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1953-07-02 第16回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二日(木曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 尾崎 末吉君    理事 小峯 柳多君 理事 西村 直己君    理事 西村 久之君 理事 川崎 秀二君    理事 八百板 正君 理事 今澄  勇君       相川 勝六君    植木庚子郎君       小林 絹治君    迫水 久常君       庄司 一郎君    鈴木 正文君       田中  元君    富田 健治君       中村  清君    灘尾 弘吉君       羽田武嗣郎君    葉梨新五郎君       原 健三郎君    船越  弘君       本間 俊一君    八木 一郎君       山崎  巖君    小山倉之助君       河野 金昇君    河本 敏夫君       櫻内 義雄君    中村三之丞君       古井 喜實君    松浦周太郎君       青野 武一君    福田 昌子君       武藤運十郎君    八木 一男君       横路 節雄君    和田 博雄君       加藤 鐐造君    小平  忠君       河野  密君    中居英太郎君       平野 力三君    三宅 正一君       石橋 湛山君    北 れい吉君       三木 武吉君    黒田 寿男君       辻  政信君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君         法 務 大 臣 犬養  健君         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         文 部 大 臣 大達 茂雄君         厚 生 大 臣 山縣 勝見君         農 林 大 臣 保利  茂君         通商産業大臣  岡野 清豪君         運 輸 大 臣 石井光次郎君         郵 政 大 臣 塚田十一郎君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         内閣官房長官  福永 健司君         法制局次長   林  修三君         人事院総裁   淺井  清君         人  事  官 入江誠一郎君         保安政務次官  前田 正男君         保安庁次長   増原 恵吉君         総理府事務官         (経済審議庁調         整部長)    岩武 照彦君         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     田中 義男君         農林政務次官  篠田 弘作君         運輸事務官         (海運局長)  岡田 修一君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ――――――――――――― 七月一日  委員吉川兼光君及び世耕弘一辞任につき、そ  の補欠として中居英太郎君及び石橋湛山君が議  長の指名委員に選任された。 同月二日  委員長谷川峻辞任につき、その補欠として富  田健治君が議長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  昭和二十八年度一般会計予算  昭和二十八年度特別会計予算  昭和二十八年度政府関係機関予算     ―――――――――――――
  2. 尾崎末吉

    尾崎委員長 これより会議を開きます。  昭和二十八年度一般会計予算外二案を一括議題として質疑を継続いたします。横路節雄君。
  3. 横路節雄

    横路委員 私は最初淺井人事院総裁お尋ねいたしたいと思います。先月の二十八日、六月の暫定予算を審議する予算委員会におきまして、私から淺井総裁に、給与ベース改訂それから期末手当改訂等について御質問いたしましたところ、淺井総裁から、資料は全部そろつてただいま集計中だ、だからその集計ができたならばお答えいたしたい、こういうお話であつたわけです。なお私からその際淺井総裁に、大蔵大臣から大体六月の十九日には昭和二十八年度の予算案を提出いたすというお話もございましたので、人事院といたしましては、できるだけその二十八年度の本予算に間に合うように、政府並びに国会に、この給与ース改訂並びに期末手当、年末手当等改訂について、勧告をしてもらいたいという要望をいたしておいたのでありますが、あれから一月以上たつたわけでございます。資料は全部整つたという話はもう一月半前のことでございますし、従つて人事院といたしましては、作業がずつと進んでもうすつかり給与ベース改訂についての手続をなさる寸前だと思うのでございます。いつごろ改訂なさるのか、それから給与ベースについては大体どの程度のものであるのか、その点についてお尋ねをいたしたいと思うわけでございます。なお淺井総裁に、きようの私の質問にはひとつ具体的にお答えしていただきたいと思うのでございます。予算委員会といたしましては、大体今月の十三日に本会議昭和二十八年度の予算案を上程する、こういうことにもなつておりますので、人事院としてもしも国家公務員並びに国家公務員生活実態考え給与ベース改訂を行うというのであるならば、時期としてはやや遅きには失するけれども、ここ数日中に勧告しなければ、二十八年度予算修正にあたつて各党態度等もございますので、その点ひとつ具体的に明快にお答えいただきたいと思います。
  4. 淺井清

    淺井政委員 お答え申し上げます。先月の下旬でございましたかお答えをいたしまして、その後着々と準備も進んでおりますが、まだ全部集計等終つたとは申しがたい状態にあるのでございます。これは決して怠慢とお責めになる性質のものではございませんので、人事院といたしましては十分信頼できる資料を整えたいと存じまして、遅れておる次等でございますが、だんだんと進んで参つておる次第でございます。なおこの予算審議中に勧告せよというお話がございました。まことにごもつともと存じますが、ただいまここで、しからばいつ何日に勧告をいたすかということはまだ申し上げかねる状態にありますが、御趣旨を尊重いたしまして、十分早くできるように努力いたしたいと考えております。
  5. 横路節雄

    横路委員 ただいまのお話は非常に抽象的で、一月半ほど前の総裁お答えと同じなわけです。もつと私は具体的にお話をしていただきたいと思うのですが、国立国会図書館調査立法考査局労働省調査資料として「日本経済資料」の五月号の中にこういうことが出ているのです。産業別現金給与月額を見ますと、昭和二十三年で一万二千八百八十三円だが、ことしの三月では一万四千八百五円に上つている。それから経済審議庁調べによりますと、製造業実質賃金指数昭和二十六年を一〇〇としますと、昭和二十七牛三月は一〇一・七で、昭和二十八年の三月は一一三・〇、約一二%近く経済審議庁調べを見てもこの製造業美質賃金指数上昇しているわけでございます。従つて私が淺井総裁お尋ねいたしたい点は、この国家公務員給与ベース上昇は、一体この一年間の民間給与ベースのどの程度上昇基礎にして勧告なさるのか、その点をひとつお尋ねいたします。
  6. 淺井清

    淺井政委員 大体その通りでございます。但し人事院調べておりまする調査におきましては、国家公務員と同じ職種の者を民間から選びまして、それを照し合せるので、ただいまお示しになつ資料とは少しく違う点がございますけれども、それは決して大きな相違を示すものではないと考えております。
  7. 横路節雄

    横路委員 それではただいま淺井総裁お話では、今私から申し上げました大体とられた資料は別にして、民間給与ベースはこの一年間に一二%近く上昇しておるという資料をもとにしてやつておるということになれば、人事院として勧告される給与ベースというものは、大体月額一万五千四、五百円程度のものなのかどうか。大体一二%の上昇ということになれば、そういうものが基礎になるのではないかと思うのですが、その点お尋ねいたします。
  8. 淺井清

    淺井政委員 お答え申し上げます。最初に申し上げましたように、まだその数字を出す段階なつておりませんので、従つてような公の席上でどれほどになるかということは申し上げかねるのでありますが、この前よりも相当上まわつた数字なつて出て来る、だろうと思つております。
  9. 横路節雄

    横路委員 それでは、具体的な給与ペースなつてはまだ言われないというお話ですが、先ほどのお話人事院としても、とられた資料は別であるけれども、民間給与ベースは一二%は上昇しておる、これを基礎にして算定する、この点については先ほどお話がございまししたから、そういうふうに了解しておいてよろしゆうございますか。
  10. 淺井清

    淺井政委員 お答え申し上げます。一二%かどうかは、用いまする資料にいささか相違がございますので、その数字については何とも申し上げかねますが、大体そういうふうな傾向になつておるものと思います。
  11. 横路節雄

    横路委員 淺井総裁お尋ねしますが、勧告の時期でございます。まさか七月三十一日午後十一時五十九分とかいうような、国会が今まさに終らんとする瞬間に勧告というようなことは、淺井総裁のいわゆる責任においてそういうことはなさらないと思うのですが、去年は国会の会期とは関係がなかつたかもしれませんが、ことしは現実に今予算をこうやつて審議して、各党とも、できるならば人事院勧告を待つて二十八年度のただいま審議されておる予算案の中で修正できるものならば修正をいたしたい、こういう考えなのです。ですから大体いつごろになるか。一体上旬になるのか、きようはもう七月二日ですから、中旬になるのか下旬になるのか。十三日の本会議には二十八年度予算を上程するわけですから、大体のめどについてはお立てになつておると思うのでありまして、その点ひとつお尋ねいたします。
  12. 淺井清

    淺井政委員 お答え申し上げます。七月三十一日と申しましたのは、それは法律上人事院が課せられておる限界を申しましたので、人事院といたしましては、なるべく早く勧告いたしたいという点につきましては御意見と全く同一でございます。ただ何日までにこれができるかということは、本日まだ申し上げる段階ではないように思つております。
  13. 横路節雄

    横路委員 淺井総裁に次にお尋ねいたします。この前の予算委員会で、期末手当についても給与ベース改訂勧告同様に、民間資科をただいま集計中なので、その資料整つたならばあわせて勧告をいたしたい、こういうお話でございましたが、今回の給与ース改訂勧告の中には、期末手当、年末手当等についても勧告なさる予定があるかどうか、その点をお尋ねいたします。
  14. 淺井清

    淺井政委員 お答えを申し上げます。そのよう準備をいたしております。
  15. 横路節雄

    横路委員 次に淺井総裁に、地域給のことについてお尋ねいたします。これは一部の新聞だけしか出ておりませんから真偽のほどはわかりませんが、人事院側意向として、現在地域給については一級から五級まで五段階にわけてあるのをこの際圧縮して、一級、二級、三級――一級は五%、二級は一〇%、三級は一五%、こういうように圧縮したいという意向よう新聞に伝えられておりますが、これに対する真偽のほど並びに今回の給与ベース改訂にあわせて、現在までいまだ地域給がついていないところ、いわゆる一級以下ついていないところ、こういう点は私の考えでは早急に、全面的に、現在地域給の不合理から地域給のついていないところは一級に、一級は二級に、二級は三級にというふうに、総体的に底あげをしなければどうしても不合理は是正できないと思うのです。その点とあわせて、人事院としては現在の五級のわくを三級に圧縮なさるのかどうか、この点をお尋ねいたします。それからなお勧告される考えがあるかどうか。
  16. 淺井清

    淺井政委員 地域給についてお尋ねでございましたが、人事院といたしましては、将来現行制度を何とか改めたいとは考えておるのでございますが、今回の勧告において、これを改訂するよう勧告するという考えは持つていないのでございます。将来の問題につきましては、国会にもいろいろ御意向がございますし、政府部内においてもいろいろ協議をしなければならない向きもございますので、根本的なことは考えておりません。ある新聞に、この国会において何か三段階に圧縮したものを勧告するというように見えていたかと記憶いたしますが、そのような事実はございません。
  17. 横路節雄

    横路委員 総裁にもう一点お尋ねしたいのですが、今の給与ベース改訂期末手当改訂にあわせて、現在のいわゆる地域給一級から五級までの中で、いまだついていない分、零になつているところ、そういうようなところや不合理な点――昨年の十二月の国会において、一部不合理な点などが残つたと思うのです。こういう点については改訂というか、修正というか、そういうことをなさる御意思があるかどうか、その点をお尋ねいたします。
  18. 淺井清

    淺井政委員 お尋ねの点でございますが、この国会においてそのよう措置をとる考えは持つておりません。それは不合理を打ち捨てておけばいいというよう考えからではなくて、実はそれはとうてい間に合わないと考えておるのでございます。御承知のごとく、地域給改訂は非常な手数を要するものでございますから、この国会において、それは間に合わないよう考えております。将来ただいまの不合理をどのように是正いたしますかということにつきましては、その根本的な問題とにらみ合せて、よく考えたいと思つております。
  19. 横路節雄

    横路委員 淺井総裁にもう一つ、そうすると作業がなかなか進まない。従つて時間的な余裕がないから今国会には勧告ができないということになれば、いつごろ一体その作業が全部終了して、地域給については改訂勧告なさるのか、大体の目安についてお答えいただきたいのです。
  20. 淺井清

    淺井政委員 お答えを申し上げます。将来ただいまの不合理をどう是正いたすかということは、結局今の地域給制度を根本的に将来どういたすかということと結び合せて考えなければならないように思つておりまするので、人事院といたしましてはただいまも申しましたように、国会人事委員会とも御相談をいたし、また政府部内においても関係方面協議をいたしまして、善処いたしたいと思つております。
  21. 今澄勇

    今澄委員 関連。今の地域給に関して、淺井総裁の都合もあるので関連して質問をいたしますが、この地域給は、まず地方からの厖大陳情が常に引切らぬ現状から見ても、人事院としてはすみやかに、この地域給に対する将来の根本的ななんと言うておらないで、この際態度を明らかにすべきものであると私は思います。そこで現在の都市中心物価農村方面物価とやや並んで参りました現状のもとにおいては、この地域給というものは将来どのよう考えられるか。地域給は、将来のことを考えてみると、これをこの際全廃する方針人事院が行つておるのか、それとも全廃はしない、地域給はやはり今後とも必要であるのか、まずこの根本方針ぐらいはこの国会において表明されないはずはない。まずこの点を第一点として淺井総裁から承りたい。  第二点は、将来人事院地域給を廃止するものとすれば、そのコースはどういうコースで漸進的にやるのであるか、廃止しないものであるとするならばその理論的根拠は何であるかという、この二点についてお答えを願いたいと思います。
  22. 淺井清

    淺井政委員 お答えを申し上げます。これはまだ人事院だけの考えでございますが、われわれといたしましてはこの地域給制度現状にかんがみて、将来においてはこれを廃止いたしたい、さよう考えております。ただ問題となりますのは、いかなる時期にどのよう方法で廃止するかということでございまして、これにつきましてはまだ何もここで申し上げる用意ができておりませんが、鋭意いろいろなことを考えておる次第でございます。なおこの点については、政府部内の協議もありますれば、国会の御意見も承りたいと思いますが、将来地域給というものは廃止いたしたいという根本方針だけはきめておるものでございます。
  23. 今澄勇

    今澄委員 そこで今の地域給を将来廃止するという根本方針を定められた理由を聞きたい。その理由は、廃止するということにきめたのであるから、申されていいはずであります。そこで問題になるのは、現在の地域給は、まことに完璧なものでないので、これを廃止して本俸にそのまま繰入れると大きな支障を来すから漸進的な段階をとつて行かれるか、それとも一挙に廃止せられるかという、この点については、廃止するということをきめられたからには、私は御答弁を聞かなければ承認することができないのであるが、これらの問題についてもう一度、廃止をきめられた理由と、一挙におやりになるか、漸進的におやりになるか、本俸繰入れをおやりになるつもりか、それともその他の方法によられるつもりであるかという点について、お答えを願いたいと思います。
  24. 淺井清

    淺井政委員 お答えをいたします。地域給を将来廃止したいと思いますことは、皆さんもおそらく御同感があろうかと思つておりますが、だんだん地域給をつける地域がふえて参りまして、都市といなかとにおきまして物価差というものがだんだん縮まつて参つたよう状態でございます。もちろん現在においても全然その差がないとは申せませんが、そういう状態至つたのでありますから、そうならば、むしろこれは本俸で操作すべき問題でございまして、地域給というものを科学的な正確さをもつて維持して行くことは困難だと思つております。そういう意味におきまして、これは将来廃止したいと思つておるのでございます。ただどのように廃止するのか、これを本俸に入れるのか、入れないのか、またもし入れないとするならば、それによる公務員の収入の減つたということはどのようにカバーできるのか、その辺いろいろ考え方もあるように思いますので、目下鋭意研究中であります。
  25. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣お尋ねをいたしますが、ただいまお聞きのように、湧井人事院総裁は、推定するところによれば一二%程度だというお話ですから、大体一万五千四、五百円程度給与ベース改訂をするだろう、今御承知ように一万二千八百円程度のべースでありますから、そういたしますと二千五百円ないし二千六百円のべースアツプになるわけてあります。しかも人事院としては当然五月に遡及して支給せよという勧告になると思うのでございます。この点については、この間の予算委員会で私から大蔵大臣補正予算についてはどうかというお尋ねをいたしましたときに、大蔵大臣補正予算は出さない予定だ、こう言うのでございますが、今の淺井総裁お話からすれば、これは当然政府としては補正予算を出すことになると思うのですが、その点はどうなりますか。なおその点に関して、これは財源等についてもいろいろ問題があろうかど思うのでありますが、まず人事院からの勧告された場合における政府態度はどうかという点についてお尋ねをいたします。
  26. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 人事院勧告がありましたら、いろいろ財政上の事情をその間においてとくと考慮しまして、研究の上処理いたしたいと考えておる次第であります。
  27. 横路節雄

    横路委員 研究の上考慮いたしたいという大臣の御答弁は、そうすると、当然それは実質的な内容としては、政府としては補正予算を組まざるを得ないということになろうかと思うのですが、そういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  28. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 人事院勧告がはたして日本財政事情に沿うやいなや。今までも勧告はございましたが、御承知のごとく、財政上の理由でやり得ませんから、人事院勧告通りなつていない次第でございます。従いまして財政上諸般の事情を考慮して、その人事院勧告を入れ得るやいなやということを研究した上でないと御返事を申し上げかねる次第でございます。
  29. 横路節雄

    横路委員 ただいまの大蔵大臣のお言葉なんですが、淺井人事院総裁は、この間ただ単に物価の値上り、民間給与ベースのはね上りだけで、国家公務員に対する給与ベース改訂勧告はしない、国家財政とにらみ合せた上で改訂勧告をする、こういうお話でありますので、その点は大蔵大臣の方としても十分ひとつ考慮していただきたい。  次に緒方総理に尋ねをいたしたいのですが、二十七日の本予算委員会におきまして、改進党の松浦委員から提案されました国家公務員に対する期末手当、十二月に支給する〇・五のうちから〇・二五を繰上げ支給するようにという動議が出されまして、採決の結果多数でこれが採択になつたわけでございます。緒方総理もごらんの通り、多数の国家公務員並びに地方公共団体職員等が非常に多く出られて、陳情その他をなすつたことは御承知通りでございまして、この点については、やはり二十八年度予算との関係もございますが、参議院予算委員会等においても大蔵大臣等からも御回答がございましたけれども、なお緒方総理から、この点については具体的にどういう措置をなさるのかお伺いいたしたいと思います。
  30. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをいたします。夏季手当の〇・二五繰上げ支給の決議につきましては、その後全般の財政にわたつて慎重に検討中であつたのでありますが、参議院予算委員会で重ねて同様の御意見もありましたので、政府といたしましては何とか善処したいつもりでおります。その具体的のことについては、御必要があれば大蔵大臣からお答えいたします。
  31. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣お尋ねいたしますが、ただいま緒方総理から、具体的な内容について必要があれば大蔵大臣から答弁させますというお話でございますので、具体的な内容についてお尋ねをいたします。どういうよう措置をなさいますか。
  32. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 実は何とか善処したいというので研究中でございまして、まだ具体的な結論に達しておらぬことをまことに遺憾といたします。
  33. 横路節雄

    横路委員 緒方総理に重ねてお尋ねいたします。せつかく副総理から、具体的な内容については大蔵大臣考えているだろうから聞いてもらいたいというお話でございましたが、ただいまのような御答弁で、この点についてはやはり副総理の方から、どうなさるのかひとつお話をしていただきたい。
  34. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 何とか善処したいと、今その方法について具体的に研究中でございまして、まだ申し上げるまで参つておりません。
  35. 横路節雄

    横路委員 そうすると緒方総理に重ねてお尋ねいたしますが、政府としては誠意を持つてこれについて具体的な措置をするというふうにわれわれの方で受取つてよろしゆうございますか。
  36. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 申し上げることは、すべて誠意を持つて申し上げているつもりであります。
  37. 横路節雄

    横路委員 緒方総理に私がお尋ねいたしましたのは、具体的に措置をなさるというように私たちの方で受取つてよろしゆうございますか、こう聞いたわけであります。
  38. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 財政上可能のことと不可能のこととでありますが、可能のことは誠意を持つて善処するつもりであります。
  39. 横路節雄

    横路委員 きよう総理がおいででないので緒方総理に私は尋おねをいたしたいのですが、この第十六回特別国会におきます総理施政演説の中にも、地方財政窮乏という点については総理みずから認められてお話をされているわけです。地方財政窮乏については、いずれ自治庁長官お尋ねをいたしたいと思うのですが、地方自治地方財政については、私は政府はいささか怠慢でないかと思うのです。  まず申し上げたい点は、国家予算が約九千六百億、これに対しまして地方財政は八千四百億幾らで、国家財政に対して歳出は約八割八分程度なつているわけです。こういう厖大地方財政を担当する自治庁長官を、いかに財政的に有能である塚田郵政大臣をもつてしても、これを兼任させることは、私は吉田内閣地方自治団体地方財政については誠意がないのじやないかと思うわけであります。そこで私は塚田郵政大臣郵政大臣として専任をするか、それとも自治庁長官として専任するか、どうしてもこの際いわゆる地方自治団体の今日の地方財政窮乏状態からして自治庁長官をぜひ専任として置かれなければならないと私は思う。この点について、きよう総理がおいででございませんから、一体郵政大臣をもつて自治庁長官を兼任さして、今日の地方自治団体地方財政窮乏地方財政の赤字について対処できるかどうか、私は自治庁長官については早急に専任にすべきである、こういうよう考えるのですが、緒方総裁のお考えお尋ねいたします。
  40. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをいたしますが、このことについては私から総理大臣にかわつてお答えをする資格があるかどうか疑わしいのでありますけれども、塚田自治庁長官はきわめて有能な人でありまして、就任以来今日まで郵政大臣自治庁長官をかねておるために仕事が過重であるという訴えは一度も聞いたことがありませんので、十分やつて行けると考えております。
  41. 横路節雄

    横路委員 それでは自治庁長官に一つ地方財政についてお尋ねをいたします。今日地方財政が赤字であるということはたれしもが言つているところでございますが、その赤字を生むに至りた原因について自治庁長官としてはどういうようにお考えなつているのか、その点についてまず最初お尋ねをいたしたいと思うのでございます。
  42. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 お答えいたします。赤字を生むに至つた原因はいろいろ検討いたしてみますと、一部分はやはりだんだんと地方団体の仕事が多くなり、それからして地方団体と国の間の仕事の配分というものがだんだんとかわつて来たりしましたために、当然国の方からも若干めんどうを見なければならないのを十分めんどうを見ておらないという点にあると思います。いま一つはやはり地方団体自体の側にも原因があると考えられるのでありまして、しかもその大きな原因になつておると考えられますのは、終戦後かなり物価が上る傾向にあつたために、ことに大都市におきましてはなるべく仕事は早くした方が安くあがる、こういうので仕事急ぎをして自分の財政能力を十分考えてやらなかつた、こういう面にもかなりあるのじやないか。そこで今度の改革の場合にはそれらの面を十分検討いたしまして、国と地方とがどのくらいの仕事をどういうぐあいに配分するかということを考え従つてそれだけの仕事を地方団体にやつてもらう場合にはどのくらいの財政規模というものを地方団体として考えなければならないかということも考えながら、今度は解決して参りたい、こういうよう考えております。
  43. 横路節雄

    横路委員 今の自治庁長官お話で、政府にも一部責任があるということでございますが、私は政府にほとんどの責任があると思うわけです。私はその理由について申し上げて大臣からさらに見解をお伺いいたしたいのですが、その第一は、地方財政計画につきましては、御承知ように、昭和二十五年度の決算をもつて地方財政計画の基礎にした。これについては非常な誤りがございまして、いわきるシヤウプの税制勧告等の事柄が二十五年度にございました。従つてやはり二十六年度の決算でなければならないというまず一つ地方財政計画を立てられる場合のその基礎について誤りがあるのではないか。それから最もはなはだしい誤りは――これは大蔵大臣もよくお聞きをいただきたいと思うのですが、昭和二十六年の十月に補正予算を組まれる場合に、それまで政府地方公務員に支給していた俸給額から、一方的に大蔵省当局が自治庁に力を加えて、お前の方は三百四十八円か三百四十九円ないし五百四十六円高いから差引いて平衡交付金を渡すぞといつて、二十六年十月に渡したわけです。この不当な圧縮が昭和二十六年、昭和二十七年、昭和二十八年の今年の財政規模を入れれば約三百五十億の赤字になつている、本年の百五十億を除いても昭和二十六年と昭和二十七年で二百億の赤字はこの不当な人件費の圧迫から来ている。この不当な人件費の圧迫は、都道府県において人件費が約四〇%を占めているのであるから、従つて事業費に全部圧迫が来ている、この点について私は何といつて政府の責任だと思う。従つて緒方総理からも、自治庁長官は非常に財政的に明るくて有能だとお話がございましたので、二十七年度までの、政府なり大蔵当局が不当に圧迫をして地方財政的な負担をかけた約二百億の赤字については、政府の責任でやるべきだと私は考えておるわけですが、その点について長官はどうお考えなつておるか。
  44. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 地方財政の計画が二十五年を基礎にしておるということは御指摘の通りであります。これはいろいろと各年度の地方財政の計画と現実のやり方というものの間に食い違いがありまして、計画自体の立て方としては、やはり二十五年を基礎にして、その後法令の改正その他で当然増加したものをそれに加算して行くという形にする方が間違いのない数字が出るという意味で、これをいたしておりますので、私はこの方が正しいのではないか、こういうよう考えておるわけであります。  それから実際に地方に赤字があるという場合に、それが公務員給与地方財政計画の上で現実の姿とかなり違つた数字に二十六年十月からいたしておることが大きな原因になつておることも確かだと思うのです。しかし私ど一といたしましては、地方財政計画というものを立てます場合には、現実の数字基礎にするか、もしくはあるべき数字基礎にするかということをいろいろ検討いたします場合に、やはり財政計画自体としては通常あるべき数字というものを基礎にして組む以上には方法がないのじやないか。その場合に足りない分はどういうことになるかというと、今御承知ように、地方財政計画の中でもそれが全部――たとえば平衡交付金は百パーセント国が地方に保障しておるという意味ではないのでありまして、その他の不足部分、ことに公務員給与ように所によつて非常に差があつて、ある所では高く出しており、他の所はそうでもない、やはり地方公務員が国よりも高いという場合には、今の地方財政計画の考え方では、税でも御承知ように、標準率から制限率までの開きがある、またこの平衡交付金の数字を計算いたします場合にも、基準財政収入は財政収入の七〇%と押えておる、そこの間にもゆるみがある。そういうような面で、こなせる範囲においてそういうものをお支払いくださるのはよいが、国がそういうふうになつておるからといつて、その数字までめんどうを見るという行き方に行くわけには行かないのではないか、こういうふうに考えております。
  45. 横路節雄

    横路委員 自治庁長官に重ねてお尋ねをいたしますが、現実の数字ではなしに、あるべき数字基礎にして地方財政計画を立てるのが至当だというお話ですが、それがその通り国家財政についてあるべき数字基礎にしてやれば文句はない。この点自治庁長官としてはよくお考えをいただきたいと思う。なぜならば国家公務員給与の実態については、これはいわゆるあるべき数字基礎にして立てておるのではない、現在の給与総額を基礎にして、現実に支払つておる金で国家財政を立てておることは大蔵大臣も御承知通りである。ところが地方公務員については、いわゆる現実の俸給から下げて、そうしてあるべき数字を立てておるということは、私は筋が通らないと思う。その点は自治庁がまさか大蔵省の従属機関だとは私は申し上げないけれども、今まで外需に大蔵当局のセーブが強過ぎて、ことごとに地方財政については圧迫を加えておる。ともすれば自治庁は発言権がないものですから、今まで不当に二十六年、二十七年の二箇年で二百億の金が減額されておる。これは当然国家公務員の実態の上に立つて国家財政を組んでおると同様に、いわゆる地方財政計画についてもおやりにならなければおかしい。この点についてどうお考えですか。
  46. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 これは国と地方との間に食い違いがあるということであれば、地方のものの考え方の方がむしろ正しいのであつて、国の方もそれに合せるというようにすべきではないかと、私としては考えておるのであります。
  47. 横路節雄

    横路委員 それは自治庁長官、それでよろしゆうございますか。いわゆる地方財政計画はあるべき数字で組んだのだ、だから国家公務員についても、昭和二十三年の二千九百二十円のいわゆる職階制の当初のときから全部やり直しをして組んでもいいのだということをあなたは言えますか。私はやはり現実の実態調査の上に立つておやりになるのが当然だと思うのですが、その点重ねてお尋ねします。  もう一つ、いかに国家財政地方財政が不均衡であるかということを、自治庁長官としてはもうすでに御承知だと思いますが、私は一例として申し上げたい点がある。それは昨年の暮れ、国家公務員に〇・二五を支給した点について、御承知ように、地方公務員については都道府県二十八億、市町村十二億、約四十億のうち、一体何の金で支払つたか、地方債で三十億、公募公債で十億、この四十億で払つている。しかも都道府県については、年末手当に該当する〇・二五を払うのに、その二十八億のうち十六億五千万円は公募公債で払つている。あなたは一体自治庁長官として、国家公務員についてはちやんとやつているが、都道府県については二十八億のうち十六億五千万円も公募公債でもつて払うというようなやり方は正しいとお思いになりますか。この点について、私は具体的な例としてあなたにお聞きしたい。
  48. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 昨年の暮れに公債を五十億ふやしましたのは、必ずしも〇・二五というものの財源に充てたという考え方ではなしに、地方財政全般の計画の中に、財政需要がふえたものと考えられますので、そういうものを総括的に考えて、起債を考えた。従つてもし〇・二五が払われるとすれば、やはりそういう起債の五十億ふえたものを総合的に地方財政の中に取入れて、給与の支払いというものはそのほかの財源で支払われる、こういうことになると思います。
  49. 横路節雄

    横路委員 それは自治庁長官、あなたは実際を知らないからです。解散直前の三月十四日の午後三時に、ここで地方財政委員会の理事会をやつて、本来ならば向井大蔵大臣が閣議終了後来て説明をするのだけれども、もうすでに解散になる情勢だから、自治庁の鈴木次長をして政府の代表として答弁させるといつて、詳細に答弁書の中に――今のあなたのようお話ではないのです。この点については明らかに〇・二五に相当する分として四十億、そのうち地方債で三十億、公募債で十億、そのほかに、いわゆる公共事業その他の赤字については公募債で十億、その他公営企業については公募債で三十億ということを、ここではつきりと文書でもつて、解散直前の衆議院議員全部に配付したのです。あなたが今、これは都道府県の一般の赤字についてやつたので、〇・二五についてやつたものではないというようお話をなさることはおかしいですよ。
  50. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 これは言葉が十分でありませんので誤解を起したのではないかと思うのでありますが、国から地方に金を出しますときには、今の平衡交付金の建前から行きますならば、この仕事のためにこの金をふやすというふうにはなつておらないことは、御承知通りなのでございまして、全体として需要がふえれば何かの形でその需要に充てる財源をこれにつけてやる、そしてその中でまかなつてもらう、こういうよう考え方になつている。従つてこの起債の〇・二五の給与の財源というものは、それだけ給与を支払わなければならないので、それだけ必要がふえたから出たものであるという意味においては、これは給与の財源ではあるのでありますけれども、しかしこれがそのまま給与で行くわけではないのでありますから、その点誤解のないようにお願いします。
  51. 横路節雄

    横路委員 私は自治庁長官お尋ねいたしますが、この二十八億のうち、地方債で十一億五千万円、公募公債で十六億五千万円やつたことは事実だ。しかも公募公債については、自治庁長官も御存じなんです。これは資金運用部資金の方ではやはり六分五厘だ。公募公債は二十七年度の例を見ても、たとえば北海道が最高で、これは拓殖銀行から道庁が約二億一千万の公募公債で九分一厘支払つている。あとは大体七分五厘ないし八分五厘だ。これは当然公募公債でなしに、平衡交付金の増額でやらなければならぬ。もしもそれができないにしても、資運金用部資金でまかなわなければならないのに、これを公募公債でやるということは、私は著しく地方財政を圧迫しておると思うのだが、その点はどうですか。
  52. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 これはできますならば、平衡交付金でやるのが一番地方のためにお役に立つたと思うのですけれども、そういう状態にも行かない。次に、できるならばこれは全部預金部資金でやるということが一番いいと思いますが、これも財政計画全体の上からうまく行かないということで、御指摘のように、預金部資金の一部分と公募公債の一部分、こういうことになつて、そのために地方には相当御迷惑をおかけしておるということを私どもも承知しておりますけれども、何といいましても困難な国家財政状態でありますので、このような情勢になつたと旧いうことであります。
  53. 横路節雄

    横路委員 自治庁長官お尋ねしますが、先ほど淺井人事院総裁から早急に給与ベース改訂について勧告をする、こういうお話があつた。そこで昨年の第四次吉田内閣補正予算のときに、この給与ベース改訂は十一月から実施ということになつて、政府はどういうよう予算を組んだかというと、財源ですが、財源は、経費の節約等による歳出の減少額を地方財政で六十億地方税の収入の自然増収を三十六億、税外収入の増収を五十億、約百四十六億を見込んで――とれもしない金ですけれども、地方税はこれだけふえる、税外収入がこれだけふえるのだ、経費がこれだけ節減されるのだということで、百四十六億も割増しにして、大体こういうものを給与ベースの財源に振当てをした。そこで私はあなたにお尋ねしたいのですが、今年地方財政計画一ぱいであるから、中間で政府としてはいろいろ補正予算を組まれる場合に、自治庁長官としてはこの給与ベースに見合う金額は、今年は平衡交付金の増額でおやりになる決意があるかどうか、その点をお尋ねします。
  54. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 今年給与ベース改訂があるかないか承知しないのでありますが、かりにあるといたしますれば、その場合はいつの時期になるか、その時期においてさらに地方財政計画と財政の全体というものを見て、税の収入その他に変動がないか、その他の収入にも変動がないか、そういうことを十分調査しまして、変動なり増収があれば、やはりそれを考慮しなければなりませんが、そういうものに何ら変動がないということなにりますれば、これはまた平衡交付金で見なければならぬ、こういうことになるのではないかと思います。
  55. 横路節雄

    横路委員 私は緒方総理地方財政窮乏についてお尋ねしたい点がある。地方財政窮乏につきましては、今の給与ベースの問題が非常に大きいのです。ところがどうもそうでなしに、地方自治団体政府がいろいろやつておる、何といいますか、法令に基くところの各委員会、これが非常に厖大に機構がふくらみまして、この金が非常にかさばつておるわけです。この一番いい例といたしましては、昨年第三次吉田内閣のときにやりました地方教育委員会なんですが、昨年の十一月に佃野文部大臣が、いわゆる教育委員会発足にあたつて要求いたしました地方教育委員会の費用は三十九億です。この三十九稔の費用は五箇月分で、従つて年間を通せば約九十三億になるわけです。九十三億なければいわゆる文部当局として考えておる地方教育委員会は実施できない。ところが政府当局が考えた今年の地方財政計画の中における、この地方教育委員会に見合うところの金は二十四億幾らかで、約七十億は明らかに地方の負担になつておるわけです。こういうことは、私は政府の思いつきとは言いません。しかし政府が責任を持つて実施をしたのであるならば、当然この七十億の金についても、政府が責任を持つて地方財政に負担をかけないようにしなければならぬのに、それをかけておるわけです。ですから私は七十億について、文部当局が満足するようなこういう金を満たすか、そうでなければ、地方教育委員会は廃止した方がいいと思う。その点について、現在の地方財政窮乏の建前から、一つの例として私は地方教育委員会のことを申し上げたのですが、地方教育委員会に対して、政府誠意をもつて七十億増額するか、そうでなければ廃止するか、どちらかの方法でなければならぬと思う。この点についてお尋ねいたします。
  56. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをいたします。地方教育委員会制度は、教育の地方分権と、また教育の民主化という建前から実施されたものでありまして、ただいまのところそれを変改しようという考えは持つておりません。地方財政窮乏については、ただいま御指摘の通り、これは総理大臣施政演説の中にも特にそれを申し述べておりますので、この点につきましては根本的に検討する必要があると考えます。今地方制度調査会の方でももつぱらそれを論議しておるのでありますが、そのことについては十分に考えて行きたい。その点お答えいたします。
  57. 横路節雄

    横路委員 私は、文部大臣お尋ねいたしますが、この地方財政窮乏の中に、もつともはげしいものとして学校の建築があるわけでございます。そこで文部当局としては、老朽校舎についてことしは一体どの程度要求されるのであろうかという点は、われわれ非常に関心を持つておつたわけです。これは、今日の老朽校舎の現状から見て、約四百八十億なければできない。これを三箇年計画として、毎年大体百六十億程度のものがなければならぬ。それを、今日三分の一の国庫補助としても約五十億程度見なければならぬのに、おそらく文部当局としては十二億程度しか見てないのではないかと思うが、まずこういうような点について伺いたいのが第一点です。  その次に、新制中学の建築にあたつて、生徒一人当り〇・七坪というように圧縮したところに、今日の町村財政の非常な窮乏があるわけですが、こういう点について文部大臣はどうお考えなつているか、お尋ねいたします。
  58. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 お答えいたします。老朽校舎につきましては、二十八年度予算に、三分の一補助として十二億円計上してあります。これはもちろんきわめて不十分でありまして、御指摘の道り、現在百六十万坪ですか、そういう老朽校舎がありまして、それを三年ないし四年に整備するということになりますと、三分の一補助として四十億程度の金がいるのであります。文部当局といたしましては、もちろん急速に整備をしたいと存じておるのでありますが、国の財政関係もありまして、本年度においてはこの程度の計上にとどめた次第でございます。従来は補助の基準がなかつたのは御承知通りでありまして、ようやくそれができたので、もし予算通りますれば、本年度から初めて補助の道が開かれるわけであります。今後極力老朽危険校舎の整備を進めて参りたいと存じております。  それから六・三制の教育整備につきましても、御承知通り、〇・七坪を最小限度の目標として進んで参つておるのでありますが、これもむろん非常に不十分でありますので、すみやかにこれを整備いたしまして、進んで、一・二七ですか、そういうところに持つて参りたい、かよう考えておるのであります。これも国の財政関係もありまして、はなはだ不十分でありますが、やむを得ざることと存じております。
  59. 横路節雄

    横路委員 文部大臣に重ねてお尋ねいたしますが、御承知ように、不成立予算の際には、政府当局は、義務教育費の全額国庫負担という建前で義務教育学校職員法案を出したわけです。私は、その精神については第五次吉田内閣としてもかえてないと思うのですが、今度出されましたいわゆる義務教育費国庫負担法による二分の一の国庫負担、この点については、五月二十八日のこの予算委員会におきましても、文部大臣は、実支出額の二分の一についてはあくまでも支給されるというよう答弁されているわけです。これは速記を見ても明らかです。ところが、その後六月十五日には、政令をもつていわゆる富裕府県並びに不交付団体の頭打ちをさせる。さらについ最近は、法律をもつて、この義務教育費国庫負担については、いわゆる富裕府県については支給しないことができるようにこれを措置している。政府は、義務教育費全額国庫負担という建前からいつても、さらに義務教育費国庫負担法の第二条の精神からいつても、私はこれは明らかに後退であると思つている。だからこの際政府としては、義務教育費全額国庫負担というものはやめたのだということになれば別ですけれども、義務教育費全額国庫負担についてはあくまでもやる。その一歩前進として、義務教育費国庫負担法の実際の支出額の二分の一をとつたということになれば、六月十五日の政令にいたしましても、それから今度出しました臨時特例にいたしましても、やはりその精神からまるかに逸脱しておると思うが、この点について文部大臣のお考えをお聞きいたします。
  60. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 義務教育費国庫負担法の第二条の但書による政令と、それから今回提案をいたしました特別立法、これは多少趣旨が違つておるのでありますが、政府といたしましては、現在の法律に基きまして、原則として実際支出額の二分の一負担は、これを堅持して参りたいと思つておるのであります。ただ、御承知通り、特殊な少数の府県におきましては、他の府県と比べて著しく給与の額が多いのでありまして、その間相当不均衡な状態にあるのであります。従つて、これらの特殊な府県に対し、富裕府県に限つて一定の妥当な線を引きまして、それをさらに超過する給与費に対しましては二分の一の負担をしない、こういうことにいたしたのであります。要するに各府県まちまちな給与をいたしておりますので、特に著しく高い給与をしているところについてさよう措置を講じたのであります。そうしてそれは、法律の但書にある特別の場合に該当するものであり、これは二分の一国庫負担法の趣旨に反するものと考えていないのであります。  それから次に、特定の府県、富裕府県に対しまして、不交付または減額交付をするということにつきましては、これは御承知ように、特別な立法をいたしまして、現に国会に提出してあるのでありますが、これは御指摘の通り、二分の一国庫負担法の趣旨に沿うものとは申し上げられません。その意味におきまして、これは二分の一国庫負担法というものの例外と申しますか、その法律の趣旨から出て来ないので、従つて但書の政令をもつて規定すべき事柄でなくして、あらためて特別な立法として国会の協賛をいただいた上で実施する、こういう筋合いになるのであります。従つて提案をした次第であります。ただその趣旨といたしましては、御承知通り、今日は地方財政状態が府県によりまして相当不均衡であり、二分の一国庫負担の法律をそのまま適用いたしますと、その地方の財源上の偏在というものがますます激成されることになりますので、追つて行われるべき地方財政、税制を通じての改革によつて地方財政状態が公平に調整されるまでの間、暫定立法といたしまして、交付または不交付を定めたわけであります。この法律についてあらためて十分検討をいたしたいと思います。
  61. 横路節雄

    横路委員 東京、大阪その他の団体に対して義務教育国庫負担金をやらないというのは、これは義務教育費国庫負担法の精神からは生れて来ない、だから、この精神にそむく。こういうことについては、今文部大臣から答弁がございましたので、私もそれで了承しようと思う。義務教育費国庫負担法の精神にそむいて特例法をつくるのだ、だからこのことは、義務教育全額国庫負担の精神からは逆な方向に進むのだ、こういうように私は解するわけです。  なお、義務教育費国庫負担法が、昭和二十七年八月八日法律第三百三号で出ました場合に、第二条の但書については、衆議院、参議院ともそれぞれ附帯決議をしておる。その附帯決議の内容は、決して今文部大臣お話をされたような、いわゆる政令でやるというようなことになつていない。各都道府県のその年度の実績を下らないようにするという点がわざわざ附帯決議になつているわけです。そういう点からいつても、この六月十五日に出されました政令にいたしましても、第二条の但書を制定いたしましたときの衆参両院の附帯決議からも、私は相反していると考えますが、いかがでしようか。
  62. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 先ほど申し上げましたように、大部分の府県につきましては、法律のきめる通り、実際支出額の二分の一の原則に立てておるのでありますが、特殊の富裕県、富裕であり、しかも他の府県に比べて相当著しく給与額が上まわつておる府県に対しまして、但書の場合に該当するものとして政令で定めたのでありまして、附帯決議のあつたことは承知しておりますが、その時期等については今記憶しておりません。しかし実際支出額の二分の一という原則に対して、各府県における特別の事情にかんがみその最高額をきめる、こういうことを例外として規定しておるのでありますから、実際支出額の二分の一を絶対に下まわるということはないということであれば、実はこういう但書を設ける理由はないと私は思うのであります。実質において妥当な制限であつて、法律の趣旨に反するものではない、さよう考えておる次第であります。  それから今の特別立法でありますが、これは先ほど申し上げましたように、あの法律の範囲では出て来ないということは御指摘の通りであります。ただ、非常にあの法律の趣旨にそむくのであるということを強くおつしやいましたが、それほどの意味でもございませんので、どうぞ御了承願います。
  63. 横路節雄

    横路委員 自治庁長官お尋ねいたしますが、二十七年度までの赤字については、この前私が申し上げましたように、政府自体の責任において給与ベースだけでも二百億からの赤字が出ておる。毎年々々前の年度までに累積した赤字を繰越して行けば収拾がつかない。そこで政府はこの際勇断をもつて二十七年度までの赤字については、政府の責任において何らか措置しなければならない。そして二十七年度までの赤字については、政府はこれだけ措置したぞ、これ以上の赤字については見ない、こういう区切りを明らかにすべきだと思う。この点については自治庁長官としても何らかの措置考えているようですが、この点についてお尋ねいたします。  それからもう一つ、二十七年度までに出ました赤字のうちの給与ベースだけを見ても百五十億の赤字が出ている。都道府県並びに市町村の要求を考えるならば、二十七年度だけで約四百五十億からの赤字が出ているというけれども、私はそれをそのままうのみにするわけではないのですが、二十七年度までの政府みずからの責任においてできた赤字については、政府の責任においてこれを何らか措置しなければならない。たとえば長期起債その他において政府措置をし、二十八年度については赤字を繰返さないように、地方財政計画について修正をしなければならぬと思うが、この点について自治庁長官お尋ねをいたします。
  64. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 この機会に、赤字の状態がどういうふうになつておるかということは、先国会からいろいろお尋ねでありましたので、ちよつと御報告申し上げ御参考に供したいと思います。  二十五年の赤字は、いわゆる繰上げ使用をいたしたものの数で申しますと、三百四十九団体、五十億ということになつております。それから実質上赤字であつたものということで行きますと、さらにその団体数がふえまして四百三十団体、百五十四億ということになります。二十六年になりますと、団体数はうんとふえて参りまして繰上げ使用いたしたものが七百二十団体、総額六十三億、それから実質上赤字であつたものということになりますと七百六十四団体で百一億、こういう数字なつております。この数字でごらんくださつてもわかりますように、地方財政が赤字である、赤字であるというけれども、実は一万ちよつとある地方団体の中でせいそれ七、八百程度のものが赤字であるということになつておりますので、この点から、赤字があるからということで地方財政窮乏そのままをこの数字で現わしておるということには考えられないのであります。  そこでこの赤字をどうするかということでありますが、実は今の平衡交付金の制度、それからそれに関連いたしまして地方税制というもの、それから地方平衡交付金の配分のやり方、起債のわくの配分のやり方から行きますれば、自治庁の考え方としては、一応すべての団体に赤字が生じないという大体の見通しで、そういう配分をいたしておるわけなのでありますが、実際にはこういうぐあいに赤字が出ておることは事実であります。これは一応自治庁の責任でないとは考えられるのでありますが、現実にあります赤字の生じた団体についてはさらに調べてみて、そうして国の責任において生じたものであるということならば、その赤字というものは何か措置しなければならないと思います。さらに地方の責任において生じたものだといたしましても、やはり赤字が現実に生じており、しかもその赤字が短期債でもつて一時まかなわれておるということであれば、これが地方財政を非常に圧迫することは申すまでもないのでありますから、これは十分検討して、なお今後そういう状態にならないように十分注意もいたしまして、これらは長期債に振りかえて、長期で償還して行くという計画をしなければならない、こういうふうに考えております。  二十八年度においては、どういうようにして赤字を生じないようにするかという問題がもう一つあるのでありますが、これも私先般本委員会において御答弁申し上げた通りであります。自分としてはできるだけ赤字が生じないようにいたしたいというつもりで努力いたしたのでありますが、その努力が奏効しなかつたのであります。しかし今申し上げるよう地方財政全体の窮乏をどうするかという問題であるならば、やはりいろいろ考えました結果としては、制度の根本解決の場合には地方財政全般を考えなければならないと思います。またこの赤字は二十八年度にも生ずるのではないかということでありますが、今申しました二十五、六年の数字から推計いたしますと、二十七年は大体二百億ぐらいになるのではないか。二十七年にことにこの赤字が大きくなりました原因は、朝鮮動乱のあとの景気が逆に悪くなる段階にぶつかりまして、地方税の減収を来したということが一番大きな原因であつたのと、それから年度の中途において給与改訂があつて、予期せざる財政需要が年度の中途からふえて来た。この両面の需要面と収入の面との原因がありまして、二十七年度は赤字が多くなつたので、この点からいたしますと、二十八年は二十七年より大きくなるということはないのではないか。こういうふうに考えられるわけです。当面の赤字にそういう状態で、財政計画としては、なかなか処理しにくいのではないか、というのは、先ほど横路委員も御指摘になりましたように、今千二百五十億の平衡交付金でありますが、かりにこの上に平衡交付金を増額いたすことになりますと、結局先ほど御指摘になりましたように、給与の面でもう少し考える余地がないかということを、自治庁としては大蔵省側と折衝することになるのでありますが、かりにその自治庁の折衝が効を奏しまして、百四十何億かの給与に充てられる平衡交付金が増額になつたといたしましても、地方財政の上に出て来る赤字というものはなくならない。こういうふうに考えられる。たとえば二十八年も引続き二百億赤字が生ずるとして、百四十億平衡交付金をふやせば、その赤字が六十億になるかというと、決してそうはならないのでありまして、ふえた百四十億はやはり全般の団体に平均に配分されるということになつて、赤字の数字が、そのまま平衡交付金の増額ではなくならないという、今の平衡交付金制度の状態なつておりますので、この点二十八年度としてはどんなぐあいにやつても、赤字を全面的になくするということになると、相当大きな、国から地方への起債なり、平衡交付金の増額をいたさないと、処置がつかない。こういうふうになりますので、当面は今度の予算措置いたしました程度でごしんぼうを願いたい。こういうふうに考えております。
  65. 横路節雄

    横路委員 総理大臣の出席をいただきましたときに、総理に対する質問に関連して、外務大臣、保安庁長官、その他経済審議辛長官にお尋ねをいたしたい。こういうふうに考えております。  最後に、緒方総理に一番最初お答えをいただいたのでありますが、どうもはつきりしないのです。〇・二五については誠意をもつて具体的に措置をなさるというお話でありましたので、この点については二十八年度の本予算が通過したならば、あの決議の趣旨に沿うて〇・二五については繰上げ支給するのだ。こういう意味でございますか。その点大蔵大臣に聞いてくれというので、聞きましたがはつきりしませんから、これをひとつ御答弁願いたい。これで終ります。
  66. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 御要求通りまだはつきりできませんけれども、できるだけ御趣旨に沿うように善処することは間違いございません。
  67. 尾崎末吉

    尾崎委員長 今澄勇君。
  68. 今澄勇

    今澄委員 私はMSAの経済的な観点からながめたいろいろな問題について、お伺いをいたしたいのでございますが、その前に時局の問題として今起つております西日本の風水害の水害対策について、中央本部長であられる緒方さんに、年々水害が累増しておるよう状態でありますが、今回これらの総責任を負うて中央の責任者になつておられるあなたから、今次災害の今まで調査した被害の総計並びにこれに対する対応策、さらに今後の抜本的なこれらの災害に対する対策について、大要を簡単にお伺いいたしておきたいと思います。
  69. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えを申し上げます。このたび西日本一帯、特に北九州地方を襲いました豪雨は、六月二十五日以来連日降り続けまして、最高六百ミリ程度にも及ぶ明治二十二年以来、六十五年ぶりの大雨でありまして、福岡、佐賀、熊本、大分、長崎の各県には、特に甚大な被害を及ぼしたのであります。河川におきましては筑後川、遠賀川、菊池川を初めとし、多数の河川が氾濫いたしまして、その直接国民生活に及ぼしました被害を申し上げますと、死者が六百三十名、行方不明が五百四十名、建物の全壊が一千九百五戸、建物の流失が五千四百六十八戸、床上浸水が十三万七千四百十七一尺水田の流失が一万六千三百六十九町歩、水田の冠水が十万四千三十町歩となつておりまして、罹災者は百十三万一千人、世帯数で申しますと、二十一万三千七百を越す状況であります。これは本七月二日午前六時現在国警本部の調べであります。  罹災各県におきましては、いち早く災害救助法を発動いたしまして応急救助に懸命の活動を行つております。救護活動につきましてはそれぞれの県市町村当局、警察、消防、日赤等を初め現地政府諸機関、特に保安隊が必死の作業に当り、米軍も全面的にこれに協力をしてくれておりまして、目下のところ治安の面におきましては、別段困難な問題は発生しておりません。政府といたしましてはただちに建設大臣農林政務次官を初め関係官を現地に派遣いたし、さらに大野国務大臣を本部長とする現地対策本部というものを、福岡県庁内に設置いたしまして関係各省派遣官とともに災害対策について現地処理を推進いたしております。中央におきましても御承知ように対策本部を総理府内に設置いたしまして、連日現地と連絡をとつて対策を講じているような次第であります。現在までのところ、現地における応急救助に必要な物資といたしまして、各県の要求に応じ、厚生省保有の衣料毛布約一万五千枚、作業衣袴約六千着及び国外から寄贈の中古の衣料二百三十一こり発送いたしましたが、食糧につきましては幸いに各府県とも、七月分一ぱい程度は持つております。医薬品につきましてもさしあたり補給を要しない模様でありますが、要求があり次第、必要な応急救助物資は、何でも送り得るよう準備を進めております。  種苗対策といたしましては、種もみ二万石を東北、北陸から集荷いたしまして、輸送手配をいたしますとともに九州、四国、中国の余剰苗を確保いたし、災害地に向けるための苗の節約方を、目下指導しております。  この災害の復旧につきましては国鉄線、通信線等すでに着々復旧に努めているものを別といたしまして、さしあたり必要なブルトーザー、シヤベル等の土木機械等につきましては、政府所有のものを集中動員いたしますのはもちろん、米軍からの貸与も近く実現する見込みであります。応急復旧資材、たとえば土嚢とかセメントとかいうものも中国、四国等各県に、収集方を手配しますとともに、昨日災害県に対しまして公共土木のつなぎ融資として、資金運用部資金より十億円を融資いたし、また平衡交付金五億円を増額する等の処置によりまして、これが対策の万全を期したいと思つている次第でございます。
  70. 今澄勇

    今澄委員 いろいろ聞きたいことがありますが、時間の関係で、もう一つ通産大臣兼結審長官に鉄、石炭の入水によるいろいろな問題、なお流失家屋の後の建設に対する木材に関する問題等、産業資材の面から見た水害の対策並びに値上り対策について、簡単でよろしゆうございますから、ひとつ御見解を聞いてみたいと思います。
  71. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。木材等も手当をいたしまして、大体われわれといたしましては万全を期するように努力して、またその結果が現われつつあります。
  72. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は本題のMSAについて伺いたい。昨日政府は米国大使館に交渉、会談する旨の申出をしたところが、それに対する大使館からの回答が来ておるようであります。端的にいえば、私はこのアメリカとの交渉は、大体受諾する意思がなければ、アメリカと交渉をするわけはないので、受諾をしようということが前提になつておると思いますが、端的に言えば、政府がMSAを受けようというその理由ですね。日本の国にどういう利得があるのでMSAを受けようとしているのかという点について、参議院でも御答弁かあつたようですが、緒方総理からもう一度ここでひとつ御答弁を願つておきたいと思います。
  73. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをいたします。MSAにつきまして政府で慎重に検討いたし、さらに疑義のあります点につきまして、先般来米国との間に公文交換を行いました結果、これは日米安全保障条約にありまする自衛力の増強にも役立つし、また日本の経済をよくして行く上にも多少の役に立とうという見解で、今話合いを進めておりますが、その話合いでそういう点が明らかになりましたならばこれを受けてもいいではないだろうか、現在のところそういう立場におるのであります。
  74. 今澄勇

    今澄委員 そこで緒方さんの答弁は、自衛力の増強に役立ち、これがわが国経済の大きなプラスであるという二点に私は解釈をいたしますが、この自衛力の増強に役立つかどうか、さらにわが国経済にプラスであるかどうかということは、これから私いろいろ御質問を申し上げたいと思いますが、まずその前に、このアメリカ大使館からこちらに回答された文書を見ても、この安全保障法五百十一条の適用によつて日本が憲法にある種の疑義を抱かなければならぬというような事態になつておることは私から申し上げるまでもありません。そこでこの自衛という言葉の解釈は、御承知ように、いろいろの解釈がありましようが、自衛という上に個別的あるいは集団的という名前がつくならば、これはやはり集団保障の一環としての義務は負わなければならぬ、こういうような解釈をいたさなければならぬのでありまして、こういう解釈から来るこのMSAの交渉というものは、わが国の憲法違反とはつきり申し上げなくても、少くとも疑義があることは間違いがないので、こういう疑義のあるものは、交渉に入るに先だちまして、このアメリカからよこした回答について、わが国の諸般の情勢から、これをもとにして交渉に入つていいかどうかということを、国会に一応はかる必要がありはしないか、私はかよう考えておりますが、なぜ国会にはからずに、今後交渉に入るということにおきめになつたのか、その点を緒方総理並びに外務大臣からお伺いしたいと思います。
  75. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいま御指摘の、個別的もしくは集団的の自衛云々という言葉は、平和条約の第五条の(C)に明確に記載してあるその規定と一字一句違わない言葉であります。従つて平和条約でこれが日本の固有の権利であると認められておるものをさらに引用しも、これは何ら憲法に違反すべきものてではないと私は信じております。なおさらに具体的に考えますれば、今おつしやるように、かりに万一集団的の自衛措置に入るのには、憲法違反の疑いがあるということにしても、その前には「自発的」という字がありまして、日本が自発的にこれに入るか入らないかきめるのでありますから、政府の決定に基くものであつて、そこに書いてあるから、それで自動的にそういうものに入るという意味では全然ないのであります。従つてわれわれはこの点で何ら今までの日本の立場なり平和条約の関係なりを、変更するものでないということを信じております。なおこういう交渉に入る、入らないは――こう言うと語弊があるかもしれませんが、やはり憲法の趣旨は三権分立でありまして、行政と立法とはおのおの異なる部面を受持つておるのでありまして、私の考えでは、この交渉に入るのは政府の責任において決定すべきものと考えております。
  76. 今澄勇

    今澄委員 この問題についてはなおあとで聞きますが、その間にちよつと岡崎さんに伺いたい。先般マグナソン・ダークセン民主、共和両党のアメリカ上院議員が日本に来た際に、ダークセン上院議員と岡崎さんは、公式なりあるいは個人的なりは別として、会見をなさいましたか。この会見の席上でこれらの問題についていろいろな話があつたかどうかお尋ねをいたします。
  77. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 両議員とは宴席において一緒になりました。そして宴会の席上でありましたから、いろいろと談実はいたしましたけれども、こういう問題については実は話はしなかつたのであります。
  78. 今澄勇

    今澄委員 ダークセン議員が三十日のワシントン発APで発言しておりまする演説の中では申しておりませんが、その他の雑誌等に出た会見記の中を見ると、大体アメリカの基本的な考え方は、安保条約による行政協定で、これは日米の平和条約の解釈を延長して、暫定的な日本の安定保障措置をとる、第二段階としては、太平洋地域の恒久的な集団安全保障措置をとるというような見解を述べて、しかも日本はこれらの問題についていろいろ話合いをした結果、大体その方向は了承を得ておるということを言うておるのであるが、こういつた話は個人的にもそのときに出たと思うのだが、またもし出なかつたとすれば、こういう見解に対する岡崎さん自身の見解をひとつ伺つておきたいと思います。
  79. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 アメリカの上院議員の言つたことについてここでいろいろこれを批評することは避けますけれども、そういう話は出ておりません。なお私の考えでは、今おつしやつた点のうちで、日米安全保障条約が暫定的なものであるということについては私もそう考えております。いつまでもこれが続くものではないと思つております。しかしその他のたとえば太平洋同盟というようなことにつきましては、総理もたびたび言つておりますように、まだこれは形も何もできていない。いろいろ個人的には意見の発表はありますけれども、何ら形も何もできていないものでありますから、これについてどうという批評も下しがたいような、ほんとうにまだ構想を個人的にいろいろな人が持つているという程度であると私は承知いたしております。
  80. 今澄勇

    今澄委員 そこで緒方さんに伺いたいのは、緒方さんは日本の自衛力の中心を物質である兵器とお考えですか、それとも国民の愛国心が自衛力の中心であるとお考えになるか、緒方さんの見解を伺つておきたいと思います。
  81. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 国民の独立の精神と気魄あると考えております。
  82. 今澄勇

    今澄委員 自衛力の中心的な課題を、政府が国民の独立心と愛国の気魄であると答弁されたからには、先ほど緒方さんが言われた自衛力の増強は、MSAを受けることによつて兵器その他のものはふえるけれども、現下の日本の内灘、浅間等の問題からながめてみて、こういう基地においていろいろの問題が起つていることは、これはいわゆる独立の気魄とさらには受国の心を振い起させるに非常に役立つものであると緒方さんはお思いであるかどうか。私はこのMSAは、少くとも自衛力の根幹がそういつた精神的部面であるならば、マイナスであると思うが、その点についての緒方さんの御見解を伺いたいと思います。
  83. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私はマイナスであるとは思いません。今日の防衛というものは、私個人の意見でありますけれども、一国と一国の防衛というものはもうできぬ時代になつておると考える。これは武器の非常な進歩からそうなつておるのであります。そういう意味から日本の防衛につきましても、国際的にただいまお話の日米安全保障条約というようなものは、かりに暫定的のものであるにしても、やはり相互安全保障という第二次大戦後に起りました思想に基きまして、そういうものを対象として考えるべきでありまして、一国の防衛を外国と協同のもとにやつて行くということは、決してその国の独立の精神あるいは気魄を損ずるものではない、またそういうふうに今後進んで行かなければららない、かよう考えます。
  84. 今澄勇

    今澄委員 これは見解の相違であるが、緒方さんは、このMSAによるアメリカの援助というものをもし受けるとすれば、将来永久にこれをお受けになるつもりであるか、それとも早急にこういう援助を脱して、日本が独力で日本の経済その他をやつて行くようにお考えなつておるのか、もし期限がわかるとすれば、何年くらいをお受けになるつもりであるか、ちよつと答弁を願いたいと思います。
  85. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 まだMSAの内容がそこまでわかつておりませんので、ただいまは何ともお答えいたしかねます。
  86. 今澄勇

    今澄委員 私は緒方さんに聞きますが、先般の経済顧問会議において、岡野通産大臣は、経審の五箇年経済計画の中にMSAにからむ日本経済構造についての報告をなさつておる。大体それには、MSAについては何年聞くらいであろうというあれが出ておるのであるが、全然そういうようなものについてわからぬという副総理答弁はあり得ないと思います。もう一度何年くらい受けられるか、それとも永久的に受けた方がいいのか、早くやめた方がいいのか、またその御見解についてもあわせて御答弁を願いたいと思います。
  87. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 先般の総理公舎における会合におきましては、この問題は全然取上げられませんでした。
  88. 今澄勇

    今澄委員 今私の言つた第二点の、永久に受けた方がいいのか、それともしかるべき機会に期限を切つてやめようというようなお考えなのか、この点についてお答えを願いたいと思います。
  89. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 その点につきましては、先ほど申し上げましたように、MSAの内容が、ただいま日米両国の間で話合いを進めておりますのでそういう話を進めまする間に、どういう問題が起つて来ますかそういうことを完全にただしました上でないときめられぬことだと考えます。
  90. 今澄勇

    今澄委員 そこで岡野通産大臣にお伺いしますが、MSAの援助については域外発注を希望するという、あなたの発表せられた御見解と、それからこの間の経審の五箇年計画の際に、MSAの防衛のはね返りというものがどの程度あるかということを見なければ計画は立たぬのであるが、そういう計画の中に織り込まれておるMSA防衛生産に関する産業構造上のはね返りが、五箇年計画にどの程度の影響を及ぼすかということについて御答弁を願いたいと思います。
  91. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私が考えておりますところの五箇年計画と申しますものには、MSAの援助というものはまつたく除外してございまして。考慮に入れておりません。でございますから、ただいまその点については何も御答弁する材料を持つておりません。しかし私どもといたしましては、今後MSAのいかなる条件によつていかなるものが出て来るかということによつて、経済政策にいかなる影響を与えるか、またいかにして行くかということを研究しなければならぬと考えております。
  92. 今澄勇

    今澄委員 岡野通産大臣は二十六日の記者会見で、通産省記者クラブにおいて、MSAの問題について「政府がMSA援助を受諾した場合、希望条件の第一は保安隊用の武器を日本につくらせ、この対価をアメリカがドルで払つてくれるような域外発注の形が最も望ましい。 第二ということでMSAに関する通産省の態度を記者団に述べておられるのに、この国会において何がゆえに通産省がMSAを受けるについての態度を、われわれ国会議員に答弁することができないのであるか、もう一度ここで御答弁を願いたい。
  93. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私の考えといたしましては、御承知通りに国際収支のバランスを合せて行くというのが、私の頭を一ぱいにしておるところの一番大事な問題でございます。そこで今まではMSAというものがございませんでした。ただ問題といたしまして、なくても何とか五箇年計画をやつて行きたい、こういうよう考えております。しかし幸いにしてか、どうでありますか、もしMSAというものが出て来るといたしますならば、これがどんな形で出て来るだろうということを私自身はいろいろ想像してみたのでございますが、しかしこれは理論的に考えてみるよりほか方法はないのであります。今後の会議にまつよりほか結果はわからないのでありますが、しかしMSAの根本の問題から見ますと、軍事援助、経済援助、それから技術援助、こういう三つになりますから、少くともこの三つの範囲を出ないことは事実であります。そこで私の考えますことにつきましては、もし軍事援助の点におきまして、完成兵器とか、もしくはそういう程度のものを向うが持つて来るということになれば、日本の経済には、いわゆる国際収支に関係しましては、何らの益と申しますか、プラスにならない。しかしこの問題は、私想像をたくましゆういたしますれば、もし日本で必要なものを日本予算でやるといたしますれば、それが向うからの援助になると、予算の節減になるという経済上の利益がある、こう考えます。同時にもしこれを日本が生産をして買つてくれるということになりますれば、これは日本に外貨が入て来、同時に日本の生産を少しでも刺激するという意味において利益じやないか、こう考えておる次第でございます。そういうわけでございますから、何ら見当がつかないものでありますが、何が来るかということとついては、私がいろいろ想像をたくましゆうして、日本経済にいかなる影響を与えるかということで、MSAのアクトから理論的にどういう結果が出て来るだろうということは、想像をたくましゆうしていろいろ自分で考えておる次第であります。
  94. 今澄勇

    今澄委員 その想像をたくましゆうして、MSAの援助は第一年目から漸次先細りになる見通しであるということをあなたは申されておりますが、これはどういうところからそういうふうなところに考えが結着したのであるか。それから今あなたの言う話を総合してみると、通産省としては域外発注のドルでもらえるよう措置が希望であるというふうに解釈をいたしてさしつかえありませんか。
  95. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。先細りになるだろうというようなことを言つたかもしれませんが、言わないかもしれぬ、はつきり覚えておりません。しかし私自身といたしましては、根本的にはできるだけ今までの情勢上MSAを受けて、われわれ通産行政を担当いたしております者から申しますれば、できるだけ日本の経済を改善するに役立つようなことになつてほしいと思います。しかし先細りということは、私は言つたのか知りませんけれども。こんなものは長く続くものじやないということは常識上考えております。
  96. 今澄勇

    今澄委員 今通産大臣答弁で、日本の産業構造、経済をあずかる通産省としては、ドル収入による域外発注を受けることが望ましい。しかもこの援助は長期にわたるものではないという二つの点は明瞭になりましたが、岡崎外務大臣に伺います。外交折衝の衝に当られている外務大臣は、このMSA援助を今通産大臣が言われたような域外発注、ドルでもらうということが第一で、しかもこの援助はもとより長期に及ぶものではないというふうに、私は外務大臣も同意見であると考えたいのですが、御意見をお伺いしたいと思います。
  97. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 第一の点は、通産大臣は主として外貨収入の点から言われたのでありましようが、これは実際やつてみないと、たとえば海上警備隊で船がいるというような場合に、その船を先方から現物として援助された場合も、これは日本の経済に、外貨収入は別として、相当大きな有利な影響を及ぼすであろうと私は考えております。従つてこれは域外発注がどの程度あるのか、あるいは直接の援助がどの程度あるか、これを実際研究してみないとどちらが最も望ましいかという結論には達しないと思いますが、外貨収入の点からいえば、もちろん通産大臣が言われたようなことになります。それからなお、これにつきましても、世界の情勢等によりまして、これがいつまで続くものであるかということは、もちろんわかりません。しかし永久に続くというようなことがないのは、常識でありますから、われわれとしては、そんな外国の援助にたよらないで自力で経済をやつて行く方向に持つて行くことは、同意見であります。
  98. 今澄勇

    今澄委員 外務大臣は、このMSAの援助はそう長くはない、少くとも暫定的に受けるのだということを、はつきり答弁しました。いま一つの点は、域外発注のドル収入で行きたいという通産大臣意見に、全幅的に賛成ではないようです。それで日本全体の立場から見て、外務大臣は、完成兵器、技術援助、今の域外発注等の中で、日本現状としては、為替収入の国際バランスから見れば、ドル収入がいいと言われました。その答弁は、今の日本の自立経済の最大課題が、貿易収支をどうするか日本の海外収支をどうするかということにあることに、国民ひとしく認めるところであるから、結論を下すならば、日本は域外発注を最も要望する、かように解釈してよろしゆうございますか。
  99. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは交渉してみなければ、実際の具体的な事実によつてのことは言えないのでありまして、通産大臣も、アクトを研究して、それによつていろいろ想像をしておるのだという趣旨であります。従つて、域外発注が最も好ましいという結論は、まだ早いと思います。ただ外貨収入の点からだけいえば、その通りである、こう言つておるのであります。
  100. 今澄勇

    今澄委員 この経審が出した日本の自立経済五箇年計画の中には、MSAによる影響は全然織り込まれていないということが第一点。第二点は、この援助はある期間が来たならば、早晩打切られるということ。第三点は、想像するとするならば、域外発注が好ましいということ。こういうことでありますならば、もしアメリカがいくらドルをやろうといつても、MSAにからむアメリカからの発注にこたえるだけの生産設備、機械設備が、計画の中に織り込まれないことには、どんなにアメリカからMSAの注文が来ても、これをつくる能力がないということになる。現に公聴会において原安三郎氏は、現下MSAを早くやらなかつたから、手遅れになつて、MSAを受ける設備はほとんどないという話でございましたが、このMSAを将来政府が受け、注文が来るとすれば、今の日本の機械設備では、これらの注文にこたえられないのである。そうなると、経審としても、そういうMSAの受諾をするとすれば、何か新しく設備の計画を立てて、いろいろやるようなことを考えなければならぬのであるが、この点についての岡崎さんの御見解を承ります。
  101. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。先ほどからたびたび外務大臣からも申し上げました通りに、いかなる形でどういうふうにやつて来るかということは、はつきりいたしません。ですから、それに対する結論は出ません。お説は多分こういうことだろうと思いますもしこれが域外調達として日本に兵器生産を委託するならば、そのときに、日本の生産設備がそれに応じられないのではないか、こういうような御質問ように思います。私がただいままで通産行政として知つておりますことは、大体今六千五百万ドルぐらいの注文が来ておるように思います。それを引受けてやつて行くだけの能力が、現に存在しております。それからもう一つ考えますことは、戦後いろいろの遊休設備がそのままになつておるものがたくさんございますから、それを何とか活用したいというような財界方面の希望もあるようでございます。しかしまだそのようなものを利用するだけの事業も生産も、目安がついておりません。もし万一日本で生産をして行かなければならぬというようなことになりますれば、私は大体これを修理するとか修復することによつて、応じて行けるのではないか、こうおぼろげながら考えておる次第でございます。
  102. 今澄勇

    今澄委員 そこで岡野さんに伺いますが、朝鮮特需は対岸の火災であるから、値段に糸目をつけておられないで、時間的な緊急性がある。ところがMSAの援助から来る発注は、コマーシャル・ベースで、世界の値段の比較、検討の上からなされるのであるから、その受注の競争率から来る値段のシヴイアな検討は、朝鮮特需の比でないとすれば、現在対岸の火災である朝鮮特需で引受けておるところの設備で、このMSAによる注文を引受けて、採算が合わないということは、これは原さんも言つておるし、みな言つておる。こういうことから考えて来ると、大体あなたは大丈夫と言われるが、その見解は非常に理論的でない。何がしかここにMSAを受ける設備をどうするという結論が出なければ、域外発注を受けてもどうにもならぬのじやないかと思いますが、これらの点についていま一度御見解を承りたい。
  103. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。今、日本といたしまして、非常に苦労をしておりますことは、日本の生産物価が高いということであります。これはあに特需のみならんや、ほかの正常貿易においても非常に苦労しておるわけであります。この点につきましてわれわれといたしましては、国内の物価引下げに努力しつつあります。同時に今までの朝鮮特需においてわれわれが受注に参加した時代を考え、またMSAがどうなるか、内容はわかりませんが、これがわれわれの想像の一部分であるようなものでありますれば、あるいは国際競争で入札しなければならぬということもありますから、その点においても非常に苦難のあることは事実であります。これはただ単に特需の問題だけでなく、貿易全体の問題、国内物価が国際競争場裡において勝利を占めるか占めないかというような意味において、根本的に考えなければならぬ一般的な問題として、私は扱いたいのであります。
  104. 今澄勇

    今澄委員 もう一つ伺います。経審がつくつた自立経済五箇年計画について、先ほど御説明がなかつたが、MSAにからむ問題が入つておらなかつたとすると、たとい一億五千万ドルとしても、一億五千万ドルのものが日本に来るとすれば、この五箇年計画は、このMSAのためにそういう産業設備その他産業構造等の問題もあるから、かえなければ理論的つじつまが合わない。万一MSAを受けるとすれば、それらの自立経済五箇年計画についても変更されなければならぬと思うのでありますが、岡野さんの御見解を承りたいと思います。
  105. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。それはその通りでございまして、今MSAの勘定はちつとも入れないで、五箇年の見通しをつけております。そういたしますと、余分な外貨収入が入るということになり、また生産をしなければならぬということになりますれば、当然われわれはこれを改訂しなければならぬことは事実でございます。
  106. 今澄勇

    今澄委員 そこで精神的な面から見たMSAの日本に及ぼす影響は、もしわが国を防衛するとすれば、それの根幹となる精神的な面において必ずしもプラスでない。憲法上においても、これまで本国会において何度も繰返されましたから、私は重複を避けますが、義務の問題については、きようの岡崎さんの一方的な答弁では、これらは何らはつきりしない。経済的な部面においても、今言つたように、日本の自立経済五箇年計画をMSAをもらうために変更して、そうして日本の産業構造の中に、それらの軍需工業が大きなフアクターを占める。そこで先ほどあなたが言われ、岡崎さんも確認されたように、何年か先にMSAを打切るとすれば、そのできた軍需工業の生産設備というものは、政府としてはどこにこれを転用するのか。これは日本の産業構造に大きな変革を及ぼすわが国最大の課題であるが、このMSAが打切られたら、このMSAのために拡充された軍需生産諸設備をどういうふうに持つて行こうと考えておられますか、通産大臣についでにお伺いいたします。
  107. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答えを申し上げます。実はただいままでに約三億ドルぐらいの特需があるのでございますが、その三億ドルの特需と申しますものは日本の生産の約五%ぐらいにしかなりません。日本の産業構造といたしましては、非常に小さい役割を勤めております。その意味におきまして、私はMSAの事情がはつきりいたしましたならば、それについて適当な処置をする考えでございますが、あまり心配をしないでいいのではないか、こう考えております。
  108. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は本論に入りますが、少くとも日本の現下の最大課題は貿易じりである。これは日本国民がかつえるかどうかという重大問題である。その貿易じりが正常輸出が十三、四億ドル、輸入が二十一億ドル、今日の現状のもとにおいてその穴埋めをする朝鮮特需がなくなつて、ここにMSAの援助を受けるとすれば、それが日本の産業構造に何らの変化も及ぽさないような微々たるものならば、日本の国際収支に大した影響を及ぼさないのであるから、大きな義務を背負うてまで受ける必要はないではないか。もし国際収支の上に朝鮮特需三億ドルと見合うような金額でこのMSAが日本に与えられるということになれば、先ほど緒方総理は経済上の寄与になると言われたのであるが、日本の産業構造から見ても心配はないものであるならば、何ら日本の経済再建の寄与にはならないという結論になるのではないか。緒方さんは、さよう日本の経済的に何らプラスにならぬというような結論になつても、このMSAというものについては受けた方がいいとお思いになるのかどうかお伺いします。今いろいろ外務、通産両相のお考えを検討してみると、このMSAというものは、経済的に見ればいかにも日本の経済のプラスになるような話に私は聞いておりますが、今の御答弁から見るならば、日本経済に大したプラスにはならないという結論になる。国際収支のバランスを埋め合せるほどのものではない。しかも精神的には、日本の精神的な自衛力にも悪影響があるという結論になるのであつて、何らこのMSAがあなたの答弁せられました日本の自衛力を養い、日本の経済に大きく寄与することになるとは思わないのでありますが、緒方さんの御見解を承ります。
  109. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 お答えをいたします。先ほど来お答えしたことを繰返すようなことになりますけれども、まだMSAの内容もよくわかりませんが、私は日本の経済の上にプラスになると予想いたしております。しかしこれはまだ話を進めた上でないと的確なことは申し上げられません。それから国民生活の上にマイナスになるのではないかとおつしやいましたが、これは私先ほど申し上げましたように、マイナスにならないようにして行かなければほんとうの防衛はできないのではないか、そういう面におきまして一種の指導も要するかもしれませんが、私は一国の防衛ができぬというのが今日の現状であると考えておりますので、その点につきましてはだんだんに国民の考えをそういう方に向けてもらいたい、さよう考えております。
  110. 今澄勇

    今澄委員 今の答弁はまるつきり理論的に考えればナンセンスであるが、この問題は総理があとで出られたときに十分追究するということで、留保いたしておきます。少くともわれわれ国会議員に対しては納得の行くような筋を通しまして、ひとつ理論的な御答弁を願わなければならぬと思います。  そこで私は外務大臣にお伺いをいたしますが、あなたはこのMSAの条約、MSAのこの協定を国会に事前に諮らないでスタートしたのですが、この条約の調印のときは事前に国会に諮つて、それから私は調印すべきものだと思います。なぜならば憲法上疑義があり、自衛の上に大きくプラスにならないし、経済的にそう大したあれはないとすれば、特に軍事援助の形で完成兵器が来る部面が非常に大きいと思うが、そうなれば朝鮮戦線の古い武器でも日本に渡そうということになつて来れば、まつたく日本にプラスするものが何もない。義務だけが非常に大きいという結論になりますから、少くともこのMSAは調印前に国会の承認を得るということは、だれが考えても政府のとるべき妥当なるこれが処置でなければならぬが、この点についていま一度岡崎外務大臣のこれらの処置についての見解を伺います。
  111. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その前にお断りしておきます。つい御質問に答えてあいまいに返事をしておきましたが、MSA援助というのは、直接に完成した兵器をよこしたり、あるいは国内で日本の保安隊なり海上警備隊なりに必要なものをととのえて渡すことが主としてMSAの援助でありまして、域外買付というのは直接のMSAの援助には入つておらないのでありますから、私の答弁があいまいだつたらその点は訂正をしておきます。  それからこれは何べんもお話のありましたことで、義務が非常に多いとおつしやるが、MSAの援助を受けてどこに義務がふえるのか私には了解できないのであります。少くともアメリカ側の回答等から見たところでは、特に日本の負担すべき義務が非常にふえるとは考えておりません。しかしそれは別として調印の前に国会の承認を受けるかどうかということであります。これは憲法学者のひとしく言うところでたびたび繰返しておりますが、調印と同時に効力を発生する協定、条約等においては調印の前、つまり事前に国会の承認を受ける、調印と同時に効力を発生しないで批准という行為をまつて効力を発生する条約、協定等においては、批准の行為をする前に国会の承認を受ける、これが憲法学者の解釈であります。われわれもこの趣旨によつて事前もしくは事後とありますが、事前に、つまり調印と同時に効力を発生するものなら調印の前に、批准と同時に効力を発生するものなら批准の前に国会の承認を受けるつもりでおります。
  112. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は岡崎さんにお聞きします。あなたの今の憲法解説は、日本の憲法学者の中でも一、二の憲法学者の解説である。私は条約優先主義か憲法優先主義かという問題について、ここであなたと論争しようとは思いませんが、あなたは今日わずか一億五千万ドルのMSA援助を受けるかどうかということについて非常に努力をしておられるが、戦後において日本はガリオア、イロアの援助を受けているが、このガリオア、イロアの援助が、かねがねこの委員会でも申されておりますように債務であるか、援助であるかということが不明確なままに今年度の予算案にも百億を計上してあります。平和回復善後処理費に百億計上しておる。これは二十何億ドルという厖大な、日本が債務として負うとすれば大きな問題だが、ドイツあたりではこの問題を明確に割切つて解決をしておる。あなたはMSAよりも先にこのガリオア、イロアの援助は債務であるか、もらつたのであるかというような問題を解決すべく努力することが、外務大臣としての大きな任務でなければならぬと思うが、かような問題も憲法並びに論争上の疑点を残したまま、毎年々々今度もまた予算案に計上をされておるのであつて、岡崎さんの考え方は、そういう憲法上の疑義があるところを縫つては次々とやつておられるように見える。岡崎外相は、これらのガリオア、イロアの援助については、その後これが債務であるか、もらいきりのものであるかということについて、努力されたかどうか、そうしてアメリカはすでに会計年度でこれを処理して、アメリカとしては会計処理がついているものであるか、一体岡崎さんはこの問題についてその後どういう交渉をされたか、簡単でよろしゆございますから、この機会に御返答願います。
  113. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ガリオア等を債務と心得えているということは、たびたび繰返した通りでありますが、一体こういう債務というものは、早くきちんと片づけた方がよろしい場合ももちろんありましようけれども、そう急がない方がいい場合もあるのであります。われわれは債務とは心得てはおりますが、ただいまのところまだこの債務を確定するよう措置を急いでとる心要もないと考え薫りまして、いろいろ先方の情勢その他いろいろの空気等も打診はいたしておりますが、実際上の問題としてはこの前と同様であります。なお百億の計上はこれのみでありませんで、賠償等の問題等についても考慮しての額であります。
  114. 今澄勇

    今澄委員 額の大小ではなしに、それが一体債務であるということであるて債務とするということはあり得ないことになつているのに、岡崎さんは一方的に債務であると言われる。MSAも、今のあなたの答弁によると、私はおそらく国会の事後承認をあなたは求められると思う。それから日米通商航海条約についてひとつ御質問いたしますが、これも私は日本とアメリカとの間の通商航海条約がそんなに急いで必ならば、今国会に提出して早くいろい要の手続を調印したあとからとらなけろばならぬのに、調印後はそのままにしておいてある。今租税協定が行われれているが、これもまことに私どもつつ込みたい点がありますが、時間がないのでやめますけれども、それら日米通商航海条約等はいろいろ急いでいるのに、国会には出されないで選挙管理内閣であわててこれに調印した。でき上つたところの既成事実によつて世界のひのき舞台の外交場裡で調印をして、これをもし国会が否認するということになれば、これこそ日本国全体としての大きな運命であるから、みなが辛抱するであろうという建前で、事後の批准を国会に求めておられる。だから私は講和条約、それに伴うところの安全保障条約、さらにまた行政協定、これも全然国会の承認を求めておらぬが、これも国際条約であることは間違いない。さらにその後引続いて日米通商航海条約、それから今度のガリオア、イロアの債務も国会の承認を得ておらない。さらにこのMSAもあなたは今の答弁で行くと、おそらく国会の事後承認を求めるであろうとおもうが、そういうやり方、私どもはこの際岡崎外交というもの、これまでの終戦以来進路について、大きく国民に対して危惧を与えるそのやり方は、秘密独善外交といわなければならぬと思います。なぜあなたはこういうふうに、事前に承認を求めたものが一つもない、一通の既成事実の上に立つて国民を押し込めようというような政策ばかりをとつておられるのであるか。この点はわれわれは場合によつては岡崎外相の不信任の大きな一連の事実として、あなたの責任を追究しなければならぬと思うが、どういう見解でそういうふうな処置を何一つ例外なしにとつておられるのであるか、ということを私は率直にここで御答弁を願いたいと思います。
  115. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 憲法には締結の前もしくは後となつているのであつて、調印の前もしくは後ということにはなつておりません。そして国際上の慣例によれば、調印と同時に効力を発生する条約なり協定なりでも、調印の前には両国間に完全なる合意が成立してそれを国会に求めて承認を得るのである。従つて調印と同時に効力を発生する条約を、調印の前に国会の承認を求めるべく差出すときは、その条約なり草案というものは両国の全権でもつてイニシアルをして、完全に意見の一致したことをはつきりさせてから国会の承認を求めるのであつて、それは、批准と同時に効力を発生する条約において両国の全権が調印をして、ここで両国の行政府限りでは合意が完全に成立したということをはつきりすることと何ら違いはないのでありまして、従つて調印と同時に効力を発生するか、批准と同時に効力を発生するかは、その形によつて違うだけであつて、ひとしく事前の承認を求めるという点では全然同じであります。従つて調印と同町に効力を発生する協定なり条約なりを国会に出して承認を求める際に、国会はこれは調印したのだから自由自在に直せるというならば、同様に批准を要件とするものが、批准の前に国会が自由自在に直せるということも言えるでありましようし、もし調印してから批准を求めるものであつても、国会ではもう調印した以上はなかなか直せないのだという御意見ならば、調印と同時に効力を発生する条約案についても、両国の合意が成立しているのでありますから、やはりむやみには直せないということになるでありましよう。要するにどつちも同じことであります。ただ条約の形式には昔から調印と同時に効力を発生するものと、批准をして同時に効力を発生するものとがあるのでありますから、そのやり方が違うから従つて国会の承認の求め方が違うだけてあつて、調印と同時に效力を発生するものを事前に国会にかけるのが憲法の要求するところであつて、批准と同時に效力を発生するものを調印したあとで国会にかけるのは、これは原則に違うのだというお考えは、私はまつたく違つていると思います。これはどこの憲法学者に聞かれましても私はそういう解釈をすると思います。ですからその意味で調印と同時に効力を発生するもの以外のもの、つまり批准を必要とするものについては、調印をそなければ国会に提出する条約の案がきまらないのであります。だから調印をして国会に出す。但しもしその法律論を別にして、できるだけ国会にも知らせ、また国会を通じて国民の理解を求むべきであるという御議論ならば、これはその通りでありますから、できるだけ報告もし、できるだけ説明もいたしますけれども、その憲法論においては私はあなたとは考えが違います。
  116. 今澄勇

    今澄委員 時間もありませんから、私はここで憲法論の是非をやろうとは思いませんが、少くとも岡崎外交が今日までとり来つた過去の道は、憲法上からも岡崎さんの今ここで言われたような憲法の解釈は、やはりこれは一部学者の解釈であつて、条約が憲法優先の規定のごときも、われわれはさような解釈をいたしておりません。これは見解の相違であるからやめます。  最後にもう一つ岡崎さんに、MSAにからまるアメリカとの折衝において、条約は批准条項をつけて批准を求められるおつもりであるか。それとも批准条項はつかない見通しでありますか、承つておきたい。
  117. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは話してみなければ、だんだん交渉の決果きまることでありますが、大体において私の考えでは批准条項をつけるべきであろうと思つております。
  118. 今澄勇

    今澄委員 私はMSAについては疑点がなお幾分残つております。すなわちこれが憲法上の解釈並びにこれが自衛力に及ぼす精神的な影響、さらに経済的な部面の掘下げ等々を十分検討した後でなければ、かかるMSAのごとき問題を軽々に政府が交渉に乗り出して行こう、交渉するということすらも私は大問題であると思いますので、この点については総理質問を留保いたします。  なおもう一つ経審長官に、経審案になつているところの朝日新聞三十日発表の防衛六箇年計画、あなたは何と仰せられるか知らぬけれども、これは経審の担当部局について私も調査いたしたし、この案は経審としては認められておらぬけれども、一応の下案としては経審当局がつくられたものであるかどうですか。この点をちよつとあとの質問のこともありますからお答えを願つておきます。
  119. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。私は何も存じませんで、新聞を見てびつくりしたのであります。関係当局にただしたところ、そういう何はないということであります。
  120. 今澄勇

    今澄委員 そういうばかなことはないとおつしやるのですが、時間がなくなりましたのでもう一つ。私は、MSAの援助を受けるについて政府において特別の委員会をつくる、その委員会の原安二郎氏その他大体の顔ぶれが出ておりましたが、まさかそういう人的な交渉までには至らないと思うが、そういう委員会をつくり、各方面の意見を徴してこれらの問題を審議しようという計画がおありでございますか。将来そういうものをおつくりになりますか。緒方さんにお伺いいたしておきます。
  121. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ただいまのところはございません。それからこの間今お話ようなことが新聞に載つておつたようでありますが、それは全然根拠のないことであります。
  122. 今澄勇

    今澄委員 緒方さんにもう一つ伺いますが、今後ともそういう委員会をおつくりになる考えはありませんか。
  123. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 どういう委員会を……。
  124. 今澄勇

    今澄委員 MSAを受けるに関して、いろいろ経済あるいは法律その他の人々の代表を集めて、これを受けるかどうかということを審議する委員会です。
  125. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 受けるについての。それはございません。
  126. 今澄勇

    今澄委員 それではこれで打切ります。
  127. 尾崎末吉

    尾崎委員長 それでは午後二時より再開することとし暫時休憩いたします。     午後零時五十分休憩      ――――◇―――――     午後二時五十一分開議
  128. 尾崎末吉

    尾崎委員長 休憩前に引続き、会議を開きます。  質疑を継続いたします。羽田武嗣郎君。
  129. 羽田武嗣郎

    ○羽田委員 午前中の予算委員会で、人事院総裁に、地域給の問題について横路委員からお尋ねがあつたのでありますが、私もこの問題について、少しつつ込んでお尋ねをいたしたいと存ずるのであります。  実際、私ども毎日配達されますところの衆議院公報をめくつてみますと、地域給引上げの請求が、少い日でも五、六十件、多い日には二、三百件にも及んでおるのでございます。一方われわれ議員のところには、選挙区から毎日何組もの地域給引上げの情陳隊が押しかけて来ておる実情であります。五月二十九日現在の人事院調査によりますと、全国一万七十七箇市町村のうちで、五級地が八十箇市町村、四級地が九十七箇市町村、三級地が二百五十六箇市町村、二級地が六百三十四箇市町村、一級地が二千百五十三箇市町村でございまして、合計は三千二百二十箇市町村に及んでおつて、この恩沢をこうむつておる国家公務員は、約七十二万人であります。金額にして百五十億に上つておるのであります。給与予算の一五%を占めておるよう状態であります。その上に、これら関係市町村の地方公務員給与のために、平衡交付金として、おおよそ三百億円以上が国庫より特別に支出されておる現状でございます。右の次第でございますから、いまだ級地に指定されないところの六千八百五十七箇町村の国家公務員並びに地方公務員、あるいは教職員の諸君は、いずれも地域給引上げ対策委員会を結成いたしまして、さきに述べましたように、全国各地から上京して、級地指定の運動に奔走されまして、また一方低い級地にある諸君も、より高い級地引上げ運動に必死になつておる実情であります。この地域給は、今日の段階においては、いろいろな意味において人事行政上有害であつて、これを長く放置すれば、ゆゆしきことになりはしないかと考えられておるのであります。いわゆる陳情行政の悪弊の最たるものが、この地域給の存在ではないかと私は考えておるのであります。  第一に、一般職の職員の給与に関する法律の第十二条には、生計費が著しく高い特定の地域に在勤する職員に対して支給することになつておりまして、この地域給をつけた当初の立法精神は、終戦後物資が不足し、かつそれが偏在していたがために、各種の地域差がはなはだしかつた実情にかんがみまして、低い本給をこれで補充しようという意味であつたものと考えられるのであります。しかるに最近においては、物資もゆたかになりましたし、交通も円滑になつて参りましたし、生計物資の価格の地域差も、また各地の生活水準の地域差も、僅少になつて来つつあるのでございます。     〔委員長退席、西村(直)委員長代理着席〕 それにもかかわらず、今日に至つても、なおこの五段階の差等をもつて級地の区分を行うということは、人事院も神様でない以上は、至難中の至難であると私は考える。のであります人事院は、のこ級地の区分を科学的に、合理的に、かつ公正に行つておるといばられておるのでありますが、事実においては、万人を首肯せしめるに足るところの客観的基準によつて、級地の区分をなさつているとは、私は考えておりません。ある県はたくさんついており、ある県はあまりに僅少につけられておるというような不公平が、各地にありますし、また級地についている市に住みながら、級地のない隣の村に通勤するために、その恩典に浴さないし、また逆に級地のついていない村に住みながら、市に勤務するために、この恩典に浴するといつたような矛盾が、いろいろと生じておるのでございます。全国の公務員のすべてから、不公平だという非難の声がとうとうとして起つておるのが、この級地の問題だと思うのであります。この反面には運動をした方が勝ちだというような悪い考え方を起させ、ますますゆがめられて行くのが現状であると思うのであります。 第二に、かりに人事院が神のごとき公正な判断をもつて級地の区分を行つたといたしましても、各市町村在住の公務員には、主観的な判断、主観的な欲求がございますから、ともすれば自分の勤務地が他の勤務地より生活水準が高いのだという考えを持ちたがるのが、人間の常であります。かよう考えがありとすれば、いくら公正に級地の指定を行つたところで、いつまでたつて公務員の不平は絶えませんし、結果は年中行事のごとく級地引上げ運動となつて、いわゆる陳情行政が行われて行くのであります。かような不公平をされるような手当というものは、人事行政上はなはだおもしろくないと考えておるのでございます。  第三に、これは一番重大なことと存じますが、地域給制度がありますために、地方の教職員の円滑なる人事交流に、抜きさしならない混乱を来しておるのでございます。この問題の中心は、何といつても学校の先生の問題でありまして、僻村の子弟にりつぱな教師を配置して、義務教育の平等と充実を期さねばならないのに、地域給がついていないために、結局本人にとつては減俸となりますので、赴任を喜びません。赴任をしいられるならば、どうしても教育意欲を失つて来ることは、人間としてまたやむを得ないことであろうと思います。かくのごとくこの地域給の問題は、人事交流の上において、地方の教育充実において、国民教育の上にゆゆしい問題を提供しておると私は考えております。  第四に、地域給引上げの陳情内容をしさいに分析をいたしてみますれ ば、ベースが低いために、率直に言えば、生活が苦しいから、地域給を要求するものがあるかと思いますと、一方には僻地で地域給がないために、教員がそこには来たがらない。こういう意味で、地域給というものをぜひ上げてもらいたいというよう陳情を、私どもにやつて参ります。前者は間接にベース・アツプを要求するものであり、後者は遠隔地手当の要求であると考えられるのであります。これらが地域給引上げの要求の中に混然と入りまじりまして、法律によれば、生計費の著しく高い特定のわずかな地域につけられるべきところのこの地域給が、次第に広汎となりまして、今日地域給のつかない国家公務員はわずかに七%だけしか残つていないというような驚くべき拡充の状態を示しております。このことはこの地域給がすでに本来の使命を逸脱している証拠だとも考えられるのであります。私は以上の観点に立ちまして、以下数点につきまして人事院の御当局の御方針お尋ねいたしたいのでございます。  まず第一にお尋ねいたしたいことは、この地域給制度を全廃して、基本給に繰入れて公正なる給与体系を整えることが急務だと考えますが、この点についてどうお考えなつておるか。それから一級から五級まで全部全廃をいたしました場合においての国家公務員、公社等の政府関係職員並びに地方公務員また教職員、これらの諸君に国家がさらにどれだけの予算をよけいに計上しなければならないか、この点についてお尋ねをいたしたいのであります。
  130. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 お答え申し上げます。ただいま地域給の問題につきまして詳細なる資料並びに各種の例をおあげになりましてお話になりましたが、人事院といたしましても、大体お話のごとく、地域給制度物価地域差指数その他の諸条件によりまして、制定当時に比べまして相当不合理な点がございますことを痛感いたしておりますので、この制度につきましては漸次廃止の方向に出て参りたいと思つております。ただただいまもお尋ねの第一点のこれを一挙に全廃いたしまして基本給に繰入れますことは相当予算を伴いますか、あるいは予算を伴いませんとまたそこに非常な給与上の問題が起りますので、漸次何らかの整理をいたしまして、終局には廃止するという方向に持つて参りたい。ただこの成案につきましては相当な研究を要しますので、この国会勧告することは間に合わぬと存じますけれども、近い機会にごらんに入れたいと存じております。なお金額でございますが、かりに一級から五級まで全部この際廃止いたしまして、現在の五級と同様な基本級にいたすといたしますと、国家公務員と教育職員、地方公務員と全部合せまして約六百五十億程度いると思います。
  131. 羽田武嗣郎

    ○羽田委員 今承りますと、全廃をいたしましたときには六百億円以上もかかるということでございますが、これはなかなか一挙に断行をするということはかなり困難な問題が財政上起つて来ると思うのであります。将来ただいまのお話によりましても全廃をする方向に進むというお話でありますが、まず一級地とか二級地とかの低いところから廃止する、そうして全廃に持つて行くということが一つの方法であると思いますが、国家公務員やあるいは政府関係機関あるいは地方公務員あるいは教職員の一級地、二級地を廃止する場合に要する現在より増額せられるところの金額はどのくらいになる見込みか、その点もこの際承つておきたいと思うのであります。
  132. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 お答え申し上げます。かりに一級地だけ廃止いたしまして、それに相当する金額を基本給に入れるといたしますと、国家公務員地方公務員政府関係機関全部を合計いたしまして約四十五億を要するのであります。なお一級地と二級地を全部廃止いたしまして、それに相当する基本給を平均いたすといたしますと約百四十億程度となります。
  133. 羽田武嗣郎

    ○羽田委員 今お話一級地、二級地程度のことでありますと、財政のやりくりもできると考えます。先ほど入江さんのお話によりますと、この七月中には勧告ができないが、いずれそういう問題についておやりになるように承つたのでありますので、ぜひこの問題はまず漸進的でもけつこうでありますから、この陳情行政をなくするためにも、この次の勧告をせられる場合においては、一級地、二級地くらいのものは廃止するように、大蔵省または自治庁とも十分御連絡をいただいて、そういう方向に持つてつていただきたいと考えるものであります。  なお先ほどのお話でも、七月中には勧告ができないというお話でありますが、一体いつごろにこの勧告が出されるかをこの際明らかにしていただきたいと思います。というのはこの暑いのに東京に、北海道から、また九州の、ことに水害地の人たちまでも、級地引上げ運動に、衆議院や参議院人事院あるいはまた地方自治庁等に盛んに陳情に一日何百人という人が来ているということは、やはり七月の勧告に級地引上げということが行われるのではないか、それならばやらなければ損だというので来ていると思うのでありますし、そういう意味において、はつきりといつごろにそういう問題の調整あるいはまたはつきりした方針勧告せられるのかどうか、こういう時期をはつきりとしていただいて、地方の人が無用に東京に金をかけて陳情に来る現在のそういつたものをひとつはつきりと打切つていただきたい、こういうふうに考えるものでありますが、時期の点をひとつ承りたいと思います。
  134. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 お答え申し上げます。地域給をただいまの方向に向つてかりに一級、二級を整理するか、あるいは何らかの他の方法によつてこれを整理改廃するかということにつきましては、若干の調査研究をさせていただく時間を要しますので、この次の国会にはたして勧告ができるかどうかお約束はいたしかねるのであります。しかしながらただいまのお示しの通り、その間においていろいろ各方面に御迷惑をかけることも考えまして、地域給の制度そのものにつきまして、何らかの根本的な提案を新しくさせていただくまでは、現在のままこれを置きまして、かりにこの国会においていろいろ給与問題について勧告するといたしましても、地域給現状のまますえ置きたいと思つております。
  135. 羽田武嗣郎

    ○羽田委員 人事院に対する質問は以上をもつて打切ります。  次に外務大臣に対して少しくお尋ねをいたしたいのであります。最近例の内灘問題を契機といたしまして、いわゆる基地問題が活発に取上げられて、今や全国各地横断的に連絡をいたして、反米的な政治運動にまで進展するような様相を呈していると私は考えております。これらに対して政府はいかなる見解を持つておられるか、またこれらに対する方針をこの際岡崎外務大臣お尋ねをいたしたいのであります。
  136. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 米国が日本に駐留するのは日米安全保障条約に基くものでありまして、政府としてはこれに必要な施設とか区域を提供する義務を負つております。条約上の義務は国際信用の上からもぜひこれは守らなければならないと考えております。但しこの義務を履行するにあたりまして、アメリカ側の要請を無条件で受入れているわけではなくて、個々の施設におきましては、日米合同委員会で先方の要求と現地の実情を綿密に検討しまして、また正当な理由のある地元民の声を聞いて、一般大衆への影響等を常に念頭に置いた上で、日本側の同意できるものについてのみ提供しておるのであります。現在非常に問題となつております演習場についてみましても、先方の要請のうちで提供を拒否したものも数件の例があるのでありまして、また現実の損害に対しても適正な補償の措置を団ずるとともに、風紀その他の問題につきましても、米軍と地元民との間に立ちまして、できるだけこれが改善に労力をいたしておるのであります。こういうわけでありますから、一般には何となくこういう施設や区域の周辺にわける、米軍側と一般の住民との間の悪い面のみが宣伝されているような傾向もなきにしもあらずでありますが、大体においてみますと、現地の関係者のお互いの理解と協力で、非常に有効かつ円満に運営されておるものも多数存在するのであります。われわれとしましては、今後ともできるだけ地元民の声を聞いて、しかも必要の最小限度にとどめるようにして、この施設、区域等を提供する覚悟でありますが、しかしそれを提供することは条約上の義務として忠実にこれを実行したい、こう考えております。
  137. 羽田武嗣郎

    ○羽田委員 ただいま承つてみますと、うまく行つている地方もあるという話でありまするが、大体最近のわれわれのところに参つている、また各代議士のところへも、大臣のところへも参つていると思いますが悪い例ばかりがいかにも大きくクローズ・アップされて宣伝をされておるということ、実際に冷静に真相を見ないという者が国民の中にあるということは、私は実は遺憾に思つています。しかしながら私は外務省の事務当局の方に対しても、やはりもつ誠意をもつて民衆にぶつかつて、そうして事を一つ一つ片づけて行くというような行き方をもつて行かなかつたならば、今のほうはいたる全国横断的に連絡しているところのこの運動というものは、非常に広がりて行くおそれがあるということを、私はこの際大臣に特に申し上げて御注意を喚起いたしておく次第であります。それから次にただいまの風紀の間脳についても、できるだけのことをやりになつているというお話でありますか、今婦人会や青年会あるいは処女会等の地方の人たちが基地問題についてすぐ問題にし、すぐ燃え上つて来るのは、この風紀問題についての問題であります。この風紀問題だとすぐに貞操を守れ、民族を守れというようなことで、真相を知らずに騒ぎ立てる、ついそういつた一種の政治運動の中にこれらの純真な人たちが巻き込まれるおそれがあるのでありまして、この風紀問題についてもう少し具体的に、対策について承つておきたいと思うのであります。
  138. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはわれわれも非常に心を痛めておりまして、実はなかなか口で言うほどにやさしい問題ではないのであります。しかしただいま日米合同委員会でもしばしば論議をいたした結果、最近とりあえずでありますが、まず現地の関係町村長その他の連中と、その土地に駐留いたしております米軍の司令官等との間の現地の連絡協議会を設けて、そこで腹蔵なく意見を交換した上で、適当な措置をとることに話合いをいたしておりまして、その連絡協議会はすでに各地で催されつつあります。その結果日本側で取締るべきものは取締るのであります。その取締りの方法は法規等の関係上なかなかむずかしくて、口では言いますけれども、実際上なかなか手のつかない面もあるのでありまして、これについてどういうふうにやるか、これは何としても現地の住民たちの協力を得なければできない問題でありますから、できるだけその方面の理解を得、かつ協調を得たいと思つております。もしどうしても必要であるという場合には、これはあまり好ましくないというのは事実でありますが、アメリカ側に話しますと、アメリカ側では将兵に対して、いわゆるオフ・リミツトの制度を設けて、一定の地域に立ち入らせない、こういうことをいたすつもりでありますが、これは善意の、そういうことに関係のないアメリカの将兵なり、あるいはアメリカの将兵と親しくしております日本側の住民たちには迷惑であります。またお互いの理解を深める上においても好ましくないことでありますので、なるべく避けたいと思つておりますが、やむを得ない場合にはオフ・リミツトの制度をとる。しかしその前にできるだけ連絡協議会において協議をいたしまして、日本側としても取締り得るものは取締る。アメリカ側でも常に将兵たちに訓示をいたしまして、日本の国民性とアメリカの国民性と違うところをよく徹底させまして、人の前であまり日本の習慣に反するようなことをしないようにして、またその他いろいろの注意を与えております。多少ずつ現地の懇談会は成果をあげて来つつあると思つております。
  139. 羽田武嗣郎

    ○羽田委員 たいだまの大臣お話によりますと、やはりアメリカ側においても郷に入つては郷に従うように将兵に対しては戒めておる、また日本日本側としてのことをやつておるということでありますが、この問題はほんとうに厳粛に、アメリカ当局に対してやはり日本の風俗習慣というものを尊重するように、特にこの上とも御注意をお願いをいたしたいと思うのであります。この問題が片づきますと、純真な婦女子の方々のこの運動に巻き込まれることもだんだん少くなると考えるのでありまして、この点については特にお力をいただきたいと考える次第であります。  それからやはり承つてだんだんわかつて来ることでありますが、内灘の問題あるいは浅間山の問題、いろいろな問題で陳情隊が参り、また新聞の論調、雑誌の論調、いろいろなものを見ましても、いかにも日本政府が弱腰であるというような印象を持ち、占領下のごとき態勢がそのまま続いておるのだというような印象があるのでありまして、この点はただいま大臣もいろいろと御苦心の点を明らかにされたことはけつこうでありますが、とにかく道理のあるところには従うということで、特にこの際大臣にもはつきりと強い意思をもつて道理のあるところを主張するように、この上も努力をしてもらいたいということをお願いいたします。  その一つのケースといたしまして、今問題になつているのは、学問と演習地の問題でありまして、学問というものに支障があるということで、浅間山の問題があることは御承知通りであります。浅間山は世界有数の活火山でありまして、有史以来大噴火をしばしばいたしております。ことに一番大きかつた天明三年の大噴火のときには、大泥棒のために吾妻川を閉塞して、その決壊によるところの大洪水のために、死者千五十一名、流失家屋千六十一戸にも及んでおるのでありまして、あの山は平常おとなしくしているようでありますが、過去の歴史において一千名以上の人が一ぺんに死んでしまうというような、うちに貯えた猛烈な力を持つた山であるということを、まず頭に置いていただきたいと思うのであります。この火山活動の人間生活に及ぼす大なる危険と、火山現象の研究の重要性にかんがみまして、明治四十二年に震災報予調査会により浅間山の研究が始められまして、その後昭和八年現在の浅間山火山の観測所が東大の地震研究所の支所として創立されたのであります。そうして今では世界に比類なき火山の総合的な研究の場所として著名なものであることは、私から申すまでもないことであります。火山観測所は世界でこの浅間山とハワイのキラウエヤ火山観測所の二つあるだけでありまして、若い真摯なる科学者たちが、厳寒の深い雪の中にでも交代で不眠の観測と研究を続け、ことに軍万能の太平洋戦争中でさえも、遂にこの研究に対しては弾圧もなく、その学者は一日もこの研究を休むことなくして、今日まで二十年間の尊い貴重な記録を残し、また研究の業績を持つておるのでございます。その間火山噴火の予知の上に世界学界に誇る幾つもの輝かしい業績をあげ、その厖大なる報告書は世界地球物理学界の注目の的になつておるのでございます。従つて今回浅間山の観測所一帯の地が米軍の演習地として指定されようとするや、米国の地震学界を初め、世界各国第一流の学者からして、浅間山が演習のために研究がなされないという場合には、日本科学者だけの問題ではなく、世界の科学者にとつても非常な損失になるというて、境を越えて学問研究のために心痛する二十数通の手紙が、東大の地震研究所に寄せられておるのでございます。ことに地球上数千の火山のうち、わが国唯一のヴオルカノ型噴火山といたしまして、浅間山の占むる火山学上の地位は地位は非常に高いのであります。噴火の予知を観測するこの研究所の地位は、ひとり学術上のみでなく、人間の生命あるいは財産の防衛のためにも、この応用面に大いに寄与しておることは、先ほども申した通りであります。  私は学術尊重の立場に立つて、浅間火山の全地域を一つの大きな自然の実験場として、真理探究に一生を捧げる学者の苦心と、その業績につきまして、外務大臣、文部大臣大蔵大臣その他の関係の閣僚並びに同僚の委員各位に訴えたいと存じますので、はなはだ恐縮でありますが、二、三分の間特にこの問題について述べることのお許しをいただきたいと思います。  たゆまざる二十年間の科学的研究の結果わかつたことは、浅間山の噴火の前には、山の一部がふくれるのであります。つまり傾斜現象が生ずるのであります。もちろん肉眼で見得るふくれ方ではなくして、敏感精密な傾斜測定機の観測によつて測定されるのでありますが、このふくれ方と噴火との間に密接な関係が存在することが、多年の研究の結果わかつてつたのであります。また最近になつて、爆発に先だちまして、多数の地震及び鳴動が伴うことが明らかになりました。すなわち噴火の前には、五万倍の機械でなければわからないところの非常に小さな微震があることがわかり、かかる小さな地震の観測を四六時中続けておるのであります。かくして火山の爆発前に地殻の中でいかなる変化が起るか、いかなるからくりが地底の中に行われておるか、地殼の祕密はだんだんとわかつて来つつあるのであります。これはいまだ世界のどこの火山でもわかつていないところでありまして、わが国の学者たちの血のにじむ勝利の栄冠であります。しかも火山の現象と地震の現象とは非常に似ているのだそうでありまして、地震の原因は学術上にはいまだわかつておりません。浅間山の研究はこれを突きとめる上に有力な資料になるだろうと、世界の学界で浅間の研究に大いに期待いたしておるのでございます。  こうした観測をやるために、浅間山中には非常にたくさんの施設があるのであります。ふくれ方をはかるためにベンチ・マークという小さな標識が全山に配置され、兵隊さんの足蹴を許さないのであります。数量的に爆発現象をとらえるために、火山の鳴動音及び爆発音を記録する機械、もちろん兵隊さんが、から鉄砲にしろ、ズドンズドンとやつたんでは、本物の鳴動音とまじつて、記録は学問的に全然無価値になつてしまうのであります。全山に十五箇所の五万倍というような倍率の高い敏感な地震計を置いて、これを地べたをはわした電線で一箇所に集めて、微小な火山地震を観測しているのでありますが、算を乱し、地響きを立てて、兵隊さんが演習行動を行う場合には、しろうとが考えましても、その記録はめちやめちやになつてしまい、電線はずたずたに切れてしまうことは想像にかたくないのであります。  それから地磁気、すなわち地球の磁気を観測するためにいろいろな施設があります。鉄分のものは、この地磁気の機械にびりびりと感ずることは当然であります。従いまして、兵隊さんが鉄砲をかついで行く等のことがもちろん大禁物であることは言うまでもありません。全山に張りめぐらされたこれら施設の中で、もろもろの観測にじやまにならぬように、薄氷を踏む思いの小笠原流の兵隊さんの演習などというものは、およそ想像することもできないのであります。実際を申すと、登山者の登山にも若干支障がありますので、今回文部省の学術局では、要所要所に立入り禁止の標識を立て、また長野県では、登山道の道筋の変更を行うとともに、登山者にも学術研究のじやまにならぬように自粛してもらう手はずが整つているような次第であります。以上によつて明らかなことく、浅間山問題は一般基地問題とは全然別個な、学問と演習とがはたして両立するかどうかという特別なケースであると私は考えております。すなわち今や浅間山問題は、世界の学界注視のもとに、文化国家たる日本がはたして学術を重しとするか、アメリカ陸軍が世界に誇る浅間の科学的地位を尊重するか、あるいは軍靴でこれを蹂躙してはばからぬかどうか、世界の良識ある人々に提出すべき答案を書かねばならない現段階にあると私は考えるものであります。政府は現在学術尊重の立場で日米合同委員会に臨んでおらるることは私も承知いたしております。さらにこの立場を堅持いたしまして、一歩も譲らぬ覚悟で、優秀なる答案を書いていただきたいと思いますが、岡崎外相の心組みと御方針とをこの際伺つておきたいと存ずる次第であります。     〔西村(直)委員長代理退席、委員長着席〕
  140. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 いろいろお話の点は十分了解いたしましたが、第一に申し上げておかなければなりませんことは、これは一般の演習地というものではなくて、アメリカの一部の登山専門の人々が一月に二回、二十四時間ぐらい山登りを試みようといたしておるのでありまして、これはもちろん遊びではなくて演習ではありますが、山登りであります。そこで、また先ほどもおつしやいました通り、浅間は夏になれば毎日のように多数の人が山に登りますし、その他木こりとかいろいろの人が参るのでありまして、それとの関係がどうなるかということはもちろん研究しなければならぬわけであります。但しこの地域につきましては、米軍の訓練が東京大学の地震研究所の研究の妨害にならないかという点では、御承知ように、五月十四日に日米双方立会いで試験を行つてみたのでありますが、その結果については、六月十五日以来三回にわたつて、双方の専門家が会合をして検討いたしておりますが、まだ結論は出ていないのであります。政府としましては、地震研究という純学術的な問題を十分尊重することはもちろんでありまして、右の検討の結果訓練と研究とが絶対に両立しないという結論が出れば、その線に沿つて本件を措置して行きたい、こう考えております。
  141. 羽田武嗣郎

    ○羽田委員 ただいま大臣からのお話によりますと、学術と演習とが両立しない場合にはお断りをするという方針に沿つて善処したいということでありますが、一体いつごろその結論が出るか、この際ちよつと伺つておきたいと思います。
  142. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいま双方で急いでやつておりますので、日取りの点について幾日というわけにはただいま参りませんけれども、一日も早く結論に到着するようにということで、双方で急いでやつております。間もなく結論は出ると確信しております。
  143. 羽田武嗣郎

    ○羽田委員 とにかくアメリカの方と一緒に観測のときに、鉄砲を撃つたときに立ち会つた人たちも、学術の支障になることはびりびりとこの機械の上にはつきりと出て来るので認めているということでありますから、私は荏苒と日を延ばさずに、すみやかにこの問題を切り離して、基地問題というものが全国あちこちに彌漫する、ほうはいとして行くときにあつて、やはり道理のあるものについては、一つ一つ片づけるということが私は何よりも必要と思います。その意味においてすみやかに結論を出して、そうして地方民を安心させていただき、若い学徒諸君も、全国の学生諸君がやはりこの問題について、はたして自由党内閣を尊重しているかどうかというようなところまで考えておるようでありますから、ひとつすみやかに岡崎外務大臣の最後の結論を出されんことを私は希望いたすものであります。  それから次に文部大臣お尋ねをいたしますが、地震研究所の純学術的な結論尊重についての文部大臣の御所信を承り、並びに今後浅間山火山観測所、これは先ほども申すように、世界で最大の自然の研究所であります。この研究所の充実のために、いかなるお考えを持つておるか。この際日本政府がこの問題を重視しておる、そうして国が学術を尊重するということを示すためにも、私は文部省がこの点に重点を置かれることが必要であろう、こう考えますので、大臣のお考えを承りたいのであります。
  144. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 お答えいたします。浅間山の地震観測につきましては、お話通り従来も世界的な実績をあげておるのでありまして、演習地として使用されるためにそのじやまにならぬようにということは、特に私どもとしては強く関心を持つておりまして、ただいま外務大臣から御答弁がありました通り、この問題はあくまでも純粋に学術的な立場から善処して参りたい、かよう考えております。先ほど御指摘のありましたように、長野県知事の承諾を得まして、普通の登山客、登山隊、シーズンになりますと相当の人数が参りますので、それも自粛して、地震の観測の妨げにならぬようにというよう態度でいたしたいと思います。地震の観測につきましては従来相当古くからやつていることでありまして、施設としても完備しておるものと思つておりますが、今日経営費として三千五百万円ぐらい計上しております。そのほか当面必要な経費を別に出しておるわけでありまして、今後とも充実して参りたいと考えております。
  145. 羽田武嗣郎

    ○羽田委員 文部省が出している金は三千五百万円というお話でしたが、三百万円ではないでしようか。
  146. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 経営費が三千五百万円、それから三百万円は国際観測費として三百万円であります。
  147. 羽田武嗣郎

    ○羽田委員 ただいまの文部大臣のお考えを承りましたが、こういう特殊なる研究については、しかも日本は地震国でもありますし、火山研究が地震の原因を探究する上に非常な重要性を持つておることが、この研究所ではわかつて来ておるところでありますから、大蔵大臣もおいでになりましたが、どうかひとつこういう特殊なる研究機関の充実をはかるように、特にこの際申し上げておく次第であります。
  148. 尾崎末吉

    尾崎委員長 外務大臣に御用がありますから……。
  149. 羽田武嗣郎

    ○羽田委員 では文部大臣にこの際お尋ねをいたすのでありますが、私は義務教育中立性という問題につきまして、この際大臣のお考えを承りたいと思うのであります。言うまでもないことでありますが、教育は次代の国民を養成するきわめて重大なる役割を有するものであります。われわれは次の世代を背負うところの青少年に期待を寄せ、その教育に対して少からざる関心を持つておるものでありますが、時折当面の教育問題について報ぜられる新聞等で見るにつけましても、いささか憂慮をせざるを得ない現実がしばしば目に触れるのでございます。それは故育における中立性ということが守られているかどうかという問題であります。私は教育において最も重要なこと、最も注意されなければならないことは、教育の中立性を堅持するということであろうと考えるものであります。教育は精神のかてを与えるものでもありますが、また人間の魂をみがき上げて行くかてでもございます。しかもいわゆる学校教育におきまして教育を受ける者は、精神的にいまだ発達せざるところの段階の者であり、純真な魂の持主であるのであります。かかる青少年に対する教育にありましては、教育が中立性を保つ、すなわち何事によらず一方に偏した教育を行わないということが何よりも大切なことであると考えておるものであります。このことは現行の教育法規も明確にいたしておる原則でございます。すなわち教育基本法は学校が一党一派に偏する教育を行うことを厳に戒め、また公費によるところの学校が一宗一派に走つた教育を行うことを禁じておるのでございます。また教育委員会法は、教育が不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を持つて行わるべきであるという自覚のもとに、公正な民意により、地方の実情に即した教育行政を行うべきであるというふうに示しておるのでございます。かくのごとく現行の教育制度にありましては、教育の中立性、さらにはそれを保持するために、教育行政の中立性ということが強く要求されておるのでございます。  ところがこの大切な教育の中立性が非常に危険な状態にあるのではないかと思うものであります。すなわち去る六月十九日付の毎日新聞によりますと、山口県下で山口県教職員組合の編集した小学生日記、中学生日記が問題になつたことを取上げておりましたが、これは看過することのできない問題だと思うのであります。新聞の見出しにも「山口県下で赤い教育」というような見出しが使つてあつたことを覚えておりますが、子供の教育が特定の政治的イデロギーのもとで行われているということは、絶対に許すべからざることであると考えます。またある地方の小学校では、先般混血児という映画の観劇を勧めましたが、見て来ました小学校二年生の子供が、パンパン映画だつたよと、帰宅して聞かれた父親に対し、顔を赤くして外に飛び出してしまつたということがございます。最近の基地問題では、風紀の問題を一番声を大きくしておる先生の人たちが、がんぜない子供に対して排外思想を殖えつけるためには、パンパン映画を見せてもはばからぬというようなことは、教育上ゆゆしい問題であろうと私は考えるものであります。文部省は従来教育の中立性を堅持するために、いかなる態度をとつて指導して来られたか、また今後教育の中立性を確保するために、いかなる対策を講じようとしておられるか、この点をまず第一に文部大臣お尋ねをいたします。
  150. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 教育の中立性、ことに純真なる児童生徒を預かつておりまする義務教育における中立性、これは御指摘の通り非常に大切なことであり、あくまでも堅持せなければならぬものと考えております。従来文部省といたしましては、機会あるたびにこのことを強く指導しておるのでありますが、御承知の教育委員会法、このうちにも教育が不当の支配に服することなく、民意に即して、地方の実情に応じて行わるべきことが書いてあるのであります。文部省といたしましては、この法律の趣旨に沿うて、地方の教育が運営せられまするように、地方教育委員、府県教育委員、この方面に対して、この意味において強く指導助言をして参りたいと存じます。
  151. 羽田武嗣郎

    ○羽田委員 大臣お答えに続いて、また質問をいたしますが、私は次には、教員の政治的中立性を危うくするものに、一部日教組の幹部の政治的な活動があるというふうに考えておるものであります。このために、漸次教育の本来に立つ多くの教員は、日教組に対してやや冷眼視するような態勢になつておることは喜ばしいことと考えておりますが、教員の政治活動にいたしましても、また山口県下に起きました小学生日記のごとき問題にいたしましても、それが教員組合の運動として、あるいはそれに関連して行われている問題があると私は考えておるものであります。日教組は教職員の労働団体でありまするから、教員の行為と日教組の組合員の行為とは、一応別だという説明も聞くのでありますが、しかし問題は別々の人間がその行為を行うものではなく、同一の人間がその行為を行うところにあると思うのであります。すなわち一人の人間が、教員であり、組合員であるという二重の性格を持つておるのであります。しかもこの二重の性格は、現実にはなかなか使いわけるということは、うまく行くものではございません。そこで日教組が組合運動として取上げる選挙運動であるとか、学習闘争であるとか、あるいは一斉休暇といつた行為が、子供の教育に直接的な影響を及ぼして来るのであります。人の子を教える先生が許可なくして文部大臣の部屋を占拠したり、何十人もで大臣の私邸の夜間面会強要をするというようなことは、これは生徒たちに与えるところの心理的な影響というものはすこぶる大なるものがあると思います。山口県の日記帳問題にいたしましても、教員組合で編集した日記帳であるからというので無批判にそれを使用するということが、現実の問題として教育に非常な影響を及ぼすものではないかと考えるものであります。文部当局は山口県で問題になつた小学生日記等の内容についても検討しておられると思いますが、たとえば、「再軍備と戸じまり」というような題で、「日本人の中には、ソ連をどろぼうにたとえて、戸じまりをよくするために再軍備をする必要があるといつている者があるが、表の錠前ばかり大きくして、裏を明け放しているから、どろぐつの紳士が八百六個も軍事基地を取つた。一体どつちがどろぼうなんだ」というよう内容の記事が載つていることは御承知通りであります。このような政治的な、思想的な意図を持つた記事を載せた日記帳を小学校用として山口県の教職員組合が編集し、県下の子供に相当数使用させているのであります。私は正常な感覚を持つた父兄ならば、このような教材が子供に与えられるということについて憤りを感ずるであろうと思うのであります。新聞によりますと、岩国市の教育委員会はこの日記の使用を禁じて回収に努め、山口県の教育委員会もまたこれが対策について適切な指示を行つている由でありますが、これは当然さもあるべきことと考えるのであります。しかるに日教組はさきの宇治山田市における大会で、この日記の件に関して岩国市教育委員会、山口県教育委員会のとつた措置に抗議をする決議を行つております。地元の教育委員会のとつた措置に対して圧力を加えていると伝えられているのであります。私は教職員組合がかかる特定の政治的立場から教育問題を取扱うということは、きわめて遺憾に思うものであります。一体文部大臣はこのような事態についていかなる御所見と対策を持つておいでになりますか、承りたいと思うのであります。  なお右の一事例から考えましても、ひとり山口県ばかりでなく、教員組合は相当の影響力を持つて、特定の政治的立場を子供の教育の上に直接間接に及ぼすような行為を行つていると想像し、判断し得られるのであります。私は教育の中立性を確保いたすために、旧教員が不当な影響力を受けることなく、また特定の立場に利用されることなく、教員自身政治からの中立を堅持すべきものと考えますし、そのためには教員みずからの自覚にまたねばならぬところは大であろうと思いますが、一方において文部当局は一刻もすみやかにとるべき処置をとられて、危殆に瀕しているところの教育の中立性を全うせられんことを切望し、希望いたし、要望するものであります。文部当局ははたしていかなる具体的な対策をこれにとつて臨まれておられるか、この点をお尋ねをいたしたいのであります。
  152. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 教員の政治活動あるいは政治運動、これにつきましては御承知通り法律上の制限があります。この制限の規定に反せざる限り教職員が政治運動をし、あるいはまた選挙運動をいたしましても、それは少くとも現行法上さしつかえないことであります。要するに問題は、それが教育の中立性に影響を及ぼすおそれがあるかどうかということでありまして、私どもは教育の中立性はあくまでもこれを堅持しなければならぬ。文部省としては万難を排してもこれを堅持しなければならぬ、かよう考えておりますけれども、観念上は教員の政治活動ということは別でありますから、これはすぐ一緒になるものとは考えておらぬのであります。御指摘になりました山口県の小学生日記、それから中学生日記、これは先日山口県の教育長から詳しいことを私直接聞いたのでありますが、少くとも私の判断によりましては、これは朗らかに教育の中立性を害するおそれがある、かように判断をしておるのであります。山口県におきましては、教材としての使用ということにつきましては、今日おそらくやめておるかと思うのでありますが、教育につきましては、文部大臣といたしましては、教育委員の方をいわゆる指導監督する権限が与えられておりますので、今後活発にその指導助言に当りたい、かよう考えております。
  153. 羽田武嗣郎

    ○羽田委員 日本現状を見ますと、ちようど第一次ヨーロツパ戦争の後におけるドイツのような思想的な動きが非常にあるのではないかと感ずるものであります。マルキシズムの芽ばえましたドイツにおいて、ヒトラーを中心とするフアシズムが蓬頭をいたして、遂に第二次世界戦争の不幸を招くような結果になつたのでありますが、日本のこの現状を見ましても、日本人がとかく右から左の方に傾くかと思えば、左から右に傾くというように、まつたく附和雷同性が最近の戦後の日本国民の中にあるということを、私非常に心配をいたします。その意味においても、教育の占める地位というもの、つまり中立性を保つて、真にこの日本を、中庸を保つた日本として育てて行く、そうして祖国を再建するということは、私は教育の任務にかかつておることではないか、そういうふうに私は考えます。特に文部大臣がこの教育の中立性、また先生の行動というものが、やはり中立性を維持するような方向に導くように、特に格段の、また熱情を持つた迫力のある指導を行う必要があるのじやないか、こう私は考えます。祖国再建のために、ぜひとも精神的な文部省の地位の重要性を認識いたし、指導をしていただきたいというふうに考えますが、これに対して文部大臣考えを承つておきたいと思います。
  154. 大達茂雄

    ○大達国務大臣 ただいまの御発言の趣旨は、私まつたく同感であります。今後ともできるだけの努力を払いたい、かよう考えております。
  155. 羽田武嗣郎

    ○羽田委員 長時間恐縮でありました。これで私の質問を終ります。
  156. 尾崎末吉

    尾崎委員長 小峯柳多君。
  157. 小峯柳多

    ○小峯委員 金融と為替の問題を大蔵大臣に伺いたいと思いますいろいろの角度がありましようが、企業の財政が非常に不安定だと思いますので、この企業の財政を安定させるために、どういう金融上の措置がとらなければならないか、そういうことについて数字を中心にお話を伺いたいと思います。  最近やかましい不渡り手形の問題でありますが、先般来いろいろ御答弁がありまして、これ以上は拡大しないというふうなお言葉でありましたが、私はなかなかこの問題は簡単ではあるまいと存じます。いわば氷山の一角のような形で、不渡りの問題が出ておるのでありますが、この際企業の財政、会社の経理というものを、もう一ぺん深刻に考え直しておきませんと、予想される世界的な経済の動きの中で、日本の産業というものを、その荒波の中に押し出して行く力は、非常に張くなるであろうというふうに考えるわけであります。そこでこの企業財政の不安定という問題は、自分の資本と借入れ資本との不均衡、それから借入れ資本の中においては、圧倒的に短期の借入金が多いという事実、すなわ自己資本と外部資本とのアンバランスと、そうして借入れ資本の中における長期資金と短期資金のアンバランスが、根本的にこの企業財政を非常に不安定にしておると思うのであります。そこでこういう問題を解きほごして行くのに、一体大蔵省は金融上にどういう新しいくふう施策を用意なさつておりますか、この点を、まずアウトラインとして伺つておきたいと存じます。
  158. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 最近不渡り手形がやや増加しておりますことは、御指摘の通りであります。また一億以上の資本金を持つた相当な会社が、不渡り手形等を出しておることも御指摘の通りであります。これにつきましては、私どももその実情をいろいろ調べておるのでございますが、先般も申し上げましたごとく、今のところは一連の脈絡のあるものではないのでありまして、一つ一つが個々に独立しておるようなケ―スであります。それでこれについて申し上げますと、多少予算措置等が遅れておるような問題もございますが、主としてはやはり経営者が放漫であり、特に簿外――帳面に載せないような手形を濫発しておる、これが資本金の何倍にも及ぶというようなことをやつておる、しかもその手形は高利貸の手にまわつてつて日歩十五銭とか、二十五銭とかいう高いもので転々として、一体その手形の所在はどこにあるのかわからぬといつたようなぐあいで、整理の方法も立たないというようなものが少くないのであります。けれどもこういうことも今小峯さんがおつしやつたように、やはり氷山の一角と見て、やはりこれに備えなければいかぬかよう考えております。特に経済界というものは、全体が一個の有機体と見るべきものでありますから、これに対する備えは特に必要であると考えております。先ごろ日本銀行の一萬田総裁に会い、今朝も会つていろいろ話を聞いたのでありますが、関西の方面へ行つて来たその状況の話もありました。ただいまのところは特にどういう対策を講じなければならぬということではない、こういう段階だと私どもも見ておるのであります。さらに言葉をかえて言いますと、それでは少し金融をゆるめてやらねばならぬかとか、あるいはまた一方で少し政治的に、ものを見なければならぬかというようういつた一般的の見方をするところまなそでの段階に行つていないことは、小峯さんもよく御承知であると思います。しかし今ちよつとお話の出ておつたような資金の構成から見ますると、どうも比較的短期間資金にたよつておる分が多いので、資金構成が自己資本とか、あるいは長期の資金にまわつておるものが少い、こういうような点もありますので、従つて今後は極力資金構成の改善に努めさせる、同時にまたそれには自己資本の充実とか、あるいは払込株金の徴収とかいろいろございます。また内部蓄積にも努めますとともに、あるいは長期の信用銀行等によつて、長期資金の供給をするとか、そんなようなぐあいに資金構成をかえさすことも、一つの方法考えておるのでありますが、どろぼう見てなわなうのもおそいのでありますから、全般的に見ますると、まだここで一連の金融対策を立てて特にどうこうしなければならないほど切迫はしておりませんが、今申し上げた通り、今のうちから十分備えて参りたいというので、日本銀行の方面とも連絡をとつて処理いたしておる次第でございます。
  159. 小峯柳多

    ○小峯委員 私は少し内容に入つて承りたいのでありますが、今お話のありましたように、今ただちにどうのこうのではないかもしれません。しかし私は、これからの経済の行き方というものは、非常にむずかしくなると思うのであります。ことにあなたは非常に堅実に今度の財政の切盛りをなさつておりますので、事業界が相当むずかしくなる。そういう建前からいうと、どうしても資本構成というものを思い切つてかえておかないと、今日ただいまの問題よりは、来るべき問題に非常に問題が残ると私は思うのであります。そういう意味で伺うのでありますが、最初に、オーバー・ローンを解消する方法としてこれは前に石橋委員からお尋ねがあつたので、そのときお答えなつておることも私は聞いております。しかし今申し上げたような企業の財政の不均衡を是正するためには、新しい資金を補給するよりは、今ある不安定な短期債を少し長期に安定させるということを、どうしても私は考えなければならぬのではないかと思います。たとえば先ほど高利貸しのお話があつて、非常に金利の高いお話も出ましたが、その一つの原因は、今申し上げたように、資本の構成の不均衡から来ておつて、相当堅実だと世間にいわれておるような会社も、短期のものを追いかけております。このこと自体が私はやはり金利を上げておると思います。たとえば手形の決済のために高利で短期のものを追いかけるというような傾向になつておりますので、こういうふうになつておるのだと思います。そこで普通の常識的な考えと言つては失礼でありますが、何か新しいくふうを加えて、不均衡の資本構成を是正するというふうなことにならなければならぬと思うのであります。私はその点に関して、石橋委員の申されたよう方法を、少くとも精神の上で生かして、少し新しい方法考えないと、いつになつても実は金融の政策の上で有効適切な新しいくふうというものは出て来ないのじやないか。前の前の国会だと思いますが、池田君が大蔵大臣をしておりますときに、私はやはりこの問題を質問したのであります。そのときに大蔵大臣は、石橋委員の言うように、国債を発行して、それを日銀に引受けさして、その資金を市中銀行に預託して、そして日銀のいわゆるオ―バー・ローンを解消するというラジカルな方法をとる考えはない、従つてその埋合せとしては長期銀行を考えたいのだということを言い出した。それが今の長期銀行の始まりだというふうに私は記憶しております。そこで今申し上げたように、まず第一段階としてオーバー・ローンを解消する。これは新しい資金を散布するのではございません。日銀に、政府が特別にオーバー・ローンを解消する部分に関してだけの国債を引受けさして、その資金をそのまま市中銀行に預託して、その市中銀行が日銀へ借入金を返す、いわば形式的に不安定な短期資金を長期安定化するだけの方法なのでありますが、これをそのままやれというのではありません。こういうような精神をくんで何か一くふうしてしかるべきだと思いますが、大蔵大臣いかがでございますか、重ねて御所信を承つておきたいと思います。
  160. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 オーバー・ローンの問題につきまして、は過日私申したように思うのでありますが、その根本的な解決策というものは、何といつても資本の蓄積によるよりほかない。それでは一体その資本の蓄積にはどういうことをやるかといいますと、これは小峯さんも御承知ようにいろいろな方法をやらなければいけないと思います。たとえば預貯金とか保険等に対して税法上の優遇措置をとることも必要であり、またたとえて言いますと、今度源泉であります選択課税についてわずかではあるが、五〇%から四〇%に下げておるということも一つの例であります。そのほかあるいは特別償却制度を実施したり、貸倒れ準備金制度をやつたりして、御承知ように銀行あたりの準備金が相当ふえております。貸倒れ準備金制度をやりました関係で、銀行などの決算の報告等をごらんくださるとわかるように、前期に比べますと相当内部蓄積がふえております。それからやはり財政面でもそうでありますが、いろいろやつて行く上において、私よく申しますのは、いわゆる財政、金融の一体化ということであります。今はたしか三千数百億にオーバー・ローンが達しておるだろうと思いますが、それを急に解消しようとするにはラジカルな方法は実はあまり益がないと思います。やはりこれは漸次実力を持つてこれを解決して行くというふうに持つて行くということがよいのじやないか。そのかわりに、これだけのオーバー・ローンがあるからということを、ちよつと言葉は悪いかもしれませんが、いわゆる攻め道具として金融界に臨むということは非常に弊害もありますので、その点は大蔵省と日銀との間に緊密なる連絡をとつて参れば、さようなことはないのじやないか。特に本年のごとく一千八十九億円ばかり散布超過になる。そういうときには、これは言葉が悪くてしかられるかもしれませんが、やはり金融と財政の一体化をやることが、日本にインフレを起させないための一つの役割をするという点もありますので、その点については漸次総合的な方法でオーバー・ローンを解消して行きたい。これはあまり好ましい方法じやないかもしれませんが、堅実な方法で二、三年こういうことで進めて行きたい、かよう考えておるのであります。  それから前の池田大蔵大臣に話したというオーバー・ローンに対する長期信用銀行のお話でありますが、過日もちよつと不動産金融のお話もあるところで出ておつたのでありますが、いずれにいたしましても、長期信用銀行というような銀行の資金分野に対する一つの考え方をだんだんと整えて参りまして、その方面に肩がわりさせて行けば、これは解消の一つの役割をするのではないかと思います。長斯信用銀行はまだできたばかりでありまして、御質問によつてはあとからその成績を申し上げてもよろしゆうございますが、十分とは申されません。けれども相当活発に動いておるようでございますから、やはりオーバー・ローン解消の一つの役割を果すのではないかと考えておるのであります。いずれにいたしましても、このオーバー・ローンというものは健全な金融状況ではないことは、小峯さんの御承知通りでありまして、私どももどういう方法で解消するかということについては、あらゆる方面から無理のない、あまり早くはないけれども、しかし効果は着実に上つて行くという方面で解消して参りたい、かよう考えておる次第であります。
  161. 小峯柳多

    ○小峯委員 このオーバー・ローンの問題は、この間も石橋委員から資本の蓄積と資金とを混同しておるじやないかというお話がありましたが、私は深い理論の追い方はいたしません。ただいま長斯信用銀行のお話が出ましたが、その活動の実績を、せつかくつくられたものがどの程度の働きをしておるか、輪郭だけでも承りたいと思います。
  162. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 長斯信用銀行は、昨年十二月一日に設立されまして、資本金十五億、うち見返り資金七億ということで発足したことは御承知通りでありますが、大体順調な経過をたどつておりまして、五月末現在の数字を見せてもらつたところが、大体こんなことになつております。債券発行高が百七十八億六千三百万円、預金が十二億九千七百万円、貸出しが百八十六億六千三百万円、そのうち設備資金に出しておりますものが百二十一億五千八百万円、運転資金に出しておりますものが六十五億五百万円、こういうぐあいになつております。それを一体どのくらいに出しておるかと申しますと、電力、造船、石炭、鉄鋼、いわゆる四大基幹産業が主になつておりまして、これで八十八億百万円ばかり出しております。そのほか各種のものに九十八億六千二百万円出しておるような次第であります。なおこの長期信用銀行は全国的に各銀行を代理店としておりまして、相当地方産業へも活発に金を貸し出しております。五月末現在で十一億六千八百万円というようなぐあいに出ておるのでありまして、相当な成績であると考えておる次第であります。何しろできたのは昭和二十七年十二月といたしますと、五月まで六箇月間にこれだけの成績をあげておりますから、相当将来大きな期待を寄せ得ると考えておる次第でございます。
  163. 小峯柳多

    ○小峯委員 オーバー・ローンの解消もラジカルな方法でなく、一手々々攻めるというお話でありますが、その一手一手をひとつ伺いたいのでありますが、あなたは本会議の演説の中で「資本蓄積を促進するため、第三次再評価の実施企業合理化のための特別償却、準備金制度の拡充、預貯金利子に対する所得税の源泉選択税率の引下げ」――最後の問題に今あなたはお触れになりましたが、再評価の問題、それから特別償却、準備金制度の拡充等の問題において、具体的にどういうふうにお考えなつておるか、その具体的な構想を承りたいのであります。
  164. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 貸倒れ準備金とか、あるいは特別償却につきましては、今度の法律で措置をとつておりますから、これでごらんを願えることと思うのであります。  そのほか準備金制度拡充においてもやつております。それから資産再評価の問題につきましては、一部にむしろ無税にして、これを強行したらどうかという意見もございましたが、これは私どももその当時考えたのは、今まで二度行つた場合に資産再評価の問題はやはり課税しており、また、無税であるために過度の資産再評価を行うという弊害も出て来るのじやないかというふうにも考えましたので、しかし資産再評価を行うことは、企業の蓄積を非常に増すゆえんにも相なりますから、そこで私どもは納税者の支払いやすいように、今度の税率は前と同じ六分でありますが、しかし支払う方法は、前には初年度三分、次年度三年度それぞれ一分五厘ずつになつておりましたのを五年間に均分しまして、初年度も、次年度も、ずつと五年度まで一分二厘ずつ支払えばいい、こういうふうにして納税者の便利をはかるようにいたした次第であります。
  165. 小峯柳多

    ○小峯委員 私は、オーバー・ロンに対して本格的な手を打たないのだから、なしくずしの方法でやるが、そのなしくずしの方法もまたなしくずしになつておるような感じがするのであります。たとえば今再評価の問題において、先まりわして内容の御説明がありましたが、私は、やはり税金をなしにして、ある程度まで強制して早目に企業財政のバランスと申しますか、企業会計の安定化をはからなければならぬと思うのであります。これは形式的な問題ですが、あなたも御承知ように、これをやることによつて社内保留がふえるのであります。そしてこういうことが間接にオーバー・ローンの解消に役立ちますので、本格的なオーバー・ローンの解消についてラジカルな方法をとらないとすれば、せめてなしくずしをやるとすれば、お考えがよければ思い切つてやるということを、民間型の大臣もよく御承知で、私は今度の大蔵大臣はそういうことは抜け目なくやつていただけるだろうと期待しておるのでありますから、これもあまりなしくずしのなしくずしにならぬようにお考えつて、しかるべきではないかと思いますが、重ねて御意見を承りたいと思います。     〔委員長退席、西村(直)委員長代理着席〕
  166. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 仰せごもつともでありますけれども、やはり政治をやる者から考えますと、過去においてどうであつたかという意味でつり合いの点も考えなければなりませんし、さればといつてそれでは元通りやるならば、私ども率直に言つて大きな意味に欠けるようにも思いますので、そこで今申し上げたような最も支払いやすい本法で、最も実行しやすい方法、しかもよそとのつり合いがとれ、過度の再評価に陥らざるよう、そういうことをまず勘案しまして、ただいま申し上げたように、とりきめた次第であります。
  167. 小峯柳多

    ○小峯委員 これは私の持論なのですが、企業財政安定の方法としては、証券市場というものを、国民経済的な角度から、もう少し本格的に対策を立てたり、政策を確立して行かなければならぬと思うのであります。どうも昔の観念で、長期あるいは短期等の観念が混在いたしまして、取引証券というものが、国民経済的な角度から取上げられにくいよう関係にあると思いますが、私は、どうしても自己資本をふやす、しかもこれを上手に育成するというか、この市場の健全なる発達をはかれば、小さい資金が企業資本として動員されることになりますので、この取引所に関しましては本格的な、やや系統的な政策を立てる必要があると思います。私は持論で、問題があるたびに、たとえば暴騰するとか暴落をする場合には、対策というものがありましたが、証券政策というふうな系統的なものがなかつたよう考えて来たのでありますが、これは特に企業経営に御経験のある大臣は、前の大蔵大臣よりは、もつと総合的な勘のいい政策をお立てになれるのではないかと考えますので、承つておきたいと存じます。
  168. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 証券取引法について、私は改正したいと考えております。仰せの通り証券取引につきまして、どうしても実情に合うように、またこれを日本の将来のために改正する必要があると考えておりますので、御意瓦を承るという意味を込めまして、私どもの考えていることを、少しここで申させていただこうかと思うのであります。  第一に有価証券の募集あるいは売出しに関する届出の制度を簡素化いたしたい。特に証券投資信託の受益証券及び担保付社債券並びに額面または発行価格の総額が五千万円以下のもの、こういつた有価証券で、大蔵省令できめてあるものは届出は免除しよう、こういうように簡素化したらどうか。  第二番目は証券業者の登録要件を強化いたしまして、株式会社でないものとか、あるいは純財産額が政令できめる資本金額の九割に満たないものに対しましては、登録を拒否するというようなことのほかに、監督規定についても整備をはかつたらどうか、こういうよう考えております。  第三には、顧客に対しまして――顧客は証券業者の信用供与による証券取引その他特定の取引を行うときは、証券業者に対して一定額の金銭または有価証券を預託しなければならない。預託率は三〇%以上として、これも省令できめる。  なお四番目は、証券取引所の設立に際しまして、登録制度を廃止しまして、免許制度に改める、そういうふうにして監督規定を整備する。これはこのごろの証券界の動揺等のときをごらんになりますと、この規定が非常に必要だということがわかります。  五番目には有価証券の上場につきまして、証券取引所に登録する制度を廃止したらどうか、こういうことも考えております。  なお六番目には、大蔵大臣は公益または投資者保護のために必要があると認めたときには、上場株の新株の上場をも――新株はときどき問題になることは、小峯さんも御承知通りで、これは上場にならぬから問題になるのでありますから、上場株の新株の上場を証券取引所に対して命ずるこことができる、んなことでもしたらどうか。  それから証券取引審議会の委員の定員を増加いたしまして、有力者をもう少し入れる。  そういうようなこと等で、この証券取引法を改正して、実情及び日本経済の将来の発展に役立つように持つて参りたいと考えております。まだ成案を得たわけではございません。一応どう考えているかという方向だけを、ここで申し上げておる次第でございます。
  169. 小峯柳多

    ○小峯委員 証券取引法の改正は、もう大蔵委員会に出ているのではないでしようか。ただその中で、今あなたは触れませんでしたが、取引所を大蔵大臣が今までよりも強く監督したり、握つたりするような形になつて来るのではないかと思う点がある。それは定款だとか業務規定の改正も、大蔵大臣の認可を要するというふうになつているのではないかと記憶しておりますが、いかがでございますか。
  170. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ちよつと失念しました。私はここへばかり出ておりましたので、証券取引法の改正がどんな状況になつておるかわかりませんので、実はこの開議論したことを率直に申し上げておつたので、失礼いたしました。なお大蔵省がその権限を収めようというよう考え方を持つているわけではございませんが、ああいつたところには、やはり機宜の措置はとり得るようにせぬと、どうも監督上遺憾の点も少くないように思いますので、さようにいたしておる次第でございます。
  171. 小峯柳多

    ○小峯委員 それからもう一つあなたに同つておきたいのですが、最近の証券市場の状態を、ああいうふうに激動する状態でいいとお考えなつておりますか。
  172. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私どもは、一証券界はなるべく動揺が少いがいい。このフラクチユエーシヨンの大きいということは、非常に困つた問題だと思つております。特に最近におきましては、そう激動するというほどではないようでございますけれども、物によつて非常に動いて、ときどき禁止価格等が出る場合があります。ああいうようなことはどうも望ましくないので、これらについてもう少しよく取引所と――これも言葉が適切を欠くかもしれませんが、指導をして参りたい、かよう考えております。
  173. 小峯柳多

    ○小峯委員 私は市場の価格が激動する理由の一つに、今の取引所の仕法と申しますか、取引のやり方に問題があると思います。御承知ように、昔は清算取引というものがございました。清算取引というものは、えてしてばくちの取引だというように言う人もありますが、そうではなしに、需要供給を円滑にやらせるためには、ぜひ必要なものであります。ことに日本ように今度やりました仕法というものが、御承知ようにアメリカのレギユラー・ウエーの模倣でありまして、資金が十分に裏打ちされる場合に、レギユラー・ウエーというものが物を言うのであります。日本ように、先ほどからあなたと私が話合つているように、非常に資金がきゆうくつだという背景のもので、資金が潤沢の背景のもとに置かれているアメリカの取引市場というものを、そのままのんでおるところに問題があると思う。この問題は私は持論のように、前の池田大蔵大臣とは話合いましいが、どうも池田君はよくわかりません。あなたは実際にその方面に明るいと思つて質問をするのでありますが、御見解を伺つておきたいと思います。
  174. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 有価証券以外の各種の取引には、御承知のごとくいわゆる限月といつて、先物取引が行われておることは仰せの通りで、これで保険の作用をし、いろいろな働きをするのでありますが、現在の日本の有価証券取引をあれに直した経緯等にかんがみまして、今すぐそこまで踏み切つてよいかどうかということについては、私はまだ結論に達しておりません。しかし仰せの趣旨もあり、よく考えてみることにはいたします。
  175. 小峯柳多

    ○小峯委員 最近取引所の取引、手数料を下げるというような干渉を、当局からなさつたことがありますか。
  176. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私は記憶しておりませんが、もしそういう事実があるかどうか、あとからさらにはつきりと申し上げます。
  177. 小峯柳多

    ○小峯委員 それはあなたの耳に入つていないかもしれませんが、その仕事を預つておる下の方から、何かそんな風が吹いているように聞いております。もしそうだとしますと、金利の引下げと一緒であります。これは非常に性急なことを考えてもだめだと思います。金利は御承知のごとく資金の需給関係できまります。またこの手数料のごときも、実際にかかつた費用その他できまるので、ただ簡単に表面だけで判断して、干渉するようなことは少しむちやではないかと思います。ことに塚田郵政大臣がお見えでありますから伺いたいのでありますが、この有価証券の手数料の関係は、大分電話料と関係があるのであります。これはひとつあわせて塚田郵政大臣に伺いたいのでありますが、これからの経済の持つて行き方は、私は非常に詰めて、世界がデフレになるよりも、もう一足先にデフレになるか、それともやや積極的に、インフレの弊を除きながら、積極的な財政的な切り盛りをして行く以外に方法はないと思うのであります。ドツジさんのあれをやるか、あるいはこのごろやかましく言われるシヤハト氏のやり方をやる以外にないと思うのであります。今度の財政の規模を見、また大蔵大臣の話等を伺つておりますと、その積極的な手も打てそうもないことはよくわかるのであります。きわめて臆病に、きわめてまた堅実に、きわめて事務的に予算を組んでいると思いますが、そういう段階の中で電話料金の値上げをするのは、一体どういう根拠からなさろうとしておるのか、私は非常に問題があると思います。ことに一般の物価を下げなければいけない、つまり世界経済との関連において、日本の産業の競争力が問題になるときに、こういうものを突如として上げるということをお考えなつたその根拠は何か、これをひとつ郵政大臣から伺つておきたいと思います。
  178. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 一般的な物の考え方としては、小峯委員のおつしやる通りであると思います。ただ今度の電話料金の値上げは、これは日本の電話にきわめて特殊にある事情であつて、どうしてもやむを得ないでやつた、こういうように御了解願いたいと思います。どんな事情があるかということでありますが、日本の電話は、御承知ように戦争中から戦争後にかけて、設備に手を入れないでほつておきました関係上、ここへ来ましてほとんど収拾つかない状態なつている。もちろんその後大分やりましたのですけれども、現在の電話設備をそのままにして置いてはよくないということは、これは小峯委員も必ず御賛成くださると思います。まず第一に、非常にたくさんの加入希望者があるけれども、なかなか電話がつかないという、申し込んでつかないでおりますものが、現在約四十二万六千ぐらいあると思います。そのほかに、潜在需要と申しまして、申し込んでもつかないだろうといつてあきらめているものが、八十六万ぐらいあると推定されております。それから現に加入しておられて、電話を利用されている方でも、申し込んでもなかなか電話が通じない、市内では通話中でだめだ、市外ではなかなか待たされる、また出てもなかなかうまく聞えない、そういうようないろいろな状態考えまして、どうしても、これは値上げをするということは非常にまずいことであるけれども、この改善はしなくてはならぬ。そこで改善資金をどこから仰ぐかということでありますが、その場合にもしどうしても必要ならば外部資金を仰いだらどうかという御意見があると思います。大体その方針で来たのでありますけれども、最近になりまして外部資金で仰ぐという状態が、資金の状態、金融市場の状態、そういうものからきわめて困難になつて来ております。それからもう一つ、公社を独立させました以後の公社経理というものは、今の設備の改良拡充計画というものを今後四、五年の先を見てやつておりますと、今考えております約五箇年間に二千六百億の計画をやつて、五年後に公社の経理状態がどういうことになるかというと、全部外部資金に仰ぎました場合には、金利負担だけでも非常なものになつてしまう。そこでどうしても公社を健全な企業体として考える場合、そういう外部資金にばかりたよるわけに行かない。そこで今度の値上げの計画は、外部資金一部分、それから自己資金一部分、こういうよう考えで今度の値上げを計画いたした、こういうわけであります。
  179. 小峯柳多

    ○小峯委員 私も個別の理由は、いろいろあると思うのでありますが、先ほど申し上げたように、非常にこれからの日本の経済はむずかしくなるのだから、ここで体系的に、先ほど触れましたように、思い切つて世界のデフレ傾向に遅れないように、あるいはもつと先を越すような――いい悪いは別として、そういうやり方をやるか、あるいはもう一つは、計画的に、多少大胆に財政の切り盛りをし、積極政策で産業の近代化等を遂行して行く方法と、二つしかないと思います。ところがどつちつかずに、ずるずる引きずられて行くよう財政計画は、厳に慎しむべきであると思いますし、一角が次の一角を生むようなやり方でなく、どつちか一方というふうな体系でもつてつて行くようにしないと、これからの経済は並たいていではないと思います。その点は各大臣の施政方針の演説の中でも言われておりますが、しかし言うだけ言つておられて、やることはどうも私はそれにぴつたり平仄が合つていないように思います。そういう意味で、特に私は敬意を払う塚田郵政大臣でありますがゆえに――それは個別の理由はわかりますが、国務大臣としての見識から、この際これをもう一ぺん考え直す必要はないか。今あなたは企業実態の問題をおつしやいましたが、これは一般の企業と同じであります。ただ独占企業だから値上げができるので、一般の企業は、むしろ過剰生産傾向のために、これができないのであります。そういう意味から、よほどしつかりと腹をきめてやつてもらいたい。経済に明るい大臣が一人ふえたのでありますから、特に私はこの点に対して、もう一度あなたの決意のほどを伺つておきたいと思うのであります。
  180. 塚田十一郎

    ○塚田国務大臣 御意見まことにごもつともであると思います。ことに今政府が計画いたしました、いわゆる個別の料金の上げ方というものは、そういう意味において、非常に小峯委員も関心を持つておられます証券業あたりに、かなり響くということがその後だんだんわかつておりますので、全体の収入を減らさないという観点において、多数使用される方々については、何か特殊の措置考えられるのじやないかというようなことも、その後いろいろ検討いたしておる次第であります。
  181. 小峯柳多

    ○小峯委員 大蔵大臣に伺いますが、先ほど手数料を下げるというような勧奨は、今度証券の取引税法が実は新しくできまして、それによる一般の証券保有者の負担を減らす意味からいつても、手数料を減らしたらどうかというような意味合いだそうであります。なるほどちよつと表面を見たところではつじつまが合つているようですが、今塚田郵政大臣からお話がありましたように、ことに有価証券の場合には電話料金の値上げが非常に響く、また電話料金はそればかりでなしに、特別な産業とも結びついております。ことに新聞社などが使います電話料金に比べましても、証券業者の使います電話料金は、一社で大きいのが相当あるのであります。そういう点も堪案いたしまして、逓増される電話の使用料に対しては逓減する料金というようなものも、もしあなたが強行なさるようなら注意深くいたしませんと、思わぬところに支障が出るということの警告を申し上げておきたいと思います。そういうような傾向がありますので、これはあなたの部下を督励して、やはり問題を調べて善処願いたいと思う次第でございます。  それからもう一つ中小企業金融の問題、これはどの大臣も触れておりますし、みなお題目を並べておりますが、私はこの中小企業金融の問題とずいぶん長い間取組んでおりますが、はずかしいことにはどうも私どもの力では一向にらちが明いておりません。非常にむずかしい問題であります。経済政策としての中小企業金融としては、はつきり限度があるので、社会政策的な、すなわち政府の力を思い切つて借りなければ、中小企業金融というものは解決できないというような結論に立つて、やや何か問題をつかまえたような感じがするのであります。しかしこれは本質的な論議は別といたしまして、この機会にあなたに伺つておきたいことは、中小企業金融に関しますと、特別の機関だけが盛んに取上げられているようでありますが、普通銀行が中小企業金融に、どのくらいのウエートを持つておるかということをお調べなつたことがさがめしあると思います。私のいただきました資料によりますと、これは本年二月末現在であります。その二月末の中で資金一千万円以下の会社に対する貸出しでございます。それは六六%までは一般普通銀行は出しております。それからその次に多いのは相互銀行の一七%、信用金庫の九%、それから商工中金の二%ということになつています。もとより専門金融機関の育成はぜひ必要だと思いますが、同時にこれだけ重さを持つておるのだから中小企業金融として表看板にはならなくとも、この普通銀行に対する扱いというものを、中小企業金融の角度から何かお考えになる必要はないか。先ほどあなたがおつしやいました貸倒れ準備金に対する非課税の控除分がございます。これは百分の七でありましたが、何かそういう数字があつたと記憶いたしますが、中小企業金融に貸し出している分に対しましては、この非課税の控除額を特別に認めるよう方法をとつて、そしてその控除されたものは引続いて中小企業金融に貸出しのフアンドにでも繰入れるようにして――危険は多いのでありますから、普通の貸倒れに対する準備金よりも、多少一段階アクシヨンをつけて、この中小企業金融に貸出しの金額に対する非課税の保留というようなものを奨励すれば、一つの方法としては一般普通銀行が、大企業だけに奉仕するような機関でなしに、もつとこれを広く散布するような機縁にもなるだろうと思います。これに対するお考えはいかがでございますか、伺つておきたいと思います。
  182. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 それに対しても非課税のことはまだ考えたことはございません。しかしお話の次第もありますので、これはひとつ考えてみましよう。ただ私どもは――たしかあなたのお手元にはそういう数字はあるかと思いますが、実はいわゆる十一大銀行等を見ますると、中小企業に対する貸出しが、以前総貸出高の二割四分あつたものが、このごろは一割九分見当に減つて来ておるように思います。それから地方銀行におきましては大体総貸出高の三割二、三分やはり同じように中小企業に貸出しされておると思うのであります。金額といたしますると、今の商工中金を経るか、あるいは国民金融公庫を経るとか、そういつた各種のものを経るよりは金額は、はるかに多い金額でありますので、この点に対して各銀行の協力を一層求めて参りたい、特に大銀行におきましては以前より率が非常に少くなつておるのでございまするので、この点もう少し中小企業金融に心をいたしてもらいたい、こんなぐあいに私どもいつも頼んでおるような次第でありまして、金融機関の公共性から見て、この方面になお今後とも努力してもらえるものと期待しております。そういたしますると、よく言われる中小企業金融公庫をつくつていてもたつた百億円か、あるいは国民金融公庫が八十億かと言われますが、これは百億円ではありまするが、市中銀行その他においてやり得ないものにおいてやるのでありまして、これも相当きき目があるのでありますが、大きいものは何といつても各市中銀行が行う、特に地方銀行が大部分を占めておりますので、これについてはもう少し努力してもらいたいと考えているのであります。そのほか方法としましては今小峯さんの言われたのは、どうも少し貸出しはあぶないから、それに対して非課税の積立金でもさせておいたらどうか、銀行に、貸出しはあぶないかしれないという言い方を、私どもとしては――いわゆる信用保険の限度を高める、付保率をふやす、七割のものを八割五分にする、それを高める、あるいは信用保証協会というようなものを今度制度化する、これは法律で出してあります。そういうようなことにいたしまして、中小企業者に対する金融を、今までよりももつと実際上においては活発に持つて行くようにいたしたい、こう考えている次第でございます。
  183. 小峯柳多

    ○小峯委員 大蔵大臣あるいは御承知にならないかもしれませんが、これは違うのです。あなたのおつしやるのはどう思い違いしていらつしやるかしらぬが、すでに現実に税金の上に特別考慮があつて数字まで私は知つておりますから申し上げてもいいのですが、利益金の三五%の範囲内で千分の七、それから貸付残高の百分の三に達するまでの額で、これは許されておるのであります。もし知らなければ逆に私の方からお教えいたしますが、そういうふうに実際問題はあるのであります。ですから決してあなたが心配するようなことでなしに、すでにありまする制度、中小企業貸出しはあなたが今おつしやるように保証制度、保険制度が必要とお考えになるほど危険が多いのなら、その率を少し上げて、中小企業に特別考慮をしている銀行に対しては、奨励の意味で考えてはどうかと、こういうことを伺つたのでありますが、重ねて御答弁を願います。
  184. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 いや、教えていただくのは先ほど申し上げた通り貸倒れ準備金については、税をとつておりませんということを申し上げましたが、小峯さんの言われたことは、何か特例を認めたらどうかという意味に解したので、それならばただいまのところさらに中小企業に貸し出すから、それは特例を認めることはむずかしいということを申し上げました次第であります。ただ中小企業の貸出しのことだから、もう少し考えてみたいと思います。
  185. 小峯柳多

    ○小峯委員 私の言葉が過ぎたら取消します。中小企業にそうしませんと、これはそろばんはじくことは、何といつても銀行屋さんはナンバーワンである。そこで少しのさじかげんで、そういう資金が潤沢にできて、実際のお役に立つのならば、ただ中小企業に対する専門金融機関だけを持ち上げるだけでなく、実効のある方法で知恵をしぼられたらどうですか。こういうことを申し上げてあるのでありますからこれも苦労人であられる大臣でありますから、どうかもう一度練つていただいて、これは決してあなたのプリンシプルを乱すことにならない、また滞り貸しに対する特別のそういう取扱いがあるのですから、これを百尺竿頭一歩を進めればいいはずでありますから、どうかそういう意味で事務当局を御督励になつて、あなたと私の質疑の中で、せめて一つくらいおみやげがないと、与党だからやおちよう質問だと言われては残念でありますから、何かひとつ御検討を願いたいと思うのであります。それからやみの金融に関しましては、あるいは実際上の言い方では影響があると思うのでありますが、最後に株主相互金融の問題、どうも新聞等にもいろいろ記事が書かれておつてそれに関係している連中も非常に不安でありましよう。私も法に触れているものは、きつぱりと処断することがよろしいと思いますが、ただ大衆に関係するものでありますから、これに対する政府の御方針を峻厳に、しかもまたあなたの味である手ぎわよくおやりになる必要があると思うのであります。おさしつかえなければこれに対する方針も、ひとつ伺つておきたいと存じます。
  186. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 いわゆるやみ金融と申しまするものにつきましては、私どもの方でもいわゆる貸金業者として取締る法規がありまして、預金についての預り金をとることについては取締ることができますので、過日来十数社を取調ぺました。そのうち借入金という名目その他で特に預金をとつておるという手を実際やつておる。そのはなはだしい分につきましては、警告を発しましてそういうことをやめるようにということを言いました。しかし警告に応じなくて引続きやる場合には営業停止を命ずる以外にないと考えております。それじやこの問題を一部ではよく制度化したらどうかというような御意見も聞くのでありますが、これはどうも制度化することは、日本全般の金融問題としては、特に他の金融機関との関係もありまして、これは断じてとるべきでない。そこで私どもは、現在法に基いて特に借入金その他の名目で現実に預金をとつておるというものについては、あくまでも峻厳な方法で臨みたい、かよう考えておる次第でございます。しかし峻厳な方法と申しましても、一応警告する、そうして聞かざるものは営業停止をする、こういう段階を経て臨みたいと考えております。
  187. 小峯柳多

    ○小峯委員 貸金業法に日歩五十銭の利子の制限を置いておると思うのですが、この五十銭というのがありますので、その数字までなら法に触れないというような扱いになつて、非常に金利を上げている傾向があるよう考えるのですが、いかがでございましようか。もしそういうふうにお考えなら、この金利を下げて、実際上の監督に使うようにしたらいかがでしようか。私は金利というものは法律で下げられるとは思いませんが、しかしこれは少しべらぼうでありますから、重ねてあなたの御見解を伺つておきたいと存じます。
  188. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 最高五十銭というところまで認めておるのは仰せの通りであります。これはどうも法外に高いと存じますが、しかしこれについてそれじや三十銭がいいか二十銭がいいかといいましても、また内々で五十銭でも出す人間が出て来るので、今の社会情勢から見ますると、その辺までは刑辟は触れないというような扱いの方が、実情に合うのじやないかという考え方をして、事務当局でそういうふうにいたしまして、今臨んでおるそうであります。しかしどう考えましても、五十銭は高い。ですからこれはできるだけ安い方に持つて参りたいと思いますが、しかしそういう拓置を行政的にとれるかどうか、さらに検討してみます。
  189. 小峯柳多

    ○小峯委員 五十銭がやむを得ないというふうにおつしやつているうちは、大蔵省の金融政策は非常に下手だということに実はなるわけなんです。ですから、これもひとつ重ねて御配慮いただきたいと思います。  それからもう一つ専門為替銀行、これこそあなたはお考えなつて、新聞等で構想を漏らしておられますが、ひとつその構想を伺つておきたいと思います。この専門為替銀行というのは、特別に日本に単数の日本為替銀行みたいなものをつくるおつもりなのか、それとも為替銀行法というものをつくつて、適格者には設立の許可も与えて行くつもりなのか、その辺まで含めてひとつ御構想を承りたいと存じます。
  190. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 結論から申しますと、今私は一つの銀行を対象として為替銀行法をつくる考えは持つておりません。複数、しかし複数と申しましても、あまり多数でも為替銀行の機能を発揮しませんが、少数の為替銀行をつくりたい、かよう考えております。御承く為替銀行というものは、そう多数は知のことございませんが、かりにアメリカでみれば、今日本へはバンクオブアメリカ、ナシヨナルシティ、チエーズナシヨナルという三つが来ております。イギリスも三行来ております。オランダの方も二行来ておりますが、そういうわけで、どこでも数行のものであります。日本においてもあるいは三、四行がいいか、五、六行がいいか、この点はよく考えなければなりませんが、しかし日本のみこの預金金利というものが、あなたも御承知通り非常に高いので、為替をもととしてやつておるのでは、今日の国際為替市場においてなかなか活発に外国の銀行と競争をすることは、むずかしいというように私は考えております。従いまして外国為替銀行法といつたような一つの基準法というものをつくつて、これに基いて業務を営み得るものについてはその助成方法助成方法といいましても、補助金を与える意味では全然ございませんが、制度的な助成の方法をとることによりまして、やはり日本の貿易為替取扱いに一つの大きな役割をさせたらどうであろうか。特に日本が今日外国に、今十億ドル以下でありますが、いわゆるドル資金等を九億幾ら持つておるときでありますので、それらをたとえば日本の為替銀行等に預託して、活発に、できることならいくらでもやれるということにも考えられますし、それこれ、日本貿易伸長の一つの大きな役割を果すために、やはり昔あつたように、昔と申しましても、たとえば正金銀行もあれば、台湾銀行、朝鮮銀行も為替銀行としてある。あるいは財閥銀行でありましたが、三井、住友、三菱がそれぞれ為替銀行を持つて外国で為替業務を営んでおりました。そういうところにそれぞれ為替業務を活発に営むようにしたらどうか、こういうことでありまして、最初に結論を申しましたことく、一銀行のみを目標とした外国為替銀行をつくる考えは持つておりません。外国為替銀行法というような基準法をつくつて、そのもとに数行が為替銀行の機能を果して行く、こういうよう考えておる次第であります。
  191. 小峯柳多

    ○小峯委員 それでは現在外国為替銀行として活躍しているものも、その条件に合わなければ営業はできないようにお考えなつておると了解してよろしゆうございましようか。
  192. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 実はまだこの議会に出すほどの法案としてまとまつておりませんが、私どもは実情に合つておるものについて、現在やつておるものはみなそれぞれ必要に応じてやつておるのでありまして、どうもやつておるどこかが合わないから、そつちはこの中に入らぬということもまだ考えておりません。今申し上げた通り、一行、二行という考え行は私どもはいたしておりませんが、少数の銀行でなければならぬとは思つております。
  193. 小峯柳多

    ○小峯委員 それに関連して、日本の銀行が外国に支店を出します場合の方針について伺いたいと思います。私は二月の末から短期間アメリカの経済の視察に行つてつたのでありますが、たとえば加州においてサンフランシスコに三和銀行の支店がございます。同時に加州東京銀行、加州住友銀行というふうに、その土地の州の銀行法によつてできている銀行と二種類ございます。私はそれを見たときに、どういうわけでこういう姿の違つたものが二つの方式で出ておるのか、これはおそらく大蔵省に確たる方針がなかつたのか、あるいはまた確たる理由があるのか、そのどつちか非常に疑問に思つてつて来ましたので、この際その方針等を承つておきたいと思います。
  194. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 現在のところ、いたずらなる競争をするような、外国に対する日本の国内銀行の支店設置は認めない方針であります。しかし必要があるものにつきましてはこれを認める方針であります。但しお話ように、加州の銀行等は向うで銀行をつくることが営業を活発にやり得るのでありまして、以前も住友銀行等が、あるいはハワイにあるいは加州等につくつてつたのはその関係であります。つまり三和銀行などがつくつておるのもそういう関係から出ておるのであります。一般的には私どもは必要のごく強いと認められる分については支店設置を認めております。しかしあまり多くの支店がふえて、いたずらなる競争をするようなことはこれを避けさせたい、かよう考えておる次第でございます。
  195. 小峯柳多

    ○小峯委員 その点は私はわかるのですが、私が伺いたいのは、同じ加州に日本の銀行の支店として設置されたものと、加州の法律によつてできた銀行と二種類ある。いずれも日本の銀行であることは間違いないと思うのでありますが、こういう二つの方式をとらなければならなかつた理由はどこにあるだろうか。支店の店舗の数の問題においてはあなたと同感でございます。ただ二方式で外国に店舗を出しておられるのが、それぞれ必要な理由があつてのことを思うが、大臣はこれをどういうふうに理解しておられるか、この点を伺つておきたいのであります。
  196. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは実は現在銀行では預金がとれるのです。支店銀行の方は預金がとれないのです。そういうので実情に応じて現地で預金をするものと、しからざるものとにわかれておるわけなのでございます。
  197. 小峯柳多

    ○小峯委員 それでは今後の方針はどうなるおつもりでございますか。
  198. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 現地におきまして、向うの銀行をつくることにおいては別に何も私ども制限する考えは持つておりません。但し日本銀行の支店としてやります時分には、そこにいたずらなるはげしい競争が起らないよう措置して参りたい、かよう考えております。
  199. 小峯柳多

    ○小峯委員 それでは日本の大蔵省では、現地の法律による銀行はもう自分たちの監督ではないから自由にさせるのだ、こう解釈してよろしゆうございますか。
  200. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 さようでございます。
  201. 小峯柳多

    ○小峯委員 なるほど直接には日本の銀行法で向うの銀行は縛れないと思いますが、やはり向うで銀行をつくります場合には、内地の銀行から投資をいたしておりまして、この為替管理の関係があります。従つて各局ではそれぞれの言い方がありましようが、大蔵省すべてをすべられる大蔵大臣の立場からは、やはりそこに為替の問題がありますので、同じ日本の店舗とすれば、向こうの独立銀行にせよ、支店の銀行にせよ、何か一貫した方式があつてしかるべきだと実は考えて伺つたのであります。今後もそういうふうに大蔵省がお考えになれば、相当活動ができると思います。もちろん経営の成り立ちませんのがふえる見込みはないと思いますが、それらの地域においてもそういう傾向のあることを私は見て参つたのであります。またおそらく東南アジアの方面に関しましても、同じような行き方があると思いますが、こういうふうなことを申し上げましても、今のお考えをかえずに、向うでつくるとすればしかたがないとお考えなつておりますか。重ねて伺つておきたいと思います。
  202. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 国内よりする外国への投資その他につきましては、これはもちろん外国為替管理の範囲でありまして、この点にさしつかえがない限りということが前提条件になつておることは、これは御了承願いたいと思います。
  203. 小峯柳多

    ○小峯委員 外国銀行の日本における活動の状況、店舗の数等、おわかりでしたら一応伺つておきたいと思います。
  204. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 現在日本に支店を有する外国銀行の数は十二行、三十五支店あります。これを国籍別に見ますと、アメリカ系の銀行はバンク・オプ・アメリカン、ナシヨナル・シテイ、チエーズ・ナシヨナル、この三行で、英国系の銀行は香港上海、チヤータード、マーカンタイル、オランダ系はオランダ銀行とナシヨナル・ハンデルスの二行があります。さらにフランス系の印度支那銀行一行、それから中国の中国銀行が一行、インドのインド銀行が一行、韓国の韓国銀行が一行、こういうぐあいになつております。なおこれらの銀行の主要業務は、大体外国為替業務をやつておるのでありますが、しかしわずかなから預金業務、貸出し業務等もあわせて行つておりまして、この十二行百三十五支店でそれではどれだけのことをやつておるかと申しますと、四月末の数字では預金総額が三百七十九億円でありますが、但し円勘定の分は百二十一億円だけです。これは皆向うの勘定の分だけです。それから貸出しは百六十九億円、そのうち円勘定で貸しておる分が百四十五億円、現在のところ日本の三兆なにがしの銀行の預金あるいは貸出しの面から見ますと、この活動はあまり大したものではありません。今後の営業方針及び活動等も大体今までとかわりがないのではないが、それ以上特に外国銀行が伸びようとは私ども考えておりません。
  205. 小峯柳多

    ○小峯委員 その貸出しの中で日本の産業に特別に利益となつておると思われるようなものがございますか。
  206. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 日本人に対して大豆輸入資金の分など貸付の残つておる分があります。あるいは各船会社に対する造船融資の分があります。これなど相当大きな額に上つております。それから外貨建の外船融資の分などもあります。それからチヤータードなど製糸業に対して融資をしておる分もあります。あるいはカメラ製造業者等、日本の方で邦人が融資を受けておりまして、その額は五月末で三十七億五千万円ほどであります。
  207. 小峯柳多

    ○小峯委員 私がその動きを伺いましたのは、せめてそれに負けないだけの日本の銀行の海外店鋪ができておるかどうか。これは輸出振興だとか盛んに言われるのでありますが、本格的な手が打てないとするならば、一つでも二つでも役に立つ手をしばらく続けざまに打つよりしかたがないと思うのであります。そういう意味合いで伺いますが、日本の海外における銀行の店鋪の数を、その土地の法律によるものを含めてもけつこうでありますから、伺つておきたい。
  208. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 日本の銀行として外国に店鋪を持つておりますものは、まだこれは講和条約後日が浅いものですから、活動が十分でございません。昨年九月一日東京銀行がロンドンに支店を開設いたしました。それが最初で、今東京銀行がロンドン、ニユーヨーク、サンフランシスコ、バンコツク等に支店の開設を見ております。そのほかにサンフランシスコには邦人系の二行ができております。それは小峯さんのおつしやつた通りであります。それからなお香港、カラチ、ボンベイ等の南方諸地域にも今支店進出の準備をいたしておるのであります。今後だんだんと為替銀行等が支店を拡張設置して行くようになるだろうと思います。なお仕事はしておりませんが、ニユーヨーク、ロンドン等、銀行が出張員を出しておるところは相当ございます。
  209. 小峯柳多

    ○小峯委員 今御説明のありましたものと、たとえば日本における外国銀行の店鋪と日本銀行の外国店鋪等をひとつ資料として、おさしつかえない範囲でよろしゆうございますから、御用意願いたいと思います。  最後にもう一点だけ伺いまして私の質問を終ります。振興外貨に対して国際基金の人たちが大分むずかしい意向を持つて日本に来ておるよう新聞承知したのでありますが、その辺のいきさつを伺いたと存じます。
  210. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 誤解があつてはいけませんから、ちよつと書いたもので御答弁申し上げます。現行の輸出振興外貨資金制度は昭和二十六年十二月設置されまして、輸出振興及び為替割当簡素化、この為替割当簡素化というのが大きなねらいになつて、それに対して効果を上げて来ておるのであります。しかるところ、昨年の九月開催されました国際通貨基金総会の決議に基きまして、本年五月四日に基金理事会においてこういうことが決議されたのであります。第一は、加盟国はできるだけリテンシヨン・クオーター及び類似の制度、それから特に他国に不必要な損害を及ぼすような類似の制度――類似の制度というのはそういうのです。特に他国に不必要な損害を及ぼすようなもの等を排除するよう努めること、これが第一であります。第二に、それに基いて基金は各加盟国と協議を行うこと。それから第三に、基金はその性質上もつばら為替制度簡素化のための手続を考え、あらゆるものについて異議を唱えないこと。こういうのであります。目下ちよう日本にコクラン氏を初めとする基金使節団が来ておりまして、その上記の決議によりまして、今、日本のいわゆる輸出振興外貨資金制度等につきましての協議を実は行つておるのであります。日本の輸出外貨資金制度は、大体そのねらいが為替割当手続簡素化という目的で出ておりますし、また特にいわれておるような、他国に損害を及ぼすというようなことでこれは何もつくられておりませんので、少しも基金の趣旨に反するものではないと思いますから、来日中の使節団とも十分協議して、今後ともそういう為替簡素化についての外貨資金だけは続けて参りたい。かよう考えて、過日来私も二回ほど会いましたが、そんなぐあいに努めておる次第であります。
  211. 西村直己

    西村(直)委員 長代理 河本敏夫君。
  212. 河本敏夫

    ○河本委員 質問に入るに先立ちましてまず委員長にお伺いいたします。先般委員長を通じまして政府資料を要求いたしました。第一が、わが国経済再建計画に関する諸資料であります。第二には、本年度の国民所得の配分計画、第三には、本年度金融機関資金需給計画、第四には、財政蓄積資金の内訳、これは五月末の分でございます。第五には、三月末、五月末における昨年度予算の支出状況、第六には、保安隊の装備及び訓練の強化計画、第七には、保安隊の編成内容、装備内容及び配置状況、これだけの資料を先般お願いしておいたのでございますが、このうち第三の、本年度の金融機関資金需給計画と、第五の一部及び第七条の保安隊の編成内容、装備内容及び配置状況に関するもののうち、編成内容だけちようだいいたしました。他の資料はまだいただいておりませんが、その後どういうふうな手続を進めていただいておりましようか。この点についてお伺いしたいと思います。
  213. 西村直己

    西村(直)委員 長代理 委員長からお答えいたします。具体的には個々に御説明いたしませんが、あらゆる程度資料がすでに配付になつておることは御存じの通りでございます。その他の資料につきましては、委員長におきまして政府の方に御督促を申し上げておきます。なおものによりまして、政府において時間等がかかるものもあるのではないかと思いますが、この際、たとえば保安庁その他の関係におきまして、資料提出について御意見がありますればお伺いしておきたいと思います。なければ御了承願いたいと思います。
  214. 河本敏夫

    ○河本委員 私はまず大蔵大臣に本年度の予算をどういうふうな立場から御編成になつたか、この問題につきましてお伺いしたいと思います。この予算案を審議するには、政府の長期にわたる経済再建計画が提出せられ、その計画の一環として本年度の予算を審議するのが順序であろうと思います。先般新聞紙上に、吉田総理大臣は長期経済建設計画を軽視せられておるかのごとき記事が出ておりましたが、これは何らかの間違いであろうと思います。特に今国会におきまして政府日本の独立のためには、まず経済の自立が必要なことを強調しておられる以上は、なおさらのことであろうと思うのでございます。経済自立のごとき大事業はとうてい一年や二年で達成し得るようなものではなく、少くとも三年ないし五年くらいの長期の見通しを立てまして、それに従つて骨格たるところの予算が組まるべきものであると思います。本年度の予算はそういうふうな長期の計画の一環としてお組みになつたものであるか、あるいは本年度限りのものとしてお組みになつたものであるか、こういう点につきましてまずお伺いしたいと思います。
  215. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 過日来申し上げました通り、長期の計画を立てることはさわめて必要であると存じます。しかしながら今日の情勢下におきまして、総合的な長期計画を結論的に出しますことは、また的確にこれを出すことは非常に困難な事態がございますことは、河本さんもよく御承知であろうと存じます。そこで一応の目安は置きまして、あとは個々の問題について私どもは一定の計画のもとにやつておるのであります。言葉をかえて言いますと、今後五算年後ぐらいには、いわゆる特需その他のものがなくとも、正常なる貿易関係及びいわゆる貿易外の受取勘定等によつて収支の均衡をはかり得る、こういう目標のもとに予算の編成をやつておる次第でございます。従いまして本年度の予算の中にも、たとえて申しますれば石炭に対して財政資金をどうこうしているとか、あるいは電源開発や造船に対してどうしているのか、各種のもはごらんの通りでありますが、これらはたとえば造船につきましては、年三十万トンつくつて何箇年にどういうことに持つて行く、それがまた国際運賃収入をどれだけ上げることにする、こういうことに目標を立てております。また電源開発につきましても、今後五箇年間にこういうふうな開発をやつて、これによつてどれだけの電力を補つて行く、それで外国から入れるあるいは重油であるとか、石炭というようなものを、どういうふうに補つて行くかということでやつております。また石炭につきましても、一定の計画を立ててやつておりますが、ただ仰せになつような総合的に一応の目安は持つておりますけれども、ここで御発表申し上げられるような的確なことは今の内外の移りやすい情勢では立てにくいので、私どもの申しますのは、そういうようなぐあいに、おおよそ五箇年後には国際収支の均衡をば特需その他のものがなくともやつて行けるという目安のもとに、各種のものに計画性を持たせまして、それでやつておる、食糧についてはどういうふうにするということでやつておりますのも、そういう点からでございます。
  216. 河本敏夫

    ○河本委員 大蔵大臣お話によりまして、大体予算を組まれたその前提であるところの一応の計画というものがわかりました。しかしながら私がいろいろ検討してみますのに、それらのいろいろな計画が箇々には取上げられておるけれども、具体的に総合的にこれが取上げられておらぬのではないか、こう思われる点が多々あるのでございます。一例をあげますならば、経審で御立案になつておりますいろいろな案を見ますと、大体今後五箇年間で食糧増産であるとか、あるいは電源の開発であるとか、商船隊の拡充であるとか、石炭の問題、鉄鋼の問題、その他すべての日本の全重要産業を含めての資金の需給が、大体一兆億くらいになつておる。そこに民間資本を、ほぼそれと見合うところの一兆億投じまして、二兆億見当で、先ほど大蔵大臣が仰せになりました日本経済の自立を一応達成したい、こういうふうな見込みのように思うのであります。ところがまた一方におきまして、電話なんかの拡充計画を見ますと、大体五箇年間に約三千億近い電話の拡充設備を電電公社では計画しておる。食糧増産五箇年計画は、わずか五箇年間で千七百万石を達成するのに三千万円前後である。あるいはまたその他石炭の資金にいたしましても、五百万円前後のように承つておる。重要な化繊工業なんかでも数百万円である。しかるに一方においては電話のごとき事業が三千億からの資金計画を立てて、本年度は四百六十億というふうな厖大な金をこれに投入しようとしておる。一方大蔵大臣はこれを容認しておられる。こういう点を勘案いたしますならば、私は個々にはなるほど計画は立つているけれども、全体の総合的な計画というものは十分ではないではないか、こういうことに考えられるのでございます。大蔵大臣も御承知ように、去る三月に不成立予算が本委員会を通過するに際しまして、自由党は附帯決議といたしまして四つの条件をつけております。その四条件の第一に「速かに長期に亘る経済及び財政計画を樹立し自立自主経済財政方針を闡明すること。」こういうふうに書いております。こういうことがきめられました。さらにこの問題に関しまして、これを敷衍して、長期にわたる財政経済計画の樹立に関して本委員会における政府の説明を聞くと、研究不十分なるうらみがある。こういうことが自由党自体でもつて、先般の不成立予算に対してつけておるところの第一の附帯決議でございます。ただいま大蔵大臣の御説明を聞きますと、この要望の第一に書いてある長期の計画という点に関しましては、私が先ほど申し上げました電話の一例をもつていたしましてもわかる通り、その後積極的なる考慮があまり払われておらぬと思うのでございますが、なおその後御研究になつたのでございましようか。
  217. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 経審におきましていわゆる五箇年計画というものを計画いたしております。それもさつきもどなたかの御質問に経審長官が答えましたようですが、MSAの問題とか、そういうものは織り込んでございません。それからなお幾多の仮定のもとにできておるのでございますが、それによりますと、大体私が申した五箇年後には自立経済のところへ持つて参れる、こういうことでできておるのでございます。それでこの数字はお手元へ行つておるかどうかよく存じませんが、的確にちようどレールの上を走るように参らぬことは、河本さんよくおわかりであろうと思います。それで一応の計画ということと私ども見ておるのであります。しかし個々のものにつきましては、一応の計画ではやれませんので、そこで的確な計画を立てて進んでおるわけであります。たとえば何年たてばどういうふうになつて行くのだということにつきましての個々のものになりますと、それではことしこれだけの工事をやる、来年はこういうふうにして完成し、その次の工事にはこうしようというふうに、ものを持つて参らなければなりませんので、従つて造船計画とか、電源開発計画とかあるいは食糧計画とか、その他のものは一つの軌道に乗せてやつております。しからば今仰せになつた電話問題、これは特別会計でございまして、向うが自分で収入をはかることをやつて参ることに相なつておりますし、私どもはこれが飛び離れて一つそういうふうになつておるとも考えません。また財政事情に応じまして出しまする場合にも、それはございますけれども、あるいは仰せになるのは、そんなことだから電話料金が上るのじやないか、電報料金が上るのじやないかということにもなるのかもわかりませんが、これはそう  いうことで進んでおるのでございます。
  218. 河本敏夫

    ○河本委員 ただいまの大蔵大臣の御答弁は私ははなはだ不満でございます。というのは、私が一例として申し上げました電話のことは、すなわち全体の計画から見ましてはなはだしくつり合いがとれておらぬということが一つと、それから先ほど大蔵大臣は、電話は自分でやれるのだからよろしいとおつしやいましたが、かりに自分でやれる仕事にありましても、やはり経済の自立、こういうふうな計画を長期にわたつてやるためには、やはり自己資金といえども、ある程度計画の中に織り込まなければならぬということが一つ。さらにまた電話の五箇年計画の資金に関する項を見ますと、電話料金の値上げ、それから政府からの借入れ、公債、こういうようなものも多数に用意しております。それでありますから、私は大蔵大臣の御説明は当を得たものではないと思います。しかしながらいずれにいたしましても、時間がございませんので、この問題を深く追究する意思はありませんが、今後経済の長期にわたる計画を御立案になる場合には、総合的になお一段の御研究をお願いしたいということを申し添えておきたいと存じます。  それから次に、保安隊の問題につきましてお伺いいたしますが、予算審議に必要であるのは長期にわたる防衛計画でございます。わが国の防衛関係費が、国の予算において、また国の経済において占める比重はきわめて大きい。従つて本年度の予算審議に必要なのはもちろんでありますが、今後日本経済自立の問題を研究する際にも絶対に必要があります。これまで木村長官はしばしば本委員会の答弁を通じまして、保安隊は今後増員をする計画はないが、訓練の強化、装備の充実によつてこれの内容の充実をはかつて行きたい、こういう意味のことを言明せられております。しかりといたしますれば、装備の充実と訓練の強化に関する案はあるはずでございますが、その点はどんなものでありましようか。
  219. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。保安隊の質的向上には二つの面がある。いわゆる精神的の面と肉体的の面であります。ことに精神的の面には重点を置かなければならぬと考えるのであります。従いまして保安隊の隊員を養成するにあたりまして、まず保安隊はわが国の平和と秩序を維持すべき大任を負つている、これが自覚をどうしても持たなければならぬ。それと同時に国民の信頼を受くべき保安隊員でなければならぬ。それには一個の社会人としても国民の信頼を裏切らぬような教養を十分身につけなければならぬ。また団体訓練として、いわゆる後輩と先輩との間の融和合一の面がなければならぬ。これができませんと、昔の軍隊の復活ということになるおそれがある。この三面において私はできるだけの考慮を払いたいと思つて、各隊あるいは学校に行つて十分指示いたしておる次第であります。次に肉体的の面におきましては、これはやはり頑健なからだを要するのでありますから、普通の部隊訓練のほかに各種のスポーツを十分に取入れまして、いわゆる明朗闊達な隊員をつくりたい、そう考えてそういうふうに進めておる次第であります。かような点から申しまして、保安隊の質的向上をはかつて行きたい、こう考えておるのであります。
  220. 河本敏夫

    ○河本委員 私が御質問いたしましたのはそういう点ではございません、木村長官は、保安隊は増員する計画はないが、訓練の強化と装備の充実によつてこれを実質上強化するように持つて行きたい、こういうお話がございましたが、この装備の充実と訓練の強化に関する計画があるはずでございますから、これをお示し願いたい、こう言つておるわけであります。
  221. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 装備の充実については、二十八年度予算におきまして十分に考慮を払つて行きたいと考えております。さしあたりの問題といたしましては、通信連絡に要する飛行機が不十分であるので、約五十機の飛行機とヘリコプター十二機を購入して行きたい。また警備隊におきましては、アメリカから入つておりますフリゲート艦等を総計して六十八隻になるのでありすが、これらはは艦齢年数十年を経ておりまして、ただいまのところはやつておりますが、何分にも警備の用には不十分でありますから、そこで二十八年度予算におきまして相当数の新たなる艦艇、船舶をつくりたい、こういう計画を立てた次第であります。
  222. 河本敏夫

    ○河本委員 そこで木村長官に重ねてお伺いしたいのでありますが、そういう装備充実の計画というものは、毎年毎年思いつきで立てられておるのではないと思います。保安隊というような重要な性質を持つたものを強化するについては、装備の充実も年度計画があろうと思いますが、この点につきましてお伺いしたい。
  223. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 御承知通り治安の情勢というものは変化があるものと私は考えております。しかし現在の段階におきましては、さしあたり二十八年度予算において要求したよう数字をもつて当分行けると考えております。また年次計画というものは立てておりません。
  224. 河本敏夫

    ○河本委員 そうするとただいま問題になつておりまするいわゆる木村試案というもの以外にはいかなる長期にわたる計画案もない、こういうことでございますか。
  225. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまのところはそういう案はまだ立てておりません。
  226. 河本敏夫

    ○河本委員 御承知ように保安隊ができましたのは昨年の八月でございます。もうすでに一年近くなつております。一年近くなつておるにかかわらずしかも政府は本委員会あるいは本会議等を通じまして、たびたびにわたつて装備の充実、訓練の強化の計画があるということを申しておられながら、それを長期にわたる計画でない、年度年度の思いつきである、こういうふうな御答弁では、私はまことに驚き入つた怠慢だと言わざるを得ないと思うのでございます。保安隊の長期の整備計画がないためにただいまどういうふうな不都合を来しておるかと申しますると、まず第一に私が当初に申し上げましたように、長期にわたる財政経済政策立案のために非常に大きながんになつております。それから第二には、防衛生産計画が立たないということであります。それから第三には、予算がかなり放漫かつずさんである。国費を無計画的に濫費しておるところの傾向が非常に強いということ、それからまた表面的には国内の治安維持を任務といたしておりますけれども、実質上は、第一にアメリカの軍事顧問団に相当強力な指導を受けておる。それからただいま書類をいただきましたが、その編成を見ましても、アメリカの野戦軍をそのまま模倣しておることでございます。かつ予備兵力がありませんから完全装備をとつておる。完全装備をとつたアメリカの野戦軍の編成そのまま模倣してつくつておる。第三には、訓練すなわち演習の関係がアメリカの教範、すなわち運用方法によつてなされておる。第四には、その配置も国の治安維てお持の任務から配置せられてはいない。こういうふうな矛盾を来しております。  さらにまた保安隊の内容を見ましても、木村さんはきわめて志気旺盛と言われますけれども、その精神的な支柱というものが明確でないために、今かりにこれを軍に再編するということになりまするならば、隊員の半分以上はやめてしまうだろうということが言われております。これは私は事実であろうと思います。第二には非常事態が発生いたしまして、出動の命令が下つた場合にりくつの通つた退職希望者を引きとめることができない。またかりに非常事態が発生した場合に逃げてしまつても五年以下の懲役で済む、こういうことになつております。さらに第三には、同様に非常事態が発生いたしました際に、上司の命令に多数協同して反抗しても、あるいはまた上司の命令に違反して部隊を指揮いたしましても、やはり五年以下の懲役ということになつております。すなわち反乱を起しても大体におきまして五年以下の懲役で済む。こういうことになつておるのでございます。第四には、技術関係の者は二年たてば大部分が退職してしまつております。しかもさらに任期満了者の活用が現状では不可能であります。単に国費を費して職業補導をやつておるような感が非常に強い。また第五には、先般木村長官は直接侵略と間接侵略が同時に起る可能性が強いということを言われましたが、軍事情報をただいまとつておりませんから、さような場合に非常に不都合を来す、こういうことにも相なるわけでございます。  以上のよう理由によりまして防衛計画がないから十分なる予算審議が不可能であるのみならず、保安隊が国費を濫費する無用の長物となりつつある傾向が強い。たとえば昨年度予算の大部分を本年一月以降に持ち越し、国会でこの点を非難されるや、あわてて相当多額の金を一月から三月の間に使つた。なお昨年度予算の半額に近い二百八十億円は本会計年度に繰越されておる状態でございます。もちろんこれもその後大急ぎで大部分使つてしまつたものと思いますが、このような保安隊の現状から見まして、長期の防衛計画が樹立せられ、それが国会に提出せられるまでは、この際大幅な予算の削減をすべきである。いたずらに保安隊の予算を増額すべきでない、かよう考えるのでありますが、こういう点につきましては長官はどういうふうな御意見でございましようか。
  227. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。御質問の主たる点は、年次計画を立てらいいじやないかというようなことに拝聴するのでありますが、しかしこの年次計画というものはまだ立てるべき段階に至つてないということを考えております。二十八年度予算にただいまの段階において保安隊がどうあるべきか、またどれだけの装備を充実して行くのがよいかという観点から、これが最善なりと考えてわれわれは二十八年度予算を組んだのであります。  なお保安隊のシステムについていろいろ御疑念がございましたが、これは疑えばさようなこともなきにしもあらずでありますが、私の知る限りにおいては、保安隊員は相当しつかりした精神を持つております。昨年十月十五日から保安隊に切りかえまして、それに応募した人たちは相当な決意を持つてつて来て、現在日々の修養訓練において喜んでやつております。話は横道にそれますが、今度の北九州の災害におきましても保安隊は身を挺してやつております。ほとんど生命を賭してあの若い人たちはやつておるのであります。従いましてかりに不幸にして事件が突発いたしましても、私は日本の治安防衛に身を挺してやるものと考えておりますその点をわれわれは十分考慮に入れまして、日本の平和を守るべき支柱であるとい感じをますます強くして、国民の信頼にこたえるようにして行きたいと考えております。  なお予算の点について触れられましたが、これは何分にも保安隊は御承知のごとく創立日まだ浅いのであります。しこうしてこれに装備いたします場合の施設その他につきましては、これは普通の役所で使うものと違いまして、相当新しいものであります。試作もしなくてはならぬ、またこれの仕様書その他の作成において非常に丹念にやらなくちやならぬ。そこらにあり余る品物を買うのとは全然その趣を異にしております。かつてに何でもいいから買うということであれは簡単でありましようが、そうは参らないのであります。一つの自動車をつくるにいたしましても、保安隊として使い得るまでには相当の試作をいたしまして、またこれについて仕様書も丹念につくらなければならぬというところから、日数がだんだん繰込んで、手取り早く金を使うという段取りには参らないのであります。幸いにいたしましてそれらの計画はだんだん進捗いたしまして、二十七年度の予算に盛られた額は、ことしの二、三月ごろに相当これは使用いたしたいというような次第であります。その点については十分ひとつ御了承願いたいと思います。
  228. 松浦周太郎

    松浦委員 関連して。木村さんの今の御答弁はたいへんよく行き届いておるようでありますが、ここに旭川の一市民から来た手紙があります。こんな手紙が五、六通来ております。その手紙は簡単ですが、保安隊のことを非常に心配して書いております。その要点は、保安隊の隊員は、元の師団の兵隊よりも実に劣等なやからである、市民一同が立腹しておるというのです。その内容は一々読みませんが、女狂いをしてどうもならぬ、夜は子女を外に出せぬというのです。このことは、先にどもいろいろ羽田君の質問応答の場合に、演習地その他においてのアメリカ兵による風紀紊乱の問題が言われておりますが、日本の保安隊が市民にこういう感じを与えるようなことでは、精神訓練が行き届いておるという木村さんの御発言と、実際の現地の状況とは違うのです。それから名寄というところにもあるのですが、これは農村にあるのですけれども、農村の人はおそく帰るのに、農村の子女は夕方保安隊の付近を歩くことができないと言つております。こういう指導状況では、自然国民は保安隊に対する信頼感を失つて、あなたの仰せられるような行動がとれなくなると思うのです。私は木村さんの精神的人格には非常に共鳴をいたしております。どうかこういうことのないように、全国の保安隊に対して通牒を出し、厳粛なる精神訓練をされんことを要望いたしますと同時に、あなたの御心境を伺います。
  229. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。さようなことを、どういう根拠に基いて手紙を出されたか私はわかりません。しかし世の中には、保安隊員を故意に傷つけようとする者がしばしばあることは、われわれも十分承知いたしております。そういうことがはたして事実であるかどうかということは、十分調査を要することと考えております。ずいぶんいいかげんなことを言つて保安隊を傷つける者があるのであります。しかし、松浦さんの故郷であります北海質においてこういう事例があります。私は本年三月旭川部隊を視察して参つたのであります。そのときに、旭川の市長であり、われわれの同僚で、元議員をやつておられました坂東幸太郎さんが、市民の方々がみな集まつたときに、旭川では保安隊に対して実に感謝にたえない、実はこれまで税金を払つておつたが、いまだかつて旭川の積雪を除雪してくれたことがなかつた、しかるに保安隊が来てから、ただちにブルドーザーをもつて除雪してくれて、これによつて市民はどれくらい便宜を得ておるかわからない、旭川全市民は保安隊さんに感謝しておりますと言つて、私たちに感謝の意を述べられたのであります。また最近でありますが、岐阜県知事であります武藤嘉門さんからも、懇切なる感謝状を私はいただいております。それは、保安隊の施設部隊がわざわざ出動して、山間僻地における学校の敷地の地ならしをしてくれて、実にありがたいということで感謝状も受けております。それからまた、鳥取の火災、松江の火災、山口県の去年の風水害のときに、保安隊が身を挺してやつたということについて非常に感謝されております。今度の北九州の災害につきましても、各種のところから私に感謝状が来ておる。ことに佐賀県知事のごときは、保安隊があつたから、今度の水害が早く処置せられておるのだというふうに心から感謝をされております。あるいは一部の者にそういうことがあつたかもしれませんが、私は保安隊全般から考えまして、さようなことは信じておりません。そういう点に対してほんとうに確証がありますれば、御遠慮なく言つていただきたいと思います。私はそういうことはないと考えております。
  230. 松浦周太郎

    松浦委員 ただいまの長官の御答弁は、もちろんそうおつしやらなければならないと思いますが、こういう手紙が来るということは、事実私が向こうにいきました時分にずいぶん聞きました。あなたにお会いになつたのは市の指導者の方々でありましようが、一般市民の受けておる感じがこの手紙に表われておると思うのですが、これに対してどういう処置をおとりになるかということを聞いておるのです。今言い訳だけだつたですが、こういうことがあつたとすれば、十分厳戒するようにされるのかどうか、それを聞いておるのです。
  231. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。そういう事実がもしもあるといたしますれば、これは保安隊の信用を維持する上からいいましても、捨ておけぬことでありますから、十分の処置をいたしたいと考えます。
  232. 河本敏夫

    ○河本委員 各大臣にお願いしておきますが、時間の関係質問を一挙に二間ないし三問する場合がございますが、そのときといえども漏れなく御答弁をお願いいたします。  大蔵大臣にお伺いいたしますが、政府は今度の予算編成に際しまして、三十数億の行政費の節約をしておるということを言つておられます。ところが最近行政費が放漫に使用せられておりますことは、まつたく目に余るものがあるのであります。このために先般の不成立予算に対しても附帯決議の第三といたしまして、「冗費の節減の為一大財政整理を断行すること。」という条件が自由党からつけられて通過したことは御承知通りであります。もちろん根本的には複雑厖大なる行政機構を簡素化するとともに、行政監察機構を強化する必要もございましようが、われわれは、そういうことをしなくとも、現状においてもなお相当多額の行政費を節約することができるのではないかと考えるのでありますが、大蔵大臣はどのようにお考えでありましようか。
  233. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今度の本予算編成にあたりまして、仰せのごとくに約四十億の節約をいたすことになつたのでありますが、これは前にも節約いたしておりますし、旅費及び庁費でありますので相当な影響があることは認めますけれども、ぜひともこれはやつて参りたいというので予算編成をしておるのであります。なおすべての行政費みな国民の血税によるものでありますから、私どもいささかも濫費、冗費なきよう十分慎む所存であります。
  234. 河本敏夫

    ○河本委員 先般の台風第二号による被害と、それと前後するところの被害を合せますと、約五百億円に近いといわれております。それから今度の九州を襲つたところの豪雨は、被害はまだ明確になつておりませんけれども、あるいは数千億に達するのではなかろうかといわれております。農林省あるいは建設省関係の公共事業費だけでも五百億円を越える可能性が強い。こういうふうな大きな災害が続いて起つておりますが、かりに本予算が通過いたした場合に、本予算に計上してありますところの百億をもつてしては、とうてい臨時の対策も十分にはできぬのではないかと私は思いますが、大蔵大臣はその点をどのようにお考えでありましようか。
  235. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 第二台風及び今度の洪水で相当の被害があるということにつきましては、私ども心から心配しておるものでありますが、今調査いたしておりますので、どの程度の被害があるかという事情はまだよくわかりません。その調査の結果に基きまして考えたいと存じますけれども、さしむきの金はほぼそのくらいのもので済むのじやないかというように私は見ております。あるいはこれは楽観に過ぎるかもしれません。しかしもし必要がありますときには、特別の措置を講じなければならないとは存じております。
  236. 河本敏夫

    ○河本委員 ただいま交渉中のMSAの問題が近く明確になろうと思います。それから公務員給与引上げに関する人事院勧告も近く決定するだろうと思います。それからまたこの大きな災害の結果も近く正確に判明するだろうと思います。そういうことになりますと、当然補正予算を組まなければならぬと思いますが、その補正予算を組まれる時期はいつごろの御予定でございますか。
  237. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 MSAの問題につきましては、私も、まだ交渉中でどういう援助が、またどういう経済的あるいは財政的な影響があるかについてはまだ全然承知しておりません。また今後の話でどういうことになるか存じません。さらに人事院勧告がありまする場合に、何とかいたしたいとは存じておりますけれども、財政上の理由で財源がつからなければ、処置の方法もないのではないかというふうに考えて、この点も心痛めておる次第であります。従いまして災害その他の問題も事実国が出さなければならぬものがどれだけになるか、河本さんのお話のうちには、たとえば財政措置ではなくて、金融措置で行けるものも相当含まれているのではないかと思いますが、財政措置といたしましてはとりあえず六億円を出しまして筑後川、遠賀川等の堤防の決壊をとめたのでありますが、つなぎ資金としてとりあえず十億出しました。やはり資金の面と財政措置を要するものと二つありまして、財政措置を要するものはそう多額にはないのではないかと私ども考えております。従いまして今日のところ補正予算についてはまだ全然考えておりません。
  238. 河本敏夫

    ○河本委員 次に金融政策につきましてお伺いいたします。ただいま本年度の総合資金需給見通しについて資料をちようだいいたしました。この案が実行せられました場合にインフレの見通しはどうなるか。またインフレの心配なしとするならば、その根拠につきまして御説明を願いたいと思います。
  239. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 多分お手元へお配りしたのはこのものじやないかと思われます。大体これに基きますと、一千九十八億でございますか、資金散布超過になります。けれども御承知のごとくに日銀のいわゆるオーバーローンが三千数百億に上りますことも御承知通りであります。またいわゆる指定預金その他の分等もございます。これも数百億ございますので、それらの資金調整をいたしまして、私がよく言う言葉では財政金融一体化ということでこれを措置して参りますれば、インフレに持つて行かずに行くであろうと思つておりますが、しかし大体におきまして一年間を通算いたしたならば、あるいは前年度に比べたら五百億ぐらいの資金増発になるのではないかと見ております。一応そういうふうに見ておりますが、しかしそれは何もインフレになるとは考えておりません。また今の日本をインフレに持つてつては断じてならないのでありまして、これに対しては十分な措置をとりたいと考えております。
  240. 河本敏夫

    ○河本委員 もう一つ御説明で十分納得行きかねる点があるのでございます。インフレに対しまして十分なる考慮を払う必要があろうと思います。この点はもちろん私は大蔵大臣と同感でございます。従つてこのインフレの問題は単に散布超過であるとか、あるいはまた日本銀行の通貨の増発によつて、これだけで決定せらるべき性質のものでなしに、国際物価の動向であるとか、あるいは国民所得の金額あるいはまたさらに国内の生産、こういうふうなものがいろいろ重なり合つて、そうして総合的に決定せらるべきものである、かように私は考えるのございます。ただこの際特に気をつけなければならぬことは、いろいろの要素が寄り合つてインフレが起るわけでございますけれども、やはりどうしても散布超過になるよう予算を実行する場合には、相当強力な民間の資金の吸い上げ策を私はあわせて講じておかなければならぬと思うのであります。ところが今度大蔵省としてお考えなつている案を拝見いたしますと、預貯金に対する利子課税源泉の分五〇%を四〇%に切下げて、年間約五千万円見当の減税をしようというような案をもつて民間資金の吸収に対処せられようとしているよう考えられるのでありますが、私は、これだけの措置ではたして十分であろうかどうか非常に疑問を持つております。そこでこの際大蔵大臣は、一千百億円以上の散布超過になると言い、日本銀行の通貨の発行高が年度末には五千六百億に達するというようなお見込みでございますから、さらにこの民間資金の吸収のために一段と強力な対策、すなわち預貯金に対する利子課税をこの際もう少し思い切つて下げて、預貯金を優遇するというような対策が必要ではないかと思いますが、この点に対しましての御意見を伺いたいと思います。
  241. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 世界的の物価関係とか、経済情勢とか、その他国内の各種の生産とか、いろいろインフレに関係いたしますことは、河本さんの仰せの通りであります。従いまして総合的な対策を立てなければならぬと存じております。預金につきましては、源泉の選択課税を五〇から四〇にした程度でありますが、御承知ようなこのごろの特別定期預金は全部漏れくじなしです。ほんとうを言うと課税すべきものですが、さような漏れくじなしの預金でも預金課税をいたしておりません。さよう措置もとつており、あるいはまた情勢によりましては、もう少し強力ないわゆる預貯金奨励といいますか、資本蓄積に沿うような対策をとらなければならぬかとも考えますが、二十八年度では国民所得を五兆八千二百億円と見て、昨年の例で出しますと九千五、六百億くらいの預金増加になるものと思うのであります。そんなふうなぐあいでありますと、今の国民の心構えも大分かわつてつておりますから、それと相まつてインフレに持つて行かぬように処置し得る、かように私どもは考えている次第でございます。
  242. 河本敏夫

    ○河本委員 ただいま大蔵大臣の御答井の中に、特別定期に対する預金利子に課税しておらぬから大丈夫だというようお話もございましたが、これは数年前にこの制度がつくられた当時から無税のものでございます。だから何も本年度新たに措置をせられたものではございません。そこで私は、これだけの散布超過になる財政計画をやられるとするならば、なお一歩進んだ預貯金に対する優遇方法というものがぜひ必要ではなかろうかと考えるのでございます。インフレの問題につきましては、大蔵大臣と同様に、国民所得は五兆八千億であり、国際物価は最近非常に下落ぎみである、さらにまた生産は横ばいであるけれどもやや上昇ぎみである、こういうような傾向が続きますならば、私はインフレの心配はないと思います。それでこの際三少を進めて民間資金の吸収のために、相当強力な子を打つような方策をとられましたならば、私は現在の散布超過千百億が一、三百億ふえてあるいは千三、四百億になつてもインフレの心配はない、かような見通しをつけておりますが、人蔵大臣の御見解はいかがでございましようか。
  243. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 河本さんも御承知のごとく、やはり経済は程度の問題でめりますから、千九十八億まではよいか、それでは千二百億、千三百億になつてもよいかということを仰せられますと、もう少し実は考えてみないといかぬのであります。一割くらいのところがなかなか経済界には大きく響くのとありまして、これは米などの自由だりたときなどをよくお考えくださればわかると思いますが、米が一割ほどよけいとれたということと、一割ほど減収になつたというようなことですぐ相場にはねかえる。経済界は微妙なものですから、それでは千三百億になつてもいいじやないかと仰せられますとそれはすぐに響きますから、少し考えさせていただきたいと思います。  なお仰せになりました特別定期はその通りでありますが、初期においてはからくじなしというのはなかつた。このごろはからくじなしですから、普通定期預金と何ら選ぶところがなくなつた。初めのやつは当りくじの分ですから課税しなかつた。このごろはからくじなしですから、まつたく定期預金と選ぶところがなくなつたのでありまして、その意味をちよつと申し上げた次第でございますので、さよう御了承を願います。
  244. 河本敏夫

    ○河本委員 それから数日前に委員長を通じて政府に、五月末現在の政府の蓄積財政資金の金高の内訳を御報告願うようにお願いしておいたのであります。たしか本年の初めにはそれが約三千億弱に達しておつたと思いますが、もしただいまその資料の整理ができておらなければ、大体でけつこうでありますが、現状はどういうことになつておるのでありましようか。
  245. 西村直己

    西村(直)委員 長代理 河本君に委員長から申し上げますが、実は理事会の申合せの質疑の時間が多少迫つておりますから、後ほど政府から御説明申し上げるようにして、ほかの方の御質問に入つていただきたいと思います。
  246. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 実は手元に数字を持つておりません。数字のことですから、もし誤つたことを申し上げてもいかがかと存じますので、あとから資料として差上げてもよろしいと存じております。
  247. 河本敏夫

    ○河本委員 私は実はぜひこの金額を今知りたかつたのでございます。というのは、われわれはこの蓄積財政資金を、ここ二、三年の間に日本経済の拡大均衡を達成するために、惜しみなく計画的かつ有効に、産業資金として投入することを従前から主張しておつたのでございます。日本経済再建途上における最大の困難は何かと申しますと、これは大蔵大臣も十二分に御承知通り、経済の拡大均衡をはかる積極的な政策を強行しながら、一方全体的な命令ともいえるところのコストの引下げをはかつて行かなければならぬ、ここにあると思うのでございます。問題は、ややもするとインフレ的な要素を持つた政策とデフレ的な要素を持つた政策を、国民経済の規模を正確に把握しながら、目標達成の時間的な制約を受けつつ調和させることにあると思います。かかる観点から、私たちは一方において思い切つた預貯金の利子課税の引下げを行いまして、そうして民間資金の吸収をはかりつつ、政府原案よりも相当大幅に財政資金をこの際投入してもさしつかえないのではないか、こういうふうに考えておつたわけでございます。数字的な根拠がありませんから御答弁もお困りと思いますが、後日数字を率調べの上で御返答をお願い申し上げます。  それから当初にちよつと触れた問題でございますが、電話の問題につきまして物価政策と関連してお尋ねをいたします。現在政府のとつておられます政策はもちろん低物価政策でございます。この政策はもちろん私は正しいと思う。しかしながらこの政策を強力に実行するためには、どうしても政府は公共的な性質を帯びたところの鉄道であるとかあるいはガス、水道、電気あるいはまた電信電話、こういうようなものの値上げは私はすべきでないと思う。あるいは金額は小さいかもわからぬが、小さくてもやはり公共的な性質を帯びておるだけ、他の物価に対して相当大きな影響を及ぼすのではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、この点につきまして大蔵大臣はどういうふうなお考えでありましようか。
  248. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 最初に申し上げておきますが、もう今整えておるそうでありますから、今のお尋ねの表は一両日中に差出すことができるそうであります。さよう御了承を願います。  電話の問題につきましては、先ほど郵政大臣からも答弁がありましたが、私どもも電話をなるべく上げないことを希望しておりますが、さればといつて現在の電話事情のままで行くよりも、電話がもつと普及することの方が、どちらかと申せばやはり日本経済に大きく役立つて行くのではないか、かような観点と、もう一つは、電話というものはほかの方面に影響する部分もありますけれども、電話架設者のみに限られておる一部範囲のものであるから、一般的な物価政策には大きな影響はあるまい、そういうような見方からして認められた、こういつたような次第でございます。
  249. 河本敏夫

    ○河本委員 私はこういうふうな公共的な性質を持つたものの値上げというものは、ごくわずかでも、相当大きく他の面に心理的な影響を及ぼすのではないか、こう考えるのでございます。それと、どうも電話の値上げのやり方というものが、まつたく支離滅裂で私はふに落ちない。というのは、本年の一月の予算には一割の値上げの計画を立てた。その後経済の事情は少しもかわつておらないのに、その一割が大体通りそうである、その当時の空気から推して、この際二割五分を上げても通るだろう、こういうふうな見通しのもとに、きわめてずさんな計画でお立てになつたのではないかと思われる節が多々あるのでございます。もちろん表面的な理由は、予算の時間的なずれでもつて、百億発行するところの公債が七十五億になつて、それで資金計画を変更しなければならぬということが、表面的な理由なつているのですけれども、つい二、三箇月前に一割の値上げを計画して、わずか二、三箇月たつた現在、経済事情が何ら変動しておらないにかかわらず、二割五分というふうな大幅な値上げに計画を変更するということははなはだふに落ちないのでございます。それからやはりこれは当初に申しましたことでございますが、電話の拡充計画は五箇年で三千億に達している。まつたくこれは日本の経済の規模からつり合いがとれておらないのでございます。食糧増産のごとき重大な事業でも、四千億足らずの資金量しか予定されておらない。電源開発にしてもしかり。しかるに電話に毎年五、六百億の金を出して、そうしてこれを急いで拡充する必要は私はごうもないと思う。少くともこの電話の値上げの問題は、物価が一応安定するまで見送つて、一年先に物価の安定したときにこれをおやりになる、あるいはまたこの三千億に達するところの年次計画は、いいとか悪いとかいう問題は別にいたしまして、少しこれを繰延べる、私はこういうふうにせられる方がいいのではないかと思うのでございます。時間の関係上、この問題につきましては答弁はしていただかなくてもけつこうでございますが、大蔵大臣のなお重ねての慎重なる御研究をお願いしたいと思います。  それからコスト引下げの問題につきまして、大蔵大臣と通産大臣にお伺いいたします。コストの引下げは、わが国の経済再建の上にとりまして今最大問題になつております。もちろんコストの引下げをするためには、設備の近代化であるとかあるいは企業の合理化であるとか、こういうふうなことが必要である。しかしながら他方言葉をかえて言いますならば、今、日本のコスト高の一番大きな原因は、何と申しましても金利の問題であります。金利水準が非常に高い。もう一つの原因は石炭の価格の問題であります。それから第三には、やはり引続いて起つておるところの賃金ベース引上げの問題であります。この三つがコストと非常に大きな関係があろうと思います。この金利問題に関しましては、先般本委員会におきまして、石橋委員大蔵大臣の間に相当長時間にわたつて質疑が続行せられました、私はその質疑と観点をかえまして、なお二、三の点につきましてお伺いをしてみたいと思うのであります。もちろん現在の政府が低金利政策を強く考えておられることはわかります。それは昨年の秋に第四次吉田内閣が成立いたしましたときに、総理みずから強くこのことを発言せられまして、総理大臣が初めて記者団と会見されたとき、その第一声は金利を引下げるということでありました。その後政府は一生懸命に努力せられた結果金利を一厘引下げられております、しかしながらその後の政府のやり方を見ておりますと、どうも低金利政策というものに対して一貫性を欠いておるのではないか、こういうふうに思われる節が二、三あるわけであります。たとえば国債金利のごときも従前は五分五厘であつた。今度借りかえするのを機会に先般大蔵大臣の御答弁で六分ないし六分二厘見当のものにおちつくようになるかもしれないというお話であります。この理由といたしまして、銀行の資金コストが年七分一厘ないし二厘についておるから、やはりある程度国債利子の引上げを考えなければならぬと思う、こういうような御答弁であつたと思うのであります。私は、こういうふうな安易な方法をとられないで、なるほど金融機関の資金コストが高いならば、その資金コストを引下げるように、まず努力をせられるのが筋道ではなかろうかと思うのでございます。これは先般来たびたび本委員会でも問題になつておつた点でございますが、この資金コストの内容を見てみますと、預金利子が三六%であります。そうして銀行の経費というものは六四%に達しております。すなわち年間に直して四分五厘に達しておるわけでございます。戦前資金コスト中におきまして預金利子の占める割合は七三%に達しており、経費が二七%でありました。こういうことを思いますと、現在の銀行金利というもののコストのうち、経費の占める割合が戦前に比べまして数倍に達しておるわけでございます。もちろん彼ら、銀行家の言分を聞いてみますと、事務の量もふえておる、なるほどこういうことも事実でしよう。そのため人員が三倍に達しておる、こういうことも事実でございましよう。しかしながら最近のやり方を見ておりますと、給与は全産業におきまして、ずば抜けて上位、しかもつい最近までは店舗の数なんかも無制限、無計画的にこれをふやしておつた。そうして無用な競争を次から次へと続けておる。また一方におきましていわゆる紛飾預金が、大体現在は全貸出しの三分の一に達しておる、こういうふうに言われておるわけでございます。先ほど大蔵大臣の御答弁の中に、本年度の預貯金の増加は多分九千五、六百億に達するであろうというお話がございました。なるほどそれくらいに達するかもわかりませんが、それは紛飾預金を含めての意味であろうと思います。実質預金の増加というものは、大体三分の二、六千億見当というところではなかろうかと私は考えておるわけでございます。こういうふうな原因が重なりなりまして、現在の高金利の非常に大きな原因をなしておるわけでございまして、こういう関係で本年三月の二十日に銀行経営の合理化を強力に促進せよということに関しまして、大蔵大臣みずから全国の銀行に対して警告を発せられております。しかしこの際に低金利政策をさらに徹底させるために、国債借りかえの場合におきましても、いたずらに安易な方法によつて利子を引上げて行くということでなしに、まずその前に強力に資金コストを引下げるための何らかの具体的な手を打たれる必要があるのではないか。こうしなければ日本経済にとつてただいま一番大きな問題であるところの資金コスト引下げという問題は解決しないのではないか、かよう考えるわけでございますが、御意見を伺いたいと存じます。
  250. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 コスト引下げの問題の重要なことは、仰せの通りであります。これにつきまして、今お話になりました設備の近代化であるとか、あるいは企業の合理化とか、そういうものに対する努力も今通産大臣の方でしきりに続けておられるのでありますが、しかし一方私どもの方におきましても、たとえば金融面あるいは金利面、租税面等で大蔵省でもやり得る部分でコスト低下に努めなければならぬものがありますので、この点に対しては、力の及ぶ限りはやつておるのであります。たとえて申し上げれば、合理化に要する機械設備等を入れますために、税の免除あるいは優先外貨を割当てるというようなことをやつております。昨年も三千数百万ドルのこれに要する機械等を輸入したことも御承知通りであると思います。また各種の税制措置につきましてもいろいろとつておることは御承知であると思うのでございますが、今の金利を下げるということはぜひやらなければならぬと思います。日本のごとく金利の高い国はないのでありまして、多分河本さんもお調べだと思いますが、金利が今のいろいろな企業の大きな負担になつておることは御承知通りであります。従いまして何とかして金利を下げなければなりません。が、今仰せになりました教字のうち、戦前に比べて見ると、ばかに営業費が多いのではないかと仰せになつた。私もまさにそれを感じております。それは、一方から見れば人件費が高過ぎることはあるかもしれませんが、私はそうでなくて、資金量が少な過ぎるのだ、つまり銀行の規模から見れば資金量が少な過ぎる。従つて何としてもやはり資本の蓄積の方に努力し、それに基く貸出しの増加、言いかえれば取引量の増加をはかることが、一番銀行の資金コストを安くし得るもとになるのではないかと考えておる次第でありまして、その点で、さつき仰せになりましたが、もう少し預貯金の利子等についての租税の減免等を考えるべきであると思つて、このごろ事務の方に立案方を頼んでおります。あるいは本国会に間に合わないかもしれませんが、次の国会等にでも提出し得るのではないかと思つております。そういうことにつきましてもいろいろやつて参りたいと考えておるのであります。
  251. 河本敏夫

    ○河本委員 なるほど金利引下げの一番根本の問題は、資金の供給量をふやすということは当然のことでございます。しかしながら私は先ほども申し上げております通りに、銀行の金利のうちで占めるところの経費のコストが、戦前の数倍に達しておるということは、どうしても納得が行かないのでございます。しかも一方銀行は資金の供給力が少いから非常にいばつた立場にある。こういう事情でございますから、何とか大蔵省の方でこれに対する強力な対策をこの際早急に打出す必要があるのではないかと存ずるわけでございます。  それから減税国債に関しましてお伺いいたしますが、この減税国債は、理論的にも国債政策の邪道であると私は思います。それでありますから今度政府はこれを発行せられる場合でも、恐る恐るこれは一年限りでございます、こういうふうな条件をつけられて、そして今度発行せられることにきまつたのだろうと思うのであります。これは単に国債政策の邪道であるだけではなしに、金利政策から申しても、低金利政策の体系を相当乱すのではないかとも考えられますので、この際減税国債はおとりやめになつた方が、日本財政金融全体の立場から考えましていいのではないかと考えているものでございますが、いかがでございましようか。
  252. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 さつき答弁のうち、ちよつと忘れましたが、借りかえ公債につきましては、現在五分五厘のものをなぜ六分その他で借りかえるかというお話でございます。この点につきましては御承知のごとくに借りかえ公債は銀行で消化さす以外に道はございません。従いまして銀行の方で強制することもどうかと考えられますので、まず銀行で消化し得る最低の利息を盛りたいと考えておる次第でございます。民間でなかなか消化しませんので、金融機関でどうしても消化しなければならない。この点からどうも五分五厘では強制しなければ消化が困難ではないかと思いますので、これは六分くらいになるのではないかと申しておりますが、しかしこの問題はまだ確定したわけではございませんので、御了承願つておきます。  それから減税国債の問題でありますが、これは今度特別会計に入れまして、電源開発等の資金に向けさすことにいたしておるのでありまして、私どもはこれは将来の例とはしない、しかし発行の期限も遅れておるし、また表面の利息――とあえて申しますがこれは四分になつておるから、金利体系を乱すほどでもない。また一般普通公債と違いまして、これは納税者のところに限られておりますので、公債を出す中では一番弊害が少いのでないか、こういう観点で、私は正直に言つて非常に望ましいとは考えておりませんが、しかし投資会計等にやるのには、この程度二百億ぐらいは適当であろう、かよう考えて、御同意をお願い申し上げておる次第であります。
  253. 西村直己

    西村(直)委員 長代理 河本君に御相談申し上げますが、各大臣全部残つていなければなりませんか。それとも御指名くだすつた大臣だけでよろしゆうございますか。
  254. 河本敏夫

    ○河本委員 大蔵大臣、運輸大臣、農林大臣、通産大臣、これだけお残りになつていただきたいと思います。  次に貿易金融それから船舶金融の問題についてお伺いいたします。  朝鮮休戦後の貿易の世界的な競争というものは、相当激化せられるのではないか、こういうふうに私は考えております。従つて政府も今度輸出キヤンセル準備金制度であるとか、海外の商社がもうけた場合の特別償却積立金など、いろいろ対策を御研究ようでありますが、これぐらいの対策ではいけない。予想以上に朝鮮休戦後の貿易競争は激化するであろうと思われますので、この際なお一層進んだ、思い切つた貿易振興対策が必要になるのではないか、かよう考えておるわけでございます。それで貿易を伸ばすためには、もちろん基本的には日本の産業としては補助金を出す必要があるかどうかという問題があろうかと思います。しかしながらこの問題を一応たな上げにいたしますならば、やはり金融、税制、為替、この三つの面から相当思い切つた助成策を講じてやらなければならぬ。かよう考えるわけでございますが、そのうちこの貿易金融に関する点だけを申しますと、ただいま日本輸出入銀行の金利が五分ということになつております。私はこれではなお不十分であると思う。これを相当引下げる必要があるのではないかと思います。それから貿易手形の割引料が、今再割手形が一銭九厘、スタンプ手形が二銭四厘、こういうことにたつておりますが、これも相当引下げる必要があるのではないか。すなわち現在政府が御計画中のいろいろな貿易振興の対策では不十分である。朝鮮休戦後の貿易競争というものは、予想外に激化するのではないか、こういう見通しのもとになお一層突き進んだ輸出貿易の振興策をこの際立てる必要があろうと思いますが、通産大臣はどういうふうにお考えでございましようか。
  255. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。お話通り、この際われわれといたしましては五箇年計画というもので、ある程度コスト引下げを計画しておりますけれども、これではまだ間に合いませんので、朝鮮休戦後の世界の情勢の変化に上りまして、世界の貿易の非常に激甚な競争が出て来ると思いますので、さしあたつて金利の面、税制の面、いろいろのことを考えております。事務当局の検討したところによりますれば、市中銀行の金利を少しかえるぐらいで、八%ぐらいのコストの引下げができるような試算も出ております。そういう方面について極力研究しております。
  256. 河本敏夫

    ○河本委員 貿易金融と並んで船舶金融の問題につきましてお伺いしたいのであります。先般総理大臣は施政方針演説におきまして、「国際収支の拡大均衡上重大な役割をになう海運については、引続き外航船舶の拡充を推進するとともに、国際競争上の弱点を克服するための幾多の育成措置を講じ、海運基礎の強化に最善の努力をいたす、」こういう意味のことを言つておられますが、この意味は具体的にはどういうことをさすのでありましようか。総理大臣がおられませんから、運輸大臣から御答弁をお願いしたいと思います。
  257. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 お答えします。海運の重要性はいまさら論ずるまでもないのでありますが、特にこのごろの貿易状況から見まして、日本の各方面の貿易に関連するもの、つまり貿易そのもの、また貿易外の収入に資するものに力を入れなければならぬということは当然であります。その中の最も大きな部面は海運とこれに関連いたします造船のプラント輸出というような問題等が主になるのでありますが、この海運を今国際情勢から見ますと、非常に運賃が悪い状態であります。日本の今日の造船船価をもつていたしますと、ただいまの運賃では経営が成り立たないという情勢でありますが、されば成り立たないからといつて船をつくり、また海運を盛んにして行く道をやめて、目先のことばかりはやれない。その意味からできるだけの方法を講じて、日本の海運の隆盛を期するような方策をとらなければならないということが、総理の発言せられたゆえんだと思います。
  258. 河本敏夫

    ○河本委員 運輸大臣に引続いてお伺いいたしますが、昨年度の船舶によるところの外貨の収入及びただいま政府は商船隊の数箇年にわたる拡充計画を立てておられますが、その拡充計画が一応でき上つたところの外貨収支の見通し、これはどういうことになつておりますか。
  259. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 二十七年度の海運による外貨収入並びに外貨で払うべき運賃の節約額、この合計約一億八千万ドルと考えております。拡充計画が達成しました後における外貨獲得額並びに節約額は約三億三千万ドル、かよう考えております。
  260. 河本敏夫

    ○河本委員 ただいま政府の御答弁を拝聴いたしておりますと、この海運産業というものは、貿易と並んで外貨獲得のためにまた日本経済自立のための二つの大きな桂である、ように感ずるのであります。しかるに今や海運は全産業をあげて崩壊の寸前にあります。倒れる寸前にある。その最大の理由は、外国では手厚い国家保護によりまして、おおむね三%前後の金利を払つておるにかかわらず、わが国では最近多少引下げられたとはいいながらなお財政資金が七分五厘だ、こういう状態であります。しかもわが国の海運の最大の競争相手であるところの英国のごときは、戦時補償の支払いと戦後のブームによりまして、ただいまは自己資金が八割以上、借入金が二割以下、この程度にまで資本内容が充実しているのであります。わが国は戦争中に沈没いたしました船舶八百万トンの補償金約二十七億、これは現在の価格に換算いたしますと約一兆億になりますが、この戦時補償が打切られまして、明治初年以来八十年間にわたるところの蓄積が、一挙になくなつてしまつたわけでありますいわば戦後は無からスタートした、こういう状態であるために、現在自己資金の割合が二割に達しておらない。一方借入金が八割を越えているという状態であります。全産業のうちでは最悪の条件に置かれいるといつても過言ではないのでございます。で政府は、総理大臣も施政方針演説におきまして初めて大きく取上げられた通り、非常にこの問題を重視しておられるということはよくわかるのでございますが、国際収支の均衡上、先ほど運輸大臣並びに海運局長答弁を聞いておりますと、非常に重大と存じますので、この際海運に関するところの金利というものを、国際水準であるところの三%前後に引下げられる御計画があるかないか、こういう点につきましてお伺いいたしたいと存ずるのでございます。
  261. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 ほかの貿易関係の問題と同じ、と申し上げたいのですが、それ以上に大きく響いておりますのはこの海運の場合の金利でございます。何とかいたしまして金利を下げて、競争力をふやしたいと思いまして、昨年の秋の議会におきまして利子補給の制度を復活いたしまして、今お話ように七分五厘までは下げることができるようになりました。また今度の議会に、市中から融資をいたしますものに対しての損失の補償を政府でいたすというような法律案を出すようにいたしているのでありますが、こういうことをいたしておりましても、徐々と進んでいる形でありまして、現在面しております海運業界の不況に対しましては、なかなか及びもつかない苦しい状態で、ここで何とかしてもう少しふんぎりをつけて金利を下げる、また市中の融資に対しましては利子の補給をふやすということができないものであるかどうかということが大きな問題になつておりまして、先ほどからのこの問題についてはだんだんと研究をいたしております。三分五厘まで引下げてもらいたいという声は、海運業者こぞつての熱烈なる希望でございますが、はたしてそこまで下げ得るやいなや、そこまで下げないでもいいものかどうかなおいろいろなデータを集めまして、研究いたしておりまして、競争に耐え得るようなところに持つて参りたいということを考えているのでおります。
  262. 河本敏夫

    ○河本委員 この問題につきましてなお一点お伺いいたしますが、現在船舶金融は開発銀行を通じてやつております。大蔵大臣もこの点はお聞きおき願いたいと思うのであります。船舶金融のような特殊な金融は別個の金融機関、たとえば海事金融公庫というものをつくつてそれを通じてやるのが、私は船舶金融を円滑ならしめるゆえんであろうと存ずるのでございます。この点につきまして、大蔵大臣はどういうお考えでございましよう
  263. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 船舶金融及び金利につきましては、これは日本の長い目で見まして、どうしてもこれを相当程度はかつて参らなければならぬと思います。現在のところ、普通の貨物船に対しては御承知ように七割になつておりますが、これはやはり今の不況等から見れば、タンカー等にもそういう財政資金を要するのではないかというふうにも考えております。なお金利の点も、これは目下相談中でありますが、どうも外国のように三分というところではなかなか行きにくいと思いますけれども、相当な考慮をする必要がぜひともある、かよう考えております。
  264. 河本敏夫

    ○河本委員 私が尋ねましたところの焦点、すなわち開発銀行で金融をやらぬで、船舶金融公庫のようなものをつくつてやるべきだということに対してはお答えがなかつたのでございますが、その点はいかがでございましよう
  265. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいまのところ、特に船舶金融のみを目的とした金庫あるいは公庫のようなものをつくるという考えは持つておりません。
  266. 河本敏夫

    ○河本委員 私は二の問題は大蔵大臣はなお慎重にお考えなつた方がいいと思う。現在開発銀行の金融方針を見ておりますと、大体コマーシヤル・ベースに乗らないものは一切金融をやらぬというのが建前でございます。海運のような産業というものは特殊なものでありまして、十年の間に一箇年だけがコマーシャル・ベースに乗つて、あとの九年はコマーシャル・ベースに乗らぬが、十年を平均すると一応コマーシャル・ベースに乗る。こういうふうな特殊な金融でございますから、開発銀行の現在の金融方針から行きますと、海運産業は現在においては融資の対象にならぬ、こういうことすら言い得るのであります。そういう点を勘案されまして、私はなお大蔵大臣の慎重なる御研究を願う次第であります。  次に、日本の産業の構造につきましてお伺いしてみたいと思います。世界の経済状況から推しまして、今後わが国は戦前の繊維工業を中心とする軽工業より重化学工業を中心とする経済構造に変化して行く。こういうことは先般岡野通産大臣も本委員会の席上そのような見通しを一応述べられたのでありますが、私もその見通しは間違いないと思います。この場合に重化学工業の設備の近代化、あるいは経営の合理化、あるいはまた政府の金融、税制面よりするところの強力なコスト引下げのためのいろいろな方策があわせて採用せられて、わが国の物価というものがある程度引下げられましても、依然として鉄鉱石であるとか、石炭、あるいは塩、その他の原料を外国から買わなければならないというハンデイキヤツプが残るわけでございます。この分だけはいかに合理化、設備の近代化を努力いたしましても、日本の実情からいつて、解決せずして残る問題であろうと思うのでありますが、こういう点につきましてどういうふうなお見通しでございますか。
  267. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。これはお説の通りでございまして、先般も申し上げましたように、あなたの御説と一致しているはずでございます。軽工業が今大事な輸出の大宗をなしておりますけれども、将来はたして日本の輸出の重点になつて行くかどうか、私は心細いと思うのでありまして、重化学工業の方に進んで行かねばならぬ。その重化学工業を今後輸出して行くには、これはむろんそう急にはうまく行きません。そこでコストを下げることを考えておりますが、コストを下げるには相当考慮しなければならぬ。これにつきましてはいろいろ御説もございます。補給金ということは即効薬としてきき目もあるでしようが、しかしどの産業、どの企業に補給金を出すかということはたいへんむずかしいのでありまして、一つのものに補給金を出しと、すべてのものに波及いたしまして、財政的にもまた外国との競争上におきましても、非常な不利をこうむりはしないかと思うのでありまして、補給金については考慮を要すると思いますので、これはまず研究課題といたします。結局税法上の措置によりましてできるだけ努力したい、こう考える次第であります。
  268. 河本敏夫

    ○河本委員 貿易問題につきましてごく簡単にあと一点だけ伺いまして、そのあと農林大臣に一点、あと二点だけお許しを願いたい。  先ほど通産大臣の御答弁ではつきりいたしましたが、わが国の産業は将来重化学工業を中心としている、こういうことは明らかになりました。しかりとするならば、将来鉄工業、機械等の輸出に関しまして十二分の関心を払わなければならぬと思うのであります。ところが昨年の東南アジアに対する機械の輸出を例にとつてみましても、わが国では三%前後しか増加していないにもかかわらず、英国では一二%、西独では三二%の増加になつおります。わが国ははなはだしく立ち遅れておる。しかも先ほど来申し上げておりますように朝鮮の休戦後は米国が鉄鋼関係の輸出国として登場し、英国及びシューマン・プランによるところの西欧の諸国が強力なる競争相手として登場して来ることも予想されるわけであります。現在わが国に対する機械の引合いの関係は非常に多い。そうしてわが国の鉄鋼価格さえある程度下げますならば、商談の成立するものがきわめて多いのでございます。それで私はこの鉄鋼価格の引下げということに対して、政府は相当強力にお考えになるべきであろうと考えます。時間の関係で通産大臣の御答弁はけつこうでございますが、特にこの点につきまして政府の御留意をお願いするわけでございます。  なおこの鉄鋼 機械の輸出の問題に関連いたしまして注目すべき問題が一つございます。それは最近外国から船舶の引合いが非常に多くなつて来ております。昨年の末から本年の春までに総トン数で約二百六十万トン、金額にいたしまして約六億ドル近いものが日本の造船界に引合いがされておる。しかるにそのうちの一隻も契約することができない。のどから手が出るほど外貨がほしい現在、わずかその程度のハンデイキヤツプがあるために、六億ドルになんなんとするところの外貨を獲得することができない。しかも日本の造船工業は、御承知ように、先般運輸省の発表いたしました造船界の白書を読みますと、大体年間六十五万トンということになつておりますが、これは現在の従業員が定時間働いてのことでありますから、なお操業度を相当高めますならば、私は百万トン近く可能じやないかと思うのでございます。そうしますと、かりに国内需要を三十万トン消化いたしましても、なお六十数万トンの輸出の余力があるわけでございます。二百六十万トンの引合いと申しますと、これは大体四年間に相当する仕事の量でございます。ただいまのところ外国の例を見てみますと、英国、ドイツあたりでは大体四年間の注文を受けております。その他の小さい国では七年、八年という今後の受注量を擁しておる国があるわけでございまして、日本の造船工業は、繊維工業と並んで技術的にも世界の最高水準を行くものを持つておる。こういう観点から見ました場合に、私は機械輸出の中でも特にこの問題を相当慎重に研究する必要があろうと思います。買手のない品物を売手を探しまわつてこれを売りつけることはなかなかむずかしい。幸いに先ほど申し上げましたような、多数の引合いが寄せられておるわけでございますから、この問題に対して、輸出振興の上から相当慎重な対策というものが私は早急に必要であろうと存ずるのでございます。で、なぜ一〇%前後船価が高くなつておるか、そのたゆに商談が成立しないかと申しますと、他にいろいろ理由はございましよう。しかしながらその一番大きな理由は、日本の鉄鋼メーカーの設備の近代化がされておらない、特に圧延鋼材の設備の近代化がされておらない。このためにいろいろな寸法の割増料であるとか、あるいはまた品質の割増料であるとか、いろいろその他の割増料が、英国あたりでは二百六十円くらいしかかかつておらないのにもかかわらず、日本では一万円近くかかつておる。こういうふうな鉄鋼設備の近代化ができておらないために、特別に払つておる規格料というものがございます。これは鉄鋼設備の近代化、特に圧延施設の近代化さえでき上るならば、これはなくなる臨時的なものでありますから、そういうふうに幸いに二百六十万トン、六億ドルになんなんとするところの注文が来ておる、その造船の外国からの引合いというものが、わずかな臨時の規格料の何らかの解決という問題で、私はここで引合いが相当多数成立するのではないかと考えておるのでございます。それで私この際大蔵大臣にお伺いしたいことは、鉄鋼設備の近代化ができ上るまで臨時の措置として、規格料だけは補助をされるか何か適当な方法で、この分だけ安くなるよう方法をお講じになつても、いわゆる政府のお考えなつておるところの基本的な二重価格制、こういうものとは抵触しないのじやないか、こういうふうに考えておるわけでございます。大蔵大臣はどういうお考えでございましようか。
  269. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 いわゆるプラント輸出の中にも船舶は相当――これはプラントじやありませんけれども、輸出量のうち大部分を占めておることは御承知通りでありまして、私どもも日本で船舶輸出が相当に行われることは希望するところでありますけれども、それがためにあるものに対して補給金制度をとるか、こういうことになりますと、これは私どもは現在のところさよう考えておりません。私の方といたしましても、税制その他の面でやり得る点があると思います。また金利面、金融面でやり得るところがあるのでありますが、また向うの造船会社におきましてももう少しやはり合理化その他のことをやるべきであり、特に鉄鋼会社の方は御承知のごとく、ちよう昭和二十六年から九百十億円でしたか、二十億円かを――私この数字ははつきり記憶いたしませんが、いずれにしても九百億以上であります。九百十億か二十億かで、三箇年間で設備の近代化をはかつておるのでありまして、二十八年で設備の近代化が完了するのであります。そうしますと船舶で四%くらい、棒鋼あるいは今仰せになつた薄鉄、そういうものになると二割ないし二割二、三分くらい下ることになつておりますので、その後に至つてなお合理化その他のことが行われず、価格が非常に高いということがありますれば、そのときにもう少し考えてみたいと思つております。
  270. 河本敏夫

    ○河本委員 この問題は非常に重大でありますから、何らか政府の方でよく虚心坦懐にお話合い願つて、早急に解決せられるように御努力あつてしかるべきだと考えておるわけであります。一言にして申し上げますならば、合理化とかその他のことが、この大きな引合いのがんになつておるのではなしに、日本大蔵大臣自体ががんになつておる、かよう考えられる点がありますので、特に大蔵大臣の賢明なる御健闘をお願いするわけでございます。  それから最後に、たいへん遅くなりまして恐縮でございますが、一言だけ農林大臣にお伺いしたいと思います。  第一に、食糧増産費は本年度の予算では、当初農林省が要求されたよりも相当大幅に削減せられておる。このために先般農林省の御試算になつておつたところの千七百万石の食糧増産計画というものが、この予算では達成することが不可能ではないか、こういうふうに考えるのでございます。それでこのために食糧自給増産五箇年計画が、どういうふうな影響を受けておるかということと、なおこの食糧の自給対策のために、私は相当増額すべきだと考えておりますが、この点に対する大蔵大臣のお考えをお伺いたい。  それから第二には、現在農林省あたりの計画しておられますところのいろいろな増産計画というものは、耕地の拡大であるとかあるいはまた耕地の改良であるとか、いろいろ案を立てられておりますが、私はやはりこの食糧増産の前提をなすものは、米価問題の正しい解決、すなわちわれわれが年来主張しておりますところの二重米価を設定することにある。二重米価をやらなければ、どうしてもほんとうの意味の食糧増産は解決しない、かようにわれわれはかたく信じておるのでございます。先般本委員会におきましてわが党の川崎君の質問に対しまして、農林大臣はこの問題に関しまして、この問題は重大であるから慎重に考慮する、そしてもし二重米価制度を実施するようになるならば、その財源は食管特別会計の予備金があるから、その中から出すようにしてもよろしい、こういうふうな意味の御答弁があつたように記憶いたしておりますが、その後この問題に対する御研究はどの程度進んでおりましようか、あわせてこの点もお伺いしたいと思うのであります。
  271. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答え申し上げますが、農林省で計画いたしておりました食糧増産計画五箇年で、米換算千七百万石の増産計画、それに基きました予算要求が、財政事情で相当削減された。従いまして、その計画は実際的にはいささかずれざるを得ないのでありますが、少くとも五箇年間に千五百六、七十万石の増産は、どうしても実現して行かなければならぬが、荒廃地あるいはつぶれ地等町による減産と、人口増加による需要の増加とをあわせて行きますと、五箇年後に千二、三百万石くらいのやはりマイナスが出て参りますから、それをカバーしてなおかつ自給度を高めて参りますということになると、最小限でも私どもはどうしてもそのくらいは達成しなければならぬと思います。しかしあるいは農地の拡張とか、あるいは土地改良とかいうことを主力として増産計画を立てておりますけれども、同時に私どもとして最も注意しなければならないのは、せつかく農地の拡張をした、干拓あるいは開墾をした、土地改良をした、そういうせつかく造成されあるいは改善せられた耕地を、效率的に増産をあげていただくような、いわゆる営農技術と申しますか、これがかみ合つてそして増産というものが全うして行けるだろうと思います。従いまして、土地改良、耕地の拡張につきましても、大体財政計画としては、私どもとしては三千億近いものを一応研究をいたしておりますけれども、それと同時に、この経営技術の面においては、さらに一段の努力を払わなければならなぬ、そして所期の目的を達して行きたいというよう考えております。  二重米価の問題について、私が先日申し上げましたことについて、多少誤解があろうかと存じますけれども、私は今日の食糧事情が示しておりますように、何と申しましても食糧増産を達成して行きます上には、そういう農地の拡張、改善という問題とあわせて、結局米麦をつくる人は個々の農家でありますから、農家の方々が真に増産意欲を刺激せられて、増産に挺身していただくということがなければ、食糧増産というものはできない。そういう上から行きますと、今日の食糧の流通事情から見ましても、私はやはり今日の統制というものは不自然である。従つてでき得べくんば統制を撤廃して、食糧増産の農民の意欲を刺激して行く。そうして一面においては、食糧流通を円滑にするということが考え方としては私は正しいのじやないか、そう思うのであります。しかしながら実際上今日は二重米価でありまして、統制をはずし得る事情にはございませんので、これを継続して参りますとすれば、このでき秋の米価をどう決定するか、これは食糧管理法の示すところによりまして、米価を決定して参るということでございますが、どちらにいたしましても、新米価決定のときに十分考えて参りたい、こう考えております。     〔「委員長、関連質問」と呼ぶ者あり〕
  272. 河本敏夫

    ○河本委員 先ほど大蔵大臣にも、食糧増産に対する予算増額の問題についてお伺いしておいたのでありますが、その問題にお答え願いまして、そのあとで関連質問を。
  273. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 食糧増産の必要なことは、私もよく認めております。従いまして、私どもも財政の許す限りは増額いたしたいと思いますが、同時に私どもが願うことは、食糧というものは、これをつくる人の意欲が盛んでなければならぬと思います。たとえば田の草一本よけいにとれば、一反で一俵よけいとれる、一尺くわを深く入れれば、一反で一俵よけいとれるということは、農家で言われている通りであります。従つて、やはり増産意欲が徹底して、農村の方々が一層勤勉に働いていただくことが、予算と相まつて増産計画をあげるゆえんなりと考えております。ただ金のみでは増産はできない、かように私は考えている次第でございます。
  274. 河本敏夫

    ○河本委員 なおこの問題につきましては、詳細にお聞きしたい点が多々あるのでございますが、時間の関係上これで終ります。たいへんおそくなりまして恐縮に存じております。
  275. 西村直己

    西村(直)委員 長代理 横路君に関連質問を許しますが、一問だけにしてください。
  276. 横路節雄

    横路委員 農林大臣お尋ねいたしたいのですが、ただいまの御答弁では、千七百五十万石の増産ですか、これについては、やはり農民が生産意欲を向上するような価格というものが一番問題だと思う。それに対して大臣は、いわゆる統制を撤廃して自由販売にすれば、農民の生産意欲を向上するような価格になるのだと、今そういうように御答弁なさつたと思うのですが、私はその大臣の御答弁はちよつとおかしいのではないかと思います。生産意欲を向上する農産物価格というのは、やはり生産費を償う農産物価格、いわゆる米価でなければならぬと思う。その点が一つと、それからもう一つ二重米価の問題は、その農民の生産意欲を向上するための米価の問題と、それに見合ういわゆる消費者価格になつて来ると、当然勤労者の一般の給与ベースの引上げその他にもかかわつて来るので、やはり一般の物価に重大な影響を来すからすえ置く。それから生産者に対しては、生産意欲を向上するために、生産費を償うところの米価にするというのが、私は当然だと思うのですが、どうも今大臣お話ですと、統制さえはずせば価格が上つて、農民の生産意欲が向上するのじやないかというお考えは、ちよつと私には受取れないのですが、その点の私の聞き方が間違つておるのかどうか、お聞きいたしたい。
  277. 保利茂

    ○保利国務大臣 米価決定について、決定要素としてはいろいろ考えられると思いますが、私どもとしては、食糧管理法の示すところによつて、再生産を確保して参るという、あの条項に基いて新米価を決定して行かなければならぬと思います。これは当然のことでありまして、統制をはずすということは、私は一面において農民の生産意欲を向上しつつ、同時に消費者に対しては食糧の流通を円滑にして行きますから、考え方としては私は統制撤廃の方が正しいのではないか、こういう意味を申し上げたのであります。
  278. 西村直己

    西村(直)委員長代理 本日はこの程度にいたしまして、次会は明三日午前十時より開会いたします。  これにて散会いたします。     午後六時四十九分散会