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1953-07-24 第16回国会 衆議院 法務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十四日(金曜日)     午後三時二十九分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 吉田  安君    理事 井伊 誠一君 理事 花村 四郎君       大橋 武夫君    押谷 富三君       林  信雄君    星島 二郎君       鈴木 幹雄君    高橋 禎一君       猪俣 浩三君    細迫 兼光君       木下  郁君    佐竹 晴記君       岡田 春夫君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         法務政務次官  三浦寅之助君         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君         検     事         (矯正局長)  中尾 文策君         法務事務官         (保護局長)  斎藤 三郎君  委員外出席者         判     事         (最高裁判所事         務総局刑事局         長)      岸  盛一君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 七月二十四日  委員牧野寛索君辞任につき、その補欠として加  藤宗平君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  刑事訴訟法の一部を改正する法律案内閣提出  第一四六号)     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    小林委員長 これより会議を開きます。  刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。鍛冶良作君。
  3. 鍛冶良作

    鍛冶委員 九十八条の改正ですが、これは拘留執行停止を取消す場合、その他の場合ですね。ここに「急速を要するときは、同項の規定にかかわらず、検察官指揮により、」となつておりますが、これはどういうことで実際はやられるのですか。
  4. 岡原昌男

    岡原政府委員 すでに保釈が取消されて本人を探しているという場合を予想いたしますと、たとえば町かどでその人間を発見した、大体手配中の者であることは間違いないという場合に、本来ならば九十九条の一項でいろいろな謄本とかいうものを準備しておらなければつかまえるわけに行かないわけでございます。しかし、ほつておきますと、またどこかに行つてしまうというので、すぐその場で検事指揮を仰ぎまして、というのは電話でもかけまして、実はこういう男が見つかつた、早速つかまえたい、よかろうということで、つかまえるというふうな段取りになるのが一番だろうと思います。
  5. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私もそうだろうと思うが、そこでこれはいわゆる令状なしに執行する場合なんですが、これは検察官指揮ということが必要条件なんですが、あなたは電話をかけてと言われるが、電話をかけたかかけないかわからないで、電話をかけないでやられては困ると思うので聞いておるのですが、もしそういう場合があるとすればどうしますか。
  6. 岡原昌男

    岡原政府委員 たとえばそのことについて争いが生ずるということは考えられないことはないと思います。そこでもしでき得ればどこどこ地方に潜入したらしいということがはつきりしたような場合、これは考えられると思います。そういうふうな場合には、あらかじめ検事の方から書類警察官の方に出しておきまして、だれだれに対する保釈は取消された、だけれどもその保釈取消しというのは、御承知通りそうたくさん書類を出すわけじやありません。もしも発見したらこれを執行――執行といいますか、つかまえておいてくれいうことを出しておく場合もあり得るわけでございます。もしそれを持つておりませんでも、ただいまのような確かにこの男がたとえば宿屋にとまつたというふうなことがはつきりしまして、すぐに書類をとりに行く、これはもちろんいいわけでございますが、刑事の顔でも見てもしすぐ飛ばれると、これはまたそれつきりになるからという場合は、刑事なら刑事がこういうことがありましたという報告書をつくるということになろうと思います。それと今の拘留執行停止期間満了書類、あるいは保釈取消し書類といつたような書類謄本としてつけられまして、両方で初めて手続が完了する、あとでこれを示すわけでございますが、そこで完了するというふうな規定だろうと思います。
  7. 鍛冶良作

    鍛冶委員 なお疑問の持てる条文ですが、よほど注意してやつてもらわないと……。  次は百五十三条の二ですが、勾引状で護送する場合に一時もより警察署、その他の適当な場所に留置することができるが、この一時とはどの程度までを一時というのですか。
  8. 岡原昌男

    岡原政府委員 これは大体一晩というふうに予想いたしております。しかし一晩とも限りませんので、あるいは一晩よりも短いのが普通であろうと思いますが、要するに夜に目を継いでそれが出て来るということでは護送する方もたいへんだろうし、本人も気の毒だから、そういうようなことのないように一時もより場所、この前も警察保護室と申しましたが、そのほかにたとえば検察庁宿直室とか、裁判所宿直室とか、あるいは割合に身分の高い人なんかの場合は、宿屋でもこれはけつこうだと思いますが、そういうふうな場所にとまつて、次の日ちようど定刻に間に合うように裁判所に来てもらう、こういう趣旨であります。従つて一時というのは三日も四日もということではございませんで、大体一晩でございます。一晩というふうに御了解願えればいいと思います。たとえば朝五時に東京に着くというような場合には、五時から十二時までの間というふうな一時もあり得るわけでございます。
  9. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そういうことはなかろうと思うが、二日でも三日でも警察にぶち込まれておつたのではたまらないでしよう。むしろこういうことは常識じやないのですか。どうしても途中でとまらなければならぬなら宿屋へとめたらいいので、警察署その他と書くものだから、まず警察署へ入れることが原則のようになるのですが、私らもそんなことは常識だと思うのです。あすの朝までに警察に来いというのを今晩来たとすれば、これは宿屋にとまつてください、一緒にだれかとまりますからということになるのです、宿賃もないということなら別ですが。こういうふうに書かれるとどうしても警察へとめることを予想する。そうしてかりに二日も三日もそういうことがやられたとすれば、やられた者はとんだ迷惑でありますから、私はこれは常識で解決すべきもので、こんな規定はいらぬのじやないかと思うのです。
  10. 岡原昌男

    岡原政府委員 御承知通り被告人については、これを勾引する場合にはもより監獄に一時収容するという規定がございますが、証人はこれと違いまして被告人ではございませんから、その地位は十分保障してやろう、ただしかし召喚に応じないで勾引状が出たものでありますから、法廷に出ることを拒むかもしれません。従つてそういう場合に若干の拘束を受けるということは、勾引状の性質からやむを得ないと思います。ただ警察といたしましたのは、今の監獄と読みわけと申しますか、区別して割合に問題のないところ――しかしそれでもただいまのような御疑問が生ずるかとも思います。それで大体保護室というように運用させるつもりでございますが、さらにこの速記録内容等も下部へ流しまして、たとえば検察庁宿直室、あるいは早めに着いた場合に裁判所宿直室なんかに一時休んでもらつて、そうしてその日の朝の公判に間に合せるというようなことも考えられる、そういうもより場所を予定しており、十分注意したいと思います。
  11. 鍛冶良作

    鍛冶委員 二百九十一条の二ですが、これはこの間からずいぶん質問もありましたし、委員においてもこれは非常に疑問の多い問題ですが、私の一番憂えまするのは、現在は嘆かわしいことではありますが、捜査の面において自白を強要せられておることは隠れもない事実で、さらに調べ方を見ておると、裁判所行つてこれが否認するかしないかずいぶん確かめられる、その上で裁判所行つている、その例はたいへん多いのです。そうしてそれにもかかわらず裁判所で、自白したからといつて、かような簡易な手続を用いるということは、私は理想としてはそれほど反対でないのですが、現実の問題として相当考慮すべき問題じやなかろうかと思うのでありますが、あなた方はその点に対してどうお思いになりますか。
  12. 岡原昌男

    岡原政府委員 私どももこの簡易公判手続というものが新たに採用せられました場合に、もしも万が一にもそういうふうないわば迎合と申しますか、あるいは端的に申して裁判知識のないためにただうつかりとうんうんと言つてしまうというようなことで、罪責を科せられるということがございましては、これは私どもたいへんな責任になるのでございます。そこで実際問題としてどういうふうにこれが動くだろうかということについて、裁判所側とも話し合つてみたのでございますが、一応裁判所から簡易公判手続内容と申しますか、進め方について話がございます、こういうふうに簡単に行くのだぞというふうなことの説明をする際に、それぞれ趣旨がわかるように、そうして間違いの起らぬように親切に説いてやるということをいたしたいと思います。これもあるいはお話しましたかどうか忘れましたが、アメリカのアレインメントの制度など、実際の運用法を聞いてみますと、裁判長は一、二点問題になりそうな点をぽつぽつと聞くそうでございます。そうしてそれで心証をとりまして、それじややはり間違いはないのだねということで、有罪の言い渡しをするということだそうでございまして、日本は今度の簡易公判手続では、証拠調べは簡単でも一応いたします。その際に妙なことがあれば、本人顔色を見ておりまして間違いがないように裁判長の方で気をつける、かようになろうかと思います。
  13. 鍛冶良作

    鍛冶委員 裁判所はなるべく簡易公判手続でやらせようとし、またおそらくこれは裁判所からの要望があつてのことだろうと思います。そうして顔色を見ておつて、なるべくならやろうという顔色を見られるのじやないかと私は思うのです。ここで私は昨日言うたのに関連して聞きたいが、現在やつていて、われわれが最も恐るべき弊害だと思うのは、被告人が五人おる。共犯であろうがなかろうが、五人おつて一緒調べるときに、これは同じ被告なんですが、それを一人だけ取出して、他の被告に対する証人として調べる。宣誓せしめて証言として、そうして公判一緒に出て、この証言と違うことを言つた偽証罪でやろう、こういうことをやつておる。このようなことは、自白をしておるからといつてやられたのでは、恐るべき弊害が起りはせぬかと思うが、そういう事実はあなた方御承知ないですか。
  14. 岡原昌男

    岡原政府委員 お話のような場合は、訴訟法上あり得ることでございます。事実あろうと私も思います。ただ、そのために自白が強要されるということと、あるいはそのために簡易公判手続というのがすぐに濫用と申しますか、そういうふうなことには何かならぬような気がいたします。
  15. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それは自白さえあればいいという頭でおられるから、私はこういうことを言うのです。今言うように被告が五人ある場合には、おそらく簡易公判手続にはなりますまいが、自白しておるからそれでいいのだという考え方は、相当考慮の余地があるのじやないか、こういうことを私は言うわけです。今五人と言うたから、いけないが、二人の場合はどうですか。
  16. 岡原昌男

    岡原政府委員 私の方からお尋ねいたして恐縮でございますが、二人が起訴せられまして、共犯関係にある。一人の事件証人としてもう一人の被告人を呼ぶ、かような場合でございますか。それは訴訟法としては、先ほど申し上げました通り、あり得るわけでございます。ただ自分の言つたことのために、自分責任を負う、それは自己の本来の犯罪として負うのは格別として、さような偽証というふうなことでこれをやるのが妥当かどうかという問題になると、これは確かに御指摘のように妥当でない面が相当出て来るわけでございます。簡易公判手続の問題といたしましては、そのようないわゆる自白を強要するとかどうとかいう問題はすぐにはないように思うのでございますが……。
  17. 鍛冶良作

    鍛冶委員 こういうことです。かりに二人おりますね。一人と供述が違う場合、ようやくこれが合うように言いますと、別に連れて行つて証人にし調べる、それでこれと同じことを供述させておいて、公判でこれと違つたことを述べたら偽証でやるぞ、こうやる、それと同じことになる。そこで一人がこの通り述べる、一人は違うと言いたいのだが、片方でやられておるために、いやいやながら同じことを言う、ここでようやく二人の供述が合う。そうすると二人一致した自白があつてそうして簡易公判手続でやる、こういうことにる。
  18. 岡原昌男

    岡原政府委員 わかりました。さような場合でございますと、一応簡易公判手続に乗り得る場合にはなろうかと存じます。ただ、さような共犯というような場合には、その事実を一応それぞれ本人に別々に問いただしまして、別々に弁護人被告人検事等意見をそれぞれ聞くわけでございます。弁護人がもし一人でもついておりますと、これはどうも自分としても解しかねる、手続上も今お話のような共犯に対して証言を求めておるような事件でありまして、これは慎重に取調べていただきたいということを言えば、普通公判に全部この事件が行くわけでございます。
  19. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それはでき得るのだが、こういう制度を認める上において、大いに考慮しなければならぬ問題だから、私は言つておるのですが、今の証人にすることについては、あとで時間があつたらあなた方の意見をとくと承りたいと思いますが、あとに譲ります。  三百七条の二を見ますと、いろいろの「規定は、これを適用せず、証拠調は、公判期日において、適当と認める方法でこれを行うことができる。」と、ある。これはどの程度までが適当なんですか。ここにみな証拠があるからもうよかろうというので、すぐやられるのも適当になるし、どの程度までを適当と見られるのか、どういうことを予想してこういうことになつたのですか。
  20. 岡原昌男

    岡原政府委員 この三百七条の二の中に引用されておる条文といたしまして、二百九十六条、二百九十七条、三百条、三百一条、三百二条及び三百四条、三百五条、三百六条、三百七条といつたような規定が全部含まれるわけでございますが、それは御承知通り、かなり形式的と申しますか、順序方法範囲等がこまかく、こういう順序で、こういう範囲を、こういう方法でやらなければいかぬということを規定してあるわけでございます。ところが、これは型通りいたしますと、非常に四角四面の調べになりまして、時間を食いますし、また本人自白しておつて、特に一々型通りつてもらわぬでも自分に異存がないという場合でございますから、その順序を、たとえば変更し、あるいは範囲を縮小して、大体こんなようなところで、あるいは警察でだれだれに対するこんなような調べもあるがどうだといつたような程度で事が済むというふうな考え方でございます。つまり概括的に申しますと、心証をつくるのに必要な程度に、その順序方法その他は適当に判断ができる、かようなことでございます。
  21. 鍛冶良作

    鍛冶委員 ところが証人鑑定人というものはいわゆる直接尋問主義からいえば、公判で聞くのがいいのだが、それではそういうものは書面でやるというようなことで行く、こう解釈してよろしゆございますか。
  22. 岡原昌男

    岡原政府委員 ただいまの点は別に規定を置きまして、三百二十条の次の伝聞証言証拠力をはずす、そちらの方で同じようなことになろうかと思つております。
  23. 鍛冶良作

    鍛冶委員 次は三百四十五条の改正の「管轄違」、これはどういう意味ですか、理由を承りたい。
  24. 岡原昌男

    岡原政府委員 これは事件が単に管轄違いという理由ではねられた場合を予想しております。その場合には、もし正当の管轄裁判所に起訴すれば、当然実体に入つて有罪、無罪の判断を受け得るわけであります。事件内容については、これがあるかないかは別といたしまして、単に門前払いを食つたということ自体で、本人に対してこれで一切合財もう御用済みというのはどんなものであろう。御承知の旧刑事訴訟法にもこれに対する手当がございましたけれども、新刑訴の際にちよつと立法上の手違いがございまして、もう一つ公訴手続の場合も同様でございますが、入つておりませんので、その点の手当をいたしたわけでございます。つまり正当の管轄を持つている裁判所に起訴するまでの期間手当する、かようなわけでございます。     〔委員長退席佐瀬委員長代理着席
  25. 鍛冶良作

    鍛冶委員 次は三百五十九条ですが、これは今まででもよく控訴するかしないか、いたしませんといつてつてつたものですが、ああいうのは実際効力もないのに、今度は特に放棄という制度を設けてそれに正式に効力を与えよう、こういう理由なんですか。
  26. 岡原昌男

    岡原政府委員 その通りでございます。
  27. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これは口頭をもつてやるとすれば、公判でやるのですか、それとも、出頭してやるものか、また書面でなくちやいかぬのか、その点。
  28. 岡原昌男

    岡原政府委員 これは三百六十条の三で手当をいたしまして、書面でこれをしなければならないというふうに、大事をとつたわけであります。
  29. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これはわれわれがたびたび見ておつて、いいようなこともあるが、ただどうかと思われることがたくさんあるのです。どうだ、もう降参せないか、それとも控訴するかというようなことをやられる。たいがいそのときは控訴はいたしませんと言います。これはいい意味で言つていただけるならばよろしいが、そうでない意味に聞えることもなきにしもあらずなんです。そこで今までは事実上だからいいが、これを制度の上で、どうだ控訴するのかしないのかと言われるときに、控訴いたしません、じやそこで書いて行け、こうやられるということになると、非常に上訴権放棄を圧迫的にいたすという憂いなきにしもあらずと思いますが、この点はそういう憂いはございませんか。
  30. 岡原昌男

    岡原政府委員 上訴権放棄方法につきまして、実は書面によりましたのは、そういう点の配慮でございます。昔は御承知通り口頭上訴権放棄いたしますと、調書の中にそれが記載されまして、それで即日失効。そのあとでよく問題が起きまして、自分はどうもそういうつもりはなかつたんだが、あれはつい言つちやつたという事案があつたことは御承知通りであります。今回はさようなことはないように、自分書面でその意思をはつきりさせるという点で、その点を明かにしたわけでございます。もしそれ以上進んで、ただいまお話のようなこの場で書いて行けというようなことになりますと、これはちよつと行き過ぎの点もありますので、裁判所においてその点の何らかの配慮をしてもらうつもりでいるわけでございます。
  31. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これは特にわれわれが奇異に感ずるのは、弁護人がいるにもかかわらず、被告に直接に言われる。弁護人はそんなことを言うなと言うわけに行かぬから、すぐにいたしませんと言つてしまう。そうか、よろしいということになる。これはかりに被告がこういうことをやつたとして、弁護人が反対しても、それでも書面を出した以上はやむを得ませんか。両方つたらどつちを重く見るか。
  32. 岡原昌男

    岡原政府委員 今ちよつと条文上の根拠は出ませんですが、大体弁護人本人の利益のために動くものでございまして、本人がその判断をするについて補佐的な立場にあるものでございます。従つてもしその際に弁護人が、どうもこれはおかしいという場合に、ちよつと待てと言えばすぐにその場でとめ得るわけであります。それで相談して本人がよく納得した上で、初めて書面を出すということになろうかと思います。
  33. 鍛冶良作

    鍛冶委員 弁護人があるにもかかわらず、たれかの勧誘もしくは勧告に基いて被告が単独に書いた。弁護人がそれを聞いて、それはたいへんだ、そういうことをなすべきでないというてそれを取消してもらうというときに、もうすでに放棄書が出ているから放棄効力が出たんだ、弁護人の申し込む余地はないんだ、こう言われると大問題になるから聞いている。そういう場合にはどういうことになりますか。
  34. 岡原昌男

    岡原政府委員 要するに上訴あるいは上訴の取下げあるいは上訴放棄等意思弁護人本人違つた場合でございますが、その場合は三百五十五条におきまして本人のほかに代理人、弁護人に同列の上訴権を認めております。その意思が反した場合の手当が三百五十六条にございます。被告人の明示した意思に反することができないということになつております。上訴の取下げにつきまして、第三百六十条に同じような趣旨の「被告人の同意を得て、上訴の取下をすることができる。」ということになつております。要するに本人意思の方が優先する、さようなことになつているのであります。これは上訴並びに上訴の取下げの場合と同じことになるだろうと思います。
  35. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それでどうもはなはだ合点が行かぬ。弁護人の知らぬ間にやられている。それがもどつて来て、それはいかぬ、そうですが、それはたいへんでしたと言つて出たときに、本人意思が優先するからといつてやられるということになると、非常に弊害が起ると私は思うが、やむを得ないですか。
  36. 岡原昌男

    岡原政府委員 これらの問題は現在の上訴並びに上訴の取下げについてもまつたく同様にあり得るわけでございまして、結局本人意思を中心にして、本人意思が、自分はどうしてもそうしたいという場合には、弁護人本人意思を補佐する者でございますから、まあそんなことを言わずにぜひというわけには行かない。控訴の場合も同様な趣旨をとつておりまして、同じようなことになつております。
  37. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そんな場合は問題ないのですよ。被告人が圧迫されてやつた帰つて弁護人がとんでもないことをした、それなら何とかしてもらいたいと言つたときに、本人もそういうことは取消します、弁護人取消してもらわなければ困るというときに、もうすでに出たから効力を発生したのだと言つてけられるかどうかということだ。これはわれわれの経験から見てあり得ることです。
  38. 岡原昌男

    岡原政府委員 書面上訴放棄申立てをするという趣旨がその辺から出ているわけでございます。書面を書く際に弁護士さんとよく相談するようにという、いわば猶予の期間を与える。その場ですぐ申しつけて放棄しろというようなことが、すぐ調書に載つて効力を発生するということのないように、書面でゆつくり相談した上でその結論を出して、弁護士さんの意見もよく聞いた上で結論を下すようにという趣旨でありますが、実際問題としてこういう重大な問題でございますので、被告人が大体弁護人の御意見を聞いて事を処理するということになろうかと、私は考えております。
  39. 鍛冶良作

    鍛冶委員 大臣が見えたから私はやめます。さような弁護人意思に反することを被告人に強要せないように、一つあなた方の方から心がけていただきたい。われわれの憂えるのはそういうことです。今までの経験上から見ましてそういうことは決してないとは言われません。
  40. 犬養健

    犬養国務大臣 去る十八日当委員会におきまして、東京拘置所に収容されております松本三益氏が東京地方裁判所法廷において申し立てられましたところの、毒物が食べ物の中に入つてつて、あじを食べて死んだというすずめに関する毒物試験実施を、この前岡田委員にお約束いたしました。その後の経過を御報告申し上げたいと思います。事案関係上きわめて慎重を期しまして、さつそく東京大学毒物試験実施方を依頼しようといたしまして大学に連絡をとりましたら、岡田さん御承知のようにあの日は土曜日でありましたので、係官が帰宅後でありまして依頼することができなかつたのでありますが、すずめが死んでから七日たつておりまして、なおその上に土、日とたちますと一層腐敗すると考えまして、警視庁刑事科学研究所に依頼しまして毒物試験実施してもらうことにいたしたのでございます。但しこれはつけ加えて申し上げますが、一部の方からは警視庁の研究所だけでは心配だとおつしやられるのではないかと思うのでありまして、これはこの経過を元の目途通り東大にその書類をまわしまして公平な判断を仰ぐ、試験の仕方についての批判も仰ぐ、こういうふうにいたしたいと思つております。そこで同日十七時三十分ごろ警視庁刑事科学研究所員が東京拘置所へ参りまして、畑の中に埋まつていたあじの骨とすずめの死体を発掘いたしまして、毒物検査の実施のため同研究所に持ち帰つて参りました。右の品物に毒物が混入されているかいなかにつきましては、目下警視庁の刑事科学研究所において試験中でございますけれども、この試験を完了するには大体一箇月を要するということであります。あまり長いので、私、もう一ぺんどういうわけだか理由を書いてよこせと言つてつたわけであります。そうするとこういうことを言つて来たのであります。毒物検査に一箇月を要するという事情は、どんな毒物が入つているかということが皆目見当がつかない場合には、毒物全般に関する試験をすることになるので長期間を要するのだという、これを平易に申しますと、毒物には青酸、燐、石炭酸等約二十種類にわたる揮発性毒物、砒素、アンチモン、水銀、亜鉛、銅等約二十種類にわたる重金属毒物及びモルヒネ、コカイン、ヘロイン、ストリキニーネ等約五十種類にわたる植物塩基の毒物のおよそ三つにわけることができるそうでありますが、これらの各種類の毒物について一つ一つ毒物覇試験を実施するということになりますから、先に述べたように一月程度は最小限度必要だ、こう申すのでございます。なおこの毒物試験に要する日数を前に述べた毒物種類別に申しますと、揮発性毒物と重金属性毒物に約十日を要し、植物塩基の毒物試験は種類が多いのみでなく、技術的にも非常に複雑でありますので、約二十日間かかる、しめて一箇月、こう申すのでございます。以上中間報告として申し上げます。
  41. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今大臣の御報告の中にもありましたように、警視庁の解剖による毒物の検出ばかりではなくて、やはり適当な方法大学の方と連絡をとられて、正確な検出の結果をお聞きになつてお話願いたいと思いますので、その点要望いたしておきます。
  42. 犬養健

    犬養国務大臣 それは元々私の意図するところでございますから、さようにいたしたいと存じます。
  43. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今も小菅の拘置所の問題があつたのですが、昨日実は三百八十六条の関連においても、私簡単ではございましたが質問いたしたのでありますが、拘置所の内部というのは何せ世間からはその内情というものが全然わからないわけであります。従つていろいろな事件が起きおつても、これはわれわれとしてはわかり得ないわけでありますし、いろいろな事件等も起る可能性があり得ると思うのであります。しかも本日の毎日新聞によりますと、大臣すでにごらんになつたと思いますが、小菅刑務所の大汚職という記事が出ております。これは何もわれわれは毎日新聞の記事によつて初めてわかつたんじやなくして、すでにこういう類似の事件が相当あつたように私も聞いておるのであります。やはりこういう問題が起きて参りますと、刑務所内部の問題については、やはりこの改正等にかんがみましても、相当われわれとしてはこの内容について知つておかなければならないと思いますし、その内容いかんによつては二百八十六条の二の改正にも、もう一度各党の委員諸君に御一考を願わなければならない問題が出て来ると思うのであります。あらためて読み上げる必要もないかと思いますが、二百八十六条の二項の改正案によりますと、被告人公判の期日になつても正当の理由がなくして出頭を拒否したり、あるいは監獄官吏による引致を著しく困難にしたときは、公判手続被告人がおらなくてもやれるのだという意味のことが改正条文の要旨でありますが、この監獄官吏による引致ということによつて公判手続がやれるとするならば、この監獄官吏がこの新聞に出ているような汚職官吏であつて、しかもこの汚職の官吏が引致は困難であるというかつて判断を下して、公判手続をやり得るというふうになりますと、被告人をきわめて不利な立場に陥れるばかりでなく、実際問題として憲法の趣旨に反するという結果になつて来るのであります。こういう意味においても、まず第一に小菅の刑務所の汚職の問題につきまして、政府の方でお調べになつておられると思いますから、その点事おわかりになる点があつたらひとつその点からお話を願いたいと思います。
  44. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。岡田委員よく御承知通りきのう、きようばかに忙がしいものですから、私正直なところ見出しを読んだまま家を飛び出しておりますので、この委員会か終りましたらすぐそのことを調査したいと思います。明日か明後日、なるべく明日御返事をいたしたいと思います。
  45. 岡田春夫

    岡田(春)委員 きよう中尾さんある程度承知のような模様であつたので、もしおわかりになつておられるなら、どの程度でもけつこうでありますからお話願いたいと思います。
  46. 中尾文策

    ○中尾政府委員 実は今大臣からお答えになりましたように、詳しいことはわかつておりません。なお事は検察庁で調査中でありますので、その方から聞かなければわからないのでありますが、私たちの方でわかつておりまするところでは、数箇月前にこれを発見いたしました。それは現場の看守が被告人と連絡をとりまして家へ使いに行くとか、あるいはタバコを持つて来て供給してやる、そうしてその代償として若干の金をもらうとか、酒を飲ましてもらうとかいうようなことをやつてつたことがわかりましたので、そういう者を、たしか合計六名だと思いましたが、もう数箇月前にやめさしております。そのことは現在検察庁調べられておるのでありまして、その内容のことは私たちの方では今ちよつとわかつておりません。
  47. 岡田春夫

    岡田(春)委員 大臣ごらんになつておらないというお話でしたが、これが事実とすればきわめて重大な問題であります。マッチの軸一本が十円で取引されている、タバコのひかり一本が百五十円から二百円で取引されている。毎日新聞を読みますと、「ボスともなれば常にピース二、三十箱を持つており、夜はサントリーで酒盛りをしている。」刑務所の中でですよ。しかも「その物量で若い仲間を手なずけ同性愛にふけつている」こうなるとまつたくどうも刑務所というところはわれわれが知らないだけに、しかもこれに看守あるいはその他の監獄官吏の諸君が関連をしているということになりますと、きわめて重大であります。こういう意味においてもこれは刑訴法の法案にも、私が先ほど申し上げたように関連いたしておりますので、できるだけ早い機会において、わかりました程度だけでもけつこうでありますから御報告願いたいと思います。  なおこういう事実もあります。これは中尾さんもぜひ聞いておいて調べていただきたいと思うのですが、昭和二十七年の三月、経理検査のときにおいて、これはやはり小菅の場合です。二百五十俵の米が足りない。その米が足りないために、検査の数量をごまかすために、刑務所の被告に大豆とかばれいしよを詰めさして俵数を合せようとした、こういう事実も上つております。また三月の下旬には玄米二百俵と小麦粉百俵が不足をし、これもばれいしよを入れて検査をごまかしたという事実があるのであります。しかもこういう事実について協力させられた被告人は、そういう事実を知つているものだから、この検査が済んだあとに、ほかの刑務所にこれを移している、移している者の名前も私の方でわかつております。必要があれば大臣の方にお知らせしてもけつこうでありますが、そういうことで証拠の隠滅をはかるということまで行われているので、事まことに私は重大であると思います。そういう点もあわせてひとつ御報告を願いたいと思うのであります。
  48. 犬養健

    犬養国務大臣 これはお話通りならば、たいへんなことだと思うのです。私責任を持つて徹底的に調べたいと思いますから、さよう御承知を願います。
  49. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それで二百八十六条の二に関連して参りたいと思いますが、そういうような「監獄官吏による引致を著しく困難にしたとき」というようなことで、実際に法律を正しく運用できるかどうか、そして憲法の趣旨に反しないで公判手続を行い得るかどうか、私は非常に疑問だと思うのでありますが、この条文だけをもつてするならば、そういうような不正を未然に押える何らの保証もないわけであります。これについていかなる方法をおとりになるか、その点をお伺いいたしたい。
  50. 犬養健

    犬養国務大臣 実際はそうあばれてないのに、あばれてしまつがつかないというような虚偽な報告がされないように、十分内部の組織においてそんなことのないように、ひとつ考えたいと思います。
  51. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今の大臣のお話では、行政の問題としておやりになるという、これはぜひおやり願いたい。しかしこれはきのうも大臣のお話のように永久に法務大臣を犬養さんがやつておられるわけでもないので、いずれは総理大臣にもなられるかもしれないのであります。それはじようだんとして、明文上にやはりそういう危険のないように保証をすることが、私はぜひとも必要であると思います。そういう意味でこの条文上の解釈としてはどういうように考えておられるか、これは大臣でなければあるいは岡原さんでもけつこうであります。
  52. 岡原昌男

    岡原政府委員 この二百八十六条の二で考えておりますのは、現実には次のような場合でございます。たとえば十名くらいの共同被告人事件がございます。そのうちの五人なら五人がその公判期日に呼出しを受けまして、朝から自分は反対だ、きようの公判廷には行きたくないということを言つて、ある場合には裸になつて乱暴をする、あるいは連れて行こうとする看守にかかつて来るというふうなことをいたして、どうしてもこれをがえんじない、それで他方の穏やかに出頭しようという人は、バスに乗つて一緒に来るのを待つておるけれども、結局いつまでたつてもらちがあかないというふうなことが考えられる、これは現実にあつた場合でございますが、そこでさような場合に監獄の長はさつそくその旨を裁判所に連絡するわけでございます。実は五人だけはどうしても行かないといつてあばれて困つておる、それで今の調子ではずつと午前中見込みが立たないが、少くとも最初のあばれない人だけでも連れて参りましようかということを連絡するわけでございます。それで、ではそうしてくれという場合に、裁判所はそのすなおに出て来ます五人だけの審理を継続いたしまして、残りのどうしても出頭を拒否する五人については、その目の調べはそのまま効力が及ぶということにいたしたいのがその趣旨でございます。しからばそういう認定をだれがするかという問題でございます。これが裁判所の認定にかかるわけでございます。それで裁判所が、一体どんなぐあいだ、実はこうこういうぐあいです、ではそのことを詳細に書面にでも書いておいてくれ、その書面の報告を後日あるいは早ければその日のうちに聴取するわけですが、大体その状況を電話その他で確かめましてこの認定をする、正当な理由がないとかあるいは著しく困難にしたというふうな認定は、その状況において裁判所判断する、かようなことに相なるわけでございます。
  53. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今の答弁を伺つておりますと、裁判所が認定する、これは条文の中からわかるわけでありますが、問題は、今の御説明を伺つていると何か被告の方で悪い場合という場合だけが考えられる。ところが今申し上げたように、汚職官吏等においてこういう事件があつて、しかも拘置所内の状態がこのような状態であつた場合には、必ずしもその報告が正当のものと判断できない場合があり得ると私は思うのです。こういう場合に危険を保障し得べき何らかの措置が私は必要であろうと思う。特にただいま岡原さんからの御答弁によると、何らか書面のようなものをとるような話にも聞えるけれども、やはりこういうことは責任の所在を明らかにする意味において、電話の連絡等あたりで問題を解決しないで、これを認めるとすれば少くとも正式の公文書によるその結果でなければいけない、かように私は考える。そうでなければ正当な理由ということの意義が明確になつて来ないと思います。こういう二点についての御答弁を願います。
  54. 岡原昌男

    岡原政府委員 ごもつともでございます。私どももこういう場合と二つ考えておるのでございます。たとえばいなかなどでございますと、裁判所のすぐ隣りに拘置所がございまして、裁判官が行つてみても状況がわかるという場合、これは特にいなかの方では裁判所と拘置所が非常に接近した場所にあるのが普通でございます。ただ東京のような場合、あるいは大阪でも本所ではなくて四条の分禁所というようなところを考えますと、かなり隔つております。結局往復をするのに二時間ぐらいかかるわけでございまして、たとえば午前中に公判を開こうと思つて八時なら八時に向うから出て来てこつちに着く、そうして九時半なり十時の開廷に間に合わせるという場合に、八時になつてもごたごたしてどうしても出発できない、九時になつてもできないという場合に電話で連絡をするということを考えたわけであります。これは東京とか大阪の四条分禁所といつたような非常に距離の遠い場合を予想しておる。近い場合はもちろん書面で、実はこういう状況で今困つておりますということを刑務所の方からすぐ持つて参ることになろうと思うのです。それから御心配の下つぱの役人がかつて判断して、そうしてそれが結局本人の利害に非常に大きな影響を来すということは、これはあつてはならないのでございまして、さような場合には、大体御承知と思いますが、少くとも管理部長とか、あるいは刑務所長、そういう人が出て参りまして、なだめるというようなことを普通やつております。それでもなおかつどうしてもうまく行かないという場合に初めてこの手段をとるわけでございます。電話でとりあえずの連絡はいたしましても、書面で必ず報告させる。しかもその電話の連絡はそういう責任のある人からさせる、かようなことに運用上はいたしたいと思つております。
  55. 岡田春夫

    岡田(春)委員 今の御答弁を聞いておると、官吏でも下級官吏の場合は、そういう場合があり得るのじやないかと思うのです。そういう場合があつたとすれば困るので、従来でもそれに対して上司の者がいろいろな措置をとるようにさせておる。やはりこの場合にもその拘置所なら拘置所の責任のある者が正式に書面をもつてやることが原則として明確にルールなりなんなりの上に出ておりませんと、何か電話でやることが原則であるかのごとくかえられてしまうということはいけないと思う。私自身はこの法律を設けることは賛成できませんけれども、たとい設けるとしても、そういう点の万全の策は少くとも講じておかなければならないと思います。こういう点大臣から特にお答え願います。
  56. 犬養健

    犬養国務大臣 これは刑事訴訟法で相当人権にかかわる改正をいたすわけでありますから、幸いに御可決を願いましたならば、電話というのは、私の体験上言つたとか言わぬとかいうことが残りますので、やつた以上書類でもつて責任者が書いて出す、事実に違反すれば責任者はいさぎよく責めをとる、こういう形式にいたしたいと思います。さよう御承知願います。
  57. 岡田春夫

    岡田(春)委員 実はまだ大分質問もあつたのですけれども、仄聞するところによると、修正案なるものができておるそうだから、いまさら私は質問をしても、私を除いた全部の諸君による修正案であるそうであるから、どうも質問の意味がだんだんなくなつて参りました。むしろ質問をするならば修正案を拝見をした上で、その修正案に対する質問を明日行いたい、かように考えておりますので、質問は明日に留保いたしたいと思います。  なおもう一つ、これは大臣にぜひお聞きを願いたいと思うのですが、御調査願いたいもう一つの案件があるのであります。これはまたきわめて重大な問題でありまして、この日本の国内において暗殺の計画があつて、二百万円の金を渡すという約束で十三名の者を暗殺するという計画が進んでおるという話を私は聞いたのであります。これまたきわめて重大であります。事件の概要を申し上げますと、東京都内の足立区の本木町というところにゴムの工場があります。このゴムの工場で労働者の諸君がお盆の手当を三千円もらいたいというので、経営者側に交渉した。ところが経営者側の人がたまたま韓国の居留民団の人であつたために、居留民団の本部の人に連絡をつけて、居留民団の本部の人が中心になつて、足立区に根拠を置いて、しかもこの居留民団の団長の崔という人が直接に暴力ざたの指揮をとつておるという話を聞いております。しかもこの崔という者が、われわれの聞いおる限りでは白骨団なるテロ団に話をつけてこの白骨団の首謀者は通称松岡という男だそうであります。こういう居留民団の韓国人を中心とするこの白骨団が、朝鮮民戦のいわゆる賃金値上げを要求したところの――これはやはり朝鮮人の諸君でありますが、民戦の諸君の幹部十三名を暗殺する計画を立てて、区役所からは外国人登録法に基く登録の写真を写しとつて、この写真を持たして、十三名を殺したならば二百万円の金を渡すということまでも謀議をして約束をしておるという話でございます。しかもそれだけならばまだ何ですが、すでにこの一端として考えられるべきものとして、七月十三日午後七時ごろに韓国居留民団、足立支部のこういう暴力団の人四十名が朝鮮の統一民主戦線足立委員会の事務所に来襲をして、居合せた金鉉五以下四名に対して暴行傷害を加えておる。この事件は、事前に実はこの労働者の側でわかつてつたので、防衛をしておつたのであります。ところが防衛をしておつたが、西新井の警察の方でやはりこの事件を聞きつけて――聞きつけてというよりも、労働者の側から西新井署の方に通知をしたわけであります。聞きつけて参りました山田という公安主任から、この事件についてはこういう暴行を振おうとした者に話をして解散をしろということを命令したので安心してくれ、君たちの方もひとつ解散して安心して帰つてくれという通告があつたので安心をして労働者の側は解散をしたのだそうであります。ところが解散をしてから五分もたたないうちに、突如民団の暴力団が押し寄せて参りまして、ただいま申し上げたような暴行事件が行われており、しかも、ただこれ一回だけならまだ問題ないのでありますが、その次にもそのような危険な状態があつたので、再度労働者の側から警察の方に訴えましたところが、これに対しては、いやもうあの民団の方は解散さしたから絶対に安心してくれ、君たちの方も心配がないから、こういうことの回答があつたそうであります。ところがそういう回答があつたので、安心してまた解散をしたところが、その夜中に――十六日の午前三時です。今度は民団の暴力団八人が労働者の側の者である鄭石根という人の家を襲つて、これに対して全治一箇月の傷害を起しておる。それからまたそれと同じ日の午前一時ごろには具永基というやはり労働者に対して、家を襲つて殺すぞというわけで、これをリンチしております。このようにきわめて重大な事態になつておりますし、その後においても、この暴力団は先ほど申し上げた十三名の幹部といわれる者の自宅をひんぴんとして襲つていろいろな暴行を加えておるというような事実がある。現在までにすでに判明いたしましただけでも、七人の自宅を襲撃をいたしましてそうしていろいろなことをやつておるというような状態でありまして、その付近の住民としてもこれはきわめて重大な問題であるというので――そういう状態になつておるわけであります。ところがふしぎにも今までのところ西新井署がこのような事件が起つておるにもかかわらず、あまり積極的でない。たとえば二十三日の事件のときに使われたと見られる硫酸びんが三個押収になつておりますが、この硫酸びんなども押収したまま置いてあるというような状態、しかも先ほど申し上げたように、この暴行事件で五人の者がけがをしたのでありますが、けがを加えました加害者に対しまして、その事件の最中に現行犯として捕え得る状態であつたにかかわらず、なぜかそれを捕えないで、被疑者からの申出によつて五人の者を逮捕して、しかも逮捕してもろくろく調べもしないで、そのうちに釈放して、在宅捜査という名目でそのままほうつてあるという事情になつておりまして、きわめてこれは重大であると思ひます法務省としてもひとつこの点について緊急の調べを願いたいと思うのであります。いずれ参考資料はお手元に届けたいと思いますから、ぜひともこの点もお願いをいたしておきます。
  58. 犬養健

    犬養国務大臣 承りますと大分物騒な事件でありまして、もしほんとうなら相当重大なことだと思います。実は、午前中非公式にその関係書類を一部入手させていただきましたので、さつそく検察庁にまわしてございます。ちようど田中警視総監もなかなかおられることだから、警視総監とも連絡しまして真相を明らかにいたしたいと思つております。
  59. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、私はあしたの修正案に対する質問をという意味で、本日は質問を留保いたします。
  60. 鍛冶良作

    鍛冶委員 この間から一ぺん明白にしておきたいと思つていたのですが、現行刑事訴訟法百八十九条を読みますと、「警察官及び警察吏員は、それぞれ、他の法律又は国家公安委員会、都道府県公安委員会、市町村公安委員会若しくは特別区公安委員会の定めるところにより、司法警察職員として職務を行う。」となつております。そこで、これはどういう形式でどういうものを警察職員として定めておられるかを承りたいと思うのでございます。
  61. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 警察官及び警察吏員につきましては、それぞれ国家公安委員会規則、都道府県公安委員会規則、市町村公安委員会規則で、ところによつて違いますが、大体巡査部長以上を司法警察職員とするというぐあいに階級を指定いたしております。特にどこどこの駐在所等においては巡査部長、あるいはどこどこでは巡査というふうに指定をいたしておるわけであります。
  62. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これは国警の方面では全部一致しておるだろうと思うが、それともところによつて異なる定めをしておるかどうか。また御承知ならば、地方自治体における公安委員会によつて自治体ごとにまちまちのものであるか、あるいはたいてい一致しておるものであるか、そういう点を承りたい。
  63. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 国警といたしましては、原則として巡査部長以上ということにしております。それから特に僻遠の地の駐在等におきましては、巡査ということにしております。自治体警察も大体それに準じてそう大した違いはないと思つております。
  64. 鍛冶良作

    鍛冶委員 その次に、第百八十九条の司法警察職員と、第百九十九条二項にいいます司法警察員とどういう違いがあるのか承りたい。
  65. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 司法警察員は、御承知のように逮捕令状あるいは弁解調書の作成、そういつた調べの権能を持つております。司法警察員の方が権限がよけいあるというわけであります。
  66. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると聞かなければならぬのは、司法警察職員については百八十九条で、こういう委員会で特別の定めがあつてきめるとあるのですが、この逮捕状を請求し得る司法警察員というものに対しては何ら定めがないようですが、この司法警察員たる者を決定する方法はどういう方法でやつておるのですか。
  67. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この司法警察員もやはり公安委員会規則できめておるのであります。
  68. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そこが私は聞きたいのですが、百八十九条には司法警察職員と、こう書いてある。ところが百九十九条のたいへんな仕事をするのは司法警察員で、職員じやなく員です。これの決定の規定がないようなんですが。どこかにありますか。
  69. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私は非常に不完全な答弁をいたしましたが、百八十九条では、「司法警察職員として職務を行う。」とありますから、その職務の行い方を公安委員会の定めるところによつてきめるわけであります。そこで、司法警察職員のうちでどれが司法警察員として職務を行うのかということを百八十九条で定めているのであります。私は、先ほど原則として巡査部長以上と申しましたが、いわゆる司法警察員による逮捕令状の請求、あるいは弁解調書の作成というような、司法警察員としての職務を行い得る者は、原則として巡査部長以上であるというのを百八十九条できめておるのであります。警察官及び警察吏員はすべて司法警察職員であります。その職員の中から司法警察員というものはこれこれだというのを百八十九条できめておるわけであります。さようなことであります。警察官及び警察吏員のうちで公安委員会が司法警察職員をきめて、司法警察職員の職務を行う、こう書いてある。ところが百九十九条第二項では、これと違つた「司法警察員」というこの百八十九条にないものがぽつつと出ておる。それが逮捕状の請求ができる、こうなつている。百八十九条には司法警察員というものはありません。百八十九条は「警察官及び警察吏員は、」ずつと飛ばしまして「司法警察職員として、職務を行う。」そこで司法警察職員のうちで警察員というものは特別の意味を持つておりますが、それをこの条文で司法警察員はこれこれだということを定めておるのでありまして、国家公安委員会におきましては、公安委員会規則によりましてこういうように定めております。この規則を読んでみますと、「刑事訴訟法改正する法律第百八十九条の規定に基き、国家地方警察本部及び警察管区本部に勤務する警察にして司法警察職員として職務を行う者を次のように定める。国家地方警察本部及び警察管区本部に勤務する警察官については、巡査部長以上の階級にある警察官はこれを司法警察員とし巡査の階級にある警察官はこれを司法巡査とする。但し、国家地方警察本部長官又は警察管区本部長は、必要があると認めるときは、国家地方警察本部又は警察管区本部に勤務する巡査の階級にある警察官を、司法警察員に指定することができる。」これは僻遠なところで司法警察員として置か、なければならぬ遠い駐在所は、特別に司法警察員に指定をする、こういうことになつております。
  70. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それはこの規定にないけれども、この百八十九条にある「司法警察職員」という中に司法警察員と司法巡査とある、こういうふうに考えてよろしゆうございますか。
  71. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 さようでございます。
  72. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると今聞いておりますると、百九十九条第二項の「司法警察員」は巡査部長以上のものである、こういうことになるわけですが、われわれはこの逮捕状を請求するということはよほど重大なことで、もつと経験を積み、学力のある者でなかつたらいかぬと思うが、この点はいかがです。
  73. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私はお説の通りだと思うわけでありまして、ただ現行法ではこの司法警察員を逮捕令状を執行し得る司法警察員と、そうでない司法警察員、こうわけてしまうことは刑事訴訟法のきめられたところを少し逸脱するのじやないか、いやしくも司法警察員である以上は令状の請求もできるということが与えられておるわけでありますから、これを規則その他で制限することは少し行き過ぎじやないだろうか、現実の問題といたしましては特に重要な犯罪、たとえば選挙違反のような場合には、私の方は内規で警部補以上でなければ令状を請求しないように制限はいたしておりますが、あらゆる犯罪について警部補以上ということについて、この規則で令状の請求を制限することは少し行き過ぎだ、かように考えておりますので、もし刑事訴訟法規定で司法警察員をわけて制限し得るものがつくれるというように規定がもし改正になれば、われわれの方はその趣旨従つて令状を請求し得る司法警察員をもう少し階級の高いものにかえることが適当であろう、かように考えております。
  74. 鍛冶良作

    鍛冶委員 よくわかりました。そこでわれわれは少くとも警部以上でなかつたら困るのではないかと思うが、これに対して御意見いかがです。
  75. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私は高ければ高いほどいいと思います。実際の実情から申しますると、警察署の司法主任は警部補のところが非常に多いのであります。従いまして現在の実情からいたしますならば、警部補以上というのにかえるのが実際の実情に合うのではないかと思いまするが、さらに慎重を期する意味におきまして、警部補以上になりますれば当分数で若干不便を来すかと思いまするが、予算等の措置を得まして警部の数を間に合うようにふやして行くというふうに努力することによつて、私はもつと不便は除かれるのではないだろうか、かように考えております。
  76. 林信雄

    ○林(信)委員 きようちよつと出た話に関連するのでありますが、結論的に言いますと、法務省関係の待遇の問題なんです。斎藤さんあるいは岡原さんの御意見を承つてみたいと思うのですが、なかんずく刑務所関係の職員の待遇は私はひどいと思う。私が言うのではないけれども、世論として待遇の関係から相当素質が落ちているという批評がある。正式に言つてこれはいなめないと思う。これが待遇だけから来ておるかどうかは問題でありますけれども、少くとも大きな一因であろうと思う。この委員会でも先だつて姫路の少年刑務所の騒乱が第三工場、第四工場ですか、そのトラブルがひいて職員に向つてつたということはわかる気持がいたします。なお私何かで見たことがあるのですが、これも遠くはない。先月の初めごろ広島の刑務所で、収容中の者が徒党を組んだ。といつても四人くらいです。ある気に入らない不人気の看守を凶器をもつて殺害した。凶器といいましても、刑務所の中のことですからナイフであります。その他はガラスを打割つて、それに布か何かを当てておいててんでにえものを振つて看守を刺した、こういう事例を聞かせられておるのです。そういう原因がどこにあるかといいますと、これらの諸君が知識の点においても、決して他の官公署の諸君より多くまさるとも劣つていないと考えます。なかんずく心配になりますのは、何となく修養のできてない、あるいは刑務所に不適格な性格の諸君が往々見受けられる。官公吏の諸君はそれぞれ分担いたしまする職責において重要な職務だと思うのですが、似たような官職の警察官に比較いたしまして、事務的には簡単なように見えますけれども、いやしくも人を悔悟俊心せしめるのですから、非常に教育的な気持がなくてはならない。教育的なことに適合する性格が望ましい。そういう点においては人格まことに修養未熱な諸君も、全部ではありませんが、見受けるのであります。これが世論によつてどうも看守の素質が悪いということが言われるゆえんではないか。ああいう中におりますものですから、よほど考えた態度を持つてつて参りませんと、教育どころじやない。非常な反感を買つて、不徳のいたすところ身を滅ぼすというようなことが起つて来るのではないかと考えておるのであります。この点においてぜひ待遇の面におきましても、これらの者を遇するに適当なものをもつてしてもらいたいと思うのであります。なかんずく知識面よりは人格の修養の面に注意をされて、いわゆる刑務行政に適当なる人物を選択採用せられるということに相なりますれば、世論の悪評はかなり解消せられるのではないか、こう思うのでありますが、採用の実際等についても、これらの者に対して特段の御考慮をせられておるかどうか、そういうことを伺いたい。
  77. 岡原昌男

    岡原政府委員 刑政の本質に触れました貴重な御意見でありましてありがたく承りました。いやしくも人を教化改善すべき人がみずからの修養の足りないためにひいては事を起すというようなことがございましては、私どももまつたく申訳ないのであります。矯正局長がお答えするところでありますが、私も実はこの方面にかなり前から興味を持つて勉強しておりましたし、ただいまのお言業一つ一つよくわかるのでございます。実は看守の待遇につきましても矯正局におきましていろいろ高い標準を立てて、一時は相当の志願者もございましたが、資格が十分でないというのでふるい落したような時代もございます。ところが中には、特に戦後の急いで採用した者につきましてはたいへん遺憾な実例が突発いたしまして、たびたび皆様にも御迷惑をかけ、世論の注目するところともなりまして、この点は私どもたいへん申訳なく恐縮に存じておる次第であります。そこで矯正局におきましても、それらの看守の採用並びにその訓練につきまして、現在非常に高度の組織を持ちまして逐次その教養の改善に当つております。具体的に申し上げますと、それぞれの刑務所において刑務所単位の研修をいたすのが一つと、管区単位で地方研修所というのがありますが、この地方研修所において一定の時を定めて交代で研修いたしますのと、そのうちの幹部級その他につきましては随時中央の研修所に集めまして、刑政の本質、理念等について相当高い教育を施しておるのであります。何分にも数が約二万おりますので、中にはたいへん皆様に御心配をかけるような事態を起すような者がおりますことは遺憾に存じておりますが、全般的には漸次その教養も高まつて行くものと考えられます。私たちは冒頭申し上げました通り、誤つて罪に落ちましたさような人たちが再び社会に真人間として出て来るためには、日常その補導に当る人たちが真剣に自分の人生観、社会観を正しい面に育てて行く努力がなければならぬと私も確信いたしております。そういう面からいたしまして、待遇の面も現在では及ばずながら普通の官吏よりは、いわゆる特別職の俸給になつておりまして、少しはよくなつております。ただそれは私ども考えましてもまだ満足すべき段階ではないのであります。その点につきましては、いい人をたくさんとることのためにはやはり待遇の面を今後も考えてやらなければいかぬ、かように存じておりますが、そういう点につきましても何分の御協力を煩したい、かように存ずる次第であります。
  78. 林信雄

    ○林(信)委員 研修関係云々のことも私まだ何もデータを持つておりませんし、その程度になつているかと思いますが、事実大した数が研修を受けてないのじやないか、あるいはだんだん幹部になつて行きます者は研修の機会も多く、だんだん素質がよくなつて行くのかも存じませんが、下級職員はほとんど未研修の職員が多いのじやないかと存じております。しかし私は特にそれを調べたことはないのでございますから断定はいたしません。少くとも素質の点についてよほど似ております警察官に比べて、看守の方は、幹部はそうでもないかもしれませんが、下級の諸君に至りますと非常にレベルが低いというような酷評をする者が多いのであります。この点については一段の御努力を願いたいと思うのです。ただいま待遇の問題についても一言お言葉がございました。私は大体待遇の問題は除外してお話しておりましたけれども、これもだんだんよくなつた言われるのは、ただ刑務職員の待遇自体を標準にしてのお話だろうと思うのです。これも比較いたしました場合はなお低いのではございませんか。これも私材料を持つておりませんが、それあるがゆえに起る忌まわしい別の意味の悪影響は除かるべきであります。今岡田君の質問の中に出ておりましたような収容者から一種の収賄でありますとか、外部との連絡に対して報酬を得ようとするとかあるいは隠密の間に物を授受して報酬を得よう、これは誘いかけられる場合もあると思うのですけれども、ほんとうに情ない生活をしておりますと、自分から進んで持ちかけるという実情もあり得るように聞いております。まことに残念であります。人間は食うことが大事ですが、食う中にも自然にゆるみが出て生活に負けると、相当に奢侈の面に流れたくなる、そういう弱い一面から、今岡田君の御発言のようないまわしいことは、単に今回新聞に出たという事例のみでなくて、しばしば繰返されていることをわれわれは知つているのであります。これらのことは全部とは言いません。先刻言つておりました採用の面における人柄の選択をよほど厳重にすることによつて防げる面が多いと思うのですけれども、何としましても待遇の面からせぬことには解決されないと思うのであります。従つてこれは画期的な解決をするくらいのつもりで、ひとつ法務関係の皆さん御努力を願いたい。実は私質問を通告しておりまする人権擁護委員会関係につきまして、大蔵省関係の諸君も来てもらつてという考えを持つておりましたが、そういう機会ですから、私の今質問申し上げておりますことも意味があるのじやなかろうかと思うのですけれども、かような思いつきみたいなことですから徹底しませんが、大蔵当局に十分意思の疎通をはかり、連絡をされておると思うのでございます。格段にひとつこの問題の促進解決を願いたいと望んでやまない次第であります。これらの点に対する御答弁を願いたいと思います。
  79. 岡原昌男

    岡原政府委員 まことにごもつともでございます。大蔵当局との関係につきましては随時連絡をとり、あるいは税務署、拘置所その他の収容施設、あるいは広く保護施設等なども十分見ていただきまして、その実情等について十分御認識を受けるように努めております。ただ今までいろいろ私どもの努力の足りなかつた点もございますが、国家財政の大きなわくでいろいろ縛られまして、私どもが考えておりますいわゆる理想的な行刑の体系がまだ十分になつていないという点については私も率直に認める次第であります。但しこの点は私どもの努力いたしますところは、わが国の犯罪人が一人でも少くなるように――全部いなくなるという理想はもちろんほんとうの空想的な理想でございますが、そういうふうな覚悟でもつて私たちはやつて行きたい。そのためには単に刑務所に入つた人をよくするのみならず、刑務所に入る人をなるべく少くした。いまた刑務所から出た人が再び悪の道に入らぬように努力したいというふうな諸般の制度一緒に、これを刑政の一環として考えまして、そして大蔵省に対してもこの点を強く主張しておるところであります。私どもといたしましてはいわば社会の病毒面を取扱つておるものでありまして、縁の下の力持ち的な存在であります。ただ私どもといたましてはさような理想のもとに事を進めて参るという心構えだけはひとつ御理解願いたいと思います。
  80. 林信雄

    ○林(信)委員 待遇の問題につきまして検察庁の職員関係検事及び副検事並びに検察事務官、これらの諸君に対しまする待遇についてどういうふうにお考えになつておりますか。
  81. 岡原昌男

    岡原政府委員 検察官、つまり検事、副検事等につきましては、一応現在特別の号俸がございます。一般の行政官吏よりはややちよつと高いのですが、まあそれにしても裁判官に準ずる待遇を受けているのであります。従いましていわゆる準司法的な一環といたしまして十分自己の所信に従つて事を処理し得るという一応の建前になつております。これは全体といたしまして社会の給与ベースというものとどうかという問題になりますと別であります。少くとも一般の行政官吏よりは高い待遇を受けております。ただ問題は検察事務官でございまして、検察事務官はその職責が、きわめて危険性の高いものでございます。いわゆる令状の執行などをいたしまして、かなりたびたび生命の危険にさらされた実例もございます。ところがその実際の待遇はほかの一般の事務官と現在はあまり違わないのでございます。それでも後日優秀な幹部として残るような優秀な事務官がかなりたくさん入つておりますので、漸次その素質はよくなつて来ると私は考えておりますけれども、何分にも一般の事務官と同じで、しかもその仕事の煩雑なること、それから従つて特殊性のあること、それから危険性のあるというふうな点につきましては、ちよつとほかの一般の事務官では及びもつかぬような点が多々あります。そこで先般人事院あるいは大蔵省とも協議いたしまして、さような点について検察事務官のいわゆる公安職として、の特別の号俸を認めるべきではないかということについて人事院のある程度の了承を得たのでございます。まだそれが具体化する程度に至つておりませんので、引続き努力しておる現状でございます。
  82. 林信雄

    ○林(信)委員 検察庁関係の待遇の問題以外に一般の予算関係であります。今の検事及び副検事、検察事務官まで入れまして、人員の関係はこの程度でまあまあというお考えでありますか、これはひどく足りないとお考えになりますか、あるいはこれで満足しているとお考になりますか。それにつきまして御意見を承つてみたいと思うのです。これは理由は申し上げなくても御存じの通りで、起訴前の拘留なんかの問題でも、検事総長の意見の中に多分にその話が出るので聞き苦しいのでありますが、あなたの説明はそつちの方ではなくて事件の素質のように言われるので、これは技術的に違うのですけれども、ああいうお話を聞いておつて気にかかるのであります。あなたの御意見ちよつと伺いたい。
  83. 岡原昌男

    岡原政府委員 現在の検事の定員が――ちよつと正確なところを覚えませんが、たしか九百七十名前後じやなかつたかと思います。それから副検事の定員が七百数十名であつたと思います。合計約一千七百名の検察官がおるわけであります。そこでこれに対しまして一般の事件が昨年約百八十万件ございました。それで簡単な事件もございますが、中には昨年の上半期から下半期の初めに起きましたような、一件で千名を越すというような大事件も処理したわけでございます。さような関係事件一つ起りますと、約一箇月半くらいにわたりまして大体全国から三、四十人の検事の動員を得ましてようやく事が処理できるという現状でございます。そこで私どもは、かような事件が起ることを見越すということになれば、これは莫大なる人員を増加してもらわなければいかぬ、かように考えておりますけれども、他面さような事件なしにも現在の検察官の仕事はほとんど限界点を越しております。ざつくばらんに申しますと、検事はいわゆる努力週間、努力月間というものを年に数回繰返しまして、そうして未済事件の処理を急いでおります。従いましてその関係で、事件の処理として非常に急ぎ過ぎた、逆から申しますともつと事件の真相をつかんでから起訴、不起訴を決すべき事件を、ある程度の見通しをつけて処理してしまうというような風潮が出て来ておるのではないかと実は心配しておる次第でございます。新刑訴が始まりまして公判中心ということになりまして、公判に関する事務が相当増加いたしました。これは増加というよりはおそらく七、八倍に激増しておるのじやないかと思います。その公判に対する力が非常にとられていますために、捜査の面がかなりおろそかになつている面がございます。それに伴ういろいろな問題が惹起することも実は私ども心配しておりますけれども、他面実は給源に困つておるという実情なのでございます。これは御承知通り、司法試験を経て、しかも二箇年の修習を経て判検事に振りわけになる、あの人たちが最初の司法試験を合格するのが二百七、八十名、そのうち裁判所に司法修習生として採用されるのが二百五、六十名、これが毎年の傾向でございます。そのうち約三分の一ずつがそれぞれ判検事弁護士というふうにわけられるのでありまして、大体七十名から多くて八十名前後が検事に採用される。かような関係で、現在の状況では、在野法曹から特段の御配慮でもあつて、いい弁護士さんがたくさん検事になつていただけば別でございますが、それでなくて、ただちに人員をふやすということは困難でございます。他面副検事制度につきましては、私ども自身も、その運用の実績にかんがみましていろいろと注文をつけております。この副検事という制度を広げるということについてかなり疑問を持つております。そこで昨年も副検事のうち五十名を減らしまして、これを検事の増員の分に充てたような次第でございます。そういうふうな状況でございますので、今後私どもとしては、検事の手元が実に忙しくて困るということを目の前に毎日見せつけられておりながら、検事の素質を下げてはいかぬという面から実は苦慮しておるわけでございます。実は毎年かなり優秀な司法修習生からの卒業生が検事に来ておりまして、だんだん素質も向上して行くこととは存じまするけれども、急激な増加というのは、事実上かなり不可能であるという実情にあることを御了承願いたいと考えます。
  84. 小林錡

    小林委員長 次会は明日午前十時三十分から開くこととし、本日はこの程度にとどめ、散会いたします。     午後五時十二分散会