○渡辺
政府委員 租税及び
印紙収入の
予算につきまして
補足説明をいたしたいと思います。
お手元に「
租税及び
印紙収入予算の
説明」というものが御配付申し上げてありまするから、ごらん願いたいと思います。
二ページをごらん願いますと、各税の
内訳が出ております。
昭和二十八
年度予算における
租税及び
印紙収入の
総額の見積りは一番下にございますが、七千百六十億、こういう見積りをしております。この数字は、昨二十七
年度の決算
見込みの数字が大体集まつて参つておりますが、この七千九十四億に比べますと、約六十六億の
増加に
なつております。しかし現行税法による
収入見込みを見ますと、それが八千百八十四億と
なつておりますので、税法改正による減収額は、千二十三億と見積つている次第でございます。もつともこの現行法による
収入見込額といいますのは、そこの備考に書いてございますが、去る十五国会において成立した
減税案及び十六国会においてすでに
物品税法等の
減税案が成立しておりますが、これと、それから今後行おうとする
税制改正が行われなかつた場合における見込額ということで出してございます。
順序といたしまして、今度考えられております
税制改正案の概要を御
説明申し上げたいと思います。その冊子の三十ページに一応要綱が出ております。十五国会におきまして酒の税の税率引下げ、それから本国会におきまして、
物品税の
減税ということがすでに実施なされましたが、これと一連の
関係を持ちまして今後さらに幾つかの
税制改正を行いたい。主たるねらいといたしましては、すでに実施されております臨時特例法による
所得税の軽減
措置を平常化すること、相続税の
負担軽減を行うこと、その他の幾つかの
措置によりまして、
負担の軽減、合理化と
調整、課税の簡素化及び資本蓄積に資するための幾つかの
措置を行いたいという次第でございます。
まず
所得税について申し上げますと、第一にございます事項ば、おおむねすでに行われております臨時特例法を平常化しようということでございます。すなわち、
基礎控除を現行の五万円から六万円に上げる。扶養控除の最初の一人を三万五千円に引上げる。それから和与
所得控除の
最高限度を四万五千円に引上げる。それから社会保険料の控除を行う。税率の最初の下の方を、二万円以下百分の十五、二万円から七万円までを百分の二十にする。これらはいずれも特例法においてすでに実施されておるところでございます。特例法とかわつておりますのは、三百万円を越える
金額につきまして、新たに百分の六十、五百万円を越える
金額につきまして、六十五の税率をつくろうということでございますが、これは別途計画され、考えられております富裕税の廃止と見合うものと考えております。
特例法以外の改正事項につきましては、生命保険料の控除限度四千円を八千円に引上げること、医療費控除につきましては、現在は
所得の百分の十を越える分について、医療控除を認めておりますが、これを
所得の百分の五を越える部分について医療控除を認め、同時に医療費控除の限度額を、現在の十万円から十五万円に引上げたい。
それから第四は、青色申告の、いわゆる専従者控除とわれわれは呼んでおりますが、その
金額がおおむね
基礎控除と見合うものでございますので、
基礎控除と同じように、現行の五万円から六万円に引上げる。同時にその範囲を、現在は十八歳以上と
なつておりますが、これを十五歳以上に拡大しておる。
退職
所得につきましては、その控除額を現行の十五万円から二十万円に引上げる。
有価証券の譲渡
所得に対する
所得税は、これを廃止する。
山林
所得、不動産の譲渡
所得等につきましては、さきの十五国会において提案されたと同じような考え方によりまして山林
所得におきましては、いわゆる五分五乗による総合課税、不動産の譲渡
所得につきましては、
半額計算の総合による総合課税ということを考えております。
それから預貯金利子に対する源泉選択の率を、現行の五十から四十に引下げる。
また匿名組合契約に基く利益の配分について、二割の源泉徴収を行う。
企業組合その他これに準ずる法人に対する課税の適正化をはかる
措置を講ずる。
以上おおむね前会において提案されましたと同じような案を、今国会においても提案するつもりでございます。
次に、
法人税につきましては、企業合理化促進法及び
租税特別
措置法に基く特別償却の範囲を広げる。
それから貸倒準備金、
価格変動準備金制度の拡張
改善をはかる。
貿易商社につきましていわゆるキャンセル準備金の制度をつくる。それから海外支店設置費について特別償却を認める。
なお個人の有価証券の譲渡
所得課税を廃止する機会におきまして従前もやつておりましたような、清算
所得に対する
法人税の課税を行う。
これも十五国会の提案と大体同じでありますが、ただ一点、法人の交際費に対する課税の点につきましては、前国会におきましてもいろいろそれをすることがいいか悪いかという問題と、特にその実施のやり方につきましてまだいろいろなデータの不足どもあり、研究を要する点があるかと思われますし、御批判もございましたので、今回の提案によりましては、一応これの提案をとりやめることにしております。
富裕税につきましては、二十八
年度分から廃止する。
相続税につきましては、従来の累積課税制度とわれわれ呼んでおりますが、人の一生を通じて、その人が相続または贈与によつて得た財産を順々に積み重ねて行きまして課税して行く。これはどうも実行がうまく参らないような、理論倒れの感じがありますので、これをやめまして、相続につきましては、その都度、贈与につきましては、一年分を合算したところによつて贈与税を課そう。
その場合の
基礎控除は、相続税につきましては、現行の三十万円を五十万円に上げる。贈与税につきましては、新たに十万円の控除をつくる。なお現在の相続法の
建前からいいまして、二人ないし三人といつたような方が分割して相続した場合におきましては、それぞれの相続をした方の相続方について課税する。こういう
建前をとつておりまして、昔の遺産税の
建前はとつておりません。
保険金に対する控除、退職金に対する控除を、二十万円から三十万円に上げる。
それから税率を、大体現行の分より相続税について百分の五
程度ずつ軽減しまして、贈与税につきましては、その性格からして多少それより高目にする。
それから相続税の延納を認める範囲を拡大する。おおむね十五国会に提案されましたと同じような改正案を提案するつもりでございます。
それから
砂糖消費税につきましては、たる入れ黒糖を主としました国産の砂糖につきましては、税率はすえ置きますが、分蜜白糖、再製糖等に対するもの、それから
輸入の黒糖等につきましては、税率を二割
程度引上げたいと考えております。これは十五国会提案のものと同じであります。
有価証券取引税につきましては、これは新しく譲渡
所得に対する課税を廃止する機会において、こういうものをつくつたらどうかという考え方で提案するものでございます。構想は十五国会に提案したものと同様でございますが、税率におきましては、前会の提案におきましては、株式の取引について万分の二十、但し証券業者を売渡人とする場合におきましては、万分の八と
なつておりましたが、最近における証券市場の
状況を考えまして今回の提案におきましては、万分の十五、万分の六というふうな税率に
なつております。
第三次再評価につきましても、大体前会、十五国会に提案した構想をそのままとつておりますが、できるだけ再評価を促進したいという考え方で、百分の六の課税は一応いたす考え方でできておりますが、ただ納期につきまして前会の提案は第一次、第二次の再評価と同じように、初
年度において百分の三、第二
年度、第三
年度において百分の一・五ずつ三年間に納付することに
なつてお
つたのでありますが、合同におきましては、これを五年に均分しまして百分の一・二ずつ、従いまして初
年度においては、前会の提案ですと百分の三でありますが、今度は初
年度におきましても百分の一・二ということに規定するという
建前に考えております。
それから
減税国債の場合の
租税の軽減につきましては、個人の場合におきましては、購入額の百分の二十五、法人の場合におきましては、購入額の百分の二十」、但し軽減額については、個人につきましては
所得税額の百分の二十を、法人につきましては、
法人税の年換算額の百分の上十を限度とする。ここまでは前会の提案と同じでございますが、発効の時期が非常に遅れましたので、法人におきましては、半年ずつ決算して行く会社におきましては、購入軽減を受け得る機会が一回になる、半年だけになるということが考えられますので、そうした改正につきましては、その前期の決算の税額と後期の決算の税額を合せたところの二割まで軽減することができるということにかえて提案するつもりであります。
それから
収入印紙の不正使用防止のために、登録税法の改正を行う。
酒税、
物品税の例にならい、その他の間接税についても、利子税の制度を設ける。
その他必要な
整備をはかる。
以上申し上げましたのが、一応今回提案申し上げようと思つております税法の改正案の内容でございます。
これにつきまして、一応各税について見積りがしてございます。同時に
不成立予算の場合におきましては、おおむね昨年の十二月以前の資料によつて計数を整理してお
つたのでございますが、その後新しい計数がわかつて参りましたので、全部新しい計数によつて
計算し直すことをやつております。おもな例について簡単に申し上げます。四ページをごらん願います。
所得税でございますが、現行法による
収入見込額が三千五百九十五億、税法改正による減が九百二十四億、差引二千六百七十一億、このうち源泉
所得税の現行法による分が二千六百五十二億、税法改正による減が七百三十三億、差引千九百十八億、
不成立予算の場合におきましては、現行法による見込額は二千四百五十三億、
税制改正による減が七百三億、差引千七百四十九億と
なつております。この数の異動
関係は、先ほど申しましたように、最近の実績の数字をとつて参りますと、給与額におきまして、当初われわれが見込んでおりました額よりもやや増したというところに出ております。見積りの方法といたしましては、二十七年における給与支給
人員の実績及び給与
金額の実績を
基礎としまして、安本の
国民所得の推移等を考えまして、支給
人員につきまして一応の
増加を考え、同時に給与額の
増加を考えております。給与額の
増加は、おおむね一・四半期ごとに一%ずつ給与がふえて行くということを見積りの
基礎としております。前回の見積りは、二十六年における実績をもとにして、二年飛んだ二十八年を
計算してお
つたのでありますが、今度は二十七年の数字がわかりましたので、それをもとにして
計算しております。なお、こうして出しました数字をもとにしまして、先ほど申し述べましたような改正による増減を差引きましたところが、源泉
所得税におきましては、二十八
年度予算としまして千九百十八億、七ページにございますが、そういう数字に
なつております。
それから申告
所得税につきましても、前回におきましては、二十六年の
課税実績をもとにしまして二十七年、二十八年と二年飛んだ数字を考えてお
つたのでありますが、二十七年の
課税実績の
見込みと申していい数字が大体整理できましたので、今度は二十七年の
課税実績見込みをもとにしまして、全体の見積りをし直してみました。八ページにございますが、
生産、
物価等につきましては、おおむね安本の数字を
基礎にしまして、それぞれの特殊性を考えまして見積りをつくつてございます。
収入歩合等につきましても、最近実績がかわつておるものにつきましては、それぞれの計数をかえ、また滞納額等も、新しい数字が固まつて参りましたので、それぞれそれによつて
計算をし直しております。九ページに、現行法の数字としまして九百四十三億とございますが、この数字は、
不成立予算の場合におきましては、九百八十七億でございました。それから改正法の場合におきましては七百五十三億、
不成立予算の場合におきましては七百五十九億と
なつております。最近の傾向としまして、納税
人員の数が減りまして、一人当り課税される
所得額が多少ふえて行くといつたことのために、現行法ですと
相当減りますが、改正法のもとでは、それほど減らないという結果が出て参つていると思うのであります。
それから次に、
法人税でございますが、
法人税につきましては、
不成立予算の場合におきましては、二十六年の十二月から二十七年の十一月までの申告税額をもとにして
計算しましたが、今回の場合におきましては、二十七年四月から二十八年三月までの申告税額にこれを置きかえまして、同時に最近の会社の決算の
状況などを見まして、
所得率において
相当の減が考えられるのじやないか。大体
法人税で主として顔を出して参りますのは、ごとしの三月の決算と九月の決算、来年の三月の決算は二十九
年度の方へ参りますので、その辺のずれもやはり頭に入れまして、
所得率のところにおきまして、
不成立予算におきましては、大体一割減を考えておりましたが、今回は一割六分減という数字を出しまして、
生産、
物価の相乗積にこの
所得率の
割合をかけました総合が、十二ページに出ておりますが、今回は九一・四、前回はこれが九四・三、こういつたようなことから、
法人税におきましては、
不成立予算におきまして、現行法において千八百九十六億、今回は千八百十一億、やや減に
なつているわけでございます。改正法による減をこれに
見込みまして最終の数字としまして、
法人税の
収入見込み額千七百一億、
不成立予算の場合は千七百六十七億でございます。
それから相続税につきましては、これも前回は二十六
年度の数字をもとにしておりましたが、二十七年分が大体わかりましたので、これを
基礎にし、同時にその後の推移を見まして、
相当の改算を行いまして、前回の場合におきましては現行法三十一億、今回は現行法四十二億、それから
減税後が前回は二十一億、今度は三十二億という計数に直してございます。
それから富裕税につきましては、これはやはり一応最近の数字を見まして改算し直してございます。
それから再評価税につきましては、先ほど申しましたように、第三次再評価における数字が、大分徴収の方法を今度かえましたので、その点などを
考慮いたしまして、一応の見積りのし直しをしております。
それから酒の税でございます。これは二十一ページにございます。すでに三月一日から税率引下げを行つたわけでございますが、当時の考え方といたしまして、酒の税金が下り、酒の値段が下る、それによつて
消費が
相当増加するだろうということを見込んで
収入が立つてございます。その後の酒の出荷の
状況は、比較的順調に進んでいるようでございます。今回の見積りにおきましては、前回の見積りをかえるまでの数字がまだ出ておりませんので、一応前回の数字と同じに見積つてございます。
それから
砂糖消費税でございますが、
砂糖消費税につきましては、最近の引取り
関係の様子がやや悪く
なつておりますので、前回におきましては、現行法による
収入見込みを二百八十七億とふんでございましたが、今回は二百七十億、それから増税の時期が遅れますので、増税による増が前回は五十五億と見ておりましたが、今回は三十二億、差引きまして、
予算額は、前回は三百四十三億で、ございましたが、今回は三百一億に見込んでございます。
それから揮発油税、これは二十五ページにございます。前回は二十七年の六月から十月までのをとつておりましたが、最近の数字を見まして、大分
消費の増がふえているようでございますので、前回のときは百五十八億で、ございましたが、これを百八十六億に見積りをし直してございます。
それから
物品税につきましては、おおむね前回の
見込みをそのままとつておりますが、資料は新しいものによつて検討しております。
減税による減が前回は二十億と考えておりましたが、これは
減税が遅れましたので、今回は減が十六億と見ております。
それからあと取引所税は、大体前回と同じような見積りでございます。
有価証券取引税につきましては、先ほど申しましたように税率が下つておりますることと、それから最近における市ばが
相当沈滞しておりますので、もちろんこれがそう長く続くとは思つておりませんが、取引高について再検討を加えまして、
相当の減があるものとして、
収入の見積りをし直しております。
通行税は、特に申し上げることはございません。
関税でございますが、関税も最近いろいろな
収入が
ちよつと落ちておりますし、さらに関税のかかるような奢侈的なものの
輸入が抑制されようという傾向がありますので、前回は二百四十億と見込んでおりましたのを、一応今度は二百二十五億というふうに見込んでございます。
屯税、それから
印紙収入につきましては、大体最近の資料によつて
計算をし直しましたが、そう大きな違いには
なつておりません。
以上によりましてれ大体間接税、直接税がどんな
関係の
割合になるかということは三十八ページにございます。現行法によりますと直接税が五八・二%、間接税が三九・七%、その他が二一%、今回の改正後におきましては、直接税五二・九%、間接税四四・六%、その他が二・五%、二十七
年度の数字に比べますと、直接税の比率が下りまして、間接税の比率がやや上つておる、こういう姿になります。
なお
国民所得に対する
負担の
関係につきましては、三十九ページにございます。国税のみで一四・八、地方税と合せまして二〇、この
国民所得の数字は、最近の安定後の数字に一応置きかえまして
計算をいたしてみました。
なお
税制改正による個々の
負担につきましては、三十四ページ以下に表がございますから、ごらんを願います。そう御
説明申し上げることもないと思います。
以上をもつて一応の
説明を終ります。