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1953-07-21 第16回国会 衆議院 農林委員会農業共済制度に関する小委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月二十一日(火曜日)     午後三時三十一分開議  出席小委員    小委員長 足鹿  覺君       足立 篤郎君    佐藤洋之助君       吉川 久衛君    稲富 稜人君       久保田 豊君  出席政府委員         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君         農林事務官         (畜産局長)  大坪 藤市君  小委員外出席者         農林委員長   井出一太郎君         議     員 佐竹 新市君         議     員 安藤  覺君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 本日の会議に付した事件  農業災害補償法に基く家畜共済臨時特例に関  する法律案内閣提出第一〇〇号)  農業災害補償制度に関する件     —————————————
  2. 足鹿覺

    足鹿委員長 これより会議を開きます。  農業災害補償法に基く家畜共済臨時特例に関する法律案を議題とし、審議を進めることにいたします。何かまだ当局に御質疑等がありますれば、この際御発言をお願いいたします。
  3. 足立篤郎

    足立委員 私は議事進行について一言申し上げたいと思います。ただいま御懇談機会にお話合いをいたしました通り、すでに本小委員会におけるこの問題に関しての審議は六回も繰返されておりますし、その間、去る十二日には日曜日であるにもかかわらず、家畜共済実施状況について本案の審査に資するためにわれわれ委員埼玉県下の家畜診療所の実態を視察し、なお参考人を招致して、その意見を求める等、慎重に審議を進めて参つておりますので、すでに研究調査をすべき事項につきましては、ほとんど尽きていると私は思うのでありますが、この際各委員の御意見を御発表願つて調整すべき点は調整をいたし、すみやかにこの小委員会結論を出していただきますよう議事を進められんことを希望いたします。
  4. 足鹿覺

    足鹿委員長 今、足立君から、お聞きのような議事進行について御発言がありますが、何か御意見がございますか。——そうしますと御意見かないようでありますが、一応質疑を打切らないで、またあとであるかも存じませんから、一応このままで質疑を継続することといたしまして、御意見をお聞かせ願つて調整すべき点を調整し、ある一つ結論への方向へ進めたいと思いますが、いかかでしようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 足立篤郎

    足立委員 では私の考えております点をごひろう申し上げ、皆様の御批判を得たいと思います。私はかねて質疑を通じまして、私の見解を申し述べた通りでございまして、私の考えでは、この際従来の開業獣医師とこの共済事業との摩擦のありました点にかんがみまして、この際こそ、この摩擦になります点を何とかして解消いたしたい。そうして相寄り相助けて協力することによつて農家のために、畜主のために役立つような制度にいたしたい。かように考えまして、真剣にこの問題を検討してみたのでございます。私の以下申し上げる意見は、やや極端かもしれません。しかし、ほんとうに公平の原則に立ちまして処理いたしますためには、どうも私の考えでは、ここで掘り下げると言いますか、問題を持つて来ないと解決をしないではないかというような気がいたしますので、思い切つた案をここに出してみたいと思うのであります。  まず第一に、基本的な原則として確立しなければならないことは、畜主である農家診療を受けます場合には、自由に獣医師を選定できる。あらかじめ家畜診療所にかかるとか、あるいは開業獣医師にかかるという程度自由選択ではなくて、自分の家畜疾病にかかりました場合、その都度自由に選択ができるというふうにいたさないと、今まで開業獣医師の方から意見のありました、取扱いが不公平であるというこの問題を解消することができないのではないかというふうに考えまして、第一に農家は自由に獣医師選択できるという基本的な方針を打立てて、それに沿うように内容をきめて行かなければならぬ、かように考えたわけでございます。  第二は、国家が再保険をいたします診療費部分は、今まで農林省当局の御説明を聞いておりまして、うなずける点がありますし、また埼玉県下の家畜診療所実況等を見ましても、あるいは開業獣医師の今までの主張等を聞いてみましても、この国家の再保険限度というものは、薬価消耗品代、これを共済対象として行くのが最も妥当ではないか。つまり技術料ということになりますと、たとえば往診をいたしましても、距離によつて違う。あるいは夜間は割増手当をもらわなければならないというような、これは地方によつては、あるいはその都度違つた条件が現われて参りますので、ここまで入れて再保険をするということは、うつかりすると濫診濫療といいますか、みだりに診察をし、みだりに治療をするというような弊害も生じやすいと思いますので、再保険対象としては、薬価消耗品に限るということにいたしまして、その他の技術料人件費、あるいは往診料とかいうようなものは、これは共済事業対象としない方針に統一したらどうか。今まで農林省の案を伺つておりますと、家畜診療所で行う場合は、薬価消耗品費だけを共済対象といたし、その他の経費については特別賦課金形式をとつて、これを農民から直接家畜診療所がとる。それも開業獣医師の場合は、耳案氏案とがありまして、耳の案においては、これは薬価消耗品費技術料とを合せたものに対して六〇%の再保険をする。町案においては八〇%の再保険をする、こういう非常に複雑な案になつておりまして、かような案で行きますと、いずれの角度から見ても満足した結果を得られないということになりますので、この際方針を統一して、いわゆる機会均等、公平の原則に立ちまして、共済対象としては薬価消耗品代に限る。そこで私はひそかに憂えますことは、薬価消耗品については、その治療内容によつて共済団体審査をし、最後には農林省審査をいたしまして、保険金を支払うわけでございますから、大した不正等の問題も起らないのでありますが、この技術料、特に往診料のごときものになりますと、これはうつかりすると畜主獣医師から搾取をされやしないかという問題が起つて来るのでございます。  そこでこれを規制するためには、少くとも家畜診療所取扱つた場合におきましては、この農林大臣の定むる基準従つて、その治療程度に応じて、点数制によつて料金をとるということにいたしまして、それに右へならえをさせるような方針をとれば、それによつて畜主は非常な搾取を受けるということも防げるのではないか。それであつてこそ、診療所の存在の意義が発揮できるのではないかというふうに考えるわけでございます。  なお第三といたしましては、現在全国的に家畜事業につきましては、畜主から家畜事務費というものを賦課金でとつております。このとり方につきましても、ずいぶん全国的にはでこぼこがございますので、これはなるべく農家負担軽減するという意味におきまして、農林大臣省令をもつてその方法基準等を定めることによりまして、このでこぼこになることを防ぎ、農家負担軽減をはかるという趣旨で行きたい。なおまた農林省が示されたA案にございますように、診療所にかかつた場合につきましては、特別に人件費等はとらないということで行くような申合せを、この家畜診療所運営委員会が行いました場合は、その都度技術料をとるかわりに、あらかじめ賦課金経常費運営費をとつておくというような方法も成り立つわけでございますが、これは中央でこういうやり方をやれという規制をしないで、すべて現地農民意思にまかせる。農民がさような特別賦課金をあらかじめとられて、たといその技術料はその都度払わなくてよくても、そういう賦課金をとられるということは反対であるという場合には、この制度をとらずに、開業獣医師と同じように、診療をしましたその都度、点数制で、往診料なり、技術料なりをとるということで、家畜診療所運営が立つて行くのではないかと思うのであります。もし現地農民共済精神に徹して、この際お互いにあらかじめ出し合つておいて、家畜診療所にかかつた場合には技術料を出さなくてもいいようにしようじやないかという申合せを、運営委員会を通じてやりました場合には、これは当然そういう制度を設けてもよろしい、自由選択農民意思にまかせるという行き方がいいのではないか、最も民主的な方法じやないかと考えるわけであります。但しその場合も、今申し上げたように、むちやな賦課金をとるということになつてはいけませんので、その方法基準等農林大臣省令をもつて定めるということにいたしておきたいと思うのでありまして、たとい農林大臣省令で定めましても、省令にあるからそれによらなければならないということには、絶対にしないようにいたしたいと考えるわけであります。  なお家畜診療所で行います衛生予防対策、こういつた経費農林省の案によりますと、特別賦課金形式で、家畜診療所にかかる畜生に賦課するという方針になつておるようであります。これは国家的な施策でありまして、当然国庫においてできるだけの助成をして、この家畜衛生予防事業が、家畜診療所においても、家畜保健所の行う事業協力いたしまして、この事業が行えるように助成をすべきであると私は考えるわけでございます。  第四といたしましては、従来も開業獣医師の方から希望がありまして、農林省でも、通牒等によりまして指導をいたしておりまするが、都道府県獣医師会推薦があれば、その開業獣医師は各都道府県連合会嘱託にする。そして共済団体として、いわば公認をされた資格においてこの家畜共済事業協力をしてもらう。そうして今申し上げたように、農家が自由に選択をします場合、家畜診療所に頼む場合でも、あるいは開業獣医師に依頼をする場合でも、嘱託という資格によつて開業獣医師は堂々とそのことに当られるというふうにいたしたい。また、この事業に参加をして取扱います以上は、やはり共済団体協力一致の形で、ときによれば共済団体の方から協力を要請する場合もあるわけでありますから、こういつた面におきまして精神的にまず融和をはかるという意味で、都道府県獣医師会推薦のあるものは、これを嘱託にするという制度が望ましいと思うわけでございます。  以上申し上げたおもなる点は四点でございますが、実はこの内容は、最初に申し上げましたように、相当思い切つた内容でございまして、皆様のうちにも相当御意見もあろうかと思いまするので、私のここまで割切つてしまつた意見に対しまして、忌憚のない御意見と御批判を聞かせていただきまして、願わくは円満にこのことが進みますように、調整をはかつていただきますよう希望をいたす次第でございます。以上であります。
  6. 足鹿覺

    足鹿委員長 ほかに御意見はありませんか。——それではただいま足立君から御意見が述べられましたが、私の意見を申し上げて御検討を願つたらと思います。  お手元に配付申し上げております農業災害補償法に基く家畜共済臨時特例に関する法律案附帯決議案であります。先般参考人の御意見を徴し、かつまた去る十二日には足立吉川委員とともに埼玉県の家畜診療所現地調査いたしまして、いろいろ得るところもあつたのでありますが、それら参考人意見なり、私ども現地を視察調査いたしました点等からいろいろと検討を加えまして、大体法案そのもの条項修正するような点よりも、むしろ運営の面に問題があることを見ましたので、五項目にわたる附帯決議案をここに草案としてとりまとめてみたわけであります。  一、主務大臣死廃病傷共済掛金標準率を定める場合においては、共済種類を出来るだけ簡素化するため、診療費のうち技術料等を除いた部分共済目的とするもの(所謂A種)及び診療者技術料等を含んだ診療費共済目的とするもののうち掛金標準率現行のものの八割とするもの(所謂B2種)の二種類とすること。  この一項を御説明申し上げますと、先般農林当局から提示を受けました案は、A及びB1、B2と三種にわけて運営されるようになつておりましたが、大体現地畜主意向も、なるべく簡素化をしてもらいたいという意向でもありますし、AとB2の二種類にして行くことが、その畜主希望にも沿うことにもなりまするし、かつまたA案一本の、今足立君からも御意向もありましたが、やはり現在の状態から考えますると、A案一本ということは少し無理があるのではないかというふうに考えまして、大体二つにまとめることが適当ではないかという考えなつたわけであります。  二、政府A種共済実施する場合においては、獣医師専門化別職能又は技能に従つて診療所専任者及び現地開業者相互協力せしめるとともに畜主の自主的な判断に基いて両者を自由に選択しうるよう開業獣医師有給嘱託制度を広く採用し、以つて家畜防疫改善向上共済事故軽減に努めること。而してこれがため、特別賦課金による診療所経常費等不足を生じた場合においては直ちにこれを増額することなく、政府において極力助成措置を講ずること。  この第二でありますが、実際、現地調査しました結果は、相当開業獣医師診療所の間には、制度的な対立のあることは認めますが、運営よろしきを得るならば、必ずしもその対立が激化するとは考えられません。すなわち開業獣医師有給嘱託制度一つ運営上の約束にいたしまして、畜主自由選択によつておのおの専門家別職能畜生が十分に受けることがいいのではないか、また開業獣医師側要望に沿うことも、この点でできるのではないか、従つて摩擦を従来より著しく緩和して、相互の有無相通じて、家畜防疫改善向上に貢献することができるのではないか、そういうふうに私どもには考えられまして、この二項を提案をする気になつたわけであります。もつとも特別賦課金のみで、診療所経費不足を生じたような場合においても、賦課金の増額ということは厳に避けまして、政府において予算的措置を講じて、極力農民負担のかさばらないように措置すべきことを、後半においてうたつたつもりであります。  三、一元化実施の前提として現に乙種制度実施中の地域及び疾病傷害共済加入率の高い地域以外の地域組合指定組合に指定する場合においては、本法実験法たる趣旨にかんがみ、その地域を出来る限り圧縮すること。  これは現に乙種制度として、今改正法に基き運用がなされておる所以外に、今後新しく開業獣医師との摩擦が激化するような地域は、なるべく避けて行くことが大体よいのではないか、特に本法がテスト・ケースとして、実験法であるという建前もありますが、内容的に見ますと、実験法の域を相当逸脱いたしまして、内容実施法になつておるようにも考えられますので、法の示すごとく実験法趣旨にかんがみまして、軋轢、摩擦等はでき得る限り避けるべきが至当ではないかというふうに考えまして、三の条項をここに取上げておるわけであります。  四、農業共済保険審査会及び都道府県共済保険審査会獣医師会の代表を参加せしめ、本法運営上いかんながらしむること。  開業獣医師の方の要望希望は、専門委員会に加えてもらいたいという御要望が、先般参考人発言の際にも述べられたわけでありますが、現在は専門委員会よりも、その上位に立つ保険審査会等に正式に開業獣医師を参加せしめて、発言機会を与え、運営にも責任を持たしめ、かつ協力をせしめることが妥当ではないか、そういうふうに考えまして四項を起したわけであります。  五、繁殖障碍等畜産振興上重大なる事故については、畜主自己負担額を増嵩せしめないよう診療給付限度の引上に努めること。  これは、この間視察をいたしました現地畜主の一声に要望しておる点であります。特に乳牛の場合等は、繁殖障害による治療等が非常に多いそうであります。しかるに現在の家畜診療所診療科目の中には一応あるそうでありますが、その給付限度との関係上、必ずしも繁殖障害に適切な運営が行われておらないことが明らかになりましたので、この第五項を入れまして、今後当局が十分この趣旨に沿うように御努力になることが必要ではないか、そういうふうに私どもは見ました。よつて第五項をここに起しておるわけであります。  以上が、大体の附帯決議案の今までの審議の経過なり、調査検討を加えた結論を大体とりまとめたものであります。最初に申し上げましたように、法律案そのものに御異議があれば別でありますが、主としてその運営上から来る問題である。今まで皆さん方からの御意向もあり、また開業獣医師との問題もあつた。かように私考えますので、非常に僭越とは存じましたが、大体ここら辺でお話合いを願いまして、とりまとめをお願いしたらと思つて提案をいたしたわけであります。もちろん委員皆さんの御意向によつて、御検討の結果、修正を加えていただいても、けつこうでございます。いずれにせよ、とりまとめた結論について、この附帯決議を尊重し、趣旨に沿うべく、実行上における政府の所信をただして、ある程度確約を得るならば、私どもは、必ずしも法案そのもの修正を必要としないのではないか、そういうふうに見ておるわけであります。いずれにしましても、意見一致を見なければ、小委員会をつくつた目的も達成できないと思いますので、ただいま足立君からも意見が開陳されておりますが、十分比較検討を願い、かつまた皆さん方からも、それぞれ案の御提示を願いまして、適当な結論を得たい、かように存ずるわけであります。
  7. 久保田豊

    久保田(豊)委員 委員長にひとつお聞きしますが、開業獣医師有給嘱託制というものでうまく行きますか。私は、これではうまく行かないように思いますが……。
  8. 足鹿覺

    足鹿委員長 今の場合は、ほとんど無給嘱託のようであります。
  9. 久保田豊

    久保田(豊)委員 無給嘱託にしても、有給嘱託にしても、そこが一つの問題だと思うのですがね。
  10. 足鹿覺

    足鹿委員長 これ以上、どうも名案がないようですな。
  11. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員 有給の財源はどこに求めるのですか。
  12. 足鹿覺

    足鹿委員長 現在の疾病共済死亡廃用を一元化して行けば、作物共済違つて、この方面の運営は若干楽なようでありますし、また平均百五十円の特別賦課金を今度新しくかけることになりますと、それはその診療所運営費にあてるわけであります。従来は掛金としてかけられておりますから、県から中央に吸収をされて、必ずしもそれによつて診療所運営がまかなわれておらない面もある。そういうような点から、そう多額の有給嘱託ということは困難かはしれませんが、そこは開業献医師も奉仕的な気持は十分あるようであります。その場所々々の診療所により、あるいは共済連合会財政事情等とにらみ合して、必ずしも一律には行かないのではないかと思いますが、従来のような、ただ名前だけの嘱託というようなことでお茶を濁すことは、開業獣医師としても責任が軽いし、運営協力するにもまた力が入らぬのではないか。そういう点から、こういうことを考えついてみたわけですが。どうですか、吉川さん。——他に御意見がないとすれば、一応両案ともそれぞれ御検討を願いまして、明日あるいは明後日までに皆さんの御意向をまとめて、次会最終結論を出すこととしまして、本問題の審議に入つてけつこうでありますが、御意見はございませんか。
  13. 安藤覺

    安藤覺君 まだほかの会派でも御提出の用意をなさる関係もあり、先ほど来御発言があるのですから、ただいまの委員長の御発議の通りに、次会結論が必ず出るかどうかはしばらく別として、御提案になる希望を持つてつて、まだ御提案にならない会派の御提案を促進していただきまして、この両案とともに審議を進められて、なるべく早い機会結論を得るようにされたらいかがかと思います。その間、でき得れば懇談会の形をもつておまとめいただくことが、割合早いのではないかと思います。
  14. 足鹿覺

    足鹿委員長 ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止
  15. 足鹿覺

    足鹿委員長 それでは速記を始めてください。  ただいまのお話合いによりまして、明後日午後小委員会を開くことにいたします。本日、足立君の案も出ておりますし、また私の案も先刻御説明を申し上げてありますので、よく御検討願い、また各党の御意向もそれまでにおまとめをいただきまして、お持ち寄りをいただき、明後日の小委員会でまとまるものならば、結論を得たい、かように存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 足鹿覺

    足鹿委員長 それでは、さように決定をいたしまして農業災害補償法に基く家畜共済臨時特例に関する法律案審査は、本日はこの程度といたします。     —————————————
  17. 足鹿覺

    足鹿委員長 続いて、これより農業災害補償制度について、調査を進めることといたします。先般農林経済局より提出されました資料につきまして、政府委員より説明を求めます。
  18. 小倉武一

    小倉政府委員 ただいま御配付になつたと思いますが、農業災害補償制度に関する基本問題と、非常に簡略に言葉だけで書いてございますが、概略私どもが基本問題ということで考えれば、こういうことが根本的に考えられなければならぬという気づきを例示したのであります。なおいろいろお気づきがありますれば、これに附加して、もつと詳細なものを次の機会にでも用意したいと思います。  第一に、農業災害にいかに対処すべきかの問題としまして、「(1)農業災害性格と現われ方」「(2)農家経済の構造」、こういう見出しになつておりまするが、この意味は、農業災害という災害の現われ方が、火災であるとか、人間の死亡といつたような災害と非常に性格がかわつておるということであります。たとえば本年のような凍霜害、水害といつたような災害が連続に起る年もございまするし、昨年のように、水稲で申しますると、比較的災害のなかつた年もある。よほど長期的に、しかもまた広汎に危険分散をしないと、なかなか対処することができない、こういう問題であります。しかもこういう災害に対して、受けこたえる農家というものの経済状態を見ますると、こういう異常な災害には、とうていたえがたいような農家経済状態であるということであります。問題の根本はそこにあると思うのであります。現在まで考えておりますところは、長期に、広汎に危険を分散するという意味災害補償制度ができておるわけでございまするが、どちらかと申しますれば、国が災害について補償するということよりも、農民が主体となつてこれに対処する。それに対して国が助成をする。こういう立て方に現在はなつておるのであります。  それからまた、こういう災害の現われ方に対しまして、どういう補償の立て方をしているかと申しますると、末端では共済関係ということで対処をしており、連合会、それから国という関係においては、保険方式をとつておるということであります。末端保険方式を徹底するということにつきましては、今までの農家経済状況と、農業災害の現われ方ということから見まして、なかなか困難な問題があるということであります。  次は共済目的共済対象の問題であります。まず共済目的でありまするが、現行制度農作物蚕繭それから家畜と、こういうふうにわかれております。いわば作物別と申しまするような関係になつておるわけです。農作物と申しましても、水稲、陸稲、麦というものでは、別々に共済関係が成立しておる関係になつておるのであります。この関係を、たとえば農作物ということでもつて統一的に、総合して損失補償をするという制度考えられはしないか、現在はいわば品目別でありまするけれども、これを総合の損失補償ということにすると、農家の所得の補償ということに近づくわけでありますけれども、そういう考え方がありはしないかというわけであります。  二番目の、生産力の諸要素というところに出ております点は、今の考え方は作物あるいは家畜ということでありまするが、農家生産力を支えている要素は、作物、家畜といつたもののほかに、土地とか自家労働というものがございます。現在の制度では、農作物共済金のきめ方等から申しましても、自家労働を補償するということにはなつておらないのであります。そこで一般の社会保障制度の進展とともに、農家の労働力を補償するという観点がいかに考慮さるべきかという問題があろうと思います。それから土地につきましては、土地の災害復旧の補助制度で現在は対処いたしておりまするが、土地が流失する、荒地になる、こういうような事態に対処をして、災害補償制度として対処し得る——共済なり保険といつたような形でもつて対処し得る方法があるかないか。こういう問題があろうかと思います。  そういう点を総合してみますると、結局は農家の所得を補償する。こういう問題になると思うのでありまするけれども、この点どういうふうに見るかというのが、共済目的から見まして、根本的な問題であろうと思うのであります。  次は、共済対象でございます。現在は作物別に、あるいは家畜を持つている農民ということで考えておりまするが、たとえば特に零細な農民、農業所得では大して所得に期待をしておらない農民と、相当ゆたかな農民であつて、自家保険も十分でき得るといつたような農民もあろうかと思います。そういう観念から言いまして、現在考えられるような制度、あるいは将来考えられるような制度の問題といたしましては、共済制度を取入れる農民の範囲ということが問題になろうかと思うのであります。  次は共済引受けの単位の問題であります。これは(1)の共済目的と関連をいたしまするが、現行方式は、作物で申しますると、一筆単位でもつて引受けをしている方式であります。このことは現在考えてみれば、必ずしも必然性はないと思うのでありますけれども、一筆単位の保険方式が行われましたゆえんは、おそらく小作制度、小作料の減免と関連があつたと思うのであります。これが農地制度の改革の結果、必ずしも一筆単位の補償制度ということは必要がないのではないかということであります。従いまして、そういう趣旨もございまするので、現在農家単位の方式でもちまして、実験が行われております。この農家単位と申しまするのは、作物全体を合せたような農家単位ではございませんで、水稲なら水稲、陸稲なら陸稲ということで、別でございまするけれども、一筆単位ではないわけであります。水稲の作付け全体を、何石の収穫高というようなことを見まして、農家単位になつておるわけでございまするけれども、そういう方式が一体よいかどうか、これはだんだん実験の結果も出て参りまするので、そういうことも御参照願いたいと思います。一筆単位から農家単位の方式に切りかえるがいいかどうかということが、やはり問題になろうかと思います。農家単位にしろ、一筆単位にしろ、損害評価の問題、あるいは補償を適正にするということから見ると、必ずしもそれで十分ではないのであります。そこで、むしろ保険的な補償制度の問題としては、もう少し集団的に考える集団引受けといつたようなことが考えられはしないか。たとえば部落単位でやる。あるいは村単位でやる。こういうことが一応考えられるように思うのであります。こういうふうに集団引受けをした場合に、連合会と村あるいは部落、あるいは国と連合会という関係は、ある程度見当がつきますけれども、その引受けをした団体の内部の関係をどうするかということが、依然として問題であるわけであります。  その次は、補償限度、それからこれに関連しまする料率、あるいは農家負担の問題であります。(1)の「料率の個別化の限界」と書いてあります点は、一筆ごとでございますれば一筆ごとの被害率、あるいは災害の危険率というものを参照して、料率がきまるはずのものでありますけれども、なかなかそこまでは参らないわけであります。せいぜい村単位程度の危険率の分散しかできないわけでございます。そこでおのずから、一つの村としては被害率が適正に把握できましても、その内部の一筆々々ごとの被害率が現実には違つておる結果、いろいろの不平不満がどうしても生ずる。そこで個別化をしたいのでありまするが、今申しましたように、一筆ごとに被害率を算定する、そして個別化をするということにはおのずから限界がございまして、それは事実上不可能のことに属するということであります。  それから補償限度の問題でありまするが、一筆単位では、なかなか補償限度を引上げるということが困難なのであります。と申しまするのは、ある筆ができが悪くても、他の筆はできがよろしいと、農家全体としてはさほどの被害がない。ある筆をとつてみれば非常に被害があるという場合には、必ずしも災害補償ということで考えなくてもよろしいのでございますから、一筆単行でありまする場合には、補償限度を引上げるということは、これは実際上必要がない場合もありまするし、また必要があつてやります場合にも、いたずらに掛金負担が増大するということでございます。そこで補償限度を引上げるということのためにも、一筆単位ということでは、なかなか困難な問題が生ずるのであります。  それから負担の限界でありまするが、掛金負担の限界は、水稲で申し上げれば国が六割、農家が四割、こういう共済掛金負担になつておりまするが、それのどの程度のところが最も妥当な線であるか。国が全部補償するといつたような議論の立て方もあり得ると思いますけれども、自主的に農家が対処し、これに国が援助するといつたような建前をもし考えまするならば、その掛金負担の度合、国と農家というものの負担の度合いが問題になるのであります。これはいつでも問題になるわけでありまするが、根本制度を打ち立てる場合にも、そこに問題があるわけであります。  それから、支払いの責任の問題であります。これは共済組合連合会、国ということで、共済金の支払い、保険金の支払い、再保険金の支払いの三段階になつておりまするが、この責任をどういうふうに分担するか。現在で申しますると、末端組合は一割、それから連合会はこの通常の部分、国は以上、頂上の部分について支払いをする義務がございまするが、そういう責任の分担というものをどういうふうに按配をするかということが、やはりむずかしい問題であります。そのことはまた逆に、一筆単位でやるか、農家単位でやるか、あるいは集団引受けてやるかという引受けの単位にも関連があると思うのであります。  なお、ここで補足して申し上げますと、料率の個別化に限界がある。従つて一筆単位でやりまする場合には、どうしてもこういう限界に突き当つて、矛盾に逢着しますから、その矛盾をなくすために、無事もどしをする必要があるのではないかという問題が起つて来るのであります。これはあくまでも一種の便法にすぎないのでありまして、根本問題としては、無事もどしはいかがかとも考えられまするけれども、一筆単位といつたようなことを制度の建前として考えまするというと、無事もどしというようなことを考える必要が生じて来るように思うのであります。  次は、五番目でありますが、補償事業の担当者と体系の問題であります。現在の補償事業の担当者は、組合連合会、それから国、こうなつておりまして、府県あるいは町村というものは、いわば制度的には無関係になつているわけであります。まつたく関係がないとは申し上げられませんが、災害補償制度自体においては、必ずしも関係が濃くないわけであります。監督とか指導という点については関係がございまするが、災害補償制度の中身自体、たとえば掛金負担でありますとか、あるいは支払い責任とかいうことになりますと、地方自治体は何ら制度的には関連がないわけでございます。そこで、国も持つ、農家も持つといつたようなこの制度の建前で考える場合に、地方自治体は何ら財政的な負担をしなくてよろしいといつたような理由が一体あるのかないのか。その辺のことが、根本問題として当然に考えられなければならぬと思うのであります。  それから、共済制度の担当者としての団体という点から見ますると、共済組合なり連合会と、協同組合関係がございます。共済組合も強制加入がございまするが、農家の協同組織の一種であることは申すまでもないわけでございまして、協同組織という点から見ますると、必ずしもそこに、現在のところ、本質的な相違は、法制上はあまりないのでありまするけれども災害補償制度の持つて行き方によりましては、担当の団体の性格が根本的にかわつて来るのではないか。あるいはまた立て方によりましては、現在の協同組合的なものに担当させるといつたことも考えられるのであります。事業内容をどう持つて行くかということによつては、より公的な団体でなければならぬということになりますし、持つて行き方によりましては、より自主的な団体、たとえば協同組合でもよいと、こういうことになろうかと思うのであります。それから、この新しい制度ができるとして、それに一体いつから移行するか。これまでの経験もございまするし、また過渡的な問題もありまするけれども、移行の時期としては、なるべく早い方がいいことはもちろん当然でございます。しかし作物の関係から申しますれば、新しい植えつけが始まる時期ということに当然なります。そういう時期はもちろん問題はないとしましても、いつごろから実施するかということは、予算の関係、あるいは法案の成立の問題、あるいは内容によりまして、いろいろ準備をしなければならぬ段取りの問題がございまするので、これも制度内容いかんによりまして、時期がいつごろになるか、あるいは方法をどうしたらいいかというふうな問題に相なつて来ると思うのであります。  概略でありますけれども、以上、御説明申し上げます。
  19. 足鹿覺

    足鹿委員長 ただいまの説明に対しまする質疑次会に譲りまして、本日はこの程度で散会したいと思いますが、いかがでしようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 足鹿覺

    足鹿委員長 それでは、本日はこの程度で散会いたします。     午後四時三十七分散会