後の心がけにいたしたいと思います。
  262. 小林絹治

    小林(絹)委員 大蔵大臣が御出席ですからお尋ねいたしたいと思います。二十八年度の不成立予算の暫定予算で、小刻みにしておるわけでありますが、二十八年度の不成立予算編成されたときには、数箇月前のことでありますから、最も国情に適した予算であつたろうと思うのでございますが、数箇月のずれがあります。しかしあの場合、急に根本的に形のかわつた予算を組むということはもちろんできないし、二十八年度の不成立予算を骨子として組まれたものであると思う、これはけつこうであります。そこで施政方針の演説の場合に、大蔵大臣の御演説はきわめて丁重、要を得て、われわれの満足したところであります。ところが今日この暫定予算がようやくこの間通りましたが、本予算の通過に対して国民はどう考えておるか、大蔵大臣はどういうように御観測になつておるかということであります。ゆうべの夕刊を見ましても、証券界なんかの取引はほとんどない。財界空白のために国民は、めどが立たない。この予算審議が遅れておるということだけで、こういう状態が出て来ておるのです。これは国民の誤解かもしれませんけれども、国会はなぜ早くこの予算の審議を進めてくれないかという考えを持つておることは明らかであります。これはもちろん引延ばしをしておるわけではありません。またそういう心がけでやつておる者は一人もおらぬはずでありますけれども、国民があたかも大旱に雲霓を待つておる気持からいいますと、予算審議が一日延びる、半日延びるということだけでも、経済界に非常な影響を与えるのであります。これに対して大蔵大臣はどういうふうにこれを観測しておられますか。努力しておられることはよくわかりますけれども、この際、施政方針演説のときによく承りましたけれども、もつと簡単に、わかるように、数点をあげてこの予算の特徴はここにある、これを通してもらわなければこうだということを、国民によくわかるように、簡単でよろしゆうございますから、国会を通してお話をしていただきたいと思います。
  263. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 四、五、六、七の暫定予算が、皆様の御協力によつて通りましたけれども、暫定予算は、その性質上骨格予算にわずかの皮と肉をほどこしたにとどまつておりまして、まことにこの点は、今仰せなつたように、おそらく国民各層、八千万国民はことごとく一日も早く本予算案の通過を切望しておることと私は存じます。またその予算案が通過いたしませんがために、また遅れておりまするがために、いろいろな方面に議論がありますことは……。     〔発言する者多し〕
  264. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御静粛に願います。
  265. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 でございますので、私どもといたしましては、この予算編成された趣旨にかんがみまして、一日も早くこの予算案の通過を希望する次第であります。たとえて申しますれば、今の減税というものも、一千二十三億円の減税を盛つてありますが、これが通過いたしませんと、この減税案も措置することはできません。あるいはまた軍人恩給その他遣家族の人たちに対しても、五百億のものを出すことになつておりますが、これも予算が通らなければ、一文もこれを出すことはできません。私どもは時間的に、時期的に必要な分は、いろいろ盛り込んであります。公共事業費といい、あるいは食糧増産対策といい、これらの巨額の費用に対しましては、いずれもその計画を伴つておるのでありまして、私たちはこういつたことは、一日も早く皆さんの御協力のもと通りますことが、今の日本国民経済のために、最も望ましいことであると考えておる次第でございます。この上とも御協力のほどを、切にお願いしてやまぬものでございます。
  266. 小林絹治

    小林(絹)委員 次に、保安庁長官に簡単にお尋ねしたいと思います。保安庁長官のメモと申しますか、それについて数日間、こうして予算委員会で問題になつておるのであります。現在の警備隊というものは、軍隊ではなく、警備隊であるという建前のものでありますから、軍の場合とは全然違いますけれども、似通つたものであることは確かであります。そこで軍の場合はどうてあつたかというと、作戦用兵については、帷幄上奏の範囲に属するものであつて、現に近衞内閣のときにおいて、陸軍大臣は、総理大臣が幾ら尋ねても教えない。総理大臣は天皇陛下のところへ行つて、陸軍大臣がどう言いましたか、これはどうなつておりますかということを聞いて来たそうであります。これは軍といたしましては、国家の最も秘密事項でありますから、これは出せないのがあたりまえだ、しかし今日保安隊は軍とは違いますから、その点は違いますけれども、精神においては保安隊と軍は似たようなものである限りは、やはり似たようなものであると考えなければなりません。そうしますと、おそらく国民の中には、そういうような大事なことを国の利益から考えたら、発表してもらわない方がいいと考える人の方が多いんじやないかと私は考える。もとより兵力量の問題につきましては、予算を伴うことでありますから議会に出さなければならぬわけで、作戦用兵の面と兵力量の面との区別を十分につけられて明らかにしていただければ、非常によいと考えております。これは今日その問題について、今ただちに御答弁を要求しておりません。これはいつかの機会においてその点について明らかにしていただければ、保安庁長官の態度がきわめて公明正大なものであると、国民の大多数はこれを支持するということになろうと私は考えております。爾余の大臣に対する質疑もありますけれども、時間があまり長くなると思いますから、これでやめることにいたします。(拍手)
  267. 尾崎末吉

    尾崎委員長 河野金昇君より関連質問の申出があります。二問に限つてこれを許します。河野金昇君。
  268. 河野金昇

    河野(金)委員 先ほどの小林君の質問を聞いておりまして、これでは委員長並びに大蔵大臣にお伺いしなければならぬと思いますが、本予算は一体遅れておると思つておられますか。申合せの日にちは十三日であつたと思います。十三日より過ぎれば遅れているとかなんとかいうことも言えると思うのですけれども、今まだその進行過程にあるわけです。しかもこの申合せは、総括質問に対して総理が続いて出るという条件のもとに、十三日というのがきめられておつたわけです。その総理は、御承知のように、総括質問がきのうまで遅れておつたことは現実の問題であるわけであります。だから遅れておつたとするならば、総理大臣が本委員会に出て来ることを、病気を理由にして出て来なかつたところに原因があるのであつて委員会全体としてはまだ申合せの時間を過ぎておるものでは断じてないのであり、この審議の途中において、遅れておるとかなんとかいうようなことを言つてやおちよう質問をするということは、今後の審議に非常な影響があると思うので、一体委員長はどういうふうに考えておられるか、まず委員長に承りたいと思います。
  269. 尾崎末吉

    尾崎委員長 御質問の趣旨は、この予算審議が遅れておるのか予定通り進んでおるのか、こういう御質問のようでありますが、先ほどの小林君の御質問は、ただこの予算の審議が遅れるという意味だけでなくて、いわゆる二十八年度予算が遅れておる、こういう意味も含まつておるようでありますので、それらの点はよく速記録を取調べました上で、御返事を申し上げることといたします。
  270. 河野金昇

    河野(金)委員 二十八年度予算が遅れている、こんなことはわかり切つておることで、ああいうむちやな解散をして、暫定予算を今日まで出して来たから遅れておることはあたりまえのことでありまして、ここで問題になるのは、いわゆる今まで理事会なんかで申合せて来たことであろうと思うわけであります。だからおそらくこの過程において、今遅れておるとかなんとかいうことは、委員長としては言えない立場にあろうと思います。それを委員長があえて認めるというならば、おそらくそういう審議の運び方をやつた委員長にも責任があるのであつて、私は先ほどの小林君並びに大蔵大臣とのこのなれ合いの質問というのは委員会の審議を無視するものである、こう考えるのでありますが、重ねて委員長はどう思われるか。同時に大蔵大臣は、現在の過程において遅れておると思われるか。一体われわれ野党の者が遅らせておるのか、むしろ今日までの状況においては、遅らせて来たものは、総理大臣が易々として怒つてここから帰つて行くことがこの審議を遅らせておつたり、出せるものを——警備計画にしてもあるいはアメカと交渉の経過にしても、やつておりながら、持つておりながら、出さないというところにこの審議の遅れておる原因があるであつて、あげて原因というものは政府側にあると思うのであります。一体委員長並びに大蔵大臣はいかように考えておられるか、承りたいと思います。
  271. 尾崎末吉

    尾崎委員長 河野君に重ねてお答え申し上げます。先と申しましたように、小林君の質疑は、委員長におきましては二十八年度予算が遅れておるという意味の方を多く受取つておるのでありまして、この予算の審議が遅れておるということが全部であるように受取つておりません。従いましてただいま河野君の御質問のように、本予算の審議は皆さんの御協力によりまして申合せの日までに上るものと考えておりますので、その点につきましては何ら私は疑いを持つておりません。(拍手)この段お答え申し上げます。
  272. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私は今申し上げましたように、この暫定予算が出ておらぬから、一日も早くこれが成立することを国民があげて希望しておるということを申したので、遅れておるとか遅れておらぬとかいうことを一言も申し上げてないことは、よくあなたが御存じの通りであります。
  273. 尾崎末吉

    尾崎委員長 辻政信君。
  274. 辻政信

    ○辻(政)委員 大蔵大臣にまずお伺いをいたします。今年度の国会運営のための予算が、昨年に比しまして四億二千五十五万円の増加になつておりますが、この増加を認めなければ、国会の運営ができないものとお考えになつたかどうか。  もう一つ質問は、あなたは自由党の議員として七月四日に本院を通過しましたこの増加予算に対する法律案の採決に御賛成なさつたか、反対なさつたかということを承りたいと思います。
  275. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私は議会運営上必要であるということでござりましたので、その点はこれを認めたのでございます。さらに私は一代議士として、この案に賛成をいたしております。
  276. 辻政信

    ○辻(政)委員 行政費を四十億円削除されておりますが、それはまだまだなまぬるいものであり、もつと断行しなければならない。断行できない理由は、国会みずからが自粛しないことにあるとお考えになりませんか。
  277. 小笠原三九郎

    ○小笠原国務大臣 私は国会も自粛されておると存じます。しかしながらその自粛の程度が足りるか足りぬかということは、これは御解釈によることと思います。
  278. 辻政信

    ○辻(政)委員 緒方副総理にお伺いいたします。この問題についての各党の態度を見ると、鳩山自由党はさらに徹底した自粛を建議し、また小会派は人民党を除いて全員賛成であり、改進党は本委員申の冒頭において川崎氏が自粛に賛成の意見を述べておられる、また両派社会党は、貧乏人の味方でありますから、おそらく御異存がなかろうと考えるのであります。そういう意味におきまして、この自粛案というものは、おそらく全部の国会議員の良心的賛成を受けるものと私は考えるのであります。今日二千億円を越すような、あの涙の出るような九州の災害を私どもは見まして、輿論の反撃を受けたこの予算案の通過に対して、政府としましてその施行を無期限に延期するという法案をお出しになるお気持はないかどうかということをお伺いいたしておきます。
  279. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 ちよつと質問者に伺いますが、どの法案の施行でありますか。
  280. 辻政信

    ○辻(政)委員 議員の滞在手当の増加であるとか、立法事務費の配付、そういうものの施行を無期延期するという法案について、お考えになつておらないか。
  281. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 お答えいたします。議員の待遇に関する件は議員が体面を保ち、また国会議員としての職責を遂行いたします上に必要なものは、国会の良識によつてきめられて参つておる。それを行政府が廃止する法案を出そうという意思は、政府として持つておりません。
  282. 辻政信

    ○辻(政)委員 次に内灘問題につきまして、緒方副総理にお伺いいたします。あなたは、林屋前国務大臣が地元に対して内灘の使用について約束された事項、この一月から四月末までを暫定的に接収し、その後は、地元の同意がなければ強制しないという約束を、政府として御確認になりますかどうかについて承ります。
  283. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 林屋大臣から、そういうはつきりした約束をしたということは、私は承つておりません。
  284. 辻政信

    ○辻(政)委員 呼んでお聞きになつたら、明瞭であります、この重大問題について。
  285. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 今呼ぶのですか。
  286. 辻政信

    ○辻(政)委員 あとでよろしい。  岡崎外務大臣にお伺いします。あなたは主任大臣として、内灘問題の処理にあたつて、政府に手落ちがあつたとお考えになりますか、なかつたとお考えになりますか。あつたとしたら、どの点が手落ちであつたかを伺います。
  287. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 政府としては、できるだけのことはいたしたので、特に手落ちがあつたとは、私は考えておりません。しかし結果から考えますと、条約上どうしても必要なものは提供すべきものであるということについて、地元の了解を得るべく努力する点が、十分でなかつたと思つて、今から残念に考えております。
  288. 辻政信

    ○辻(政)委員 地元のあのような強い反対は、どこに原因をするのか、外部からの扇動があつたとお考えになるかどうか、承ります。
  289. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 外部から多数の人が乗り込んで来たことは、事実でありまして、たとえば共産党の党員がとまり込みで内灘村に行つてつたということも、承知しております。しかしながらこれは別の問題でありまして、われわれとしては、その前にも十分地元の了解を得べく、最善の努力をいたすべきであり、またいたしたつもりでありましたけれども、結果は思うように行つていなかつたということについては、はなはだ残念だと思つております。
  290. 辻政信

    ○辻(政)委員 この問題は、金で解決できるとお考えになりますか。
  291. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはりくつから申しますと、金で解決のできる部分と、金で解決のできない部分とあるわけであります。たとえば地元の人たちが、祖先伝来の土地なり漁場なりを捨てるということについては、金の問題以外の強い愛着もありますし、また自活するという自分の誇りを持つことができなくなる心配もありますから、その点は私どもも十分了解いたしております。しかしこれも国の必要であり、またどうしてもやらなければならないものであるとすれば、この点については、はなはだ頼みにくいことでありますが、ぜひ地元の理解を得て、その程度の横軸をしのんでもらいたいというふうに、私どもは希望いたしております。
  292. 辻政信

    ○辻(政)委員 先ほど緒方副総理は、林屋前国務大臣が地元に公約したことを知らないような御答弁でありましたが、あなたは御存じでありますか。
  293. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはいろいろ伝わつておりまして、どの点か、私もおつしやることがはつきりわかりませんが、ただいま副総理にお聞きのものは、四月までであつて、それ以後は強制しては使わない、こういうことのように聞きました。しかしわれわれとしましては、四月までももちろん強制して使うという意味ではなくて、地元の了解を得て使う、こういうつもりで、方針をきめて来たのであります。しかしながら、四月以後全然使わないということは、私どもは言つておらないのでありまして、もし地元で心配しておるような風紀の問題とか、あるいはアメリカ軍と地元民との摩擦であるとか、あるいは予期すべからざる故障があつたならばともかく、そうでないならば、四月までためしてみて、結果がよろしければ、先ほど申したように、地元としては金でかえられない犠牲がありましようけれども、この点は理解を求めて、さらに引続いて使いたい、こういうつもりでおつたのであります。しかし四月で一応打切つて、その結果について地元民とよく話をしてみる、こういうつもりでありますから、当時の決定は、四月まで、こういうことにいたしております。
  294. 辻政信

    ○辻(政)委員 最初は地元の了解を得た上で使うというふうに御決定になつてつたのですね。そういたしますと、了解を得ずして強制された理由は、どこにありますか。
  295. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは四月が終りましてから、五月一月、十分話をいたしたのであります。  その間に、地元民が初め申しておりました風紀の問題とか、その他の点については、懸念を起すほどの結果はなかつたのであります。しかしながら初めから申す通り、地元としては金でかえられない犠牲を払わなければならぬという点があります。しかし当初は少くとも風紀その他の問題をもつて反対をいたしておつたのであります。その点で問題がほとんどなければ、ぜひ地元の了解を得たいと思つて、努力はいたしたのでありますが、十分なる理解を得られなかつた。遂に政府としては——そういつまでもほつておくわけには行きませんし、他方これだけ反対がありまして、それで今度はよそへ移すということになりましても、日本国内であれだけの長いところを、しかも雪のないところで試射場を得るとすれば、どうしても人のおるところになつてしまうのであります。そこでいずれにしても、これだけの問題があつて、そのあとで移すということになつては、もうとても移しきれない、こう考えましたので、やむを得ず、あそこを継続使用という決定をいたしましたけれども、とりあえずは国有地だけを使うということにしまして、民有地である権現の森等はさらによく地元と連絡して、話合いの上で、使うものなら使いたいと思つて、ただいまも話を継続しておるような次第であります。
  296. 辻政信

    ○辻(政)委員 大臣はこのような重大問題であるにかかわらず、なぜみずから現場に行つて説得されなかつたか。
  297. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も地元へ行つて話をしたいと実は考えたのでありますが、当時林屋国務大臣は地元の出身者でありまして、地元に対する親しみも非常に深い人であります。また年輩もわれわれより上で、そういう点では適任者と私は考えましたので、林屋国務大臣にお願いしたのであります。
  298. 辻政信

    ○辻(政)委員 最初に林屋国務大臣におまかせになつたことはわかりますが、四月以降の使用問題について、あなたは一回も行つておられない。私の見たところによりますと、あなたが頭の二つや三つぶんなぐられる覚悟で飛び込んで行つて、誠意をもつて説かれたならば、問題はほかの方に進展したのではないか、こう考えます。
  299. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も参りまして、おつしやるようなことでもつて話がつくならば、それは参つた方が必ずよかつたと思います。当時実は国会を控えまして、私としてはいろいろ忙しい仕事もありましたために、残念ながらその時間も許さなかつたような次第であります。
  300. 辻政信

    ○辻(政)委員 国会は休会中であり、あなたのお好きなアメリカの飛行機に乗つて行けば、一日で往復できるのであります。(笑声)
  301. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は別にアメリカの飛行機が好きだと言つたことはないのであります。そういう点は確かにあろうと思います。しかし私は行つてすぐ帰つて来るくらいの程度で、この話がつくとも考えません。参りますならば、やはり数日はどうしてもかかると思いましたので、それは事情が当事許さなかつたのでありまして、やむを得なかつたと考えております。
  302. 辻政信

    ○辻(政)委員 私はこの問題について、まず政府の公約に対して地方民がいかなる態度を持つてつたかということについて、第一に申し上げたいのであります。林屋国務大臣の公約に対しまして、地元の人たちは絶対の信頼をしておつたのであります。内灘は私の選挙区ではありませんが、この問題は重大な禍根を残すと思いまして、四月十九日、衆議院選挙の投票日に、単身村に行つたのであります。そうしますと、約百名の村民代表が集まつておる席上で、林屋さんの運動員であつた大徳という村会議員が立ちまして、私に食つてかかりました。何しに来たか、われわれは政府を絶対に信用している、四月末になつたら返してくれるというのだ、まだ十日以上もあるのに、あなたはこちらに来る必要はないから、帰りなさい。これほどまでに政府の公約に信頼しきつてつたのであります。また一人の漁師が立ち上りまして——これは最近出かせぎから帰つたばかりの漁師でありますが、その人の言つた言葉は、五万円は少々高過ぎると思つた、あるいは四月末になつて、政府は継続使用という難題をふつかけて来るかもしれない、そのときにはその半分をお返ししようというので定期預金にしてある。年の瀬を迎えてあの貧乏な村が、のどから手が出そうに考えておつた五万円であります。その二万五千円をお返しても四月末以降は継続使用に反対しよう、この純真な気持に対して政府はどうお考えになるか。
  303. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私もその点で政府の考え方が十分に相手方に伝わらずして、政府を信用しないようなことが出て参りましたことは、はなはだ残念に思つております。しかしながら外務省から派遣しました君たちは、少くともその四月までやつてみて、よければさらに継続使用をいたしたいのだという意向は、明らかに言つたはずでありますし、またそういう報告を受けております。なお今おつしやつたような五万円とかその他いろいろ畑地灌漑とか漁港の問題もありますが、もし四月までで打切つて数箇月の間あそこを使用するというのならば、私はこれだけの国費を使う理由は認めないのであります。私はできれば先々まで使用したいと思いましたからこそ、これだけの国費を出すことを決定いたしたのであります。その点では政府が決してあとからうそをついたというような気持はないのでありますが、ただその間の事情が十分に相手方に伝わらなかつたということは、先ほども申しましたように、はなはだ残念に思つております。
  304. 辻政信

    ○辻(政)委員 岡崎さんは林屋国務大臣の約束とあなたの考えとの間に、食い違いがあつたとお考えになりますか。
  305. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私もその点は林屋国務大臣にも数回確かめてみたのであります。林屋国務大臣は初めに行かれましたときに、とにかく四月までの継続使用ということで話をつけて来る、これはお願いしたのであります。しかしその報告によりますと、地元民の理解があつてこれは話しようによつては、またその試射の結果によつては、四月以降にも続継使用を交渉してみる余地は十分にあるいう報告でありましたので、私は林屋国務大臣もそういう意味で地元の意向もサウンドされたのであろうと考えておりました。あとになりますと、そうでないような話もたびたび聞きますけれども、当時は私は継続使用の話も時期によつてはできるのだということを林屋国務大臣自身からも報告を受けたのでありまして、その点では私どもの考えと食い違いはなかつたのだ、こう思つております。しかしまた選挙の中のことでありますから、地元からの要請もありましたろうし、その間の言葉の行き違い等があつたとも想像されるのでありますが、それはわれわれの承知しなかつたことであります。あとから考えますと、そういう選掌中のときであるから町朝は得なかつたでありましようが、さらに外務省からも人を出してよく理解を求める措置を講じた方がよかつたのであると、結果的にはその考えております。
  306. 辻政信

    ○辻(政)委員 地元の理解を得なければ強制しないということは、たびたび林屋さんからも承り、あなたからも承つたのであります。にもかかわらず、六月二日の休会中に突如として強制使用の方針を新聞に発表された、これに対して地元は非常な憤慨を覚えたのであります。この態度は暴力をもつて弱い女の貞操を奪つてから、左手に金を見せ、右手にどすを突きつけて言うことを聞かそうとする無頼漢と同じだ、私はそう感ずるのであります。——どこに政府としての信義がありますか。
  307. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほどのお話で御了解が行くと思いますが、私どもは決して不信義をやつているつもりではないのであります。ただ政府の考えが十分相手方に伝わらなかつたといううらみはありますけれども、決してそんな、今たとえに引かれたような考えでやつておるのではないのであります。現に今でも民有地に対する強制使用は差控えておりまして、地元の理解を得るように努めております。われわれは始終言つておりますことは、これは最後にはほかの場合でも法律もありますので、収用するということもやむを得ない場合もありましようけれども、強制的な収用ということは極力慎む、極力しない方針である。これは一貫した政府の方針であります。
  308. 辻政信

    ○辻(政)委員 最後の説得に現場に行きました伊関局長と田中官房副長官は途中石動で下車しまして自動車で金沢に行き、県庁前に集まつたデモ隊に恐れをなしまして、ほんとうに地元説得の使命を達せずして、小松からアメリカの軍用機に乗つてつたのであります。これを見た地元民はあれは日本の役人かアメリカの使いかと言つておる。あなたの態度をそのまま下僚が受継いでおるのであります。それについてあなたはあなたの下僚のこのような態度について、手落ちがなしとお考えになるかどうか。
  309. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは停車場等にもデモ隊が多数おるという報道を受けたそうでありまして、伊関局長にしても、田中副長官にしてもデモ隊に応酬するために行つたのではないのであります。もし普通の停車場におりて目的地に達することができなければ、使命を果すことはできないのでありますから、このデモ隊を避けて途中の別の道から県庁に到着しようという努力をしたことは、これは当然だと考えております。なお飛行機につきましては、折からアメリカの飛行機があつたので、これに乗つただけの話であります。しかもこれはその翌日の閣議に間に合うように、報告をするようにわれわれも希望しておりましたので、アメリカの飛行機の乗員を多少おろして乗つかつて来たようでありますが、これについて別段国辱でもなければ、アメリカのお使いをしているのでもない、むしろアメリカの飛行機の乗客をおろして自分の用に使つたと、こういうことであるのであります。
  310. 辻政信

    ○辻(政)委員 この運動が外部からの扇動に乗せられておるような印象を政府の方はお持ちのようでありますが、これは絶対にそうではないということを私は身をもつて見て参りましたから、御参考に簡単に申し上げておきま  六月十五日射撃再開の新聞報道を見まして、私は身をもつてそこに飛び込もうと決意をいたしました。ある者は宛名とののしり、ある者は扇動と非難をしましたが、好意を持つた者はみな危険の渦中に私が入ることをおそれて、極力とめたのであります。六月十四日の夕方現場に到着しましたときの状況は戦場さながらであります。まつたく戦場であります。千数百名の武装警官が赤旗を立てた労組と渡り合つている。村民は村長の軟弱な態度を責めるために役場を包囲して暴力を振つている。そこに共産党のオルグが全国から入つて扇動しようとしておる。それに対して新聞記者はまた全国から集まつておりまして、まつたく戦場と同じ光景でありました。その渦中に立つて第一に強調したことは、暴力はあくまで否定せよ、絶対に警官に抵抗してはならない。第二は国有地にすわり込むことは違法であるから、民有地に集結して合法的にやれ。第三はいかなることがあつても共産党の扇動に乗つてはいけない。この三つの条件を強く要求しましたところ、村民は全部非常な熱意をもつて賛成をして冷静に行動をしてくれたのであります。それが終つてから私は米軍のキャンプに参りまして三田村国警隊長に会つて、特に冷静に行動されるように、扇動者と地元の取扱いを区別をするようにということを懇々申し上げまして了解を得、次いでアメリカのT・ボルト中佐に面会をしまして、十五日の射撃開始を何とかして一日延ばしてくれぬか、現場の空気はごらんの通りである、もし無理をして不祥事件が行つたならば、日米親善関係を永久に破壊する、そう申しましたところ、彼は冷然たる態度で、私は第一線の指揮官です。日本政府は十五日にやつてよろしい、こう言つて参りました。それに基いてアメリカの司令官から、あした射撃の開始を命令しておるから、そのまま実行するものである。自分は政治家でない、こういう冷やかな態度をとつたのであります。これに対して、私は、あなたはそういうならば分隊長と同じではないか、いやしくも第一線の最高責任者として、この現場の空気を正しく後方に知らして、司令官をして大局を誤らさないこともまた第一線指揮官の使命ではないか、こう申しました。そうすると彼は私は代議士ではありません。あなたは日本の政府に言いなさい、こういうけんもほろろのあいさつで、私もむつとして参りまして、長い間戦場で君たちのお手並を拝見したが、あしたはまた久しぶりに君たちのお手並を拝見しようと申しまして、村民とともに弾着点の権現山に夜を徹したのであります。私はその際に特に現場で感じましたことは、約七百名の老弱男女か隻まつておりましたか、赤ん坊をおんぶしたおかみさんが非常に多い、七十人以上のおばあさんがおる、小学生の生徒がおる、そうして七百名ばかりがあの砂浜の上にかがり火をたいて夜を徹したのであります。雨が降つて参りましたから、どうぞお帰りくださいということを申し上げまして、大部分の者は冷静に家に帰へりましたが最後まで約四十名の漁師が残りまして、私と一緒に弾着点にすわり込む決意をしたのであります。翌朝になると約百名の警官が散開体形で包囲して参りました。私有地といえども立ちのけ、射撃の危険があるから、こういう理由でありますが、住民は非常に激昂して、まさに不祥事件が起ろうとするような空気でありました。その中に入つて両方をなだめて、警官は民有地の中の者を立ちのきを命ずることはできない、もし民有地の中に危害を加えるようなことがあつたならば、これはアメリカの落度であるから、米軍によく通報しない、この住民たちにけがさせないことについては私が現場において責任を負う、こういうことにしまして、ようやくその衝突を防いだのであります。東京から持つて参りました日の丸の旗を立てて、地元の人に対しては、絶対にこの砂浜には赤旗を立ててはならない、あなた方の行動はあくまで日の丸のもとに合法的に冷静にやりなさいということを述べまして試射開始を迎えたのであります。八時五分に第一発が出たときに、とうとうやりやがつた、えらい遠慮しとるね、こういう声が異口同音に聞えて参りました。アメリカは手控えまして、小さな口径のたまを撃つたために、危険は起らなかつたのであります。私は九時にそこをたちまして、地元の人の、助けてください、お願いしますという涙声を聞きながら、まず金沢に行つて柴野知事に会つて現場の状況を詳しく申し上げ、善処をお願いしまして、開院式の朝東京に帰つて参りました。外務大臣の秘書官を通じてただちに現場の切迫した状況をお伝えしようとしましたところ、今日に至るまであなたから私はまだ回答を受取つておらぬのであります。あなたは現場に行かれない。現場の認識をしようと思つたならば、国会議員として現場を見た者の、その報告をなぜ聞こうとしないのか。何によつてあなたは真相をつかもうとされるのでありますか、その点について承ります。
  311. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の了解するところでは、あなたの面会のお申込がありましたが、そのときは時間がなくてお会いできなかつたが、その後あなたの都合のいいときにさらに連絡してくだされば、時間があればいつでもお会いする、こういうつもりでおります。
  312. 辻政信

    ○辻(政)委員 私はそのあとですぐアメリカ大使館に行きまして、アリソン大使に事を伝え、善処をお願いしようと思いましたが、不在のためにラム書記官に会つて、くれそれもむちやをやらないように、アメリカは今重大な関頭に立つておる、中国において失敗し、朝鮮において失敗し、日本においてまた失敗しようとしておるじやないか、たまの力をもつて砂浜を押えることはできるだろうが、たまの力で日本人の民心をつかむことはできない、そういうことを強く申し上げたのであります。  以上が、私の今までに現地へ行つて見た状況でございますが、その後依然真剣にこの反対運動が続けられて、日連宗のお坊さんたちは、すでにきようまで約十七、八日間絶食をやつております。あと一週間で生命の危険がある。赤ではなくて日蓮宗の宗徒が立つておる、こういう結果をお考えになりまして、これからのしまつをどうつけて行くかということについて、主任大臣としての御見解を承りたいのであります。
  313. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はあくまでも地元の理解を得てこの問題を円満に解決したい、と考えております。
  314. 辻政信

    ○辻(政)委員 緒方副総理は林屋国務大臣が地元に約束したことを知らないと言われておりますが、私は直接あなたに報告をしております。四月までである、それから以降は地元の了解がなければ強制しない、この公約を直接あはたに申し上げております。たとい私が申し上げたことをお忘れになつたとしても、これほど重大な問題をあなたは知らないという態度は無責任きわまるじやありませんか。
  315. 緒方竹虎

    ○緒方国務大臣 確かにあなたからそのことを承りましたが、林屋君にそれをお尋ねしたときには少し違うのです。林屋大臣が現地にどういうふうに約束したかということは私は的確に承知しません。政府におきましてそれを決定して行きましたことは私すつかり記憶しておりますが、それはまず四箇月間試射をやる、その結果さらにまた続けたいという意思を最初から持つておりました。その意味は林屋大臣が初めに交渉に行きましたときに伝えてあると思います。その後選挙の際にいろいろなうわさがありましたが、その点は私の方で突きとめておりません。
  316. 尾崎末吉

    尾崎委員長 辻君にちよつと御了解を願いますが、外務大臣は六時に約束があるそうですが、外務大臣に対する質問の点はもうよろしゆうございますか。
  317. 辻政信

    ○辻(政)委員 もう一つやります。どうか現地の実情を認識願いたい。地元氏の憤慨は政府のだまし討ちにある、政府として尽すべき手を尽しておらない、あの貧乏な百姓や漁師たちをごまかしたという点に対する怒りであります。それを納得させるために使いをした政府の役人どもが誠意がない、勇気かない、責任感がない、その一切の責任は主任大臣たる岡崎外務大臣にあると私は確信をし、また平生から信義を興調し、筋を通せとおつしやる緒方さんが、内閣の副総理として総理大臣を補佐しながら、この問題において信を民に失つてどこに政治があるかということを申し上げて、この項に対する質問を終ります。  次いで防衛問題について……。
  318. 尾崎末吉

    尾崎委員長 外務大臣はよろしゆうございますか。
  319. 辻政信

    ○辻(政)委員 いや、もう一つ聞きます。防衛問題の順序をかえて、まず岡崎さんに対して最初にお伺いしますが、あなたはMSA交渉にあたり、アメリカ側からの回答によつて日本の保安隊は自衛以外に使わないというその文句をもつて保安隊を将来海外に派遣されるような心配はないとお考えになりますか、それを伺います。
  320. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 保安隊が海外に派遣されるということは、日本政府なり日本の国が決定することでありまして、MSA援助の決定によつて強制されたり、あるいは将来そういう援助を受けたためにやらなければならぬようなはめに入るということはないと考えます。
  321. 辻政信

    ○辻(政)委員 自衛という問題について私の見解を述べますと、日本の平和と秩序を脅かす最大の敵は、バイカル以東の大陸に基地を持つた敵性空軍及び樺太、千島に基地を持つた敵空軍であります。この空軍に対して日本を守るということが自衛の最大の点であります。それらの飛行機を領空に迎え撃つということはできないのでありまして、自衛ということは勢い大陸の空軍基地を支配しない限り、広義の自衛というものは達成されない。その意味におきまして自衛の名において、自衛の名目をもつてアメリカ日本の保安隊を大陸に使うという理論的根拠があるのであります。あなたはこちらが決定すると言われておりますが、この条約のとりきめは弱者が強者に対する条約であります。この解釈は強者に強制されるという憂いが多分にある。あなたは外務省の役人として長い間中国にお勤めになつておる。日本と中国との間の条約上の解釈に差があつたときに、あなたは日本の解釈を中国に強制したことはないか、アメリカに有利な解釈の余地を残して、日本の青年を米国の代理として海外に派遣し得るような理論的根拠を与えるところの態度は、はたして日本外務大臣といえますか。私は少くともこのMSA交渉においては、はつきりと日本の保安隊は海外に派兵しないという一札をおとりになつておくことが必要であろうと考えるのであります。実力が対等の場合においては条約の解釈は自主的に決定できますが、弱者が強者と結んだ条約というものは常に強者の意思に強制される、あなたはこの相互援助条約の目的を西欧諸国の結束を強化すると言つておられますが、それはアメリカの言い分であります。われわれから見るとアメリカ自衛力を強化される、それを注意しなければならぬのであります。あなたが内灘村民に対しておとりになつたように、この金と威力でもつて弱者に臨んだと同じような態度をやがてはアメリカ日本に臨んで来るということを十分御承知の上で、MSA交渉においてはこの最後の一線を譲らないように特にお願いをしまして、あなたに対する質問を一応打切りたいと思います。
  322. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 別に答弁を必要とされないようでありますが、念のために申し上げます。おつしやるように自衛という意味は非常に幅の広いものでありまして、今おつしやたような意味もありますれば、そうでなくて、ほんの警察力に足らないものでも、やはり自衛は自衛であります。そこでアメリカの解釈に強制されるおそれはないかという点でありますが、私は理論的にいつてそういうことはないと考えておりますのは、安全保障条約の中で、日本は自衛の国有の権利を持つておる、しかしながら、その権利を有効に行使する手段を持たない、従つて直接侵略に対してはアメリカがこれに当り、国内の防衛は日本が当る、こういうふうにはつきり解釈がきまつておりますから、日本の保安隊は、少くとも直接侵略を目的としてつくられたものではないということは明らかであります。従つてこの点については、自衛は広い解釈でありますが、日本の持つ固有の自衛の権利の有効な行使は、ただいま国内の防衛だけにとどまつておるということが、条約上はつきりしておりますから、その点からいつても、私は懸念がないものと考えております。
  323. 辻政信

    ○辻(政)委員 ただいまのお言葉ははなはだ解せないのであります。現在のことを言つておるのではなくて、近い将来どうなるかという問題です。安保条約の前文の終りの方には、日本は国連憲章の目的及び原則のもとに、自由の防衛のために漸増的に責任を負うことを期待する、こう書いてあるのであります。吉田総理見解もまた、一日も早く米軍撤退を要求して、独力で守ろうということだと思います。そうなつたときに、当然今日の保安隊というものは、省接侵略に対して守るべき軍隊になるのであります。現在はそうでないといつて逃げることはできない。将来の問題について懸念があるから、はつきりした一札をおとりなさいと、私は申し上げておるのであります。
  324. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その場合のことを申しますと、それはずつと先のことになりましようけれども日本の国は日本人の手で守りたいというのが、われわれ一同希望しておるところであります。しかし、かりにそういう場合を想定しますと1今おつしやつたのはその場合だと思いますが、その場合は、アメリカと対等ではないかもしれぬが、少くとも日本自分の国を自分で守るだけの実力を備えたときを想定するわけであります。そのときはまた、アメリカ側から弱者と強者ということで解釈を強制されるような事態にはなつていないと私は考えております。
  325. 辻政信

    ○辻(政)委員 イギリスがアメリカと結ぶ条約と、日本アメリカと結ぶ条約とは、本質的に差があるということをお考えになつていただきたいのであります。あなたの答弁は、まるでダレス長官の代弁のように感ずる。日本外務大臣ではない。日本の利益のために最後の一線を守ろうとする努力を、とやかく弁解する態度は、ダレスの代弁者としか考えられない。
  326. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 あなたは、日本外務大臣でないということを、どういう理由でおつしやるかわかりませんが私はあなたに劣らず日本の利益のために努力をしておるのであつて、そんな疑いははなはだ心外であります。われわれはそういう心配がないということを信じておるから申しておるのであり、また、何べんも繰返すようでありますが、アメリカからはつきりした一札をおとりなさいとおつしやるけれども、われわれが自主的にきめ得ることであり、きめるべきものであることを、アメリカから保証してもらうというような自主性のないことは、やりたくないのであります。
  327. 辻政信

    ○辻(政)委員 アメリカから保証してもらうのではないのです。アメリカに対してこちらの意思をはつきり反映さして行くという意味であります
  328. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その意向は、たびたびここでも申しておりますように、これはわれわれが自主的に決定するのだということであり、これはアメリカ側にも十分申しております。しかしながら、それの一札をとるということになりますと、日本のきめることをアメリカに保証してもらうということに、アメリカ側にとられやすいから、私は協定なり条約なりの中の一項としてはとるべき問題ではない、こう考えております。
  329. 辻政信

    ○辻(政)委員 現に最も重要な国家の防衛を、アメリカにお願いしておるのですから、将来のそのような保証をアメリカにしてもらうということは、決して矛盾はしておりません。
  330. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはどうも御意見の相違になりますが、われわれもアメリカから防衛してもらつておることは認めますが、できるだけ早くそういう態勢をやめたいと思いまして、常にこれは暫定的の条約であるということを申しておるのでありまして、われわれはできるだけ自主性をもつてきめたいと考えておるのであります。その点で一札をとるとらないは別といたしまして、あなたの今おつしやつたような考え、つまり日本の国民の考えは十分アメリカに徹底させるつもりであります。
  331. 辻政信

    ○辻(政)委員 岡崎国務大臣は時間がないそうでありますからこれだけにとどめまして、次は木村保安庁長官に対して、保安隊の内容についてお伺いいたします。  保安隊は軍隊にあたらずとたびたびおつしやつておりますが、それは当然将来の直接侵略に対するものであり、将来軍隊となるように育てるべきものと考えられますが、長官の御意見を承りたいと思います。
  332. 木村篤太郎

    木村国務大臣 御説の通り、ただいまは国内の平和と治安を守るべきものとして存置されておるのであります。今後日本が自主的に自衛態勢をいかに整えて行くかということは、大きな問題であろうと思います。そこで国民がすべてその気持になり、また国家財政がそれを許すときになりますれば、保安隊の性格もこれまたかわつて来ることは当然であろう。そのときには国会において十分なる御審議を願つて、さような態勢を整え得る保安隊となるであろうと思います。
  333. 辻政信

    ○辻(政)委員 そのときになつて保安隊を急に軍隊に切りかえてもなかなかならないのでありまして、軍隊に切りかえるというお見込みをお立てになつたならば、今から軍隊らしく育てて行くことが必要なのであります。警察予備隊的に育てるか、軍隊になることを予想して、装備、編成、訓練をやるかということについて御見解を伺いたい。
  334. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいまの保安隊は、今申します通りもとより国内の平和と治安のために設けられたものでありますが、しかし普通一般の警察とは、これまたその性質を大いに異にしておるのであります。要するに今の警察力をもつてしては、とうてい対処し得ないような大擾乱、大反乱の際、もしくは不幸にして外国の集団暴徒が侵入して来た場合には、これまた国内の平和が乱れるのでありまして、そのために対処しなければならないのであります。それに対処し得るようにわれわれ装備、編成、訓練をして行きたいと考えております。
  335. 辻政信

    ○辻(政)委員 私の見解によりますと、現在の保安隊は、現状から申しまして警察でもなければ軍隊でもない。なぜ軍隊でないかといいますと、動員能力も持たなければ補充能力も持たない、これは軍隊ではないのであります。ちようどおたまじやくしに足が二本はえたようなものであつて、その足の二本はえたおたまじやくがかえるになろうとして成長しつつある。従つて私の伺いたいことは、将来これをかえるにするのだということを念頭に置かれて、育てて行かなければならないということを申し上げておるのであります。
  336. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答え申し上げます。それはもちろん先ほど申し上げました通り、国民の輿論がそこにあり、また国会で審議されて、ほんとうの意味における自衛組織をつくり得るという段階になつて、初めてそれに転換し得ると考えております。
  337. 辻政信

    ○辻(政)委員 現在の保安隊の内容は、アメリカの傭兵的性格がきわめて強いのでありますが、長官の御所見を承りたい。
  338. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。御承知通り、警察予備隊から昨年の十月十五日をもつて保安隊に切りかわつたのでありますが、それ以後においては、アメリカ駐留軍のいろいろの指導を受けたことは事実でありまして、それはやむを得なかつたことだろうと思います。そこで保安隊にかわつてからというものは、われわれといたしましては、日本独自の見解もとにこれを育てて行きたい、こういうことで着々やつておる次第であります。しかしながら何と申しても、やはり従来のいろいろなしきたりもありますから、多分にアメリカ式のあることは事実であります。しかしわれわれといたしましては、今後十分にこれを研究いたしまして、日本独自のやり方にかえて行きたい、こう考えて努力しておる次第であります。
  339. 辻政信

    ○辻(政)委員 ついでに指揮関係についてお伺しますが、長官はしばしば直接侵略は当然間接侵略と同町に起るとお答えになつております。そういたしますと、同一方面に保安隊と米軍がいわゆる戦闘行動をともにする事態が起きて来ると思います。その際に日本の保安隊を米軍が指揮するのか、協同して行くのか、あるいはその場になつて指揮関係をきめるのか、その点についてお伺いいたします。
  340. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。日本の保安隊はどこまでも日本の指揮権が行使されるのであります。アメリカの指揮のもとに入らないとわれわれは考えております。そこで今お説のごとく、不幸にして直接侵略のあつた場合に、どういう立場をとつて行くかということになりますと、私は今の考えのもとには、その場合においても日本独自の指揮のもとにやらなくてはならぬ、いやしくもアメリカの指揮下に入つてはいけないという建前をとつて私は進みたい、こう考えている次第であります。
  341. 辻政信

    ○辻(政)委員 その御意見は確かに私としましては納得の行く御意見でありますが、それを貫くためには容易ならぬ圧力が加わるものと思います。その点を一言御注意申し上げます。  次は保安隊の現在の編成についてお伺いいたしますが、この編成は保安隊の任務を達成するに、はたして適当しておるものとお考えになりますかどうか。
  342. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。ただいまの編成は私は完璧のものとは考えておりません。いろいろ批判の余地はあるかと考えております。それで各方面意見を聴取し、またわれわれこれまで経験したところを生かしまして、これの十分な編成、装備を今後して行きたい、こう考えている次第であります。
  343. 辻政信

    ○辻(政)委員 完璧であるという意味ではなくて、私は根本的に考え直していただきたいというふうに考えています。現在の十一万の保安隊が四つの管区隊にわけられておりまして、一管区隊が大体一万六千名、その詳細なる編成は米軍の動員された戦時編成の一箇師団と同じ編成をとつておる。米軍の戦時編成は海外に出て正規軍と戦うために都合のいいような編成でありますが、保安隊は日本国内を守るために都合のいい編成をとるということが原則である。その意味におきまして、現在の編成は根本的に改めるべきであります。その一例を申しますと、一管区いわゆる一箇師団が二千両のトラックを持つておりますが、ガソリンのない、道路の悪い日本において、国内警備にはたしてそれが適するかどうかという問題。いま一つは、日本でもアメリカでも同様ですけれども、いやしくも軍隊を持つている国は、平時は平時編成をとつておる。戦時になつて動員をしまして戦時編成になるのであります。現在の保安隊は平時から戦時編成をとつておるというところに、非常な不経済な点があります。人員の面においても、訓練においても、いらないものがよけいくつついておる。私の考えによりますと、経費をまさないで二倍に近い八箇師団に相当する平町編成に切りかえ得ると信ずるのであります。そういう意味におきまして、この編成問題は根本的にひとつお考えになつていただきたいと考えるのであります。  次は装備に移ります。現在持つておる装備が保安隊の任務達成に適するというお考えかどうか。
  344. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。まず編成の点でありますが、お説の点ごもつともであります。十分に研究して、どういうぐあいにして行くかということについてまだ結論を得ませんが、今のままではいかぬと考えております。  それから装備の点でありますが、しばしば申し上げます通り、ただいまの段階におきましては、これは十分なものではないと考えます。また適切なものではないと考えます。この点につきましては今後大いに研究して、保安隊として有効適切なものに切りかえて行きたいと考えます。
  345. 辻政信

    ○辻(政)委員 十分ではないというお考えであり、また将来適切にしようという御答弁でありますから、それ以上追究はいたしませんが、私が保安隊を見ての率直な感じは、アメリカの廃員兵器展覧会という感じを受けるのであります。具体的に申しますと、いわゆる歩兵連隊に相当すべき普通科連隊において十二、三種類の火器を持つておる。こういう軍隊はどこにもない。小銃は二種類。重機関銃は水冷、空冷の二種類を持つておる。自動小銃と軽機関銃は体格に合わない。迫撃砲とバスーカがこれも二種類。戦車に至つてアメリカのM二四型戦車でありまして、これは二十トンの重量を持つておりますが、朝鮮の戦線に持つてつてソ連製のB三四型にたたかれまして使いものにならない。スクラップにするところを、日本に持つて来て保安隊に貸してある。十五榴に至つては牽引車を含め荷重が二十トン以上であります。こういう重い車両は日本国内防衛のためには橋が落ちて、機動力がないということになるのであります。日本国内を守るために真に必要なものは、むしろ五トン内外の軽装甲車、多くも十トン以下の戦車、こういう程度に限定すべきものである。ただほめられるのはジープだけであります。通信器材はもちろん器材そのものにおいては良好なものがありますが、その種類が非常に多いために訓練が不便であり、波長の配当にきわめて困難であります。しかもこれらの兵器は太平洋戦争において、われわれの戦友を殺したものである。その幽霊の出そうな寝ざめの悪い廃品兵器を日本の青年が持つて、はたしてどのような気持で祖国防衛の信念を固めるか。私はその点から考えますと根本的に改めてもらいたい。のみならず、これらの兵器及び弾薬の一切は、米軍顧問が管理をしておる、その許可を受けなければ使えないのであります。保安庁長官は裸の人間だけを管理されておる、こういうような軍隊は自衛軍とは言えない。この根本問題を解決するのは、防衛生産を国内において自給することではないか。万一MSA交渉において、アメリカから完成兵器をもらうような約束をされますと、今度の完成兵器という名において送られるのは、朝鮮の戦線において使い古した兵器である。決して日本を守るべき適切な武器ではない。私は特需の減少によつて崩壊する日本の重工業を救うという意味におきましても、この防衛生産の自給については、真剣にお考えを願いたいと考えるのであります。この点についての長官の御所見をただしたいのであります。
  346. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。その点の御希望は、私はまことに傾聴に値すると思います。まつたくその通りであります。しかしながら今アメリカから借りておる武器にいたしましても、必ずしも全部が廃品同様というわけではありません。大いに日本の保安隊で使つて間に合うものもあるのであります。戦車にいたしましても、M二四はまことにお説の通りであります。しかしこれは訓練用にいたしまして決して役に立たないものとは言えないのであります。しかしながらお説の通り日本において防衛生産を十分発達せしめて、日本の愛すべき保安隊員が使う武器だけは、日本でつくつたものを使わせたいという気持は、私は持つておる次第であります。
  347. 辻政信

    ○辻(政)委員 それでは保安隊の現在とつておる戦法は、はたして現在の任務に適するとお考えになりますか。
  348. 木村篤太郎

    木村国務大臣 申すまでもなく、保安隊は日本の平和と治安を守るために行動する部隊でありますから、そのあらゆる場面を頭に置きまして、訓練をやつておる次第であります。あなたからの御批判のような不十分な点があれば、われわれは虚心坦懐にこれを取入れて、改善すべきは改善いたしたいと考えております。
  349. 辻政信

    ○辻(政)委員 私の見たところによりますと、現在保安隊のやつておる訓練は、アメリカの模倣というよりも百パーセントアメリカの直訳であります。戦法の基礎になつておるものは、無制限の鉄量をもつて敵陣地を耕して、歩兵が歩いて拾うという基礎観念から成り立つておる。しかし日本の国情において無制限に近い弾薬が太平洋を越えて補給されるかどうか、日本国内において補給できるかどうかということを考えると、このアメリカ戦法の根本というものは日本に適しない。特に欠陥の多いのは遊撃戦に対する経験を持つておらぬ。アメリカは遊撃戦に対する研究の経験もないのであります。間接侵略に対するならば、遊撃戦の研究とそれに対する訓練に重点を置くべきものと思いますが、今おつしやつたようにこれらの点を自主的に検討されて、至急改めていただきたいと考えるのであります。  次は訓練につきまして、この前富士の裾野でやられた演習は三千万円の費用を使つております。これは私の見解では師範学校の連合演習というような感じを受けたのでありますが、台湾の蒋緯国が参観に来ておりまして、その随行幕僚がこそこそ話しておつたのをかげで聞きますと、これでは役に立たない、役に立たないな、こう申しておつたのであります。外形というものを整えるのではなくして、あれだけの演習費というものはむしろ基礎訓練に徹底的にお使いになつた方がいいのではないか、こういう感じを受けました。その点についての御所見を承りたい。
  350. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。いろいろ御批判もありましようが、一応第一回の訓練といたしましてやつた次第であります。今後改善すべきものは当然改善したいと考えております。
  351. 辻政信

    ○辻(政)委員 次は保安隊の配置について伺います。国内警備の観点から申しますと、国家警察、自治体警察とその管区を一致させるということがきわめて必要であります。そうして平時から情報勤務、警備計画を立て、警備演習を行い、本部は同一地点に位置して人的交流をやり、あらゆる準備をするということがいわゆる国内治安に対する配備の着眼でなければならぬと思いますが、その点がよく調整されておるでありましようか、お伺いいたします。
  352. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。その点につきましては終始国警、自警と連絡をとりましてやつておる次第であります。
  353. 辻政信

    ○辻(政)委員 次に志願兵制度について伺います。現在二年間の志願兵制度になつておりますが、技術兵はどうかと申しますと、ようやく二年かかつて物になつて、一人前になつてしまいますと、すぐそれが除隊をしてしまう、こういうことになりまして、その訓練されて育てた者ができた後には飛ぶように売れて行く。そのために非常な技術的な欠陥を来しまして、私はそれが今日保安隊に自動車事故の多い原因ではないか、こう考えるのであります。この自動車兵とか通信兵とか、その他の者はこれは二年間では無理なんであります。無理でありまして、少くとも一年ずつダブるようにとるか、あるいは三年制にして行かなければだめだ。そういう意味において現在の制度に根本的な改変をされる必要があるのではないかと考えております。御意見を伺います。
  354. 木村篤太郎

    木村国務大臣 確かに通信、運輸その他の訓練につきましては、現在のところうは足りないと考えております。そこでどうしたらいいかということについては、今私たちはせつかく考慮中であるのであります。いずれそれについては結論を出して行きたいと考えております。
  355. 辻政信

    ○辻(政)委員 大分この保安隊が誤解をされて、いろいろ非難攻撃を受けておられ、その矢面に立たれる木村長官の苦衷はお察ししますが、これは将来にわたたりましてひとつお願いいたしたいことがあるのであります。それは絶えず民衆の生活と一致してその要求にこたえるようにすることがまず第一点。鉄道がストをやり、電源がストをやり、通信がストをやつた場合に、保安隊はただちにそれにとつてかわつて民衆の利便に資するようなものにしたい。災害があつた場合に出動されましたが、この際出動の能力等訓練をさらに重視され、これが全国的に動員をされて九州に持つて行かれる。災害復興と同時に非常に貴重な訓練となるのであります。そういうことをしたならば、おそらく社会党の諸君からも愛される保安隊になり得るのではないか、こう思うのであります。(拍手、笑声)また農民の耕地整理とか、道路、鉄道補修、橋梁等におきましても、地方からは資材だけを出させて労力をただで提供してやる。そうなりますと、結局土建屋のボスに入る予算が少くなりまして、保安隊が訓練をかねてこの民衆の生活に直結できるようになるのであります。そういう点についてはさらに重視をしていただきたい。昔のようないわゆる不生産的な軍隊ではなくして、生産に寄与する軍隊であるならば断じて世の中の非難は受けないと私は信ずるものであります。その点について長官の御意見を承りたい。
  356. 木村篤太郎

    木村国務大臣 まことにごもつともであります。われわれはどこまでも愛されるべき保安隊をつくりたいとせつかくやつておるのであります。現に北九州における水害におきましても、いち早く保安隊は出動いたしまして、あらゆる手を打つております。しかもそれが九州の人たちに非常に受けまして、現在佐賀県においては、県会において保安隊に対する感謝決議をやつておられます。各県においても、引続いて保安隊に対して感謝決議をされるということを聞き及ぶ次第であります。もちろん本土の方からもいち早く施設部隊、衛生部隊を特派いたしまして、着々この水難の救助に当つている次第であります。そのような点からいたしまして、将来ともほんとうに国民から愛さるべき保安隊をつくりたいとせつかく努力しております。(拍手)
  357. 辻政信

    ○辻(政)委員 保安隊の志気について簡単に承ります。長官は保安隊の志気は勇気凛々として振つているというお話ですが、これはパチンコ青年に比較すると確かに振つております。しかし社会の冷たい目で見られて日陰者であるというそのさびしさはおおい得ないものがあります。最近私は久里浜の保安大学を見学に参りまして、学生たちと話をしたのですが、これら四百名の青年は、ほとんど大部分が父兄から反対をされ、学校の先生から反対をされ、友人から反対されながら、敢然として日本を守るために志願をして入つておる。そうして入つて、幹部の素質があまりにも悪い、明確な指針もなければ見識もないというような点に彼らは非常に失望している。私は保安隊のあの青年を見まして、軍閥はなやかな時代に大臣、大将を夢みて入つたどもよりもはるかにすぐれているという感じを持つたのであります。真に今日の保安隊がりつぱなものになるのは、あの青年たちが一人前に成長した十年後であります。十年後にりつぱなものをつくるという遠大な計画を持たれて、あの生徒たちをりつぱに訓練するために全人材を動員すべさものであると考えますが、あなたの見解を承ります。
  358. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。私は、この保安隊は青年修行の道場なりという気持を打つております。ここで互いに共同生活をしてほんとうに友愛団結のこの精神を養えば、将来日本の基礎となる青年が育成されるのではないかと思いまして、その精神でやつておるわけであります。最近も私は保安大学を見て参りまして、親しく保安隊の諸君と会談をいたしましたのであります。今申されます通り、われこそはほんとうに日本の平和と治安を守つて行かなければならぬという精神が欝勃として起つております。お説の通り訓育するに人を得なければならぬことはごもつともの点であります。その点については、私は十分考慮を払つている次第であります。
  359. 辻政信

    ○辻(政)委員 次に保安庁の技術研究所の予算が八億四千万円の要求に対し大蔵大臣は一億五千万円に査定されております。この十年後の日本軍備を考えますと、その形態が根本的にかわつて参ります。そうして形態が一変して高度の科学技術部隊を中心としたものが生まれて来なければならぬ。その意味におきまして、保安庁予算の少くとも一割くらいのものは、この技術研究所に集中されて、全日本の科学技術者を動員する、そうしてこの研究された技術が民生にも国家の防衛にも寄与するようにしなければならぬ。一億五千万円のはした金だけではわずかに五十人の技術者を養うにすぎないのであります。こういうようなまことに貧弱なものでは、吉田さんのおつしやるように、国力の充実に伴つて将来りつばな軍隊をつくろうということはできなくなる。今日はその新軍備の芽ばえを出す時代であるということをお考えになつて、技術研究所に対して、大蔵大臣はもつと出せという態度をとつていただきたいのであります。その点について御意見を承ります。
  360. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私もこの技術面については力を注がなければならぬと考えております。ただそういう保安隊に関する限りだけではなく、すべて日本においては技術的にもつと躍進しなければならぬと考えております。ことに保安隊の技術研究所におきましては、私は今後大いにこの方面に力を注ぎたいと考えております。これをまた一面から見ますれば、民生安定に大きな役割を果すものと私は信じておる次第であります。
  361. 辻政信

    ○辻(政)委員 最後に締しめくくりとてひとつお伺いいたします。改進党は保安隊経費の二百億円の減額要求をしたということを新聞で見たのでありますが、自衛権を最も強く主張される改進党があえてこのような案をお出しになつた動機は、私が判断いたしますと、政府が軍隊にあらずとか何とかいつて逃げておられるようなえたいの知れない態度に対する抗議ではないか、こう解釈するのであります。長官は予算の査定において、千二百億円を要求したのに対して七百十八億円に査定をされておる。それをさらに改進党との政治的妥協のために二百億円の減額をする意思があるかどうか。千二百億を要求して七百十八億円に査定されたというだけでも、責任ある長官としましてはとうてい耐えられない。それをさなに二百億円政治的妥協のために削減するということは、責任ある政治家のなすべき態度では断じてないと私は思う。その点につきまして長官の御意見を承りたい。
  362. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私はどこまでも原案を希望する次第であります。おそらく改進党におかれましてもこの点については将来十分な考慮を払われるものと私は考えております。
  363. 辻政信

    ○辻(政)委員 私に与えられました一時間がちようど参りましたから、これで質問を打切りまして、他の機会に譲ります。
  364. 尾崎末吉

    尾崎委員長 本日はこの程度にしまして、次会は明九日午前十時より開会いたします。  これにて散会いたします。     午後六時三十二分散会