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1953-07-02 第16回国会 衆議院 本会議 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二日(木曜日)  議事日程 第十五号     午後一時開議  第一 離島振興法案綱島正興君外七十一名提出)  第二 農業災害補償法の一部を改正する法律案内閣提出)     ————————————— ●本日の会議に付した事件  内閣から提出された私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案趣旨説明を聴取するの動議今村忠助提出)  緒方国務大臣私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明  右の趣旨説明に対する質疑  戸塚建設大臣の北九州における豪雨の被害状況報告  日程第一 離島振興法案綱島正興君外七十一名提出)  日程第二 農業災害補償法の一部を改正する法律案内閣提出)     午後二時四十八分開議
  2. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 今村忠助

    今村忠助君 この際、内閣より提出されている私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案についての趣旨説明を聴取するの動議提出いたします。
  4. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 今村君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。      ————◇—————
  6. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 私的独占の禁及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案趣旨説明を求ます。国務大臣緒方竹虎君。     〔国務大臣緒方竹虎登壇
  7. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) ただいま程されました私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案の理由説明いたします。  昭和二十二年七月に独占禁止法が施行せられましてから、早くも約六箇年を経過いたしたのでありまするが、その施行の経験に徴しまして、本法の諸規定わが国経済特質と実態によりよく即応するものにする必要が感ぜられたのであります。もとより、国民経済の民主的で健全なる発達を促進するため、私企業による市場独占のもたらす諸弊害を除去し、公正かつ自由な競争を促進しようとする独占禁止法根本精神はあくまで尊重すべきものでありまするが、この際、内外情勢の推移にかんがみて独占禁止法に適当な修正を加える必要があると考え、前国会にこれが改正を提案いたしましたが、成立を見るに至りませんでしたので、今回あらためて本法律案提出するに至つた次第であります。  本法案は、前国会提出いたしました法案とその内容がほぼ同一でありまして、その改正の項目は多岐にわたつておりまするが、主要なものは、特定の場合、すなわち不況に対処するため必要がある場合及び合理化遂行上特に必要がある場合における事業者共同行為一定条件のもとに認容したこと、株式の保有、役員の兼任等制限を緩和したこと、不公正競争方法に関する現行法規定を整備したこと、不当廉売、おとり販売等の不当な競争を防止するための再販売価格維持契約——価格拘束制度のことでありまするが一—を認めたことと、事業者団体法を廃止して必要な事項を独占禁止法中に収めたこと等であります。  何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。      ————◇—————
  8. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これよりただいまの趣旨説明に対する質疑に入ります。栗田英男君。     〔栗田英男登壇
  9. 栗田英男

    栗田英男君 私は、独占禁止法の一部を改正する法律案に対し、改進党を代表いたしまして、以下数点にわたり質問を行いたいと思います。  本改正案の細部については委員会に譲るといたしまして、きわめて重要なる点のみをこの機会に明らかにしておきたいと思うのであります。  質問の第一点は、主務大臣認可制に対する問題であります。私は、この改正案では、特にこの点を注目しなければならないと思うのであります。独占禁止法は、経済憲法とも言われている、日本経済民主化基本法であります。同法二十七条によれば、「この法律目的を達成するため、公正取引委員会を置く。」とあります。独禁法運用は、公取委が専管すべきことはあまりにも明確であります。しかるに、今次改正案においては、トラスド禁止規定と相並んで、独禁法かなめをなすカルテル禁止規定適用除外についての認可権を、同法の運用機関たる公取委でなく、通産大臣に与えようとしており、このことはまつたく独禁法趣旨に相反するものであります。(拍手カルテル認可権主務大臣に与えた理由として、輸出取引法中小企業安定法の前例があり、カルテル産業政策上の問題であり、産業行政責任を持つ通産大臣が判断すべきであると主張しているようでありますが、今次改正案は、不況カルテル合理化カルテルを、特定事業分野を対象とする特別法においてではなく、独禁法みずからの中において、しかも一定条件のもとで一般的に認めようとするものであり、輸出取引法中小企業安定法同一に論ずべき筋合いのものではないのであります。  独占禁止政策は、産業政策、すなわち工業政策農業政策とも密接なる関係を持つていることはいなみ得ないが、明らかに一つの独立した経済政策であり、前述のごとく、同法の運用公取委に専管せしめているのも、独占禁止政策を一個独立の経済政策として一元的、総合的に運営する必要があるからであります。従つて産業政策が、それなしには考えられない金融政策責任大蔵大臣に、労働政策責任労働大臣にあり、また、かつて産業政策かなめであつた物価政策責任物価庁長官にあつたように、独占禁止政策の運営と責任は当然公取委が持つてこそ初めてその実効を期し得られるのであつて、もしこれを各省に分担せしめることとなれば、独禁法の統一ある運用はまつたく危殆に瀕すると言つても過言ではないのであります。(拍手)たといカルテル認否実質的認定権公取委にあるにしても、カルテル認可は、準司法的手続によらず、通産大臣の単なる行政処分によることとなり、独禁法上の認可の特殊な性格がそこなわれ、訴訟手続は混乱を生じ、独禁法運用の独自の体系が破壊されるのであります。  さらに、改正案には、公取委認定基準規定されているが、通産大臣認定基準はまつたく見当らないのであります。そこで、しいて推察すれば、通産大臣認可基準公取委認可基準同一であるか、さもなければ、法文上は規定されていない産業政策あるいはその他の見地からするものか、いずれか一方であることになるのであります。いずれにせよ、同一の問題を二つの官庁処理することは明らかであり、これはカルテル認可申請をたらいまわしにすることになり、その処理をいたずらに長引かすにすぎないのであります。もし通産大臣認可基準公取委認定基準同一であるならば、独禁法法体系をゆがめてまでも通産大臣認可権を持たぜなければならない理由はどこにあるか、まつたく了解に苦しむ不可解な法律であると言わざるを得ないのであります。(拍手)また、通産大臣認可基準公取委認定基準と異なつたものであり、法文上には現われていないとするならば、通産大臣は、産業政策あるいはその他の見地からまつたくの自由裁量認可、不認可を決定することができることとなり、極端に言えば、申請者の顔が気に食わないといつて認可にすることができるのであります。さすれば、許可、認可は可能な限り法規裁量をするという法制の民主化官庁権限民主化の逆行であり、驚くへき非民主的立法であると言わざるを得ないのであります。(拍手)  この通産大臣認可権の裏には、官僚統制手段にこれを使わんとする下心があると察せられるのであります。かくのごときは、実に独禁法と相反する政策が同じ独禁法をもつて行われることとなり、独禁法自己否定と言わざるを得ないのであります。かくのごとき矛盾は、大蔵省、農林省等政府部内においてすら主務大臣認可権を与えることに疑義を表明したにもかかわらず、通産省ひとりこれを頑強に固執して譲らず、妥協案として、主務大臣認可公取認定という、法制的にも実際的にもわけのわからない法案提出され、前国会においても、カルテルではなく、カクテル立法であるという非難すら浴びたのであります。しかるに、今次改正案において、さらにこの矛盾を拡大強調した点は、その真意が那辺にあるか、まつたく了解に苦しむと言わざるを得ないのであります。(拍手)ただいま本法案説明に立つた緒方総理は、口を開げば筋を通すと言うが、本法案のごとく筋の通らない、めちやくちやな法案はいまだかつてないということを、この際警告せざるを得ないのであります。(拍手)この点に関して緒方総理通産大臣公取委員長の明確なる所信を承りたいと思うのであります。  質問の第二点は、主務大臣強制報告徴収権に関する点であります。旧改正案は、主務大臣認可公坂認定という方式によつてカルテル認可事務は形式的には二本建となつていたが、実体的には、法文にも明らかなように、カルテル認否決定の主体は公取委にあり、主務大臣認可申請受付の単なる窓口にすぎず、二重行政弊害が生ずる可能性は比較的少なかつたのであります。しかるに、本改正案には、新たに主務大臣強制報告徴収権が加わつたのであります。これによつて主務大臣は単なる窓口ではなく、カルテル認可事務は実体的にも二本建となり、手続の煩雑、機敏な処理は著しく困難となつたのであります。旧改正案によれば、認可要件に適合するかいなかの認定公取委が行えば足りたのでありましたが、本改正案には新たに主務大臣強制報告徴収権が加わつたことによつてカルテル認可申請があつた場合、まず主務大臣がその権限を発動して報告を徴し、認可の当否を検討し、ついで公取委が第四十六条の強制調査権を発動し、認定に必要なる報告を徴収することとなれば、申請者は二重の報告提出の煩にたえないばかりでなく、時宜を得た認可を受けることはきわめて困難になるのであります。かくのごとき弊害は、実に独禁法運用機関であり反独占政策遂行のり責任者である公取委が専管的に行うべきカルテル認否に、通産大臣がしいて介入しようと横車を押し通したことに基因するのであります。前述のような弊害をも顧みず、主務大臣強制報告徴収権を持ち、カルテル認否決定の実体にまで立ち入ろうとすることは、これを想像するに、主務大臣が、カルテル認可行政を通じて、統制経済から自由経済の転換によつて失つた業界に対する自己立場を強化しようとするものであり、これによつて通産省内に贈収賄の温床が一つふえるであろうということを、私は深く憂うるのであります。(拍手)  さらに思うに、公取委が専管すべきカルテル認可権通産大臣がしいて横坂りしたことは、重要産業統制法制定の伏線であると考えざるを得ないのであつて、すなわち強制報告徴収権の挿入は、はからずもその意図を現わしたものであると断ぜざるを得ないのであります。はたせるかな、この点に関し、関西経済連合会等は、主務大臣認可機関とし、加うるに強制報告徴収権を持つことは、統制経済誘致の危険濃く、かつ一般消費者利益確保する独禁法の諸目的を阻害するおそれがあり、しかも認可認定両対等の機関を設置するがごときは、かえつて事務迅速処理を妨げることにすぎないとし、公取委一本を強く主張しておるのであります。この点に関し、緒方総理通産大臣公取委員長所見を求むるものであります。  質問の第三点は、不況カルテルにおける価格協定の問題であります。不況時において需給均衡市場の安定をとりもどす方法は根本的には生産数量制限以外にはあり得ないのであります。カルテル認可を受けて共同操短行つたあとにおいても不況を克服することができないということは、根本的には、不況の度合いがより深刻化したか、あるいは操短率が少いためであつて事態克服の本来の手段操短率の強化以外にはあり得ないのであります。従つて不況九ルチルの内容生産数量協定をもつて足りるのであります。しかるに、改正案によれば、価格協定をも認めようとしているのであります。価格協定を認めると、不況克服のための真剣な努力を怠り、安易な価格維持政策につくことになりやすいばかりでなく、需給均衡のために必要な操業短縮を避け、国内価格価格協定によつてつり上げ、これによつて得た独占利潤をもつて過剰商品を国外にダンピングする危険性がきわめて大となるのであります。カルテルを一切認めない現行独禁法のもとにおいても、このような事態はすでに生じているのであります。経済審議庁も、同庁で発行しておる物価日報六月号において、カルテルによる国内価格維持輸出ダンピングは多くの産業内部で行われていることを認めており、硫安の問題のごときはきわめて顕著な例であります。かくのごとく、価格協定を認めるということは、国民利益を大きく侵害される危險性きわめて大なるものがあると言わざるを得ないのであります。この点に関し、通産大臣農林大臣経済審議庁長官所信を承りたいと思うのであります。  質問の第四点は、合理化カルテルにおける品種協定に関する点であります。独禁法根本理念は、自由競争によつて、よいものを安くつくり、安く売るということであります。従つて独禁法理念からすれば、企業合理化自由競争によつてこそ、つまり独禁法のもとにおいてこそ最もよく促進されるという建前であるはずであります。ところが、改正案には、企業合理化遂行するために合理化カルテル独禁法適用除外にしようという、独禁法建前にまつたく反するような条文が挿入されておるのであります。前国会提出された独禁法においては、合理化カルテルで認容されておる共同行為は、大体において自由競争を阻害するようなものでなく、しさいに検討すれば必ずしも独禁法建前矛盾するものではなかつたのであります。ところが、今次改正案では、品種制限、すなわち生産分野協定まで認められることとなり、独禁法建前と完全に矛盾することになるのであります。品種協定とは、それぞれの品種生産を最も能率の高い企業に集中することにほかならず、必然的に独占あるいは少数独占の状態をもたらすものであります。それによつで幾多の弊害を生ずることを予想されるのでありまして、この点に関し通産大臣の率直なる考え方を承りたいと思うのであります。  最後に、再販売価格維持契約に関する点であります。再販売価格維持契約独禁法適用除外とした主たる目的は、生存闘争的な死活の競争から濫費を余儀なくされておる中小商工業者に、再販売価格維持によつて一定のマージンを確保せしめ、公正な競争によつて健全な経営を行う条件を与えようとするところにあると思われるのであります。しかるに、消費生活協同組合労働組合農業協同組合等本条適用しないとなると、せつかく本条を設けた趣旨がそこなわれ、その効果も減殺することになるのであります。すなわち、消費生活協同組合等値引き販売圧迫によつて小売商は、再版売価格維持契約を締結しても、それを実行することは困難となるのであります。もちろん、消費生活協同組合あるいは労働組合等福利事業存在意義組合員生活に必要な物資を市価より安価に供給するところにあります。しかしながら、本条規定によつて販売価格維持契約は可能となり、商品化粧品とか家庭薬品とかいつた限られたものであるといわれており、消費生活協同組合等が取扱う商品の一部にすぎず、さらに消費生活協同組合等は、一般小売商と同様に、再販売価格維持しても、利益の割もどし、他の商品割引券交付等によつて、値引き同様な利益組合員に与えることが可能であります。従つて本条趣旨効果をそこなわれてまでも消費生活協同組合等本条適用せんとする必要がないのであります。この点に関し、通産大臣労働大臣農林大臣公取委員長所見を承りたいと思うのであります。  これを要するに、今回の改正案は、きわめてあいまいであり、またきわめてずさんであります。しかも改正の意図するところは、一部大企業の鼻息をうかがい、公取委は本来の使命を忘れて通産省の圧力に屈服する等、わが国経済の健全な発達を阻害する多くの要素を包蔵しておるのであつて、私は、特に本改正案実施のあかつきには、消費者利益はそこなわれ、中小企業に著しく圧迫が加わるであろうことを強調いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎登壇
  10. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答え申し上げます。  本改正案独禁法本来の目的を没却するものではなかという御質問であつたと存じますが、本改正案は、独禁法制定後の内外の諸情勢、なかんずく最近における、わが国経済の諸情勢にかんがみまして、本法わが国経済特質実情とに合致するように改正するものでありまして、経済民主化根本要請とあえて背馳しないものであると政府は考えております。  次に、本改正案によると、中小企業消費者階級に対し不安を与えはせぬかという御質問でありますが、独禁法改正趣旨は、本法わが国経済特質実情に合致せしめんとするものでありまして、特に本法制定当時の内外経済事情と現在とは相当に違いがありますので、わが国産業国際市場現状に対応せしめ、またわが国経済現状からいつて、必要な資本の蓄積、または生産業者共同行為一定の場合認め得るよう調整を行わんとするものでありまして、巨大産業と一部の者のために改正行つたというようなことは絶対にありません。  右お答えを申し上げます。     〔国務大臣岡野清豪登壇
  11. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) お答え申し上げます。  今度の独禁法改正につきまして、通商産業大臣が割込んで行つたというようなことでございますが、産業政策並びに通商政策の全責任通産大臣が持つておりますので、公取委員会がなさることにつきましても、やはりこれが産業通商貿易にいかなる影響を与えるかということについては非常な関心を持つておりますと同時に、これを運用して行きますには、片棒をかつがなければならぬと思います。同時に、これが二重認可のように仰せになりましたけれども、公取委認定というものがないと、われわれの方では認可できない、こういうことになつておりますから、われわれといたしましては、十分実情をよく調べるという意味におきまして認可を与えて行かなければならぬと思います。  また、強制報告をさせるということでありますが、これはそうむやみに不必要な調査をするわけではございませんで、最も慎重に考えなければならぬ。この改正につきましては、われわれは十分な調査をしたいという意味におきましてやるだけでありまして、弊害はないと思います。  それから、生産数量制限で安定が得ちれない場合に初めて価格協定を認めるわけでありますから、価格協定は、まず生産数量制限ということに非常な安定性を置きまして、もしそれができないということになつて初めて出て来る活動の種類であります。  また、品種協定につきましては、合理化、了すなわちコストを引下げられるとい場合にのみ認めるのでありまして合理化の方には非常に役立つと思います。ただ、不況カルテルの場合は、私どもといたしましては、非常な慎重を期しまして、そうやすやすとこれに対して認可はできないという感じを持つております。  再販売価格につきましては公取委から御説明申し上げます。(拍手)     〔国務大臣保利茂登壇
  12. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 肥料工業カルテルが結成されて、生産制限でもやられて、肥料がさらに高くなつて来るというようなことの御懸念だと存じますが、秋は、この改正案によりましても、肥料工業にただちにカルテル結成条件が整うとは思つておりませんから、その懸念はなかろうかと思いますが、いずれにしても、消費者である農民のために、食糧増産の上からいたしましても、また農家経済の上からいたしましても、できるだけ肥料を安く確保するという対策は至急打立てなければならないと存じ、対策を講じて参るつもりであります。     〔政府委員横田正俊登壇
  13. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) ただいまの御質疑の中の主務大臣認可制の問題でございますが、これは、この前の国会でも私から申し上げましたように、このカルテル独占禁止法適用除外にするかどうかという問題につきましてはいろいろな考え方があります。つまり、独占禁止法の解釈並びに適用の問題、つまりカルテル弊害を除去するという点に非常に重点を置きますと、これはまつたく独占禁止法上だけの問題でありまして、その立場に立ちますれば、公正取引委員会認可をいたす、あるいは主務大臣意見を聞いた上で公正取引委員会認可をするというのが筋の通つた考え方と存じますが、しかし、カルテル産業政策上ある程度認める、つまりカルテル必要性認定するという面になりますと、やはりそれは所轄の主務大臣がふだんからそういう行政面を見ておりますから、そこの判断はしつかりすると思います。従いまして、今回の法案につきましては、いろいろな立場からいたしまして、当初におきましてはいろいろ見解の相違もありましたが、最後におきましては、本法案に示されましたように、実質的には公正取引委員会認定ということが必ず前提になりましてその認定の下に立つて主務大臣認可をいたすというところにおちつきました。これは今後の運用の問題といたしまして、結局いろいろ御懸念のないように運用いたしたいと考えております。  次に、通産大臣強制調査権を持つことの可否でございますが、これは、認可制をしきまして、主務大臣に一応認可権があるということにいたしますれば、ある程度の調査権があるのは必然でありまして、この点は、通産省におきましても、やたらにこの調査権を振りまわすというようなことは全然ないと存じます。それから、最後再版売価格維持の問題でございますが、ただいまのお話の通り、この制度は、ぜひ小売業者の最低の利潤確保いたしますために、この改正案で認めていただきたいことであります。ただ、これは、この前の国会におきまして、労働組合消費組合等活動を阻害するようでは困るという御意見が非常に強うございましたので、その点を非常に参酌いたじまして、つまりこれらの組合制度趣旨を殺さないようにという趣旨で、ああいう適用除外を置いた次第でありまして、詳しいことは十分に委員会等において御審議をいただきたいと思います。     〔政府委員安井謙登壇
  14. 安井謙

    政府委員安井謙君) お答え申し上げます。本改正法案によりますと、労働組合消費生活協同組合、その他労働者福利共済活動を行つている団体については、再販売価格協定の相手方にはならないことになつております。また、公正取引委員会は、自由な競争が行われでいる商品についてのみ再版売価格維持契約を認めることになつておりますので、これによりまして小売業者等利益が不当に侵害されることはないと考えております。
  15. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 阿部五郎君。     〔阿部五郎登壇
  16. 阿部五郎

    阿部五郎君 私は、ただいま議題となつております独占禁止法の緩和を目的とする改正法律案につきまして、日本社会党を代表して、若干の質疑をいたしたいと思うのであります。  吉田内閣は、占領政策是正をもつてその存立の使命の重要なる一部となさつおられます。われわれは、占領政策日本民主化について進歩的な役割を果したことを認めながらも、その日本特殊性に適合しない部分については、これが是正の必要について、これを認めるにやぶさかではないのであります。しかしながら、吉田内閣が、占領政策是正の名のもとに行わんとするところは、さきに一度本国会提出いたしまして、今回はそれを再提出することを躊躇されておりますところの警察法改正といい、義務教育学校職員法といい、また現に今国会審議中でありますところのストライキ規制法といい、いずれも国民の権利、自由を制限し、政府の独裁的な支配力を強化せんとするものでありまして、まつたく民主化に逆行するものであることはわれわれ、国民のうちでも特に勤労大衆とともに最も遺憾とするところであります。(拍手)今回の独占禁止法を緩和せんとする企てもまたその一つであると言わなければなりません。そもそも、占領軍が日本において行わんとしたものは、いわゆるブルジヨア・デモクラシーであり、そのために復活せしめんとしておつたものは、すなわち健全なる資本主義であります。健全なる資本主義の存在の基礎は、私的独占が排除せられ、自由なる競争が行われ、公正なる取引が確保されることにあるのは言うまでもありません。この独占禁止法制定理由は、実にここにあつたものであると思うのであります。われわれは資本主義を認めるものではありませんが、もしそれに若干の長所があるといたしましたならば、それは自由競争のもとに個人の創意が発揮せられ、生産力の発展向上に役立つことにあると思うのであります。しかるに、わが国の程度にまで資本主義が高度に発達をいたして参りますと、単に自由競争のもとに創意を発揮することによつては、とても利潤確保することが不可能になつて来るのであります。少くとも困難になつて来るのであります。そこで、必然に各事業部門の企業者の結合によつて、いわゆる独占利潤を追求するに至るのでありまして、この傾向を放任するか、あるいはこれが規制を緩和するといたしましたならば、国民独占企業の収奪にゆだねられ、国内市場は狭められて、生産力は発展しなくなるのであります。その発展を押えられるのであります。すなわち、資本主義の長所はすべてつみとられてしまつて悪弊のみの跳梁を許すことに相なるのであります。  政府は、あるいは、今回の改正はその程度に至るまでにははるかに遠い緩和にすぎないとおつしやるかもしれません。わが国資本主義は、しかしながら、すでに高度に発達して、本質的に独占に向う必然的な傾向を帯びて来ているのでありますから、すでに現行法のもどにおいてすら、あるいは違法の、あるいは脱法のカルテルが続出しておることは、諸君の御承知の通りであります。ここに、もし、この改正法律によつて突破口を開きましたならば、必ずや独占禁止法制定趣旨は根本的に没却されるに至るであろうことが憂えられるのであります。かくて、国民全体に及ぶ消費者は搾取と収奪にゆだねられ、政府はこれについていかなる処置をとるかに迷うことになるのではなかろうかと思うのであります。この点について、政府におかれてはいかなるお考えをお持ちになつておるのでありましようか、承りたいと思うのであります。  第二に、政府、英国あるいは西ドイツにおいてもこの程度のカルテルは許されており、現行法のごとき厳格なる規制を受けておるのは、日本とはるかに事情の違つた、強力なる資本主義を繁栄させておるところのアメリカあるのみであるから、経済の底の浅い日本でこの程度の制限を緩和するのは必要やむを得ざるものであると言われるようであります。しかしながら、これらの西欧諸国におきましては、伝統的に国民の厚生をはかり、その生活を擁護するところの立法が早くから行われておつて、ことに英国のごときは、ゆりかごから墓場までといわれる、あの社会保障が行われておるのであります。一方に独占企業の収奪を許せば、反面にそれだけの一般消費国民生活を擁護するところの必要のあることは当然のことであります。その用意のないわが国において独占緩和を行わんとするがごときは、眼中人民の幸福なく、ひたすら独占資本家を擁護すれば足れりとする観念に立つておられるものではなかろうかと考えるものであります。(拍手)少くとも国民多数はそういう考えが浮ばざるを得ないであろうと思うのでありますが、政府のお考えはいかがでありましようか。  第三に、底の浅い日本の経済においては、一たび不況に陥つた場合に、一つの産業の破綻はたちまち全産業に波及し、その影響は中小商工業も免るることができず、一大混乱となつて国民全体の不幸を招来するから、その産業がみずからの協力によつて不況を切り抜ける余地を与える力を養わさせるような道を開いておかなければならぬというのが、この改正立法の重大なる理由になつておるかと思うのでありますが、こういう危険が現にあることは認めるにやぶさかでありません。しかしながら、こういう危険があればこそわれわれは、基礎的重要産業はこれを国営となし、公益の立場から、いわゆる社会主義計画経済を行わねばならぬと主張するのであります。政府のなさんとするがごとく、カルテルを許し、独占利潤を保護することによつて資本の蓄積を可能ならしめんとするがごときは、国民を収奪して資本を蓄積させんとするものであり、(拍手国民生活維持とその向上を考えないものであつてこういうことを政府がしなければならぬことになるとうことは、すなわち、日本の資本主義が自由放任ではもうやつて行けない、どうしても公益という立場からの計画経済を行わなければならぬということを、はつきりと示しておるものであると思うのでありますが、(拍手)この点について政府のお考えはいかがでありますか。第四に、日本経済が目下一番悩んでおる問題は輸出の不振であります。その不振の原因が、国際物価に比して国内の物価が高いことであるということは、何人も認めるところであろうと思います。そこで、産業合理化の必要があると政府は言うのであります。この改正法案においても、合理化カルテルというのを認めておられます。すなわち、この点に着眼なさつたのでありましよう。しかしながら、本来カルテルというものは、物価を下げるために行うものではなくて、物価を引上げるため、少くとも下げるのを押えて物価を維持するために行うものであることは申し上げるまでもないことであろうと思います。今、日本の経済においては、国内物価を引下げる必要があるのであります。しかるに、引上げあるいは維持することを目的とし機能とするところの合理化カルテルなるものを行わんとすることは、まことに理解に苦しむところであります。  一体、日本産業において、特に価格が高いために一般産業に影響を及ぼしているものは、主として重工業あるいは化学工業であります。しかも、これを合理化するにあたつては、これらの産業においては、コストの構成要素は労働賃金ではなくて、主として原材料の価格の高いことにあるのであります。(拍手)それがために、どうしてもまず原材料を安く手に入れることを考えなければならぬ。安く手に入れようとすれば、当然近いところにある中共における鉄鉱石、粘結炭、塩あるいは大豆というがごときものに着眼しなければならぬにもかかわらず、政府は、何かと中共貿易については口実を弄して、これがために努力することを怠ておりながら、かえつて物価を引上げるがために合理化カルテルを許そうというのは、まことに理解に苦しむのであります。政府はこの点いかがお考えになつておるのであろうかと思うのであります。われわれは、基礎的重要産業はこれを国営となして、公益の立場から行わなければならぬと思うのでありますが、政府がそれをどうしてもやらないとするならば、せめて国民全体に及ぶところの生活の脅威とならないような産業政策をとらなければなりません。しかるに、かくのごとく独占利潤を許す方向に向おうとするのは、一方において少しも国民生活を考えないとともに、一方にはあまりにも巨大資本家におもねるものでなかろうかと思うのであります。この点いかがでございましようか。さらにいま一点。わが国は海外に大いに経済的には発展しなければなりません。そうしなければ、この狭い国土で多大の人口を擁して、乞うてい生きる道は求めがたいのであります。そのためには、大いに平和外交を振張するとともに当面ガツトに加入したり、あるいは諸外国と通商航海条約を結んだりしなければなりません。しかるに従来わが国が海外に経済的進出を行わんとする場合には、往々にして諸外国からダンピングの非難を受けたことは、われわれの記憶に新たなるところであります。今回カルテルの結成を許して、それによつて海外からダンピングの非難を受けることはないであろうか。政府は、おそらく、この程度の緩和によつてそんな非難を受けることはない、ことに諸外国はこの程度のカルテルの結成はいずれ許しておるのであるからと言われるであろうと思います。しかしながら、それらの諸外国においては、一方において政治的自由は確保せられ、労働者の労働運動の自由はほぼ完全に保持せられております。わが国においては、一時労働運動の自由は与えられたことがあるけれども、吉田内閣になつて以来、刻々とその自由は制限せられ、ことに現にストライキ禁止法がこの国会において審議中であります。一方においては、国内で企業の従業員に対してストライキを禁止し、低賃金で合理化の名のもとに労働の強化を自由にやることのできるような態勢を整えておいて、そして海外に対しては、カルテルの結成を許して、国内では高く売り、海外には安く売ることのででるような素地が、この法律とストライキ制限法とのこの二つの立法によつて完全に整えられるのであります。かくのごときことになりましたならば、国内では従業員を収奪することを自由にし、海外に売るにあたつては、国内の消費者を自由に収奪することによつて、海外には幾らでも安く売ることができるのでありますから、さような場合においては、必ずや昭和の初期に行われたごとき、——日本はあの当時のごときソーシヤ・ダンピングをやるのではないかという危惧の念が諸外国に勃然として起るのは当然の成行きではなかろうかと思うのであります。(拍手)そういたしましたならば、日本が将来海外に伸びんとするにあたつて必要とする通商航海条約や、あるいはガツトの加入などに対しても、この改正立法ははなはだ障害をなすであろうかと思われるのであります。少くともそのおそれがあると考えるのでありますが、政府においていかにお考えになつておりましようか。  最後にいま一つ。今回この改正立法に対して賛成をし、あるいはむしろ進んで独占禁止法を廃棄することを望んでおるところの団体は、まず日本鉄鋼連盟、経済団体連合会、日本紡績協会、こういうところでありましよう。また、あくまでも独占禁止を強化して、少くとも現状維持して、国民独占価格の収奪から守ろうとしておるとこの団体は、日本中小企業団体連盟、全日本中小工業協議会、あるいは労働者や農民は申すまでもないのであります。かような点から考えますると、これらの独占禁止を緩和すべし、あるいは廃棄すべしと主張しておる団体においては、経済団体連合会にしましても、紡績連合会にいたしましても、自由党に対して巨大なる政治献金を行つておることは、公に発表されたる事実であります。(拍手)私は、政府においてわいろいろな理由をつけて、この改正立法を必要とすると言われておりますけれども、この改正立法提起の隠れたる原因は、これらの大資本家に奉仕せんとするものがあるのではないかと思うのでありますが、たはしていかがでありましようか、お尋ねいたしたいと存じます。  以上をもつて私の質疑といたします。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎登壇
  17. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えを申し上げます。この改正案は、独占利潤のために国民生活の要望を没却するものではないかというよ庁な御質問であります。今度の改正は、先ほども申し上げましたように、独占禁止法日本の経済の特質と実態に相応するように調整しようとするものでありまして、独禁法目的、すなわち経済民主化への寄与という根本方針に反するものではもちろんないと信じております。  ヨーロツパにおいて本改正案程度の緩和が行われておるというが、日本とは国民生活の安定度が違うではないか、また、わが国の経済は底が浅いので、これが安定のためには、公益のため計画経済が必要ではないかというような御質問でありましたが、御説のように、戦後わが国際経済は幾多の脆弱性を持つており、ために、不況もしくは恐慌等に対する適応力が十分であるとは申せません。従いまして、不況に対応する必要がある場合及び合理化遂行上特に必要がありまする場合には、事業者共同行為一定条件で認容せんとするのが本法案趣旨でありまして、政府としては、公正かつ自由な競争を促進しようといたしまする独占禁止法根本精神はあくまで尊重する所存でございます。(拍手)     〔国務大臣岡野清豪登壇
  18. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) お答え申上げます。これは、産業独占利潤を増加するというような積極的なものではございませんで、むしろ産業の崩壊を未然に救うための消極政策の現われであるのであります。それから合理化カルテルでございますが、これは非常にコストの引下げをするわけでございますから、輸出に対しては役に立つと思います。それかと申しまして、この程度におきましてソーシアル・ダンピングのそしりを受けるということは毛頭ないと私は考えております。  それから、これは大資本擁護じやかいかというようなお話でございますが、大きな企業中小企業とは非常に密接に関連しておるものでございまして、もし一たび不況が来ますときには、むしろ中小企業の方がその波をこうむることが大きいのでございます。大きな企業中小企業ということなく、そういうときには何とか救済策を講じなければならぬ、こういう意味不況カルテルを考えておる次第でございます。(拍手
  19. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 春日一幸君。     〔春日一幸君登壇
  20. 春日一幸

    ○春日一幸君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました、世にいう独占禁止法改正につきまして、次の諸点につき政府並びに公正取引委員会に対し質問をいたすものであります。  かつてわが国経済は一部の財閥によつて独占せられ、その富は、大衆の貧困を外に、これら財閥と、これにつながる一群の権力者によつて壟断せられておつたのであります。利潤の追求と所有の拡大のため負埜飽くを知らざるこの財閥は、やがて軍の帝国主義と合体し、逐次侵略戦争を巻き起し、かくて祖国と民族をあの奈落にけ落したのでありますが、このことは、放漫野放図な資本主義経済が当然避け得べからざる歴史的コースであつたのであります。ここにおいて、平和的文化国家の再建を決意せるわが国は、かかる惨禍の根源を排除するために、まず戦犯的財閥を解体し、次いで企業結合の解体、企業相互間の経営者の重複の禁止、その他証券保有関係の絶滅等、経済民主化のための各般の措置を断行したのでありますが、さらに将来にわたつてこの信条と決意を貫き、民主的経済の基盤を保障するためにここに制定されたのが、実に産業憲法とも称すべきこの独占禁止法であるのであります。(拍手)しかるところ、吉田内閣は、今次ここに、この経済憲法たる独禁法に関して、わが国経済の実態に沿わずとの独断をもつて、ほとんどその機能を窒息せしめるほどの改正を行わんとしておるのであります。すなわち、本改正によつて、株式の保有、役員の兼任の制限は大幅に解除されんとしております。やがて、財閥は、ここを突破口として、再び日本経済の独占舞台に復帰することでありましよう。さらに、不況カルテル合理化カルテルの美名のもとに、市場独占と事業支配力の集中が復元され、カルテル価格の一方的宣言と相まち、かく利潤の収奪は資本家グループによりで強行され、しこうしてこの半面、必ずや勤労者は高物価と低賃金に再び呪縛されるに至るでありましよう。(拍手かくのごときは、資本家と吉田政府との結託による恐るベき陰謀であると断ぜざるを得ません。(拍手)すなわち、かつての財閥、資本家たちの復辟運動は、独禁法の緩和というこの手法を選び、さらに吉田政府による占領政策是正という一連の反動逆コースに乗つて、ここにその野望を急激に達成せんとしておるのであります。  一体、政府は、この独禁法が当初制定された当時のわが国民の決意を、もはやお忘れになつたのでありましようか。財閥の復元と経済の独占的支配の危険をはらむ一切の経済行為を苛酷なまでに禁止したこの独禁法こそは、再びあの惨禍がわれら国民に至らざらんことを念じて、あの敗戦の廃墟の中に端座した、われら八千万民族の鉄の誓いであつたのであります。(拍手)従いまして、この独禁法は、ただ単に経済行為の基準を規制するものたるにとどまらず、財閥の復元を阻止し、企業独占支配を排するための民主経済不動の憲章とも称すべきものであると思うのであります。私どもは、思いを本法制定の当時にめぐらし、誓つて平和を守り、民主主義を保持せんとするならば、この経済憲章の根本精神に背反するがごときいかなる改正も、かたくこれを慎むべきであると確信するものでありますが、政府は、この独禁法の権威をそもそもどのようにお考えであられるか、まず政府の根本的見解についてお伺いをいたしたいのであります。  第二の点は、政府は、企業不況に対処する自衛手段として、現在禁止されている企業者の共同行為を、いわゆる不況カルテル合理化カルテルの名によつて、ほとんど自在に解放せんと、しているのでありますが、本改正による政府の真のねらいは一体何でありましよう。たとえば、生産数量の共同制限を許し、販売数量に企業本位の統制を加えしめ、さらに協定価格によつて企業利潤確保せんとする。かぐのごときは、明らかに企業の営利性をあらゆるものに優先せしめ、一方、消費者を常に不利な立場にくぎづけするものでありまして、これによつて企業の公益性、社会性ははなはだしく喪失されんとしておるのでありますが、政府は一体、企業国民の福祉のために存在すべきものであると考えているのか、それともまた、国民企業利潤のために奉仕すべきものであると考えているのか、一体どちらでありましよう。  もとより、本改正案には、不況カルテル容認のためのしかじかの制限規定がありまするけれども、その制限条項ば語るに落ちるほどの抽象文字の羅列にすぎず、それは概念的叙述にとどまるものであつて、たとえば、何人といえども、微妙な構成に立つ生産費を的確に摘出したり、あるいは複雑多岐にわたる企業の前途について正確な見通しを立てることができるでありましようか。従いまして、これら不況カルテル合理化カルテルは、このもつともらしい制限条項にはほとんど拘束されることなく、本改正を契機として続々出現し、企業は営利一辺倒の方角へと狂奔するに至るでありましよう。不況カルテルは、その業種の商品価格がその生産費を下まわる場合というのが認否の限界になつておるのでありますが、この点に関し、たとえば公正取引委員会の横田委員長は、前国会の三月五日の経済安定委員会において、硫安等については、原価計算なるものは非常にあいまい、かつ、どこがほんとうのものか、なかなか把握いたしがたいものであると、現に答弁いたしておるほどのものであります。かくのごとくあいまい模糊として捕捉しがたい生産原価を基準とし、これによつて不況トラスト認容の限界を決定せんとするがごときは、これはあたかもゴムひもによつてものさしをつくらんとする愚策か、しからずんば、この伸縮自在なカンニングの尺度によつて、一部企業者たちの現に犯しつつある独占禁止法違反事犯を故意に合法化せんとするの政治的陰謀以外の何ものでもないと信ずるのであります。(拍手)  現に、昨年三月来、綿紡、化繊の企業者たちは、通産省と結託して、操業短縮の共同手段を講じてその価格のつり上げをはかり、この不公正なる手段によつて厖大な利潤を獲得したことは、天下周知の事実であります。この綿紡の不公正ともおぼしき操短については、公正取引委員会は、これを非常に遺憾として通産省に申入れを行い、また化繊の操短については、独禁法第四条の違反と認めたので審判を開始したことが、本年三月五日の経済安定委員会において、これまた横田公取委員長から明らかにされているのであります。さらに、硫安協会が本年二月発表せる硫安の一本建建値による共同行為については、これは独禁法第四条の対価の決定、あるいは第三条の取引制限ということに当るわけで、この点については、硫安メーカ側からいろいろ弁解の言葉を言つているが、いずれも公正取引委員会は納得するに至つていない旨、これまた横田委員長によつて述べられているのであります。  すなわち、これらの経緯によつて、われわれがおのずから判断できることは、察するところ、資本家たちは、現行独禁法下にあつては、その欲するところの利潤確保するのに、何かと小うるさくてしようがないので、いつそ、この際、保守政権の命のあるうちに、この法律をすつかり骨抜きにしようとし、財閥の傀儡たる保守政権またその本領を発揮して、ここに本法骨抜き案の提出なつたものと考えるが、実際には、彼ら関係企業者たちの本法律案に対する要請はどのようなものであつたか、この際その状況についてお示し願いたいと思うのであります。  しこうして、この不況カルテル合理化カルテルの容認は、その表面上の理由をいかにしさいありげに表現してみたところで、しよせんは、企業者集団による価格の安易なるつり上げの道具となるものであつて、その結果は、おのずから企業の創意を鈍化させ、かつ消費者にはその分量だけ負担を重くする結果になると思う。このことは、独禁法第一条にいう、自由な競争によつて事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにして、雇用と国民所得の水準を高め、もつて一般消費者利益確保するという本法の根本義に全然背反すると思うが、政府は、これに対し、いかなる見解を持つているか、この機会にお示し願いたいと思うのであります。(拍手)  さらに、この機会に横田公取委員長に伺つておきたいことは、綿紡の操短は遺憾として、さきに通産省に申し入れられたとのことであるが、遺憾に感じられたのは、その共同行為がしよせんは独禁法に違反するからであつていやしくも本法運営の信託を負う公取の委員長が、ただ何となく遺憾に感じたりするはずはない。また、違法でないならば、いかに公取委員長といえども、その合法行為に対し、かつてに遺憾に感ずるなど、そのようつな感傷に浸ることを本法は許してはいないのであります。従つて、この綿紡の共同操短独占法違反の嫌疑ありとするならば、なぜに審判審決して適法の処断を行わなかつたのであるか。また化繊の操短は違反嫌疑の事犯として審判したはずであるが、本事犯は結局いかに処断したか、その経過とてんまつについて、つまびらかにいたされたいのであります。さらに、硫安協会の一本建建値は、独禁法に違反するのか、しないのか。公取委員会がこんな明瞭な問題に長々と思案にふけつていることによつて、この産業憲章の権威は日増しに冒涜されているのであるが、横田公取委員長は、これら事案の処理を通じ、本法第一条が指向する一般消費者利益なるものは一体どのように確保したのであるか。これらの諸点について明確なる御答弁を願いたいのであります。(拍手)  第三の質問は、本法改正による不況カルテル合理化カルテル制度化は、これによつて、大企業の言うその不況は、おそらくは完全に、かつ過分に救済されるであろうが、一方このことは、中小企業にそれだけ圧力を増大する結果になると思うが、政府はこれに対しいかなる対策をお持ちでありましようか。申し上げるまでもなく、大企業はすでにその企業自体にみずから多分の企業独占の要素を抱懐するものでありまして、かつその競争相手は比較的少数であります。従いまして、大企業が強大なるカルテルを結成することは、きわめて容易でありまして、かつそのカルテルの効率はおのずから絶対的と申しても過言ではないのでありましよう。しかしながら、群集する中小企業者などが結成する安定法による調整組合などは、この大企業トラストが出現した場合、当然その重圧を受けて、その効力は喪失することは当然であります。かつて、小笠原国務大臣は、過ぐる第十五国会において、経済審議庁長官として、本法律案の本会議討議において、本問題に関しては次のごとく答弁をいたされております。すなわち、今度の改正では、アウトサイダーの抑制はこれをいたしておりません、けれども、私どもは、実際上大企業ではこれで安定をはかり得る、かように信じておる、述べられておるのであります。すなわち、本改正案目的とするものは、ただ大企業の保護であり、大企業の安定であつて中小企業のこうむるその影響については、何ら適切なる措置が講ぜられてはいないと思うのでありますが、政府中小企業救済のための施策は、本法改正に並行して何か考えられておるのかどうか、この点についてお伺いいたしたいのであります。  第四の質問は、本法改正案による再版売価格維持契約に関するものであります。改正案によれば、不況カルテルといい、合理化カルテルといい、これはもつぱら生産企業者のための保護規定であります。すなわち、生産企業者の経営は、これによつてすでにその万全が期せられておるのであります。しかるに、ここに加えて各販売段階にまで及んでその販売価格を拘束せんとするがごときは、まことに望蜀の負欲行為そのものと断ぜざるを得ません。(拍手政府にして、かりそめにも国民生活の安定を口にしながら、いやしくもかかる消費者の犠牲をしいる貧欲立法に組するがごときは、口頭の禅、表裏変々、まことに天下の政道は厳にかくのごときものを排撃しておるのであります。しかのみならず、政府は、消費生活協同組合や各種の職員共済会、その他八幡製鉄、富士製鉄広畑工場等の購買会のごとき各種団体の厚生機関が、かかる規制によつてその機能に重大なる悪影響をこうむることについて、何ら顧慮しないのでありましようか。まことに吉田内閣は、資本家の要請には胸を開いて一議に及ばず応諾し、勤労大衆の熱誠なる輿論には常にかなつんぼを堅持して譲らないのであります。スト規制法といい、本法といい、まことに吉田内閣政策は、国家民族のためいよいよ深憂にたえないことばかりであります。(拍手)小坂労働大臣は、先日の細迫君の表現をもつてすれば、真珠が水に沈んで行くような、ほのかな知性がほの見える御人であられるそうでありますが、ならば、労働者の持つ厚生機関の機能が、今や本立法によつて貧欲という泥濘の中に没し去られようとするのとき、これに対しいかなる救済策を講ぜられたのであるか、この際小坂労働大臣よりその対策について伺つておきたいのであります。  第五の質問は、自由党の資本主義経済政策は今もなお日本の実態に沿うものであるかどうか、この問題について政府の御見解をお伺いいたしたいのであります。すなわち、本改正案の提案説明によれば、この改正案は、日本経済の特質と実態に照し、これに適合せしめるための措置であると述べられておるのであります。そこでお伺いしたいことは、自由党の経済政策自由競争を基本原理とする資本主義であり、しこうしてこの独禁法を貫く基本精神は、またそれと軌を一つにするものであります。しかりとすれば、今ここに独禁法改正案提出されたゆえんのものは、自由党の標擁する資本主義は、もはや日本経済の特質とその実態に沿わなくなつたことを意味するものであるかどうか。すなわち、吉田内閣が、わが国の貧弱なる経済立地条件のもとに、豊富なアメリカ経済の方式を実施したことは、今日日本の経済が広汎なる不況におおわれるに至つた原因であつて、すなわちこれは、うのまねをしたからすの愚劣なる誤謬とでも解釈すべきものでありましようか。(拍手)  もとより、社会主義計画経済を標榜するわが日本社会党が、その根本理念を異にするこの独禁法を支持するゆえは、この法律目的、すなわち私的独占禁止と集中的経済力の排除という、この一点においてその目的が合致するからであります。野放図で無計画な資本主義生産は、底の浅い日本経済においては、たちまち過剰を来し、その価格を暴落せしめ、やがてその企業を破綻に導くは当然の帰趨であります。基礎産業の公益的経営、中小企業の育成発展、需要と供給との科学的基礎に基く計画生産、今こそ、わが党の社会主義計画経済の救国政策によらずんば、独禁法改正などという、かかる末梢的反動立法をもつてしては、わが国経済の再建はとうてい不可能と考えるが、この点に対し、政府は、みずからの自由放漫な資本主義経済に対し何か反省するところありやいなや、緒方総理の御見解を承りたいと思うのであります。  以上数点に対し、政府の明確なる御答弁を要求するものであります。(拍手)     〔国務大臣緒方竹虎登壇
  21. 緒方竹虎

    国務大臣緒方竹虎君) お答えをいたします。  政府独禁法の権威をどう考えておるかという御質問でありました。自由な私企業の創意とくふうを重んじ、その間の公正な競争確保することによつて国民経済の健全な発展を期待するという独禁法の根本観念を堅持する方針には何ら変更はございません。  それから、本改正案によれば、不況カルテルの名において企業者の共同行為を自由ならしめるものではないかという御質問でありますが、戦後日本経済は幾多の脆弱性を持つており、不況が深刻化したような場合には、わが国産業が重大な危機にさらされることも予想されますので、不況に対処するため、必要がある場合に、事業者共同行為一定条件のもとに認容せんとするものでありまして独禁法根本精神はあくまで尊重して参るつもりでございます。  それから、本改正案そのものが独禁法第一条の根本義に背反するのではないかという御質問であります。今次の改正は、独禁法日本経済の特質と実態に即応せしめるためのものでありまして、私企業による市場独占のもたらす諸弊害を除去し、公正かつ自由な競争を促進することにより、国民経済の民主的かつ健全な発展を期待するという独禁法根本精神はあくまで尊重いたします。  それから最後に、日本経済の再建自立のために、自由党の唱えておる自由経済ではだめではないかという御質疑でございまするが、日本経済再建の基調は、あくまでも企業の創意と発展を重んずる自由かつ健全な企業活動にこれを求めたい所存でございます。  以上お答え申し上げます。     〔国務大臣岡野清豪登壇
  22. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) お答え申し上げます。独占資本家を擁護するというような何か御趣旨がございましたが、私の見るところでは、戦後そんなに恐れるような資本家がない、むしろ商社としては弱体過ぎまして、国際競争上非常に不利な立場にありますので、商社をもう少し強化して行かなければならぬ、こう考えておる次第であります。  それから、生産費がわからないからというようなお話がございました。そこで、私どもといたしまては、生産費をよく検討して間違いのないようにと存じまして、調査する権利を残しておるわけでございます。  それから、合理化によつて御承知の通りにコストが引下りますので、この点におきましては、消費者も、いろいろな人も助かるわけでございます。また、価格の安定をして行きまして、事業が継続されるということになりますれば、雇用というものにはやはり有利になつて来るわけであります。その点は、私は意見を異にしております。それから中小企業安定法改正案が考えられております。  それから、先ほど副総理からもお話がございましたが、今後貿易上国際競争が非常に激化するということは皆様方御承知の通りでございまして、この非常に激化したところの輿際貿易上に、日本の経済界——その経済界と申しますのは、非常に基礎が浅うございまして、微弱なのでございます。そこで、その経済界の崩壊を未然に防ぎたいというのがこの趣旨でございますから、この点は誤解のないようにお願いしておきます。(拍手)     〔政府委員横田正俊登壇
  23. 横田正俊

    政府委員横田正俊君) 綿紡操短並びに化繊の問題につきましても、前国会で一応の公正取引委員会といたしましての見解を申し上げたつもりでございますが、綿紡操短につきまして私がまことに遺憾であると申しました趣旨は、あの事件につきましては、はつきりいたしました証拠を把握することができなかつたことと、政府の強力なる勧告によつて操短が続けられておるという点からいたしまして、正式に事件として取上げることを差控えたわけでございます。従いまして、操短の始められましたころにはいろいろな事情もございましたが、その後市場が回復いたしましたにかかわらず、相かわらずそれが焼けられるということに対しまして、はなはだ遺憾に考えましてそういうことを申し上げた次第でございます。なお、化繊の事件につきましては、審判を続けましてすでに最終の審判を終りまして、今月の半ばごろに審結をいたす予定でございます。  なお硫安の建値問題につきましては、これも当時硫安協会に対しまして厳重な警告を発しまして、もしあの発表した建値が事業者、硫安会社を拘束する趣旨であれば、それを撤回してほしい、そうでない趣旨であれば、その旨を天下に声明して、その実を示してほしいということを厳重に申し入れまして、その線に従いまして、建値はそういう拘束的な趣旨ではないということがはつきりいたしたわけでございます。しかしながら、この硫安業界につきましては、御承知のように、協定が行われがちな、また生産の数量の制限等の行われがちな業界でございますので、今後も抗いて厳重にその動きを監視して参りたいと考えております。(拍手)     〔政府委員安井謙登壇
  24. 安井謙

    政府委員安井謙君) お答え申し上げます。本改正案によりまして労働者の福利活動が非常に阻害されるのじやないか、こういうお尋ねでございましたが、先ほどもお答弁申し上げました通り今回の案によりますと、労働組合消費生活協同組合、その他労働者の福利活動を行つておる団体については、再販売価格協定の相手方になつておらないのでございす。また、この特約契約は、自由な競争の行われる商品についてのみ認められておるものでありまして、また不当に価値をすえ置くがごとき場合には認められていないのでございますから、そういつた御心配はないものと心得ております。(拍手
  25. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  26. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 建設大臣から、北九州における豪雨の被害状況について報告のため発言を求められております。この際これを許します。建設大臣戸塚九一郎君。     〔国務大臣戸塚九一郎君登壇
  27. 戸塚九一郎

    国務大臣(戸塚九一郎君) このたびの九州の災害はまことに遺憾なことでございましたが、その状況を視察するために、六月二十七日の午後、日航機で東京を出発いたしまして、福岡に夜の十時ごろ着きました。続いて三日間滞在いたしまして、昨夜おそく帰つて参りましたので、この機会に一応の御報告を申し上げておきます。  その間、最も被害の大きな福岡県のほか、佐賀、熊本両県のなまなましい被害状況を視察いたしまして、親しく罹災者に接し、慰問と激励の辞を送りました。現地当局を督励して「それぞれ必要な緊急の措置を講じたつもりであります。  今回の梅雨災害は、主として福岡、熊本、佐賀、大分、長崎、山口の六県にわたつておりまつして、甚大な損害をもたらしておりまするが、その原因は、従来の記録をはるかに突破した異常な降雨によるものと存ぜられます。その降雨は、二十五日朝以来二十九日に至る五日間にわたりまして、私の参りました翌日の二十八日のごときも相当にはげしい降雨でありました。その間、梅雨前線が筑後川筋に停滞いたしておりまして、連続の降雨となつたのであります。山間の水源地域におきましては、総量ほぼ一千ミリに達するというふうなわけでありまして、平地におきましても、福岡におきましては六百ミリ、いずれも、いまだかつてない記録であります。このために、各用が増水、溢水して堤防が破壊せられました。特に大分、熊本、福岡、佐賀の四県にまたがつて流れておりまする筑後川は、全面的に堤防を溢流いたし、約四十箇所の破壊があつたのであります。従つて、濁水はとうとうとして筑後平野に浸入いたしまして、五万町歩に及ぶ沿岸一帯は、一望のどろ海と化しております。また遠賀川は、直方のやや下流の植木町付近で破堤いたしまして、植木町を孤島化し、鹿児島本線、国道三号線等の重要幹線交通路を破壊いたしました。そのほか、矢部川、菊池川、白川、緑川、大分川、大野川、嘉瀬川等の河川及びその支川も、ほぼ同様な惨状を呈しました。このために、道路、鉄道の交通機関は杜絶し家屋は流失あるいは屋根まで浸水する、また耕地は土砂で埋没し、耕作物は流れ、炭坑は浸水に咲つて作業を停止するのやむなきに至つたところが出たのであります。  これらの総被害は目下調査中でありまするが、その総額は一千数百億に上るものと思われます。また人的の被害も莫大なものでありまして、三十日現在、死亡、行方不明、負傷を合して二千石に及んでおケます。さらに家屋の損害は三十一万戸、また罹災者は百五十万人に達しようとしており、耕地の損害も十五万町歩になんなんとしております。特に筑後川下流部平野の広汎なる区域にわたつて、筑後川本川水位が低下しないために、いまなお湛水して、その減水は遅々としておる状態であります。また、特に惨状のはなはだしいのは熊本市内子飼橋左岸地帯で、二十六日夕方一瞬にして百数十世帯を押し流しまして、数十名の死者を出した模様でありました。まだ、私が一昨日参りました時分にも一順次死骸が上つて来るというような様子でありました。炭坑被害は、福岡県において百八坑、佐賀県二十坑、計百二十八坑に及んで、その被害額は二十六億と言われております。  鉄道の被害につきましては、河川の氾濫と同時に、鹿児島本線、長崎本線、日豊線を初めとして、ほとんど全線が不通となり、現在なお十数本の不通線がありまして、特に関門隊道は予想もしなかつた浸水のために、本土と九州の連絡は杜絶いたしまして、わずかに海上連絡をいたしておるという実情であります。目下のところ、九州地域内の鉄道は、おおむね本月の五日ごろには全通の見込みで努力をいたしております。関門隊道は本月の二十日ころまでに開通させたいと努力いたしておるのであります。交通、通信諸施設の復旧は、今次の災害復旧施策中最も喫緊を要することと考えられております。  これに対しまして、各県とも災害対策本部を設置し、ただいままでのところ、人命の救助及び罹災者に対する食糧、衣料の配給、防疫等に全力を注いでおりまするが、それに必要な運搬用の舟艇が最も要望されましたので、米軍の援助を求め、また保安隊の出動を要請して、救助、救済活動がいまだ続けられておるのであります。また、重要交通路を確保するために、流れた橋梁に対しましては、仮橋の架設あるいは迂回路を設くる等、緊急の措置を講じております。久留米からの病院の患者輸送に米軍が船を出して協力をいたしております。また佐賀県の神埼町の仮橋架設について、保安隊が出動して、きわめて短時間にこれを完成するなど、その活躍は目ざましいものがあつたと申しております。政府におきましては、今回の災害の甚大なのにかんがみまして、災害発生と同時に、時を移さず、私並びに篠田農林政務次官以下関係官が現地におもむいて、各関係機関も督励して、罹災者の救助、水害防除及び応急復旧に当るとともに、現地並びに内閣に西日本災害対策本部を設けて、災害の対策に万全を期しておる次第であります。  洪水も一両甘前後よりようやく減水をいたしまして、いよいよ本格的復旧工事も可能となつて参つたので、とりあえず、筑後川ほか直轄河川の応急復旧費として、昭和二十八年度災害予備費より六億円の支出を決定いたしますとともに、地方公共団体の公共施設応急復旧の資金に充当するために、とりあえず、資金運用部資金より、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、山口の各県に対して合計十億円を融通することにいたしました。また、今回の水害により流失倒壊した戸数は四千五百戸に達しておりまするが、これらに対しましては、とりあえず災害救助法を発動して、応急バラツクを建造し、罹災者を収容いたしまするとともに、今後は公営住宅の建設、住宅金融公庫の特別融資等によりまして遺憾なきを期して参りたいと存じます。  なお、以上のほか、被災地の国税の減免、稲苗の補給等の応急措置を講じておるわけでありますが、さらに根本的に、将来再びかかる災害の発生するがごときことのないように、従来の治山治水の計画にさらに再検討を加えて、治水の万全を期する所存でございます。  その他、治安状況は、混雑の割に割合平静を保つておるように見受けられました。ただ盗難がぼつぼつ出て来るということで、そういろ点にも注意をいたしておるようであります。なお、先ほども申し上げましたが、こういう場合の伝染病の予防については、各県とも万全を期して注意をいたしておるようであります。四日おつたのでありますけれども、先ほど申し上げましたように、何分交通、通信が不能の箇所がきわめて多いのでありまして、容易に動くことができません。佐賀県へ参りますにも、車を乗り継ぎ橋のところを渡るというようなことで、簡単には参れなかつたのであります。また熊本の方は全然連絡がございませんので、飛行機で熊本に参りまして、県庁をたずね、また先ほど申し上げました子飼橋等を視察して帰つて参つたようなわけであります。昨日も、飛行機に乗る前に、遠賀川の鉄橋のところまで辛うじて行つて参りましたが、これもなかなか時間が長くかかるだけで、十分に見て参ることができませんでした。いわんや、各地方にわたりましては、なかなか私の目で見ることができませんでしたが、おいおいの報告にまつて、さらに御報告を申し上げることにいたします。(拍手)      ————◇—————
  28. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 日程第一、離島振興法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。経済安定委員長佐伯宗義君。     〔佐伯宗義君登壇
  29. 佐伯宗義

    ○佐伯宗義君 ただいま議題となりました離島振興法案について、委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。  御承知のごとく、わが本土より隔絶した外海の離島は、幾多の海陸資源を蔵しながらも、自然的、社会的諸条件の制約によつて、いまなお未開発の部面が多く、しかも島民は文明の恩沢に浴することがはなはだ薄いのであり、その民度水準はきわめて低く、経済的にも想像以上のみじめな状態のまま取残されたところが多いのであります。かかる離島の開発のための基礎条件をすみやかに整備し、産業振興の施策を強力に推進して、離島の後進性を除去するとともに、島民生活の向上をはかり、国民経済と文化の発展に寄与せしむるために特別の措置を講ずることは、邦家の現状よりしてまさに喫緊の急務と言はねばなりません。そこで、このような見地から、これらの社会的及び経済的事情と、一面離島民の長い間の悲願にこたえて、本法案提出されたのであります。  本法案については、去る六月二十九日に、提出者七十二名を代表せる綱島正興君より提案理由説明を聴取し、引続き審議に入り、翌三十日もこれを継続し、小林、小笠、中村、阿部、山本、杉村、栗田、木原、迫水及び園田の各委員より質問があり、熱心なる討議を重ねましたが、本法案の適正なる実施をはかるため、第一に、離島振興対策審議会を別個に設けること、第二に、離島において農林漁業団体が電力施設を整備せんとするときは、農山漁村電気導入促進法の適用をなし得るようにすること、第三に、これに伴いて条文を整理すること等の必要が認められて、栗田委員外六名より次のごとき修正案の共同提案がありました。    離島振興法案に対する修正案   離島振興法案の一部を次のように修正する。   第二条第一項中「国土総合開発審議会」を「離島振興対策審議会」に改める。   第五条を次のように改める。(離島振興計画の設定)  第五条 内閣総理大臣は、第三条第一項の規定による報告があつたときは、離島振興対策審議会の意見を聞いて、離島振興計画を定める。  2 内閣総理大臣は、前項の離島振興計画を定めたときは、これを関係都道府県知事に通知するものとする。第六条を次のように改める。  第六条 内閣総理大臣は、毎年度、離島振興計画の実施のために必要な事業計画を作成しなければならない。  2 内閣総理大臣は、前項の規定による事業計画を作成するときは、あらかじめ関係都道府県知事の意見を聞かなければならない。  第七条を次のように改める。(事業の実施)  第七条 前条第一項の事業計画に基く事業は、この法律に定めるものの外当該事業に関する法律(これに基く命令を含む。)の規定に従い、国、地方公共団体その他の者が実施するものとする。  第八条中「第六条の規定により決定した」を「第五条第一項の」に改める。  第九条第一項中「第六条の規定により決定した」を「第五条第一項の」に、「政令の定めるところにより、補助金を交付し、必要な資金を融通し」を「必要な資金を融通し、」に改める。  第九条第二項中「第六条の規定により決定した」を「第五条第一項の」に改める。  第九条第四項を次のように改める。  政府は、別表に掲げる費用以外の費用についても、これに対し国が補助する割合及び対象を定める政令がある場合においては、第二項の規定に準じ当該政令の特例を設けるものとする。  第十条を第十二条とし、第九条の次に次の二条を加える。  (離島振興対策審議会の設置及び権限)  第十条 この法律規定によりその権限に属せしめられた事項その他離島に関する重要事項を調査審議するために、総理府に離島振興対策審議会(以下「審議会」という。)を置く。  2 審議会は、離島振興に関する重要事項につき、関係行政機関の長に対し意見を申し出ることができる。(審議会の組織等)  第十一条、審議会は、左に掲げる者につき内閣総理大臣が任命する委員三十人以内で組織する。  一 衆議院議員のうちから衆議院が指名する者 七人  二 参議院議員のうちから参議院が指名する者 四人  三 地方自治庁次長  四 経済審議庁次長  五 大蔵事務次官  六 文部事務次官  七 厚生事務次官  八 農林事務次官  九 通商産業事務次官  十 運輸事務次官  十一 郵政事務次官  十二 建設事務次官  十三 都道府県知事   三人  十四 市町村長     三人  十五 学識経験のある者 三人  2 前項第十三号から第十五号までに掲げる者につき任命された委員の任期は、二年とする。但し、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。  3 審議会に会長を置き、委員の互選により選任する。  4 会長は、会務を総理する。  5 委員は、非常勤とする。  6 前各号に定めるものを除く外、審議会の事務をつかさどる機関並びに審議会の議事及び運営に関し必要な事項は政令で定める。附則第三項を次のように改める。  3 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。   第十五条第一項の表中特殊土じよう地帯対策審議会の項の次に次の一項を加える。附則第五項を次のように改める。  5 農山漁村電気導入促進法(昭和十七年法律第三百五十八号)の一部を次のように改正する。第五条中「開拓地」の下に「及び離島振興法(昭和二十八年法律第号)第二条の規定による離島振興対策実施地域」を加える。  右の修正案については、七月一日、提出者七名を代表せる栗田委員より提案理由説明を聴取しましたが、なお、同委員は、本法案に基く離島振興対策実施地域の指定について離島振興対策審議会が審議を行う場合は、一、本土の外海にあること、二、その島と本土との間の交通が非常に不安定であること、三、島民の生活が本土に強く依存していることを方針として指定を行うよう措置せられたき旨を述べられました。右審議の詳細は委員会の速記録に譲ることといたします。  かくて、同一日、右の修正案並びに修正案の部分を除きたる本法案を一括して、討論を省略し、採決を行いましたところ、全員一致をもつて修正案並びに修正案の部分を除きたる原案を可決いたしました。  右御報告申し上げます。(拍手
  30. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 堤康次郎

    ○職長(堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り決しました。
  32. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 日程第二、農業災害補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。農林委員長井出一太郎君。     〔井出一太郎君登壇
  33. 井出一太郎

    ○井出一太郎君 ただいま上程いたされました、内閣提出農業災害補償法の一部を改正する法律案に関しまして、農林委員会におきまする審議の経過並びに結果の大要を御報告申し上げます。  昭和二十二年、農業災害補償制度が発足しまして以来、現行制度に至りすす間において、財政経済の一般状況に応じ、また農家よりの要望に基き、数度にわたり共済事故の拡大、農家負相の軽減等の面におきまして相当大幅の改正を加えて参りましたことは、各位のつとに御承知の通りでございます。しかして、累次の農業災害に対処し、農家経営の安定の上におきまして、はたまた農業再生産確保の上におきまして、共済制度がそれ相当の効果を発揮して参りましたことは否定し得ざるところであります。しかしながら、一面におきましては、今日の農家経済現状よりいたしまして、農家の掛金が比較的高いこと、しかしてそれが掛捨てになりやすいこと、また一方、国は連年巨額の財政負担を行つておるにも  かかわらず、連合会には依然不足金が累積しておること等、本制度の重要なる部分にわたつては相当の欠陥の存しておりますることも、まだ否定しがたいところでございます。かように、本制度をめぐりさまざまな批判的なる意見の行われておりまする今日の段階においては、政府は、とにかく現行制度は基本的にこれを維持する建前のもとに、さらに一歩改善の措置をとることとして、農家負担の軽減、蚕繭共済における蚕期別共済の採用、共済団体に対する行政庁の監督権の強化等を目的として、この改正法律案を提案せられたのであります。  本案の主要なる改正点は、まず豊家負担の軽減につきましては、農作物並びに蚕繭共済の掛金において、通常常共済掛金標準率のうち、全国最低部分についてその三分の一を新たに国庫負担とし、農家支出を引下げたことであります。また共済金額を細分化いたしまして、危険の度合いに応じて共済金額と共済掛金を選択し得る方途を講じまして、強制加入の制度をとつておる建前から、災害の程度を無視して、掛金と共済金があまりにも一律となつておりました点を、できるだけ是正しようと試みておるのであります。  次には、蚕繭共済におきまして、共済金を支払う被害の限度が収繭量の四割以上でありますものを三割以上と改め、また全蚕期を通じて共済しておりますものを、春蚕繭、夏秋蚕繭というように、蚕期別共済に改めておるのであります。さらに、共済団体の役員の責任に明確化するとともに、一方下は、行政庁に対し、役員の改選命令または解任の権限を新たに付与し、かつ監督を強化せられておるのであります。  以上が今次改正案の概略でありまするけれども、さきにも申し述べましたことく、現行制度の根本的改訂をめぐる諸般の動きもありますし、また過般の四月、三月の凍霜害の発生にあたり、麦並びに蚕繭に対しては、改正案により、早急に共済金支払いの手当を行うべき旨の五党派間の申合せもありました関係上、この改正法律案は五月二十六日本委員会に付託となつておりましたが、その審議は一時中止し、凍霜害応急対策の一環といたしまして、二十八年産の麦並びに蚕繭のみについて、とりあえず、おおむね政府案の線に沿うた単独の限時法を立案し、各派の共同により農業災害補償法の臨時特例に関する法律案提出いたし、五月二十七日成立を見ましたことは、すでに御承知の通りであります。  しかして、右の臨時特例法の制定後、委員会といたしましては、農業共済制度に関する小委員会を設置して、本改正法律案の取扱い並びにその内容審議せしめて来たのでありますが、二十八年度産水陸稲の引受期が到来し、また今次の風水害によりまして苗代の被害等も発生しておりまする現状におきましては、臨時特例法の中に盛られました部分を除く部分についても、この際一応政府案を認むべきであるとの結論に達したのであります。但し、さきに臨時特例法を制定いたしましたこと、並びに諸般の情勢は現行農業災害補償制度をそのまま今後久しく存続することを許さない段階に来ておること、これらの二点及び他の若干の技術的なる事項に関連いたしまして、政府原案に対して所要の修正を施し、かつ附帯決議を付することと相なつた次第であります。  そこで、各派を代表して改進党金子委員より提出せられました修正案の内容の骨子は、第一点、麦及び蚕繭共済に関する改正条項の適用昭和二十九年産のものからとしたこと、第二点、共済団体責任の明確化をはかつた改正条項並びに行政庁の監督権の強化をはかつた改正条項は全文これを削除したこと、以上の二点であります。  よつて、右の修正案並びに修正部分を除く原案を議題として採決いたしましたところ、全員の賛成を得まして、本改正法案はこれを修正議決すべきものと決定した次第であります。  なお、引続き金子委員より本案に対する附帯決議案が提出されました。その内容は、農業共済制度の現況にかんがみて、政府はすみやかに制度の根本的改廃の措置を講ずべしという趣旨のものであります。本附帯決議案も、異議なく、一全員の賛成を得た次第であります。このことを付言いたしまして、私の御報告を終ります。(拍手
  34. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告の通り決する御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十八分散会