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田中参考人 過日
ちようど私法務
委員会を傍聴しておりましたときに、岡田
委員の御
発言の途中から承
つたのでありますが、前段の十三名の白骨団、これにつきましては私聞き漏らしておりましたので、実は後段の西新井警察署管内の民団並びに民愛青のいろいろないきさつにつきましてさつそく調査いたしました。この点だけを私から一応御回答申し上げたいと
思います。なおその白骨団云々の問題につきましては私
自身もひとつよく調査してみたいと
考えておりますが、その際に岡田議員からいただきました資料をもとにいたしましていろいろ調査をしてみたいのであります。私がこれから申し上げますことは警察として調べた調査でありますので、あるいは多少事実に相違しておる点あるいは事が前後しておる点があるかもしれませんが、一応申し上げてみたいと
思います。
今回の西新井署管内におきまする民団世びに民愛青の争議は、その紛糾の原因といたしましては足立区本木町一丁目九百三十五番地に植村ゴム会社というこれはゴム製の運動靴を製造している会社でございますが、そこに従業員が約三十名ほどいますうち、北鮮系と認められる従業員が二、三名あるということであります。社長は韓国居留民団員の植村、これは日本名であります。植村は四十三才でありまして、この従業員は夏季手当要求中であ
つたのでありますが、七月十日付近在日朝鮮民主愛国青年同盟員、民愛青員と申しますが、夏季手当を支払わぬ植村ゴムの横暴云々のビラを前記植村工場の前の電柱に張
つたので、植村が「
関係者以外の者が干渉するのはけしからぬ」とい
つてこれをとりはがしたところ、民愛青員四名に取囲まれ、うち一名にその場で殴打されたため植村は、足立区本木町一丁目八百十番地、在日朝鮮統一民主戦線足立
委員事務所に抗議したところ、そのとき同所にて民愛青執行
委員鄭忠權はその非をさとり民愛青名義をも
つて植村に対しわび状を入れたのでその場は一応治
つたのでありますが、本月十二日午後五時ごろ民愛青幹部朴明漢、康賞基等が植村方に押しかけ「個人名義のわび状ならさしつかえないが民愛青名義では困るから返せ」と談じ込んだが植村はとうとうそれを返さなか
つた。同日午後十時ごろ民愛青四、五名が足立区本木町一丁目九百三十六番地民団
事務所前で民団員と口論し殴打した上、さらに民団
事務所の看板を持ち去
つたと民団側が称していることが民団足立支部と民戦・民愛青足立支部との紛争の原因とな
つたのであります。
そこで七月十三日の状況を申し上げますと、民団側は午前中より約五十名くらいが民団
事務所に集合しており、民愛青側は民団側集合の状況を察知して北鮮系朝鮮人に呼びかける一方王子高校生約百名位を動員、足立区本木町一丁目都立第四朝鮮人小学校に待機させたのであります。
そこで午後四時三十分、民愛青幹部文景南外二名が西新井警察署警備主任に面会を求め、民団側が動員しているから警戒してもらいたいと申入れ、また民団側幹部も民愛青が動員しているからと同様の申入れを双方から受けたのであります。そこでただちにその旨署長に報告し、署長は、私服員三名、制服員五名を一組として双方に派遣して、事端を起さざるよう説得に努めましたが、民団側においては全員飲酒しており、代表をや
つて交渉すると称しているために、
事態の発生を予想し、その旨西新井橋派出所に待機中の警戒員に連絡したのであります。一方民愛青側は説得を受け、一応退散いたしました。なお警察署には
事態警戒のため署員を待機せしめたのであります。同日午後六時五十分ごろ民団側は警察署員の説得を聞かず、民愛青と交渉すると称し代表らしいものを先に立て、約四十名くらいが、約二、三百メートル離れた近距離にある民愛青
事務所に向
つたので、私服員より制服警戒員に連絡したが、その間民戦
事務所にいたり、留守居と残務処理のため残
つていた四名に対し、「看板を返せ」と押問答のあげく附近の民愛青が出て来たため、署員の制止も及ばず、遂に民愛青員との乱闘となり、民愛青員四名の負傷者を出し、またこれを制止した私服警察官三名もまた殴打されるに至
つたのであります。
民団側の暴行の報により、ただちに警察署より警戒部隊を出動させるとともに、警視庁予備隊の応援を得て
事態の鎮圧に努めたのであります。
事態鎮圧後暴行容疑者として民団側六名を検挙したのであります。しかして午後十時三十分ごろ民戦男女三十名ぐらいが西新井署に来署し、代表三名が署長に面会し、また同時刻ごろ民団代表五名も来署、署長に面会を求め、双方とも公平に措置するよう要望し引揚げたが、それぞれ各
事務所に約二十名ぐらいが残留し、対峙していたので、これが警戒を行
つたのであります。
その後の状況といたしましては、七月十四日民団系は五十名くらい集合し、民戦系は八十名くらい集合し、おのおのピケを張
つて互に警戒していたので、署長は双方に対し平穏裡に解散するよう説得する一方、
事態発生に備え、
視察、警邏を強化するとともに、警戒態勢を整えていたのであります。
七月十五日民団系は一応
事務所は解散したるようにして各所にピケを張り、民戦側は
事務所に約五十名くらい集合し、夕刻より朝鮮人小学校に移動、各所にピケを張
つて警戒していたので、署長は前日同様再び代表者を招致説得に努めつつ、警備は前日同様継続して行
つたのであります。
七月十六日民団側は民戦がこん棒、ラムネびん、硫酸等を用意し、大挙動員して民団襲撃という情報が入
つている以上、あくまで防衛態勢は解除できなか
つたわけであります。
民戦側は彼等の暴力行為はわれわれは黙視できない、さもなくば自衛上動員待機もやむを得ないと双方とも譲らず、
事務所周辺にピケを張り相対峙していたため、三度説得に努めたるも両者の空気は険悪化していることが察せられたので、双方の
事務所周辺の警戒を厳重にしていたところ、十七日午前一時四十分ごろ民戦側は三十名あて三隊にわかれビラ張りと称しこん棒を所持して行動に出たので、警戒中の次席の指揮する部隊はこれが民団との接触を防止し、これを解散せしめるよう阻止していたところ、民団
事務所付近のピケがこれを認め、民団
事務所より約二十名くらいが同様こん棒をも
つて出て来て、双方とも投石し始めたが、次席が部隊を率い、中間に位置し、双方を鎮圧阻止解散せしめたのであります。
七月十八日以降につきましては、七月十八日は民団・民戦共警戒のため人員が集合していたが、十九日以降民団は昼間一、二名を
事務所に残していたが深夜五十名くらい集合して、夜明け前に全員帰宅して民戦は昼間四、五名ないし十四、五名午後十一時ごろより六十名乃至三十名くらい集合し、民団
事務所周辺へのビラ張り等を行い、その都度阻止されているのであります。警戒態勢は七月十七日以降、夜間予備隊一箇小隊を配置警戒に当らせたのであります。
以上今までの大体の情勢でございまするが、その後の情勢はどういうことにな
つておるかと申しますると、警察といたしましては十三日の午後十四時三十分から署長室において双方に対して、外部の応援勢力を解散することを理由に紳士協定、和解策を講じましたところ、一応双方が
納得して引揚げてもら
つたのであります。そこで一応口頭和解策を講じましたが、十六日早朝民戦側の二、三の者が民団の
事務所に侵略をした事件が発生いたしましたので、十六日午後五時から夜の十二時にわたり、双方に対し文書、交換和解策を講じましたが、遂に回答を得ることができず、明日に持ち越したのであります。
さらに民戦側の民団側に対する挑発事件が惹起したので、この交渉を中止せざるを得なくな
つたのであります。その後最近におきまして、七月二十八日午後三時三十分から午後六時三十分まで、
人権擁護委員の方と
法務事務官、それから署長、民戦側の代表二名、民団側の代表二名、これらの人々が集まりまして和解工作をいろいろ協議をいたしております。
二十八日には両者間に
意見の相違がございまして、遂に解決には至らなか
つたのでありまするが、さらに三十日午後一時からこれらの人々が再び集まりまして、今後の和解工作について協議をする予定でございます。現在までに検挙しておる者は何名あるかと申しますと、七月十三日の事件におきまして五名、七月十六日の事件におきまして二名、なお七月十六日の事件につきましては、今後もさらに容疑者を逮捕すべく捜査を継続いたしております。なおその節五名の検挙者を出して、すぐに釈放したのは不当ではないかという
お話でございましたが、これは
事態がはつきりいたしましたし、本人らが逃亡するおそれもございませんし、一応在宅調べとしてなお捜査を継続いたしたのでありますが、大体事件は調書もできまして、これはすでに
検察庁に身柄をつけずに、事件としてこれをすでに送
つております。今後
検察庁におきまして、さらにこれに関する捜査が続行されるものと
考えておる次第であります。
それからなお本件に関しまして、警察署の態度でありますが、
お話によりますと、警察署のやり方が民同側に有利に警備をして、民鮮側に不利であ
つたというような意味に私は聞いたのでありますが、警察はこうした紛争の中に介入することは当然できないのであり、警察といたしましてはこうした紛争はあくまで厳正公平の
立場においてこれを解決せねばならないと
考えております。また現在署長以下もさような心構えで極力誠意を持
つて両者の代表者を集めて和平工作といいますか、平和のうちに調停をして本事件を円満に解決するように、最善の
努力をいたしております。ただこの問題につきまして、率直に申し上げますが、西新井警察署の本事件に対する情勢判断というものが、少し甘過ぎた。これは私
どもは率直に認めざるを得ないのであります。こうした民鮮、民国の争議というものは、これは管内各所に今までも起
つております。ややともいたしますると、双方において、あるいはその問題の経過いかんによりましては、集団的に双方がなぐり込みをかけたり、あるいはなぐり込みをかけられたり、あるいは個人の住宅を襲撃したり、あるいは路上において突如襲撃をしたり、そうした事件が再三起
つておるのであります。かような点から、われわれといたしましてはこうした紛争につきましては、最悪の
事態を常に予想して警戒態勢を整えてお
つたのでありますが、今次の事件につきましては、若干情勢判断が甘過ぎたのではないか。
従つてその警戒の点において、少し遺憾の点があ
つたのではないかということもわれわれは率直にこれを認めるのであります。
従つて西新井警察署におきましても、十七日以後完全に警戒態勢をしきまして、われわれは必要があるならば、幾らでも予備隊を出すからということで今相当厳重に警戒をいたしまして、再びこうした不詳事件が発生しないように、十分に注意を重ねておる次第であります。
そこでわれわれといたしましては、警察はあくまで厳正公平な態度で事件の解決をできればあつせんもして調停いたしたい、かように
考えておりますので、いろいろ今も申し上げましたごとくに、
人権擁護委員の方にもお出ましを願い、
法務事務官の方にもお出ましを願
つて、署長だけでありますと、あるいはまたどつちかにひいきしておるのではないかという誤解もあるようでありますから、
人権擁護委員の方にも御立会願
つて、ただいま何とか一日も早くこの事件の円満に解決するように
努力をいたしておりますので、また民団、北鮮両方におきましても、感情にかられずに、冷静にこの問題を解決して、一日も早く何とか円満解決するようにわれわれは念願をいたしておる次第でおります。