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1953-06-17 第16回国会 衆議院 本会議 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年六月十七日(水曜日)  議事日程 第八号     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ――――――――――――― ●本日の会議に付した事件  国務大臣演説に対する質疑     午後一時四十八分開議
  2. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) これより会議を開きます。      ――――◇―――――
  3. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 国務大臣演説に対する質疑に入ります。三浦一雄君。     〔三浦一雄登壇
  4. 三浦一雄

    三浦一雄君 私は、改進党を代表いたしまして、昨日本議場において吉田総理大臣初め各大臣演説したる政府施政方針に対し質疑をなし、その所信をたださんとするものでございます。  政治の要諦は民に信あらしむということにあると信じます。信なければ国立たずと申します。すなわち、信頼の政治こそは民主政治の本義なりと考えられます。内外をめぐる諸情勢は真に重大であります。この際、政局を安定せしめ、日本再建の国策を断行するこそ最も緊要なるは論をまたぬところでございます。この危機を打開し、国民の輿望にこたうるためには、政府は深く顧み、国会を尊重し、公明なる政治を行うべきこと、これが当然の使命なりと考えられるのでございます。この政局に対処する根本につき、吉田総理大臣所信についてお伺いいたしたいと考えるのでございます。  朝鮮休戦成立以来、アジアに平和の曙光を見たのでございまするが、民主、共産両陣営の対立はいまだ解消せられず、次に予想せられる政治会談におきましても、その成否は危ぶまれております。ソ連の平和攻勢の前途なお端倪を許しません。今後、中共の動向、仏印における共産勢力進出等アジアを舞台とする冷戦はなお前途に暗雲がとざされるものと思うのでございます。独立回復後ようやく一年にして、わが日本民主、共産両陣営対立の焦点に立ち、わが国としていかなる外交方針をとるべきか、真に重大なりと言わねばなりません。この観点より、わが党の主張を加味いたしまして、政府所信をたださんとするものでございます。  わが国民族的固有領土でありますところの南樺太、千島、歯舞、色丹等の返還、小笠原群島奄美大島及び沖繩完全主権の回復は、八千五百万の国民の悲願とも申すべき熱烈なる希望であつたのでございます。(拍手)ことに南方の島嶼及び沖繩は、本土より隔絶せられ、民生は安定せず、惨苦をなめ、過般島民の陳情に接しました私らは同情の涙を禁じ得なかつたのでございます。その後、これに関する取扱いはいかようになつておりますか。  またさらに、近来とみに重大になつて参りましたる米軍基地のごときも、各地に問題を惹起し、心痛にたえぬ次第でございます。外務大臣は、地元民の協力と良識にまつのほかなしと、やや放任の形でございまするが、進んで行政協定の改訂に努力し、その円満なる解決をはかるべきであろうと考えます。  政府は、わが国経済振興の見地から、近時東南アジア地方開発経済提携を唱道せられております。昨日も、軌を一にして、各大臣演説においても本問題に触れられております。しかるに、フイリピン、インドネシア、ビルマ等、最もわが国において経済提携を希望しておる国々に対しましては、その後外交交渉はまつたく停頓しておると言つても過言にあらざる状況でございます。すなわち、通商航海条約の締結はもとより、講和条約さえ成立しておらぬ。これらは賠償問題の解決せざるに基因しておると言われておるのでございます。かくのごときは、わが国国際信義にもとる行為と言わなければなりません。国内におきましても、すでに賠償問題の解決を促進すべしとなす輿論が、ほうはいとして起きておるのでございます。政府は、東南アジア開発経済提携を真に顧慮するならば、かくのごとき外交上の懸案を一日も早く解決し、目的を達成せられるのが当然のことでございまして、しからずんば、いかに東南アジア開発を提唱し、善隣友好のよしみを進めると申しながら、本末転倒のことと言わなければならないのでございます。(拍手政府は、すみやかに、国際信義を守り、懸案の一掃に努力し、善隣友好の実をあげんことを望むものでございます。これに対する所信をお伺いいたしたいと考えます。  次は、防衛問題について政府所信を伺いたいのでございます。自由党内閣は、従来、国家防衛に関しまして、自衛軍といえどもこれを憲法上禁止せられておるという見解を発表しておられます。保安隊の性格も警察隊にすぎない、これ以上のものは日本に必要がないという態度をもつて国会に臨み、しかして選挙に際しましても世論に訴えておるのでございますが、もとより、おのずから世論のわかるるところでございます。しかるに、最近突如として厖大な防衛五箇年計画なるものを吉田内閣の閣僚によつて発表せられたのでございます。その概要は、一、昭和三十二年末までには防衛体制を完成する。このため予算は年間二千億円を要する。武器についてはMSA援助による。二、保安隊は二十万五千人とする。警備隊艦船は十四万三千トン、乗組員約四千人。航空部隊は特に重視し、千五百三十六機を整備する。このうち四百八十機はジエツト機とする。というのでございます。しかして、本案は、保安庁調査機関において調査立案の上、参考案としてすでに総理大臣の手元まで提出されたということでございます。なお発表者は、人員の整備には徴募することが好ましいと言い、現行憲法第九条の解釈に関して、自衛軍の保持は憲法に違反せざるものとの論議に対しては傾聽に値するとおつしやつておるのでございます。(拍手)これはまさに驚くべき重大な問題であると信ずるのでございます。  右計画によりまするならば、武器はMSAによつてもらうのだということであります。MSAは、申すまでもなくアメリカ相互安全保障法に基く相互安全保障協定に基いて軍事、経済、技術の援助がなされることは、皆様御承知通りでございます。去る五月五日、ダレス国務長官が、アメリカ国会におきまして、日本に対し年額一億五千万ドルの割当を準備してあるという証言をせられて以来、国内は多大の関心を持つてこの成行きに注意を払つてつたのでございます。しかるに、吉田総理大臣は、この重大問題につきましては一言半句も言及されなかつたのでございます。一体これはどういうおつもりでしよう。故意にこの問題について国民の耳をふさごうというのか、あるいは吉田内閣が軍備をしないという従来の立場から、アメリカ軍事援助を受けることが正面の矛盾であるというためであるか、いずれにしても、われわれとしては理解しがたきことと思うのでございます。このダレス長官の証言に対し、響きの相応ずるがごとく木村保安庁長官から発表されたこの防衛計画こそは、まさに軍備計画のカテゴリーに入らざるを得ないと思うのでございます。すでに政府部内の調査機関において保有されておるという以上は、国会に堂々と発表せられんことを望みます。(拍手)しかも、長期計画であり、予算のごとき年額二千億円を要するということであれば、当然保安庁関係予算の審議上必要欠くべからざる資料なりと断ずるものでございます。(拍手)  なお、さらに外務大臣は、MSA援助を受けたい気持をもつて研究中であると説明されました。やがて締結を予想せらるべき相互安全保障協定につきましても、従来のごとき秘密外交を絶対に排斥しなければなりません。われわれは、国民の声に聞き、国会を通じてこの問題を処理せられよと主張するものであります。(拍手)わが改進党は、この重大なる国民的問題を国民の理解のもとに公正なる態度をもつて処理せんとする決意のもとに、国家みずから内外にわたり国家防衛に関する諸問題の処理方途を講ずるの必要を痛感し、やがて国会常任委員会を設置せんことを提案する用意がございます。そこで、まずもつて政府MSA援助を受けられるかどうか、またはこれを受けて実行する防衛計画は、保安庁長官の示唆されたごときあの厖大なる防衛計画は、憲法第九条の規定に違反せざるものなりやいなや、政府の責任ある明確なる答弁を要求するものでございます。(拍手)  朝鮮の休戦の成立を契機といたしまして、わが国経済は重大なる危機に瀕しました。そもそもわが国経済は、終戦直後極度に疲弊困憊を重ね、民生確保さえ困難となつたのでございましたが、連合軍、主としてアメリカの好意による援助により危機を脱し、漸次経済力を回復し来つたところであります。また、過去三年にわたる朝鮮事変にあたつては、いわゆる特需ブームによつて辛うじて国際収支の均衡を保ち、国民経済を運用して来たことは、これまた明白な事実であります。われわれは、立党以来つとに、わが国の将来にかんがみまして、自立経済の確立を提唱し、基幹産業の育成、貿易振興食糧自給対策等を根幹とする長期総合政策を強調して参りましたが、今やほうはいたる輿論になり、従来放漫なる経済政策を採用し来つた自由党においてすらこの非を認められ、経済自立の達成に新たなる決意をせらるるということになつた。おそかりしといえども、日本再建のため喜びにたえぬと存じます。(拍手)しかしながら、いわゆる長期的総合施策をなしつつありとは申しながら、本年度予算並びに立法につきまして、いまだ具体的成案を見ないことは、まことに遺憾とせざるを得ないのでございます。  英国は、質実剛健な国民性を背景といたしまして、耐乏政策を敢行し、着着産業経済の復興を成就いたしました。また西ドイツは、あの多難なる情勢にかかわらず、産業合理化計画経済遂行により、産業振興、特に貿易の伸長に偉大なる成果を上げていると思うのでございます。政府は、昨日以来、当議場を通じまして、るる長期的総合対策を講じていると言うのでございますが、いわゆる自立経済を目ざす長期的総合対策につきましての基本的構想並びに具体的成案をこの国会に示されんことを希望するものでございます。(拍手)  経済自立中心課題貿易振興にあることはもちろんでございます。従来の無為無策なる方針によつてわが国貿易は衰退の一途をたどつて参つた。英国並び西ドイツアジア地域に対する驚異的進出は瞠目に値します。ほとんどわが国貿易領域を破壊し去つたと言つても過言ではないと思うものでございます。ことに中共地区に対する貿易のごときは、政府はことさらにその価値を軽視し、たといバトル法等の適用があり、制限が課せられるとはいいながら、これを積極的に推進するの熱意なく、いまだこの問題は解決されざる道程にあります。百尺竿頭一歩を進め、英独の先例にならい、機構を整備し、機械類とか、あるいは繊維類とか、あるいは水産物のごとき民生への必需品貿易の対象として画策されんことを期待するのでございますが、これに対する政府の所見を希望いたします。  さらに政府は、このたび各大臣とも漏れなく、東南アジア開発貿易の伸展を強調せられております。この地方には厖大な鉱産資源あるいは農産資源等がありまして、その開発を待つておるのでございます。しかし、いかなる方式によつて政府が企図するがごとき東南アジア開発経済提携をいたしますか。あるいは発電所、工場、船舶、機械等プラント輸出の形式によりますか、あるいはまた特殊な方途によつて借款の提供をいたすものでございますか。本日外務大臣の参議院における御答弁によりますと、はなはだ心もとなきを得ないのであります。  貿易振興方策上最も大切なことは、海運並びに造船の奨勵でございます。ことに、わが国四面環海にして、海運立国政策を立つべきことは当然であります。ことに、造船工業総合的工業であつて産業上の占むる地位の重大なことは申すまでもございません。英国を初め、列国は、戦争後いち早くこの基本的な問題に取組みまして徹底的な保護政策を加え、今やその基盤を牢固たるものにしておるのでございます。英国のごときは、ことに戦時補償を断行し、低金利政策を採用し、そうして不動の海運対策を立てておるのでございます。この海運の問題につきましては、昨日総理大臣みずからがその振興を期待するように御発言がありましたが、いかなる方策をとられるか。低金利の問題、減免税の問題、さらにまた特殊金融機関創設等、幾多の問題があろうと考えますが、これに対する政府所信を伺いたいのでございます。  わが国経済力はいまだ回復せず、国家財政の立て方につきましても、長期的歳計の見積りも実行することはできません。いわばその日暮しのありさまであります。また今日の財政計画におきましても、蓄積は使い果してしまつた。でありますから、今日の財政におきまして、重点的に、不急の浪費的支出を極力避けなければならない。ことに、中央地方を通じたる行財政整理の断行によつて、あるいはまた税制の改革によつて、この救済の方法を講ずべきものと考えます。すなわち、行財政の改革については、政府もその必要を痛感せられ、力説せられておるのでございますが、いかなる方法、いかなる順序によつて具体的にこれを取進めて参るか。これと同時に、行政機構の改革、各庁の整理統合の断行の決意がおありになるやいなや。この点につきましてもお伺いいたしたいのでございます。  次に、地方財政現状を見まするにまことに寒心にたえませんことは、皆様、予算審議の過程において、すでに御了承の通りであります。特に原始産業に依存する積雪寒冷地方においてしかりであります。ために、地方自治の本義が没却されようとしておる。これに対しましては、独立財源を与える方途をとるのか、あるいは既設の制度を改善するにすぎぬのか、これに対する政府対策をも伺いたいのであります。  社会保障制度拡充整備、しこうして中小企業育成強化は、わが国産業構造上まことに重要なことでありますが、二十八年度予算等に現われたる施策は、いまだわれわれはこれを十分とするわけには参りません。総理大臣演説にもございました通り、この問題等に対して財政当局として特に留意せられんことを強調するものであります。  政府財政投資基幹産業等の育成を目途としていると言うておられる。しかしながら、現在有機的総合計画の策定のない今日では、各産業間に均衡を得たる投資触資が効果的に運用せられない現状でございます。このために、あるいは投資委員会ともいうべき機構を採用するというような意向はないかどうか。すなわち、自立経済総合対策を進める上において、われわれは政府の所見をだださんとするものでございます。  次に、政府は、このたびの予算の解明にあたりまして、自立経済確立のためには、国民に対し奮起を要請し、耐乏生活を要請しておるのでございます。もとより剛健なる精神の発揚の必要でありますること当然であり、また、盛り上る国民の運動も必要でございましよう。しかしながら、政府みずから手をこまねいておりましては、とうていその所期の効果を上げ得ざることは当然でございます。いかにして自立経済の確立を要請し、しこうして国家再建のため国民を奮起せしむるかについての政府の施策を伺わんとするものでございます。  四つの島に閉じ込められました八千五百万の国民を養わなければならぬ日本現状は、わが国にとつて有史以来の悲劇でございます。終戦後最大の精力を傾注して食糧問題の解決をなさねばならなかつたのに、これを軽視して参つた。政府は、千七百万石を目途とする食糧増産計画を打立てて、ここ数年間やつて参りました。しかしながら、遺憾ながら成果を上げ得ない。特に確固たる財政の裏づけがないため、計画に齟齬を来しておる現状でございます。今度、政府食糧自給度を高め、他面輸入米の減少による外貨節約を企図しておられるのでございますが、いかにして自由党内閣が提唱せられた本食糧増産計画を達成せられるか。また、米食偏重を避けて麦の利用を奨励いたしたいというのが昨日来の各大臣の提案でありましたが、これに伴いまして、当然に安い蛋白・油脂食糧政策を加味して、総合的に解決せられなければならぬ問題と考える。これに対する酪農政策水産関係の政策につきまして、今後いわゆる食糧増産計画と照応して、農政のバツクボーンをなすべきものと思いますが、内田農林大臣所信を伺いたいのでございます。  次に、米価の安定は、国民経済上、民生安定上、特に物価を安定せしむる上に緊要であることは申すまでもございません。しかしながら、その安定を熱望する余り、生産者たる農民を犠牲にしてはならぬことは当然でございます。すなわち、この際、国民生活国民経済の安定を確立するため、いわゆる二重米価制を採用して、消費者米価はこれをすえ置く、地方生産費を償うに足る買上げ米価の設定を要望するものでございますが、これに対する政府所信を伺わんとするものでございます。(拍手)  肥料価格につきましては、政府は、肥料工場生産設備近代化と、生産価格を引下げるということでございました。しかしながら、生産状況をつぶさに見まする場合に、正常なる電力の供給のない点、生産費を高騰せしむる素因をなしておるのであります。設備の近代化とともに、企業の合理化の一環として、電源の開発並びに送電計画を適切ならしむるようにと考えるものでございます。  私は最後に一言いたしたい。ただいま申し上げました米価の問題といい、肥料の問題といい、五百五十万戸農家の納得し得ない、ふしぎなことになつておるのであります。すなわち、外国からは高い米を買わなければならない。日本の農家には安い米で強制割当をしておる。肥料は高い価格で農民に売つておる。安い価格でこれを外国に廉売するということである。政治の矛盾、政治の貧困と言わざるを得ないのであります。(拍手食糧は八千五百万全体の生命の問題であります。これはほんとうに日本国民のための政府の姿で解決することを強く要望いたしまして、私の質疑を終るものでございます。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  5. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  民主政治尊重国会尊重について何と心得るかというお尋ねでありますが、これは、民主政治のもとにおいて、民主政治尊重し、もしくは国会尊重することは、お答えするまでもない問題であります。  奄美大島沖繩小笠原等主権回復についてはいかに取扱わんとするかというお尋ねでありますが、主権はすでに回復されておるのであります。ただ、その行政権が停止せられておるのでありますが、この行政権の停止についても必要に応じ、軍事上の必要以外のものについては日本に返還するという米国政府気持であるというふうに了解いたすのであります。しからば、いつにということになれば、事態の変化によるだけでありまして、米国政府としても、日本政府考え方、また日本国立場についてよく了解いたしておると思いますので、これは時期の問題であると私は考えます。  次に、行政協定改訂については何と考えるかというお尋ねでありますが、これは、必要に応じて改訂いたすことについては、政府はもちろん異論はない。また米国政府としても、日本政府の提議に応ずると考えます。  次に、東南アジア問題、賠償問題についてのお尋ねでありますが、賠償問題は、賠償役務については、日本政府は誠実にこれを実行するつもりであります。また、このために、フイリピンその他とすでに話を進めております。決して賠償を無視する、もしくは義務を放棄するというような考えは毛頭持つておりません。  次に、防衛問題についてのお尋ねでありますが、これは、昨日も、この間も、私の施政演説内においてはつきり申しておる通り政府防衛問題に対する方針はかわつておりません。また保安庁長官の説明については、新聞の報道であつて新聞については私は責任を負わないのであります。(拍手、発言する者多し)  またMSAについてどう考えるかというお尋ねでありますが、これはしばしば申す通りMSAの法案の内容について、われわれは何ら承知いたしておらないのであります。米国政府から十分の報告を得、もしくは交渉を得たときに慎重に考えたいと申しておることは、しばしば申しておる通りであります。  また、秘密外交云々と言われますが、それは、民主政治もしくは議会政治のもとにおいて秘密外交はできないことであるということは、もちろんこれはだれも承知いたすところであつて、私がここでさらに言明する必要はないと思う。     〔国務大臣岡崎勝男登壇
  6. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 東南アジアの問題につきましては、ただいま総理お答えのようでありますが、なお具体的にどういう方法があるかということにつきましては、ただいま民間の有識者、経験者等を集めまして、いろいろ意見を聞いております。この意見に基きまして、さらに具体案を立てるつもりでおります。  なお行政協定の問題につきましては、御承知のように、米国の上院でもつて外交委員会はすでに満場一致NATO協定を可決しておりますので、今月中には本会議でもこれが承認される見込みが強いのでありますので、しばらく成行きを待つておるわけでありますが、もしこれが非常に批准が困難であるということになりますれば、さらに米国側との交渉をいたす考えでおります。大体その程度であります。     〔国務大臣木村篤太郎登壇
  7. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 三浦君にお答えいたします。三浦君がただいま申されましたような防衛五箇年計画なるものを私は発表した事実はありません。ただ、自衛のために戦力を持つことは可能であるかどうか。自衛のためなら戦力を持つことができるという学説がある、この学説は傾聴に値する学説であるということは申したのであります。但し、これは、学説をただちに政府がとるとは申しておりません。(拍手、発言する者多し)     〔国務大臣岡野清豪登壇
  8. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) 大体総理並びに外務大臣からお答えしたので、そのほかに私からつけ足したいと思いますことは中共貿易のことでございますが、これは御承知通り、私は軽視はしておりませんで、非常に重要視しておりますけれども、国際情勢上、また日本国連協力の線におきまして、まだ本格的に十分とは申せません。しかし、西欧並制限物資の緩和をいたしまして、できるだけの努力をし、輸出貿易第一主義に沿うて行きたいと思います。  それから、海運のことにちよつとお触れになりましたが、各国とも海運政策につきましては補助、助成をしております。また日本立場で行きましては、ただいま高船価であり、高金利であつて、対外的の競争に非常に遺憾の点が多いのであります。それにつきましては、すでに金利補給を一部実施しておりますし、また今回の国会に、建造費に対して市中融資損失補償をしていただきたいということで提案をいたすことになつております。なお本年度は、財政資金二百二十億を出しまして、この助成をやつて行きたいと思つております。  ほかに、産業総合計画ということにつきましてお触れになりましたが、われわれといたしましては、いろいろ計画をやりまして、約五箇年ぐらいの先を見まして、ただいままでいろいろ研究いたしたのでございますが、石炭は、御承知通りに縦坑をつくりまして、約四百五十億円の資金を出しまして、石炭の値段の約二割の引下げをしたい、こう考えております。また鉄鋼は、二十六年以来設備近代化のために九百億円を出して、ことし完成するはずでございます。なおまた電力は、三十二年までに五百五十万キロワツトは確保したいと思つて、せつかく努力し、同時に着手をした点もございます。また合成繊維は、今後五箇年間に一億五千万ポンドぐらいつくりたいと思いまして、これにはやはり外貨が一億五千万ドルほどセーヴできますので、そういう意味におきまして貿易のバランスを合わして行きたい、こういうことになつております。  大体私の受持ちはこれくらいでございます。     〔国務大臣小笠原九郎登壇
  9. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 貿易振興が現下の急務であるという御意見に対しましては、まつたく同感であります。海運につきましては、これらの貿易振興上、ただいまお話がありましたが、特に重要な点にかんがみまして、日本開発銀行を通じて融資をいたしまするが、それにあたりましても、特に外航船の建造に配意いたしておりまするし、また外航船舶建造融資利子補給法等によりまして、これらの育成措置を講じておるのでございます。目下のところ特殊な金融機関をつくる考えがあるかないかとのお尋ねに対しましては、さしあたり海運のための特殊金融機関をつくるという考えは持つておりません。  貿易振興のための施策についてはどうしておるか。先に輸出入銀行の金利引下げを行いました。また為替売買手数料等の改訂の措置も講じました。また近く輸出入銀行法の改正と機能の拡充をはかり、貿易商社強化のための租税上の優遇措置、輸出信用保険制度の改善等、税制、金融、為替等の面で、各般の施策を講ずる考えであります。  中央地方を通ずる税制改正の構想はどうかというお話でございましたが、現行税制は国及び地方を通じまして、はなはだ複雑なものでありまして、国民に迷惑を及ぼし、またそれがために徴税費が非常にかさむことになつておるようににも考えられますので、今回新たに税制調査会を設け、十分各界の意見を聞いた上で、急速にこれが実行を期したいと構想を進めておる次第であります。  なお地方財政につきましては、地方制度調査会の答申をも十分活用いたしたいと考えておる次第でございます。なお地方財政現状が非常に容易なものでない、云々というお尋ねがございましたが、この点はまことに御同感で、お説の通りであります。その原因につきましては、いろいろあると思います。しかし、各方面から実情を詳しく検討し、各界の意見をも徴しまして、根体的な措置を講じたいど考えておる次第でございます。独立財源を与えるか、交付金を増額するかというような問題につきましても、たとえば教育制度、警察制度をどうするか、地方制度、行政制度全般の問題との関連をもとんと検討いたしまして、総合的な解決をはからなければならぬと考えておるのであります。  なお、この昭和二十八年度予算について、極力政府は行政、財政の経費の節減に努めておるのであるが、しかしなおこれでは足らぬ、さらに自主経済確立のために国民に対して耐乏生活を要請しておるが、これに対してどう考えておるかというようなお話がございました。これまた、まことにごもつともでございます。政府におきましても、自立達成のための施策を強力に推進したい所存でございます。この過程におきまして、相当な困難が予想されますので、どうか国民各位におかせられましても、この経済自立のために一層の御協力を賜わらんことを切にお願い申し上げる次第であります。(拍手)     〔国務大臣内田信也君登壇
  10. 内田信也

    国務大臣(内田信也君) 三浦さんのお尋ねお答え申し上げます。  私に対する第一の質疑食糧の増産でございましたが、お言葉のごとく、経済自立の基礎は食糧の自給にあることは申すまでもございません。政府は、財政を考慮しつつ、今後十箇年間におおむねその自給を達成せんがために、農地の改良、耕種の改善、耕地の拡張、営農技術の改善普及を行いますとともに、また湿田地帯や寒冷地帯の対策、施設を一層推進しつつあるのでございます。  なお次に、麦食の利用に伴つて蛋白質や脂肪食糧対策はどうしておるかというお尋ねでございましたが、油脂及び蛋白質が国民の栄養上必要であることは申すまでもなく、ことに麦食を利用すれば一層それが必要であることはお言葉の通りでございます。そこで、開拓計画も考慮いたしまして、牧野の改良事業とともに酪農地区を設定いたしまして、有畜農家創設等に力をいたして畜産食糧の確保をはかりますとともに、また水産におきましては、沖合漁業及び遠洋漁業を奨勵するとともに、その魚族の維持開発対策を進めて、脂肪及び蛋白食糧の供給に努めておる次第でございます。  第三に、二重米価についてお話でございましたが、もとより、生産者よりはなるべく高く買い上げ、また消費者にはなるべく安く売り渡したいことは申すまでもないところでございますが、そこには財政上重大なる問題がありますので、各観点よりして、これを十分に目下検討しておる次第でございます。
  11. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 鈴木茂三郎君。     〔鈴木茂三郎君登壇
  12. 鈴木茂三郎

    ○鈴木茂三郎君 私は、日本社会党を代表して、第五次吉田内閣施政方針に対し、特に吉田総理に順次若干の質問を行わんとするものであります。  第一の問題は、最近の平和への世界情勢に関しまして二、三のお尋ねをいたします。世界の平和を脅かし日本を暗くして来た問題は朝鮮戦争であつたのでありますが、インドのネール首相、その他真に世界の平和を愛好する人々の絶え間ない努力によつて休戦のがんであつた捕虜問題の解決を見ることとなりましたので、近く休戦成立して、ここに朝鮮問題の根本的解決と世界平和への道が明るく大きく開けるようになつたことは、われわれの心から喜びとするところでございます。(拍手)  しかし、今後ほんとうに朝鮮問題が根本的に解決し、また世界平和がゆるぎないものに確保されるまでには、幾多の困難が予想されております。  さきに、チヤーチル英国首相が、ソビエトを含めた大国の会議を提唱したことは、諸君の知られる通りでありますが、この演説に対して、野党の立場から支持して、下院で拍手を送つた労働党の党首アトリー氏は、米国内には中国との全面戦争を望む人々、米国国会内には台湾の蒋介石を助ける援蒋派が強く朝鮮解決を欲しない分子のあることを指摘いたしまして、休戦後の今後の問題の解決は、アメリカの手だけにゆだねてはならないと、世界に警告を与えておるのであります。(拍手)明るい世界の平和への流れに逆行して、血なまぐさい戦争のすきな若干の勢力は、世界のどこの国にもあるようでありまして、日本においても、アメリカの属国になろうが、戦争に引込まれようが、そうした国家的、国民的な問題には一切おかまいなく、自分の事業上や立場上の利益から、朝鮮のいわゆる特需と、保安隊から来る利潤だけに貧婪の目を向けようとする一派が財界の中に傲然として存在しておることを、私はここに指摘しなければなりません。(拍手)こうした日本の一派は、平和を好まない、戦争のすきな援蒋派や、孤立派のアメリカの一派とも利害と立場を同じくするものであることは遺憾にたえないところであります。(拍手)こうした勢力は、今後の朝鮮問題の根本的解決、世界平和の確保について若干のブレーキとなるかもしれませんが、もはや平和への明るい大きな世界の流れを引きとめることは私は断じてできないと確信をいたします。(拍手)  私は、吉田総理に、その眼界を大きく見開いてもらつて、もし何か目隠しをされておるならば、目隠しをとつてもらつて、曇りのない目で、最近のこうした世界情勢を正しく見てもらいたいのであります。ソビエト並びにその衛星国や、それとカーテンを隔てるアメリカ並びに西欧側の経済的、政治的最近の世界情勢について、われわれがこれまで正しく平和への動きを見て努力して来たことが間違いでなかつたことを、われわれの眼前に展開された現実によつて立証されておることは、われわれの喜びであります。(拍手)世界平和への大勢は、もはや私は動かしがたいものとなつて来たと確信をいたします。  ソビエトのマレンコフ首相のいわゆる平和の呼びかけに対して、英国のチヤーチル首相は、ソ連との関係の政善を望んで、ソ連の平和攻勢に対して、英国政府はその発展を阻止するようなことをしてはならない、こう言い、またアトリー労働党党首は、すべてをソ連の陰謀の成果だとすることは間違いであつて、英ソ両国は互いに相手を理解することが大切である、私は中共はソ連の傀儡にすぎぬとは思わない、休戦協定後は中共は五大国の一員となる資格がある、こう言つております。また、アメリカがヨーロツパにおいて今日まで保守派を利用して打立てて参りました中道政治については、フランスですでに敗れ、イタリアで敗れ、西ドイツにおいてもまさに敗れる必至の情勢にあるのでありまして、今やアメリカがとつて来た力の世界政策は、世界から孤立する危険にさえ直面をいたしているのであります。(拍手)  吉田首相は、こうした世界情勢をいかに把握されておるか。日本前途を、世界から孤立して行きつつあるアメリカの運命に託されんとするのであるか。それは無謀にして国を誤るものではないか。(拍手総理の今日までの、こうした世界情勢に対する見解は、われわれには臆病なほど遠慮深くうかがわれたのでありますが、私は、日本総理は、日本の独自の立場から、日本アジアの見解を世界に知らせるために、その世界政策や見解を大胆に表明しなければならないと信ずるのであります。(拍手)  そこで、こうした世界情勢を反映して当然起つて来る問題は、中華人民共和国、すなわち中共との国交回復に次いで、その承認並びに国連加盟の問題であろうと思います。この問題はいずれバーミユーダ会談で取上げられるでありましようが、日本は隣の国との友好を深めるために、またアジアの平和のために、中共を承認して、まず外交及び領事関係だけでもこの際確立して、国交の回復を促進しなければならないと思うが、総理所見はどうか。  また、中共の承認問題と関連して、当然台湾政権の問題が起つて参るでございましよう。すでにアメリカまたはイギリスにおいては、これに関するさまざまな意見が発表されております。その中には、現実的な一応の解決策として、満州国の当時英米がとつたと同じように、大使を引揚げて領事を置くという意見も主張されておるようでございます。いずれにせよ、中共問題の解決の前提として当然起つて来る台湾政権に対しまして、私は総理所見をただしたいのであります。  なおこの際、これらの問題と関連して明らかにしておかなければならないことは、世界情勢がこうなつて参りますと、単独講和のために今日まで平和条約の成立するに至つておらないソビエト、中共並びにビルマ、インドネシア等との平和条約の締結が一層緊要な問題となつて参つたことであります。総理がこの点に関して何ら見解を述べておられないことは、私のはなはだ遺憾にたえないところであります。(拍手)  第二にお尋ねいたしたいのは、朝鮮問題の根本的解決と安全保障に関する方式の問題であります。休戦後の朝鮮問題の根本的解決については、政治会議その他を通じて引続き検討され、解決されるものと思いますが、その際の重要な問題は、南北の民主的な統と、統一後の安全保障の問題であろうと考えます。政府は、施政方針において、休戦後の朝鮮の復興に協力する態度を明らかにされました。これはもとより当然のことであります。総理によれば、朝鮮の復興に協力することだけがアジアの平和建設であるかのようにお考えでございますが、とんでもない間違いであります。日本はいつでも、朝鮮の戦争だとか、破壊されたあとの復興だとか、朝鮮の人たちの不幸のおかげで日本がもうけようとしているという印象を、この際朝鮮の人たちに与えてはならないと存じます。(拍手政府は、こうした誤解を起すことのないように、また南と北に対しても公正な立場朝鮮の復興に協力しなければならないと思いますが、総理の心構えを承りたいのであります。(拍手)  次に、休戦後の朝鮮民主的な統一について、国連軍と中共軍の撤退が先決であることは言うまでもないところであります。民主的な朝鮮の統一に対する一つの障害は、アイゼンハウアー大統領と李承晩大統領との間に相互安全保障条約を締結する意思が表明されていることであります。こういうことに、もしなるといたしますと、南北の統一をむずかしくするだけでなく、三十八度線を境とする南北の対立を永久化せんとするおそれもありはしないか。また、南と北に今日まで戦つて来たそれぞれの軍隊がにらみ合つた形でおる現状では、ややもすれば外国がこうした軍隊を利用して統一を困難にするようなことが起こりはしないか。われわれは、朝鮮日本に最も近い隣の、利害の深い国でありますだけに、その民主的、平和的な統一を望み、また統一後の朝鮮の安全保障に関して無関心たり得ないという立場より、総理は隣国の朝鮮統一と安全保障についていかように考えられるか、所信をただしたいのであります。(拍手)  次は、こうした朝鮮の問題とも関連をいたしまして、新たな安全保障の方式に関する問題であります。ドイツの統一と安全保障の問題に関して、最近英国のチヤーチル首相は、かつての独仏の緊張を緩和するために締結いたしましたロカルノ条約の精神をくみとつて、現在のソビエト、ドイツの安全保障の方式に適用せんとする意見を提出いたしております。いわゆる新ロカルノ条約の問題は、これもバーミユーダ会議で取上げられるものと予想されておりますが、ソビエトは、これに対して、プラウダを通じて、悪名高いロカルノ条約でなく、一九四二年の英ソ相互援助条約の方式を思い起すよう、と注意を呼び起しております。また、わが党の参加しているアジア社会党会議の最近の幹事会において、アジア平和の解決策に関する草案の中で、日本における侵略的軍国主義の復活を阻止するために、国際保障による日本の中立化の方針が一応決定したということも、この際明らかにしておきたいと存じます。(拍手)こうした最近の平和への国際情勢の発展に対応して、かようにドイツの安全保障の方式が英国やソビエトなどによつて取上げられ、またやがて朝鮮も同じような問題に直面しなければならないことになるでありましようから、従つて日本の今後の新たな安全保障の方式に関する、私はこれは重大な一つの方向を示すものと考えるものであります。(拍手総理は、こうした最近の平和への国際情勢に対応して起つた新たな日本の安全保障の方式を検討される意思はないかどうか。  第三は、いわゆる特需問題と自立経済の問題であります。現在の日本経済の特質は、一言にして言えば、特需によつてささえられておる消費経済、こう言うことができようかと思います。すなわち、観光都市と同じように、見物に来た人の消費だけであつて、生産のない消費経済の都市であると同じように、現下の日本経済は、一般的な生産、特に基幹産業は停滞しておりますのに、消費だけがふえておる。正常な貿易は振はないのに、輸入は八〇%は消費材である。こうした特質は、現在の財政経済が特需だけに依存した変態の経済であるところに起つておるのであります。ところが、朝鮮休戦で特需が当てにならなくなるので、特需にかわるものとして、政府MSA援助によつて均衡経済を維持しようとあせつておられるかのごとくであります。(拍手アメリカから投げられたるMSA軍事援助のえさは、つり針のつりえさと知りながらも、これに政府は食いつこうとしているかのごとくであります。(拍手MSA政治的な問題はあとでお尋ねするといたしまして、私はここでは単にMSA軍事援助経済的だけの観点から見まして、この問題は軍備縮小が世界平和の一つのかぎとして取上げられておる際、この援助はいつどうなるかわからない不安定なものであつて、ヨーロツパにおいては経済的にも成功しておらないことが明確でございます。また平和的な生産と正常的な経済の発展を阻害するものでございます。(拍手総理は、施政方針において、正常な貿易振興に努力すると、こう言われておる。しかし、アメリカからMSA軍事援助を受ける限り、中共東南アジア貿易の発展はまつたく望みがたいものになるのであります。(拍手)こうした特需やMSAのごとき軍事援助に依存しないで、ここに方針を切りかえて、日本の自主独立を経済的に裏づける正常的にして平和的な自立経済を、総合的な長期計画にのつとつて建設するために、私は今や正常経済へ切りかえる絶好の機会であると思うが、総理はどう考えられるか。(拍手)  また、自立経済の基礎となる正常貿易振興発展について不可避の条件は、中共貿易の問題であります。中共貿易の問題は、根本的には、さきにお尋ねいたしましたように、中共の承認、台湾政権の解決が前提となると思いますが、最近中国の国際貿易促進委員会主席南漢宸氏から日中貿易促進議員連盟への書簡によりますと、中共側は、利益をお互いに平等互利の相互主義の立場から、日本が視察団を送れば、向う側からも日本に視察団を送つて来る、相互いの建前をとらなければならぬことが明らかになつて参りました。すなわち、まず交通の自由から日本中共の国交を回復する必要があるのであります。また、中共が最も必要としている資材は、BCの品目ではなく、Aの品目に属する建設資材のようであります。総理中共貿易を軽視されておるようでございますが、アメリカのごきげんばかりを伺つてつて、遠い英国やドイツに、近い中国貿易が奪われるようなことを、われわれは見のがすことができないのであります。(拍手朝鮮休戦を前にした現在、もはやバトル法その他のアメリカの日中貿易に対する制約を受ける必要はなくなつて来ると思います。総理は、中共貿易に関して、日本貿易振興自立経済建設のために、もつと積極的に努力される意思はないかどうか。(拍手)  次には、総理東南アジアの重要性を強調されております。もちろん、東南アジア貿易中共貿易と同じように重要であるのであります。しかし、米ソの対立に中立政策を堅持しておる東南アジアの多くの諸国は、アメリカ一辺倒の吉田内閣を信頼しておらないのであります。(拍手)とりわけ、ビルマまたはインドネシアやフイリピンとの間には、まだ平和条約が成立しておらない。東南アジア貿易に主眼を置くと言う政府は、総理は、その手で、皮肉にも東南アジアの多くの諸国との間に平和条約さえ締結できない現状にあることをどう考えるのか。(拍手)その主たる原因の一つは、日米平和条約によつて賠償は役務賠償と決定しておる。ここに障害がある。東南アジアとの友好的な外交を樹立して貿易の発展を期するには、賠償問題を総理の言われる通り解決して、未開発地域の開発協力する態勢をとることが先決でございます。しかし、これらの諸国に対して賠償解決いたしますについては、まず役務賠償でなくて、現物賠償に対する政府態度をきめられることが先決でございます。(拍手)私は、賠償に関して、総理東南アジア貿易振興のために現物賠償決意を持たれたかどうかも承りたいのでございます。  第四は、米国相互安全保障法、すなわちMSAによる軍事援助の問題であります。米国相互安全保障法は、いわゆるMSAは、軍事援助はもとより、経済援助であれ、技術援助であれ、一九五一年に相互安全保障法に統一されて以後は、この法律による援助の供与は米国の安全保障を強化する目的に統一されておることを、われわれは知らなければなりません。従つて援助を受ける国は、六項目の重要な軍事上の条件が前提となつておるのであります。従つて援助を受ける限り、MSAによつてアメリカの出先機関であるカントリー・チームといわれる軍事顧問団などによつて外国資本家が自由に資源の開発ができるようにしたり、日本の生産と物価を制約することができるように、労働組合運動に干渉することのできるように、中共貿易はバトル法その他の厳重な適用を受けて、日本国家主権を脅かす干渉をわれわれは受けなければならないのであります。(拍手)ヨーロツパの独立国と違つて日本は現在アメリカに従属する立場に置かれておりまする関係上、こうしたカントリー・チームの監督、干渉は、アメリカが征服した領土に対すると同じように、政治的、経済的かつ軍事的に、日本はがんじがらめに縛り上げられなければならないのであります。  MSAによるカントリー・チームの監督を受けておらない今日でさえ、総理はその監督下の閣僚あるいは高級官吏の言動に注意をしていただかなければならないのであります。小笠原大蔵大臣は、六月十日の新聞において、米――米価の二重価格制の問題について、米国の有力筋に会つたところ、将来にわたつて財政の負担となる二重価格は好ましいものではないとの意見であつた、これに制約されるわけではないにしても、二重価格制には反対であると談話を発表されております。いやしくも一国の大蔵大臣が、米の価格制をきめるのに、何の必要があつてアメリカの有力筋の意見を聞かなければならないのでありましようか。(拍手外国の人に意見を聞かなければ、大蔵大臣は米の価格制をきめる能力がないのであるか。いずれにせよ、こういうことを、はずかしくもなく、得々として新聞に発表されておることは、私は、大蔵大臣日本人としての誇りと魂をなくされたのではないかと疑うのであります。(拍手)最近の高級官吏の中でも、日本の役人かアメリカの役人かわからないようなことを言う不心得な高級官吏がだんだんとふえて来ております。(拍手)私は、政府の言う綱紀の粛正は、行政監察は、まずここからも手をつけていただきたいのであります。(拍手)こういう状態で、カントリー・チームの監督と干渉を受けるようなことになつて、どうして日本の独立を回復することができましよう。  総理は、内灘村の国民の、あの悲痛な叫びを何と聞かれましたか。内灘村の中山村長は、試射の砲声を聞いて、もうおしまいだ、政府に勝てるものは米国の軍隊だと、こう悲痛な叫びをあげて、政府の上に、総理の上にアメリカ軍隊があることを叫んでおるのであります。(拍手)われわれは、アメリカ軍事援助には断固反対する。この反対は、おそらく全国の地域にわたり、全国民的な反対運動となるでございましよう。総理は、いかなる国民的な反対があつてMSA軍事援助を受けるつもりであるか、この際、ほおかむりではなくて、国民の前にその所信を明白にしていただきたいのであります。(拍手)  最後に、第五次吉田内閣の今期特別国会に臨まんとする態度について吉田総理所信をただして、私の質問を終了いたしたいのであります。今期特別国会に臨まんとする吉田内閣の態勢を見ますと、昭和二十八年度の総予算案は第四次吉田内閣方針と何らかわりはない。すなわち、その後に起つた朝鮮休戦や世界情勢の転換に対する対策は何もない。依然として朝鮮の特需とMSA軍事援助という、財政上、経済上は不安定、政治上、軍事上は外国の従属国となるような経済条件の土台の上に二十八年度予算案はあぐらをかいた、変態の予算案であります。(拍手)しかも、吉田内閣は、左手には戦後新しくできたコンツエルンの形で再建された独占資本の利益のための独禁法の改正案をひつさげ、右手には民主的な労働組合を弾圧して民主主義を破壊せんとするスト規制法をひつさげて国会に臨まんとしておる。(拍手)しかも、こうした第五次吉田内閣は、アメリカのアイゼンハウアー大統領をさえ悩ましておると言われておる中共との全面戦争を好むもの、蒋介石政権を助けようという援蒋派や、世界を相手にしてでもひとりわれ行かんとする孤立派、これらのアメリカの危険な一派と利害と立場を同じくする日本の財界の一派の完全な支持を受けておる。こうした事態に対して、国民は、ほんとうに日本を救うものは、保守か革新か、戦争か平和か、アメリカの属国か自主独立か、資本主義か社会主義か、二大勢力の対決を通じて、ほんとうの独立と平和、自立経済の建設と生活の安定した民主的な日本の建設を要求し期待して、国民政局を、国会を見守つておるという現実を認識して、総理は私の質疑に答えられんことを望んで、私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  13. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  朝鮮問題が解決の曙光を得ましたことは、鈴木君とともに、まことに御同慶に考えるのであります。(拍手)これが、極東はもちろんのことでありますが、共産主義国と自由国との間の平和、和平のきつかけになることができれば、まことに仕合せであります。私は、これに対して何ら反対はいたさないのみならず、国連と協力して、世界の平和回復日本としてあくまでも協力いたしたいという考えは、これまでもしばしば申し述べておるのであります。ことに朝鮮は、歴史的に、地理的に、また人種的にも、日本との間は非常に親善な、最も親しい、最も近い国でありますから、この国が和平状態になり、また復興を見るということは、われわれとしてはあくまでも希望いたすべきことであります。しかしながら、日本がはたして南北朝鮮の和平まで干渉し得るか、また回復協力して行くにどれだけの力があるか、これは努めて及ばざることをおそるるのであります。しかしながら、むろん統一された朝鮮が隣国にできて、その国が繁栄することは、われわれとしては最も望ましい行為であります。これに対して協力は惜しみませんが、しからば、どうしてするかと言われても、今日は日本としてはできない行為であります。またこれは、私がアメリカのために目隠しされて、かくのごとき言辞をなすようなお話でありますが、私は、またアメリカも、私を目隠してどうこうするというような、そういうけちな考えはないことを、極力ここに強調いたしたいと考えるのであります。また、私が外国に目隠しをされて自分の信念を二、三にするようなことは断じてないのであります。(拍手、「たけだけしいぞ」と呼ぶ者あり)何がたけだけしい。  また、全面講和は私が常に考えていることであります。できるならば全面講和をいたしたいということは、しばしば申しておるのでありますが、講和についても、条約についても、これは相手方があるのであります。相手方が日本と講和しない、日本と戦争するという以上は、いかんともできないのは、これは当然であります。たとえば中共にしても、ソビエトにしても、日本に対して、日本を敵国と考えて――現に中ソ友好条約という条約が存在しておつて日本を敵国と考えておるのであります。少くとも理論において敵国となしておるのであります。この関係を打開するのには相当時間が要するので、たとい私が中共もしくはソビエトと親善関係に入りたいと考えたところが、相手方があることですから、できないことはできないのであります。  また日本としては、講和条約にもありますが、国連と協力することは、講和条約に規定されておる条約の義務の一環であります。これを生かしてどこが悪いかと言わざるを得ないのである。  また、ソビエトあるいは中共との間に通商協定なり何なりしたらよかろう。できたら私も賛成であけます。もしソビエトなり中共がこれを欲するならば、イデオロギーのために講和条約をしないとか、通商をいたさないという考えは毛頭ないのであります。従つてまた、条約もできないのに領事館を置けといつたところで、これは相手方が承知しません。現にラジオ等においては、モスクワ放送あるいは北京放送において、相当日本の治安を脅かすがごとき放送がされておるのであります。この事態において、講和条約もしくは通商条約をしろということは私にはできないので、どうぞ鈴木君が内閣を組織せられて通商を開始されることを希望いたします。(拍手、笑声)  またMSAの問題につきましては、いろいろお話がありましたが、これはしばしば申す通りMSAの法律の精神あるいは米国政府考えておることについては、われわれはいまだ公式の交渉において何ら承知をいたしておらないのであります。現に今米国側の真意を確かめておるのであります。その真意を確かめて慎重に措置することは、政府としていたすべき義務であります。ただ新聞の記事を見てとやかく考え、もしくは意見を定めるということは、軽卒はなはだしいものと考えるのであります。  中共貿易回復せられるならば、これが正常貿易である、今日の特需による変態貿易を転じて、中共と正常貿易に入れと言われるが、はたして中共との間の通商が正常貿易になるかならないか、これは中国の情勢についても御判断を願いたいと思うのであります。中共はいわゆる国家管理貿易をやつておるのであります。この国と貿易をいたして、お話のような正常貿易になるかならないか、これは私は言を多く用いずしてわかるところであると思います。  また、中共貿易があるのに東南アジア貿易――東南アジア貿易については、これは役務賠償以上に現物賠償まで考えるのならば、私はけつこうなことである、また考えたいと思いますが、これは相手方においては、たしてどういう現物賠償を要求するか、希望するか、これは先方の希望もあり、また要求、必要も考えなければならぬので、いかにしても東南アジア日本の間は、東南アジアの発展を助け、その復興のためにあくまでも協力いたしたいと考えるのであります。条約上は役務賠償を原則といたしておりますが、しかしながら話のぐあいによつては、現物賠償まで進むことはもちろんのこと、日本の財力が許すならば、それ以上のこともいたしたいと考えておるのであります。  その他の問題については主管大臣から答弁いたします。     〔国務大臣小笠原九郎登壇
  14. 小笠原三九郎

    国務大臣小笠原九郎君) 今度の予算につきましては、休戦以後の情勢をも盛り込んでありますことは、すでに御答弁申し上げた通りであります。  なお米価問題について鈴木君のお話がございましたが、これは当時十数名の記者と会いまして、ただ一新聞にだけ出ておるのを見ましても、あえて弁解を要しないだろうと存じます。私は鈴木君に劣らざる日本人の誇りを持つております。(拍手
  15. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 鈴木君、よろしゆうございますか。  河上丈太郎君。――河上丈太郎君に申し上げます。総理大臣の出席があるまで、しばらくお待ちを願います。(拍手、発言する者多し)  河上丈太郎君。     〔河上丈太郎君登壇
  16. 河上丈太郎

    ○河上丈太郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、吉田総理に対して、現在当面せる幾つかの問題について、その所見お尋ねいたしたいのであります。  まず第一に、当面せる問題は、今鈴木君が言われましたことくに、朝鮮休戦成立であるのであります。われわれは、朝鮮休戦成立いたしまして、三年の長きにわたる悲惨な戦乱が停止するに至つたことは、まことに世界平和のために欣喜にたえないのでございます。(拍手)最近、ソビエト・ロシヤの指導者の態度に大きなる変化が現われ、国際的緊張が緩和する方向に向つていることは否定することができないのであります。その最も具体的な現われが朝鮮休戦成立であると私は考えるのであります。(拍手)従つて、この朝鮮休戦を契機といたしまして展開される国際情勢の変化は、相当に広範囲にわたり、かつ長期にわたるものと考えなければなりません。ここにおいて、過去数年にわたり続けられて来た吉田内閣の向米一辺倒の外交は修正を余儀なくされると考えるのであります。(拍手)もとより、ソ連外交の百八十度の転換は、スターリンの死去という事実によつてつた画期的な現象であるか、それとも何かの大きなるねらいと持つておるものであるか、いわゆるソ連の平和攻勢について早まつた結論を下すことはできないかも存じませんけれども、しかしながら、重要なる一点は、この変化によつてわが国が最も切実なる経済的、政治的な影響をこうむるということでございます。首相の施政方針演説は、この事実に対し何らの具体的考慮を払われていないのみならず、政府は、外務大臣演説の中において、この新事態に対し、基本的外交政策について何ら変更すべき理由はないと強弁せられておることは、まことに遺憾にたえないと存ずるのであります。(拍手)  私がこの際第一にお尋ねしたいのは、この新情勢に対するところの吉田内閣の基本方針であるのであります。もとより、朝鮮休戦は、ただちに全面的平和の到来を意味するものとは考えておりません。この休戦は問題の解決でないかもしれません。しかしながら、また新しい問題の出発点であるかも存じません。朝鮮休戦のあとには、朝鮮の統一、荒廃に帰したる朝鮮の復興、中共の承認、その国連加入、台湾の帰属などの難問題が控えておるのであります。しかも、これらの問題は、わが国の安全に重大なる関係を有するものばかしであります。われわれとしては、これらの問題の解決が、将来日本を直接脅かし、新たなる紛争の種をまくことのないように期待することは当然であるのであります。(拍手わが国は、これらの極東の諸問題を解決すべき国際会議が開かれるといたしまするならば、それに対し出席する権利と義務があると言わなければならないのであります。このときにあたつて、従来の吉田内閣のごとき傍観的、他力本願的態度をこの際一擲する必要ありと信ずるのであります。(拍手)  わが党は、去る六月八日、朝鮮協定の事実的成立の日にあたつて声明書を発表いたしました。すなわち、国連の監督下における全朝鮮の自由選挙によつて朝鮮の統一が平和裡に実現さるることが和平の根本的条件であるということ、(「ヒヤヒヤ」、拍手)第二には、高度に民主的なる独立朝鮮は、朝鮮民族の要望であるのみならず、日本の安寧と極東の安定平和に不可欠であり、従つて朝鮮の将来に関する国際会議には当然に日本の発言権を要求すること、第三には、中共の承認と国連代表権の解決は、共産主義を認めることや宥和政策からではなく、正常な国交を回復し、国連の世界性を保持するために必要であること、これらの諸点を明らかにして声明書を出したのであります。(拍手)今日においても、私の主張はこれと同じであります。  さらに、朝鮮休戦にあたつて、東西陣営懸案であつたいろいろの問題が互いに討議される機会があるかと存ずるのであります。オーストリアの講和条約、東西ドイツの統一などのほかに、対日サンフランシスコ条約が日程に上ることも考えられると思うのであります。(拍手)ソ連が平和条約を提唱して来た場合、政府はいかなる態度をとられるのでありましようか。鉄のカーテンのかなたから吹き寄せる平和攻勢のあらしの中にも、実質的な平和に役立つ提案をのがさずとらえることが政府の任務であると信ずるものであります。(拍手)  そこで、私のお尋ねしたいことは、第一に、政府日本の運命に関する国際会議への発言権を確保するがために努力する用意があるかどうかということであります。第二には、サンフランシスコ条約の未締結国との国交復活について、新しい情勢に立つた具体的用意があるかどうかということであります。特にソ連が対日平和条約を提案した場合の態度、もし平和条約が不可能な場合には、戦争終局宣言をなさしめる必要があると考えるけれども、政府所見はどうかということ、第三には、朝鮮の平和確立に伴う極東情勢の緩和に呼応して、中共の承認は現実的な立場から必要であると考えるが、政府にその用意があるかどうかということであります。(拍手)以上の三つの点について、総理の明確なる御答弁を要求するものであります。  さらに、朝鮮休戦の影響として、わが国経済上のきわめて大きな困難が振りかかつて来ることを覚悟しなければなりません。早くも特需の減退を見越して、経済界の深刻な動揺が起らんとしております。しかも、これに伴う賃金の切下げ、失業の増大を考うるときに、大きなる国内不安を予想せざるを得ないのであります。これは一に、今日まで政権をとつて来た政府が、自立経済の基礎の培養に努めなかつた結果であり、その責任であると信ずるものであります。(拍手)  もとより、対米特需の減少は、いわゆる復興特需によつて相殺せらるるといたしましても、傾向としては漸次減少することは必至の情勢であります。さらに国際緊張の緩和に伴い、再軍備が下火となるかもわかりません。そういたしまするならば、各国が輸出競争に乗り出すことも考慮に入れなければならないのである政府は、この輸出減少をカバーするためにMSA援助で埋める考えを持つておられるやに見受けられるのでありまするが、これはきわめて不安定な一時の応急策にすぎません。しかも、ひもつき援助で、わが国の自主性を著しくそこなうものであります。また政府は、その対策といたし、基礎産業合理化を促進し、コストの切下げをはかることにより、貿易競争力を高めると昨日も言われたのでありまするが、自由主義経済をもつて立つところの自由党内閣のもとにおいては、結局基礎産業合理化は、首切りと賃金の切下げによる労働者の犠牲においてのみ行われるものである。(拍手)自由主義経済を捨て、計画経済にあらざれば、コストの切下げと労働者の生活水準の向上を統一して達成することはできないと思うのであります。私は、ひもつき援助にかわり、中共貿易を含め、全世界との貿易の拡大をはかるとともに、計画経済による自立経済確立をはかることが必要なりと主張するものであるのであります。なおこの際、われわれが先般アジアの社会主義会議においてかねて主張して来ましたところの、アジア経済会議のごときものを促進することを主張するものである。さらにこれに関連いたしまして、社会保障制度の強化の必要であることを強調しなければなりません。  政府は、以上のごとき国際情勢の変化に伴う影響を最小限度に食いとめる具体的政策を用意しておるのかどうか、この点に対する政府所見を承りたいのであります。  次にお尋ねしたいことは、内政問題において最も重大なる防衛問題であります。これにつきましては、吉田総理は、昨日、いわゆる防衛問題については最近種々の論議がある模様であるが、政府は一貫せる所信により、どうも従来の方針を変更する必要を認めておりませんと断ぜられましたけれども、これは国民にとつて重大なる関心事であるのであります。先般、木村保安庁長官が、陸海空軍の五箇年計画を発表したことは、その後狼狽した政府の首脳者によつて取消された。しかしながら、国民の疑惑は依然として去らないのであります。吉田首相は、口を開けば、再軍備はやらない、保安隊は軍隊ではないと強弁して参りました。しかるに、保安隊の当面の責任者である木村長官は、これを軍隊なりといたしております。しかも、これを二十万に増強するのみか、五箇年計画で軍装備を完備し、近代的な軍隊にすることができると言明しておるのであります。ただいま、そう言わなかつたとおつしやいますけれども、私は言わなかつたものを新聞があれほど大きく取扱うことはないと考えます。(拍手)今日の日本新聞記者の常識の上から見ても、その知識の上から見ても、そう判断することは当然であると信ずるのであります。われわれは、この木村長官の言うことは本音を語つたものと信ずるのであります。(拍手)今日は言わないと言われるけれども、本音であると私は思うのであります。こうなつて参りまするならば、政府が持つておりまする再軍備計画に対するところの考えにおいて、木村長官は正直者であつて、吉田総理は欺瞞者であるという印象を払拭することができないのであります。さらに、国民を代表する国会においては偽りの事実を述べ、一たび国会の外に出るならば事の真相を放言するというのが吉田内閣のやり方のように思われるのである。(拍手)これはまことに国会軽視の傾向を露骨に示したるものと言わざるを得ないのであります。(拍手)  私は、ここにおいて、吉田総理に端的に質問をいたしたいのであります。第一は、木村長官の言明があつても、なお政府は再軍備に対する計画なしというのであるかどうか。第二においては、政府保安隊二十万人徴募の計画をも、現行憲法ほおかぶりのままに行わんとするのであるか。それとも憲法の改正をなさんとするのであるかどうか。第三は、木村長官が自衛軍憲法第九条の違反にあらずと強弁しておるけれども、吉田総理もかかる見解に同意しておるかどうかということであるのであります。私は、以上の三点に向つて、吉田総理が率直に問題に答えられんことをお願いいたすのである。  さらに、この場合、私たちの断じて看過し得ざることは、MSA援助の問題であります。これは防衛問題とつながる問題であつてMSA援助軍事援助を中心とすることは、相互安全保障法第五百十一条の援助を受けんとする国に課せらるべき義務規定によつて明々白々の事実であります。従つてこれを受けることは、とりもなおさず、わが再軍備計画の推進と密接に関係せざるを得ないのである。木村長官が、たまたまMSA援助によつて空軍千五百機をつくると漏らしたのは、MSA援助による防衛拡張計画が日米両国間に進められつつあるということを物語るものであつて、吉田総理が、何も知らぬ、何も存ぜぬと、しばしばこの国会においてなされた答弁は、まつたく欺瞞であることを暴露したものであるということを言わなければならぬ。(拍手)  そこで、私は政府お尋ねしたいのであります。第一に、政府は、MSA援助自衛力増強に有利であり、わが国経済に寄与するならば望ましいと昨日の演説に言われておりまするが、われわれは、これをMSA援助を受諾する意思を表明したと解釈してよいかどうかという点であるのであります。(拍手)第二には、自衛力増強のために有益であればということはどういう発言であるのか。この発言は再軍備義務規定を承認するための趣旨であるかどうかという点であるのであります。さらに、わが国経済に寄与する場合とはいかなる意味を持つのであるか。兵器生産であつて、平和経済に何らの関係がないという所論であるかどうか。この点について承りたいと思います。  さらに、この際、安保条約のことでありまするが、東亜の事態が変化し、この条約を締結した前提条件は大きく動きつつある今日、対等の立場に立つて根本的改訂を当然すべきであります。ことに行政協定については、アメリカにおいてNATO条約附属協定の批准を待たずに、政府は堂々たる態度をもつてこれが改訂に臨むべきだと考えるのであります。昨日、外務大臣は、四月十四日に改訂の申入れをしたと言いまするが、何ゆえに今日までこれを公表しなかつたのであるか。ことに、何らの協定なしに駐屯しておるところの国連軍との問題は、この際抜本的に解決すべきものと信ずるのであります。(拍手)今日全国民の憤懣を買いつつあるところの基地問題は、これらの問題の解決で一日も猶予を許さないことを示すものであると考えるのであります。(拍手)  以上、防衛問題、MSA援助行政協定改訂の問題につき、従来のごとく、政府がいたずらに受身の態度を装つて国の内外をこまかすことばかりせず、今や政府態度立場を明らかにすべき段階に到達いたしたと信ずるのであります。政府所見を承りたいと思います。  最後に言いたしたいことは、現代は思想闘争の時代であります。それは、国民にいかにしてみずから住む社会に誇りを持たせるかということであります。国際緊張の緩和に伴い、平和攻勢が一層激化することが予想されておりまするが、朝鮮休戦によつてただちに看取せられることは、国際的にも国内的にも人民戦線的傾向の強く台頭することであります。(拍手)われわれの解するところによれば、最近のソ連及び中共政策は、かの一九三六年の第七回国際共産党大会以後にとられた人民戦線的傾向の再現と考えられるのであります。政府の従来の国際共産主義に対する態度は、一面無定見であるとともに、一面卑屈であります。いたずらに乗ずるときを与えるばかりである。国際共産主義に対処する道は、信念ある進歩的政治を行うことによつて国民大衆の信頼を得ることであると信ずるのであります。現在、世界は平和を求めております。しかし、今日平和を口にしながら、一たび平和の声を聞くと、たちまち経済的破綻に陥る陣営があると同時に、しかも一方において、平和の名において不安と混乱をつちかわんとする勢力があります。これでは真の平和は期待できないのであります。(拍手)真の平和は、善意を基礎とするとともに、健全な経済制度を必要とするのである。  今回朝鮮休戦に大いなる役割を果した英国では、戦後、福祉国家を建設した。しかしながら、今日、英国の存立のために第二の産業革命を真剣に考慮しているのである。西ドイツにおいては労働者に最高の経営参加権を認めておるのである。新しきあり方をつくり出すがために努力しているのであります。先進国と後進国との間にあつて苦境に立つておるわが国こそ、かかる努力が必要であると信ずるのであります。(拍手)その基本条件である産業近代化国内資源の開発のためには、自由主義経済ではその目標を達することは困難であると信じます。必然に計画経済の道をたどらなければならぬと思うのであります。(拍手)この際に、国家の手による社会保障、労働者の経営に対する発言権を保障するところの法律的処置、農民及び中小企業者の生活安定の方途など、早急に考えられねばなりません。わが党は、かかる立場から、社会主義インターナシヨナル及びアジア社会主義会議との協力を強化し、ここに採択されたる民主社会主義の立場を強く訴うるものである。  しかるに、政府は、危機の名において、時代の逆行をはかり、憲法を蹂躙し、スト規制法を考え軍備を秘密に行い、アメリカ政策に追従し、犯罪容疑者を重要閣僚にかくまい、国民の真の期待を裏切つております。(拍手)しかし、危機は時代の逆行によつて救われるものでは断じてありません。新しき時代を切り開くことによつてのみ救われるものであると信ずるのであります。(拍手)国際緊張の緩和とともに、かねてわが党の主張するがごとく、国内では再軍備よりも国民生活の安定と経済の自立、国際的には国連の強化、世界的軍縮、後進国の開発政治中心課題となることを確信いたすものであります。  以上、朝鮮休戦後の国際情勢下における内外の諸問題について、われわれの信念を訴え、政府所信を問わんとするものであります。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  17. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。  現在朝鮮休戦後の事態は容易ならざるものである、これについて政府としては、外交方針内外政策について新しく政策を立てべきであるというような御趣意でありますが、これに対して私はこうお答えをいたしたいと思います。今日、国際の情勢は日々変化いたすのであります。あるいは朝鮮休戦となり、あるいはまたソビエト政府においては政権の移動がある。そのたびごとに日本政府内外政策が動揺いたすというような、そういう安易な政策は、われわれは持つておらないのであります。(発言する者あり)国際情勢がいかにかわろうが、政府としては、あるいは日本国としては、行くべき道をあらかじめ覚悟いたしておるのであります。すなわち、日本としては、あくまでも世界の平和に貢献したい、繁栄に貢献したい、文化に貢献したい、しかして国連によつてこの目的を達するというこの方針はきまつておるのであります。朝鮮休戦したからといつてスターリンがなくなつたからといつて、そのたびごとに国策を変ずる必要はないと私は思うのであります。(拍手)  また防衛問題について、しばしば私はここに明言いたしておりますが、それはうそである、これは欺瞞であると言わるるが、欺瞞であるとは、だれが判定せらるるのでありますか。本人の私が、日本防衛問題は、方針は決してかわらないと申しておるのであります。本人が申しておるのに、しかるにこれが欺瞞であるとは、だれが欺瞞であると言うのか。(発言する者多し)私はかわらぬと申すのであります。また、保安庁長官新聞の言明は違つておる。しかしながらこれに対しては、河上君は、これは新聞に言つたのが本心であるのだ、私が申すことは欺瞞である、何が欺瞞かと私は伺いたいのであります。(拍手、発言する者多し)  MSAの問題についても同じであります。政府は存じないのであります。いまだ米国政府から公式な申入れ、もしくは交渉は受けておらないのであります。(発言する者多し)ゆえに、その内容は知らぬと申すのであります。知らぬというのがほんとうであります。知つておるとおつしやるあなたが欺瞞と言わざるを得ないのであります。(拍手)またMSAの問題については、これは重要な問題であるから、政府としては慎重に考えるというのがほんとうであります。これ以上私は今日ここにお答えする必要がないのであります。  その他、もしソビエトが日本に対して戦争終了の宣言をしたらどうか、あるいは中共政府を承認するかというお話でありますが、これはその場合において考えます。但し、私は重ねて申しますが、得べくんば世界のいずれの国とも親交関係に入りたいと思うのであります。ソビエトなるがゆえに、イデーオロギーが違うから、その国とはいつまでも戦争をするというような狭い考えは持つておりません。(拍手中共またしかりであります。  また国際会議について、日本の運命に関するような国際会議があつた場合に発言権を確保せよ、こういうお話でありますけれども、これはごもつともであります。そういう国際会議の開催せられた場合には、日本政府としては、あくまでも国家の利益になるように行動いたす考えであります。  他は主管大臣より……。
  18. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 北れい吉君。     〔北れい吉君登壇
  19. 北昤吉

    ○北れい吉君 私は、主として総理大臣に対して、日本独立以後の道義の高揚、国民精神の高揚の立場から、広い意味の綱紀粛正について質問をいたします。(拍手)  私の綱紀粛正に関する質問は、綱紀紊乱を意味するものでは必ずしもありません。綱紀の弛緩、綱紀の頽廃を主として意味します。御承知のごとく、今度の吉田内閣は、古代模様と近代主義とをまぜまして、戦後の優秀なる若い大臣を出し、また東条内閣、小磯内閣のいわゆる敗戦内閣の閣僚中、罪の軽い二等閣僚もしくは三等閣僚を(笑声、拍手)抜擢いたしております。私に言わせれば、戦後の日本民主化に何らの貢献なく、何らの経験なき者が、俄然として吉田総理の好みによつて出たのでありますが、この抜擢の理由いかんということをお尋ねいたしたい。私は、今月巣鴨に行きまして、A級犯に二度会いました。これらの諸君は何を考えているかということは、ここでは御遠慮して申し上げません。とにかく東条内閣、小磯内閣において、戦争が成功すれば、総理大臣は大勲位、公爵となり、閣僚は少くとも勲一等、伯爵くらいにはなる。(拍手、笑声)しかも、それが敗れた場合に、まあ罪は大して受けず、もちろん立候補の資格がある以上は、立候補して、国民が投票するのは、これはあたりまえでありますが、総理大臣がことにこれらの諸君を任命した理由いかん。政治の根底たる信賞必罰の原理にそむきやしないかと考える。(拍手)  まず、ドイツのカイゼル時代の閣僚は、ワイマール憲法ができた後には、一人も閣僚になつた者はありません。ヒトラーの閣僚中、第二次大戦の敗戦後は、一人も閣僚に選ばれた者はありません。日本人は、そこに行くと、人のうわさも七十五日、忘れつぽい。過去をして過去を葬らしめる。罪を犯しても、水をかぶつて、はらいたまえ、清めたまえと言えば、もう罪障消滅、あつさりしたものです。他人の責任を問うことのできない者は、自己の責任を感ぜないやからであります。これが日本の再建を妨げる。これを吉田総理にお伺いします。しかし、国会は、閣僚の信任、不信はかつてに問えます。御承知のごとく、今日は総理大臣が閣僚をかつてに任命しますが、憲法第十五条で、公務員の選定とこれが罷免は国民の基本的人権であるから、われわれは、不適当の閣僚があつたならば、ただちに基本的な人権を発揚して処置をいたしますから、あらかじめ御承知を願います。  ところが、次に綱紀粛正の問題について申し上げれば、選挙違反の非常に多いことであります。ことに、自由党の二百二名中、二十一名も関係者が出ている。戦争前におきましては、選挙違反であろうが、涜職事件であろうが、涜職に関係のある、起訴されている人は公認しなかつた。それが敗戦後、道義がすたれまして、どしどし公認して、大手を振つて当選して来ている。これについて何人も責任を問う者のないのを私は遺憾とする。また、私の見るところによれば、吉田総理は側近者を利権の地位にあまりに多くつけている。たとえば、女婿麻生君を九州電力の会長にする、側近第一号白洲君を東北電力の会長にする。従来の総理大臣で、自分の側近者をそういう権益の位置につけたものを、私は聞かないのであります。(拍手)それがために、只見川の問題のごときは無用な紛糾を与えておるのであります。これについて吉田総理の御所見を承りたい。  次に、綱紀粛正の問題と関連して、行政整理の問題であります。放漫なる官庁の組織、多数の官僚、この貧乏国には少し負担が重過ぎる。そこで、今度の各大臣のお話のうちにも、ぜいたく品の輸入禁止、国内の生産を高めるとか、いろいろ初めて申されましたが、私は、綱紀粛正のためには、国会も綱紀粛正の範を示す。――チヤーチルが総理についたときに、みずから一割の減俸をやつて国民耐乏生活をともにいたしました。そこで、国会も、議員会館の問題、あるいは自動車の問題等について、多少自粛する必要がないかと考えます。また官庁も、徹底的の行政整理をせんがために、まず大臣を整理したらよろしい。(笑声、拍手)第一等国の大臣より数がふえております。無任所大臣のごとき、商売なしの大臣は全部整理してさしつかえないだろうと私は考える。(拍手)そうして、まずみずから範を示して下に及ぼせば、私は、上下こもごも利を征して国危うしという孟子の警告した言葉が当らないようになると思います。総理の御意見を伺います。  その次には、総理のお話の中にありましたが、やはり行政監督官を設けたいと言いましたが、これは官庁に対するのみならず、公社、ことに国策的の銀行――日本銀行、興業銀行、勧業銀行その他開発銀行等に徹底的な監視機関を私は設ける必要があると考えます。昔、支那の独裁君主時代にも、御史とか諌議大夫というものがありました。死を冒して当時の大臣の非行を直接天子に申し上げたことは有名な史実であります。その独裁政治に対してもそういう監視機関があつたのであるから、民主主義時代においても、なおさら国会を中心にした委員を選んで、徹底的な監視をやらなければならぬと考えます。総理の御意見を伺いたい。(拍手)  それから第三に保安隊の問題でありますが、総理はこれについてあまり申されません。いわゆる黙秘権を行使しております。黙秘権を行使しておるのは、うそとは違うので、うそは責任の追究はできますが、黙秘権では責任の追究のしようがありません。そこで、私はただ、今までに申されたことについて伺いますが、吉田さんは、再軍備反対である。自衛力の漸増には賛成である。ところが、自衛力というものは軍力よりは意味が広い。食物の自給自足、国民精神の高揚、その他いろいろ産業の発達などが背景でありますが、何としても自衛力の根底は戦力であります。ところが、戦力自衛力の根底であるのに、戦力憲法に禁止せられておる。その戦力を離れた自衛力というものは、いかにして漸増するか。たらふく食つて、ぜいたくな着物を着て、ぜいたくな自動車に乗つて歩けば、自衛力は増進したと考えられるか、私はこの点を伺いたい。私の見るところでは、保安隊も戦車を持ち、バズーカ砲を持ち、さらに飛行機を持ち、高射砲まで与えられておるのであるが、これは外敵に対する備えであつて、内敵に対する備えではないと思う。これを警察隊のごとく言うのは、国民の目を欺くものであります。私は、これでは、MSAというものの性格が明らかにならない限りは、予算案にも賛成しかねます。しかし、日本経済が逼迫しておることは事実でありますから、ひもつきでなく――相互援助条約によつてアメリカの要求によつて日本の軍隊が外へ出るという条件でなく、その他経済上のあらゆる拘束がなければ、私どもは賛成するにやぶさかではありませんが、この内容については、まだ詳しい御説明が外務大臣からもありませんから、今では賛否を保留するという形にいたしておきます。  とにかくMSA援助をいただき、わが国自衛力並びに国防力を増進させるには、やはり保安隊の性格を明らかにし、専門家によく内容を見てもらい、アメリカ協力して日本自衛するにあたつても、七百のアメリカの基地がはたして適切であるやいなや、専門家の検討を要する。日本が今日あるのは、軍部が政治を私したといいますが、政治家、ことに外交官が軍事上の知識がないがために、ロイド・ジヨージやチヤーチルのごとき牽制力がなかつた。再びそのあやまちを繰返さないように、政治家は、保安隊の内容、実質について徹底的なる認識を得る必要があると考えますが、この点について、吉田総理はいかなる程度までわれわれに実態を開放し得るか。またMSA援助の性格も、それと関連して明らかにしてもらいたい。  それから第四に、この軍備と関係して憲法改正を必要としないかどうか。私は、憲法を続々現に破つておると思う。法律というものは、いくらこしらえても、破る者が多くなれば、励行力は自然になくなる。自然に憲法を無効にする企てであるかどうか。ところが、憲法のある規定には、天皇、摂政及び国務大臣その他の国家公務員は憲法を守ることを誓うとある。一般国民には誓うという規定がない。左派や右派の破壊行動に対しては、憲法上の規定がない。日本では、ややもすれば上の方が憲法を破壊したという歴史があるので、アメリカがことにこれを必要として、一般国民憲法遵守の規定がない。私は上の方で憲法をなしくずしに破つておるのではないかという疑惑を持つております。ことに、この自衛軍に反対する憲法を平和憲法であるといつて讃美しておる諸君は、せんだつてもある会でありましたが、これは理想主義の現われだ、――私はそう感じません。とにかく終戦昭和二十年。二十一年につくつた憲法であります。アメリカ日本に対する政策の第一階段は、徹底的復讐でありました。第二階段は、アメリカ流に日本を改造すること。第三階段は、これではいかぬというので、日本を復興させることである。憲法制定は、第一階段の復讐階段、刑罰階段。日本、ドイツはまる裸にせよ、軍国主義の本場であるから、これをたたきつぶせばよろしい。現にマツカーサー司令部の考えだけじやない。ソ連を含む極東委員会がアメリカにおりまして、憲法制定のときに私ども関係しておりまして、一々極東委員会の許可を受けたのであります。それでありますから、あれは懲罰規定である。あれを理想的の憲法であるなどと言うのは、ちようど刑務所におつて生活安定を喜ぶがごときもので(笑声)われわれと人種が違うように思います。  日本が独立した以上、占領政策の行き過ぎを訂正するということは、昨年の総選挙後の議会において吉田総理が述べられた以上、占領政策の行き過ぎ是正は米国憲法を直すことである。ところが、中には、アメリカ政府憲法ではない、日本の議会でつくつた以上は日本憲法だと強弁をする方もあります。日本人がつくつたにしては、天皇を国家の象徴などというハイカラな言葉をつくるわけはない。いかに西洋人の思想が織り込まれておるかということは、何としてもわかる。それは、元首という言葉はいかぬということを言われました。象徴という言葉を用いよということは向うの命令で、象徴天皇というものができたのは、結局アメリカのサゼスチョン。たから日本製であるとは言えません。それだから、憲法は、これらの点においても、日本人の手によつて改正を必要とする例証を出しておるのであります。私は、それでなければ魂ができ上らないと思う。もちろん、アメリカの勧めた憲法も、平和的、自由主義的、民主的という大きな線においては、われわれは世界の大道としてこれを採用するにはばからぬのでありますが、あらゆる点において欠点がありますから、吉田総裁は(笑声)政府において憲法改正の準備会を設ける意思はないか、これをひとつ伺います。  おそらくは、吉田総理がこの憲法をあくまでも擁護せんとするところのものは、一つ吉田総裁あるいは総理に気に食うところがある。大臣をかつてに任令し、または解職し、思い立つたときに何どきでも議会を解散し得る絶対なる権力があるから、吉田さんはこの憲法のある限りは、自己の運命安泰なりと考えておられるのではないか。(笑声)これは、当時この憲法ができたときに、英国のロンドン・タイムスは、何どきでも議会を解散し、大臣の任免黜陟がかつてにできるならば、多数党の首領はフアツシヨ政治をやれるという批評をいたしました。今に至つて思い当るところがあります。  次に、地方制度と租税制度の抜本的改革、これは政府も絶えず言つておりますが、具体的には何も示されておりません。戦前におきましては、陳情団などはごく少かつたが、このごろは、形式的には憲法地方の自治が政治的には保障されておるが、経済的には中央依存であります。従つて、陳情団が元に比較すれば数十倍であります。議員会館は今や陳情団の集合所となつておるのであります。それでありまするから、これは経済的に地方が中央に依存し過ぎるのでありますから、地方に財源を与える根本的税制改革をやらなければ、地方自治は名のみであります。吉田総理具体案をお示し願いたい。今日では、代議士として安んじて当選しようと思えば、地方民の陳情団にサービス百パーセント。あるいはお金をもつて、慰安に隠れて買収する。あるいは節を売つても、側近にあらゆるへつらいをやつても、大臣になつて錦を着て故郷に帰る。この三つのどれかをやらぬと選挙は楽でないことは、皆さん御承知通りであろうと思います。これを根本的に郭清する必要がある。それには、地方の陳情団をあまり多く上京させない。中央依存をやらないこと。  次に私の質問したいことは、総理演説の中にはありませんでしたが、今日の労使の対立のはなはだしいことについて一言質問をいたします。これは小坂労働大臣お答えを願うのでありますが、私は、吉田自由党内閣はあまり財閥に偏し過ぎていると思う。たとえば、大阪に行けば財界の巨人と相談をする。東京でも財界の巨人と相談する。日本で七割の人口を占めているところの中小商工業の代表者、農民代表者とは意見の交換をしたということはない。(拍手)あまり資本家を中心にして財政投資の相談をやり過ぎる。ついでにあるいは政治献金をお願いするかもしれないが、これはわからない。(笑声、拍手)そこで、労働組合は、議会ではどうせ社会党両派固まつても三分の一以下であるから、闘争を議会外に持つて来る。すなわち、資本家の少数と尖鋭なる労働組合の対立で、土俵の外でけんかが始まる。犬養法務大臣が、労働組合に不穏の形勢があると、こう言つて、あるいは生産管理の勢いもあるし、武装蜂起の勢いもあると言つたが、これも具体的に説明をしてもらいたい。  これは、公益に関係あるところのストライキを制限するような法律だけでは絶対にできない。進んで資本、産業の経営について、労働組合の代表者にある程度の責任を持たせ、そして労使協調させる。そして、もし意見の調整が困難であつた場合には、議会に労働委員会を設けて、そこへ訴えさせ、その判決を仰ぐ。議会は国権の最高機関であるから、労働争議について発言権がないというのは怠慢の罪であると私は考えます。アメリカにもこの議論が相当出ておりますが、吉田総理にはそういうお考えがないか。積極的にこの労働争議をやめさせる方策がなければならない。ただぼんやりしておつて保安隊や予備隊をふやして、そして法律をたくさんつくつても、生活が困難になれば、法律は役に立ちません。  支那人が、私に向つて、かつてつた日本人は法律があつて生活なし、われわれは生活があるけれども法律なしということを言つたことがある。もつともと思われるところがあります。私は、法律万能にとらわれず、小坂君などは年少気鋭でありますから、積極的にこの衝突を避ける努力をする何らかのくふうを持つてもらいたいと考えます。あるいは法務大臣から、現在の危険状態を全部暴露してもらいたい。  それから、吉田内閣の性格として、資本家にのみ重きを置いております。国民の七割を占めておる農民、中小商工業者に重きを置いておらぬ。現に、最近の中小商工業者の困り方は言語に絶するものがある。五月中、不渡り手形は毎日千枚になつております。そうして、平均わずかに十二万円であります。三万枚という不渡り手形が五月に出ております。これで中小商工業者はもう昏倒しておる。池田元大蔵大臣は、五人や十人死んでもよろしいと言うたが、五人、十人どころではない。もう数万の人間が瀕死に迫つておる。いまさら五百万円くらいの中小企業の金融をやつたからといつても、死んだ後に注射をしては間に合わぬと同じことである。これは先に注射しなければならぬ。  それから米もそうであります。今度だけは食糧と繊維の自給自足計画を岡野さんから発表されました。私も全部共鳴します。しかし、自由党の食糧増産委員会からの、五箇年計画で一千七百万石の献策は、昨年度予算で葬られたではありませんか。食糧増産を吉田内閣のモツトーとしておるが、むしろ食糧減産内閣であると、自由党の諸君すら攻撃しておる。それはなぜかというと、来年度百万石の増産であるが、人口は百二十万もふえるから、結局毎年三十万石も足らない。食糧問題を徹底的に解決しなければ、かりに米ソに事があつてアメリカ日本に駐在して戦争をやつたら、二割五分の食糧の輸入はどこから持つて来ますか。戦争前は南朝鮮と台湾から持つて来たが、今はほかから持つて来ようがない。結局戦わずして敗れる。兵隊などがおつても、これは麦わら人形の兵隊と同じであつて、食い物が食えなければどうにもならない。私は食糧増産が先決問題であると思う。  日本農民は人口の四割で、二割五分も足らぬという、そういう能率の悪い農民はありません。徹底的に、農地改良、耕種の改良――あるいは山地が八割三分あるから、一部の薪炭林を切つてしまつて、そして、とうもろこし、じやがいも、豆というような雑穀を植える。そして電力が今千八百万キロワツトの発電能力がありますが、わずかに六百万キロワツトしか開発をしておらぬ。五箇年計画で、石橋湛山君は六百万キロワツト、吉田内閣は五百五十万キロワツトの開発を要求いたしております。農村では、次男三男を中心に、今や七百万の失業者。これらに全部植林とか電力開発、耕地改良をやつて職を与え、そうして購買力を増せば、さしあたつてつておる中小商工業者も助かるのである。  東南アジア貿易と言うが、東南アジアは、タイにしても、フイリピンにしても、インドネシアにしても、まだ日本にいい感情を持つておらぬから、開発せざる限りは購買力はない。また無理に輸出をやつても、こつちが輸出超過になれば、向うは輸入超過で、断るに相違ない。むしろ、アフリカとか中東、近東地方――せんだつても、わが党の元代議士であつた原侑君が、アラビアに代表で参りました。サウジアラビアあたりからは五十億毎年油を買うておるが、向うにはわずかに三億しか行かない。あれは英米にあまりよくない国柄であるから行かないが、どんどん行く余地はある。ところが、吉田内閣では、東南アジア貿易というのは、アメリカの口車に乗つて、スモール・エコー、小さなアメリカの反響にすぎない。  中共貿易をすれば、中共から粘結炭、鉄鉱、豆、塩、この四つが来、日本からは、汽車等の輸送機関、トラツク、自転車、電気器具、薬、機織り機械等、輸入したいものはたくさんある。私は日本と中国の貿易促進会の一員でありますが、現にわが党の平塚君に招待状が参つております。私は、中共貿易しても、わが国が鉄石の構えと、国防を強化すれば、思想に動かされることは万あるまいと思う。ソ連とも、かつて貿易をしておつた。ソ連とも、ある程度の制限貿易をやつても私はよかろうと思う。その点は、社会党の左派、右派と私は同じ意見であります。(笑声、拍手)私どもは右でもなければ左でもない。世界が平和となり、日本国がよくなれば、いかなる政党の長所でもとつて、わが短を補つて日本の進展に努力したいと考えます。ただ、社会党の左派、右派の諸君が、アメリカ憲法を理想的の憲法だというようなことを言うのは、大いに気に食わぬところがあります。(笑声、拍手)  私は、日本の復興には大胆な計画がいると思います。特需がなくなつたから、にわかに岡野通産大臣が食物と繊維の自給ということを言うが、繊維とは何であるか。石炭の繊維、あるいは天然ガスからとる繊維と、もう少し具体的に言つて、五箇年にどれくらいいるか。食い物は、四割の国民が働けば自足自給できます。また衣類は、やればできるのでありますが、具体的の計画予算の裏づけを話してもらいたい。すなわち、自由党の農林委員長ほどの、予算の裏づけがないのでは困る。ただ思いついた議論では、今日は通らぬと思う。  私は、これによつて自分の質問の大要を述べましたが、また他日予算委員会で徹底的に数字をあげて質問をいたします。どうぞよろしくお願いたします。(拍手)     〔国務大臣吉田茂登壇
  20. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  綱紀粛正に関してのお尋ねがありましたが、綱紀を紊乱した場合、もしくは法に違反した場合、政府方針としては、これまでも厳罰に処しており、法の命ずるところによつて遠慮なく処断いたしております。また選挙違反の問題が、ことに自由党において頻発しているだけでも、政府がこれを妨げたとか、あるいは選挙干渉をいたすというようなことは全然いたしておらないことによつても、法規をいかにわれわれは守るに忠であるかがわかると思うのであります。  次に保安隊の性格でありますが、この問題は、しばしばお答えをし、また質問もしばしば出て、これに対し速記録を、ごらんになれば、よく政府考え方はわかると思いますから、私はここに再び言葉は重ねません。  MSAの問題については、先ほど申した通り政府アメリカ政府考え方を十分承知いたした上で慎重に考える。(拍手)     〔国務大臣小坂善太郎君登壇
  21. 小坂善太郎

    国務大臣(小坂善太郎君) お答え申し上げます。労使間の問題は、労使双方が自主的に責任を持つて解決することが望ましいことと考えておりますので、政府といたしましても、労使双方が公共の福祉と国民世論に対する深い洞察の上に立ちまして、労使間の諸問題を円滑に解決いたしまするよき慣行を確立することを期待いたしておるのであります。この判断の資料といたしまして、各種の労働、経済に関しまするところの統計資料を、わかりやすい形で国民に提供することに心がけておるのであります。私といたしましては、労使の問題を、労働問題という、ただ単に一部の労使間の問題といたしませんで、国民の良識によつて解決するという慣行を打立てたいと考えまして、労使のみならず、広く国民間の有識者を網羅いたしましたる労働問題協議会の設置を考えまして、目下その準備を進めておる次第でございまするので、北さんにおかれましても御協力を賜わりたい。(拍手)     ―――――――――――――
  22. 今村忠助

    ○今村忠助君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明十八日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  23. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 今村君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 堤康次郎

    議長堤康次郎君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十五分散会