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1953-06-26 第16回国会 衆議院 文部委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年六月二十六日(金曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 辻  寛一君    理事 伊藤 郷一君 理事 坂田 道太君    理事 原田  憲君 理事 田中 久雄君    理事 辻原 弘市君 理事 前田榮之助君    理事 世耕 弘一君       天野 公義君    尾関 義一君       竹尾  弌君    山中 貞則君       今井  耕君    町村 金五君       高津 正道君    野原  覺君       山崎 始男君    松平 忠久君  出席国務大臣         文 部 大 臣 大達 茂雄君  出席政府委員         文部政務次官  福井  勇君         文部事務官         (大臣官房会計         課長)     小林 行雄君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     田中 義男君         文部事務官         (社会教育局         長)      寺中 作雄君         文部事務官         (管理局長)  近藤 直人君  委員外出席者         文部事務官         (大臣官房総務         課長)     福田  繁君         専  門  員 石井つとむ君        専  門  員 横田重左衞門君     ————————————— 六月二十五日  私学恩給財団国庫補給金増額に関する請願(  中野四郎紹介)(第一六九二号)  学校図書館法制定に関する請願田中久雄君紹  介)(第一六九三号)  同(尾関義一紹介)(第一六九四号)  同(加賀田進紹介)(第一六九五号)  学校給食法制定に関する請願犬養健紹介)  (第一六九六号)  北村山郡下の公立学校施設整備に関する請願(  松岡俊三紹介)(第一六九七号)  学校校舎及び施設整備に関する請願坂田道  太君紹介)(第一六九八号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  文部行政に関する件     —————————————
  2. 辻寛一

    辻委員長 これより開会をいたします。  文部行政に関する件を議題といたします。質疑の通告がありますから、順次これを許します。高津正道君。
  3. 高津正道

    高津委員 昨日文部大臣から、文教政策基本方針を承つたのであります。文部大臣教育内容刷新充実義務教育充実学術振興社会教育の拡充、この四つをあげられたのでありますが、そのうちでどれを最も重視されておるか。それをまず聞きたいと思います。
  4. 大達茂雄

    大達国務大臣 昨日申し上げましたのは、むろん文教行政いずれの面におきましても重大でありますが、当面ただいま御指摘になりました四つの点に重点を置いて行きたい、かように申し上げたのであります。その四つの中で、さらにどの順位ということは別にありません。
  5. 高津正道

    高津委員 昨日予算委員会で、河野金昇君が岡野通産大臣に対して、軽工業と、重化学工業と、精密工業と、どこに重点を置くかという質問に対して、岡野通産相は、あつさりとそれは重化学工業重点を置くのだとはつきり言つておられるのでありますが、文部大臣はそれを避けられるけれども、やはり重点がなければ実際的な大きい仕事というものはできないので、四つをみんな同じように考えるのた、こういう答弁では私は満足できないのでありますが、その中でことに重点というものはあなたにはないのですか。
  6. 大達茂雄

    大達国務大臣 ただいま申し上げましたように、私はいずれも重要である、かように考えておるのでありまして、この四つのうちでどれという順番をつけておくわけではありません。決してことさらに答弁をその点隠しておるというような気持はありませんから、どうぞ御了承を願いたいと思います。
  7. 高津正道

    高津委員 重点はない、四つ並行的に並べてやるのだという意味お答えがありましたが、文部大臣におなりになつた以上は、自信があつてその職におつきになつたことはもちろんでおろうと思うのであります。あなたの見られた今までの教育あるいは教育行政、それらの中で、どの部分が一番の弱点、一番欠陥が多い部分だとながめられるか、それをまず聞きたいと思います。
  8. 大達茂雄

    大達国務大臣 御承知の通り、戦後いわゆる六・三制と申しますか、義務教育に関する新たな制度が発足して参つたのでありますが、これは発足当時の社会的混乱もありますし、また十分な準備用意の点において足りなかつた点もあろうと存じます。さようなわけで、今日せつかく制度としては発足しておるのであるが、実質はこれに伴つていない点が多々ある。これはわが国教育根本の問題でありますから、できるだけ急速にこの義務教育制度を完成して参りたい。これが一点であります。  それからまた今日わが国再建の上に科学技術振興ということが最も重大である。これまた申し上げるまでもないことであります。文部省といたしましては、文部省行政の分野におきまして、できるだけ学術振興をはかつて、これを促進して参りたい。  また今日十五才以上二十五才以下のいわゆる青少年の中で、義務教育を終えて高等学校以上の学校に入つております者が、わずかにその二割にすぎない。今日わが国再建にあたつて日本の将来を背負つて立つべきこれらの青少年に対する教育というものが、比較的放置されておる状態である。これにできるだけ教育機会を与えて、これらの若い人々の勉学の意欲に沿いたい、これが一点であります。  また今日、先ほども申しましたように、道義高揚わが国再建根本であろうと思いますので、この点も十分に教育内容刷新改善によつてこれをはかつて行きたい、こういう意味でありまして、別にその中でどれが一番大事である、どれをあとまわしにしてもよいということは考えておりません。
  9. 高津正道

    高津委員 私がどういう部分欠陥であるかあるいは弱い点であるかということを問うたのに対して、今のような四点をお答えになつたのでありますが、そうすると前は道義高揚の点で足りなかつた、それから科学技術振興に足りない部分があつたというふうにひつくり返して考えて間違いないわけですね。
  10. 大達茂雄

    大達国務大臣 足りないと言つては語弊があるかもしれませんが、大体ひつくり返せばさような意味になろうと思います。
  11. 高津正道

    高津委員 それでは大達文相は、日本の今までやつて来た教育行政あるいは教育全般について、最良の部分というか、諸外国に比べてここは割合いい、あるいは割合高い水準に近いとか、そういういいと思われる部分はどの点でしようか。
  12. 大達茂雄

    大達国務大臣 諸外国に比べてということでありましたが、わが国教育制度は、戦後あらためて教育地方分権また民主的な教育、こういう立場から出発した。これを育てて行くために、制度の期待する目的に沿うように育成して行くことが非常に大切である、かように存じております。今日わが国制度としては、大きいところで別にどこに欠陥があるとは考えておりません。一日も早くその制度の趣旨に沿うように教育実質を伴わして行きたい、かように考えております。
  13. 高津正道

    高津委員 いい部分はどこかという質問なんですが、よく行つているとあなたが思われておるのはどういう点でありますか。医者は診察をよくしないとその治療を間違うわけで、どのように診察しておられるか、その点を聞いておりますから、あなたがいいと認められている点はどこか、そういうことを聞くわけです。
  14. 大達茂雄

    大達国務大臣 ただいま申し上げておりますように、細部にわたつては改善を要する点はありましようけれども、制度としてはりつぱな制度ができているということを申し上げたのであります。
  15. 高津正道

    高津委員 大運文部大臣文教政策の四大政策の中の第一に、現在の教育内容はできるだけ全面的に刷新して行きたいという一節があるのでありますが、これは重大な問題で、教職員に大きい動揺を与えはしないか、男女共学制の問題もあれば、地方分権の問題もあれば、教育内容の問題もあるので、全面的に刷新をすると言われると、それに対して教職員用意をしなければならないし、これからどうなるであろうかと思うのでありますが、全面的に刷新するというその意気込みは非常にいいのでありますが、その内容はどういう部分が一番重大なのですか、私は言い過ぎだろうと思うが、全面的刷新内容いかん
  16. 大達茂雄

    大達国務大臣 私の記憶では、教育内容の全部について全面的な刷新をするというふうには申し上げなかつたと思います。あるいは速記録を見まして、さようなことを申し上げておつたかもしれませんが、そういう意味ではなくして、昨日申し上げましたように、道義高揚並びに国民愛国心の振起ということが今日特に重大な問題であると考えられるので、現在の小学校、中学校高等学校における教育内容をこの見地から改善すべきものは改善して参りたい。教育課程審議会答申も不日あるはずでありますから、これらに基いて検討を加えて参りたい、こういう意味を申し上げたのであります。こうしてむろん教育内容につきまして文部省としてはつきりした線が出ますれば、それに対応して教職員指導等については、実施にあたつて万全を期して参ることはもちろんであります。
  17. 高津正道

    高津委員 昨日私は文教政策基本方針をお述べになるのを聞いたのでありますが、はつきりと教育内容刷新改革、それは全面的なものだということを言われたのであります。しかし今のようなお答えを聞いたので、それでは次に進みますが、道徳教育充実徹底という言葉であります。われわれその内容が実に重大問題だと思うのです。道徳教育内容は、教育課程審議会答申をまつてというようになつておりますが、いやしくもこれをうたわれる以上は、道徳教育というものの内容がどういうものであるということを今ちやんと腹案があるはずであります。どういうような内容道徳教育であるのか、その点をまず承りたいと思います。
  18. 大達茂雄

    大達国務大臣 高度の文化的国家を実現しまた健全なる民主社会を建設して行きまする上において要求せられる道徳生活、これに対する教育を施して参りたい。私が教育課程審議会答申を経てと申しましたのは、その道徳教育をどういうふうな方法でどういうふうに教えるか、これは教育技術の問題であろうかと思います。さような点について十分答申をまつて検討したい。道徳教育を重大に考え、そうして一層今日の教育の上にその意味内容を改善して行く、これは結論が出ておる。ただそれをどういう方法でどういうふうに子供に教えて行くか、これはいわゆる教育技術の問題ですから、教育課程審議会答申をまつて具体的な案をつくりたい、かように申し上げたのであります。
  19. 高津正道

    高津委員 道徳教育をどんなふうにして徹底させようかという技術を、教育課程審議会答申をまつてやるのだと、その内容はすでにきまつておるようなお答えでありましたが、その内容を中心的は部分だけ要目的に並べてもらえばどういうことになるのですか。言いかえるならば、従来の道徳教育の要目を言えば、忠君愛国だとかあるいは親に孝行だとか、ちやんときまつておるわけです。今度のスローガンはどういうものがきまつておるのでしようか、それを承りたい。
  20. 大達茂雄

    大達国務大臣 ただいまお答え申し上げましたように、わが国文化国家として、また民主国家としてりつばな健全な将来をつくつて行く上に、そういう社会において要求せられる道徳、その社会におけるふさわしい道徳、こういう意味であります。
  21. 高津正道

    高津委員 わが国民主国家文化国家として進んで行く、その社会の要求されるであろう道徳、それでは形だけが遠くから提議されたようなもので、中味はわからないですが、私は今も申しましたように、忠君愛国とかあるいは愛国心一本だとか、そういう内容を聞いておるのですが、内容がきまつておるような話であつたから、それで続いて聞いておるのでありますから、内容そのものずばりと答えてもらいたい。
  22. 大達茂雄

    大達国務大臣 一々徳目について、これを例示すれば、たとえば忍耐であるとか寛容であるとか協力であるとか、いろいろありましよう。しかしここに一々徳目を申し上げることはできません。ただ私が考えますのに、人類社会における道義というものは、その民族の過去を離れて一日にして成るものではない、それぞれの民族民族に受継いで来た伝統的な道徳があります。そうして新しい社会にそれを即応させるために所要の道徳が要求されるのであります。これらの点を勘案いたしまして、具体的な徳目等については、ただいま申し上げました教育課程審議会等意見を参照いたしましてきめて参りたい。ただ今日学校教育内容の中に道義高揚道徳的教育、この面をもう少し強めて参りたい、こういう意味で申し上げたのでありますから、さよう御承知おきを願います。
  23. 高津正道

    高津委員 徳目的に言えば、忍耐、寛容、協力というように言われるけれども、一口に言えば——その他にもあるが、一口に言えば日本には日本の伝統的な道徳がある、それを時代に適合するように修正して行くのだ、こういう意味に承つたのでありますが、この問題は後日にあらためて質問をすることにして、四大政策のうちの第一の教育内容刷新の中に、特に道徳教育徹底したい、愛国心を養う元となる道徳教育、こういう定義が下されてあるのでありますが、愛国心、これが問題で、今日本愛国心が二つの形をとつておる。一つは、たとえば全学連とか——今は民族解放時代であるから、イランを見ても、エジプトを見ても、あるいはアジアのどの国を見ても人種的観念から言うのではないのでありますが、白人帝国主義桎梏のもとにみな非常に長い間苦しんでおつたから、その桎梏から離れようと言つてみんな立ち上つておるのであつて、真の新しい意味愛国心というものは、外国資本主義あるいは帝国主義的な政策、あるいはそのアジア政策、それから解放されようという形をとつている新しい愛国心の運動があるわけです。最近の自由党政府の伝統となつておる愛国心高揚というのはその分とちようど反対のように思うが、私のこういう認識というか分類というか、これは間違いであるかどうか、大臣意見を伺いたい。
  24. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は愛国心にいろいろ種類があるとは思わないのです。ただ国を愛する気持から日本の国をどうした方がいいか、こういう政治的ないし社会的の意見はおのおのの愛国心から出て来るでありましよう。しかしながら愛国心そのものが二色も三色あろうとは思いません。
  25. 高津正道

    高津委員 明治維新の際に尊王攘夷という形をとつ愛国心があつたわけです。愛国心がそういうように発露したわけです。われわれはそれを正しいと認める。それで今の愛国心の正しい姿というものは、アメリカ属国にならないように、ソ連衛星国になるのは絶対反対だ、何とかして日本の独立をかち得よう、そういう愛国心の発露が一番正しいものだと私は思うのです。それでこういう行き方に対して、文部省ラジオにまで乗り出し、それからまた社会科内容も考え、地理なども今度新たに教えて行くというやり方は……(「地理を教えないでどうする」と呼ぶ者あり)地理の説明によつて古くも使えるし、新しくも使えるし……。     〔「日本の国は日本人が知らなきやならないじやないか」と呼ぶ者あり」〕
  26. 辻寛一

    辻委員長 御静粛に願います。
  27. 高津正道

    高津委員 愛国心政府が国の予算をもつて宣伝される前に、その愛国心内容見当違いであつたならば、たいへんなことになると私は考えておるのであります。ソ連衛星国にならないように、アメリカ属国にならないように、これが一番正しい愛国心だと私は思うのですが、自由党お話を聞いておれば、そういう行き方ではないのだから、政党内閣のあなたがこれからおやりになるところの、ラジオ使つて手数百万円の金を使つて宣伝される愛国心というものは、もう少し私は聞いておく必要があると思うのでありますが、これも保留しましよう。さらに調べて質問をいたします。  それから選挙違反の記事がきのうの夕刊からきようの朝刊にいよいよ激しさを増しているのでありますが、この内閣にはこの選挙違反関係の閣僚が一人ならず、二人ならず、三八ならず並んでおられるが、こういうことはまじめに青少年教育している教育者立場から見て、非常に悪影響があると教育者はみな憂えているのであります。文部大臣は、関連事項として、青少年教育を守るという意味から、それらの問題に対して特に発言を求めて、これは道徳教育をこの内閣がやつても、これではどうしても大酒を飲みながら禁酒論をやるように見えて、この内閣では道徳教育充実徹底ということはできにくい立場にある、これは考えてもらわねば困る、とこう言つて総理大臣に警告を発してもらつてはどうか。あなたからその音頭をとる意思ありやいなや、これをひとつ
  28. 大達茂雄

    大達国務大臣 なるほど選挙違反に限らず、犯罪の確定した人がかり内閣にいるということであれば、これは教育上支障がある、害があるということは言えると思います。しかしながら、その人の選挙に関連して嫌疑がかかつている、ないしは取調べをしているというだけで、これは犯罪であるというようにきめてしまうことはできないと思います。
  29. 高津正道

    高津委員 私は文部大臣が、ああいう事件教育悪影響があるということをお認めになつた点には敬意を表するのでありますけれども、裁判の結果が有罪であると出ないのだから、出ない限りは大臣になつてつてもよいというような、そういう弁護士のような議論を聞いたのでありますけれども、文部省文部大臣という立場から言えば、すでに影響があるのですから、文教を守る立場から一言えば、やはり総理大臣に対して、この点はこうだと思うということを大きく発言すべきものじやないかと思うが、する必要はやはりないのだ、吉田さんにそういうことは言わぬ方がいいのだ、こういうお考えですか。私なら言いますね。
  30. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は、現状が教育の上に弊害を及ぼしておるということを申し上げたのではありませんから、その辺は間違いないようにしていただきたいと思います。お互い国民の一人として、罪を断ずるところはきまつておるのです。これが罪があるかないかということは、その国の根本の重要な制度として、裁判というものがある。それを待たずして、だれが悪い者であるとか、だれが罪人であるとかいうようなことを言いふらされること自体がよろしくない、ように考えております。
  31. 高津正道

    高津委員 持時間がちようど来ましたから……。
  32. 辻寛一

  33. 天野公義

    天野委員 文教政策一般のことにつきましてはあとでお伺いすることとして、この際ちよつと差追つた問題で、この夏にドルトムンドで行われる国際大学スポーツ連盟夏季大会に、日本参加をすることになつているのでございますが、大体現在のところ三十八、九名参加しようというので、いろいろと準備をやつている段階にあるわけであります。ところが大体その費用として二千万円くらいかかると計算されておりますが、今までにオリンピックであるとか、あるいは極東大会であるとか、デ杯に参加の場合に、こういう場合は大体半額を国で補助いたしておるのでございますが、今度の大会は新しいケースでございます。このドルトムンドで行われる大会は、民主主義国家学生代表が集まつて、ただ単に競技をするというだけでなくて、競技もするけれども、またキャンプに入つて各国学生お互い交歓をなすということが考えられておるのでございまして、学生スポーツ界を向上させる上から行きましても、また各国青年スポーツを通じて集まつて、そして国民外交というかこういう方面を行う上から行きましても、非常に好適な機会であると考えておるのでございます。問題はこの国家補助が一体どれくらい出るかというのがきまつておりませんので、各参加団体では非常に苦慮しておるような状況でございますが、文部当局としては、この問題につきましてはこういう折衝をして、国として大体どの程度補助を出すことがでさるか、この点についてお伺いしたいと思います。
  34. 大達茂雄

    大達国務大臣 オリンピックそれから極東大会、デヴイス・カップにつきましては、従来国庫で補助するやり方小大体きまつております。その他そのときどきに起つて来る同種の競技大会守につきましては、そのときどきその用要優等を考えまして考慮する、大体こういうことになつております。それでただいまお述べになりましたドルトムンド競技大会につきましては、文部日としてはこれに参加することはまことにけつこうなことだと考えておりますし、関係方面とせつかく折衝いたしまして、補助金が出ますようにいたしたいということで努力いたしております。ただ金額等については、ただいまさようなわけでありまして、申し上げられないわけであります。
  35. 天野公義

    天野委員 金額についてはつきりいたしておらないのでございますが、いろいろ聞くところによりますと、ある一は三百万円、出ても五百万円というような数字をちらちらと聞いておるのでございますが、そうするとせいぜい行つて四分の一というような程度でございます。これでございますと、学生諸君が向うへ行つて十分交歓を尽すという所期目的を達成することも非常に困難と思われるのでございまして、どうか文部当局におかれましては、できるだけ所期目的を達成し得るような金額を出されるように、なお一層の御努力をお願いしたいと思うのであります。  それから今度は文教の問題についてお伺いいたしますが、先ほど文武大臣がいろいろと御答弁なさつた中で、教育内容の点についていろいろお話がございましたけれども、この教育内容の点を今後いろいろと研究して行くことも大切でございますが、文部当局教育内容をいろいろやるにいたしましても、問題は人間でございます。そこで最近行われたような学校先生常識を逸脱するような行動をとつて文部大臣の部屋にとまり込みをしたり、占拠をしたり、また省内にすわり込みをする、こういうようなことがはたして一般常識で許されるとはとうてい考えられないのでございます。こういうよりな行動をする教員は、教員全体から見れば〇・一%かもつと少いのではないかと思いますが、こういうようなことを教員代表が行うということは、これまた教育される者に及ぼす影響は、きわめて重大だと思うのでございます。こういうような行動をとる教員とどういうふうに処置したいと文部大出は考えるか。教員教育というような面も非常に重大だと思いますが、こういう点につきまして大臣の御見解を伺いたいと思います。
  36. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは昨日もお尋ねがありまして、お答えしたのでありますが、ただいま文部省に押しかけております日本教職員組合諸君は、引続いて昨日申し上げたと同じ状態でおります。私は昨日も申し上げましたように、あえて面会を拒んでおるわけでありませんが、しかし一昨日、昨日と二回にわたりまして、私の方で一定の面会場所をきめまして、会おうと言つておるにもかかわらず、これらの諸君はこれを拒絶をして、そうして自分たちの指定する条件のもとに面会を求めておられるのであります。私は、今日はもはやかくのごとき情勢下において面会をする必要はない、もしくは再会をすることはよろしくないと考えておりますので、面会しないことにしております。しかしただいまお話になりましたように、いやしくも教壇に立つて次の世代をになう少年、青年を教える先生方が、かような行動をとるということははなはだ遺憾千万であると考えております。私は一面において教職員組合の一部の諸君に対して強く反省を求めたいと思います。と同時に、今日の法制のもとにおきまして、文部大臣がこれらの不穏当な教職員に対して一刀両断的な処置はなかなかできません。しかしながらただ今後かようなことのないように、できるだけ努力して参りたいと思います。     〔「関連質問関連質問」と呼ぶ者あり〕
  37. 辻寛一

    辻委員長 順次お許しいたしますから、発言をお許しいたしましたときにお願いいたします。次に松平忠久君。     〔「こういう議事進行は先例になるから」と呼ぶものあり〕
  38. 辻寛一

    辻委員長 発言を許しました。松平忠久君。
  39. 松平忠久

    松平委員 昨日の大臣の四大方針について若干御質疑申し上げたいと思います。この四大方針の中を見ますと、教育根本方針ともいうべき、大前提と申しますか、民主主義について一言も触れておらないのであります。どういうわけで民主主義根本方針をこの教育の方針の小に盛られなかつたか。愛国心を涵養する道徳教育というようなことを強調されて、あたかも民主主義の方針を阻害しておるように見えるわけであります。そういうお考えであるとかりにするならば、日本の将来の教育方針というものは一体どういうふうになるのか、非常に寒心すべきものがあるのであります。またそういうお考えであればこそ、昨日のようなああいう不祥事が起るのではないかというふうに思うのであります。朝日新聞の天声人語を見ましても、大臣がもつと気軽に会見すべきではなかつたか、こういうことを言つております。面会を極力回避するために、この問題を生じたのではないかというふうに思つております。これは大臣民主主義の精神がなかつたことを意味している、しかもこの方針の中にも、民主主義に一言も触れておられない、その理由をお聞きしたいと存じます。
  40. 大達茂雄

    大達国務大臣 私が道徳教育、あるいは道義高揚ということを申しましたことは、先ほどもお答えを申し上げたように、民主的社会において必要とせられる、それにふさわしい道徳高揚して参りたい、こういう意味であります。民主主義に反する思想を鼓吹するという意味は毛頭ありませんから、この点は誤解のないようにしていただきたい。また六・三制義務教育制度充実、これももちろん民主主義立場からできた制度でありまして、これを充実することは、すなわち教育の面における民主主義の確立に資するものであろうと思います。その他教育機会均等、勤労青少年に対する教育の拡充、これらはことごとく民主主義の思想から出発しておるのであります。民主主義を鼓吹するとか、民主主義を打立てて行くんだということを、あらためて申しませんでも、その点は御了承いただけることと存ずるのであります。のみならずただいままた、先日来の日教組の諸君との関係でありますが、私は多数を頼んで、そうして役所へ来て、とまり込んで大臣室を占拠し、また事務室を占拠し、衆を頼んだ威圧のもとに面会を強要するがごときは、これは民主主義社会において、最も排斥せらるべきことであると思つております。
  41. 松平忠久

    松平委員 民主主義の前提として、民主主義根本方針として、この項目をお示しになつたということでありまして、昨日のすわり込みに関連してお答えになつたのでありまして、民主主義と相反する行動をもつて大臣面会を求めたというお答えであります。しかし昨日大臣も申されましたが、大勢の者と会うというような場合におきましても、一つの常識というものがありまして、部屋へ入れないだけの大人数で面会を求めるということはないと思います。おそらくその部屋に入るだけの人数であるわけでありまして、そこにも私は常識があると思うのであります。そういう意味におきまして、一体どの程度の人数ならばいけないか、どの程度の人数ならば会うか、今後のこともありますので、一体どの程度ならば大臣はがまんしてやる、しかし何人くらいは会わないというのか、その点をお示し願いたいと思います
  42. 大達茂雄

    大達国務大臣 どの程度のへ数ならば会うかというお尋ねでありますが、およそ面会というものは、そのときの情勢によつて、何人ならばというような、そういう一定の標準はないものと思います。そのときそのときの情勢によりまして、また会談の内容から見まして、またそのときの場合によりまして人数をきめるのでありまして、何人ならばいい、何人以上はどうということは申し上げられないことであります。
  43. 松平忠久

    松平委員 これに関連してもう一つお聞きしたいのは、これも新聞報道でありますが、警察署長の措置は非常に民主的であつたということが書いてあります。この程度のことであつたならば、私は文部省の人が警察に頼まずにやつた方がむしろよかつたのではないか。その方が民主的であつたと思うが、どうして一体文部省の人はその程度のことができなかつたのか。
  44. 大達茂雄

    大達国務大臣 文部省では実力を行使するわけには参りません。実力を行使するには警察に頼むよりほかないのであります。御了承願います。
  45. 松平忠久

    松平委員 実力を行使できないと申しますならば、しからばきのうのあれは、警察官は実力を行使したわけでございますか。
  46. 大達茂雄

    大達国務大臣 数時間にわたりましで幾ら話をしても、口で言つても聞かないのでありますから、そこで実力を行使せざるを得ない、そこで警察を頼んで来て、警察が来れば、これは実力行使の組織であり機関でありますから、大多数の人は警察が来たから大臣室から出た、但しその中にはがんばつてつたものが五人おつた、これは警察官がかかえて外へ出しました。
  47. 松平忠久

    松平委員 そのことに関しては、別の機会に伺おうと思いますから、これ以上伺いません。  次にお尋ねしたい点は、民主主義を前提としておる教育だということでありますが、子供を教育する上において、正義の観念ということを教え込む必要がある、それが根本であると思いますけれども、それについて大臣は、平和的な人間を育てたいというお考えであるか、あるいは相当闘争心を持つような強い性格の子供を育てたいというのか、これは根本問題だと思いますので、お伺いしたいと思います。
  48. 大達茂雄

    大達国務大臣 平和的な子供を育てるということについては同感でありますが、ただしいくじのない子供を育てるということには私は不賛成であります。
  49. 松平忠久

    松平委員 そこで平和的な子供にしたい、いくじのない子供にはしたくないという点でありますが、このことに関連して、大臣の言われるところの愛国心というものは、どういう方法でこれを涵養されて行きたいということであるか、ちよつとお聞きしたいと思います。
  50. 大達茂雄

    大達国務大臣 愛国心が振起せられますためには、まず自分の属する民族、それから自分の国というものはどういうものであるかということを知ることが根本であります。私が昨日歴史教育地理教育について言及いたしましたのは、その意味であります。
  51. 松平忠久

    松平委員 愛国心日本人になくなつてしまつたという現象について、一体この原因はどういうところにあつた大臣はお考えになつておられますか。
  52. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は日本人から愛国心がなくなつたとは思つておりません。ただ今日、非常な難局にあたりまして、国民愛国心がいやが上にも高揚さるべきことは非常に大切なことである、こう思つておるのであります。
  53. 松平忠久

    松平委員 愛国心は、われわれの普通の常識から言うと、占領中から虚脱状態に置かれておる。あたかも愛国心がなくなつたごとくになつておる。これが一般の常識であります。愛国心の観念というものは相対的な観念であつて、たとえば占領中において、いろいろな外国からの圧迫等について忍耐して黙つておるというようなところから、自然虚脱の状態に陥つておるのではないかというふうに思われるわけです。従つて、独立後においては、外用等の不法な行為等については、正々堂々と自己を主張して行かなければならぬというふうに思うのでありますが、そういう点について多々遺憾な点があつたように思うのであります。一体現在日本の各地で行われておるいろいろな駐留軍との摩擦に対して、日本人として、正義は正義として堂々と言つて行くというような心がけを、教育の面においても涵養して行くというお考えでありますかどうか、それを伺いたいと思います。
  54. 大達茂雄

    大達国務大臣 私が愛国心と申しまするのは、国を愛するという気持、こういう意味とお考え願いたいのでありまして、同じ国を愛する人でも、その人々の意見によりまして、その愛国心発露というものは、それぞれ違つた形をとる場合が非常に多いと思うのであります。私はどの形をとるものでなければ愛国心ではない、こうは考えておらぬのであります。
  55. 松平忠久

    松平委員 私が御質問申し上げましたのは、そのうちの一つの発露であろうと思うのでありますが、われわれが社会正義の上に立つた場合において、不当な圧迫をこうむり、もしくは不当な取扱いを受けることに対して、これに反発をして行くということも一つの愛国心の現われであろうと思いますが、そういうことについて、正義を主張するというような教育をおやりになるお考えがあるかどうかということであります。
  56. 大達茂雄

    大達国務大臣 愛国心を振い起すような教育をいたしたい、こういうのでありまして、その愛国心の出方が、物事に対して反発するような形のものにしたいとか、あるいはそれを忍耐するようなかつこうのものにしたいとか、さようなことは考えておりません。
  57. 松平忠久

    松平委員 ちよつと私の質問に対する回答とはずれているように思うのであります。私は愛国心の涵養の一つの方法として、正義感を持つことが愛国心の一つの根本方針であろうと思うのであります。正しいことは正しいといつて教え、不正なことは不正といつて教える、しかもその正義というものはインターナシヨナルであつて日本だけの正義ではない、国際的な正義ということを教えることが大事なのであります。そういう場合において、このことは正しいのだとアメリカ人をも納得させるような正しさがあるならば、堂々と主張していい、私はこういうふうに思うのであります。そういう正義を正々堂々と教え込むという場合に、日本の国際間におけるいろいろなことと衝突するおそれがおありになるかどうか、これをお聞きしたいのであります。言いかえれば、われわれが正義を主張するために、外国との間に摩擦を生ずるというようなことがあり得るかどうか。またそういう場合には、子供に対してどういうことを教えて行つたらいいかということで、先生がお困りになるのじやないかと思います。その点についてお伺いしたいと思います。
  58. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は頭が悪いものですから、お尋ねの意味がよくわからない点がありますが、しかし私は正義を愛好する精神を教え込むということは、これはいわゆる道徳教育根本であろうと思います。しかるに正義とは役かくのごときものでなければならぬ、ことに国際間の問題あるいは政治問題につきまして、正義とはかくのごときものである、これ以外は正義ではない、かようなことを断定して、それに局限して教育が行われることは、まことに困ると思うのであります。
  59. 松平忠久

    松平委員 愛国心を養うもととなる道徳涵養ということを、その方針にしておられるわけでありまして、先ほどもこの道徳の件については質疑応答があつたのでありますが、これに対し補足的に質疑をしたいと思うのであります。道徳は伝統的なものを現在の社会に合せるようにして行くのだという大臣お話があつたわけでありますが、道徳の中には、精神的面と実質的面と形式的な面とがあると思うのであります。この場合において、今日日本道徳が非常に衰えて来たというか、道徳心がなくなつて来たというふうに言われておる、この根本的な原因はどういうところにあるのか、それでは道徳の涵養をどうしたらよいかということがあらためて考えられるわけでありますが、大臣のお考えとしては、道徳日本で現に悪くなつて来たというのは、一体どこに大きな原因があると思うか、それをお尋ねしたいのであります。
  60. 大達茂雄

    大達国務大臣 今日道徳が頽廃をして、わが国から道徳というものが地を払つておるということを申し上げておるのではないのでありまして、今日わが国の現状から見て、国民道義がこの上にも高揚されることはきわめて重要であるから、教育内容を改めても、この点を強く盛つて行きたい、こういう意味であります。
  61. 松平忠久

    松平委員 そうすると、現在道義は昔よりもすたれておらないというお考えなんですか。つまり終戦後道義は頽廃しておらない、こういうお考えの上に立つてのことでございますか。
  62. 大達茂雄

    大達国務大臣 これは一概には言えないことでありまして、それぞれの徳目において、希望しないような方向に向つておるものもあるかもしれません。しかしまた、たとえば民主的な考え方が進んでおる点もあろうかと思います。一概に道義が頽廃しておるとか、高揚しておるとかいうようなことは申し上げられません。
  63. 松平忠久

    松平委員 ちよつとわかりませんが、そうすると大臣のお考えでは、昔と比べて道義が頽廃しておるという一般の考え方もあるわけでありますが、大してかわりはない、つまり頽廃もしていないし、進歩もしていない、こういうお考えでございますか。
  64. 大達茂雄

    大達国務大臣 お答えをいたしますが、どうも私の申し上げ方が悪いのか、ちよつと不徹底のようでありますが、私は、いつの時代でも、国民道徳的生活が最高水準に達して、これで申分のないということはなかなかないと思うのであります。従つて常に相戒めて道義高揚し、また道徳教育も常に振興して行かなければならぬ、こう思うのでありまして、先ほど申し上げましたように、道義が昔と比べて頽廃したか、高揚しておるか、かようなことはどうも一概に申し上げられません。
  65. 辻寛一

    辻委員長 松平君、その程度でいかがでございましよう。——次に世耕弘一君。
  66. 世耕弘一

    世耕委員 私は簡単に数点文部大臣にお尋ねいたしたいと思います。  まず第一にお尋ねいたしたいのは、今も問題になつておりましたが、すわり込み戦術をとつたことは現在道徳的に考えたらいいことか、悪いことか、それをお聞きいたしたいと思います。
  67. 大達茂雄

    大達国務大臣 はなはだ好ましくないことだと考えております。
  68. 世耕弘一

    世耕委員 大臣面会を強要するような教員が、かりに日本にたくさんありとするならば、さような者をして教育に当らしめるということは、日本教育の発達を阻害するものだ、と私はかように考えるものであります。その点については文部大臣はどういうお考えを持つておられるか。  もう一点さらに一つ突込んでお伺いいたしたいことは、大多数の教員は善良な教員である、非常にりつぱな教員である。ところが不良教員のために、かえつて善良な教員がまじめな教育ができないというのが今日の現状である。不良教員の例は、出せと言われればいくらでも出します。そういう不良教員をこの際処理する御決意があるかどうか、この点。  それからすわり込み戦術をやつて、出てくれと言つても出なかつたというようなその教員が、結局警察力によつて退去したというのであるが、どういう連中が警察力を利用された結果退出したのか、その職名あるいはその勤めておる学校の名前を、ここへ発表できれば発表していただきたい。それからもう一つは、その連中のふだんの勤務ぶりがとういうふうな状態であるか、さらにもう一つは、警察はさような処置をとつた今後の手続をどうするか。先ほど文部大臣は、はなはだ遺憾だと言われたが、私は遺憾では済まぬと思う。文教というのは厳粛でなくちやならぬと私は思う。だからこの意味において、相当厳粛な気持でこの問題を解決するように御努力が願いたい。  私は学校はすなわち家庭の延長だという建前をとつております。同時に教員は父兄の代理だと私は考える。こういう見地から見ると、一国の文部大臣に対してすわり込み戦術をするということは、紳士のやることではないと、従来の道徳観念からさように考えるのでありますが、この点についてはつきしりした見解をいただければ、次の質問をさせていただきたいと思います。
  69. 大達茂雄

    大達国務大臣 お言葉の通り、今度の日教組の諸君のとられた態度は、はなはだ私はおもしろくないと思つております。それらの諸君についてどういう処置をとるがというお尋ねと思いますが、これはなかなか簡単に行かぬ点もあろうかと思いますが、十分善処したいと考えております。
  70. 世耕弘一

    世耕委員 簡単に行かないならば、行く方法を考えていただきたい。この問題はおそらく閣議でも話題になつたろうと思います。もし閣議で話題にならなかつたとすれば、吉田内閣は何をしておるのかと私は叫びたい。どうなんですか、閣議でこういうことは報告されて話題になりませんでしたか。もしそれが話題にならなかつたとすれば、あらためて私は総理に質問したいと思うのです。総理は教育刷新については非常な熱意を持つているやに聞いておりますが、その点はいかがでございますか。
  71. 大達茂雄

    大達国務大臣 お察しの通り閣議の席上で話が出ました。むろん各閣僚ともはなはだおもしろくない、困つたことをする、こういう考え方であります。それでその教員の処置につきましては、ただいまお話のありましたように、よく研究いたしまして、何とか処置を講じ得るようにしたいと思います。
  72. 世耕弘一

    世耕委員 これは非常に重大な問題で、研究していただくことはけつこうだと思いますが、私は研究の前に文部大臣の御決意を承つておきたい。文部大臣が決意がなかつたら、研究しても何にもならぬ。その点はどうです。これはいいものであるか悪いものか、これはただ遺憾であるという程度でごまかして行けるものであるかどうか、これは大きな問題である。しかもこれは今度初めてできた事件ではない。おそらくこういうことは今後数回、他の省においても繰返さるるであろうことを考える。また他の官庁ですわり込み戦術があつてもそう世間ではふしぎに思わない。しかし文教の府、しかもある意味において道徳の中枢を握つているような教育者がここまで行つたということになれば、およそ日本の思想界がどの程度行つているかということから、国際間の信用も阻害されるものだと私は思う。こういう点から見まして、教育者のあり方ということも少し考えなくてはならないと思う。この意味において、大臣はどういうお考えを持つておるか。またさような、大臣の室に面会を強要したということは、扱いようによつては公務執行妨害あるいはまた家宅侵入にもなる。だから警察なり検察当局がこれに対していかなる態度をとるか、こういうこともあわせて考えらるべきものじやないかと私は思う。その点がはつきりしなかつたなら、これは文教なんということはやめた方がいい。まかしてはおけない。この点はいかがですか。
  73. 大達茂雄

    大達国務大臣 一々お話はごもつともに存じます。ただ個々の教員につきまして、文部大臣がこれをやめさせるとかというようなことは、今日法制上文部大臣の権限にないことであります。先ほど私が研究をすると申し上げましたのは、処置をとつて参りたい、どうすれば処置ができるかということを研究して参りたい。それから個々の教員についてもでありますが、たまたま今度そういうことをした教職員諸君以外にも、全体としてそういう風潮がなくなるように努力して行きたいと考える次第であります。
  74. 世耕弘一

    世耕委員 世間ではまた逆な宣伝もある。それは何かというと、あるいは文部大臣教員組合の連中がなれ合いであんなことをしておるというふうにもとつておる。おそらくそういうことはないだろうと思いますが、こういう点も考慮していただきたいということをお願いする。  もう一つは、日教組問題にからんで、選挙中でございましたか、日教組は中共から大分金をもらつているというので、大阪で大分問題になつて、前の文部大臣と大分渡り合つて告訴ざたまで起つたように聞いておるのですが、その事件はお引継ぎになりましたか、それともあれはただ前大臣だけの事件として済んだのですか。
  75. 大達茂雄

    大達国務大臣 中共から金が来たというようなことは、私は話は聞きました。うわさとしては聞きましたが、真偽のことは私にはわかりません。これはほんとうのところ私も日教組の方に聞きたいぐらいのものであります。
  76. 世耕弘一

    世耕委員 中共から金が幾ら来るか、私は詮議する必要はないので、少くとも教員組合が外国に資金を援助してもらつてわれわれの教育を支配するというに至つては、重大な問題だと私は思う。最近中共から引揚げて来た子供に質問して、世界中で一番偉いのはだれかというと、この間なくなつたスターリンという。その次はと言つたら毛沢東、その次はと言つたら徳田球一、こういうことを言つておる。そういう国から資金をもらつた日本教育がどうなる、私はそこを憂えている。だからこれは人事じやない。かりにそういう事実が前大臣の在任中にあつたとするならば、文部省徹底的に御調査願つて、さような事実があつたかなかつたかということを明確にすることも、きわめて世間を明朗にすることだと私は思う。  それから、時間がありませんから簡単に伺いたいと思いますが、審議会の問題がちよちよい御説明の中にあつたのです。その審議会の委員の多くは学識経験者ということになつておるようであります。この学識経験者と名称をうたわれる人の中に薹が立つたような人が多い。往々にして実際教育を知らぬ人が審議会の委員になられて、どうも生きた教育を害するというような非難が世間に多いのであります。この点について何か改革する御意思があるかどうかということと、もう一点は、最近予算の中にも出ておりましたが、文化勲章並びに文化功労年金の問題が出ておりますが、この文化功労年金等に対する委員会の功労者の選定方法についても世間でとかくのうわさが出ておるのであります。文化功労者というのは、必ずしも歌うたいや絵描きや浄瑠璃ばかりに与えられるべきものじやない。あらゆる面で文化というものが吟味されるべきものと思うが、大臣はこの点どういうふうにお考えになつておるか。
  77. 大達茂雄

    大達国務大臣 審議会の構成につきまして、人選の上に必ずしも適当でない者があるじやないかというお話でありましたが、この点は私もよく検討いたしまして適当な方法をとりたい、かように考えております。  それから文化勲章のことでありますが、これは従来大体において学問、それから芸術、そういう方面の人々に贈られて来たようであります。お話はごもつともと伺うのでありまして、この点も今後研究いたして参りたいと思います。これは御承知のように文部省として選任するのではありません。何人かの選考委員にお願いして、その選考委員の手で選考される、こういうことになつておりますが、お話の点は私はごもつともであると思います。
  78. 世耕弘一

    世耕委員 もう二点だけお尋ねいたします。道徳教育の問題についてさつき論議されておりましたが、これは議論が長くなりますからあとにいたしますが、結局学校における道徳教育というものは、まず不良教員をやめさせることから出発して行け、このことを私は主張したい。  それからもう一つは、近ごろ小学校で君が代を歌わせないところがある、これはおかしい話であります。日本代表して選手が外国行つて、そして優勝いた場合、選手をたたえる意味において日本の国旗を掲げて外国人は君が代を歌う。ところが日本では歌わせぬ小学校がある。これがいいか悪いか別として、愛国心の面から見て——愛国心といつてもいろいろ解釈があるという御議論があつたようだが、私は君が代を歌うことがむしろ日本人らしい愛国心の発露じやないかと思う。なおまた君という言葉について論議すれば議論はありますけれども、君という言葉は相当古い歴史を持つておる。それぞれの変化が来ております。必ずしも君すなわちすぐ天皇というふうに簡単に封建的な解釈をする必要は少しもないと思う。この点についてはどういうお考えを持つておるか。  それからもう一つは、教育勅語の問題です。勅語という言葉はどうかと思うけれども、教育訓話くらいは文部大臣出していいだろうと思う。「朕惟フニ」の「朕」はいらないかしらぬが、「惟フニ」という言葉で表わしたらいい。私は教育勅語の内容を検討して、現在の民主政治に反するようなことは一点もないと思う。ただ用語上に適当じやないところがあれば、それだけ訂正すればいい。こういう点についてももつと大胆率直に大臣の御批判なり御所見が伺えればわれわれ非常に心強いと思いますが、いかがでありますか。
  79. 大達茂雄

    大達国務大臣 不良教員をなくするということが、まず道徳教育の基礎だということは、私も同感であります。不良な教員を残らずなくするように努力をしたいと思います。  それから君が代の問題でありますが、私は君が代を無理に歌わせることがいいか悪いかは別論といたしまして、少くとも君が代を歌うことをとめるということは、はなはだよくない、かように考えております。私個人の考えといたしましては、それぞれの学校において、教員なり子供の自発的な気持から君が代の齊唱せられることは、最も望ましいことであると存じております。  それから教育勅語の問題でありますが、仰せの通り、教育勅語は、わが国民族伝統の道徳を勅語の形式をもつて仰せられた。また勅語のうちにもこのことがうたつてあるのであります。私が先ほども申しましたように、民族道義国民道徳というものは、そう無から有が生れるように一旦一夕にしてでき上るものではないと思う。どうしても民族の伝統の道義、伝統の道徳というものが基礎になつて、それが新しい時代に適応されるようになつて行くところに、新しい道徳がある、こう考えておるのであります。従つて教育勅語に内容をなしております徳目の中につきましては、これはわが民族として最も大切にその徳目を保存して、これを履行して行かなきやならぬものだと思つております。ただ道徳訓話とか、そういう形式のものを出しますか出しませんか、これはただいまお答えを申し上げかねます。
  80. 世耕弘一

    世耕委員 意地の悪い質問のようですけれども、それじやあなたは何のために大臣におなりになりましたか、何の抱負があつて文部大臣をお引受けになつたのですか、これを聞きたいのです。何か抱負がなくちやならぬと思う。ただ頼まれたからなつたのですか。私がお聞きしたいところは、調査していただくことはけつこう、あるいは将来これを具体化することについてお尋ねしようとは思わぬが、ただ大臣なつた以上、これこれのことは大いに理想として実現したい、また現在の教育は、これでは不満だ、こうあるべきだ、これくらいは御発表願わぬと、大臣の貫禄にもいかがか、かように考えるのですがいかがですか。
  81. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は文部大臣として、当面重点を置いて参りたいという点は、昨日申し上げたことと存じます。それによつて承知をいただきたいのであります。ただ、たとえば不良教員をなくする、あるいは現に数日来の不穏当な行動とつ教職員の処置をどうするかといつた問題は、私はあなたのおつしやるようにして行きたい。けれども今日の法律の上では、遺憾ながら文部大臣にはその権限がないのでありますから、これは議会の方でも、協力と申しますか、その気になつて法律の改正とかいろいろな問題もありましよう。また改正せずとも、何らかのくふう、努力によつてこれが実現することもできるかもしれません。その意味において私は努力し研究をしたい、こう申し上げておるのであります。
  82. 世耕弘一

    世耕委員 やめるつもりであつたけれども、それではもう一ぺんお聞きしなければならぬ。あなたは法律に頼らなければ結局文教政策はできないということになると私は思う。ここはあなたの政治力なんだ。法律ばかりに頼るから官僚的になる。いわゆる政治力を持つて行けば、りつぱに私は運営できると思う。たとえば今の君が代の問題でもそうです。君が代を歌つた方がいい。ところがある校長をつかまえて、君なぜ君が代を生徒に歌わせないのかと聞くと、いやそれは日教組にしかられるから——そこまで言つているのです。私はうそを申し上げているのじやない。文部大臣にしかられるからと言うなら、うんそうかということになるけれども、日教組にしかられるからと、こう言つている。文部大臣から何か通達があつたかと聞くと、何もないという。結局文部大臣より日教組の方が勢力が強いということになる。ここに教育のいわゆる迷い道が出て来るのであります。愛国心はかくあるべし、私はかようなことを文部大臣から言うてもらいたい。間違つていたつていいじやないか。世の中のことで、だれが間違わないということを断定できますか。間違つていてもいいです。自分がかくあるべしという信念に基いてやつていただくところに、初めてわれわれの行くべき道がある。どつちかわけがわからぬ。調査中だなんと言つたつて、こんなことをしていたのでは間に合わぬ。私はそこの信念を大臣からお聞きしたい。愛国心つてそうです。今ほかの委員の方からも愛国心の問題をお話になりましたけれども、自分の国に生れた以上は自分の国を愛するのはあたりまえのことだ。また自分を生んでもらい、育ててもらつた親に対して孝行を尽すのはあたりまえのことだ。千年たつても私は同じ議論があるだろうと思う。近ごろのはやり歌でも同じだ。だれか故郷を愛せざる、こう言つている。そのりくつがわからぬような連中には、大いに文部大臣の良心をもつて徹底していただくということが必要です。それには大胆に、率直に信念のあるままにやつていただきたい。しからばわれわれは微力ながら御支援をいとうものではない、かように考えております。この点についてもし御意見があれば承つておきますが、私はこれで失礼いたしておきます。
  83. 辻寛一

    辻委員長 委員諸君ちよつと御了解願いたいと思いますが、お昼が過ぎましたがもう少し御勉強願つて、もう二十分ほど質問を続行したいと思いますから、よろしくお願いいたします。辻原君。
  84. 辻原弘市

    ○辻原委員 非常に時間が過ぎておりますが、せつかくの機会でありますから、若干昨日の教育方針の問題について大臣にただしておきたい点がありますので、質問いたしたいと思います。ただいまも世耕委員からいろいろな御意見が出ましたが、私は一昨日来のすわり込みの問題につきましては、確かにいろいろな見解があると思います。しかしながら問題は、私も昨日からじつと聞いておつたわけでありますが、起つた結果に立つて、その結果論について物事を判断せられる点が非常に多いと思う。確かに物事を判断される場合に、結果に立つて物事を考えるということは一応の順序でありましよう。しかしながら結果だけを見てその問題の処理、その問題の対策を考えられたときに、応々にしてそれが全般的な本質的な対策でなかつたということは、過去において幾多の事例もあると思います。われわれの記憶によつてみましても、大きな問題から言いましたならば、かつての米騒動あるいは古く言い伝えられております百姓一揆にしましても、すべて問題が起つて、それに対して圧迫し、鎮圧するという対策がはたして全般的な対策であつたかどうかということについては、歴史の教えるところだと思います。私は、非常識たという御意見、きのうからたびたび聞きました。一般的常識をもつて言いましたならば、確かに非常識であるかもしれません。しかしながら何がゆえにこのような非常識をやらなければならぬかということについての論争は、残念ながらこの委員会においてはなかつたということも、私は皆さんに御記憶願いたいと思います。  私は二つの問題があると思います。一つは、先ほども他の委員の方から御意見があり、今世耕委員からも意見が出されましたように、大臣が大胆率直に物事を考えられるという行動力をお持ちになるならば、潮目新聞の天声人語にあるごとく、気軽に立つてつてやる——多数押しかけて来たから、多数暴力だとおつしやいます。もちろん二人以上を多数とすれば、十人も二十人も多数かもわかりません。しかしながら一国の大臣ともあろうものが、わずか五十人や百人で多数と言われるならば、あまりにも腹が小さいと申し上げざるを得ない。従つてこういう問題について、まず結果論を説かれる前一に、いま少し気軽に立つて、よし、わしが話をする、話せばわかるというこの気持をなぜお持ちにならなかつたかということについて、大臣のお考えを承りたいことが一点。  第二の問題は、この種の問題は、やはり教育問題であります。行動面についてはいろいろ御意見がありましようけれども、昨日もお話がありましたように、これは大臣としては、その政治生命にもかかわるような当面の重要な問題である。対岸の火の問題ではないのであります。なぜこの問題について、かくかく積極的に解決に努力しておるということを天下に表明されないか。私はかかる大臣の見解を残念ながら一回も承つたこともないのであります。もちろん内閣の方針だとおつしやればそれまででありますけれども、これは政治問題化しておる大きな問題でありまして、新任早々とはいえ、大臣のとられた行動について鮮明にされ、あるいはそれを伝える機会を積極的に設ける、こういうお心組みがありましたならば、私はこの問題についてお伺いすることはなかつたのではないかと思う。確かにこの種の問題は起つておりましよう。しかしながら今まで起つた問題については、私は警察権を発動したというようなことは聞かないのであります。私は警察権の発動ということは、これは事のいかんがいかがあろうとも、事文教の殿堂であります。またこれは教育行政の問題であります。教育行政の中に警察力を借りてこれを解決しようとした、かようなことはまことに残念であります。こういうことをやるということは、これは他力本願であります、極言すれば、他力本願でもつて物事を解決して行く、こういう考え方に立つて行政あるいは政治を行うから、ここに吉田内閣は絶えず警察官の動員をはからなければならず、それによつてもなおかつ国内治安の維持が行われないという根本的問題があると思う。もちろん人間である以上、あるいは警察力ということも考えるかもしれませんけれども、翻つてこうした問題については、やはり根本的に、何がゆえにこういう問題が起るので拠るか、何がゆえにこういう非常識行動をとらしめているのであるかということを、大局的見地に立つて考えられて、そうして今後対策を講じていたたきたい、こういうことを大臣に要望いたすと同時に、今後の大臣のお考えを聞きたいのであります。   同時に私が伝え聞くところによれば、——これはうそではございません。日教組に対する連絡係を文部省は設定いたしております。この連絡係を称するに、部内においては日教組係保安官と称しておるという事実があるのであります。私はこういうような感覚でもつて労働対策を考えるところに大きな誤謬があると思う。この種の問題は単なる陳情なり、取締りという問題ではなくして、ともに腹を割つて教育行政を推進して行くというところに問題の本質があるのである。それを何が暴徒のごとく、あるいは不逞のやからという考え方でもつて常日ころ考えられておる点に、最も大きな文教行政の誤謬があるということを私は指摘し出ておきたい。この問題について大臣の正しい、——現象的な問題をとらまえた意見ではなくしこれ今後の問題の大局に立つてのお考えをお伺いいたしたい
  85. 大達茂雄

    大達国務大臣 昨日来申し上げておりますが、私は面会を謝絶したのではないのであります。あらためて経過を申し上げますと、一昨日面会をする、こういうことを申し入れたのであります。それを日教組の方で拒絶したのであります。さらに昨日また面会をするということを申し上げたのでありますが、これまた日教組はこれを拒絶したのであります。私は面会をする以上は、日教組側の人の言うことを聞くし、また私として話をしてさしつかえないことは話をする、こういう気持があるから面会承知したのであります。それが面会の運びにならない、これはどういうことかということは、くどくど申し上げることはないのでありますが、とにかく面会の運びにならなかつたのであります。そして昨晩おそく私の私宅に押しかけて参りました。それで私はタベ一時間ぐらい会つたのです。決して私はことさらに面会を避けておるわけではありませんが、しかし二回にわたつてさようなことがあるのであります。今後私は、現在の日教組諸君のすわり込み、ある意味においての面会強要という姿勢が続く限り、今日以後は面会はしないつもりでおります。  それから警察云々のお話でありますが、これは先ほども申し上げましたように、警察が文部省の中へ入つて来て、そうして大したことはないのですけれども、ある意味において実力を行使した、これははなたはだ遺憾な事態ありますが、決してこれは好んでやつたわけではありません。ただ事ここに至つたのは、その責めは、私は少くともほとんど全部日教組側にある、かように考えております。
  86. 辻原弘市

    ○辻原委員 大臣の一応の御見解か……     〔発言する者あり〕
  87. 辻寛一

    辻委員長 お静かに願います。
  88. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は非常に重要な問題を今取上げていると思うのです。従つて、そういう立場から申し上げておりますので、ひとつ頭を冷やして聞いていただきたい。  今大臣は、すべての責任は日教組側にあるという判定を下されているようでありますが、先ほど世耕代議士からも一部触れられましたが、これは場合によつては不法侵入、面会強要じやないか、ならばそれを処分すべきじやないかというふうな御意見がちらつと出ております。私も昨日この問題を提起いたしました責任上、その後相当詳細にわたつてその経過を調べてみましたが、この過程の中にはいろいろいきさつがあります。もちろんこういう事態でありまするから、それを一々取上げて、これはこうだからああじやないかというふうな議論をするのがおかしいと思いますので、これは申し上げませんけれども、かりに大臣が不法侵入であるというふうな判定を持たれて事に当られるというならば、これまた私は相当の誤謬を犯すと思う。もちろん会いたくないのでありますから、大臣が好ましくないとおつしやられるのは私は当然だと思う。しかしながら、この過程には、大臣室の前にも多数の文部省の係官がおつた。そこにおいて相当強烈に阻止した事実があるかどうかということについても、確かにそれは阻止したとおつしやるでしよう。しかしながら入つたその事態に対しても、責任の追究をしなければならぬというようなことになりましたならば、これは重要な要素であると思いまするから、あらかじめ警告いたしておきたいと思いますが、見のがしておる事実もある。こういうふうに、入つたことについてほんとうに阻止しようというならば、ほんとうに腹からそれを阻止しようという大臣の考え方で省内が統一されておるとするならば、私ならば身を挺してでもそれを防ぎます。しかしながら、そういう事実も私はなかつたように思う。あるいはこれは若干あつたかもしれないけれども、これは相対的なものの見方であります。従つて、そういつたこともあつたのでありますから、一概にこれをもつて不法侵入かどうかということで簡単に結論を出されることは、これまた私はきわめて重要な問題であると思う。またこうして入つたことについて、これをかりに処置するというふうなことになりましたならば、それを防ぐ努力あるいは防ぐ方法は、人間の頭で考えても、私の陳腐な頭で考えましても、幾つもあり得ると思う。それをやらないでのめのめとそれを明け渡してどつかにすつ込んでおる、そうして警察の力を借りてやつた、その責任も私はきわめて重要だと思う。そういうことを考えましたならば、一方的にそれのみをもつて責任追究なんて言うことは、これはいささかおかしいことだと私は思う。それを一方的に、非常識にも、不法侵入であるとかけしからぬと言うならば、のめのめとこれを明け渡したところの大臣なりあるいはその衝に当つた人々の責任も、またまぬがれ得ないのではないかというふうに私は思うのであります。しかしこの種の問題は、先ほど私が最初に申し上げましたように、結果論に立つてこれを論じた場合にはさようなことになりますけれども、これを結果論から考えることでは、全き教育行政というものは行われ得ないということを考えまするので、大臣は、この種の問題が起らないように、積極的な、五十万教職員協力が得られるような、また納得の行くような、そういう教育行政を今後行動的にやつていただきまして、そのことにおいてこういう問題を防いで行くという、大局的な解決方法を採用願いたいということを、私はこの際大臣に強く御希望申し上げる次第でありますが、それに対する大臣の御所見を承りたいのであります。
  89. 大達茂雄

    大達国務大臣 現場における詳細なことについては、私は実はよく知りません。しかし、日教組の諸君大臣室を占領いたしまして、それに対してすぐ警察を呼びに行つたというわけでぽありません。出てほしいということを言葉を尽して数時間にわたつて言うたのですが、それにもかかわらず、出ないから、結局警察に頼んだ、これが真相でなると私は思います。それから、その間、日教組の職員が侵入して来るのを防ぐ努力が文部省の職員に足りなかつたのだと言われましたが、これは侵入する方が悪いのですから、防ぐ努力が足りないから文部省の職員の方が悪いのだということにはならないと思う。もし文部省の職員のうちの何者かが大臣室のとびらを開いて、日教組の諸君を導入したという事実があるならば、私はただちに処分いたします。
  90. 野原覺

    ○野原委員 この日教組の問題は、新聞が書き立てているから特にこの文部委員会が取上げるという筋合いのものではない。申し上げるまでもなく、日教組の組織というものは、今日の日本における教育者の最も大きな団体であります。従つて私ども文部委員の中には、日教組に加担したような意見を吐く者もあろうし、あるいはこれに対して批判的な御意見の出ておる向きも今日ただいまあるわけでありますけれども、いずれにしろ、この問題は今後の日本教育行政に大きな関連があろうかと思いますので、徹底的に糾明すべき点は糾明して、そうして日本文教政策を明るい方向に向けるような方策をとりたい、このように考えますので少しく時間をお借りしたいと思う。  何回もむし返すようでございますが、日教組の諸君は二十三日に要求書を持つてつたと青つておるのであります。そこで大臣にお尋ねしたいことは、要求書を持つて行つていきなり大臣室を、あなたの言葉でいえば、いわゆる占拠をしたのであるかどうか、このことをお尋ねいたします。
  91. 大達茂雄

    大達国務大臣 要求書を持つてつたということは、実は私は形式をよく存じておりませんが、廊下におりまして、大臣室を占拠したのは一昨晩であります。
  92. 野原覺

    ○野原委員 昨日このことが文部委員会で問題になりまして、私も文部大臣の言い分を十分伺いましたので、教組の方を調査いたしたのでございますが、ここで私の申し上げることを、あたかもH教組を弁護したような形になるような受取り方をしていただきたくないということを、前もつてお断りしておきます。  そこで、日教組の諸君の言い分はこうなんです。われわれは要求書を二十三日に持つてつた、そうして、地方の各府県の教職員代表者もこの中におるから、すみやかに大臣に会つてわれわれの言わんと欲するところを聞いていただきたいし、なお、これらの問題に対する大臣のお考えも承りたいというのです。それで二十三日は文部省行つて、静かにこれが申入れをし、待つたのであります。ところが、この点に対して大臣は知つてつたか知らなかつたかはしりませんが、日教組のこの交渉の申入れに対して文部省側のとつた態度には、まつたく一片の誠意だに見られない。二十三日は大臣はどのような御日程であつたかはしりませんけれども、私は、二十三日には大臣は時間の繰合せをして、少くとも現場教員の声でもあるし、就任早々の大臣のことでもあるから、ひとつ十分日教組の意見も聞いてみようではないか、こういうおおらかな態度でお会いくださつたならば、こういう事態は起つていない、このことを一点私は申し上げて大臣のこれに対するお考えを承りたい。
  93. 大達茂雄

    大達国務大臣 私は日教組の諸君にお目にかかろうということを、職員を通じて連絡したのは二十四日の朝だと思います。私からそういうふうに伝えるようにといつたのは二十四日の朝です。二十三日の日は、その要求書というのを私は実は見ないのであります。従つてさような返事は出しておらぬと思います。ただ二十三日の日に会えば、そういう変なことにならないで、二十四日の日に返事をしたからこじれて来た、こういうふうな模様は、私はまだ承知しておりません、
  94. 野原覺

    ○野原委員 私はこれで大体この問題の真の姿の一片が見えつつあるようにも思うのです。二十三日に文部大臣に日教組が交渉を申し入れたならば、なぜ文部大臣の側近がこれをすみやかに大臣に報告しないのか。しかもその側近がかつてに誠意のない答弁をやつて追い出すような——追い出したとは申しませんけれども、そういう態度をとつたような動きがないか、このことをどなたか文部大臣の側近者に私は質問する。     〔「側近とは何ぞや」と呼ぶ者あり〕
  95. 野原覺

    ○野原委員 側近とは次官、もしくはその次に来るような局長、そういうものだ。
  96. 大達茂雄

    大達国務大臣 私はあなたのおつしやるいわゆる文部大臣の側近が、日教組の諸君をまるで相手にしなかつた、そういうことは聞いておりません。二十三日の日に日教組の諸君文部省に押しかけて来たということは、私も知つてつたのであります。ただその日は私の職務がありますから、その日はつまり面会の回答に至らず、翌朝私の方の都合を考えて、こういう場所でこの時間にお目にかかろう、こういうことを言うたわけです。
  97. 野原覺

    ○野原委員 そこで大臣答弁を私が聞き違えたのか、あるいは大臣がその後変更されたのかは、これは再質問いたしませんけれども、大臣が二十四日に面会を承諾されたと申されますが、その面会とは、あなたの方で手きびしい条件をつけられているように私どもは聞いておりますが、その二十四日の面会の条件とは何でございますか。
  98. 大達茂雄

    大達国務大臣 二十四日は国会関係でなかなか時間がありませんので、多分予算委員会とそのあとの時間を考えまして、一時に院内で会う、こういうことを言つた。従つて院内でありますから、日教組の方も三役と申しますか、代表の人が、あれは六人くらいになりますか、その範囲の方にお目にかかりたい、こういうことを言つたのです。
  99. 野原覺

    ○野原委員 そこで院内で会うと申されますけれども、従来日教組と文部省の交渉は、文部次官室もしくは大臣室で行うということが慣例なんです。しかも二十三日のそういうような態度であり、そうして院内で会うとか、きわめて数を制限して来るようなところから、教組側としてはわれわれの要求がいまだに聞かれないで、しかも先日来出しておるものの回答すらも今日まで出されていない、こういうことに対する不満が累積して、あのようなすわり込みということになつたと思うのであります。従つてこのことは、すわり込みの結果だけをとらえて、日教組がすわり込むことはけしからぬ。世耕代議士に言わしむれば、これを厳重処分しろというようなことを言われておるのでございますが、私は世耕さんを前にしてここで申し上げたいことは、世耕さんは近畿大学の総長さんです。かつて百名に近い教員の餓百をやられて、大阪で相当問題を起されて、地方労働委員会からその不当を勧告されたはずです。そういうお方です。そういう経営者的な頭で大臣をたくみに誘導して、これらの日教組の幹部は、あたかも不逞のやからであるかのような言葉を弄して、これを厳重に処分しろというようなことは、日本教育政策を誤るもはなはだしいと私は言わなければなりません。従つてこの点については、どうか大臣は、単にすわり込みをした、だからおれが警察力を発したのだ、こういうことでなく、とにかく大臣自体におかれても十分に反省されて、すみやかに日教組と会われて、日教組の要求も聞き、そうしてこの問題が解決され得るように御努力されることを私は要望したいのであります。
  100. 大達茂雄

    大達国務大臣 もう一度申しますと、非常に時間がきゆうくつでありましたので、一時に院内で会う、こういうことをこちらから申出ましたのに対しまして、日教組側においては、文部省で会いたい、それから時間は無制限ということにしてほしい、人数については限定されることは困る、こういう回答であつた、その日はものわかれになつたのであります。日教組には、現に私は宇治山田の大会のありました数日前に文部省で会つております。何も日教組の人に会うのだからわざわざ院内を会見の場所にしたのではないのでありまして、国会が始つてからほとんど全部の面会者に対して、私は院内で会つておるのであります。何も日教組の職員に限つてわざわざ院内で会う、こういうことを言つたのではない、その点は誤解のないようにしてほしいのであります。またただいまおつしやるように、従来文部省で会つておりますから、職務上文部省で会うのはあたりまえだということは、あまりきゆうくつな御議論だと思います。
  101. 世耕弘一

    世耕委員 今の問題の中で、私が非常に右翼的な教育方針を確立しておるように聞えた、実を言うと、今私が文部大臣に言うた言葉は、多年の経験から割出した、あえて日教組とは言いませんが、日教組の戦術は、えてしてこういう戦術に出て来る、私の方の大学もそういう戦術で、ちよつと先生五分会わしてください、三分でいいです。代表者は三人でよろしうございます。こう来る。三人で五分くらいのことを総長が会わぬということははなはだ不見識じやないか、会つてつたらどうですか、そうか、それなら会つてやろう、しかし逆な戦術で出て来ることは私は多年の経験で知つておる、君らその保証をするか、大丈夫する、そこで会うと三人か五人がいつの間にか二百人になる、五分間が十数時間も総長室ですわり込みをやつた、そうして今度警察が来ると、警察を使うのはけしからぬという、その扇動者を私は発見をしたために——今百へといつたのはあれはうそだ、教育に適さずとして、三人の教員を馘首した。そうしてそれに対しそ地方労働委員会は、不当馘首と言われたのでありますが、不当であるか、ないか、私は裁判を要求して今進行中であります。しかもその三人には月給を払つております。しかしなぜ三人を馘首しなければならぬかということの理由は、私がもし営業的な感覚なら、単に月給を払つてやればいいという建前ならば、百万円なり五十万円やればその連中は納得するかもしれませんが、教育はかくのごときあり方であつてはならぬ。あくまでも白か黒かということをはつきりしなければならぬのです。過去二箇年間私は教育のあり方について、法律的判断をくだすべく今争つておるのです。結論は得ておりません。なおまた教育者というものは、どういうあり方であるべきかということについて、世界各国の大学、教育関係に私は質問書を出して、その回答書もとつております。私こそきわめて進歩的な教育者であるということを、私は確信を持つております。今の言はどこかのうわさを聞いたものではないか。そういう軽率な発言は、少くとも文部委員会においては遠慮していただきたいということを申し上げておきます。
  102. 辻寛一

    辻委員長 本日はこの程度で散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後零時四十一分散会