○小島徹三君 ただいま
議題となりました
戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を
改正する
法律案、未
帰還者留守家族等援護法案並びに
財団法人日本遺族会に対する
国有財産の
無償貸付に関する
法律案につきまして、厚生
委員会における審査の
経過並びに結果の大要を御
報告申し上げます’。
まず、
戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を
改正する
法律案について申し上げます。
戦傷病者戦没者遺族等援護法は、第十三
国会において制定せられ、昨年四月一日から国家補償の精神に基く処遇を施行して参つたのでありますが、今回援護の
措置をさらに強化しようとするのが
政府の
本案提出の
理由であります。
本案の
内容のおもなる点を申し上げますれば、第一に、太平洋戦争中、旧国家総動員法に基いて設立された船舶
運営会の運航する船舶の乗組船員は、戦時中軍人軍属と同様の戦争危険にさらされて、兵員、軍需物資等の運送に当り、また前線作戦に参加する等、まつたく軍人軍属と同様の任務に服していたものであり、その危険の程度は軍人のそれに比肩し、あるいはそれ以上に及んでいたのであります。これらの事情にかんがみ、これら船員をこの
法律の援護の
対象とするため、新たに軍属の範囲に加えようとすることであります。第二は年金額を、恩給法の一部を
改正する
法律による旧軍人の増加恩給、公務扶助料の額ともにらみ合せ、その額を引上げまして援護の強化をはかろうとするもので、すなわち、障害年金につきまして、不具廃疾の程度に応じ、九万円から二万四千円を、十八万一千円から二万四千円に、遺族年金につきましては、配偶者、子、父母、孫、祖父母の順序により、先順位者とその他の遺族に区分し、一人につき二万五千二百円、五千円にいたそうとするものであります。第三は、旧軍人恩給の復活に伴い、従前この
法律により援護しておりました旧軍人またはその遺族については、原則として恩給法に転移することになりますが、これに伴い、
戦傷病者戦没者遺族等援護法による援護と恩給法による恩給との間に
支給対象の重複等が生じますので、所要の調整を行い、その間齟齬、間隙の生じないように
措置いたしたことであります。なおこの
法律は、恩給法の一部を
改正する
法律の施行の日から施行するものでありますが、新たに軍属の範囲に加えました船舶
運営会の運航する船舶の乗組船員の遺族に
支給する弔慰金の
支給については
昭和三十七年四月一日に、これらの遺族等に対する年金の
支給並びに年金額の引上げ等につきましては本年四月一日から適用することといたしたのであります。
本案は、六月二十七
日本委員会に付託せられ、同二十九日厚生大臣より
提案理由の説明を聴取した後、数回にわたり、きわめて熱心なる審査が行われたのであります。特に、恩給法の一部を
改正する
法律案との関連により、七月三日
連合審査会、同四月
連合審査会公聴会を開き、また七月二十日本
改正案について海外同胞引揚及び遺家族援護に関する
調査特別
委員会との
連合審査会を開き、慎重
審議が重ねられたのであります。特に戦犯刑死者、獄死者の遺族に対し本法の援護を行うこと、遺族年金の額を引上げること、父母、祖父母の再婚を遺族年金の失権事由としないこと、二柱以上の戦没者遺族には柱数ごとに年金を
支給すること等の
諸点については、きわめて熱心なる
質疑応答が行われたのでありますが、その詳細は
会議録により御
承知願います。
かくて、七月二十二日
質疑を終了し、本二十二日、自由党の青柳
委員より各派共同提案による次の修正案が
提出せられました。すなわち、第一、遺族年金額を
昭和二十九年一月一日より二万七千六百円とすること。第二、遺族のうち父、母、祖父または祖母が氏を改めないで婚姻したときは、遺族年金の失格及び失権の事由としないこと。第三、先順位者としての遺族年金を受ける
権利を二以上有する遺族には、当該遺族年金を併給すること。第四、平和条約第十一条に掲げる裁判により拘禁された者が当該拘禁中に死亡した場合は、右の者の遺族に遺族年金及び弔慰金を
支給すること。
次いで、修正案と修正案を除く原案の他の部分とを一括して討論に入りましたところ、改進党を代表して山下
委員、
日本社会党を代表して長谷川
委員、
日本社会党を代表して堤
委員、自由党を代表して亘
委員、自由党を代表して高橋
委員より、それぞれ賛成の意が述べられたのであります。次いで討論を終了し、修正案と修正案を除く原案の他の部分を一挿して採決いたしましたところ、本
法案は
全会一致修正議決すべきものと決した次第であります。
次に、未
帰還者留守家族等援護法案について申し上げます。従来、未帰還者に対しては、未復員者給与法等により、本人に対する俸給と扶養
手当とを
支給して留守家族の援護が行われていましたが、これらの
法律を廃止して、端的に留守家族そのものを
対象とし、より実情に適した援護をしようというのが、
本案提出の
理由であります。
次に、
本案の大要を申し上げますと、第一に、未帰還者の範囲を、未復員者、及び
昭和二十年八月九日以降ソ連、中共地区で生存していたと認められる一般邦人でまだ帰らない者、並びに平和条約第十一条に掲げる裁判により拘禁されている者としたことであります。第二に、留守家族の範囲をそれぞれ一定の
条件を具備する配偶者、子、孫、父、母、祖父母とし、家族
手当の額は、先順位者に月額二千百円、他に一人当り月額四百円を加給しようということであります。第三に、留守家族が援護を受け得る
期間を限定する反面、国は未帰還者の状況について
調査究明に努めなければならない旨を明記したことであります。第四に、未帰還者が帰還した後、必要ある場合には療養の給付を行い、また障害一時金、帰郷旅費、遺骨埋葬費、遺骨引取費等の
支給をするほか、他の
法律の改廃に伴う必要なる調整を
行つたことであります。
本案は、六月二十七
日本委員会に付託せられ、同二十九日
政府より
提案理由の説明を聴取した後、数次にわたる熱心なる審査が行われたのであります。特に、未帰還者が帰還した以後も留守家族
手当の
支給を
考慮すること、未帰還者の消息についての
調査究明、留守家族
手当の
増額等の
諸点について、きわめて熱心なる
質疑応答が行われたのでありますが、その詳細は
会議録により御
承知願います。
かくて、七月二十三日
質疑を終了し、本二十三日、自由党の青柳
委員より、各派共同提案による次の修正案が
提出されたのであります。すなわち、その第一は、第一条に、未帰還者が置かれている特別の
状態にかんがみ、国の責任において援護する旨を明記すること。その第二は、留守家族
手当の月額を
昭和二十九年一月一日より二千三百円に
増額すること。第三は、第二十九条において、国は、未帰還者の状況について
調査究明するとともに、その帰還の促進に努めることを明記すること。第四、増加恩給、障害年金、傷病年金または傷病賜金を受けるべき者あるいは受けた者についても、厚生大臣が必要と認める場合は、この
法律による療養の給付を行うことができるものとすること。この場合においては、政令で定めるところにより実費の一部を徴収すること。第五は、
昭和二十八年四月かち七月までの間において、未複員者給与法または特別未帰還者給与法による扶養
手当を受けた者には、扶養
手当を
増額し、これを追給する
措置に準じた
措置をとること。
次いで、修正案と修正案を除く原案の他の部分を一括して討論に入りましたところ、
日本社会党を代表して長谷川
委員、小会派クラブを代表して有田
委員より、それぞれ希望を述べて賛成の
意見が述べられたのであります。かくて、討論を終了し、採決に入り、まず修正案の部分について採決いたしましたところ、
全会一致をも
つて修正案
通り可決いたされました。次いで、修正部分を除く原案の他の部分について採決いたしましたところ、これまた
全会一致をも
つて原案
通り可決いたしました。次いで、有田
委員より次の附帯
決議案が
提出されたのであります。朗読いたします。
未
帰還者留守家族等援護法案に対する附帯
決議案従来ソ連地区および中共地区に残留すると認められる未帰還者の消息につき
調査不充分と思われる点のあつた事実にかんがみ、
政府はこの際徹底的にその消息の
調査究明につとめ、生存者の留守家族の
手当が不当に打ち切られるが如き
事態を生ぜぎるよう善処を要望する。
右
決議する。本
決議案は
全会一致をも
つて附帯
決議とすべきものと決した次第でございます。
次に、
財団法人日本遺族会に対する
国有財産の
無償貸付に関する
法律案について申し上げます。
本案の大要は、第一に、
財団法人日本遺族会に対し、旧軍人軍属で公務により死亡した者の遺族の福祉をはかるため、旧財団法人軍人会館が所有していた建物を、敷地とともに無償で貸し付けることができることとしたことであります。第二に、貸付財産の用途を宿泊所、集会所等の利用、
生活相談、育英事業等、遺族の福祉をはかるために必要な事業の用に供することに制限したことであります。第三に、貸付契約の解除、役員の解職等必要な監督規定を設けたことであります。
本案は、七月二
日本委員会に付託せられ、同五日
提案理由の説明を聴取した後、本日まできわめて熱心なる審査が行われたのでありますが、詳細は
会議録により御
承知願います。
かくて、本二十三日
質疑を終了し、討論に入りましたところ、改進党を代表して古屋
委員、
日本社会党を代表して長谷川
委員、同じく
日本社会党を代表して堤
委員より、それぞれ希望を付して賛成の意が述べられたのであります。次いで採決に入りましたところ、
本案は
全会一致原案
通り可決すべきものと議決しました。なお、次の附帯
決議を
全会一致をも
つて付すべきものと議決しました。
ここに附帯
決議を朗読いたします。
附帯
決議
本法における公務死亡の範囲は、これを実情に即して可及的広義に解釈するとともに、旧軍人会館の
運営については、明朗にして民主的なるを期し、
政府は適切なる監督
措置を講ずることを要望する。
以上御
報告申し上げます。(
拍手)