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1953-07-31 第16回国会 衆議院 農林委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年七月三十一日(金曜日)     午前十一時十八分開議  出席委員    委員長 井出一太郎君    理事 足立 篤郎君 理事 綱島 正興君    理事 平野 三郎君 理事 金子與重郎君    理事 足鹿  覺君 理事 佐竹 新市君    理事 安藤  覺君       遠藤 三郎君    小枝 一雄君       佐藤善一郎君    福田 喜東君       松岡 俊三君    松野 頼三君       松山 義雄君    加藤 高藏君       吉川 久衛君    井谷 正吉君       芳賀  貢君    山本 幸一君       川俣 清音君    中澤 茂一君       河野 一郎君    久保田 豊君  出席国務大臣         農 林 大 臣 保利  茂君  出席政府委員         農林事務官         (農林経済局         長)      小倉 武一君  委員外出席者         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 七月二十九日  委員佐々木盛雄辞任につき、その補欠として  池田勇人君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員安藤覺辞任につき、その補欠として山本  正一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山本正一辞任につき、その補欠として安  藤覚君が議長指名委員に選任された。 同月三十一日  委員池田勇人辞任につき、その補欠として遠  藤三郎君が議長指名委員に選任された。同  日安藤覺君が理事補欠当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  臨時硫安需給安定法案内閣提出第一六七号)     —————————————
  2. 金子與重郎

    金子委員長代理 これより会議を開きます。  ただいま委員長委員長会議に出席しておりますので、その間私がかわつて委員長の職務を行います。  臨時硫安需給安定法案議題といたし、審査を進めます。先般農林大臣より本案提案理由説明を承りましたが、この際本案具体的内容につき委して、政府説明を求めます。小倉農林経済局長
  3. 小倉武一

    小倉政府委員 ただいま議題に上りました臨時硫安需給安定法案につきまして概略説明をいたします。  御承知のごとく、七月五日に肥料対策委員会から政府に対しまして、化学肥料対策につきましてとるべき方策に関する答申がございました。その答申に中心を置きまして、法案の策定を準備いたしたのであります。その結果、臨時硫安需給安定法案硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案の二法案を得だのでございます。本委員会に付託になつておりますのは、そのうち臨時硫安需給安定法案でございます。この両法案目的とするところは結局帰一するのでございます。臨時硫安需給安定法案の方におきましては、硫安需給調整価格の安定ということが直接の目的でございます。それから硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案の方の直接的な目的は、硫安工業合理化硫安輸出調整ということが目的となつておるのであります。以下臨時硫安需給安定法案についての概略の御説明を申し上げます。  この法案のねらいとするところにつきましては、まず第一は対象と期間の問題でございますが、対象は、硫安を主とするアンモニア系窒素肥料ということであります。それから法律の期限でございますが、名称の通り臨時でございまするので、三十三年の七月末をもつて効力を失うということを原則といたしております。次は内容でございまするが、内容につきましては、一つ需給計画を策定するということと、次は需給調整のための措置でございます。第三番目におきましては生産者販売価格指定、第四番目に硫安審議会の設置、こういう四点に大きくわけて見ることができるのでございます。  まず需給計画でございますが、これは硫安生産、それから消費輸出という三つの点に主眼を置きまして計画がつくられるわけでございますが、特に一番大きな問題は、内需優先趣旨にかんがみまして、国内消費につ良まして不安なからしめるために、国内需要見込みにつきましては、過去三箇年程度消費の実績の見込みと、食糧増産計画等農業生産事情等を考慮して定むることにいたしております。なお御承知通り硫安年間需要につきましては、年によりまして若干の変動がございます。そこでこの変動に備えるということを第一の目的といたしまして、第二は季節的にまた需要相当変動するので、季節調整ということを第二の目的といたしまして、さらに第三といたしましては、前害等の緊急必要があるといつたようた場合の調整目的といたしまして、調整保留という措置を講じておるので上ります。この調整保留は、先ほど申しましたような国内消費見込みの一割を基準として定めることにいたしております。この調整保留は、農業団体あるいはその他適当な団体がございます山は、それを指定いたしまして、この団体をして買取り、保管させることにいたします。先ほど申しましたような目的のために、放出するのでございますが、放出につきましても農林大臣指示によつて放出をするということにいたしております。  次は需給調整の第二の点といたし永して、先ほど申しました硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法案によりまして、硫安輸出会社ができることに相なるのでございますが、この輸出会社の買取りにつきましては、いわば年間輸出総量計画によつて予定できまするけれども、時期的にどの程度数量を買い入れるかということにつきましては、国内需要に大きな影響があることでございまするので、農林通産大臣の意図によつて、この会社の買入れ数量計画的に承認するような制度を設けておるのであります。従いまして輸出会社ができましても、随時随量に買うという趣旨ではございませんで、国内需要に不安ながらしめるような趣旨のもとに買入れを認める、かような趣旨でございます。  それから調整保留につきましては、いわばこの制度の一環として、公の目的のために設けられたものでございますので、その損失につきましては政府において補填をするという建前にいたしております。  さらに価格の問題につきましては、目的にもございますように、価格安売ということが今回の法案一大眼目下ございまするので、いわゆる公定価枢制をとることにいたしております。小定価格を定める基準といたしまして、どういう事柄が参照されるかと申しますると、まず硫安生産基準であることは申すまでもございませんが、この硫安生産基準としたものに、農産物の価格その他の経済事情をしんしやくしてきめることにいたしております。価格の徹底的な公定ということでございますれば、卸、小売ということも問題になるのでございますが、硫安の全体の生産量から見ますと、国内需要で不足するということではございませんので、生産者販売価格について公定価格を設定するということによりまして、全般の硫安価格の安定を期し得ると考えておるのであります。  最後に硫安審議会でございますが、本法案のみならず、硫安工業合理化及び硫安輸出調整に関します法律におきまする、たとえば合理化といつたような問題につきましても、審議会の議を経て決定を要するような重要事項相当ございますので、経済審議庁硫安審議会を置くということにいたしております。以上がこの法案の大体の趣旨でございます。
  4. 金子與重郎

    金子委員長代理 発言の要求がありますので、これを許します。足鹿覺君。
  5. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいま経済局長から具体的な説明を聴取したのでありますが、これはただ法案を朗読なさつたような御説明で、私どもの期待しておつたような御説明がありませんので、お尋ねをしたいのでありますが、私どもの聞きたいのは、この法案を御提案になるに至りますまでの経緯を、もう少し詳細に聞きたいのであります。と申しますのは、一方合理化並びに輸出調整に関する措置法通産委員会提案をされております。これを分離して御提案なつたことは、どういう点からこういう結果になつたのでありますか、その経緯をもう少し詳細に承りたいのであります。
  6. 小倉武一

    小倉政府委員 硫安に関します法案二つにわけたことについてのお尋ねでございます。もちろん両法案一つになつて硫安対策がきまるものでございますので、二つにわけなくてもよろしいということも一方考えられるのであります。しかしながらよく両案を考えてみますと、その目的の重点とするとことはおのずから異なるのでありまして、臨時硫安需給安定の方は、国内農業経営の安定と農業生産力発展ということを最終の目標といたしております。そのための需給調整であり、価格の安定であります。すなわちもつぱら国内硫安需給価格というものを直接の対象といたしておるのであります。他方硫安工業合理化硫安輸出調整に関する臨時措置法案におきましては、御承知通り硫安工業合理化国内輸出調整と、輸出振興をはかる、こういうことを対象といたしております。従いましてその目的が異なりますとともに、また対象とする事柄も趣を異にするのでございます。そこで両法案として区分されまするので、二つ法案にわけるということが適当であろうというふうに考えたのであります。もちろん当初に申し上げましたように、この両法案が一本となつて硫安対策となつておりまするので、不可分のものであります。ただ当面の目的が、両法案それぞれ別個にあるということ、それからまた法律対象が一応異なるということであります。
  7. 足鹿覺

    足鹿委員 そうしますと、この法案と、合理化並びに輸出に関する法案とは全然別個なものですか。この法案によりますると、第九条二項に、日本硫安輸出株式会社の買入れ計画承認云云と、第十条以下関連性のある条文がありますが、ただいまの局長の御答弁では、別個なような印象を私ども受けたのであります。事実上法案には双方うらはら関係にあるような条文が随所に見えますが、それはどういうわけでしようか。
  8. 小倉武一

    小倉政府委員 これは法律の形といたしましてはもちろん別個でございまするし、先ほど申しましたように、対象目的がおのずから異なるのであります。しかし両者を通じて見れば最終目的二つくらいに限定されて、ここに統一的な硫安対策ということになるのであります。両法案関連についてのお尋ねでございまするが、御指摘のような輸出会社に関する事項、それから硫安審議会に関する事項とは、両法案に直接にあるいは分離的に関連があるのであります。その意味においては、関連を持つておることは言うまでもありません。
  9. 足鹿覺

    足鹿委員 最初の御答弁と少しかわつて来たようですが、要するに日本における硫安生産状況過剰生産時代だ。従つて硫安輸出会社認めるということは、これを海外に輸出することによつて直接間接に国内過剰生産時代における正常な価格が形成されることを阻止する結果になる。そこに問題があるわけでありまして、その点について、農林省としては、その心配はないという御趣旨に解釈をしてよろしゆうございますか。いずれまたこの問題は、午後の通産委員会との連合審査会において直接ただしたいと思つておりますが、その点について、農林省の基本的なお考えを承りたいと思います。
  10. 小倉武一

    小倉政府委員 輸出会社といつたような特別の輸出機構をつくることによつて国内需要なりあるいは国内価格について不安のようなことはないかという趣旨お尋ねでございますが、もちろん手放しでそういう特殊の輸出機構ができるということは、必ずしも好ましいことではございません。ただこういう硫安生産状況に相なりました現状におきましては、国内需給なり、価格に不安なからしめるとともに、輸出相当程度振興するということが国内生産価格も下げ、また硫安工業の強化にも役立つということでございますれば、ひいてはこれは農民経済のためにも役立つことに相なるのであります。従いましていかなる輸出機構ができるかということは、また同時に国内におきましていかなる措置ができるかということと相関連をいたすのであります。そこでその点について考えてみますと、一つは先ほど申したような国内需要について不安なからしめるような措置需給計画保留数量、それから輸出機構の買入れ計画承認制、もう一つつけ足りではございますけれども生産者に対する国内出荷指示、こういう措置によりまして量的な需要の不安は万々あるまいと存じます。それから価格の点につきましては、法文にも示されているような基準事情をしんしやくして決定されるということになりますれば、価格についての不安もないではないかというふうに信ずるのであります。しかもさような措置の上になお輸出振興ができまするならば、それによつて硫安工業生産力が増大することにも役立ちまするので、最終的にはまわりまわつてまたそれが農家経済の安定なり農業生産発展にも役立つ、かように考えておるのであります。両法案措置によりまして、御指摘のような不安はないものと確信いたしております。
  11. 金子與重郎

    金子委員長代理 足鹿覺君に申し上げますが、大臣が見えております。から、大臣に対する質問がありましたら……。大臣は大体三十分くらいしかおられませんし、あと河野一郎君が大臣に対して特に質問要求がありますので、その点お含み願います。
  12. 足鹿覺

    足鹿委員 私もよい機会でありますから、最初農林大臣に三、三点お尋ねを申し上げたいと思います。ただいま経済局長説明を求めておつたのでありますが、国内価格を不当につり上げない。また国内需要量の確保ということに対しても不安なからしめるという局長の御答弁でありました。しかしながら輸出会社の設立を一方におい認めろということは、そのこと自体輸出振興等において別に異議をさしはさむものではございませんが、その結果は、従来の事例から見ましても、不自然に国内価格水準を高く維持する間接的な影響を持つものだということは明らかである。たとえば昨年のインド向けの場合においても、あれは業者がいわゆる出血をあえて辞せずして輸出をしだのであると称するけれども、今度の場合は、場合によつては国がそのめんどうを見るというにおいが多分にあの法案にはあります。今は一応損失が出てもこれをたな上げしておいて、後に何らかの措置を施すのではないか、われわれはこういう疑念を抱いておりますが、農林大臣におきましては、あくまでも硫安輸出会社法律によつて制定された場合に、もし損失を生じた場合の措置について、通産大臣等とどのようなお打合せをなされ、御協議になつておるのでありますか、われわれは輸出そのものに反対しておるのではない。それが農民負担になることはもちろん、国家負担におい損失が補填されること自体にわれわれは異議を持つておるのである。百歩を譲つて国にその損失が転稼される場合がかりにあつたとするならば、そのことそれ自体日本硫安工業近代化とその合理化が如実に守られることにおいてのみ、これは許されるのであつて、現在の両法案を見て、そのいずこにもそれらに対する的確な措置は講じられておりません。臨時硫安需給安定法案についてみましても、硫安価格政策面から見た硫安コスト引下げ対策という条文はいずこにもありませんが、大臣の御所見はいかがでありましようか。
  13. 保利茂

    保利国務大臣 輸出機構の問題につきましては、ずいぶん朝野の間にも意見がありまして、輸出機構をもつてすれば、どういう性格を持つべきであるかということについて、相当方面に御意見があつたようでございます。政府考えとしましては、当面損失を生ずるであろう輸出会社損失については、御懸念のように、結局においては、何か国がそのめんどう、始末を見るんじやないか、そういうにおいがどうも抜けぬという点、ごもつともなことだと思いますが、一言にして申しますれば、国は損失のしりのめんどうは見ません。ただ輸出会社経営上の相当弾力ある運営をやらして、硫安輸出から来る損失を、輸出会社の全体の経営の面から少なからしめる方法をできるだけ認めて行こう、同時に合理化をできるだけすみやかに促進して、でき得べくんばその合理化促進によつて、いわゆる出血輸出というようなことが早く解消されるように指導して行こう、こういう考え方の上に立つて、それを徹底して行きまするためには、会社案と離れて何とか団といつたような公的な性格を持たしめれば、今足鹿さんの言われるようなにおいがますます強くなつて来る、国がめんどうを見るんじやないかというにおいが強くなるから、むしろ民間会社として行つた方がそういうにおいを持たしめない上からいつても妥当ではなかろうか、こういう考えのもとに輸出会社というものの案を採用しておるわけであります。
  14. 足鹿覺

    足鹿委員 あらかじめ損失を予想しておられないことは当然ですが、今の情勢からすれば、日本硫安工業世界水準との比較においては、損失を見ることはこれはもう明らかである。特別に国がこの会社法を御提案になつても、会社を野放しにされるならば、別にこのようなものをお認めにならなくても、独禁法の緩和規定適用除外を御措置になれば、硫安会社がかつておやりになつてしかるべきものであつて、別にこういう会社をあえて必要としないと私は思う。そういう点において、結局私どもは、真に硫安企業合理化をされて行くために自主的に推進をして行く、そういう具体的に施策の伴わない場合においては、結局硫安企業を、安易なお考えによりかかつて最終的には国家めんどうを見てくれるのではないか、こういうふうに印象づけられてもこれはやむを得ない。われわれの考え方間違つた憶測でないということは言い得ると思うのです。また先刻私が取上げております、価格政策面から見た硫安コスト引上げ対策というものが、これはただ単に硫安企業だけでは解決されない問題である。これはしばしば論じられたように、たとえば日本の高炭価の問題、あるいは電力、あるいは金利の問題、あるいはその他のバーター制輸出の問題こういうようなコスト引下げ関連する一連の政策がとられない限りただ単に硫安需給調整法が出ましても、それによつてコスト引下げは期待することができない。そこに私は問題があると思う。この法案を通じて一般的に受ける印象は、どうして硫安コスト引下げるかということについて何ら具体的な対策がありません。両案を通じて当局の見ておりまするコスト引下げ見通しいかん。こういう点について、もう少し詳細に御答弁を願いたい。
  15. 保利茂

    保利国務大臣 私ども輸出機構としての輸出会社に賛成いたしましたのは、いわゆる出血輸出による損失内地農民に転嫁するという懸念が非常に濃厚である。これがまた肥料問題をかなり大きい問題として各方面から関心を持たれたゆえんでございますから、内地農民需要に応すべき内地価格というものは、決してそういうものじやない。輸出の面は、内地需要に応ずる肥料価格はこういう上に立つて、こういう点で確保されておる。輸出面がかりにマイナスになるものがあつても、それはこの価格に何らの影響が来るものではないということをはつきりいたしまするためには、先ほどお話のございましたような処置よりも、この会社案を採用した方がはつきりするじやないかという意味から、私はむしろ進んでこの輸出会社案に賛成をいたしたわけでございます。しからば結局そのねらうところは、あ今日割高にある内地肥料をどういうふうに引下げて行くか、これは一言に言えば合理化である。それでは合理化の具体的な方法はどうするか。これはむろん製造工業を監督せられる面におい考えておられると思いますが、それはもう大体御指摘のように、ネックになつております電力の問題であるとか、あるいは高炭価という問題にメスを入れて行つて、同時にまた肥料工場施設等に改善を加えることによつて相当具体的にこの合理化推進具体策は整えられておると思うわけです。それに向つて政府努力をいたして参り、メーカーにおいても努力をしていただくならば、相当程度価格引下げは期待できるのじやないか。はなはだ具体的になりませんで恐縮でございますけれども、私どもはそういうふうに考えておるわけでございます。
  16. 足鹿覺

    足鹿委員 具体的なコスト引下げ見通しについて、大臣からはむずかしいならば、他からあとでまた御答弁を願いたい。  あとにもまだ御質疑があるようでありますから、もう一点。この需給調整法に基く保管団体の問題でありますが、これは何を予定しておいでになるでしようか。
  17. 小倉武一

    小倉政府委員 保管団体としての指定の予定でございまするが、これはもちろん相当数量でございます。従いまして資金相当の金額がいるわけでございます。またこの制度趣旨がいわばこの制度に基く公の仕事の一半を担当していただくということでございまするので、その団体の、第一には性格、それから次は信用、その次は、肥料といつたような特殊の商品を取扱う経営の技術的な能力、こういう三点を考慮して指定をいたしたい、かように思つております。農業関係団体では、たとえば全購連等がその資格を持つておるのではないかと思いまするが、この法案にも明らかに現われておりますように、指定団体一つに限るということは必ずしも考えておりません。
  18. 足鹿覺

    足鹿委員 それは大事な点でありますが、まだ保管団体の、保管するものの肥料放出等に対する点につきましても、非常に制約をされておつて、私どもはたしてそういうことで効果があるかいなかという点についても疑念を持つておりますが、これはあとでまた逐条の際に申し上げるとして、単数で行くお考えであるか、複数で行くお考えであるか。いわゆる適格者があるならば、二つでも三つでもお認めになるのでありますか。そういうことでは事実非常に混乱を生じまするし、また複数——団体あるいは三団体が少量づつ持つておるというようなことでは、非常にその効果も減殺されると思いますが、単数で行くのか複数で行くのか、条件がそろつたものがあるならば次々と認めて行くのか、その点を明らかにしていただきたい。
  19. 小倉武一

    小倉政府委員 これは、もちろん保管団体に適する団体があるかないか、あるいは将来できるかということにかかわるのでありまして、法律では単数というようには限つておりません。複数でもいいわけでございます。ただこの制度趣旨にかんがみまして、そうたくさんのものがあり得るとは考えられないのでございまして、おそらくごく少数のものというふうに私ども考えております。ただ単数と申しますると単一になりますけれども。単一というふうには必ずしも考えておりません。
  20. 足鹿覺

    足鹿委員 さつきのコストの問題を……。
  21. 小倉武一

    小倉政府委員 今回の措置によりまして、コスト引下げの可能の程度ということのお話でございますが、これはむしろ農林省関係よりも通産省の関係でございまするので、その方からまた他の機会に詳細な説明があろうかと存じまするけれども、私ども承知しておる範囲において申し上げます。このコスト引下げにつきましては、硫安工業合理化に関しまする法律にもございまするように、政府といたしましても、合理化のための資金の融通のあつせんといつたような措置を講じまするし、他方また合理化のための必要な技術上の勧告をするということに相なつておりまするが、そういつた措置によりまして、トン当り何ドル程度コスト引下げができるかということにつきましては、これは今後予定されます資金の量がどの程度になるかということにかかわるのでございます。それからまた一年、二年の関係でございませんで、今後四、五年、少くとも三年ないし五年は要しますので、その間計画見通しもつけなくてはなりません。なおそのほかに操業度がどの程度向上するかということになりますると、これは電源開発がどの程度進捗するかということともまた関連をして参ります。あるいは石炭の価格がどの程度下げ得るかということにも関連いたして参るのでございまするが、そういう総合的な処置がもしできまするならば、トソ当りほぼ七ドルないし十ドル見当の価格引下げができはしまいか。それによりまして、現在までの国際価格国内価格の開きを見まして、東南ア市場といつたようなところを考えますると、輸送上には日本の方が有利でございまするので、東南ア市場におきます国る際競争に太刀打ちができはしまいか、できる、かようなふうに見込みをつけておるのであります。
  22. 足鹿覺

    足鹿委員 最後に大臣に伺いたいのでありますが。今の大臣にかわつて局長答弁等では、きわめて抽象的でありまして、私は満足することができません。たとえば高炭価の問題にしましても、強粘結炭の国際価格を調べてみますると、日本は——これは通産省の調査によるものでありますが、二十二ドル五十セントに当つておる。アメリカは十ドル五十セント、インドはハドル、西独は九ドル五セントというふうに、まつたく比較にならないのです。ところが一面、この日本の炭鉱経営者の経営状態を見まするのに、非常に収益を上げておる。この関連産業としての石炭、また石炭は電力にも至大の関係を持つておりますが、これらの点については、しばしば問題のあるごとに指摘いたしますと、通産省は、縦坑を現在奨励をし、それに対して施策を講じておるから、漸次炭価引下げは可能であると言つておりますけれども、依然としてこの大きな開きを解決しない限り、日本硫安工業が国際水準に達して、国際競争に太刀打ちができるような時期は、なかなかそう早くはやつて来ないのではないか、私どもはそういうふうに見ざるを得ません。こういう問題をしさいに、具体的に検討してみまするならば、いろいろな具体的な問題はたくさんあります。従つて私は、質問あとにもどしますと、こういう生産コスト引下げの基礎的な諸条件というものの具体的整備を伴わずして両法案を出されたということは、どちらかといえば、需給の安定であつて、いわゆる価格の安定は一体だれのための安定であるかというところに私は疑念を持つ。私どもの言うのは、農民のための価格の安定を考えておるのであつて、業者のための需給の安定であり、価格の安定的な方向へ、両案をあわせて考えてみる場合には、多分に向つておる。これは意見でありますから多く申し上げませんが、だれのためのこれは需給調整であり、安定であるか。これは明らかに通産委員会に付託になつておる輸出会社認めて行くための一つの付属的な、従属的な立場に確かにこの法案は置かれておるものである。これを合理化して行くために、この法案が出されておるのではないか、極論をすれば、そういうこともある程度言い得られる。  最後にお尋ね申し上げたいのは、たとえばこの硫安審議会なんかの構成を見ますると、これは消費者の立場に立つて、この構成が考えられておるとは思われません。過般の硫安対策委員会の構成についても、私どもは非常に不満であつた農民を代表する者は、中央農業会議から一人しか出ておらぬ。今度の十五条による委員九人の内訳を見ると、硫安生産業者が二人、硫安販売業者が三人、硫安消費者を代表する者はわずかに二人以内であります。でありますから、これは一人の場合もあり得る。しかも学識経験者というものは、いわゆる中立的な、立場で出ておるといたしましても、大体において五対二であります。はたして消費者を代表する、いわゆる農民の声がほんとうにこの審議会に反映するやいなやということについては、私どもは疑わしいと思う。全体の委員の構成は適切妥当を欠いておると私は考えまするが、これについて硫安の販売業者を代表する者、生産業者を代表する者と、消費者代表との間に均衡がとれておると当局はお考えになつておりますか。何人が見ても、この構成を見たときに、だれのためのこれは法案であるかということを疑わざるを得ない。その点について大臣の御所見を承りたい。これは非常に大事なことであります。
  23. 保利茂

    保利国務大臣 非常に大事な点でございますからお答え申し上げますが、ただいまの御意見は思わざるのはなはだしきものでありまして、私どもといたしましては、硫安に関しまする限りは、何と申しましても内需優先の原則の上に立ちまして、内地農民のだめに価格の安定と需給の安定をはかつて参らなければならない。当面問題になりますのは、一面輸出が行われておる。また軸力余力を持つておる肥料関係において、輸出せられる面が出血輸出で、相当損失をもつて輸出をせられておる。それが内地農民に転嫁せられるということがあるのではないかということが非常な懸念の種になつておるわけでございますから、そういうところに対して、そういうことではないということを明らかにしつ、肥料価格の安定を目ざし、同時に一方の別途の法律案をもつて価格引下げにできるだけの努力を払つて行くという建前をとつておりますが、どこまでもこれが主点は、内地需要を安定し、価格の安定をはかつて行くというところにねらいを持つておるわけであります。  そこで予想されます十五条の委員の構成につきましても、生産業者を代表する者、消費者を代表する者それぞれ二人以内ということにいたしております。販売業を代表する中には、足鹿さんも御承知のように、おそらく具体的には全購連等が入るでありましよし、全購連が生産者の代表であるか消費者の代表であるか、どちらの代表ということはないと思うのでありますけれども、大体常識として農村のためにはからない団体と私は考えておりませんから、そういう点は全体の構成をごらんになれば、私は足鹿さんの言われるような御懸念は少いじやないかというように考え提案をいたしておるわけであります。私ども考えは、どこまでも内需に重きを置いて本法案を提出いたしておる次第であります。
  24. 足鹿覺

    足鹿委員 まだ大臣は次の機会においでになりますか。
  25. 井出一太郎

    ○井出委員長 次の機会に来ますから、保留していだだきます。河野一郎君。
  26. 河野一郎

    河野(一)委員 ごく重要な点を二、三大臣からお答え願いたいと思います。価格安定ということをしきりにお使いになりますが、一体どの辺に安定させようという見当でございますか。
  27. 保利茂

    保利国務大臣 これはいろいろ御意見があろうと思います。どの辺に一体目標を置いて安定をし、合理化を促進して行くという一つのねらいは、あるいはなくてはならないかもしれませんけれども、しかし当面また肥料工業の実態がどういうふうになつておりますか、生産費の調べすら持たないという状態では、どの辺といつてあらかじめ目標価格をねらつてはいけないのではないかと私は思います。生産費は御承知通り非常にむずかしいそうでございますけれども、できるだけ有権調査をいたしまして、絶対正確な生産費を取上げまして、その上から価格の決定をはかる。そうして合理化推進とともに、この引下げをはかつて行くという方向で行くのではなかろうかと思うのであります。
  28. 河野一郎

    河野(一)委員 私は、政府がどのくらいの価格内地農民に上げるようにするかという目標が前提であつて生産費が幾らになるということは従たる問題である。生産費が高くかかればかかるだけ政府はこれに施策を講じて、そうして農民要求する価格に合致するようにして行くことが、肥料政策の根幹でなければならぬと思うのであります。生産費を調べてみなければ見当がつかぬということは本末転倒である。それは政府が何にもするものがなくて、あなた方が大した施策をしないで、ただ法律で縛つて、そうして生産費を調べてみよう、幾らかかるんだからこの辺のところが妥当な値段であろう。それは生産者から見れば妥当な点かもしれぬ。生産者の方はそれで出血もしないし、適当な利益を見てやつて、そうしてこのくらいだということで安定するならけつこうかもしれません。それは農民の希望するところじやない。農民の希望するところのものは、最小限度国際価格硫安は得られるということが最も強い要求なんです。だから生産費の調べをするとかしないとかいうことは従の従たるものなんだ。率直に国際価格をもつて内地農民硫安を配給すべきものだという基本原則をきむべきだと私は思う。それをやるだめにはどういう施策が必要であるか、どういうふうにすればできるんだということでなければならぬと思う。それからあと生産費を調べてみて、生産費をどれだけ割るから、どれだけ割る以上はどういうふうにしてやらなければならぬじやないかということを考えるべきであつて、この法律をつくつてまず生産費を調べておいて、それからあとでぼちぼち行くんだなどということは、とんでもない話です。そういう悠長な考えでおるから、われわれの肥料政策とあなた方のお考えになる肥料政策とは、非常な食い違いがある。私はあえてこの際大臣に伺いたい。この議会を通じて、船舶に対する各種の助成施策をやつております。政府またこれに同意して、今予算は参議院を通過しようとしておる。これによつて船舶に対する助成をあの程度まで政府考え、われわれ議会も考えておる。しかるにこれを硫安政策に比べてみれば、一体どういう感じがするでしようか。船舶に対してあれだけの保護、助成をしなければならぬにもかかわらず、硫安に対しては現在のような程度法律で、はたして農民が納得できるかどうか。農林大臣は、あなたが農村へ行つて、船舶に対してあれだけ保護を上、あれだけの金を使つたのに、肥料に対しては一体どうなつているかという質問が出たときに、あなたはりつぱに答弁ができますか。しかも政府がやかましく言わないで、外国の硫安を買つて来れば、安い硫安が百姓は幾らでも手に入る。ないのならしかたがない。そういう事態にあるにもかかわらず、この硫安内地へ入れることを押える。内地硫安はつくらないのならつくらないでもよろしい。外安をどんどん入れればよろしい。そうすれば幾らでも入つて来る。硫安価格は国際価格に下るべきものだ。農村が最も必要とするところの肥料を、ことさらに政府はチェックして高い肥料を買わしておる。これに対しては返す言葉がないだろうと私は思う。かくするゆえんのものは、すみやかに内地生産者もそこまでこれを助成して、そうして国際競争に耐えるところまで持つて行くのだ。これは五年先じやないのだ、一年の辛棒だから、半年のしんぼうだから農村待つてくれというのなら、待たぬ限りでもなかろうと思う。しかし、この法案全部を通じて見たところが、安定するというが、どこに安定をするのかと言うと、生産費を調べてみなければ見当がわからぬ。こんなばかな答弁がどこにあります。そんなことでは、全然われわれの肥料に対する認識と根本が違う。肥料政策は、どこまでも国際価格内地農民にわけるのだ。買えるようにしてやるのだ。これが農林省の、課長にしても、局長にしても、大臣にしても、この点においてあなた方は責任をとるべきなんだ。それができないのは、一体どういうわけでできないのだ。どうすればできるのだということでなければならぬはずだと思う。それを今の大臣答弁のように、安定するのはどこに安定するつもりだと言えば、生産費を調べなければわからない。生産費は高いにきまつておる。今日本硫安工業政府が出している金は、幾ら出しておるか。全部を通じてみだところで四十数億だ。石炭を掘るために一麻生鉱業が借りておる金と同じじやないか。一麻生石炭業者が開発銀行から借りておる金と同じじやいか。そういう程度のことをやつておる。全農民負担において、そういうことをやつておる。これはとんでもないことだと思う。これについて思い切つて開発銀行の金を出してやろう、それでもいけなければ免税の点についても考えてやろう。船舶に対して今度おやりになつた点と、この肥料政策とは全然比べものにならぬ。これで内地農民が満足できますか。船舶ももちろん重要な基幹産業であるが、この船舶と硫安政策と比べてみて、船舶はかくまで優先的に保護せられなければならぬ、硫安はこの程度でよろしいのかということが、全農民に行き渡る。その認識を全農民が持つ。われわれはみすみす世界的に安い硫安があるにもかかわらず、高い硫安政府政策によつてつているのだ、議会はこれを看過しておるということになつたならば、全農民はどういう感じを持つでしよう。しかも今や硫安に対するこういう法案が新たに出たのだ。こういう法案を通す根本の考えが、今の大臣のようなことであつて、依然として、引続き外安を入れずに、内地農民は高い硫安を甘んじて買つて行くのだ。これが基礎になつておる法案だ。そういうことで、どうしてわれわれはこの法案に賛成できますか。おそらく私の意見には全委員諸君も共鳴してくださると私は思う。御答弁を願いたいと思います。
  29. 保利茂

    保利国務大臣 それはごもつともな御意見で、さればこそ出血輸出というような事態を早く解消しなければならない、こういうことをねらつて、別途提出をいたしております法案によつて、ただいま河野さんの言われたような線をねらつて、そうして輸出の面においては国際競争力を持つて行くように、と申しますことは、結局できるだけ早く国際価格に近づくようにという趣意であることは、これはもう法案提出の根本でございます。その点については、そんなことでは手ぬるいということで、いろいろ御意見もあることだろうと思います。それから、同時にまた、前段にお述べになりました方途につきましては、これは非常に根本の問題でございますが、内需の関係が、たとえば外安よりも非常に割高になつておる、だから外安並で内地が使えるようにしろ、これは私は十分傾聴すべき御意見だと思いますが、同時に、それに耐え得る財政力があれば、私はこれも一つ考え方だと思うわけであります。しかし終戦後今日までの肥料工業の推移を見まするに、まず荒廃せられた硫安工場を建て直す、そうしてせめて百万トンの生産でも確保するということに、終戦後至上命令的に、至上課題的に力を入れて、ある程度数量の確保ができる段階においては、外国価格より非常に高位に立つておる、そういう悩みを、この肥料工業は今日悩んでおるわけでございます。従つて肥料の増産というよりも、今日では合理化に全力を注いで行くべき段階にある。この両法案のねらつておりますところも、そこに最終のねらいを持つておることは、申すまでもないことであります。やり方が手ぬるいという御意見については、これはもう甘んじてお受けするほかは、そういう御意見からすればいたし方ないかと思つております。
  30. 河野一郎

    河野(一)委員 今の大臣お話で、甘んじて受けなければならぬということをおつしやるので、何をかいわんやでありますが、だだこれだけのことは、大臣ははつきり自分でも御認識の上でかかつていただきたい。外安を自由に輸入させれば、内地硫安は外安の値段に下ります。出血輸出をするとかせぬとかいう問題じやない。減産するしないという問題じやない。つくらぬならつくらぬでよろしい、これは内地の工業生産の問題なんです。硫安製造工業の問題なんです。われわれ農民の側から申しますれば、国際価格で買えないものが、現在日本にありますか。全部国際価格で買える。ひとり硫安工業だけが、国際的にこれだけ安いものがありながら、ただ出血輸出というようなことを言われる。これはとんでもないことだ。輸出の問題なんか、これは別なんだ。内地農民になぜ国際価格硫安を配給させないかという問題なんだ。安いものがみすみすありながら——これは戦争前のブロツク経済の建前、自給自足の感覚で行くならよろしい。今日すべてを国際価格輸出振興ということを政府は言つておる。自由貿易で行くのだと言つておる。言つておる以上は、国際価格でなぜ農民肥料を使わせないのか。農村の犠牲において、農村の負担において、わが硫安工業の育成強化をはかろうとするのは、一体正しい考えかどうかという問題なんです。三年かかるか、五年かかるか、われわれがやかましく言えば、幾らか年限が短縮されるかもしれませんけれども、とにかく現在この法案を見ても、これから生産費を調べて、なるべく早く合理化をやつて行くようにいたしましよう、こういうことなんです。ところが一方船舶の方はどうです。合理化ということも言つておるけれども合理化なんということよりも先に、優先して造船費の補助を十二億出すとか、やれ七分のものを利子補給して三分五厘にしてやるとか、全部やつているじやありませんか。一体政府硫安工業に何をしておられるか。幾ら金を使つておられるか。製造助成費、育成費ということは全部農村の犠牲においてやつているじやないか。そうしてこれができるまでぼちぼち——今度ようやく金もわずかに全部を通じて二百億出すとか出さないとか、どうするとか、こうするとか、ほとんど農民の犠牲において農村から安く米の供出をさせておいて、そうして全国民の負担において、何ら農民に報いてはいないじやないか。船舶には、全国民の負担において、船舶についてこれだけの保護助成をしておる。しかも農村においては、特に農村だけにおいて一般の食糧の供出をせしめておる。さらに肥料の点にまで農村の責任、農村のしわ寄せで、日本硫安工業の育成強化をはかろうという考え方が、はたして妥当であるかどうか。この法案はそれ以外にない。その基礎をなすものはそれ以外にない。こういうことで、はたしてわれわれこの法案に対する根本の理念において賛成できるかどうか。なぜこの法案と相伴うて、政府はこれだけの保護をするのだ、これだけの金を出すのだ——自分で金を一文も出さないで、全国民の、米を買つて食う方の責任、すべての責任において、少しも金を出さないでおいて、すべてを農民負担々々、責任々々、しわ寄せにおいてやるということが一体いいか悪いか。こういうことでは、自由党の諸君といえども、農村に基盤を持つておられる人は賛成できなかろうと私は思う。政府はこれに対して思い切つて金を出して、これだけやるだけのことはやるのだけれども、国際競争に耐えるまでにはこれだけの年限がかかるからがまんしてくれというなら、それはわれわれはあえて無理は申さぬ。しかるにあなた方は何もせぬじやありませんか。今度の予算を見てもどこに金が出ている。わずかに安い電力の割当をやつているとか、先ほどどなたかがおつしやつた通り、今度会社をつくつたあとのしわ寄せは責任はそこに来るとか、来ないとかいうお話はあつたけれども私は全部責任を背負つていいと思う。思い切つて金を出すなら出させて、そうして農民は一日もすみやかに、しいて申せば、即刻国際価格硫安の配給ができるように、取得ができるようにすることが肥料政策の根幹でなければならぬと私は思う。だから共産党の諸君から、高い硫安を売りつけて、安い米を買い取つて、これが農業生産のすべてじやないかと言われたところで、なんでこれに対してわれわれ弁駁ができるか。その通りと申し上げるよりほかしかたがないのであります。これに対して保利農林大臣は、どういう御所見か承りたい。
  31. 保利茂

    保利国務大臣 そういう施策を強く講じて参ります上から両法案を提出いたしておるわけで、大体河野さんの言われるように、この硫安価格引下げのために政府は一体どれだけの力を入れるつもりでおるか、これは別途法案の第四条に明記いたしておりまするように、硫安工業合理化を促進するため——合理化ということは結局その生産品の価格引下げ合理化ということがねらいであることは申すまでもないわけでございますから、その必要な資金につきましては政府が責任を持つてめんどうを見ますということを法四条でお約束をいたしておるわけでございます。ただそれのめんどうの見方が足りないとか、足りるとかいうことはあるだろうと思いますけれども今の肥料問題の悩みというものは、国際価格に比して内地硫安価格が高いのだからというところに向つて、できるだけすみやかに解決のメスを振るつて行かなければなりませんから、従つてその御趣意に沿うて政府としても努力をいたして参るつもりでおります。そういう意味でひとつ御了解をいただきたいと存じます。
  32. 河野一郎

    河野(一)委員 ですから私が最初に承つたように、どこへ価格を安定さすつもりなんだ。これが一番大事なところなんです。ところが今言うように抽象的に、生産費を調べてからでなければその返答はどうも申し上げかねる、しかしだんだん話が進んで来て、国際価格に近寄せるために四条において金を貸し付けて合理化するのだ、こう言つておられる。一体その合理化をして何年たつたらそうなるか。外国でも下りますよ。局長お話通り日本が五年たつて外国の値段と同じようにしようと思つてつて行けば、五年たてば外国ではもつと下りますよ。だから現在外国でやつておる倍のスピードで行かなければならない。そういうことが日本硫安工業の実績から考えてどうなつておるかということを申し上げたい。今言う通り、二百億出してから、国内硫安工業をこの程度合理化させれば、これからのは行くだろうとあなた方はお考えになつておる。外国の価格の方の、技術の発達、合理化というものは、そんな程度のものと考えておつたら、これは大間違いのもとだと私は思う。荒波の中に出して、国際的に競争さして初めてそこでできるのであつて日本硫安業者をわくの中に入れておいて、そしてぼちぼち外を見やつてつて行くのだというようなことで、いつまで自分は食つて行かれるのか。生産費は調べてもらつて、その生産費は補償してもらえるのだ、生産費を基準に安定の線は置いておくのだという考えならば、いつまでたつたつて硫安業者は生産費を割らない。これは生産費を割らないのだから、ぼつぼつ行こうが急いで行こうが、硫安業者は同じですよ。そういう条件のもとに、日本硫安業者を温室の中に置いておいて、そうしてこれを国際的に競争させてそこまで近づく、そんなばかばかしい話がありますか。あなた方はまたそんな程度の感覚で合理化をするのだ、資金を出してやるのだというようなことをおつしやつたところで、そんなことで一体国際水準に追いつけて行けるとお考えになつておるかどうか。根本が間違つておる。船舶をおやりになつたように、今ただちに国際水準に立つて競争しているところにぶちまけてしまえばよろしい。そうすれば内地硫安業者は参つてしまう。参つてしまうわけに行かないから、ここに全国の輿論が起つて来て、国家肥料に対する認識も起つて来て、今の船舶のように、船舶全部がこのままではつぶれてしまう、海運をこのままにしておくわけに行かぬから、国会も思い切つて保護助成をするという結論が出て来る。それをそうなさらぬで、生産費を調べた上で、その程度硫安工業をなるべく合理化して行くのだ、こんなことは日本国内合理化で、世界の競争の中に立つて行く合理化じやない。最終の目標が違う。あなた方も第一そのわくの中で育てて行けばいいのだということだから、保護の仕方も足りなければ、助成の仕方も足りない。それで迷惑するのはだれかといえば、農村が全部自分の犠牲において迷惑して行くことになるから、この考え方は根本的に、いかぬということを申し上げる。根本的に硫安政策に対する考えが違う。わが国において特殊の考え方なんだ。他のすべての産業はこんなことになつていない。どこに農林大臣、他のこれに類似する基幹産業がありますか。今あなたのおつしやるように、生産費を調べて、その生産費の程度によつて安定しながら合理化して、国際水準に持つて行くのだというような産業が他にあつたらお示し願いたい。そういう考えでやつておる産業があつたらお示し願いたい。それがないのに、これだけを特別に農村の負担において置いておくということは、われわれ農民として断じて了承できないと思うのですが、御所見を伺いたい。     〔金子委員長代理退席、委員長着席〕
  33. 保利茂

    保利国務大臣 大体この合理化の目標は、国際価格に近寄る、追いつくくらいがせい一ぱいで、その先を全然見ておらぬ——あるいはそうかもしれません。これはひとつ具体的に合理化具体策を持つている産業当局から一ぺん御聴取をいただいたらわかるだろうと思います。これはもうごもつともであろうと存じますけれども、目下のところは、とにかく立ち遅れておるところをどこまで近寄り得るかというところが、今日ねらい得る、またねらわなければならぬ一番大事なところであろうと思うわけで、従いまして政府の今後の施策というものは、この合理化をできるだけ——あなたの言うように、世界を引きずつて行くほどの高度のところまで持つて行ければ、これは何も言うことはなかろうと思いますけれども、当面は何としても国際競争に耐え得る、国際競争をやり得るところまで早く合理化をやつて行く、そのために政府の助成措置等も惜しむべきではないという考え方の上に立つておるわけでございますから、それではほかの産業と一体どうなつておるか。これは私はほかの産業の面と比較いたしましてどうこうというほどの知識を持つておりません。肥料工業としては、なし得るだけの合理化推進をやつて行く。そしてすみやかに目的達成をはかつて行きたいということで、努力をして行きたいと考えております。
  34. 河野一郎

    河野(一)委員 今の農林大臣の御答弁の中で、一番大事なことは、通産大臣通産省の方へ聞いてくれ、これは私は困ると思うのです。価格が一番大事なんですよ、肥料国内にも余るほどあれば、外国にもたくさんある。内地農民が幾らで硫安が取得できるかということがかかつて硫安政策のすべてなんです。それ以外に足りないからつくるのだということじやないのです。ところがその一番大事な点は、農林大臣のお考えによると、生産費を基準にして考えて行くのだ。そういうお考えはどうもかたい。そうすると生産費を基準にしながら、順次生産費の下るのを待つて、そうして安定値をだんだん下げて行つて、今目標としておる国際価格に近寄りまして、そうして無理なからしめるように持つて行こうというのがその考え方の基本であるように受取れるのですが、そこが私と根本的に違う。あなたに一番お考になつていただかなければならぬことは、今申すように、生産費を補償して行くようにするしないということは通産大臣考えるべきことなんであつて、あなたがそういうことを考える必要はない。あなたは農林大臣として、いかにして農民に安い、国際価格に近い、もしくは国際価格と同様な価格硫安を配給するかということを考えてくれればいい。これが逆だと思う。それをそういうふうな考え硫安の製造業者の立場をあなたは考えることがむしろ多いと思う。この点はひとつ根本から是正してもらわなければいかぬと思う。日本の戦争中もしくは戦争前は、内地硫安工業を育成しておかないと、戦争でもするとき火薬その他の関係で困るから、農村も使うけれども、そういう意味国家硫安製造業者に対して保護したのです。国際価格がどうあろうと、外安の輸入に苦心したのです。ところが今日はそういう必要はない。武器さえ持つていないのだから。鉄砲さえアメリカの鉄砲を借りているのだから、火薬なんというものはいらない。いらないとなればそういうことを考える必要は毛頭ない。とすれば硫安政策というものは一体どこに基準を置いてやつているのか。内地農民に配給するために硫安政策を立てておいでになるのか。世界の硫安工業の中に立つて、外貨獲得、輸出物の増産ということを目標に立つておいでになるのか。その基本的なものは一体どこに置いておいでになるかということを、ひとつ承つておきたいと思います。
  35. 保利茂

    保利国務大臣 この法案を提出いたしましたゆえんは、肥料対策委員会で数箇月御研究をいただいて出ましたその答申の趣意に沿うて、一応私ども考えも織り込んで提出いたしておるわけでございますが、問題は、お話のようにできるだけ内地需要に安い価格でもつて提供し得るように、それが今日ただちにできないとしても、合理的な手段によつてできるだけ早くそういう価格が実現するようにということで、これは単に内需の消費者の面のみならず、輸出の面におきましても同様の悩みを持つておるわけでございますから、そういう点よりこの両法案をつくつておるわけでございます。従つてこの肥料工業の目標をどこに置くかと言われれば、私は日本の産業の構造から見まして、肥料工業というものは内外需要の面から見て、合理化推進せられるならば、相当まだ発展の余地がある。また貿易の面についても相当寄与できる。資源の関係から行きましても、相当大きな産業として取上げなければならぬ。そういう点から、少くとも東洋方面需要には日本肥料をもつて応じ得るというような態勢をととのえて、内需はもとより、価格数量の安定をはかつて行かなければならぬことは申すまでもないのでありますけれども、一面においては、やはり輸出の面においても、産業全体の上から見て、そういう点も考えて行かなければならぬだろう。こういうふうに私ども考えておるものであります。
  36. 河野一郎

    河野(一)委員 こういうことを一つ申し上げてみたら、さらに私の趣旨が徹底すると思う。現在生産費の高い硫安国内消費する以上に生産されておるという事実がある。その余つたものを安い国際価格と競争して海外に輸出しておるというのが、一品にいつて今日の硫安の実情であります。この線をくずさずに合理化して、そうして一方国際水準よりも高い硫安を買わされておる辰民の不満を押えて行こうというのが、今日の政府当局のお考えのように私は思う。なぜそうする必要があるかと私は言いたい。一体四千万農民が大事なのか。通産大臣が私が今申すようなことを考えておつて、そういう立場で主張しておるなら私も一応了とする。それに対してわれわれ農村の代表者は、それは困る、こうもせい、ああもせいというのなら困るでせう。重要な食糧増産にこれだけ政府は重点を置いており、農村の育成強化をはかつておる農林当局が、ただいま申し上げた事実をなぜ肯定しなければならぬのか、どういうわけでこれを肯定しなければならぬのか、ここに私は非常に大きな疑問を持つ。百歩譲つて、この事実をくずさず肯定しようとすれば、その責任は農村の責任でなしに、やつてもらいたい。政府の責任においてこれをやつてもらいたい。すなわち内地農民に国際価格肥料を配給して、そうして生産者に対してはその損失政府負担において、カバーしてやつてもらいたい。これにはわれわれ異存はない。いくら政府が出してやつても、文句は言わない。ただ内地のみの農民負担において、今のような現状を維持しつ、ただいま政府において希望しておるような目標に現に進もうとするから、そこにわれわれ農民の不満があるということを御承知願いたい。しこうして、この不満は不満として政府は甘んじて受けることができるかどうか。一体なぜそうしなければならぬのか。しかも最大限にやるだけのことはやつたんだけれども、うまく行かないのだというのならよろしいが、話がくどくなりますけれども、先ほど申し上げましたように、わずか四十億やそこらしか出していないじやないか。何も政府は出していないじやないか。第四条にこう書いてあるというけれども、これはこれからやろうとしておる。これからやるんなら、なぜ船舶と同様に——委員長もそういう点については造詣が深いそうでありますから、お働き取り願いたいと思う。船舶に対してあれだけの保護助成をした議会が、現実に百姓がこれだけ高く買つておる硫安に対して、なぜ船舶同様の保護助成をすることができないのだろうか。なぜ政府はそうお考えにならないのだろうかという点に、私ども不満がある、不平がある、疑問がある。これから先に徐々に金を出して、徐々に合理化して、だんだんやつて行くつもりだ。急いでやるから——今三年が目標だそうだが、三年でやりますという答弁はできるかもしれぬが、こつちが三年たつて二百億便うときには、向うがまた三年たつて一千億使つてもつと先へ進んでしまう。私は過去の経験から見てもそう思う。だからこそ船舶のように国際洋上において競争しておるものは、思い切つた施策を講じなければ国際競争に勝てないという現実なのでありますから、硫安工業が国際価格に追いつくには、今のように外安と内安との間の価格、国際価格内地価格をこういうふうに段階をつけておくというこの考え方に一掃しない限りは、どうしてもこれが追いつけるものではなく、終始農民はこの不満を永久に持ち続けて行かなければならぬと思う。その今の私の思想に政府の当局が頭を切りかえれば、そのときに初めてわれわれ議会も、船舶と同様な感覚で硫安製造業に対する保護をする気になる。助成をする気になる。そうしてこれを助けるだけ助けて、国際価格内地農民にもわけることのできる日が、必ず最近において出て来ることができると思うが、今のような考え方でやつたのでは、こちらが進めば向うも進んでいる。常にこちらは、今の政府当局が考えておられるように、温室の中で生産費を補償しながら合理化をやつて行かなければならぬのだから実が入らぬ。そんなものはだめだ。政府は思い切つて外安を入れてごらんなさい。全購連に外安の輸入を許可してごらんなさい。ただちに国内硫安価格が国際価格に下る。肥料業者がうんと減産をやるならかつてにやらしてごらんなさい。つくらぬわけには行かない。減産をするなら減産をするだけ外安を輸入すればよろしい。そうすると全国的な問題が起つて来る。金融界にも産業界にも大問題が起つて来る。これも一言申し添えておきたいが、大臣はこの法案説明をされるのに、肥料対策委員会答申を得て、政府考えも加えてとおつしやるが、そんなことはわれわれ議会はまつぴら迷惑だ。だれが政府に知恵をつけようが、そんなことはわれわれの聞くところではない。政府の責任において議会に出してもらえばいいのだ。政府がやつたことで議会が責任をとるわけには行かない。そんなことを基礎にして政府がわれわれに説明するのは、今後やめていただきたい。われわれ議会の代表者がそこに入つておるのなら、これは大いにとつてつて傾聴いたします。われわれ議会の代表者が入つておらぬような対策委員会をつくつて、一万田君や藤山君がやつておられようが、そんなことはわれわれ国民の代表の間には通用しないと思う。そういう人たちが集まつて、そうしてそれを重視されて、その答申の中には政府考えも入つているが、そういうふうな偉い人が集まつてつたのだからというようなこをといつたつて、ちつとも偉いことはありはせぬ。そうして出て来るところのものは、業界の現状をくずさない範囲において持つて行こうという。辰村の意向はちつとも入つていない。われわれ農民がぶつ壊してみろと、初めて業界も目ざめるだろうし、金融界も目ざめるだろう。そうして現内閣はこれらの金融界や業界の圧力が一番きくから、そこであなた方も考えざるを得ぬようになるだろう。そういうものがうしろだてをしてつくつた案を持つて来るから、現状の維持でもつて、全部が農民のしわ寄せにおいてやられておる。そういう肥料法案だと私は申し上げる。すみやかに外安二、三十万入れてごらんなさい。その勇気があるかどうか。それで初めて日本のすべての各界がこれに協力する。今の船舶と同様の感覚においてこれに保護をしよう、助成もしよう、めんどうも見ようということで、初めて日本硫安工業が国際競争に耐え得るようになつて来る。一ぺんそこまでぶちまけてみれば、ほんとうに立ち直ると思う。これをわくの中に入れておるから立ち直れない。農民の犠牲としわ寄せにおいてやるから立ち直らないということを申し上げたい。そういう意味合いからして、政府当局は今私の申し上げておることを十分にお聞きいただいて、反省をしてもらいたいと思う。全農村は、おそらくこの私の意見には、わが意には、共鳴していただけるものと思う。自由党の諸君も今私の申し上げたことをよくお聞き取りいただきまして——くどいようですが、一方において船に対してあれだけの金を出しておるのです。船に出しながら、農村に重大な関係のある——第四条に、金を出すということが書いてあるが、絵に描いたぼたもちだ。選挙区へ帰つてごらんなさい、どういうことになるか。その意味において私はこういう法案は全面的につぶして、すみやかに反省して出直してもらいたいと申し上げたいのが私の結論なのです。よく農林大臣は御考慮を願いたい。御所見を承りたい。
  37. 保利茂

    保利国務大臣 御意見は十分拝聴いたしました。また大いに将来の施策の上に考慮しなければならぬと存じますが、何も対策委員会答申があつて、それを引受けて出しておるわけでもございませんので、おそらく今日の肥料工業のみならず、日本の今日の輸出上から、全産業を通じて見ましても、常識的に申し上げますれば、日本の今輸出が伸び得ないという状態は、単に肥料工業の面のみならず、おおよそ全産業に通じているのではないか、産業合理化が強く叫ばれるゆえんというものはそこにある。肥料工業の面において、そういう手荒いメスを加えることによつて合理化の急速な発展をはかつて行くように大英断を講ずべきだという御意見は、傾聴に値いすると思います。しかし私どもといたしましては、肥料関係の現状からいたしまして、とにかく先ほど来申し上げますように、今日まであるいは合理化がなまぬるくなつてつたかもしれません。しかしこの新しい施策によりましてできるだけひとつピッチを上げて合理化を促進して、同時に当面する内需の合理的な措置を講じて参るという上から、今日考え得るところと——そんなことではしようがないというおしかりを受けるわけですが、私どもとしては、今日のところこれ以上の案を持つて出なかつたことを非常に遺憾に思いますけれども、とにかくこれで一歩肥料対策の前進をはかつて参りたい、こういう考えで提出をいたしておるわけでございます。御意見については十分傾聴いたします。
  38. 安藤覺

    安藤(覺)委員 二点だけ関連いたしましてお尋ねいたしたいのであります。  先ほど来の質疑応答を承つておりますうちに、肥料価格の安定ということがしきりに使われておるのでありますが、おそらくこの安定も、国際水準価格に近づけての安定と考えられますが、国際水準価格へ近づけての安定ということになりますと、先ほどお話の考になかなか年月もかかることだと思いますが、さしづめ私は、この法案通過のあかつき、早ければ今秋の肥料需要期、あるいは来春の需要においては、即効的に何らかの価格引下げの事実が現われるのであるかどうか、これをお承りいたしたいのであります。
  39. 保利茂

    保利国務大臣 当面の秋肥の対策をどう考えておるかということに要約せられるかと思いますが、この法案の建前からいたしまして、生産費の調査をして、そうして農産物価格等の要素を勘案して適正な価格をきめるというような手続を踏むことにいたしておりますから、秋肥にはどちらにしてもこの法律による価格の設定ということは時間的に間に合わないと思つております。そこで新肥料年度が明日から始まるのでございますが、現在自動的にやつております安定帯価格の中において、メーカーと消費者側において秋肥価格について折衝を願つておるわけでありますが、できるだけメーカー側に勉強を願うという線で折衝を願つておるわけであります。どのくらいでおちつきますか、まだはつきり私は申し上げ得ませんけれども局長からでも申し上げさせます。
  40. 安藤覺

    安藤(覺)委員 それではちよつとお尋ねいたしますが、この法案作成にあたつては、農林通産両省の合同審議、あるいは協議というようなことが行われた事実がございますでしようか。
  41. 保利茂

    保利国務大臣 これは事務当局間においてもかなり長い間やつております。岡野通産大臣と私の間でも相談をいたしまして、こういう案を提出いたしたわけであります。
  42. 安藤覺

    安藤(覺)委員 私がこの問題を提起いたしましたゆえんのものは、ほかでもないのでございます。実は通産関係相当責任を持たれていい、また持たるべき立場の方から、この法案が成立したあかつきにおいては、この秋の肥料需要期から一俵当り五十円、全肥料価格では二十五億円程度引下げができるのだ。このために、ぜひともこの法案はこの期において通過させないと、関西の大風水害、あるいは関東、東北の冷害的傾向の見える今日、秋の肥料代に農民がさらに泣くのではないかということが伝えられておりますので、もしも農林通産両省の合同の審議が行われた等のことがございますれば、この法案の通過したあかつきにおいて、この秋から引下げができるというにらみを持つてのことがあられるのではないか。かような疑問を持ちましたがゆえに、このことをお尋ねしたわけでありますが、今の農林大臣のお言葉によつて、この法案の通過によつてとにかく秋肥には間に合わないということを明確にされた、そのように承つてよろしゆうございますか。
  43. 保利茂

    保利国務大臣 この法案による価格の設定は生産費の調査を前提としております。生産費の調査は、専門家に言わせましても数箇月を要するといいますから、本国会でこの法案の成立をもし得ますならば、ただちに生産費の調査にもとりかかるわけでございますから、春肥価格には価格の設定がこの法案に基いてできると思いますけれども、秋肥につきましては、生産費調査というのが数箇月かかるというわけでありますから、これは物理的に困難ではないかと思つております。
  44. 川俣清音

    ○川俣委員 時間がないので続けての質問は後日に譲りますが、今河野委員からの質問に関する点についてのみ、この際お尋ねいたしたいと思います。  大臣河野委員質問に対して答えるに、この法案はいわゆる硫安工業合理化のために必要な過程をとるところの法案だ、こういうふうに御説明なつたようであります。すみやかに合理化をして価格引下げるのだ、こういう御答弁ですが、この法案の中には合理化を妨げておるところがあります。合理化のための自由競争を行わしめるに十分な余地があるにかかわらず、わざわざ独禁法の除外規定を輸出会社認めておるのであります。独禁法は自由競争による合理化を促進するために設けられておる法律でありますが、この規定をわざわざ除外せられたのはどういうわけですか。一方では合理化を促進しようとするが、一方においては合理化を妨げようとする規定を入れたのは、どういうわけですか。独禁法によつてびしびし取締つて行きますならば、合理化も促進できる。しかし合理化を迫られるのがいやで除外規定を設けようというのがメーカーの考え方ですから、わざわざこの規定をここに取入れたのはどういうわけですか。
  45. 保利茂

    保利国務大臣 独禁法との関連でございますから、これは小倉局長から御説明を願います。
  46. 川俣清音

    ○川俣委員 河野委員に対する大臣の御答弁についての質問ですから、大臣からお答えを願いたい。
  47. 小倉武一

    小倉政府委員 独禁法の例外の問題でございますが、一つ硫安のメーカーが輸出会社に対しまして売る場合の取引条件についての協定の点でございます。もう一つ輸出会社自体が行う正当な行為ということについての点でございます。この点につきましては、いろいろ本委員会においても前々から御議論がございましたが、国内についての量並びに価格についての協定ではございませんで、輸出会社輸出する場合、ないし輸出会社にメーカーが両大臣の承認と同意を得て売る場合のことでございますので、国内価格ないし需要には影響を及ぼさない、かように考えるのであります。しかもこういう例外を認めることによりまして、輸出も円滑にできるということを期待いたしておるのであります。
  48. 川俣清音

    ○川俣委員 合理化が、今の独禁法によりまして相当制肘を受けて参りますと、合理化の方向に行かれる。それをあえて独禁法に基くところの警告なり取締りなりを怠つてつて、一方においては合理化促進ということを言われることは、意味をなさないではないかということをお尋ねいたしておる。もう一つ河野委員に対して、将来国際競争に耐え得るように国内態勢を持つて行くのだとしいう御説明でございますけれども日本のようにダンピングをやつておれば、外国の硫安工業合理化には確かに役立つかもしれませんけれども、今のようなやり方では国内合理化のためには役立つておりません。日本が犠牲を払つてダンピングをやればやるほど、これは国際競争の上から、おそらく外国の方が合理化を促進して来るであろうと思う。一方においては、外国の方に合理化促進を強要するようなダンピングの会社をつくつておきながら、そして外国の合理化に伴わないような国内態勢をつくつておいて、さらに将来国際価格に見合うような補助なり助成をして行こうといたしましても、はなはだ困難だと思う点がこの点からも見られるのですが、この点どうでしようか。
  49. 小倉武一

    小倉政府委員 輸出会社に対します独禁法の例外によりましてなし得ることは、海外に対する統制のとれた輸出ということでございまして、国内につきましては、御指摘のような独禁法の例外ということはございませんので、そこにはやはり一種の競争というものがございますし、他方また硫安工業合理化の促進によりまして、国内価格の全般的な低下を期待をするということになつておりますので、御指摘のような御心配はないのじやないか、かように考えておるのであります。
  50. 川俣清音

    ○川俣委員 局長答弁は非常に実情を御存じないのです。今硫安会社が、これは考課状をごらんになりましても、あるいは株式市場をごらんになりましてもわかる。出血輸出のために赤字としてたな上げしておる会社もありますし、また何らの損害をこうむらないで、むしろ利益率を上げておる会社もある。また輸出によつて会社経営が好転しておるという批評を受けておる会社もある。そのように解釈いたしますと、これはそのまま合理化を促進して行くことが妥当であるべきであると思う。ところが一方におい輸出会社をつくることによつて、赤字のある会社をたな上げさせておいて、その会社経営の促進をそこで阻止しておる。みずからの会社でたね上けするといたしますと、その会社は当然合理化を目途として行かなければならないのです。ところが、別な輸出会社に赤字のたな上げをしておいて、みずから合理化を行わないような処置が、ここに講ぜられておるのではないか、こういうことをお尋ねしておる。この点どうですか。
  51. 小倉武一

    小倉政府委員 御指摘のような輸出による損も、輸出会社によつてたな上げするということで、メーカーに対しましてその損失が自己の経理に属しないという点から、合理化を阻害する面もまつたくないとは言いがたいと思います。ただこの点につきましては、他方またメーカーの輸出による損を国内価格に転嫁させない、こういう根本方針もとりたいものでございまするので、そこに輸出による損をメーカーが負担するということは最終的な態度でございますけれども国内価格に転嫁させないという方策を実施いたしますためには、経理しまつたく別に処理する必要性もございますので、そういう必要性から見まして、これはやむを得ざる措置であるというふうにも考えられるのでございます。
  52. 川俣清音

    ○川俣委員 これは輸出会社をつくつて、そういうことを救済するということも一つのを案だと思いますけれども、しかし合理化という面から言うと、これを妨げるのではないかということをお尋ねしておるのです。そういうことにまつて業界を救済するということは考えられる。それはその通りです。しかしながら、合理化を促進するのだというのでありますれば、これは反対の方向ではないか。むしろ合理化の促進を阻止するような結果になるような買上げ会社ではないか、こういうふうにお尋ねしておる。  それからもう一つ局長とのやりとりはあとに譲りまして、大臣お尋ねいたします。大臣河野委員に対して、合理化を促進して日本硫安価格引下げるんだ、こういうふうな熱意での御答弁でありますが、あなたが先ほど申されましたように、日本硫安価格というものは、各メーカーによつて相当開きがあります。二割から二割五分の瞬きがあることは現に認められておる。これは一般の常識です。それをわずかの幅を持たして価格をきめて、これを指示しておるところに、むしろ合理化の妨げになつておるような結果が出て来ておる。もつともつと価格差をつけて参りますならば、当然業界の中においても合理化問題は起つて来る。現にあの指定されましたような上限、下限の価格で革めておることが、合理化を妨げておる。いわゆる協定価格なるものによつて会社によつて相当の利益を上げておる会社もある。また一方において、これらの価格でも無理だという会社もあることは事実です。そのこと自身が合理化を妨げておる。もつと下げなければいけない。もつと下げさせるところに合理化の目標がなければならぬはずです。ところが自由競争をみずからしようとするこれらの希望をあえて実行させないところに、今日の合理化の促進が遅れておる点がある。あるいは一括輸出をいたしますことによつて、赤字をたな上げさせるというようなやり方によつて合理化の促進を妨げておるのに、さらにそれを合法的に妨げるような輸出会社法案をつくられたという意味が、私には理解できないのでありますが、大臣の御所見を承りたい。
  53. 保利茂

    保利国務大臣 硫安工業数量的に今日輸出の段階まで発展をいたして、値段が高かろうが安かろうが、それは別として、とにかく内需に応じてなおあまりある余力を持つておる。その余力を輸出をしておる現状は、お話のようないろいろなケースがあるだろうと存じますが、先ほど強くおつしやつておりました、ダンピングをやればかえつて外国会社合理化をこつちから促進するようなものではないかというようなところは、特に傾聴に値するものだと思うのでありますけれども、同時にまたばらばらでやつております今日の状況から見ますと、実際はもうかりも何にもしないのに、換金を急ぐというような必要から、かなり無理な輸出もする。従つて必要以上に損をしたような形になつて行く。それが一つの統制された機関によつて、全体の市場の需要とにらみ合い、かつ競争とにらみ合つて行きますれば、そのダンピングというような状態から来る弊はよほど減つて来るじやないか、私はそう思います。それでは輸出会社をつくつて合理化をそこでチェックするようなことになるじやないか、これはとにかく日本の産業全体の上から行きましても、今日の産業界に対する大きな課題は、何といつても国際競争力を確保するだけの合理化をすみやかに促進するというところにあると私は思う。そのことに対しましては、合理化促進の方の運用によりまして、これは輸出会社のあるなしにかかわらず促進ができるものと思うのですが、そういうふうには思われませんでしようか。
  54. 川俣清音

    ○川俣委員 大臣は今各会社が自由にばらばらに輸出をしておるというふうに御認識ですが、実はそうじやないですよ。今のやり方は輸出会社と同じようなやり方をいたしておるわけなんです。ただその赤字になる点を各会社がたな上げするとか、あるいは償却をするとかいうことが今行われておる。今度輸出会社になりますと、その会社のたな上げする部分を輸出会社がたな上げするというふうにかわるだけなんです。かわることによつて会社経営面に赤字がなくなつて来るという形式をとりたい。それによつて株価の上りを誘導して、あるいは資金のやりくりを考える。こういうふうに考えておるかもしれませんけれども、赤字を持つておるというと、当然合理化をしなければならないので、赤字のない形をつくりたい、これが輸出会社をつくるところの理由なんです。これ以外に輸出会社をつくろうというメーカーの考えはないのです。今のようなやり方だと、独禁法に触れてこれは摘発されるのです。当然摘発の対象になるべきものなんです。なぜかといえば、強制的に生産費に見合わないような価格でわざわざプールする、一つのところに集めて来て、そうして輸出させる。これは適当な会社に適当に輸出をさせておるのじやないのです。わざわざ進んで国際競争にたえ得るようにある会社が入札した。ところが自分だけが責任を負いたくないということで、ほかのものに強要しておる。これははつきり名前をあげて言うことができるわけです。かつてインドの入札に参加したときには、昭和電工がだれにもはからずやつて来て、あとで大きな糾弾を受けて、収拾策として、硫安協会が会議の上で昭和電工の損失を各会社がおおうという協定が成り立つて、昭和電工の輸出数量を各会社が背負つた。このように、当然合理化が促進さるべきもの、またある会社においては国際競争に耐え得る会社もあるわけですから、それを促進して行けばむしろ合理化が促進されるわけなんです。それをわざわざ輸出会社をつくつて赤字をたな上げさして、その合理化をとめようとるすところに、この輸出会社の最も大きな弊害があるのですが、大臣はそうお考えになりませんか。
  55. 保利茂

    保利国務大臣 確かに輸出会社に対する御意見はあると存じますが、私がむしろ輸出会社に賛成しましたゆえんは、なるほど今お話のように、輸出会社というような輸出機構損失分をたな上げしないで、各会社の経理にまかしておけばいいじやないか、そういたしました場合に、それじやたまらぬからといつて合理化の方に力を入れて行くか、いわゆるごうごうたる非難のある内需に対する転嫁の方に持つて行きやすいかといいますと、どうも後者の方に行きたがるのではないか。そこで、内需の面にはこの損失は転嫁して行きませんという形をはつきりいたします上から行きましても、輸出会社案の方がいいのじやないか、こういう考えをとつたわけです。むろんそれによつて合理化がはばまれて行くというようなことは、これは政府の意図せざるところでございますから、そういう事態にならないようには十分注意して参りたいと思います。
  56. 川俣清音

    ○川俣委員 時間が迫つて参りましたから、質問あと機会に続行いたしますが、ただ一言ここでつけ加えておきたいことは、合理化しない以上、これは農民に犠牲を負わせない価格できめるということは困難です。いずれにしても安い生産費でできない限りにおいて、会社は何らかの形におい農民負担をしいるということは想像されるのです。そこで河野委員の言うように、私もたびたび申し上げているように、ほんとうの合理化促進のためには、外安を十万トンなり二十万トンなり入れることによつて日本肥料業界が新しい出発を強要される結果になる。なぜかというと、今から四、五年前、百五十万トンできたならば価格が半減するということを大言壮語して、硫安会社政府の援助を受けたはずです。当時なかつたところの鉄鋼資材にしても、あるいはセメント資材にいたしましても、多くの切符の優先配給を受けた。これらの優先配給を受けて、そうしてようやく二百二十万トンの生産をあげることになつたのは、メーカー自体の自力によるのではないのです。従つてそれだけの効果がなければ、財政投資というものは無意味だ。あるいは優先資材の配給というものは無意味つた。そこでやはり河野委員の言うように、合理化を促進するために方法がないとすれば、どうしても外安を入れて競争させるというようなことをしなければならないと思いますけれども、この点についての質問はさらに続行することにいたしまして、きようはこれで質問を打切りたいと思います。
  57. 井出一太郎

    ○井出委員長 残余の質疑は次の機会に続行することといたします。  午後は硫安関係の二法案につきまして通商産業委員会との連合審査会を開会いたしますから、御了承願います。
  58. 井出一太郎

    ○井出委員長 この際お諮りいたします。  委員の異動に伴い、ただいま理事が一名欠員となつております。その補欠委員長におい指名いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 井出一太郎

    ○井出委員長 御異議なしと認めます。それでは安藤覺君を理事指名いたします。  暫時休憩いたします。     午後一時十五分休憩      ————◇—————   休憩後は開会に至らなかつた