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1953-08-03 第16回国会 衆議院 法務委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年八月三日(月曜日)     午前十一時五十四分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 田嶋 好文君    理事 吉田  安君 理事 古屋 貞雄君    理事 井伊 誠一君 理事 花村 四郎君       押谷 富三君    林  信雄君       猪俣 浩三君    細迫 兼光君       木下  郁君    佐竹 晴記君       岡田 春夫君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         国家地方警察本         部警備部長   山口 喜雄君  委員外出席者         検     事         (刑事局総務課         長)      津田  実君         検     事         (刑事局刑事課         長)      長戸 寛美君         外務省参事官  三宅喜二郎君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  駐留軍及び国連軍裁判管轄権に関する件  人権擁護に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。駐留軍及び国連軍裁判管轄権に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますから、これを許します。田嶋好文君。
  3. 田嶋好文

    田嶋委員 実は、きようの私の法務当局並びに外務当局に対しまする質問は、前々から考えておつたのでございますが、突然のようになりましたので、十分なる調査、それに基くところのお答えが困難な事情があるかもしれませんが、御承知ように、今私がお尋ねいたしたいと思つておりますところの、アメリカ駐留軍並び国連軍刑事裁判権問題と申しますのは、日本アメリカの間に行政協定締結されまして以来、幾多の犯罪事件が起きまして、その結果に基きまして相当社会的に問題をかもしておつた問題であります。なお前国会におきましては、不肖私が法務委員長といたしまして、法務委員会の意向を入れまして、外務当局法務当局に、刑事裁判権問題について相当強く要望もいたして来ました関係上、刑事裁判権が、アメリカとの仁政協定内容において、NATO式改訂されるという空気また交渉段階に立ち至りました今日、私たちはこれは十分に知る必要が生れて参つたのであります。そこできようは、先ほど申し上げましたように、まことに突然の観を呈したのでございますが、一応前々からのいきさつも片づける意味におきましてお尋ねをいたすわけでございます。当法務委員会で具体的に問題になりましたものは、例の神戸における英水兵自動車強盗事件、東京における英濠兵銀行襲撃事件等をめぐりまして、国連軍との行政協定締結にあたりまして、これらの者の職務以外の犯罪に対しては当然日本側刑事裁判権は返さなければならぬというのが、国会の強い要望となつてつたわけでございます。実はこれにつきまして、私が法務委員会を代表して委員長談話発表したわけでございますが、この談話は申し上げるまでもなく、私たちの属しますところの自由党の了解も得まして、いわば国会が超党派的に、日本国権維持のためにはぜひ守らなければならないところの線として打出した問題でございました。幸いにいたしまして今日新聞発表を見、また外務委員会におきますところの岡崎外務大臣発言を承りますと、NATO協定アメリカ上院通過によりまして、アメリカ日本との行政協定改訂が今週中に行われるということを知るに至つたのであります。そこで私たちは非常にこの問題に期待をかけ、心に喜びを持つものでございますが、外務交渉外務大臣担当でございますが、刑事裁判権の問題について直接責任の立場におられますところの犬養法務大臣におきましては、アメリカ日本との間に行われるところの行政協定改訂による刑事裁判権に関する改訂条項は、当然お知りになつておらなければならぬものだと思うのでございますが、今回改訂されますところの刑事裁判権内容というものはいかよう内容のものでございましまうか、これを承つておきたいと思います。
  4. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいま田嶋委員の御質疑のごとく、法務省でもこの問題は深い関心を持つております。独立国としての立場確立の第一歩にかかわる問題として、絶えず外務当局にもアメリカ上院におけるこの問題の審議その他の経過について問合せを行い、連絡し合つて参つた次第でございます。先般も新聞にこの問題が出ましたときに、さつそく外務当局に、だめを押してもらうべき点はだめを押してもらつたわけであります。目下のいきさつにつきましては、直接アメリカ折衝をしておられます外務省立場もございますので、外務省よりお聞取りを願いたいと思います。法務省としては、従来しばしば田嶋委員委員長でおられましたときに申し上げた方針を、依然として堅持いたしております。さよう承知を願います。
  5. 田嶋好文

    田嶋委員 それでは犬養大臣のお言葉はよく了承いたしましたので、その内容につきまして本日おいでになつておられる外務省関係当局から、いかなる内容のものをもつて交渉をいたしておるかということを承りたいと思います。
  6. 三宅喜二郎

    三宅説明員 御承知ように去る四月十四日にわが方からアメリカに対しまして、もしNATO協定が米国について効力を発生すれば、それと同様の内容行政協定関係条項を改めたいという申出をいたしました。その際にわが方から、新しい協定内容を提案いたしたのであります。この内容は、御承知NATO方式通りでございます。
  7. 田嶋好文

    田嶋委員 NATO方式通りということで、これは行政協定の十七条によりますと、「日本国選択により、日本国との間に前記の協定相当規定と同様の刑事裁判権に関する協定締結するものとする。」、こう規定してありますから、同様でなければならぬと私も思うのでございます。ところが新聞の報道によりますと、米側態度米上院附帯決議があり、それによりますと、各軍司令官相手国にその裁判権管轄放棄するよう努力するというよう附帯決議がついて、このNATO協定批准を承認するに至つたかのごとく報道されておるのでございますが、これは事実でございましようか、またその意味するものは、いかようなものを意味しておるものでありましようか、この点を承りたい。
  8. 三宅喜二郎

    三宅説明員 まだ交渉が始まつておりませんので、アメリカ側が先般の日本側の提案に対してどういう回答を申しますか、意思表示をして参るかははつきりわからないのでございますが、今御指摘アメリカ上院附帯決議のうちで、先方から裁判権放棄を要求して来ることが問題になつておりまする場合は、アメリカ憲法上保障されておる人権等が認められていない、あるいはそれが無視されたような場合に裁判権放棄を要求すべきであると上院は了解する、こういう附帯決議になつております。御承知よう日本憲法刑事関係の法令は人権の尊重を基礎にしておりますので、実際上そういうよう人権が無視されるとか、認められないとかいうような場合はり得ないと存ずるのでございます。いまして実際上日米間の交渉におきましてそれが障害になるとか。その点で日本国の権利が制限されるというようなことはないと思うのであります。
  9. 田嶋好文

    田嶋委員 このNATO協定の骨子によりますと、重要犯罪について裁判権放棄相手国に――裁判権を持つ国に、その人の属する国の方から要請することができる。その場合には、広の裁判権を持つ国は好意的考慮を払うというようなことがあるようでございますが、この重要犯罪というものは、いかようなものをさしてNATO協中は言つておるのでございますか。
  10. 三宅喜二郎

    三宅説明員 NATO協定では、重要犯罪については書いてございません。受入れ国による裁判権放棄派遣国にとつて特に重要である場合、犯罪の種類によつて必ずしもわけておりません、それはあまり大した問題でたいかもしれませんが、たとえばある軍人犯罪を犯した、ことにそれが刑事であつた、ところがその人がつかまつておると、あす出港すべき軍艦が出港できないというふうに、軍事上の必要からどうしてもその人を派遣国軍当局裁判するとか懲戒にかけるとか、要するに自分の圏内に置くことが必至であるような場合が著しい例だと存ずるのでございます。
  11. 田嶋好文

    田嶋委員 NATO協定に――これも私は原文を読んだわけではないのですから多少文句が違うかもしれませんが、この裁判権を持つ国の立法では処罰できないので、相手国要するに駐留軍側法律に照すときは当然これは処罰できる法律、この両方がかみ合つたよう犯罪の場合には、当然駐留軍側の国の法律によつて処断ができるよう専属裁判権を持つ、こういうよう規定もあるようでございますが、これは一体いかなる犯罪をさしておるの下ありますか。
  12. 三宅喜二郎

    三宅説明員 たとえばアメリカ軍人が自国の軍隊の秘密を漏らすというような場合は、日本法律ではそういうものは犯罪になりませんですから、向う法律のもとにおいてのみ犯罪になる。ですからそういう場合には日本は何ら裁判管轄権を行使する必要はないので、向うのみが専属的に裁判権を持つ、こういう意味でございます。
  13. 田嶋好文

    田嶋委員 その場合、法律家として聞くのは非常識だと言われるかもしれませんがお確めいたしたいのは、たとえばスパイようなことをアメリカ軍人がしたようなとき、これは当然日本にはスパイ処罰規定はない、アメリカ側専属管轄になろうと思いますが、この場合、アメリカ軍人がした場合のみならずして、日本国民が二のアメリカ軍人スパイに協力してアメリカ側に対してスパイ行動をとつた、こういうような場合にはいかようなことになるのでありますか。
  14. 三宅喜二郎

    三宅説明員 法務省の係官からお答えしてもらいます。
  15. 津田実

    津田説明員 ただいまの点でございますが、その犯罪刑事特別法の六条に該当する場合でございますと、その日本人は当然日本裁判権において、刑事特別法によつて処罰されるということになるわけであります。アメリカ人そのものの場合におきましても、刑事特別法六条の適用は当然あるわけであります。しかしながらこの北大西洋条約形式によりますと、諜報行為につきましては当該派遣国軍当局が第一次の裁判権を持つということになりますから、共犯でございましても当該軍人軍属向う側が裁判をするかようになると思います。
  16. 田嶋好文

    田嶋委員 そこで私は関連して法務大臣にお尋ねいたしたいのでございますが、実は明日からこの法務委員会では、鹿地事件が前国会結論を出していないということで、結論を出す意味におきまして再び取上げられることになつております。この鹿地事件というのは不法監禁にも関係をいたしておりますが、スパイ事件として世の中にあまりにも大々的に報道されておる。世の中輿論を聞きますと、スパイはよくないのではないか、これは感心すべきものじやない、日本がいかに平和になつても、こんな不愉快な問題を野放しにしておくのはいけないじやないかという輿論が非常に高いのであります。不法監禁の問題と別個な立場考えるべきだ、今の行政協定説明を聞きましても、スパイようなものは専属管轄ということで、第一次に駐留軍の方で裁判する、しかも今の行政協定の特例第八条の説明も今聞きましたが、日本人がこれに加担した場合は、これをこのまま、スパイは処罰しないから、スパイ立法がないからというので、行政協定改訂されてから後の見通しとしてほうつておくのは、国民感情からしてもこれは何か割切れないものを持つのじやないか、やはり諜報行動に対する何かの対策、処置というものは、日本考えて初めて行政協定の趣旨にも沿い、また裁判管轄権問題の解決にもなり、今後日本平和維持のためにもやはり役立つことになるのじやないかと思うのでございますが、この点いかよう大臣としてお考えをお持ちでございましようか、立法等のお覚悟がございましようか、そうすべきものであるというようなお考えでもございましようか。
  17. 犬養健

    犬養国務大臣 これはごもつともでございまして、日本独立国になりまして、スパイ行為に対して法律的に全然空白状態のままいるということは、今御指摘ように社会の常識も許さないのであります。この問題は内部的には取上げておりますけれども、いざ立法となりますと、これはよほど慎重を期しませんと、法の体裁いかんによつては、つい無事の人をつかまえるとか、いろいろめんどうなことも起りますので、実はそこを非常に気をつけてやつております。内部的には確かに取上げている段階である、こう申し上げておくのが一番適当かと存じます。
  18. 田嶋好文

    田嶋委員 初めて新しい事実を承りまして、私たち国会法務委員会の今後の審議に非常に役立つものと思います。その線に浴うて審議を進めることになろうと思います。なお明日の鹿地事件等もこれで内容調査が非常にかわつたものを帯びて来たような気がいたします。不法監禁のみでなくして、その点に触れた調査も一応しなければならぬという覚悟が出て参つたわけであります。  それはそれといたしまして、裁判管轄権問題がNATO協定方式に変更されるということから、当然私は刑事特別法とか国内立法処置が生れて来るよう考えがするのでございますが、これは大臣からでなくてけつこうでございますが、これに伴つて国内立法をかえる必要がないのか、国内立法をかえなくちやならぬことになるのか、これを承りたい。
  19. 津田実

    津田説明員 その点でございますが、もしこの行政協定改訂国会開会中に妥結いたしました場合は、当然刑事特別法刑事手続部分改訂すべきだと思うのでございます。しかしながら行政協定国会閉会中に妥結いたしました場合におきましては、この行政協定効力、すなわち行政協定条約と同一の効力を有するという従来の建前からいたしまして、これを公布いたしますと、当然国内に遵守の効力を生ずると思うのであります。従いまして行政協定改訂によりまして、新しく日本側裁判権に属するに至つた部分につきましては、当然その範囲において、現在の刑事特別法刑事手続規定は矛盾することに相なると思います。従いましてその点は当然国内法がその範囲において眠る。はつきり申しますれば、その限度において改訂されておるというふうに解釈いたすわけであります。従いましてこの次の国会の最も早い機会におきまして、整理の意味におきまして刑事特別法刑事手続規定を改正するのが相当だというふうに考えておる次第であります。
  20. 田嶋好文

    田嶋委員 ありがとうございました。わかりました。次にこれは外務大臣にお尋ねするのが本筋かとも思いますが、説明員からできるだけの御説明を聞きたいのでございます。アメリカとの間の行政協定NATO方式に変更されることによりまして、この間から非常に問題になつておりました日本に駐留する国連軍との行政協定締結というものは、これはいかよう段階に立ち至るものでございましようか、今日は停頓している、これが促進さる形になるのか、このままの状態で依然として参るのか、この点をお聞きいたしたいと思います。
  21. 三宅喜二郎

    三宅説明員 国連軍交渉が今まで平結いたしませんでしたのは二つの大きな懸案があつたからでございます。一つ刑事裁判権の問題、他は財政経済関係の問題でございます。刑事裁判権についてだけ申し上げまするが、これは国連軍側行政協定下における米軍と均等の要求をしております。それに対しわが方はNATO方式適用を要求いたしております。両方の意見がどうしても一致しなかつたのでございます。ところがNATO協定が発効することになり、日米行政協定裁判権条項NATO方式に改まりますればもはや先方といたしましても、こちらといたしましても、その間に食い違いが出て来ないのであります。すなわち新協定のもとにおける米軍取扱いと同じ取扱いをすることについて、従来の交渉経過から判断いたしまして、先方は異議ないと認められます。従いまして日米間の行政協定改訂が行われるとすれば、これに続いて国連軍協定交渉を再開して同様の裁判権条項を取入れる、こういう方針でおります。
  22. 田嶋好文

    田嶋委員 私はこれで終ります。
  23. 小林錡

    小林委員長 この問題について他に御発言はありませんか。
  24. 押谷富三

    押谷委員 ちよつと関連してお尋ねいたしますが、かつて外務省当局から国会に御発表に相なりましたのは、行政協定に定められておる裁判権の問題について、やがてNATO協定批准を受け、効力を生じたならば、その協定通り方式は変更されるのであるという、一つ最恵国条約といいますか、最恵国約款というようお話がありました。そこでNATO協定効力が生ずるとともに、日米間の行政協定裁判権関係はそういう方式に当然かわるようにもとれるのですが、もちろんこれは外交関係でいろいろ交渉をせられることは、これはさしつかえないと思いますが、しかしその外交交渉見通しは、当然一つのスライドのような形でNATO協定と同様な裁判権日本に与えられるものであるとわれわれは考えているのですが、さよう考えてもさしつかえございませんか。
  25. 三宅喜二郎

    三宅説明員 家質的に見ますればお説の通りでございますが、従来の行政協定の十七条の一項には、NATO協定アメリカについて発効すればそれと同様の協定日本選択によつて日米間に締結するとございますから、やはり新協定締結する必要はございます。なお御承知ように、NATO協定は多数国間の条約でございますが、日米の場合は二国間でございますから、条文の字句等につきましては技術的な問題で若干の変更が必要でございます。そういう点についてやはり折衝が必要でありますが、実質的にはNATO協定と同じものが採用されるはずでございます。
  26. 押谷富三

    押谷委員 そうするとこれからなされる交渉あるいは協定締結というものは、これは一つの形だけであつて、実質的には絶対間違いない見通しが持てるということになるわけですか。
  27. 三宅喜二郎

    三宅説明員 私どもはそのよう見通しを持つております。
  28. 小林錡

    小林委員長 他に御発言がなければ、本案についての調査はこの程度にとどめます。     ―――――――――――――
  29. 小林錡

    小林委員長 次に人権擁護に関する件について、古屋君より発言申出がありますので、これを許します。古屋貞雄君。
  30. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 法務大臣にお尋ねしておきたいと思うのですが、昨年の十二月十一日に、鹿地事件のときに斎藤長官は私の質問に対して、鹿地はひよつとしたら参考人に呼ぶかもしれないという答弁をされ、その直後に医者を向けて強制診断をするという問題がございまして、これは主侍医の北錬平博士診断書がつけられまして裁判所に拒否いたしました。私が手続をしたのです。その後鹿地に対しましては逮捕状が出ておるということを新聞で承つておりますが、法務大臣御存じでしようか。御存じでしたら内容をお答え願いたい。
  31. 犬養健

    犬養国務大臣 私は担当大臣でありまして、ちよつと普通の大臣立場が違うから、詳しいことは国警長官説明させ、私の大臣としての責任問題に触れましたら私が答弁する、その方が適当ではないかと思います。
  32. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 御存じではないのですね。
  33. 犬養健

    犬養国務大臣 逮捕状の出たことは知つております。
  34. 小林錡

    小林委員長 ちよつと速記をとめて。     〔速記中止
  35. 小林錡

    小林委員長 速記を始めて。
  36. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 昨年の十一月十一日の当法務委員会斎藤長官から、鹿地被疑者でも何でもない。参考人に呼ぶかもしれない、こういうような御答弁がございまして、その直後、私ども承知しておる事実によりますと、佐藤という医者が強制的に鹿地診断をするというようなことが行われ、それから私頼まれまして裁判所に向いまして、病人であつて耐えられないからということを申し出て、たしかそれを拒否したような記憶がある。それは北錬平博士に耐えられないという診断をこまかく書いていただきまして、それをつけまして出したはずであります。ところがその後になりまして、今度は逮捕状発付せられたというようなことを私新聞で拝見したのですが、さよう逮捕状発付したいう事実があるかどうか、それからどういう理由逮捕状発付されたか、その点を承りたい。
  37. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私はこの委員会におきまして、鹿地氏はあるいは三橋と共同正犯ということになるかもしれない。少くとも参考人としては事情を聞く必要がある、かように申し上げておつたと思つております。その後の取調べ状況によりまして、一応共同正犯的の容疑が濃厚であるというので、任意出頭と申しますか、出て来てもらいたいという通知を出したのでありますが、ただいまお話ように、病気で出て来られないということで、それには医者診断書もついておつたのであります。そこではたして出て来ることの不可能なような病状であるかどうかということをこちら側で選任をした医者によつてはつきり知りたい、かように思いまして強制診断の方法を講じたわけであります。これもうまく参らなかつたのであります。それでとやかくしておりますうちに行方がわからなくなつて来た、かようなことでありましたので、令状の請求をいたしました。それで令状発付に相なりましたので、捜査をいたしておる、かよう段階でございます。令状内容は三橋の共同正犯の疑いということでございます。
  38. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 私ども常識考えておりますのみならず、従来も弁護人としての慣例からいたしますと、日本医学博士はつきりと診断書を書いて、添付して出した場合には、大体信用いただけるのですが、この事件ばかりは特に自分の方の医者でなければ信用できないということはどういうところに理由があるのか、その理由をひとつ承りたい。
  39. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 鹿地氏は、当法務委員会出頭をせられていろいろ陳述をしておられるので、警察側出頭を願いたいと申しますると、病気で行けないということであります。また、それでは警察側調べに行くがそれに応ぜられるかどうかと言いますると、やはり心悸亢進その他によつて調べには応じられないというよう状況でありましたので、鹿地氏側のお医者さん、別にそのお医者さんの権威を疑うわけではありませんが、さらに明瞭にするためにこちら側で選任をした医者によつて診断をするということであれば、われわれ警察側といたしまして、これならやむを得ないということで、さらに時期の来るのを安心して待てるというよう関係があつたために、こちらの医者に見せてもらいたいということを申したわけであります。
  40. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 ただいま斎藤長官は、法務委員会には出頭されて警察へは出頭することを拒否しておる、かように申しますけれども北博士診断書の中には詳しく書いてありまして、その内容は、法務委員会に参られまして調べられたあの状況において特に疲労をしておる。従いましてその後の状態が悪いんだということが詳しく書いてあるはずです。それをあえて強制診断までしなければならないか、なぜかよう処置をとられたか、この点を私どもは納得行かないのです。ただいま承りますと、法務委員会には出る、警察には拒否する、だからという理由では私は納得行かない。というのは、法務委員会に出まして当時非常に疲労されたことは委員長御存じ通り、特に精神的に肉体的に非常に疲労した。従つて当分待つてもらいたい、からだがよくなれば調べに応ずるという態度をとつてつたにかかわらず、あえて強制診断までしなければならない、しかも他の鹿地の信用する医者であるならば拒否しない――佐藤という医者は、申し上げたくないのですが、いろいろの事情がありまして信用できない医者なんだ、こういうことで拒否したのですが、そうした強制診断をするということになるならば、これは人権蹂躪になるということも考えまして、この点非常に懸念をするわけであります。もう少し明確に、何がゆえに佐藤医師でなければならなかつたか、北錬平博士診断を信用しなかつたかという点、もう一つは、他の事件にもかようなことが行われておつたかどうか、行われておつたとするならば、そういう具体的な事実をあげて、納得の行くような御答弁を願いたいと思います。
  41. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 なぜ佐藤医師に依来したか等、詳細な点は警備部長からお答えをいたします。
  42. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 佐藤医師にお願いいたしましたのは――佐藤というお医者さんは私どもは事前にまつたく存じ上げておりません。ただ立川の国立病院の院長さんに第三者として公正な御診断をお願いしようと思つて参りましたところが、名前は今ちよつとど忘れしておりますが、その院長さんが、自分がやつてもよいが、私の知つておるいいお医者さんが北里研究所の部長をしておられるから、その人に私が紹介してあげるから頼みなさい。私からも連絡してあげよう、こういうことで佐藤というお医者さんにお願いしたわけであります。立川の国立病院の院長さんの御紹介によつたのであります。
  43. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 佐藤というお医者さんが、何か自分の兄と一緒になつて麻薬法違反か何かを起して大騒ぎをした。それで警察の方には特に頭が上らぬ人だ、こういうようなことを、鹿地の方ははつきり事実を調べて申しておるのですが、さよう理由をあげて説明をして拒否した場合には、他のもつと信用のできる医者を向けて診断することが、大体親切な方法でなければならぬと思う。あえて佐藤さんにどこまでもやらさなければならなかつたという理由はどこにあるか。
  44. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 佐藤医師と一緒に警察の者が鹿地さんのお宅に参りましたところが、大勢の若い者が門の前におつて、どうしても入ることを妨げたのであります。そのときに麻薬法違反云々という話を鹿地さん側の人から警察も聞きまして、びつくりいたしたのであります。そこで当日は強制診断と申しましても、要するに令状を持つてつて診断を受けてもらいたい、こう申すわけなのですが、事実上そういつたようにいわば失礼な言葉かもわかりませんが、ピケ・ラインを張つて、大勢で阻止されるという状態では、診断を行うことは適当でないと考えまして、当日は一同引上げたような次第であります。
  45. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そこで私どもは、もう少し鹿地君の了解を得て、他の信用すべき医者診断してもらうという手配を、どうして御考慮しなかつたのかと考えますが、あの当時の鹿地君のような病状では、精神的に自分がいやだという医者自分の大事なからだをしいて診断させるということは、私でも拒否すると思うのです。それをあえて強行しようというところが、私はどうも納得が行かない。他に幾らでも医者はいる。他にあなたの方の好みの医者を連れて来られる方法も講ぜられるのに、いかにも互いに戦闘をしており、けんかをしておるよう態度でされるということは、本件ばかりではなく、捜査上慎むべき問題であると思う。納得の上で捜査する、納得の上で診断する、さよう態度が、刑事訴訟法の親切、丁寧な被疑者に対する態度であると思う。強制すべきではないという点を、どうしてもわれわれは考えなければならぬと思うが、その点はいかがでありましようか。
  46. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 その点はお話ように、私どもといたしましては、いろいろと折衝いたしましたが、警察側の向ける医者診断は受けない、こういうようなお考えように受取りましたし、またいろいろと問題をこじらせてもどうかと思いまして、その後佐藤さんの診断を受けられるようにということを、無理に進めようとしたことはありません。参りましたのはそのとき一回だけであります。
  47. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 私どもの聞いておりますところでは、警察相当しつつこくそれを交渉に来ておるということです。私もそのときに相談を受けたのですが、鹿地さんの方も、もしこちらの信用のできる医者ならばいくらでも受けよう、こういうふうに返事をしたはずです。私も当事相談を受けまして、それはあまりひど過ぎる、何も好まない医者診断をしてもらう必要はないのだ、鹿地君にも診断を拒否する自由権があると思つたのです。しかし別の信用の置ける医者ならば受けましようといつて答えたはずです。それが上司に伝わらなかつたかどうか知りませんが、そういうよう状況のもとにあつたことは事実です。従いまして今後そういうような場合には、上司はその当時の実情を相当調べを願つて被疑者の納得の行くよう態度を』つていただきたい、かよう考えるわけであります。
  48. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 その点につきましては、鹿地さんの側から一、二名前をあげられてお示しになつたように私もお伺いしております。それから警察の方といたしましても、そのお医者さんにはぜひ御診断を願いたいというお願いをいたしました。ところがこれらのお医者さんは、当時鹿地さんの問題が世間で非常に騒がしく取立てられておりましたので、あるいはそういう事情であつたかと存じますが、診断をしようということを御承諾にならなかつた、こういう事情があるのであります。
  49. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 それは私も承知しておりますが、そういう理由ではない。北錬平博士というよう相当な権威のある博士診断をしたあと、われわれが診断をしなくてもそれを御信用になつたらいいということで拒否した事実がある。でありますからこういう点をはつきりいたしまして、どうか捜査当局ではただいま申し上げたように最も人権を尊重される立場から親切丁寧な方法においてさような点を扱つていただきたいことを私は希望申し上げる次第であります。
  50. 小林錡

    小林委員長 猪俣浩三君
  51. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これは私前に法務大臣にあてに質問書を出しておいたのですが、御調査くださつたかどうか。まだ御調査がないとするならば後日でもよろしゆうございますが、今国警の方では三橋の関係において鹿地スパイしたかどうかというようなことを一生懸命やつておられる。われわれが法務委員会で問題にしたのは、鹿地アメリカ官憲のために不法に監禁せられておつたことがあつたかどうかという不法監禁の事実なのであります。そこでこの不法監禁の事実は警視庁が主として調査せられ、警視庁は国警と違いまして鹿地の言うことを許して、二日間にわたりまして私のところにおりました鹿地氏のところにおいて朝から晩まで一切調べられた。それが検察庁に渡りまして東京地方検察庁の検事がこれも徹底的にお調べになつた。聞くところによれば上司に報告が済んでいるということであります。スパイ問題については実に徹底的に宣伝がせられましたが、この不法監禁の事実については、外敵省でもその他の政府機関でも鳴りを臨めている、検察庁も調べが済んだのやら済まぬのやらさつぱりうやむやになさつている。私はこれは不公平だと思うのであります。しかもスパイ事件のごときは軍機保護法のない今日、電波法第四条の幇助ぐらいなところが関の山のものを逮捕々々でもつて新聞宣伝がされているのであります。ところが一方国権の侵害だと見られるところの不法監禁の事実――過去におきまして一軍人が支那軍に逮捕せられたということで満洲事変が起り、日華事変が起つております。かかる重大なる国権侵害に対する事実につきましてはさつぱり鳴りを静めてしまつてどうなつたのやらわからない。ただ活動しているのは当法務委員会ばかりであります。明日なおこの点について調べが進むことになつておりますが、私はこの際法務大臣から検察庁において取調べられました鹿地不法監禁の事実は、いかなる認定に相なりましたか御報告願いたい、こう思う次第であります。
  52. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。猪俣委員のただいまお述べになりました御不満は一応ごもつともであると私は思うのであります。いわゆるスパイ事件だけがジャーナリズムによつて非常に宣伝され、その陰に不法監禁事件は何となく影をひそめたかのごとき感をもし世人に与えておりますならば、これはやはり法務当局の片手落ちという御批評を受けても過言ではない、と冷静に申し上げてさよう存じます。  一応今まで不法監禁事件について調べましたことを申し上げます。この前問題になりまして以来、本年の一月十三日東京地検において警視庁捜査第二課から同事件の引継ぎを受けまして、ただちに鹿地氏から事情を聴取いたそうとしたのでありますが、同氏の健康上その他の理由でもつて臨床の取調べも控えるというよう状況でありまして、やむを得ず国会における鹿地氏の証言を一応のよりどころといたしまして、山田善二郎外二十数名の参考人を取調べました。かつ監禁が行われたと申されております本郷の岩崎別邸、川崎市新丸子の東銀川崎クラブ、茅ケ崎市菱沼の中島門吉方、渋谷区猿楽町の村井恒三万の四箇所について検証捜査を行つたわけであります。御承知ようアメリカ大使館からまた別の言い分を言つて来ているわけでありまして、事情はたいへん複雑になつたのでありますが、一方鹿地氏の健康状態、その他当時の状態を知つておられるとせられているある人物にもおそらく三、四回にわたつて検事が会つております。その人は名前を発表することを非常に立場上困つているようでありますが、一応参考になるだけの話をそこからも聞きました。結局それらのことがほんとうであるかどうか、不法監禁が確認せられるやいなやということについて一応今度は鹿地氏からも話を聞きたい、こういうよう段階のまま中途半端になつているようなわけでございます。実は私も猪俣さんの言われるよう不法監禁事件が何となくうやむやになるというようなことでははなはだ法務当局としてまずいと考えまして、爾来ときどきこの問題の調査をやつている者に尋ねた――最近も実はその後の状況を聞いたのであります。私が報告を受けた限りにおいてはただいまのような次第でございます。なお御必要とあらば直接ここにおいて御説明をいたさしたいと存じております。
  53. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これは私も人名を申すことをはばかりますし、また大臣としても責任上さようなことは申されないと思いますが、聞くところによれば東京検察庁で調べ得られた結果は上司の方に報告され、それによれば不法監禁事実は認めざるを得なかつたというふうに私どもは漏れ聞いているのであります。そこでもし検察庁のお調べにつきまして御発表願われるならばもつと詳細に御発表していただいて、明日の当法務委員会の審査にも役立てたいと考えますが、御発表いただくことができれば幸いだと思います。
  54. 犬養健

    犬養国務大臣 できるだけこの問題は当局として懇切丁寧にいたしたいと存じております。
  55. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 きよう報告いただけましようか。
  56. 犬養健

    犬養国務大臣 これは実はけさ早く待機しておつたのでありますが、行政協定の御質問がきよう行われるというので一ぺん帰りましたけれども、いつ何どきでも呼ぶことができると思います。
  57. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 国警長官にお伺いしますが、鹿地氏に対する逮捕令状を請求されたのは大体いつごろですか。
  58. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 これは三橋氏に対する第一審の判決があつて後でありまして、日にちは五月六日でございます。
  59. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 五月六日ごろに逮捕状を請求されたというのですが、問題は、先ほど逮捕令状の請求の要件としては三橋問題の共犯容疑として、こういうお話であつたと思うのですが、逮捕令状を請求するためには、おそらく任意出頭なら何らかのそういう強制力を持たずして取調べるということは不可能であるという断定に立たれたから、逮捕令状を請求されたのだろうと思うのですが、現実の状態として逮捕令状を請求しないでは調べることができなかつたのであるかどうか、こういう点について具体的に御答弁を願いたいと思います。
  60. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 鹿地氏に対する逮捕令状は今申し上げましたように第一審判決の後であります。それまではできるだけ慎重な態度で、逮捕令状を出していただくことについては臨みたい、こういう考えでおりました。五月六日と申しますと鹿地さんが新聞紙上でも御承知ようにみずから失踪宣告をされて行方をわからなくされた、後であります。従つて私の方といたしましては前々から、一月ごろから任意にお聞きいたしたいということをたびたび申し出ておりますが、お断りになつております。行方がわからなくなりましたので逮捕令状発付を受けたわけであります。
  61. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 何かみずから失踪宣告をされた後云々というお話が今あつたのですが、みずからそういう宣告をしたという事実については、われわれの調査した限りにおいては知りません。しかしあなたがそういうように断定されて失踪宣告ということを言われておる限りにおいては、何か具体的な根拠があるのであろうと思いますが、そういう具体的な根拠をお話願いたい。
  62. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 私も、ただいま申し上げましたように、新聞紙上に出ておりましたようにと申し上げたのであります。鹿地さんがそういう宣告をされたかどうか、現実に見ておりませんので存じておりません。
  63. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 新聞の上だけでの失踪宣告を基礎にして逮捕令状を請求するということではきわめて無責任のそしりを免れないと思う。具体的に逮捕令状を請求する場合においても、新聞で見たから逮捕令状を請求したということでは、人権蹂躪のそしりは明らかに免れないように思うのですが、その間の具体的なお話を伺いたい。
  64. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 私が申し上げましたのは、鹿地さんの行方がわからなくなつた後に逮捕令状の請求をいたしたということを申し上げたのであります。従つて逮捕令状発付を受けます前に、鹿地さんがその前からおられましたお宅におられないということを確認いたしました後に逮捕令状発付を受けたのであります。
  65. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 きのうの新聞を見ますと、何か法務委員会に出席をするならば逮捕令状の執行をしなくてもいいのだというようなことが話合いとしてできたという記事をわれわれは拜見したのでございますが、その席上に斎藤国警長官もおられたということでありますが、その間の事情はいかがになつておりますか。
  66. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 鹿地氏の逮捕令状の請求は、ただいま山口政府委員から説明いたしております通りこちらで任意に調べさしてもらえるならば、何も令状を出す必要はなかつた。ところが任意に調べること自身もからだにさわるということであつたの強制診断というようなことも前にやつたのであります。もうしばらくしておれば、もう少し健康状態もよくなるだろうというので待つておりましたところが、今お話がありましたように当分どつかへ行方を自分がくらますというようなことを新聞を通じて知りました。現実にお宅へ行つてもおられない。それから知つておられるであろうと思う縁辺の方々に伺つてみても全然わからないというので、やむなく令状の請求をいたしたのであります。しかしながらさきに申しましたように、われわれといたしましては何も逮捕する必要はないのであります。調べる必要があるわけであります。従つて調べに応じてくださるという保証があるなら、令状を執行する必要はない。これはかねがねからわれわれの考えおる通りであります。従いまして国会に出て来られて、その後の警察調べに応ずるという保証が得られるなら、何も逮捕する必至はありませんということを私は申し上げておるのであります。その身元の保証をしてくださる方があるようでありますから、それならばということで令状といいますか、捜査の全国手配も土曜日に実は中止をいたしております。従つて任意に調べに応じていただけるものとただいまではわれわれ確信をいたしておるのであります。
  67. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 もう一つだけ。ただいま国警長官の話を伺うと、病状の事由をもつて強制的に取調べをすることはもちろん、任意の形で取調べをすることもあまり取急ぐことはできるだけ避けたい、こういう事情等によつて、できるだけ差控えた態度をとつてつたという話でございますが、先ほど政府委員説明によると、何か失踪宣告をしたことによつて、ことさら見えなくなつたのだというようなことで、逮捕令状を出したのだというような話をことさら強調しておられたようでありますが、しかし問題は依然として相当重病の人であるだけに、絶対安静の療養をするためには、そこにおらなくてほかの所で療養するということもあり得るわけです。従つてその人がその場所におらないということだけを逮捕の要件としたということは、その人の病状それ自体について、もつと深く考えて、むしろ健康の回復したあとにおいて、そういう事情をもし取調べる必要があれば調べる、こういうことになつて行くのが、斎藤長官の当初のお話になつたきわめて遠慮をしておつたのだという事情の趣旨を一貫することになると思う。何か新聞紙上において失踪宣告をしたから急に逮捕令状を出したのだ、こういうような印象を与えるということは、これは特に本人が病気であるだけに不当であり、人権蹂躙であると思わざるを得ない。この間の関係が何か結びついたよう答弁をしておられるだけに、この点をもつと明確にしていただきたいと思う。本人自身も何もことさら取調べを拒否しておるとかそういう事情は私はないと思いますが、特に逮捕令状を出された前後の経緯について、いまだに私はその間に不可解な点が残つておるような感じがいたしますので、この点をはつきりお伺いをいたしておきたい。
  68. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 鹿地氏がどこかへ行かれてしまつた後においても、どこどこにいる、病状はかくかくだということがわれわれにわかれば、しからばその病状というものを、前に話をいたしましたように、されにわれわれ側の選んだお医者さん、先ほど話がございました佐藤氏はそういつたよう意味ではあとで発見したのでありますが、私は必ずしも的確とは思いません。さらに別にお医者さんを選定をして、そしてその病状が納得できれば、われわれは回復をされるのをお待ちをするのでありますから、そういうことなしにどこかへ隠れたということでは、これはこのまま放置をしておくことは私らとしては曠職のそしりを免れない、かよう考えたのであります。さようなわけで令状を請求して、その行方を探すという以外に手段がなかつた。われわれ捜査の結果居どころがわかりましても、これは医者が見て無理だというのであれば、取調べをある期間待つという考え方もいたしておつたのであります。現にいたしておるのであります。
  69. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これで終りますが、今の話を聞いているといまだに長官並びに政府委員は、北錬平というお医者さんの診断というものを信用しないかのごとき印象を私は受ける。しかし私の記憶が誤らないとすれば、三橋公判のときも北錬平氏が公判廷に証人として出席をして、みずからの診断経過を報告して、それに基いた報告が一応証言として認められているかのごとく私は即象を受けておるわけなのでありますが、公判廷における証人の証言にもかかわらず、北さんというお医者さんの診断というものに対して、いまだに何か疑念を持つておられるがごとく、何かそれ以外にあなたの方では特別に選定をしたお医者さんでもう一度診断しなければならないというような印象を受けるのでありますが、そういう点がいまだに疑念として残つておられるのでありますか。  それからもう一つは、先ほど古屋君も話をされましたが、前国会のときにおいては私は法務委員でありませんでしたが、しかし当時の法務委員会状況を私は出席して傍聴し、あなた御自身の答弁を聞いておりましたし、その後速記録を私は調査いたしましたが、その結果をもつて見るならば、鹿地氏は参考人として調べよう考えは、場合によつてはあるかもしれないけれども、被告人としての、被疑者としての扱い方については、全然考えておらないというよう速記録にはつきり残つておるよう考えている。それにもかかわらず、それ以降において被疑者としての逮捕令状を出したということについては、何かその間にわれわれぴつたり来ない点が非常にあるのであります。この点についてもう少し詳細に御答弁を願いたい。
  70. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 北博士診断を信頼しないというわけではございませんが、もう一人こちらのよかろうという人の診断があれば、われわれとしてはそれで完全になる、かよう考えておつたのであります。ただ被疑者側の言われる先生の診断だけということでなしに、警察側の選定をした人にも診断をしてもらつて。それで完全にしたいという考えなのであります。当委員会におきましては。私は少くとも参考人として調べる必要があるだろう。しかし場合によつては、共犯あるいは幇助ということになるかもしれないということを、私は確かに申し上げたと思つております。当時の状況といたしまのては、また共犯あるいは幇助という点まではつきり出ていなかつたのでありますが、その後三橋の取調べによりまして、その容疑が非常に濃厚になつて参りました。三橋氏の検事の起訴状の中にも、鹿地氏と共同正犯としてやつたということが起訴状にも出ておるのであります。さよう意味から、三橋氏の取調べの進渉に伴つて、最後は共同正犯の容疑が濃厚だ、これによつて調べる必要があるということになつてつたのであります。前の法務委員会におきましては、私何回も答弁いたしておりますから、従つてどのときに申し上げたか存じませんが、確かに私は奮励または共犯として調べような場合もあり得るかもしれないという程度には申し上げたかと思つております。
  71. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私速記録を持つて来ていなかつたのですが、ちようど今古屋君から速記録を拝借したので読んでみますから、斎藤さんお聞きを願いたい。十二月十一日の法務委員会速記録において、古屋委員質問に対して、斎藤政府委員答弁いたしておりますが、最後の後段の場合において、初めて本人を取調べることについての問題を答弁しておるのであります。この答弁の文章をそのまま読んでみますが、「場合によれば少くとも鹿地氏には参考人として御出頭を願わなければならないことがあるか、かよう考えておるのであります。」これだけしか言つておりません。これ以外のところでこの問題については、私も実はこの問題に関する限り、丹念に法務委員会を傍聴いたしておりましたので、その前後の事情を知つているはずでございますが、事鹿地氏の関係部分については、これ以外について斎藤政府委員から答弁をされた部分がないのであります。もしそういう、ただいま御答弁されたような事実があるとするならば、速記録も出ておりますから、これをお調べの上に、正式に明日までにひとつその分を御報告願いたいと思います。もしそういう事実がないとするならば、その段階までにおいて、逮捕令状を出したというような扱いをしたということについて、具体的な何らかの事実が上つて来なければならないと思うのでありますが、こういう事実についても、それと一緒に御答弁を願いたいと思います。そういう意味で、私はきようはこの程度で打ちとめておきます。
  72. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私その他の機会に述べましたかどうか、速記録をよく調べて御答弁をさらにいたしますが、そこでも申しておりましたように、「少くとも」と申しておつたのは、そういう含みであります。また当時まだ三橋氏の取調べも十分進まないうちに鹿地氏を幇助あるいは共同正犯で取調べるというようなことを私がここで申し上げるのは、かえつて人権尊重の点からどうであろうかというよう考えも働いておつたことは事実であります。従いまして他のところで申しておつたといたしましても、断定しては申し上げなかつたつもりであります。その後しからばなぜ共同正犯としてそういう令状をとつたかというお尋ねは、先ほど申しましたように、三橋氏の取調べが進み、これが警察のみならず検察庁でも取調べられたその状況下におきまして、いよいよ鹿地の容疑も濃厚になつて来たという段階になつてつたのであります。従つて私は別に、その間に私の考え方に齟齬を来して来たというような点はないと思います。  それから、先ほど三橋氏の検事の起訴状の中に、共犯ということがあると私は申しましたが、数名と共同してということであつて鹿地氏の名前が出ていないそうでありますから、これは取消しておきます。
  73. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これで終りますが、「少くとも鹿地氏には参考人として」という点は、この文面においては、場合によつて参考人として呼ぶということが、少くともという意味で言つておられるように、われわれは解釈できるのであります。こういう点もあわせてひとつ御報告を願いたいと思います。
  74. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 斉藤さんにちよつと承りたいと思うのは、これは三橋の共判の際に明らかになつて斎藤さんもきつと御存じだと思いますが、三橋が国警に自首して出る前に、向うから、われわれからいえばキヤノン機間というものですが、向うのそういう機関に属している人物と会見をした八日の日に会つて、その人の勧めによつて国警に自首することになつたということを、公判廷で言つておりますが、さようなことは齊藤さんは、自首する前に何か向うから連絡があつて聞いておつたのではないかと思われるのですが、さような事実はございませんか。三橋が自首して出る前に、向うアメリカ軍の機関の万から三橋という男がそつちへ行くかもしれないというような、何か連絡があつたというふうにわれわれは聞いておりますが、さような事実はありましたかどうか。
  75. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 その当時三橋なる人間が非常に身辺に危険を感じておるから保護してやつてほしいというような話はあつたのであります。
  76. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それは幾日ごろのことでありますか。
  77. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私は三橋が自首して出て来たということを聞いた日であつたと思つております昼ごろ聞いて、それから晩ごろ自首して来た、こういうことであります。
  78. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 その連絡はあなた自身に来たのじやなくて、国警のある部署にそういう連絡があつたということを、自首したその日にあなたが聞いた、こういう意味になるわけですか。
  79. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 保護してやつてもらいたいということは、私が直接聞きました。
  80. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これは私どもは決して信じているわけではありませんけれども日本の大新聞の記者のある者から、三橋が自首して出る前に、もうアメリカ側日本の国警との側には十分打合せがあつた。しかる後に三橋は自首して出たのである。そのアメリカ側、国警側、それに三橋、三者が相談の上三橋が自首して出たのであるということを伝える者があるのであります。そこで私は今あなたに質問したわけであつて、それは会議をしたというようなことでなしに、何らかの連絡があつたことが誤り伝えられたのじやないかと思いまして念のためにお尋ねしたのです。そうすると、アメリカ側から三橋の出現前に連絡があつたことは事実であるが、それは身体の危険を感じておるから保護してやつてくれという連絡だけでございましたか。
  81. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 向うからの連絡はそれだけであります。保護するといつても、どんな保護の仕方か、われわれ警察で保護するといつてもおのずから限度がある。身辺を絶えず気をつけさせるということもあるし、しかしそれで四六時中警察官が付添つているということは非常に困難である。どの程度のどんな保護をしてほしいのであろうかと聞いたのでありますが、当分の間できるだけ完全な保護をしてほしいということであつたのであります。そこで警察の保護室とか、そういうところへ入れてでも保護をする必要があるのかと聞いたのでありますが、それでもけつこうだという話でありましたが、しかし理由なしにそういう保護室に入れるというわけにも参らない、一体どういうことで保護してほしいのか、なぜ身辺に危険を感じておるのかということを聞いたのであります。その際に鹿地氏との連絡をやつていた男であるということを聞いたのであります。それならば、本人はあるいは電波法違反とか、そういう犯罪を構成するのじやないか、自首して出ればその間留置するということも可能であるし、またそういう犯罪を犯しているものならば、むしろ自首して出た方がよろしい、かように私は申し上げたのであります。その結果自首して来たのではなかるうかと私は思つております。
  82. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これは国警長官の御意見を承りたいのですが、アメリカ側発表のごとく、鹿地自身が願つて保護してもらつてつたということと、今の三橋が身の危険を感じておるから今度は国警に保護してくれとアメリカ側から言うて来た、これは矛盾しておると思うのであります。鹿地氏自身がアメリカ側にお願いして保護してもらつてつたということが事実であるならば、三橋が身の危険を感ずる道理がない。そこではなはだ矛盾だと思うのであります。さようなことをあなたにお聞きしてもしかたがないと思いますが、なおお尋ねいしたたいことは、三橋が身の保護を願つておるから何とかしてやつてくれということを、あなたにじかに頼んで来られた相手の方はどういう人でございますか。
  83. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この相手の名前は、実は申し上げるわけには参りません。御了承願います。
  84. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 相当上の身分の人でありますか、下つぱの人間であるか、さようなことも申されませんか。
  85. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 上といいますか、下といいますか、どこら辺を上といいますか……。
  86. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それじやこうお尋ねします。公判廷で明らかになりました二世の、つまり三橋に自首して出ろということを勤めたというその二世の何とか、名前は忘れましたが、これが八日に三橋に会つて国警へ行けというふうに勧められた。その男でありますか、その男のまた上役でもありますか。
  87. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 鹿地、三橋関係に出て参りまする二世の人というものを私は存じません。従つてそういう人たちではありません。またそれらの人たちとどういうつながりのある方か私はよく存じません。
  88. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 その言えないという理由は、言いますと何か本件の真相がかえつて逆転するのでしようか、言われた方が本件の真相がよくわかるのじやないか、どうですか。
  89. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私は向うの組織の何か機密を暴露するようなことになるのじやないかという感じがいたしますので、別に不利にも有利にもならないと思います。
  90. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 当法務委員会から、外務省を通じてアメリカにこの事件を照会をいたしたときに、親切に保護したことはあるけれども、当法が考えているような強制収監をしたことはない、こういう御返事が来たことを前の委員会でも報告を受けたのです。そうしますとただいま猪俣委員から御質問があつたように、保護をしてやつたんだということなら、堂々と保護したものであるという御主張を押し通して、従つて三橋の問題の身の危険という問題は起きて来ないと私ども考える。そこで、むしろ向うのいろいろの機関の内容が当方にわかると、鹿地事件が、はつなりと不法監禁になるというよう結論になるのではないかと私ども考えておる。従いまして、斎藤長官が、真にこの事件の真相を明確にして、ほんとうに日本の民族が、日本人が、日本国内において安心して生活のできる自由が、他国のある力によつて奪われないというために考えられておるならば、進んで明確にされても、かりに斎藤さんのいろいろの関係に不利益な状況がございましても、われわれ民族の立場から考えますならば、まことに当然なくことであり、われわれはさような行動をとつていただきたいと考えておるのであります。どういう理由発表できないのか、重ねてお尋ねいたします。
  91. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この監禁事件の捜査の進みませんのは、結局鹿地氏の方が言つておられるいわゆる二世とかなんとかいう人の存在、及びこれらの人を調べることが、今までにできないという点に私はあると思つておるのであります。私が連絡した人はどういう人であつたということを、私として申し上げることが、私の不利になるとか、そういう点は、私は全然考えておりません。
  92. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 前に私は長官にこう質問をしたはずなんです。一体アメリカの方に特殊な機関があり、日本にも特殊な機関があつて両方が協力して、日本のかつての秘密警察と申しますか、特高警察ようなことをやつておるのじやないか、こういうような疑いをわれわれは持たざる得ない、そういう質問を私は長官にいたしました。ところが、さよう関係はないと答弁をされておるのです。ただいまの御答弁を承りますと、われわれ国民が懸念いたしましたアメリカにおける特殊な機関と、日本における法律の認めておらない特殊な捜査機関のようなものが相提携いたしまして、日本のいろいろの活動を半面においてやられておるよう考えられるが、ただいまの御答弁を承ると、ますますそういう感を深くいたします。その点を念を押して申し上げますが、さような事実は絶対にないとおつしやるのか、それとも、さような事実があるから、発表されると非常に困る、こういうことで控えて発表しないとおつしやるのですか。その点だけを承りたい。
  93. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私は、日本側のわれわれと、それから向うの何か秘密機関というものと一緒になつて、何か秘密警察ようなことをやつておるということは、少くとも私の知つておる限りではないということを申し上げておるのであります。名前を言うことによつて、そういつた秘密機関、秘密警察が暴露するというような点は、私は考えておりません。
  94. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 長官は、キヤノン中佐という人物が、昭和二十七年の二月ごろまで東京あるいは横浜に滞在しておつたことをお認めになつておりますか。
  95. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 キヤノン中佐が日本にいたということは、私は承知いたしております。いつまでおりましたか、はつきりはいたしませんが、いたことは事実であります。私も会つたことがありますから知つております。
  96. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 このキヤノンという中佐はいかなる役目を持ち、いかなる行動をしておつたかということを御存じありませんか。
  97. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私は、軍人として、アメリカ軍の機関として働いておられたということは存じております。それ以上に詳しい点は、私あまり存じませんし、向うの軍の組織という点につきましても、大体私はあまり内容を聞かないという建前にいたしておりますので、正確にどういう仕事であつたかということを申し上げるととはできないのであります。
  98. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 軍と申されましても、戦闘を主としてやる軍隊もありますが、このキヤノンという人物は、われわれの聞いたところによれば、主として情報収集、そういう方向の仕事をしておつた、当時CICとかとかCIDいうものがあつて、あなたが数回キヤノンと会われ、キヤノンの自宅にまでも招待を受けておいでになつたということは、私ども調査でわかつておる。そうすると、相当詳しく御存じだと思うのですが、一体軍と申しても、これは戦闘部隊じやない。そして田中警視総監自身も言つておられますが、やはりしばしば会見しておる。そうすると何か警察関係のあるような任務を持つている人物じやなかつたかと思うのです。たとえばCICとかCIDとかいうものは、あなた方も御存じであつたはずである。それを知らぬというならば、警察の任務は果せなかつたはずであります。これはCICに属したものであるか、CIDに属したものであるか、あるいはその他の特別の機関に属しておつたか、これはあなたはしよつちゆう連絡なさる必要もあり、十二分におわかりになつておることだと思うのですが、もしさしつかえなければ、キヤノンなる者がどういう任務を持つてつたかをもう少し明確にお答え願いたいと思います。
  99. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私はその任務内容を申し上げるほど詳しくは存じておりませんし、またどの機関のどういうポストであつたかということは、向うの機密になつておるのじやないか、かように思いますので、この点はお許しを得たいと思います。
  100. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、これだけは言い得られますか。キャノンなる者を御存じであることは今お聞きいたしましたが、普通の、要するに作戦戦闘部隊の指揮官じやない、ある何か特別の任務を持つてつたのではないかというようなことはおわかりになつてつたのじやないかと思うのですが、それもお答えできないでしようか。
  101. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 先ほど申し上げました通りであります。どこまでが戦闘部隊かどうか、それも私は十分詳しくは存じておりません。はなはだ要領を得ませんが、御了承いただきたいと思います。
  102. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 なおこのキヤノンという人物が現在再度日本に入つて来ておるということを、私は今年の四月北海道から耳にしたのですが、さような形跡がありましようか、ないでしようか。
  103. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私はその事実はないと考えております。今どこにいるか存じませんが、少くともそれ以後日本へ再び来られたということは全然なかろう、私はさように確信いたしております。
  104. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 関連をして。キヤノンがしばしば参りまする、本件で問題になつた川崎の東銀クラブ、当時は東川クラブと申していた川崎のクラブに、斎藤長官はキヤノンに呼ばれて行かれた事実があつたかどうか、そのときに御夫人と一緒に行かれた事実があつたかどうか、その点を伺いたいと思います。
  105. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 川崎の東銀クラブというのは、私はこの鹿地事件が起つてから初めて知つた場所で、私はこれは全然存じません。私がだれと一緒にどこで話したか、飯を食つたか、こちらの御調査にあるいは御関係があるか知りませんが、もしあまり直接でたければ、そのときに集まつてつたのは、だれだつたというようなことは、ちよつとお答えをすることを許していただきたいと思います。
  106. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 それはそういう意味ではないのです。ただいま長官は本性に関係してからとおつしやいましたが、一昨年十一月ごろから本件が問題になりまするころまでの間に、川崎の東銀クラブ、いわゆる東京銀行クラブにキヤノンに呼ばれて行つた事実が新つたかどうか、これだけを承りたいのです。
  107. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 さような事実は全然ございません。私は東銀クラブに足を運んだこともありませんし、どこにあるかも全然存じません。
  108. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは先ほどキヤノンにお会いになつたということは明らかになつたのですが、われわれの聞いている限りでは、斎藤さんが東川クラブ、TCクラブへ呼ばれて行つたという話を聞いておる。そういう事実はないとすれば、一体どこでお会いにたつたか、おさしつかえなければ、キヤノンという人には何度くらいお会いになつたか、その点のお話を伺いたい。
  109. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私はいろいろなパーテイの機会に数回といいますか、相当つております。パーテイの際にはいろいろな人が集まつて来られますから、そういう意味で会つておるの下あります。川崎の東銀クラブ、たびたび申しておりますように、これは絶対ございません。そういうところに足を運んだことはありません。
  110. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 先ほど三橋の問題に関係して、ある方面から連絡があつた、こういう話でしたが、その名前は言えない、こういうお話で、その人が直接国警の方にお見えになつたのですか。それともどういう方法でそういう事情があなたの方に連絡があつたか、その点をお伺いできれば伺いたい。
  111. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 これもひとつできたらお許しを願いたいと思います。
  112. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 といいますと、連絡があつたことについて、どういう方法で連絡があつたかということも、あなた自身としては、別段それをお話になることで不利なことはないと思う。しかしわれわれの調査関係から行くと、その点だけは伺つておきたいと思うのですが、どういう事情お話になれないか、その点お話を願いたいと思います。
  113. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 最初電話で話がありましたあとで、私が直接会いました。
  114. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そのお会いになつたのは、それでは齊藤さんの国警の方にその人が見えたわけでありますか。
  115. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私のところではなかつたと思つております。
  116. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それから先ほどあのキヤノン氏にパーテイでお会いになつたという話でしたが、東川クラブでは会わなかつたが、それではそのパーテイでお会いになつたというのは、横浜のキヤノン氏のうちでお会いになつたのじやありませんか。
  117. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 うちでパーテイのあつたこともございます。
  118. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そのときにお会いになつたか。
  119. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ええ。
  120. 小林錡

    小林委員長 ちよつと速記をとめて……。     〔速記中止
  121. 小林錡

    小林委員長 速記を始めて。猪俣浩三君。
  122. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 先ほどお願いいたしました検察庁において調べられました鹿地不法監禁事件について、おさしつかえない限り御報告を伺いたいと思います。
  123. 犬養健

    犬養国務大臣 猪俣委員にお答え申し上げます。本日の日程の行き違い、すなわち行政協定に関する御質疑があると存じまして、関係課長以下一時役所に帰つたりしておりまして、たいへん手間取りまして御迷惑をかけたことを遺憾に存じます。当該局長であります刑事局長も、実は打明けて申し上げますならば刑事訴訟法で多忙をきわめて、ちよつときようは健康を害しております。明日からは国会に参れると思います。本日はとりあえず刑事局の課長から答弁をいたさせたいと思います。ただいまできるだけ詳細に私からもつつ込んで尋ねたのでありますが、当局としましては、現行法の許す限りにおいて十分捜査、調査をいたした模様でありまして、結論から申せば、この上は鹿地氏の話を聞いて、そして次の新しい段階当局としては移り得る、今事はいろいろ鹿地氏の健康の都合その他で、鹿地氏から話を聞いてありませんので、当局調査、捜査の裏づけをすべきものがまだない、こういう段階にあるのであります。しかし今までの段階においての御報告を、当該課長から説明いたさせたいと存じます。さよう御了承願います。
  124. 長戸寛美

    ○長戸説明員 お答えをいたします。先ほど大臣から御説明申し上げましたように、鹿地亘氏を被害者とします不法監禁事件につきましては、いわゆる三橋事件と区別いたしまして、東京地検においてもこの二つを切り離して、別個の検事に当らせまして、取調べの公正を期しておるわけであります。本年の一月十三日に警視庁から事件の引継ぎを受けまして、ただちに刑事部の検事に担当を命じ、慎重調査するように指示いたしたわけでございます。最初こういうふうな事件の建前といたしまして、被害者と目せられる鹿地さんからまず第一に事情を聴取したい、こういうふうに考えておつたのであります。また猪俣委員の一方ならぬ御協力もあつたわけでありますが、同氏の健康上の理由等からいたしまして、臨床の取調べもできない状況であつたわけでございます。そこで国会におきまする鹿地さんの証言を一応のよりどころとして、大臣からも御説明申し上げましたように、山田善二郎外二十数名の参考人を取調べ、現場検証等をいたして参つたのであります。二十六年の十一月二十五日ごろ江ノ電の鵠沼付近路上におきまして、五、六人の軍人になぐり倒されて、岩崎別邸に連れ込まれ、同月の二十九日ごろまでの間同所に監禁されておつたのではないかというふうな事実につきましては、問題の岩崎邸の検証さらにそこの元使用人でありますところの齊藤正太郎というものを参考人として取調べ、その他についても調査をいたしたわけでございます。同月の二十九日ごろ川崎の別荘風の家に連れて行かれ、翌年二十七年の三月ごろまで同所に監禁されておつたのではないかという事実につきましては、これは鹿地さんのこちらの御証言その他を参考にいたしまして、大体場所を想定して、東銀の東川クラブというふうな推定をしてそこの検証をいたしております。また東川クラブのコツクでありました山田善二郎、それから雑役の榎本正雄、東川ヤラブの雑役でありますところの渡辺利三郎、それから同じく雑役の松尾良衛その他のものを調べております。  それから二十七年の三月ごろに茅ケ崎に移されて、その家の二階の一室にとじ込められたまま、同年七月ごろまで監禁されておつたのではないかという条約発効の前後にまたがります事実につきましては、茅ケ崎市の菱沼の中島門吉氏邸の検証、それからやはり同所におりましたところの山田善二郎、それから第一の場所に出て参ります齊藤正太郎あるいは鈴木長松というふうな人たち調べております。  それから二十七年の七月二十日ごろから三十日ごろまでの間に、渋谷の代官山猿楽町小学校前の別荘風の家に移されて、その後十一月の末ごろまで、同所に監禁されておつたのではないかという最後の事実につきましては、これも想定でございますが、その家と冒せられる村井恒三氏邸の検証及び村井恒三氏、それからそこの雇い人等の取調べをいたして参つたわけでございます。そこでこれらの現場検証なり証人、参考人の供述等を総合しまして、鹿地さんがいたのではないかというふうに考えられますのは、第二の東川クラブと、第三の茅ケ崎の中島門吉氏邸で、ないかと思うのでありますが、その一事実については、ただ病人がいたらしいというふうなことはわかるのでありますが、それがはたして鹿地氏と合致するかいなかということがはつきりしない、第四の場所につきましては、当面の関係人が一名もおらないというふうな事情にあるのであります。第二、第三の事実につきましても、山田善二郎氏その他の証言が、はたしてそのまま受取れるかどうかというふうな問題もございまして、まず鹿地さんがこれらの四つの場所におられたかどうかという点だけにつきましても、鹿地さん御自身のお話を承わる必要がある。従つてこれらの場所に鹿地さんがおられたといたしまして、それが監禁されておつたかどうかというふうな問題になりますと、これはまず普通の捜査の常道だと考えられるのでございますが、鹿地さん御自身の口からお聞きしなければならぬというふうに考えられるのであります。  実際を申し上げますと、鹿地さんの出頭につきましては猪俣委員の御協力を仰いで参つたのでありますが、現在はわれわれの方からは所在不明というふうな形になつておりまして、捜査がその段階ちよつと頓挫しておると申しますか、そういう状態でございます。しかしながら鹿地さんが出て来られまして、場所の確定なりその他が出て参りますと、それに応じまして検察庁としては現在までの証人関係人についても、もう一度その話が合うか合わぬかを考え、さらに外国側に対しましてもそれに基いて申入れができる、こういうふうに考えております。従つて現在の事情ではその程度の段階にあるということを一応申し上げる次第でございます。
  125. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そこで大体よくわかりましたが、鹿地を皆さんがお調べいただけるようになりますならば、大体において検察庁の見込みとしては、調べられた二十一人の証言と鹿地の陳述とによつて、大体監禁せられておつたかどうかはわかる程度でございますか。外務省あるいは最初法務省で答えられておつたように、あるいは国警側が答えたように、あちらさんを調べなければ答えが出せぬというようなことでありますか。もし向う側を調べなければ答えが出せぬということになれば、これは結局答えを出さないということと何ら違いがない。そこでお尋ねしたいことは、今の報告はまだ結論に達しておりませんが、それは鹿地が出て来ないためであるというのでありますか。鹿地が出て来て皆さんに陳述しますと、今まで調べた証拠と相まつて、これはある程度の監禁せられた事実がありやいなやということがわかる程度の報告でありますか、その点お尋ねいたします。
  126. 長戸寛美

    ○長戸説明員 お答えいたします。鹿地さんが出て来られますれば、非常に捜査が進捗するといいますか、ほんとうの意味の軌道に乗るわけでございますが、しかしながらさらにその鹿地さんのお話によりまして、アメリカの大使館でございますか、外務省を通じて回答があつたわけでございますが、それに対する質問点がたくさん出て参ると思うのであります。その質問点を十分にこちらから申し入れまして、わからない点を十分にただして、そうして納得の行くまでやりたい。そうしなければ向うの言い分と、こちらの言い分い分とが食い違つたままでとどまつておる、こういうことになるのではないか、従つて鹿地さんが出ておいでになれば非常に捜査が進捗して、心証を得るのに非常に役立つことでございますが、私の今の考えとしましては、それだけでただちに論断し得ないというふうに考えております。それだからといつて決してうやむやにするということでなしに、より明らかならしめるという意味でそういうふうな態度をとつて参りたいというふうに考えます。
  127. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これは犬養大臣にお尋ねいたしますが、もちろん鹿地をお調べになつて十二分に調査していただく、なおまた向うへ問うものは問いただす、しかし今までの向うの回答の、状況を見ますと、徹底的に否認をしておる。鹿地がみずから進んで身の危険を感じて自分の懇意なアメリカの人に保護してもらつてつたのだという回答、あるいは沖縄へ連れて行つたことがあるかないかということに対しては、鹿地は共産主義者であるから、ところどころときどき居場所をかえることはあり得ると思うというような回答であります。この態度からいたしまして、検察庁が要求するような事の真相を明らかにするような回答は私はないものと見ておる。それがなければ事の真相は明らかにならぬということならば、これは永久に明らかにならぬことに相なります。そうするとわれわれは今後もあることでありますが、実に非常に危険を感じます。何をやられても向うが認めなければ検察庁としては事実を認めることができないというよう態度がここに確立されますと、今軍事基地の問題が至るところに問題になつている際に、われわれの基本的人権の擁護というものは実に薄弱に相なる。向う自分の都合が悪くなれば否認するに違いない否認された以上は事の真相はつかめないのだということになりますと、これは私ども容易ならぬとこたと思う。そこで法務大臣にお尋ねいたしますが、これは何人でも大体ある程度白であるか、黒であるかは常識でもわかると思うのであります。検察庁はほんとうに鹿地調べなお二十数人の証人までお調べになるならば、一体監禁せられておつたのか、好意で保護しておつたのかはわかるはずであります。それにもかかわらず向うがそれを肯定せざる限り、一体これが発表はできないのか。こちら側の検察庁の調べられる範囲において調べた結果はこうだという発表はでき得ると思う。それが刑事問題として普通起訴、公訴の提起というようなことは、相手が外国人でありまするがゆえにいろいろの法規の研究を要すと思いますが、一応お調べになつた結果は日本側調べだけによればこうであるという発表をしていただきたいと私は思うのでありますが、それをなさいますかどうか、その点を伺いたい。
  128. 犬養健

    犬養国務大臣 この問題の一番重要な点は、何はともあれ日本人がうやむやに不法監禁せられたのではないか、そしてその結果問題がうやむやのまま永久にそのままで終るのではないか、こういうことをもし国民が疑つておられるならば、これは非常に重大なことでありますから、その疑いをただすように、そして自分たちが住んでいる日本という国はそういう国でないというだけの安心を与えるように、この問題をつかさどつております法務省というのは、こういうことをうやむやにしてそのままにおく役所でないという国民の信頼を得るだけの最善の努力をしたいと思います。結局私も検察庁の役人に直接尋ねてみました。もしも十全を尽してないということならば非常に問題があると思いますので、かなりつつ込んで尋ねてみましたが、結局検察庁としては現行法の許す限り最善を尽しておる、要は鹿地氏に出て来てもらつてその話を聞くということが次の段階の一番緊急事だ、ただごく率直に申し上げますれば、鹿地氏の陳述そのものについても私どもは私ども立場から信憑性を分折するということはあり得ると思うのであります。しかしこれも、私し在任中は自分の都合の悪い方はゆるめて都合のいい方だけきびしく分折するというようなことはしたくありません。そういうことをすればすぐ世間にはわかるのでありますから、できるだけ公平に扱いたいと思つております。その結果、おそらくアメリカ当局に再び質問をするということになると思います。その段階において、法務省法務省調べた限りにおいてはこうだということを、世人の納得する範囲においてある程度知らしむることができると思います。鹿地氏の話を聞いてからそういうことの具体的な態度がきまるわけでありますが、うやむやにごまかして済ますという気持のないことだけを特に申し上げておきたいと思います。
  129. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 今大臣の御説明を聞きまして、まことに私ども頼もしいと思いますが、ぜひそれを実行していただきたい、巷間いろいろ説をなす者がありまして、アメリカ側鹿地不法監禁が世界的の輿論の反撃にあうや周章狼狽して、何とかして日本人の反米思想を押えつけようとしてあのスパイ事件というものをでつち上げた、それに日本外務省と国家警察が協力しているのだという説をなす者もあるのであります。私はこれを信用しているわけではありませんが、ただ遺憾ながら鹿地不法監禁事実は警視庁が専門に当られ、これも大してお調べにならない。ただ三橋の電波法違反事件、これもやはりふだんは千円か二千円の罰金で済んだ事件だけは国家警察で徹底的におやりになつておるということから、かような印象が生れると存ずるのですが、それはおのおのの機関において必要ありとしてなさつていることだと思いますが、そういう巷間の批評もあり、不安もあるのでありますがゆえに、どうしても検察庁がこの不法監禁の事実について徹底的に調査して、今法務大臣が仰せになりましたような、さようアメリカの威力に屈してこの重大なる人検蹂躙事件をうやむやにするということがないことを国民に知らせることによりまして、国民の独立心と愛国心の高揚をはかつていただきたい。愛国心というものは、ただ文部省で教育勅語みたいなものを考えることによつて養成されるのではない。この鹿地事件なんというものを毅然として闘い抜き、日本国民人権を擁護することによつてこの国を愛するという感情が起るのでありますから、私は今法務大臣の決然たる態度をお聞きしてありがたいのでありますが、いかなる政治的な圧迫がありましてもその態度を貫かれんことを切望いたしまして、私の質問を終ります。
  130. 木下郁

    ○木下委員 ちよつと関連質問をいたしたい。あすかあさつて鹿地を呼んで調べることになつておるのでありますが、国警長官にお尋ねしたいのは、一番大事なきめ手ともいうべき鹿地から三橋に出したはがきを昨年の暮れでしたか、ことしの一月でしたか、かんじんかなめのときに係の者が失つた。盛んにそれを調査しておるというお話でありましたが、あの原本は出ましたか。
  131. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 まことに申訳ない次第でございますが、かの原本は今日に至るまで出て参りません。ただ失います前に写真にもとり検事の方にも見てもらいしておりまするので、この証拠力の保全には事欠かないと思いますが、しかし原本を失いましたことはまことに申訳ない次第であります。
  132. 木下郁

    ○木下委員 鹿地事件については、今猪俣委員からの話もありましたように、問題をそらす意味スパイ事件が急に浮び上つて強く喧伝されることになつたという点を国民常識的に判断するときに、かんじんかなめの物的証拠のはがきがなくなつたということは、日本の国家警察の信用の上にも非常なマイナスになつておると考えるわけであります。さよう意味でまことに遺憾でありますが、遺憾々々と言つてつたところで、しかたがない。あすかあさつて調べるときには、その写真と写真をとつた人を一緒に連れて来ていただきたいということを委員長の方でとりはからつていただきたい。写真をとつた人なんかわかつておりますか。
  133. 小林錡

    小林委員長 ちよつと速記を待つて。     〔速記中止
  134. 小林錡

    小林委員長 では始めて。
  135. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 関連して長官にお尋ねしたい。皆さんから質問された紛失の問題は前回の法務委員会で私大分追求したのですが、これは速記録に載つておりますから重ねて伺いませんが、実は鹿地の筆跡を鑑定か何かされた事実はありませんか。鑑定したとすればだれがして、どういう結果になつておるか。それはわかりませんか。
  136. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 それは国警の科学捜査研究所の大村という筆跡鑑定の専門家が鑑定をしまして、その結果を一件書類の証拠書類として提出してあるのであります。なお裁判におきましても、その鑑定をした者及び紛失したという警察官は裁判所において尋問を受けましたような次第であります。
  137. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 国警の科学捜査研究所の大村さんですね。ほかに裁判所で鑑定してもらつたようなことはありませんか。たとえば日本で有名な遠藤さんみたいな人たち裁判所で鑑定してもらうと、大体国警関係、検察関係の鑑定はいつもひつくり返つてしまう。私どももこの前三つも四つもひつくり返してしまつた。それならばむしろ国警関係よりも他の関係に鑑定させておけば公平になる。大体われわれがひつくり返したのはたくさんございますが、ほかの国警関係でない方面の鑑定をしたような事実があつたかどうか。
  138. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 あとで検察側からも御意見の発表があるだろうと思いますが、あの証拠資料はむしろ鹿地氏の犯罪を裏づけるものでありますから、まだ鹿地氏の捜査は検察庁にも送つてまりをせん段階でありますから、そういう段階になれば、おそらく裁判所あるいは検察の方でほかの鑑定人にも見させるということもあろうか、私はさように察しております。
  139. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 これは重要な問題ですから、先に公平な鑑定を受けて――そうしないと捜査が横道にそれるきらいが出て参ります。ことに人権問題、鹿地君に対しては逮捕状が出ているというような事実がありますから、その点は私どもの希望としましては、いずれにいたしましても公平な鑑定をしていただきたい。これは私の希望でございます。
  140. 田嶋好文

    田嶋委員 実は私先ほど簡単に発言をしたのでございますが、その発言に補充して、木下さんの国警長官に対する要求の件を発言することをお許し願いたいと思います。前の国会で私が委員長といたしまして取扱いました当時も、やはりこのはがきの問題が問題になりまして、委員会に出すべきであるというような要求もあつたのでございますが、委員会裁判所との関係、それから刑事訴訟法の運営上の関係で、やはり国警長官からは委員会に正式に出すことは困るというお話がございまして、これを理事会に諮りましたところ理事会はこれを了承いたしまして、実は出さないで済ますことのできる便法が講ぜられましたことは、出席委員諸君のひとしくお認めくださることだろうと思います。そこで今回も事情は前委員会のときと少しもかわつておりませんので、この点は前委員会理事会と今国会委員会理事会、これはもちろん違うわけなんでありますが、事情が変更されてないということからいたしまして、この問題は正式に出さなくても、前の国会でも片づいたいきさつがございます。しかもこれは正当に異議なくして片づいて、その内容をつまびらかにすることが結果的にできております。この点を委員長において適当にお諮り願いますよう、また木下さんにおかれましても、前議員の立場もございますから、その点も十分御協議願つて委員会がスムーズに行くようおとりはからいを願いたいと思います。
  141. 木下郁

    ○木下委員 今の問題は前と同じ状態ではありません。前のときは、三橋の公判が始まろうか始まるまいかといつてつたときである。ところが三橋の公判はすでに第一審の有罪の判決がありました。そこで私は三橋の事件内容をつまびらかにいたしておりませんが、三橋の事件においても、あのはがきは検察庁から当然証拠として出されておると思いますが、出されたかどうかを国警長官御存じでありますならば承りたい。
  142. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 警察からは検察庁の方に証拠として出しております。
  143. 木下郁

    ○木下委員 それが公判に出たか出ないかは、もう自分の方の手を放れたのだから、その後の経過は知らない。私はその点は、あれだけ天下の耳目を集めて騒がした事件でありまするから、国警長官としてはどういういきさつになつたかというくらいは当然お調べになつているべきはずだと思いますが、この点を御存じないといえば御存じない、その程度の関心を持たれ、その程度の調査をなさつたものだと私は思いますが、その点について私としましてはまことに不満であります。ここでその点を申し上げませんが、これは当然三橋の事件として、三橋がスパイ的行動をやり、電波法違反行為をやつたという一つの重大な証拠として、検察庁は必ず提出していると思います。それをまた検察庁がじつと伏せたというならば、これは警察で原本を失つたから、その問題を裁判の上でまた問題にするようなことのないようにという考慮から証拠の提出を渋つたものと考える以外に方法はありません。さよう意味で、私はその原本がなければ、当然写真を出して、三橋にこれはお前が受取つたはがきの写真に間違いないかというような点は確かめていると思います。そこで今田嶋委員から言われましたのは、この前のまだ公判のあるかないかというときであるし、判決もちろんない、さようなときで、三橋事件に提出されてない証拠なんだからという意味で当委員会には出さなかつたのでありまするが、すでにもう一審判決はあつた弁護人その他の訴訟関係者はその証拠は当然見ております。またこれを拒むことはできません。さようなものを今ごろ鹿地関係する証拠だからといつて出さないというのは、そんなばかな話はありません。それはわれわれとしては承服することはできません。その原本はない、それじやその写真の原本をぜひ出してもらいたい。鹿地だけに関係するものなら三橋君のところへ出さないということはありまするが、鹿地と三橋が一緒にやつた電波法違反事件の三橋を罰する公判に出ているはずである。さよう意味事情は非常に違つおります。田嶋委員の言うわれたるときと法律的にまつたく違つた事情のもとにあるのであります。その点で委員長としてはぜひ取寄せていただきたい。
  144. 田嶋好文

    田嶋委員 私が申し上げたのは、くどくなるようで申訳ないのですが、木下さん、これは前委員会で了承いたしましたものも、三橋の事件はもう公判にかかつてつた当時でございましいて、やはり鹿地関係した証拠だからというので委員会では了承願つて、それにかわるべき結果を得るに適当な方法が講ぜられて、みな委員諸君満足したのですが、この点はあとで懇談して、みなが満足するような線は出るわけなんですから、その点をお考え願いたいと思うのであります。
  145. 小林錡

    小林委員長 それでは、できるだけ目的が達せられるように、いずれあとで御相談をいたします。  ほかに質疑はありませんか。猪俣浩三君。
  146. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これも私は質問書を専門員のところへ出しておるのでありますが、それが法務省へまわつておるか、――これは別な件でありますから本日お答えいただかぬでもよろしいのでございます。  日本教職員組合から岡野清豪、佐藤栄作を名誉毀損罪、業務妨害罪でもつて告訴しているはずであります。なお新潟県教職員組合から塚田十一郎君をやはり名誉毀損罪で告発しておるのであります。その内容は、日本教職員組合が中共側から政治資金をもらつてばらまいておるというようなことを公開の席上で話された。これは事実無根であります。さようなことは学校の先生の組合でありますだけに、甚大な影響を及ぼしておるのでありまして、真実なりやいなやをぜひ司直の手において明らかにしていただかぬと、教育上ゆゆしい影響を及ぼすと考えられます。相当長い期間たつておると思うのでありますが、いまだにわれわれはその結果を聞いておりません。これは法務大臣においてお調べいただいて、どういうふうな経過になつておるか、当委員会でひとつ御報告願いたい。  なおこれを私が質問いたしまする動機につきましては、実は新潟県高田の検察庁の取調べ検事の言動にはなはだ不可解な点があるのでありまして、塚田君が大臣になられてから、故郷へ錦を飾られて高田においでになつたときに検事がお調べになつたそうでありますが、その塚田大臣に対しまする調べの言動が私には実にふに落ちかねる。こんなのは全然問題にも何にもなりません。調べないうちからさように言うて、そしてこんなものを告発したのは教職員のうち二、三人の不良分子らがやつたので、こんなものは今検察庁でも内偵しておつてこの不良をやつつけてやりたいと思つています。大臣決して御心配はいりませんと、おせじたらたらの言動をとつておる、一国の大臣であるから敬意を表すことはしかるべきでありますが、それと犯罪事実の調査というものは違うと思う。それをごつちやにされてさような言動をされた。そうしてこの事件はうやむやでわかりません。かような検察庁の態度でありますと、私どもはけげんにたえないところがある。日本教職員組合が自由党と相当対立し、現内閣と相当対立していることは天下周知の事実であります。しかしながら司法はどこまでも至公至平の上でやつていただかないといけないのでありまして、私どもは今の法務大臣を御信任申し上げておるのでありますが、こういう問題につきましても至急取調べを進めていただいて、その結果をやはり公表していただきたいと存じます。今のようなことを私聞きまして、それの是非はわかりませんが、しかしこれは相当確かなる情報であることを申し上げまして、なお詳しいことは大臣個人に申し上げて今の公開の席上では遠慮いたします。これは相当確実性のある話であります。もし日教組が出しましたる告訴事件をうやむやにされますと、これは容易ならざることだと存じますので、お調べの上経過の御報告をいただきたいと思います。
  147. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいま猪俣委員からのお話質問書をまだ私手元にいただいておりません。可急的すみやかに拝見いたし、かつ処理をいたして御報告申し上げたいと思います。
  148. 木下郁

    ○木下委員 変死事件に関連して、大臣のお耳にも入つていると思いますが、ことしの二月に金在魯という朝鮮人が酒を飲んでとらになつてあばれておつた。それを警察に連れて行つて二晩置いて二日目の朝死んだ。そのことが朝鮮人ということでいろいろの意味で問題になつておる。さようなことでそのいきさつ及び検察庁等で調べた結果について詳しく承りたいと思いますので、ひとつ調べ願いたいと思います。
  149. 小林錡

    小林委員長 この際委員諸君にちよつと御報告申し上げます。本日参考人として招致しておりました堀切順君は、本日及び明日はさしつかえがあるために出られない旨の電報が参りましたので、お知らせいたしておきます。  なお堀切参考人をあらためて招致するかどうか、またその日時等につきましてはいずれ理事諸君と御相談をいたしまして決定いたしたいと思つております。  本日はこの程度にとどめまして、明日は人権擁護に関する件中の鹿地亘君関係事件につきまして、証人喚問を午前十時より行うことといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後二時五十八分散会