○
猪俣委員 実は
判事の
逮捕あるいは
勾留に対する盲判に対しては、われわれはぼう然たらざるを得ない
ようなこともあるのであります。
裁判所側から出ていただいて私
どもお尋ねしたいくらいでありますが、昨年当
法務委員会で私は問題にしたこともあります。
人権擁護の面で取上げました人違いの
勾留の問題であります。ある会社の専務取締役が公務執行妨害、殺人未遂で起訴された、これはラジオで放送され、全新聞に出ました。それがためにこの会社はたいへんな恐慌を起しました。ところがその専務は全然
逮捕なんかされておらない、人違いなのであります。それで
警察に人違いだ、現在
自分はこうや
つてここにおるのだ、だから何とか取消してもらいたいと
言つて行きますと、
警察の
答弁はこうだ、いやあれは
自分たちの
責任ではない、
判事さんが印を押したのだから
判事さんのところに行
つてくれ、こういうのであります。
判事のところに行きますと、いや
警察で来たもので、そのまま押したのだ、こういう
ような始末で、まつたく人違いの人間がラジオにも放送され、全新聞に書かれた。全国の会社のお得意さんからひんぴんと照会状があり、その人は三日間ばかり自動車に乗り詰めで東京中の銀行を、この
通り自分はおるのだと
説明して歩いた、これが問題になりました。か
ように
判事の現状というものはまつたくの盲判でありまして、何ら審査もや
つておらぬというのが実情だと思います。そこでどうしてもこの際
判事がもう少し実質的な審査をする
ように私
どもは
改正したいと思
つておるのでありますが、
法務大臣も賛成だとおつしやるのでありますから、これはその程度にとどめておきたいと思いますが、私
どもがさ
ような
改正をいたしますならば、予算の実現に努力していただかなければならない。ただ
権限を持たれた
つて、
判事は神様でも何でもないのでありますから、予算が伴わなければこれは実施できません。
判事の数をふやすなり何なりいたしまして、実質的審査ができる
ように
大臣からその予算措置を深甚なる考慮をも
つて御配慮いただきたいことを要望しておきます。
それからなお
警察に独立の
捜査権があるとかないとかいう問題で、いろいろ
議論がある
ようであります。
法務府の
人権擁護局から出しました「
逮捕状運用に関する調査」というのを見ますと、昭和二十六年十月一日から同月の三十一日までの一箇月間においての全国の
警察が
捜査の対象として取扱つた人員に対する統計が出ておりまして、これは七万九千八十八名である。そのうち
現行犯で
逮捕した者が二万五千百六十八名です。緊急
逮捕した者が七千十四名、合せて三万二千百八十二名、これは
検事あるいは
判事の
勾留状も何もなくて
逮捕しておるのです。
現行犯、これはいらない。緊急
逮捕、これはいらない。そうすると七万九千ばかりのうち三万二千何ぼというものは
判事の
勾留状も
逮捕状も何もなしに勝手に
警察で
逮捕している、こういう事情にな
つておる。ですから今
検事の
同意云々を
警察がたいへんなことの
ようにおつしやるけれ
ども、半分ばかりというものは
判事も素
通りでや
つておる。私はこの緊急
逮捕などというものは非常に問題があると思う。それから一昨年でありますか、当
法務委員会が
選挙違反事件の調査で鹿兒島県へ調査に行つた。私はそのとき行かなかつたが、そのときに行つた委員の報告によると、あきれ返
つてしまつた。鹿兒島県あたりは緊急
逮捕するのがあたりまえだと思
つて、
判事の
逮捕状なんていうのを持
つて行くのは例外の
ような
状態で、
警察官がそんなものいるんじやかなあという
ような話だ、こういう実情なんです。そこに
法務省が
心配する点も出て来る。そこでどうも
法律というのはよほど慎重につくりませんと、一旦つくると例外が原則にな
つてしまう、役人というのは便利な方に使
つてしまうんだ。緊急
逮捕というのは例外中の例外なんです。大体において
判事の
逮捕状、
勾留状によ
つてやらなければならぬことは、憲法の大原則からも来ている
刑事訴訟法の大原則だ。しかるに一度これが
法律を出して下部に流されるや、いつとはなしにその例外が原則にな
つてしま
つて、ははあそんなものがいるのかなという巡査が出て来る、これは非常に問題であるのであ
つて、そこで今
逮捕状を
請求するのに
検事の
同意があるかないかという問題よりも、その前に
検事の手も
判事の手もてんでかからないこういう緊急
逮捕という
ようなものが相当数行われておる。それから
現行犯
逮捕と称するものにも相当あいまいなものがある、こういうことを徹底的に
人権擁護の
立場から調査をしないといけないと思う。こういうことをそのままにしておいて、ただ
警察だ
検察だと言つた
つてらちが明かぬのでありまして、私
どもはこの緊急
逮捕事件につきまして
法務大臣からもつとよく調査していただきたいと思う。しかし今
言つたように
警察は独自の
捜査権があるという
ようなことで、実際の
法務省のひいきなど一切受けないという
ようなことにな
つてしまうと、
法務省としてもやり
ようがないかもしれませんが、幸い
犬養大臣は
警察所管の
大臣でもありますがゆえに、この緊急
逮捕の実情についてもう少しお
調べ願いたいと思います。これを
濫用いたしまして、例外が原則になりましたら、
検事の
同意を得なければ出してはいかぬとかなんとかいいましても、百の説法へ
一つにな
つてしま
つて何もならぬ。この点につきましては今ここで要望だけにしておきまして、あと緊急
逮捕の実情についてのことを、他日でもよろしゆうございますが、よく御報告いただいて、
考えさせていただきたいと思うのであります。
それから
警察官と
検察官の問題につきましてはなお多々論ずるべき点がありますが、当
法務委員会におきましても相当の代案がおいおい出て来る
ようでありますから、私はこの程度にとどめておきまして、なお二、三の点について質問をいたいと思います。
これは、岡原
政府委員はこの当時おいでにな
つておられなかつたかどうか知りませんが、第二
国会におきまして
刑事訴訟法の全面的な
改正法律案、
現行法ができましたときに、私はこの
検察庁の一般
指揮権と司法
警察官の身分につきましての
関係を詳細に質問いたしております。時の
法務総裁は鈴木義男君であ
つて、
自分の党の
大臣でありました。
説明を読んでみるとまことに興味模糊とした
答弁をや
つておる。ところがやはり
自分の方の
大臣だ
つたので私もあまり追及をやらぬでお
つたのですが、まことにわけのわからぬ
答弁をや
つておるのであります。しかし私はすでに今日か
ようなことが起るのではないかと思いまして詳細な質問をや
つておりますが、不幸にしてそれが今問題にな
つて来ておる。ですから
法務委員会の論議を熱心に聞いておいでになる方がずつと継続してこの衝に当
つておられるならば、こういう問題はすでにこの
刑事訴訟法をつくるときに出ておるのであります。私もこの点に対しては相当質問をや
つておるのでありますが、それに対して何らの明快な態度がとられないで今日まで来たのでありますが、これはなお
法務大臣もよく御考慮いただき、当
委員会においても委員の諸君において何らかの
考えがおありの
ようでありますので、当
委員会と隔意なき懇談の上にこの問題を解決していただきたいということを要望して、この点につきましてはこれで切上げたいと存じます。
次に「第八十四条第二項中「
請求者は、」の下に「書面で」を加える。」書面でやるというのであります。今般の
改正案を見ますと、どうも
口頭弁論主義から
書面審理に向う
ようなところが往々出て来ておる。
口頭弁論主義というのむはずかしいかもしれない。しかし
書面審理という方に移行せられるということは私
どもはなはだ感心できない。八十四条のごときもその
一つの現われではないかと思います。どういう
理由で書面ということにしたのでありますか。もう一度、岡原さんにお尋ねしたいと思います。