○
金子委員 委員会の
国政調査の日程に従いまして、去る九月七日から十二日に至る間、
北海道方面における
農林関係事項の
調査を行
つて参りましたので、
派遣委員一同にかわりまして、その概要をこの機会に御報告申し上げたいと存じます。
なお岩手県より水稲の
冷害及び病害並びに
酪農振興の問題について
調査せられたい旨の要望がありましたので、帰途を利用して、その実情をも
調査いたして参りましたので、あわせて報告しておく次第であります。
まず
調査班の編成でありますが、これは松岡、金子、足鹿、井谷、芳賀の各
委員の御参加を煩わし、
事務局より岩隈、工藤の両君が同行いたしました。
一行がそれぞれ飛行機または汽車にて札幌の
北海道庁に集合しましたのは九月七日の正午ごろでありましたが、ただちに道庁及び
開発局の各
部課担当者の参集を願い、約三時間にわたりまして、
土地改良、
治山造林、畜産、
災害対策等、
現下万般の
農林行政事情中重要問題に関して
説明を聞き、あるいは意見の交換を行いまして、
北方農林業についての
一般概念の
吸収並びに
問題点の探究を
行つたのであります。
この会議を終了しまするや、われわれはただちに
札幌郊外琴似の
国立並びに道立の
良業試験場本部に参り、それぞれの副場長より今日までの
試験研究の成果及び
試験研究機関としての
専門的立場より国会に対する農政上の希望を承
つたのでありますが、特に強調された点は、本
年度予算におきまして、
行政費の節約をいたしましたことは各位の御承知の通りでありまするが、
農林省はかような
試験研究機関につきましても、一律に削減しましたために、二十八
年度予算は
暫定予算を年額に換算した額に比し一五%減となり、本
年度研究テーマのうち二十一件を中止するのやむなき状態となり、その結果
北方農業における
品種改良、新肥料、新農薬、
泥炭地、
傾斜地等に関する研究にはなはだしい支障を与えている事実であります。
さらに
協同農業普及事業の一環として二十七
年度以降新設いたしました
営農試験地に対する
補助職員、
施肥改善事業に対する
専任職員、
低位生産地改良事業補助職員の増員または設置の費用、
化学実験器具購入費の
増額等の眞摯な要請がなされたのであります。
翌八日は、
宿泊地定山渓を出発いたしまして、まず江別に参り、
町村農場を訪れました。ここは御存じの方も多かろうと存じますが、乳牛の生産を行う代表的な牧場であります。
ここから自動車をかり、
石狩川右岸、篠津原野に位する
新篠津村に至り、
泥炭地帯におきまして河川の改修と並行して行う
道営灌漑排水工事によりまするところの
造田事業を見学いたしました。総工費五億円、今日まで二億円が投下されている由でありますが、
新篠津村の村長以下と話し合いましたところによりますると、現在この地帯は小豆の栽培を行い、反当一万二千円程度の収入を上げておるが、開田すれば二万四千円になるということで非常な意気込みを示し、
造田計画の完成の一日も早からんことを願
つておるありさまであります。
さらにわれわれは
開発局において実施中の
石狩川流域総合開発計画のうち、
篠津地区における篠津川、知津狩川の改修と
排水幹線である篠津運河の
改良とにより、
排水幹支線を整備して、一万四千町歩の
泥炭地改良を行いつある現状を視察いたしました。ここを辞しまして滝川に向いまする途中、特に希望いたしまして砂川町に立ち寄り、同地区の
農業改良普及員より
生活改善に関する
指導普及状況を聞き、
同町焼山部落の
農家、
集会所を見学し、
寒冷地における
農家生活のあり方、なかんずく薪炭の
節約状況を見出し、この方面においては今後なお
相当改良の余地のあることを痛感いたしたのであります。
それより
一路滝川種羊場に向いました。ここは昭和十八年国より移管を受けたもので、
コリデール種めん羊千二百頭を中心に、やぎ、
モルモット等の育成を行
つております。言うまでもなく
北海道は
気候冷涼にして乾燥し、飼料に声まれ、
めん羊の飼育に適し、
公式統計で二十五万頭、実際には五十万頭に達するといわれ、本牧場はその
研究指導の中心をなしておるのでありますが、牧夫と
護羊犬コリーに誘導された数百頭の
めん羊の群れ遊ぶさまは、真に一幅の絵画であり、われわれは牧場の
人たちと
わが国における
めん羊増殖と
羊毛資源の問題について一夜を語り
合つた次第であります。
以上二日間わずかに石狩平野の片鱗をのぞいたにすぎませんが、日程の都合上、これより
十勝平野に向うことといたしました。狩勝の絶景をめでつ南下、まず新得に下車、
道守種畜場を訪れました。場内において
十勝支庁より
管内事情一般の
説明を受けましたが、
十勝農民の目下直面しておる困難というのは次の諸点であります。
すなはち昨
年度の震災に引続き水害、
冷害と連続的に災害に見舞われ、
農家はいちじるしく疲弊し、特産たる豆類、ばれいしよにおいても、本
年度の作柄に大体六分
作程度であろうと…うこと、
従つて農業手形十四億円は、その完済ははなはだ困難であり、かつ
澱粉価格の決定が遅れておるために、
農民は非常に困惑しており、適正なる価格を早急に決定し、
価格安定法の目的を達成せられたいこと、
十勝沖震災の
復旧工事はおおむね終了したが、
補助金は未交付のものが多いこと、
管内耕地面積二十万町歩中、
土地改良を要する
面積延十五万町歩を数え、しかも本
年度のごとく五千町歩ずつの
土地改良を行おうとすれば三十年を要することとなり、
土地条件の速急なる整備が、望まれておること、無
畜牛農家八〇%を解消するため
有畜農家創設事業を強化せられたいこと等、種々切実なる訴えを聞かされたのであります。後引続いて
種畜場の視察を行いましたが、本場は種牛ではホルスタイン、エアシヤー・シヨートホーン、ブラウン・
スイス種、種馬では
ペルシユロン等、羊を除く
大小家畜を飼育し、規模壮大、いかにも
北海道的でありますが、職員より異口同音に言われたことは、
職員宿舎の建設がはなはだ遅れ、
人事管理の面に遺憾な点が多いということでありました。
種畜場を辞し、次に
日本甜菜糖工場の見学に参りました。
目下操業は休止中でありましたが、
てん菜生産が
北方農業において演ずる大きな役割について認識を新たにし、また
てん菜生産振興臨時措置法中
農林大臣の
監督規定の運用について慎重を期されたいとの要望のあることを
知つたのであります。翌十日、
十勝平野の
畑作農業の実際を視察しつつ
治山造林関係の
調査を行うこととし、
帯広営林局を訪れ、局長より
管内事情を聞き、また全
林野労働組合北海道五
営林局連絡協議会代表より陳情を受けたのでありますが、その要旨は職員一人当りの
担当面積が広大で、労働過重であり、しかも内地に比し旅費、
地域給、
超過勤務手当等においてすこぶる不利であること、官舎、
医療施設少く、
病人等のできた場合に非常に困難しておる点であります。
引続いて池田町の
千代田治山事業を見ましたが、ここは本管内における唯一の
治山事業でありまして、七月震災及び
十勝沖地震において大小七十五箇所、約十町歩にわた
つて山腹が崩壊し、二十四年以降本年まで二千万円を投じ、
玉石コンクリート床固工によるところの
復旧事業及び
防災事業を行
つておりますが、今後なお一億円の
工事費を要する見込みといわれ、
地元町民はその完成の一日も早からんことを熱望していたのであります。
以上をもちまして
十勝管内を終り、夜汽車をも
つて長途北上、
上川地区に向いました。十一日旭川において、早朝より
上川支庁管内の
稲作状況を聞くことにいたしました。この地方は
水稲栽培の北限をなし、かつ
北海道の
穀倉地帯でありまして、俗に
上川百万石と言われ、昨
年度における生産八十五万石、供出五十四万石でありますが、本年は春以来
気候不順、まず六月に降霜、七月十九日、三十一日と二度にわた
つて大水害に見舞われ、しかも
冷害を受け、
農民は政府の
凶作対策について異常なる関心を持
つて注目しておるのであります。その要望については、さらにあとで申し上げることといたします。
次いでわれわれは永山村におる
農業試験場上川支場を訪れることにいたしました。場長より水稲の
耐冷耐寒品種の
育成試験、
温冷床苗代等の
効果比較試験、今次
冷害の
状況等について
学理的説明を受け、かつそれを圃場について観察することができました。この
試験場の作況を通じて見た
冷害の学理並びに実際の推移については、後に述べることといたし、ここで特に触れておきたいことは、本
試験場の成果のうちで最も注目に値する
風連坊主と称する新
品種の
育成試験を見たことであります。本
品種は
風連地方の
農家において突然変異を起して生じた土着の
品種である
風連坊主に
農林三十四号をかけ、早生、耐病しかも多収の新
品種を育成しつつあるものでありまして、もし本
品種の
固定化に成功すれば、
ひとり北海道のみならず、内地の
早生地帯に普及することになり、
わが国稲作に
一大貢献をなすであろうと目せられておるのであり、国においても強力なる
助成策が望まれておるのであります。
それより東川村、東旭川村及び東神楽村の
水温上昇施設並びに
軌道客土の
実施状況を視察したのであります。
水温上昇施設とは、すなわち
温水ため池でありますが、ここの
施設は大昔山に発する忠別川の
水路式発電設備三箇所により、
東和土地改良、区八十町歩の
灌漑用水の温度が二度四分低下して、水稲に減収を来しますのを防止するため、十八年着工、総工費一億円をも
つて二十五年に完成したもので、これにより水温は一・九八度程度復元するといわれておるのでありますが、この
施設をも
つてしてもなお相当の損害の残ることが認められ、さらに
奥忠別に第四の
発電所の新設が伝えられておりますために、
地元農民に深刻な
不安動揺を与えておる状態を見聞したのでありまして、われわれとしても
工事計画の立案には一層慎重たるべきことの
必要性を認めたのであります。
軌道客土につきましては、この地方が、表土は
砂壌土、下層が礫でありますために灌漑水の
浸透大であ
つて、
肥料流亡、
水温低下等幾多の欠陥を持
つておりまするので、粘土の客入工事を行
つているのでありまするが、総工費三億円をも
つて二十六年に着工、三十一年完成ということにな
つておりますが、これまた予算の
関係上、工事ははなはだ遅れておるようなありさまであります。
ここからさらに旭川市に引返しまして、
農業協同組合、同
連合会の出資によ
つて設立され、
北海道農民の衣料問題に大きな貢献をなしておる
羊毛加工工場、
株式会社北紡を見学し、引続いて
道立林業指導所の視察を行いました。この
林業指導所は、林業の
経営的研究を行う目的で二十四年に設立されたきわめて現実に即した
研究指導機関でありまして、造材及び
特殊林産物に関する
試験、未利用の
潤葉樹、
工場廃材を原料としてその
合理化のための
中間工業試験をも行い、本道の林業、林産の振興に著しく寄与しているように見たのであります。
以上のごとく、われわれは
北海道のほんの一端に触れたにすぎませんが、時間の許す限り種々の
施設、機関を息つくひまもなく視察しまして、大いに啓蒙されるところがあり、今後の
国政審議上、多大の収穫があつたものと信ずる次第であります。以上をもちまして
北海道における
調査日程はおおむね予定のごとく終了したのであります。
かくて十二日旭川を出発、翌十三日岩手県に入りました。車中に出迎えた
県農林部長より
岩手山麓開発計画、
酪農振興対策等について
説明を聞きつ、盛岡市に到着いたしました。たたちに
小岩井牧場を見学しました後、県庁内におきまして、
国分知事、
県会議長以下
県内指導者の方々と会見いたしまして、昭和九年以上の大凶作といわれまする本
年度の稲作の
災害状況を中心に農政上の重要問題につきまして
協議懇談を遂げ、翌十四日はこれらの事情を実地に検証しますために稗貫郡大迫町、下閉伊郡宮守村、
上閉伊郡綾織村、遠野町、青笹村、上郷村、和賀郡飯豊村、笹間村、藤根村、江釣子村の四郡下二町八箇村にわたり、折からの降雨の中を冷湿害、病虫害による稲作の被害を逐一見てまわり、また
農民よりの切実なる要望を親しく聞くことにいたしました。その際この地方は、昭和九年の大凶作に際しては、多数の子女が犠牲にされ、幾多の
農村哀話を生んだことを聞かされ、暗擔たる気分に襲われたのであります。
この際特につけ加えておきたいことは、遠野町にある
県立試験地のことであります。本
試験地は、昭和十年すなわち昭和九年の東北の大
冷害の後、
冷害試験地として発足し、国費の補助をも
つて耐冷性品種の育成、
栽培法改善を行
つて来たにもかかわらず、先年これを整理してしまつたということであります。このことは、すこぶる教訓的であります。
以上をもちまして
北海道、東北にわたる大旅行は全部終了し、十五日帰京したのでありますが、この間におきましてわれわれが見聞いたしました事項はすこぶる多岐にわたり、ここではごく簡単にその要点のみを御報告するにとどめたのでありますが、最後に今回の
調査の結果より考えまして、と
つても
つて今後の農政上ただちに参考となり、あるいは早急に実施に移すべき事項に関して
一括とりまとめ御報告いたしておきたいと存ずる次第であります。
まず
災生関係であります。これには
北海道、東北にわたる
冷害と水害とがあるわけですが、
北海道の水害について見ますると、七月中に三度、すなわち七月七日と八日、十九日より二十二日及び三三十日より
上川地方、
十勝丘山麓地帯、
宗谷線方面に豪雨がありまして、六市百八十七箇町村にわたり激甚な被梓を与え、
農林関係のみにても概算四十八億円の損害といわれ、なかんずく
上川、空知の両
支庁管内の被害が最大であ
つたのであります。特に農作物の冠水による被害、は甚大であつたといわれ、とりあえず
つなぎ融資二千万円を受けているのでありますが、
水害関係特別措置法による
地域指定と同法によるところの早急な
救済措置が望まれており、
特別委員会の
対策の重点が逐次
農林関係以外の分野に移行しつつあるやに見える点を懸念しているのであります。
北海道は言うまでもなく
単作地帯でありますために、再播、改植、
後作等の方法による
事後対策が一般にきかないわけであり、損害の回復ができがたいという
関係もありますから、特にその
救済措置は手厚かるべきことを感じた次第であります。
次に
冷害であります。本
年度の
冷害の著しい特徴は、いわゆる遅延型と障害型とが併行的に発現したということであります。遅延型というのは、
天候不順による成育の遅延が原因で出穂、開花が遅れ、やがて秋冷の気候が訪れ、稔実不能になる
冷害をいい、障害型というのは
生殖生長期に入
つて花粉母細胞の
分化形成期から
減数分裂期にかけての低温によ
つて、
葯壁内面層の
異常発育を起し、花粉の性能を失い、不稔粒の増発する型のものでありまして、低温の
度合摂氏十五度以下でわずか一時間程度でこの徴候が現れ、あらゆる
品種のものを襲うとせられる恐しい型の
冷害であります。
その実態を
北海道立農業試験場上川支場の観察の結果に見ますると、遅延型におきましては、
出穂遅延は平年に比し直播で四日ないし六日、水苗しろ四日ないし八日、冷床五日ないし九日と見られ、
一般農民はさらにこれより一週間ないし十日の遅れと見られており、従いまして登熟の遅れは、出穂後二十五日目における穂重の
増加進展において、平年を一〇〇とすると、直播八八、冷床九一という数字を示しておるのであります。
一方障害型では、普通の
出穂期から前に逆算して、九日ないし十五日の穂はらみ期が最も危険な時期といわれておりますが、本年につきましては、八月十五日から二十五日までに出穂したものが多い
関係上、七月下旬から八月上旬の低温に遭遇したものが相当多く、
上川支場で、直
播晩生種の不稔率は三三%という数字が現われておりますが、
一般農家においては著しい高率を示しておるものと信じられておるのであります。
岩手県
遠野試験地の観測結果を見まするに、苗しろ時期以来七月下旬に至る
間低温を示し、八月の上半旬に一時的回復があ
つて、八月十五日現在の
作況指数はやや
不良程度でありましたが、八月
中半句ごろより以後極度の低温に襲われ、八月下旬における
試験地の
最低気温は摂氏五度四分、標高の高い地方では随所に氷点下を記録し、たとえば八月二十八日、二十九日、三十日に初霜をみておるのであります。
本
年度の稲作に対しては
天候不順を警告する
長期予報が発せられ、これに対して
早生種系統の
品種選択、
肥料施用法の注意、
保温折衷苗しろまたは温冷床苗しろの採用、
早期挿状、除草の早期繰上げ等、
指導機関を通ずる一応の
対策は講ぜられたようでありますが、
気象条件が異常に劣悪であり、また指導の徹底にも欠くるところなしとせず、意外の凶作を招くことと相な
つておるのであります。たとえば、岩手県
上閉伊郡上郷村でわれわれが調べたところでは、早生一九%、中生一七%であ
つて、
農林十六
号陸羽一三二号等の
晩生系の
植付率は実に六四%に達し、これらはことごとくとい
つてよいほど甚大な打撃を受けておるのであります。従いまして広範囲の水口の発生、
成育遅延、不稔粒、
穂首いもちの発生という一連の冷温多湿に基くところ
青立ち現象または病徴を呈し、さきの
上閉伊郡のごときは実に三分作と称せられており、われわれみずから随所に
皆無作に近いものを見受けたのであります。
かくして
北海道及び岩手県全体としては六分作ないし七分作、初霜が早ければ五分作と称せられ、特に高冷地における
開拓農家は
壊滅的打撃を受けたものと見られるのであります。
これらの災害に対しましてその
最終的損害額はいまだ確認されておりませんが、近代まれなる凶作であることは疑いなく、
被害農民の悲嘆はまさに言語に絶するものといわなければなりません。しからば、今回のこの大不祥事に対しましていかなる
対策が望まれておるか、以下これを申し上げてみたいと存じます。
まず
応急対策としましては、
一、米価及び
供米割当については、特段の
措置を講ずること。本件につきましては他日に譲り詳しくは述べません。
二、
食糧検査については、規格を緩和し、または五等米を設定してこれを
奨励金の対象とする等特別に親切な取扱いをなすこと。
三、
被害農家に対し、
政府保有の米麦及び
家畜飼料の貸付または買入
基本価格による
売渡しを行うこと
四、
農業手形及び
農林漁業長期資金の借りかえまたは
返済期限の延長並びに
利子補給を行うこと。
五、肥料、農菜、
農機具、
種苗等営農資金について、農協または
金融機関を通じ、
無償配付または
低利資金貸付、
利子補給及び
損失補償の方途を講ずること。
六、
自作農維持または
家畜維持のため、
融資わくの拡大または
新規融資の道を開くこと。
その詳しい
説明はこの際省略いたしますが、以上の事項はこれを
応急対策の意味において速急に研究し、財政的に、金融的に
具体案をね
つて実施に移し、
立法措置を要するものは、これを立法化すべきものと存じます。
右のいわば
応急対策のほかに、二十九
年度予算等において特に考慮を要する事項といたしましては、まず
国立並に
道県営の
試験研究機関の
充実強化をはかり、耐冷、耐病、多
収穫品種の
育成事業を促進しますると同時に、
改良普及事業との結びつき方について、もつと有効適切な
措置を講ずべきであります。本件につきましては、本回の
調査を通じ、特に切実に感じた次第であります。
次に今回の
調査地域は
積雪寒冷単作地帯についてでありましたが、
現地官民より同
地帯農業振興臨時措置法の実施についてはなはだ消極化したという批判を強く受けたのであります。
土地改良事業の
補助対象面積の引下げ、
融資額の増額、
総合助成施設の拡充、
農機具融資わくの
拡大等一連の強力な
振興対策が望まれるゆえんであり、このことは今回の
冷害対策にも通ずるのであります。
次に温冷床苗しろに対する
補助金はこれを一昨年打切り、また
保温折衷苗しろに対しても遠からず打切るとのことでありますが、これらが
冷害対策、
食糧増産に対して有効であることはすでに明白であり、その助成を今後継続すべしとの要望はすこぶる強いものがあるのであります。
次は
水温上昇施設でありますが、今回の
冷害にもかんがみ水口を解消し、また減産を防止するためには
温水溜池、
客土等の
施設を拡充する必要を認めるものであります。
およそ以上が今次
冷害に対する
具体的施策の概要でありますが、最後に一言しておきたいことは、
冷害に対する中央、地方におけるところの
指導者の
基本的態度であります。幸いにして最近数年間にわたり激甚なる
冷害に見舞われなかつたことは、
農業技術の進歩もさることながら、まつたく天候に恵まれたゆえにほかならないのであります。にもかかわらず今日まで一般には
冷害を軽視する風潮がなかつたかどうか。先にも述べましたごとく、現に政府は
冷害試験地を逐次減らしておるような事情であり、また温冷床苗しろの
補助金を全廃するがごときはこの一つの例であります。中央のこの種の態度が順次末端に彌漫いたしまして
農民を誤り、
冷害に対する
長期予報が発せられたにもかかわらず、必要な
事前措置を十分講ずるに至らず、千億円にも達する損害を
国家国民に与える原因をつくつた事実を否定することはできないのであります。この間の事情につきましてはこの際深刻に反省し、
冷害について真摯な再検討を加うべきであります。
最後に以上述べました問題以外に
耕種改革、
土地改良、
農業改良、
農地調整、畜産、
林業等寺の各分野にわたり、それぞれ速急に解決を要する問題があるわけでありますが、時間の
関係もあり、きわめて簡単に
説明をいたしたいと存じます。
まず
産業改良関係であります。
北海道における
農業改良普及事業を見ますと、
補助職員八百二十七名でありまして、大体一町村に一名ずつ駐在しておりますが、
北海道の村は内地の郡に当りますので、人員、待遇については格段の
措置をとる必要があります。たとえば給与について国の
負担金は年額九万六千円であ
つて、
石炭手当、
寒冷地手当について
一般職員は国の負担になるにかかわらず、
改良普及員は
道負担とな
つておる由でありまして、その是正が、要望されておるのであります。
われわれが
北海道において痛切に感じましたことは
農民住宅の改善の
必要性でありまして、未
点燈部落の多いことはもちろん防寒上においても幾多の
研究課題を残しておると思うのであります。
さきに
北海道の温冷床苗しろについて触れましたが、三百万坪に上る温冷床苗しろが寒地における水稲の育苗技術面から申しまして必要なことはいまさら説くまでもないことでありまして、この際国の助成の復活について再考すべきではないかと存ずるのであります。
次に
土地改良関係であります。御存じのごとく
北海道には
泥炭地、重粘土地、火山灰土、酸性土壌地等の特殊土壌地帯ないしは低位生産地帯が多く、総耕地面積の八〇%を占め、馬そり客土、転倒客土、暗渠排水、炭カル、混層耕等の
土地改良への要望はすこぶる強烈なものがあるのであります。それには財政投資額の増加は言うまでもなく、長期低利資金わくの拡大を行う必要があります。なかんずく農業土木機械の整備、
土地改良の
調査計画費の増加計上、転倒客土、道営暗渠排水、小規模
土地改良、交換分合に対する附帯事業費等新規事業の予算化が望まれるのであります。
次に治山治水
関係であります。戦後里山が荒れ年々随所に山くずれ、土砂の流出による災害を引起しておりますことは
北海道もその例に漏れないのでありますが、約一万三千町歩の荒廃林地の復旧、崩壊地の復旧、約三万三千町歩の防災林のためおよそ九十二億程度の経費を要するにもかかわらず、二十八
年度二億二千万円にすぎず、予算不足を嘆息するというありさまであります。特に防災林のうち開拓地、
泥炭地に対する緊急耕地防風林については、その
食糧増産に対する効果は確実に証明済みであ
つて、この際取上ぐべきものと認めた次第であります。なお保安林整備、水源涵養林造成、一般造林についてなすべきことが多々あるように見受けたのであります。
岩手県において注意を喚起されましたことは、林業経営指導員、林業技術普及員に対する国の取扱いについてでありますが、
補助金取扱規定で二分の一保証せられておるのにかかわらず、実際は三分の一とな
つておるという点であります。また木炭の大産地としましてその公営検査員の負担が地方財政を著しく圧迫しておるやに聞いたのでありますが、国において何らかの方途を講ずべきでありましよう。
次に畜産
関係でありますが、まず集約酪農地帯の設定について各地の要望がきわめて熾烈なことでありました。
北海道においては二十八箇所の候補地をあげて運動しておる状況であります。しかして畜産の振興上目下最大の課題は、自給飼料の給源としての牧野の
改良であり、各地ともはかばかしい進展を示していないように見受けたのであります。機械を導入して思い切つた
改良事業を行い、牧野の集約利用に進まない限り、
わが国の畜産は遠からず難関に逢着するものと思うのであります。こういう意味合いよりしまして、岩手県では草地農業
対策の法的
措置の確立を提唱されておりますのは、きわめて時宜に適したものと考える次第であります。
以上をもちまして、私の
調査報告を終ります。