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1953-08-06 第16回国会 衆議院 本会議 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年八月六日(木曜日)  議事日程 第三十六号     午後一時開議   請願  (人事委員会)  1 山口蒲野村の地域給指定に関する請願(第一号)外三千七百七十二請願〔各請願の件名は本号の附録に掲載〕     ――――――――――――― ●本日の会議に付した事件  北海道における豪雨による被害調査の件を水害地緊急対策特別委員会に併せ付託するの件(議長発議)  国際連合捕虜特別委員会第四会期日本政府代表任命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件  へき地教育振興に関する決議案町村金五君外二十四名提出)  治山治水恒久対策確立に関する決議案福田喜東君外二十四名提出)  行政監察特別委員長の同委員会における調査報告  引揚同胞対策審議会設置法の一部を改正する法律案海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員長提出)  請願日程 山口蒲野村の地域給指定に関する請願(第一号)外三千七百七十二請願  岡崎外務大臣相互安全保障計画参加に関する日米交渉経過についての発言  右の発言に対する質疑     午後二時五十三分開議
  2. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これより会議を閉じます。     ―――――――――――――
  3. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) お諮りいたします。今回の北海道における豪雨による被害調査の件を水害地緊急対策特別委員会にあわせ付託いたしたいと存じます。これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつてその通り決しました。
  5. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) お諮りいたします。内閣から、衆議院議員有田八郎君に国際連合捕虜特別委員会第四会期日本政府代表を命ずるため議決を得たいとの申入れがありました。右申入れ通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつてその通り決しました。
  7. 荒舩清十郎

    荒舩清十郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、町村金五君外二十四名提出へき地教育振興に関する決議案は、提出者要求通り委員会審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  8. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  へき地教育振興に関する決議案議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。町村金五君。     〔町村金五君登壇
  10. 町村金五

    町村金五君 ただいま議題となりましたへき地教育振興に関する決議案につきまして、発議者を発表し、趣旨弁明をいたしたいと存じます。  まず最初に決議案を朗読いたします。   へき地教育振興に関する決議案   健康で文化的な最低限度生活と、教育機会均等はともに憲法保障するところであるが、へき地における教育事情は、著しくこの精神に矛盾した状態のままに放置されている。   よつて政府は、へき地住民文化生活向上に資するため、へき地教育振興に関する具体的施策を樹て、すみやかにこれを実施すべき必要がある。   右決議する。     〔拍手〕  次に、この決議案につきまして提案理由を申し述べます。  戦後、わが国は、文化国家たらんことを内外に宣明いたしまして、憲法及び教育基本法においては、近代国家基本的教育政策ともいうべき教育機会均等保障しておりますことは、すでに御承知通りであります。しかるに、このような保障が存するにもかかわらず、いわば忘れられた地域として、経済的に貧困で、かつ文化的にもきわめて沈滞した地域全国至るところに散在しております。これすなわち僻地でありまして、これら人里離れた農山漁村や離れ島は、自然的諸条件の制約により、国家行政からは取残され、一切の近代文化の恩恵からは隔離されております関係上、その学校教育社会教育実情もまことにさんたんたるものがあります。すなわち、僻地にある大部分の学校は、一年から六年までを一学級に編成している単級の学校か、あるいは二箇学年以上を一学級に編成している複式学級学校でありまして、教員は、二役あるいは三役以上を兼ねながら、貧弱な施設設備の中で、ラジオや幻燈もない乏しい教具と教材を用い、きわめて変則的かつ粗雑な教育を行つているのであります。かかる学校では、生徒、児童が満足な知識と人格を体得することができないのは当然でありまして、また一方、これらの地域においては、学校が唯一の文化機関であるにもかかわらず、その学校自体が貧弱なためい住民社会教育がはなはだしく低調であることは申すまでもありません。このような学校が、小学校だけでも全国に約八千校の多きに達している実情でありまして、国家の手がこれらの僻地に及ばぬことは、まことに遺憾千万であると存じます。  かくのごとく、僻地における子弟の教育は見るに忍びない窮状にありますが、これら僻地を愛護し開発するためにも、教育機会均等をはかるためにも、さらに地方文化向上するためにも、この際政府は、この窮乏を直視し、願わくは僻地教育振興に関する総合計画樹立するとともに、学校施設整備設備充実をはかり、教員素質向上待遇改善に適切な施策を行う等、万全の措置を講ぜられんことを強く要望するものであります。  ことに、今日、僻地教員は著しく不足し、また不足しないまでも、その素質は概して低く、その約四〇%は無資格教員であり、残余の教員も事ほとんど老齢教員でありまして、中堅教員はきわめて少い現状であります。これは、不利な条件の累積する僻地には、優秀な教員の誘致が困難なためであり、さらに今日の不合理な大都市偏重地域給制度のごとき、またこの傾向に一層拍車をかける結果と相なつているのであります。従つて政府としては、国家財政窮乏の折ではありますが、手当の増額、教員住宅整備等待遇改善を行い、さらに、優秀なる学芸大学卒業生配置をはかるため、十全の施策を断行されんことを特に切望するものであります。  以上をもつて決議案提出理由といたします。何とぞ本決議案に対し全会一致の御賛同を賜わらんことをお願いする次第であります。(拍手
  11. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。  この際、文部大臣から発言を求められております。これを許します。文部大臣大達茂雄君。     〔国務大臣大達茂雄登壇
  13. 大達茂雄

    国務大臣大達茂雄君) 僻地教育関係いたしまして、この際文部当局として所信を申し上げたいと存じます。  地理的条件、また経済的にも恵まれていないところの離島、山村、その他いわゆる僻地における教育を振興するということは、今日の教育上の重大な問題の一つであります。文部省といたしましては、今後とも僻地における教育施設整備充実、あるいはまた教員住宅整備教員の資質の事向上、その待遇改善ないし教職員の適正配置、これらの点につきまして一層努力をいたしまして、また社会教育方面におきましても総合的な計画をすみやかに樹立いたしまして、もつてただいまの御決議趣旨に沿う所存であります。(拍手
  14. 荒舩清十郎

    荒舩清十郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、福田喜東君外二十四名提出治山治水恒久対策確立に関する決議案は、提出者要求通り委員会審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  15. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議あり事ませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  治山治水恒久対策確立に関する決議案議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。福田喜東君。     〔福田喜東登壇
  17. 福田喜東

    福田喜東君 ただいま議題となりました治山治水恒久対策確立に関する決議案につきまして、提案者を代表して趣旨弁明をいたしたいと存じます。  まず決議の案文を朗読いたします。   治山治水恒久対策確立に関する決議案   近時の深刻なる災害びか発にかんがみ、政府は、早急に治山治水抜本的対策を確立するとともに、左記につき強力なる実施を推進すべきである。     記  1 治山治水計画基礎資料確保のため、関係気象、特に山地雨量観測網を完備する。  2 全国河川流域中、森林事水源農地水力河道都市状況並びに災害記録荒廃状態等を総合した公益上の立場より、重要河川流域を指定し、重点的に治山治水事業を推進する。  3 治山治水上の重要河川水源地帯又は重要地区については、災害の発生を防止するため、保安林整備拡充造林事業拡大実施、山腹、けい流保全事業強化等を総合的且つ計画的に推進する。  4 主要河川上流部又は所要地区には、土砂流失を防止し、河道の安定をはかるため、完ぺきなる砂防施設を行う。  5 治山治水上の重要河川については、従来の河川計画を再検討し、科学的立場から新計画樹立する。  6 流域保全総合的見地からこう水調節のためのダム施設を考慮する。  右決議する。  多年にわたる山林濫伐国土荒廃の結果、水害は相次いで起り、遂に今次西日本近畿に見るがごとき空前の大惨事を惹起し、幾多のとうとい人命を奪い、粒々辛苦せる国土保全の営みを壊滅させましたことは、真に痛恨のきわみであると申さなければなりません。罹災の方に衷心から御同情申し上げる次第であります。  このたびの水害による被害は、西日本の梅雨で約二千億円、近畿の雨で五百億円を越え、計二千五百億円以上の国富をわずか数目の間に喪失し、さらに多数のとうとい犠牲者をも出したという翼は、われわれをして重大な政治的責任を痛感せし事めるのであります。もともとわが国国土は矮小でありますが、今次敗戦により海外の領土を喪失し、しかも八千万を越える厖大な人口を擁しているの事でありまして、祖国再建のためには、国土の利用につき徹底した合理的対策を講じ、一木一草をも生産増強国力向上に役立てなければならないと思うのであります。しかるに、わが国の自然地理的並びに気象的条件から、災害が宿命的なものとなつております。わが国歴史は、まさにかかる災害に対する国民苦闘歴史であると申しても過言ではございません。これらの努力にもかかわらず、いまなお年々歳々千億を越える水害は跡を断たず、あまつさえ今般のごとき大災害を引起しているのであります。私どもは、この事実の前に、党派を超越してその対策に思いをいたし、これに科学的検討を加うべき時期であります。  政府におきましても、これが根本的、恒久的対策樹立を企図していることを承知し、心から賛意を表するのであります。しかし、従来といえども、国土保全災害防除行政施策が必ずしも等閑に付せられていたわけではありません。しかるに、かかわらず、それらの施策が見るべき成果をあげることなく今日に至つた事実は、真の意味での恒久的根本対策がなかつたのであります。それとともに、国民自身の自主的に盛り上る熱意によつて今までの対策が強力に裏づけされておらなかつたためであると思うのであります。従いまして、ただいま提案治山治水恒久対策につきましては、官民一体となり、国土保全治山治水の全国民運動を展開し、この大目的の達成に邁進いたさなければならないと確信いたすものでございます。事次に、決議案内容につきまして少しく御説明申し上げたいと思うのでございます。  対策の第一は、雨量の正確な観測であります。雨量雨量と申しますが、第一に、山岳地の雨の量や、降り方の実態を十分科学的につかんでおらないのでありまして、こんなことでは河川砂防合理的計画が立つはずがありません。以前は森林測候所山地雨量観測行つたと聞いているのでありまするが、行政整理等で今はまつたく廃止されておるわけでございます。今度の水害について、気象台方面でも痛烈にその欠陥を訴えているのでありましてこれこむ恒久策の第一歩であると思います。  対策の第二は、全国河川流域につきまして、森林水源農地水力河道事都市状況等を総合勘案して、国土保全上の重要流域公益上の見地より指定し、そごに治山治水事業を重点的に施行し、これを強力に推進しなければならないのであります。  対策の第三は、治水の要諦は治山にありとする古今の鉄則を表面に打ち出したのであります。今次西日本水害の場合におきまして、洪水の氾濫は、沃野を流るる河川上流、泥土と化しました市街地の背後地を見れば、そこには、きまつて寥々として荒廃した山地がある。また、水害調査の結果報告によりますと、山くずれはいずれも、不良の原野や、林相粗悪の山、あるいは伐採跡の不始末のところに起きているのであります。優良の林地には崩壊も土砂洗出もきわめて少く、特に今回のごとく風を伴わない水害にありましては、これら優良な林相地域災害が非常に少いのであります。これらの事例が、最もよくこの鉄則たる造林必要性を立証しているのであります。河川のうち、下洗部の復旧や各種の施設工事等も急を要することはもちろんですが、これだけでは絶対安心できないのであります。悲惨な水害を再び繰返さないためには、災害対策根源である上流水源山地保全を徹底的に強行すること、これこそ恒久策根本であると深く確信するのであります。そのためには、第一に、造林事業拡大実施することでありまして、現在全国の要造林地は百二十万町歩不良林相人工造林を要するものが百五十万町歩あると聞いております。これらに対する造林事業を速急に実施することが急務であります。特に公益重要河川上流地帯に対しましては、重点的に造林事業を強行しなければなりません。  また、明治三十年森林法制定以来保安林制度があり、現在国有林、民有林合せて二百四十万町歩保安林があります。御承知のごとく、保安林水源涵養土砂流出防止その他の防災のため、公益上の観点から、大臣が指定して山林所有者の自由の施業に制限を加えている制度でありますが、太平洋戦争中、戦争目的遂行のため、あるいは戦後の混乱時における濫伐等のため、林相ははなはだしく荒廃し、保安機能がまつたく低下しておる現状であります。国土保全の根幹ともいうべき重要な保安林行政が常に等閑に付され、事業費人件費も問題にならぬほど僅少である現在、保安林徹底的整備強化のためには、制度的にも十分再検討を加えて、面目を新たにして出直す必要があります。  次に、全国の山くずれ、地すべり等厖大面積であつて、しかも年々の災害でその面積がさらに累加されている状況であります。上流山地土砂流出を防備する最も基礎的な治山事業費もはなはだしく僅少であり、この治山事業に金を出し惜しむことが、結局災害を大にし、ひいては国の財政支出を膨脹させておるという結果になつている現状であります。それゆえ、災害根源を押えるためには、ぜひとも治山事業飛躍的発展をはからなければならないことが、今回の災害の結果一層明らかになつたのであります。  対策の第四としては、現在建設省所管砂防工事も、重要河川上流部に重点を置かねばならぬことをうたつたのであります。特に砂防工事計画は、その上流山地がいかに管理経営され、いかに保全され、また森林奥地開発がどうなるか等の山林状況に即する計画でなければならないことを述べたのであります。  最後に、河川計画においては、従来の計画に全面的再検討を加え、上流状況と下流の産業経済実情と、さらに河道状況とを勘案し、科学的基礎に立脚した河川計画を持つて、初めて流域保全が全うされることを示したわけであります。  以上の諸点は、今次災害にかんがみ、真に国土保全恒久策樹立上、必要不可欠の基本的事項たることを確信するものであります。今日、国際政局の変動は端税すべからざるものがありますが、われわれはまず内を始め、一日も早く治山治水根本対策樹立による一大国民運動を展開し、国土保全を全うし、もつて底の浅い国民経済基礎を強固にするとともに、これによりまして治山治水に関する国家百年の大計を確立すべきときであると確信するものであります。  議員各位の御賛同を心からお願い申し上げ事る次第であります。(拍手
  18. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。(拍手
  20. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 行政監察特別委員長から、同委員会における調査報告をしたいとの申出があります。この際これを許します。行政監察特別委員長吉武惠市君。     〔吉武惠市君登壇
  21. 吉武恵市

    吉武惠市君 本国会において行政監察特別委員会調査いたしました事件は、接収解除貴金属及びダイヤモンド関係事件、及び東京都江東地区区画整理事業関係事件の二つでありますが、このほか、下調査をさせておりますものは、ヘイロン、ヒロポンなどの麻薬、覚醒剤の捜査取締りに関する件、国庫補助金支出に関する件、その他十数件に上つております。  接収解除貴金属及びダイヤモンド関係事件は、戦時国民から買い上げられましたこれらの物資処理経過をめぐつて、世上とかくの疑惑があり、これが真相を明らかにするために、当初衆議院議員世耕弘一君より提案されたものであります。その後、さらに衆議院議員中野四郎君、世耕弘一君の両君から、大蔵省衆議院大蔵委員会事提出した金、銀白金ダイヤモンド資料と、同省原簿との間に重要な記載漏れがあるとして、その調査要求が追加され、次いで第十五国会においては、高木松吉君、中野四郎君、矢尾喜三郎君、久保田鶴松君の四君より各派共同提案として調査要求があり、本年二月十三日より三月四日まで、前内藤委員長のもとに八回にわたり十三名の証人を喚問いたしまして調査を行い、本国会においては、中野四郎君のあらためての提案に基き、七月三日より二十二旧まで七回にわたり、九名の証人及び五名の参考人について調査行つた次第であります。  本件調査経過内容等についての詳細は、別途文書をもつて議長あて報告書提出いたす予定でありますが、ここにその大略を申し上げることにいたします。  まず、ダイヤ買上げ処理でありますが、戦時陸海軍では、新鋭兵器軍需資材として、おもにジヤワ、タイ、ボルネオ、南米等から、工業用ダイヤを主として約四十数万カラツトを購入していたのであります。しかるに、軍需省においては、陸海軍よりの分与を受けることができなかつたので、やむを得ず国内から装飾用ダイヤ供出を求めて、ダイヤモンド工具等に対する将来の需要に応ずる計画を立てたのであります。当時国民は必勝の信念に燃え、特に皇室からも数々の御下渡し品等もありて、当初の予想をはるかに上まわり、約十六万七千カラツト装飾用ダイヤが集まつたことになつております。政府民間からこのダイヤモンド供出させるについては、買上げ機関として交易営団、その代行機関として中央物資活用協会を指定し、これらの機関は、それぞれの自己資金合計一億八千万円をもつて右の数量を買い上げたことになつておるのでありますが、当時の完全な帳簿、伝票等が保存されておらないので、正確な数字を把握することのできないことは、まことに残念なことでございます。  その後、これらのダイヤモンドは、ほとんど戦争のお役に立たない間に終戦となりました関係から、交易営団中央物資活用協会は、進駐車の押収をおそれて一時地方に疎開しようとしたり、あるいは疎開して進駐軍に探知され、差押え、接収された事実もあつたのであります。この間、関係当局者ダイヤの取扱いに対する態度、鑑定、運搬、保管等の過程におきましては、相当量が紛失した疑いもあり、不正事件が行われたかも保しがたい状況にありましたことは、責任ある当事者としてはなはだ遺憾な次第であります。陸海軍関係ダイヤも、終戦時には遭わめてあいまいなる保管や処置がどられ、紛失または横流し等疑惑があるのであります。すなわち、陸海軍とも記録を全部焼却しているので、消費数量が不明であり、従つて接収されたものが残存数量の全部であつたかいなかを的確に把握できないのでありますが、たとえば、陸軍第一造兵廠終戦翌々日宮内省に持参したダイヤ及び白金は、両手でかかえるくらいの重さであつたというのに、一年後連合軍に接収されたときは一貫三百匁であつたという事例や、海軍では、終戦出入り御用商人の那須の別荘に隠しておいたのを、後に連合軍に探知され、接収されている事例などありまして、相当多くの疑点が発見されたのであります。  連合軍日本に進駐するや、国内ダイヤその他貴金属等を接収しましたが、ダイヤ接収総量は約三十万カラツトで、これを日本銀行地下金庫に集めて管理したのでありますが、その管理中、管理官たるマレー大佐ダイヤ相当量を横領した事件があり、その臓品として約五百個のダイヤが同人よりとりもどされ、日本政府の手に返されたのであります。また、接収品のうち掠奪品と判定されたものは、連合軍の手によりオランダ、イギリス、中国等に返還され、さらにわが国産業上必要なものを一部払い下げ、また所有権ありと確認された者にその一部を返還しておるのであります。さらに、連合軍接収ダイヤのすべてを混合した上、一定標準のもとに格付を行い、また評価をしているのであります。  かくして、平和条約発効とともに、名実とともに接収解除となつてダイヤ、金、白金銀等日本政府の手に返還されたのでありますが、その数量は、ダイヤ十六万一千カラツト余、金百二トン余、合金二十六トン余、銀二千三百六十五トン余、白金一トン余であります。目下大蔵省はこれらのダイヤ、金、白金等日本銀行地下金庫保管中であります。  その中で、ダイヤについてはその再鑑定をしたのでありますが、この鑑定については慎重を欠いたものがあつたように思われ、価格も一カラツト四万円というきわめて低廉と思われる評価をしているのであります。また大蔵省が、中央物資活用協会大蔵省を通じて連合軍提出した保有貴金属ダイヤ等の表の一部を抹消して国会報告し、さらに徳兵品として返還された貴石類交易営団に無償で引渡し、中野委員の追究質問によつてこれをとりもどしたことなどは、まことに遺憾の措置と言わざるを得ません。  さて、最後に、当委員会が本事件調査するに至つた主要問題は、前に述べました日本銀行地下金庫に眠る十六万カラツトダイヤ所有権を明らかにして、これをいかに処分するかということでありまして、委員会調査もこの解決を主眼として行われたのであります。言うまでもなく、この供出ダイヤ国民の愛国の至情の結晶にほかなりませんから、この処分も、国民が真に納得し満足するまうな方法によつて処分さるべふ、考えられます。  そこで、第一に問題となりますのは、一体このダイヤ貴金属はだれのものか、国のものであるのが、買上げに当つた機関のものであるのかということ、第二に、連合軍によつてすべてが混合せられてしまつて、だれのダイヤがどれであるということがまつたく判別せず、その中には、民間よりの買上げ以外の恤兵品も、陸海軍買付品も一切まざつてしまつているとき、はたして所有権を主張し得るか、第三に、接収されたという事実が明らかとしても、いかなるものがどのくらいの数量接収されたという証拠がない場合には、所有権の主張はできないのではないか等の諸問題があるわけであります。  そこで、当委員会では、法律上の見解を求めるため、東京大学の我妻、横田、杉村の三教授を参考人として出頭を求め、その意見を聴取したところ、各参考人とも、ダイヤ所有権国家に帰属させ、交易営団中央物資活用協会等に対しては、ダイヤ買上げによつて生じた損失を補償するような立法措置を講ずるのが一番妥当適当であろうとの結論であつたのであります。よつて、本委員会は、以上の事情を検討した結果、一、接収解除ダイヤモンド所有権国家に帰属せしめること。二、交易営団及び中央物資活用協会等が当該物件買上げのため受けた損失については、これを立証せしめた限度内において補償すること。三、国家の所有に帰したこれら物件は適宜に換価処分すること。但し、現品の評価についてはそれぞれの専門家によつて調査すること。四、換価処分による収入金をもつて特別会計を設け、その資金を戦争犠牲者等のために支出すること。五、これが資金の支出については、国会議員、学識経験者をもつて構成する委員会を設置し、これが審議を経て、政府機関をして執行せしめること。以上は、ともに立法措置を講ずることが必要であり、かつ法律によつて措置することによつて違憲の問題も起らないことが、各学者の意見によつても明らかとなつたのであります。なお、本立法措置は議員立法によることが適当であるとの意見があつたのであります。  また、ダイヤモンド以外の貴金属については、さらに調査を継続して、それぞれ適切なる方途を講じたいと存じますが、一応従来の経過報告いたす次第であります。(拍手
  22. 荒舩清十郎

    荒舩清十郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員長提出引揚同胞対策審議会設置法の一部を改正する法律案は、委員会審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  23. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 荒船君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  引揚同胞対策審議会設置法の一部を改正する法律案議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員長山下春江君。     〔山下春江君登壇
  25. 山下春江

    ○山下春江君 ただいま議題となりました引揚同胞対策審議会設置法の一部を改正する法律案提案理由趣旨を御説明いたします。  引揚同胞対策審議会は、第二回国会に衆参両院において議決されました引揚同胞対策に関する決議に基きまして、法律第二百十二号をもつて、昭和二十三年八月から、最初は一年を限つて総理庁に設置され、海外同胞の引揚げ促進、帰還者、遺家族及び留守家族の援護等に関する諸問題につき、民間の陳情を審議し、かつその実情調査して、引揚げ同胞対策を考究いたし、その結果を内閣総理大臣報告して参つたのであります。しかしながら、海外同胞引揚げに関する諸問題はいまだ完全に解決を見ず、情勢の変化とともに困難視されておりましたが、ようやく最近中共地区よりの引揚げ及び外地戦犯の赦免、内地送還とともに、明るい見通しが見られる状況になつて参つたのであります。従つて、この設置法も現在まで五回の改正を重ね、引続いて今日に及んでいるのでありまして、今日までこの審議会で取上げられ、調査した結果、総理大臣報告されました事項は十数件に上り、そのほとんどが政府施策に織り込まれている点にかんがみましても、この審議会の重要性がうかがわれるのであります。  この法律案の要点は、未帰還者留守家族等援護法における政府の未帰還者の帰還促進及び調査究明に対応して、この審議会をさらに三年間存続させるため、本法第七桑中の「施行の後五年」を「施行の後八年」に改め、本法が本年八月で消滅するものをさらに延長しようとするものであります。  独立塚来一年有余になります今日、なお多数の同胞が海外に残留し、故国に帰ることを得ないのは、国民の一大痛心事でありますが、今日、中共地区よりの引揚げ、外地戦犯の赦免及び内地送還の実現並びにソ連地区抑留同胞に対する一縷の明るい見通しが得られるこの機会に、引揚げ問題に関する多年の懸案を解決することは現在の急務であると存するのでありまして、政府は、その責任において、未帰還者の調査究明と帰還促進に努め、国民の憂慮を一掃すべきであります。かかる事情にかんがみ、未帰還者留守家族援護法に対応し、本法適用の妙を発揮せしめるため、さらに本法の有効期間を延長して、この引揚同胞対策審議会を存続する必要があると考えるのであります。  以上がこの法律案趣旨でありまして、当委員会の成案としてここに提出する次第であります。何とぞ御審議の上、すみやかに可決せられんことを切望する次第であります。(拍手
  26. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なん」と呼ぶ者あり〕
  27. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。
  28. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 本日の日程に掲載された請願を一括して議題といたします。
  29. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 各請願は委員長の報告を省略して採択するに御異議ありませんか。     「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて請願はいずれも採択するに決しました。
  31. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 外務大臣から、相互安全保障計画参加に関する日米交渉経過について発言を求められております。この際これを許します。外務大臣岡崎勝男君。     〔国務大臣岡崎勝男君登壇
  32. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) いわゆるMSAの援助の日本に対する適用につきましては、政府は、念のため確かめようとした点及び疑念とする点について、六月二十四日当方から、六月二十六日アメリカ大使からの書簡交換がありまして、政府としては、この回答を研究しました結果、日本としてMSA援助を受けることについてアメリカ側と交渉することが望ましいとの結論に達したのであります。よつて、三十日、本援助に関する協定交渉を提議いたし、必要の準備を整えた上、去る七月十五日に外務省で第一回会談を開催する運びとなつたのであります。  第一回会談開催にあたり、私と米国大使との陳述したことは、大体さきの交換文書の趣旨にのつとつたものでありますが、これは、双方が交渉に臨むにあたり、その根本態度なり構想なりを率直に披瀝したものでありまするから、念のため、まずこれについて簡単に申し述べますと、わが方としましては、第一に、われわれの任務は、世界の平和の確保を助長するために相互の努力を一層有効に連絡し得るとりきめを成立せしめることにあり、第二は、相互安全保障計画の主要な目的は、日本国内の治安と防衛を確保し、自由世界の安全保障の維持、増進に寄与するものであると考える、第三には、相互安全保障計画のもとにおいて、日本は自国の政治的及び経済的安定を害することなしに、自国の防衛力と自由世界の防衛力のために、自国の一般的経済条件の許容する限度において寄与するつもりであること、また第四に、防衛力は安定した経済的基礎の上に築かなければならないということが認識されている以上、日本の防衛能力の増進も、日本の経済の安定と発展の上についてその基礎を置くものでなければならないという点を強調いたし、なお、いわゆる軍事的義務の履行とは、日本の場合には、日米安全保障条約に基いて、すでに日本が引受けた義務履行により充足されるものであると解する旨を述べたのであります。  これに対しまして、米国大使は、主として日本が引受けるべき義務について解釈を加え、MSA援助に関する根本理念について述べたのであります。その要点は、相互安全保障の協定を締結することによつて、日米双方にもたらせられる利益は相互的なものであり、MSA援助を受けると、日本は相互安全保障法第五百十一条同項に列挙してある六つの義務を引受けなければならないと述べ、右の六つの義務のうち、国際間の緊迫の原因を除去するため相互に合意する措置、行動をとるとあるのは、本条項に基く行動は相互の合意により、また双方の利益であると合意されて初めて履行されるもので、強要されるものではないこと、また、日本が受諾するいわゆる軍事的義務とは、日米安全保障条約に基いて、自由に、かつ自発的に日本がすでに引受けた義務の履行であること、日本が自国の防衛力及び自由世界の防衛力の発展及び維持のために全面的寄与を行うこととは、まず自国を強化してみずからを防衛し得るようになることであること、さらに、日本がその防衛能力の発展に必要なるあらゆる合理的な措置をとることとは、日本がその経済的能力を越えて、ただちに治安維持の部隊を増強することを意味するものではなく、防衛力の増強の速度と態様とは、日本政府によつてのみ決定せらるべきものであることを指摘したのであります。また、これらの安全障保法第五百十一条(a)項に規定する六条件は、相互安全保障計画に基いてすでに援助を受けているすべての国が、自由に、かつ自発的に引受けている義務であること、さらに、合衆国は自国の部隊を無期限に駐在させることを欲せず、日本の防衛力増進に従つて日本にある合衆国の部隊を漸減することができるというのがアメリカ政府の期待であり、両国政府の希望はここに合致し得るものであると信ずる旨を述べたのであります。  続いて、MSAに関する双方の会談は、七月二十二日、二十四日、二十七日、三十一日と回を重ね、協定文案、援助の内容などについて交渉をいたして参りました。  まず、協定文案について申しますと、交渉の進捗をはかる意味において、双方事務当局草案とも称すべきものを交換いたしまして、意見の開陳と、これに基く討議を続けて参りました。現在までの進渉状況の概略を申しますと、第一、援助の供与、第二、日本の原材料及び半製品の売渡し、第三、広報活動に関する措置、第四、機密の保持、第五、援助資材に対する免税措置、第六、協定事項の協議及び検討、第七、本協定と安保条約との関係、第八、協定の発効、廃止などに関する最終条項、第九、装備の標準化などの九つの点につきましては、大体において双方の意見が一致を見つつあります。しかしながら、いわゆる顧問団の性格及び取扱い、また相互安全保障法第五百十一条(a)項に掲げられた六つの要件をいかに協定文に盛るかという点、さらにMSA援助と経済安定との関連性についての考え方などに関しましては、まださらに意見を交換する必要がありますので、今後の会談において十分に話合つてみるつもりであります。但し、アメリカのMSA援助は、すでに世界の五十数箇国に供与され、従つて、MSAの協定もおのずからひな型のようなものができておりまするから、今回の日米間の協定におきましても、この範疇を多く出ずるものではないことは自然であります。しかし、協定案自体は、今後会談を重ねた上決定せられるものでありまして、今日いまだこれを具体的に申し上げ得る段階には達しておりません。  次に、援助の内容権ついて申し上げますと、MSA援助の種類は、相互防衛資材及び訓練に関する援助、相互防衛支持援助、相互特別武器計画援助、経済技術援助その他多数国間機構に対する援助等があるわけでありますが、日本に対する援助といたしましては、一九五三年度より五四年度に至るアメリカのMSA予算を見まするに、相互防衛資材及び訓練と呼ばれるもののうち、中国一般地域という項目がこれに該当するものであると考えられまして、主としてこれは一般的に軍事援助と通称されるところのものであります。われわれといたしましては、このいわゆる軍事援助の内容は、完成兵器のみに限られるか、また完成兵器である場合、どの程度わが国に発注することが可能であるかなどの点につき、十分アメリカ側の意向をただすとともに、日本の経済への貢献をなし得る援助であるように話合いを進めて行きたい考えでおります。また初年度において、いわゆる軍事援助以外に、防衛支持援助、すなわち通商経済援助なるものがわが国に可能であるかどうか、もし初年度に不可能であるとしても、次年度以降可能であるかどうかについても十分話合うつもりであります。  なお、今後、アメリカの日本に対する特需、域外買付などは今回の対日援助と深い関連を持つて日本経済に影響するわけでありまするから、今回の交渉におきましても、できるだけこれらの点を明確にして、それによつて日本の経済が当面する貿易の不均衡に対する方途を講ずるとともに、将来の健全なる経済の発展に資したい考えでおるのであります。また、MSA援助のうちの経済技術援助につきましては、アメリカ政府は一九五三、五四年度相互安全保障計画の中におきまして、次のように述べております。すなわち、アジア及び太平洋地域の諸国は、その貿易及び他の自由諸国との間の貿易を拡張することによつて、中国市場の喪失を補填し、お互いの発展に貢献し得る、特に、日本は必要な物資及び市場を東南アジア等に依存しており、そのかわり東南アジア等の開発に必要な資本的施設と技術を供給し得る、日本の将来における経済力はアジアの供給源の開発に依存するところ大であり、アメリカは地域計画の進展を支持する用意があり、これら諸国に対するアメリカの双務的援助は、地域的発展のための必要条件と機会とをそれぞれ考慮に入れるであろうと述べておるのであります。この思想は、いわゆるポイント・フオアと称せらるる経済開発に日本のにない得る役割を示唆しているものと考えるのであります。  最後に、MSA援助の性格につきまして検討を加えてみまするのに、主として次の諸点が特に注意を要するものと考えられるのでありますが、これらにつきましては、すでに今国会における議員各位よりの質疑を通じまして、国民の関心もまたやはり同様の点にあると考えられるのであります。すなわち、第一は、憲法上の疑義、ことにMSA援助により海外派兵の義務が生ずるか、また援助により戦力を保持することとなりはしないか、第二に、援助を受けることによりわが国の自主性を喪失する憂いはないか、第三、何らか新たなる義務を受諾することとなるのではないか、第四、機密保持を要する関係上、わが国戦時中におけるがごとき治安維持法のごときものを再現することとなりはしないか、第五、共産圏諸国との貿易に対し新たなる制限を講ぜられることとなりはしないか、第六、援助を受けることにより、不必要に他国を刺激し国際緊張の種をつくることとなりはしないか等の諸点であるのでありますが、政府といたしましても、これらの諸問題につきましては、もとより慎重に対処すべきものと考えております。  右につきまして私の見解を簡単に申し述べますならば、第一に、憲法上の疑義につきましては、政府としては、形式上はもとより、実質的にも憲法に違反するがごとき協定をつくる意思はごうもないことは申すまでもありません。また実際上も、かかることは杞憂に属するものと信じております。第二に、わが国の自主性の問題でありますが、これは、援助自体が内政干渉の危険をはらむというよりは、むしろ被援助国がいかなる態度でこれを受けるかという点にあると思うのでありまして、この点に関する限り、わが国は自主性喪失の懸念まつたくなきものと信じておるのであります。第三に、新たなる義務の点につきましては、MSAの援助を受ける以上、相互安全保障法に規定されている諸義務を新たに負うことは事実でありますが、種々検討の結果、この新たなる義務は、これを受諾するもさしつかえない種類のものであると考えておるのであります。第四の機密保持につきましては、援助の種類によつては、機密保持の措置をとるため、新たなる法律を要する場合ももちろん想像し得るのでありますが、これは機密保持の必要な限度に限ることもちろんでありまして、戦争中の治安維持法のごとき、国民の権利を不当に制限するがごとき法律を制定する考えのないことは申すまでもありません。第五に、共産圏諸国との貿易制限の問題につきましては、わが国ばすでに自由諸国と協力する意味でこれを実施しているところでありまして、現在以上に制限を強化する必要はないものと考えておるのであります。事実、朝鮮休戦に伴い、この種制限も将来はむしろ緩和の方向に進むものと予想するのであります。第六の不必要に他国を刺激し、国際緊張の種をつくりはしないかとの懸念は、わが国の現在置かれている国際上の立場、またこの立場に基くわが国の政策等の点から見て、かかる緊張の種をつくらぬよう努力すべきはもちろんでありまするから、政府としても、このような誤解を生ぜぬよう、十分の措置をいたす考えであります。しかしながら、MSA援助はすでに世界の五十数箇国が受けているものでありまして、わが国のみ、これを受けることにより、国際緊張の原因をつくると解せられるべきでないことはもちろんであると確信いたします。  以上、問題として特に注意を要する諸点につき、私の見解を述べましたが、今後交渉にあたり、これらの諸点につきましては十分に考慮し、万遺漏なきを期したい考えでおります。  なお、以上の諸点のうち、特にわが国として重要と考えられるもので、しかも協定中に規定を設けることが適当でないと認められる場合におきましては、必要に応じ、正式議事録あるいは議定書、その他適当なる方法によりこれを記録にとどめ、わが国立場を明確化する考えであります。  以上、MSAの交渉の現段階につき所見を申し述べました。政府としましては、すみやかに両国の満足し得るごとき協定に到達したい希望を持つて、今後とも交渉を進める所存であります。(拍手
  33. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 外務大臣発言に対し質疑の通告があります。これを許します。並木芳雄君。     〔並木芳雄君登壇
  34. 並木芳雄

    ○並木芳雄君 私は、ただいま岡崎外務大臣からMSA交渉の経過を承りまして、改進党を代表して、ごく簡単に二、三の質問をいたしたいと存じます。  率直に申しまして、先般来政府がMSA交渉にあたつてとりました態度は、私どもが秘密外交という点を強くついて来たためでございましよう、割にこのたびは経過報告などにおいて率直な態度をとつて来たことは認めなければならないと思います。ただいまの大臣報告も、報告としては単におざなりの報告に終るのではないかと思つたのでございますけれども、従来のやり方よりはやや進歩したということは認めて参つております。しかしながら、そうは申しますけれども、やはり私どもの立場からいたしますと、歯にきぬを差せたところがありますし、なお核心に触れておらないのでありまして、聞いているうちに、これは交渉係の書記がここに来て事務的な報告をやつたにすぎないのではないか、そういう錯覚にも陥つたのであります。  そこで、私は端的に質問をいたします。ただいまの報告の中では、政府が当然持つべきであるという防衛計画の提示について何ら触れておらないのでありますけれども、この点はどうなつているのか、お聞きしたいのであります。私どもは、MSA援助を受けるにあたつては、自衛力漸増という点、あるいは平和条約第五条の解釈からいたしましても、当然独立国日本としては防衛計画を具体的に提示する必要があるものと思い、またそれを迫られるものと考えておるのでございます。これなるがために、先般来政府に対して防衛計画の提示を要求しておつたのでございます。もうそろそろこの辺で政府も防衛計画をわれわれの前に提示する段階に来ておると思つておつたのでございますけれども、ただいまの大臣報告にこの点が全然触れておらないのはどういうわけなのか。岡崎外務大臣は、MSAの交渉をやつて行く上において、防衛計画の提示は必要ないと思つておられるのかど引か。木村大臣もおられますが、木村大臣はこの点どう思つておられるか。私どもは、残念ながら、この点、両大臣の見解の相違を指摘せざるを得ないのであります。岡崎大臣は、防衛計画というものはMSAとは関係がございませんと今まで主張しております。しかるに、木村大臣は、MSAの経過によつては保安隊の性格もかえねばなるまい、名前もかえなければならないかもしれない、よつて保安庁法の改正をする必要が起るとも思う、こう答弁しておるのであります。岡崎大臣はMSAと防衛計画とは関係ないと言い、木村大臣はMSAと当然関係があると言つております。この両大臣の食い違いは、われわれどのように解釈していいのか、この機会に両大臣からはつきり答弁をいただきたいのであります。(拍手)  聞くところによると、岡崎大臣も腹の中では防衛計画の提示の必要であることをさとつておるようでございます。そして、まあ今度は一箇年間だけの計画でいいだろう、五箇年とか十箇年とかいう長期の計画でなくても、一箇年だけの計画を出せばいいだろうという意向を持つておるやに伺いますが、その通りであるかどうか、岡崎大臣の答弁をいただきたいのであります。その場合、はたしてアメリカの方で一箇年だけの防衛計画で満足されると思うかどうか。もし一箇年だけの防衛計画であるというならば、それは単に名前だけ防衛計画であつて、実質上はMSA援助を受けてそれを実施する実施要綱の程度に終ると思うのでありますけれども、もし一箇年の計画を提示すればそれで事足りると岡崎大臣が言われるならば、そう観測する根拠について、この際明らかにしていただきたいと思います。十歩も百歩も譲つて、かりに今回は向うが一箇年だけの防衛計画でいいという場合、政府の持つておるその内容をこの際明らかにしていただきたいのであります。  岡崎大臣は、保安庁法の改正あるいは日本の防衛計画というものはMSAと無関係ではあると言いながらも、その防衛計画、保安庁法の改正などについては、ただいま保安庁の方で研究立案を進めておりますという答弁をはつきりしておるのであります。従つて、この辺でそろそろその計画もでき上つておると思いますので、この際木村大臣から、防衛計画もはつきりさしていただきたいのであります。一箇年だけでなくてもちろんけつこう、五箇年あるいは十箇年計画もできておるならば、この際なるべく具体的に明らかにしていただきたいのであります。  一体、保安隊というものは何万名に増員をして行くのであるか。あるいはその装備はどうなるのか。今度受けるというMSAの援助額は一体一億五、六千万ドルと予想されております。ただいま保安庁が無償で借り受けておる保安、隊の装備がざつと八千万ドル、海上警備隊の装備が七千万ドルであります。そうだとすれば、ちようどそれを合せたような額に相当するくらいしか今度のMSAの援助額はないのであります。しからば、わずかに六百億円足らずのMSA援助を受けて、一体これを日本の防衛計画にどう当てはめて行くのであるか。現在借りておるところの保安隊や海上警備隊の装備というものはそのままであるのかどうか。これはいつまでもそのままにしておくことはできないと思います。古くなつて来れば使えない兵器も多いのでありますから、その兵器装備入れかえの計画はどうなつておるのか、あるいは今までのものはそつくりそのままにしておいて今度受けるMSAの援助は全然新しい装備に振りかえられるのであるかどうか、その場合、今まで借りておつたところの保安隊の装備についてのアメリカとの間のとりきめ、協定というものはどうなるのか、そういう点についても示していただきたいと思うのであります。  なお、先般来木村大臣が言明されておりましたところの、保安隊の名称がかわるかもしれないという、この名称はどのように変更する所存であるのか。さらに、保安庁法の改正はどの程度具体的計画が進められておるのか。昨日も私が保安庁の官房長に質問をいたしましたときに、竹島にもし大韓民国の軍艦が来た場合においても、日本の海上警備隊の艦船はこれを迎え撃つことができないのだ、こういう答弁であります。日本の海上警備隊の船舶は軍艦でないから、国際上の紛争を起すおそれがある、そういう点も考慮して、これに対抗することができないのであるという答弁であります。こういうところに、われわれがつとに、保安隊、海上警備隊に軍隊という性格を与えて、そして日本の自衛力の確立ということをすべきであると政府に迫つておる理由があるのであります。しかるに、先般来、岡崎外務大臣の答弁によつても明らかなごとく、依然政府としては憲法の解釈をかえておらないのであります。初めのうちは、憲法九条は自衛権すらないのではないかというような見解から、だんだんと広まつてつて、自衛力を持つことができるということはおろか、最近では陸軍、海軍、空軍を持つてもよろしいというところまで飛躍してしまつたのであります。陸軍、海軍、空軍を持つても、それが戦力に至らざる限り憲法九条に違反するものではないという解釈をとるに至つたことは、これはあまりに大きな飛躍であつて、この飛躍はそもそもどこから出事て来るのであるか、私どもは岡崎大臣にこの点を明らかにしてもらわなければ承服しがたいのであります。  こういう見地かお考えまとて、先般岡崎大臣は、憲法は改正しない、MSAは賛成である、受けたい、こういうつの上と下とわくの中で、政府と改進党との解釈は同じようなものである、保安隊と改進党の描くところの自衛軍というものは実質的に同じようなものであると思われてもやむを得ないと答弁したのは、これはまつたく岡崎大臣の魔術でります。われわれは、憲法を改正する必要はないのであるという見解をとつておるのに対して、岡崎大臣は、憲法は改正しないのだ、こう言つております。憲法を改正しないのだということと、われわれのように憲法を改正する必要はない、現在のままで自衛軍というものは持てるのであるという考え方には、はつきりした相違があるのであつて、そのはつきりした相違があるにもかかわらず、岡崎大臣は、それを百も承知で、憲法は改正しないというわくの中では同じだと言つたるがごときは、まつたく輿論を惑わすところの説であることを、われわれは指摘せざるを得ないのであります。従つて、この機会に、私どもは、現在の保安庁法であつては、もはやこの険悪なる国際情勢、さらにMSAを受けんとするわが日本立場において事足らざる段階に来ておると思いますので、この点特に木村大臣に対して、保安庁法、保安隊の目的、そういうものの改正について、すつきりした計画をお示し願いたいのであります。事最後に、私は朝鮮の休戦とMSAとの関係について質問いたしたいと思います。ただいまも、この点については、岡崎大臣は朝鮮休戦との関係に触れておられます。私どもは、朝鮮休戦がなるにしても、ならないにしても、この新たなる段階というものは、確かに対共産圏諸国との関係において微妙なものをもたらしたこどを否定することができないと思うのであります。場合によつては、中共の国連加盟という問題も政治会議で取上げられるかもしれません。また、場合によつては、中共の承認という問題も政治会議に上程されるかもしれないのであります。いずれにいたしましてもう共産圏の中共というものは、朝鮮休戦の会談をめぐつて大きく取上げられることは否定することができないのであります。従つて、この際、わが日本といたしましても、あまりに従来の自由主義陣営に立てこもつて、一方をまつこうに対立させるような立場だけを固執しておいてよいかどうか、そういうやり方で、はたしてかわつて行く情勢に対処できるかどうかということに対しては、多少の疑いを抱かざるを得ないのであります。  先般本院において中共貿易振興の決議を上程して可決いたしましたときに、岡崎外務大臣は、従来の態度をやや変更して、今後は中共貿易といえども西欧諸国並に持つて行くべきであるというような言明をして来たことは、一つの進歩であろうと思うのであります。そこで、私は政府に対してお伺いしたい。今度のMSAの協定の内容において、あるいは中共貿易、もつと言葉をぼやして共産圏諸国と言われるかもしれない、あるいはもつと漠然とした言葉で、平和を脅かすような国々、こういう表現でなされるかもしれませんが、いずれの表現によつてなされるにいたしましても、要は、中共貿易というものに対してアメリカがなお従来の態度を固執して、日本に中共貿易の伸展をはからせようとしない、これを阻止しようとする要求が出ておるのではないかと思うのでありますけれども、この点を明らかにしていただきたいのであります。そうして、もしそういう要求が出されておるとするならば、ただいまの岡崎大臣の、これ以上中共貿易制限強化の必要はないと思うとともに、さらに朝鮮休戦の動向によつては、今後中共貿易は緩和の方向に進むのではないかと思われる、こういつた報告とにらみ合せまして、はたして岡崎大臣はあくまでただいまの報告通りこれをがんばつて行くかどうか、中共貿易緩和の方向にがんばり続けて行くかどうか、この機会に確信をお伺いしておきたいのでございます。  いずれにいたしましても、朝鮮休戦をめぐる情勢というものは、MSAの交渉には非常な重要性と関連性を持つております。現にダレス国務長官は大韓民国にあるのであつて、あさつてか、しあさつて日本にも立ち寄れるやに聞いております。昨日でしたか、政府は、ダレス長官が日本にも立ち寄つて、吉田総理あるいは岡崎外務大臣などと会談をする予定であると言明されたはずであります。この機会に、緒方副総理に対して、グレス長官が日本に立ち寄られた場合、ただいま申しましたような防衛計画の問題、あるいは朝鮮休戦において日本は国際連合協力の線において非常に努力を払つておる、その立場上当然代表もしくはオブザーヴァーを送ることのできる立場にあるのでありますから、こういう機会をとらえて、代表またはオブザーヴアーを送るべく要請するようなお考えがないかどうか、その他ダレス長官との間でどういう話合いをされる予定であるか、この際はつきりお聞きしたいと思います。  以上をもつて私の質問を終りたいと思います。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男君登壇
  35. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) お答えをいたします。  まず防衛計画でありますが、先ほども申しました通り、防衛力の増強の速度と態様とは日本政府のみによつて決定せられるものであるということは、米国大使も明らかに述べておるところであります。従いまして、私は、MSAの交渉の要件としては防衛計画は入るまい、こういうことを申しておるのでありまして、また私は、防衛計画の一年の計画とか二年の計画とか、そういうことは申したことがないのであります。いかなる計画を持つかということは、もちろん今後保安庁等の研究によるものと考えております。  なお、援助の内容につきまして、並木君は、わずか六百億というようなことを仰せられたのでありますが、私は、決して六百億という金はわずかというべきものではなくして、日本の防衛力増強についても、これは非常に大きな寄与をなすと思つておるのであります。しかし、これはまだ具体的に話がそこまで進んでおらないのでありまして、六百億になるか幾らになるかということは、まだこれからの話によつてきまるのでありますが、今後とも並木君のお話のような趣旨は十分考慮に入れて交渉いたすつもりでおります。  なお、いわゆる戦力の問題についてのお話でありますが、私が申すのは、憲法で禁止しているのは戦力であります。従つて、戦力に至らざるものを持つことはさしつかえないのであるが、この戦力に至らぎる力を持つ場合に、この名前を何と言うかということは、別に憲法に制限はないので、実は何と名前をつけてもいいわけでありますが、ただ、憲法では交戦権を認めておらないのでありますから、これを軍隊と名づけることが適当であるかどうかというと、私は、はなはだ疑問であろう、こう考えておるのであります。  なお中共貿易につきましては、ただいま私が申した通りでありまするが、この問題については、すでに本院の決議の次第もあるのでありますから、政府としましては、この決議趣旨にのつとつて、今後とも善処いたすつもりでおります。(拍手)     〔国務大臣木村篤太郎君登壇
  36. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 並木君にお答えいたします。  防衛計画と保安庁法改正とは全然別個の問題であります。すなわち、保安隊、警備隊の増員をなさなくとも、現在のままでも、保安庁法の改正によつてその任務、性格がかわるのであります。従つて、私はこの両問題は全然別個に取扱うべきものと考えております。  次に、防衛計画内容を示せというお言葉でありまするが、もちろん、われわれは、MSAの援助とは別個に、一国が独立した以上は、防衛計画を立てなくちやならぬと考えております。しかしながら、防衛計画を立てるについては、一国の財政、技術面、人員の点、あらゆる角度からこれを検討する必要があります。従いまして、関係各省と十分の連絡をとつて、これはつくらなくちやならぬと考えておるのであります。ただ、保安庁といたしましては、ただいま事務的に警備計画をせつかく検討中であります。ただ、その過程におきまして、まだ成案を得ない点でお示しのできないことは、まことに残念と考えております。  次に、保安庁法の改正はどうかということであります。もとより、保安隊、整備隊が直接侵略に対して対処し得るようにするには、ぜひとも保安庁法の改正は必要であろうと考えております。これは国民の御判断に十分にまかせたいと思つております。しからば、どの点について改正を要するかと申しますると、行動、権限、特に保安庁法の第六十一条から七十七条に至るまでの点についての改正を必要とすると考えております。  次に、保安隊の名称の変更いかんという点でありますが、ただいま、まだ保安庁法の改正問題が坂上げられていないのでありますから、保安隊の名称につきましても、これを確定的に申し上げることはできないのであります。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎君登壇
  37. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。  ダレス長官の東京訪問は、まだ事実確定をしておるとは申し上げかねますけれども、もしダレス長官が東京を訪問した際には、おそらく総理大臣、外務大臣と会見の機会もありましようし、その問いろいろな問題について懇談をすることができると考えております。  なお国連に対しましては、すでにオブザーヴアーとして、沢田廉三君が大使の資格をもつてつておることは、御承知通りであります。(拍手
  38. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 穗積七郎君。     〔穗積七郎君登壇
  39. 穗積七郎

    ○穗積七郎君 私は、ただいま報告のありました、いわゆるMSA協定に関しまして、日本社会党を代表して簡潔に質問をいたしたいと存ずる次第であります。  質問の要旨は、一つは、MSA協定に関しまして政府のとらんとする政策上の諸問題についてであります。もう一つは、この協定と関連いたしまして、平和憲法との関連における法律上の疑義についてであります。政策上の根本問題につきましては、内閣を代表いたしまして、まず緒方副総理にお尋ね申し上げたいと存じます。  およそ条約または法律の利害得失を判断いたしますためには、その背後の政治的、経済的諸関係をながめなければならないことは言うまでもありません。今回のMSAのそのよつてつておるとこらの根本的性格は、まず第一に、共産主義諸国に対抗するものである。しかも、その対抗の政策を、武力によつてこれを行わんとするというのが、その根本的特徴であります。最近アメリカの共産主義陣営に対しまする政策は、資本と武力によりまして、しかも挑戦的にこれにいどみかからんとする政策をとつておるのでありますが、このような政策は、すでにわれわれ日本人が過去の歴史において失敗の経験をいたしたところであります。(拍手)反面、ソ連の政策は、いわゆる平和政策によりまして、そのねらわんとするところは、資本主義諸国の経済的な行き詰まりと破綻を待ち、その国民生活の不安定と思想の動揺をもつて、その浸透政策を遂行せんとするものであります。この米ソ二つの政策の対比の上に、われわれが判断いたしますならば、まさに今再軍備による独占資本を強化し、国民生活を破綻に導こうとするMSA協定に伴う政策をとらんとすることは、共産主義を防がんとしてみずから共産主義化への最短距離の道を選ぶものであると、われわれは断ぜざるを得ないのでありますが、緒方副総理の忌憚のない御信念を承りたい。(拍手)  欧州諸国をごらんになつて、どうでありますか。終戦以来アメリカの経済援助を受け、あるいはMSAによります武力援助を受けたこれらの国々が、アメリカから金はとつておりますが、アメリカの政策に対しまして強い批判と反抗の態度をとつておるではありませんか。これまさに、アメリカの資本と武力を過信いたしました古い外交政策に対する反抗と言わずして何でありましようか。(拍手)しかも、われわれが今日立つておりまするアジアの情勢をながめますならば、大東亜戦争の落し子として、アジア民族の間に、民族の解放と、独立と平和を愛好する運動がほうはいとして燃え上りつつあるのであります。この運動が、緒方副総理の目にも耳にも入らないのでありましようか。あの前の戦争当時に、もし日本国内にささやかながら進歩的善意があつたといたしますならば、英、米、仏、オランダの帝国主義支配からアジアを解放し、それらの国々が、搾取、被搾取によらざる、ほんとうの共和社会をつくろうと念願するものでありました。今日ここにおられる緒方副総理並びにこちらにおられる木村長官にいたしましても、みずからそういう善意著たることを信じ、その政策を遂行するためには、日本の古い資本主義的政策をもつてしては、とうていこれを行うことができないという革新的な態度を表明されていたはずである。その緒方、木村両国務大臣が、今日、さきには通商条約を結んでアメリカの経済的な植民地化を許さんとし、今またMSAによりまする武力協定を結んで、日本をアメリカの軍事的な植民地化せんとするその所存は、われわれの了解することのできないところであります、(拍手)一体、国士をもつて誇る緒方、木村両国務大臣が、今日アメリカと、国内の軍事産業の家来となつて、なぜこのような危険を日本に導かんとするものであるか、その所見をお尋ねいたしたい。(拍手)願わくば、自由党を含みまする緒方副総理におかれましても、今からでもおそくありませんから、このMSAの立つておりまする国際政治の動向をはつきり認識されまして、何とぞ思いを翻していただきたいと思うが、その御意思がありやなきや、その御所信を承りたいと思うのであります。  次に、MSA協定の交渉の衝に当つておられる岡崎国務大臣に具体的な質問を申し上げたいと思います。もとより、MSA協定の問題の焦点は、一つは、これを受けることによつて、われわれがいかなる義務を負うかということであります。もう一つは、それを受けることによつて、われわれがいかなる経済的利益を受けるかという二点にあると存じます。  まず第一に、軍事的義務の問題につきまして、岡崎外相は、当初今国会におきまして、安保条約以上の義務を負うものではないということを再々言われたのでありますが、その後MSA交渉の進むに従つて、協定の条文に書く書かぬは別といたしまして、それ以上の、第一に兵力漸増の義務を負うことになるのであります。続いて、侵略戦争に対しまして、これを防衛するものはアメリカの軍隊であり、日本の保安隊その他の実力組織は国内の治安を守るものに限るということを再々言われたにかかわらず、今日になりますと、これに対しまして、われわれは自衛戦争を行うことができ、行うことが条約に義務づけられないが、われわれの自主的判断によつて、アメリカ側からこれは許されるであろうという考えを明らかにされたのであります。今日の中間報告を承りましても、この軍事的義務の問題に対して、何ら新しい明確な御報告がございません。  日本側は、交渉にあたつて国民を欺瞞するために、日本の自衛力は経済的安定が第一であるということを主張した。それに対するアメリカ側の口上書の返答の焦点はどこにあるかといえば、MSA五百十一条の(a)項に規定する義務はすべて日本が負わなければならぬという点と、もう一つは、国際連合の憲章を引きまして、「個別的または集団的自衛の固有の権利」を強く主張しておるのであります。このことは、日本の平和憲法を顧慮いたしましたアメリカ側といたしましては、軍隊という名を使い、あるいは防衛戦争という言葉を使わないまでも、常に伏線として主張しておる二点である。そうでありますならば、アメリカの政策として当然考えられますものは、MSAの協定に続いて来るものは、太平洋地域におきます軍事同盟協定以来の何ものでもないと存ずるのであります。(拍手)そのための伏線が、この五百十一条の(a)項の義務の強調であり、あるいは集団的自衛の固有の権利の主張であるのであります。岡崎国務大臣がもし外務省の一属吏であるといたしますならば、向うから具体的交渉のないことに対しまして、これを論ずることはしなくてもよいでありましようが、いやしくも日本の将来の運命を担当する外務大臣として考えるならば、こういうアメリカ側の政治的意図を見破らずしてMSA協定を結ぶということは言語道断であり、日本の将来の国民に対する無責任はぬぐうことはできないのであります。(拍手)その点について見解を明らかにしていただ寒い。われわれの疑問と不安に対し、何ら心配がないという確証を、今まで交渉の過程において御報告がございませんでした。今日もありませんでした。これを明確にしていただきたいと思うのであります。  次に、経済上の利益の問題でございます。これは、外務委員会におきましても、幾たびか、早くからその経済的利益の計算をわれわれ票誓いうことを言うたのでありますが、今日に至るまで、何ら、これを示していない。これを無視し、この計算なくしてMSAの協定を受けるかどうかという判断をすることは、とうてい考えられないところでありますので、これを受けんとされるならば、まず先の軍事的義務がないという保証を示すとともに、一方においては経済的利益がどれだけあるかということを、数字をもつて明確に示すべきであると私は信ずるものであります。(拍手)特に、この休会中にどんどんと進められるであろうところのMSA交渉にあたつて、われわれは議会の良識と責任をもつて、この際この席上において、明らかに経済的利益の計算を示していただきたいというのである。もとより、今後の見通しでありますから、概算でけつこうであります。ところが、今まで明らかになりましたところは、アメリカ側の経済的援助があるということを盛んに言いながら、実は防衛資材の援助、これはもとより多く完成武器であろうと思いますが、もう一つは、訓練による軍事的援助以外の何ものも、具体的にはわれわれに約束されることができないではないか。このようなことでMSA協定を受けることはできない。  さらに域外買付の問題に対しましても、域外買付という言葉はあるが、一体具体的にどれだけを見込んでおられるか、はつきり伺つていないのでありす。ここでわれわれが、はなはだずさんでありますが、概算してみますならば、もしMSA援助を受けない場合の想定に立つて見ましても、朝鮮の駐兵によるもの、これは当面継続されるものと考えられますから、おそらくは、それによりまして、前年度の半分としまして一億五千万ドルの日本に対する買付が考えられる。朝鮮復興のためのものは、五千万ドルは計算として見ることができると思います。それから、安全保障条約分担金一億五千万ドル、駐留軍の個人的消費二億ドル見当を計算してみますと、合計して約五億五千万ドルになります。さらに域外買付の分でありますが、これは日本がMSAを受けない場合におきましても、アメリカが今日のアジアにおける立場といたしまして、日本を放棄し得ない立場に立ちますならば、おそらくは一億五千万ドルから二億ドルの買付はございましよう。そういたしますと、七億五千万ドルの国際収支における受取り勘定は、MSA援助を受けずとも推測することができる。ところが、一方、これを受けましたといたしましても、おそらくは、さきに述べました軍事的援助を――消極的なる利益でありますが、これが一億ドルないしば山高見積つて一億二千万ドル、これくらいであります。ところが、二十九年度にはおそらく二億数千万ドル、三十年度には五億ドル近くになると岡崎国務大臣は答えられるかもしれません。その当時になりますれば、駐留軍の消費は一方において減少いたします。かくのごとくして、われわれが概算してみますならば、巨大な軍事的義務を負い、あるいは経済的な植民地化の危険を冒しながら、受けんとする経済的利益というものは、国際収支の上におきまして、ひいき目に見ましても一億ドル前後しか見積りができないのであります。このような状態に対しまして、岡崎国務大臣の正確なる見積りをお示しいただきたいと思うのであります。  さらに、この経済的利益につきましては先ほど来お話がありましたが、中共並びに東南アジア地域との貿易問題であります。ペルーが先般結びましたMSA協定によりますと、両国の政府は西半球の安全を脅かす諸国との貿易制限措置を相協力して講ずるという意味の条文がございます。これは、ペルーに限らず、その他の国との条約の中にも散見することができますが、幾たびかこの問題に対して今まで岡崎国務大臣に御質問したが、なおかつ今日といえどもこれに明確なる答えをしていただいておらぬ。これに対しまして、はたして言方ごとく、中共貿易がアメリカとの協議なくして自由にすることができるという明確なる答弁をしていただきたいのであります。しかも、先般この本会議におきまして中共貿易促進決議をいたし、岡崎国務大臣は、少くとも西欧並にこれを推進することを約束された。この間に立つて、いかにこれを処理されるつもりであるか、岡崎外相の所信と将来への見通しについて、責任ある答弁をお願いいたしたいのであります。  先般も再々論ぜられましたところでありますが、すでに日本の吉田政府が台湾政権を承認いたしまして、共産主義諸国を相手にせずという声明を出しましたときに、かつての近衛の蒋介石を相手にせずの声明と並び称せられて、そして英国においてすら、日本の外交は日本の経済をみずから破滅の道に導きつつあるという批評をいたしております。この批評は、言うまでもなく共産主義諸国からの批評ではございません。この反省に立つて明確なる答弁をしていただきたい。(拍手)  その次に、国内問題に関連いたしまして、先ほどお話のありました顧問団の設置に伴いまする内政干渉の危惧でございます。これは受けました援助によりまする生産計画実施に対する干渉、予算編成上の干渉、軍事技術上の指導に名をかる干渉、あるいはまたその他の軍事義務を負わさしめる、これを施行するための干渉、これらのものに対して心配はないと言われましたが、はたして心配のないような確たる向うからの約束や、あるいは文書をお受取わになつておるかどうか、その点を明らかにしていただきたいのであります。  かくのごとくして、一括して政策上の問題をながめますならば、まさに日本の経済的利益と防衛力の漸増の利益のために受けんとすると政府の言つておるMSA協定は、実はそうではなくて、日本を隷属と戦争への危機に導くものである、日本経済の自立を危うくするものであります。  次に、明確にしていただきたいと思います点は、憲法との関係でございます。今や国際的承認のもとに、しかもその礼讃のうちにでき上りました日本の平和憲法が、安保条約以来、特にMSA協定を受けることによりまして、まさに破られんとする累卵の危うきに陥つて来ているのであります。外交政策上のことにつきましては、政党幸たは個人の間におきまして意見の相違がございましようが、法律の問題につきましては、客観的に厳粛にこれを解釈すべきでありまして、特に基本法であります憲法においてしかりであります。特に、私はこの問題について木村長官にお尋ねいたします。木村長官は、憲法制定当時、司法大臣であられた。今日はこの平和憲法を破る危険の立場に立つ、ている保安庁長官である。一閣僚の立場にとらわれることなしに、真摯なる法律家として、真に法律の尊厳を愛し、国民の将来における遵法の精神を確立せんとされるならば、あなたの言う国士の立場に立つて、明確なる責任ある御答弁をお願いいたします。  およそ憲法の解釈は、九条の字句の問題だけではございません。前文並びに法体系全体との関連において、正確に解釈をしなければならないことは言うまでもないのであります。そうしてみますならば、九条におきまして自衛軍を放棄し、あるいは自衛戦争も完全に放棄する、いわゆる絶対平和主義の思想によつてこれが貫かれていることは言うまでもありません。そのことはこの憲法の国際的な法源でありましたポツダム宣言を初めとする日本管理方針の中にも明確にうたわれております。当時の内閣は今日の吉田内閣そのものでありますが、その吉田首相が、昭和二十一年の六月二十六日、続いて後にもまた二十四年十一月八日この本会議におきまして、そのことを明確にいたしております。さらに、当時の文部大臣であり、今日法律の権威を守るべき立場に立つている最高裁判所の田中耕太郎氏は、当時、昭和二十一年七月十五日の憲法審議委員会におきまして、「不正義により侵略戦争に対してもわれわれは実力をもつては抵抗しないことがこの憲法の精神として」と明確に言われているのであります。ところが、二十五年に朝鮮戦争が起きまして、あくる年のマツカーサーの声明以来これをバツク、ボーンといたしまして、日本の吉田内閣は、次々に自衛権あるいは自衛軍、あるいは自衛的な戦闘行為を認める拡大解釈を、かつてに、不当にいたして今日に至つております。かくのごときとは、われわれは断じて許すことができない。日本憲法の尊厳がこれを許しません。  そこで、私は木村大臣にお尋ねいたしますが、先ほどのような軍事的援助を中心とするMSAの法律そのものの性格が、すでに憲法の精神と相反するものである、まつたく対立するものであると私は理解いたしますが、木村国務大臣法律家としての御所見を承りたい。ところが、あるいは自衛戦争を認め、または自衛軍を存置することができる、それは憲法を歌正せずしてできるというようなことを、木村司法大臣にして、なおかつ談話をもつてつておられるが、われわれは、当時の司法大臣のために惜しみ、心外とするものでございます。もし自衛戦争の権限があるといたしまするならば、憲法のどこかに宣戦の布告と統帥権の問題が規定されていなければならないはずであります。
  40. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 穗積七郎君に申し上げますが、申合せの時間が大分過ぎておりますから、なるべく簡単にお願い申し上げます。
  41. 穗積七郎

    ○穗積七郎君(続) 木村保安庁長官が、もし自衛戦闘行為を認めると言われるならば、そうして保安庁注の改正をされんとするならば、どこに一体法規的な根拠を求められるか。憲法と矛盾し、しかも刑法の八十一条から九十四条に至ります中立を侵す罪を規定した条項があるのであります。これらの関係におきまして、木村元司法大臣憲法と防衛力増強が抵触する点についての明確なる御所見を承りたい。  最後に、ただ一点だけ岡崎国務大臣にお尋ねいたします。このMSA協定の問題は、先ほど来申しましたように非常に重要でありますので、これの協定調印の事前に国会の承認を受けて、そうして言われるごとく公明正大な外交の実をあげる御所信はないかどうか承りたい。第二の点は、もし不幸にいたしまして、突くの毒麦呈する、この憲法に反します条約が結ばれましたときに、憲法に反する条約と憲法との関係について、将来のためにこの際明確なる御答弁をいただきたい。政府の法制局からは、憲法に反します条約は、もとよりこれは憲法が優先するのであるから、憲法に違反する条約は、憲法を拘束することなしに、この条約を改訂しなければならぬという、責任ある答弁をいただいておりますが、これでさしつかえなきかどうか、重ねて岡崎国務大臣の御所信をお伺いする次第であります。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎君登壇
  42. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 穂積君にお答えいたします。  国の防衛についての考え方は、第二次世界大戦を通じて非常に私は変化をしておると思います。それは主として兵器の飛躍的進歩の結果であろうと考えますが、飛行機の非常なる進歩あるいは原子爆弾の発明等によりまして、国の防衛というものが非常にかわつて参つた。その思想的な現われが相互安全保障の考え方であります。それは、今後の戦争におきましては、攻撃も集団的になり、従つて防衛も集団的にならざるを得ないというところに基いておると思うのであります。そういう意味におきまして、日本が今日MSAを受諾することは、何ら国の主権を動揺させるものではないと考えます。それをそうでないと考えるのは、国民的の自信が起りない。私は、ただそれであればあるだけ、今後におきまして民族的の自主性というものを、国民をあげて、国民の協力によつてますます高めて行かなければならないと考えるのであります。その点におきましては、穂積君とおそらく同じ考えを持つておると存じます。  それから、調印前に国会の承認を求めろという御意見でありましたが、これは条約の結び方によりまして、かりに調印後に国会の承認を求めることとなりましても、国会の批准なしには効力を発生いたさないのでありますから、この点、私は決して国の自主権を侵すことはないと考えます。  それから、憲法に反する条約ができはしないかという御意見のようでありましたが、これは、政府といたしましては、憲法に反する条約は絶対に締結する所存はございません。  なお、この機会に、先ほど並木君の御質問に、私ちよつと意味を取違えてはなはだ失礼いたしましたが、韓国の問題につきまして、政治会議にオブザーヴアーを出す話をダレス長官とする意思はないかというお話であつたそうであります。これを私取違えまして、はなはだ失礼いたしましたが、政治会議の構成がまだ何ともきまつておりませんし、従つて今具体的のことを申し上げることができてませんが、いずれにいたしましても、日本立場を何らかの方法によつて十分に政治会議に反映さして参りたい、かように考えます。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男君登壇
  43. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) お答えをいたします。  兵力を増強する義務を負うであろうということでありますが、この兵力をといいましても、ただいまの保安隊をどういうふうにやるか、その増強の時期とか態様とかいうものは、日本政府のみがきめる問題であるということは、先ほど申した通りであります。  なお、直接侵略に対する行動をとるとか、あるいは軍事同盟に入るのじやないかというお話でありますが、これは日本政府日本国民が決定する問題でありまして、この交渉等によつて直接どうということはないのであります。なお、MSAの援助を受けることにあたりましての利益は何であるかというお話でありますが、これはかりに完成兵器だけを日本で受けるといたしましても、保安隊等に必要なる武器を国内で調達することを考えますれば、これは多大の援助になるわけであります。もちろん、域外買付が今後どうなるかということは、だんだん交渉をいたしてみてからでないとはつきりいたしません。MSA援助を受けなくても域外買付がなくならないだろうということは、私もそう考えておりますが、ただMSA援助を受けないとすれば、この買付は増加しないのみならず、おそらくだんだん減つて行くであろうとも思われるのであります、穂積君、域外買付その他で、MSA援助を受けなくても、七億何千万ドルになるだろうとおつしやいましたが、この根拠ははなはだ楽観点でありまして、それほどになるとは私は考えておりません。  それから中共貿易につきましては、先般の本院の決議の際も私は申し述べたのでありますが、米国のみならず、自由諸国と十分協議をいたしまして、そうしてこの決議趣旨に沿うように善処いたしたい、こういう考えであります。  なお、MSAの顧問団につきまして、内政干渉になるのではないかというお話でありますが、顧問団の任務としましては、たとえば軍用宗成品に関する計画あるいは調達、供給及び輸出等に関して、米国の陸海空軍の三軍の監督及び調整並びに軍事訓練計画実施等がおもなるものでありまして、これから見まして、特に内政干渉になるとは信じられないのでありますが、この点は十分政府としても注意するつもりでおります。(拍手)     〔国務大臣木村篤太郎君登壇
  44. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 穂積君にお答えいたします。  MSA援助を受くることが日本憲法に抵触しやしないかというお尋ねであります。私は断じてさような事実はなし、こう考えております。と申しますのは、MSA援助を受くるにあたつて、今後日本は防衛力をどういうぐあいに漸増して行くかということは、日本独自の見解によつてやるのでありまして、アメリカにおいても、決して日本の国情を無視してこれを押しつけようとするものではありません。従いまして、われわれは、日本憲法の許す範囲内においてこれを漸増しようとするのであります。決して憲法に違反するものではないと考えております。  次に自衛力の問題でありますが、憲漁第九条第一項においては、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇と、武力の行使は、国際紛争解決の手段としては永久にこれを放棄する、こういうことになつておる。この裏から見ますると、決して自衛権を放棄したものではないのであります。すなわち、国連憲章の第五十一条におきましても、平和条約第五条におきましても、日本の自衛権等は認めておるのであります。従いまして、この自衛権の裏づけである自衛力を持つことは、決して日本憲法に違反しないとわれわれは確信しておる次第であります、(拍手
  45. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 松千忠久君。     〔松平忠久君登壇
  46. 松平忠久

    ○松平忠久君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま政府から中間的説明がありましたMSAの適用について若干の質疑をいたして、政府の所信をたださんとするものであります。  申すまでもなく、わが国がMSAに基く援助を受けるかいなかということは、非武装、不戦の憲法を持つわが国としては、その国家的性格に重大なる影響を及ぼす問題であつて憲法制定以来の重大なる案件であると存ずるのであります。(拍手)本問題は、ただ単に保安隊に対してアメリカから完成兵器を貸与するとか、あるいはまた朝鮮特需の減少にかわつてわが国兵器生産に対する援助を行うものであるとかいうように、簡単に片づけるわけには参らないのであります。本問題については、本国会当初から、種々の角度から質疑応答がありまして、今日までいろいろ論議が繰返されておつたのでありますけれども、政府の態度は、今まで終始一貫、交渉の途中にあるという理由をもつて、知らぬ存ぜぬ一点ばりでありまして、ただいまようやく中間的説明があつたのでありますが、ただいまの外務大臣の説明によつても、MSA援助の性質、並びにこの援助の条約の締結の結果起るべきわが国の政治経済の重大なる変化、この重大なる変化に対してもきわめて安易な説明を加えておるにすぎなかつたことは、きわめて遺憾とするものであります。(拍手)いかに政府が詭弁を弄し、あるいは曲一言をもつて説明されても、このMSA、すなわちミユーチユアル・セキユリテイ・アクト、このアメリカの法律、この法律に基いて締結せられる日米間の条約によつて具体的な援助が行われるのであります。従つて、MSA第二条による「自由世界の安全保障並びに個別的及び集団的な防衛」の強化を目的とするという、この目的を変更することはできないのであります。また、被援助国は、これまた同法の第五百十一条(a)項による数々の条件を守らなければならない。これも、ただいま外務大臣が明言したところであります。  そこで、まず第一にお尋ねしたい点は、この被援助国たるわが国は、第五百十一条の(a)項のこの約束をした場合において、政府の解釈によりますと、これは憲法の違反にならない、こういうようなことを言つておられますが、日本は一体、このアメリカの法律に基いて締結するところのこの条約の解釈というものを、一方的にアメリカに押しつけることができるのかどうか。私は、アメリカの法律に基いて締結されるところの条約の解釈というものは、アメリカの法律の精神によつて解釈せられるべきものと思うのであります。(拍手従つて政府のこの一方的な解釈というものは、アメリカに押しつけることができるかどうか。またアメリカと日本の双方の解釈が相違を来した場合においては、いずれの解釈をとるのであるか。今日、ダレスも、先般の新聞報道によると、三十五万の自衛軍というものを日本に持たせるということを言つておる。そういつたカアメリカの解釈に対して、日本は、これは兵力を増強しない、自衛力、軍隊の数を増強するのではない、質的増強をはかるのだということを言つております。そういつた解釈の相違というものは、一体どれがほんとうであるか、この点について、私はまず第一に政府の明快なる答弁を要求するものであります。  ことに重大なる点ば、先ほど同僚議員からも質問がありましたが、この五百十一条の(a)の第(三)には、すなわち「米国が一方の当事国である多辺的又は双務的の協定又は条約に基いて自国が受諾した軍事的義務を履行すること。」、こういう規定をされておるのでありまして、これは先ほどの同僚議員の御指摘の通り、北大西洋同盟条約のごときものを太平洋方面にもつくるということを意図しておるのであります。かかる場合において、われわれの解釈によれば、これは、わが国がこの軍事的義務を負うことであつて従つてわが国は米国が参加するところの太平洋同盟条約というようなものができる場合においては、いやでもおうでも自動的にこれに加盟する義務がある、こういうふうに思うのであります。先ほどの外務大臣の説明によつては、そういうことはないという御答弁のようでありましたけれども、私は、この点は日本の将来にとつてきわめて重大な問題であると思いますので、もう一度明確なる所見を承りたいと存ずるのであります。(拍手)  次に、援助の実現に関しては、これはまた同法律の定めるところによつて、いわゆるカントリー・チーム、このもとに種々の顧問団が編成され、日本国内の各地に設置せられて、これら顧問団が日本の軍事、政治、経済に容喙あるいは干渉できるという法的根拠を援助条約によつて規定されるのではないか、こういうふうに思うのであります。条約も法律でありまするから、条約も合意によつて成立するものであります。従つて日本政府がもしそういう法的根拠を与えるというのであるならば、これは、顧問団が当然そういう内政干渉権もしくは容喙権を持つわけでありますが、政府は一体、この顧問団にどういう法的根拠を与えるか、どの程度にこれを縮小する勇気と自信があるか、これをお伺いしたいのであります。顧問団の権限のいかんによりましては、私は、不完全なる独立国がさらに一層不完全なるものになるということをおそれるのであります。従つて、MSA援助は、単に一億数千万ドルの軍事援助をわが国が受ける、その代償に違憲行為を政府みずから犯し、わが国の独立をますます不完全なものにするという約束をしなければならない、身売りをする約束をしなければならぬ、こういうふうに考えるのであります。  次に、MSAの目的の一つとして、軍事的、技術的な援助があります。先ほどの外務大臣の中間報告の中におきまして、ポイント・フオアに日本の参加の示唆ということがありました。また中共貿易の緩和に努力するというようなお話があつたのであります。私は、日本の再軍備というものを論ずるにあたつて国民が非常なる不満を持つているということを、政府はきわめて率直に認識をしてもらいたいと思うのであります。どういう不満を持つているかと申しますと、アメリカの日本に対する考え方というものに対して、一体政府はいかに努力をして、国民の感情、国民の気持といろものをアメリカに伝えたか、この点であります。再軍備の問題についての素朴な国民的な感情というものは、一体アメリカが日本にあの憲法を押しつけて、そうして非武装、不戦の憲法をつくらしたのではないか、それをアメリカが、御都合主義に、今度はみずから再軍備を日本に迫つて来る、こういうふうに国民は考えておるのであります。私は、それは率直なる国民の気持であろうと思う。(拍手)そういう国民の感情を、政府は、これを率直にアメリカに伝えて、日本人の心理をアメリカ人をして了解させる義務があるのであります。そういう義務を、一体政府はまじめに果しておるかどうか、非常に疑問であります。かつて、この国会におきましても、占領中において、アメリカのガリオアあるいはイロアの資金の援助に対して感謝の決議文をつくつておる。その当時感謝しておるこの援助が、これは実はくれたものではなくて貸したものだということを言つております。しかも、日本が再軍備をするなら、それはくれてもいいということを言つているではありませんか。そういつたアメリカの、日本人の心理を了解しないやり方に対して、一体政府はアメリカに対してどういう手を打つておるか、私は、それが一番国民の憤懣しておる感情ではないかと思うのであります。そういう国民の素朴な感情に対して、今日まで政府がいかなる処置をとつて来たか、これについてお伺いをしたいのであります。  最後に、条約と国会審議の問題でありますけれども、今日、国民は、政府が弱腰である、軟弱外交をしておるということを心配しておるのであります。自由党政府の外交は、一体どこを向いて外交をしておるか、国内に向つて外交をしているのではないか、国民に向つて押しつけの外交をしているのではないかということを非難しているのであります。(拍手)自由党政府は、少しばかりの援助ほしさに、言うべきことを遠慮して言わず、米国の意のままになつておる、国民はこれを懸念しておるのであります。政府の今日までの対米外交は、私はこれを裏書きするものがあるのではないかと思うのであります。MSAに関しても、国民は同様の懸念を持つておりまして、政府は一日も早くその内容国民の前に示さなければならない、そうしてこれを解明しなければならない。しかるに、今日――ようやく明日をもつて国会が終らんとする今日、ただいま若干の中間的報告があつたのであります。国民は、この政府の秘密性に対して、おそらく憤瀬を抱いておるものが少くないと思うのであります。このような重大な問題は、国会を通じて、国民にその真相を訴えて、そうして国民的な背景をもつて交渉に当らなければならぬ。(拍手)今日、日本は武力がない、外交は何をもつてやるか、いかなる力をもつてやるか、私はそれは輿論の力をもつてやるより方法はないと思います。(拍手)この国民の感情に訴え、国民の輿論を喚起してアメリカに当るという態勢を整えなければならぬ。それには、まず秘密独善外交をやめて、そうして政府の所信を率直に国民に訴えて、真剣に国民とともにこれを考慮するという態度に出られなければならぬのであります。政府は、はたして国民のこの要望にこたえて、条約の草案を国会にかけ、事前審議をするかどうか。先ほど緒方副総理からも話がありましたが、一体政府の考えにおいては、事前審議にかけるか、つまり条約をどういう方式で結ぶかということは、アメリカと相談の上で決定するのであるかどうかということを承りたいのであります。  以上数点について、政府の率直にしてかつ国民を納得させるに足るような答弁を要求するものであります。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男君登壇
  47. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) アメリカの法律の解釈はアメリカがするんじやないか、これはその通りであります。従いまして、政府は、六月二十四日に公文をもりて、はつきりと米国政府の公式の見解をただしたのであります。その結果、アメリカ側の解釈によれば、MSAの援助ば受けてもさしつかえないと私の方でも考えましたので、これを受ける交渉をいたしておるのでありまして、そのためにこそ、米国政府の公式の見解というものを求めたのであります。  なお、三十五万の軍隊云々というこ一とを聞かれましたが、これはグレス国務長官も、誤解ありとして、その後釈明をしておるのであります。しかしながら、この問題は何もMSAのアメリカの法律の解釈の違いではないのでありまして、これは議会における、ある説明の一こまであります。  それから、軍事的義務ということにつきましても、これも今おつしやいましたが、政府としては、二十四日の手紙で米国政府の公式の見解をただした結果、この軍事的義務というものは、日本に関しては、安全保障条約において日本が現に負つている義務のみであるということが明らかになつたのであります。  軍事顧問団については、先ほどもお話がありまして御説明いたしましたが、要するに、軍事顧問団の任務というものは、主として完成兵器に関しての計画をつくり上げること、及びこの兵器の調達、供給及び積出しに関して、米軍間の調整をはかること、さらに軍事訓練計画実施すること、この三つに限られておるのでありまして、内政干渉の心配はないと信じております。  なお、ガリオアにつきましては、これはくれたものでなくて貸したものであるが、再軍備を日本がすればまけてもよろしいというようなことをアメリカ政府が言つたと、松季君は申されておるのでありますが、これは何か誤解であろうと思います。米国政府がそのようなことを言つたことを承知いたしておりません。なお、外交を行うにつきましては、われわれは最も公平にして民主的な主義方針に基いてやろうといたしておりまして、国民の声を聞くということは、もちろん十分いたします。但し、輿論を無理に起して、これを背景として相手国を強圧するというようなことは、十分慎まなければならぬと、こう考えております。(拍手
  48. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 池田正之輔君。     〔池田正之輔君登壇
  49. 池田正之輔

    ○池田正之輔君 私はまず政府に申し上げておきますが、私がこれから申し述べますことは、冷静に、厳粛にお聞きを願いたいということ、しこうして、私のこの質問に対する答弁は、政府の責任ある見解として、国権の最高機関であるところの当院の速記録に正確に記録しておくという態度と責任をもつて御答弁願いたいということであります。  そこで、私のお尋ねいたしたいことは、第一は、MSA援助と憲法関係、第二は、MSA援助の内容とその実体、第三には、MSA援助と予算編成の問題であります。  第一のMSA援助と憲法関係からお尋ねいたしますが、この問題は、すでにしばしば繰り返し繰り返し論議されて参りました。この質疑を通じて行われた政府の答弁は、まつたく支離滅裂であつて、その間政府が一貫して押し通して来たものは、自衛力は戦力ではない、MSA援助を受けても憲法違反とはならないという、この政府の詭弁であります。私はあえて政府の答弁は詭弁であると言わざるを得ないのであります。すなわち、政府の答弁を総合判断いたしますると、MSA援助を受ける場合の日米協定は、実質的に日米軍事協定となることは間違いない事実であります。日米安全保障条約がすでに実質的に軍事的協定であることは、多くの学者が指摘するところでありますが、この援助を受ける場合の日米協定は、相互に軍事的な義務を負うところの対等の条約となるのでありましよう。もし対等の軍事的義務を負わないというならば、それは軍事的に日本がアメリカの従属的な立場に置かれるということであります。断じて独立国の権威を保つことができなくなるということであります。  そこで、具体的に項目を上げてお尋ねいたしますが、その第一点は、MSA援助協定によつて、いわゆる軍事力の増強を義務づけられる。すなわち、増強の義務を負わなければならないものと解するものでありますが、政府はこの点についてどのような解決をとつているか。もし自衛力の増強の義務を負わないというのであるならば、その点をこの際明白に言明されたいのであります。  その第二点は、政府は、日本の安全保障問題腐して、しばしば地域的な集団安全保障参加の構想を述べておるのであります。この集団安全保障体制とMSAとの関係でありますが、さらに集団安全保障体制に参加するとするならば、当然にその集団を形成する国家群に対して、日本が軍事的義務を負わなければならないはずであるのであります。もし軍事的義務を負わずして集団安全保障に参加する道があるとするならば、その具体的方途を明らかにしていただきたい。  その第三点は、この協定によつて日本が軍事的義務を負うものとするならば、憲法に抵触すると考えるが、政府はあくまでも憲法には抵触しないと言い切るのかどうか。この憲法問題に関連して、さらに政府の所信を明白にしておきたい点があります。すなわち、この憲法を制定されたのは、第二次大戦直後の国際関係を認識の基本的な条件としてわれわれはやつて来た。当時日本の右領政策の管理国であつた米国、イギリス、ソ連及び中国の問には、何らの対立も抗争もなかつたのであります。だから、この四つの大国の共同の平和政策とその信義に信頼して、完全非武装の平和憲法を制定したのであります。政府は、この点に関して、すなわち具体的に言えば、憲法制定当時の国際的客観情勢と、今日この四大国が二つにわかれて相対立している現在の客観情勢、すなわち国際情勢と、同様の認識の上に立つているのかどうか、この点の見解を承りたい。  さらに第四の点は、政府は、今日まで国会の論議を通じて、あくまで押し通して来たように、自衛力漸増は憲法に抵触しない、MSA援助を受けても憲法に違反しない、戦力保持を義務づけられるようなことは絶対にないというならば、MSA協定を条約化する場合において、その条約の中に、その趣旨を明確に除外規定として書き入れる泥けの用意があるかどうか。この点は特に重大な点でありますから、特に明確に御答弁を願いたいのであります。  次に、質問の第二、MSAの内容とその実態についてお尋ねいたします。すなわち、MSA援助を受けるといたしまして、先般アメリカ国会において議決されました一九五四年度計画の中から、日本が受ける援助の内容と実体は、軍事援助だけで、経済援助はないものと思うが、政府の見解はどうであるか。しこうしてこの軍事援助の内容は、完成兵器の供与と技術的指導、すなわち部隊の戦術的訓練と指導に限られるのではないか。もしそれだけだということになりますと、まつたく日本国民をかつて土民兵をつくり上げる以外の何ものでもないのであります。(拍手)さらにまた、日本国民一般と財界方面に与える影響はすこぶる大きいのであります。その結果は、一段と反米感情を高めるばかりで、政治的に大きなマイナスになることを考えなければなりません。軍事的援助だけか、あるいはそれ以外に経済援助もあるのか、もし経済援助があるならば、どのような経済援助があるのか、その見解と見通しを明らかにしてもらいたい。  さらに、第三の問題に移ります。MSA援助と日本の予算関係についてであります。さきに述べたごとく、MSA協定が成立したならば、日本政府がどのように詭弁を弄しようとも、日本側の軍事的義務が生ずることは当然のことであります。その内容が、あるいは用語上政府のいわゆる自衛カまたは防衛力増強であつても、その結果は、防衛力の増強であり、従つて当然にまた予算上の措置を必要とするのであります。そうして、その結果は、毎年国費の上昇を見ることは必然であります。言いかえれば、MSA協定、すなわち日米相互安全保障協定の締結は、将来予算編成を拘束する結果となる。条約上の義務として、すなわち条約は国会の予算審議権に優位するのでありますから、MSA協定によつて義務づけられたところの防衛カ増強計画は当然に予算を伴い、この予算は国会独自の見解で削減することができなくなると解釈されるのであります。  そこで、政府にはつきりお尋ねいたしておきたいことは、MSA協定によつて、兵力量――自衛力でもよろしいが、その増強を義務づけられるようなことは絶対にないのかどうか、協定成立後、現在の保安隊、警備隊の編成、装備に関する予算を削減することも自由にできるのかどうか、この問題を明確にしてもらいたい。第二の点は、もし増強を義務づけられるとするならば、予算上の措置とあわせて、いかなる用意があるのかどうか。第三の点は、MSA協定と予算編成は、現在、すなわち二十八年度予算、さらに将来の予算も全然無関係と考えてよいのかどうか。この三点について、明白な政府の御答弁をお願いしたいのであります。  最後に、一言つけ加えておきたいことは、従来の政府のやつて来たことは、まつたくうその再生産、ごまかしの再生産ということであります。このごまかしの再生産というものが、いかに恐るべき結果を生むかということであります。吉田首相を初め関係閣僚が、再軍備はやらない、憲法は改正しない、自衛力漸増は憲法に抵触しない、保安隊や警備隊は戦力ではないと言い続けている気持はわかります。しかしながら、一たびうそを言い、一たびごまかしをやりますと、偉大な勇気と確信を持つた政治家でない限りは、そのうその上にうそを言い、ごまかしの上にごまかしを重ねて行くという結果になるのであります。(拍手)すなわち、うそとごまかしの再生産をやるという結果になりまして、そのことは、われわれが過去において、うそとごまかしの再生産がわれわれの国家と民族の上に何をもたらしたかを、深刻に体験して来ておる。戦時中の軍閥官僚政府が、うそとごまかしを果てしなく再生産して、遂に敗戦にまでわれわれを導いた。このことについて、特に政府の反省を促したい。うそとごまかしを再生産して行くことは、国家民族の崩壊を馴致する以外の何ものでもありません。この際、私は、政府に向つて厳粛に警告して、政府の誠意と責任ある答弁を要求いたすものであります。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎君登壇
  50. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) 最初に、MSAを受諾することは憲法違反のおそれがないかとびうことでありまするが、政府といたしましては、いまなお交渉中で、まだ確かめ得ない点もありますけれども、MSAを受諾するにつきまして、絶対に憲法に違反しない方針をとつて参りたい、さように考えております。  それから、現在の憲法を制定されたときの国際情勢と、今日の国際情勢とに対する認識はどうであるか、違つていないか、これは、現行憲法が制定されました、すなわち第二次世界大戦の終結いたしました直後の世界情勢と、今日の世界情勢とは、少くとも表面に表われている点において非常に異なつておると考えます。終戦直後におきましても、潜在的に今日のような情勢がすでに予想されたのでありますけれども、当時におきましては、今日ほどの形に現われていなかつた。今日の日本憲法は、当時の国際情勢の認識の上に制定されたと考えられまするが、同時に、憲法の前文にありまする一つの世界平和に対する理想、それから、それを受けまして、第九条にありまする日本民族の平和に対する悲願とも申すべき思想が現われておるのでありまして、今日国際情勢に対する認識がかわりましても、ただちにそれによつて憲法をかえるべきではない、さように考えております。  それから、自衛力を漸増することば憲法に抵触するのではないかという御質問でありましたが、今日までMSAに関しての交渉の経過を見ておりますと、日本の自衛力漸増につきましても、アメリカ側においても、政治的あるいは経済的安定を乱さない基礎の上に漸増するということを申しておりまするし、さらにまたアメリカの国会内の議論を聞いておりましても、日本憲法に基く特殊の事情を十分に理解しておるようであります。ただいまのところ、そういう心配は持つておりません。  それから、MSAと予算の関係について御質問でありましたが、MSAを受諾いたすにいたしましても、日本の防衛力につきましては、どこまでも自主的に計画いたしましてMSAを受諾するわけで、日本日本の経済的、歓治的安定を乱すような自衛力の漸増を余儀なくされるということには立ち至らせない覚悟でございます。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男君登壇
  51. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) お答えをいたします。  まず第一に、防衛力を増強するような義務を負うのか負わないのか、これは負うのであります。先ほども申した通り、五百十一条(a)項の中にこれが規定してありまして、これを負うのであります。但し、その義務は、今緒方副総理も申された通り日本の経済上、政治上、その他いろいろの条件の許容する範囲で行うのでありまするし、またその増強の時期とか態様とかいうものは、日本政府のみで決定するものでありますから、そのあとで、お話の予算を拘束するかどうかということは、予算は拘束しないわけになります。  なお、集団安全保障にはいろいろありまして、たとえば現在の安全保障条約もやはり一種の集団安全保障であろうと考えております。従つて、非常に幅の広いものでありますが、ただ、もし具体的に今後太平洋地域に一つの安全保障組織ができた場合、これに参加することが憲法違反であるという場合には、政府としては当然参加ができないわけであります。また、先般も、先ほども申しました通り、いろいろの問題について協定に入らないものは、しかも必要なものは、議事録やその他の方法で明確にするつもりでありますから、ただいま池田君のお話のような点につきましても、必要とあれば、これは議事録に明確にいたそうと考えております。  さらに、援助の内容はどうかというお話でありますが、これもやはり、先ほど申した通り、軍事援助が主たるものであることはその通りであります。但し、今後の交渉によつて、あるいは多少の変化を見るかもしれないのであります。さらに、直接の援助ではありませんけれども、いわゆる域外買付等で、日本の外貨のポジシヨンは相当有利なものになるであろうと考えておりますし、さらに、いわゆる経済援助につきましては、か力に今年困難であるとしても、来年どうであろうかというような話で進めて行くつもりであります。
  52. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 岡田春夫君。     〔岡田春夫君登壇
  53. 岡田春夫

    ○岡田春夫君 時間が制限されておりますので、重要な点だけ二、三御質問をいたしたいと思います。  先ほどの外務大臣報告によりますと、MSAは世界の五十数箇国がこれを受けており、日本だけがこれを受けないのはおかしいではないかというような報告があり、また別の機会におきましては、外務大臣は、イギリスやフランスまでもMSAを受けておるのに、日本が受けないということはないではないかという意味のお話をせられたことを、われわれは間接に聞いておるのであります。ところが、イギリスやフランスは、あらためて言うまでもなく、戦勝国であり、そして、ある意味において明らかな独立国であります。ところが、日本の場合には、あらためて言うまでもなく、明らかにアメリカの植民地の国家としてあるのであります。ここに基本の問題がある。しかも、独立国であるイギリスやフランスにおいてさえ、最近においては、援助よりも貿易をというような要求が非常に高まつておる。アジアの諸国においては、インドネシアやビルマでは、MSAは拒否しろという声が高まりつつあるのであります。それにもかかわらず、今、日本の国には、アメリカの駐留軍がおり、七百に近いアメリカの軍事基地が置かれ、治外法権がつくられておる。この日本の国において、しかも最近においては日米通商条約という奴隷条約を結んだこの日本状態において、この上にMSAを受けるということは、明らかに、日本の国が、軍事的にもアメリカの植民地軍隊になり下ることを意味しておることにほかならないのであります。  ここで、まず第一に、緒方副総理に伺いたいのでありますが、ここではつきり伺つておきたいことは、このようにアメリカの植民地の軍隊をつくらされることを強制されようとしておるときにおいて、このMSAで日本の独立と自由が確保できると考えておられるのかどうか、この点を伺いたいと思います。  第二の点は、あらためて言うまでもなく、朝鮮の休戦が行われて、再びアジアに平和の機会が訪れつつあるときにおいて、日本の再軍備を強化して、先ほど外務大臣の言われる通りに、自衛力漸増の方針を強化することによつて日本の再軍備がかねてから世界の各国において脅威の的になつておるときに、再び日本の国が軍国主義的な侵略を犯す危険感を外国に与える心配があるではないか。この点についての緒方副総理の御意見を伺つておきたいと思います。  第三の点は、アメリカの新聞によりますと、このMSAを受けることによつて日本に一千名以上の軍事顧問団が派遣されるであろうということが伝えられております。最近の交渉において軍事顧問団の交渉が行われたかいなか。そうしてこの軍事顧問団は何名を派遣するような交渉が行われているか。そしてこの軍事顧問団の任務については、先ほど右社会党の人から質問がありましたけれども、これについて具体的な答弁がなかつたので、重ねて御答弁を願いたいと思います。  次に、この軍事顧問団を通じて見ても明らかなことは、このMSAを通じて日本に土民軍をつくらせようとするのがアメリカの明らかなる魂胆である。その証拠に、先ほども岡崎外務大臣が言つておりますが、七月の九日並びに十三日に、ダレスが、声明あるいはアメリカの上院における証言において明らかにしているように、MSAによつて日本の国に将来三十五万、十個師団の兵隊をつくることを予定しているということを言つております。この点をもつても明らかであります。そこで、外務大臣にお伺いをしたいことは、特に最近の新聞において、今度のMSAの交渉において、日本から防衛方針について具体的な提案をせよとアメリカ側から要請されていると伝えられているが、この防衛方針についてアメリカから具体的な要請があつたかどうか、この事実をお伺いいたしたいと思います。  その次に、このようにして日本に三十五万の兵隊をつくるということは、これは今まで再三政府が言つているように、日本国内の法安を守るためのものではない。日本国内の治安を守るためには、こういう厖大な軍隊は必要といたしません。それでは一体何のために必要とするのだ。それは、おそらく現実には外に備えるためであると言われるかもしれません。それでは、外に備えるためであるというならば、政府の考えている外における仮想敵国とは一体どの国をさすのであるか、明らかにここに示していただきたいと思います。  最後に、先ほども外務大臣報告を伺つておりますと、中国を初めとして共産圏に対する貿易の禁輸の条項について、MSAの中にこの禁輸の条項を挿入すべきであるという要請がアメリカ側からあつたかのごとく伝えられております。これに対して、日本側からは、現在においても禁輸をやつているのであるから、現在以上の必要がないとすれば、あらためてMSAの中にこの禁輸の条項を挿入する必要はないではないかといつて回答しているそうであります。現在、日本立場として、中国との貿易を進めることの要請は、国内においてまことに強いものがあります。特に、先般この本会議の議場において、中国との貿易に関しまして、促進の決議案全会一致をもつて議決されておるのであります。このような国会議決政府が尊重するとすれば、もしアメリカの側において、貿易の禁輸条項の挿入をあえてMSAの中に強制して来るような場合においては、その立場に立つてMSAを拒否すべきであると思うが、この点についてはいかがであるか。この点についての御答弁をお願いいたしたいと思います。  以上の点を御質問いたします。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎君登壇
  54. 緒方竹虎

    国務大臣(緒方竹虎君) お答えいたします。  MSAを受ける結果、日本がアメリカの植民地になり下るおそれがないかという御質問のようでありましたが、それは一に日本国民の自信、覚悟次第でありまして、今日の国際情勢におきましては、一国で一国の防衛ができないというのは厳然たる事実であります。そこに集団安全保障の思想が起つて参つたのでありますが、私は、そういう意味から、日本がMSAを受けた後におきましては、一層日本国民の民族の自主性を高めて行くことが必要でありまして、国民のみずから任ずることによつて、アメリカの植民地になり下るという心配は決してないと考えております。  それから次の、自衛力を増強することば日本に再び軍国主義が台頭しかかつているという脅威感を列国に与えはしないかという御質問でありましたが、私は、今のところ決してそういう心配はない、現に濠州でありましたか、ニユージーランドでありましたか、はつきり記憶しておりませんが、日本がある程度の自衛力を持つことは当然であるというような、相当な地位にある人の言論も最近新聞に見えておりましたし、日本がはたしてどういう方向に向いつつあるかということは、自衛力増強の問題よりも、むしろ国会内の議論に対しまして、より多く耳を傾けていると考えます。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男君登壇
  55. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 軍事顧問団についての交渉には、まだ入つておりません。その任務につきましては、先ほども申したのでありますが、念のため繰返しますと、完成兵器等に関する計画及び兵器の調達、供給、積出し等に関し米軍間の調整をはかること、さらに第三は、軍事訓練計画等の実施、これが主たる任務であります。  防衛方針についても、まだ具体的に何ら要請はないのであります。  それから、三十五万の兵隊はどこに向けるのだというお話でありますが、政府は、別段保安隊を三十五万にするとは言つておらないのでありますから、この三十五万をどこに向けるのだと聞かれても、お答えのしようがないのであります。  中共貿易については、政府として申し上げ得ることは、国会決議を尊重して善処する、こういうことであります。(拍手
  56. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これにて質疑は終了いたしました。  明七日は定刻より本会議を開きます。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十八分散会