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1953-10-02 第16回国会 衆議院 農林委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十月二日(金曜日)     午前十一時二十四分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 平野 三郎君    理事 金子與重郎君 理事 足鹿  覺君    理事 安藤  覺君       小枝 一雄君    佐藤善一郎君       佐藤洋之助君    福田 喜東君       松岡 俊三君    松山 義雄君       加藤 高藏君    吉川 久衛君       西村 力弥君    芳賀  貢君       山田 長司君    川俣 清音君       中澤 茂一君    日野 吉夫君  出席国務大臣         農 林 大 臣 保利  茂君  委員外出席者         農林事務官         (大臣官房長) 渡部 任良君         農林事務官         (農林経済局統         計調査部長)  安田善一郎君         農林事務官         (農業改良局         長)      塩見友之助君         食糧庁長官   前谷 重夫君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 十月二日  委員井谷正吉君、山本幸一君及び佐竹新市君辞  任につき、その補欠として山田長司君、西村力  弥君及び日野吉夫君が議長の指名で委員に選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十八年産米作況及び米価問題に関する  説明聴取  冷害対策に関する件  派遣委員より報告聴取     —————————————
  2. 井出一太郎

    ○井出委員長 これより会議を開きます。  本委員会は、先般来各地に委員を派遣いたして実情調査をいたしておりましたが、この際その報告を求めます。まず北海道班として金子與重郎君。
  3. 金子與重郎

    金子委員 委員会国政調査の日程に従いまして、去る九月七日から十二日に至る間、北海道方面における農林関係事項調査を行つて参りましたので、派遣委員一同にかわりまして、その概要をこの機会に御報告申し上げたいと存じます。  なお岩手県より水稲の冷害及び病害並びに酪農振興の問題について調査せられたい旨の要望がありましたので、帰途を利用して、その実情をも調査いたして参りましたので、あわせて報告しておく次第であります。  まず調査班の編成でありますが、これは松岡、金子、足鹿、井谷、芳賀の各委員の御参加を煩わし、事務局より岩隈、工藤の両君が同行いたしました。  一行がそれぞれ飛行機または汽車にて札幌の北海道庁に集合しましたのは九月七日の正午ごろでありましたが、ただちに道庁及び開発局の各部課担当者の参集を願い、約三時間にわたりまして、土地改良治山造林、畜産、災害対策等現下万般農林行政事情中重要問題に関して説明を聞き、あるいは意見の交換を行いまして、北方農林業についての一般概念吸収並び問題点の探究を行つたのであります。  この会議を終了しまするや、われわれはただちに札幌郊外琴似国立並びに道立の良業試験場本部に参り、それぞれの副場長より今日までの試験研究の成果及び試験研究機関としての専門的立場より国会に対する農政上の希望を承つたのでありますが、特に強調された点は、本年度予算におきまして、行政費の節約をいたしましたことは各位の御承知の通りでありまするが、農林省はかような試験研究機関につきましても、一律に削減しましたために、二十八年度予算暫定予算を年額に換算した額に比し一五%減となり、本年度研究テーマのうち二十一件を中止するのやむなき状態となり、その結果北方農業における品種改良、新肥料、新農薬、泥炭地傾斜地等に関する研究にはなはだしい支障を与えている事実であります。  さらに協同農業普及事業の一環として二十七年度以降新設いたしました営農試験地に対する補助職員施肥改善事業に対する専任職員低位生産地改良事業補助職員の増員または設置の費用、化学実験器具購入費増額等の眞摯な要請がなされたのであります。  翌八日は、宿泊地定山渓を出発いたしまして、まず江別に参り、町村農場を訪れました。ここは御存じの方も多かろうと存じますが、乳牛の生産を行う代表的な牧場であります。  ここから自動車をかり、石狩川右岸、篠津原野に位する新篠津村に至り、泥炭地帯におきまして河川の改修と並行して行う道営灌漑排水工事によりまするところの造田事業を見学いたしました。総工費五億円、今日まで二億円が投下されている由でありますが、新篠津村の村長以下と話し合いましたところによりますると、現在この地帯は小豆の栽培を行い、反当一万二千円程度の収入を上げておるが、開田すれば二万四千円になるということで非常な意気込みを示し、造田計画の完成の一日も早からんことを願つておるありさまであります。  さらにわれわれは開発局において実施中の石狩川流域総合開発計画のうち、篠津地区における篠津川、知津狩川の改修と排水幹線である篠津運河の改良とにより、排水幹支線を整備して、一万四千町歩の泥炭地改良を行いつある現状を視察いたしました。ここを辞しまして滝川に向いまする途中、特に希望いたしまして砂川町に立ち寄り、同地区の農業改良普及員より生活改善に関する指導普及状況を聞き、同町焼山部落農家集会所を見学し、寒冷地における農家生活のあり方、なかんずく薪炭の節約状況を見出し、この方面においては今後なお相当改良の余地のあることを痛感いたしたのであります。  それより一路滝川種羊場に向いました。ここは昭和十八年国より移管を受けたもので、コリデール種めん羊千二百頭を中心に、やぎ、モルモット等の育成を行つております。言うまでもなく北海道気候冷涼にして乾燥し、飼料に声まれ、めん羊の飼育に適し、公式統計で二十五万頭、実際には五十万頭に達するといわれ、本牧場はその研究指導の中心をなしておるのでありますが、牧夫と護羊犬コリーに誘導された数百頭のめん羊の群れ遊ぶさまは、真に一幅の絵画であり、われわれは牧場の人たちわが国におけるめん羊増殖羊毛資源の問題について一夜を語り合つた次第であります。  以上二日間わずかに石狩平野の片鱗をのぞいたにすぎませんが、日程の都合上、これより十勝平野に向うことといたしました。狩勝の絶景をめでつ南下、まず新得に下車、道守種畜場を訪れました。場内において十勝支庁より管内事情一般説明を受けましたが、十勝農民の目下直面しておる困難というのは次の諸点であります。  すなはち昨年度の震災に引続き水害、冷害と連続的に災害に見舞われ、農家はいちじるしく疲弊し、特産たる豆類、ばれいしよにおいても、本年度の作柄に大体六分作程度であろうと…うこと、従つて農業手形十四億円は、その完済ははなはだ困難であり、かつ澱粉価格の決定が遅れておるために、農民は非常に困惑しており、適正なる価格を早急に決定し、価格安定法の目的を達成せられたいこと、十勝沖震災復旧工事はおおむね終了したが、補助金は未交付のものが多いこと、管内耕地面積二十万町歩中、土地改良を要する面積延十五万町歩を数え、しかも本年度のごとく五千町歩ずつの土地改良を行おうとすれば三十年を要することとなり、土地条件の速急なる整備が、望まれておること、無畜牛農家八〇%を解消するため有畜農家創設事業を強化せられたいこと等、種々切実なる訴えを聞かされたのであります。後引続いて種畜場の視察を行いましたが、本場は種牛ではホルスタイン、エアシヤー・シヨートホーン、ブラウン・スイス種、種馬ではペルシユロン等、羊を除く大小家畜を飼育し、規模壮大、いかにも北海道的でありますが、職員より異口同音に言われたことは、職員宿舎の建設がはなはだ遅れ、人事管理の面に遺憾な点が多いということでありました。種畜場を辞し、次に日本甜菜糖工場の見学に参りました。目下操業は休止中でありましたが、てん菜生産北方農業において演ずる大きな役割について認識を新たにし、またてん菜生産振興臨時措置法農林大臣監督規定の運用について慎重を期されたいとの要望のあることを知つたのであります。翌十日、十勝平野畑作農業の実際を視察しつつ治山造林関係調査を行うこととし、帯広営林局を訪れ、局長より管内事情を聞き、また全林野労働組合北海道営林局連絡協議会代表より陳情を受けたのでありますが、その要旨は職員一人当りの担当面積が広大で、労働過重であり、しかも内地に比し旅費、地域給超過勤務手当等においてすこぶる不利であること、官舎、医療施設少く、病人等のできた場合に非常に困難しておる点であります。  引続いて池田町の千代田治山事業を見ましたが、ここは本管内における唯一の治山事業でありまして、七月震災及び十勝沖地震において大小七十五箇所、約十町歩にわたつて山腹が崩壊し、二十四年以降本年まで二千万円を投じ、玉石コンクリート床固工によるところの復旧事業及び防災事業を行つておりますが、今後なお一億円の工事費を要する見込みといわれ、地元町民はその完成の一日も早からんことを熱望していたのであります。  以上をもちまして十勝管内を終り、夜汽車をもつて長途北上上川地区に向いました。十一日旭川において、早朝より上川支庁管内稲作状況を聞くことにいたしました。この地方は水稲栽培の北限をなし、かつ北海道穀倉地帯でありまして、俗に上川百万石と言われ、昨年度における生産八十五万石、供出五十四万石でありますが、本年は春以来気候不順、まず六月に降霜、七月十九日、三十一日と二度にわたつて大水害に見舞われ、しかも冷害を受け、農民は政府の凶作対策について異常なる関心を持つて注目しておるのであります。その要望については、さらにあとで申し上げることといたします。  次いでわれわれは永山村におる農業試験場上川支場を訪れることにいたしました。場長より水稲の耐冷耐寒品種育成試験温冷床苗代等効果比較試験、今次冷害状況等について学理的説明を受け、かつそれを圃場について観察することができました。この試験場の作況を通じて見た冷害の学理並びに実際の推移については、後に述べることといたし、ここで特に触れておきたいことは、本試験場の成果のうちで最も注目に値する風連坊主と称する新品種育成試験を見たことであります。本品種風連地方農家において突然変異を起して生じた土着の品種である風連坊主農林三十四号をかけ、早生、耐病しかも多収の新品種を育成しつつあるものでありまして、もし本品種固定化に成功すれば、ひとり北海道のみならず、内地の早生地帯に普及することになり、わが国稲作一大貢献をなすであろうと目せられておるのであり、国においても強力なる助成策が望まれておるのであります。  それより東川村、東旭川村及び東神楽村の水温上昇施設並びに軌道客土実施状況を視察したのであります。水温上昇施設とは、すなわち温水ため池でありますが、ここの施設は大昔山に発する忠別川の水路式発電設備三箇所により、東和土地改良、区八十町歩の灌漑用水の温度が二度四分低下して、水稲に減収を来しますのを防止するため、十八年着工、総工費一億円をもつて二十五年に完成したもので、これにより水温は一・九八度程度復元するといわれておるのでありますが、この施設をもつてしてもなお相当の損害の残ることが認められ、さらに奥忠別に第四の発電所の新設が伝えられておりますために、地元農民に深刻な不安動揺を与えておる状態を見聞したのでありまして、われわれとしても工事計画の立案には一層慎重たるべきことの必要性を認めたのであります。  軌道客土につきましては、この地方が、表土は砂壌土、下層が礫でありますために灌漑水の浸透大であつて肥料流亡水温低下等幾多の欠陥を持つておりまするので、粘土の客入工事を行つているのでありまするが、総工費三億円をもつて二十六年に着工、三十一年完成ということになつておりますが、これまた予算の関係上、工事ははなはだ遅れておるようなありさまであります。  ここからさらに旭川市に引返しまして、農業協同組合、同連合会の出資によつて設立され、北海道農民の衣料問題に大きな貢献をなしておる羊毛加工工場株式会社北紡を見学し、引続いて道立林業指導所の視察を行いました。この林業指導所は、林業の経営的研究を行う目的で二十四年に設立されたきわめて現実に即した研究指導機関でありまして、造材及び特殊林産物に関する試験、未利用の潤葉樹工場廃材を原料としてその合理化のための中間工業試験をも行い、本道の林業、林産の振興に著しく寄与しているように見たのであります。  以上のごとく、われわれは北海道のほんの一端に触れたにすぎませんが、時間の許す限り種々の施設、機関を息つくひまもなく視察しまして、大いに啓蒙されるところがあり、今後の国政審議上、多大の収穫があつたものと信ずる次第であります。以上をもちまして北海道における調査日程はおおむね予定のごとく終了したのであります。  かくて十二日旭川を出発、翌十三日岩手県に入りました。車中に出迎えた県農林部長より岩手山麓開発計画酪農振興対策等について説明を聞きつ、盛岡市に到着いたしました。たたちに小岩井牧場を見学しました後、県庁内におきまして、国分知事県会議長以下県内指導者の方々と会見いたしまして、昭和九年以上の大凶作といわれまする本年度の稲作の災害状況を中心に農政上の重要問題につきまして協議懇談を遂げ、翌十四日はこれらの事情を実地に検証しますために稗貫郡大迫町、下閉伊郡宮守村、上閉伊郡綾織村、遠野町、青笹村、上郷村、和賀郡飯豊村、笹間村、藤根村、江釣子村の四郡下二町八箇村にわたり、折からの降雨の中を冷湿害、病虫害による稲作の被害を逐一見てまわり、また農民よりの切実なる要望を親しく聞くことにいたしました。その際この地方は、昭和九年の大凶作に際しては、多数の子女が犠牲にされ、幾多の農村哀話を生んだことを聞かされ、暗擔たる気分に襲われたのであります。  この際特につけ加えておきたいことは、遠野町にある県立試験地のことであります。本試験地は、昭和十年すなわち昭和九年の東北の大冷害の後、冷害試験地として発足し、国費の補助をもつて耐冷性品種の育成、栽培法改善を行つて来たにもかかわらず、先年これを整理してしまつたということであります。このことは、すこぶる教訓的であります。  以上をもちまして北海道、東北にわたる大旅行は全部終了し、十五日帰京したのでありますが、この間におきましてわれわれが見聞いたしました事項はすこぶる多岐にわたり、ここではごく簡単にその要点のみを御報告するにとどめたのでありますが、最後に今回の調査の結果より考えまして、とつてつて今後の農政上ただちに参考となり、あるいは早急に実施に移すべき事項に関して一括とりまとめ御報告いたしておきたいと存ずる次第であります。  まず災生関係であります。これには北海道、東北にわたる冷害と水害とがあるわけですが、北海道の水害について見ますると、七月中に三度、すなわち七月七日と八日、十九日より二十二日及び三三十日より上川地方十勝丘山麓地帯宗谷線方面に豪雨がありまして、六市百八十七箇町村にわたり激甚な被梓を与え、農林関係のみにても概算四十八億円の損害といわれ、なかんずく上川、空知の両支庁管内の被害が最大であつたのであります。特に農作物の冠水による被害、は甚大であつたといわれ、とりあえずつなぎ融資二千万円を受けているのでありますが、水害関係特別措置法による地域指定と同法によるところの早急な救済措置が望まれており、特別委員会対策の重点が逐次農林関係以外の分野に移行しつつあるやに見える点を懸念しているのであります。北海道は言うまでもなく単作地帯でありますために、再播、改植、後作等の方法による事後対策が一般にきかないわけであり、損害の回復ができがたいという関係もありますから、特にその救済措置は手厚かるべきことを感じた次第であります。  次に冷害であります。本年度冷害の著しい特徴は、いわゆる遅延型と障害型とが併行的に発現したということであります。遅延型というのは、天候不順による成育の遅延が原因で出穂、開花が遅れ、やがて秋冷の気候が訪れ、稔実不能になる冷害をいい、障害型というのは生殖生長期に入つて花粉母細胞分化形成期から減数分裂期にかけての低温によつて葯壁内面層異常発育を起し、花粉の性能を失い、不稔粒の増発する型のものでありまして、低温の度合摂氏十五度以下でわずか一時間程度でこの徴候が現れ、あらゆる品種のものを襲うとせられる恐しい型の冷害であります。  その実態を北海道立農業試験場上川支場の観察の結果に見ますると、遅延型におきましては、出穂遅延は平年に比し直播で四日ないし六日、水苗しろ四日ないし八日、冷床五日ないし九日と見られ、一般農民はさらにこれより一週間ないし十日の遅れと見られており、従いまして登熟の遅れは、出穂後二十五日目における穂重の増加進展において、平年を一〇〇とすると、直播八八、冷床九一という数字を示しておるのであります。  一方障害型では、普通の出穂期から前に逆算して、九日ないし十五日の穂はらみ期が最も危険な時期といわれておりますが、本年につきましては、八月十五日から二十五日までに出穂したものが多い関係上、七月下旬から八月上旬の低温に遭遇したものが相当多く、上川支場で、直播晩生種の不稔率は三三%という数字が現われておりますが、一般農家においては著しい高率を示しておるものと信じられておるのであります。  岩手県遠野試験地の観測結果を見まするに、苗しろ時期以来七月下旬に至る間低温を示し、八月の上半旬に一時的回復があつて、八月十五日現在の作況指数はやや不良程度でありましたが、八月中半句ごろより以後極度の低温に襲われ、八月下旬における試験地最低気温は摂氏五度四分、標高の高い地方では随所に氷点下を記録し、たとえば八月二十八日、二十九日、三十日に初霜をみておるのであります。  本年度の稲作に対しては天候不順を警告する長期予報が発せられ、これに対して早生種系統品種選択肥料施用法の注意、保温折衷苗しろまたは温冷床苗しろの採用、早期挿状、除草の早期繰上げ等、指導機関を通ずる一応の対策は講ぜられたようでありますが、気象条件が異常に劣悪であり、また指導の徹底にも欠くるところなしとせず、意外の凶作を招くことと相なつておるのであります。たとえば、岩手県上閉伊郡上郷村でわれわれが調べたところでは、早生一九%、中生一七%であつて農林十六号陸羽一三二号等の晩生系植付率は実に六四%に達し、これらはことごとくといつてよいほど甚大な打撃を受けておるのであります。従いまして広範囲の水口の発生、成育遅延、不稔粒、穂首いもちの発生という一連の冷温多湿に基くところ青立ち現象または病徴を呈し、さきの上閉伊郡のごときは実に三分作と称せられており、われわれみずから随所に皆無作に近いものを見受けたのであります。  かくして北海道及び岩手県全体としては六分作ないし七分作、初霜が早ければ五分作と称せられ、特に高冷地における開拓農家壊滅的打撃を受けたものと見られるのであります。  これらの災害に対しましてその最終的損害額はいまだ確認されておりませんが、近代まれなる凶作であることは疑いなく、被害農民の悲嘆はまさに言語に絶するものといわなければなりません。しからば、今回のこの大不祥事に対しましていかなる対策が望まれておるか、以下これを申し上げてみたいと存じます。  まず応急対策としましては、  一、米価及び供米割当については、特段の措置を講ずること。本件につきましては他日に譲り詳しくは述べません。  二、食糧検査については、規格を緩和し、または五等米を設定してこれを奨励金の対象とする等特別に親切な取扱いをなすこと。  三、被害農家に対し、政府保有の米麦及び家畜飼料の貸付または買入基本価格による売渡しを行うこと  四、農業手形及び農林漁業長期資金の借りかえまたは返済期限の延長並びに利子補給を行うこと。  五、肥料、農菜、農機具種苗等営農資金について、農協または金融機関を通じ、無償配付または低利資金貸付利子補給及び損失補償の方途を講ずること。  六、自作農維持または家畜維持のため、融資わくの拡大または新規融資の道を開くこと。  その詳しい説明はこの際省略いたしますが、以上の事項はこれを応急対策の意味において速急に研究し、財政的に、金融的に具体案をねつて実施に移し、立法措置を要するものは、これを立法化すべきものと存じます。  右のいわば応急対策のほかに、二十九年度予算等において特に考慮を要する事項といたしましては、まず国立並道県営試験研究機関充実強化をはかり、耐冷、耐病、多収穫品種育成事業を促進しますると同時に、改良普及事業との結びつき方について、もつと有効適切な措置を講ずべきであります。本件につきましては、本回の調査を通じ、特に切実に感じた次第であります。  次に今回の調査地域積雪寒冷単作地帯についてでありましたが、現地官民より同地帯農業振興臨時措置法の実施についてはなはだ消極化したという批判を強く受けたのであります。土地改良事業補助対象面積の引下げ、融資額の増額、総合助成施設の拡充、農機具融資わく拡大等一連の強力な振興対策が望まれるゆえんであり、このことは今回の冷害対策にも通ずるのであります。  次に温冷床苗しろに対する補助金はこれを一昨年打切り、また保温折衷苗しろに対しても遠からず打切るとのことでありますが、これらが冷害対策食糧増産に対して有効であることはすでに明白であり、その助成を今後継続すべしとの要望はすこぶる強いものがあるのであります。  次は水温上昇施設でありますが、今回の冷害にもかんがみ水口を解消し、また減産を防止するためには温水溜池客土等施設を拡充する必要を認めるものであります。  およそ以上が今次冷害に対する具体的施策の概要でありますが、最後に一言しておきたいことは、冷害に対する中央、地方におけるところの指導者基本的態度であります。幸いにして最近数年間にわたり激甚なる冷害に見舞われなかつたことは、農業技術の進歩もさることながら、まつたく天候に恵まれたゆえにほかならないのであります。にもかかわらず今日まで一般には冷害を軽視する風潮がなかつたかどうか。先にも述べましたごとく、現に政府は冷害試験地を逐次減らしておるような事情であり、また温冷床苗しろの補助金を全廃するがごときはこの一つの例であります。中央のこの種の態度が順次末端に彌漫いたしまして農民を誤り、冷害に対する長期予報が発せられたにもかかわらず、必要な事前措置を十分講ずるに至らず、千億円にも達する損害を国家国民に与える原因をつくつた事実を否定することはできないのであります。この間の事情につきましてはこの際深刻に反省し、冷害について真摯な再検討を加うべきであります。  最後に以上述べました問題以外に耕種改革土地改良農業改良農地調整、畜産、林業等寺の各分野にわたり、それぞれ速急に解決を要する問題があるわけでありますが、時間の関係もあり、きわめて簡単に説明をいたしたいと存じます。  まず産業改良関係であります。北海道における農業改良普及事業を見ますと、補助職員八百二十七名でありまして、大体一町村に一名ずつ駐在しておりますが、北海道の村は内地の郡に当りますので、人員、待遇については格段の措置をとる必要があります。たとえば給与について国の負担金は年額九万六千円であつて石炭手当寒冷地手当について一般職員は国の負担になるにかかわらず、改良普及員道負担となつておる由でありまして、その是正が、要望されておるのであります。  われわれが北海道において痛切に感じましたことは農民住宅の改善の必要性でありまして、未点燈部落の多いことはもちろん防寒上においても幾多の研究課題を残しておると思うのであります。  さきに北海道の温冷床苗しろについて触れましたが、三百万坪に上る温冷床苗しろが寒地における水稲の育苗技術面から申しまして必要なことはいまさら説くまでもないことでありまして、この際国の助成の復活について再考すべきではないかと存ずるのであります。  次に土地改良関係であります。御存じのごとく北海道には泥炭地、重粘土地、火山灰土、酸性土壌地等の特殊土壌地帯ないしは低位生産地帯が多く、総耕地面積の八〇%を占め、馬そり客土、転倒客土、暗渠排水、炭カル、混層耕等の土地改良への要望はすこぶる強烈なものがあるのであります。それには財政投資額の増加は言うまでもなく、長期低利資金わくの拡大を行う必要があります。なかんずく農業土木機械の整備、土地改良調査計画費の増加計上、転倒客土、道営暗渠排水、小規模土地改良、交換分合に対する附帯事業費等新規事業の予算化が望まれるのであります。  次に治山治水関係であります。戦後里山が荒れ年々随所に山くずれ、土砂の流出による災害を引起しておりますことは北海道もその例に漏れないのでありますが、約一万三千町歩の荒廃林地の復旧、崩壊地の復旧、約三万三千町歩の防災林のためおよそ九十二億程度の経費を要するにもかかわらず、二十八年度二億二千万円にすぎず、予算不足を嘆息するというありさまであります。特に防災林のうち開拓地、泥炭地に対する緊急耕地防風林については、その食糧増産に対する効果は確実に証明済みであつて、この際取上ぐべきものと認めた次第であります。なお保安林整備、水源涵養林造成、一般造林についてなすべきことが多々あるように見受けたのであります。  岩手県において注意を喚起されましたことは、林業経営指導員、林業技術普及員に対する国の取扱いについてでありますが、補助金取扱規定で二分の一保証せられておるのにかかわらず、実際は三分の一となつておるという点であります。また木炭の大産地としましてその公営検査員の負担が地方財政を著しく圧迫しておるやに聞いたのでありますが、国において何らかの方途を講ずべきでありましよう。  次に畜産関係でありますが、まず集約酪農地帯の設定について各地の要望がきわめて熾烈なことでありました。北海道においては二十八箇所の候補地をあげて運動しておる状況であります。しかして畜産の振興上目下最大の課題は、自給飼料の給源としての牧野の改良であり、各地ともはかばかしい進展を示していないように見受けたのであります。機械を導入して思い切つた改良事業を行い、牧野の集約利用に進まない限り、わが国の畜産は遠からず難関に逢着するものと思うのであります。こういう意味合いよりしまして、岩手県では草地農業対策の法的措置の確立を提唱されておりますのは、きわめて時宜に適したものと考える次第であります。  以上をもちまして、私の調査報告を終ります。
  4. 井出一太郎

    ○井出委員長 次に九州班、福田喜東君にお願いします。
  5. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 それでは国政調査現地視察報告、第四班九州班の御報告を申し上げます。  農林委員会国政調査班第四班は井出、福田両委員にて、九月八日から十五日にわたり、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分の九州各県及び和歌山県における水害地を主として視察いたしました。各県においては県庁、関係農業団体等から災害の状況、復旧対策要望事項その他農政に関する事項につき事情を聴取いたし、各県それぞれ数箇所の現地を視察いたしました。  まず各県の物的被害の総額を県の数字によつて見ますと、次の通りであります。  福岡県は被害総額七百九十三億八千七百万円、うち農林関係が二百五億九百万円、佐賀県は被害総額二百二十億千五百万円、うち農林関係が八十八億九千八百万円、長崎県は被害総額百三十九億四千三百万円、うち農林関係が六十四億九千万円、熊本県は被害総額八百九十四億一千百万円、うち農林関係が三百八十三億九千万円、大分県は被害総額百七十八億、うち農林関係が七十五億八千万円、和歌山県は被害総額八百七億一千八百万円、うち農林関係が三百四十一億円となつております。和歌山県の被害総額は最近の調査では九百億円に近いということであります。  以下視察した箇所の概要を申し上げます。  まず門司市でございます。被害総額は推定四十三億と言われ、災害原因は当市が地形的、地質的に山くずれを生じやすい状態にあるところへ、多量の降雨があつたこと、さらに表門司においては表土が浅く、原野の伐採跡地、散生地が多く、樹木の集団は見るべきものがなく、また開拓地が多く、山は二十——二十五度、場所によつては十五度の急傾斜をなしておる。そこが原因であります。裏門司におきましては割合に風化が進み、表土も深く、立木も相当認められるにかかわらず、山腹崩壊が多発しておるのは五年未満の新造林地が主でありまして、二十年から三十年の樹木が倒れているのはその上に造林地があり、これが崩壊したため影響を受けたことと、渓谷付近は縦侵蝕の影響、それ以外のところは地下水が飽和状態に達して、山腹の力学的均衡が失われたことに原因があると見られているのであります。これらの原因の徹底した究明と、原野、伐採跡地の造林並びに樹種の選定が必要であることを深く感じた次第でございます。  二、農耕地の水害といたしまして、福岡県では主として築後川沿いの朝倉郡、佐賀県では嘉瀬川沿岸地帯、西松浦郡伊万里町、山代町等の数地区視察いたしました。この地帯災害後極力再仕立苗しろの実施、県内外からの救援苗の導入を行い、できるだけの再植付が行われていますが、無効分蘗が多く、相当の減収が予想されておりました。またこの地帯はかますの生産地でありますが、水害による原料わらの不足のため生産減が予想され、原料わらに対する対策要望されておりました。  三、長崎県の地すべりは佐賀県山代地区の地すべりとともに被害激甚であり、また県北一帯に及ぶ広汎なものであります。今回視察いたしました中で今福町有倉岳の地すべりは、被害が最も大きく、本年六月において田畑の埋没流失六十町歩、山林の崩壊九十三町歩、その他の各種の物的被害を合せ総額六億五千万円に達するものであります。地すべりの起る原因は、地質及び地形と密接な関連を有するものであり、これに降雨、地震等の誘因が加わることによつて初めて生ずるものであります。その始発を促す刺戟的原因を除去し、あるいはこれを弱体化することによつてこれを緩和することが可能であり、単に素質があるだけでは起るものではないといわれております。これに対しては緊急応急の対策実施するとともに、その原因に十分な検討を加えて恒久的な対策を立てる必要があるのであります。当県では地すべりの基本的な調査、危険地区の指定、強制疎開、経費の国庫負担等を含む特別法の制定等を希望しております。  四、長崎県諌早国営干拓工事は造成総面積一千二百二町歩、開発面積一千十九町歩の計画で進行中でありますが、さらに現在施工中のものを含んで有明海を長崎県北高来郡小長井村と、同県南高来郡神代村を結ぶ線において、防潮堤塘築造して、これを締め切り、その内部を干拓地として、総面積一万一千町歩、耕地面積九千町歩を造成せんとする計画があります。長崎県において調査を続行中で、現在のところ造成干拓地の反当工事費が非常に安く、推定反当が十三万五千円でございます。非常に安く有利であると推定されておりますが、すみやかに周到な調査をとげ、実行に移されることが望ましいと思うのであります。  五、熊本県は、六、七月に三回にわたり水害を受けましたが、特に第二次の六月二十五日から二十九日に至る豪雨による被害は、白川及び菊地川水系が主であつて被害激甚をきわめました。ことに阿蘇火山灰の流出のため、肥後平野の大部分を砂丘地と化したほどでありまして、農地の流失埋没も九千町歩に達し、その泥土量は二千五百立方メートルに及びました。視察当時は熊本市内繁華街の泥土はよく取片づけられていましたが、一歩郊外に出るとそのままでありまして、よく当時の惨状をしのぶことができたのであります。  これら水害並びに泥害の原因は、白川水系の阿蘇山の林野の崩壊にありますので、われわれは崩壊の最もはげしかつた阿蘇南郷谷の長陽白水の二村及び白川流域の陣内の各村を現地視察いたしましたが、これらの部落、特に白水村においては山津波に流され、おびただしい巨岩で、中には径二メートル余にもなるものが累々として一面に堆積し、田畑ことごとくが埋没し尽されておる場所を散見いたしたのであります。この崩壊の原因が、長雨のため地盤脆弱となつたところへ豪雨が加わつたこと並びに地形及び地質が急斜面の崩壊が起りやすいものであつたことにもありますが、さらに地被物の関係を見ますると、森林地と草生地との崩壊の割合は、森林地三九%に対し草生地は六一%であつて、草生地の崩壊は森林地の倍近くになつております。また樹種から見ますると、すぎ、ひのきが最も崩壊にもろく、けやき、くぬぎ、みずなら等の天然広葉樹は比較的強く持ちこたえていることが実地に見られたのであります。またこれまで実施せられて来た堰堤工事は十分効果を発揮しておりまして、山腹工事は大部分無事であつたということであります。  この対策として現在考えられているのは、一、山腹工事、二、野渓工事、三、土砂扞止施策、四、水害防備林の設置、五、牧野の改良等でございますが、いずれにしても周密な調査と抜本的な対策実施されなければならぬことが痛感されております。  六、大分県におきましては、被害の最も激甚であつた日田方面には、遺憾ながら交通の関係で参ることができませんでしたので、大分川の流域の耕地関係被害を詳密に調査いたしました。同県における農地の被害総面積五千五百町歩のうち七割は、応急工事によりその植付を完了いたしておりますが、残り千六百五十町歩は河岸堤防の復旧を待つて逐次復旧に努めておりますが、本年度におきましては全部の復旧は不可能ということでございました。  七、和歌山県におきましては、被害の最も激甚であつた有田川流域の箕島町、宮原、安田、御霊、田殿等の諸村を視察いたしました。これらの地方では市街地は一応旧に復しておりましたが、その他はなお住家や宅地に押し流されて来た多量の泥土、流材の排除、清掃に懸命の努力を続けている状態でありまして、水害がなお今住民を悩ましている状況を如実に見たのでございます。災害発生後県におきましては応急救助及び復旧に尽し、今日まで一応の救助措置を終りましたが、山間奥地はまだ小康を保ち得ているにすぎません。今後の災害期を控え、早急の復旧が要請せられるのでございます。また今度の山地崩壊による土砂は、ことごとくが流れ去つたわけではございません。その大部分は、あるいは河川に堆積して数十尺も河底をつり上げます。し、あるいは渓谷、田畑を埋め、また自然のダムをつくつて莫大な水をたたえ、途中に滞留しているのでありまして、今後豪雨出水があればこれらが一時に流れ出る危険が秘蔵されておるのでございます。同県の災害原因は他県と同様のものがありまするが、さらに南海震災の影響も加わりまして複雑でございます。県におきましても、その原因対策について根本的な調査を進めておるようでございますが、国もこれに加わつて徹底的な調査をすることが望ましく、大阪営林局においても同様の希望が述べられております。  以上視察概要を申し述べましたが、災害各県におきましても、その復旧対策に全努力を傾倒しており、被災者におきましても、物心両面に一応の安定を見せ、復興の意欲が高まつているように見受けられるのはまことに仕合せと存じます。特にさきに国会において可決されました、災害特別措措に関する諸法律を歓迎いたしておりますが、なおこれが予算措措がいかになりましようかということを危惧の念を持つてつておるような状況でございます  最後に、各県におきましていろいろ陳情を受けましたが、その陳情の内容をまとめて要望事項として申し上げます。  その第一は、治山治水の総合的抜本的施策を早急に実施してほしいということでございます。  第二は、本年度災害の特異性にかんがみまして、いわゆる九割補助の恩典に浴する災害復旧費の本年度の国庫補助予算計上額は、補助額の五割——これは熊本県でございます。大分県は六割としてほしいという要望があつたのでございます。  第三に、公共災害復旧事業の地元負担の金額起債を認め、起債に対しましてはその利子を国庫で補給し、地元負担の軽減をはかつてもらいたいということでございます。  第四は、特別平衡交付金の重点的配分並びに増額をしてほしいということでございます。  第五は、災害特別法の規定により政令で指定する被害地域は、伝えられる政府原案では狭過ぎる。でき得れば県一円を指定すること、これは佐賀、熊本、大分等でございます。  第六は、災害復旧計画は原形復旧にとどまらず、再災害を防止し得るものであるようにしてほしい。  第七が、種苗、肥料、農薬、農機具及び飼料に対する大幅助成を講じてほしいとするもの。  第八、農業共済事業に対する国の助成を強化してほしいとするもの。  第九、農業協同組右の再建整備を強化促進し、かつ整備期間を延長してほしいとするもの。  第十、自作農創設制度の拡大強化をはかつてほしいとするもの。  第十一、復旧者経費は一につなぎ融資に依存している現状であるから、つなぎ融資増額をしてほしいとするもの等でございました。  以上今回の視察概要を御報告いたします。これをもつて終ります。
  6. 井出一太郎

    ○井出委員長 なお東北班は明日報告をいたしたいとの申出がありますので、明日承ることにいたします。  ただいまの詳細な御報告につきましては、本日政府当局において御出席が少いので、記録を政府側へ送達をいたしまして徹底を期したいと考えます。  ただいまの両班の報告に関し発言があればこれを許します。
  7. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 きよう農林省がこの報告を聞きに出て来ないのはどういうわけでありますか、
  8. 井出一太郎

    ○井出委員長 これは時間の打合せ等について少し齟齬があつたようであります。御了承願います。     —————————————
  9. 井出一太郎

    ○井出委員長 次に冷害凶作関係について各被害地からの代表者が陳情に見えております。しばらくの間これを聴取いたしたいと思いますが、御異議ありませんが。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 井出一太郎

    ○井出委員長 御異議なしと認めます。  それでは暫時休憩いたします。     午後零時二十一分休憩      ————◇—————     午後二時五十一分開議
  11. 井出一太郎

    ○井出委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  午後は、米価問題に関する説明聴取冷害及び凶作対策の問題について議事を進めることにいたします。  まず本年産米の予想収穫高につきましては、相次ぐ水害、あるいは激甚にして広汎な冷害、または病虫害によつて、非常な減収が予想されますことは、先ほどの派遣委員の御報告にもありました通りであります。従いまして被害農家に対する救済の措置を講ずるとともに、国民食糧の確保をはかることは、最も緊要な問題であると存じます。また米価問題につきましては、生産者側といたしましても、また消費者側にとりましても、きわめて重大な影響を持つものであります。  以上のような点は、この農林委員会といたしましても、現下喫緊の問題として深甚な関心を有しておるところであります。従いまして、本日はまず最近の食糧事情につきまして政府説明を承り、しかる後質疑を行うことにいたします。  まず本年産米作況につきまして政府説明を伺うことにいたします。安田統計調査部長
  12. 安田善一郎

    ○安田説明員 委員長の御指名によりまして、私から九月十五日現在の稲作の状況の簡単なる御説明を申上げます。事の性質上、委員の皆様方にはある程度詳細に書きましたる報告書を御配付いたしたと思います。それに即しながら、それを補足して申し上げたいと思います。  八月十五日までの今年稲作成育過程につきましては、過般のこの農林委員会におきまして、その大要を御説明申し上げましたので、大体において省略をさせていただきたいと思いますが、ごく簡単に繰返しますと、本年は苗しろ及び本田稲作の長期にわたる多雨寡照と、全国的に、特に関東以西に見られました田植え期の遅延によりまして、成育は全般的に遅延をいたしまして、軟弱でありましたことは御承知の通りであります。特に関東以西におきましては、稲の分蘖が非常に少くありました。なお、ある一部には凍霜害を受けたところもございますが、北九州を初めとするその後の各地方にわたりました水害がございまして、水害のみならず、また異例ないもちの発生、二化めい虫の発生等の被害が目立ちまして、これらの悪条件にもかかわらず、八月十五日までにおきましては、東北地方にありましては保温折衷苗しろの普及を初めとする耕種改善農家の努力、農業指導者の御奮闘等によりまして、また全国的には、発生をいたしましたいもちに対するセレサン石灰、二化めい虫等に対しまするホリドールの使用など、懸命な病虫害に対する防除の効果がかなりありまして、総合的な作況指数は、平年作を一〇〇といたしますると、水稲におきまして九五%、陸稲におきまして一〇一%と見積つておりました。これを一応石数に見積りますというと、概算の数字でありまするが、水陸合計いたしますと、六千百八十一万石と見込んでおつた次第であります。  その後御承知のような、また今朝来種々御調査報告があり、御陳情がありましたように、八月以降の天候は、西南地方の一部を除きましては、はなはだしく悪くありました。特に八月十五日以降の経過のうち、特徴とするところは、北陸、東北地方の一部に水害を見ましたけれども、より以上に大きな変化の要因は、北日本におきまする低温の影響と、穂首いもち発生による被害の急激な稲作の変化でございます。北日本におきましては、特に冷害がひどくございました。試みにこれを気象から申しましても、気温の低下によりまする冷害の現象は非常に複雑でございまするけれども、本年は昭和九年などとよく比較されまするが、昭和九年とはいささか趣を異にしておるものもございます。まず成育初期におきましては長期の梅雨がございまして、また冷温の影響を敏感に受ける北日本におきまする低温の気温は、最低の気温の方につきましては、平年並ないしはやや低めという状態でありましたので、最初は全般的の出穂遅延のほかは、北海道の北見地方あるいは東北その他の地方におきまする山間高冷地の一部を除いては、成育初期におきましては冷害現象は見られなかつたと思います。従いまして八月の半ばまで、言いかえますると、特に稲作に重要な七月及び八月の半ばまでの気象は、昭和九年あるいは昭和十六年の冷害の年に比しますれば、気温も高くて、稲作には好条件でございました。しかるに八月中旬以降、特に下旬以降の気温は異常なる低下をいたしまして、大凶作、特に冷害のひどかつたと言われておりまする昭和九年、十六年をはるかに下まわつて、九月も継続をいたしておる状況でございます。特にこの気温は北海道において八月中旬半ばから始まりまして、漸次南下をして東北、北陸、関東、東山地方、そういたしまして九州の高冷地においては、相当の南の方まで及んでおる状況でございます。従いまして稲の成育に及ぼしました冷害の特色としましては、昭和九年のころは、開花出穂期前にすでに冷害の症状が顕著でありましたものが、本年は出穂開花期の低温障害と、その後の受精後の稲の米の粒の登熟障害が主体をなしておりまして、特に晩稲におきましては、出穂遅延に伴います登熟期間の低温と、その後、今後霜がいつごろ来るか、この霜によつて発出月がとまるかについて懸念を持つておる次第でございます。  各地方別に状況を、それぞれ異なりますので、簡単に御説明を申し上げますが、まず概括いたしますと、御配付申し上げました表にある通り、昭和元年以降、異例の年を除きまして、昨年までの収穫高の趨勢値をとりまして、平年反収を一〇〇%といたしますと、九月十五日現在では、全国では水稲八九%、陸稲では九六%と見ておるのでざいますが、地方的には北海道七一%、東北八四%、以下九州までそれぞれ表に掲げた通りでございます。陸稲におきましても、北海道においては三一%、東北では八七%、以下九州までその表の通りでございます。生育過程に応じまして、何万石の収穫高かを見積るのはまだ非常に困難な時期でございますが、かりにこれがどのくらいの石数であるかを試算いたしますと、水稲におきまして五千六百五十七万六千九百石、陸稲におきまして百五十万九千九百八十石となります。水陸合計といたしましては、従いまして五千八百八万六千八百八十石となりまして、前年の実収高に比しましては八百六万五千石余の減収となりますし、平年に比しましても、本年度の作付面積から計算いたしますと、水陸合計で七百八万七千八百十石の減少で、本年八月十五日現在の予想に比しまして三百九十九万九百十石の減少であります。  なお今回の九月十五日現在の調査におきましては、本年度八月一日現在におきます水陸稲の作付面積、平板測量を骨子とします面積調査において確定を見ました面積を採用いたしておりますので、前回以前の調査の際に作付面積としましては概略面積を採用して御説明を申し上げておりましたのと、面積において変化があるわけでございます。この点を簡明に御説明いたしますと、御配付しました表の二ページ目と三ページ目に書いてあるわけでございますが、水稲におきましては、全国において五千九百三十町歩前年より減少を示しております。これは北海道等におきましては、田畑転換の作付慣行が、畑から水田へ、言いかえますれば、水稲の作付面積の増に現われている部分がございますが、あとは改廃拡張等、農地が農地以外に転用されたものなどを含み、水害地におきましては、本年異例に多かつた水害関係からいたしまして、九州地方中心に大幅な作付の減少がありましたものの全国各地の増減の差引でございます。陸稲におきましては、本年十四万九千六百七十二町歩と作付面積を八月一日現在で見積りましたが、これは昨年に比しまして一万一千五十三町歩の増加でございます。これのおもな原因は、主として関東、九州地方におきますかんしよ作が陸稲に転換をいたしておるものがおもなる原因と思うのであります。  なお申し忘れましたが、東北地方におきます通し苗代面積が、技術指導等によりまして減少いたしたことにもよるのでございます。  いろいろ午前中からお話がありました部分に即しながら、地方別に簡略に御説明を申し上げますと、水稲でございますが、北海道地方におきましては、御承知の通り日本の稲作の北限地でありまして、特に冷害の状況は北見地方に多くありまして、十勝、渡島の地方がこれに次ぎ、北海道としましては全般的に冷害の影響が甚大でございますが、上川、空知地方におきましては、ひどい中にも被害がやや少い方でございます。指数にいたしまして、北見地方においては一部では八%、北見地方全体といたしましては二二%というがごとく、収穫はほとんど皆無に近い状況の地方も多々ございます。  東北地方におきましては暖流、寒流との関係からいたしまして、太平洋岸の方が冷害の影響は多く思われます。日本海の方は、太平洋岸に比して被害が少いと思いますが、しかしやはり日本全国あるいはある特定地方におきましても、高冷地においては冷害をひとしく受けておりまして、それ以前より引続いております低温多雨の症状と相並びまして、被害がかなり多くありますが、東北地方においては晩生種の出穂遅延と受精登熟障害が当然に目立つておるわけでございます。日本海地方が比較的冷害が少いと申しますものの、山形、福島等においては、これに加えまして穂首いもち発生が八月十五日以降特に顕著に出て参りまして、葉いもちの発生が八月十五日以前に相当多く出ておりましたものは停止をいたしておるような状況でございます。北陸地方におきましては、やはり東北地方の特に日本海岸よりは被害が少いと思いますが、山間部の地方と晩稲を植える地方とにおいては冷害の症状も多く、それ以外の地帯においては低温によります直接の被害はやや軽微でございますが、むしろこれは低温障害穂首いもちとの併発をいたしまして、被害の進行が多くありまして、新潟その他において作柄が急に悪化を示しております。  関東地方におきましては、北関東の山間高冷地において冷害が見られます。茨城、栃木、群馬等においてそうでございますが、本年の気象の特徴といたしまして、南関東におきましても特に茨城、千葉、神奈川等の海岸地帯においては、相当広区域におきまして、八月下旬に低温下の強い風が当りまして、当時出穂期にありました農林二十九号などにおいて黒変粒、言いかえますれば不稔のもみがかなり多く発生いたしておりますが、ごく晩生種のやしま千本とか千本旭などの品種については、出穂遅延による登熟障害が懸念される次第でございます。  東山地方におきましては、これはまた高冷地方でございますので、長野、山梨、岐阜におきましていずれも相当冷害を受けまして、高冷地方においての冷害、平坦部の方における穂首いもち発生、その中間部は冷害穂首いもち発生との併発がございまして、作柄も特別悪くございます。おおむねこの冷害状況は、今年は箱根あたりから気象の変化がございまして、箱根から北ないし東と、南ないし西と、被害の状況にかなりの差がありますが、箱根から東山地方——長野、山梨、岐阜から福井の線に至りますまで、かなりの断層を持つて被害を生じております。  西、南の日本の地方におきましては、八月下旬は、関東、東山以北の異常冷温に対しまして、東海道、近畿、中国地方はわずかに平年を下まわる程度でありまして、四国、九州においてはむしろ平年を上まわる高温を示しまして、好影響を与えまして、九月上旬におきましても、関東、東山以北の北日本各地が引続き低温多雨でありましたのに対しまして、東海道以西は、西に行くに従いまして気温低下の程度が軽微でございまして、これらの気象から見まして、九州地方は例の水害以後作況は漸次好転をいたしまして、その他の地方においては、西に来るほどその状況に近づく作況でございまして、ほぼ八月十五日の作況を維持している状況でございます。  九月十五日現在の陸稲の作況を簡明に申し上げますと、陸稲の主産地は御承知の通り関東と南九州にその大半がございますが、関東においては八月十五日以前においてかなりの作を示しておりましたものが、それ以降の低温と多雨多湿によりまして、陸稲にも湿害その他の病気が出まして、作は必ずしもよくなく、かなりの作柄の低下を示しました。南九州におきましては、水稲に好影響を与えました高温、気象の回復が、陸稲においてはむしろ旱魃を受ける程度にまでありまして、従つて陸稲においては作況が著しく低下をいたしました。その総体の九月十五日現在におきます私どもの事務所を通じて調べました作況調査、あるいは管下の約二千にわたります標本室気象感応試験被害調査を総合いたしました作況概況であります。この調査はただいま申し上げましたように二十三日、二十五日前後に参りました第十三号台風の影響を、調査時期の関係等からいたしまして、入れてございません。この台風の影響は、午前中も委員長から御質問がございましたが、ただいままで私どもにおいて標本調査、実測調査をいたします基礎になります既報のとりまとめといたしまして、水稲作付面積だけでも約三十三万町歩被害を受けていると思います。愛知、静岡、福井、富山、滋賀、京都、和歌山、四国、中国地方中心にしまして、東北、関東、北陸、東山、東海、近畿、四国あるいは九州の一部にも影響を見ました広範囲なる被害でございまして、畑地におきましても、陸稲、かんしよ、大豆その他雑穀、特に東海地方などは、野菜も相当甚大なる被害を受けております。さらに一歩進んだ調査を今月の十日現在をもとにしまして、被害程度を階層わけにしまして、標本調査をいたして、減収量を確定いたして参りますのは、この中旬以降に判明するように、極力努力をいたしておる次第でございます。  なお、御配付をいたしました資料のうしろの方に、本年の作柄の最近の特徴であります。冷害状況の被害見積りが出ておりますが、被害につきましては、冷害穂首いもちが特に問題であるわけであります。十三ページでございますが、被害を受けた面積といたしましては、水害は過般御説明しましたことと、ほぼ同様でございますので、省略いたしますと、冷害を受けました面積は六十六万六千町歩くらいあると思います。しかし本年の気象の影響からいたしまして、低温障害といもちの発生を加えました障害相当多いのでございまして、無理に冷害といもち病などの病与の発生をわけますと、冷害は六十六万六千町歩、そのほかにいもちが六十七万七千町歩を見積つておりますが広く冷害を申しますればこの両者を合せたものを低温障害といつてもいいんじやないだろうかと、非常に概略的なことでありますが、そう申し上げたいと思います。それぞれに応じました減収量はその次の口の欄に書いてありますが、冷害を第一としまして、いもちを第二とし、二化めい虫等を加えますと、本年稲作のそれらの被害だけを見積りましても、約八百二十万石になんなんとしまして、昭和二十四年から二十七年の四箇年平均の九月十五日当時の被害に比べますと、面積においても減収量におきましても二倍半以上の状況を示している次第でございます。     —————————————
  13. 井出一太郎

    ○井出委員長 ただいまタイ国からはるばる団長フラ・ラジヤダルム・ニデス副議長外四名の議員の方がお見えになりました。この際御紹介申し上げますから、どうか拍手をもつてお迎え願いたいと思います。     〔委員長、タイ国議員団を紹介す〕     〔拍手〕     —————————————
  14. 井出一太郎

    ○井出委員長 次に、米価問題につきましては、米価審議会等において検討されたようでありますが、先日一応生産価格について閣議決定も見たやに承つておりますので、その間の経緯につきまして御説明をお願いいたしたいと思います。前谷食糧庁長官
  15. 前谷重夫

    ○前谷説明員  米価問題につきまして、米価審議会の経緯及びその後の政府が決定いたしました点につきまして御報告申し上げたいと存じます。  米価審議会につきましては、先月十九日に懇談会を催しまして、二十一日から二十二日にかけまして深更にわたりまして御審議を願つたわけでございます。その場合におきまする政府の御諮問いたしました案につきましては、お手元に諮問案といたしましてお配りいたしてございまするが、生産価格といたしましては、基本基格といたしましてパリテイ価格が七千二百四十五円、それに生活ギヤツプ及び資財投下量の変化によります特別加算額四百三十円、合計七千六百七十五円を七千七百円といたしまして生産価格におきます基本価格として御諮問いたしたわけでございます。消費者価格につきましては、諸種のまだ未確定の要素がございましたので、その方式につきまして御諮問を申し上げた次第でございます。その結果といたしまして、二日間にわたりまして御審議願いまして、ただいまお手元にお配りいたしてございます答申案が米価審議会として御答申があつたわけでございます。  その要点といたしましては、政府生産価格につきましては、附帯決議にもございまするように、現在のいろいろな点におきまして、基本価格奨励金等の各種の要素によつて定められておりまするものを、もう少しはつきりした形においてその算定方式というものにつきまして検討をするようにということで、附帯決議におきまして、第四に、昭和二十九年産米生産価格算定方式につきましては、従来米価算定方式につきまして、小委員会におきまして三方式が答申されておるのでございますので、その小委員会の算定方式を参考にいたしまして、根本的に検討をしろという趣旨におきまして、政府生産者の米価は不適当である、こういう趣旨の御答申があつたわけでございます。消費夢価格につきましては、当分の関すえ置きといたしまして、この改訂につきましては、あらためて米価審議会を開きまして慎重に考慮をすること、こういう二点の御答申がございまして、附帯事項といたしまして、第一は、早場供出奨励金は、その各期の期限及び金額を大幅に延長増額すること。第二は、超過供出奨励金は、三千円を下らざるものとすること。第三に、凶作度を早急に把握し、さしあたり石当り五百円の減収加算額を概算払いすること。その減収加算額については、審議会において算定方式を検討して精算すること。第四は、先ほど申しました米価の算定方式でございます。第五といたしまして、凶作対策につきまして、凶作地帯農家をして供出に協力するよう万遺漏なき対策を立てるように。第六といたしまして、特別集荷制度は、即時これを廃止すること。第七といたしまして、米の現行配給量は、絶対にこれを維持すること。ということの御答申があつたわけでございます。  それにつきましては、その後政府といたしましてもいろいろ検討いたしまして、今週の火曜日の閣議におきまして、基本価格につきましては七千七百円をもとにいたしまして、これに米価審議会の御答申もございました減収加算額を加えて八千二百円といたしまして決定いたした次第でございます。  早場米奨励金につきましては、昨年度奨励金に対しまして各期三割の増額をいたしまして、第一期が千三百円、第二期が九百円、第三期が六百五十円、第四期が四百円といたしたわけでございます。なお超過供出に対しまする支払い価格は、昨年度におきまして一万四百円を農家に支払い、百円は集荷業者の農協等の手数料として支払つておつたわけでございますが、この一万四百円に、減収加算額を加えまして一万九百円を支払うということにいたしたわけでございます。  現在におきます早場供出の状況は、九月末までにおきまして大体三十万石と相なつておるわけでございます。前年の同期におきましては約六十万石でございまして、本年の天候等によりまして、早場の集荷については、現在までのところにおきましては昨年度よりも相当少い数字になつておるわけでございますが、これにつきましては、ただいまこの期間の延長について検討いたしておる次第でございます。簡単でございますが経過につきまして御報告申し上げました。
  16. 井出一太郎

    ○井出委員長 川俣清音君より先ほどの資料について質問を求められておりますので、これを許します。川俣君。
  17. 川俣清音

    ○川俣委員 安田統計部長から、九月十五日現在の見込み数量につきまして、算定が困難ではあるが五千六百五十七万石と思われる、算定が困難であつて、また正確を期せられない、こういうような御説明であつたのですが、やはりそういうふうに説明をお聞きしてよろしいのですか。五千六百五十七万石は、算定は非常に困難であるけれども、こう想定されるというふうに非常に遠慮したのか、あまりに正確でなさ過ぎた説明ですが……。
  18. 安田善一郎

    ○安田説明員 私が算定が困難だと申し上げましたのは、米の石数を統計的に推定いたしますには、なるべく稲の成育出穂、稔実、登熟の状況の最後の過程において表わして、初めて何石の実りということを言うのが適当だと思う意味で申したのでありまして、九月十五日ではおおむね早場地帯はかなりの稔実を示しておりますが、中晩稲におきましては、出穂後二十五日くらいのところをねらつて、その成育状況から、将来異常な気象その他の生産条件の変化がありませんならば、このくらいの石数を実りとして持つであろうという想定の石数でございますので、その意味でなかなかむずかしい。特に本年は十月十五日でも、現在におきましても出穂遅延等ありまして、開花期が非常に長く、出穂遅れ、稔実等が平年のようには進んでおらない関係からそう申し上げたのであります。
  19. 川俣清音

    ○川俣委員 どうも安田部長の答弁は非常に私ふしぎなんです。これはどうせ九月十五日現在の予想収穫であります。その後に起つて来る現象については、あらためておそらく御報告があるはずである。そういたしますれば、この統計にありまする作況指数というようなものからいたしまして、当然九月十五日現在のものが正確に出て来なければならぬはずのものです。もし結果が出し来ないとすれば、この指数は誤りである。この指数も想定であるというならば、結果もまた想定としてわれわれは受取れる。結果は想定として出て来るのに、指数は認りがないというのはどうも間違いじやないか。しかもあとに参りますと、減石どのくらいということを正確に出している。減石がはつきり出て来るということになりますれば、一応これは結果的にもどのくらいであるということが正確に出て来なければならぬはずです。私は現在の予想を聞いたのではなく、また部長も現在のことを御報告になつたのではなく、九月十五日現在ではなかなか困難であるということになりますれば、この指数もまた大づかみなものであつて、基礎のないものだ、こういうふうにも受取れるのですが、その点はどうなんです。  並びに私のもつとお伺いしたい二とは、こういう指数について九月十五日現在だと言われておりまするけれども、はたして九月十五日現在であるかどうか、これは非常に疑問だと思う。おそらく十五日で締め切つておられるでありましようけれども、この十日で調査の過程におきましては、あるいはあり、あるいは五日であつた部分もあるであろうと思う。表に出すときは十五日だということでありまするけれども、おそらく実際の調査にあたりましては、十日、五日ということでなければならぬはずであると思う。なぜかと申しますと、九月十五日現在と言われておりまするけれども、十三日、十四日ごろの低温な部分については、この中に入つていないように見受けられる。そういたしますると、一応十五日というのは、十五日現在ではなくして、十五日締切りに集まつたものというふうに解釈すべきだと思いまするけれども、その点はどうなんですか。
  20. 安田善一郎

    ○安田説明員 御質問に応じまして、私のお答えがたいへん技術的であるので申訳なく存じますが、第一点の、見積りがややむずかしいとか、出した指数ないしはこれを石数に試算いたしましたものがどうであるかということに関することを申し上げますると、稲の成育状況の調査の段階といたしまして、九月十五日現在までの調査は、本則を平年対比の指数で表わしまして、石数では表わすのを避けておるのが従来の慣例でありまして、もう一月たちましたら、予想収穫高を何万石、さらに刈取り期になりましたら、推定実収高を何万石と出して、予想的な要素があとになるほど少くなつて来るわけでございます。もちろん全田畑の稲を全部測量するわけではございませんので、私どもが計画を立て、設計をいたしました調査方法に関しましては、調査期ごとの私どもの組織、労力、調査方法、経費等の最大限度をあげまして、その時期ごとに調査をするわけでございますが、田植えから刈取り期までにそれぞれ調査内容が違いますので、そう申し上げたのでありまして、九月十五日現在としては最大労力をあげました指数調査でありまして、この指数だけではわかりにくいから、実際の石数としての試みの算出をしますと、そのくらいだと申し上げた意味でございます。  第二点の九月十五日現在というのは、これもやや従来の統計表示の場合の慣例を踏襲しております点で、技術的で恐縮でございますが、統計調査事務所の職員が一万二千、そのうちで作物調査をいたしておりまする者九千五百余の職員をもちまして、全国的な調査を標本理論によつていたすわけでございますが、九月十五日一日で全調査筆、調査場所を全部調べるわけには行きませんので、この場合で申し上げますと、最終を九月十五日にいたしまして、おおむねその前三日間ぐらい、場合によると三日間を越える作業の場合もありますが、その県の最終調査を九月十五日に終る所定内容の調査という意味でございます。これはことしだけ始めた意味でございませんで、従来何日現在というのは、そういうふうにいたしておるわけでございます。さよう御了承を願います。
  21. 川俣清音

    ○川俣委員 第二の点はそれで明らかになりました。第一の点は、指数だけは確かだけれども、作況石数が出て来ないということはおかしいと思う。作況石数が出て来るような指数でなければならぬ。私はあえて今の作況を聞いているのではない。九月十五日当時における収穫状況が出て来ないのに、指数が出るということはおかしい。収穫石数は出て来ないから、指数で出した。その指数は、結局十五日現在で収穫石数が出て来なければならぬ指数でなければならぬ。ことに食糧庁は、山形とか、秋田とか、あるいは新潟等における供出割当の場合においても、この指数で作況石数を出しておるのです。交渉に当る場合には、この指数でもつて年度の作柄を一応算定しておられるのです。しからば食糧庁では算定できる、これは統計調査部ではそういう石数は出て来ない指数だ、こう言われるのは、どうもおかしいじやないですか。
  22. 安田善一郎

    ○安田説明員 私がただいま御説明申しましたことは、川俣委員に十分御了解願えなかつたか、私の申上げ方が悪かつたか、どちらかでございまして、この指数をおのおの地域別に、たとえば県別でも地区別でも全国別でも、平年反収が年度ごとに予定され、本年も予定されております。また八月一日現在においては、作付面積は統計的に確定をいたしましたので、この指数を石数で表わせば、全国についてあたかも申しましたと同じような試算石数が、もちろん出て参りまして、食糧庁が需要されておりますものについての石数は、私ども自身において試算をいたしたものでございます。
  23. 川俣清音

    ○川俣委員 議論はあすに延ばしますが、ついては資料だけ要求いたしておきます。各府県別の今年度の九月十五日現在におけるこの指数から出した収穫予想高、並びにその基本となりまする各府県別平均作付面積、及びその収量、並びにその結果から出て来ます平均反当収量、これを明日の委員会までにお出しを願いたい。
  24. 安田善一郎

    ○安田説明員 農林省全体として資料を提出することになれば、これを計算して出すことができると思います。
  25. 井出一太郎

    ○井出委員長 平野三郎君。
  26. 平野三郎

    平野(三)委員 本年度の米作状況は非常に不良でありまして、六十年来の凶作であると言われております。昭和九年、昭和十年の東北冷害等から見ましても、比較にならないほど、本年は非常に深刻な状態であり、明治三十八年の凶作以上であるということも言われておるわけでありまして、先般私は東北地方の米作状況の視察をいたしましたが、まさに天明の飢饉に比すべきであると言つても過言ではないというような深刻な状況でございます。幸い当時から見ますならば、交通状態が発展をいたしており、本年は日本だけが非常な凶作であり、世界的に大豊作の状態でありますから、人民が餓死するというようなことはありませんけれども、しかしながらきわめて憂慮すべき状態にあるということは、先ほど安田統計調査部長の御報告によりましても、昨日農林省が本年度の米作状況の発表をせられましたが、それによつてみても、その点がよくわかるわけであります。しかも先ほどの統計調査部長の御報告は、今回の台風十三号の被害は全然加味せられていないわけであつて、しかもその後の状態は一層憂慮される状態にあるのであります。こうした状態において、本年度の農村の生活の安定の問題、さらにひいては日本の国民全体の食糧問題は、まさに重大な問題であるわけでありまして、国会におきましても、本日特に閉会中にもかかわらず、農林委員会要望もあり、委員長が本委員会を招集せられました理由も、主としてそこにあると思うわけでございます。この際において、政府といたしましては、すでに所要の対策を樹立せられたでありましようし、またできるだけすみやかに臨時国会を召集せられる必要があると思います。その来るべき臨時国会において必要なるところの立法措置については、政府としていろいろお考えになつておると思うわけでございますが、この際私はとりあえず農林大臣から、今日まで政府としてとられた処置、並びに来るべき国会においていかなる構想をもつて政府が臨まれんとするかという点について、お伺いをいたしたいのであります。特に先ほど長野県の代表者から陳情がございましたが、七百メートル以上の高冷地においてはほとんど収穫は皆無であります。これは長野県ばかりではない。全国的にそのような状態にあるのでありまして、私どもの岐阜県のごときにおきましても、ほとんど飛騨地方のごときはまつたく全滅の状態にあるわけであります。こうした農村においては、供出なんということは全然問題にならぬのであつて、いかにして飯米を確保するかということが最大の問題になつておる。そのような状況であり、来年度におけるところの種もみの確保についてどうすべきかということについて、農民はまつたくぼう然として自失しておるような状態でございます。ことに今年はまたいもち病の発生によつて、非常な多額の農薬を使用いたしたのであります。すでに農林省の御説明によつても、六十五億円を突破するところの農薬代金を農村が支出したということを聞いておるのであります。この農薬に対する補助金などにいたしましても、とうてい既定予算によつてはこれは農村のためになるのではないのであつて、この際相当農薬に対する補助金増額することも、これまた当然のことであります。これらについて政府としてはどうした処置をとられたか。こうしたいろいろな点から考えますならば、この際ほんとうに政府としては、真剣に抜本的にまず農村に現金収入を与えて、飯米の購入代金を確保するという措置をとるとともに、国民全体に対するるところの緊急適切なる行政措置が必要であると考えるのでありますが、まず政府におかれまして、今日までとられた措置、並びに今後どういう決意をもつて臨まれるかということにつきまして、一通りの御説明を伺いたいと思うわけでございます。
  27. 保利茂

    ○保利国務大臣 今年の稲作状態につきましては、植付時期前から、異常天候が予想せられるようないろいろな徴候が現われて、懸念をいたしておりましたが、きわめて不幸な、特に八月中旬以降の天候はきわめて不幸な事態を招いておりますが、災害地の農家の方々が営々たる努力の実が結ばれずにいる惨状に対しては、ほんとうに同情にたえないところであります。のみならず、食糧の関係がやや安定をして参つて来たというところにわが国自立経済達成の希望も大きく持たれておりました節に、かような不幸な年を迎えましたことに対しまして非常に残念に存じております。のみならず、二十五日にはまた大きな台風が襲来しまして、加えての災害に対しまして、政府といたしましても、従いまして来るべき年度の食糧事情の困難さに当面をせざるを得ない、さような考えをもつて万全を期して参らなければならぬという考えでおります。いずれにいたしましても、かくのごとき作況後におきます食糧事情に対しましては、私は、政府がもとより万全の措置を講じて参るためにこれは手落ちがあつてはなりませんと同時に、ひとつ国民も、生産者、消費者相ともに、特にここ数年のごとき豊作のあとを受けておりますだけに、どうしてもこの事態に対して深い理解と御認識をいただいて、そうして来米穀年度に対処して行くという心構えが必要であるというように痛感をいたしておるわけでございます。それにもかかわりませず、ともかくもただいま各県と供出の御相談を申し上げております。かような状態にかかわりませず、ともかく誠意をもつて県側におかれましても、供出の御相談に応じていただいておりますことは、私の深く感謝をいたしておるところでございます。そこで今回の北日本と申しますか、東日本と申しますか、一帯を襲つております冷害措置につきまして、先般政府は西日本水害ないしは南畿の水害等にとりました総合的な対策をもつて対処いたすという方針を前回の閣議におきまして決定をいたしました。臨時災害対策本部としてこの災害対策にあやまちなきよう万全を期するという態度をもつて臨んでおるわけであります。農林省は特に今回の災害稲作災害でございますだけに、これに対処しまして、それぞれ部内におきまして、実情に沿い、検討を加えまして、災害対策本部の案としてこれを持ち込むように研究いたしております。私どもの考えでは、農林省としては今回の災害に対して、こういう処置をとることが必要でないかということを持ち出すつもりでおるわけでございますが、それは、農業共済保険金につきましては、農業共済団体による仮払い及び政府再保険金の概算払いをすみやかに実施しなければならぬ。そうしてその所要資金につきましては、それぞれ必要な措置を講じなければならない。第二に、被害農家に対する低利の営農資金の融通を確保いたしまするため、利子補給あるいは損失補償措置を講ずる必要がある。次に農林漁業金融公庫の貸付金の償還期限の延長その他貸付条件の緩和をはかる必要を認めております。被害農家の食糧に対しましては、すでに飯米を尽しておられるところもあろうかと実際問題として考えられるのであります。これらの農家に対しましては、政府手持ちの主要食糧の払下げにつきまして、価格の払いにつきまして代金延納等の措置を講じて参るつもりでおります。災害農家のことでございますから、従つて品質の低下ということも免れ得ないことでありますし、従つて等外米につきましては当該県と協議の上に数量を定めてこれを買い入れる。御指摘の種もみにつきましても供出数量の中に含めて、買入れ価格につきましては特別の考慮を払うようにしなければならぬ。農作物の優良種子確保のため必要な国庫助成措置を講ずる。さらにまた積寒法による土地改良及び開墾並びに公共事業の補助率をある程度引上げることが必要ではないか。新規または繰上げ実施を行つて被害農家の現金収入の道の一つとしてこの処置を講じて行く必要がある。なおまた国有林野特別会計事業におきましては、新規に追加事業を実施いたしまするとともに、特に薪炭林の払下げについては、特別の措置を講ずる考えでおります。炭がまの設置その他副業の拡充につきましては、営農資金と同様に営農資金に準ずる資金的措置を講ずる必要がある。保温折衷苗しろその他特に冷害対策として効果ある耕種改善施設を継続強化するとともに、試験研究施設を整備いたす、かような一連の考えを持つておりますが、先ほどお話の農薬の手当につきましては、お話のように今年は六十数億の農薬を使用して、しかもこの作況に見舞われておるわけでございますから、従いましてこの農薬の助成につきましては、きわめて困難耐な財政制約を受けておりますけれども、財政当局も、ともあれこれに対して深い理解を持つていただいて、去年に比較してこれを申し上げることはいかがかと存じますけれども、昨年の農薬使用が四十数億になつておつたと思います。その四十数億に対して国家の助成が七億円であつたと思います。これに対しましては、少くとも昨年の三倍以上の措置を講じ得る見通しはついておるわけでございます。なおまた国会側の御意見もよく伺いまして、この凶作対策には遺憾なきを期して参るつもりでおります。
  28. 井出一太郎

    ○井出委員長 松岡俊三君。
  29. 松岡俊三

    松岡委員 私は先月上旬北海道を、同僚金子委員視察いたしました。また去る二十八日から秋田、山形、福島をつぶさに視察して参つたのであります。この凶作の作柄の現状について、自分の直接見たところによつてお尋ね申し上げたい。またもう一つは、衆議院、参議院一団となつてつくつておりまする積寒法関係の議員連名の申合せがありまして、政府に申し入れた事項についてお尋ねいたしたいのであります。この二点についてお尋ねいたしますが、まず私の心配いたしますことは、ただいま統計部長からお話がございましたが、私の見るところでは、今回の凶作は異例である。従来とはなはだ趣を異にしておるところがある。福島県の浜通りのごときは、ようやく二十五日に穂ぞろいを見た。爾来今日まで一週間、当然田面の色がかわつておらなければならぬのに、一つもかわつておらない。まつ青になつておる。私はここに持つて来ておりますが、これがはたして実るかという問題であります。同行の泉技師も、さすがの専門家も唖然とした。私とともに帰つて来るやつを、数日遅れて見ることになつておる。こういう状況で、先ほど川俣君からお尋ねがありましたが、私与党としてお尋ねするのはよくよくのことだと思わなければなりません。九月十五日の統計によりますると、かくかくの数字が出た、こういうことになつておるけれども、あの福島県の浜通り、茨城県においてはずつと土浦のこつちの方に来ますると、少し黄色がかつたところがありまするけれども 福島から相馬に通ずるあの辺の耕地はもちろんのこと、浜通り、平、ずつとこつちまでの間は青立ち、もうまつ青ということが私は一番適当だろうと思う。これをどういうぐあいに計算の人に入れたかということです。平年のような調査ではたしてできるかどうか。ややもすると担当者の熱誠なるあまり、一たび報告したものを是正するということは、上の方から相当に難詰をこうむるおそれがあるということは、これは何人も考えられるところであります。思い切つて、こういう変態な凶作状態であるからして、従来のはまことに見誤つた。正直に言うて、あの一年間全力を尽し、資本を尽し、単作地帯であるだけに一生懸命になつたその農民の心は、私の経験によりますと、農民としての自尊心をあくまで持つておるのであります。隣りの人の田が悪くなつたのを見て、自分の田はどうなるかと申しますと、隣りはそうであるかもしれぬけれども、おれのところは必ずよくなる、決して負けるものではない、こういう農民の心理である。この農民の心理が日本をして強くするゆえんである。私はずつと見ながら、ところそれに寄つて農民に尋ねて、そのけなげさに感激すると同時に、すぐ涙が出て来るありさまである。目の前にとれもしないものをとれると思つている。そのものをどういうぐあいに調査して九月十五日の統計の上に表わしたか、その問題が私は重要なる点だと思うのであります。ただいま農林大臣が御説明になりましたが、その中にもしこれらの点について、かりに北海道、山形また秋田、新潟及び青森も割当がきまろうとしておるようでありますが、これらの方面には、当然私の見たところによつては修正されぬければならぬようなことが起るのではないかと思うのであります。その点が農林大臣の今の御説明の中に一点もなかつた。そうすると、今まで早くやつたところのものはそれつきりだ、こういうような気持にさせましたならばどうなるか、私は与党としてこれを聞いておかなければならぬ。私の見たところは、秋田県において湯沢の奥、宮城県境までの東成瀬村、尾花沢のごときは、農林百三十二号、耐寒品種を使つてみなゼロだ、一つもとれない。また山形県のいつでもいつでも冷害をこうむるところの東西小国村に行つてみますと、また宮城県境に行くと四十五戸の堺田という部落がある。これなどはまつたくとれない。行つてみてさんたんたるものだと言うよりほかにない。そこでどういうあんばいにして暮して行けるかという問題がただちに問題になる。ところがその部落の墓地が宮城県に入つておる。秋田営林局の管轄ではない、青森営林局の管内である。四十五戸にどうして炭をたかせるかという問題がただちに問題だ。私はあそこに行つて愕然としちやつた。また浜街道に行つて平までに行く間において、こういうふうにまるきりこれはしいなです。何にもない。こんなものが今出ている。私はそれがどうして統計に現われたかふしぎだと思う。当然川俣君のお尋ねに対して、今度そういうあんばいに間違いがあつたならば、農林大臣として割当を修正するというお考えがあるかどうかということはお尋ねしておかなければならないと思います。またもう一つ大切なことは、今回の冷害は供出制度に原因したかのように思う。どうしても多収産を得たいというので中稲、晩稲をやつておる。あの福島県のごときは九〇%、ほとんど晩稲にひとしい。それだからぞつくりみなやられておる。今日までの冷害は、多くは山形から北の方にあつたのですけれども、特別なるあの福島県の状態を見たときに、これらのものはどうして行くか。早ければ新米を食べられるものを、いまだ一つとして刈つたところがない。秋田県においても稲刈りしているところははなはだ寥々たるものです。山形県は庄内方面は少しく稲刈りはしましたけれども、奥羽線の沿道のごときはどこで稲刈りしておるか、一つも稲刈りしておらない。それだけみな遅れておる。福島県に行きますと、これは去る二十五日が出ぞろいでありますから無理もありませんけれども、九月十八日までに全部穂が出て、そうして穂の出ぞろいが二十五日、二十五日から一週間も待つたが青いそのままであるというような状態は、何としても米になりつこない。この米になりつこないのをどういうぐあいで計算に入れたか、私は内容をお聞きしなければならぬ。このときに、これはこういうあんばいだつたというように、地元二百町村の代表的な調査を現地でいたしたその結果の統計であるにしても、これをほんとうに正直に言つてくれというと、その役人があるいは首になるおそれがあるというようなことなきにしもあらずであります。私は今回の凶作は例年にちよつと例のないところの冷害だと思う。それがいわゆる供出制度に原因しておるところが多くありはせぬかと思うのであります。この点を特に申し上げて御答弁をいただけばありがたいと思うのでございます。  第二番目には、今回の状態を見ますると、実に一生懸命肥料をやり、精魂を尽した篤農家の家がみないけない。そうして肥料もやらないでいいくらいにしておるところの隋農が幸いを受けておる。幸福を受けておる。これは農民の心理状態——今では凶作で、勉強していた者が今度飯米も食うことができないような状態になつておる。農家としてこれくらい見識とでもいいましようか、今までちやんとしていた篤農家、りつぱに供出していた者が一つも供出されないばかりでなく、食うこともできないような状態になつておるという、この者に対する将来の農民育成する上において、農民精神を鼓吹する上からも、今回の対策は、特別なる考慮を払わねばならぬと私は思うのであります。篤農家がまるで転落するようなぐあいに、隋農者が幸福に、僥倖にまぐれ当りして行くというようなことを、いかようなぐあいに施設をなさねばならぬかという、その施策についで、一歩誤ると将来の農民精神に影響するところすこぶる大なるものがあると思うのであります。この点も私は特に今回痛感した次第でございます。  次に臨時の対策と恒久の対策の問題でございます。私がかつて雪害の二字を唱えて十年間、ようやく法律に入つて積雪寒冷単作地帯という臨時措置法が生れるところまで発展いたしたのでありますけれども、この雪害がすなわち冷害そのものである。こればかりではありません。雪のない福島県あるいは茨城県方面にまで及んだことは、むろん寒流がずつと太平洋を下つて、あるいは銚子沖あたりまで来ているかもしれません。占領のためにはたしてこの寒流の調査を怠つていなかつたかどうか。私が雪害問題をやつて土木振興調査会ができて、それで初めて寒流の調査ができるようになつた。その後において寒流の調査の船が完全にできているがどうか。そうしてあの方面は占領されおるいろいろな関係上、はたしてその寒流調査の点について遺憾がなかつたかどうか。また今回行つてみまして、福島県においてもそうですが、一種独得な気象関係のある所がある。そうしてこんな所にこんなふうになつたかというような点が、私一つの例を申し上げますと、山形県の最上郡及び北村山郡の北部一帯、政府施設がないために、町村が金を出して三年来この万、農林省の雪害調査所の中に立てこもつて特別なる気象観測をしておる。山形の測候所ではかつたのではそこに行けない。酒田の測候所ではかつてもここはのけものになる。あの地点は大きな天体を観測するところの気象方面では問題にしていないわけではなかろうけれども、そういう独得なる農民に至大なる関係のある気象観測が——私は昨年これを指摘したのでありますが、予算関係その他がありますのでむずかしくなつたようでありますけれども、その半面にはやはり学者は学者の見識を持つて、そうしてちつぽけなところに特別なる気象観測を置くというと権威に関するというようなことで、報道部長が横やりを入れておるようなありきまである。農民にはたして親切なる行為というわけには行かないと私は思う。農民はただただこの天候をもつて一年の幸不幸を定めるのである。この気象観測方面にはほんとうに農林省において独特に考えて、将来の対策上しかるべきものかと私は思う次第であります。かように申し上げて、私は積雪寒冷単作地帯の議員連盟が政府に申し入れた事項についてお尋ね申し上げます。  一、積寒予算を画期的に増額すること。すなわち五箇年の時限法である積寒法による事業の実施は過去三箇年にわずか一割程度しか実現を見ていないので、残された二箇年間に計画事業の完成を期するため、二十九年度予算においては百五十億を確保すること。二、総合助成指定町村を大幅に増加すること。残された二箇年間に全指定町村の八割を実施する方針のもとに、昭和二十九年度には千七百町村、九億を確保すること。三、山間郎等の土地改良を促進するため、面積基準を三町歩まで引下げること。四、積寒地帯実情にかんがみて、補助率を大幅に引上げること。特に冷害の悲惨な状況を考慮して、早急に補助率を引上げ、農家収入の増加をはかること。五、今次冷害に際し、温床苗しろ、保温折衷苗しろの効果はきわめて大なるにかんがみ、予算を大幅に増額すること。これが衆議院、参議院議員の積寒地帯の議員連盟が決定した事項であります。これを政府に申し入れてあるのでありまするが、積寒法の第一条に明記してある通り、遅れておる積雪寒冷単作地帯育成しよう、これがすなわち積寒法の第一条の目的であります。しかるに今日までは山間部のような所にこそ土地も改良し、農道もつくつてやるようにせなければならない。しかるに二十町歩でなければできない。この土地改良の現実に効果が上つておるところを見ておるところの山間部のこれらの三町歩くらい持つておるところの者は、これをながめてひがんでおる。むしろ積寒法のなからんことを願つておるありさまである。ようやく昨年わずかの総合施設の金でもつてこれを補うという考えを初めて出したけれども、そもそも一番最初の出発が積寒法の第一条の目的をあべこべに行つているような状況であると思うのであります。これをこの際に直して行かなければ、せつかくただいま農林大臣がお示しになつた積寒法によるところの工事云々というけれどもが、はたしてどこに行くか、私はないとは言いません。むろん平野部のところにあることはもちろんですけれども、最も冷害をこうむつているところの山間部のものは農道をつくることができない。農道によつて労賃をとることができない。これは前の官房長、そこにおられますが、一番よくおわかりだろうと思います。こういう間違つたことがあるのです。間違つたとはいいませんけれども、事情に即しないところがある。これを今回議員連盟において指摘して、三町歩に引下げなければいけない。ところがなかなか大蔵省はこれに認識がないようであります。私の見るところにおいては、積寒法をほんとうに重厚に、予算を少しも減額することなく大いにやらせておつたならば、ことしの冷害問題に対して、それみたことかといつて農林省は鼻を高くすることができたのじやないか。これがあべこべになつておる。今回の冷害を機として、災いを転じて福となすように、ほんとうに応急対策とともに、恒急対策の上にも積寒法を真に活用し、これを拡大し、予算増額して、そうして山間部の者に幸福を与えるようにすることが最も必要なるものだと私は思うのです。あえて私は雪害の二字を入れた積寒法の生みの親だからこんなことを言うわけじやありません。それみたことかというようなぐあいになる土地改良の問題などは、今から二十五年前に、当時の中央農事試験場長安藤広太郎君が、幾ら難詰されても返事をしない。速記をとるところの会議を終つて来ると、あなたのおつしやる通りだと、こういうようなぐあいで、それがようやく今日土地改良になつて来ておる。それを積寒法によるところの単作地帯という点においてやつたことはけつこうですけれども、ほんとうの積寒法の目的をもつて進んで来るところのものは、今回の冷害を最も深刻に受ておるところの山間部であるということが、農林省においてほんとうに御認識になつておるようでありますけれども、惜しむらくは、大蔵省にはわからない。大蔵省がほんとうにわからないように私は思うのです。与党の人間がかようなことを政府に向つて言うのはいかがかと思いますけれども、やむにやまれぬ状態だから私は言うのです。今回こそがこの冷害を真に克服するために、私はこの間北海道で温水設備を見たときなんどは、これでなくてはならぬ。保温上ああいうあんばいにせんければならぬということは当然だ。ところが先ほど申し上げました最上郡の堺田の四十五戸の部落には、ようやくこの温水ため池ができて、ことし初めてこれが実行された。三年間かかつて初めてことしできるというありさまだ。これらを泉事務官がよく見ています。泉技師が帰つて来て、農林本省にさぞかし実際を報告するだろうと思うのです。こういうことがみな積寒法をほんとうにやるようにさえなればできるのである。こういうぐあいに私は申し上げて、農林大臣の御答弁を伺い、また係りの方からも伺つて、さらにお尋ねをいたしたいと思います。
  30. 保利茂

    ○保利国務大臣 お答えいたしますが、この供出の御相談をいたしておりまするのは、最近の——これは決してできて取上げた米じやないのですから、ここに積んでこれが何万石あるのだ、この何万石の中でこれだけ出してくださいというものではございませんから、従つて予想収穫はどこまでもやはり予想でございまして、予想と実際がぴつたりすればたいへんけつこうでございますけれども、予想と収穫が必ずしもぴつたりするものでもなかろう。これはいつの年でも同じだと思います。のみならず、食糧統計がいろいろ批判を受けております。実際は、昨年のごとき統計数字であれば今日のような流通しているやみの余裕があるはずはないわけです。そこに実際の数を把握するということが非常に困難だということは、これはもう私が申し上げるまでもない。従いまして今日各県側と御相談を申し上げておりますのは、大体これくらいまあ現状では行けるのじやなかろうかという最も信頼し得る予想の上に立ちまして、御相談をいたしておるわけでございます。しかしこれは実収がきまりますればはつきりするわけでございます。従つて実収がきまりましたら、御無理なところは補正をしなければならぬのは当然のことで、そういたすつもりでおります。県側の方でもそのことは御承知の上で御相談をいただいておるわけであります。その点はそういうふうに御了承願います。  今松岡先輩のお話で、今回の凶作冷害が篤農家が非常な被害を受けて、むしろ惰農の方が助かつておるというお話でございますが、これはそういうこともあろうかと思います。と申しますのは、先生御承知のように、昭和九年のあの大冷害の翌年は、これも勧めなくても、農家の方はほとんどわせにかえられた。県も国もわせをやつて、そして冷害を免れるように、指導をする方もつくられる方も、冷害を避けようということからわせが非常にふえた。それがここのところ米作状況が、ともかく東北地帯は幸いにして最近の状態です。それで一面農家の方からいえば、たとい一升でもよけいとれるようにという増産意欲がそこに働いて、冷害という頭がみななくなつているわけではないでしようけれども、とにかく最近の状態から、私はおそらく人情としてはそういうものだろうと思います。これはしかしそういう中晩稲をやつちやあぶないという根拠を持ち得れば、これは県でも国でも、それはあぶのうございますからやめてくださいという指導ができるようにならなければならぬ。それをさつきのお話の寒流調査その他の、昭和九年のあとにとられた冷害対策がおろそかになつておるじやないか、これは私はそうじやないかと思います。あるいは今日気象は気象台の方で全部やつていただいているわけでありますが、これはまた特段の研究をしなければならぬかと思つております。そういうふうに、実際において冷害に対しての——しかしこれはなかつた場合にはまたたいへんなことになりますし、国としてはやはり西日本の水害の跡を見ましても、長期気象と申しますか農業気象と申しますか、この充実ということを私は非常に痛感しておるわけでございます。私どももそういう要請をいたしておるわけでありまして、努力をして参るつもりでおります。
  31. 安田善一郎

    ○安田説明員 松岡委員から、ことしの生育また冷害状況につきまして、非常に調べが悪いじやないか、あるいはまた調査が間違つているそうだと発見されたときに直していないじやないか、また私どもの方の作況指数ないしはこれの見積りがどうして出て来たかということにつきまして、非常にむずかしい、特異な気象のもとの、また冷害中でも特異な冷害でありますことを、先ほど申し上げましたような稲作作況調査について、御同情ある質問をいただきましたので、かいつまみまして、なるべく詳しく、こうやつて調べておるということをまず申し上げたいと思うのであります。  稲作におきまして、最高気温がどのくらいになつた場合と、最低気温がどのくらいになつた場合ということにつきまして、海流等の影響もありますが、それの総合結果としての温度、日照、雨量等の影響が、気象としては最終的に、総合的に必要かと思いますが、まず第一に福島につきましては、稲作の重要な最高気温として摂氏二十度、望ましいならば二十三度以上のものが最高としてはほしいのでありますが、八月十六日以降九月十日までをかいつまんで申しますと、二十六日間に最高気温として示されたもののうち、九日は最高の温度が足りませんでした。また冷害症状を端的に現わします二十度以下ないしは特に十五度以下の温度を調べておりますが、これはその同期間に二十度以下から十七度までが九日、十七度以下十五度までが十一日であります。こういうような気象をまず頭に置きまして、技術的になつて恐縮でありますが、少しくこまかく、例として申し上げる意味で申し上げるわけでありますが、福島の水稲早生種、中生種、晩生種をまず私どもは押えるのであります。その面積率が重要なわけでありますが、福島におきましては、早生種は一一・一%、中生種は五二%、晩生種は三七%であります。その九月十五日と申しますのが、先ほど川俣委員に申し上げましたような期間でありますが、その際の出穂済みの面積は三種類ごとにどんなものだ、また本年の出そろい期はどんなものだ、いつの時期であつたか、まだ出ていないやつはいつごろ出穂するであろうかというふうに見積るわけであります。それは多年の経験と、農学上の、農事試験場試験研究を重ねました尺度でございますが、福島におきましては、早生種においては、平年対比出穂が七日遅れ、前年より六日遅れ中生種は平年より八日遅れ、前年より七日遅れであります。晩生種においては、平年より十四日遅れ、前年よりは十二日遅れておる状況でありまして、その県下全体の出穂済み面積を出し、出穂遅延しておる状況をまず見るわけであります。そうしまして、詳細県内のこまかい地域別に調査するわけでありますが、これを、お話に従いまして、浜通りその他のような特異な生産状況、似たような階層を持つ地域について要約して申しますと、中通り北、中通り中南部、会津平坦部、会津の山間部、阿武隈山系の部分、浜通りの山系の部分、そうして県下全体としてどういうようであるかということにつきまして、これはもつと詳細に小区域について調べておるのでありますが、大略いたしますと、それぞれの地域に、先ほど申しました早、中、晩生種の稲が作付面積としてどんなに植わつておるのであろうか、たとえて申しますと、稲そのものの作付面積は、中通り北部で一一%、中南部で三三%、会津平坦部で一五%、その山間部で一一%、阿武隈山系の地帯の耕地が九鬼、浜通りでは二一%と押えているわけであります。その出穂期をそれぞれの地域において、その地帯のうち早いところは八月十九日から九月十三日までに出穂をしている。またその平年対比は、それぞれ申し上げていいのですけれども、簡明に申しますと、少くて五日、多くて十六日ほども遅れていることを一応押えているわけであります。そうしまして、この九月十五日の作況を出します際には、その成育状況を押えるわけでありますが、おのずからまだ有効穂数がどのくらいであるかということを押えるわけでありまして、その有効穂数を御質問の浜通で誓えば、当時九六でございました。そして他方被害面積は見まわりによりまして階層わけをして、またその被害原因別と何町歩被害程度を押えて参るわけでありますが、出穂済み面積も合せて割合を見まして、当時福島県全体では——地区別でありませんで、九三%が出穂済み面積でありまして、残りは出穂をいたしておらぬ。その後どのくらいたつたら出穂するであろうかを、多年の経験の研究の尺度で押えるということを申し上げたわけでありますが、被害面積については、冷害、風水害、いもち、二化めい虫その他被害原因別に押えまして、冷害については県下総面積七万三千四百七十町歩でありますが、浜通について見ますと、二万八百八十五町歩でございます。そういうふうにしまして、他方県下にありますところの特別の試験地である作況調査圃につきまして、特に低温障害地域とその他とわけまして、そして出穂の状況、出すくみの穂ぞろいの状況、出穂、発育の程度、不稔実の状況を調べておるわけであります。そして地帯別に、先ほどの県内の地域で申しますと、上から申しまして八一%、八三%、九八%、六七%、六四%、八〇%、県下平均しまして八二%となつているのでありますが、特に晩生は十五日も遅れており、未出穂が七%に達する状況でありまして、その他の状況から見まして、低温障害の見通しがまだむずかしい。そういうような判断のもとに今出して来ているわけであります。
  32. 松岡俊三

    松岡委員 私はそういうあんばいにむずかしいことはよくわかつているのですから、よくわかつていて責めるのじやないのですから、どうぞそのおつもりていてください。ただ農林大臣の積寒法に対する御答弁がない。積寒法の予算に対する申合せをやつたことに対して……。官房長が一番よく知つているわけだ。
  33. 保利茂

    ○保利国務大臣 この申入れにつきましては、よく私どもも検討をいたし、できるだけ御趣意に沿いたいと思つておりますけれども、とにかく一面財政の関係から見ますと、本年の新規公共事業等、すでに成立させていただいている予算すら、その始末をしなければ、相次いで起つて参ります諸要請に応じがたいというようなきわめて困難な状態にあるわけでございますから、全面的に行けますかどうか、できるだけひとつ御趣意に沿いたいと思います。
  34. 松岡俊三

    松岡委員 恒久対策の一つとして、ただいま農林大臣から応急対策の中に国有林の問題が出ましたが、私はこれは恒久対策の上に考えなければならない問題であると思う。この前委員会において述べましたようなぐあいに、東北六県のあの寒冷地帯に国有林が、北海道を除いて四割九分六厘を占めている。そうして一年に六十五億を生産している。使つた金は、六分の一に近い九億八千万円を残している。そうしていてそれが寒冷地帯である東北なんです。これは何としてもはなはだしい矛盾だ。明治維新当時からこのまんまになつている。ことに青森営林局管内では九十六万町歩、宮城、岩手、青森の三県で九十六万町歩の国有林を持つている。そのところへ持つてつて、今の大臣の時代ではありません、前々の時代の大臣ですが、とにかく二億四千万円の林道費を出している。大阪営林局管内にはわずかに十九万町歩しか国有林がない、それに対して二億二千万円の林道費を出している。こういうことを調べれば調べるほど、寒冷地というものがどうなるか問題なんです。この東北の国有林の問題が、東北冷害対策にはもう重大なる問題なんです。これは大臣が御考慮なさるということでしたから。こういうあんばいな冷害のなかつたときの話ですから、今度冷害に直面した以上は、これに対して恒久的な対策を講じていただかなければならないと思います。  最後に、中仙道方面では、小坂君だのあるいは塚田君だのという大臣が出ておられる、また九州の方にもたくさん大臣が出ておられる。ところが、ひとり東北の方には大臣が一人も出ておらない。そこのところがみな凶作のはなはだしいものばかり。ところが一向に東北を閣僚が見てくれない。見てくれないのか見てくれるのか。こういうところにひがみが出ちやたいへんでございます。大臣は非常に忙しかろうけれども、与党の私がこういう分けの席上で言うというのはよつぽどのことだということを思われまして(拍手)、そうして東北方面をひとつほんとうに見ていただかんければ、あの実相はつかめません。実相はつかめない。とても数字の上ではだめです。どうかこれを実現して、東北の民衆をひがませないように、明治維新以来賊軍だと言われて逆遇を受けて、雪害対策なんぞがあんな長い間かかつてようやくできたような有様でありますから、今度の冷害を機として根本的に考えていただくように、ほんとうに見ていただくように私はお願い申し上げまして、私の質問を終ります。
  35. 保利茂

    ○保利国務大臣 政府としましても、だんだん冷害が深刻な様相を呈して来ておりますことに対して、心配いたしております。私としてもぜひ出かけなければならぬと考えております。できるだけひとつ、なるべく早い機会にそういうふうにいたしたいと思います。
  36. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 農林大臣にお約束の五時までやつて、それからあとはあしたやります。こまかい問題は政府委員の所管の局長の諸君に伺いますが、大臣に数点にわたつてつておきたいと思います。  先ほどの安田統計調査部長報告を、もちろん部下のお調べになつたことであるからお認めになつておいでになると思いますが、自由党にも冷害対策本部ができまして、与党の諸君が各地を踏査されております。その報告はお聞きになつておいでになると思いますが、そこに相当の差のあることをお認めになつておると思いますが、その点はいかがでございますか。
  37. 保利茂

    ○保利国務大臣 私はまだ党の方からどうだということは実は伺つておりません。
  38. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 私はこのことをお尋ねするのは、これはまだはつきりした数字をつかんだものではなくて、予想ではございますけれども、このことが今後の食糧の需給問題その他農業政策の万般に及ぼす影響が大きいので、この統計調査事務所すなわち農林省の数字というものは、できるだけ真実に近いものを握つていないとたいへんな間違いが起きることを実は心配をするのであります。そこで私は、昨日長野県の本郷村の農民大会に、共産党の諸君が大勢乗り込んで来るから私にも来てくれというので、一日をこの村のために費しました。そうしますとそこでは本年の異常天候による農作物の災害は非常に大きいのであるが、特に水稲被害の激甚なことは、この村の減収見込量が八千石で、石当り一万円といたしますと八千万円に及び、この村の全戸数六百五十戸、うち農家戸数六百戸に対して二戸当り平均十三万余円に達するといわれております。もつともこの基礎は九月十五日現在における水稲面積三百四十四町歩へ、農業協同組合の基準反収二石二斗九升二合を乗じますと約八千石となりますが、例年の超過供出や保有量等を勘案いたしますと、約九千石となる計算だといわれております。これに去る十五日に地方事務所やその他関係の農業委員の諸君三十名が、各地区別に検見をいたしました結果、実収高の見込量が一千石と推定されたといわれております。そうしますと差引八千石の減収ということになるのでございます。すなわち平年作に比して九割の減収、こういう数字が出ております。従つて農家保有より見れば農家戸数犬百戸、人口三千五百人、保有量四千七百石と計算いたしますと、年間保有量の四分の一弱となつて、戦争末期に六千五百石ずつ二箇年供出をした当時を思い合せるときは、この予想外の災禍に農民はぼう然としている。これは古老の話によりますと、寅年の凶年すなわち慶応二年、今より八十七年前に匹敵するものだ、こういうようなことが申されております。こういう数字も統計調査部の方ではよく踏査されていると思うのでございますけれども、私も行つてみて実に意外な感に打たれたのでございます。こういう村がお隣の原村あるいは泉野村、北山村等々たくさんあるのでございます。山梨県寄りにもたくさんございます。こういうのを計算に入れて参りますと、この統計調査部で発表されたところの数字というものは、相当隔たりがあるように私は思うのです。この調査の仕方や何かについては、明日あるいはそれ以後に、統計調査部長あるいは局長等に伺いたいと思いますが、とにかくいまだかつて見ないところの非常な凶作でございます。これに対して先ほど平野委員の質問に対する大臣の御答弁は、ただいま農民要望しているような事項を幾つか並べられたのでございますが、しかしこれはこれからやるということでございまして、今までおやりになつたことはどんなことか、経過を話してくれというのに対して、大臣はお答えになつておりませんでした。まず第一番に、農薬などについてはまつたく政府は手を尽してやりませんでした。そのためにこれを手に入れるのに莫大なむだをいたしております。それがまた手遅れとなつて平場地帯のいもちの発生原因になつておる。それからまたこのような不作の徴候は、春以来現われていたわけでありますけれども、これに対処するところの技術的な指導という面に至つては、まつく手が尽されておりません。すなわち技術が末端まで浸透していないのです。その一つの例といたしましては、保温折衷苗しろなかんかの技術指導につきましても、自然の地温でもつて育つところの普通の水苗しろあるいは丘苗しろと同じような時期まで、その温床苗しろに置いたというようなことについて、何ら積極的な指導がなされていないのです。そのために非常に弱い苗ができて、それがもうすでに葉いもちになつて、いもちの発生原因になつている。またそのときの凍霜害当時の気象から観測いたしますれば、麦作に見るごとく必ず稲作にもこういう状況が現われるということは予測できたのです。にもかかわらず、これらに対するところの技術指導がまつたくなつておりません。一体農林省は何をしていたのかと私は疑わざるを得ないのです。大臣は一体この農業技術の問題について、今日までどういうようにお考えになつておいでになつたのか。農薬の措置等について見たときに、非常にこの責任は大きいんじやないかと思うのです。  もう一つ、何だか非常に不作だということで、来年の春ころから食糧問題がきゆうくつになるということは予想されますけれども、今さしあたつて食糧問題はそうきゆうくつになるはずはございません。にもかかわらず最近やみ値がたいへん暴騰をいたしております。これに対して政府はどういう手を打つておいでになるのか。私は食べるだけのものはかくかくの手を打つて心配させないんだというような、具体的な施策をひとつ天下に公表する必要があるんじやないかと思うのでございますが、そういうことについても何ら手をお打ちになつていないやに見受けるのでございます。そのためにやみ値が暴騰をいたしまして、国民生活を非常に圧迫をいたしております。これについて一体大臣はどういうようにお考えになつておいでになりまするのか。  時間がございませんから、私は残りの質問はあとに譲りますが、特に緊急の、もう一日も猶予できない問題について一、二伺つておきます。さしあたつて麦作の問題がございますが、この間もなくまきつけなければならないところの麦作に対して、一体資金あるいは生産資材すなわち肥料等に対して、どういうような手が打たれてありますか。それからもみ種の問題でございますが、これも早く手を打たないとすられて米になつてしまいます。そうするともう種の確保ができなくなる。私は今日までずいぶん幾つかの県をまわつて歩いて見ましたけれども、ほとんど私の見る限りにおいては、無病な水田は見当りませんでした。一体種子の手配をどうしているのか。そうしてその種子に対して国はどういうような助成なり、具体的な措置をおとりになろうとしておいでになるのか。暖かい地方は割合に今度は被害が少かつたのでありますが、暖かい地方の種もみを寒いところに持つてつてつくれば、来年また大失敗を繰返さなければならない。これは私が申し上げるまでもなくおわかりだろうと思いますし、限られたところの地域から種子を確保しようとする場合に、非常にむずかしい問題がございますので、これも緊急を要するのでございますが、そういう手配をどういうようにやつてあるか、それをまずお伺いしたい。  それから新潟県の東頸城の山の中へ参りましても、あるいは長野県の佐久あるいは諏訪の八ケ岳の山麓等に参りましても、供出どころではない、あすから食べる米がないというまつたく悲惨な状態でありますけれども、これに対して一体どういうような手が打たれてございますか。そこへ持つて来て税金が納まらないというので、税務署が滞納処分として差押えをやつております。この税務署に対して、農林省は何か大蔵省と交渉でもなさつて、これに対して何らか猶予の措置でもとるようなお手配をなさつてあるのかどうなのか。きのうの農民大会に私が行つてみますと、共産党の林百郎君が参りまして、農民は全部あんどんになつた稲穂をかついで、地方事務所やあるいは税務署に押しかけろという演説をやつております。そして再軍備の費用なんか全部やめて、これを凶作対策に充てなければならないと、もう万雷の拍手でございますよ。人心が非常に動揺をいたしておりますが、これに対してどういうようなお考えを持つておいでになりますか。ことに飯米、飯麦等に対して、農林省の冷害対策の要綱を読んでみますと、何か安い価格で払い下げるとかいうような話でございますが、そんなことをしないで、現物でこれを貸し下げて、できたときに現物で返させるというような点までお考えになつておいでになるのかどうなのか。  それから農業共済の保険金の交付の問題でございますが、大臣は先ほど、これは早期の手配をしなければならない、仮払い等について考慮しているとおつしやつたけれども、それを具体的にどういうふうになさるのか。どうも共済金は忘れられたところに交付されるというような今までのやり方で、非常な不安がございます。ことにいもち病が非常に発生しておりますが、このいもちに対しては、六〇%というようなわくを定めております。ところがそれは、防除すればできたものを、なまけていたからいもち病にかかつたのだから、そういう者に対しては、三割以上の被害があつた場合には、その六〇%まで交付できるということになつておりますけれども、今回の場合は、連日雨が降つて防除のすべがなかつたのです。こういう不可抗力に出ずるところのこのいもち病の問題に対して、依然として六〇%の限界で押えるとは、あまりに残酷だと私は思いますが、そういう問題について、どういうような措置をとろうとしておいでになりますのか。まずきようはその点だけを伺いまして、残りは、お約束の時間が参りましたから、明日引続いて伺うことにいたします。
  39. 保利茂

    ○保利国務大臣 すべての問題をよくきわめておられる吉川君ですから、私からただ二、三点申し上げますが、農薬のことにつきましては、私どもの、特に改良局におきましても、異常天候の様相から、今日の事態に至ります前に、相当力を入れて手配をいたしたことは御承知の通りでございます。しかし何もかも農林省が手ぬるいからこういう冷害が起つたというおしかりは、これはもうおしかりとしてお受けしなければならぬので、甘んじて受けておりますが、私どもとしては、とにかくできるだけの努力は払つて来ているわけであります。  当面食糧事情に心配がないにもかかわらず、やみ値が非常に暴騰して来る。これはまつたく同感でございますけれども、最近のように、凶作記事が日々消費者の目に入りますれば、従来やみに相当依存しておつた人たちが、買いあさりをするというようなことから出ているのではないか。しかし大衆消費のやみということは、相なるべくはあまり手きびしいことはしない方がいいと私は思いますけれども、しかしながら、たとえば高級料理店でありますとか、あるいは相当大量にやみ消費をやみ米によつて提供せられておるであろうというような需要家側に対しましても、これは相当引締めた措置をとらなければならぬ。しかし私どもがいくら力みましても、これは手が届きませんから、手の届く方法において、本年産米の管理の強化は、好むと好まざるとにかかわらず、これはひとつやるほかはない。ただ、申し上げるまでもなく御承知の通り、日本は不幸にして今年凶作であつた。日本以外の米作地帯は、真実どこまでがほんとうでございますか、ともかく豊作で、特に小麦等においては、相当の豊作であります。米以外の主食の状況を見ますと、かりに米がなくて——これは消費者の心構えになつて来るわけでありますが、こういう凶作年だから、らかほかのものを食べなければならぬという構えを持ち得ることができますならば、来米穀年度の食糧に少しも不安はない。これはまたあつてもないようにしなければならぬのでありますが、そういう意味におきまして、多少時期が遅れておるかもしれませんけれども、事が事でございますから、できるだけひとつ慎重に検討をいたしまして、来米穀年度の需給計画につきましては、適当の時期に明らかにいたして、国民の不安なからしめる措置を講じて参るつもりでいるわけであります。  種もみの問題につきましては、これはもうその通りでございます。これはきつと御承知であろうと存じますが、改良局が中心になつて苦心をいたし、研究の手配をいたしております。来年の苗しろに事欠くことがないように、これは必ずいたすつもりでおります。  それからいもちの異常発生で、農林共済が六〇%の頭打になつておるということ、これはどうも今回のいもちというものは、一体単純ないもちと見られるかどうか、冷害なかりせば、こういうふうな異常ないもちを発生することはなかつたのじやないか、これは技術的にもそういうふうに立証せれることと私は思います。そういう趣意で、今年の異常いもちに対しては、農業共済の面においてはそういう考え方をもつて取扱つて行くべきものである、こういうふうに考えております。  まだきつと残つておるかと存じますが、一応お答えいたしまして、あとは明日……。
  40. 井出一太郎

    ○井出委員長 農林大臣は、よんどころない用件で他へまわられます。つきましては農業改良局長が、今晩夜汽車で東北方面視察にお出かけになるようでありまして、明日は出られないそうでございます。従つて、もうしばらく勉強を願いまして、改良局長に、質疑のおありの方は集中をしていただきたいと存じます。
  41. 足鹿覺

    足鹿委員 大臣の御都合は了承いたします。明日はぜひ出て来ていただくようにお願いいたします。  つきましては、改良局長にきわめて重要な点を実例をあげて、二、三ただしておきたい。今度の全国的の凶作でありますが、その形態は、あるいは病虫害あり、あるいは冷害あり、あるいは台風の被害あり、いろいろ状態は違うのであります。しかしこれを、ただ単に自然的な不可抗力であるというふうにわれわれはあきらめ去ることは、少し早計であろうと思う。少くともこれには人為的になすべきことがなされなかつた点もあろうし、また当無従来なされておつたことが、いろいろな政府予算上の点等で削減されたというようなことも若干基因しておる。これらの点について、改良局長は技術を総括しておられる立場から、今回の凶作に対して、農業技術という立場から、いかなる反省をしておいでになりますか、その点率直な御所信をまず最切に承つておきたい。
  42. 塩見友之助

    ○塩見説明員  今般の災害に対しては、気象的に見て、おそらく昭和十六年はもちろんのことでございますが、昭和九年、十年に対しましても、今年の方が私に対してはひどい影響があるというふうに大体想定はしております。しかしながらそれに対して人間のなすべきことを十分になしたならば、その被害相当軽減できるというふうに信じております。その部分において十分な措置が必ずしもなされてないというふうなことは明瞭でございますし、だからそれによつて今後の対策はどうしてもやらなければならぬ。今までで満足にやつておるならば対策はいらないはずであります。今まで通りでいいわけです。これはどうしても相当思い切つた対策をとらなければならぬ、こういうふうに感じております。たとえて申しますれば、病虫害の防除の問題でございまするが、これはやはりどうしても予察と、早期発見というふうなものを十分にやる、農薬についても、農民の方が思い切つて適期にまけるように、また府県の方が思い切つた時期に、適期において防除を指導できるようにという態勢はつくらなければならない、こういうふうに考えておりますし、それからまた今年の冷害を見ておりますと、昭和九年、十年のときに比べますれば、品種の方は、当時の品種改良によりまして非常に進んでおります。当時は成績が非常によかつたといわれる陸羽一三二号は、今年度においては、ほかのそれぞれその後にできましたところの藤坂であるとか、あるいは尾花沢であるとか、あるいは遠野であるとか、そういうふうな冷害試験地でつくつた品種に比べると、格段の被害を受けておる。その他農林番号を打つてその後にできたものにつきましても、陸羽一三二号は非常にいい成績を示しているものが多いというような意味からいつて、当時の冷害対策をやりました効果というものは、相当出ております。それが相当ゆるんでおりますし、当時の冷害試験地は、戦後行われたところの試験研究機関のコンソリデーシヨンにおいて大半を中止させておる、やめさせておるというような関係から、そういう点がことに弱くなつておるというようななことも明瞭でございます。それからまたそういうふうな意味で、打つべき手はなお相当あると信じております。それからまた農家の方も、先ほど大臣からもお話のありましたように、最近の天候がいいというふうな点がありまして、少しおくてに過ぎるものをつくり過ぎているという傾向がございまして、東北全体を通じて見ますと、大体一割前後、県によつて違いますけれども、わせをつくつておる。これはおそらくさらに一割くらいはわせにかえるべきであるというふうに大体考えられるような状態になつてるわけであります。そういうふうな点についても、指導相当思い切つてやるべき手があるわけです。私の方もそういうつもりで手は打つております。  種もみにつきましては、これは先月上旬に各府県の方に紹介しております。これはこれがいい機会でございますので、必ずしも冷害地各県だけではなくて、全日本に対して品種を適正にして、それで災害が来た場合の減収を避けるような意味において、どういう品種にかえたらいいか。種もみにつきましては、政府の方でも十分腹をきめて確保するような措置をとりたい、こういうので照会をしております。なかなか回答が来ません。それで東北の方は、私の方も少し急ぐものでございますから、特に立毛のうちに押えなければならぬ、こういう点が非常に大事です。前の冷害対策のときには、やり損なつたので、非常に遅れた。非常に悪い種を、品種としてはいいと思うのですが。種として非常に悪いものをあつせんした。こういう関係で、当時の品種を見ますと、十一月下旬になつて手を打つておるという状態です。これは早急を要するので、私の方は九月の上旬に照会しております。しかしながら各県の実情は、もう少し中晩稲の作柄を見ませんと、思い切つた数字は出せない、こういう状態になつております。それを先月の二十八日に、急いだ方がいいものですから、東北各県の改良課長を呼びまして、一日その問題を論じたのであります。また数字的に出て来ない、こういう形で、私の方では少くとも十月十日までには出すようにというので、各県に照会しております。それは確かに大事をとりますと、もうちよつと成績を見たい。こういうのがもつともですけれども、一方種子確保という点から見ると、立毛のうちからできるだけいいものをつくる、こういう点がありますから、食管の方でも手を打つていただきたいという関係がありますので、そこをにらみ合せまして、一応早く押えたい、こういう考えでおります。私今晩七時の汽車でたちますが、それもそういう点が主でございまして、至急いたしたい。これはもつと早く行きたいのですが、これがあるし、西日本の水害関係予算が昨日までかかつたので延ばしておる、こういう状態になつております。それからまた冷害の問題につきましては、先ほど吉川さんからも話がございましたが、これは私西日本水害——二週間ばかり九州に行つておりまして、帰つて来るとすぐにその危険性を感じたものですから、七月二十五日と思いますが、すぐに電報を打ちまして、資料を整えて東北各県を呼びまして、一日やはり会議をやつたわけです。冷害に対する対策は十分行つているか、どういう手を打つか、そういう点の協議をやつたわけでございます。その当時気象台の方とも午前中討論をやつたわけですけれども、はつきりしたことはもちろん言いませんし、八月下旬に低温が来るだろうという予想はあるが、それがどの程度で来るかということについてはなかなか言えないし、こんな冷害になるというようなことはもちろん言えなかつたわけです。これらは、あるいは気象台の方では、春から言つていたじやないかということをおつしやるかもわかりませんが、これは東北における、ことに宮城における測候所の東北全体のそれのまとめをお調べになればわかりますけれども、ある時期には冷害が来る、ある時期には旱魃が来る、ある時期には冷害はそう大したことはないというふうな形で新聞にも報道されておりまするし、そう的確な予報が現在の気象観測でできるとは私も信じておりません。来るといつたそれだけをとればそのようですけれども、それはあつちこつちしておりまして、必ずしもそう的確には言つておりません。七月下旬にやりましたときにも、もちろんそこのところをずいぶん追究したのですけれども、それは無理でありまして、とにかく予報は十分にしきれない、こういう状態にあるわけです。その当時もその程度を前提にしまして、とにかく冷害として手つべき手は打とう、こういうことでやつたわけですけれども、最も確実な手としましては、やはり冷害ぎみの気象でございますれば、どうしても炭素の同化作用が不十分になる。そうすると窒素の方だけは吸つてしまつて、それが炭素とくついて蛋白になるというようなことが遅れるわけであります。窒素の方は遊離体であるわけですから、非常に軟弱になるということが並行して来る。その関係からいもちの問題が大きく出て来るということで、当時東北各県の方からは、いもちに対する要求が来ていなかつたのですけれども、それが半分以上を占めるのではなかろうか、こういう点で、いもちに対する農薬の手配を至急やるように各県に要請して、それを準備しておつた。こういう形であります。東北で考えますれば、苗がいわゆる半作とは申されておりますけれども、東北冷害地については苗は半作じやなくて、まず七分と見なければならぬ。品種が選ばれ、苗がつくられ、植えられている、あとに打てる手はほとんど三分ぐらい。その中では、病虫害の防除が一番大きい問題でございます。あとは、ある程度カリ肥料をよけいやる。当時西日本水害もございましたので、三万トンばかり急送をいたしました。それでカリの方はできるだけ足らす方に持つて行くというふうな形で、あとは窒素を手控える、あるいは水温を調節できるような意味で、水のかけ引きを議するとかいう手も残されておりますけれども、それは各県の方でそれぞれやつてもらう、こういうような処置をとつたわけです。その点で冷害に対しては予報も、今度のように被害がひどいというふうにはつきりした予報はございませんでした。また一方そういうふうな点について、県の方もそれほどのことは考えておらなかつたものですから、その範囲でいくらか十分でない点もあつたとは思いますが、そういうふうな点について、手を打つべきものは打つようにと相当やらせたわけなんです。  保温折衷苗しろの問題については、今度の効果は非常に大きいものがございます。明瞭にその効果は出ておりますが、県によりましては、必ずしも一番大事な山間部の方へ入つていないというふうな点がありまするので、この際、特に保温折衷苗しろによる冷害防止をやらすのには最もいい時期ですから、ここ数年間やつてはおりますがこのチャンスを逸してはならぬので、これは思い切つてやる必要があると考えております。保温折衷苗しろにつきましては先ほど御質問もございましたが、これは原村とかその他の地方にもございます。一応の使い方というものは指導いたしておりますが、しかしながら保温折衷苗しろの使い方に対して、それを過信するのあまり、原村のごときはやはり保温折衷苗しろで、千メートルを越すようなところで農林十七号のようなおそいものをつくつておる。保温折衷苗しろだからこういうおそ過ぎる品種をやつたつて大丈夫だ、気象がよければそれもできないことはないのですけれども、そういう意味で遅れ過ぎるものでもつくつておるということと、もう一つは、保温折衷苗しろで、苗しろの期間を短くすべきものを延ばしておる。先ほどお話がございましたように、そういう使用上の誤りがあります。それは適正に使いさえすれば、こういう保温折衷苗しろというものは偉大な効果を示すものでございます。これは来年度以降ももちろんやらなければならぬ。このチャンスを逸してはならぬ。それでないと、山間部のようなところには徹底しにくいわけでありますから、この機会に特に力を人れてやりたい。また保温折衷苗しろを適正に使う使い方については、特に私どもの方も普及員に注意して、それによつて過信するのあまり、おくてに偏するようなことがあつてはかえつてマイナスになる危険もありますから、そういう点は特に注意してやつてもらいたい、こういうように考えておるわけであります。
  43. 足鹿覺

    足鹿委員  非常に真摯な反省をされ、また当面の種もみ対策等について適切な手をお打ちになつているようでありますが、私は先般同僚とともに北海道視察いたしまして、帰途岩手県を冷害中心視察いたしましたが、この両者を比較しましてしみじみと感じた点がありますので、この点一、二お尋ねをしてみたい。  それは災害関係試験研究機関の問題であります。ただいま局長も、これは戦後における占領軍の政策等によつて相当廃止統合が行われ、不十分なままに推移したということをお認めになつておつたようでありますが、北海道札幌の郊外の琴似、旭川の郊外の氷山の試験場を私ども親しく見た。琴似の試験場へ参りますと北海道立と国立が一緒に暮らしておいでになり、全国的にも特異な存在であろうと思います。私はまことにけつこうなことだと思つていろいろお話を聞いたのでありますが、その際に、本日の劈頭に委員代表から報告がありまして、局長がおいでになればよくおわかりになつたと思いますが、繰返して申し上げますと、北海道の琴似の試験場において本年度予算の削減を受けておる、その金額は大体一千万円であると副場長は申しておりました。その削減のために、北海道に特に必要と認められる重要な試験研究が停止あるいは専業の繰延べが二十数種に達しておる。まことに技術者として耐えきれない。ここまで来たものを、みすみす成果を前にして打ち切ることははなはだ残念であると言つて、きわめて眞摯、しかもわれわれが帰る前に、こういうことをお願いしてはどうかと思いますがというような、実に謙虚な気持でお話を聞きました。私笑い話をしたのですが、保安隊一人に百万円かかるとすれば十人分だ、この大きな北海道試験場が、一千万円の削減によつて二十数種の重要な試験種目を断念しなければならない、あるいはこれを繰延べなければならぬということは、技術者としては耐えきれないであろう、また同時にその結果から起きる将来への影響というものを考えましたときに、私どもはいわゆる政府がとつておいでになる行政費の削減あるいは第十六国会において行われた行政費百七十億の削減問題等もからんでいると思いますが、とにもかくにも一試験場で一千万円と申しますとこれは大きい。こういう一つの現実に、画一的な行政費の削減というものが、こういう特殊な、しかも有意義な研究に及んで、技術者が嘆き苦しんでおるという実情でありますが、こういつた点について、いわゆる地方の特殊性をよく認識されまして、さような画一性にとらわれない、実際に適した予算の復活等の点については、十分お考えになつておることとは思いますが、これはただ単に私どもがなかなか北海道を見たから私どもの耳に入つたのであり、行かなければわれわれも知らなかつたのでありますから、こういつた点については他にも事例があろうと思う。これらの点については、将来の冷害対策等の基礎となる大きな問題の一つであろうと思いますので、農林省としては、もう少し重点的に眼をあけて、施策に間違いのないことを期してもらいたいと私は考えざるを得ませんが、そういつた点について具体的にどのようにお考えになつておるか。またこれといい一つの事例は、岩手県の上閉伊郡であつたと思いますが、遠野冷害試験地を私どもは県庁の案内で見ました、職員は主任一名に助手が二名ばかりでありまして、わずか三、四名の人員である。圃場を案内してもらいましたところが、まあ高等学校の農場程度のものである。まつたく私どもは驚いた。しかもその周囲には山は紅葉しようとしておるさ中に、青立つて全然実らない稲の中に、その試験場がぽつりとある。しかもその圃場たるや、高等学校の充実した農場にも劣るような状態である。聞けば占領軍の試験場の廃止統合以来、これが廃止になつておつたものを、去年から県費で復活された。しかも遠野地帯における冷害試験地というものはただこれあるのみだと聞かされたときに、われわれは暗然たらざるを得ませんでした。こんなことであつていいのか。ここに一つの技術的な大きな欠陥があるのではないかという感じが私はいたしました。そういつた点から一つの事例を申し上げたのでありますが、改良局長としては、先ほど私が尋ねもしない点についても、確かに真摯な御答弁をなさいましたが、こういう特殊な災害関係、特に地域的な特色を持つ冷害関係等の試験研究について万全の措置を講じ、しかも北海道等の予算の削減を復活し、あるいは岩手県の遠野冷害試験場助成——廃止を復活して行くのみならず、今後においてこれを拡充強化して行くようなお考えを持つておられるかどうか。これはただ単に北海道の問題でなく、岩手県の問題でも私はないと思う。少くとも全国の冷害地に及ぼす大きな問題であろうと思いますので、この際例をとつて申し上げたのでありますが、その点の試験研究機関充実強化の方策いかんということについて、お尋ねをしてみたい。
  44. 塩見友之助

    ○塩見説明員 ただいまの北海道の琴似及び永山の試験場の問題でございますが、これは行政費の削減というのが画一的になつて参りまして、事項別にきちつときまつて来る。それの中の調整ということができないという形態で参りました。それで私の方も結局涙をのんで、試験試験場の中でやらなければならないというような関係で、各試験場のうちで、やはり大体の均衡はとりながら試験をやつた。こういう状態で、私らの方も試験研究について相当な犠牲は払わざるを得ないのではございますが、しかしながら当時の行政施策面が事項別に、画一的になつて来ているというふうな関係で、それを個別的な折衝によつて変更するという余地がないという形態できまつて来たわけでございまして、これは涙をのんでそういうふうな試験を各試験場についてやらざるを得なかつた、こういう経過になつております。われわれの方としましては、もちろんそれはそういうふうな特殊な事項を個別的に——ほんとうを言うと、聞いてもらつて、特にいるものについては何とかしていただきたい、こういうあれはあつたわけですけれども、当時処置をとろうと思つてもできないような形式であつたわけであります。もちろん私の方としては、試験場の強化についてはより力を入れたいと思つておりまするし、来年度予算については、その当時からその試験場の方へ最も重点を置いてそういう点を充実したい、こういうふうなつもりで予算を組んでおります。それから遠野につきましては、おつしやつたような状況でございます。これは冷害試験地は全然ないわけではなくて、これは国の試験場の盛岡及び大曲でやつておりますほかに、青森の藤坂の冷害試験地はそのまま生かしてやつておるわけでもけれども、県でつくりました当時の冷害試験地というのは藤坂一箇所しか冷害試験地としては残していない、こういう状態であと五箇所ありましたものは全部なくなつておるわけであります。琴似、遠野につきましては相当な成績を上げておりますし、一号、二号、三号、四号というふうな相当品種をつくつております。いくらかいもちに弱い傾向のものをつくつておりますけれども、しかしそれはそれだけに相当ないいものをつくつております。ここにつきましては昨年度から田畑輪換という形で幾らかの補助をやつておりますが、これはこういう機会にどうしても冷害相当取扱えるような補助政府の方としてはやつて参りたい、その他の試験地についても、それぞれそのような試験地についての強化はやりたい、こう考えております。主としてそれは品種改良の問題になつて来るわけでございますが、品種改良につきましては、来年度の要求として私どもの方としては、今までのやり方では不十分でございますので、これは農産物種子法のときにも国会の方からいろいろ注意がございました。そういう関係も十分考えまして、県の方に原種決定試験——、各地々々で事情が違いますから、農民の方で、どの品種が一番自分の地帯には適合しているか、圃場のある所へ適合しておつても、必ずしも自分の所へは向かないわけですから、稲については大体県で二十箇所くらい、麦については十箇所くらいを試験をさせまして、それでその地帯に向く品種というふうなものをそこで決定するという仕組みを、どうしてもつくり直さなければならぬというので、来年度予算ではそれを要求しております。これはおそらく大蔵省の方も好意的に見てくれると、今までの説明の経過では信じております。そのほかに各県の試験場は、品種改良にはほとんど指定試験以外にはタッチしていない、こういう形にありましたものを、来年度からは国の試験あるいは県に対する指定試験で交配でつくりました品種は、まだ未固定のまま三代か四代くらいのときに、県の方に配付しましてそれを調べる。——固定してから調べるのでは時期も遅れますし、県の試験場の方でも、十分将来自信を持つてよくその特性をにらんで奨励するということがやりにくいと考えられますので、できるだけ県の試験場においても品種改良に三、四代のところからタッチしてもらう、こういうふうな点から予算相当組んでおるのでございます。そのほかこういう冷害があつた場合には、冷害対策は思い切つた処置もできますので、なおそのほかに特性検定とか冷害に対するそういう試験については、さらに幾らかの追加をやりまして万全を期したい。とにかく八割くらいまではすでに要求しておるので、それを認めてもらえば実行はできるわけです。あと二割くらいの部分はどうしても——冷害によつていい機会でもございますので、ここで十分強化した試験とそれから改良普及をやりたい、こう思いますので、それはあと追加して要求したい。  それから海流調査の方は中止されております。これは水産庁の方あるいは気象台の方でやつておるわけでございますが、これは一つは、やはりことしもそうでございましたが、オホーツク海の結氷状態が大きいと、あそこに強い高気圧ができて、小笠原高気圧がどうしても梅雨の時期に北の方へ押し切れなくなつて、梅雨前線が日本の上に停滞する、その模様を見るためには、やはりオホーツク海の結氷状態を調べるということが必要でございます。それから表日本の方につきましては、北氷洋の氷の解け方——親潮がずつと岸を伝つて流れて来ますと、季節風が東南の方から日本本土に向けて吹くときに、冷たい親潮の上を通つて非常に冷えまして、表東北から北海道、ことしのごときは茨城にも来たと考えられますが、冷風が参りまして、それが非常に冷害原因となるわけでございまして、こつちの方の調査も必要であると思いますので、これはやはりどうしても気象台及び水産庁の方である程度のことを復活してもらうという必要があるのではないかと、私は考えております。
  45. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいまの局長の御答弁は、きわめて具体的で重要な御答弁だろうと思うのです。ただいまの御答弁によつて地方の技術者あるいは農業試験に従事しておる人たちは、期待をもつておそらく来年度を待ちこがれるだろうと思います。少くともただいまの御言明は、最大限度に実現をしてもらいたい。こういう特殊な事例等については、重点的にこの際取上げられて、冷害対策の一環として——官房長もそこでお聞きになつて合点をしておいでになりますが、これはわずかな金で済むのですから、ぜひ今度の補正予算にも復活して、技術者の研究心をいやが上にも高めて、そうして長い間同じところで二十年も三十年もがんばり続けておる人たちに報いて行くと同時に、その結果が農民にも広く活用され、冷害を最小限度に食いとめるような施策となつて表われるように、今度の補正予算にもぜひ考えていただきたい。そのことを特に私は申し上げておきたいと思います。  最後に、北海道の琴似の試験場の支場が旭川の近くの氷山にありまして、そこを私ども見学をいたしました。ところが試験場としてはかたわの試験場だと思う。病理、昆虫もなけらねば肥料もない、ただ水稲品種に重点を置いて関連を一、二やつておるという程度で、場長もそのことをお認めになつており、不完全ではあるが、自分たちも懸命になつて努力を払つておるということで、いろいろお話も聞き、圃場も見せていただきました。さすがに東北方面における耐冷性の品種研究ということについて、北海道は一歩先に出ておることを認めざるを得なかつた、それは非常に熱心に技術者が努力しておられることも事実でしようが、内地のような大きな配合が行えなかつたことにも原因があろうと思う。その成果相当見るべきものがあつたと思いますが、中にも在来の風連坊子と称するものとの交配であります。農林番号のついたものとの交配で三代目だといつておりましたが、約一反か一反余りのところの採種穂に八番線の鉄条網を張つて、不寝番を立てて種の盗難等を防いでおる現状を覗いてみたわけでありますが、あの冷害のさ中に穂もたわわに充実しておる、刈取りの一歩手前の実にりつぱな成育ぶりを示しておる、それをいろいろ話を聞いたわけでありますが、このものはまだ固定してない、ちようど斑牛のように、その父親の系統の出たところと母親の系統の出たところは、稲の穂の色がいろいろかわつておりまして、非常なまだらな状態を呈しておつて、これをまだ頒布する状態にはならぬ、しかしこれは一番有望なものだということを折紙をつけておりまして、そこで付近の人々が夜盗みに来るのを警戒して、八番線を張つて不寝番を立てて穂を盗まれないように監視をしておる、こういう厳重な状態だつたわけです。他の陸羽系統のものやじきまきのものや折衷苗しろをやらないものは全滅に近い状態であつたにもかかわらず、その品種だけがこういう状態になつて刈取り寸前にあるという状態を見て、われわれはびつくりした。品種研究成果がほとんど上つたに近い状態を示しておる。もつと予算があればこの問題を大規模にやつて、そしてこれを耐冷性品種としてすみやかに世の中へ送りたいという熱意を持つておるというようにわれわれは聞きました。こういう実情について農林省は御調査なつたことがありますか。ことしのような冷害の時に、こういうふうにりつぱに実つておる。これを見て驚かざる者はなかつたわけです。その日も北海道の各地から集まつた三百人くらいの農民が、本年の水稲を顧みてという会合をやつておる。そして講習を受けておる者があり、圃場を見る者があり、婦人会が売店をつくつて試験場案内を売つておる、湯茶のサービスをしておる。大型バスで来る者があり、自転車で来る者があり、徒歩で来る者がある。老若男女がおつて、お祭りのようなさわぎである。私どもは試験場でああいう信頼を集めた試験場を見たのは初めてです。きようはどういうわけですか、いや毎日だ。もうほとんど場長以下それにかかり切りで説明に追われてしまつて、基礎的な研究もできないというようなうれしい悲鳴をすら上げておる。そういう状態です。この試験場の大きな努力が実を結びつある実際を知つて、私は感激にたえなかつたわけですが、この風連坊子の問題、これらの問題は、大体において技術者が見た目から間違いないという折紙をつけておる以上は、もつと国費をつぎ込んで、少くとも急速にその成果を上げさせるような予算措置助成補助、その他何でもけつこうですが、おやりになることは必要ではないかと思いますが、そういう点——これは風連坊子に限らず、ほかのものでもあるでしよう。そういつた事例は各地の試験場に私はあると思う。そういつたものを急速に国の立場からこれを引上げて行く、地方のわずかな貧弱な経費にまかせきりにしないで、国の立場において引上げて、地方の技術者を勇気づけ、希望を与えて行くということは大事なことではないかと私は思いますが、その点について局長はいかがお考えになりますか、これを伺いまして私の質問を終りたいと思います。
  46. 塩見友之助

    ○塩見説明員 北海道品種につきましては、明治六年に白ひげというふうな冷害に強いものがあつたわけです。その後にやはり冷害がたびたび来まして、これは天然の条件で淘汰されまして、残つたものに非常によくできるものがある。その後にその白ひげでやられた中で赤毛という系統ができたわけであります。それだけは残つたという時期があるわけであります。その赤毛からまたその次の冷害のときに坊主というやつができまして、それの中からまた人為的に試験場の方で走り坊主というものをつくつた。それが風連坊主の親になつたということで、耐冷害性の強い品種が逐次できて来た。それであそこの北まであれだけ稲ができ、反収もぐんぐん伸びております。年々の北海道の反収は、そういう状態で来ておるわけであります。これについては、試験場人たちの非常に涙ぐましい努力があるわけであります。そういうのは北海道だけではなくて、東北でもあります。これは藤坂でもよいのができております。そういうものをぜひ広げたい、こう考えまして、先ほど申し上げましたように系統適応性試験というものを三代くらいのときに県の試験場で扱わせまして、それで普及を促進したり、それからまた各地の状態によつてよいものを選ばせ、また農民にも知らせるような意味でもつて、原種決定試験というようなものを全体としてやらせておるというような意味で、北海道東北に限らず、全国的にそういうふうにできたよいものはできるだけ早く農民になじませ、早く試作をやつて、そうして勧めたいというのが、先ほどの系統適応性検定試験、原種決定試験というようなもので、品種改良をしつかりと固めたいというのが私の就任以来の検討の結果でありまして、来年度予算でこれは当初から要求しておるわけであります。これはある意味では好機でありますので、しつかり固めて行きたい、予算もとりたい、こう考えております。
  47. 芳賀貢

    芳賀委員 ちようど塩見局長並びに渡部官房長もおられるので、足鹿委員の発言に関連してただ一点申し上げたいと思います。  それは、先ほど局長が触れられましたように、冷害地帯に対しての保温折衷苗しろに対する自信を強めたというような御発言でありましたが、このことに関する限り、北海道においては、保温折衷苗しろというものは、冷害の年において不適格であるということが実証されておるわけであります。先ほど足鹿委員が引例された永山の試験場においても、今年度特に保温折衷苗しろをやつた農家稲作が悪い。温床苗しろ、さらに直播の水稲、その次に位するのは折衷苗しろ、それから水苗しろという順序になつておるわけでありますが、適例農民は、政府であるとかあるいは道府県当局が経営の上で奨励する事項に対しては、常に信頼を寄せてその方向に進もうとする意欲を持つておるわけであります。しかしこれはある程度国や道府県の助成というような保護的な施設があるので、そういう方に発展して行くような傾向もあるのでありますが、少くとも一つの奨励を行う場合においては、その地帯に対する適応性について十分の確信を持つておらなければならぬということが前提として言い得ると思うのであります。それで北海道の場合においては、最近あの極地において、なぜたとえば平年作においても二石程度の安定した稲作がとれておるかというと、これは一にかかつて温床苗しろが非常に普及しておる、全体の三五%以上も温床苗しろによるところの水稲栽培が行われているという、このことが北海道における水稲栽培をやや安定の方向に持つてつておるわけです。これに対しては各指導機関や国の助成施策等も講ぜられて、過去三箇年にわたつて、国は第一年次においては一億、二年、三年次においては五千万円ずつの助成を行つているわけでありますが、不幸にして今年度からこれは打切りになつているわけであります。もちろん一定の期間奨励が徹底した場合においては、補助政策は打切ることが一つの常識であるかもしれぬけれども、しかし温床苗しろには補助金がつかない、保温折衷苗しろには助成金がつくという、この現象が目の前に来た場合において、農家はむろん温床苗しろよりも労力的にも安易なやり方でやれる、しかも補助金のつく折衷苗しろに転換することは当然考えられることなんです。しかしこのために春の凍霜害においても、折衷苗しろの被害が非常に多かつた。今年度冷害においても、このことが非常に冷害の因をなしているということがはつきり出て来ているわけです。だから今後において、もちろん保温折衷苗しろを単作地帯に徹底的に普及することは必要でありますけれども、北海道のような極地の稲作をやる場合においては、今まで成果のあがつた温床苗しろというものを中心にしてやるべきであるということを国の方針の中にもはつきりと打出して行つてもらいたいのであります。特に単作地帯水稲栽培に対しては、当然生産費等はかかつているということが常識的にわかるのであります。だからしてそういうことを勘案した場合と、凶作によつて極端な減収を受けた場合の農家個々の損失、あるいは国家的の損失ということを考えた場合においては、やはり相当費用を投じても、一番安全性のある温床苗しろを持続すべきであるという施策が、今後も継続されてしかるべきだと私は考えているわけであります。幸いにして今次の当委員会における北海道調査班報告の中にもそういうことが明確に指摘されているので、これを機会にして局長並びに官房長におかれても認識を明たにして、今年度予算の補正等の中にも、今後温床苗しろに対する国の助成を徹底的に継続するという御意思を持たれるかどうか、その点をお伺いしたいのであります。
  48. 塩見友之助

    ○塩見説明員 確かに温床苗しろの問題につきましては、大体おつしやる通りの結論だと私は考えておりますが、ただ大蔵省の方において、奨励上の意味だというふうな意味からの削減でございますので、それについてどういうふうな折衝になるか、これは大蔵省と折衝してみないと、予算にどう実現するかまだ結論はつけられませんが、私は冷害が起つたと同時に、主計局の方には、その点について多分そういうふうな結論になるんじやないかと思うから、ぼくの方としては十分技術的な検討をしてみるつもりだというふうな申入れはしてございますが、今検討中でございます。
  49. 芳賀貢

    芳賀委員 はなはだ自信のない御答弁でありますが、むしろ温床苗しろに対して今後助成金を出さぬという場合においては、北海道に関する限り保温折衷苗しろにも助成金を出さぬという徹底した施策が必要であると考えるのであります。北海道に適しない折衷苗しろに助成金を出して、冷害の危険を巻き起すというような非常に矛盾した施策を、しかも自信のないままに行うということは、非常に危険でないかと思う。だから温床苗しろに対する補助金を出す自信がない場合においては、むしろ北海道農民に対して、保温折衷苗しろに対しては今後政府補助金を全然出さぬということを言明なされたらどうか、その点をお伺いいたします。
  50. 塩見友之助

    ○塩見説明員 あるいは温床苗しろに補助金を出さない場合には、保温折衷苗しろの方の補助金もやめた方がいい、こういう結論になるかもわかりません。そういうふうになつた場合はおもしろくない事態も北海道の内部で起り得るかもわからないわけですから、保温折衷苗しろでいい場所までがそれを進められないというような強い理由が起つて来る場合は、増産上最も冷害に対して温床苗しろというのはいい手ですから、それは十分に私の方では検討して効果のあるように持つて行かなければならぬと思つておりますが、何分にもとにかく昨年度予算折衝上削減したばかりでございますので、今私の腹としての問題とは別として、大蔵省の方とある程度の折衝をしません前にはつきりしたことを申し上げるのは、今のところちよつと差控えたいと思いますが、私の意思としては、そういう点は技術的に十分検討して、必要があるとすればそれはまた復活させる必要がある、こう考えてはおります。
  51. 芳賀貢

    芳賀委員 私は端的に言つておるのであつて、復活させる必要が当然あるということを局長も認識されたと思つておるわけなんです。いやしくも国の農業政策を推し進める上において、一番の中心を握つておるのはやはり農林省なんです。ただ大蔵省は金を持つておるというだけであつて、農業政策をどういうふうに推進したらいいかということは何も考えておらぬ。だからして金さえ少しでももらえれば北海道に対しては保温折衷苗しろの助成金でもやつてもいいということでなくて、たとえば保温折衷苗しろの助成金が三億円であるという場合においては、そのわく内においてでも北海道の場合においては特例として、この中から温床苗しろを折衷苗しろとみなして支給するというような政治的配慮は当然行われるというふうに考えるわけです。ただ問題は、北海道というようなああいう極地の水稲栽培の上に、やはり一貫した保護政策というものは必要なんです。だからそういう場合においては、やはり信念を持つて温床苗しろが今後も不可欠のものであるという上に立つての場合においては、ぜひこれを実現するために、局長並びに官房長においても最善の努力を払つてもらいたいのであります。
  52. 塩見友之助

    ○塩見説明員 おつしやる趣旨はよくわかりますし、わかつておるわけですけれども、今の御意見は十分尊重して善処して参りたいと思いますが、大蔵省と話をしないでおいてここで結論をつけるわけにはちよつと参りませんので、お許しを得たいと思います。  なお種もみの確保については食管で買い入れてもらうわけですけれども、それらの手配とその価格等につきましては、まだ食糧庁との間に話を今進めつあるわけでございまして、私それを持つて行きたいと思つておるのです。特に青森の藤坂五号のような場合は、さつきの風連坊主と同じように非常に優秀な品種でして、これは長野にも岐阜にも、もちろん東北全体について押し及ぼせる。今まで一年に四千町歩ぐらいづつ青森でふえております。青森で第一位の品種になつておりますから、来年度あたりは相当ふえる品種でございますし、そういうものはやはりどうしても非供出農家の分までも出してもらわなければならない。ただいろいろ価格の問題もあるのでそれをきめて、現地でできるだけ立毛のうちに押えたい、こう考えて、今夜七時の汽車で立つわけですけれども、ちよつと余裕が必要なので、できればこの程度でお許しを願いたいと思うのであります。
  53. 井出一太郎

    ○井出委員長 川俣君。簡単に願います。
  54. 川俣清音

    ○川俣委員 私は意見は述べませんから、どうぞ簡単に御答弁を願いたいのです。病虫害の早期発見は非常に必要だということですが、今度はどういうときに発見されたのか、また防虫、防疫の薬剤の要求があつたのはいつごろであつたか、ちよつとお示しを願いたい。
  55. 塩見友之助

    ○塩見説明員 東北の各県から申しますと、あそこは集いもちでなくて穂首いもちになるのです。それで七月に私九州から帰つたときにはまだ要求がないのです。二十日になつてもない。これでは危いと思いまして、電報でもつて試験場長と改良課長を呼びまして、それで今年の気象としては冷害対策が一番大事じやないかというわけで、どれだけいるかという要求書をそこで出させたのです。時期は東北の方はどうしても穂首いもちになるから、手当は西日本に比べると遅れるのですけれども、いくらかのんびりし過ぎる。西日本はああいう状態なんだから農薬の需給に相当影響がある。目の前になつてかけ込んだのではこつちも手当はできない。もう少しそういう事情も考慮して、早く持つて来てもらいたいということを言つたような状況ですが、それは時期的には間に合つた、こう考えております。
  56. 川俣清音

    ○川俣委員 実は私それを聞きたかつたのです。というのは、作報の報告によりますと、八月十五日の報告では、今年の作況状態相当よく見ておる。ところが八月の初めから相当いもちが発生して参りまして、予防策を講じなければならないという状態が起つておるわけです。ところが依然として八月十五日の作報報告ではこういうふうな相当な成績を収めることになつておる。問題はそういうところにあると私は思う。今年の春から、気象の観測から育つていろいろな疑問はあつたでありましようけれども、相当危険な年だということだけは考えられたと思う。しかしながらそういう考え方がもしもあるといたしますれば、八月十五日の作報報告というものは、もう少し真剣に検討されて出て来なければならなかつたのではないか。こういう点について私は非常に疑問を持つてつて今お尋ねしたのです。  続いてお尋ねしたいのですが、地方の作報と普及員とはどんな関連において現地で仕事をされておりますか。全然関連がないのですか、あるいは作報等にどういう程度に協力しておられますか、この点について伺いたい。
  57. 塩見友之助

    ○塩見説明員 ただいまの八月十五日の作報の方は、私も担当者ではございませんが、気象から見ますと、やはり八月下旬のやつが東北では非常にマイナスになつております。九年のときには七月中旬から悪くなりましたけれども、気象で調べますともちろん七月中旬までよくはありません。しかし前の冷害のときに比べますと、中旬まではそれほどひどい状態になつていないというところだつたと思います。それらの作報の調査の方には、普及員は直接何らの関連を持つておりません。しかしながら作報で調べるところの各種の、地帯別、品種別の計数であるとかあるいは粒数とか粒重とかいうようなものは、品種改良上また普及上非常に役に立つデーターが多いわけでありますから、県の方でできるだけそういうデーターを使うように勧めておるわけであります。
  58. 井出一太郎

    ○井出委員長 川俣君、この程度にしておいてください。
  59. 川俣清音

    ○川俣委員 今の普及員のことだけ答弁していただきたい。
  60. 塩見友之助

    ○塩見説明員 普及員は作報の方の仕事には面接タッチはしておりません。府県等においては、今年のように府県自体としても、やはり公平に、町村の方に割当をしたいというふうな場合に、あるいは本務以外ではございますが普及員というような者を走らせまして、できるだけ町村別に公平になるような仕事をやらせるかもわからない。そういうふうな場合になれば、あるいはそれらの人たちが作報の方と連繋をとることもあり得るかと思いますが、直接国の仕事としては、普及員は何ら作報の仕事には協力をいたしておりません。
  61. 井出一太郎

    ○井出委員長 時間が非常に切迫しておるようですから簡単に願います。
  62. 川俣清音

    ○川俣委員 今日では普及員が相当の努力をされまして、農業改良の上に努力をしておられる親切な態度については、私どもも常に見ておるところであります。しかしながら普及員全体としての成績は必ずしも上つておるとは見られないと思う。相当熱心な方もおられるので、こういう点については、特に今年のような冷害に際して、指導員のよしあしといいますか、その努力あるいは熱意というものが作況の上に非常に影響しておると思うので、こういうふうに考えて参りますと、今日の普及員をしてもう少し効果あらしめるためには、やはり研修等による訓練が必要だと思う。もつとこれを研修させるような予算上の措置を二十九年度において求められておりますかどうか、この点をお尋ねしておきたい。
  63. 塩見友之助

    ○塩見説明員 おつしやる通りだと思います。それで二十九年度予算においては、普及員関係予算としては、そこへ最重点を置いて相当大きいものを要求しております。技術のレベルを上げて実力をつけることが非常に大事なことですから、そこに最重点を置いております。
  64. 松岡俊三

    松岡委員 委員長に二つお尋ねいたします。一つは今回の冷害があながち政府当局ばかりの問題じやない。これはどうしても産業に関係した官僚の調査がすこぶる困難をきわめている何らかの隘路があるように私は思うのです。もつと事前に国民に知らせる方法もあつたのじやなかろうかと思うのです。先年のことを考えて、私は特にこれを痛感するのです。委員長においてこの点を御考慮の上に、今の駐留軍の関係、あるいはソビエトの関係その他で外務委員長とお話くださるか何かして、この冷害対策の上に重大な関係ある根本的の問題ですから、さらに国論を起していただかなければならぬこともあるかもしれぬ、特に委員長にこの点を御善処くださるようにお願いしておきます。これは今後の冷害対策を討議する上に一番根本的の問題であると思います。  第二番目には、過般の国会において決定された日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の行為による特別損失の補償に対する法律が修正成立いたしましたけれども、この法律の条文の中に、政令によるということがしばしばあります。この政令は水産委員長に内示して、同時に農林委員長にもこれを相談するというような点がはつきりとなつて議決されたように私は記憶しておりますが、いまだ政令が何らのことになつておらない。こういうことはどんなふうになつておるのだか、水産委員長に御交渉いただいて、政令がどんなふうになつているかという点を、委員長に御考慮をいただきたい。この問題について特に関係の深い農地が壊滅するような山形県北村山郡乱川の問題でございます。キャンプのものがみな水を持つて行つたために灌漑ができないでおるというようなありさまであります。これは重大なことでありますから、委員長において水産委員長と御協議を願つて政府に善処方その他についておとりはからいを願いたい。さらに私はそれによつて大蔵当局あるいは調達庁の当局にお尋ねしたいこともありますから、お含みをいただきたい、これだけであります。
  65. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 関連して。私はまつたく今の松岡委員のお説に同感であります。どうも法律をつくるときにはいろいろここでやるのですけれども、あとで政令でなかなかむずかしいことにされてしまつて、そうしてここの委員会で法律を審議したときの趣旨に沿わない、矛盾するような政令が折々飛び出すのです。これからそういつた意味のような問題は相当きびしく内容を検討して、場合によつたら改めさせる、今後は法律案にくつけて政令案もここへ出してもらつて、一緒に検討するというようなことにしないと、今のような問題が起ると思いますから、これはあわせて私も強調しておきます。
  66. 井出一太郎

    ○井出委員長 お答えをいたします。ただいま松岡委員の御質問の第一点でありますが、これは多年東北農業振興に尽瘁されて来られました松岡委員として、非常に深い関心を寄せていられる点はよくわかります。先ほども質疑応答の中に、若干その問題も出ておりましたが、政府当局ともよく相談の上、善処をするつもりでございます。  それから、第二点の駐留軍の行為による特別損失の問題でありますが、これは法律が水産委員会の主管するところでありまして、あの法律に対しては、連合審査を申し入れ、こちら側としても、いろいろ手を尽したことは、松岡委員御承知の通りであります。水産委員長としては、政令が固まる場合は、私の方へこれを示して協議をするという約束になつておりましたが、閉会になりまして以来、かけ違つてまだ水産委員長とも会つておりませんし、そのようなものをまだ示されておりません。それで水産委員会の側とも、さつそく連絡をとることにいたしたいと思います。これについて農林省の方では、たとえば農地局と水産庁との間の調整であるとか、大蔵省との関連等について、何か官房長お知りの点ございましたら……。
  67. 渡部任良

    ○渡部説明員 ただいまの駐留軍の特別損失補償の問題は間接被害の問題があつて、非常に規定上むずかしいので、われわれ農業側の要求をいれるのについて、調達庁と意見の食い違う点等があつて遅れておりまして、はなはだ申訳ない次第であります。
  68. 井出一太郎

    ○井出委員長 残余の質疑は明日午前十時より委員会を開き、続行いたします。本日はこれにて散会いたします。     午後六時十八分散会