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井伊委員 今の多くの刑事
事件の審理が渋滞しておるという面もありまして、この
改正の
一つの条件にな
つておる
ように思います。しかし
形式的に七〇%が争いのないものであるということを承りましても、実際刑事
事件そのものは、公判に参りましたときに、起訴状の朗読がある。これに対する冒頭
陳述を行うときに、これを認めるというのが数多くありましても、実際の
実情から参りますと、これは幾多の事情がある。その捜査の
段階において、すでにもう真実でない
ようなものであ
つても、何ともしかたがないという
ようなあきらめを持つ。あるいはまたその
陳述と去ることあまり遠くはない。起訴状に述べるところの刑事
犯罪事実そのものとは大した違いはない
ようではあるけれ
ども、
意見が多少あ
つても、それを正しくすることの結果、得るところはどうであるかという
ような点に至ると、結局争うてもどつちみち同じことであるという
ようなことのために、冒頭
陳述においては異議を述べない。これを認める者が相当多数あるわけであります。でありますから、争いがない、本人がその
犯罪をみずから認めるという場合におきまして、その統計から出て来た数によ
つて、簡易の
手続を創設せられるということは、一面においては確かにいいと思うのでありますが、ただ怒るるところは、こういう刑事公判におきまして、はたして被告が十分に
自分の述ぶべきものを述べ得るという状態において、公判に臨むか、そうこと、あるいはまた他にも
犯罪があるけれ
ども、今のうちに簡易
手続でも
つて早く審理を終らしてしま
つた方が得であるという
ような場合、あるいは人の身がわりになるという
ような場合、さまそれの場合がその中に入
つて来る。それに来する配慮がそれらの
改正のうちには加わ
つておるのでありますが、その有罪である旨を
陳述してもただちに簡易の公判
手続に移らないで、あらかじめ検察官や
被告人、あるいは
弁護人の
意見を開いて、その
意見陳述が
被告人の真意によるものであるということを十分検討した上でこの簡易の公判
手続に移るのだ、こういうふうに言われるのでありますが、しかし実際
規則を運営して参りますと、検事の公訴状の朗読があ
つて、そうして
裁判所が被告に対して黙秘権のあることを示す、その後に冒頭
陳述に入るとき、実際まだ何ものも出ていないのであります。そういうときに、この冒頭
陳述の中で被告が、あるいはその
弁護人が、被告の
犯罪にかかることを認めるという
ようなことは、これは覚悟をしておるところのものであるならば、――あるいはもうあきらめておるところのものであるならば、もう当然に認めますということを言うわけです。そのほかの証拠材料はまだ出ていないのです。また検事はもちろん
意見を述べることはできましても、検事自体は、これは起訴官でありますから、もとよりこれに対して反対の
意見など述べる
ようなことはないのであります。
弁護人はどうかと言えば、
弁護人は実際被告の意に反して
陳述をするということのでさないこともあり得るし、また実際においては、被告が認めているくらいのものについてはこれを自由な立場から、これはどうかと思うという
ような
意見を述べることができないのであります。それでありまするから、ある
程度審理に入
つて後ならば
裁判所もある
程度心証を得て、これを簡易の公判
手続に移すということもできると思うのですけれ
ども、この
手続はそういうあれではなくて、冒頭
陳述の後に
意見を述べ、そうしてその
程度において簡易公判
手続に移る
ようでありますが、こういうことで
裁判所においてこの
陳述がほんとうのものであるという真実性を把握することができるかどうか。そういうふうに
考えるのでありますが、その運営の点について承りたい。