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岡田(春)
委員 われわれ労農党は、
田嶋委員の提出されました
結論に対して
反対をいたします。
反対の
理由はあとで申し上げますが、まず第一に、その取扱い方についても、われわれはきわめて納得をし得ないのであります。先ほど休憩中にも、われわれ話をしたのでありますが、今度の
結論を出すにあた
つて、昨日伝えられるところによると、というよりもむしろ私自身が
田嶋委員から聞きましたところによりますと、すでに各党の間でこの
結論なるものを打合せの上できよう出された模様でございまするが、これに対しましても、われわれ労農党といたしましては重大なる関心を持
つているにもかかわらず、なぜかこの
結論の草案なるものを、われわれが要求したにもかかわらず、見せておらないのであります。しかも昨日の打合せのときにおきましては、この
結論なるものについては、各政党の一部にはこの
結論を配付しておきながら、われわれがこれを要求したことに対してなぜか故意にこの
結論ができておらないという
理由をも
つて提示しなか
つたのであります。しかもこのようなことで、きよう突如として
田嶋委員の
結論なるものをここに出しまして、そうしてそこでただちに
討論に入るというようなことをと
つたということは、問題がきわめて重大であるだけに、
国会法の
精神を
田嶋君を初めとしてこれに
関連するものが蹂躙をしたと言わざるを得ないのであります。このような重大な
事件については、
田嶋委員からこの
結論案なるものが提出されました場合においては、当然各党にこれを持ち帰
つて、この
結論案の文案について詳細に検討する時間を与えて、そのあとにおいてこの
結論に到達するのが過去九箇月にわた
つて慎重に討議、
調査をいたして参りました
鹿地事件についての
結論を見出すための最も至当なる方法であると私は
考えますが、当初においてはきわめて慎重の
態度をとりながらも、最後において急にそそくさと何らかの
結論をいわばでつち上げて、こういう形できようの
委員会を通過させようとしているのであります。このような方法については、われわれは断じて承服することはできない。このような方法をとられたということには
理由があるから、このような方法をと
つているのである なぜならば、この問題を今後においてますます慎重に
調査をするということになるならば、
鹿地事件の本質というものが大衆の前に暴露されて来るということを恐れているものにほかならないのであります。すでに先日の板垣
証人、あるいはそれに
関連する山田
証人の
証言によ
つても、または
鹿地証人の
証言によ
つても事実がだんだん明らかにな
つて参り、その事実が明らかになるたびに、この
結論案なるものを急いで早くつく
つてでつち上げて
委員会を通さなければならないというところに追い込められたからこそ、昨日において急に各党と打合せをして、きようここで多数の力によ。て押し切ろうとしているのであります。しかもこのあとで待ち構えていることは、齋藤
国警長官もここにおりますから、私ははつきり言
つておきますが、この
委員会における
結論案が出されたあとにおいては、当然おそらく
鹿地本人に対して、今度は国警がこの間出しておる
逮捕令状を、今執行を停止していると言
つているが、片方において
逮捕令状という強権を持ちながら、このあとでは
鹿地事件に対して半ば脅迫的な形において
証言の
調査をしようとする挙に出ることは明らかであります。今度の
法務委員会において、ことさらにこの
調査を取急いで
結論を出したということは、この点にも
関連を持
つていることであるといわなければなりません。私はこういう
意味においても、まず第一にこの取扱いについて
反対をしなければならないと思います。
第二の点は、
調査報告の
結論でありますが、この
調査報告の
結論が社会党の左派までを含めた各党の間の話合一い――極端な言葉で申し上げますならば、なれ合いのもとにおいてつくられた
結論であるが、この
結論においてはわれわれは絶対に承服することはできない。この内容の一々を見て参りますと、具体的に今まで九箇月にわた
つて証言が行われて、しかも不当
監禁の事実があが
つているにもかかわずら、この事実については具体的な例証をことさら使わないで、それ以外の点であいまいなる形でこの
結論をつくり出そうとしている点であります。伝えるところによると、当初の
結論案によれば、
アメリカ側の情報を五〇%、この
法務委員会の今までの
調査による結果を五〇%、大体半々の立場においてこの
結論案を出そうとしたそうでありますけれ
ども、さすがにこのような五〇%ずつの半々の
結論では、
法務委員会の権威にもかかわると見てか、という
意味においてか、これに色をつけて、あやをつけて、
法務委員会のかつこうだけをつく
つて、そうしてこの
結論をつく
つているように思われる。しかもその内容を見ると、
講和条約発効以前において、以後においてというようなことを書いておりますが、この以前と以後において問題をことさらに区別をして取上げる必要はないと思う。大体われわれはあの
講和条約なるものが、
日本の植民地奴隷化をしいているところの条約であ
つて、いわゆる講和なるものとは
考えておりませんけれ
ども、しかしながらこれを二つにわけて規定をしているということは、この
調査報告の
結論の体裁としては体をなしておらないと思う。なぜならば、問題は、
鹿地という人の
逮捕をされている事実は、講和の前後に限らず、その人
本人の不当な
人権蹂躪は、この講和を限
つて、その前後において区別すべきものではないからであります。しかも講和前において――たとえば百歩譲
つて講和前においては、
アメリカの
占領下であるために、それならば不当なる
人権蹂躙が
アメリカの手によ
つて行われてもいいということは、われわれは言えばいと思う。講和前においても、アメツカが不当な
逮捕を行
つて人権蹂躪が起こ
つたとするならば、
日本の
国民としては、当然これについて抗議をするのがあたりまえでなければならない。この点についてはなぜか触れようとしてねらないのであります。このあとにおいて私は具体的な事例をあげて申し上げて参りますけれ
ども、このようにして一つ一つの点においてこの
結論なるものはま
つたく不当なるものであります。いわばでつち上げとしか
考えられないと思うのです。
監禁の事実の問題にしても、一昨年の十一月の二十五日に
鹿地氏が鵠沼において
逮捕をされてから以降、岩崎邸あるいは
川崎のTCクラブ、そのあとでは茅ケ崎へ、そしてまた沖縄へ連れて行かれて、さらに渋谷に連れて行かれて、そうして最後に解放されるまでには事実不当な
監禁が行われて、
本人が逃げ出そうとしても逃げ出し得ない
状態にあ
つたことは、今までのこの
法務委員会において喚問された
証人によ
つて明きらかに暴露されている事実であります。
川崎のTCクラブにおいて一昨年の十二月二日に、自殺の未遂をや
つたという事実についても、そうしてそのあとにおいてもTCクラブにおいて不当な
監禁が続けられたことについては、
証人山田善二郎君あるいは
板垣幸三君によ
つて明らかに
証言をされているのであります。これ以外に
証言をすべき道はないではないか。これ以上にまだこの事実を
不法な
監禁として証明し得る事実が何かあるならば方法を出してもらいたい。それ以外に明らかなる不当事実を証明する方法はない。これで明きかなる不当の事実を暴露しているのであります。また十二月の中旬以降においてはこの点は重要でありますが、キヤノンの手によ
つて鹿地さん自身がみずから自供調書を強要されて書かされている。この自供の調書が、三橋
事件なるものをでつちあげた根拠になるのでありますが、この自供調書を書かされて、そのあとで続いてTCクラブにおいて
監禁が続けられた。そして先ほ
ども言うように、そのあと茅ケ崎へ行
つたことについても山田
証人が明らかに
証言をしていることは事実であります。このような事実になぜかしらこの
結論案に対しては触れないで単に不当
監禁をされた
疑いがあるという程度で、
不法な
監禁があるものといわなければならないという程度でこれをごまかしているというのは、この
結論案がいかにいいかげんなものであるかということを明らかにしていると思います。
それからその次には
鹿地亘という人が、鵠沼において
逮捕をされたということは、
占領中において何か
スパイの容疑があ
つたために
アメリカ軍によ
つて逮捕されたのであるといわれているが、しかしこれは事実でないことは、この間の
法務委員会の
証言において明らかに暴露されております。それは何かというと、
板垣幸三という
証人によ
つて、キヤノン
機関のもとには、八月ごろから板垣君ではないけれ
ども、ドイツ系の
日本人が、――
鹿地亘を鵠沼において内偵をしろという命令を、松井というキャノン
機関の副官からドイツ系の
日本人の
スパイに言い渡されている。この事実をも
つてしても、
鹿地亘という人が
スパイの容疑で
取調べられたのではなくて、先ほどだれかもいいましたけれ
ども、戦争中に中国においてフアシズムの
反対のために闘
つて参りましたこの
鹿地亘君に対して、再び
アメリカが
スパイとして起用せんがために、ことさらに十一月二十五日
逮捕をして、そうして
スパイになることを強要したという跡は歴然と見えているのであります。この事実については三橋の場合にいたしましても、
板垣幸三証人が遂に死の脅迫をも
つてスパイに追い込められたという事実をも
つても明らかであります。しかもこの
スパイであるという容疑については、三橋が
証言するにあた
つて、公判廷その他の
証言においては、ま
つたくTCクラブにおいてキヤノンから強要されてつくらせられた自供調書に基いてこの
スパイの容疑がつくられている。この事実がもしうそだというならば、これは齋藤
国警長官が去年の暮れに
鹿地亘氏の自供調書なるものを
発表いたしておりますが、これと対比してみれば明らかに出て来る事実であると私は
考えます。
第三にキヤノン
機関の存在でありますが、キヤノン
機関の存在をこの機会に明らかにしない限りにおいては、
鹿地亘氏の不当
逮捕の問題は出て参りません。ところがこのキヤノン
機関の存在がすでに大体明らかにな
つているにもかかわらず、最近の
法務委員会においては、キヤノン
機関の実体にわれわれが触れて行こうとすると、ことさらに
委員会ではキヤノン
機関の実体に触れることをさえぎろうとしておるのであります。その
証拠に先日の
法務委員会において、
委員長がおらないあとに
田嶋君が
委員長代理になられたのでありますが、あのときに私がキヤノン
機関の実体を明らかにするために青パスの問題に触れようとしたところが、この青パスの問題については
事件に直接の
関係がないから、触れてはいけないとい
つて、
委員長の職権をも
つてこの点についての
証人に対する
質疑を押えております。このようにしてキヤノン
機関の実体に触れさせないようにするということは、
鹿地事件の根本問題に触れさせないことなのでありますが、こういう問題をあいまいにしようとしているのである。ところが板垣
証人の言葉によりますと、キヤノンの
機関というのは、ダレスが
日本と
講和条約の交渉をするためにこちらに来朝するのにあた
つて、
アメリカの
政府機関であるCIAの一
機関として設けられたものであり、昨年の二月の二十日までその
機関の存在してお
つたことを認めております。こういう点から
考えましても、キヤノン
機関の存在を明文化するのが当然であると思う。こういう点については
結論案には書いておらない。そうしてまたキヤノン
機関と
日本警察との交渉についても、再三の
証言があ
つたにもかかわらず、これについては触れておりません。斎葉
国警長官、田中警視総監が、多くの
証人によ
つてキヤノンの
機関のキヤノン邸に出入をしてお
つたことも
証言の中に出ております。ところがこの点についても触れておりません。そしてまた
鹿地亘氏が
アメリカ側から釈放される以前に、斎藤
国警長官がすでに
鹿地亘氏が
不法に
逮捕されているという事実を知
つているということから
考えても、キヤノン
機関あるいは
アメリカ機関と
日本の
警察との間に連絡のあ
つた事実は、明らかにこれによ
つても暴露されておるのであります。
その次の問題としては、三橋との
関係でありますが、三橋と連絡をと
つた鹿地亘は
スパイであ
つたというようなことを、最近盛んに問題として持ち出しておる。そうして
鹿地亘氏の
不法逮捕の問題については、
スパイであ
つたのだからやむを得ないというような形で問題をごまかそうとしておる。ところがこれについては何ら具体的な物的
証拠は出ていないじやないか。た
つた一つの物的
証拠と言われるはがきの問題にしても、先ほど木下君が触れた通り、このはがきがなくな
つてしま
つて、そうしてはがきとして残
つておるものは写真だけであるというようなああいういいかげんなことで
鹿地亘が
スパイであるということを例証する何らの根拠も出て来ないではないか。それにもかかわらず何か一部の間においては
鹿地亘が三橋と連絡をと
つたスパイであるから
不法な
逮捕をされたのはやむを得ないのだというような印象を与えるがごときデマ宣伝を行うことによ
つて問題をあいまいにごまかそうとしておるのであります。しかもこの三橋の問題については先ほど申し上げたように自供の調書によ
つて三橋がつくり上げた三橋
事件なるものはさる芝居であります。このさる芝居を中心にして問題をごまかしておる。この間の
法務委員会の
証言等を見ても明らかにな
つておることは、
鹿地亘君が渡した薬箱の名前は何であ
つたか、こういう点については三橋君は何ら
証言することはできなか
つた。あるいはまた天候の問題についても三橋君の
証言についてはあいまいなところがある。そしてまた三橋君の
証言について私が質問いたしました場合においても、
鹿地亘の
事件については日にちは明確に知
つております。しかし
鹿地亘の
事件よりも以降に起りましたいろいろな
事件の日にちについては、ほとんど記憶した明確な日時を言わないのであります。こういう点から言
つても、それ以降のより近い事実については日時を言わないで、それ以前の
鹿地亘の
関係だけの日時をあまりにも正確過ぎるほど、それこそ正確過ぎるほどに言うということは、何かでつち上げの上でつくられた三橋のいわゆる
証言といわざるを得ないのであります。こういう点から言
つても
鹿地亘の
スパイ容疑ということについては、何らこれを証明し得る物的な
証拠もないし、これを明らかにするものもないのであります。たとえば百歩譲
つて三橋の
証言の通りであるとするならば、三橋は毎月
鹿地亘氏から一万二千円ないし一万五千円の金を受取
つたと言
つておる。ところがこの金を受取
つた三橋自身は、齋藤さんも御承知のようにあそこにりつぱな家を建てておるじやありませんか。ところが金を渡したという
鹿地亘は一体どうだ、家を建てるどころか、あの服装を見てもわかるじやないか。あの財政的な窮乏の
状態を見てもわかるじやありませんか。同じ
スパイでありながら片方の金を渡す立場にある、この
鹿地の方がいつも貧乏な
状態であ
つて、金を受取
つておる者が家を建てておる。こんなことがあるわけはない。金を渡しておるというこの事実は、これだけでもうそであるということを暴露しておるに違いない。こういう点についてもこの
調査結論は何ら触れようとしておらない。そしてまた最後の点においては
アメリカ側の
発表というものがきわめてあいまいであります。私は前
国会においては法務
委員ではありませんでしたので、前
国会における
法務委員会の
調査の
状況は詳細には知りませんけれ
ども、しかしながら
鹿地事件の起
つた直後において
アメリカの
発表した声明と、それ以降において
アメリカの
発表した声明とには大きな食い違いが出て来ておることも事実であります。しかももし
アメリカ側が
ほんとうにこの事実がないのだとするならば、先ほど木下君も言
つたようになぜキャノンなり他の者を
日本の
法律的な
措置はでないきとしても、
法務委員会へ
証人として呼ぶことはできないにしても、向う側から堂々と出てもら
つてその事実が違うということを
証言させないか。こういうことすらやらないで、あいまいな、しかも前とあととが相反するような声明でごまかしておるということは、この
鹿地事件というものは三橋
事件に結びつけられてでつち上げられたものである、
鹿地亘氏は明らかに不当な
逮捕をされたものであると断定せざるを得ないのであります。この
意味においてもこの
鹿地亘事件における
調査結論は、
田嶋委員の
個人案であるかあるいは自由党案であるか、あるいは各党のいわゆるなれ合いの案であるか私は知らないが、この案については私は絶対に
賛成することはできない。よ
つてここに私は修正意見を提出いたしたいと思います。時間の
関係もあるので、
討論と一括してやりたいと思いますが、
委員長いかがですか。