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斎藤(昇)
政府委員 ただいま逮捕状の濫発によ
つて人権が侵されていはしないか、またそれが現在の
刑事訴訟法との関連においてどうかという御質問であります。
警察側といたしましても、逮捕状の請求ということは、
人権の保護上非常に大事なことでありますので、どうしても逮捕しなければ
捜査が支障を来すというものでなければ、逮捕をしないということを強く教育をいたしておるのであります。原則といたしましては、まだその
事件が起訴にならないものを逮捕するというようなことにな
つても相なりませんので、
事件の概要を事前に検事と
連絡をしてやるという習慣をつけておるのであります。ことに選挙犯罪につきましては、ただいま
佐瀬委員から御指摘になりました
通り、よほど取扱を慎重にする必要がありますので、私どもの方といたしましては、かねがね逮捕令状の請求は、署にあ
つては署長、県本部にあ
つてはその課長または隊長の承認を得なくては、令状の請求をしてはいけないということを
捜査規範にも示しまして、励行をはからしておるのであります。ことに選挙にあたりましては、令状を請求し得る
警察官を警部補以上に限りまして、警部補以上がみづからの名において、しかも課、署長の承認を受けて令状を請求し得るように、
選挙違反全体は隊長みずからこれを
内容を知り、そして隊長の判断のもとに、こまかい点まで指示をなして、あやまちなきを期するようにということを、強く指示をいたしたのであります。従いまして私どもといたしましては、令状の請求は
相当慎重に行われたものと考えておるのでございます。
ただ問題になりました五名の自殺者を出しましたことは、非常に遺憾のきわみであります。しかもその中の四件は
釈放後でありましたが、国警の地域内のものでございます。これについて令状が発せられて、逮捕によ
つて調べたものが四件、一人は任意
捜査であつたわけですが、その四人の令状の執行が非常に無理な令状のとり方であつたかどうかという点についても、検討をいたしておるのであります。しかしこれらもすべてさらに
警察の四十八時間以後、引続いて検事勾留を受けておるのであります。事前にわれわれが検察とよく
連絡をと
つてやるようにという点が、私は守られておつたものと考えでおるのであります。選挙犯罪につきまして、
警察の令状のとり方が乱暴であつたというので、検事からその
理由をも
つて検事勾留相ならぬというように
なつたものは、私はただいまほとんど聞いておりません。二十六
年度の十月を限
つて調べたものがあるのであります。これは一箇月間において、全部の
事件について令状をも
つて調べたものを
調査をいたしたのでありますが、そのうち、検事の方において引続いて勾留状を発して、なお調べる要があると認めて調べられたものが、七五%を越えておるのであります。
従つてこれは
警察で扱いました全
事件でありますから、
警察の持ち時間だけで分明に
なつたというので、
釈放いたした者も
相当あるわけであります。それらのものを入れましても、一五%に足りないものが
警察の持ち時間だけであ
つて、あとの七五%以上は検事もその必要を認めて、勾留をせられたのであります。従いまして私は
警察官の令状の請求権が独自に認められたことによ
つて、
人権蹂躙が多くな
つておるということは、むしろ言えないのではなかろうか、かように考えております。私の個人の見解といたしまして、一番問題になりますのは、ただいまおつしやいました、いわゆる逃亡のおそれのない者を、令状を執行して逮捕するという場合であります。これはおそらく証拠隠滅ということ以外には正当な
理由はなかろうと思うのであります。われわれといたしましては、逮捕によ
つて自白をしいる、逮捕ということによ
つて、そういう環境に置くことによ
つてある一種の心理的な圧迫によ
つて自白をしいるということは
人権蹂躙であるから、さような令状の執行は絶無を期したいと考えておるのでありますが、そこに証拠隠滅すなわち私は端的に申しまして通謀が一番の問題であろうと思うのでありますが、調べに応じて自分の持
つておつた証拠が形の上であるいは焼却されたりあるいは隠匿されたりするということもありましようが、それよりも調べの
内容が相手の被疑者に通じられて、証拠が隠滅されるという点をおそれる分野がまだ
相当あるのではないかと私は考えております。こういうような点は、私は
検察庁ともよく御相談をして逃亡のおそれのない者はできるだけ身柄の拘束をすることなしにやるということの研究を、もつと進めて行く必要がある。多くの令状の濫発といわれる
事件は、私はここに基因をいたしておる、かように考えておるのであります。