○川島金次君 ただいま
委員長報告のありました三葉のうちの
日本航空株式会社法案に対しまして、私は、
日本社会党を代表して、遺憾ながら反対の態度を明らかにするものでございます。(
拍手)
もちろん、今日の国際社会にありまして、
わが国が国際的な航空
事業に参画をいたしまして、国際収支の改善に当ることを初めとして、国際交通の促進をはかり、近代国家としての進歩的な発展をはかることの必要であるということは、私といえどもこれを否定するものではございません。しかしながら、日本のような最も国際的に立ち遅れた国際航空を維持発展せしめるためには、より強固な組織と、より強大な資本力と、また多年にわたる技術と人材とが必要であるということはいうまでもございません。しかるに、
わが国の国際航空
事業は、御承知の通り、先年日本航空株式会社が設立せられまして、この会社は、その資本金はわずかに四億にすぎません。しかしながら、今日の旅客航空機の価額はきわめて厖大なところにまで及んでおりまして、わずか四億や五億の資本金をも
つていたしましては、いかんともいたしがたい実情であるということは、想像にかたくはないのであります。
従つて、今や現存の日本航空株式会社は、わずか資本金四億に対しまして、借入金に借入金を軍ねまして、今日ではその負債が実に驚くなかれ十八億を突破するという厖大な額に上
つておるのであります。しかるに、この十八億に上る負債額にもかかわらず、なおかつ近来ますます激甚をきわめようといたしておりまする国際航空の間に伍しまして、とうていこれに匹儔することのできないような微力かつ無力な航空株式会社とな
つておる現状であるのであります。
従つて、現存の日本航空株式会社は、一方には厖大な負債を背負
つており、一方においては日にますます刻々として激烈をきわめようとしておるところの国際間の航空路競争に耐えかねて、今や将来の方針をすらも立てかねるようなみじめな状態に陥
つておることは、皆さんも御承知と思うのであります。そこで考えられましたのが、今度の
日本航空株式会社法案だとわれわれは断定いたしております。
この航空株式会社は、新たなる
法案によりますと、民間の資本金が十億、
政府の資本金が十億、合せまして新たな二十億万円の資本金をも
つて日本航空株式会社を設立いたし、この設立後におきましては、現存のまことにみじめな姿に陥
つておりまする航空株式会社を接収いたしまして、それで新しく発足をいたそうというのでございます。しかも、その上に、今
委員長からも
報告がありましたように、この新しい航空株式会社におきましても、資本金はわずかに二十億でありますから、これをも
つていたしましても、なおかつ国際航空路競争の中に伍して堂々たる歩を進めることは、これまた不可能な現状にあるのであります。しかも、その上に、航空料金が
世界的に比較いたしまして非常に高い。
従つて、会社が予期するような乗客をつかむことがほとんど不可能の状態であります。
従つて、新たに日本航空株式会社が発足いたしましても、客は少いわ、飛行機の新しいのは買わなければならないわというよううなことで、ますます会社
経営は困難の道を歩まなければならないということは、これまた見やすき道理でございます。そこで、またさらに会社は、さらでだに困難な
事業経営に当りまして、一層に多くの赤字を負担しなければならぬということも、これまたきわめて明白な事実であると私は考えます。この場合に、どうしても会社は、さるがゆえに新たにまた負債をいたさなければならない。
この新しい借入金に対しまして、自由党の
諸君の
提案いたしました
修正案によりますと、この負債に対して
政府は債務を保証するという
修正案でございます。のみならず、さらに一方におきましては、
政府の出資いたしました十億の株式に対しましては、民間の出資いたしました十億の株式に対して八分の配当が可能であるまでは、
政府に対しましては、その出資金に対して配当はしない。八分の配当ができるようにな
つてから、初めて
政府の株に対しましても、民間とははなはだしい差異のある若干の配当ができるような仕組みといたしまして、この
法案が立案されておるのであります。
しかも、この
修正案がなぜ出たかという真相を尋ねてみると、こうであります。元来、運輸省では、初めから、今申し上げました
修正案のように、債務の保証もすべし、株式の民間優先配当もすべしという
法案を
原案として持ち出し、これを大蔵省に諮つたところ、大蔵省は、このような種類の会社に対して、
政府が十億の出資をしたほかに、さらに厖大な今後幾らになるかわからないところの債務を保証することは、第一、財政法上の疑義がある、次には、戦後いまだか
つてこういうような前例がない、こういう建前を堅持いたしまして、大蔵省は、せつかくの運輸省の申入れに対して拒絶をいたしておる事実があります。なお一方、優先株式の問題にいたしましても同様でありまして、これまた、この種の
政府出資の会社に対しまして、民間の株式にのみ優先配当を認めるということは、これまた悪例を残す道を開くようなものであるという建前から、これまた反対をいたしたしろものであります。
このように、
原案は、すでに運輸省と大蔵省との意見が明らかに食い違
つておわ、そして、閣内が不統一のままに、やむを得ず大蔵省の反対の条項だけは削除してできたのが、この航空株式会社
法案の
原案でございます。その
原案であ
つては——航空会社と自由党と
政府とがどのような関係にあるかは私は存じません。が、とにもかくにも自由党の
議員の各位は、鞠躬如として、今度は、大蔵省が断固として削り取りましたところの条項を復活して、
議員提出の形で
修正案というものを出して来たのであります。一方、かんじんかなめの
政府の方は、運輸省と大蔵省との意見が対立し、しかも大蔵省は断固たる見解を表明して反対し、拒絶している。その拒絶しているところの問題をも、あえて、院内においては、運輸
委員会の
議員立法の形で
修正案を出して来て、従来の運輸省の主張を通させてやろうという形で生れたのが、この運輸
委員会に出ました航空会社
法案でございます。この一連の——
政府部内においては、大蔵省と運輸省が違
つておる、しかも大蔵省は、財政法上疑義がある、その上にそのような悪例を残すということは、将来の財政運営上においてきわめて重大な問題である、こう言
つてはつきり答弁しておる。にもかかわらず、その
政府の下に立つところの自由党の
諸君は、その逆な
修正案を出して来ている。一体このような一連のことを考え合せてみますと、どうも一部の運輸省と、一部の自由党の
諸君と、そのかんじんかなめの接収される予定であるところの現在の航空株式会社との間に何かあるんじやないかと想像するのは、私一人ではないだろうと考えるのであります。(
拍手)
こういうことで立案されたのみならず、さらに一言加えたいのは、この議案の
審議の過程において、わが党の熊本
委員からは、
世界の航空
事業の発達した諸国のうちのおもなものでもよろしいから、一体
政府が出資したもの、あるいは半官半民のもの、しかも
政府が全額出資したものは十数箇国に上ると言われておるけれども、この
政府全額出資の十数箇国におけるところの国際航空
事業に対する運営の実態について、おれくの参考のために資料を
提出してもらいたい、こういう申入れをいたしたにかかわらず、昨日
討論採決を行うというにもかかわらず、この資料の
提出がございません。
さらにまた、
委員会において、先ほど申し上げましたように、明らかにこの
法案に対しては、
修正案を含めて、一つ
政府であるところの大蔵省と運輸省との間で明らかな意見の対立があるではないか、このままで、かりにこの
修正案が成立するようなことがありましても、かんじんかなめの債務の保証のごときは予算化を必要とする、予算化を必要とすれば、大蔵省の同意がなければ、この
法案が成立いたしましても空文にひとしいものになるではないか、
従つて、潔く
政府部内は意見を調整して、こんな無
責任な
法案をわれわれに諮らずして、
責任のある見通しのついた
法案として、あらためて出直して来たらどうか、
従つてこの意見の調整のできるまでわれわれはこの
討論を一日たりとも延ばして、翌日
政府の方の意見の調整を待
つてから、この
法案の
討論採決をや
つてもおそくはないではないかと、私どもは申し入れたのであります。われわれのこの意見に対しましては、社会党の左派も、あるいはまた鳩山自由党と称せられる自由党も、あるいは労農党の
諸君も
賛成して、せつかく私どもが
委員長と自由党の理事の
諸君に折衝を行
つておつたのであります。その折衝中に、自由党の
諸君は、何を思つたか、改進党の三名の
委員諸君を誘
つて、臨時的に
委員をさしかえて、遂に、自由党の
委員は、平素は全員出て来たことがございませんにかかわらず、昨日だけは全員の首をすげかえて成立をさせ、そして、われわれの折衝にもかかわらず、最後に一方的に
委員会を開会して、この
修正案を通過せしめたというのが、昨日の運輸
委員会におけるところのこの
法案審議の実相であります。(
拍手)
このように、何ゆえか、
日本航空株式会社法案に対しましては、自由党の
諸君は非常な焦燥を感じておられる。非常に性急に行
つておられる。そうして、このような非民主的きわまる態度をも
つて、この
法案を一方的に強行して可決したというのが真相であるのであります。このようなことを考え合せましたときに、いよくも
つてこれには何かありそうだと考えざるを得ないのは、あえて私一人ではないと思うのでございます。(
拍手)
本来、国際航空の
事業というものは、先ほど申し上げましたように、今日のような民間まかせのことでは、とうてい満足な発展を遂げることは不可能であります。
従つて、強大な資本力、そうしてまた綿密なる技術と多年の経験を持つた人材を養成いたしまして、その事柄が一体とな
つて、初めて国際航空のこの競争激烈な中に伍して日本の国際航空の発展が維持せられるのではないかと思うのであります。
従つて、このような
事業の維持発展のためには、すべからく
政府はみずから国有として全額を出資し、そうして事情によれば、英国その他のごとくに、国有民営あるいは国有国営あるいはそれがいけなければ絶対民営、これが国際航空
事業の実態であります。にもかかわらず、
政府は、このような半官半民で、しかも中途半端な機構をも
つて提出して来たということは、
政府に確固とした国際航空
事業に対する大方針がないということを如実に暴露したものと断定しなければならないのであります。(
拍手)こういう意味合いにおきまして、私どもは、国際航空のこの激烈な競争において、しかも外貨の獲得あるいは国際航空の促進、そうして近代国家としての日本が国際航空の名実ともに備わつた一つの態勢を確立いたしますためには、国有国営が最も望ましいものであるという断定を軍たしまして、あえて以上の
理由を付しまして、われわれはこの
法案に断固反対の態度を明らかにする次第であります。
以上をも
つてわが党の反対の
理由を明らかにいたした次第であります。(
拍手)