○辻(政)
委員 この運動が外部からの扇動に乗せられておるような印象を政府の方はお持ちのようでありますが、これは絶対にそうではないということを私は身をも
つて見て参りましたから、御参考に簡単に申し上げておきま
六月十五日射撃再開の新聞報道を見まして、私は身をも
つてそこに飛び込もうと決意をいたしました。ある者は宛名とののしり、ある者は扇動と非難をしましたが、好意を持
つた者はみな危険の渦中に私が入ることをおそれて、極力とめたのであります。六月十四日の夕方現場に到着しましたときの状況は戦場さながらであります。ま
つたく戦場であります。千数百名の武装警官が赤旗を立てた労組と渡り合
つている。村民は村長の軟弱な態度を責めるために役場を包囲して暴力を振
つている。そこに共産党のオルグが全国から入
つて扇動しようとしておる。それに対して新聞記者はまた全国から集ま
つておりまして、ま
つたく戦場と同じ光景でありました。その渦中に立
つて第一に強調したことは、暴力はあくまで否定せよ、絶対に警官に抵抗してはならない。第二は国有地にすわり込むことは違法であるから、民有地に集結して合法的にやれ。第三はいかなることがあ
つても共産党の扇動に乗
つてはいけない。この三つの条件を強く要求しましたところ、村民は全部非常な熱意をも
つて賛成をして冷静に行動をしてくれたのであります。それが終
つてから私は米軍のキャンプに参りまして三田村国警隊長に会
つて、特に冷静に行動されるように、扇動者と地元の取扱いを区別をするようにということを懇々申し上げまして了解を得、次いで
アメリカのT・ボルト中佐に面会をしまして、十五日の射撃開始を何とかして一日延ばしてくれぬか、現場の空気はごらんの
通りである、もし無理をして不祥事件が行
つたならば、
日米親善
関係を永久に破壊する、そう申しましたところ、彼は冷然たる態度で、私は第一線の指揮官です。
日本政府は十五日にや
つてよろしい、こう言
つて参りました。それに基いて
アメリカの司令官から、あした射撃の開始を命令しておるから、そのまま実行するものである。
自分は政治家でない、こういう冷やかな態度を
とつたのであります。これに対して、私は、あなたはそういうならば分隊長と同じではないか、いやしくも第一線の最高責任者として、この現場の空気を正しく後方に知らして、司令官をして大局を誤らさないこともまた第一線指揮官の使命ではないか、こう申しました。そうすると彼は私は代議士ではありません。あなたは
日本の政府に言いなさい、こういうけんもほろろのあいさつで、私もむつとして参りまして、長い間戦場で君たちのお手並を拝見したが、あしたはまた久しぶりに君たちのお手並を拝見しようと申しまして、村民とともに弾着点の権現山に夜を徹したのであります。私はその際に特に現場で感じましたことは、約七百名の老弱男女か隻ま
つておりましたか、赤ん坊をおんぶしたおかみさんが非常に多い、七十人以上のおばあさんがおる、小学生の生徒がおる、そうして七百名ばかりがあの砂浜の上にかがり火をたいて夜を徹したのであります。雨が降
つて参りましたから、どうぞお帰りくださいということを申し上げまして、大部分の者は冷静に家に帰へりましたが
最後まで約四十名の漁師が残りまして、私と一緒に弾着点にすわり込む決意をしたのであります。翌朝になると約百名の警官が散開体形で包囲して参りました。私有地といえ
ども立ちのけ、射撃の危険があるから、こういう理由でありますが、住民は非常に激昂して、まさに不祥事件が起ろうとするような空気でありました。その中に入
つて両方をなだめて、警官は民有地の中の者を立ちのきを命ずることはできない、もし民有地の中に危害を加えるようなことがあ
つたならば、これは
アメリカの落度であるから、米軍によく通報しない、この住民たちにけがさせないことについては私が現場において責任を負う、こういうことにしまして、ようやくその衝突を防いだのであります。東京から持
つて参りました日の丸の旗を立てて、地元の人に対しては、絶対にこの砂浜には赤旗を立ててはならない、あなた方の行動はあくまで日の丸の
もとに合法的に冷静にやりなさいということを述べまして試射開始を迎えたのであります。八時五分に第一発が出たときに、とうとうやりやが
つた、えらい遠慮しとるね、こういう声が異口同音に聞えて参りました。
アメリカは手控えまして、小さな口径のたまを撃
つたために、危険は起らなか
つたのであります。私は九時にそこをたちまして、地元の人の、助けてください、お願いしますという涙声を聞きながら、まず金沢に行
つて柴野知事に会
つて現場の状況を詳しく申し上げ、善処をお願いしまして、開院式の朝東京に帰
つて参りました。
外務大臣の秘書官を通じてただちに現場の切迫した状況をお伝えしようとしましたところ、今日に至るまであなたから私はまだ回答を受取
つておらぬのであります。あなたは現場に行かれない。現場の認識をしようと思
つたならば、国
会議員として現場を見た者の、その報告をなぜ聞こうとしないのか。何によ
つてあなたは真相をつかもうとされるのでありますか、その点について承ります。