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1953-10-28 第16回国会 衆議院 農林委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十月二十八日(水曜日)     午後三時四十三分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 綱島 正興君    理事 平野 三郎君 理事 金子與重郎君    理事 川俣 清音君 理事 安藤  覺君       佐々木盛雄君    佐藤洋之助君       松岡 俊三君    吉川 久衛君       芳賀  貢君    稲富 稜人君       日野 吉夫君  出席国務大臣         農 林 大 臣 保利  茂君  委員外出席者         農林事務官         (農地局長)  平川  守君         食糧庁長官   前谷 重夫君         林野庁長官   柴田  栄君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 十月二十八日  委員佐々木盛雄辞任につき、その補欠として  林讓治君が議長指名委員に選任された。 同日  委員林讓治辞任につき、その補欠として佐々  木盛雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  冷害対策に関する件     —————————————
  2. 井出一太郎

    井出委員長 これより会議を開きます。  冷害凶作対策に関して議事を進めます。質疑の通告がありますからこれを許します。金子與重郎君。
  3. 金子與重郎

    金子委員 昨日当委員会で、今度の冷害等凶作対策費として緊急に政府が捻出する金が、一応総体において農林関係七十億、そのうち二十億は建設、労働、厚生というようなものが入りまして、正味五十億ではあるが、一方農林省関係公共事業費節約が相当大きく行われまして、きのう官房長お話によりますと、約三十億近い金が節約になつておる。そうすれば五十億と差引き二十億だけが今度の冷害対策費になる、総体的に見ればこういう計算になるわけでありまして、きようその内容をつぶさにお伺いしまして、これは単に新しく補正いたしまするところの冷害対策費に対して検討するだけではなしに、その財源の持つて来た根源をよく突き詰めて参りませんと、冷害対策費で見積つたが、逆に冷害対策にもなり農村の再生産の上にも大きく役立ついわゆる二十八年度予算における緊急な仕事をやめて、これを冷害対策費に向けたということでは、事務の煩瑣と仕事の渋滞を来す以外何ものも効果がない結果を来すので、きよう委員会要求し、同時に各関係の局からお伺いすることにしたのであります。そこでただいま林野局長がおいででありますから、林野関係につきまして一応説明を求めたいのでありますが、まず一応林野関係経費節約内容について御説明を願いまして、それから逐次質問に入りたいと思ひます。
  4. 柴田栄

    柴田説明員 お答え申し上げます。現在一応節約額として事務的に決定されておりますものは公共事業費関係だけでございまして、その他のものにつきましては、総額農林省割当てられたものの内部調整が確定いたしておりませんので、公共事業費関係についてのみお答え申し上げたいと思います。  林野関係といたしましては、治山事業費におきまして北海道関係を含めまして事業費中の国費総額が五十一億九千三百八十六万六千円になつておりますが、しかしながらそれが治山治水費は一率に節約をということになりまして、一億一千八百四十六万一千円、比率にいたしますと二・二八%に相当いたします。さらに造林事業について申し上げますと、国費分事業費総額が三十三億九千六百六十四万六千円でございまするが、それに同様の二・二八%の節約額といたしまして、七千七百四十七万円の割当てと申しまするか、同率の節約額を一応決定を見ておる次第であります。さらに林道事業につきましては、国費総額二十二億六千八百三十三万七千円の一〇%節減ということで、二億二千六百八十三万三千円の節約額を一応了承せざるを得ない、こういう状況になつております。  なおここにちよつとつけ加えさしていただきたいのは、治山事業費におきまして、緊急復旧分として六億一千六百四十万円というものが既定予算に組まれておるのでありますが、これは当面災害を一応緊急復旧として処理いたしまして、治山事業につきましては、過年度災は一般の事業を総合して既定予算に盛り込むという計画で従来も予算が組まれておるという関係上、これも総事業費の中に含めて節約額対象になつておるというので、私どもとしては非常に苦慮いたしておる面があるということをつけ加えさしていただきたい、かように存じます。
  5. 金子與重郎

    金子委員 この節約は、あなたの方から、この事業は時期やあるいはその他の諸条件のために執行不可能だという見解から出たのではなくて、政府全体の立場から、頭から天引きでこれを幾ら節約、これを幾ら節約というふうな形で来たもののように私承つたのであります。そうしますと、たとえば林道ようなものでもそうですが、予算がきまつてしまえば、およそ各県、末端事業実施する機関に対して数字割当等をやつておると思いますが、それは今ここのところでこういうふうな問題が惹起して、これを急に節約という名において頭から天引きするということになると、これは末端にまでずつとその影響が——末端では当然できることとして一応期待していたものが途中で変更される、不可能になる、こういう点があるんじやないかと思うのですが、その点はどういう事情になつておりますか。
  6. 柴田栄

    柴田説明員 お説の通り、本年度は数次にわたりまする暫定予算によりまして、事業の執行をいたして参りましたので、暫定予算分は一応令達も済んでおりますが、本予算分につきまして、これも総合して事業を進めなければならぬということで、本予算が確定したとほとんど同時に、従来査定を進めて参りました対象に対しまして、予算とにらみ合せまして事業の可能な内示をいたしておる次第であります。各地方におきましては、それぞれそれに従つてすでに仕事の準備をお願いしておるという実情にございますので、この際実はかよう節約をするということは、事務的に非常に煩瑣であると同時に、これを御担当いただく面においては、これは令達がない仕事でございますので、公式ということはなかなか言い切れないかもしれませんが、一応お約束しておる額であるということで、この際それを天引き節減ということには非常に無理があるということで、これの処理に私どもは、実は相当苦慮いたすという実情にあることを、率直に申し上げなければならぬ、かよう考えます。
  7. 金子與重郎

    金子委員 質問をしたいことがたくさんありますけれども、これはたくさんの問題に関係がありますので、今時間を節約する関係上、私が質問するかわりに次の資料を御要求申し上げますから、それによつて後にお答え願いたいと思います。  まず第一に、今山林事業費の中の直轄治山事業費治山事業費補助造林事業費補助林道施設費補助と、こういう項目だけここに出ておりますが、これをこの下の段まで細目を出していただいて、本年度予算とそれから節約金額、それに対するパーセンテージというものと、なおこれに加えて、以上申し上げた事業が、今度の冷害対策として同じようなことを盛つてあるわけでありますが、それの面に役立つものと——これはあなたの方では末端まで割当てるのでありますから計画ができておると思うのです。その計画が今度冷害対策として役立つ費用であるか、役立たぬ費用であるかということは見当がつくわけですが、その点はどうですか。
  8. 柴田栄

    柴田説明員 地方別災害を受けておる所と受けておらない所とを区分いたさなければならないことになりますので、ここでただちにその資料を調製することは、ちよつと困難だと思つております。
  9. 金子與重郎

    金子委員 それを地方別に役立つ、役立たぬじやなくて、費目別に、この費用冷害対策として役立たせられる費用とそうでない費用は、地方別でなくて、たとえば事業性質としてならわかるわけですね。
  10. 柴田栄

    柴田説明員 事業性質と申しますれば、それぞれの事業において、造林事業に関しましては多少事情は異なつて参るかもしれませんが、治山事業林道事業全般を通じますれば、冷害対策には十分役立つ仕事になる、かように存じますが、ただ治山事業の中でも山地治山関係になりますると、冷害地帯が多く積雪寒冷地帯を含んでおるということで、時期的に仕事が不可能になるという地方も出て参りますので、多少地方別に、たとえば海岸林等砂地造林については、救済事業も兼ねて仕事ができる、これを増量することによつてさらに役立つということになりますが、半面に山地関係におきましては、節約を受けまして、さらにそれをプラスするということが不可能になるという問題で、かえつてアンバランスを生ずるという結果になる地方も出て来る、かように思います。
  11. 金子與重郎

    金子委員 それでは今申し上げた基本資料はおわかりと思いますが、それを出すのと同時に、こういうふうにお願いしたいと思います。これは頭から天引きされて来ておる数字だが、そうでなしに、あなたの方から自発的に、要するにこれを削つてもまた与えなくてはならぬ費用になつて、かえつてむだになる、こういう見解から、良心的な立場でこれを節約したらば幾らになるという、自主的な一つ計画表を出してもらいたい。その意味は御了解できますか。
  12. 柴田栄

    柴田説明員 了承いたしました。
  13. 金子與重郎

    金子委員 大体二日くらいでできますか。
  14. 柴田栄

    柴田説明員 大体できると思います。
  15. 井出一太郎

  16. 川俣清音

    川俣委員 今まで農林当局から聞いておりますと、治山治水よう関係の分については、削除がなかつたとこう説明されておつたようでありますが、この表を見ますと、やはり依然として直轄治山事業または治山事業補助に対しまして二・二%からの削減が行われておるようであります。これは一様にやはり削減なんでありますか。これを地方別で見ますと、そういう削減のない所もあるし、平均してこうなつた、という意味ですか、その点の説明が十分でなかつたと思います。
  17. 柴田栄

    柴田説明員 現在におきましては、一応総額に対するパーセント節約額を相談せざるを得ないという状況になつておりますので、できる限り災害地あるいは冷害地等との今後の対策等も考慮して、多少の差異はあつても、支障のなるべく少いよう節減させていただくということを事業別に考慮をいたさなければならぬのではないか、かよう考えておりますが、現在はさよう資料をもつて節減をいたしたことでないということを御了承願いたいと思います。
  18. 川俣清音

    川俣委員 そういたしますと、閣議決定事項によりますと、治山治水事業については削減を加えないという決定をしておるようですが、それは閣議変更になつた結果ですか、それとも農林省内部だけでかつてに処理したのですか、その点をお尋ねしたい。
  19. 柴田栄

    柴田説明員 どうも閣議決定の際には、治山治水事業に関しておそらく節約はしないということで、一応お示し願つた次第でありますが、その後さらに節約額の分担において、次の閣議においてさらに御審議を続けられた結果が、治山治水費についても一応節約をすべきであるという御決定に基いて、節約割当てをいたしたとこういうことに了承いたしております。
  20. 川俣清音

    川俣委員 そうすると、最初の閣議決定を取消して、再び削減をするということになつたというふうに了解してよろしいですか、今までの説明ですと、治山治水事業については、削減がないという説明であつたわけですが、この表が出て参りますと削減があるのであります。その点疑問なんですから、その点だけ確かめておきたいと思います。
  21. 柴田栄

    柴田説明員 さような経過で決定したものが、さらに再改訂されたというふうに御了解願つてさしつかえないと思います。
  22. 川俣清音

    川俣委員 そういたしますと、おかしいと思うのですが、災害地建設省の分では削減がなかつたように聞いておりますが、それらも再びやはり削減するようになつたのですか、この点均衡のぐあいを聞いておきたいと思います。
  23. 柴田栄

    柴田説明員 これは建設農林を通じまする治山事業費に対して、同様の取扱いが決定した次第であります。
  24. 川俣清音

    川俣委員 それでは細論に移つてお尋ねしたいのですが、先ほど長官説明がありましたように、このたびの風水害等に処するために、たしか六億余の緊急事業費をもらつておるはずであります。そうしたものまで削減をすることは政府約束しておつたものをみずから蹂躙するということになるのではないかと思いまするけれども、この点についての御見解は、長官として無理じやないかと思いますが、あなたの立場においてもう一度御答弁願いたい。
  25. 柴田栄

    柴田説明員 その点はむずかしくなるわけでありますが、一応これは緊急復旧といたしまして、起るであろうものに対する予備的な経費になつておる次第であります。本年のごときは、すでに打続く災害で相当この分は出ておるのであります。さらに不足いたしまして、水害対策として治山治水費要求いたしておりますので、全体を通じてこれに対する査定をするというお考えだとすれば、一応節減いたしましても、この方で見る。こういうことにもなりまして、あるいは落してさらに増加していただくということにもなるという理由になるかもしれないと思つておりますが、一応これを基礎として、さらに不足分を増加していただくといつた方が簡便であろうということだけは、私ども考えられる次第でございます。
  26. 川俣清音

    川俣委員 特に治山治水というよう事業は、今までとかく等閑に付せられておつたというような問題を、今度の災害のために非常に注目されまして、今日の計画ですら不十分ではないかという議論が世論として起つておるのであります。こういう事業費削減するということになりますれば、この要望にこたえないばかりでなく、新しい冷害に対しましても、あるいは九州災害事業にいたしましても、これらの事業を遂行し得ないということが起つて来ると思うのであります。ことに今回の冷害にいたしましても、潮風に当るというよう災害は、政府がなすべき手をなさなかつたところの災害である。あるいは九州災害にいたしましても、これらの治山治水事業が十分行われておりましたならば、あれだけの災害を半分なりあるいは三分の二なり防ぎ得たであろうと思うのであります。こういうことをやらないでおつて災害が起きたものだけに手を打つために、こうした根本的な事業費削減して行くということになりますと、これは本末転倒な形だと思う。政府インフレを押えると言つておりますが、これではインフレを押えるわけではなく、むしろ将来災害が起りまして、ますます国費の膨脹を来すということになる。こういう根本策をもつと林野当局説明をして、どうして了解を得られなかつたか。これをもう一度お尋ねいたします。
  27. 柴田栄

    柴田説明員 その点に関しましては、まことにごもつともな点でございまするが、根本的な治山治水対策に関しましては、御承知通り、内閣においても基本要綱を御審議を願いまして、総合的に、計画的に根本から建て直すということで、御審議を願つておりますので、今回の冷害水害等をめぐりまして、緊急の問題を一時処理して、新しくそれらをとり入れて根本施策を講ずるというお話で、まことにやむを得ず一応従わざるを得なかつたということであります。基本計画に対しましては、私ども責任の持てる対策を立てさせていただくということについて、専心努力をいたしたいと考えておる次第であります。
  28. 川俣清音

    川俣委員 そういたしますと、二十八年度計画というものは、治山治水あるいは造林にいたしましても林道にいたしましても、一つ計画をもつてつたのではなくして、削減されれば削減し得る余地があつたというふうにも受取れないことはないのであります。私はそういうでたらめな要求林野庁から出されたとは信じません。そんな削減されてもいいよう要求を出したとは私は信ぜられない。おそらく林野を受持つておられる林野庁としては、やはり基本政策をこれだけのものをやつておられた。むしろもつとやりたいことをある程度削減されたけれども、なおこれだけでもやらなければならないというかたい決意でこれらの事業が行われておると思うのです。ことに地方等におきましては、これらの補助を期待いたしまして、すでに事業に着手し、計画を進めておる。これらの計画をまたかえなければならぬということになると、いかにこの計画浪費されたか。地方においてどのくらい迷惑するかわからぬと思う。迷惑していながらなお削減しなければならないということになると、また新しい計画をすることになる。同じ年度内に二度も三度も計画をかえるということは、いかに事務費浪費であるかを考えなければならぬ。今行政費を幾分でも削減ようとしておる。これは浪費削減ようというのであつて浪費を出そうというのではない。ところがこれではますます事務費をきしているのではないか。これはもう少し、長官職を賭してでも努力するということになれませんかどうか。
  29. 柴田栄

    柴田説明員 お説は私どももまことにごもつともと存じておりまするが、すでに二十八年度計画そのものが、私ども年次計画を立てたものに対しまして、ほとんど計画の根底をくつがえすよう予算しかついておらないという状況でございまするので、かよう計画の進め方では、とうていただいまお話よう根本的な施策実施できないということで、根本対策に対して御審議を願つておる次第でございまするので、私どもが身命を賭して御奉公しなければならぬ点は、この根本対策実施にある、かよう考えておる次第でございまして、今日までの計画がでたらめではないかという仰せは、いささか私ども計画そのものについては、林野計画は御審議願いたいと存じまするが、計画自体はきわめて実施面においては遠いというようなことを根本的に解決しなければならぬということを、私申し上げておるつもりでございまするので、御了承願いたいと思つております。
  30. 川俣清音

    川俣委員 私積極的にでたらめだと申し上げたのではない。削減に応じるようであればでたらめな計画であつたという非難受けやしないか、こういう点をお尋ねしているのですから、その点誤解のないように願いたいと思います。  そこで私ども、これではどうも満足できませんので、何らかの処置をとらなければならぬと思います。そこで資料といたしまして直轄治山事業——金子さんと同じ結果になるかもしれませんが、この局別事業量、それから治山事業補助局別事業量、同様に造林事業費補助局別事業量林道施設政府資金補助の、これもやはり局別でもけつこうでありますが、詳しく言うならば県別まで出ておるはずだと思いますから、できれば県別までお示しを願いたいと思うのであります。いずれにいたしましても、計画されました事業量とその削減が一様でありまするから、パーセントを出して削減の事実を示していただければけつこうだと思います。事業量削減の率を示していただきたい。  林業に関する質問はこの辺にしてやめまして、あと金子さんに続いて農地局の方にお尋ねいたしたいと思います。
  31. 井出一太郎

  32. 芳賀貢

    芳賀委員 十月二十二日の当委員会において、農林大臣は、林野庁の例の特別会計臨時国会補正予算として行うかどうかというよう質問に対して、農林大臣としては、これを今国会において行う考えはない。しかし行わなくても実質的には仕事を進めて行くような形をとりたいというようなことを、あまり明確でないような表現で答弁をしておつたわけでありますが、今の段階においては、やはり依然として大臣答弁ように、今度の補正予算においては、林野特別会計補正というようなことは、長官としては行われ得る見通しであるかどうか、お伺いしたいのであります。
  33. 柴田栄

    柴田説明員 第一次補正として御審議を願う段階には参つておりませんが、冷害対策事業といたしましては、さきにも御説明申し上げたと存じておりますが、国有林野事業といたしまして林道事業治山事業造林事業、あるいは伐採事業、あるいは売払いに関する調査の事業等を含めまして、約八億の仕事を繰上げ施行をすることに関しまして大蔵省約束ができておりますので、ただちに役立てるよう実施に移りたいと考えております。
  34. 芳賀貢

    芳賀委員 過般の小委員会において長官は、多分十四億くらいはそういうものがあるというお話をされたのでありますが、これは私の記憶の間違いでしようか。
  35. 柴田栄

    柴田説明員 冷害対策として約八億、それから水害復旧費として約六億、合計いたしまして十四億程度をぜひとも計画しなければならぬ、かように申し上げた次第でございます。
  36. 芳賀貢

    芳賀委員 問題は大蔵省長官との間にそういうよう一つの確約があるとしても、これは大蔵省が、窮極においてそのよう一つの協定を確実に履行してくれるかどうかは、なかなか見通しが困難であると思いますが、そういう場合においては、やはり議会の承認を得て、それだけの支出を行うことの方が正当性もあるし、確実性もあるというふうに考えるわけでありますが、今のような措置で事足れりと長官考えておりますか。
  37. 柴田栄

    柴田説明員 なかなかむずかしい問題がありまするので、現在ただちに第一次補正に提出できないということでございまするが、これは責任を持つて実施できるということにお約束をいたしておりまするので、御了承願いたいと思います。
  38. 芳賀貢

    芳賀委員 農林省関係削減の内訳、これは林野関係は、結局四億二千三百万程度節減を受けておるわけでありますが、これは予算全般においてこういう節減であると思いますが、一面政府冷害対策の原案を見ると、大体林業関係でわずかに二億四千万くらいしか予算を盛つておらぬわけですが、そういたしますと、四億二千何がしの削減の中で、冷害費と見なされる区域の中における削減はどういうよう数字になつておりますか。それと今度の冷害対策の新しい予算とを対照した場合に、はたしてプラスになるか、マイナスになるかという点が問題点になると思いますが、そういう数字資料があれば御表明願いたいと思います。
  39. 柴田栄

    柴田説明員 節減事業別地方別の具体的な案は、実はまだ持つておらぬわけでございます。御承知通り天引比率節減をいたしておるということなので、これから調整いたさなければならぬ、かよう考えておりまするが、これに対しまして、冷害関係として現在まで一応予算案として話のついておりますのは、公共事業費で約三億、それから炭がま助成が一億足らずということで、約四億というものが、一応林野関係として明確になつております。そのほかに臨時救農施設として四億五千万円というものを一応見られておりまするので、これは全般を通じまする仕事地方におきまするやや平均された仕事を、小規模のそれぞれの適した仕事において配付するという、結果において私どもが担当しなければならぬ面がまた出て来るのではないか、かよう考えておりまするが、この数もまだ確定いたしておらない状況でございます。
  40. 芳賀貢

    芳賀委員 常にわれわれの先輩である松岡委員が言われておるのですが、今度の冷害は、国有林分布状態から見て、その大部分が該当地区になつておるので、松岡先生の意見をかりるまでもなく、たとえば北海道にいたしましても、昭和二十六年度には林野事業で約四十億以上の収益が上つてつた。二十七年度には二十四億、こういうよう事業の中から利益が上つておる。そういう場合には、林野庁としてはやはり大蔵省に対しても自信のある、財政面においても対決できるような根拠が私はあると思うのですが、そういう点に、先ほど川俣委員も言われたように、長官としては、ひとつ不退転の決意でぶつかるという覚悟をさらに期待したいと思うわけです。これも小委員会長官ちよつと述べられたけれども林野整備に関する法律を、こういう冷害災害等に当面した場合に、あるいは延長しなければならぬだろうというようなお考えもあつたようでありまするが、これを政府立場において延長の取運びをするお考えがあるのか。それともできないとすれば、これも議員立法ような形でやらなければならぬわけだし、その点もひとつ伺いたい。
  41. 柴田栄

    柴田説明員 この問題は、あるいは延長した方がいいか、延納その他の取扱いによつて処理した方がいいかという点は、いま少し検討の余地があると存じまするが、情勢によりまして、間に合うように、必要があれば政府でこれを修正すべきである、かよう考えております。
  42. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうことであれば、臨時国会にはもし間に合わぬとしても、通常国会には出すようなことになると考えてさしつかえありませんか。
  43. 柴田栄

    柴田説明員 当然来年の六月末をもつて切れる限時法でありまするので、修正を必要とするというはつきりとした裏づけが出て参りますれば、次の通常国会には御審議を願わなければならぬように相なるであろう、かよう考えております。
  44. 金子與重郎

    金子委員 ただいま林野庁長官質問したのと同じような傾向の問題でありますが、まずもつて今度政府一つの率をもつて節約と言うか、節約という言葉は当らないのでありますが、とにかく節約と称してしぼり出したその内容農地局関係のものを少しこまかく御説明願いたいと思います。
  45. 平川守

    ○平川説明員 お配りしてあります資料で概略のことはわかるわけでありますが、農業部門の土地改良費におきまして、全体として約二十億の節約になつております。このうち土地改良事業費の部門におきましては十二億二千万円の節約になつておりますが、これは、当初の予算額の約百七十五億に対するものでございます。それから開拓事業費におきましては七億九千万円ほどの節約になつておりますが、これは当初の予算総額百十四億に対しての節約額でございます。農業機械整備費は二億七千五百万円に対しまして、二千四百万円の節約、全体といたしまして七・〇二%の節約をいたすことに相なつたのでございます。これは林野庁長官からもお話がございましたように、結局閣議の方で全体の財政計画の一環としてこの程度節約をするということがきまつて参りましたために、われわれの方といたしましては、事業がすでに計画をいたして進行中でございますし、節約をいたす考慮的な余地というものはないのでございますけれども、しかし全体としての決定がありました以上は、それに即応して事業の繰延べその他によりまして、これだけの節約をいたさなければならぬというよう考えております。各種の事業別節約額も、大体その比率において按分的に割振つておることでございまして、かりに節約をいたすといたしますれば——特に節約のできる費目はないかということも相当に議論をいたしたのでありますけれども、そういう部門はない、いずれもやむを得ざることであるので、結局各部門から按分的に節約するということに考えたわけでございます。
  46. 金子與重郎

    金子委員 これは二十億からの節約であり、ことに土地改良だけで十二億の上になつているのであります。そうしますと、実施地区、いわゆる地方へ配分しない金はどの項目にあるのですか。国営事業のほかにもありますか。
  47. 平川守

    ○平川説明員 これは、大体において予算の内示ということをいたしておるわけであります。ただ現金はまだ参つておりません。国営事業におきましては、一部指令しているものもございますけれども、これについては、この話がございましたために、節約があるかもしれぬという条件つきで最近示達を出しております。その他は内示でありまして、正式の金が行つておるわけではありません。
  48. 金子與重郎

    金子委員 一例として、この間予算修正をいたしました中で七億の土地改良費だとか、あるいは特にあげた畑地灌漑なんという金は、そうすると全然なくなるということになりはしませんか。
  49. 平川守

    ○本川説明員 全然なくなるということにはなりませんけれども、やはり一応この比率で減額されるというふうに考えております。
  50. 金子與重郎

    金子委員 そうしますと、あなたの方は内示だということになつているけれども、われわれが出先へ行つてみますと、もうそれよりもはるかに大きな申込があつて、それだけはもう確実だ、それ以上どうにかならぬものかというのが地方の期待なんでありまして、出先の各県あるいは実施区域とも、これで非常なまごつきが来ると思うのですが、局長の方はどう考えておりますか。
  51. 平川守

    ○平川説明員 その点が私ども節約は困るという一つの重要な理由であります。すでに形式的には内示でありますけれども、各地方におよそこのくらいの金が行くということを示してあるわけであります。それによつて地方計画を立てているのに対して、また一部事業に着手していうものもあるのに対して、これを減らすのでありますから、地方としては非常に困るだろうということで、節約については賛成をいたさないわけでございます。しかしやむを得ずこういうことになりますれば、本年度に予定しておりました事業の一部を明年度早々に繰延べをするというようなことにならざるを得ないかと思います。
  52. 金子與重郎

    金子委員 そこで災害地区に今度救農的な性格を持つ事業をやるといいましても、土地改良部門に対しては、おそらく大体において、今節約というか、天引きしたよう事業種目に予算を振りわけることになりまして、それ以外に別な新しい事業というものはあるものでないので、それらの費用を増額することによつて農業の生産の増大を期し、同時に当面の問題としてはこの冬の救農対策にもなるというのでありまして、ただ一つ例外として、災害がなかつた所から削つて来るという点は若干ありまするけれども、今度の災害地域というものは非常に広いのでありますので、これは非常な矛盾になりますが、そこで厳正な意味で相当大きく予算要求し、それが大蔵省査定——二十八年度査定査定を加えられてそうなつたのでありますから、おそらく節約の余地というものがあること自体がおかしいのでありますが、それでもこれは虚心坦懐に、こういうふうな予算の非常なきゆうくつさを持つているときにこういう事態が起つたとすれば、農地局関係で一体節約というのができるのですか。事業立場からいつて、これは頭から来たのだからやむを得ぬということになるのですか。なぜわれわれがそういうことをお伺いするかというと、今本委員会冷害対策費を百十億を下らないことということを基礎にして、こうした各種の事業に振り当てて、一つ計画を詳細に立てたのでありますが、それがよしんばその通りになつたといたしましても、この節約と称して同じよう仕事から天引されておるものがあるとすれば、それは無意義になりますので、当然この面でも今度の予算で手を入れなければならぬということも、私どもは覚悟しておるわけです。そこでそのときの参考になるわけなのでありますが、一体この中からたとい幾らかでも出せるのか出せないのか、事業遂行という意味から行きまして、大蔵省の頭からよこせという立場でなく、あなたの見解はどういうふうにお考えになつておりますか。
  53. 平川守

    ○平川説明員 これは出してさしつかえないということは決して言えないわけでございます。ただ一定の計画で、本年度はこれだけの事業分量をやろうということを予定しておりましたものの七%程度を四月、五月に繰延べるということで行くよりいたし方があるまい。これだけどうしても節約しろというのでありますから、そうして節約してもさしつかえない仕事が全然ないわけでございますから、やむを得ず全体の仕事——あまりパーセンテージを大きく節約するとどこかの地区が困るわけでありまして、従つてこの七%を薄くかぶせて、少しずつ明年度に繰延べてもらう。しかしこれについては、明年度予算の配分の際に優先的にこの部分は埋めてやるということはどうしても考えなければならぬと思います。そういう措置によつて、三月までに終るべき仕事の一部分を、四、五月に繰延べることをがまんしてもらうということよりいたし方がないのじやないかと思つておるわけであります。
  54. 金子與重郎

    金子委員 本年度ということになると三月でありますけれども、これは私の見解が違うのかどうか、いわゆる本年度事業というものはたいてい五月までに完了して行くことが今までの慣例のように思つておりますが、事業実施期間は、締めくくりは五月一ぱいでいいわけですね。
  55. 平川守

    ○平川説明員 実際上そういうことになつておるわけであります。
  56. 金子與重郎

    金子委員 それではそれ以上こまかいことを言つてもしようがありませんから、結局先ほど言つた今後予算の捻出面に対しても手を入れる関係上、当初予算それから今度の節約額、それに対するパーセンテージ等、これの全面的というか、あるいは部分的にか、相当復活のための手を入れるわけでありますから、それに必要な資料を出していただきたいと思います。
  57. 芳賀貢

    芳賀委員 関連して局長にお伺いします。この削減のうち、これは局長だけで全部おわかりにならぬかと思いますが、食糧増産に関する費目の節減はどのくらいになつておりますか。
  58. 平川守

    ○平川説明員 この表にございます中で、しいていえば、これは全部食糧増産に直接、間接にみな関係のあるものであります。全部いわゆる五箇年計画の一環になるべきものでございます。ただ、しいていえば、一般鉱害の対策事業費、しかしこれも鉱害を受けて減産をしているものに対する復旧費用でありますから、マイナスをカバーするということではありますけれども、現実には食糧増産に関係して来るわけであります。いわゆる五箇年計画という面から見ますと、これなどは項目外でありますが、そのほかには灌漑、排水にいたしましても、土地改良にいたしましても、開墾、建設、干拓、開拓全部これはいわゆる五箇年計画に盛り込んで、それぞれ何億かの増産効果を見積つておる事業であります。
  59. 芳賀貢

    芳賀委員 そういたしますと、五箇年計画の食糧増産がこの経費削減によつて相当形がくずれるということになると思います。もちろん今年の災害は農作物災害が非常に多いのであつて冷害関係あるいは水害等によつて、御承知ように平年よりも千百万石も米だけでも減収しておるわけです。そういう場合においては、なおさら明年以降において、今までの食糧増産の計画より、まだ一層この災害によるところの非常に大きな影響をその計画の中においてカバーできるような態勢に持つて行かなければならぬというふうに、これは常識として考えられるわけです。今度削られた費用というものは、局長の言われるように、ほとんどが食糧増産というような実質的に実のある費用を削られたということになると、これは国の将来における食糧自給態勢の上からいつても、非常に大きな影響があるというふうに考えられるわけであります。これは当然吉田総理なりあるいは農林大臣等の意図によつてこういうことが行われたのであつて、ただ単に局長を追究するということも、あるいは的をはずれるかもしれませんけれども、そういうよう一つの欠陥がある。一律に七%削るとか、あるいは一〇%削るとか、そういうようなただ単に算術的な経費節減をして、またそれを冷害対策にまわすというような場合においては、これは右の手からとつて左の手へ移すということだけで、実質的には何ら冷害対策を充実させるということにもならぬと思うわけであります。それでこの表にもありますけれども冷害の一番ひどい北海道等においても、三億四千万円以上も節減しておるということになると、それならば北海道の土地改良あるいは開拓等の事業に対して、これ以上の数字がはたして出るか出ないかということも、これは実際問題として問題になると思うわけなんですが、そういうことになると、むしろ冷害地帯の劣悪な生産条件にある地帯の既定経費を削つて冷害の救済を中心とするような救農事業がどれだけ実施されるかというようなことになるわけでありますが、今度の冷害を中心としたところの事業というものは、結局被害を受けた農家に対して、現金収入の道を開くというところに一つのねらいがあると思いますけれども、そういう面については、具体的にどういう形で、土地改良とかあるいは灌漑排水とかの対象事業を進めて行くか、その点をお伺いしたいのであります。
  60. 平川守

    ○平川説明員 これは、節約の方は冷害対策費の裏打ちというだけの考え方ではなしに、全体の災害対策費の財源の一部と考えられておるようでございます。従いまして先ほど申し上げましたように、どこを削つていいという面がございませんために、やむを得ず一律に一定の比率で削つたようなかつこうになつておるわけであります。今回の冷害対策につきましては、これはおよそ被害の程度というものを勘案いたしまして、これに対して、いわゆる労賃収入を得させるという道の一つとして、この公共事業仕事を配分して参りたい、かよう考えております。なお具体的の数字は今検討いたしておりまして、地方別の内訳等はまだできておりません。
  61. 芳賀貢

    芳賀委員 これに関連して、十六国会において、例の土地改良法の一部が改正になつて、市町村の自治体がその仕事をやるということになつたわけですが、そういう場合において、この町村が救農的な意味を含めて土地改良事業計画を立てるというようなときがありましても、結局資金的に非常に見通しがつかぬわけであります。特にそういう水害とか冷害地帯においては、それでなくても税収入等が非常に減つて、起債かなんかによつてこれを切り抜けなければならぬというようなことになると思いますけれども、こういうような、自治体が救農事業を主体としたような土地改良をやるような場合におけるその取扱い方は、当然起債等の問題はこれは優先的に承認する方向に持つて行かれる考えであるかどうか、その点を承知したいと思います。
  62. 平川守

    ○平川説明員 この事業に伴つて必要な資金の額も別途計上いたしておるわけであります。ただ原則としては、この土地改良、農業土木関係においては、土地改良区というものが行うことが原則的な建前になつておりますので、これに対しては農林漁業金融公庫の方の資金を増加して、その資金面を補つて参りたい。町村の場合には、これは起債ということになつておりますから、起債のわくの方でそれを見て参るようにいたしたい、かよう考えております。
  63. 芳賀貢

    芳賀委員 次に開拓問題でありますが、聞くところによると、継続事業に対しては、今までの助成の方針が継承されるというふうに聞いておりますが、新規の事業に対しては、開拓の建設関係事業であるとか、あるいは水利施設等の事業等に対して補助の率の引下げを行う、あるいはまたこの事業の団地の単位を、今までの五十町歩というのを百町歩に引上げるというような、そういう意図が農地局においてもあるというようなことも聞いたわけでありますが、真偽のほどはよくわかりませんけれども、局長はどういうようなお考えを持つて、この今後の新規開拓事業等に臨むお考えでありますか。
  64. 平川守

    ○平川説明員 この開拓事業建設工事に対する負担関係につきましては、大蔵省の方で、開拓事業というものを今まで全部国家事業として行つてつたのでありますけれども、逐次これを地方事業に移すという考えを持つたらどうか、従つてこの建設工事費の負担にいたしましても、国が全額持つという考え方でなしに、一部を補助して、それに対して地方補助なりあるいは地元負担なりというものをあわせて事業実施するようにしたらどうかという意見が、大蔵当局にあるようであります。これは明年度予算に関連して、そういう意見が今出ておるわけであります。それからなお地区の単位を、今まで五十町歩といたしておりましたのを、百町歩までに上げる。百町歩以下のものについては全額でなしに五割補助で行く、こういうようなこともその一環として、大蔵当局の意向として出ておるのであります。私どもはこれに対しまして、現在いろいろ折衝いたしておるのでありますが、私自身の考えといたしましては、開墾建設事業費の中にもいろいろ種類がございますので、基本的に、入植をし畑をつくつて耕作をするというために、最小限度必要な道路でありますとか、あるいは飲料水の施設でありますとかいうようなものに対しては、現在の開拓事業段階において、経営主体は県がやる場合もあるといたしましても、費用の負担としては、そういう基本施設については、全額国家が見るのがしかるべきじやないかというふうに考えております。ただ問題になりますのは、開田の事業費でございます。開田の事業費につきましては、これは率直に申し上げますと、私としても相当疑問を持つております。と申しますのは、現在の開拓の新たに出て参ります予定地の地区の状況を見ますると、建設事業費全体に対して、開田地区というものが非常に少いのであります。全体としておそらく一割弱ぐらいの面積、あるいは入植戸数から見まして一割足らずくらいの割合しか占めておらないのでありますが、これに対して、その建設事業費はおそらく過半を占める。具体的に申しますと、たとえば昭和二十八年度の新規地区として出て参りました地区を全部集計してみますると、これに対する開墾建設の総事業費が約五億円でございます。そのうち約三億円が開田の事業費であります。残り二億円が道路その他の基本施設でございます。ところがこれに対する入植の戸数を見ますると、その地区に対する入植可能の全戸数がたしか四千戸内外であつたと思いますが、それに対して水田地区に入りますものは五百戸内外ということであります。そのほかにいわゆる地元増反というものがございまして、地元で一反歩なり二反歩なりの面積を既存の農家に与えるという部分があるわけであります。要するに四千戸内外の入植可能地に対する建設工事費が五億円であり、その五億円のうち、五百戸内外の入植者のために要する水田施設というものが、その六割である三億を占める。残りの三千数百戸、九割方の戸数というものは、残りの二億円で建設工事を行うというような状態になつておるわけであります。その道路その他の建設工事が円滑に進んでおればよろしいのでありますけれども、御承知通り、そういう道路その他の施設は非常に遅々として進んでおりません。私はずいぶんその点に注意をいたしまして、一昨年あたりからかなり、従来に比べて二倍以上のスピードをかけて、地区内道路その他の基本施設の建設を進めるよう予算の割振りをいたしておりますけれども、しかしなお各地区における道路の完成という面から見ますと、遅々として進まない。各地区の毎年数干の開拓地に対する建設工事費の割振りを見ますと、一部に対して七十万円とか、百万円とかいうような微微たる工事費がついて、それによつて道路等がわずかずつできて行くといつたような情勢にある。それに対してたまたま一割弱の水田施設を行つております開拓地においては、一挙に数百万円、あるいは千万円を単位とするよう予算をつけざるを得ない。それによつて恩恵をこうむるところの開拓者は、全体の一割弱というので、どうもはなはだ建設工事のテンポがバランスを失するではないか。それで私は、開田については土地改良と同じようなアイデアを入れまして、国が五割なら五割の補助をする。県も二割なら二割の補助をする。それから金融公庫の資金をもつて残りのものを受持つ。そうして工事が完成いたしましたならば、その全事業費の二割か二割五分の負担を開拓者にしてもらつて、これを十年なら十年の年賦償還でする。そうするとたとえば一反歩に十万円かかりました場合に、そのうち五万円は国が持つ。二万五千円か、その辺は県で持つ。残りの二万五千円くらいを開拓者が持つ。それは金融公庫の金で完成後十箇年くらいで返す。そうすれば年に一反歩あたり三千円かそこらの返還金で済む。こういうようなことを加味いたしまして、先ほど申しましたような五億の中で三億円を占めるというような金額を、かりに一億五千万円だけにして、残りの一億五千万円を外の資金からとつて来るという形になりますと、道路その他のやむを得ない、どうしてもつくらなければならぬ基本施設をもつとテンポを早めて、入植したなら速急に道路を完成するというようなことができるのではなかろうか。これにつきましては、開拓者の大会その他においては、やはり全額々々という声が強いのでありますけれども、しかし資金にもおのずから限りがあるわけでありますから、開拓者全体として見ますと、やはり九割方を占める人々が早くこの基本工事を完成してもらう方がより大事ではなかろうか。そうして水田地区に入つておりますものは、畑作地帯のものに比べますと非常に恵まれておるわけでもありますし、なお畑作地帯においては、畑地灌漑といつたものを積極的にやつてあげる必要があるのではないかと思います。そういう方面では、全体の資金をある程度補助で広くまわす方が全体としていいのではないか。これは私見でございますけれども、そういう考えを持つておるのであります。しかしこれにつきましては、なおいろいろ議論も言い事ので、まだ確定をいたしておりません。問題に触れましたので、私見にわたりましたけれどもちよつとお話しておきます。
  65. 芳賀貢

    芳賀委員 農地局長の開拓事業に対する理解の度合いに対して、私も信頼を寄せておるものでありますが、ここで問題になる点は、今まで国が全額助成をしておつたものに対しても、今度は一部を府県に義務負担させるというようなことになりますと、結局受入れ態勢の問題が一つ出て来ると思う。それから新しい開拓者に対する一つの生産条件と、それから生きて行ける条件を備えてやるということが国の責任においてなすべき仕事であると考えるわけであります。一定の年月が経つて一応農地の開墾等ができても、その後の開拓者の諸君の生活状態というものは、決してそれで正常な線まで来ておるというようなことは言い得ないのであります。そういうようないろいろな面において、府県であるとか、市町村における財政面の考慮というものが今までも行われておるのであつて、基本的な開拓事業そのものに対して、今後特に府県に対して義務負担を負わすという考え方、これはかえつて逆コースの方向になるのではないか。むしろ開拓適地を持つておる府県等において、受入れ態勢が消極化するようなことがあつてはならないと考えるので、この点については特に再考をお願いいたしたいのであります。  それからまた面積の問題においても、年を経るに従つて、開拓適地というものは条件の悪い所しか残らぬようなことになると思うわけです。そういうような点においても、今まで地区の単位を五十町歩を百町歩に引上げるというようなことになりますと、補助対象になるところの地区が非常に少くなるというようなところも現実として出て来るので、こういう点に対しても、やはり適合するような処置が望ましいのではないかというふうに考えられるわけであります。それで確認できることは、道路あるいは飲料施設等に対しても、新規事業に対しても今までと同じような取扱いをされる。ただ開田事業に対しては、非常に入植戸数と支出額がアンバランスになるようなことになるので、ここを幾分是正されるという御意思と理解しておきます。  なおこの機会に開墾助成の問題でありますが、今までも入植面積のうち、開墾計画の面積に対してはその八割が補助対象になつて、それに対して八割金額を助成するというようなことを記憶しております。こういう冷害を受けたような場合において、結局百パーセント開墾を了しておる場合においては、結局二割だけ補助対象外の面積が残つておるというようなことになるわけですが、こういうような点に対しては、何か特別の措置をお考えになつて、開拓者諸君の窮状を克服して、そうして来年の再生産に対しては、できるだけ安心した規模の上に立つて仕事がやれるようにすることが適切な措置ではないかというふうに考えられますが、そういう点に対して、局長はどのようにお考えになつておりますか。
  66. 平川守

    ○平川説明員 先ほど申し落しましたが、面積五十町歩のものを百町歩にするということにつきましても、私といたしましては反対をいたしております。お話通りだんだんと狭い所となつて参るわけでありますし、ことに西の方になりますと、なかなか百町歩とまとまつた所は少いわけであります。面積は狭くとも各戸における負担ということについてはかわらないわけであります。この面積を引上げるということは反対をいたしております。  それからただいまお話の開墾助成の問題で言いますが、私どもも、これは冷害対策の一環として非常にいいのではないかということで、大蔵省要求をいたしておりましたが、大蔵省考え方としては、従来開墾をすでに済ましておるものは補助率を引上げるということはちよつと困る。それから新しい開拓は、実際の問題としてこの冬の間にできにくいのではなかろうかということで、非常に難色を示したのであります。私どもといたしましては、お話よう意味において、開墾作業に対する助成金というようなものも盛り込んだ方がいいのではないかということも、大分主張したわけであります。結局なかなか認められませんで、はなはだ残念なわけでございますが、これはなお国会の方でも御研究を願いたいと思う次第であります。
  67. 安藤覺

    ○安藤(覺)委員 ただいま同僚芳賀君の質問に対し、るる開拓に対する御説明を承つたのでありますが、しかるところ全国におけるいろいろな姿を見ておりますと、せつかく営々としてお積み立てになるのを、かたわらからがらがらくずして行くということになりはしませんか。さいの河原の子供が積む石を鬼が突きこわすという話も聞くのでありますが、そういつたような傾向がありはしないか。たとえばそれが住宅地とかなんとかいうことでやむを得ない、また工場敷地とかいうことでやむを得ないものであるときはいたし方ないといたしましても、大分あちらこちらの様子を見ておりますと、遊覧施設のために既墾地の、しかも良田をつぶしているようなことが少くないようであります。競輪場とか競馬場とか、あるいはゴルフ場とか、たとえば千葉県市川の郊外におけるところの競輪場の新たなる施設というようなことが行われているようでありますが、こうした点については、あなた御自身のその営々の努力を片方からくずすという形になるのみならず、今の日本の向つている方向としての食糧増産、そうしてその大きな一環としての開墾ということが、莫大な国費を投じて行われておるときに、片方においては良田をつぶして行くということであつては、まことにもつて嘆かわしい次第であると思うのでありますが、これらの点についての当局としての態度等について、一段の御決意をもつてこれに臨まれるよう要望してやまないのでありますが、その辺の御所見を承りたいと思います。
  68. 平川守

    ○平川説明員 これはもうまつたく御同感でございまして、少くとも不要不急の目的というものにつきましては、農地法の運用によりまして極力押えておるわけであります。市川等のお話もございましたが、これにつきましても極力押えております。ただやむを得ざる産業上重要な工場敷地であるとか、そういうものにつきましては、一々中身をよく検討いたしまして、これに対しましてもできるだけ耕地をつぶすということを避けるように、ある程度設計をやり直してもらつたりしておる例もずいぶんございます。工場側の要求に対して、それを半分くらいに切つておるということもずいぶんございますが、ただ産業上、国として必要なものについては最小限度は認めて行く、その他のゴルフ場とか競馬場とかいうものについては、極力押えて行く、新しいものはもう絶対に認めないというくらいにやつております。
  69. 井出一太郎

    井出委員長 農林大臣が見えております。農林大臣はおよそ六時までの御都合だそうでありますから、その間通告順に従いまして、逐次質疑を許します。芳賀貢君。
  70. 芳賀貢

    芳賀委員 時間の制約を受けているので、端的に大臣にお伺いしたいと思います。  あす臨時国会が開会されるわけですが、当委員会は十月二十日に決議をいたしまして、冷害対策に対しては委員会の超党派的な結論から生まれたところの予算面においては、農林省関係百十億はどうしても必要である、この不可欠の数字と二十四項目にわたるところの施策に対する要望を行つたわけでありますが、政府の現段階におけるところの原案は、われわれが非常に納得できないようなものであつて総額七十億、しかもそのうち建設関係の十億と、労働省、厚生省関係の十億が含まれておるので、これを差引くと、わずかに五十億しかない、そういうことになると委員会要求の百十億と実に六十億も食い違つておるわけであります。しかも政府原案のこの五十億の数字に対して、財源を生み出すために各省は公共事業関係あるいは一般予算の中から経費節減をしておるわけでありますが、ただいまの説明を聞くと、農林省関係だけの節減が二十七億あるわけであります。そういうことになると二十七億既定経費から節減を行つて冷害関係農林省予算が五十億しかないということになると、これは実質的には非常にわずかな冷害予算しか組まれておらぬということになつておるわけでありますが、これに対して主管大臣であるところの保利農林大臣は、どのよう見解を現在持つておられるか、その点をまずお聞きしたいのであります。
  71. 保利茂

    ○保利国務大臣 冷害対策に関する当委員会の御決議の趣意につきましては、政府部内にこれができるだけ尊重実現できますように努力をいたしたつもりでございますけれども、結果は御承知ように、今日の窮迫している財政事情からいたしまして、総わく災害冷害を合せて五百十億、うち三百億が災害対策、七十億がいわゆる冷害対策、農業災害保険のために百三十億計上するというよう予算に一応なつておるわけでございます。そこでその五百十億の財源をすら既定経費節約によらなければ組立てができないという財政事情からいたしまして——しかるところ既定経費節約と申しましても、御承知ような、前国会におきまして事務費等につきましては相当大幅の節約国会の御決議によつていたしておるわけであります。どうしても事業費から捻出するのほかはない状況にあるということも、およそ御推察ができると思うわけであります。そこで公共事業費、いわゆる食糧増産対策費等の事業費節約の中心がかかつて参る、この点につきましては、またいろいろ御意見も御批判もあると思いますけれども、私といたしましては、公共事業費のうち治山治水の面につきましては、今回の主要な眼目になつております災害対策との関係におきまして、治山治水というものといわゆる災害対策というものは裏表になつておるわけであります。政府の当初の考えは、さなきだに災害対策費が十分計上しあたわざる財政事情のもとにおいては、それに節約をしいるということは無理であるというような意見も相当強かつたわけでございます。しかしまた一面私どもといたしましても、何と申しましても食糧増産対策というものは、わが国経済自立の基本的な課題であり、その上に立つての食糧増産対策費であるから、これはさらによりその重要な意味を持つておるわけであるという点も強調いたして、彼此調整をとつて節約をし、お話よう数字になつておろうかと思いますが、それじや冷害対策費を乏しいながらも計上して、それがまたそういう地帯の農業土木等を節約繰延べするならば、冷害対策費として農林省所管の約五十億というものを計上しても、それだけまたさつぴかれることになつて、実質的にもつと下つて来るのではないかという御懸念だろうと思います。そこでこれは実際の節約と申しましても、私はある部分につきまして、事業の繰延べということになつて来るだろうと思う。さなきだに前会から申しておりますように、いかにかして凶作地帯に現金収入の手段を講じなければならぬという上からこの予算をつくつておるわけでございますから、従つてそういう地帯ですでに既定計画の分をやめて、そうして新たにこのくらいの事業を起すといつても、これはどうもお話ように、まつたく無意味だと思う。そういうことにはならないように、特にそういう深刻な地帯におきましては、既定計画の上にこの事業を追加して、そうして支障のないところの事業を一部繰延べするというような処置を講じて間に合せて行きたい。この予算のわくにおいて一体何ができるかという御意見はごもつともだと思いますが、私はどういう形の予算になりましても、この冷害凶作地に対しましては、特に収穫、作況の著しく悪い地帯、端的に申しましたならば、たとえば三分作から収穫皆無というような町村には、町村ごとに町村で立つ計画をすみやかに立てていただく。     〔委員長退席、金子委員長代理着席〕 あるいは国有林を利用することによつて、炭焼きのできるものはその手段を選ぶ。そういうことができない所は、あるいは客土とか暗渠排水とか、あるいは温水ため池とかいうような、そういうものを選ぶ。とにかくその村々で計画が容易に立ち、またそうしてすみやかに仕事にとりかかれるような地についた計画を、少くとも一つの手段はその村にとつてもらう。そしてとにかく現金収入の道を開くということはどうしてもやらなければならぬ。そこでこれは冷害対策の、私どもの方から言えばきゆうくつではございますけれども、たとえば労働省の失業対策事業にしましても、あるいは建設省の公共事業にしましても、それらもある地帯には非常にダブつて行く、ある地帯には何にもないというようなことにならないように、総合的に村ごとに計画を立てて、できるだけ重点と申しますか、効率的な予算使用によつて対策を講じて参りたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  72. 松岡俊三

    松岡委員 関連して。ただいま大臣の御説明によりますと、冷害地、三分作の被害の甚大な所には、万遺憾なく冷害を受けた者を助けるような御説明と承りましたが、この三分作の方面には遺憾なく必ずやれるというように承つてよろしゆうございますか。
  73. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは私はもう気持のままを申し上げておるので、極端に申しますれば、収穫皆無地帯といわれるような町村には、これはもう絶対に漏れないようにやらなければならない。今事務当局も具体的に、私どもの持つております町村ごとの作況に基きまして、そうして村ごとに拾いまして、県にも相談して、県の方からもすみやかに村ごとの計画を立ててもらつて、それを合せて、第一段階に最もひどい所にやる、それで余裕があればそれをもうちよつとおろせばいいじやないかということで、具体的に計画を立てておるところでございます。三分作ということも私のほんの目安で申しておるわけでありまして、それがあるいは四分作になるか、あるいは二分作でがまんしてもらわなければならぬか、どつちにしましても三分作、二分作というところは、作としては収穫皆無地帯に準ずべきところだろう、私はそういうふうに考えて一応計画を立ててもらつておるわけであります。
  74. 松岡俊三

    松岡委員 大臣の御信念、これに対して処置なされようとするただいまの言葉は、冷害地の人々が非常に関心を持つておることで、大臣の御信念のように参りますならば、さぞかし私は安心することと思うのです。私はこの前の昭和九年当時の冷害を親しく取扱つたものでありまして、その当時は山崎達之輔氏が大臣になつてつた。大阪方面に災害があつて、当時閣僚が二人もすぐに出かけておつた。そのあとに東北が冷害を受けたとき、だれも閣僚で東北を見る者がなかつた。すこぶる残念に思つて、私がすぐ内閣に来て訴えたときに、鉄道大臣の内田信也君がただちにかわつて東北を見られて、あの当時の施設ができた。このたびは大臣が親しく東北をごらんになつた。その他の所はおいでになることが忙しくてできなかつたのでありますが、あの東北の実情は、もつとひどかるべきものがあの程度にとどまつたということは、しばしば冷害に襲われておるから用心深かつたのであります。それだけにまた疲弊参もあるのであります。今回の御視察によつて、さらにこの点は御認識くだされたものと思うのであるが、ただいまの御信念は、私は東北の冷害民として非常に心強く思つてくれると思う。財政上節約その他が伝えられておるこの時この際、ただいまのお言葉を何とぞ御実行くださるように、私は特にお願い申し上げて関連質問を終ります。
  75. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまの大臣の御答弁を聞くと、非常に楽観的なようでありますけれども、私の指摘したい点は、具体的に申し上げると、この五十億の冷害予算の中には、農林漁業金融公庫の出資が十億あるのです。そうすると公庫の出資を十億引くと四十億しか残らぬのです。その中で二十七億の農林関係削減があるということになると、算術的に差引すると十三億しか残らぬというようなことになるわけです。そういうわずかな数字で、三分作以下の特に被害の程度の高い窮迫した農民を救つて行きたいというその考え方は、大臣のその精神というかすみだけを食つて、被害地の農民がそれで来年の収穫があるまで生きて行けるのならばいいですけれども大臣の精神を食つて被害地の農民は生きて行くことはできないわけです。そして実質的に北海道ほか十九府県の冷害地域というものは非常に広汎であります。広汎であるだけに被害を受けた農民の数もまた非常に多いのであります。そういうことになると、被害者の実数をどれだけに把握して、そうして困つている農民は救わなければならぬという具体的な数字が出て来る場合において、はたしてこの五十億程度で治まるか治まらぬかというもとが問題になつて来るわけであります。ことしの水害あるいは冷害によつて生じた減収は、昨年度に比べると一千二百万石になるわけでありまして、おそらくこのうちの七割程度冷害によるところの減収であると考えるのであります。そういたしますと、八百五十万石程度はこの冷害の地域において減産になつておる。一石一万円と仮定した場合には、減収による被害は八百五十億であります。それに畑関係等の冷害の減収を加えると、実に一千億以上農家の収入が激減しておる。これに対して五十億ということになると。わずかに五%くらいの対策費ということになります。しかも既定経費節減が二十七億も行われるという形の上においては、われわれの常識をもつてしては、とうていこの程度予算冷害対策を行う——しかもこれを行うために臨時国会を召集するというような理由は、この中からは全然生れて来ないというふうに考えるわけであります。  もう一つ重大な点は、農林省が持つておるところの全体の既定予算にいたしましても、これでは五箇年計画で一千七百五十万石の食糧増産をやるというようなことは、具体的には全然できないのであります。できない中から食糧増産費をまた削減するということにいたしました場合において、二十八年度はそれでもいいとして、これは将来に関する問題であつて、二十九年度以降における食糧増産の計画というものは、ことしの経費節減によつてその一角が当初からくずれるということは、これは否定することができないのであります農林大臣は最近、百六十万トンの外米の輸入に対しては自信を持てるというようなことを言つておられますけれども、具体的に今後国内の食糧の自給計画が前進するというような形をとらない限り、いつまでたつても食糧の外国依存というこの弊を打破することはできないと思うのであります。こういう重大なときにおいてこそ、なお今後に食糧増産の一つの足がかりを残すという考え方が、どうしても必要であると考えるのであります。先日の委員会においても、私は緒方副総理に指摘しましたけれども、この救農予算というものは決して災害農民に対して憐愍を加えて金をやるということではなくて、これらの支出のことごとくは今後における農業の再生産を確保するための財政投資であるというふうに考えてもさしつかえがないのであります。そういうような支出の中において政府が言うように五百十億を越えた場合においてはインフレが悪化するというような理由は、この冷害対策の中からは生れて来ないということが立証できるわけであります。でありますから、結局今後の食糧増産の態勢をくずしてはならぬという観点と、この一道十九県に及び、しかも一千億以上の冷害によつて収入の激減した農家を対象とした場合において、このようなわずかの予算ではこれを克服することができないという結果から見て、大臣はなお明るい見通しを持つて、しかも三分作以下の農民に対しては絶対これで事足りるというような立論がどこから生れるかということを、もう少し平明に御説明願いたいのであります。
  76. 保利茂

    ○保利国務大臣 もう御意見は私も全然同感でございます。そこでどうしても財政が詰まつておる——財政当局には財政当局の十分の理由があろうと思います。これはそう見なければならぬと思う点も多々あるわけであります。そこでこれをかりにただいま一応政府で内定しております予算をもつてやる場合に、どういうやり方をするのかということが問題になつて来ると思うわけであります。私の表現も悪かつたろうと思いますが、私の申し上げたい気持は、なるほど一道十九県とおつしやいますけれども、要するに食べるものもとれなかつたというような所に落ちこぼれがあつてはたいへんだ、そういう所に落ちこぼれのないように、しかも村において計画をすぐに立ててもらう、それはどうしてもやらなければならぬが、どういう方途を講じても、国が予算上出せないというのなら県でもやらなければならぬ、私はそれは必要があると思う。だからそういう地帯を見のがすよう計画は断じていかぬということを、強く事務当局にも申しておるわけであります。まだ具体的の計画はむろん県当局においても立つておりません、私の方でも今立てつつあるところでございますが、どこまでこの予算で立て得ますか、私は決して楽観的に思つておりませんけれども、乏しければ乏しいだけに予算がむだに——むだと言つては間違いを起しますけれども、とにかくよりひどい所がより少い所よりも薄くならないように扱つて行かなければならぬじやないか、この考えを徹底して予算の執行に間違いのないようにいたしたい、こう申しておるわけでございまして、決して私は楽観をいたしておるわけではございません。その点はひとつ御了解を願いたいと思います。
  77. 芳賀貢

    芳賀委員 それでこの際大臣の認識を承知したいわけであります。今度の国会には災害復旧予算冷害予算が骨格となつて出て来るわけでありますが、災害復旧関係冷害関係の違いという点の御認識をお願いしたいのであります。災害の場合には、損害額は当局の査定によつても一千八百億以上に及ぶのでありますが、この災害復旧はこれを当然一年にやるわけには行かぬので、たとえば今年三割、来年五割、その次に二割というような区分をどのよう比率でやるかという問題があるわけであります。そうすると今年三割やつてもあと七割はあとの二箇年で復旧ができるというような、そういう性格を多分に持つておるわけでありますだからして、ことし現われて来るところの予算数字だけで、これが災害復旧関係で多いとか少いとかいうことでなくて、今後何年間にどれだけの災害復旧を行うかという、その全体の数字を見なければならぬと思うわけであります。冷害の場合においては、ことしの農作物の被害をこの年度のうちにおいて、何とかして農民が生きるような道を講じなければならぬというところに目的があるのであります。これは三箇年計画で、たとえばことし五十億出して、あと二箇年に五十億ずつ必ず出すというようなお考えは、おそらく当局にもないと思うのであります。こういう点のけじめをはつきりつけてもらわなければならぬという点が一つと、もう一つは、大臣は過般東北地方の調査をして来られたのでよくおわかりと思いますが、今度の冷害を受けた地帯は、大部分が単作寒冷地帯であります。そういたしますと、裏作のとれる所は、あと半年たてば何とか食いつなぎができるという条件にありますけれども、単作地帯は一年たたなければ次の食いつなぎができないのであります。     〔金子委員長代理退席、委員長着席〕 しかもこの地帯は、もう雪がすぐ降る、雪空が迫つておる、そうして半年も雪の下に埋れるという地帯にあつて、こういう非常に大きな災害を受けておるというように、この冷害が持つところの必然的な悪い条件ということを、十分に考えて行かなければならぬと思うわけでありますが、こういうような場合においても、経費節減に全面的に同じようパーセントでなたを振つているというような大きな欠陥もあるわけであります。だからして、われわれは大臣自身の御苦心はわかりますけれども、問題は農林大臣としての責任の所在の上に立つた場合において、国の今後の食糧増産の基本的な計画の一角を、当初からくずしてはならぬという問題と、この単作地帯を中心とするところの災害地の農民を、この一年間生かさなければならぬという二つの責任というものは、どこまでもついてまわると思うのであります。だからこのぎりぎりの最低の線が保障されない限り、この重大な問題を大臣が背負つて切り抜けるかどうかというところに、問題は帰納すると思いますけれども、これがやり得るという計算の上に立つてこの予算が組まれたとすれば別でありますけれども、この予算と二つの重大問題の解決との間にずれがあるという場合においては、当然大臣御自身の責任においてこのことは解明されなければならぬというふうに、私たちは考えておるわけであります。この点については、農林大臣はこの国家の今後の食糧問題と災害地の農民を生かさなければならぬという、二つの当面した問題に対する十分なる決意があられると思いますけれども、われわれは今まで大臣の述べられた、ややもすれば楽観的な説に対しては、どうしても同調することができないのであります。これらの問題が本日幸いにして大臣から率直に敷衍されればけつこうでありますけれども、できない場合においては、これは当然明日からの国会審議の場において論争されると思うわけでありますが、どうぞ明日に控えた国会を前にして、農林大臣のこれらの二つの点に対する御決意のほどをお伺いしたいのであります。
  78. 保利茂

    ○保利国務大臣 食糧増産の緊要なことにつきましては、先ほども申しますように、単に農林大臣のみならず、政府全体といたしましても、どうしてもわが国の自立経済を達成して行きます大前提として、食糧の自給を確保して参るということが大きな課題になつておることは、もう何人といえども異存のないところでございまして、従つてここに節約の手を延べなければならないという今日の財政事情に対しては、まことにお話ような矛盾を感じておるわけであります。これは感じないとは決して申しません。しかしこの節約をするのに、それが冷害凶作地あるいは災害凶作地に悪平等に節約をして行くというような形は、これはとるべきではない。農地局長もここにおられますが、そういうことは事務当局においてもやつてもらいたくない、またやつてはならない。それにできるだけ支障を及ぼさざる節約をやらなければならぬ。節約をやるということは、これは約束をして承知いたしておることでございますから、節約はする。ただ食糧増産に対しましては、全体の国の事情からいたしまして、これはもうゆるがせにできないという、その考えは強く持つておるわけでございます。しかし現われたことをとらえられて、こつちがよければ、こつちが細つておるじやないかということになります。これはどうもそこに手をつけなければ、大きい冷害災害の、御不満もございますけれども、これだけの手すら打てないという事情になつておる点も、ひとつ御了解を願いたいと思います。そういう苦しい中に立つて、しかし基本的な国の大きい政策として持つべき食糧増産対策費については、そういう考えで今後も努力を払うつもりでおるわけであります。どうも徹底しないことを申し上げなければならぬのでございますけれども、そういう事情に相なつておることだけは御了解を願つておきたいと思います。
  79. 井出一太郎

  80. 川俣清音

    川俣委員 私時間がありませんので端的に申し上げますから、端的に御答弁願いたいのです。  第一は、先ほど松岡委員質問に対して大臣は、少くも三分作以下のような町村には、まんべんなく何かの施設をいたしたい、こういう御答弁であつたわけであります。私は、これは同僚委員松岡氏に対して、同じ党の大臣が御答弁になつたとすれば、非常に不親切な御答弁じやないかと思うのです。ということは、一つ例をあげて申し上げたい。今あなたの所管の中における統計調査部の調査によりましても、大体冷害地で三分作以下の被害町村が一千町村くらいある、こう言われております。県庁から言わせると、約二千町村くらいになるんじやないか、こう見られておるようであります。これは先ほど官房長も、参議院の質問に対して、約一千町村くらいという答弁をいたしておるようでありますが、府県から見ると、大体二千町村くらいになるようであります。そういたしますと、たとえば林道の問題を申し上げても、一町村に一キロくらいの新規林道計画いたしますと、千箇町村でありますから、一町村一キロといたしましても、千キロになります。私どもは千箇町村と二千箇町村の間を見て、千五百箇町村と見ますと、一千五百キロということになります。すると一町村一キロ、一キロというと九町幾らでありますから、大体一週間でできてしまいます。ここからあなたの農林省まで大体一キロくらいのものでしよう。一町村は大体二十部落くらいあります。部落にこれをわけて二十で割つてしまうと、三日くらいでできる仕事です。これだけの予算を見ましても、現在の補助率から見ましても、林道だけで約十一億要しますよ。まんべんなくやるとすれば林道あたりが一番手ごろなものでしようが、これをまんべんなくやると十一億いりますよ。こうなると、あなたが千箇町村ないというふうにお考えになれば別ですが、あなた方の統計では、一道十九県で一千箇町村くらいあるようであります。もつと詳しく申し上げてもいいですが、私どもの持つておるのでは、北海道五十一村くらいに見たり青森九十くらいに見て行つて、そのくらいになります。そうすると三分作以下の所にはまんべんなく何か与えたいということになりますと、一番与えやすいのを例にとつてみても、わずか一キロの仕事ぐらいしか与えられないよう予算をもつてして、これでまんべんなく見積つたというようなことでは、どうも私は認識が足りないのじやないかと思つておる。農林大臣閣議に臨まれるときには、実態を把握して臨まれたそうであります。御奮闘になつたそうであります。あなたよりも実態を把握しておつたかどうかわかりませんけれども、吉田総理がそれを裁定したということでありますが、少くとも実態を把握しておれば、もう少しこれを主張されなければならなかつたのじやないかと私は思う。大臣は大分御奮闘になつたようでありますから、敬意を表しておるのですが、御奮闘になつたといたしましても、それが一町村に一キロぐらいの仕事しか与えられないというようなことであつたのでは、あなたの今の松岡さんにお答えになつたお説とは、あまりに食い違うのじやないかと思うのですが、これはいかがでしよう
  81. 保利茂

    ○保利国務大臣 ちよつと言葉をとらえられた形でございますから、もし何でありましたら初めから申し上げ直します。  私といたしましては、苦しい予算ではありますけれども、苦しければ苦しいだけに、最も苦しい町村から具体的な計画を立ててやつて参りたい。それが三分作くらいまでに及ぶならばたいへんけつこうだと思いますけれども、できない場合は、最もひどい所から落ちこぼれをなくして、次々とひどくない地帯にうるおうというような形は、このきゆうくつな予算ができ上つても、そういうやり方はいたさざるを得ない、こういうことを申し上げておるわけでございます。  それから具体的にどの町村が今どのくらいになつておるかということは、千箇町村といわれますが、あるいはそれはそうなつているかもしれません。しかしその点は私は少し聞き違いもしておるようでございます。そこで、この予算に対する考え方を申し上げておるわけでございまして、計画をどうするかということは、先ほどから申し上げておりますように、そういうことで計画事務的に立ててもらいたいということで、今立ててもらつておるところでございますが、三分作以下には全部そういうことでやるのだ、それで一体何ができるのだ、これはその通りだと思います。しかしそこのところは、私は例をあまりたやすくとつたかと思いますから、その点は誤解を生じましてもいけませんので、むしろ私は取消しておきます。
  82. 川俣清音

    川俣委員 私は今例をとつたのでありまして、大臣は先にわくがきまつたからこれで割当てようとする。私はそういう考え方だと思うのです。ところが松岡さんに対する答弁はそうではなくて、なるべく実態を把握して、実態に即応した処置をまんべんなくやりたいというふうな御答弁であつたから、私は問題にしておる。あなたが初めから実態をつかんでいないで、盲めつぽうに、これだけの予算でこれだけに振りまくというなら、話はそれでわかります。そうでなくて、少くとも東北をまわられたからには、ある程度実態をつかんで来られたであろう。従つてその実態の上に立つて御主張になつただろうと期待しての私の質問であつた。その期待を持たなければ私はこういう質問はしません。盲めつぽうに金を持つて来て、一番苦しい所からばらまくというなら、子供でもできます。そうしてなくなつたら手をあげるというだけであつたら、これは政治でも何でもありませんよ。そんな考えを持つておるとは思わない。私はもつと敬意を表して質問しておるのです。おそらく実態をつかんで閣議に臨んでおられたであろう。実態にそぐわないということになつたらどう対処するかということに問題があると思つて質問しておる。実態をつかんでおられるようなことを言われるから、一体実態をつかんで閣議に臨まれたかどうか知りたいために、私は今質問をしたのです。
  83. 保利茂

    ○保利国務大臣 これは川俣さんはもう御承知の上のことだろうと思いますから、反論は申し上げませんけれども昭和九年の冷害当時に、救農議会というのが開かれております。これは十一月の末だと思います。それは、従つて冷害の実態が具体的に国全体に正確に把握された後に計画を立てて、そうして予算の折衝をやつて組み立てて、ああいう議会になつておると私は思つております。今回十月末に開く——明日から開くということになりました。しかしながら私は、凶作地帯の実相を見ますれば、多少実態把握が遅れても、収穫皆無地帯等は明らかに明日に困る。明日に困るどころではない、きよう困るというよう実情にあるから、従つて多少の計画ずさんはあつても、これはすみやかに手を打つことが正しい。そういうことで早期国会に私どもも同調して、従つて農林省で立てました予算も、率直に申しますればこれは大急ぎです。それはやむを得ないことなんです。そういうわけでございますから、一町村々々々にこういう計画を立てて、この村にはこの計画を立てる、この村にはこの計画を立てる、それには予算幾らいるということを積み上げて予算をつくつたものでないことは、これは御想像をまつまでもないわけです。これはどうしても大づかみだと申し上げざるを得ないわけです。それで大づかみとしてこれくらいは何とか冷害のためにやつてもらいたいということを主張した。しかし結果はこういうふうになつておりますが、やり方としてはそうせざるを得なかつたということは、これは川俣さんよく御承知のことだろうと思いますけれども、あえてひとつそういう事情であつたことは、御了承願いたいと思います。
  84. 川俣清音

    川俣委員 大臣は私の質問ちよつとよそへそらして御答弁になつておるようですが、私は大臣が東北をまわられたということは、農業技術者のように、このたんぼからどれくらい収穫が上るかというような精密な把握をされて来たとは思いませんが、またそういう必要もないと思うが、大臣もまわられたからには、大きくどういう手を打たなければならないかというようなことだけは、これは政治家として、大臣として、当然把握して来られたと思う。私はそういうことを実態を把握したと申し上げておるのです。詳しくこの町村は何分作であるかというようなことは、末端まで見なければならぬ。これは技術者といえどもなかなか及ぶところでありませんから、大臣にこれをやれというようなことは私は勧めておりません。おそらく大臣を連れて参りましても、悪い所だけ見せるというようなこともありましようから、県全体でどのくらいあるかということはわからない。これは想像できます。私の言うのは、一部を見ても、冷害対策としてはどのような処置をとらなければならないかということくらいは、把握して来られたのではないかと思う。その上に立つて閣議に臨んでおられたであろう、こう期待しておつたのです。それにしては——政治家であるから大づかみであると言うけれども、大づかみが一番よく当るという意味において私は信頼するのです。小づかみよりもむしろ大づかみの方が当る場合が多いのであります。これは政治家の任務であり、大臣の任務であり、責任であるから、大づかみで悪いということは申し上げておらない。大づかみであるのになお不十分であるところに問題がある。不十分どころではない、行き届かない点が多々あるところを問題にしておる。私は、はなはだ驚いたことには、この間緒方副総理がここに来て、冷害災害と同じよう答弁をしておられた。そんなことでは、保利農林大臣は、閣議において大いに奮闘したと言つておられるけれども、奮闘したことをちつとも聞いておらない。聞いておつたならば、冷害災害と違うというようなことくらいは十分わかつておらなければならぬはずだが、一向わかつていない。そういうわかつていない者の裁定を甘んじて受けなければならぬということについては、私は疑問がある。もつと実態をつかんでおつたような人が裁定をするならば、それは了服しなければならぬと思いますが、何もわからぬ者の裁定を受けて、それはもつともですがというようなことでは、私は責任を果せないと思う。この点が一点。  もう一つは、今度の予算を見ますと、いろんな削減をしておられますが、農林省が今日まで持つて参りました食糧増産五箇年計画、その計画をもつて土地改良事業をやつておられる。これだけの食糧増産計画の内訳としてこれだけの土地改良をやれば、どのくらいな収量があがつて来るという計画を持つておられるはずである。この計画がでたらめであつたというならば、私は削減に大いに賛成しますよ。しかしながら、これだけの計画をすればこれだけの収量があがるという計画を立てられておつたはずだと思う、私はそれは信用します。これを信用しないとなつたら問題ありませんから、私はこれに十分な敬意を表します。おそらく、でたらめな食糧増産計画を立てておられたとは思つておりません。農地局であれだけの大人員をかかえておつて、これだけの計画をされて、何ら食糧増産に寄与しない。そんな計画をされたとは私は信じません。その基礎の上に立つて食糧増産計画を立てられたのである。それを削減するとか、米が足りないから食糧の輸入をする。その金はあるけれども、国内の食糧増産の金はないというようなことはどこで言えるのです。同じ財政の中でしよう。これは今年だけの金であるから、私はインフレにならないと思つている。むしろ毎年米を買うということが、どのくらい日本の経済の危機をもたらすかということは、私が説明するまでもない。今ちよつとつぎ込むことによつて災害と違いまして冷害というものは——これは冷害の救済ではなくして食糧増産計画を実行する、その陰となつて農村に金が落ちるというだけであつて、農村に金を落すことも必要でありますけれども、落すことよりもむしろ今日冷害対策として考えられますことは、来年度の食糧をどうして一体まかなうかという計画が立てられ、この計画実施されることによつて町村に金が落ちて来る。そのために冷害地の農民が助かつて来るという一石二鳥の案が、おそらく立てられておる。私はそう信ずるのです。被害地の農民が困つておるから金をやるというような、おそらくこの窮迫した経済状態においては、そんなことができるはずがない。従いまして裏づけがある、生産効率の上る、いわゆる経済効果のあがるようなことをねらつて食糧増産計画も、既設の食糧増産計画も立てられておる。今後立てられることもおそらくそうだと思うのです。それを削減に応ずることになり、だんだん食糧が足りなくなつて来るから外米に依存するというようなことになつたら、日本農政の破綻だと思いますけれども、これに対する所見を伺いたい。
  85. 保利茂

    ○保利国務大臣 その問題は議論の立て方によればそれだと思います。そこで外米輸入を大幅に引上げる計画を立てておる、その計画をやめてなぜ国内に使わぬか。むしろ国内に使うというよりも、食糧増産費それ自体を節約するなんという愚かなことをやつておる。一方においては高い外米輸入の金を使う、これはもうその通りだと思います。私も就任いたしましてから考えましたことは、何とか外米の輸入を減らすということ、これでなければ自立経済というものは達成できないという考えを強く持つております。しかし、そうだからといつて今年のこの凶作の前に立つている現実をどうも無視するわけには行かない。それはなるほど将来の自立経済ということも大事でありますけれども、来米穀年度をどうして食いつないで行くか、国民がどうして食うかということが、ここではより切実な問題になつて来ておるのじやないか。内地の作況が今日の状態である。そこで何とか食糧不安を来さざる手を打たなければならない。幸いに外地は、あつちこつち豊作状況を伝えておる。そこで何とかひとつ国民食糧に不安のないよう対策を講ずる。これはせつぱ詰まつてのことである。そこで考え方としては逆になつて、私個人としてもまことに不本意でありますけれども、その不本意をあえてやらなければ、来米穀年度の食糧のバランスがとれない。ともかくも遠大な計画のもとにやつて行かなきやならぬことは当然のことでございますけれども、今年というこの現実に直面して手を打つということは、これはまた実際問題として考えざるを得ないのじやないか。この点はむろん川俣さんも御異存のあろうはずはございません。そこで食糧増産費に、たといわずかであつても手をつける。そのために従来すでにやつておるところの五箇年計画というものはずれて来る。齟齬して来るじやないか、これは数字が現わしておりますから私どもが抗弁すべきことではなかろうと思います。できるだけひとつ今後の努力によつて、また効率使用によりまして、さらに公共事業費や食糧増産経費の使い方についても、批判もあり、意見もあるわけでございますから、この大事な国費を費してやつておるわけでありますから、できるだけ効率的に、効果をあげますように今後努力を払つて参る、こう政府考えておるわけであります。冷害に対する認識のない者が裁定して、それでさようであるかといつて引下つて来ておるのはおかしいじやないか。これもそうかもしれませんが、冷害に対しましては、政府内部の認識は決して川俣さんお話ようなものではございません。もしその認識が足らないとすれば、私の説明が十分でないということになるわけであります。十分説明もいたし、現地の実情もよく話をして、閣僚諸公の認識を得ておるつもりでございます。その上に立つて、しかも財政上は御承知ように、これも川俣さん十分御承知よう事情になつておる。そこでこれがこういうところでということに一応なつておるわけであります。こうなつた予算をどう効率的に使つて行くかということは、また私の責任でもあろうかと考えておる次第であります。
  86. 川俣清音

    川俣委員 二点の御答弁があつたのでありますが、一つ大臣の閣内における実態をつかんだ説明が足らなかつたのではないかと申し上げたのは、いろいろ努力されたことも聞き及んでおりますが、緒方国務大臣がここへ来ての説明によりますと、冷害災害とごつちやにして御答弁になつたから、それでは裁定する者がごつちやにしたような御答弁をなさるようでありますならば、説明が足らなかつたのではないか、こういうふうに申し上げたのであります。明らかに緒方副総理はここで、私は冷害災害と間違つて答弁しておつたから訂正しますといつて訂正しております。これは速記録をごらんになればわかります。そんなぐあいであつたなら、実態を把握しない者が裁定するということは誤りではないか、こういうふうに申し上げたのでありますから、これはあなたのために一応参考として……。  もう一つは、これは大臣、今の実態を把握すると、どうしても日本の事情からして外米を入れなければならないのではないかというその抽象論には、私は別に反対いたしておりません。問題は、こういう食糧増産の費用を削るということになりますと、国内における農民に与える影響は非常に甚大です。また冷害地に対して政府が冷淡であるということになりますと、これは重大な結果が来る。どういう結果が来るかというと、そういうふうに冷淡になりますならば、来年の作柄が非常な不安に襲われまして、今年とつた米は一つも出しませんよ。政府は十分この窮状を訴えて、この窮状の中から食糧増産についてもさらに努力をするのだ、増額をして努力をするのだ、君らも努力してくれということになりますれば、来年の作柄に安心いたしまして、持つておる米をできるだけ多く出して、麦にかえて行こうというようなことが行われるだろうと思いますけれども、増産計画は削つてしまうのだ、来年は作柄は不安だ、あまり政府は増産に熱心でないのだということがもしも現われて行きますならば、これは外米を入れるということによつてのみとても補いはつくものではありません。今ようやくこの日本の窮状を理解して、農民は供出にいそしんでおりますが、これは今度の臨時国会に大きな期待をかけております。大臣が東北をまわつて何らか手を打つのだ言われると、安心して供米をしておるのですよ。それを裏切つたよう施策があつたならば、おそらく明日からでも私は供米がとまると思う。またとめなければならぬと思う。ほんとうに政府責任を持つて来年の食糧計画を立てないということになるならば、これはどうしても供出をとめなければならないような状態だと思う。これは私ばかりではない。おそらくここにおる松岡さんも同じだと思う。政府が十分手を打つということであるならば、われわれも率先して供出しなければならないのじやないかという機運がここで一致すると思う。農林省が立てて末端まで流しておつた食糧増産計画補助を一ぺん切り上げて、別に切りかえるのだということで影響を与えてごらんなさい。これはたいへんな悪影響だと思う。おそらく供出に非常な影響をする。県よりもつと下の末端まで事業補助というものが行つておりまして、計画をしております。農業委員会などでも計画いたしております。これをかえるだけでもたいへんな煩瑣です。一方行政簡素化で事務費をせつかく節約しろというので、まず事務費節減によつて仕事が停頓し、事務が煩雑になつている。それに別個に持つて来るのだ、同じような金額をただ振りかえるというだけでは、おそらく地方の混乱はこの上ないと思う。供米に当つている県におきましても、町村においても、町村の連中が計画しておつたことを全部くつがえして、あらためてこういう同じような金額を流すということになつたならば、県の熱意及び町村の熱意というものは喪失され、あるいは土地改良委員にしても、あるいは農業委員にしても、おそらくがつかりして再び運動は開始できないと私は思う。——思うのではなくて、それを憂える。憂えるから、外国の食糧を入れることも無理もないと思うけれども、それ以上に考えなければならぬのは、国内食糧をどうして確保するかということに重点を置かなければならぬじやないか。集めても集めても足りなければ外国の食糧に依存しなければならぬでしようけれども、もう少し集めるためにも食糧増産計画というものについてもつと努力を払わなければ、これは集められませんよということを警告しておきたいと思う。時間がないから警告にとどめておきます。
  87. 井出一太郎

    井出委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後六時三分散会