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1953-08-04 第16回国会 衆議院 農林委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年八月四日(火曜日)     午前十一時四十五分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 綱島 正興君    理事 平野 三郎君 理事 金子與重郎君    理事 足鹿  覺君 理事 佐竹 新市君    理事 安藤  覺君       遠藤 三郎君    小枝 一雄君       佐藤善一郎君    佐藤洋之助君       福田 喜東君    松岡 俊三君       松野 頼三君    松山 義雄君       加藤 高藏君    吉川 久衛君       井谷 正吉君    芳賀  貢君       川俣 清音君    中澤 茂一君       河野 一郎君    久保田 豊君  出席国務大臣         農 林 大 臣 保利  茂君  出席政府委員         総理府事務官         (経済審議庁調         整部長)    岩武 照彦君         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君         通商産業事務官         (軽工業局化学         肥料部長)   柿手 操六君  委員外出席者         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信者     ————————————— 本日の会議に付した事件  臨時硫安需給安定法案内閣提出第一六七号)     —————————————
  2. 井出一太郎

    ○井出委員長 これより会議を開きます。  臨時硫安需給安定法案を議題といたし審査を進めます。質疑を許します。足鹿覺君。     〔委員長退席佐竹委員長代理着席
  3. 足鹿覺

    足鹿委員 農林大臣法案の疑点についてお尋ねをいたしたいのであります。  先日私は概論的な御質疑を申し上げましたので、きようは具体的な問題について、数項目にわたつてお尋ねをいたしたいと思います。この法案の第三条でありますが、硫安需給計画を定めることを規定いたしております。その需給計画策定内容は六項目にわたつて列記されております。一番私のお尋ねしたいのは、国内消費見込み数量についてであります。それはいかなる方法によつて見込み数量を把握さされまするか、その点を具体的にお答えを願いたいのであります。
  4. 保利茂

    保利国務大臣 具体的には、過去三箇年の平均出荷実績を見れば、大体見込み数量としては妥当ではなかろうか、そういうふうに考えております。
  5. 足鹿覺

    足鹿委員 過去三箇年間実績平均してこれを国内消費見込数量と見る、こういうわけですね。肥料消費量肥料価格変動によつて規制を受けるものであります。その点は大臣もよく御承知だろうと思います。従つて過去においては安いときもあるし、相当高いときもある。従つて過去三箇年間のものが絶対に正しい国内消費見込み数量だということは言えないと思います。それは今申しましたように、肥料価格変動によつていわゆる需要状態というものはまた変動して行くのでありまして、これは相関関係があるわけであります。日本硫安消費状況を見ますると、大体において年々百五、六十万トンを消費しておる。しかしそれは過去における非常に高値の場合を中心として行われておるのでありまして、将来にわたつて、もし政府が企図しておるがごときこの法案なり、また通産委員会に付託されておる輸出振興方策あるいは合理化方策等によつて、かりにコストが相当下つたとする、そうした場合における需要量増加を見のがすことはできないと思う。その点については農林省はどういうふうに見ておるのであるか、硫安価格が下つて消費はふえないと見ておるのであるか、ふえると見ておれば、それはどの程度を見込んでおるのか。これは過去のものをもつてこの需給計画策定する大きな要素になつておりますが、問題は今後の問題であります。その見通しなくして需給計画策定ということはナンセンスである、こういうふうに私は思うのですが、その点について御答弁を願いたい。
  6. 保利茂

    保利国務大臣 大体現状硫安需要というものが、価格の面で農家が使いたくても使えないという事情にあるかどうか、これは私としてはちよつと申し上げる資料を持ちませんが、今日の硫安消費状況が必ずしも少いということは言えないのではないか。極端な一部の御意見では、まさにこの化学肥料の使い方が多いために、耕地の老廃を招いているというような意見すらもあるようなことであります。それはもう御承知通りであります。大体におきまして、過去三年の実績に、今後の食糧増産計画に伴います増加量を見込んで行きますれば、さした不都合はなかろうかと思います。同時にまた今お話のような事情も十分考えて行かなければなりませんから、従いまして、その実績平均数量にさらに一割の調整量保留する、そうして弾力ある需給の安定をはかつて参りたい、その一割の調整保留分によつて——これは一年一年かわつて行くわけでございますから、需要の消長に一割の保留を持てば大体応じられるのではないか、こういう考えの上に立つておるわけであります。
  7. 足鹿覺

    足鹿委員 一割の調整保留用が大体において消費増というようなお考えのようでありますが、それは消費とは関係ないのです。今大臣が述べられるように、生産数量の一割であつて、それは需要消費との関係ではないのです。一割というものは、いわゆる価格引下げによつて予定されるものではなくして、生産数量の一割というものを見込んで行くということは、これは農林大臣の御答弁としては妥当でないと思う。あくまでもそれは硫安価格引下げを予想した場合に、それが増産の上から行つて、あるいは農家経済の上から行つてどういう需要増を来しているかということに検討を加えられて、そこに調整保留用というものを算定されなければ、それは農林省としての考え方ではなく、メーカーの立場に立つた考え方が非常に多いのではないかと思う。硫安相当土地荒廃せしめる、だから、そう大きな需要増を期待することはないと言いますが、日本食糧増産の過去の実情から推して考えられることは、品質の改良と化学肥料の進歩の二つの要素によつて部分増産がなされて来ていることは、学者の定説によつても、また農民の声を聞いても、そういうふうになつている。従つて硫安だけを増施すれば、土地荒廃を来し、あるいは病虫害を誘発し、いろいろ弊害もあるでしようが、それは一面他の有機質肥料その他の合理的施用によつて、両々相まつて土地荒廃は幾らかでも防止できる。でありますから、農民がなぜ化学肥料を増施しないかということは、主として経済的な原因にかかつているのです。またそういう見通しがあればこそ今度の硫安需給安定法なるものを農林省が御企画になつたのだと私は思う。ですから、そういう御答弁では少し認識の誤りがあるのではないかと私は思うのです。ただ単に生産量の一割を数字的に引出して来で、これを需給調整用保留数量だけという簡単な御答弁では、肥料政策の根幹をなすとは少し言えないじやないかと思う。もう少しその点は、大臣のしつかりした腹構えをこの際御表明願いたいと思う。
  8. 保利茂

    保利国務大臣 この調整保留用にちよつと誤解があるかと思います。生産量の一割という意味ではございませんので、消費実績の一割を保留する、それだけ国内需要に対する供給の確保をいたし、相当需要増が来ても心配のないように保留をしておく、さらに国内需給状況によりましては、そういうところに支障のないように輸出計画事前承認制をとつて行く、どこまでも根本は内需優先原則の上に立つて考えているわけでございます。価格が下るとどの程度一体需要が多くなつて来るか、これはむろんいろいろ見方はあるだろうと存じますが、大体過去三年の消費実績の上に一割の調整用をその年度において確保いたしておけば、大体まかなえるのではないか、これはいろいろ見方はあるだろうと思います。二割にするのもよかろうという御意見もあるだろうと思いますが、大体一割確保いたしておくならば、価格変動等によつて需給関係相当影響を及ぼしても、一応間に合うのじやなかろうか、こういう考えであります。
  9. 足鹿覺

    足鹿委員 大体需給調整用保留数量というものは、過去三箇年間農民が使用したものの平均の一割というお考えのようでありますが、それが需給調整必要量記となる根拠は一体どういうことになるのでしようか。今のお話を聞きますと、あくまでも過去の実績の一割程度保留しておれば、それで調整ができるというお考えのようでありますが、そうだとするならば、その需給調整方法は一体どういうことになるのですか。第五条においてはいろいろこの点について制約を加えられておる。需給調整を真になさろうとするならば、自由にこれを操作せしめなければならないのが原則じやないかと思う。にもかかわらず、第五条によつてはいろいろな制約が加えられ一保管団体自由意思によつては何らその調整が行われることができないようにちやんと規定しておりますが、それではたして需給調整目的が達成できるのでしようか。官庁のお仕事は、従来のやり方を見ておりますと、すべて事態が起きてから後手々々とまわつておられて、なかなか先手はとられない。しかもこの条文を見ますると、保管団体がこれを調整用として操作をしようとするときには、審議会意見を求めなければならなくなつておる。政府がそれに対して指示権を持ち、さらに審議会に諮つてこれを出さなければならなくなつておる。こういうふうに二重三重の手かせ走かせをはめた需給調整用というものは、一体どういう意味を持つのですか。見方によつては逆な結果が出て参ります。適宜適時にその操作が行われない場合は、むしろこれは市場出まわりを抑制して、十万トンなり、十五万トンなり、二十万トンというものがどうなるかわかりませんが、それだけは市場の自由なる流通を阻止して、一般的にいえばむしろ出まわりを少くし、極論するならば、一面に滞貨処理の結果を招く危険性も多分にあると思う。これは値段を安く下げて需給調整をはかろうというよりも、むしろ場合によつて値段の高騰を示すような結果にならないと断言できますか。なぜこういうようないろいろな制約を加えなければならないのでありますか。真に政府需給調整をはかつて肥料価格農民に満足の行くように不当な暴騰を防止し、少くとも市価を引下げて行くという作用をこれによつて与えられておるのが、この法案の一番重大な点だと私は思う一にもかかわらずそれにいろいろな制約を加えておるということは、農民保護というよりも、場合によつてはむしろメーカー保護になる危険性があるのじやないでしようか。もう少しその点について、なぜこのような制約を加えて、需給調整用保留分を、自由なる意思によつて市場操作をせしめないようながんじがらめになさつたのか、その理由を明確にお示し願いたい。
  10. 小倉武一

    小倉政府委員 需給調整用保留数量の一割という考え方基礎でございまするが、これは御指摘のように、国内消費というものは一いろいろの原因でもつて変動いたします。価格変動ということもそうでございましようし、あるいは食糧増産必要性というようなこともそういう変動の起る原因でありましようし、あるいは政策やり方がかわつて参るということも変動原因であろうと思います。しかしその一々の原因を分析いたしまして、どの原因によつてどの程度変動があろうかということを測定することは不可能に近いように思います。従いまして、ここで私ども考えております点は、過去におきまして、特に統制撤廃後の経験において、年間需要量がどの程度変動したかということが一つ基礎になろうかと思うのであります。過去三箇年の平均をとりますと、最高と最低はその約一割の範囲内に収まるということに出荷実績が示されまするので、一割ということでほぼ国内需要増に見合うことができるのではないかということを考えるのであります。     〔佐竹委員長代理退席足立委員長代理着席〕 しかも今回のこの法律制定実施になりますと、一方公定価格制度でもつて価格が比較的現在までの情勢よりは安定するだろう。従いまして価格変動によります需要の異常なる思惑の増大ということは、これまでよりは避けられるだろうということが考えられるのであります。そこで一割というのを一応の基準とするということが妥当ではないかというふうに思います。  そこで放出の問題でございますが、ただいま申し上げましたような、保留数量の第一の目的は、年間需要量増大に備えるということが一つでございます。しかしながら年間需要量増大ということのほかに、年間としては同じであつても、季節によりまして出荷の量が相当大幅に変動する。需要期と不需要期では相当変動する。そういう場合に、月によりましては工場の生産見込み数量あるいは生産実績をオーバーするような需要量が出て参るということも当然予想されるわけでございます。そこでそういう季節的な調整に当てるということが第二の目的であります。第三は、特別の災害が起つて追加的な施肥を必要とする、こういうようなことが予想せられるのであります。こういうことは、ある民間の団体に全面的にまかすというべき性質のものではなくて、やはり主務大臣意図によつて放出されるという必要があろうかと存ずるのであります。一応のところは先ほど大臣からお話がございましたような、過去三箇年の出荷実績というものを一つ消費見込み量と立て、これに食糧増産といつたような農業計画に見合う追加的な所要量を加えたものが年間需要量でございますので、ノルマルであればそれでカバーができるのでございますけれども、先ほど申しましたような特別の三つの場合に放出をするのでございまするので、そのような趣旨放出についてのいわば一種の制約といつたようなものを加えてございます。これを保管団体にまつたく委讓するということでございますと、目的を逸脱するというおそれもございまするし、また損益ということにつきましての関係が、その結果損が出ますれば政府が補うという建前になつておりまするので、その辺についても主務大臣の方が関与する必要があろうかと存ずるのでありまして、以上のような趣旨でもつて需給調整用放出については制約を加えておるのであります。
  11. 足鹿覺

    足鹿委員 小倉さんは前から肥料行政をやつておられるのですが、昭和二十五年八月一日に肥料統制撤廃なつた。その当時肥料公団が手持ちしておつたものを政府が保管して、これを市場調整に当てた当時と、現在の肥料需給状態というものは相当大きく開いておるのです。当時は肥料増産が一応できたとはいうものの、まだ現在のような状態ではなかつた。どちらかといえば、今は過剰生産であり、あの当時は需給の大体の均衡が一通りとれたという状態なんです。その当時三十万トンであつたと思いますが、三十万トン程度のものを政府保留して、これを一箇年の間に相当放出をして市場調整をはかつた。これは適宜な措置であつたと思います。その結果一年間肥料暴騰はある程度食いとめ得られた。今は過剰生産時代ですよ。過剰生産時代に十五万トンなり二十万トンというものを、がんじがらめにしてこれを保留するということは、それだけ市場流通量を削減して、市場流通量一つの制限を加えることになるのです。これは見方によつては、先刻も申しますように、滞貨凍結である。一方においては流通市場におけるところの制約になつて価格引下げよりもむしろ価格がある一定の水準にくぎづけになる傾向もあるのです。だからこれに対しては、どんどん放出をして行く自由を与えずしてこういうことをやることは、かえつて目的がよき意図であつても、その結果としては必ずしも期待する結果が出ない。むしろ逆な結果が出て来ないと保証できますか。当時の情勢と今の情勢は違うのです。昭和二十五年と今日の情勢は違うのです。明らかに過剰生産時代じやないですか。そういうことによつて、いわゆる需給調整の結果、ほんとうに農民のための価格安定をなし得る条文がどこにありますか、どこにもないじやないですか。しかもメーカーから買い上げるときには政府は強権でもつて買い上げる。これを出すときにはいろいろな制約を加えておる。この点についてもはつきりとその取扱い方はかわつております。そういう点で私どもは非常にこの法案自体納得の行かない点がたくさんあると思うのです。まあこれは意見になりますから、あえてこれ以上は申し上げませんが、この点が一番大事な点です。この問題を一歩誤まれば——この法案自体は、名前は一応いろいろな角度から一つの前葉という印象を受けますが、運営いかんによつては後退を示す結果になる。農民の犠牲の上にメーカーの安定をはかるような結果を招来すると私は思う。この点については、ただいまの御答弁では納得が行きませんが、また別の機会にさらにお伺いすることにいたしまして、次に第十一条の点であります。第十一条においては、生産業者販売価格最高額を定めることを規定しております。この最高額決定の時期、また硫安は御存じのように、その季節的な点において需給の度合いが著しく異なるものでありますが、年間を通じてこの最高価格一本やりでおいでになりますか。ある期間からある期間区切つて、二本建で、三本建でいわゆる最高価格を御決定になるのでありますか。最高価格の一本であるか、二本建、三本建であるか、あるいはその決定の時期はいつであるのか、肥料年度によつて行うのか、どういう方針でありますか。大臣から御答弁願いたい。
  12. 保利茂

    保利国務大臣 建前肥料年度開始の当初において価格決定をして参りたい。調節の必要が生じた場合においてはまた考えなければならぬと思いますけれども建前としては、肥料年度発足のときに年間価格決定して参りたい、こういうふうに考えます。
  13. 足鹿覺

    足鹿委員 そうすると一本建ですね。それはそのときの情勢によつて変更をするのでありますか、変更しないのでありますか。
  14. 小倉武一

    小倉政府委員 これはもちろん情勢と申しますか、非常な経済変動がございますれば変更し得ることと存じます。しかしこれは価格をきめましてからの諸般のこと、特に生産に及ぼす諸要素の変化がどの程度になるかということによつてかわつて参るかと思いまするが、趣旨といたしましては年間一本の価格で参りたい。もちろん御指摘のような特別の事情がございますれば、年間といえどもこれを変更せざるを得ない、また変更した方が適当なときもあり得るかと思います。それから一本と申しました趣旨は、一肥料年度を通ずる価格ということでございまして、たとえば、かます九百円なら九百円ということをいかなる月でも一本でやるという意味ではございませんで、これはなお詳細は検討しなければならぬかと存じまするが、需要期、不需要期ということによつて若干の限月さやをつけた方がいいかどうかという問題もございます、そういう点はなお十分検討を加えて参りたい、かように存じます。
  15. 足鹿覺

    足鹿委員 その点は大事な点なんですよ。その大事な点をこれから検討するというようなことで一体どうしますか。この法案が通過成立いたしまするならば、ただちにこの法律の適用が行われなければならぬ。そうするとその具体的な一番魂の点についてはこれから検討するというようなことで、私どもは無審議同様でこの法案を通すわけには参りません。私が今言つている価格の問題が、この法案全体としての一番眼目なんです。その具体的な考え方をもつと明らかにされない限り、これでは審議に忠実であつたとは私どもは言いがたい。その検討はどういう方法によつておきめになりますか。政令によるのでありますが、硫安審議会にかけられておやりになりますか。もう少しその点を具体的に……。
  16. 小倉武一

    小倉政府委員 重要な問題でございまするけれども、また同時に非常に技術的な問題でもあろうかと存じます。従いましてこれは御指摘のように政令できめるということも考えられるかと思いますが、私どもの今のところの考え方といたましては、限月の問題、それから公定価格をきめる取引の場所などにつきましても、硫安審議会の議を経た一つ方式を定めていただきまして、それによつて価格決定するということが一番適切ではないか、かように存じております。
  17. 足鹿覺

    足鹿委員 その答弁ではどうも不徹底ですな。もう少し内容を具体的に明らかにしていただきたいと思いますが、この価格決定方式もまだきめておらない。ここに三つ要素価格決定基準として法律にうたつてある。それはすなわち生産費農産物価格、その他の経済事情、この三点でありますが、しからば、生産費の問題はあとといたしまして、農産物価格及び経済事情というものの内容について、もう少し私はお尋ねしてみたいと思う。農産物にもいろいろありますが、この場合農産物は何を指すのでありますか。そうしてその農産物の種目、その価格のとり方、そういうものは具体的に言うとどういうことになるのでありますか。
  18. 小倉武一

    小倉政府委員 ここで農産物価格と申しておりまするのは、肥料価格をきめる場合のことでございますので、もちろんこれは肥料と直接関係のある農産物ということにはなりましようけれども、私ども考えておりまする趣旨は、むしろ農産物価格でもつて現わし得る農家所得面所得の増減を現わす一つ資料としてこの価格を見て参りたい。従いましてできるだけ広汎に品目は選びたい。たとえて申しますれば、ただいま統計調査部物価賃金調査をやつておりまするが、ああいうふうな、できるだけ広汎な品目を選んで、それにしかるべきウエイトをつけたものでもつてこの価格水準を見て参りたい、かように考えております。
  19. 足鹿覺

    足鹿委員 それであるならば農家所得というものを明らかにすべきであつて、今の局長の御答弁では、農産物価格法律にはうたつてあるが、実際的には農民所得である。こういう御答弁でありますが、そんなことは私ども了承できません。それであるならば当然農家所得ということを明らかにすべきじやありませんか。農産物価格というものは広汎にとるというお話でありますが、重要農産物として掲げられておる米麦、あるいはこのたび農産物価格安定法において対象となつ農産物をさすのでありますか。広汎とはその他の果樹とか、あらゆるものを全部お調べになるのでありますか。そういうあいまいなことでは私ども納得できません。こういう点についてはもう少し正確に御答弁を願いたい。
  20. 小倉武一

    小倉政府委員 農産物価格についてでございますが、これは御指摘通り農産物価格そのものに違いはございません。所得という意味ではないのでございます。農産物価格というものをしんしやくする理由といたしましては、価格変動所得影響を及ぼし、また所得変動ということが肥料市場にも変動を及ぼす、こういうことでございます。もちろん直接に所得をしんしやくするかどうかという御意見も出て来ると思いますけれども農家所得につきまして簡単につかみ得る資料は実はなかなかむずかしゆうございます。特に肥料価格をきめます場合にその年の農家所得はどうかということはなかなかむずかしいことだと思います。従いまして価格という方が一層適切ではないかというふうに考えておるのであります。  それから取り上げる品目でございますが、ただいまお話のような重要農産物価格はこれはすべて入れるつもりであります。果樹蔬菜についてどの程度入るかということについては、これは統計調査的な技術の問題もございますので、特に分まわり期でない時期の価格をどう処理するかという点についてはむずかしい問題がございますので、なお検討を要すると思いますけれども、でき得べくんば重要農産物のほかにそういつた種類のものも取入れて行きたい。かように思つております。
  21. 足鹿覺

    足鹿委員 それはおかしいですよ。農家所得というものを標準にしてしんしやく要素として取上げるという御答弁でありましたが、農家所得の最近の構造は、経済局長のお膝元で御調査になつておると思うのです。最近の農家のいわゆる現金所得は、農業自体よりもむしろ労賃所得に大きく依存をしておることは、政府の出した統計で明らかである。特に朝鮮動乱後におけるところの政府統計調査部を通じて明らかにした点によつても、東北方面においては労銀所得に依存しておる率は、はなはだしい農家については六割、関西その他の比較的富裕な層においても三割ないし三割五分を農業以外の労賃所得に依存しておるのです。こういう事実をあなた方政府自体が発表になつておる。そういうふうに労銀に依存しなければならないのはなぜかといえば、農産物といわゆる重要生産資材の価格のシエーレによつて、あるいは自由経済が取入れられて以来の農産物価格の非常な激動によつて農民が打撃を受けてやつて行けないから、他の労銀収入に依存をして行くということになつておると私は思う。ほかに原因はないと私は思います。これは農家の経営構造の点その他についてもいろいろと関連があるでありましようが、端的にいえばそういうことが言い得る。従つてそういう要素をここへ入れられて来るということは私は間違いだと思う。御訂正になりますか。いわゆる農家所得というものをしんしやく要素に取上げない、あくまでも米麦あるいは農産物価格安定法の対象になつたものとしてその他の農産物価をしんしやく要素として取上げるというふうに御言明になりますか。さつきの点については、この法案と実質の運営においては非常に矛盾があります。この点はもつとはつきりしていただきたい。
  22. 小倉武一

    小倉政府委員 先ほど申し上げました趣旨が多少言葉が足らなくて、誤解があるようでありまして、申し上げようが悪かつたのでありますが、ここにいう農産物価格と申しますのは、重要農産物になおできる限り、詳細に調べ得る他の農産物も加えたい。従いまして価格そのものであることは申し上げるまでもないのであります。なぜ価格をしんしやくするかという理由につきましては、これは農産物価格農家所得影響がある。こういうことでもつて理由をつけておるのであります。従いまして農産物価格から申します農家所得と申します場合は、もちろん労賃収入、こういうものを取入れて考えるつもりは一つもございません。正確に申し上げますと、むしろ農作物収入と申しますか、農業所得と申しますか、そういうものを把握するものとして農産物価格をとりたい。従いまして直接的な意味は、御指摘通り重要農産物その他の農産物価格水準ということでございます。
  23. 足立篤郎

    足立委員長代理 足鹿君にちよつと申し上げますが、農林大臣は午後参議院にも呼ばれておるそうでありますのでなるべく農林大臣に直接お尋ねになる問題に限定を願いたい。
  24. 足鹿覺

    足鹿委員 直接お尋ねしておるつもりでありますが、農林大臣がお答えないので、農林大臣にかわつて……。
  25. 足立篤郎

    足立委員長代理 他に通告者も多数ありますから、簡潔に願います。
  26. 足鹿覺

    足鹿委員 あらためて農林大臣に伺いますが、農産物価格をしんしやく要素として取入れられた、その取入れの時期、農産物価格一つのしんしやく要素として算定する時期、その方法はどういう方法でありますか。農林統計調査部の調べたものによるのでありますか。あるいは米価についても、その年その年によつて予算米価と実際米価には開きが出て来ておりますことは御存じの通りであります。一体どういうものをつかまえて一つのしんのやく要素としての農産物価格を把握されますか。これは委員長さんの御注意もありますので、ひとつ大臣から御答弁願いたいと思います。
  27. 小倉武一

    小倉政府委員 これは今御指摘統計調査部でやつておりまする農産物調査の中の農産物価格というものを有力な資料として参りたい、かように考えております。
  28. 足鹿覺

    足鹿委員 最後に農林大臣に、これは重要な点でありますから、大臣みずから御答弁願いたい。今度の両法案の眼目とするところは、いわゆる日本肥料工業が国際的な競争に耐え得る一つの方途とし考えられる。一つ国内における農民への価格をできる限り調整し、安定せしめて行くというところに眼目があるように思います。一応法律の体系としては、そういう点で農産物価格というものを明らをにしておられますが、あとの第三点のしんしやく要素としてのその他の経済事情というものは漠然としてわかりません。その他の経済事情とは何をさしますか。私の見るところによれば、現在の日本肥料工業が国際水準からはるかに遅れておる。そのためにダンピングだといい、あるいは出血輸出だといい、その解釈がいろいろありますが、問題が起きてこの肥料問題が大きく政治問題化したことは御存じの通りであります。このしんしやく要素の中に、法の趣旨から見て当然国際価格一つのしんしやく要素として取上げて行かなければならないと思うが、その点について大臣はいかようにお考えになつておりますか。
  29. 保利茂

    保利国務大臣 その他の経済事情の中には、国内の一般物価水準ということも考えて行かなきやならぬと思います。それに関連してこの国際価格との関連が出て来ると思います。そういうもろもろの要素考えて行くということでございます。
  30. 足鹿覺

    足鹿委員 国際価格はいわゆる経済事情の中に織り込まれておるというふうな御答弁でありますが、そうではないのです。いわゆる経済事情というものはただ単に肥料の場合でないとしても、明らかに国際情勢影響されておるのです。これは肥料だけではありません。特にこの両法案を提出しなければならなくなつ理由というものは、国際価格との関連において、通産委員会に付託になつておるのは、少くとも取上げられておる。それとうらはらの関係においてこの法案がやはりつくられておる。従つて今度、今問題になつておるのは、国際情勢というものにどう日本肥料工業を対処せしめて行くということであつて、そういう場合に、なぜ明らかに国際価格をしんしやく要素として取上げないのでありますか。そういう漠然とした考え方は、私は誤りではないかと思う。いま一応明らかにしていただきたい。
  31. 保利茂

    保利国務大臣 直接的に国際価格要素として取上げるべきである、それはどういうことになるか存じませんけれども、両法案のねらいといたしておりまするところは、足鹿さんのお話のように、できるだけ早く国際価格に近寄るように、そうして肥料施策を講じて参るその過程においては、その近寄つて行くところの国際価格、それを一つ考え資料に取入れて行かなければならぬことは当然だと思います。問題は、いかにして早く国際価格に近寄せるか、同時に内需に対して安定した需給状態にどうして持つて行くかということがこの両法案のねらいでありますから、そういう意味からこの規定は置いておるわけでございます。
  32. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは満足ができません。なぜならば、一昨日も同僚委員から輸入したらいいじやないか、こういう御議論があつた。国際価格ははるかに日本よりも安い、これを日本に入れたらどうかという率直な意見があつた。しかもそれは、あなた方の政府の方針によつて、外貨の問題あるいは為替管理の問題等で制約を加えて、これを防止しておいでになる、これを撤廃すれば、勢い安い肥料日本に流入し来てるのです。これを人為的に阻止しておいでになるのであるから、少くとも国内価格を国際価格にまで、生産の合理化あるいは近代化によつて近づけて行くというのであるならば、当然最高価格決定する場合には、国際価格をしんしやく要素として明瞭に書くべきではないですか、政府があくまでも、肥料の輸入については現行方式をおとりになればなるだけ——入れれば別であります。入れる方針でありますか、入れない方針でありますか。入れる方針ならば、私はこの問題は、一応政府答弁も筋が立つと思いますがこれを人為的に阻止しておいて、しかも日本肥料価格のコストを国際価格に引きつけて行くための法案だ、法案だと言つてつたのでは話がわかりません。人為的な政策撤廃をすれば、日本肥料工業は、重大な影響は受けますが、結局においては値段が下つて来るのです。これを下らせないための一つの障壁を築いておいて、そうして国内最高販売価格をきめるときに、その国際価格をしんしやく要素に取入れないというのは明らかに矛盾であります。明らかに一つメーカー保護の思想がこの中にもうかがえると私は思う。率直に言つて、米はどんどん自由に輸入しておるじやありませんか。そして高い米を自由に入れられて、内地はその輸入した米麦によつて価格の抑制を受けておる。肥料の場合はそれと趣を異にいたしておりますけれども、少くとも日雇の肥料工業を国際水準にまで、コストの面を通じて近つけて行こうという一つのねらいが一方にこの法案においてあるならば、当然その農家へ売つて行く価格一つ決定要素としては、国際価格を入れなければ筋が立たないじやないですか。私はまだたくさんありますが、約束の時間がありますので、委員長にお願いしてまた後日に質問を保留いたしておきますが、今その一点について大臣の御所見を承つておきたいと思います。
  33. 保利茂

    保利国務大臣 これはひとり肥料のみならず今日の日本経済全体の悩みであるわけです。だから日本のものが高いからといつて一安いのをどんどん入れて来たらどうなるかということは、これは人によつて考え方によつてみな違うかもしれませんけれども政府としては、私の方としては、この悩みの中から日本経済を国際競争力に耐え得るところにどうして持つて行くか、これは政府の課題であるのみならず全国民的な課題であると思う。そういう上からいたしまして、お話のような外肥を輸入するという考えは持たないのでございますが、さらばとて、しかし国際価格に競争し得るところに行く希望を持たないかといえば、そうでない。希望を十分持ち得るわけでありますから、できるだけ短期間のうち場に国際価格に近寄るように持つて行くための施策を講じて参りたい、こういうふうに考えております。
  34. 足立篤郎

    足立委員長代理 川俣清音君。
  35. 川俣清音

    ○川俣委員 時間がないので午後に質問を続行したいと思いますが、主要な点について大臣に二、三お尋ねいたします。これは大臣たびたび御言明のあるように、日本の将来に備えるために日本肥料工業を国際価格に見合うような、生産費をまかなうようなところまで持つて行きたい、こういう説明でございますが、私はただ国際価格に競争できるように持つて行くことが必要だというだけでは十分でないと思つております。と申しまするのは、大正年間から昭和の初めにかけまして、硫安にとつて大きな競争相手であつたものは、もちろん外安でもありましたけれども、それと同等、以上の大きな競争相手であつたものは、大豆かすなりその他の有機質の肥料であつた。この有機質の肥料と対抗できるように持つて行かなければならないのだと思いますが、目安をただ外安にだけ置いておいても、これらの有機質肥料に対抗できるところまで持つて行かないとほんとうの合理化はできないと思うのであります。今日硫安工業がこれほど盛んになりましたのは、大臣承知通り、大正の末期から昭和にかけまして、外肥が非常に安かつた場合には輸入を制限し、外肥が高くなると入れておつたのです。これは国内硫安工業保護の立場をとつておられたからと思うのですが、このように保護育成はして来たのであります。ところが一方において、たまたま戦争が起り、大豆かす等の輸入が減つて参りましたために、硫安工業というものが今日のように盛大になつたわけです。従つてこれらの有機質肥料が将来国内農産物増産の上に必要だということになつて参りますと、これらともやはり競争を考えて行かなければならないのだと思いますが、今日の硫安工業はそれまで考えていない。そういうものは国策上拒否するのがあたりまえである。ただ硫安工業だけが成り立てばいいのだというような考え方で、真に農産物増産のために肥料があるのだという考え方でなくして、硫安工業自体の立ち行くかいなやということに重点を置いて肥料対策が成り立つているように見えるのでありますが、この点について大臣はいかにお考えになりますか。     〔足立委員長代理退席、委員長着席〕
  36. 保利茂

    保利国務大臣 大豆かすとか魚かすとか有機質肥料に見合つての、ないしはそれとの競争を見合つて関係考えて行かなければならぬのではないかというのは、ごもつともであろうかと存じますけれども、ただいまの情勢では、大豆かすとか魚かすとかいうようなものの増産は、あまり多くを期待できない状態にある。しかし私は、肥料自体の問題から行きますと、有機質肥料と申しますか、一面に自給肥料増産が伴つて、しかも硫安消費が適当に行われて行くというのが一番理想の状態ではないか。従いまして自給肥料増産ということが、硫安政策のいかんにかかわらず、大事な問題であるというように考えております。
  37. 川俣清音

    ○川俣委員 かつて一番多く入つたときには、大豆かすだけでたしか百三十何万トンぐらい入つたことがあると思います。それに菜種油かすなどを入れますと、約四十万トンぐらい入つたことがあるのではないかと思うのであります。そのように、日本化学肥料をオーバーするだけの大豆かすの輸入があつたはずであります。これらが戦争の結果入らなくたつて来たのであります。一方において農林省は、今度有畜農家を奨励するために多額の財政支出をいたし、または農産物価格安定法をもちまして菜種等の増産を企図いたしておる。この陰に横たわるものは、おそらく自給肥料が相聞達して増産になることを期待いたしておるのであろうと思うのであります。しからばそのような方面に農林省が重点を置くべきであつて硫安工業が成り立つか成り立たぬかということにも考え及ばなければならぬでありましうが、何といたしましても農林省といたしましては、農産物をいかにして増産をするか。しかも日本農産物はやはり外国の農産物に対抗できるようにコストで生産されて行かなければならないわけでありましよう。硫安を外国だけ安く売れば、農産物価格は外国だけ安くなる。日本は高い硫安を使うから農産物価格が高いということになりますと、今度は農産物の対抗ができなくなる。これはどうしても、外国へ売るものは高くいたしましても、国内には外国よりさらに安い肥料を提供することによつで、農産物増産をはかると同時に、農家経済を自立させるという方向に持つて行かなければならぬものだと思う。有畜農家創設あるいは農産物価格安定法というものがそのねらいでできておるのでありますが、そのねらいと、硫安が国際価格の上で競争できるように盛んに生産を上げさせて対抗するということとは、大きな矛盾があると思うのです。なぜかと申しますと、硫安価格を下げようという第一のねらいは、非常に多くの増産をさせようということであります。しかし同じ肥料であります化学肥料増産されますと、一方の自給肥料の方が圧迫を受けることは明瞭であります。なぜかと申しますと、自給肥料というものは、それらの硫安を使つた草なり、あるいは大豆、あるいは農産物から生れて来るものでありますから、硫安価格が高ければそれらの堆肥なり自給肥料が当然割高になつて来るわけであります。いつまでも自給肥料あるいは有機質肥料というものが硫安の圧迫を受けまして、正常な形をとり得ない結果になるのであります。  もう一つは、時間がないからまとめて御答弁願いますが、この法案のねらいは、生産費をうまく把握するために一つの必要な法律だということになつておる。ところがこれは、経済界で言うところの生産費と、いわゆる原価計算という意味生産費と二つのあると思うのです。ところが原価計算の意味のコストということになりますと、副生産がだんだん盛んになりますと、原価計算に必ずしも下つては参りません。いわゆる経済上の会社経営面から見るところの生産費が下つて来るということは推定できますけれども、厳密な意味における原価計算は、副生産が盛んになり、あるいは廃かすを利用したからといつて、下つて来ないのは原則でありましよう。そうして参りますと、必ずしもコストが安くなるということにはならない。ただコストが安くなると考えられます点は、増産によつてトン当りの生産費を下げるということは考えられますけれども、今通産省が考えておりますような合理化の方向へ持つて行くということになりますと、これは硫安で申しますならば、硫安増産ではなくして、硫安に伴うところの副産物と申しますか、副生産物と申しますか、それらのものの増産にはなつて来るだろうと思う。硫安からだんだん他の加工品、副生産を本生産にかえて行くことになる。今では副生産物である、あるいは硫安に伴う廃かすを利用するところの副生産だというふうに考えられておりますけれども、だんだん合理化が進んで参りますと、そつちが本生産で、硫安の方が副生産だということになりかねないのが、合理化の持つているところの方向であります。そうして参りますと、必ずしも硫安の原価計算が下るということにはならないわけでありますから、大臣はこの際、この法案を活用する上におきましても、ただ硫安工業だけの話に乗つておりますと——今日の硫安工業というものは温室の中に育つたのでありまして、この温室から一歩でも出ることを拒否しておるのが、今日の硫安工業の実態なのであります。なぜかと申しますと、この前統制撤廃しろ、統制撤廃するならば必ず安くなつて増産ができるということをもつて対抗して行つた。ところが撤廃してからも決して安くはならない。これだけ増産になるならば当然安くなるということを言明しておつたのでありますけれども、それほど安くはなつておりません。このようにだんだん合理化の方向が進んで参りますと、大臣が期待しておるように硫安価格を押え得ると考えますけれども、それは硫安価格を押えるのではなくて、硫安の操業度をどの程度にするかということが会社経営の中に考えられて来る。今まではどうしても硫安をつくらなければならないのを、副生産の方に力を入れて参りますと、硫安の方を生産制限をして来るという形が、いわゆる工場の合理化の目的なんです。そのことは決して悪いとは申しませんけれども硫安の立場から見ますと、必ずしも硫安が安くなるとは考えられないのでありますが、この二点に対して大臣はどのような所見を持つておられますか、お尋ねをいたします。
  38. 保利茂

    保利国務大臣 自給肥料の問題もまわりまわつて結局高い硫安を基底にしておる以上は、自給肥料それ自体もなかなか普及し、ないしは安くなるということは困難でありましよう。循環論でございますから、それはそういう結論になりますれば、そう言わざるを得ないと思いますけれども、しかしどちらにいたしましても、地方の維持培養という方面から見ましても、一面化学肥料を多量に用いますわが国の農業経営の上からも、どうしても自給肥料増産によつて地方培養を一面確保して参らなければ、非常に危険ではないかということは、これは釈迦に説法、御説明するまでもないのでありますが、この法はこの法として、先般の有畜農家創設等の一連の措置も講じましたて、できるだけ自給肥料増産はその面から推進して参りたいと考えております。生産費関係、工場コストの関係お話のようになかなかめんどうであると思います。これは特に私のようなしろうとでは、実際これは自信を持つてお答えし得る何ものも実はないのでございますけれども、同時に工場の能力と工場の生産全体から見まして、副産物としていろいろなものが出て来る、それもけつこうだと思います。しかし硫安生産費をできるだけ的確に把握するということは、肥料対策の大前提でございますから、どうしても専門家の御勉強によつて、これを的確に把握をしてもらうようにいたして参りたい。なお具体的には両政府委員から申し上げてもらいたい。
  39. 川俣清音

    ○川俣委員 私はこの際柿手さんにお尋ねして、さらに大臣にもう一度お伺いしたい。通産省ではこの合理化が完全に促進されて参りますると、現在の硫安工場における硫安と副生産の比率は、今のところ、生産高でなくて総生産額から行きますと、副生産がおそらく二割くらいになつておる。あるいは過燐酸石灰等をやつておるところは半々になつておるようなところもあると思います。大体副生産と言われるようなものは、価格からいつて二割か、二割二、三分に上つておると思います。もちろんこれは工場全体を平均してみますと、硫安だけのところもありまするから、どのくらいになるかわかりませんが、大体その程度行つておるのではないかと思います。詳しい統計を計算しておりませんので、平均は出て参りませんけれども、そのくらいには行つておるのではないかと思う。ところが合理化が促進して参りますと、これが逆になつて来ることが合理化の究極の目的のようになると思うのですが、この合理化が促進して参りますと、逆に硫安の方が四になり、ほかの副生産が六になるというふうに想像できませんか。あなたの方の合理化というのは、そういうことをねらつておるのではないのですか。
  40. 柿手操六

    柿手政府委員 ただいま川俣さんのおつしやる副産物というお話は、硫安製造の副産物という問題と、それから硫安をつくつているいわゆる硫安会社が、硫安以外に過燐酸をやつたり、あるいはセメントをやつたり、石炭をやつたり、繊維をやつてつたりしているという硫安以外の事業と、その会社の全体の化学肥料との比率ということか、ちよつと御質問の点がどちらでありましたかよくわからないのでありますが、まず硫安の製造事業に伴つて副産物がどのくらい回収されるかという点は、これは製造方法、あるいはその製造方法でもその副産物の回収の仕方によつて幾分違いますが、硫安製造事業そのものの副産物の回収は大した割合になつておりません。硫安をつくつておる会社が、硫安以外の事業をやつておるために、その会社全体の事業に対する硫安製造事業の割合というものは、非常に差がありまして、これは先般御要求がありまして、硫安工業における硫安とその他製品との生産額比率という調べを提出いたしましたが、それに各社別に記載しております。東洋高圧のように主として硫安会社といわれるもので、大体硫安が八一%、その他製品が一九%、最もはなはだしいのは、旭化成という硫安会社がございますが、これは硫安で出発した会社でございますけれども、ほとんど火薬とペンベルグ絹糸でありまして、硫安は四%でありまして、火薬及び人造絹糸が九六%となつておるというふうでございます。これは平均いたしますとどうなりますか。硫安そのものの事業に伴う副産物は、酸素であるとかあるいは炭酸カスとかいうようなもの、あるいは硫黄の回収とかいうものでありまして、そう大きな部分ではないと思います。たとえばもう少し例をあげますと、宇部興産、これは大きな硫安会社でありますが、これは炭鉱、セメント等のために、硫安が二八%でその他が七二%というふうになつております。昭和電工、これも大きな会社でありますが、肥料、石灰窒素あるいはアルミその他のものをやつておりまして、硫安二九%に対してその他の製品が七一%になつております。  それから先ほどの設備合理化によるコスト低下の問題でございますが、これは御説のように電解法におきましては、やはり操業度の上昇によるコスト低下ということが一番大きいのでありまして、生産量の七割五分を占めております。石炭法硫安におきましては、御承知のように、石炭の価格が約倍しておるのでありまして、これはひとり硫安工業だけじやなしに、日本の全産業にとつて石炭の価格が高いということが非常に隘路でありますので、この点につきましては、何とか石炭から水素をとる方の効率を飛躍的に上げるという方向に設備の近代化、合理化を進めて参りますとともに、硫安は非常に高温、高圧でありまして、非常に蒸気を使います。それはみな石炭でありますので、この蒸気の節約にいろいろな設備の改善をして参りたい、こういうように考えております。
  41. 川俣清音

    ○川俣委員 もう一点だけお尋ねして、それから大臣にもう一ぺんお伺いいたします。合理化という中に、私が申し上げるまでもなく、企業の合理化と、工場の管理の合理化または工場の設計の変更によるところの合理化、こうあると思うのです。私のお尋ねしておるのは設計の変更によるところの合理化である。従つて工場内における合理化というものは、廃ガスを利用する、あるいはその他の出て来る副生産物を商品として吸収して参る、生産品として参る、こういうようなことによつての合理化ということが一番大きなねらいであろうと思うのです。企業の合理化でありますれば、合併とか資本をどうするとかいうことになつて来る。私はその点を言つておるのではなくて、おそらく多くねらわれており、通産省で合理化というのは、企業の合理化じやないと思う。企業の合理化も必要でありますが、その問題を離れて、当然管理の合理化というのはやらなければならぬ。もしやらないとすれば、その経営自体が怠慢であるということになると思う。問題はやはり工場内における操業の合理化、こうなつて来ると思うのです。そこで東洋高圧の例を見ましても、昭和電工の例を見ましても、だんだん合理化ガ進んで参ると、硫安生産を適当に上げて行つたりあるいは制限して行くような操作ができるというところへ行く、これがおそらく会社における工場の合理化のねらいであろうと思う。工場の操作によつて生産を制限したり増産をしたりするようなことになりますと、この法律政府は、合理化を促進して需給調整をねらつておりますけれども、それより一歩進んで会社自体が合理化によつて生産調整をするという結果が出て来るであろう、当然そこまで行かなければ、会社のねらつておる合理化は達成できないことになる。今後出て参ります資金面から見ましても、どういうところに会社が資金を必要とするかというと、おそらく工場の操業のところに資金を要求して来るであろうと思う。あなた方の資金計画を見ましても、大体そういうところにねらいがあるようであります。そうして参りますと、この安定法あるいは需給調整法などというものは、会社の操業によつて自由自在に操業されて来るということになる。必ずしもそれは悪いとは言えませんが、一方において法律で高くないというと、農林省がもう少し公定価格を高くきめて行かなければ、むしろ会社自体が操短するぞ、こういうことになつて来ると思う。そうすると農林省はいかに多く生産をするように命じましても、それだけ工場設備ができまするとなかなかそれには応ぜられないということで、硫安に対して操短をやられましたら、大臣はどうなさいますか。この点なんです。ここからあなたにお聞きしたい。合理化を促進して参りますと、法律によらないで会社が操短をいたしまして、他の副生産が盛んになりますと、そちらに力を入れまして、硫安の操短を始めるということが合理化の窮極なんです。そうするとこの法律というものは、そういう合理化をさせるという——いわゆる農林省でいう合理化は硫安が安くなることがねらいでありましようが、そうじやなくて、結果は会社の意思によつて自由に操短ができるという結果になつて来るのではないかと思いますが、大臣この点いかがでしよう。
  42. 保利茂

    保利国務大臣 そういう見方が成り立つかどうか、これはちよつとにわかには申し上げられぬかもしれませんけれども、一体何のために合理化をやろうというのかという点は、結局輸出市場を確保して行きますためにも、割高な硫安では確保できない、であるから合理化によつてできるだけ価格引下げを行い、国際競争力をかちとるようにということが、私は合理化のねらいであると思う。その合理化をやつた結果、国内生産を制限して操短をしてそして価格を高いところに持つて行くというようなことでは極端にいえば私は肥料工業に携わる資格のない人じやないかと思う。そういう肥料工業の経営は、国民的に許されぬものじやなかろうかと思う。当然その合理化によつて大体国際価格のところまで持つて行つて、そして多量に供給する、内需にも十分応じ、東洋の市場日本硫安によつて獲得するということがねらいであると私は思う。もし——これは極端になるかもしれませんが、どんなに私ども考えを異にせらる経営者がおられましても、それではたとえば強権をもつて生産命令をするとか、いわゆる生産統制をするとかいうことをみずから求めて行かれるような経営者はなろうか、私はそういうふうに思います。
  43. 川俣清音

    ○川俣委員 大臣のそういう御答弁があると、もう一つお尋ねしなければなりませんが、今の資本主義社会においては、会社の経営を合理化するというと、自由に操短ができるということが最も望ましい経営であると考えられておるわけです。これはほかの繊維ものでも同じです。化学繊維が植物繊維よりも会社の能率を上げ得るのは、操短が自由にできるという方向に持つて行かれておるからであります。従つて会社の経営を健全ならしめるということになりますと、操短が自由にできる、操短によつて会社が打撃を受けないような方法を講じて行くことがねらいになるわけです。二百四、五十万トンの計画が徐々になされて行くかといえばそうじやない、もしもほんとうに国際価格に対抗できるようになるとしますならば、三百万トン計画なんというものは考えられていいはずでありますが、今通産省が合理化を慫慂いたしておりますけれども、会社の受入れとしては二百四十万トン、五十万トンが限度である、あるいは将来それより下るかもしれない。そういう場合における操短の合理化を考えて行こうというところに、会社の考え方があると見なければなりません。これを五百万トンも、あるいは三百万トンもつくるということになりますと、その会社はおそらく株がたたかれまして、経営困難に陥りましよう。従いましてこれは株価を推持しながら、資金のやりくりを考えながら合理化をするということになると、適当な生産高を考えて行くということが合理化の一歩だとこう考えられておると見なければなりません。そこであるいはエコノミスト等によりましても、輸出の引合いが盛んになれば、この会社というものはたとい赤字であつても、国内硫安が必ずしもそれに相応して引下らぬところから見て、国内における需要というものが盛んになつて国内から上つて来るところの硫安で採算がとれるという見方を株式市場ではいたしております。これは通産省が何と説明いたしましても、輸出によつて会社が赤字にならないで経営が健全になつて行つておるということは二、三の会社の例ばかりではありません。通産省は出血輸出だということを言われますけれども、株式市場から見るとそれは何ら出血輸出にはなつていないのです。ここへ会社の人なりあるいは山一証券の人なりを呼んで、この会社が出血輸出かどうかということを聞いてごらんなさい、出血輸出だつたら明日にでも株は下りますよ、そう言わないです。ただ通産省や経審は、会社がその経営が困難だといわれるものだから、赤字であろうとこう言うが、株式市場からいうとちつとも赤字ではない、ほんとうに会社が赤字であればもつと株価が下らなければならぬはずだが、輸出によつて何も痛手をこうむらぬで、むしろそれによつて会社の経営が好転するという見方が行われておるのですが、そのようなところから見て参りますと、日本肥料経営者がそういうべらぼうなことを考えることはないと大臣は言われておりますけれども、そうじやないのです、ここに私は問題があると思う。日本の産業からいうとあるいは合理化が必要であるかもしれません、しかし硫安から見ると必ずしも工場内の合理化というものは好ましいものでないという見解を私はとるのでありますが、私の見解について大臣はいかにお考えになつておりますか。この程度で打切りまして、あとは御勉強願つて答弁くださつてもよろしゆうございます。
  44. 保利茂

    保利国務大臣 合理化は結局経営上の操短を伴つて来る結果に陥るという御懸念でございますが、これはどういう形においても、操短をすれば結局コストは上らざるを得ないのではないか。従つて一般的に申しまして、操短がなされるような事態は起らないと思いますが、もし百歩を進めまして、お話のような、起り得ないことがもし起きるというような場合には、そのときこそ生産命令とか、あるいは外肥の輸入とかいうふうな非常措置をとるような事態を考えざるを得ないんじやないか。それから株屋さんたちが、もし出血輸出をしているならば相当株式の下洛が来なければならぬ——株式の操作は私どもではわかりませんけれども、もし大穴があいているのだというようなことになれば、たいへんなことでごさいましようし、そこらは株式市場のことでは議論が立てにくいのじやないかというふうに私は考えます。
  45. 川俣清音

    ○川俣委員 もう一点ですが、現在の製造工種から見ますと操短ができないことは、大臣指摘通りです。操短ができるように合理化が進んで行くということを私が指摘しているのは、単肥生産であれば問題ありません。確かに大臣のおつしやる通りです。副生産の方が本業のようになつて参りますと、硫安の方がつけたりの合理化が行われて参ります。そこで操短が自由になる、こういうことを申し上げた。そのときに生産命令を出すというのですが、大臣は一方において合理化資金を出してそのような工場になることを奨励していながら、そうなつたからといつて生産命令を出すということは、非常に困難だと思う。その場合には、ただ外肥を入れるとか、あるいは有機質肥料を入れて、そうして日本硫安製造がさらに詰まつて、副生産の方が本業のようになつて行くという結果になるかもしれません。それは必ずしも好ましいとは思いません。そこである程度合理化については、合理化資金を出すときに無責任な出し方をすることはいけないと思うと同時に、やはり国内有機質肥料、あるいは外国からの有機質肥料を入れることによつて、それらと相関連して合理化というものを考えて行かなければならないであろう、こういうことなんでありまして、この点についてはさらに御勉強願つて、次の機会に御答弁をお願いいたします。今日はこの程度で終りたいと思います。
  46. 井出一太郎

    ○井出委員長 午前の議事はこの程度にいたしまして、午後は二時半より理事会、三時より委員会を再開いたします。なお午後も農林大臣はぜひ本委員会に御出席相なるよう願います。これにて暫時休憩いたします。     午後一時十五分休憩      ————◇—————     〔休憩後は開会に至らなかつた