○久保田(豊)
委員 時間があまりないようですから、特に通産省側に二、三の問題について
お尋ね申し上げたいと思います。今度の
法案は今の
肥料業界の実情から見ると、どうしても
〔
委員長退席、金子
委員長代理着席〕
百姓の立場、国民経済の立場を中心としたものでなく、ま
つたく
肥料資本を守る
法案のように
考える。しかもそれがために現在並びに将来に国に大きな負担をかけて、しかもその効果がどれだけあるかということが、
はつきりわからないような
法案のように
考える。一言にして言えば、ま
つたく業者中心の救済策のように
考えられる面が非常に多い。そこでそれらに関連して、特に通産省側にお伺いしておきたいのは、この前の連合
審査会で
政府当局に、たしか
中村さんだと思
つたんですが、
中村さんの
お話で、大体二百三億並びに業者の自己資金の百二十億を加えた場合においての
合理化によ
つて、
肥料がどのくらい安くできるかという点についての
説明があ
つた。それによると、私の配憶が間違いでないとすれば、大体
合理化による直接の原価
引下げ分がトン当り二千五百円くらいである。これはほかの
資料を見ても大体そのくらいにな
つておる。そのほかにどのくらい
引下げになるかというと、石炭
合理化による
引下げ分がトン当り千六百円見当、それから電力の供給なりその他によるものが千三百五十円、結局両方合せて約五千五百円、現在の約二割の生産原価
引下げになる、大体こういう御
説明であ
つた。これはいろいろなものを見ても、大体において二千五百円くらいの
合理化による
引下げはできそうだ。しかしそのほかの石炭の
合理化による
引下げが大体トン当り千六百円、並びに電力の増配と、電力単価の
引下げによる
硫安の生産費の減が千三百五十円、この二つがどうも納得できない。なぜかというと、石炭は
合理化を相当進めていることは事実である。しかしながら縦坑開発によ
つてはたして二割なり、二割五分も石炭原価が下るかということは、相当問題です。しかも現在は中小
企業からだんだん大
企業を中心としたカルテルの方向に行
つている。こういう状況ではたしてこれだけのものがトン当りにして
硫安が下るかどうか。さらに
硫安の
内容を見ると、つまり電解法の方では
硫安の使用量、これは多少下るかもしれないけれども、わずかに三百キロか四百キロ足らず、ガス法によ
つても一トン当りこれがさらに
合理化によ
つて下る。その場合にその中に含まれる石炭原価がはたしてトン当り千六百円というようなことに下るかどうか。これはどういう根拠から具体的な計算をしたのかお聞きいたしたい。それから電源の単価にいたしましても、現在は大体六〇%くらいしか配給にな
つておらぬから、操業度もこの前の
説明では七五%、あるいは八〇%という
お話であ
つた。しかしこの
合理化を完成すれば、今の約二百八十万トンの能力が三百十万トンになる。そういう高い操業度を持つことがはたしてできるかということを
考えると、この点も相当私は疑問だと思う。しかも電源単価はどうかといえば、現在キロワット・アワー三万円かそこらでしよう。しかしこれからできるものは十五万円、あるいはもつとする。こいう高いものをも
つて大口需用のキロワット・アワー一円十八銭という単価が保てるかどうか。もしそうした場合においてはほかの中小
企業なりが非常に高い電力料金を背負わざるを得ない。こういうことがはたしてできるかどうか。全体を通じてみて
政府が約百六十億、そのほかを通じて二百億、自己資金を百二十億・大体において三百二十五億を通じて二千五百円の
引下げ、そうしてあとは約三千円というものは他産業の
合理化に依存しなければならない。こういう
合理化方式というものが、はたして今日の自由経済のもとにおいて実を結ぶかどうか疑問だと思う。まかり間違えば、こういうやり方によ
つて実際には
引下げにならないにかかわらず、
政府資金なり、何なりを資本家によけいに貸してやる。ほかの産業にもその例がある。うまいことを言
つては
政府資金をだんだん引上げて行く。そうしてあとはいろいろな政勢力とタイ・アップして不正をしているのがたくさんある。これは船価の問題でも
はつきり出ている。わずか十六億が二百七十何億にふえている。しかも何にもしない船主がただもらう、こういう状況が必ず出て来ると思う。連関産業の原価
引下げに六割以上依存する、しかもそのために三百数十億の金を投ずるという
合理化方式が今日の状況においてはたして適当なりやいなや、これをひとつ、
政治的な見地からは別ですが、技術的な見地からお
答えを願いたい。できればこれに対する
はつきりした
資料を要求しておきます。電解法とガス法を通じてみて、他産業に依存する原価
引下げが五〇%、三九%、こういうべらぼうなやり方というものが現実に成り立つかどうかを、私は非常に疑問に思います。
その次に、かりに三百二十億を投じてこれだけの原価
引下げができたとしても、片方においてどうかというと、当然解安
会社なり何なりの負債は増して行くわけです。現在でも二百四十八億ある。そのうち長期のものが百三十億ある。これにさらに百六十億を加え、自己資金を加える場合において、利潤なり利子補給というものはどうするか。現在でも千百十五円が要するに工場原価の中に繰込まれている。それがこれだけふえて行くと、私どもの大ざつぱの計算では、どうしても六千円は利子がふえて来る。二千五百円を減らしても一方千円は利子をふやさなければどうにもならぬあるいは千二百円くらいになる。また当然これだけ自己資本がよけいになる。自己資本がよけいになるから利潤もよけいにしなければならぬ。さらに減価償却はどうか。これまたかれこれ千円近くになる。こういうものを
考えてみれば、工場の原材料費や労賃はある程度少なくなるかもしれない。しかしそのほかのいわゆる事業費に相当するもの、これはむしろ原材料費や労賃その他で減
つた分だけこつちでふえる。この矛盾をどうして解決するか。そこで
政府から出されたいろいろな
資料の中にも、現在は一割なんだが、これを七分にするとか五分にすればこうなるという計算が出ている。そうすればいやおうなしにこれはどこかでだれかが利子補給をせざるを得ない。片方において
輸出会社をつく
つて、年間十五億くらいのものを損をして、その損を覚悟でや
つておる。そうして片方において約二千円ないしは二千二百円の利子並びに利潤並びに原価償却がふえて来るのはさま
つた話、この矛盾をどうして解決するか。私はちつとも減らないと思う。これらを綜合して
考えた場合に、それをどうしても逃げる道がないかといえば、二つしかない。
一つは
国内の単価を引上げる。そうでなければ
政府にくらいついて、またいろいろな形でも
つて利子補給をしてもらい、あるいはもとの借金を値引きをしてもらう。今大産業でや
つておるのはみなこの手です。石炭屋がや
つておる。船屋がや
つておる。製鉄屋がや
つておる。それをまた
肥料工業がや
つて、しかもその効果は大してない。私はこの二点から見て、この
合理化法案というものは、要するにそのための
輸出会社法案であり、あるいは
合理化法案であるように思われる。これらについての見解を、事務的な見解でけつこうですから、ひとつ聞かせていただきたい。
それからいろいろの
資料をいただきましたが、これだけでは不十分です。これに対する的確な
方策がなければならぬ。これに対する利子補給を、かりに皆さんの予定をした五分といたしましても、それには少くとも十億近くの金がいる。この金をどこから持
つて来ますか。全部借金が出た場合においては出て来るのです。さらに百二十億の自己資金をためる。これもどこかへまた高く売らなければ金がたまるはずがない。この
内容は経済的に見ると、非常に疑問だらけである。この原価
引下げ、
合理化という一点だけでも、どうしても私どもには納得できない。これをひとつ、
政治的な見解は別として、事務的に御解明をいただきたい。